JP2017227029A - 鉄筋構造 - Google Patents
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Abstract
Description
金物としては、例えば、鉄筋同士を接続するためのカプラーと称される継手金物や、鉄筋の端部をコンクリートに定着するための定着金物がある。
定着金物の接続方式として、円盤付ナットや、円盤状に加工した鋼管を圧着により取り付ける方法がある。
同様に、鉄筋の端部をコンクリートに定着するための定着金物においても、強度や剛性等が母材並であることが求められている。
鉄筋と継手との間の引張力に対する性能を検証するために、引張試験が行われるが、金物と鉄筋との嵌合長さが短い状態で引張試験を実施すると、接続した鉄筋の塑性変形による伸びが金物内に進展していくことになり、鉄筋と金物の接続部分が破壊される。
以上の課題は、継手金物だけでなく、定着金物でも生じるものである。
そのため、実際の鉄筋構造の設計にあたっては、鉄筋の金物からの抜けだしを防止するために、金物と鉄筋との間に所定の嵌合長さが必要とされることになるが、それでは、金物が大型化せざるを得ない。
ここで、金物は鉄筋の高強度部分に嵌合していることから、従来、嵌合していた鉄筋の普通強度部分に比べて変形することが少ない。そのため、鉄筋の金物との嵌合長さを長くすることを要しないから、金物自体の小型化を図ることができる。
この構成では、金物が高強度部分に螺合することで、鉄筋に嵌合される。そのため、金物の鉄筋への取付作業を簡単に行うことができる。
この構成では、降伏点又は0.2%耐力がJISG3112で規定される1本の普通鉄筋を部分焼入れして普通強度部分と高強度部分とを形成しているので、一部に高強度部分を有する鉄筋の製造を容易に行える。しかも、普通強度部分と高強度部分とが1本の鉄筋から構成されるので、現場での取り扱いが容易となる。
この構成では、モルタル材によって、鉄筋と金物との嵌合が強固になるだけでなく、前述と同様に、金物を小型化することが可能となる。つまり、金物内の鉄筋を弾性範囲内に留めることにより、鉄筋の伸び変形を小さく抑え、充填したモルタル材の破壊を抑制することができる。そのため、鉄筋との間にモルタル材が充填された金物であっても、鉄筋の金物と嵌合される部分が高強度部分であるから、十分な強度を有することになり、鉄筋の嵌合長さを長くすることを要しない。
この構成では、継手金物において、前述と同様の効果を奏することができる。
この構成では、定着金物において、前述と同様の効果を奏することができる。
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ここで、各実施形態において、同一構成要素は同一符号を付して説明を省略する。
図1から図4には本発明の第一実施形態が示されている。
図1には第一実施形態の全体構成が示されている。
図1において、建物は、複数の梁2と、梁2と接合する複数の柱3とを備えた複数階建ての鉄筋コンクリート造であり、鉄筋構造1にコンクリート体100が打設されている。梁2と柱3とが接合された柱梁接合部の形態としては、十字形接合S1やト形接合S2がある。
梁2の鉄筋構造1は、水平方向に延びて配筋された複数の梁用の主筋21と、主筋21の軸方向と交差する平面内において主筋21を囲んで等間隔に配筋されて梁2のせん断強度を補強する複数の梁用のせん断補強筋22とを備える。主筋21は、第一実施形態の鉄筋である。
水平方向に隣合う主筋21は、上下一対配置されており、かつ、端部同士が継手金物4で接続されている。継手金物4は、隣合う柱3のほぼ中間に配置されている。
主筋21のうちト形接合S2の柱梁接合部では、主筋21の端部に定着金物5が接続されている。
後述する通り、主筋21のうち継手金物4と定着金物5とに接続される部分は、高強度部分211とされ、他の部分は普通強度部分212とされている。
図2において、継手金物4は、継手本体40と、継手本体40の両側に配置されたロックナット41とを備えている。
主筋21のうち継手金物4に接続される部分は、高強度部分211とされ、他の部分は普通強度部分212とされる。高強度部分211と普通強度部分212との境界線Tは、継手金物4の端部から寸法Lだけ離れている。
高強度部分211及び普通強度部分212は、1本の鉄筋から一体に形成されている。
普通強度部分212は、降伏点又は0.2%耐力がJISG3112で規定されている。高強度部分211は、普通強度部分212より高強度である。例えば、高強度部分211の降伏点又は0.2%耐力は、685MPa(N/mm2)以上1200MPa(N/mm2)以下、例えば、585MPa(N/mm2)又は685MPa(N/mm2)である。普通強度部分212の降伏点又は0.2%耐力は、295MPa(N/mm2)以上490MPa(N/mm2)以下である。主筋21の鉄筋の呼び径はD25〜D41である。
以上の構成の主筋21は、普通強度部分212と同じ強度の1本の普通鉄筋の異形鉄筋(SD345)を部分焼入れして高強度部分211にする。
モルタル材Mとしては、セメント等の無機材料からなるもの、エポキシ樹脂等の有機材料からなるものを例示できる。
継手本体40の軸方向の中心位置には、モルタル材Mを充填するための充填孔40Aが形成されている。
ロックナット41の内周には、主筋21の雄ねじ部に螺合する雌ねじ部が形成されている。主筋21の高強度部分211の外周とロックナット41の内周との間にはモルタル材Mが充填されている。
継手本体40及びロックナット41の強度は、高強度部分211の強度と同じか高強度部分211の強度より大きい。
図3において、主筋21は、その先端部分が高強度部分211とされ、その他の部分は継手金物4と接続される部分を除き普通強度部分212とされる。
高強度部分211のうちト形接合S2の内部に配置された部分のうち先端部分には定着金物5が嵌合されている。
図4において、定着金物5は、リング状部51とリング状部51の外周に一体に形成されたフランジ52とを有するものであり、その内周には高強度部分211の雄ねじ部と螺合する雌ねじ部が形成されている。
高強度部分211は、その先端部が定着金物5を貫通しており、かつ、高強度部分211と普通強度部分212との境界線Tは、定着金物5の端部から寸法Nだけ離れている。
主筋21の高強度部分211の外周と定着金物5の内周との間にはモルタル材Mが充填されている。
定着金物5の強度は、高強度部分211の強度と同じか高強度部分211の強度より大きい。
主筋21と継手金物4とに引張力がかかっても、主筋21に母材の降伏点に到達した後は、塑性変形による伸びが継手金物4の内部に進展しない。つまり、継手金物4の内部にある主筋21の高強度部分211が弾性範囲内に留められることになり、主筋21の伸び変形が小さく、充填したモルタル材Mの破壊が抑制される。
同様に、主筋21と定着金物5とに引張力がかかっても、定着金物5の内部にある主筋21の高強度部分211が弾性範囲内に留められることになり、主筋21の伸び変形が小さく、充填したモルタル材Mの破壊が抑制される。
(1)主筋21と、主筋21に接続された金物とを備え、主筋21は、普通強度部分212と普通強度部分212より強度が大きい高強度部分211とを有し、金物は高強度部分211に嵌合されている。そのため、金物が主筋21から抜けだして鉄筋構造1が破壊されることを防止できる。金物は主筋21の高強度部分211に嵌合していることから、普通強度部分212に比べて変形することが少ないため、主筋21の金物との嵌合長さを長くすることを要せず、金物自体の小型化を図ることができる。
(3)高強度部分211は、降伏点又は0.2%耐力がJISG3112で規定される普通強度部分212より降伏点又は0.2%耐力が大きく設定され、高強度部分211は、普通強度部分212と同じ強度の1本の普通鉄筋を部分焼入れして形成されているから、主筋21の製造を容易に行えるとともに、現場での取り扱いが容易となる。
(6)金物は主筋21の端部に配置される定着金物5であるので、定着金物5において、前述と同様の効果を奏することができる。
(8)高強度部分211と普通強度部分212との境界線Tが定着金物5の端部から寸法Nだけ離れているので、定着金物5の長さが規定値より長いとしても、前述の効果を確実に奏することができる。
次に、本発明の第二実施形態を図5に基づいて説明する。
第二実施形態は異形鉄筋の形状及び継手金物の構成が第一実施形態とは異なるもので、他の構成は第一実施形態と同じである。
図5において、第二実施形態の継手金物6は、継手本体60と、継手本体60の両端にそれぞれ取り付けられたグラウトシール61と、継手本体60のグラウトシール61からやや中央側に配置された止めねじ62と、継手本体60の中央部に取り付けられた逆止弁63とを備えている。
継手本体60は、直線上に配置された2本の主筋21のうち互いに近接する端部を覆う筒状部材である。2本の主筋21のうち端部外周と継手本体60の内周との間及び主筋21の端面間の空間にはグラウト材Gが充填されている。硬化したグラウト材Gを介して一方の主筋21の応力が他方の主筋21に伝達される。
グラウトシール61は、継手本体60の端部開口を閉塞するものである。
止めねじ62は、継手本体60を主筋21に止めるものである。
第二実施形態では、継手本体60の両端側から接合する主筋21をそれぞれ挿入し、止めねじ62で主筋21を押さえ、逆止弁63を通じて継手本体60の内部にグラウト材Gを充填する。
従って、第二実施形態では、第一実施形態と同様の効果を奏することができる。
次に、本発明の第三実施形態を図6に基づいて説明する。
第三実施形態は異形鉄筋の形状及び継手金物の構成が第一実施形態とは異なるもので、他の構成は第一実施形態と同じである。
第三実施形態では、接合する2本の主筋21の少なくとも一方が回転容易でかつ軸方向に移動可能な構成である。
図6において、第三実施形態の継手金物7は、それぞれ主筋21を接合した継手本体70A,70Bと、継手本体70A,70Bに螺合され主筋21の間に配置される接続ボルト71と、を備えている。
接続ボルト71は、その中央部を挟んで一方が継手本体70Aに螺合され、他方が継手本体70Bに螺合される。接続ボルト71は、その一端面が一方の主筋21の端面に当接され、その他端面が他方の主筋21の端面に当接される。
第三実施形態では、隣合う主筋21の一方に予め接合された継手本体70Aに接続ボルト71の一部を螺合し、この接続ボルト71の他の部分を主筋21の他方に接合された継手本体70Bに螺合する。
従って、第三実施形態では、第一実施形態と同様の効果を奏することができる。
次に、本発明の第四実施形態を図7に基づいて説明する。
第四実施形態は異形鉄筋の形状及び継手金物の構成が第一実施形態とは異なるもので、他の構成は第一実施形態と同じである。
第四実施形態では、接合する主筋21は、回転が困難か不可能で、軸方向に移動可能な構成である。
図7において、第四実施形態の継手金物8は、それぞれ主筋21を接合した継手本体80A,80Bと、継手本体80A,80Bに螺合され主筋21の間に配置される接続ボルト81と、を備えている。
接続ボルト81は、その中央部に設けられたナット82を挟んで一方が継手本体80Aに螺合され、他方が継手本体80Bに螺合される。つまり、接続ボルト81は、ナット82を挟んで逆ねじに形成されている。接続ボルト81は、その一端面が一方の主筋21の端面に当接され、その他端面が他方の主筋21の端面に当接される。
第四実施形態では、隣合う主筋21の一方に予め接合された継手本体80Aに接続ボルト81の一部を螺合し、この接続ボルト81の他の部分を主筋21の他方に接合された継手本体80Bに螺合する。
従って、第四実施形態では、第一実施形態と同様の効果を奏することができる。
次に、本発明の第五実施形態を図8に基づいて説明する。
第五実施形態は異形鉄筋の形状及び継手金物の構成が第一実施形態とは異なるもので、他の構成は第一実施形態と同じである。
第五実施形態では、接合する主筋21が移動不可能な構成である。
図8において、第五実施形態の継手金物9は、それぞれ主筋21を接合した継手本体90A,90Bと、継手本体90A,90Bに螺合され主筋21の間に配置される接続ボルト91と、接続ボルト91に螺合する一対のナット92A,92Bとを備えている。
接続ボルト91は、一方が継手本体70Aに螺合され、他方が継手本体70Bに螺合される。接続ボルト91は、その一端面が一方の主筋21の端面に当接され、その他端面が他方の主筋21の端面に当接される。
第五実施形態では、接続ボルト91にナット92A,92Bを予め螺合しておき、継手本体90Bの雌ねじ部90Dに、接続ボルト91を全ての長さに渡って螺合しておく。そして、継手本体90Bに継手本体90Aを対向させておき、ナット92A,92Bを操作して継手本体90Aの雌ねじ部90Dに接続ボルト91を送り出すことで、接続ボルト91と継手本体90Aとを接続する。
第五実施形態では、第三実施形態と同様に、雌ねじ加工された継手本体90A,90Bを冷間にてねじ加工していない側の継手本体90A,90Bを主筋21に圧着させる。圧着時に塑性加工が施され、主筋21の引き抜き力に対抗することになる。熱処理により高強度化された主筋21は、圧着時につぶされずに継手本体90A,90Bが主筋21の表面とより一体化しやすくなる。
従って、第五実施形態では、第一実施形態と同様の効果を奏することができる。
例えば、前記各実施形態では、継手金物4及び定着金物5とも、主筋21の雄ねじ部に螺合する構成としたが、本発明では、主筋21の端部と金物とを圧着する場合についても適用できる。仮に、主筋21が継手金物4と定着金物5とに螺合する構成であっても、主筋21の端部のみに雄ねじ部が形成された場合でもよい。
さらに、前記実施形態では、金物が接続される対象の鉄筋が梁用の主筋21としたが、本発明では、柱用の鉄筋であってもよい。
また、第一実施形態では、継手金物4を、継手本体40とロックナット41とを備えて構成したが、ロックナット41を必ずしも設けることを要しない。
Claims (6)
- 鉄筋と、前記鉄筋に接続された金物とを備え、
前記鉄筋は、普通強度部分と前記普通強度部分より強度が大きい高強度部分とを有し、
前記金物は前記高強度部分に嵌合されている
ことを特徴とする鉄筋構造。 - 請求項1に記載された鉄筋構造において、
前記金物は前記高強度部分に螺合される
ことを特徴とする鉄筋構造。 - 請求項2に記載された鉄筋構造において、
前記普通強度部分は、降伏点又は0.2%耐力がJISG3112で規定され、
前記高強度部分は、前記普通強度部分よりも降伏点又は0.2%耐力が大きく設定され、
前記鉄筋は、前記普通強度部分と同じ強度の1本の普通鉄筋を部分焼入れして前記高強度部分とする
ことを特徴とする鉄筋構造。 - 請求項2又は請求項3に記載された鉄筋構造において、
前記高強度部分と前記金物との間にはモルタル材が充填されている
ことを特徴とする鉄筋構造。 - 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載された鉄筋構造において、
前記鉄筋は、それぞれ前記高強度部分を近接させた一対が直線上に配置され、
前記金物は前記一対の鉄筋のうち前記高強度部分同士を接続する継手金物を備えた
ことを特徴とする鉄筋構造。 - 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載された鉄筋構造において、
前記金物は前記鉄筋の端部に配置される定着金物を備えた
ことを特徴とする鉄筋構造。
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