以下、添付図面を参照しながら本発明による昇圧回路の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る昇圧回路1Aの構成を示す回路図である。この昇圧回路1Aは、従来の昇圧回路が有するブートストラップ方式及び交流結合方式の何れも備えずに、入力電圧Vinを昇圧して出力電圧Voutを出力する。その為に、昇圧回路1Aは、入力電圧Vinを提供する基本電源3と、基本電源3からN段(Nは2以上の整数。図1ではN=6の場合を例示)にわたって直列に接続された単位回路部10とを備えている。昇圧回路1Aは、例えば一つの半導体基板上に他のデジタル回路と共にモノリシックに形成され、基本電源3により生成される入力電圧Vinは例えば3.3Vといった大きさである。各単位回路部10は、基本電源3若しくは前段の単位回路部10から入力される電圧を略二倍に昇圧して出力する、いわゆるダブラー(doubler)回路である。従って、この昇圧回路1Aからの出力電圧Voutは、入力電圧Vinの略2N倍の大きさとなる。段数Nは、必要とされる出力電圧Voutの大きさに応じて決定される。
図2は、各単位回路部10の構成を示す回路図である。単位回路部10は、パワー部20及び駆動部30を有する。パワー部20はチャージポンプ回路を含んで構成されており、このチャージポンプ回路は、二つのコンデンサ21,22とMOS型の複数(例えば4個)のFET23〜26との組み合わせによって、当該単位回路部10への入力電圧V1の略二倍の出力電圧V2を生成する。以下の説明において、FET23〜26のソース及びドレインを電流端子と表現し、ゲートを制御端子と表現する。なお、図2では、FET23〜26が全てnチャネルMOSFETである場合が示されているが、これらはpチャネルMOSFETであってもよい。また、図2に示されるダイオード23a〜26aは、それぞれFET23〜26の寄生ダイオードである。
第1段の単位回路部10のFET24の一方の電流端子は、基本電源3からの電圧を入力電圧V1として受ける。また、第2段以降の単位回路部10のFET24の一方の電流端子は、前段の単位回路部10の出力電圧V2を受ける。FET24の他方の電流端子は、コンデンサ21の一方の電極と、FET23(最終段トランジスタ)の一方の電流端子とに電気的に接続される。FET23の他方の電流端子は、コンデンサ22の一方の電極に電気的に接続される。コンデンサ21の他方の電極は、FET25とFET26との間のノードN1に電気的に接続される。コンデンサ22の他方の電極は基準電位線(GND線)に電気的に接続される。FET25の一方の電流端子は、基本電源3(若しくは前段の単位回路部10の出力端)及びFET24の一方の電流端子に電気的に接続される。FET25の他方の電流端子は、ノードN1を介して、コンデンサ21の他方の電極と、FET26の一方の電流端子とに電気的に接続される。FET26の他方の電流端子は、基準電位線(GND線)に電気的に接続される。
駆動部30は、或る周波数(第1の周波数)でもって変調された駆動信号S1〜S4をFET23〜26に供給する。駆動信号S1〜S4は、各FET23〜26の接続状態及び非接続状態をそれぞれ規定する二値(ハイレベル及びローレベル)の信号である。
駆動部30は、まず、駆動信号S2,S4をハイレベルとし、駆動信号S1,S3をローレベルとする。これにより、FET24,26が接続状態となり、FET23,25が非接続状態となる。従って、コンデンサ21に入力電圧V1が印加され、電荷が蓄積される。次に、駆動部30は、駆動信号S1,S3をハイレベルとし、駆動信号S2,S4をローレベルとする。これにより、FET23,25が接続状態となり、FET24,26が非接続状態となる。従って、コンデンサ21のGND側の電極電位がV1まで持ち上げられる。一方、反対側の電極に蓄積された電荷の一部はFET23を介してコンデンサ22に移動するので、コンデンサ22の両端間電圧は、電位V1に対して移動した電荷の分だけ高くなる。駆動部30がこれらの動作が繰り返すことにより、コンデンサ22の両端間電圧は、次第に入力電圧V1の2倍に近づく。このコンデンサ22の両端間電圧が、出力電圧V2として単位回路部10から出力される。
図1に示されたように、単位回路部10はN段にわたって直列に設けられる。従って、各単位回路部10の出力電圧V2は、後段になるほど高くなる。例えば、入力電圧Vinが3Vの場合、第1段の単位回路部10の出力電圧V2は6V、第2段の単位回路部10の出力電圧V2は12Vとなり、第6段(最終段)の単位回路部10の出力電圧V2(すなわち出力電圧Vout)は192Vとなる。これに対し、昇圧回路1Aに与えられている電源電圧は基本電源3のみであるため、FET23(すなわち、出力電圧V2を生成するコンデンサ22へのポンピングを担う最終段のFET)を駆動するための電源電圧の確保が課題となる。そこで、本実施形態では、少なくとも第N段の単位回路部10の駆動部30が、FET23に供給される駆動信号S1の変調前の電圧(電源電圧)であるバイアス電圧VBIASを生成するバイアス部31を有する。バイアス部31は、パワー部20の出力端と直流結合されており、パワー部20からの出力電圧V2を利用してバイアス電圧VBIASを生成する。
また、最終段に近づくほど出力電圧V2が高圧になることから、FET23の耐圧性にも課題が生じる。図3は、FET23の駆動方式について説明するための図であって、FET23がpチャネルMOSFETである場合を示している。例えば図3(a)に示されるように、駆動信号S1のハイレベルを出力電圧V2とし、ローレベルをGND電位とした場合、FET23のゲート−ソース間電圧VGSの振幅は入力電圧V1と略等しくなるが、その振幅がFET23のゲート−ソース間の耐圧よりも大きくなることがある。その場合、図3(a)に示された回路ではFET23の故障を引き起こすおそれがある。このような問題は、特に第N段(最終段)の単位回路部10において顕著に現れる。
これに対し、例えば図3(b)に示されるように、駆動信号S1のローレベルをGND電位よりも或る定電圧V0だけ高くすることも考えられる。この場合、VGSの振幅はV2−V0と略等しくなるので、V2−V0がFET23のゲート−ソース間の耐圧よりも低ければよい。しかしながら、この回路では、出力電圧V2が変動するとVGSも変動する。そして、出力電圧V2が小さいとゲート駆動電圧が不足することも考えられる。
そこで、本実施形態では、図3(c)に示されるように、駆動信号S1のローレベルをV2−V0に設定する。言い換えれば、出力電圧V2からFET23の閾値電圧を超える電圧V0を減算することによりバイアス電圧VBIASを生成し、このバイアス電圧VBIASと出力電圧V2とを用いて駆動信号S1を生成する。この場合、VGSの振幅はV0と略等しくなるので、V0がFET23のゲート−ソース間の耐圧よりも低ければよい。また、出力電圧V2が変動してもVGSは一定(V0)となる。従って、出力電圧V2が小さくてもゲート駆動電圧が不足することはない。
図4は、図3(c)に示された回路を用いてFET23を駆動した場合の出力電圧V2、電圧V0、及び駆動信号S1の時間変化に関するシミュレーション結果を示すグラフである。この場合、動作開始時においては、コンデンサ22が充電されていないため出力電圧V2は入力電圧V1と等しい。そして、バイアス電圧VBIASがFET23を駆動できる大きさになる前においては、FET23の寄生ダイオード23aを経由してコンデンサ22が充電される。これにより、コンデンサ22の両端間電圧すなわち出力電圧V2が徐々に上昇する。そして、バイアス電圧VBIASがFET23を駆動できる大きさになった後においては、駆動信号S1によってFET23が駆動され、FET23を介してコンデンサ22が充電される。これにより、出力電圧V2は入力電圧V1の略二倍に次第に近づく。
図5は、駆動部30のうち駆動信号S1を生成する部分の具体的な第1構成例を示す回路図である。なお、図5はFET23がpチャネルMOSFETである場合を例示している。図5に示されるように、駆動部30は、バイアス部31と、2個のFET32,33と、2個のレベルシフタ35a,35bとを有する。バイアス部31は、前述したように出力電圧V2からFET23の閾値電圧を超える電圧V0を減算することによりバイアス電圧VBIASを生成する。なお、電圧V0としては、例えば基本電源3からの入力電圧Vinが用いられる。
FET32,33は、バイアス部31の出力端と単位回路部10の出力端(すなわちコンデンサ22の一方の電極)との間に直列に接続されている。すなわち、FET32の一方の電流端子がバイアス部31の出力端に接続され、他方の電流端子がFET33の一方の電流端子に接続されている。FET33の他方の電流端子は単位回路部10の出力端に接続されている。そして、FET32とFET33との間のノードN2が、FET23の制御端子に接続されている。FET32,33の各制御端子には、レベルシフタ35a,35bからの駆動信号S5,S6がそれぞれ提供される。レベルシフタ35aは、デジタルレベル(ハイレベル:3V、ローレベル:0V)の駆動信号Sdと、バイアス電圧VBIASと、出力電圧V2とを受け、駆動信号Sdの振幅及び中心電位を調整して駆動信号S5を生成する。レベルシフタ35bは、駆動信号Sdとは逆相の駆動信号SdBと、バイアス電圧VBIASと、出力電圧V2とを受け、駆動信号SdBの振幅及び中心電位を調整して駆動信号S6を生成する。なお、図5では、FET32がnチャネルMOSFETであり、FET33がpチャネルMOSFETである場合が示されている。また、図中のダイオード32a,33aは、それぞれFET32,33の寄生ダイオードである。
図5に示された駆動部30によれば、駆動信号S1をローレベル(V2−V0)とハイレベル(V2)との間で上下させて、pMOS型のFET23を好適に駆動することができる。なお、このようなバイアス部31の減算回路は、例えば図2に示されたような昇圧回路と同様の構成によって好適に実現し得る。すなわち、FET24に相当するFETと、FET25に相当するFETとの接続を切り離し、前者のFETの一方の電流端子には電圧V2を入力し、後者のFETの一方の電流端子には電圧V0を入力し、これらを互いに減算するように各駆動信号を印加するとよい。このとき、バイアス部31は、パワー部20を駆動する第1の周波数とは独立した第2の周波数でもって変調された駆動信号により動作するとよい。
図6は、駆動部30のうち駆動信号S1を生成する部分の第2構成例を示す回路図である。この第2構成例において、図5に示された第1構成例と異なる点は、レベルシフタの構成である。第2構成例に係る駆動部30は、図5に示された2つのレベルシフタ35a,35bに代えて、1つのレベルシフタ35を有する。レベルシフタ35は、駆動信号Sdと、バイアス電圧VBIASと、出力電圧V2とを受け、駆動信号Sdの振幅及び中心電位を調整して駆動信号S7を生成する。そして、FET32,33の各制御端子には、レベルシフタ35からの共通の駆動信号S7が、駆動信号S5,S6として提供される。
図5に示された第1構成例において、2つの駆動信号S5,S6は、共に出力電圧V2の電圧レベルとバイアス電圧VBIASの電圧レベルとの間を変動し、位相も互いに同じである。従って、図6の第2構成例に示されるように、1つのレベルシフタ35からの駆動信号S7を用いて、nMOS型のFET32とpMOS型のFET33とを駆動できる。
図7は、駆動部30のうち駆動信号S1を生成する部分の第3構成例を示す回路図である。この第3構成例において、図5に示された第1構成例と異なる点は、FET33がnMOS型である点である。この場合、FET33のドレイン及びソースの位置が第1構成例とは逆となる。すなわち、FET33のドレインに出力電圧V2が印加される。従って、FET33をオン状態とする為には、出力電圧V2よりも高い電圧が必要になる。そこで、第3構成例では、出力電圧V2よりも高い電圧を発生する加算回路61が更に設けられている。加算回路61は、出力電圧V2にFET33の閾値電圧を超える電圧V0を加算し、加算後の電圧をレベルシフタ35bに提供する。
なお、この第3構成例において、レベルシフタ35aから出力される駆動信号S5と、レベルシフタ35bから出力される駆動信号S6とは、互いに振幅が異なり、且つ互いに逆位相となる。従って、第2構成例のようにこれらのレベルシフタ35a,35bを1つにまとめることはできない。
図8は、駆動部30のうち駆動信号S1を生成する部分の第4構成例を示す回路図である。なお、図8はFET23がnチャネルMOSFETである場合を例示している。第4構成例は、以下に説明する点を除いて、図5に示された第1構成例と同様である。
図5に示された回路と図8に示された回路との主な相違点は、バイアス部の配置である。すなわち、この駆動部30では、バイアス部31が高圧側に設けられており、このバイアス部31は出力電圧V2と電圧V0とを加算することによりバイアス電圧VBIAS1を生成する。また、第1構成例と同様に、第4構成例においても、FET32がnMOS型であり、FET33がpMOS型である。FET32,33は、単位回路部10の入力端とバイアス部31の出力端との間に直列に接続されている。具体的には、FET32の一方の電流端子(ソース)が単位回路部10の入力端に接続され、他方の電流端子(ドレイン)がFET33の一方の電流端子(ドレイン)に接続されている。FET33の他方の電流端子(ソース)はバイアス部31の出力端に接続されている。
第4構成例では、更に、FET32を駆動するための加算回路62が設けられている。加算回路62は、入力電圧V1にFET32の閾値電圧を超える電圧V0を加算し、加算後の電圧をレベルシフタ35aに提供する。レベルシフタ35aは、駆動信号SdBと、加算回路62からの出力電圧と、入力電圧V1とを受け、駆動信号SdBの振幅及び中心電位を調整して駆動信号S5を生成する。レベルシフタ35bは、駆動信号Sdと、バイアス電圧VBIAS1と、出力電圧V2とを受け、駆動信号Sdの振幅及び中心電位を調整して駆動信号S6を生成する。
図8に示された駆動部30によれば、駆動信号S1をローレベル(V1)とハイレベル(V2+V0)との間で上下させて、nMOS型のFET23を好適に駆動することができる。なお、このようなバイアス部31の加算回路は、例えば図2に示されたような昇圧回路と同様の構成によって好適に実現し得る。すなわち、FET24に相当するFETと、FET25に相当するFETとの接続を切り離し、前者のFETの一方の電流端子には電圧V2を入力し、後者のFETの一方の電流端子には電圧V0を入力し、これらを互いに加算するように各駆動信号を印加するとよい。このとき、バイアス部31は、パワー部20を駆動する第1の周波数とは独立した第2の周波数でもって変調された駆動信号により動作するとよい。
図9は、駆動部30のうち駆動信号S1を生成する部分の第5構成例を示す回路図である。この第5構成例において、図8に示された第4構成例と異なる点は、レベルシフタの構成である。第5構成例に係る駆動部30は、図8に示された2つのレベルシフタ35a,35bに代えて、1つのレベルシフタ35を有する。レベルシフタ35は、駆動信号Sdと、バイアス電圧VBIAS1と、入力電圧V1とを受け、駆動信号Sdの振幅及び中心電位を調整して駆動信号S7を生成する。そして、FET32,33の各制御端子には、レベルシフタ35からの共通の駆動信号S7が、駆動信号S5,S6として提供される。
図10は、駆動部30のうち駆動信号S1を生成する部分の第6構成例を示す回路図である。この第6構成例において、図8に示された第4構成例と異なる点は、FET33がnMOS型である点である。この場合、FET33のドレイン及びソースの位置が第4構成例とは逆となる。すなわち、FET33のドレインにバイアス電圧VBIAS1が印加される。従って、FET33をオン状態とする為には、バイアス電圧VBIAS1よりも高い電圧が必要になる。そこで、第6構成例では、バイアス電圧VBIAS1よりも高い電圧を発生する加算回路63が更に設けられている。加算回路63は、バイアス電圧VBIAS1にFET33の閾値電圧を超える電圧V0を加算し、加算後の電圧をレベルシフタ35bに提供する。なお、本構成例のレベルシフタ35bには、出力電圧V2に代えて、入力電圧V1が入力される。すなわち、レベルシフタ35bは、駆動信号Sdと、電圧(VBIAS1+V0)と、入力電圧V1とを受け、駆動信号Sdの振幅及び中心電位を調整して駆動信号S6を生成する。
以上の説明は駆動部30による駆動信号S1の生成方式に関するものであったが、少なくとも第N段の単位回路部10の駆動部30は、FET23〜26のうちGND電位から浮いた電位間のスイッチング動作を行うFETに供給される駆動信号(本実施形態では駆動信号S3)の電位をシフトするとともにシフト後の電位を維持するレベルシフタ回路を更に有する。
図11は、駆動部30における駆動信号S3の駆動部分の具体的な構成例を示す回路図である。なお、図11はFET25がpチャネルMOSFETである場合を例示している。図11に示されるように、駆動部30は、レベルシフタ回路36と、バッファ37とを有する。レベルシフタ回路36は、デジタルレベル(ハイレベル:3V、ローレベル:0V)の駆動信号Sdを受け、この駆動信号Sdの振幅及び中心電位を調整して駆動信号S3と同レベルの信号を生成する。バッファ37は、レベルシフタ回路36から出力された信号を増強することにより駆動信号S3を生成する。レベルシフタ回路36及びバッファ37の電源としては、入力電圧V1から定電圧V0を減算した電圧(V1−V0)、及び入力電圧V1が使用される。
図12は、レベルシフタ回路36の具体的な構成例を示す回路図である。このレベルシフタ回路36は、3組の対トランジスタを有する。すなわち、レベルシフタ回路36は、一対のFET38a,38bと、一対のFET39a,39bと、一対のFET40a,40bとを有する。FET38a,39a,40aは、入力電圧V1とGND電位との間でこの順に直列接続されている。同様に、FET38b,39b,40bは、入力電圧V1とGND電位との間でこの順に直列接続されている。この例では、FET38a,38b,39a,39bはpチャネルMOSFETであり、FET40a,40bはnチャネルMOSFETである。
FET38aの制御端子はFET38bの他方の電流端子と接続され、FET38bの制御端子はFET38aの他方の電流端子と接続されている。また、FET39a,39bの制御端子には電圧(V1−V0)が印加される。なお、FET38aとFET39aとの間のノードN3と電圧(V1−V0)との間にはダイオード41aが逆方向接続されており、ノードN3の電位がダイオード41aによってクランプされる。同様に、FET38bとFET39bとの間のノードN4と電圧(V1−V0)との間にはダイオード41bが逆方向接続されており、ノードN4の電位がダイオード41bによってクランプされる。FET40aの制御端子には、バッファ42aによって増幅された駆動信号Sdが入力される。FET40bの制御端子には、反転バッファ42bによって増幅された駆動信号Sdの逆相信号が入力される。
上記の構成を有するレベルシフタ回路36によれば、ノードN3,N4の電位を出力することによって、デジタルレベルの駆動信号Sdを、V1と(V1−V0)との間で変化する信号に変換することができる。
図13は、駆動部30における駆動信号S3の駆動部分の別の構成例を示す回路図である。なお、図13はFET25がnチャネルMOSFETである場合を例示している。この例と図11との相違点は、レベルシフタ回路36及びバッファ37に与えられる電源電圧である。すなわち、図11に示された例ではレベルシフタ回路36及びバッファ37の電源として入力電圧V1及び減算電圧(V1−V0)が用いられているが、図13に示される例では、レベルシフタ回路36及びバッファ37の電源として、入力電圧V1及び加算電圧(V1+V0)が用いられる。
また、図13に示される例では、バッファ37とFET25,26との間に、トーテムポール回路27が設けられている。トーテムポール回路27は、pチャネルMOSFETであるFET28と、nチャネルMOSFETであるFET29とを有する。FET28,29は、入力電圧V1とGND電位との間でこの順に直列接続されている。具体的には、FET28の一方の電流端子(ソース)は当該単位回路部10の入力端子に接続され、入力電圧V1を受ける。FET28の他方の電流端子(ドレイン)はFET29の一方の電流端子(ドレイン)に接続されている。FET29の他方の電流端子(ソース)はGND電位に接続されている。
FET28の制御端子には、バッファ37からの出力信号が入力される。FET29の制御端子には、レベルシフタ回路36に入力される駆動信号Sdと同期した信号が入力される。一例では、FET29の制御端子には、駆動信号Sdが入力される。そして、FET28とFET29との間のノードN5の電圧が、駆動信号S3としてFET25の制御端子に入力される。FET25がnチャネルMOSFETである場合、例えばこのような回路構成によって、駆動信号S3を(V1+V0)とGND電位との間で変化させることができ、nチャネルMOSFETであるFET25を好適に動作させることができる。
以上の構成を備える本実施形態の昇圧回路1Aによって得られる効果について説明する。図14は、単位回路部の段数と昇圧電圧との関係の一例を示すグラフであって、グラフG11は本実施形態の昇圧回路1Aの場合を示し、グラフG12は図19に示された昇圧回路100の場合を示す。本実施形態の昇圧回路1Aでは、入力電圧V1の略二倍の出力電圧V2を生成するチャージポンプ回路を含む複数の単位回路部10がN段にわたって接続されている。これにより、グラフG11に示されるように、出力電圧Voutは入力電圧Vinを2N倍した大きさとなる。一方、図19に示された昇圧回路100では、出力電圧Voutは入力電圧VinをN倍した大きさとなる。従って、本実施形態の昇圧回路1Aによれば、小さな回路規模(少ないトランジスタ数および少ないコンデンサ数)にて格段に高い出力電圧Voutを得ることができる。更に、本実施形態によれば、MOSダイオード接続の場合に問題となるゲート−ソース間の閾値電圧に由来する電圧降下損失をなくすことができ、僅かな損失で大きな出力電圧Voutを得ることが可能となる。
また、入力電圧の略二倍の出力電圧を生成するチャージポンプ回路が直列に接続された回路構成では、通常、出力電圧を生成するコンデンサへのポンピングを担うトランジスタの駆動が問題となる。すなわち、少なくとも第N段の単位回路部10において、出力電圧V2がFET23のゲート−ソース間の耐圧よりも大きい場合、回路構成によってはFET23を十分に駆動することができず、コンデンサ22へのポンピング動作に支障をきたす。これに対し、本実施形態の昇圧回路1Aでは、少なくとも第N段の単位回路部10の駆動部30が、FET23に供給される駆動信号S1の生成のためのバイアス電圧VBIAS(またはVBIAS1)を生成するバイアス部31を有し、バイアス部31は出力電圧V2を利用してバイアス電圧VBIAS(またはVBIAS1)を生成する。これにより、FET23を十分に駆動することができ、コンデンサ22へのポンピング動作を好適に行うことができる。
すなわち、本実施形態の昇圧回路1Aによれば、集積化CMOS回路において例えば100Vといったゲート−ソース間の耐圧を越えた出力電圧Voutの生成が可能となる。これは、従来ディスクリート回路でしか成し得なかった1KV以上の昇圧動作をワンチップ集積化LSIにより実現可能となることを意味する。
また、本実施形態の昇圧回路1Aでは、各単位回路部10の動作開始時においてバイアス電圧VBIASがFET23を駆動できる大きさになる前においては、FET23の寄生ダイオード23aを経由してコンデンサ22が充電され、バイアス電圧VBIASがFET23を駆動できる大きさになった後においては、FET23の駆動によりコンデンサ22が充電される。これにより、出力電圧V2をバイアス電圧VBIASに利用する構成であっても、コンデンサ22へのポンピングを好適に行い、最終的に高い出力電圧V2を得ることができる。
また、本実施形態の昇圧回路1Aにおいて、FET23がnチャネルMOSFETである場合、バイアス部31は、FET23の閾値電圧を超える電圧V0と出力電圧V2とを加算することによりバイアス電圧VBIAS1(=V2+V0)を生成する。或いは、FET23がpチャネルMOSFET型である場合、バイアス部31は、電圧V0を出力電圧V2から減算することによりバイアス電圧VBIAS(V2−V0)を生成する。これらの構成によって、FET23のゲート−ソース間の耐圧を超えるような状態を防ぎ、FET23をより好適に駆動することができる。
また、本実施形態の昇圧回路1Aにおいて、バイアス部31は、パワー部20を駆動する駆動信号S1〜S4の第1の周波数とは独立した第2の周波数でもって変調された駆動信号により動作する。これにより、出力電圧V2を下げるために第1の周波数を低く抑える場合であっても、第2の周波数を維持してバイアス電圧VBIAS(またはVBIAS1)を好適に生成し続けることができる。
また、本実施形態の昇圧回路1Aにおいて、少なくとも第N段の単位回路部10の駆動部30は、GND電位から浮いた電位間のスイッチング動作を行うFET25に供給される駆動信号S3の電位をシフトするとともにシフト後の電位を維持するレベルシフタ回路36を有する。これにより、高電圧でのスイッチングを行うFET25を好適に駆動することができる。
また、本実施形態の昇圧回路1Aによれば、初段から最終段までの各単位回路部10の動作が独立しているので、動作状態を維持したまま途中の段から出力電圧を得ることも可能である。
ここで、図20は、特許文献1に記載された昇圧回路の構成を示す回路図である。この昇圧回路200は、ディクソンチャージ型昇圧回路のダイオードを集積化のためにMOSFETに置き換えた構成を備える。すなわち、昇圧回路200は、複数のFET202a〜202eと複数のコンデンサ204a〜204eとが組み合わされて成り、コンデンサの個数に応じた倍率でもって入力電圧Vinを昇圧して出力する。具体的には、FET202a〜202eが互いに直列に接続されており、これらのFET202a〜202e間のノードNa〜Ndのうち奇数番目のノードNa,Ncにコンデンサ204a,204cの一方の電極が接続され、偶数番目のノードNb,Ndにコンデンサ204b,204dの一方の電極が接続されている。或る周期においては、コンデンサ204a,204cの他方の電極にバッファ206を介してハイレベルの信号が印加され、コンデンサ204b,204dの他方の電極にバッファ208を介してローレベルの信号が印加される。次の周期では、コンデンサ204a,204cの他方の電極にバッファ206を介してローレベルの信号が印加され、コンデンサ204b,204dの他方の電極にバッファ208を介してハイレベルの信号が印加される。このような動作を繰り返すことによって、コンデンサ204aからコンデンサ204eへ向けて順に昇圧されながら電荷が受け渡され、最終段のコンデンサ204eの両端間電圧が出力電圧Voutとして出力される。
しかしながら、上記の昇圧回路200では、第k番目のFETがオンする為の閾値電圧をVth(k)とすると、Voutは次の式(1)のようになり、十分な電圧効率及び電力効率を得ることができないという問題がある。
Vout=5(Vin−Vth(k)) ・・・(1)
そこで、特許文献1に記載された昇圧回路は、図21(a)に示されるような各FET202a〜202eの接続形態を改め、図21(b)に示されるように、各FET202a〜202eのドレイン−ゲート間にそれぞれブートストラップ回路210(図では、簡略化のため電源記号を用いて示す)を接続し、各FET202a〜202eを完全なオン状態にすることを企図している。
しかしながら、そのような構成であっても、以下に述べる問題が生じる。特許文献1に記載された構成では、FET202a〜202eの駆動周波数とブートストラップ回路210の駆動周波数とは、互いに等しいか、若しくは従属の関係にある必要がある。このことは、出力安定化の為に負荷に応じてFET202a〜202eの駆動周波数を変化させるとブートストラップ回路210の駆動周波数も同時に変化せざるを得ないことを意味する。一般に、負荷変動に対するチャージポンプの電力安定制御は、駆動周波数を調整することにより最大の電力効率が得られる条件にて行われる。特に、負荷が小さいときには、可能な限り低い周波数で駆動することにより、消費電力を抑えることができる。しかしながら、特許文献1に記載された構成では、ブートストラップ回路210のコンデンサが電荷を保持することが困難になる。電荷を保持する為にはコンデンサ自体を大型化する必要があり、集積化の妨げとなる。
また、出力電圧Voutの大きさがFET202eのゲート−ソース間の耐圧を超える場合、特許文献1に記載された構成ではFET202eのゲート−ソース間が耐圧不足により壊れてしまうおそれがある。従って、FETのゲート−ソース間の耐圧を超える出力電圧Voutを得たい場合には、適用が難しいという問題がある。
上記の2つの問題点に関し、本実施形態の昇圧回路1Aでは、パワー部20の駆動周波数と、バイアス部31の駆動周波数とが互いに独立しており、それぞれを自由に設定することが可能となっている。従って、より高い電力変換効率を達成できる。また、本実施形態の昇圧回路1Aでは、前述したように少なくとも第N段の単位回路部10の駆動部30が、FET23に供給される駆動信号S1の生成のためのバイアス電圧VBIAS(またはVBIAS1)を生成するバイアス部31を有し、バイアス部31は出力電圧V2を利用してバイアス電圧VBIAS(またはVBIAS1)を生成する。従って、FETのゲート−ソース間の耐圧を超えた高い出力電圧Voutを生成することができる。
図22は、特許文献2に記載された昇圧回路の構成を示す回路図である。また、図23は、この昇圧回路300が備える第1のチヤージポンプ回路302及び第2のチヤージポンプ回路304の構成を示す回路図である。なお、図中のCLはクロック信号であり、φ1は正相の駆動信号であり、φ2は逆相の駆動信号である。
第1のチヤージポンプ回路302は、複数のFETと2つのコンデンサ306,308との組み合わせにより構成され、駆動信号φ1,φ2を受けて、入力電圧Vinを昇圧して出力する。第2のチヤージポンプ回路304は、複数のFETと2つのコンデンサ310,312との組み合わせにより構成され、駆動信号φ1,φ2を受けて、入力電圧Vinを昇圧して出力する。第1のチヤージポンプ回路302の出力電圧Vout1は、昇圧回路300の出力電圧として外部の負荷に供給される。第2のチヤージポンプ回路304の出力電圧Vout2は、第1及び第2のチヤージポンプ回路302,304内のFETのゲート駆動信号を生成するための電源電圧として用いられる。
特許文献2に記載された昇圧回路は、コンデンサ306,308の容量を増加することによって第1のチャージポンプ回路302から外部負荷へ供給される出力電流を大きくした場合であっても、第1のチャージポンプ回路302のFETのオン抵抗を速やかに低下させて第1のチャージポンプ回路302を素早く立ち上げ、且つ変換効率を向上することを企図している。しかしながら、特許文献2に記載された昇圧回路は、入力電圧Vinと出力電圧Vout2との電圧差がFETのゲート−ソース間の耐圧よりも低い場合に限って適用可能である。ゲート−ソース間に印加される電圧が一定であり、Vout1が変動したときに一部のFETにおいて耐圧性が不足するおそれがあるからである。本実施形態の各単位回路部10においては、駆動信号S1を生成するためのバイアス電圧VBIAS(またはVBIAS1)を、FET23の閾値電圧を超える電圧を出力電圧V2に加算(もしくは減算)して作成しているので、上記の問題は生じない。
図24及び図25は、特許文献3に記載された昇圧回路の構成を示す回路図である。これらの昇圧回路400A,400Bは、加算回路402,404と、交流結合方式の2倍昇圧回路である昇圧部406,408と、出力回路410とを備えている。これらのそれぞれには、電圧振幅が電源電圧Vccと等しい相補的なクロックCLK,CLKBARが入力される。また、昇圧部406,408には、クロックCLK,CLKBARよりも高電圧のクロックHCLK,HCLKBARが出力回路410より提供される。
図26は、加算回路402の構成を示す回路図である。なお、加算回路404もこれと同様の回路構成を有する。この加算回路402は、2つのnMOSFET412a,412bと、4つのpMOSFET414a〜414dと、2つのコンデンサ416a,416bとを有する。加算回路402は、2つの入力端402a、402bを有し、これらの入力端402a、402bに入力された電圧を加算し、加算後の電圧を一方の出力端402cから出力する。他方の出力端402dからは、入力電圧と等しい電圧が出力される。
図27は、昇圧部406の構成を示す回路図である。なお、昇圧部408もこれと同様の回路構成を有する。この昇圧部406は、2つのnMOSFET422a,422bと、4つのpMOSFET424a〜424dと、2つのコンデンサ426a,426bとを有する。昇圧部406は、2つの入力端406a、406bを有し、高電圧のクロックHCLK,HCLKBARを利用して、これらの入力端406a、406bに入力された電圧を昇圧する。そして、昇圧後の電圧を2つの出力端406c,406dから出力する。
しかしながら、この特許文献3に記載された回路では、昇圧段数が増加するに従い、高電圧のクロックHCLK,HCLKBARの振幅が大きくなる。また、通常電圧のクロックCLK,CLKBARと高電圧のクロックHCLK,HCLKBARとが同期しているため、これらの異なる周波数で制御することができない。従って、貫通電流による損失が懸念される。また、HCLK,HCLKBARの振幅が最終的な出力電圧の大きさと同じになるが、その振幅の大きさは各FETのゲート−ソース間耐圧よりも小さく制限されるので、最終的な出力電圧も制限されてしまう。同様の問題は、一つ後段の昇圧部からクロックHCLK,HCLKBARを受ける図25の構成においても同様に生じる。また、各段のコンデンサ426a,426bに対し、MOSダイオード接続を通じてプリチャージが必要となる。本実施形態の昇圧回路1Aによれば、これらの問題を解決し、小さな回路規模でより高い出力電圧を得ることができる。
(変形例)
上記実施形態において、無負荷時の出力電圧Voutと有負荷時の出力電圧Voutとの電圧差をΔV、コンデンサ21,22の容量をC1、駆動周波数をfとすると、電力Pは次の式によって表される。
P=f・C1(ΔV)2
上式から、出力電圧Voutを或る値に保つ為にはΔVを一定にする必要がある。すなわち、負荷に比例して駆動周波数を変化させることにより、出力電圧Voutの安定化が可能となる。
図15及び図16は、上記実施形態の変形例を示す図である。これらの図に示される昇圧回路1B,1Cは、上記実施形態の昇圧回路1Aに加えて、フィードバック回路50A,50Bをそれぞれ備えている。フィードバック回路50A,50Bは、第N段の単位回路部10からの出力電圧Voutの大きさに応じてパワー部20の駆動周波数(第1の周波数)を制御することにより、該出力電圧Voutを所定の大きさに近づける回路である。
図15に示されるフィードバック回路50Aは、設定値入力部51、演算処理部52、ゲイン設定部53、A/Dコンバータ54、及び周波数設定部55を有する。設定値入力部51は、出力電圧Voutの目標値を設定する。演算処理部52は、最終段の単位回路部10からの出力電圧Voutの大きさと、出力電圧Voutの目標値との差に応じて、ゲイン設定部53におけるフィードバックゲインを変化させる(ゲイン可変制御)。A/Dコンバータ54は、設定値入力部51の目標値と出力電圧Voutとの差をデジタル化する。このデジタル信号に、ゲイン設定部53のゲインが乗算される。その後、このゲイン乗算後のデジタル信号に基づいて、周波数設定部55が第1の周波数を決定し、駆動部30の周波数を制御する。
また、フィードバック回路50Aは、リミッタ回路56を更に有する。リミッタ回路56は、最終段の単位回路部10からの出力電圧Voutの大きさがリミット値を超えた場合に周波数設定部55に指示を送り、第1の周波数を低下させることにより出力電圧Voutの大きさをリミット値以下とする。これにより、例えば負荷が急激に変動した場合であっても出力電圧Voutが過大になることを防ぎ、第N段及びその付近の単位回路部10の故障を回避することができる。
図16に示されるフィードバック回路50Bは、上述したフィードバック回路50AのA/Dコンバータ54をコンパレータ57に置き換えた構成を有する。コンパレータ57の機能は、A/Dコンバータ54と同様である。コンパレータ57は1ビットA/D変換に相当する。
本変形例によれば、フィードバック回路50A,50Bを備えることにより、出力電圧Voutを安定させることができる。ここで、図17(a)は、フィードバック回路50Aが演算処理部52を有しない場合(すなわちゲイン一定制御の場合)における目標値応答特性を示すグラフである。また、図17(b)は、フィードバック回路50Aが演算処理部52を有する場合(すなわちゲイン可変制御の場合)における目標値応答特性を示すグラフである。なお、図17(a)、図17(b)において、横軸は時間(サンプリング回数)を表し、縦軸は電圧(V)を表す。図17(a)に示されるゲイン一定制御ではハンチング現象が持続しているが、図17(b)に示される適応制御ではハンチング現象を抑えて出力電圧Voutをより安定して収束させることが可能である。
図18は、本変形例における負荷変動時の応答例を示すグラフである。グラフG21は出力電圧Vout、グラフG22は駆動周波数(第1の周波数)を表す。また、横軸は時間(サンプリング回数)、左縦軸は電圧(V)、右縦軸は周波数(Hz)をそれぞれ表す。なお、サンプリング回数300及び600の各時点において、負荷を非連続的に変動させている。同図に示されるように、本変形例によれば、負荷変動時においてもオーバーシュートすることなく安定して出力電圧Voutが収束する。
本発明による昇圧回路は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では図2に示された単位回路部10を例に説明を行ったが、本発明の単位回路部は、図2に示された構成以外にも様々な構成を適用可能である。