しかし、特許文献1に記載された仮設トイレシステムでは、多数の仮設トイレを設置するために、予め多数のマンホールを地中に埋設しておく必要がある。そのため、大がかりな設置工事が必要であり、多くのコストがかかってしまう。また、1つのマンホールに1つの仮設トイレを接続するので、マンホールの設置後に、仮設トイレの数を増やすことができない。避難場所に避難してきた人の数に応じて仮設トイレの設置個数を調整することが困難である。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、下水本管が破損した場合でも仮設トイレを利用することができ、設置コストが比較的安価であり、仮設トイレの設置個数を事後的に増加可能な仮設トイレシステムを提供することである。
本発明に係る仮設トイレシステムは、貯留槽と、地中に埋設された流路切替手段とを備えている。前記流路切替手段は、流入口と、下水本管と連通する第1流出口と、前記貯留槽の内部空間と連通する第2流出口とを有し、前記流入口から流入する水を前記第1流出口から流出させる第1状態と、前記流入口から流入する水を前記第2流出口から流出させる第2状態とに切替可能に構成されている。前記仮設トイレは更に、前記流路切替手段の前記流入口に連通する下流端部と、前記下流端部よりも上方に位置する上流端部とを有し、地中に埋設された縦管部材と、地上に設置される2つ以上の仮設トイレと、前記2つ以上の仮設トイレに接続され、前記縦管部材の前記上流端部に接続される下流端部を有する仮設配管と、を備えている。
上記仮設トイレシステムによれば、下水本管が破損していない場合には、流路切替手段を第1状態に設定することにより、仮設トイレからの汚水を下水本管に流出させることができる。一方、下水本管が破損している場合には、流路切替手段を第2状態に切り替えることにより、仮設トイレからの汚水を貯留槽に貯めることができ、破損した下水本管から汚水が漏れ出すことを防止することができる。よって、下水本管が破損した場合でも、仮設トイレを利用することができる。
上記仮設トイレシステムによれば、2つ以上の仮設トイレからの汚水を、共通の縦管部材を通じて、下水本管または貯留槽に排出することができる。仮設トイレ毎に縦管部材を設置する必要がないので、大がかりな設置工事は不要であり、設置コストを抑えることができる。また、上記仮設トイレシステムは、災害発生前に貯留槽、流路切替手段、および縦管部材を予め設置しておき、災害発生後に、仮設トイレおよび仮設配管を設置するとともに仮設配管の下流端部を縦管部材の上流端部に接続することにより、構築することができる。仮設配管に接続される仮設トイレの数は、縦管部材の数に制約されないので、仮設トイレの設置個数を事後的に増加させることができる。
本発明の好ましい一態様によれば、前記仮設トイレシステムは、地中に埋設された上流管路を備え、前記流路切替手段の前記流入口は、前記上流管路と連通している。
上記態様によれば、予め地中に埋設された上流管路を利用した仮設トイレシステムを構築することができる。
本発明の好ましい一態様によれば、前記流路切替手段は、上方に開口する点検口と、前記流入口と、前記第1流出口と、前記第2流出口とが形成されたます本体と、前記ます本体に設けられ、前記流入口から前記第2流出口へ水が流れないように前記流入口と前記第1流出口とを連通させる第1の切替位置と、前記流入口から前記第1流出口へ水が流れないように前記流入口と前記第2流出口とを連通させる第2の切替位置との間で位置変更が可能な切替手段と、を備えたますである。
上記態様によれば、流路切替手段として、ますが利用される。上記ますによれば、切替手段の位置を変更するだけで、流路を簡単に切り替えることができる。また、ますは点検口を有しているため、メンテナンスが容易である。仮設トイレシステムは主に災害発生時に利用されるものであり、流路切替手段を地中に設置してから災害発生時までに、長期間が経過することが想定される。長期間が経過すると、流路切替手段が正常に機能するか否かが懸念される。しかし、上記態様によれば、流路切替手段はますなので、災害発生時に流路切替手段を容易にメンテナンスすることができる。よって、流路切替手段の流路切替機能を十分に確保することができ、仮設トイレシステムの信頼性を向上させることができる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記縦管部材の前記下流端部は、前記上流管路に接続されている。
上記態様によれば、縦管部材と流路切替手段とは別々の場所に設置される。縦管部材に仮設配管を接続する作業と、流路切替手段の流路の切替作業とを、別々の場所にて行うことができる。そのため、それらの作業を容易に行うことができる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記縦管部材は、前記ます本体の前記点検口に接続された点検筒である。
上記態様によれば、縦管部材(点検筒)と流路切替手段(ます)とは、同じ場所に設置される。よって、設置スペースを削減することができ、また、設置作業を簡単化することができる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記流路切替手段は、前記流入口をなす上方に開口する点検口と、前記第1流出口と、前記第2流出口とが形成されたます本体と、前記ます本体に設けられ、前記点検口から前記第2流出口へ水が流れないように前記点検口と前記第1流出口とを連通させる第1の切替位置と、前記点検口から前記第1流出口へ水が流れないように前記点検口と前記第2流出口とを連通させる第2の切替位置との間で位置変更が可能な切替手段と、を備えたますである。
上記態様によれば、流路切替手段として、ますが利用される。よって、前述したように、流路切替手段の流路切替機能を十分に確保することができ、仮設トイレシステムの信頼性を向上させることができる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記仮設配管は、上方に向けて開口する注水口を有し、前記注水口に開閉可能に設けられた蓋を備えている。なお、ここでいう「上方」は鉛直上向きに限らず、鉛直方向から傾いた方向(いわゆる斜め上方)も含まれる。
仮設トイレの利用時に、仮設トイレから仮設配管に汚水や汚物が排出されるが、これらの汚水または汚物が仮設配管内に留まる場合がある。上記態様によれば、注水口から仮設配管に水を供給することにより、仮設配管内に溜まった汚水や汚物を上記水と共に排出することができる。ところで、注水口が常時開いたままだと、注水口から仮設配管の外部に異臭が漏れるおそれがある。しかし、上記態様によれば、注水口に蓋が設けられているので、この蓋により、仮設配管の外部に異臭が漏れることを防止することができる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記仮設配管は給水設備に接続されている。
上記態様によれば、給水設備から仮設配管に向けて水を供給することにより、仮設配管内に溜まった汚水や汚物を上記水と共に排出することができる。
本発明によれば、下水本管が破損した場合でも仮設トイレを利用することができ、設置コストが比較的安価であり、仮設トイレの設置個数を事後的に増加可能な仮設トイレシステムを提供することができる。
以下、図面を参照しながら、本発明に係る仮設トイレシステムの実施の形態について説明する。図1は本実施形態に係る仮設トイレシステム1の側面図、図2は仮設トイレシステム1の平面図である。図1に示すように、仮設トイレシステム1は、地上に設置された地上部分1Aと、地中に埋設された地中部分1Bとを備えている。地上部分1Aは、地震等の災害が発生した後に施工される部分であり、地中部分1Bは災害が発生する前に施工される部分である。
地上部分1Aは、2つ以上の仮設トイレ5と、それら2つ以上の仮設トイレ5に接続された仮設配管30とを有している。
図1および図2に示す例では、仮設トイレ5は2つしか図示していないが、仮設トイレ5の個数が2つに限定されないことは勿論である。仮設トイレ5の個数は、3つ以上であってもよい。仮設トイレ5の個数は、例えば10個以上であってもよく、20個以上であってもよく、30個以上であってもよい。詳細については後述するが、本実施形態に係る仮設トイレシステム1では、仮設トイレ5の設置個数を事後的に適宜増やすことができる。仮設トイレ5の設置個数は何ら限定されない。仮設トイレ5同士は、仮設の仕切壁6によって仕切られている。図3に示すように、仮設トイレ5は、下方に向けて開口する排出口5aを有している。排出口5aには、弁5bが設けられている。仮設トイレ5の不使用時には弁5bが閉じられ、仮設配管30から仮設トイレ5に向けて異臭が漏れないようになっている。
図1および図2に示す例では、仮設配管30は1本しか図示していないが、仮設配管30の本数は2本以上であってもよい。仮設配管30は、複数の管部分を有する分岐管であってもよい。本実施形態では、仮設配管30は、塩化ビニル樹脂製の複数の管部材によって形成されている。ただし、仮設配管30の材料は何ら限定されない。仮設配管30を構成する複数の管部材の材料は同一であってもよく、異なっていてもよい。ここで「管部材」とは、水の流路を形成し得る部材であり、例えば直管、曲管、継手、T字管(チーズ)などが含まれる。本実施形態では、仮設配管30は、直管31、エルボ32、およびエルボ33を含んでいる。
図3に示すように、エルボ32の一端部は上方に向けて開口している。エルボ32の一端部は、水が注入される注水口32aとなっている。注水口32aには、開閉可能な蓋34が設けられている。なお、図3では、閉じた状態の蓋34を実線で表し、開いた状態の蓋34を仮想線で表している。蓋34を閉じることにより、仮設配管30の外部に異臭が漏れることが防止される。直管31には、仮設トイレ5の排出口5aに接続される開口31aが形成されている。開口31aを通じて、仮設トイレ5から仮設配管30に汚水または汚物が排出される。
図1に示すように、地中部分1Bは、縦管部材15と、上流管路10と、流路変更が可能なます40と、貯留槽20とを備えている。これら縦管部材15、上流管路10、ます40、および貯留槽20は、地中に埋設されている。
縦管部材15は、鉛直方向に延びている。ただし、縦管部材15は、鉛直方向から傾いた方向に延びていてもよい。縦管部材15は、仮設配管30から上流管路10に汚水を導く役割を果たす。縦管部材15は、単一の管部材により構成されていてもよく、複数の管部材により構成されていてもよい。ここでは、縦管部材15は、塩化ビニル樹脂製の直管により構成されている。ただし、縦管部材15の材料は何ら限定されない。縦管部材15は、下流端部15bと、下流端部15bよりも上方に位置する上流端部15aとを有している。
図4は、仮設配管30を設置する前の縦管部材15を表す図である。縦管部材15の上流端部15aには、枠体16が固定されている。固定方法は何ら限定されないが、例えば、枠体16は縦管部材15の上流端部15aに接着されている。枠体16の上部には、蓋17が着脱可能に嵌め込まれている。図5に示すように、仮設配管30の設置時には、枠体16から蓋17が取り外され、縦管部材15に仮設配管30のエルボ33が接続される。本実施形態では、エルボ33の一端部33aに接続部材18が接着等により固定され、接続部材18が枠体16に嵌め込まれる。接続部材18と枠体16との間には、パッキン19が設けられている。なお、上記の接続構造は一例に過ぎず、仮設配管30と縦管部材15とを接続する構造は何ら限定されない。
図1に示すように、縦管部材15の下流端部15bは上流管路10に接続されている。本実施形態に係る上流管路10は、図示しない家屋(例えば、避難場所となっている体育館)等からの汚水を下水本管25に向けて導く管路からなっている。上流管路10は、災害が発生していないときに家屋等と下水本管25とをつなぐ排水管路の一部を形成している。本実施形態に係る上流管路10は、仮設トイレシステム1以外にも利用される管路であり、通常時にも利用される汎用の管路である。ただし、上流管路10は汎用的な管路に限らず、仮設トイレシステム1のための専用の管路であってもよい。
上流管路10は、ます40に接続されている。次に、ます40について説明する。ます40は、流路を切り替える流路切替手段の一例である。ます40は、上流管路10の下流端が接続された流入口52と、第1流出口53と、第2流出口54とを有している。
図6は、ます40の平面図である。図7は、ます40の断面図である。図7に示すように、ます40は、ます本体41と蓋体42とを備えている。ます本体41の上部には、上方に開口する点検口51が形成されている。ます本体41の側部には、側方に開口する流入口52および第1流出口53が形成されている。ます本体41の下部には、下方に開口する第2流出口54が形成されている。
図1に示すように、点検口51には点検筒56が接続されている。点検筒56は、地表にまで延びており、作業者は点検筒56を通じて、流路を切り替える作業を行うことができると共に、ます本体41の内部に破損または詰まりなどがないかを点検することができる。点検筒56の上端部には、蓋57が嵌め込まれている。蓋57は、地上から取り外しが可能である。点検筒56は蓋57によって閉じられている。
図7に示すように、第1流出口53は、流入口52と反対側の部分に形成されている。第1流出口53の中心線と流入口52の中心線とは一致している。ただし、流入口52と第1流出口53との位置関係は特に限定されない。例えば、第1流出口53の中心線と流入口52の中心線とは、平面視において直交していてもよい。第2流出口54は、平面視において、流入口52と第1流出口53との間に形成されている。
蓋体42は、ます本体41内の水の流路を切り替える部材であり、「切替手段」の一例である。図8、図9、図10は、それぞれ蓋体42の平面図、側面図、正面図である。蓋体42は、蓋本体61と、持ち手62と、嵌合凸部63とを備えている。蓋本体61は、流入口52から第1流出口53へと繋がる流路を形成する底面65を備えている。嵌合凸部63は、第2流出口54を閉塞すべく、第2流出口54に嵌合可能な部位である。嵌合凸部63の外周部には、ゴム製のシール部材64が設けられている。蓋体42は、第2流出口54に着脱自在に設けられている。蓋体42が第2流出口54に装着された位置、第2流出口54から取り外された位置を、それぞれ「第1の切替位置」、「第2の切替位置」という。蓋体42が第1の切替位置にあると、第2流出口54は閉鎖される。第1の切替位置は、流入口52から第2流出口54へ水が流れないように流入口52と第1流出口53とを連通させる位置である。蓋体42が第2の切替位置にあると、第2流出口54は開放される。第2の切替位置は、流入口52から第1流出口53へ水が流れないように流入口52と第2流出口54とを連通させる位置である。
なお、上記のます40は一例に過ぎない。流路切替機能を有する公知の任意のますを、仮設トイレシステム1の流路切替手段として利用することができる。
図1に示すように、ます40の第1流出口53には、第1下流管路11の一端が接続されている。第1下流管路11の他端は、下水本管25に接続されている。第1下流管路11は、ます40の第1流出口53と下水本管25とをつないでいる。
ます40の第2流出口54には、第2下流管路12の一端が接続されている。第2下流管路12の他端は、貯留槽20に接続されている。第2下流管路12は、ます40の第2流出口54と貯留槽20とをつないでいる。
ます40の流入口52は、上流管路10と連通している。ます40の第1流出口53は、第1下流管路11を介して下水本管25と連通している。ます40の第2流出口54は、第2下流管路12を介して貯留槽20の内部空間と連通している。
以上が仮設トイレシステム1の構成である。次に、仮設トイレシステム1の施工方法について説明する。なお、下記に説明する方法は仮設トイレシステム1の施工方法の一例であり、仮設トイレシステム1の施工方法が下記の方法に限定されないことは勿論である。
前述したように、仮設トイレシステム1は地上部分1Aと地中部分1Bとを備えている。地中部分1Bは災害発生前に施工され、地上部分1Aは災害発生後に施工される。
地中部分1Bを施工するときには、まず、地面を掘り起こす。次に、縦管部材15、貯留槽20、ます40、上流管路10、第1下流管路11、および第2下流管路12を設置する。そして、土砂をかぶせる。これにより、地中部分1Bが埋設される。なお、地中部分1Bの施工の際には、ます40の蓋体42は第1の切替位置に設定される。すなわち、ます40は、上流管路10から下水本管25に向けて汚水を流す状態(以下、第1状態という)に設定される。
地上部分1Aの施工にあたっては、仮設配管30を設置し、仮設配管30と縦管部材15とを接続する。また、仮設配管30に開口31a(図3参照)を形成し、仮設トイレ5を仮設配管30に接続する。その後、仮設トイレ5の周囲に仕切壁6を設置する。なお、地中部分1Bを施工してから長期間が経過している場合があるので、地上部分1Aの施工の際に、点検筒56を通じてます40を点検することが好ましい。
下水本管25が破損していない場合には、ます40の状態を切り替える必要はない。ます40は、第1状態に維持される。一方、下水本管25が破損している場合、または、破損しているおそれがある場合には、ます40を切り替える。すなわち、蓋体42の位置を第1の切替位置から第2の切替位置に切り替える。これにより、ます40は、上流管路10から貯留槽20に向けて汚水を流す状態(以下、第2状態という)に切り替えられる。
仮設トイレシステム1では、例えば用便の後に、または、用便の有無に拘わらず定期的あるいは不定期に、蓋34を開いて仮設配管30に水を注入する。すると、仮設配管30内の汚水または汚物は、注入された水によって流され、縦管部材15、上流管路10、ます40を経て、下水本管25または貯留槽20に排出される。このようにして、災害時に、仮設の水洗トイレを構築することができる。
以上のように、本実施形態に係る仮設トイレシステム1によれば、下水本管25が破損していない場合には、ます40を第1状態に設定することにより、仮設トイレ5からの汚水を下水本管25に流出させることができる。一方、下水本管25が破損している場合には、ます40を第2状態に切り替えることにより、仮設トイレ5からの汚水を貯留槽20に貯めることができ、破損した下水本管25から汚水が漏れ出すことを防止することができる。よって、下水本管25が破損した場合でも、仮設トイレ5を利用することができる。
また、仮設トイレシステム1によれば、2つ以上の仮設トイレ5からの汚水を、共通の縦管部材15を通じて、下水本管25または貯留槽20に排出することができる。仮設トイレシステム1によれば、仮設トイレ5毎に縦管部材15を設置する必要がないので、大がかりな設置工事は不要であり、設置コストを抑えることができる。また、仮設トイレシステム1は、災害発生前に縦管部材15、上流管路10、ます40、第1下流管路11、貯留槽20、および第2下流管路12を予め設置しておき、災害発生後に、仮設トイレ5および仮設配管30を設置するとともに仮設配管30を縦管部材15に接続することにより、構築することができる。仮設配管30に接続される仮設トイレ5の数は、縦管部材15の数に制約されないので、仮設トイレ5の設置個数を事後的に増加させることができる。よって、仮設トイレシステム1が配置される避難場所に集まった人の数に応じて、仮設トイレ5の設置個数を適宜調整することができる。
本実施形態に係る仮設トイレシステム1では、流路を切り替える流路切替手段は、ます40である。しかし、流路切替手段はます40に限定されない。流路切替手段として、流路を切り替えることのできる任意の手段を用いることができる。例えば、流路切替手段として流路切替弁を用いることができる。
しかし、本実施形態に係る仮設トイレシステム1によれば、流路切替手段としてます40を用いているので、以下のような効果を得ることができる。すなわち、ます40によれば、蓋体42の位置を変更するだけで、流路を簡単に切り替えることができる。また、ます40は点検口51を有しているため、メンテナンスが容易である。仮設トイレシステム1は主に災害発生時に利用されるものであり、流路切替手段を地中に設置してから災害発生時までに、長期間が経過することが想定される。長期間が経過すると、流路切替手段が正常に機能するか否かが懸念される。しかし、本実施形態によれば、災害発生時にます40を容易にメンテナンスすることができる。よって、ます40の流路切替機能を十分に確保することができ、災害発生時の仮設トイレシステム1の信頼性を向上させることができる。
また、本実施形態に係る仮設トイレシステム1によれば、縦管部材15とます40とは別々の場所に設置される。災害発生時に、縦管部材15に仮設配管30を接続する作業と、ます40の流路の切替作業またはメンテナンス作業とを、別々の場所にて行うことができる。そのため、それらの作業を容易に行うことができる。
仮設トイレ5の利用時に、仮設トイレ5から仮設配管30に汚水や汚物が排出されるが、これらの汚水または汚物が仮設配管30内に留まる場合がある。しかし、本実施形態に係る仮設トイレシステム1によれば、注水口32aから仮設配管30に水を注入することにより、仮設配管30内に溜まった汚水や汚物を上記水と共に排出することができる。注水口32aが常時開いたままだと、注水口32aから仮設配管30の外部に異臭が漏れるおそれがある。しかし、注水口32aに蓋34が設けられているので、この蓋34により、仮設配管30の外部に異臭が漏れることを防止することができる。
以上、本発明の実施の一形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限らず、他にも種々の形態にて実施することができる。次に、他の実施形態の例について簡単に説明する。以下の説明では、前記実施形態と同様の要素には同様の符号を付し、それらの説明は省略する。
図11に示す実施形態は、ます40のます本体41の点検口51に接続される点検筒を縦管部材15として利用したものである。言い換えると、縦管部材15が点検筒を兼ねているものである。本実施形態によれば、縦管部材15とます40とは、同じ場所(厳密には、平面視において同じ場所)に設置される。よって、仮設トイレシステム1の地上における設置スペースを削減することができ、また、設置作業を簡単化することができる。
図12に示す実施形態は、上流管路10を省略したものである。本実施形態では、ます40の点検口51が流入口52をなしている。仮設トイレ5からの汚水は、仮設配管30および縦管部材15(点検筒)を経由し、点検口51を通じてます40内に導かれる。本実施形態においても、仮設トイレシステム1の地上における設置スペースを削減することができる。更に、本実施形態によれば、上流管路10が不要であるので、仮設トイレシステム1の地中における設置スペースも削減することができる。
図13に示す実施形態は、仮設配管30の上流端を給水設備22に接続したものである。給水設備22は、水を供給することのできる設備をいい、例えば、水が貯留されたタンク、給水車、家屋に設けられた水道管などが含まれる。本実施形態によれば、給水設備22から仮設配管30に向けて水を供給することにより、仮設配管30内に溜まった汚水や汚物を上記水と共に排出することができる。
図14および図15に示す実施形態は、流路切替手段を変更したものである。本実施形態では、ます40に代えて、貯留槽20の内部に配置された回転可能なT字管45が設けられている。T字管45は、流入口45aと、第1流出口45bと、第2流出口45cとを有している。流入口45aは上流管路10に接続され、第1流出口45bは第1下流管路11に接続されている。第2流出口45cは、貯留槽20の内部で開放されている。図14および図15に示すように、T字管45は、第2流出口45cが上方に向けて開口する位置(第1の切替位置)と、第2流出口45cが下方に向けて開口する位置(第2の切替位置)との間で回転可能なように、貯留槽20の内部において上流管路10および第1下流管路11に接続されている。図14に示すように、T字管45を第1の切替位置に切り替えると、汚水は流入口45aから第1流出口45bに向かって流れ、下水本管25に排出される。図15に示すように、T字管45を第2の切替位置に切り替えると、汚水は流入口45aから第2流出口45cに向かって流れ、貯留槽20に排出される。本実施形態によれば、貯留槽20の内部でT字管45を回転させることにより、流路を容易に切り替えることができる。
図16に示すように、仮設配管30のエルボ33として、点検口33bを有するエルボ33を用いてもよい。点検口33bを有するエルボ33を用いることにより、仮設配管30の設置後に、縦管部材15の内部の点検を容易に行うことができる。なお、点検口33bには、開閉可能な蓋35を設けてもよい。
仮設配管30の一部、例えば、最も下流側に位置する仮設トイレ5よりも下流側の部分に、弁体(図示せず)を設けてもよい。この弁体により、仮設配管30の流路を塞ぐことができ、仮設配管30内に汚水を貯留することが可能となる。ある程度汚水が溜まった段階で弁体を開くことにより、溜まった汚水をまとめて排出することができる。汚水は仮設配管30からまとめて排出されるので、下水本管25または貯留槽20に向けて円滑に排出される。これにより、仮設配管30に注入される水または汚水を有効に活用することができる。
前述したように、仮設トイレシステム1によれば、仮設トイレ5の個数を事後的に増やすことができる。例えば、予め仮設配管30に余分の部分を設けておき、必要に応じて、上記余分の部分に仮設トイレ5を増設してもよい。また、予め予備の仮設配管30を設置しておき、必要に応じて、予備の仮設配管30に追加の仮設トイレ5を接続するようにしてもよい。また、必要に応じて、既設の仮設配管30に追加の仮設配管30を接続し、その追加の仮設配管30に追加の仮設トイレ5を接続してもよい。
前記実施形態では、地中部分1Bは災害発生前に予め施工されることとしたが、災害発生後に地上部分1Aおよび地中部分1Bの両方を併せて施工することも可能である。
前記実施形態では、貯留槽20は地中に埋設されているが、貯留槽20を地表に設置することも可能である。貯留槽20の設置場所は地中に限定されない。
前記実施形態の説明では、仮設トイレシステム1は災害時に利用されることとしたが、本発明に係る仮設トイレシステムが災害時以外の場合にも利用できることは勿論である。
仮設トイレ5および仮設配管30は、設置が容易であると共に、撤去も容易である。そのため、災害から復旧したときに、仮設トイレ5が設置されていた場所を元の状態に容易に復旧させることができる。
前述の実施形態および他の実施形態は、適宜組み合わせてもよい。