JP2017214612A - 銅の電解精製方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 電解液に硫酸酸性溶液を用いる銅の電解精製において、その電解液中の銅濃度(C)と硫酸根濃度(S)と電流密度(D)を乗じて得た積値(C×S×D)が、予め設定した係数(δ)に対して式(1)「C×S×D≦δ」の関係を満たすように、その電解液中の硫酸根濃度を調整してアノードの不動態化を抑制することを特徴とする銅の電解精製方法である。
【選択図】 図1
Description
一方、電解液に溶出したものは、電解液の一部を抜き出し、不純物除去工程で処理して再び電解液として繰り返すなどの処理により、電解液中の不純物濃度を一定に保つ操作が行われる。
そこで、この化学溶解に起因する液組成の変化を抑制するために、電解液には水や硫酸を添加したり、余剰の銅を電解採取によって除去したりして調整する方法が行われる。
銅の生産量、すなわち電析量は、「通電時の電流密度×電極面積×通電時間」という関係で表される。電解精製においては、電流密度は反応速度と同じ意味となるが、過大な電流密度で通電すると、目的とする銅以外の不純物まで析出したり、銅が粒や瘤や粉状で電析して銅の品質を低下させたり、アノードとカソード間で短絡を生じて電流ロスを生じるなどの課題が発生するので、電流密度は工業的に250〜350A/m2前後の比較的低い値でしか操業できない。
しかしながら、特許文献1に見られるように、電流密度を単に上昇させるとカソードに析出する銅の表面性状が悪化することがある。その表面性状の悪化は、カソード表面で電析して不足する電極近傍への銅イオンの供給が不足することに起因する。また、銅の供給不足によって不均一な電着や逆に部分的な電析が加速され、アノードとカソードの間が短絡(ショート)して、ショート率の上昇を招き、電流効率が低下することもある。
このように、高い銅濃度の電解液の条件下でもアノードの不動態化を発生させない銅の電解精製方法が望まれていた。
1.電流密度の設定
まず銅の電解精製に必要な電流密度Dを設定する。電流密度Dは、電解槽など設備の数、必要な生産量、稼働率など操業能力から決定できる。
工業的には、200〜400A/m2の範囲が実用的となる。実用的には280〜400A/m2の範囲の電流密度において、本発明は、その効果を顕著に発揮する。
上記「1.電流密度の設定」によって電流密度Dが決定されると、次に電解液の銅濃度Cと硫酸根濃度Sを選定する。
電解液の液温は一般に高い方が好ましい。しかし、工業的には、電解槽に使用できる材質の耐熱温度や操業時の安全性、使用するエネルギー効率などを考慮すると、電解液の温度は約60℃が実用的な温度であり、80℃を超える高温で行う実用的な利点はほとんどない。
概ね60℃付近での硫酸酸性溶液に溶解可能な「銅濃度×硫酸根濃度:C×S」の値が決定され、この値が目安となる。なお、液温が50℃未満だと銅の溶解度がきわめて低下し、不動態化が著しく加速されるので本発明でも解決し辛くなる。
硫酸根濃度Sの調整は、硫酸添加量の調整で実施するのが容易であるが、電解液中に含まれるニッケル等の不純物を硫酸塩の形で除去することでも低減可能である。銅濃度は低い方が不動態化を誘発し難くなるが、電着表面への影響や電流密度などを考慮すると45g/L程度はあった方がよい。
具体的には、液温を40、50、60℃の状態で、「溶解度ぎりぎりとなる硫酸酸性溶液の銅濃度Cmax T(g/L)と硫酸根濃度Smax T(g/L)の積値」(以下「溶解上限値Emax」と称する)」は、図1のように各溶液の温度ではほぼ一定の値を採る。
つまり、Eの値が、この溶解上限値Emaxを超えた液組成、例えば液温が60℃の際にEが40000を超えると、アノードから溶出した銅が銅イオンとして電解液の中に拡散することができず、過飽和となってアノード表面で硫酸銅の結晶として析出し、その結果電流が流れることが妨げられ、不動態化を発生させてしまうと考える。
[硫酸根濃度と不動態化傾向の相関性]
先ず、予め設定する電解液の液温に対応した「溶解上限値Emax」を求めるために、硫酸銅五水和物、硫酸ニッケル七水和物、硫酸ナトリウム、硫酸リチウムの試薬と、純度98重量%の硫酸および純水を用いて、表1の組成の電解液を作製した。
また、同時にアノード表面について、拡大鏡を用いて目視で観察した。
その結果、電流(電流密度)は電位を変化させるに伴って上昇するが、電流がピークに達した際に不動態化が発生した。このピークとなる電流密度を「不動態化電流密度」とした。
また、不動態化電流密度となるピークを過ぎた後、電流は一定値まで急減するが、電位が1.0Vを示す際の電流密度を「不動態保持電流密度」とした。
不動態化電流密度が低いほど容易に不動態化することを意味し、不動態保持電流密度が低いことは、電流が流れないことを意味するので、不動態により生成したアノード表面の皮膜が緻密で厚いことを意味する。
硫酸銅五水和物と硫酸および純水を混合した場合の溶解度を調査した。溶解度における各濃度は表2に示し、その結果を図4に図示した。
銅濃度Cを50g/L、硫酸根濃度Sが350g/Lとなる電解液を作製した。電解液の温度を60℃に維持し、電流密度Dを200〜400A/m2の間で変えて銅の電解精製を実施した。
各電流密度で100時間通電した。その結果、「銅濃度(g/L)×硫酸根濃度(g/L)×電流密度(A/m2)の値δ」が、5600000を境にしてそれより小さい数字では不動態化せず、大きい数字では不動態化することが分かった。
銅濃度50g/L、硫酸根濃度350g/Lとなる電解液を作製した。電解液の温度を60度に調整し、電流密度350A/m2で銅の電解精製を100時間通電して実施した。
上記実施例1と同じように係数を求めると、6125000となる。
その結果、アノードの不動態化が発生していた。
Claims (2)
- 前記電解精製における電解条件が、
電解液の銅濃度(C)を40g/L以上、55g/L以下の範囲とし、
電解液の温度を50℃以上、80℃以下の範囲とし、
電流密度(D)が200A/m2以上、400A/m2以下の範囲であり、
前記係数δが5600000となるように硫酸根濃度(S)を調整してアノードの不動態化を抑制することを特徴とする請求項1記載の銅の電解精製方法。
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