以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。図1及び図2において、実施例の自動販売機1は、鋼板製の外面材2Aとその内側に設けられた断熱材(図示せず)から構成された前面が開口する断熱箱体である本体2と、この本体2の前面を開閉自在に閉塞するよう一側(実施例では向かって左側)が本体2に回動自在に枢支された外扉3を備えている。
この外扉3の前面上部には商品サンプル室4が構成されており、この商品サンプル室4内に陳列された複数の各商品サンプルに対応して複数の商品選択スイッチ6が配置されている。また、商品サンプル室4の下側の外扉3前面には、広告パネル5が構成されており、この広告パネル5の下側の外扉3前面下部には商品取出口7が構成されている。
更に、外扉3前面の向かって右側(非枢支側)中央部には化粧パネル8が取り付けられており、この化粧パネル8内に位置して硬貨投入口9、返却レバー11が設けられている。また、この化粧パネル8の向かって左側の外扉3前面には、金額表示器12が取り付けられている。更に、この金額表示器12の下側の外扉3前面には紙幣識別装置(ビルバリ)14が取り付けられており、商品取出口7の向かって右側の外扉3前面には硬貨返却口13が構成されている。
一方、本体2内の上部には上面、左右面及び後面が前記断熱材で囲繞され、前面が開口した商品収納部16が構成されている。この商品収納部16は断熱性の収納部仕切板17によって左右方向三つの商品収納室に仕切られており、実施例では向かって右側から二つが冷温切換室15(商品収納室)とされ、向かって左側が冷却専用室20(商品収納室)とされている。
尚、この冷却専用室20は各冷温切換室15よりも容積が大きい。これは冷却して販売する商品のほうが、加熱して販売する商品よりも一般的に多いからである。また、実施例では中央の冷温切換室15は、右端の冷温切換室15よりも容積が大きい。この仕切板17で仕切られた冷温切換室15、15、及び、冷却専用室20には、販売する商品が蛇行状の商品通路に収納されるサーペンタイン式の商品収納コラム18が前後方向及び左右方向にそれぞれ設けられている。
商品収納部16の前面には、それぞれ断熱性を有し、商品収納部16の前面開口の上部側を開閉するための上部側内扉21と、商品収納部16の前面開口の下部側を開閉するための下部側内扉22が設けられている。この下部側内扉22は本体2に回動自在に枢支されている。
また、下部側内扉22の下部には商品収納部16の各冷温切換室15及び冷却専用室20側と外扉3側とを連通する商品搬出口23が左右方向に並設されている。各商品搬出口23には開閉自在の搬出扉24が上縁を中心して回動自在に取り付けられており、前方に案内される商品に押されて回転し、商品搬出口23を開放して商品を商品取出口7に搬出する構成とされている。
他方、上部側内扉21は外扉3の商品サンプル室4の後側に対応して当該外扉3に取り付けられており、外扉3を開閉することにより、上部側内扉21によって商品収納部16の前面開口の上部側が開閉される構成とされている。更に、上部側内扉21は外扉3を開放した状態で、当該外扉3から独立して後方に開閉自在とされ、上部側内扉21を外扉3から後方に開いた状態で、商品サンプル室4内に陳列される商品サンプルを交換できるように構成されている。また、本体2内の下部には機械室26が形成されている。
次に、図3は自動販売機1の一実施例の冷媒回路を示している。この図において、27は冷媒を圧縮する圧縮機であり、機械室26内に設置されている。圧縮機27の吐出側の配管28は配管29と配管30に分岐し、分岐した一方の配管29は更に配管31と配管32に分岐し、配管31は電磁弁33を介して中央の冷温切換室15内に設けられた第1の室内熱交換器としての中央の切換室熱交換器34の入口に接続され、配管32は電磁弁36を介して右端の冷温切換室15内に設けられた第1の室内熱交換器としての右端の切換室熱交換器37の入口に接続されている。
切換室熱交換器37の出口は配管38と配管39に分岐し、切換室熱交換器34の出口は配管41と配管42に分岐している。切換室熱交換器37の出口から分岐した配管38と切換室熱交換器34の出口から分岐した配管41は、それぞれ逆止弁45、43を介して合流し、配管44となる。そして、この配管44は蓄熱側内部熱交換器としての内部熱交換器47を経て膨張手段としての膨張弁48の入口に接続されている(逆止弁45及び逆止弁43は膨張弁48方向が順方向)。
膨張弁48の出口は配管51に接続され、この配管51は蓄熱用熱交換器52に接続されている。この蓄熱用熱交換器52には蓄熱手段としての蓄熱材53が熱交換関係に設けられており、この蓄熱材53を備えた蓄熱用熱交換器52と前述した内部熱交換器47は、相互に熱移動が自由なかたちで断熱材94にて囲繞され、外部から断熱された状態で、中央の冷温切換室15内(容積の大きい冷温切換室内)に配置されている。実施例の場合、蓄熱材53は+30℃の融点を有し、この+30℃で潜熱を蓄熱できる相変化物質(PCM)を採用する。尚、蓄熱材としては係る相変化を伴うものに限らず、熱を蓄えられる材料であれば、本願の蓄熱材として採用可能である。
蓄熱用熱交換器52の出口側の配管55は配管54と配管56に分岐し、一方の配管54は更に配管57と配管58に分岐し、配管57は電磁弁59を介して室外熱交換器61の一端に接続されている。この室外熱交換器61は機械室26内に設置されると共に、機械室26内には更にこの室外熱交換器61に外気を送風するための送風手段とし送風機62が設置されている。尚、圧縮機27の吐出側の配管28から分岐した配管30は、電磁弁60を介して室外熱交換器61の一端に接続されている。
室外熱交換器61の他端の配管63は、逆止弁64、冷専側内部熱交換器としての内部熱交換器66を経て膨張手段としての膨張弁67の入口に接続されている。尚、内部熱交換器66は実施例では機械室26内に配置されており、逆止弁64は内部熱交換器66方向が順方向とされている。配管58は電磁弁68を介してこの逆止弁64と内部熱交換器66の間の配管63に接続されている。また、内部熱交換器66と膨張弁67の間の配管63は、配管69により膨張手段としての膨張弁71を介して電磁弁59と室外熱交換器61の間の配管57に接続されている。
内部熱交換器66と膨張弁67の間の配管63は更に配管74、配管76に分岐し、配管74は膨張手段としての膨張弁77を介して前記冷却専用室20内に設けられた第2の室内熱交換器としての専用室熱交換器78の入口に接続されており、配管76は膨張手段としての膨張弁79を介して前記切換室熱交換器37の入口に接続されている。
切換室熱交換器34及び37の出口から分岐した配管42及び39はそれぞれ電磁弁81、82を介して専用室熱交換器78の出口の配管83と合流しており、この合流点は配管84に接続され、この配管84は冷専側気液分離器としてのアキュムレータ85の入口に接続されている。このアキュムレータ85の出口側の配管88は、内部熱交換器66を介して圧縮機27の吸込側に接続されている。蓄熱用熱交換器52の出口側の配管55から分岐した一方の配管56は、電磁弁72及び内部熱交換器47を経て内部熱交換器66の下流側に位置する部分の配管88に接続されている。また、室外熱交換器61の他端も配管86により電磁弁73を介して配管84(アキュムレータ85の上流側)に接続されている。
尚、前記内部熱交換器(蓄熱側内部熱交換器)47は切換室熱交換器34、37を出て配管44を流れる冷媒と蓄熱用熱交換器52を出て配管56を流れる冷媒とを熱交換させるものであり、内部熱交換器(冷専側内部熱交換器)66は配管63を流れて最終的に専用室熱交換器78に向かう冷媒と当該専用室熱交換器78を出て配管84及びアキュムレータ85を介し、配管88を流れる冷媒とを熱交換させるものである。そして、この冷媒回路内には冷媒として二酸化炭素が所定量封入されている。
また、図3においてCは汎用マイクロコンピュータから構成された制御装置であり、前記冷却専用室20内、各冷温切換室15、15内の温度をそれぞれ検出する温度センサ91、92、93や、蓄熱用熱交換器52の出口側の配管55の温度を検出する温度センサ87、室外熱交換器61の温度を検出する温度センサ89、外気温度を検出する外気温度センサ90の出力に基づき、圧縮機27や送風機62の運転を制御すると共に、各膨張弁48、67、71、77、79の弁開度を制御し、各電磁弁33、36、59、60、68、72、73、81、82を開閉制御する。
特に、制御装置Cはインバータを用いて圧縮機27の回転数を制御する。また、制御装置Cは、前記温度センサ91が検出する冷却専用室20の温度、及び、冷温切換室15を冷却するときの温度センサ92及び/又は93が検出する当該冷温切換室15の温度を、実施例では+6℃等の上限温度と+2℃等の下限温度の間で平均として+4℃等の設定値に制御し、冷温切換室15を加熱するときの温度センサ92及び/又は93が検出する当該冷温切換室15の温度を、実施例では+57℃等の上限温度と+53℃等の下限温度の間で平均として+55℃等の設定値に制御するものとする。
(1)室内吸熱蓄熱モード
以上の構成で、次に図4乃至図10を参照しながらこの実施例の動作を説明する。尚、各図において、塗りつぶしで示す電磁弁や膨張弁は閉又は全閉状態であり、白抜きで示す電磁弁や膨張弁は開又は弁開度制御状態(全開状態を含む)である。今、両冷温切換室15、15を加熱する使用状態であり、冷却専用室20の温度は前記設定値よりも高いものとすると、制御装置Cは図4に示す室内吸熱蓄熱モード(蓄熱モード)を実行する。この室内吸熱蓄熱モードでは、制御装置Cは膨張弁67、71、79の弁開度を全閉とし、電磁弁60、68、72、73、81、82を閉じる。また、電磁弁33、36、59を開き、膨張弁77を開いてその弁開度を制御する。また、膨張弁48は全開状態に制御する。
そして、制御装置Cは圧縮機27及び送風機62を運転する。圧縮機27は運転されて二酸化炭素冷媒を超臨界状態まで圧縮し、配管28に吐出する。この圧縮機27から吐出された+100℃以上の高温高圧の冷媒(ガス)は、図4に矢印で示す如く配管29、電磁弁33、36を経て配管31、32から両切換室熱交換器34、37に流入し、そこで放熱する。これにより、各冷温切換室15、15内の商品は+55℃程に加熱される。各切換室熱交換器34、37で放熱し、+60℃程の温度まで低下した冷媒ガスは、それらから流出し、配管38、41、44を経て内部熱交換器47に流入し、この内部熱交換器47、膨張弁48(全開状態)、及び、配管51を経て蓄熱用熱交換器52に流入する。この+60℃程の温度の冷媒が内部熱交換器47を通過することで、この室内吸熱蓄熱モードで内部熱交換器47は温められる。
この蓄熱用熱交換器52に流入した+60℃程の温度の冷媒は、それに設けられた蓄熱材53と熱交換することにより、その熱が蓄熱材53に蓄えられていく。尚、蓄熱材53は前述したように+30℃(融点)で潜熱を蓄えるものであるので、蓄熱材53の蓄熱が完了するまでは、蓄熱材用熱交換器52で蓄熱材53と熱交換した冷媒の温度は+35℃程の温度まで低下して出て行く。この蓄熱用熱交換器52を出た冷媒は配管55、54を経て電磁弁59を通過し、配管57から室外熱交換器61に流入する。室外熱交換器61には送風機62により外気が送風されているので、冷媒はここで更に冷却される。そして、配管63に流出し、逆止弁64、内部熱交換器66を通過した後、配管74から膨張弁77に至る。
ここで冷媒は減圧されて膨張する。減圧される過程で冷媒は気液混合状態の二相冷媒となって専用室熱交換器78に流入する。この専用室熱交換器78に流入して冷媒は蒸発する。このときの吸熱作用で冷却専用室20内を冷却する。専用室熱交換器78内で蒸発して冷却専用室20内から吸熱した冷媒は配管83から配管84に流入し、アキュムレータ85に流入して気液分離され、ガス冷媒のみが配管88に流出し、内部熱交換器66を経て圧縮機27に吸い込まれる循環を繰り返す。内部熱交換器(冷専側内部熱交換器)66では配管88を通過する低温冷媒により配管63を通過して膨張弁77に向かう冷媒(専用室熱交換器78に向かい、最終的にそこで蒸発する冷媒)が過冷却されるので運転効率の改善が図られる。また、この内部熱交換器66にはアキュムレータ85から出たガス冷媒のみが流通するので、液冷媒がそこで蒸発して配管88から圧縮機27に吸い込まれる冷媒の温度を下げることも回避される。
(2)室内外気吸熱蓄熱モード
このような室内吸熱蓄熱モードで冷温切換室15、15の加熱のために専用室熱交換器78で冷却専用室20から吸い上げられる熱量が不足するようになり、圧縮機27の回転数が最大値まで上昇した場合、制御装置Cは図5の室内外気吸熱蓄熱モード(蓄熱モード)に遷移する。この室内外気吸熱蓄熱モードでは、制御装置Cは図4の状態から電磁弁59を閉じ、電磁弁68、73を開く。また、膨張弁71を開いてその弁開度を制御する(送風機62は運転)。
これにより、配管54を流れる冷媒は図5中矢印で示すように配管58に向かい、電磁弁68、内部熱交換器66を経てその一部が配管69から膨張弁71に流入するようになる。膨張弁71では冷媒が減圧されて膨張し、その過程で冷媒は気液混合状態の二相冷媒となって室外熱交換器61に流入する。室外熱交換器61に流入して冷媒は蒸発するので、送風機62により送風されている外気中から吸熱を行うようになる。尚、室外熱交換器61から出た冷媒は電磁弁73を経て配管86から配管84に合流し、アキュムレータ85、内部熱交換器66を経て圧縮機27に吸い込まれる。
即ち、この室内外気吸熱蓄熱モードでは専用室熱交換器78による冷却専用室20内からの吸熱に加えて、室外熱交換器61による外気からの吸熱も行われるようになるので、切換室熱交換器34、37による冷温切換室15、15内の加熱能力が確保される。また、この室内外気吸熱蓄熱モードにおいても、各切換室熱交換器34、37から出た冷媒の温度により、内部熱交換器44は温められ、更に、蓄熱用熱交換器52にて蓄熱材53に蓄熱が行われていく。
(3)外気吸熱蓄熱モード
また、図4の室内吸熱蓄熱モードにおいて、温度センサ91が検出する冷却専用室20の温度が前述した下限温度まで低下した場合、制御装置Cは図6の外気吸熱蓄熱モード(室外熱交換器61にて冷媒を蒸発させる蓄熱モード)に遷移する。この外気吸熱蓄熱モードでは、制御装置Cは図4の状態から電磁弁59を閉じ、電磁弁68、73を開く。また、膨張弁77を全閉とし、膨張弁71を開いてその弁開度を制御する(送風機62は運転)。
これにより、配管54を流れる冷媒は図6中矢印で示すように配管58に向かい、電磁弁68、内部熱交換器66を経て全てが配管69から膨張弁71に流入するようになる。膨張弁71では冷媒が減圧されて膨張し、その過程で冷媒は気液混合状態の二相冷媒となって室外熱交換器61に流入する。室外熱交換器61に流入して冷媒は蒸発するので、送風機62により送風されている外気中から吸熱を行うようになる。
尚、室外熱交換器61から出た冷媒は電磁弁73を経て配管86から配管84に合流し、アキュムレータ85、内部熱交換器66を経て圧縮機27に吸い込まれる。また、膨張弁77は閉じているので、専用室熱交換器78への冷媒の流入は阻止され、冷却専用室20内の冷却は停止される。
即ち、この外気吸熱蓄熱モードでは専用室熱交換器78による冷却専用室20内からの吸熱に代えて、室外熱交換器61による外気からの吸熱が行われるようになるので、冷却専用室20からの吸熱が行われない場合にも、支障無く切換室熱交換器34、37による冷温切換室15、15内の加熱を行うことができる。また、この外気吸熱蓄熱モードにおいても、各切換室熱交換器34、37から出た冷媒の温度により、内部熱交換器44は温められ、更に、蓄熱用熱交換器52にて蓄熱材53に蓄熱が行われていく。
(4)蓄熱材吸熱モード
尚、上記室内外気吸熱蓄熱モード(図5)において圧縮機27の回転数が所定値に低下した場合、また、上記外気吸熱蓄熱モード(図6)において温度センサ91が検出する冷却専用室20の温度が前述した上限温度まで上昇した場合、制御装置Cは室内吸熱蓄熱モード(図4の専用室熱交換器78にて冷媒を蒸発させる蓄熱モード)に復帰するものであるが、このような各蓄熱モードを実行している間、温度センサ87が検出する蓄熱材53から出る冷媒の温度は前述したように+35℃程まで低下する。そして、係る各蓄熱モードを実行することで蓄熱材53への蓄熱が完了し、蓄熱材53の相変化が終了してそれ以上の蓄熱はできなくなると、例えば図6の状態で温度センサ87が検出する蓄熱用熱交換器52を出た冷媒の温度は高くなっていく。
制御装置Cは温度センサ87が検出する冷媒の温度が+35℃より高い所定の蓄熱完了値になった場合、蓄熱材53への蓄熱が完了したものと判断して図7の蓄熱材吸熱モード(吸熱モード)に移行する。この蓄熱材吸熱モードでは、制御装置Cは図6の状態から電磁弁68を閉じ、電磁弁72を開くと共に、膨張弁48の弁開度を制御する(送風機62は基本的に停止する)。
これにより、配管38、41を流れる冷媒は図7中矢印で示すように配管44から内部熱交換器47に向かい、次に、膨張弁48に流入する。膨張弁48は制御装置Cによりその弁開度を制御されるので、膨張弁48では冷媒が減圧されて膨張し、その過程で冷媒は気液混合状態の気液二相冷媒となって蓄熱用熱交換器52に流入する。蓄熱用熱交換器52に流入して冷媒は蒸発するので、それと熱交換関係に設けられている蓄熱材53に蓄えられた熱を吸い上げるようになる。
蓄熱用熱交換器52で蓄熱材53から吸熱した冷媒は、配管55から配管56に入り、電磁弁72を通過し、内部熱交換器47を経て内部熱交換器66より下流側の配管88に流入し、圧縮機27に吸い込まれて圧縮され、再び高温高圧のガス冷媒となって配管28、29、電磁弁33、36、配管31、32を通過し、切換室熱交換器34、37に流入することになる。即ち、蓄熱材53に蓄えられた熱が各切換室熱交換器34、37に搬送されて各冷温切換室15、15の加熱に利用されることになるので、運転効率(COP)が大幅に向上する。
制御装置Cはこの蓄熱材吸熱モードにおいて、膨張弁48の弁開度を制御して蓄熱用熱交換器52における冷媒の蒸発温度を実施例では+20℃とする。これにより、蓄熱材53からの吸熱は+20℃で行われる。また、内部熱交換器47では切換室熱交換器34、37を出た冷媒により蓄熱用熱交換器52を出た冷媒が加熱されるので、圧縮機27に吸い込まれる冷媒の温度が上昇し、圧縮機27の吐出冷媒温度が高くなる。
このとき、切換室熱交換器34、37を出た冷媒は、室内吸熱蓄熱モード、室内外気吸熱蓄熱モード、及び、外気吸熱蓄熱モードの何れの蓄熱モードでも内部熱交換器47を流れているので、これらの蓄熱モード中に内部熱交換器47は温められており、これらの蓄熱モードから蓄熱材吸熱モードに移行した直後から蓄熱用熱交換器52を出た冷媒は内部熱交換器47で昇温されるようになる。
ここで、図10は内部熱交換器47の縦断面斜視図を示している。実施例の内部熱交換器47は外管96とこの外管96内に間隔を存して挿通された内管97から成る二重管により構成されており、切換室熱交換器34、37を出た冷媒(高圧)はこの二重管を構成する外管96と内管97の間を流れ、蓄熱用熱交換器52を出た冷媒(低圧)は内管97内を流れるように接続されている。また、内管97内を流れる蓄熱用熱交換器52を出た冷媒とその外側の外管96との間を流れる切換室熱交換器34、37からの冷媒は対向流となる。
(5)蓄熱材吸熱モードから各蓄熱モードへの移行制御
係る蓄熱材吸熱モードにより蓄熱材53から吸熱している間、蓄熱用熱交換器52から出る冷媒の温度は+20℃程となる一方、冷媒が蓄熱材53に蓄熱された熱を利用して蒸発している間、蓄熱材53の温度は融点である+30℃を維持している。そして、蓄熱材53から吸熱し切った場合(蓄熱材53に蓄えられた熱が枯渇)、冷媒は蓄熱用熱交換器52においてそれ以上蒸発できなくなるので、冷媒の蒸発により、蓄熱材53の温度は融点である+30℃よりも低くなり、当該蓄熱用熱交換器52から出る冷媒の温度が蒸発温度の+20℃より低くなってくる。そして、そのままでは更に蒸発温度(圧縮機27に吸い込まれる冷媒の温度)が低下し、低圧側(圧縮機27の吸込側)の圧力が低くなってしまう。
そこで、制御装置Cは温度センサ87が検出する冷媒の温度により蓄熱材53の温度を推定し(代替特性による推定)、当該冷媒の温度が、例えば蓄熱用熱交換器52での狙いの蒸発温度である+20℃より低くなった場合、又は、外気温度より低くなった場合、蓄熱材53からこれ以上吸熱できないと判断し、蓄熱材吸熱モードを終了して基本的には図6の外気吸熱蓄熱モード(室外熱交換器61にて冷媒を蒸発させる蓄熱モード)に移行する。それにより、蒸発温度の低下を防止し、外気から吸熱して冷温切換室15内を加熱し、蓄熱材53に蓄熱するようにする。尚、実施例では温度センサ87が検出する冷媒の温度に基づき、代替特性により蓄熱材53の温度を推定するようにしたが、それに限らず、蓄熱用熱交換器52内に温度センサを配置して、蓄熱材53の温度を直接検出するようにしても良い。
但し、蓄熱材吸熱モードを終了して蓄熱モードへ移行する時点で外気温度センサ90が検出する外気温度が所定値(例えば、+5℃等)以下の場合、制御装置Cは前述した外気吸熱蓄熱モードでは無く、室内吸熱蓄熱モード(専用室熱交換器78で冷媒を蒸発させる蓄熱モード)に移行する。又は、外気吸熱蓄熱モードにおいて、外気温度が所定値(+5℃)より高いときは、室外熱交換器61における冷媒の蒸発温度は前述した如く−5℃より高くなるが、所定値(+5℃)以下の場合には蒸発温度が更に低下してしまい、室外熱交換器61の着霜が増加すると共に、低圧側の圧力が低くなり過ぎるので、室内吸熱蓄熱モードに切り換えてこれを防止する。
また、係る蓄熱材吸熱モードから蓄熱モードへの移行時点で、温度センサ91が検出する冷却専用室20の温度が前述した設定値(+4℃)以上である場合、上限温度(+6℃)に達していなくても、制御装置Cは外気吸熱蓄熱モードでは無く、室内吸熱蓄熱モードに移行する。これにより、冷却専用室20の冷却を優先し、所定温度に冷えた商品を販売できるようにする。
(6)各蓄熱モードと蓄熱材吸熱モードでの圧縮機27の回転数
ここで、前述した室内吸熱蓄熱モードや室内外気吸熱蓄熱モードにおける専用室熱交換器78での冷媒の蒸発温度や外気吸熱蓄熱モードにおける室外熱交換器61における冷媒の蒸発温度(外気温度が+5℃程の場合)は−5℃程であり、蓄熱材吸熱モードにおける蓄熱用熱交換器52における冷媒の蒸発温度は前述した+20℃である。従って、係る蓄熱材吸熱モードで圧縮機27に吸い込まれる冷媒(二酸化炭素)の密度は、蒸発温度が+20℃、過熱度が10Kであるとき157kg/m3となり、各蓄熱モードで圧縮機27に吸い込まれる冷媒の密度は、蒸発温度が−5℃、過熱度が10Kであるとき76kg/m3となる。
即ち、蓄熱材吸熱モードで圧縮機27に吸い込まれる冷媒の密度が、上記各蓄熱モードにおいて圧縮機27に吸い込まれる冷媒の密度よりも上昇するので、回転数が同じである場合、蓄熱材吸熱モードでの圧縮機27の能力は各蓄熱モードでの能力よりも高くなる。そのため、制御装置Cは蓄熱材吸熱モード(吸熱モード)における圧縮機27の回転数を、室内吸熱蓄熱モード、室内外気吸熱蓄熱モード、及び、外気吸熱蓄熱モード(何れも蓄熱モード)における圧縮機27の回転数よりも低下させる(実施例では1/2にする)。
この場合、実施例ではインバータにより圧縮機27の回転数制御を行うようにしているので、制御装置Cは蓄熱材吸熱モードにおいて、この制御上の回転数の上限値を低下(1/2)させるものとする。尚、インバータを有していても、圧縮機27を定速(一定の回転数)で運転する自動販売機1では、その回転数を低下させることであっても良い(以下、同じ)。それにより、蓄熱材吸熱モードにおいて冷媒回路の冷媒循環量が増加し、高圧側の圧力が高くなることを防止する。
(7)各蓄熱モードから蓄熱材吸熱モードへの移行時の圧縮機27の回転数制御
このように制御装置Cは、蓄熱材吸熱モード(吸熱モード)における圧縮機27の回転数を、室内吸熱蓄熱モード、室内外気吸熱蓄熱モード、及び、外気吸熱蓄熱モード(蓄熱モード)における圧縮機27の回転数よりも低下させるものであるが、各蓄熱モードから蓄熱材吸熱モードに移行した直後は、それまで冷媒が流れていなかった蓄熱用熱交換器52の下流側の配管56や電磁弁72は冷えていて温度が低く、圧縮機27に吸い込まれる冷媒の過熱度が低下する。
仮に蓄熱材吸熱モードに移行した直後に圧縮機27に吸い込まれる冷媒の過熱度が0Kであった場合、冷媒(二酸化炭素)の密度は、蒸発温度が+20℃で194kg/m3となる。そのため、蓄熱材吸熱モードに移行した直後は、前述した如く圧縮機27の回転数を低下(1/2)させただけでは、冷媒循環量が一時的に増加し、冷媒回路の高圧側の圧力が異常に上昇してしまう。
そこで、制御装置Cは各蓄熱モードから蓄熱材吸熱モードに切り換えた場合、圧縮機27の回転数を前述した1/2よりも更に低下(実施例では1/2.6)させ、その後、徐々に蓄熱材吸熱モードでの回転数(各蓄熱モードでの回転数の1/2)に上昇させていく制御を行う。これにより、各蓄熱モードから蓄熱材吸熱モードに移行した直後に、冷媒回路の高圧側の圧力が異常に上昇してしまう不都合を解消する。
尚、図8は右端の冷温切換室15を冷却する場合の図4に相当する室内吸熱蓄熱モードの冷媒の流れを示している。この場合、制御装置Cは図4の状態に対して電磁弁36を閉じ、電磁弁82を開く。また、膨張弁79を開き、その弁開度を制御する。これにより、圧縮機27から吐出された高温冷媒は図8中矢印で示す如く配管31から切換室熱交換器34のみに流入するようになり、配管63を流れる冷媒は膨張弁77と79に分流して流入し、専用室熱交換器78と切換室熱交換器37にて蒸発するようになる。
これにより、右端の冷温切換室15は冷却されるようになる。切換室熱交換器37を出た冷媒は電磁弁82を経て専用室熱交換器78から出た冷媒と合流し、配管84、アキュムレータ85、内部熱交換器66、配管88を経て圧縮機27に吸い込まれることになる。また、この場合にも蓄熱材53には蓄熱が行われる。
(8)全室冷却モード
また、図9は両冷温切換室15、15を冷却する場合、即ち、自動販売機1の全ての商品収納室を冷却する全室冷却モードの冷媒の流れを示している。この場合、制御装置Cは電磁弁60、72、81、82を開き、電磁弁33、36、59、68、73を閉じる。また、膨張弁48、71は全閉とし、膨張弁77、67、79を開いて弁開度を制御する。
これにより、圧縮機27から吐出された冷媒は図9中矢印の如く配管30を経て電磁弁60を通り、室外熱交換器61に流入して放熱するようになる。そして、冷媒は配管63から逆止弁64、内部熱交換器66を経て分流され、各膨張弁77、67、79で減圧された後、専用室熱交換器78、切換室熱交換器34、37に流入して蒸発する。そして、配管83、42、39を経て配管84で合流した後、アキュムレータ85、内部熱交換器66を経て、配管88から圧縮機27に吸い込まれるようになる。
以上詳述した如く本発明では制御装置Cにより、切換室熱交換器34、37を出た冷媒を膨張弁48により膨張させること無く蓄熱用熱交換器52に流入させて蓄熱材53に蓄熱する各蓄熱モード(室内吸熱蓄熱モード、室内外気吸熱蓄熱モード、及び、外気吸熱蓄熱モード)と、膨張弁48により切換室熱交換器34、37を出た冷媒を蓄熱用熱交換器52にて蒸発させ、圧縮機27により圧縮して切換室熱交換器34、37に流入させる蓄熱材吸熱モードを実行するので、各蓄熱モードにて切換室熱交換器34、37で放熱し、冷温切換室15内を加熱した後の冷媒が有する熱量を、蓄熱用熱交換器52にて蓄熱材53に蓄えることができるようになる。
そして、この蓄えた熱を蓄熱材吸熱モードにて蓄熱用熱交換器52で冷媒を蒸発させることにより吸い上げ、切換室熱交換器34、37による冷温切換室15内の加熱源として利用することができるようになる。即ち、切換室熱交換器34、37を出た冷温切換室15内を適温に加熱できる程高くは無いが、外気温度よりは高い冷媒が有する熱量を利用して冷温切換室15内を加熱することが可能となるので、自動販売機1の運転効率(COP)を大幅に改善することができる。
また、切換室熱交換器34、37を出た冷媒と蓄熱用熱交換器52を出た冷媒とを熱交換させる内部熱交換器47(蓄熱側内部熱交換器)を備えているので、蓄熱用熱交換器52を出て圧縮機27に吸い込まれる冷媒の温度を内部熱交換器47にて切換室熱交換器34、37を出た冷媒により上昇させ、圧縮機27の吐出冷媒温度を高くして、冷温切換室15の加熱能力を向上させることが可能となる。
特に、本発明では切換室熱交換器34、37を出た冷媒が、前記各蓄熱モード及び蓄熱材吸熱モードの双方において内部熱交換器47に流れるよう構成しているので、各蓄熱モード中に内部熱交換器47を切換室熱交換器34、37から出た冷媒により温めておくことができるようになる。これにより、各蓄熱モードから蓄熱材吸熱モードに移行した直後から蓄熱用熱交換器52を出た冷媒を内部熱交換器47で昇温させることができるようになり、移行して直ぐに圧縮機27に吸い込まれる冷媒の温度を上昇させ、冷温切換室15の加熱能力の向上効果を発揮させることができるようになる。
また、実施例では内部熱交換器47を切換室熱交換器34により加熱される冷温切換室15内に配置しているので、機械室26(外部)等に設ける場合に比して内部熱交換器47の温度低下を効果的に防止することができるようになる。特に、実施例ではこの内部熱交換器47に加えて、蓄熱材53を有する蓄熱用熱交換器52も冷温切換室15内に配置しているので、機械室26等に設ける場合に比して蓄熱材53への蓄熱量も増やすことができるようになる。もちろん、電磁弁72や付属する配管を冷温切換室15内に配置してもよい。
ここで、冷温切換室15内の温度は上述した如く+55℃程に加熱される。一方で、内部熱交換器47には切換室熱交換器34、37を出た冷媒と蓄熱用熱交換器52を出た冷媒(前述した+20℃程)が流れので、これらの温度は冷温切換室15内の温度より低くなる。そこで、実施例では蓄熱用熱交換器52(蓄熱材53を含む)と内部熱交換器47を、相互に熱移動自由なかたちで断熱材94で外部から断熱した状態で冷温切換室15内に配置している。これにより、冷温切換室15内の熱が、蓄熱材53や内部熱交換器47に奪われる不都合も解消され、運転効率の低下を防止することが可能となる。更に、内部熱交換器47に流れる高温の冷媒の放熱によっても蓄熱材53に蓄熱することができるようになる。
ここで、内部熱交換器47と蓄熱用熱交換器52のうちの何れか一方のみを冷温切換室15内に配置しても良い。この場合、内部熱交換器47のみを冷温切換室15内に配置する場合には、断熱せずに配置するが、蓄熱用熱交換器52のみを冷温切換室15内に配置する場合には、断熱した状態でも、断熱しない状態でも良い。但し、断熱しない状態で内部熱交換器47や蓄熱用熱交換器52を冷温切換室15内に配置する場合は、なるべく風の当たらない場所や、上部の比較的温度の低い場所(通常冷温切換室15内は、ゾーンヒーティング(下部集中加温)をしているので、下部に比して上部の方が低温)に配置することが望ましい。
更に、実施例では内部熱交換器47を、外管96と内管97から成る二重管により構成しており、切換室熱交換器34、37を出た温度の高い冷媒を外管96と内管97との間を流し、蓄熱用熱交換器52を出た冷媒を内管97内を流すようにしているので、冷温切換室15内に対する内部熱交換器47の影響を少なくすることが可能となる。
また、実施例では専用室熱交換器78に向かう冷媒と当該専用室熱交換器78を出た冷媒とを熱交換させる内部熱交換器66(冷専側内部熱交換器)を設けているので、専用室熱交換器78を出た低温の冷媒により当該専用室熱交換器78に向かう冷媒を過冷却することができるようになり、運転効率の改善を図ることができるようになる。この内部熱交換器66には専用室熱交換器78で蒸発した温度の低い冷媒(−5℃)が流れているが、この場合も実施例では、蓄熱用熱交換器52を出て内部熱交換器47を経た冷媒を、専用室熱交換器78を出て内部熱交換器66を経た後の冷媒に合流させているので、内部熱交換器47で昇温した冷媒が、より温度が低い内部熱交換器66で冷却され、温度が低下してしまう不都合を解消することができるようになる。
また、実施例では専用室熱交換器78を出て内部熱交換器66に流入する冷媒を気液分離するアキュムレータ(冷専側気液分離器)85を設けているので、専用室熱交換器78を出た冷媒に含まれる液冷媒が内部熱交換器66で蒸発する不都合を解消することができるようになる。これにより、専用室熱交換器78を出て圧縮機27に吸い込まれる冷媒を内部熱交換器66で昇温する効果が阻害されることを防止することが可能となる。