JP6813009B2 - ロータの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ロータコア内に複数の永久磁石を埋設したロータの製造方法に関するものであり、特にロータの回転バランス(回転方向の均整)の修正技術に関する。
ロータの回転バランスを修正する技術として、(i)ロータの一部にドリル穴を形成するドリル修正法(除去加工法)と、(ii)ロータの一部にパテを加えるパテ修正法(ウエイト付加法)とが知られている。
上記(i)の技術(ドリル修正法)は、次の不具合がある。
・一旦製造したロータ(永久磁石を固定したロータ)にドリル穴を形成する回転バランスの修正工程が必要になる。
・ドリル穴を形成した後に、削りカスを取り除くための洗浄を行う必要がある。
・洗浄後に乾燥させる必要がある。
・洗浄によってロータに錆が発生する懸念がある。
・ドリル穴を開けるためのエンドプレートなどの部品を確保する必要がある。
一方、上記(ii)の技術(パテ修正法)は、次の不具合がある。
・一旦製造したロータ(永久磁石を固定したロータ)にパテを付加する回転バランスの修正工程が必要になる。
・パテを硬化させるための加熱工程が必要になる。
・ロータの内径、外径もしくは軸方向端面にパテ(樹脂)を付加することでロータ寸法が増大する。
・パテ(樹脂)を用いることで材料数が増えるため、コストアップの要因になる。
一方、どのような回転バランス修正を行うにあたっても、その後に回転バランスが規定範囲内に納まっているかの検査が必要であるが、複数の永久磁石を埋設したロータゆえの回転バランス検査への影響についてそれを回避する提案はなされていない。
米国特許出願公開第2012/0139378号明細書
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、「ロータコア内に複数の永久磁石を埋設したロータ」の回転バランスを修正できるロータの製造方法の提供にある。
本発明は、ロータコア(3)の内部に複数の永久磁石(4)を埋設したロータ(1)の製造方法において、複数の永久磁石(4)は、ロータコア(3)内の周方向に形成された複数の磁石穴(5)のそれぞれに着磁前の状態で挿入され、樹脂(α)によってロータコア(3)に固定されるものであり、磁石穴(5)内の樹脂を用いて着磁前の永久磁石(4)の外径側の面をロータコア(3)の磁石穴の対向する面に接着固定する接着工程が行われ、接着工程の後に、回転バランスを修正したロータの回転バランスの検査を行うバランス検査工程が行われ、バランス検査工程後に永久磁石を着磁する着磁工程が行われることを特徴とするロータの製造方法である。
本発明によると「ロータコア(3)内に複数の永久磁石を埋設したロータ(1)」において、磁石穴内の樹脂の状態に応じて正しく回転バランス検査が行え、また、回転バランス量の測定値が複数の永久磁石を埋設したロータの磁場の影響を受けない。よって、不具合が生じることなくバランス修正ができる。
樹脂量の付与具合の説明図である。 磁石穴に樹脂を滴下する説明図である。 樹脂量の増減によってバランス修正を実施する箇所の説明図である。 樹脂量とバランス修正量の関係を示す説明図である。 実施例の製造工程と従来技術1、2の製造工程との比較図である。 ロータコアの説明図である。 樹脂による接着力の説明図である。 他の磁石穴の形状の説明図である。 他の磁石穴に樹脂注入部を設けた説明図である。
以下において、図面を参照して[発明を実施するための形態]を説明する。
本発明の具体的な一例(実施例)を、図面を参照して説明する。なお、以下の実施例は一例であって、本発明が実施例に限定されないことはいうまでもない。
[実施例1]
図1〜図7を参照して実施例1を説明する。
この実施例の回転電機は、車両に搭載されるモータジェネレータであり、車両走行用の動力やエンジン始動のための動力を発生する電動モータとして作動するとともに、回転トルクを受けて発生を行う発電機としても作動する。
この回転電機は、通常の電動モータや発電機と同様、ステータ(固定子)と、ロータ(回転子)1とを備える。
ステータは、構成を限定するものではなく、例えば周知な構造を採用するものであり、車両に対して直接または間接的に固定支持されるステータコアと、このステータコアのスロットに巻回配置される複数相(U、V、W相など)のステータコイルとを備えて構成される。
ロータ1は、埋込磁石型(IPM型)であり、ステータの中心において回転自在に支持される回転軸(シャフト)2と、この回転軸2に結合されるロータコア3と、このロータコア3に埋設固定される複数の永久磁石4とを備えて構成される。
ロータコア3は、表面に絶縁膜が形成されたリング円板状の電磁鋼板(軟鉄板、 珪素鋼板、アモルファス金属板等)を多数積層して設けられる。
ロータコア3には、複数の永久磁石4を独立して埋設するための複数の磁石穴(コアスロット)5が周方向に独立して設けられる。
各磁石穴5は、ロータコア3において軸方向に貫通する貫通穴であり、その内部に永久磁石4が挿入され、挿入された永久磁石4が樹脂(接着剤)αによってロータコア3に固定される。
永久磁石4は、ロータコア3の軸方向寸法(ロータコア3における磁石穴5の軸方向寸法)と略同じ長さで、且つ磁石穴5に挿入可能な板形状を呈するものであり、この実施例の永久磁石4は、希土類磁石(例えば、ネオジウム磁石等)を採用する。もちろん、永久磁石4の種類は希土類磁石に限定するものではなく、フェライト磁石、アルニコ磁石など、使用目的、昇温状態、コスト等に応じて適宜選択されるものである。
各永久磁石4は、一例としてロータコア3を軸方向から見てV字形に配置される。V字形の磁石配置構造とは、2つの永久磁石4によってV字形を作るものであり、4極のロータ1を作成する場合は8個の永久磁石4を用いて4つのV字形を形成し、6極のロータ1を作成する場合は12個の永久磁石4を用いて6つのV字形を形成し、8極のロータ1を作成する場合は16個の永久磁石4を用いて8つのV字形を形成するものである。もちろん、永久磁石4の配置構造は、V字形に限定するものではなく、一文字形など種々適用可能なものである。
この実施例の樹脂α(永久磁石4をロータコア3に固定する接着剤)は、非磁性樹脂であり、製造工程時に適度な粘性が得られ、且つ硬化後に強い接着力と高い耐久性を発揮するエポキシ系樹脂を採用する。もちろん、樹脂αの種類は限定するものではなく、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミドなど、使用目的等に応じて適宜選択可能である。もちろん、放熱性を高めたり強度を高める目的でフィラーを含む樹脂αを用いても良い。
複数の永久磁石4は、上述したように、ロータコア3内の周方向に形成した複数の磁石穴5のそれぞれに挿入され、樹脂αによってロータコア3に固定される。
そして、ロータ1は、複数の磁石穴5に付与される樹脂量が、「ロータコア3の周方向」と「ロータコア3の軸方向」のそれぞれにおいて異なる分布を持つことにより回転バランスの修正がなされている。
なお、図1は、磁石穴5に付与する樹脂量の具体的な違いの一例を示すものであり、図1(a)、(b)は磁石穴5に付与する樹脂量が少ない場合の一例であり、樹脂付与部は永久磁石の短辺の一部と磁石穴の平行な2辺に接して閉じる曲線の一部の両方を含んで形成されている。一方、樹脂付与部を除いた空き空間は、永久磁石の短辺の一部と磁石穴の平行な2辺に接して閉じる曲線の一部を含んで形成されている。
図1(c)、(d)は磁石穴に付与する樹脂量が多い場合の一例であり、図1(e)は磁石穴に付与する樹脂量が最大の場合である。
この樹脂量の違いによる回転バランスの修正は、「永久磁石4を樹脂αを用いてロータコア3に固定する接着工程」と、「複数の磁石穴5に付与する樹脂量が周方向と軸方向の両方において異なる分布を持つことにより回転バランスの修正を行うバランス修正工程」とが同時に実施されるものであり、樹脂αを磁石穴5に滴下する具体例を図2に示す。
また、「樹脂量によってロータ1の回転バランスを修正する箇所」は、図3の範囲Aで示す箇所(ロータコア3の軸方向の両側)において実施される。これにより、軸方向の動的アンバランスを樹脂量によって修正する。
ここで、樹脂量とバランス修正量との関係を図4を参照して説明する。1つの磁石穴5に付与する樹脂量を変化させると、図4に示すように、樹脂量の増減に応じて回転バランスの修正量が変化する。このため、この実施例では、複数の磁石穴5に付与するそれぞれの樹脂量の違いによって回転バランスの修正を実施するものである。
ロータ1の製造工程を、「従来技術1(ドリル修正法)」と「従来技術2(パテ修正法)」と「実施例1」を比較する。
先ず、「従来技術1(ドリル修正法)」の製造工程を図5(b)を参照して説明する。 ステップS1:ロータコア3に形成した各磁石穴5のそれぞれに着磁前の永久磁石4を組付ける。
ステップS2:ロータコア3の中心に回転軸2を圧入する。
ステップS3:各磁石穴5に樹脂αを滴下して永久磁石4をロータコア3に接着固定する。
ステップS4:永久磁石4が固定されたロータ1を回転させて、未修正のロータ1の回転バランスを測定する。
ステップS5:この測定結果に基づいて回転のアンバランスを修正するべく、ロータ1にドリル穴を形成する(ドリル穴による修正工程の実施)。
ステップS6:削りカスを取り除くための洗浄を実施する(洗浄工程の実施)。
ステップS7:ロータ1から洗浄液を除去するための乾燥を実施する(乾燥工程の実施)。
ステップS8:ドリル穴によって回転バランスを修正したロータ1を回転させて、回転バランスが規定範囲内に納まっていることを検査する。
ステップS9:永久磁石4の着磁を実施する。
このように、「従来技術1(ドリル修正法)」によるロータ1の製造工程では、上記ステップS5〜S7で示したように、ドリル穴による修正工程、洗浄工程、乾燥工程が必要になり、製造工数の増加によってコストアップする不具合がある。また、エンドプレートなどドリル穴を設ける部品の増加に繋がってしまう(上述した「背景技術」参照)。
次に、「従来技術2(パテ修正法)」の製造工程を図5(c)を参照して説明する。
ステップS1:ロータコア3に形成した各磁石穴5のそれぞれに着磁前の永久磁石4を組付ける。
ステップS2:ロータコア3の中心に回転軸2を圧入する。
ステップS3:各磁石穴5に樹脂αを滴下して永久磁石4をロータコア3に接着固定する。
ステップS4:永久磁石4が固定されたロータ1を回転させて、未修正のロータ1の回転バランスを測定する。
ステップS5:この測定結果に基づいて回転のアンバランスを修正するべく、ロータ1にパテを付与する(パテによる修正工程の実施)。
ステップS6:パテを硬化させるための加熱処理を実施する(加熱工程の実施)。
ステップS7:ロータ1を冷却する(冷却工程の実施)。
ステップS8:パテによって回転バランスを修正したロータ1を回転させて、回転バランスが規定範囲内に納まっていることを検査する。
ステップS9:永久磁石4の着磁を実施する。
このように、「従来技術2(パテ修正法)」によるロータ1の製造工程では、上記ステップS5〜S7で示したように、パテ付与による修正工程、加熱工程、冷却工程が必要になり、製造工数の増加によってコストアップする不具合がある。また、パテの付加を必要とするため、材料点数が増えることや、ロータの体格寸法が大きくなる不具合がある(上述した「背景技術」参照)。
次に、「実施例1」の製造工程を図5(a)を参照して説明する。
ステップS1:ロータコア3に形成した各磁石穴5のそれぞれに着磁前の永久磁石4を組付ける。
ステップS2:ロータコア3の中心に回転軸2を圧入する。
ステップS3:永久磁石4が組つけられたロータ1を回転させて、未修正のロータ1の回転バランスを測定する。
ステップS4:各磁石穴5に樹脂αを滴下して永久磁石4をロータコア3に接着固定する。この時、上記ステップS3の測定結果に基づいて回転バランスを修正するべく、複数の磁石穴5のそれぞれに付与する樹脂量を増減させてロータ1の回転バランスを修正する。即ち、永久磁石4の接着工程とバランス修正工程を同時に実施する。もちろん、各磁石穴5のそれぞれに付与する樹脂量(バランス修正用の樹脂の増減量)は、未修正のロータ1の回転バランスの測定結果からフィードフォワードにより求めるものである。
ステップS5:樹脂量の違いによって回転バランスを修正したロータ1を回転させて、回転バランスが規定範囲内に納まっていることを検査する。
ステップS6:永久磁石4の着磁を実施する。
(実施例1の効果1)
この実施例1のロータ1は、上述したように、「永久磁石4をロータコア3に固定する際に用いる樹脂αの量」を回転方向と軸方向で変化させることで「ロータ1における回転バランスの修正」を行ったものであり、「永久磁石4の接着工程」と「回転バランスの修正工程」を同時に実施したものである。
このため、従来技術よりも少ない工程数で「ロータコア3内に複数の永久磁石4を埋設したロータ1」の回転バランスを修正できる。これにより、ロータ1の生産性を高めることができ、結果的に回転電機のコストを抑えることができる。
(実施例1の効果2)
ロータコア3に形成される各磁石穴5には、永久磁石4が占める磁石スペースの他に、樹脂量の調整を実施可能な余剰スペースβが端部に設けられる。具体的な一例として、この実施例のロータコア3は、磁石穴5の内径側に磁気バリアを備えるものであり、この磁気バリアを樹脂量の調整を行う余剰スペースβとして共用している。
このように、この実施例のロータコア3は、樹脂量の調整を行うための余剰スペースβを備えることで、樹脂量の増減(周方向の樹脂量の違いによる回転バランスの修正)を実施することができる。
(実施例1の効果3)
この実施例では、上述したように、「樹脂量によってロータ1の回転バランスを修正する箇所」を、ロータコア3の軸方向の端部において実施する。これにより、必要最小限の樹脂量で軸方向の動的アンバランスを修正することができる。即ち、動的アンバランスを重点的に修正したい場合、樹脂αの使用量を減らして歩留りを抑えることができるため、結果的に回転電機のコストを抑えることができる。
(実施例1の効果4)
また、ロータ1がスキュー構造を持ち、図6に示すように、ロータコア3と永久磁石4が軸方向で分割されている場合、軸方向の中央に位置する永久磁石4が隣接する分割コアに挟まれる構造を取る。この構造により、永久磁石4が軸方向抜けに係わる機械的な信頼性が高まるが、軸方向の両端に配置される永久磁石4は軸方向へ抜け出る懸念がある。 そこで、この実施例を採用し、軸方向の両端の永久磁石4を固定する樹脂量を多く付与することでロータコア3と永久磁石4の接着面積を大きくすることができ、永久磁石4の抜けに係わる機械的な信頼性を高めることができる、即ち、材料設計の幅を広げることができるとともに、接着力の乏しい安価な樹脂αを選定することが可能になり、結果的にロータ1のコストダウンを図ることができる。
(実施例1の効果5)
永久磁石4をロータコア3に固定する樹脂αは、金属と直接接触する。即ち、樹脂αは、「永久磁石4の金属表面」と「ロータコア3の金属表面(ロータコア3の素地)」の両方に直接接触する。
このように、樹脂αと金属(永久磁石4およびロータコア3)が直接接触するため、樹脂αによる接着力を強固にできる。このため、回転振動などが加わってもロータコア3から永久磁石4が剥離する不具合を回避することができる。即ち、回転電機の信頼性を高めることができる。
(実施例1の効果6)
樹脂αによって永久磁石4をロータコア3に接着させる接着工程を、永久磁石4の着磁前に実施する。これにより、「永久磁石4の内面(内径側の面)と磁石穴5の内面(内径側の面)の間」と「永久磁石4の外面(外径側の面)と磁石穴5の外面(外径側の面)の間」の両方に樹脂αを付与することができる。即ち、永久磁石4の内外両面を樹脂αによってロータコア3に接着することができる。
具体的には、「永久磁石4の内面の全面」と「永久磁石4の外面の全面」に樹脂αを付与することができ、樹脂αによる永久磁石4の接着力を高めることができる。
(実施例1の効果7)
従来技術1(ドリル修正法)では、ドリル穴を開けるための部品を必要とするが、この実施例1はドリル穴を開けるための部品を不要にできる。また、ロータ1にドリル穴を設ける必要がないため、ロータ1の機械的な信頼性を保つことができる。
一方、従来技術2(パテ修正法)では、ロータ1に付与するパテにより材料数が増えるが、この実施例ではバランス修正のために、パテ等の別材料を不要にできる。また、ロータ1の表面(外周面や軸方向端面等)にパテを付加しないため、ロータ寸法がバランス修正用の材料によって増大しない。これにより、回転電機の小型化が実現できる。
(実施例1の補足説明1)
上記実施例1とは異なり、「永久磁石4の接着工程」と「回転バランスの修正工程」を別々に実施してもよい(実施例2)。
「永久磁石4の接着工程」を実施した後に、樹脂αを付与して「回転バランスの修正工程」を実施すると、永久磁石4の接着に用いる樹脂αと、バランス修正に用いる樹脂αとの接着面に界面が形成される。その結果、界面剥離等が発生し、接着力が弱まってしまう。

これは、図7(a)に示すように、樹脂αを金属と直接接着させる金属接着では表面の水酸化層(酸化物、吸水物)との強固な水素結合であるのに対し、図7(b)に示すように、樹脂αと樹脂αの樹脂間接着では芳香族環などの一部の電子雲との分子間力が支配的な結合で接着性が劣るためである。
これに対し、実施例1では、「永久磁石4の接着工程」と「回転バランスの修正工程」を同時に実施するため、永久磁石4の接着用の樹脂αと、バランス修正用の樹脂αとは、区別のない同じ一体構造であるため、接着用の樹脂αからバランス修正用の樹脂αが剥離する不具合は生じない。このため、ロータ1に機械的な振動が加わっても、樹脂αが剥離する不具合がなく、回転電機の信頼性を高めることができる。
(実施例1の補足説明2)
上記実施例とは異なり、「永久磁石4の接着工程」と「回転バランスの修正工程」を別々に実施する場合、永久磁石4の接着用の樹脂αが硬化すると、磁石穴5が塞がってしまう。その結果、回転バランスの修正に必要な樹脂αをロータコア3の内部に流し入れる経路が無くなってしまい、回転バランスの修正ができなくなってしまう。
これに対し、この実施例では、「永久磁石4の接着工程」と「回転バランスの修正工程」を同時に実施するため、磁石穴5から回転バランスの修正を行う樹脂を流し入れることができる。
(実施例1の補足説明3)
上記実施例とは異なり、永久磁石4を着磁した後に樹脂αを付与すると、永久磁石4の内面または外面の一方が磁石穴5に磁力でくっつく。すると、その間(磁力による結合箇所)に樹脂αが付与されなくなる。その結果、永久磁石4とロータコア3との接着面積が少なくなってしまい、接着力が弱まってしまう。
これに対し、この実施例では、上述したように、永久磁石4の内外両面を樹脂αによってロータコア3に接着できるため、永久磁石4の接着性を高めることができる。これにより、回転振動などが加わっても永久磁石4が剥離する不具合を回避することができ、回転電機の信頼性を高めることができる。
上記の実施例では、シャフト圧入工程を磁石固定工程よりも前に実施する例を示したが、磁石固定工程の後にシャフト圧入工程を実施してもよい。
上記の実施例では、「樹脂量によってロータ1の回転バランスを修正する箇所」をロータコア3の軸方向の両側において実施したが、軸方向の中央部で実施しても良い。
この場合、ロータ全体のアンバランスを意味する静的アンバランスを最小の樹脂量で修正することができる。即ち、静的アンバランスを重点的に修正したい場合、ロータコア3の両側各々の動的アンバランスを修正して静的アンバランスを抑えるよりも、静的アンバランスの角度において集中的に修正することができる。これにより、バランス修正に用いる樹脂αを歩留りを抑えることができ、回転電機のコストを抑えることができる。
さらに、ロータコア3の熱を効率的に放熱することができる。具体的には、空気との接触面積の大きいロータコア3の軸方向の両端に、樹脂αの熱伝導を用いてロータコア3の中央部に蓄熱された熱を移動させることによりロータコア3の放熱性能を高めることができる。その結果、永久磁石4の耐熱性能を下げることができるため、回転電機のコストを抑えることができる。
上記の実施例では、永久磁石4がV字形状に配置された磁気バリアの機能を有する磁石穴5を用いる例を示したが、図8に示すように永久磁石4の配置が異なるロータ1や、図9に示すように磁気バリア機能を持たない磁石穴5を用いるロータ1に本発明を適用しても良い。
なお、図8は、一文字形の磁石穴5に付与する樹脂量の具体的な違いの一例を示すものであり、図8(a)、(b)は磁石穴5に付与する樹脂量が少ない場合の一例であり、図8(c)、(d)は磁石穴に付与する樹脂量が多い場合の一例であり、図8(e)は磁石穴に付与する樹脂量が最大の場合である。
また、図9は、一文字形の磁石穴5に樹脂注入部γ(樹脂量の調整を実施可能な余剰スペースβとして機能する穴)を設けたものであり、図9(a)は磁石穴5に付与する樹脂量が少ない場合の一例であり、図9(b)は磁石穴に付与する樹脂量が多い場合の一例である。
上記の実施例では、モータジェネレータに本発明を適用する例を示したが、通電によって回転トルクを発生する電動モータ(電動機)に本発明を適用しても良いし、ロータ1の回転によって発電を行うジェネレータ(発電機)に本発明を適用しても良い。
上記の実施例では、インナーロータタイプを示したが、アウターロータタイプに本発明を適用しても良い。
上記の実施例では、車両搭載用の回転電機に本発明を適用する例を示したが、本発明は車両以外に適用可能であり、例えば産業用機器や家庭用機器などに使用される回転電機に適用しても良い。
1 ロータ
3 ロータコア
4 永久磁石
5 磁石穴
α 樹脂

Claims (3)

  1. ロータコア(3)の内部に複数の永久磁石(4)を埋設したロータ(1)の製造方法において、
    前記複数の永久磁石(4)は、前記ロータコア(3)内の周方向に形成された複数の磁石穴(5)のそれぞれに着磁前の状態で挿入され、
    樹脂(α)によって前記ロータコア(3)に固定されるものであり、
    前記磁石穴(5)内の前記樹脂を用いて前記着磁前の永久磁石(4)の外径側の面を前記ロータコア(3)の前記磁石穴の対向する面に接着固定する接着工程が行われ、
    前記接着工程の後に、回転バランスを修正した前記ロータの回転バランスの検査を行うバランス検査工程が行われ、
    前記バランス検査工程後に前記永久磁石を着磁する着磁工程が行われることを特徴とするロータの製造方法。
  2. 前記接着工程と、前記回転バランスの修正工程とは、同時に実施されるか、または、別々に実施されることを特徴とする請求項1に記載のロータの製造方法。
  3. 前記接着工程は、
    前記永久磁石の内径側の面と前記磁石穴の内径側の面との間と、
    前記永久磁石の外径側の面と前記磁石穴の前記外径側の面との間との両方に前記樹脂を付与することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のロータの製造方法。
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