JP2017229239A - 回転電機およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
・一旦製造したロータ(永久磁石を固定したロータ)にドリル穴を形成する回転バランスの修正工程が必要になる。
・ドリル穴を形成した後に、削りカスを取り除くための洗浄を行う必要がある。
・洗浄後に乾燥させる必要がある。
・洗浄によってロータに錆が発生する懸念がある。
・ドリル穴を開けるためのエンドプレートなどの部品を確保する必要がある。
・一旦製造したロータ(永久磁石を固定したロータ)にパテを付加する回転バランスの修正工程が必要になる。
・パテを硬化させるための加熱工程が必要になる。
・ロータの内径、外径もしくは軸方向端面にパテ(樹脂)を付加することでロータ寸法が増大する。
・パテ(樹脂)を用いることで材料数が増えるため、コストアップの要因になる。
本発明によると「ロータコア(3)内に複数の永久磁石(4)を埋設したロータ(1)」の回転バランスをきめ細かく修正できる。
図1〜図7を参照して実施例1を説明する。
この実施例の回転電機は、車両に搭載されるモータジェネレータであり、車両走行用の動力やエンジン始動のための動力を発生する電動モータとして作動するとともに、回転トルクを受けて発生を行う発電機としても作動する。
この回転電機は、通常の電動モータや発電機と同様、ステータ(固定子)と、ロータ(回転子)1とを備える。
ロータコア3は、表面に絶縁膜が形成されたリング円板状の電磁鋼板(軟鉄板、 珪素鋼板、アモルファス金属板等)を多数積層して設けられる。
各磁石穴5は、ロータコア3において軸方向に貫通する貫通穴であり、その内部に永久磁石4が挿入され、挿入された永久磁石4が樹脂(接着剤)αによってロータコア3に固定される。
そして、ロータ1は、複数の磁石穴5に付与される樹脂量が、「ロータコア3の周方向」と「ロータコア3の軸方向」のそれぞれにおいて異なる分布を持つことにより回転バランスの修正がなされている。
なお、図1は、磁石穴5に付与する樹脂量の具体的な違いの一例を示すものであり、図1(a)、(b)は磁石穴5に付与する樹脂量が少ない場合の一例であり、樹脂付与部は永久磁石の短辺の一部と磁石穴の平行な2辺に接して閉じる曲線の一部の両方を含んで形成されている。一方、樹脂付与部を除いた空き空間は、永久磁石の短辺の一部と磁石穴の平行な2辺に接して閉じる曲線の一部を含んで形成されている。
図1(c)、(d)は磁石穴に付与する樹脂量が多い場合の一例であり、図1(e)は磁石穴に付与する樹脂量が最大の場合である。
ここで、樹脂量とバランス修正量との関係を図4を参照して説明する。1つの磁石穴5に付与する樹脂量を変化させると、図4に示すように、樹脂量の増減に応じて回転バランスの修正量が変化する。このため、この実施例では、複数の磁石穴5に付与するそれぞれの樹脂量の違いによって回転バランスの修正を実施するものである。
先ず、「従来技術1(ドリル修正法)」の製造工程を図5(b)を参照して説明する。 ステップS1:ロータコア3に形成した各磁石穴5のそれぞれに着磁前の永久磁石4を組付ける。
ステップS2:ロータコア3の中心に回転軸2を圧入する。
ステップS3:各磁石穴5に樹脂αを滴下して永久磁石4をロータコア3に接着固定する。
ステップS4:永久磁石4が固定されたロータ1を回転させて、未修正のロータ1の回転バランスを測定する。
ステップS5:この測定結果に基づいて回転のアンバランスを修正するべく、ロータ1にドリル穴を形成する(ドリル穴による修正工程の実施)。
ステップS6:削りカスを取り除くための洗浄を実施する(洗浄工程の実施)。
ステップS7:ロータ1から洗浄液を除去するための乾燥を実施する(乾燥工程の実施)。
ステップS8:ドリル穴によって回転バランスを修正したロータ1を回転させて、回転バランスが規定範囲内に納まっていることを検査する。
ステップS9:永久磁石4の着磁を実施する。
ステップS1:ロータコア3に形成した各磁石穴5のそれぞれに着磁前の永久磁石4を組付ける。
ステップS2:ロータコア3の中心に回転軸2を圧入する。
ステップS3:各磁石穴5に樹脂αを滴下して永久磁石4をロータコア3に接着固定する。
ステップS4:永久磁石4が固定されたロータ1を回転させて、未修正のロータ1の回転バランスを測定する。
ステップS5:この測定結果に基づいて回転のアンバランスを修正するべく、ロータ1にパテを付与する(パテによる修正工程の実施)。
ステップS6:パテを硬化させるための加熱処理を実施する(加熱工程の実施)。
ステップS7:ロータ1を冷却する(冷却工程の実施)。
ステップS8:パテによって回転バランスを修正したロータ1を回転させて、回転バランスが規定範囲内に納まっていることを検査する。
ステップS9:永久磁石4の着磁を実施する。
ステップS1:ロータコア3に形成した各磁石穴5のそれぞれに着磁前の永久磁石4を組付ける。
ステップS2:ロータコア3の中心に回転軸2を圧入する。
ステップS3:永久磁石4が組つけられたロータ1を回転させて、未修正のロータ1の回転バランスを測定する。
ステップS4:各磁石穴5に樹脂αを滴下して永久磁石4をロータコア3に接着固定する。この時、上記ステップS3の測定結果に基づいて回転バランスを修正するべく、複数の磁石穴5のそれぞれに付与する樹脂量を増減させてロータ1の回転バランスを修正する。即ち、永久磁石4の接着工程とバランス修正工程を同時に実施する。もちろん、各磁石穴5のそれぞれに付与する樹脂量(バランス修正用の樹脂の増減量)は、未修正のロータ1の回転バランスの測定結果からフィードフォワードにより求めるものである。
ステップS5:樹脂量の違いによって回転バランスを修正したロータ1を回転させて、回転バランスが規定範囲内に納まっていることを検査する。
ステップS6:永久磁石4の着磁を実施する。
この実施例1のロータ1は、上述したように、「永久磁石4をロータコア3に固定する際に用いる樹脂αの量」を回転方向と軸方向で変化させることで「ロータ1における回転バランスの修正」を行ったものであり、「永久磁石4の接着工程」と「回転バランスの修正工程」を同時に実施したものである。
このため、従来技術よりも少ない工程数で「ロータコア3内に複数の永久磁石4を埋設したロータ1」の回転バランスを修正できる。これにより、ロータ1の生産性を高めることができ、結果的に回転電機のコストを抑えることができる。
ロータコア3に形成される各磁石穴5には、永久磁石4が占める磁石スペースの他に、樹脂量の調整を実施可能な余剰スペースβが端部に設けられる。具体的な一例として、この実施例のロータコア3は、磁石穴5の内径側に磁気バリアを備えるものであり、この磁気バリアを樹脂量の調整を行う余剰スペースβとして共用している。
このように、この実施例のロータコア3は、樹脂量の調整を行うための余剰スペースβを備えることで、樹脂量の増減(周方向の樹脂量の違いによる回転バランスの修正)を実施することができる。
この実施例では、上述したように、「樹脂量によってロータ1の回転バランスを修正する箇所」を、ロータコア3の軸方向の端部において実施する。これにより、必要最小限の樹脂量で軸方向の動的アンバランスを修正することができる。即ち、動的アンバランスを重点的に修正したい場合、樹脂αの使用量を減らして歩留りを抑えることができるため、結果的に回転電機のコストを抑えることができる。
また、ロータ1がスキュー構造を持ち、図6に示すように、ロータコア3と永久磁石4が軸方向で分割されている場合、軸方向の中央に位置する永久磁石4が隣接する分割コアに挟まれる構造を取る。この構造により、永久磁石4が軸方向抜けに係わる機械的な信頼性が高まるが、軸方向の両端に配置される永久磁石4は軸方向へ抜け出る懸念がある。
そこで、この実施例を採用し、軸方向の両端の永久磁石4を固定する樹脂量を多く付与することでロータコア3と永久磁石4の接着面積を大きくすることができ、永久磁石4の抜けに係わる機械的な信頼性を高めることができる、即ち、材料設計の幅を広げることができるとともに、接着力の乏しい安価な樹脂αを選定することが可能になり、結果的にロータ1のコストダウンを図ることができる。
永久磁石4をロータコア3に固定する樹脂αは、金属と直接接触する。即ち、樹脂αは、「永久磁石4の金属表面」と「ロータコア3の金属表面(ロータコア3の素地)」の両方に直接接触する。
このように、樹脂αと金属(永久磁石4およびロータコア3)が直接接触するため、樹脂αによる接着力を強固にできる。このため、回転振動などが加わってもロータコア3から永久磁石4が剥離する不具合を回避することができる。即ち、回転電機の信頼性を高めることができる。
樹脂αによって永久磁石4をロータコア3に接着させる接着工程を、永久磁石4の着磁前に実施する。これにより、「永久磁石4の内面(内径側の面)と磁石穴5の内面(内径側の面)の間」と「永久磁石4の外面(外径側の面)と磁石穴5の外面(外径側の面)の間」の両方に樹脂αを付与することができる。即ち、永久磁石4の内外両面を樹脂αによってロータコア3に接着することができる。
具体的には、「永久磁石4の内面の全面」と「永久磁石4の外面の全面」に樹脂αを付与することができ、樹脂αによる永久磁石4の接着力を高めることができる。
従来技術1(ドリル修正法)では、ドリル穴を開けるための部品を必要とするが、この実施例1はドリル穴を開けるための部品を不要にできる。また、ロータ1にドリル穴を設ける必要がないため、ロータ1の機械的な信頼性を保つことができる。
一方、従来技術2(パテ修正法)では、ロータ1に付与するパテにより材料数が増えるが、この実施例ではバランス修正のために、パテ等の別材料を不要にできる。また、ロータ1の表面(外周面や軸方向端面等)にパテを付加しないため、ロータ寸法がバランス修正用の材料によって増大しない。これにより、回転電機の小型化が実現できる。
上記実施例とは異なり、「永久磁石4の接着工程」と「回転バランスの修正工程」を別々に実施する場合を説明する。
「永久磁石4の接着工程」を実施した後に、樹脂αを付与して「回転バランスの修正工程」を実施すると、永久磁石4の接着に用いる樹脂αと、バランス修正に用いる樹脂αとの接着面に界面が形成される。その結果、界面剥離等が発生し、接着力が弱まってしまう。
これに対し、この実施例では、「永久磁石4の接着工程」と「回転バランスの修正工程」を同時に実施するため、永久磁石4の接着用の樹脂αと、バランス修正用の樹脂αとは、区別のない同じ一体構造であるため、接着用の樹脂αからバランス修正用の樹脂αが剥離する不具合は生じない。このため、ロータ1に機械的な振動が加わっても、樹脂αが剥離する不具合がなく、回転電機の信頼性を高めることができる。
上記実施例とは異なり、「永久磁石4の接着工程」と「回転バランスの修正工程」を別々に実施する場合、永久磁石4の接着用の樹脂αが硬化すると、磁石穴5が塞がってしまう。その結果、回転バランスの修正に必要な樹脂αをロータコア3の内部に流し入れる経路が無くなってしまい、回転バランスの修正ができなくなってしまう。
これに対し、この実施例では、「永久磁石4の接着工程」と「回転バランスの修正工程」を同時に実施するため、磁石穴5から回転バランスの修正を行う樹脂を流し入れることができる。
上記実施例とは異なり、永久磁石4を着磁した後に樹脂αを付与すると、永久磁石4の内面または外面の一方が磁石穴5に磁力でくっつく。すると、その間(磁力による結合箇所)に樹脂αが付与されなくなる。その結果、永久磁石4とロータコア3との接着面積が少なくなってしまい、接着力が弱まってしまう。
これに対し、この実施例では、上述したように、永久磁石4の内外両面を樹脂αによってロータコア3に接着できるため、永久磁石4の接着性を高めることができる。これにより、回転振動などが加わっても永久磁石4が剥離する不具合を回避することができ、回転電機の信頼性を高めることができる。
この場合、ロータ全体のアンバランスを意味する静的アンバランスを最小の樹脂量で修正することができる。即ち、静的アンバランスを重点的に修正したい場合、ロータコア3の両側各々の動的アンバランスを修正して静的アンバランスを抑えるよりも、静的アンバランスの角度において集中的に修正することができる。これにより、バランス修正に用いる樹脂αを歩留りを抑えることができ、回転電機のコストを抑えることができる。
さらに、ロータコア3の熱を効率的に放熱することができる。具体的には、空気との接触面積の大きいロータコア3の軸方向の両端に、樹脂αの熱伝導を用いてロータコア3の中央部に蓄熱された熱を移動させることによりロータコア3の放熱性能を高めることができる。その結果、永久磁石4の耐熱性能を下げることができるため、回転電機のコストを抑えることができる。
なお、図8は、一文字形の磁石穴5に付与する樹脂量の具体的な違いの一例を示すものであり、図8(a)、(b)は磁石穴5に付与する樹脂量が少ない場合の一例であり、図8(c)、(d)は磁石穴に付与する樹脂量が多い場合の一例であり、図8(e)は磁石穴に付与する樹脂量が最大の場合である。
また、図9は、一文字形の磁石穴5に樹脂注入部γ(樹脂量の調整を実施可能な余剰スペースβとして機能する穴)を設けたものであり、図9(a)は磁石穴5に付与する樹脂量が少ない場合の一例であり、図9(b)は磁石穴に付与する樹脂量が多い場合の一例である。
3 ロータコア
4 永久磁石
5 磁石穴
α 樹脂
Claims (4)
- ロータコアの内部に複数の永久磁石を埋設したロータであって、磁石穴が周方向に複数形成され、磁石穴の中央部に永久磁石が挿入され、磁石穴は永久磁石(4)が占める磁石スペースの他に、端部に余剰スペースβが複数形成されており、
1つの余剰スペースβのうち軸方向から見た一部に付与部が設けられ、それぞれの付与部には周方向に異なる分布を持つことで回転バランスを修正する樹脂が付与され、1つの余剰スペースβのうち残り部には軸方向から見て空き空間が形成されることを特徴とするロータ。 - 前記磁石穴は長手方向に延びる2辺とそれら2辺に接して閉じる曲線で形成され、前記永久磁石は長方形形状であって
前記空き空間は、前記永久磁石の短辺の一部と磁石穴の前記接して閉じる曲線の一部を含んで形成される請求項1に記載のロータ。 - 前記樹脂は接着剤であり、前記付与部は前記永久磁石の短辺の残りの一部と前記接して閉じる曲線の一部の両方を含んで形成される請求項2に記載のロータ。
- ロータコアの内部に磁石穴を周方向に複数形成する磁石穴形成工程と、
該磁石穴形成工程で得られた磁石穴の中央部に永久磁石を挿入し永久磁石(4)が占める磁石スペースの他に端部に余剰スペースβを複数形成する余剰スペース形成工程と、
余剰スペース形成工程で得られたロータコアに回転軸を圧入してロータを得る圧入工程と
圧入工程で得られたロータを回転させて回転バランスを測定する測定工程と、
1つの余剰スペースβのうち軸方向から見た一部である付与部に付与する樹脂量を、周方向に異なる分布を持つことで回転バランスを修正するように、前記測定工程で得られた測定結果から求める樹脂量算出工程と、
求められた樹脂量を前記付与部に付与し、1つの余剰スペースβのうち残り部には軸方向から見て空き空間が形成される樹脂付与工程を備えるロータの製造方法。
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