JP2017502128A - ポリアミド66の製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、ポリアミド66の製造方法であって、a)ムコン酸、ムコン酸のエステル、ムコン酸のラクトンおよびそれらの混合物から選択されるムコン酸出発材料を準備するステップ;b)ステップa)で準備されたムコン酸出発材料を、少なくとも1種の水素化触媒Hb)の存在下で、少なくとも部分的に水素と反応させてアジピン酸を得るステップ;c1)ステップa)で準備されたムコン酸出発材料を、少なくとも1種の水素化触媒Hc1)の存在下で、部分的に水素と反応させて1,6−ヘキサンジオールを得るステップ、またはc2)ステップb)で得られたアジピン酸を、少なくとも1種の水素化触媒Hc2)の存在下で、部分的に水素と反応させて1,6−ヘキサンジオールを得るステップ;d)ステップc1)もしくはc2)で得られた1,6−ヘキサンジオールを、アミノ化触媒の存在下でアミノ化することでヘキサメチレンジアミンを得るステップ;e)ステップb)で得られたアジピン酸の少なくとも一部と、ステップd)で得られたヘキサメチレンジアミンを重縮合させてポリアミド66を得るステップによる前記製造方法に関する。

Description

発明の背景
本発明は、ムコン酸および/またはそのエステルおよび/またはそのラクトンから出発するポリアミド66の製造方法に関する。更に、本発明は、前記方法によって製造できるポリアミド66に関する。
先行技術
ポリアミドは、世界中で大規模に製造されるポリマーの一つであり、シート、繊維および材料といった主要用途分野以外にも多くの更なる使用目的に用いられる。ポリアミドのなかでも、ポリアミド66(ナイロン、ポリヘキサメチレンアジピン酸アミド)は、最も多く製造されているポリマーの一つである。ポリアミド66の製造は、主として、いわゆるAH塩溶液の、すなわちアジピン酸と1,6−ジアミノヘキサン(ヘキサメチレンジアミン)を化学量論量で含有する水溶液の重縮合によって行われる。ポリアミド66のための従来の製造方法は、例えばプラスチックハンドブック(Kunststoffhandbuch),3/4 工業用サーモプラスト(Technische Thermoplaste):ポリアミド(Polyamide),Carl Hanser出版,1998,ミュンヘン,第42頁〜第71頁に記載されている。
ヘキサメチレンジアミン(HMD)の製造のための工業的に利用される全ての方法は、中間物質としてアジポジニトリル(ADN)を経て、それが触媒的水素化によってヘキサメチレンジアミンへと変換される。その場合に、経済的に最も高い重要性を有するのは、ブタジエンと青酸から出発するADN合成と、プロペンのアンモ酸化により製造されたアクリロニトリルの電解二量化である。
DE19800698A1は、ブロック状に構成されたポリエステルセグメントとポリアミドセグメントを有する生分解可能なポリエステルアミドを記載している。ポリアミドブロックの製造は、古典的に、カプロラクタムのような石油化学的原材料またはAH塩から出発して行われる。
ヘキサメチレンジアミンを1,6−ヘキサンジオールのアミノ化水素化によって製造することが知られている。そのような方法により、1981年まではヘキサメチレンジアミンは、Celanese社によって年間約30000トンの生産能力を有するプラントで製造されていた。前記アミノ化は、200℃および23MPaでラネーニッケルの存在下でアンモニアを用いて行われた。その場合に、約90%のHMD収率が達成された。副生成物として、ヘキサメチレンイミン(アゼパン)および1,6−アミノヘキサノールが生じた。Celanese法の経済性にとって不利なことは、1,6−ヘキサンジオールが、シクロヘキサノンと過酢酸とを反応させてカプロラクトンが得られ、引き続きそのカプロラクトンの接触水素化によって費用をかけて製造されることであった。
US3,215,742は、同様に、アルキレンジアミン、例えばヘキサメチレンジアミンを、相応のジオールとアンモニアとの反応によって製造する方法を記載している。不所望な副生成物として形成されたヘキサメチレンイミンはアミノ化水素化の段階に返送され、それは更に転化されてヘキサメチレンジアミンを得ることができると教示されている。その場合に、該ヘキサメチレンイミンは、同時にアミノ化反応のための溶媒として用いることもできる。
US3,520,933は、アミノ化水素化のために、コバルト、ニッケルおよび/または銅を含有する触媒を使用している。
WO2012/119929は、とりわけ、1,6−ヘキサンジオールの均一系触媒による水素化アミノ化によりヘキサメチレンジアミンを得ることを記載している。
ムコン酸は、アルカンジカルボン酸の製造のためと、ε−カプロラクタムの製造のために使用されることが知られている。
WO2012/141997は、ε−カプロラクタムの製造方法であって、ムコン酸とアンモニアおよび水素とを触媒の存在下で反応させる製造方法を記載している。同様に、この反応もアジピン酸中間物質を経ることがあり、得られたカプロラクタムをポリアミド6の製造のために用いることができると記載されている。ムコン酸から出発するポリアミド66の製造は、この文献には記載されていない。
WO2010/085712A2は、ドデカンジカルボン酸の製造方法であって、ムコン酸を還元させてヘキセンジカルボン酸を得て、そして該ヘキセンジカルボン酸と不飽和脂肪酸とをメタセシス反応において反応させる前記方法を記載している。
H.−J.Arpe,工業有機化学(Industrielle Organische Chemie),第6版(2007),Wiley−VCH出版,第267頁および第270頁によれば、1,6−ヘキサンジオールは、アジピン酸またはアジピン酸ジエステルをCu、CoまたはMnの触媒の存在下で水素化することによって製造されうる。その合成は、170℃から240℃までの温度および5MPaから30MPaまでの圧力で行われる。1,6−ヘキサンジオールは、カプロラクトンの接触水素化によって得ることもできる。
WO99/25672は、アジピン酸、アジピン酸モノエステルまたはアジピン酸ジエステルの接触水素化によって1,6−ヘキサンジオールおよび6−ヒドロキシカプロン酸またはそのエステルの製造方法であって、水素化生成物の蒸留に際してヘキサンジオールおよびヒドロキシカプロン酸の分離後に得られる、主として6−ヒドロキシカプロン酸のオリゴマーのエステルを含有する缶出物をその水素化へと返送する前記方法を記載している。
EP883590B1から、純粋なアジピン酸または純粋なアジピン酸から製造されるアジピン酸エステルの代わりに、カルボン酸混合物(DCL)が使用されることが知られている。これは、シクロヘキサンの酸素または酸素含有ガスを用いた酸化に際して副生成物として、反応混合物の水抽出によって得られる。該抽出物は、主生成物としてアジピン酸および6−ヒドロキシカプロン酸を含有し、その他に多数のモノカルボン酸およびジカルボン酸を含有する。それらのカルボン酸は、低級アルコールとエステル化される。アジピン酸ジエステルは、該エステル混合物から蒸留により分離され、そして接触水素化により1,6−ヘキサンジオールが得られる。
この場合に有利なのは、分解生成物DCLが、純粋なアジピン酸と比較して非常に費用的に好ましいことである。他方で、純粋な1,6−ヘキサンジオールを生成するためには、かなりの蒸留費用を費やさねばならない。特に、副生成物として生じた1,4−シクロヘキサンジオールの蒸留による分離が問題を引き起こす。
アジピン酸は、従来では、ベンゼンから出発して、シクロヘキサノールまたはシクロヘキサノンの酸化によって合成される。しかしながら、アジピン酸は、環境に優しい方式で生物起源から取得することもできる。
US4,968,612は、ムコン酸の製造のための発酵方法と、こうして得られたムコン酸のアジピン酸への水素化とを記載している。具体的には、ムコン酸は、酢酸中40質量%のスラリーとして、炭上パラジウム触媒の存在下で反応される。使用される酢酸の含水率は示されていない。この反応方式で欠点となるのは、腐食性の酢酸を使用することであり、それにより高価な耐食性反応器を使用する必要がある。
K.M.DrathsおよびJ.W.Frost,J.Am.Chem.Soc.1994,116,399−400ならびにW.Niuら,Biotechnol.Prog.2002,18,201−211は、シス,シス−ムコン酸をグルコースから生体触媒による合成によって製造し、引き続き該シス,シス−ムコン酸を、白金触媒を用いて水素化することでアジピン酸を得ることを記載している。前記2つの事例においては、発酵混合物のpH値は水素化前に、それぞれ、6.3を上回る値に、または7.0の値に調整される。その場合に、ムコン酸塩の溶液が得られる。この文献においては、ヘキサメチレンジアミンおよびポリアミド66の製造については何も述べられていない。
再生可能な起源(資源)からムコン酸を製造するための更なる方法は、例えばWO2010/148080A2に記載されている。この文献の段落[0065]と[0066]の実施例4によれば、15gのシス,シス−ムコン酸と150mlの水は水を環流しつつ15分間にわたり加熱される。室温に冷却し、濾過および乾燥させた後に、10.4g(69%)のシス,トランス−ムコン酸が得られる。母液(4.2g=シス,シス−ムコン酸に対して28質量%)は、もはやムコン酸からなるものではない。その母液は、ラクトンと更なる未知の反応生成物を含有する。
J.M.Thomasら,Chem.Commun.2003,1126−1127は、特定のアンカー基によってメソ孔質の二酸化ケイ素の細孔中に堆積されている二元金属ナノ触媒を用いて純エタノール中でムコン酸をアジピン酸へと水素化することを記載している。
J.A.Elvidgeら,J.Chem.Soc.1950,2235−2241は、シス,トランス−ムコン酸の製造と、白金触媒の存在下でのエタノール中でのムコン酸のアジピン酸への水素化を記載している。使用される溶媒および触媒の量についての記載はなされていない。
X.Sheら,ChemSusChem 2011,4,1071−1073は、二酸化チタン担体上のレニウム触媒を用いてメタノール、エタノール、1−ブタノール、アセトン、トルエンおよび水から選択される溶媒中でトランス,トランス−ムコン酸をアジピン酸へと水素化することを記載している。前記水素化は、もっぱら120℃の高められた温度で行われる。その使用される触媒では、水中でアジピン酸に対して低い選択性しか達成されず、主生成物はジヒドロムコン酸である。
WO2010/141499は、リグニンのバニリン酸への酸化、バニリン酸の2−メトキシフェノールへの脱カルボキシル化、および更なるカテコールへの転化を記載しており、最終的にムコン酸への酸化と、こうして得られたムコン酸の種々の遷移金属触媒を用いた水素化によりアジピン酸を得ることを記載している。その水素化に使用される溶媒は示されていない。
EP0117048A2は、ナイロン66塩の製造方法であって、トルエンをヘキサメチレンジアミンの存在下で発酵的に転化させてムコン酸を得て、その際、ヘキサメチレンジアミンムコン酸塩を含有する発酵培地が得られる製造方法を記載している。この発酵培地から、微生物を分離し、そのヘキサメチレンジアミンムコン酸塩を水素化してヘキサメチレンジアミンアジピン酸塩が得られる。こうして得られたナイロン66塩は、ポリアミド66の製造のために使用することができる。この方法に不利なことは、出発材料として、再生可能な起源に由来しないトルエンを用いることである。更に、この方法の本質的な特徴は、水素化のために、ムコン酸と、アミド形成に使用されるジアミンとの塩が使用されることである。遊離ムコン酸またはムコン酸エステルのアジピン酸への水素化は、この文献には記載されていない。
US2012/0196339は、原核生物から工業的に関連のある化合物を製造することを記載している。このようにして、デヒドロシキミ酸塩から出発してシス,シス−ムコン酸を製造し、更にアジピン酸へと転化させることができる。図1Aの範囲においてのみ、ナイロン66への更なる転化が示されている。しかしながら、この文献は、ナイロン66の製造の二番目の成分、つまりヘキサメチレンジアミンも再生可能な原材料から製造することについての示唆を全く含まない。従って特に、ムコン酸から出発してアジピン酸の製造とヘキサメチレンジアミンの製造をただ一つの方法に一体化できるというような一切の記載を欠いている。シス,シス−ムコン酸のアジピン酸への水素化と、アジピン酸の単離および/または精製に関しても、この文献の教示は全く明らかにしていない。しかし、US2012/0196339の第17頁段落[0150]には、ムコン酸のアジピン酸への水素化はひとまとめに挙げられている。しかしながら、水素化反応に適した溶媒も、アジピン酸の再結晶化による場合による精製に適した溶媒も挙げられていない。
WO2012/141993A1は、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)をムコン酸ジエステルから製造することを記載しており、その際、ムコン酸ジエステルは第一のステップにおいてアミド化され、引き続き直接的に還元してHMDAが得られる(経路1)か、またはニトリルへとアミド化した後に脱水し、引き続き水素化することでHMDAが得られる(経路2)か、またはアジパミドへとアミド化した後に水素化し、脱水することでアジポジニトリルを得て、それを引き続き水素化してHMDAが得られる(経路3)。この方法は、多くの欠点を有する。ここで、そのアミド化はアンモニアを用いて室温で実施せねばならず、4時間から14時間を費やし、その際、ジアミドはさほど高くない収率でしか得られない。更なる欠点は、脱水のためにPOCl3およびP25のような助剤が必要とされることである。これらの欠点は、ムコン酸またはアジピン酸を水素化して1,6−ヘキサンジオールを得て、それを接触アミノ化することによってヘキサメチレンジアミンが製造される本発明による方法によって克服することができた。更に、WO2012/141993A1に記載される方法では、再生原材料からは、ヘキサメチレンジアミンだけが製造されて、アジピン酸は製造されない。
本発明の課題は、ポリアミド66を製造するための経済的な方法を提供することである。特に、この方法は、石油化学的C6−成分から出発するのではなく、再生可能な原材料から製造できるC6−成分から出発すべきである。その場合に、該ポリアミド66は高収率および高純度で得られるべきである。
ここで、驚くべきことに、前記課題は、ムコン酸、ムコン酸のエステル、ムコン酸のラクトンおよびそれらの混合物から選択されるムコン酸出発材料を反応させることで、一方でアジピン酸が得られ、もう一方でヘキサメチレンジアミンが得られることによって解決されることが判明した。その場合に、前記ムコン酸のラクトンは、1,6−ヘキサンジオールの製造のために特に適しており、その1,6−ヘキサンジオールは、本発明によればヘキサメチレンジアミンの製造のための重要な中間物質として用いることができる。特に、使用されるムコン酸は、再生可能な(生体)起源に由来する。
発明の概要
本発明の第一の主題は、ポリアミド66の製造方法であって、
a)ムコン酸、ムコン酸のエステル、ムコン酸のラクトンおよびそれらの混合物から選択されるムコン酸出発材料を準備するステップ、
b)ステップa)で準備されたムコン酸出発材料を、少なくとも1種の水素化触媒Hb)の存在下で、少なくとも部分的に水素と反応させてアジピン酸を得るステップ、
c1)ステップa)で準備されたムコン酸出発材料を、少なくとも1種の水素化触媒Hc1)の存在下で、部分的に水素と反応させて1,6−ヘキサンジオールを得るステップ、または
c2)ステップb)で得られたアジピン酸を、少なくとも1種の水素化触媒Hc2)の存在下で、部分的に水素と反応させて1,6−ヘキサンジオールを得るステップ、
d)ステップc1)もしくはc2)で得られた1,6−ヘキサンジオールを、アミノ化触媒の存在下でアミノ化することでヘキサメチレンジアミンを得るステップ、
e)ステップb)で得られたアジピン酸の少なくとも一部と、ステップd)で得られたヘキサメチレンジアミンを重縮合させてポリアミド66を得るステップ
による前記製造方法である。
本発明の更なる主題は、0.5×10-12から5×10-12までの範囲の14C/12Cの同位体比を有するポリアミド66である。
本発明の更なる主題は、少なくとも1種の再生可能な原材料から合成されたムコン酸から出発して製造できるポリアミド66である。
特に、ステップa)で準備されたムコン酸出発材料は、ムコン酸の塩を含有しない。
特定の一実施形態においては、ステップb)および/またはc1)および/またはc2)の少なくとも1つのステップにおける水素化は、液相中で溶媒としての水の存在下で行われる。更なる特定の一実施形態においては、ステップb)および/またはc1)および/またはc2)の少なくとも1つのステップにおける水素化は、液相中で唯一の溶媒としての水の存在下で行われる。
驚くべきことに、ムコン酸は、水性溶媒中で、特に唯一の溶媒としての水中で高い収率でアジピン酸および1,6−ヘキサンジオールへと水素化することができると判明した。特に、高いアジピン酸収率は驚くべきものである。それというのも、技術水準に鑑みて、ずっと低い収率が見積もられていたからである。ここで、WO2010/148080の実施例4から、ムコン酸を水の存在下で加熱するときに、つまりシス,シス−ムコン酸の水素化の場合にも存在する条件(しかし、水および触媒を含まない)では、シス,トランス−ムコン酸(収率69%)への異性体化と、その内部ラクトンへの更なる反応(収率25%)と、そのレブリン酸への加水分解および脱カルボキシル化(収率3%)が起こることが知られている。この結果を顧慮すれば、本発明による方法においてそのような高いアジピン酸収率が達成されるとは見込めるものではなかった。
ムコン酸(2,4−ヘキサジエンジカルボン酸)は、シス,シス形、シス,トランス形およびトランス,トランス形の3種の立体異性体形で存在し、それらは混合物として存在してよい。3種全ての形は、高い融点(分解)を有する晶質化合物である(例えば、レンプ化学事典(Roempp Chemie Lexikon),第9版,第4巻,第2867頁を参照のこと)。ムコン酸溶融物の水素化は工業的にはほとんど不可能であることが判明した。それというのも、殊に好ましい水素化温度は明らかにその融点を下回るからである。従って、その水素化のためには、ムコン酸についてできる限り高い溶解度を有する不活性溶媒が望まれる。一見すれば、当業者にとっては、水は溶媒として不適切だと思われる。それというのも、ムコン酸は、アジピン酸とは異なり20℃から100℃までの温度範囲において難溶性だからである。前記のように、WO2010/148080は、シス,シス−ムコン酸を水中で還流下に加熱して、引き続き晶出させることで、シス,トランス−ムコン酸がたった69%の収率でしか得られないことを教示している。残留している母液は、もはやムコン酸からなるものではなく、ラクトンおよび他の未知の反応生成物を含有する。この結果に基づけば、当業者であれば、水中に懸濁されたムコン酸の水素化に際して、つまり本発明の好ましい実施形態によれば、はるかに低いアジピン酸収率が見込まれるはずである。
本発明の実施形態
詳細には、本発明は以下の好ましい実施形態を含む。
1. ポリアミド66の製造方法であって、
a)ムコン酸、ムコン酸のエステル、ムコン酸のラクトンおよびそれらの混合物から選択されるムコン酸出発材料を準備するステップ、
b)ステップa)で準備されたムコン酸出発材料を、少なくとも1種の水素化触媒Hb)の存在下で、少なくとも部分的に水素と反応させてアジピン酸を得るステップ、
c1)ステップa)で準備されたムコン酸出発材料を、少なくとも1種の水素化触媒Hc1)の存在下で、部分的に水素と反応させて1,6−ヘキサンジオールを得るステップ、または
c2)ステップb)で得られたアジピン酸を、少なくとも1種の水素化触媒Hc2)の存在下で、部分的に水素と反応させて1,6−ヘキサンジオールを得るステップ、
d)ステップc1)もしくはc2)で得られた1,6−ヘキサンジオールを、アミノ化触媒の存在下でアミノ化することでヘキサメチレンジアミンを得るステップ、
e)ステップb)で得られたアジピン酸の少なくとも一部と、ステップd)で得られたヘキサメチレンジアミンを重縮合させてポリアミド66を得るステップ
による、前記製造方法。
2. 実施形態1による方法であって、ステップa)において、ムコン酸出発材料を準備し、その場合にムコン酸が再生可能な起源(資源)に由来し、ここで該ムコン酸の製造は、好ましくは少なくとも1種の再生可能な原材料から生体触媒的な合成によって行われる、前記方法。
3. 実施形態1または2に記載の方法であって、ステップa)で使用されるムコン酸は、0.5×10-12から5×10-12までの範囲の14C対12C(14C/12C)の同位体比を有する、前記方法。
4. 実施形態1から3までのいずれかに記載の方法であって、ステップb)および/またはステップc1)における水素化のために、ムコン酸、ムコン酸モノエステル、ムコン酸ジエステル、ポリ(ムコン酸エステル)およびそれらの混合物から選択されるムコン酸出発材料が使用される、前記方法。
5. 実施形態1から3までのいずれかに記載の方法であって、ステップc1)における水素化のために、ラクトン(III)、(IV)および(V)ならびにそれらの混合物:
Figure 2017502128
から選択されるムコン酸出発材料が使用される、前記方法。
6. 実施形態1から5までのいずれかに記載の方法であって、前記水素化触媒Hb)は、ラネーコバルト、ラネーニッケルおよびラネー銅から選択される、前記方法。
7. 実施形態1から6までのいずれかに記載の方法であって、ステップb)における水素化は、50℃から160℃までの範囲にある温度で行われる、前記方法。
8. 実施形態1から7までのいずれかに記載の方法であって、ステップc1)における水素化は、液相中で、水、脂肪族のC1〜C5−アルコール、脂肪族のC2〜C6−ジオール、エーテルおよびそれらの混合物から選択される溶媒の存在下で行われる、前記方法。
9. 実施形態1から7までのいずれかに記載の方法であって、ステップc1)における水素化は、液相中で、唯一の溶媒としての水の存在下で行われる、前記方法。
10. 実施形態1から7までのいずれかに記載の方法であって、ステップc1)における水素化のために、一般式(II):
1OOC−CH=CH−CH=CH−COOR2 (II)
[式中、基R1およびR2は、互いに独立して、直鎖状または分枝鎖状のC1〜C5−アルキルを表す]の化合物から選択されるムコン酸ジエステルが使用され、その際、ステップc1)における水素化は気相中で行われる、前記方法。
11. 実施形態1から10までのいずれかに記載の方法であって、ステップc1)における水素化触媒Hc1)として、均一系または不均一系の遷移金属触媒が使用され、不均一系の遷移金属触媒が好ましい、前記方法。
12. 実施形態1から11までのいずれかに記載の方法であって、ステップc1)において、ムコン酸、ムコン酸モノエステル、ムコン酸のラクトンおよびそれらの混合物から選択されるムコン酸出発材料が使用され、かつ前記水素化触媒Hc1)は、還元された触媒の全質量に対して少なくとも50質量%のコバルト、ルテニウムまたはレニウムを含有する、前記方法。
13. 実施形態1から11までのいずれかに記載の方法であって、ステップc1)において、ムコン酸ジエステル、ポリ(ムコン酸エステル)およびそれらの混合物から選択されるムコン酸出発材料が使用され、かつ前記水素化触媒Hc1)は、還元された触媒の全質量に対して少なくとも50質量%の銅を含有する、前記方法。
14. 実施形態1から13までのいずれかに記載の方法であって、ステップc2)で使用される水素化触媒Hc2)は、還元された触媒の全質量に対して、少なくとも50質量%の、レニウム、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケルおよび銅から選択される元素を含有する、前記方法。
15. 実施形態1から14までのいずれかに記載の方法であって、ステップc2)における水素化は、160℃から240℃までの範囲にある温度で行われる、前記方法。
16. 実施形態1から15までのいずれかに記載の方法であって、ステップc2)の完了後の水素化触媒Hc2)の単離に際して得られるアジピン酸を含有する水が、ステップb)において溶媒として使用される、前記方法。
17. 実施形態1から16までのいずれかに記載の方法であって、ステップb)における水素化および/またはステップc1)における水素化および/またはステップc2)における水素化は、n個の直列に接続された水素化反応器中で実施され、その際、nは、少なくとも2の整数を表す、前記方法。
18. 実施形態17に記載の方法であって、1番目から(n−1)番目の反応器は、反応帯域から外部循環に導かれる流れを有する、前記方法。
19. 実施形態17または18に記載の方法であって、水素化はn番目の反応器中で断熱的に実施される、前記方法。
20. 実施形態1から19までのいずれかに記載の方法であって、ステップc1)で得られた1,6−ヘキサンジオールまたはステップc2)で得られた1,6−ヘキサンジオールを、ステップd)においてアミノ化触媒の存在下でアンモニアと反応させて、ヘキサメチレンジアミンを得る、前記方法。
21. 実施形態1から20までのいずれかに記載の方法であって、ステップd)におけるアミノ化は、水素の供給を行わずに、または水素の供給を行って実施される、前記方法。
22. 実施形態1から21までのいずれかに記載の方法であって、ステップd)におけるアミノ化の反応生成物を分離に供することで、ヘキサメチレンイミンが富化された分画と、ヘキサメチレンジアミンが低減された分画が得られる、前記方法。
23. 実施形態22に記載の方法であって、前記ヘキサメチレンイミンが富化された分画は、ステップd)のアミノ化へと返送される、前記方法。
24. 実施形態1から23までのいずれかに記載の方法であって、ステップd)においてヘキサメチレンイミンは、唯一の溶媒として使用される、前記方法。
25. ポリアミド66であって、0.5×10-12から5×10-12までの範囲の14C/12Cの同位体比を有することを特徴とする、前記ポリアミド66。
26. ポリアミド66であって、少なくとも1種の再生可能な原材料から生体触媒的に合成されたムコン酸から出発して製造できることを特徴とする、前記ポリアミド66。
発明の詳細な説明
本発明の範囲において、ムコン酸のエステルとは、別個の(外部)アルコール成分とのエステルを指す。ムコン酸のラクトンとは、分子内マイケル付加によって得られる化合物(III)および(IV)ならびに化合物(III)の水素化の生成物(V)を表す:
Figure 2017502128
ラクトン(V)は、ジヒドロムコン酸から分子内マイケル付加によっても生成できる。
ステップa)
本発明による方法のステップa)で準備されるムコン酸は、好ましくは再生可能な起源(資源)に由来する。それは、本発明の意図においては、天然(生体)起源を表し、石油、天然ガスまたは石炭のような化石起源を表さない。好ましくは、本発明による方法のステップa)で準備されるムコン酸は、炭水化物、例えばデンプン、セルロースおよび糖類、またはリグニンに由来する。再生可能な起源から得られた化合物、例えばムコン酸は、石油のような化石起源から得られた化合物とは異なる14C対12Cの同位体比を有する。ステップa)で使用されるムコン酸は、従って好ましくは、0.5×10-12から5×10-12までの範囲の14C対12C(14C/12C)の同位体比を有する。
再生可能な起源からのムコン酸の製造は、当業者に公知の全ての方法に従って、好ましくは生体触媒的に行うことができる。少なくとも1種の再生可能な原材料からのムコン酸の生体触媒的な製造は、例えば以下の文献に記載されている:US4,968,612、WO2010/148063A2、WO2010/148080A2ならびにK.M.DrathsとJ.W.Frost,J.Am.Chem.Soc.1994,116,339−400およびW.Niuら,Biotechnol.Prog.2002,18,201−211。
上述のように、ムコン酸(2,4−ヘキサジエンジカルボン酸)は、シス,シス形、シス,トランス形およびトランス,トランス形の3種の異性体形で存在し、それらは混合物として存在してよい。概念「ムコン酸」は、本発明の意図においては、任意の組成におけるムコン酸の種々の配座異性体を含む。本発明による方法のステップb)および/またはステップc1)における水素との反応のための使用物質としては、基本的に、ムコン酸の全ての配座異性体および/またはそれらのエステルならびにそれらの任意の混合物が適している。
好ましい一実施形態においては、本発明による方法のステップa)においては、シス,トランス−ムコン酸および/またはそのエステルが富化されているか、またはシス,トランス−ムコン酸および/またはそのエステルからなるムコン酸出発材料が準備される。ここで、シス,トランス−ムコン酸およびそのエステルは、シス,シス−ムコン酸およびトランス,トランス−ムコン酸よりも高い水中および有機媒体中での溶解度を有する。本発明による方法のステップa)においてシス,シス−ムコン酸、トランス,トランス−ムコン酸および/またはそれらのエステルから選択される少なくとも1種の成分を含有するムコン酸出発材料が準備される場合に、このムコン酸出発材料は、ステップb)またはステップc1)における水素化の前にまたはその間にシス,トランス−ムコン酸もしくはそのエステルへと異性体化されうる。シス,シス−ムコン酸のシス,トランス−ムコン酸への異性体化は、以下のスキームで示される:
Figure 2017502128
触媒としては、特に無機酸もしくは有機酸、水素化触媒、ヨウ素または紫外線が該当する。適切な水素化触媒は、以下に記載されている。異性体化は、例えばWO2011/085311A1に記載される方法に従って行うことができる。
好ましくは、ステップb)および/またはステップc1)における水素との反応のための使用物質は、該使用物質中に含まれる全てのムコン酸配座異性体およびムコン酸エステル配座異性体の全質量に対して、少なくとも80質量%が、特に好ましくは少なくとも90質量%が、シス,トランス−ムコン酸および/またはそのエステルからなる。
ステップb)および/またはステップc1)の水素化のためには、好ましくは、ムコン酸、ムコン酸モノエステル、ムコン酸ジエステル、ポリ(ムコン酸エステル)およびそれらの混合物から選択されるムコン酸出発材料が使用される。ステップb)における水素化のためには、ムコン酸のラクトンを使用することもできる。本発明の範囲においては、ムコン酸ポリエステルという概念は、ムコン酸もしくはエステル形成に使用されるジオールから誘導された少なくとも1つの繰返単位と、それに相補的な、カルボン酸エステル基を介して結合された少なくとも2つの繰返単位とを有するオリゴマーのムコン酸エステルも指す。
好ましくは、ムコン酸モノエステルとしては、一般式(I):
1OOC−CH=CH−CH=CH−COOH (I)
[式中、基R1は、互いに独立して、直鎖状または分枝鎖状のC1〜C5−アルキルを表す]の少なくとも1種の化合物が使用される。
好ましくは、ムコン酸ジエステルとしては、一般式(II):
1OOC−CH=CH−CH=CH−COOR2 (II)
[式中、基R1およびR2は、互いに独立して、直鎖状または分枝鎖状のC1〜C5−アルキルを表す]の少なくとも1種の化合物が使用される。
好ましくは、ポリ(ムコン酸エステル)としては、一般式(VI):
Figure 2017502128
[式中
xは、2から6までの整数を表し、
nは、1から100までの整数を表し、
3は、H、直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C5−アルキルまたは基HO−(CH2x−を表し、
4は、Hまたは基−C(=O)−CH=CH−CH=CH−COOR5を表し、ここでR5はHまたは直鎖状もしくは分枝鎖状のC1〜C5−アルキルを表すが、
但し、nが1の場合に、R3がHを表し、かつR4が−C(=O)−CH=CH−CH=CH−COOR5を表すか、またはR3が基HO−(CH2x−を表し、かつR4がHを表すかのいずれかであるものとする]の少なくとも1種の化合物が使用される。
ポリ(ムコン酸エステル)の重合度は、本発明の範囲においては、形式上ムコン酸から誘導される繰返単位と、形式上ジオールHO−(CH2x−OHから誘導される繰返単位との合計を指す。
第一の好ましい一実施形態においては、ステップb)および/またはステップc1)における水素化のために、ムコン酸、ムコン酸モノエステル、ムコン酸ジエステル、ポリ(ムコン酸エステル)およびそれらの混合物から選択されるムコン酸出発材料が使用される。
第二の好ましい一実施形態においては、ステップb)における水素化のために、ラクトン(III)、(IV)および(V)ならびにそれらの混合物:
Figure 2017502128
から選択されるムコン酸出発材料が使用される。
第一の好ましい一実施形態においては、ステップb)および/またはステップc1)における水素化のために、ムコン酸、ムコン酸モノエステル、ムコン酸ジエステル、ポリ(ムコン酸エステル)およびそれらの混合物から選択されるムコン酸出発材料が使用され、かつ該水素化は液相中で行われる。
水素化ステップb)、c1)およびc2)
本発明による方法の第一の実施形態においては、ステップb)および/またはステップc1)および/またはステップc2)における水素化は、液相中で、水、脂肪族のC1〜C5−アルコール、脂肪族のC2〜C6−ジオール、エーテルおよびそれらの混合物から選択される溶媒の存在下で行われる。好ましくは、前記溶媒は、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、i−ブタノールおよびt−ブタノール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテルおよびそれらからなる混合物から選択される。脂肪族のC1〜C5−アルコール、水およびこれらの溶媒からなる混合物が有利である。メタノール、n−ブタノール、イソブタノール、水およびこれらの溶媒の混合物が特に有利である。更に、目的生成物の1,6−ヘキサンジオールを溶媒として使用することが有利である。その場合に、1,6−ヘキサンジオールは単独で、またはアルコールおよび/もしくは水との混合物において使用することができる。
ステップb)および/またはステップc1)における液相中での水素化のために、10質量%から60質量%までの、特に好ましくは20質量%から50質量%までの、殊に好ましくは30質量%から50質量%までのムコン酸またはそのエステルを含有する溶液を使用することが有利である。
第二の好ましい一実施形態においては、ステップb)および/またはステップc1)における水素化のために、一般式(II):
1OOC−CH=CH−CH=CH−COOR2 (II)
[式中、基R1およびR2は、互いに独立して、直鎖状または分枝鎖状のC1〜C5−アルキルを表す]の少なくとも1種のムコン酸ジエステルが使用され、かつ前記水素化は気相中で行われる。
ステップb)、c1)およびc2)における反応に適した水素化触媒は、基本的に、炭素−炭素二重結合の水素化のために当業者に公知の遷移金属触媒である。一般的に、前記触媒は、IUPACによる周期律表の第7族、第8族、第9族、第10族および第11族の少なくとも1種の遷移金属を含む。好ましくは、前記触媒は、Mn、Re、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、CuおよびAuの群からの少なくとも1種の遷移金属を有する。特に好ましくは、前記触媒は、Co、Ni、Cu、Re、Fe、Ru、RhおよびIrの群からの少なくとも1種の遷移金属を有する。前記水素化触媒は、上述の遷移金属のそのままからなるか、または上述の遷移金属を担体上に施与された状態で、沈殿触媒、ラネー触媒またはその混合物として含む。
本発明によりステップb)、c1)およびc2)で使用される水素化触媒のための不活性担体材料としては、実質的に全ての技術水準の担体材料、例えば有利には担持触媒の製造に際して使用される担体材料、例えばカーボン、SiO2(石英)、磁器、酸化マグネシウム、二酸化スズ、炭化ケイ素、TiO2(ルチル、アナターゼ)、Al23(アルミナ)、アルミニウムシリケート、ステアタイト(マグネシウムシリケート)、ジルコニウムシリケート、セリウムシリケートまたは前記担体材料の混合物が使用されうる。有利な担体材料は、カーボン、酸化アルミニウムおよび二酸化ケイ素である。特に有利な担体材料は、カーボンである。二酸化ケイ素担体材料としては、種々の出所および製造の二酸化ケイ素材料、例えば熱分解法で作成されたケイ酸または湿式化学的に製造されたケイ酸、例えばシリカゲル、エアロゲルまたは沈降ケイ酸を触媒の製造のために使用することができる(種々のSiO出発材料の製造のためには、W.Buechner,R.Schliebs,G.Winter,K.H.Buechel:工業無機化学(Industrielle Anorganische Chemie),第2版,第532頁〜第533頁,VCH出版社,ヴァインハイム 1986を参照のこと)。
前記水素化触媒は、成形体として、例えば球体形、リング形、円筒形、立方体形、直方体形または他の幾何学体形で使用することができる。非担持の触媒は、通常の方法に従って、例えば押出、タブレット成形等によって成形することができる。担持された触媒の形は、担体の形によって決まる。その一方で、前記担体は、1種以上の触媒活性成分の施与の前に、またはその後に成形方法に供することができる。前記遷移金属触媒Kは、例えば圧縮成形された円筒体形、タブレット形、錠剤形、車輪形、リング形、星形または押出成形体形、例えば中実ストランド、多葉形ストランド、中空ストランドおよびハニカム体または別の幾何学体の形で使用することができる。
触媒粒子は、一般的に、0.5mmから20mmまでの、好ましくは1mmから10mmまでの(最大)直径の平均値を有する。それに含まれるのは、例えば1mmから7mmまでの直径、好ましくは2mmから6mmまでの直径と、3mmから5mmまでの高さを有するタブレット形の遷移金属触媒K触媒、例えば4mmから7mmまでの、好ましくは5mmから7mmまでの外径と、2mmから5mmまでの高さと、2mmから3mmまでの孔径とを有するリング形の遷移金属触媒K、または例えば1.0mmから5mmまでの種々の長さの直径のストランド形の遷移金属触媒Kが該当する。そのような形状は、自体公知のようにしてタブレット成形、圧出成形または押出成形によって得ることができる。そのために、触媒材料に、通常の助剤、例えば滑沢剤、例えば黒鉛、ポリエチレンオキシド、セルロースまたは脂肪酸(例えばステアリン酸)および/または成形助剤ならびに補強材、例えばガラス、アスベストもしくは炭化ケイ素からなる繊維が添加されうる。
前記触媒は、水素化条件下で、均一系触媒としても、不均一系触媒としても存在しうる。有利には、前記触媒は、水素化条件下で不均一系触媒として存在する。特に、前記触媒は、ステップb)および/またはc1)および/またはc2)の少なくとも1つのステップにおける水素化条件下で、不均一系触媒として存在する。更により具体的には、前記触媒は、ステップb)および/またはc1)および/またはc2)のどのステップの水素化条件下でも、不均一系触媒として存在する。
不均一系触媒が使用される場合には、この触媒は、例えば網状の担体上に施与されていてよい。その代わりに、またはそれに加えて、前記不均一系触媒は、管形の担体の内壁に施与されていてよく、その際、該管形の担体を通じて反応混合物が流過される。その代わりに、またはそれに加えて、前記触媒は、粒状の固体として使用することができる。
好ましい一実施形態においては、ステップb)、c1)およびc2)の少なくとも1つのステップにおける水素化は、液相中で行われ、かつ前記触媒は懸濁液の形で存在する。具体的な一実施形態においては、ステップb)、c1)およびc2)のどのステップにおける水素化も、液相中で行われ、かつ前記触媒は懸濁液の形で存在する。液状の反応生成物が反応帯域から抜き出される場合に、懸濁された触媒は、当業者に公知の保持方法によって反応帯域に留めることができる。これらの保持方法は、好ましくはクロスフロー濾過、重力濾過および/または少なくとも1つの濾筒による濾過を含む。
本発明による方法の具体的な一実施形態においては、ステップb)、c1)およびc2)の少なくとも1つのステップにおける水素化は、n個の直列に(一列に)接続された水素化反応器中で行われ、その際、nは、少なくとも2の整数を表す。nのために適切な値は、2、3、4、5、6、7、8、9および10である。好ましくは、nは、3〜6を表し、特に2または3を表す。この実施形態においては、前記水素化は、好ましくは連続的に行われる。
水素化のために使用される反応器は、互いに独立して、1個の反応器内に1つ以上の反応帯域を有してよい。前記反応器は、同じまたは異なる反応器であってよい。これらの反応器は、例えばそれぞれ同じまたは異なる混合特性を有してよく、および/または内部構造物によって1つ以上に区分されていてよい。
水素化のための適切な耐圧式反応器は、当業者に公知である。それに含まれるのは、一般的に、気−液反応用の通常の反応器、例えば管形反応器、管束型反応器、ガス循環型反応器、気泡塔、ループ型装置、撹拌槽(それは撹拌槽カスケードとして構成されていてもよい)、エアリフト型反応器等である。
不均一系水素化触媒の使用下での本発明による方法は、固定床方式で、または懸濁液方式で実施することができる。その場合に、固定床方式は、アップフロー方式またはダウンフロー方式で実施することができる。その場合に、前記水素化触媒は、好ましくは既に記載されているような成形体として使用され、例えば圧縮成形された円筒体形、タブレット形、錠剤形、車輪形、リング形、星形または押出成形体形、例えば中実ストランド、多葉形ストランド、中空ストランド、ハニカム体等の形で使用される。
懸濁液方式では、同様に不均一系触媒が使用される。前記不均一系触媒は、その場合に、少なくとも微細な状態で使用され、反応媒体中に微細に懸濁されて存在する。
適切な不均一系触媒およびその製造方法は、上記の通りである。
固定床での水素化に際して、内部空間に固定床が配置されており、その固定床を通じて反応媒体が流れる反応器が使用される。その場合に該固定床は、唯一の充填床または複数の充填床から形成されていてよい。その場合に、各々の充填床は、1つまたは複数の帯域を有してよく、その際、該帯域の少なくとも1つは、水素化触媒として活性の材料を含有する。その場合に、各々の帯域は、1つまたは複数の触媒活性材料を有してよく、および/または1つまたは複数の種々の不活性材料を有してよい。種々の帯域は、それぞれ同じまたは異なる組成を有してよい。複数の触媒活性帯域であって、例えば不活性充填床によって互いに隔離されている帯域を設けることも可能である。個々の帯域は、種々の触媒活性を有してもよい。そのために、種々の触媒活性材料を使用してよく、および/または前記帯域の少なくとも1つに1種の不活性材料を混加することができる。固定床を通じて流れる反応媒体は、少なくとも1つの液相を含有する。該反応媒体は、更に1つの気相を含有してよい。
懸濁液における水素化に際しての反応器としては、特にジェットループまたはプロペラループのようなループ型装置、撹拌槽(撹拌槽カスケードとして構成されていてもよい)、気泡塔またはエアリフト型反応器が使用される。
好ましくは、ステップb)、c1)および/またはc2)の少なくとも1つのステップにおける連続的水素化は、少なくとも2つの直列に(一列に)接続された固定床反応器において行われる。該反応器は、好ましくは並流で運転される。供給流の供給は、上方からでも、下方からでも行うことができる。
望ましくは、n個の反応器からなる水素化装置の場合には、該反応器の少なくとも2個(すなわち該反応器の2個からn個まで)は、互いに異なる温度を有してよい。特定の一実施形態においては、各々の後接続された反応器は、前方の反応器よりも高い温度で運転される。更に、どの反応器も、異なる温度を有する2つまたはそれより多くの反応帯域を有してよい。このように、例えばできる限り完全な転化率を水素化に際して達成するために、例えば2番目の反応帯域において、1番目の反応帯域とは異なる温度を、好ましくはそれより高い温度に調整してよく、または後続の各々の反応帯域において、先行する反応帯域中よりも高い温度に調整してよい。
望ましくは、n個の反応器からなる水素化装置の場合には、該反応器の少なくとも2個(すなわち該反応器の2個からn個まで)は、互いに異なる圧力を有してよい。特定の一実施形態においては、各々の後接続された反応器は、前方の反応器よりも高い圧力で運転される。
水素化に必要とされる水素の供給は、1番目の反応器において、場合により追加で少なくとも1個の他の反応器において行うことができる。好ましくは、水素の供給は、1番目の反応器でのみ行われる。反応器に供給される水素量は、水素化反応器中で消費される水素量と、場合により排ガスと一緒に排出される水素量とから得られる。
その都度の反応器で反応される水素化されるべき化合物の割合の調整は、例えば反応器容量および/または反応器中での滞留時間を介して行うことができる。
発熱的水素化に際して生ずる反応熱の排出のために、前記反応器の1つ、または前記反応器の複数に、少なくとも1つの冷却装置を設けてよい。特定の一実施形態においては、少なくとも前記1番目の反応器には冷却装置が設けられている。反応熱の排出は、外部循環流の冷却によって、または内部冷却によって前記反応器の少なくとも1つにおいて行ってよい。内部冷却のためには、そのために通例の装置、一般的に中空体モジュール、例えばフィルド管、らせん管、熱交換板等を使用することができる。その一方で、前記反応は、冷却された管束型反応器中で行うこともできる。
好ましくは、前記水素化は、n個の直列に接続された水素化反応器中で行われ、その際、nは、少なくとも2の整数を表し、かつ少なくとも1個の反応器は、反応帯域から外部循環に導かれる流れを有する(外部循環流、液体循環、ループ方式)。その場合に、好ましくは、nは2または3を表す。
好ましくは、前記水素化は、n個の直列に接続された水素化反応器中で行われ、その際、nは、好ましくは2または3を表し、かつ前記1番目から(n−1)番目の反応器は、反応帯域から外部循環に導かれる流れを有する。
好ましくは、前記水素化は、n個の直列に接続された水素化反応器中で行われ、その際、nは、好ましくは2または3を表し、かつ前記反応はn番目の反応器中で(水素化されるべき反応混合物が流過する最後の反応器中で)断熱的に実施される。
好ましくは、前記水素化は、n個の直列接続された水素化反応器中で行われ、その際、nは、好ましくは2または3を表し、かつn番目の反応器は直行通過で運転される。
反応器が「直行通過で」運転される場合に、こことそれ以降には、反応器が反応生成物の返送を伴わずにループ方式の意味において運転されることを表すべきである。その場合に、直行通過での運転方式は、該反応器中で、逆混合する内部構造物および/または撹拌装置を基本的に排除するものではない。
1番目の反応器に後接続された反応器(すなわち2番目からn番目までの反応器)の1つにおいて水素化された反応混合物が、反応器中の所望の温度を保持するには反応時に生ずる発熱性が不十分であるほど僅かな低い割合でしか水素化可能なムコン酸を有さない場合に、反応器(または2番目の反応器の個々の反応帯域)の加熱も必要となることがある。この加熱は、上記の反応熱の排出と同様にして、外部循環流の加熱によって、または内部加熱によって行うことができる。適切な一実施形態においては、前記反応器の温度調節のためには、先行する反応器の少なくとも1つからの反応熱を使用することができる。
更に、該反応混合物から取り出された反応熱は、反応器の供給流の加熱のために使用することができる。そのために、例えば水素化されるべき化合物の供給流は、1番目の反応器において、この反応器の外部循環流と少なくとも部分的に混合してよく、次いで精製された流れを前記1番目の反応器中に導入してよい。更に、mが2個からn個までの反応器の場合に、(m−1)番目の反応器からの供給流はm番目の反応器において、m番目の反応器の循環流と混合してよく、次いで精製された流れをm番目の反応器中に導入してよい。更に、水素化されるべき化合物の供給流および/または別の供給流は、取り出された水素化熱で運転される熱交換器によって加熱することができる。
本方法の特定の一実施形態においては、n個の一列に接続された反応器からなる反応器カスケードが使用され、その際、第n個の(n番目の)反応器中での反応は断熱的に実施される。この概念は、本発明の範囲においては、技術的意味で理解されるものであり、物理化学的意味で理解されるものではない。こうして反応混合物は、2番目の反応器中を流れるときに発熱的水素化反応に基づいて一般に温度上昇を受ける。断熱的な反応操作とは、水素化において放出される熱量が反応器中の反応混合物により吸収され、冷却装置による冷却が適用されない方式を表す。従って、該反応熱は、2番目の反応器からの反応混合物により奪われ、残分は除いて、自然な熱伝導と放熱によって該反応器から周囲へと放出される。好ましくは、n番目の反応器は直行通過で運転される。
好ましい一実施形態においては、水素化のために、2段階の反応器カスケードが使用され、その際、1番目の水素化反応器は、反応帯域から外部循環に導かれる流れを有する。本方法の特定の一実施形態においては、2個の一列に接続された反応器からなる反応器カスケードが使用され、その際、2番目の反応器中での反応は断熱的に実施される。
更なる好ましい一実施形態においては、水素化のために、3段階の反応器カスケードが使用され、その際、1番目と2番目の水素化反応器は、反応帯域から外部循環に導かれる流れを有する。本方法の特定の一実施形態においては、3個の一列に接続された反応器からなる反応器カスケードが使用され、その際、3番目の反応器中での反応は断熱的に実施される。
一実施形態においては、使用される反応器の少なくとも1つにおいて、追加の混和を行ってよい。水素化を反応混合物の長い滞留時間で行う場合に、追加の混和が特に好ましい。その混和のために、例えば反応器に導入される流れは、それを適切な混合装置、例えばノズルを通じてその都度の反応器中に導入することで投入される。その混和のために、その都度の反応器から外部循環に導かれる流れも使用することができる。
水素化を完全なものにするために、1番目から(n−1)番目までの反応器から産出物を一つずつ取り出す。該産出物は、まだ水素化可能な成分を含有し、それをそれぞれの後接続された水素化反応器に供給する。特定の一実施形態においては、前記産出物は、第一の部分流と第二の部分流とに分けられ、その際、前記第一の部分流は循環流として、それが取り出された反応器へと再び供給され、前記第二の部分流は、後続の反応器へと供給される。前記産出物は、水素の溶解された含分または気体状の含分を含有しうる。特定の一実施形態においては、1番目から(n−1)番目の反応器からの産出物は相分離容器に供給され、液相と気相へと分離され、該液相は第一の部分流と第二の部分流とに分離され、前記気相は少なくとも部分的に後続の反応器に個別に供給される。別の実施形態においては、1番目から(n−1)番目の反応器からの産出物は相分離容器に供給され、水素が低減された第一の液状の部分流と、水素が富化された第二の部分流とに分離される。該第一の部分流は次いで循環流として、それが取り出された反応器へと供給され、前記第二の部分流は、後続の反応器へと供給される。更なる別の実施形態においては、2番目からn番目までの反応器への水素の投入は、前接続された反応器から取り出された水素含有供給物を介して行われず、新たな水素をもって別個の供給路を介して行われる。
前記変法は、特に好ましくは、反応温度の制御のために適しており、そして反応媒体と、境界をなす装置壁と、周囲との間の熱の移動の制御のために適している。熱収支の制御のための更なる手法は、水素化されるべき化合物の供給の入口温度の調節にある。そのように、供給入口のより低い温度は、一般的に水素化熱の排出の向上をもたらす。触媒活性が低下したときに、入口温度は、より高い反応速度を達成するために、こうして低下する触媒活性を補償するためにより高く選択することができる。こうして好ましくは、使用される水素化触媒の寿命は一般的に延ばすことができる。
水素化ステップb)
本発明による方法のステップb)において、ステップa)で準備されたムコン酸出発材料を、少なくとも1種の水素化触媒Hb)の存在下で、少なくとも部分的に水素と反応させることで、アジピン酸が得られる。
好ましくは、前記水素化触媒Hb)は、ラネーコバルト、ラネーニッケルおよびラネー銅から選択される。
好ましくは、ステップb)における水素化は、50℃から160℃までの範囲の、特に好ましくは60℃から150℃までの範囲の、殊に好ましくは70℃から140℃までの範囲の温度で行われる。
ステップb)は、例えば少なくとも1個のループ型反応器を使用して実施することができる。特定の一実施形態においては、ステップb)における反応のために、少なくとも1個のループ型反応器と、少なくとも1個の後続の管形反応器とからなる組み合わせが使用される。しかしまた、1個のループ型反応器で済ませることも可能である。この実施形態によれば、該ループ型反応器において2つの温度帯域が設けられている場合に有利である。この実施形態の場合にも、直行通過で運転される管形反応器が接続されていてよい。ステップb)における水素化は、好ましくはアップフロー方式またはダウンフロー方式で行われる。
水素化ステップc1)
ムコン酸、ムコン酸モノエステルおよびラクトンの水素化
第一の変法においては、ステップc1)における水素化のためには、ムコン酸、ムコン酸モノエステル、ムコン酸のラクトンおよびそれらの混合物から選択されるムコン酸出発材料が使用される。
この変法によれば、ステップc1)における水素化のためには、好ましくは、還元された触媒の全質量に対して少なくとも50質量%のコバルト、ルテニウムまたはレニウムを含有する水素化触媒が使用される。
水素化のために少なくとも50質量%のコバルトを含有する触媒が使用される場合に、この触媒は、更に、特にリン酸、および/または更なる遷移金属、好ましくは銅、マンガンおよび/またはモリブデンを含有してよい。
適切な触媒前駆体の製造は、DE2321101から公知である。この触媒前駆体は、未還元の焼結状態で、40質量%から60質量%までのコバルト(Coとして計算)、13質量%から17質量%までの銅(Cuとして計算)、3質量%から8質量%までのマンガン(Mnとして計算)、0.1質量%から5質量%までのリン酸塩(H3PO4として計算)および0.5質量%から5質量%までのモリブデン(MoO3として計算)を含有する。EP636409B1は、55質量%から98質量%までがコバルトからなり、0.2質量%から15質量%までがリンからなり、0.2質量%から15質量%までがマンガンからなり、0.2質量%から15質量%までがアルカリ金属(酸化物として計算)からなる更なる適切なコバルト触媒前駆体の製造を記載している。そのような触媒前駆体は、水素による処理、または水素と不活性ガス、例えば窒素とからなる混合物による処理によって還元することで、活性の金属コバルト含有触媒を得ることができる。この触媒は、かなり大部分が金属からなり、かつ触媒担体を含まない中実触媒(非担持触媒;Vollkatakt)である。
ムコン酸ジエステルおよびムコン酸ポリエステルの水素化
第一の変法においては、ステップc1)における水素化のためには、ムコン酸ジエステル、ポリ(ムコン酸エステル)およびそれらの混合物から選択されるムコン酸出発材料が使用される。
この変法によれば、ステップc1)における水素化のためには、好ましくは、還元された触媒の全質量に対して少なくとも50質量%の銅を含有する水素化触媒が使用される。そのような触媒は、好ましくはムコン酸エステルの水素化のために使用される。
触媒としては、原則的に、全ての、カルボニル基の水素化のために適した均一系触媒および不均一系触媒、例えば金属、金属酸化物、金属化合物またはこれらからの混合物が該当する。均一系触媒のための例は、例えばHouben−Weyl,有機化学の手法(Methoden der Organischen Chemie),第IV/1c巻,Georg Thieme出版 シュトゥットガルト,1980,第45頁〜第67頁に記載され、かつ不均一系触媒のための例は、例えばHouben−Weyl,有機化学の手法(Methoden der Organischen Chemie),第IV/1c巻,第16頁〜第26頁に記載されている。
好ましくは、元素の周期律表の第I亜族および第VI亜族ないし第VIII亜族からの元素の1種または複数種、好ましくは銅、クロム、モリブデン、マンガン、レニウム、ルテニウム、コバルト、ニッケルまたはパラジウム、特に好ましくは銅、コバルトまたはレニウムを含有する触媒が使用される。
ムコン酸ジエステル、ムコン酸オリゴエステルおよびムコン酸ポリエステルの水素化の場合にも、既に上げたコバルト、ルテニウムまたはレニウムを含有する触媒を使用することができる。しかし、これらの触媒の代わりに、少なくとも50質量%の銅(還元された触媒の全質量に対して)を含有する触媒を使用することが好ましい。
前記触媒は、活性成分だけからなるか、またはその活性成分が担体上に施与されていてよい。担体材料としては、特にCr23、Al23、SiO2、ZrO2、ZnO、BaOおよびMgOまたはそれらからなる混合物が適している。
EP0552463A1に記載されるような触媒が特に好ましい。それは、酸化物形で組成:
CuaAlbZrcMndx
[式中、a>0、b>0、c≧0、d>0、a>b/2、b>a/4、a>cおよびa>dが当てはまり、xは、1単位式あたりの電子的中性を保つために必要とされる酸素イオンの数を指す]を有する触媒である。これらの触媒の製造は、例えばEP552463A1の記載によれば、難溶性化合物の沈殿によって、相応の金属イオンをその塩形で含有する溶液から行うことができる。適切な塩は、例えばハロゲン化物塩、硫酸塩および硝酸塩である。沈殿剤としては、熱処理によって酸化物に変換できるそのような不溶性の中間物質の形成をもたらすあらゆる試剤が適している。特に適切な中間物質は、水酸化物および炭酸塩または炭酸水素塩であるので、特に好ましい沈殿剤としては、アルカリ金属炭酸塩または炭酸アンモニウムが使用される。前記中間物質の熱処理は、500℃から1000℃までの範囲の温度で行われる。そのような触媒のBET表面積は、10m2/gから150m2/gの間である。
更に、触媒として適しているのは、50m2/gから120m2/gまでのBET表面積を有し、スピネル構造を有する結晶を全体的にまたは部分的に含むとともに、銅を酸化銅の形態で含有する触媒である。
また、WO2004/085356A1は、酸化銅と、酸化アルミニウムと、ランタン、タングステン、モリブデン、チタンまたはジルコニウムの酸化物の少なくとも1つと、更に粉末状の金属の銅、銅片、粉末状セメント、黒鉛またはそれらの混合物を含有する、本発明による方法に適した銅触媒を記載している。これらの触媒は、上述の全てのエステルの水素化のために特に適している。
ステップc1)における水素化は、断続的にまたは連続的に実施することができ、その際、連続的な水素化が好ましい。ステップc1)における水素化は、気相中または液相中で実施することができる。
特定の一実施形態においては、ステップc1)における水素化のために、少なくとも2つの反応器からなる水素化反応器、または少なくとも2つの反応帯域を有する少なくとも1個の反応器が使用される。その際、その水素化は、50℃から160℃までの温度範囲で行われ、引き続き160℃から240℃までの温度範囲で行われる。
連続方式の場合の触媒負荷量は、水素化触媒1kgおよび1時間当たり、好ましくは0.1kg〜2kgの、特に好ましくは0.5kg〜1kgの水素化されるべき出発物質である。
水素の、ムコン酸出発材料に対するモル比は、好ましくは50:1〜10:1であり、特に好ましくは30:1〜20:1である。その場合に、ムコン酸出発材料は、ムコン酸、ムコン酸のエステル、ムコン酸のラクトンおよびそれらの混合物から選択される。
ステップc1)における水素化のために、上述の化合物の少なくとも2つから選択されるムコン酸出発材料が使用される場合に、使用される水素量は、水素化されるべき化合物の割合に依存して、上述の算定規則に従って選択される。
1番目の反応器における、形成されたアジピン酸またはアジピン酸エステルに対する転化率は、好ましくは少なくとも70%であり、特に好ましくは少なくとも80%である。
その水素化に際しての、水素化可能な出発材料に値する全転化率は、好ましくは少なくとも97%であり、特に好ましくは少なくとも98%であり、特に少なくとも99%である。
その水素化に際しての、形成される1,6−ヘキサンジオールに対する選択性は、好ましくは少なくとも97%であり、特に好ましくは少なくとも98%であり、特に少なくとも99%である。
水素化ステップc2)
ステップc2)において、ステップb)で得られるアジピン酸を、少なくとも1種の水素化触媒Hc2)の存在下で部分的に水素と反応させることで、1,6−ヘキサンジオールが得られる。
好ましくは、ステップc2)で使用される水素化触媒Hc2)は、還元された触媒の全質量に対して、少なくとも50質量%の、レニウム、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケルおよび銅から選択される元素を含有する。
アジピン酸、アジピン酸モノエステルおよびアジピン酸ジエステルの水素化のために、該触媒Hc2)が、レニウム、ルテニウムおよびコバルトからなる群から選択される少なくとも50質量%の元素を含有することが特に好ましい。アジピン酸オリゴエステルまたはアジピン酸ポリエステルの水素化のために、触媒c2)が少なくとも50質量%の銅を含有することが特に好ましい。
ステップc2)における水素化は、好ましくは160℃から240℃までの範囲にある温度で、特に好ましくは170℃から230℃までの範囲にある温度で、殊に好ましくは170℃から220℃までの範囲にある温度で行われる。
ステップc2)は、例えば少なくとも1個のループ型反応器を使用して実施することができる。特定の一実施形態においては、ステップc2)における反応のために、少なくとも1個のループ型反応器と、少なくとも1個の後続の管形反応器とからなる組み合わせが使用される。しかしまた、1個のループ型反応器で済ませることも可能である。この実施形態によれば、該ループ型反応器において2つの温度帯域が設けられている場合に有利である。この実施形態の場合にも、直行通過で運転される管形反応器が接続されていてよい。ステップc2)における水素化は、好ましくはアップフロー方式またはダウンフロー方式で行われる。
ステップc1)またはc2)からの1,6−ヘキサンジオールの後処理
本発明による方法の好ましい一実施形態においては、ステップc1)またはc2)における水素化からの生成物を蒸留による分離に供することで、1,6−ヘキサンジオールが富化された分画が得られ、その1,6−ヘキサンジオールが富化された分画がステップd)におけるアミノ化のために使用される。
ステップc1)による水素化の変法において、水素化のためにムコン酸は溶媒としての水中で使用される。ステップc1)における溶媒としての水中での水素化に際して得られた反応生成物は、1,6−ヘキサンジオール水溶液である。該水素化生成物の冷却および放圧の後に、水を好ましくは蒸留により除去し、そして1,6−ヘキサンジオールを高い純度(>97%)で得ることができる。
ムコン酸の水素化が、ステップc1)による水素化の変法において、例えば溶媒としてのメタノール中で実施される場合に、そのムコン酸の一部は、その場(インサイチュー)でムコン酸モノメチルエステルおよびムコン酸ジメチルエステルに変換される。該水素化の生成物は、メタノールおよび水からなる混合物中の1,6−ヘキサンジオールの溶液である。蒸留によって、メタノールおよび水は1,6−ヘキサンジオールから分離される。メタノールは好ましくは水から分離され、水素化へと返送される。水は排出される。
n−ブタノールまたはi−ブタノールをムコン酸の水素化に際しての溶媒として使用する場合に、水素化の生成物の冷却および放圧の後に、液状の二相混合物が得られる。水相と有機相とは相分離によって分離される。その有機相は蒸留される。塔頂生成物として、ブタノールが分離され、好ましくはムコン酸の水素化へと返送される。1,6−ヘキサンジオールは、必要に応じて蒸留により更に精製することができる。
ムコン酸ジエステルが水素化のために使用される場合に、1,6−ヘキサンジオールの十分に無水の溶液が得られ、該溶液を蒸留により後処理することで、1,6−ヘキサンジオールを得ることができる。得られたアルコールは、好ましくはエステル化段階へと返送される。
ジオール成分として1,6−ヘキサンジオールを含むムコン酸オリゴエステルおよびポリエステルの水素化に際して、かなり大部分が1,6−ヘキサンジオールからなる水素化生成物が生ずる。
ステップd)
本発明による方法のステップd)においては、ステップc1)またはc2)において得られた1,6−ヘキサンジオールをアミノ化触媒の存在下でアミノ化することで、ヘキサメチレンジアミンが得られる。
1,6−ヘキサンジオールは、ステップd)において、好ましくはアミノ化触媒の存在下でアンモニアと反応されて、ヘキサメチレンジアミンが得られる。
本発明によるアミノ化は、水素を供給しなくても実施できるが、好ましくは水素を供給して実施することができる。
触媒としては、本発明の一実施形態においては、好ましくは主としてコバルト、銀、ニッケル、銅もしくはルテニウムまたはこれらの金属の混合物が使用される。その場合に、「主として」とは、これらの金属の一つが、触媒中に50質量%超含まれている(担体を含まずに計算)ことを表すべきである。該触媒は、中実触媒(非担持触媒)として、つまり触媒担体なしで、または担体触媒として使用することができる。担体としては、好ましくはSiO2、Al23、TiO2、ZrO2、活性炭、ケイ酸塩および/またはゼオライトが使用される。上述の触媒は、好ましくは固定床触媒として使用される。コバルト、ニッケルおよび/または銅を、ラネー型の懸濁液触媒の形で使用することも可能である。
本発明の一実施形態においては、1,6−ヘキサンジオールのアミノ化は、均質相中で行われ、前記触媒は、周期律表(IUPAC)の第8族、第9族および第10族から選択される少なくとも1つの元素と少なくとも1つのドナー配位子とを含む錯体触媒である。そのような触媒は、例えばWO2012/119929A1から公知である。
該アミノ化は、好ましくは100℃から250℃までの温度で、特に好ましくは120℃から230℃までの温度で、殊に好ましくは100℃から210℃までの温度で行われる。
全圧は、好ましくは5MPaから30MPaまでの範囲であり、特に好ましくは7MPaから27MPaまでの範囲であり、殊に好ましくは10MPaから25MPaまでの範囲である。
1,6−ヘキサンジオールの、アンモニアに対するモル比は、好ましくは1〜30、特に好ましくは1〜25、殊に好ましくは1〜20である。
前記アミノ化は、溶媒不含で行うことができる。しかし好ましくは、アミノ化は、少なくとも1種の溶媒の存在下で実施される。溶媒としては、水、エーテルまたはこれらの溶媒の混合物が好ましく、その際、エーテルは、特に好ましくは、ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジブチルエーテルおよびメチル−t−ブチルエーテルから選択される。
本発明による方法の好ましい一実施形態においては、ムコン酸の水素化に際して生ずる1,6−ヘキサンジオール水溶液は、後処理せずにアミノ化ステップで使用される。
ステップc1)またはc2)において得られる水性1,6−ヘキサンジオールの一部を完全にまたは部分的に脱水することが好ましいことがある。部分的な脱水に際して、粗製1,6−ヘキサンジオールの、例えば50%を、好ましくは70%を、特に好ましくは90%を除去することができる。それは、例えば50℃から90℃までの温度での低減された圧力下での水の蒸発によって(例えば回転蒸発器で)、または蒸留によって行うことができる。
特に好ましい一実施形態においては、前記アミノ化は、溶媒としてのヘキサメチレンイミンの存在下で、またはヘキサメチレンイミン/水混合物の存在下で実施される。
溶媒の量は、好ましくは、5質量%〜80質量%の、好ましくは10質量%〜70質量%の、特に好ましくは15質量%〜60質量%の1,6−ヘキサンジオール溶液が生ずるように計量される。
1,6−ヘキサンジオール1モル当たりに、好ましくは10リットルから150リットルまでの、特に好ましくは10リットルから100リットルまでの水素が供給される。
本発明の一実施形態においては、第一の部分ステップd1)において1,6−ヘキサンジオールのアンモニアでのアミノ化を行うことで、50質量%超の1−アミノ−6−ヒドロキシヘキサンを含有する、1−アミノ−6−ヒドロキシヘキサンおよびヘキサメチレンジアミンからなる混合物が得られる。この混合物を部分ステップd2)において、ヘキサメチレンジアミンと一緒に、未反応の1,6−ヘキサンジオールから分離して、部分ステップd3)において、更なるアンモニアと反応させることで、ヘキサメチレンジアミンが得られる。
該アミノ化は、断続的にまたは連続的に、液相中または気相中で実施することができ、その際、連続的な方法操作が好ましい。
まだ1−アミノ−6−ヒドロキシヘキサンを含有する目的生成物のヘキサメチレンジアミンの後処理は、好ましくは蒸留により行われる。1−アミノ−6−ヒドロキシヘキサンおよびヘキサメチレンジアミンは非常に類似した蒸気圧を有するので、純粋なヘキサメチレンジアミンが排出される。1−アミノ−6−ヒドロキシヘキサンおよびヘキサメチレンジアミンからなる混合物は、蒸留段階へと返送される。
特に好ましい更なる実施形態においては、1,6−ヘキサンジオールのアミノ化で形成されるヘキサメチレンイミンは、アミノ化の生成物から蒸留により分離され、アミノ化段階へと返送される。返送されたヘキサメチレンイミンの量が34質量%(1,6−ヘキサンジオールおよびヘキサメチレンイミンからなる質量合計に対して)である場合に、好ましくは更なるヘキサメチレンイミンは形成されない。ヘキサメチレンイミンは、水との共沸混合物として蒸留により分離することができる。
得られたヘキサメチレンジアミンは、更なる精製に供することができる。この精製は、好ましくは少なくとも1つの蒸留ステップを含む。特定の一実施形態においては、得られたヘキサメチレンジアミンは、分別蒸留によって「繊維品質」(すなわち少なくとも99.9%のヘキサメチレンジアミン含量)にまでもたらされる。ヘキサメチレンジアミンと一緒に副生成物として異性体化合物の2−アミノメチルシクロペンチルアミン(AMCPA)および/または1,2−ジアミノシクロヘキサン(DACH)が含まれている場合に、これらは、US6,251,229B1に従って、1ミリバールから300ミリバールまでの圧力で、圧力損失の少ない蒸留塔を使用して分離することができる。
ステップe)
本発明による方法において、0.5×10-12から5×10-12までの範囲の14C/12Cの同位体比を有するポリアミド66を合成することができる。
本発明の一実施形態において、ステップb)で製造されたアジピン酸を、ステップd)で製造されたヘキサメチレンジアミンと重縮合させることで、ポリアミド66が得られる。それは、以下の部分ステップ:
e1)アジピン酸およびヘキサメチレンジアミンを、本質的に1:1のモル比で反応させることで、ヘキサメチレンジアンモニウムアジピン酸塩(AH塩)を得るステップ、および
e2)ヘキサメチレンジアンモニウムアジピン酸塩を最高275℃の温度で反応させることで、ポリアミド66を得るステップ
で行われる。
ポリアミド66の高いモル質量を達成するために、この場合にアジピン酸およびヘキサメチレンジアミンは、できる限り正確にモル比1:1の比率で一緒に添加すべきである。特に、Hans−Georg Elias,巨大分子(Makromolekuele),第4版,第796頁〜第797頁,Huethig出版(1981)から公知の指示に従って作業することができる。
本発明の別の実施形態において、ステップa)で製造されたムコン酸を、ステップd)で製造されたヘキサメチレンジアミンと重縮合させることで、ポリアミド66が得られる(EP117048A2を参照のこと)。それは、以下の部分ステップ:
e1.1)ムコン酸およびヘキサメチレンジアミンを、本質的に1:1のモル比で反応させることで、ヘキサメチレンジアンモニウムムコン酸塩を得るステップ、
e1.2)ヘキサメチレンジアンモニウムムコン酸塩を水素化することで、ヘキサメチレンジアンモニウムアジピン酸塩を得るステップ、および
e2)ヘキサメチレンジアンモニウムアジピン酸塩を反応させることで、ポリアミド66を得るステップ
で行われる。
ポリアミド66の高いモル質量を達成するために、この場合にムコン酸およびヘキサメチレンジアミンは、できる限り正確にモル比1:1の比率で一緒に添加すべきである。
ヘキサメチレンジアンモニウムアジピン酸塩を反応させてポリアミド66を得ることは、特に水の存在下で最高280℃の温度で、特に好ましくは最高275℃の温度で行われる。
本発明を以下の実施例をもとにより詳細に説明するが、それは本発明を制限するものではない。
実施例
実施例1:
ムコン酸の製造
シス,シス−ムコン酸を、K.M.Draths,J.W.Frost,J.Am.Chem.Soc,116(1994),第399頁〜第400頁における指示に従って、大腸菌突然変異体AB2834/pKD136/pKD8.243A/pKD8.292によってD−グルコースから生体触媒的に製造した。
実施例2:
アジピン酸の製造
250mlの撹拌オートクレーブにおいて、24gのシス,シス−ムコン酸および1gのラネーニッケルからなる56gの水中の懸濁液を装填し、3MPaの水素で加圧し、80℃に加熱した。温度が80℃に至った後に、圧力を10MPaへと高め、圧力が一定に留まるような量の水素を後から計量供給した。12時間の反応時間後に、60℃の温度へと冷却し、常圧へと放圧し、そして溶液から触媒を濾別した。次にゆっくりと20℃に冷却した。その際にアジピン酸は白色の固体として晶出した。その溶液中で、アジピン酸の他になおもラクトン(V)を検出することができた。アジピン酸の収率は95%であり、ラクトン(V)の収率は5%であった。アジピン酸およびラクトン(V)を含有する母液は水素化段階へと返送される。
実施例3:
1,6−ヘキサンジオールの製造
33%のアジピン酸と67%の水とからなる混合物15g/hを、70℃の供給路温度で、20mlの触媒(66%のCoO、20%のCuO、7.3%のMn34、3.6%のMoO3、0.1%のNa2O、3%のH3PO4、DE2321101Aに従って製造;4mmのストランド形;水素により300℃までの温度で活性化)が中に存在する30mlの管形反応器中で、ダウンフロー方式で230℃の温度および25MPaの圧力で水素化した。反応器産出物から分離器において過剰の水素を分離した(排ガス量2l/時間)。該産出物は、一方でポンプを通じて循環流として再び反応器頂部へと至り、そこで供給流と一緒になり(供給物:循環物=1:10)、他方で産出物容器中に至った。それらの産出物をガスクロマトグラフィーにより分析した(質量%、内部標準を用いた方法)。1,6−ヘキサンジオールの収率は94%であり、アジピン酸の転化率は98.5%であった。更なる生成物として、3%の6−ヒドロキシカプロン酸、1%の6−ヒドロキシカプロン酸−1,6−ヘキサンジオールエステルおよび1%のヘキサノールが存在していた。
ヘキサメチレンジアミンの製造:
ムコン酸を基礎とする1,6−ヘキサンジオールからのヘキサメチレンジアミンの製造は、US3,215,742の実施例1および2と同様にして行った。
実施例4:
1,6−ヘキサンジオールのアミノ化
本出願の実施例3により製造された粗製1,6−ヘキサンジオールの含水率を、70℃および水流式真空での蒸発分離によって5質量%に低下させた。
193gの粗製1,6−ヘキサンジオールを、実施例1に記載した量のジオキサン、ラネーニッケルおよび液状アンモニアと一緒にオートクレーブ中で200℃および200バールで5時間にわたり撹拌した。次いでオートクレーブを冷却し、放圧した。反応生成物のガスクロマトグラフィー分析の結果から、55%の1,6−ヘキサンジオールが、65%のヘキサメチレンジアミンと35%のヘキサメチレンイミンからなる混合物へと変わったことが判明した。
実施例5:
粗製1,6−ヘキサンジオールおよびヘキサメチレンイミンからなる混合物のアミノ化
117gの部分脱水された粗製1,6−ヘキサンジオールおよび54gのヘキサメチレンイミンを、50gのジオキサン中に溶解させた。この溶液をオートクレーブ中で540gの液状アンモニアおよび72gのラネーニッケルと一緒に6時間にわたり180℃〜183℃で撹拌した。オートクレーブを冷却し、放圧した。ガスクロマトグラフィー分析の結果から、1,6−ヘキサンジオール転化率が35%であることが判明した。ヘキサメチレンジアミン収率は、反応した1,6−ヘキサンジオールに対して98%であった。

Claims (27)

  1. ポリアミド66の製造方法であって、
    a)ムコン酸、ムコン酸のエステル、ムコン酸のラクトンおよびそれらの混合物から選択されるムコン酸出発材料を準備するステップ、
    b)ステップa)で準備されたムコン酸出発材料を、少なくとも1種の水素化触媒Hb)の存在下で、少なくとも部分的に水素と反応させてアジピン酸を得るステップ、
    c1)ステップa)で準備されたムコン酸出発材料を、少なくとも1種の水素化触媒Hc1)の存在下で、部分的に水素と反応させて1,6−ヘキサンジオールを得るステップ、または
    c2)ステップb)で得られたアジピン酸を、少なくとも1種の水素化触媒Hc2)の存在下で、部分的に水素と反応させて1,6−ヘキサンジオールを得るステップ、
    d)ステップc1)もしくはc2)で得られた1,6−ヘキサンジオールを、アミノ化触媒の存在下でアミノ化することでヘキサメチレンジアミンを得るステップ、
    e)ステップb)で得られたアジピン酸の少なくとも一部と、ステップd)で得られたヘキサメチレンジアミンを重縮合させてポリアミド66を得るステップ
    が行われる、前記製造方法。
  2. 請求項1に記載の方法であって、ステップa)において、ムコン酸出発材料を準備し、その際、該ムコン酸は再生可能な起源に由来し、ここで該ムコン酸の製造は、好ましくは少なくとも1種の再生可能な原材料から生体触媒的な合成によって行われる、前記方法。
  3. 請求項1または2に記載の方法であって、ステップa)で使用されるムコン酸は、0.5×10-12から5×10-12までの範囲の14C/12Cの同位体比を有する、前記方法。
  4. 請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法であって、ステップb)および/またはステップc1)における水素化のために、ムコン酸、ムコン酸モノエステル、ムコン酸ジエステル、ポリ(ムコン酸エステル)およびそれらの混合物から選択されるムコン酸出発材料が使用される、前記方法。
  5. 請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法であって、ステップc1)における水素化のために、ラクトン(III)、(IV)および(V)ならびにそれらの混合物:
    Figure 2017502128
    から選択されるムコン酸出発材料が使用される、前記方法。
  6. 請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法であって、前記水素化触媒Hb)は、Co、Ni、Cu、Re、Fe、Ru、RhおよびIrの群から選択される少なくとも1種の遷移金属を有する、前記方法。
  7. 請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法であって、前記水素化触媒Hb)は、ラネーコバルト、ラネーニッケルおよびラネー銅から選択される、前記方法。
  8. 請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法であって、ステップb)における水素化は、50℃から160℃までの範囲にある温度で行われる、前記方法。
  9. 請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法であって、ステップb)および/またはc1)および/またはc2)の少なくとも1つのステップにおける水素化は、液相中で溶媒としての水の存在下で行われる、前記方法。
  10. 請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法であって、ステップb)および/またはc1)および/またはc2)の少なくとも1つのステップにおける水素化は、液相中で唯一の溶媒としての水の存在下で行われる、前記方法。
  11. 請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法であって、前記触媒は、ステップb)および/またはc1)および/またはc2)の少なくとも1つのステップにおける水素化条件下で、不均一系触媒として存在する、前記方法。
  12. 請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法であって、ステップb)、c1)およびc2)の少なくとも1つのステップにおける水素化は液相中で行われ、かつ前記触媒は懸濁液の形で存在する、前記方法。
  13. 請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法であって、ステップc1)における水素化は、液相中で、水、脂肪族のC1〜C5−アルコール、脂肪族のC2〜C6−ジオール、エーテルおよびそれらの混合物から選択される溶媒の存在下で行われる、前記方法。
  14. 請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法であって、ステップc1)における水素化は、液相中で唯一の溶媒としての水の存在下で行われる、前記方法。
  15. 請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法であって、ステップc1)における水素化のために、一般式(II):
    1OOC−CH=CH−CH=CH−COOR2 (II)
    [式中、基R1およびR2は、互いに独立して、直鎖状または分枝鎖状のC1〜C5−アルキルを表す]の化合物から選択されるムコン酸ジエステルが使用され、その際、ステップc1)における水素化は気相中で行われる、前記方法。
  16. 請求項1から15までのいずれか1項に記載の方法であって、ステップc1)における水素化触媒Hc1)として、不均一系の遷移金属触媒が使用される、前記方法。
  17. 請求項1から16までのいずれか1項に記載の方法であって、
    − ステップc1)において、ムコン酸、ムコン酸モノエステル、ムコン酸のラクトンおよびそれらの混合物から選択されるムコン酸出発材料が使用され、かつ不均一系水素化触媒Hc1)であって還元された触媒の全質量に対して少なくとも50質量%のコバルト、ルテニウムまたはレニウムを含有する触媒が使用されるか、または
    − ステップc1)において、ムコン酸ジエステル、ポリ(ムコン酸エステル)およびそれらの混合物から選択されるムコン酸出発材料が使用され、かつ不均一系水素化触媒Hc1)であって還元された触媒の全質量に対して少なくとも50質量%の銅を含有する触媒が使用される
    前記方法。
  18. 請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法であって、ステップc2)で使用される水素化触媒Hc2)は、還元された触媒の全質量に対して、少なくとも50質量%の、レニウム、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケルおよび銅から選択される元素を含有する、前記方法。
  19. 請求項1から18までのいずれか1項に記載の方法であって、ステップc2)における水素化は、160℃から240℃までの範囲にある温度で行われる、前記方法。
  20. 請求項1から19までのいずれか1項に記載の方法であって、ステップc2)の完了後の水素化触媒Hc2)の単離に際して得られるアジピン酸を含有する水が、ステップb)において溶媒として使用される、前記方法。
  21. 請求項1から20までのいずれか1項に記載の方法であって、ステップb)における水素化および/またはステップc1)における水素化および/またはステップc2)における水素化は、n個の直列に接続された水素化反応器中で実施され、その際、nは、少なくとも2の整数を表し、かつ1番目から(n−1)番目までの反応器は、反応帯域から外部循環に導かれる流れを有するとともに、n番目の反応器における水素化は、断熱的に実施される、前記方法。
  22. 請求項1から21までのいずれか1項に記載の方法であって、ステップc1)またはステップc2)で得られた1,6−ヘキサンジオールを、ステップd)においてアミノ化触媒の存在下でアンモニアと反応させて、ヘキサメチレンジアミンを得る、前記方法。
  23. 請求項1から22までのいずれか1項に記載の方法であって、ステップd)におけるアミノ化は、水素の供給を行わずに、または水素の供給を行って実施される、前記方法。
  24. 請求項1から23までのいずれか1項に記載の方法であって、ステップd)におけるアミノ化の反応生成物を分離に供することで、ヘキサメチレンイミンが富化された分画と、ヘキサメチレンジアミンが低減された分画が得られ、かつ前記ヘキサメチレンイミンが富化された分画は、ステップd)におけるアミノ化へと返送される、前記方法。
  25. 請求項1から24までのいずれか1項に記載の方法であって、ステップd)においてヘキサメチレンイミンが唯一の溶媒として使用される、前記方法。
  26. ポリアミド66であって、0.5×10-12から5×10-12までの範囲の14C/12Cの同位体比を有することを特徴とする、前記ポリアミド66。
  27. ポリアミド66であって、少なくとも1種の再生可能な原材料から生体触媒的に合成されたムコン酸から出発して製造できることを特徴とする、前記ポリアミド66。
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