JP2019044221A - 銅電解精製の操業方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 銅の電解精製において、操業時における短時間の銅アノード不動態化の発生について、その不動態化の予想を行い、不動態化を防止することで、その銅電解精製の操業を,円滑に効率良く行う操業方法を提供するものである。【解決手段】 銅の製錬工程で得た粗銅をアノードに用い、定電流法による電解処理に付し、前記アノード表面にアノードスライム層を形成、付着させ、次いで、前記アノードスライム層が前記アノード表面に付着した状態で、前記アノードを作用極とした電位掃引法による電気化学測定に付し、前記電気化学測定により得られた臨界電流密度の値が、予め求めてある関係式により算出された電流密度の値よりも小さな場合には、前記アノード表面の不動態化が発生すると予測することを特徴とする銅電解精製の操業方法。【選択図】 なし

Description

本発明は、銅電解精製における不動態化の発生を予測する操業管理方法に関する。
工業的な銅の電解精製では、硫酸銅を主成分とする電解液を装入した電解槽の中に、銅製錬の乾式工程で製造された粗銅で作られた陽極板(以下、アノードと称する。)と、銅もしくはステンレスやチタンなどで作られた陰極板(以下、カソードと称する。)を交互に一定間隔で対向するように配置し、通電して行われる。
この通電により、アノード側ではアノードに含有された銅は電解液中に銅イオンとして溶出し、一方カソード上では銅イオンが電析する。この際に金や銀や鉛のようにアノードから溶出しないままアノード表面で単体や化合物の形態のアノードスライムを形成し、アノードから剥がれ落ちて槽底に沈積するもの、ニッケルなどのようにアノードから溶出するがカソードには析出しないもの、アンチモンやビスマスのように一部がアノードから溶出し、残りは槽底に沈むものなど様々な形態をとる。
しかし、上記のアノードの表面には、時として不動態化皮膜と呼ばれる層が生成されて電流が流れ難くなる不動態化と称せられる現象が発生することがある。この不動態化が発生すると電流が流れなくなったり、電圧が上昇したりするなど通常の電解操業が困難となり、銅の生産性を大きく低下させる問題が生じる。
上記不動態化皮膜は、アノードスライムと同じく黒っぽい色を呈するなど一見類似するが、通常のアノードスライムは電解液の通液性が良く、適宜アノードから剥がれ落ちるなど、言わば「新陳代謝」するのに対して、不動態化皮膜はアノード表面に「粘着」し、電解液も電流の流れも遮ってしまう点が異なる。
この不動態化発生の原因としては様々に考えられるが、現象の一つとして銅アノード表面に硫酸銅の結晶が析出していることが多い。
硫酸銅結晶が生成する要因としては様々な要因が考えられる。例えば、電解液温度の低下、電解槽内での電解液の対流不足によるアノード表面での拡散の不足、さらにアノードでの電流密度増加や電解液中の銅イオン濃度の過剰な増加あるいは電解液中の遊離硫酸イオン濃度の増加、さらに銅アノードに含有する不純物の増加、銅アノード表面に付着するアノードスライム層の構造緻密化等もある。
これらが複合的に絡み合いアノードから溶出した銅がイオンとして電解液中に拡散することが制限され、過飽和となって硫酸銅の結晶を析出し不動態化皮膜を形成すると推定される。
不動態化を発生させないための対策として様々な方法が提案されている。しかし、不動態化が発生し難くなる条件に電解条件を緩和する方法は、時として生産性が低下する方向と同じであることも多く、あまり好ましい方法でなく工業的には制約も多い。
例えば、電流密度を下げると不動態化は発生しづらくなるが、一方で時間当たりの銅生産量が低下するために生産性が低下する。また、銅アノード中の不純物品位を低減すると不動態化は発生しにくくなるが、一方で不純物品位を低減しようとしても原料の鉱石事情や経済性から制約がある。
このように、実際の生産現場において不動態化の影響を避けるために取り得る手段には限りがあり、不動態化の発生を完全に抑えることは容易でなかった。
一方、発生した不動態化皮膜を除去して影響を回避する対策も存在する。例えば電解槽からアノードを引き揚げたり電解槽から電解液を一時的に抜き、アノード表面に水を噴射したりブラシ掛け等で物理的に剥ぎ取ったりする方法や、一度に大きな電流を流して剥離させる方法等がある。しかし前者は大きな手間を要し、後者は剥ぎ取られた不動態化皮膜がカソードに巻き込まれ、製品の電気銅中の不純物品位を増加させるという問題がある。
そのため、不動態化の発生を予知し、不動態化皮膜が生成する前に対策を取ることが望まれてきた。
工業的な銅の電解精製では、一定の電流密度、いわゆる定電流法で通電される。不動態化が発生すると、電流が流れ難くなるため、同じ電流を流そうとして大きな電圧を加えるように制御される。そこで、電解槽の電圧(槽電圧)を測定することで不動態化皮膜の発生を検知することが行われてきた。
しかし、不動態化が発生した場合、槽電圧の上昇は、経過時間に対して指数関数的であり、急激に上昇する。このため槽電圧の上昇を検知しても対策が追い付かず、不動態化を発生させてしまうことが多い。
具体的には、1回の電解精製は通常、1週間から10日間前後の日数を掛けて実施されるが、電圧の上昇が確認されるのは4日目以降に多く、確認された時点から1日ないしは数時間で本格的に不動態化してしまうことから、種々の対策を実施しても効果を確認する以前に不動態化が発生する結果となっていた。
そこで、生産現場の実電解槽ではなく、別にビーカーレベルの小型電解槽を設置し、電気化学的な手法を用いて不動態化の発生や、発生した不動態化皮膜の特性について評価する方法が試みられてきた。
例えば、特許文献1に見られるような方法は、アノード電位を浸漬電位より50mVから200mV貴な電位となる様に電圧を印加し、電流値が急激に増加する時間を測定することでステンレス表面に生成する不動態化皮膜の安定性を評価する方法である。
このような手法を用いて、銅電解精製でのアノード不動態化の発生を予測することも可能と考えられる。
銅電解精製でのアノードの不動態化を予測しようとする場合、アノード表面への不動態化皮膜の生成に伴う電流値の急激な低下を測定する必要がある。しかし、このような手法を使用する場合、実際に不動態化が発生する時間まで待たなければならず、生産現場での電圧測定と大きな違いがないばかりか、電解中に銅アノード表面に生成したアノードスライム層が何らかの影響で剥離してしまった場合、銅アノードの溶解が阻害されないこととなり、実際の生産現場と齟齬が生じる恐れがある。実際の生産現場においては、アノードスライム層が剥離するか否かは定かではなく、剥離しない場合を想定して対策を取る必要がある。
また、例えば、特許文献2に見られるような方法は、アノード電位を貴な方向に掃引し、不動態化皮膜を形成させ、ある電位まで上昇させたところから、アノード電位を卑な方向に掃引し直すことで、こちらもステンレス表面の不動態化皮膜の安定度を測定する手法を用いる。
特許文献2の方法では、銅電解精製でのアノードの不動態化を予測する場合、図1に示すようなアノード分極曲線の各値を測定し評価する。
具体的には、電位を走査して流れる電流すなわち電流密度を測定し、不動態化皮膜を形成し始めてそれ以上電流が流れなくなる電流密度(以下「臨界不動態化電流密度」とも称する)とその電流密度に対応する電位(以下「不動態化電位」とも称する)、不動態化皮膜を形成し電位を走査しても電流が流れなくなる際の電流密度(以下「不動態保持電流密度」とも称する)等の数値が高い値であるほど、不動態化皮膜が形成し難い状態であると推測できる。
しかしながら、上記のようなアノード分極曲線の測定では、銅アノード表面にはアノードスライム層がほとんど形成されない状態から測定を開始して不動態化を発生させるため、不動態化皮膜の生成に大きな影響を及ぼすと考えられるアノードスライム層の影響を除外しての不動態化の発生予測となり、実操業の管理に適用するには精度や検出時間等に大きな課題があった。
これらのことから、アノードスライム層の影響を加味した上で、かつ短時間に銅アノード不動態化の発生について予想できる方法が望まれていた。
特許5830910号公報 特開平7−225217号公報
本発明は、銅の電解精製において、操業時における短時間の銅アノード不動態化の発生について、その不動態化の予想を行い、不動態化を防止することで、その銅電解精製の操業を,円滑に効率良く行う操業方法を提供するものである。
上記の課題を解決するための、本発明の第1の発明は、銅の製錬工程で得た粗銅をアノードに用い、定電流法による電解処理に付し、前記アノードの表面にアノードスライム層を形成、付着させ、次いで、前記アノードスライム層が前記アノードの表面に付着した状態で、前記アノードを作用極とした電位掃引法による電気化学測定に付し、前記電気化学測定により得られた臨界電流密度の値が、予め求めてある関係式により算出された電流密度の値よりも小さな場合には、前記アノード表面の不動態化が発生すると予測することを特徴とする銅電解精製の操業方法である。
本発明の第2の発明は、第1の発明におけるアノードの表面に形成させるアノードスライム層の厚みが、アノードを400μm以上、2000μm以下の範囲の深さとなるように定電流法で電解した際に形成するアノードスライム層の厚み、であることを特徴とする銅電解精製の操業方法である。
本発明の第3の発明は、第1及び第2の発明におけるアノードの表面にアノードスライム層を形成、付着させる際のアノード電流密度が、300A/m以上、1200A/m以下の範囲であることを特徴とする銅電解精製の操業方法である。
本発明の第4の発明は、第1から第3の発明におけるアノードの表面にアノードスライム層を形成させる定電流法による電解が、3時間以上、12時間以下の範囲の時間で行われることを特徴とする銅電解精製の操業方法である。
本発明の第5の発明は、第1から第4の発明における関係式が、下記(1)式で表され、前記電位掃引法による電気化学測定で得られた臨界電流密度の値(Y)が、前記関係式で求めた電流密度の値(y)と、(Y)<(y)の関係であった場合、不動態化の発生を予想することを特徴とする銅電解精製の操業方法である。
Figure 2019044221
本発明を用いることで、短時間の銅電解精製での不動態化の発生を予測でき、実操業に生かすことで工業上顕著な効果を奏するものである。
不動態化を示す一般的アノード分極曲線における臨界不動態化電流密度、不動態化電位、不動態保持電流密度の値を示した図である。 閾値設定のために、種々の条件において、銅アノードの溶解深さと臨界不動態化電流密度の値をプロットした図である。 閾値設定にて設定された式(直線)と、実施例1と比較例1にて測定された臨界不動態化電流密度値の位置関係を比較した図である。
本発明者らは、銅の電解精製を行う際に、予め種々の電解条件で通電して、アノードの溶解深さが一定の値となるように電解し、アノード表面にアノードスライム層を形成、付着させた後に、アノード表面にアノードスライム層が付着した状態で、アノード電位を貴な方向に掃引することで、特性項目として、臨界不動態化電流密度、不動態化電位、不動態保持電流密度のいずれかを測定し、アノード表面に「不動態化が起こる場合」と、「不動態化が起こらない場合」の閾値を把握、設定しておき、不動態化が起こるか否かを判断したい操業条件において、その臨界不動態化電流密度、不動態化電位、不動態保持電流密度のいずれかの閾値と同じ特性項目を測定し、先に設定していた閾値との大小を比較することで、その操業条件にてアノードの表面が不動態化するか否かを判断することが出来ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
以下、本発明の具体的な内容を詳細に説明する。
1.種々の電解条件における不動態化の有無確認
実際の生産現場にて実施される可能性のある種々の電解条件にて、小型の電解槽を用いて実際に電解精製を実施し、不動態化するか否かを確認する。
2.閾値の設定
種々の電解条件にて電解精製を行い、不動態化した場合と不動態化しなかった場合に場合分けし、銅アノードの溶解深さが一定の値となるよう電解し、銅アノード表面にアノードスライム層を形成、付着させた後に、アノード電位を貴な方向に掃引することで、それらの臨界不動態化電流密度、もしくは不動態化電位、もしくは不動態保持電流密度といった不動態化の発生に大きな関係のある値を測定し整理することで、不動態化する場合と不動態化しない場合の閾値を設定する。
3.対象の電解条件における不動態化発生の予想判断
電解精製を実施した場合に、不動態化が発生するか否かを予想したい条件について、銅アノードの溶解深さが一定の値となるよう電解し、銅アノード表面にアノードスライム層を形成,付着させた後に、アノード電位を貴な方向に掃引することで、臨界不動態化電流密度、不動態化電位、及び不動態保持電流密度といった不動態化の発生に大きな関係のある値を測定し、「2.閾値の設定」にて得られた閾値との大小を比較することで、実際にその条件にて電解精製を実施した場合に不動態化が発生するか否かを予想する。
実際には予想するだけでなく、不動態化の発生が予想されるような場合は、生産現場において不動態化を発生させないための対策を取る。
以下、本発明の実施例を示し、さらに詳細に説明する。
[閾値設定]
先ず、組成の異なる表1に示す6種類の組成を持つ銅アノード(A,B,C,D,E,F)と、表2に示す5種類の組成の電解液(α,β,γ,δ,ζ)を用意した。
上記のA〜Fの銅アノードは、純度99.99%の電気銅を切断し、炉に入れて1150℃に加熱して熔融し、その中に表1に示す組成になるように酸素以外の各不純物をメタルの形態で添加し合金とした。また、酸素については空気を前記熔融状態の合金を撹拌しながら中に吹き込むことで表1の組成に調整した。
炉内で加熱して熔融状態で空気を吹き込み後、空冷し、得た合金を電極面積が2×2cmのサイズになるようにマスキングテープを用いて電気的に絶縁した。表1に銅アノード組成を示す。
カソードは厚み約1mmの銅の薄板を切断し、電極面積が2×2cmになるようにマスキングテープでマスキングした。
また、電解液(α,β,γ,δ,ζ)は、硫酸銅5水和物、硫酸ニッケル6水和物、亜ヒ酸、濃度98重量%硫酸およびイオン交換水を混合し作製した。表2に電解液組成を示す。
Figure 2019044221
Figure 2019044221
表1および表2に示す組成のアノードと電解液とを組み合わせ、電解時間等の電解条件については実際の生産現場と同様にして電気分解を行い、どの組み合わせで不動態化が発生するかを確認した。
具体的には、容量0.5リットルのガラスビーカー中にアノードとカソードを1枚づつ、20mmの面間距離を保持するように電極部分を対面させて入れ、電解液の温度を60℃に維持しながら、撹拌した。
表3に示すアノードA、B、C、Dと電解液α、β、γの12通りの組み合わせで、600A/mの電流密度で12時間電解し、銅アノードを深さ方向に約1000μm溶解させ、アノードスライム層を銅アノード表面に生成させた。
その後、アノードスライムがアノード表面に付着した状態のままで、アノード電位を0.34V(vs.NHE)から1mV/secの掃引速度によって11分間、貴な方向に掃引する電気化学測定を行い、臨界不動態化電流密度を測定した。
表3に示した12通りの組み合わせで測定した臨界不動態化電流密度は、表4に示す結果が得られた。
Figure 2019044221
Figure 2019044221
その結果、表3で「レ」が入った組み合わせにおいて、不動態化の発生が見られ、表4の臨界不動態化電流密度の結果では、斜体数字で示された組み合わせで不動態化の発生が観察された。
本実施例においては、アノードの溶解は、絶縁性テープの被覆により一定方向からのみとなっているため、不純物を含むとは言いながら大部分が銅であるアノードの比重を、純銅と同様の8.96と仮定すると、通電量に対する溶解深さは、銅が2価のイオンとして溶解することから、600A/mの電流密度で12時間通電した際は、下記のように計算され、952μmの深さになる。
600[A/m]×12[h]/26.8[A・h/mol]×63.5/2[g/mol]/(8.96×10)[g/m]=952[μm]
次に、同じく電解液とアノード組成の12通りの組み合わせを用い、600A/mの電流密度で6時間電解して銅アノードを深さ方向に約500μm溶解させて、アノードスライム層を銅アノード表面に生成させた。その後、アノード電位を0.34Vvs.NHEから1mV/secの掃引速度で11分間、貴な方向に掃引して、臨界不動態化電流密度を測定した。
その測定結果を表5に示す。
Figure 2019044221
表5で斜体数字になっている部分が、不動態化が発生した場合となる。
表4における「銅アノードの溶解深さが約1000μmの場合」と比較すると、全体的に高い電流密度値となった。
この結果からアノードスライム層の厚みが増加するのに伴い、不動態化が発生しやすくなることがわかる。
表4及び表5での各電流密度の値について、不動態化の発生有無を分類し、図2の横軸に溶解させた銅アノードの深さ、縦軸に臨界不動態化電流密度との関係をプロットした。
図2において、銅アノードを約500μm溶解させたが不動態化しなかった点と、銅アノードを約1000μm溶解させたが不動態化しなかった場合の点を結ぶと、「y=−0.47x+3100」という関係式が得られた。
即ち、不動態化が発生するか否かを判断したい条件について、アノードスライム層を銅アノード表面に形成、付着させた後に、アノード電位を貴な方向に掃引することで、臨界不動態化電流密度を測定し、臨界不動態化電流密度の値(Y)が、(y)=−0.47x+3100にアノードの溶解深さを代入した値と比較して、その大小を評価することで、実際の生産現場で銅の電解精製を実施した際に、不動態化が発生するか否かを判断することが出来る。
銅アノード表面に剥離しないアノードスライム層を形成させる場合、溶解させる銅アノードの深さが、2000μmを超える深さまで深くすると、アノードスライム層が剥離しやすくなる。一方、400μm未満の深さでは、アノードスライム層が薄くしか形成しないため、アノードスライム層の影響を反映できないことになる。
すなわち、400μm以上の深さとする必要がある。
また、アノード電流密度値が1200A/mを超えると、アノードスライム層が剥離しやすくなる。さらには、アノードスライム層の形成途中で不動態化が発生しまうため、アノードの電流密度は1200A/m以下とする必要がある。一方、アノードの電流密度が300A/m未満と低すぎると、アノードスライム層を形成させるのに長い時間が必要となるため、効率的ではない。
上記表1に示した銅アノードEおよび表2に示した電解液γを用いて、600A/mの電流密度で12時間電解して銅アノードを深さ方向に約1000μm溶解させ、アノードスライム層を銅アノード表面に形成、付着させた。
次いでアノード電位を貴な方向に掃引して臨界不動態化電流密度を測定した。臨界不動態化電流密度値は、(Y)=2930A/mだった。
上述の「閾値設定」により得た「式:(y)=−0.47x+3100」に、上記の溶解深さ1000μmを代入すると、(y)は2630A/mとなった。
この(y)値と上記の臨界不動態化電流密度(Y)=2930A/mとを比較すると、実際に得た(Y)=2930A/mの方が、式から得た(y)=2630A/mよりも大きい。
本実施例と同組成のアノードと電解液を用いて実際の生産現場で電解精製したところ、不動態化は発生せず安定して操業できた。
つまり「溶解深さ」から算出した式の(y)値よりも、実際に測定した臨界不動態化電流密度の値が大きい方が、不動態化が生じないことが確かめられた。
(比較例1)
表1の銅アノードFおよび表2の電解液ζを用いて、600A/mの電流密度で12時間電解し、銅アノードを深さ方向に1000μm溶解させ、アノードスライム層をアノード表面に生成させた。その後、アノード電位を貴な方向に掃引することで、臨界不動態化電流密度を測定した。その際の臨界不動態化電流密度値は、(Y)=2350A/mであった。
実施例1と同様に、「閾値設定」により得られた「式(y)=−0.47x+3100」に上記の溶解深さを代入すると、(y)=2630A/mとなる。
これと上記で測定した臨界不動態化電流密度値(Y)=2350A/mを比較すると、実際に得られた(Y)=2350A/mの方が、式から得られた(y)=2630A/mよりも小さな値である。
そこで、実際に銅の電解精製を実施すると、不動態化が発生した。
ここで、図3に「閾値設定」から得られた「式(y)=−0.47x+3100」と、実施例1および比較例1にて測定された臨界不動態化電流密度値との関係を示すと、閾値の直線よりも上方に臨界不動態化電流密度が位置する場合は、不動態化が発生せず、一方、下方に位置すると、不動態化が発生することがわかり、この式を利用することで不動態化の発生が予測できることが確かめられた。

Claims (5)

  1. 銅の製錬工程で得た粗銅をアノードに用い、定電流法による電解処理に付し、前記アノードの表面にアノードスライム層を形成、付着させ、
    次いで、前記アノードスライム層が前記アノードの表面に付着した状態で、前記アノードを作用極とした電位掃引法による電気化学測定に付し、
    前記電気化学測定により得られた臨界電流密度の値が、予め求めてある関係式により算出された電流密度の値よりも小さな場合には、前記アノードの表面の不動態化が発生すると予測することを特徴とする銅電解精製の操業方法。
  2. 前記アノードの表面に形成させるアノードスライム層の厚みが、アノードを400μm以上、2000μm以下の範囲の深さとなるように定電流法で電解した際に形成するアノードスライム層の厚み、であることを特徴とする請求項1に記載の銅電解精製の操業方法。
  3. アノードの表面にアノードスライム層を形成、付着させる際のアノード電流密度が、300A/m以上、1200A/m以下の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の銅電解精製の操業方法。
  4. アノードの表面にアノードスライム層を形成させる定電流法による電解が、3時間以上、12時間以下の範囲の時間で行われることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の銅電解精製の操業方法。
  5. 前記関係式が、下記(1)式で表され、
    前記電位掃引法による電気化学測定で得られた臨界電流密度の値(Y)が、前記関係式で求めた電流密度の値(y)と、(Y)<(y)の関係であった場合、不動態化の発生を予想することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の銅電解精製の操業方法。
    Figure 2019044221
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