以下、本発明における好ましい加熱調理器の実施形態について、添付図面を参照して説明する。なお、これらの全図面にわたり、共通する部分には共通する符号を付すものとする。
図1〜図11は、本発明の加熱調理器をオーブンレンジに適用した一実施形態を示している。先ず図1〜図6に基いて、オーブンレンジの全体構成を説明すると、1は略矩形箱状に構成される本体で、この本体1は、製品となるオーブンレンジの外郭を覆う部材として、金属製のキャビネット2を備えている。また3は、本体1の前面に設けられる開閉自在な扉である。
扉3の上部には、縦開きの扉3を開閉するときに手をかける開閉操作用のハンドル4を備えており、扉3の下部には、表示や報知や操作のための操作パネル部5を備えている。操作パネル部5は、調理の設定内容や進行状況などを表示する表示手段6の他に、加熱調理に関する各種の操作入力を可能にする操作手段7が配設される。扉3の内部で操作パネル部5の後側には、図示しないが、表示手段6や操作手段7などの制御を行なうために、操作パネルPC(印刷回路)板が配置される。
本体1の下部には、本体1の前面より着脱が可能な給水カセット8と水受け9が各々配設される。給水カセット8は、蒸気発生装置(図示せず)から発生する蒸気の供給源として、液体となる水を入れる有底状の容器である。また水受け9は、本体1からの食品カスや水滴、蒸気などを受ける有底状の容器である。
本体1の左右側面と上面を形成するキャビネット2は、本体1ひいては加熱調理器の底面を形成するオーブン底板11を覆うように、本体1の前面を形成するオーブン前板12と、本体1の後面を形成するオーブン後板13との間に設けられる。また本体1には、加熱調理すべき被調理物Sを内部に収容する調理室14と、調理室14の温度を検出する温度検出素子たるサーミスタ15が設けられる。調理室14の前面はオーブン前板12に達していて、被調理物Sを出し入れするのに開口しており、この開口を扉3で開閉する構成となっている。またサーミスタ15は、調理室14内部において、扉3の近傍に配置される。
調理室14を形成する周壁は、天井壁14aと、底壁14bと、左側壁14cと、右側壁14dと、奥壁14eとからなる。調理室14の奥壁14eは、その中央に吸込み口16を備えており、吸込み口16の周囲には複数の熱風吹出し口17を備えている。また、調理室14の上壁面となるドーム状の天井壁14aに対向して、本体1の上部には、調理室14の上方から被調理物Sを輻射加熱するグリル用の上ヒータ18が設けられ、本体1の底部には、調理室14内に電波であるマイクロ波を供給するために、マグネトロンやアンテナを含むマイクロ波発生装置19が設けられる。これにより、上ヒータ18への通電に伴う熱放射によって、調理室14内に収容した被調理物Sを上方向からグリル加熱し、またマイクロ波発生装置19への通電動作により、調理室14内に収容した被調理物Sにマイクロ波を放射して、被調理物Sをレンジ加熱する構成となっている。
調理室14の左側壁14cと右側壁14dには、調理室14の内部に金属製の角皿21を吊設状態で収納保持するために、左右一対の棚支え22を上下二段に備えている。ここで使用する角皿21は、上面を開口した有底凹状で、その他は無孔に形成される収容部21Aと、収容部21Aの上端より外側水平方向に延設するフランジ部21Bとにより構成される。またフランジ部21Bには、角皿21を通して熱風の流通を可能にする通気孔21Cが開口形成される。図2では、調理室14の内部で下段の棚支え22に角皿21のフランジ部21Bを載せて、収容部21Aに被調理物Sを載せた状態を示しているが、調理に応じて角皿21を上段の棚支え22にだけ載せたり、2枚の角皿21を上段と下段の棚支え22に各々載せたりしてもよく、角皿21に代えて別な焼き網(図示せず)などの付属品を収納保持することもできる。
24は、本体1の内部において、調理室14の室外後方から下方にかけて具備されるオーブン加熱用の熱風ユニットである。この熱風ユニット24は、奥壁14eに取付けられる凸状のケーシング26と、空気を加熱する熱風ヒータ27と、調理室14内に加熱した空気を送り込んで循環させる熱風ファン28と、熱風ファン28を所定方向に回転させる電動の熱風モータ29と、熱風モータ29からの駆動力を熱風ファン28に伝達する伝達機構30と、により概ね構成される。奥壁14eとケーシング26との間の内部空間として、調理室14の室外後方に形成された加熱室31には、熱風ヒータ27と熱風ファン28がそれぞれ配設される一方で、本体1の内部に形成された調理室14とオーブン底板11との間の下部空間32には、熱風モータ29が配設される。そして、熱風ユニット24全体を後側外方から覆うように、本体1の後部にオーブン後板13が配設される。
本実施形態の熱風ファン28は、軸方向に取り入れた空気を、回転時の遠心力によって、軸方向と直角な放射方向に吐き出すいわゆる遠心ファンとして設けられており、管状の熱風ヒータ27は熱風ファン28の放射方向を取り囲んで配置される。発熱部でもある熱風ヒータ27は、例えばシーズヒータ、マイカヒータ、石英管ヒータやハロゲンヒータなどを用いる。前述した吸込み口16や熱風吹出し口17は、調理室14と加熱室31との間を連通する通風部として機能するものである。
熱風モータ29への通電に伴い熱風ファン28が回転駆動すると、調理室14の内部から吸込み口16を通して吸引された空気が、熱風ファン28の放射方向に吹出して、通電した熱風ヒータ27により加熱され、熱風吹出し口17を通過して、調理室14内に熱風が供給される。これにより、調理室14の内外で熱風を循環させる経路が形成され、調理室14内の被調理物Sを熱風コンベクション加熱する。
調理室14の左側壁14cには、蒸気発生装置に連通する蒸気噴出孔33が設けられる。本体1の内部に設けられる蒸気発生装置は、金属製で中空の蒸発容器や、蒸発容器に装着されるシーズヒータなどの蒸発用ヒータや、給水カセット8からの水を蒸発容器内に導く給水ポンプなどを備え、蒸発容器内に連通して複数の蒸気噴出孔33を有している。これにより蒸気発生装置の動作中には、給水カセット8からの水を蒸発容器内に送り込んで所定の温度にまで加熱することで、、蒸気噴出孔33から調理室14の内部に飽和蒸気や過熱蒸気が供給され、調理室14内に入れられた被調理物Sのスチーム調理を行なう構成となっている。
熱風ファン28は、その回転軸となるシャフト34を中心として、シャフト34の周囲に複数枚のブレード35を放射状に配置して構成される。シャフト34の基端は、本体1の後方に向けて加熱室31の外方へ突出しており、ここに従動側のプーリー36Bが取付け固定される。また熱風モータ29には、本体1の後方に向けて突出する回動可能なモータ軸37に、主動側のプーリー36Aが取付け固定される。これらのプーリー36A,36Bの間には無端状のベルト38が懸架され、プーリー36A,36Bとベルト38からなる伝達機構30が、熱風ファン28と熱風モータ29とを連結する構成となっている。図示しないが、ベルト38の断面は例えば矩形状や台形状の他、様々な形状とすることができる。
伝達機構30はその他に、熱風ファン28のシャフト34を所定の位置で軸支するための支持体41を備えている。支持体41は、ベルト38の側部を取り囲んでケーシング26の後外面に取付け固定され、熱風ファン28のシャフト34や熱風モータ29のモータ軸37が挿通するケース部材42と、シャフト34を回動可能に支持するのに、プーリー36Bを部分的に覆ってケース部材42に取付け固定されたホルダー部材43と、により構成される。特に本実施形態のケース部材42は、調理室14の底壁14bより下方に延びた脚部44を一体的に形成しており、脚部44の底面を本体1のオーブン底板11上に載せて、調理庫14の後部を脚部44で支えることで、熱風モータ29を収容し得る程の大きさの下部空間32が、調理室14とオーブン底板11との間に形成される。またケース部材42には、熱風ファン28の回転速度を検出するために、プーリー36Aに近接配置された非接触の検出センサ45が配設される。
図4に示すように、熱風ファン28のシャフト34は、伝達機構30により調理室14の奥壁14eのほぼ中央に配置される一方で、熱風モータ29とそのモータ軸37は、調理室14の底壁面となる底壁14bよりも下方一側に偏って配置され、ケース部材42はシャフト34とモータ軸37とを結ぶ直線上に沿って設けられる。このように、熱風ファン28と熱風モータ29は、本体1の内部で離れた位置に設けられているが、プーリー36A,36Bとベルト38とを組み合わせた伝達機構30によって、熱風モータ29からの回転駆動力を熱風ファン28に円滑に伝えることができる。また、熱風モータ29を調理室14より十分に離すことで、調理室14からの熱影響を防ぐことができる。
次に、オーブンレンジの細部構成について、図7〜図11を参照しながら説明する。先ず、マイクロ波発生装置19とその周辺の細部構成を、図7に基いて説明する。これらの各図において、調理室14の底壁14bは、金属板材61に形成された凹状のアンテナ収納部62の上面開口を、セラミック板などのマイクロ波が透過可能な底板63で覆うことで構成される。マイクロ波が透過不能な金属板材61は、底壁14bの周囲部のみならず、左側壁14cや、右側壁14dや、奥壁14eを一体的に形成するもので、底板63を除く調理室14の内面は、全てマイクロ波が透過不能な材料で形成される。
マイクロ波発生装置19は、マイクロ波の供給源となるマグネトロン(図示せず)の他に、本体1内部の下部空間32において、マグネトロンで発振されたマイクロ波をアンテナ収納部62の直下に導く導波管65と、導波管65の下方に配設されるアンテナモータ66と、その下端部が導波管65の内部に配置され、アンテナモータ66の回転軸に取付け固定されるアンテナホルダ67と、アンテナホルダ67内に挿入固定される円柱状のケーブル軸68と、その中心にケーブル軸68の上端部が取付け固定され、アンテナ収納部62の内部で回動可能に設けられるアンテナ69と、により主に構成される。アンテナ収納部62の上面開口を底板63で塞いだ状態では、調理室14の底壁14Bを形成する平板状の底板63に対向して、アンテナ69の全体が底板63と平行に配置される。
ここで使用する円板状のアンテナ69は、ケーブル軸68に沿って下から上に進行するマイクロ波を表面から放射するもので、アンテナモータ66への通電により底板63の下方でケーブル軸68を中心に回転する。
図8は、オーブンレンジの主な電気的構成を図示したものである。同図において、71はマイクロコンピュータにより構成される制御用IC109(図9や図10を参照)などの制御手段であり、この制御手段71は周知のように、演算処理手段としてのCPUや、記憶手段としてのメモリや、計時手段としてのタイマや、入出力デバイスなどを備えている。
制御手段71の入力ポートには、前述したキーやタッチパネルによる操作手段7の他に、調理室14に収容された被調理物Sが放射する赤外線の量から、被調理物Sの表面温度を短時間で検出する庫内温度分布検出手段72と、調理室14内の温度を検出するサーミスタ15などの庫内温度検出手段73と、検出センサ45を含む熱風モータ回転検出手段74と、扉3の開閉状態を検出する扉開閉検出手段75と、アンテナ69の回転の原点を検出するアンテナ位置検出手段76と、前述した蒸気容器内の温度を検出するサーミスタなどの蒸気容器温度検出手段77と、商用電源からの入力電流に関する情報を検出する電流情報検出手段78と、商用電源からの入力電圧に関する情報を検出する電圧情報検出手段79と、電圧情報検出手段79に組み込まれる検知素子の温度補償のために、本体1内部の温度情報を検出するサーミスタなどの温度情報検出手段80が、それぞれ電気的に接続される。
制御手段71の出力ポートには、前述した表示手段6の他に、マグネトロンやその駆動手段を含むマイクロ波加熱手段85や、グリル加熱用の上ヒータ18や、オーブン加熱用の熱風ヒータ27や、スチーム加熱用の蒸発用ヒータをそれぞれ通断電させるリレーなどのヒータ駆動手段86と、アンテナモータ66を回転駆動させるためのアンテナ駆動手段87と、熱風モータ29を回転駆動させるための熱風モータ駆動手段88と、蒸気発生装置の給水ポンプを動作させるためのポンプ駆動手段89が、それぞれ電気的に接続される。
制御手段71は、操作手段7からの操作信号と、庫内温度分布検出手段72や、庫内温度検出手段73や、熱風モータ回転検出手段74や、扉開閉検出手段75や、アンテナ位置検出手段76や、蒸気容器検出手段77や、電流情報検出手段78や、電圧情報検出手段79や、温度情報検出手段80からの各検出信号を受けて、計時手段からの計時に基づく所定のタイミングで、マイクロ波加熱手段85と、ヒータ駆動手段86と、アンテナ駆動手段87と、熱風モータ駆動手段88と、ポンプ駆動手段89に駆動用の制御信号を出力し、また表示手段6に表示用の制御信号を出力する機能を有する。
そして制御手段71は、操作手段7の操作に伴う操作信号を受け取ると、扉開閉検出手段75からの検出信号により、扉3が閉じていると判断した場合に、その操作信号に応じて、マイクロ波加熱手段85や、ヒータ駆動手段86や、アンテナ駆動手段87や、熱風モータ駆動手段88や、ポンプ駆動手段89に制御信号を送出して、種々の加熱調理を制御する構成となっている。
図9は、オーブンレンジ内部の主な回路図を示したものである。同図において、101は商用電源のコンセント(図示せず)に着脱可能な電源プラグ付きの電源コード、102は電源コード101の基端に接続する入力フィルタ回路である。ここでは、商用電源からのAC100Vの交流電力(周波数:50/60Hz)が、電源コード101を通して入力フィルタ回路102に印加され、ここでは図示しないが、ノイズ成分を除去した交流電圧が、入力ライン103A,103Bから例えば上ヒータ18や、熱風ヒータ27や、蒸気発生装置の蒸発用ヒータや、アンテナモータ66や、マイクロ波加熱手段85のマグネトロンに、オーブンレンジの入力電力として供給される。
電流情報検出手段78は、カレントトランスCTと全波整流回路105と電流検出信号生成回路106とにより構成される。カレントトランスCTは、オーブンレンジで使用する電流値を検出する電流検出器に相当するもので、カレントトランスCTの一次巻線は入力ライン103Aに挿入接続される。カレントトランスCTの二次巻線には、4個のダイオードD1,D2,D3,D4をブリッジ接続してなる全波整流回路105が接続され、全波整流回路105の出力端には、抵抗R1,R2,R3と、ダイオードD5と、コンデンサC1とからなる電流検出信号生成回路106が接続され、さらに電流検出信号生成回路106の出力端には、制御手段71に相当する制御用IC109のCT入力端子が接続される。ここでは、入力フィルタ回路102からの入力電流に比例して、カレントトランスCTの二次巻線を流れる電流を、全波整流回路105で整流平滑して電流検出信号生成回路106に送り出すことで、入力電流の値に応じた電圧レベルを有する電流検出信号が、電流検出信号生成回路106から制御用IC109のCT入力端子に取り込まれるようになっている。
111は、本体1の内部において、制御用IC109や各回路素子に動作電圧を供給する電源回路である。ここでの電源回路111は、フライバック式のスイッチング電源として構成され、入力ライン103A,103Bからの交流入力電圧を整流平滑して直流電圧にする入力側整流平滑回路112と、一次側と二次側とを絶縁し、入力側整流平滑回路112からの直流電圧が一次巻線113Aに印加されるスイッチングトランスT1と、スイッチングトランスT1の一次巻線113Aに直列接続され、この一次巻線113Aに印加する直流電圧をオンまたはオフにするスイッチング素子Q1と、スイッチングトランスTの二次巻線113Bに誘起した電圧を整流平滑するために、整流用のダイオードD6,D7と平滑用のコンデンサC2,C3とによる出力側整流平滑回路114と、により構成される。
本実施形態においては、スイッチング素子Q1としてFET(電界効果トランジスタ)を1つ備え、前記制御IC109からの制御信号に基づいて、駆動手段に相当するドライバ115がスイッチング素子Q1の制御端子であるゲートにパルス駆動信号を送出することにより、スイッチング素子Q1のドレイン・ソース間がオン/オフを繰り返して、して、スイッチングトランスT1の一次巻線113Aに直流電圧が断続的に印加される構成となっている。なお、スイッチングトランスT1の二次側に設けた制御用IC109から、スイッチングトランスT1の一次側に設けたドライバ115に、制御信号を電気的に絶縁して伝送するために、その制御信号ラインにはフォトカプラ116が挿入接続される。
また、スイッチングトランスT1の二次側では、異なる2つの動作電圧を生成するために、二次巻線113Bの両端間にダイオードD6とコンデンサC2の直列回路が接続され、コンデンサC2の両端間に発生した電圧を、第1動作電圧として制御用IC109や回路素子に供給し、これとは別に、二次巻線113Bの一端と中間端子との間にダイオードD7とコンデンサC3の直列回路が接続され、コンデンサC3の両端間に発生した電圧を、第2動作電圧として他の回路素子に供給する構成となっている。なお、動作電圧の生成数はいくつでも構わない。
電圧情報検出手段79は、スイッチングトランスT1の二次巻線113Bの中間端子に接続される極性変換手段118により構成される。極性変換手段118は、制御用IC109からの制御信号を利用することで、スイッチング素子Q1のオン動作に伴い、二次巻線113Bの中間端子に負電圧が発生したときの電圧、すなわち商用電源からの入力電圧に比例したマイナス電源電圧を取り込み、そのマイナス電源電圧を正電圧に変換した電圧検出信号を、制御用IC109の電圧検出入力端子に送出するものである。
制御用IC109は、電源回路111で生成された動作電圧により動作するもので、ここでは電流情報検出手段78からの電流検出信号を受けて、商用電源からの入力電流を監視すると共に、極性変換手段118からの電圧検出信号を受けて、商用電源からの入力電圧を監視し、それらの監視結果に基づき、加熱手段となるマイクロ波加熱手段85や、グリル加熱用の上ヒータ18や、オーブン加熱用の熱風ヒータ27や、スチーム加熱用の蒸発用ヒータからの出力を所望の値に保つ制御を行なうものである。
次に、上記構成の加熱調理器についてその作用を説明すると、予め調理室14内に被調理物Sを入れた状態で、ハンドル4を手で握りながら扉3を閉め、操作手段7により調理メニューを選択操作した後に調理開始を指示すると、制御手段71の記憶部に組み込まれた制御プログラムに従って、選択した調理メニューに対応して生成された制御信号が所定のタイミングで出力され、被調理物Sが加熱調理される。
ここで、例えばオーブン加熱の調理メニューを選択した場合、制御手段71からの制御信号がヒータ駆動手段86と熱風モータ駆動手段88に送出されて、熱風ヒータ27と熱風モータ29が各々通電され、熱風モータ29のモータ軸37に発生した回転力が、伝達機構30を通して熱風ファン28のシャフト34に伝達する。それにより熱風ファン28は加熱室31の内部で一方向に回転し、その速度は熱風モータ回転検出手段74により制御手段71に取り込まれると共に、調理室14から吸込み口16を通して加熱室31に吸込んだ空気を、通電した熱風ヒータ27側に送り出し、ここで加熱された空気が熱風吹出し口17を通して調理室に熱風Fとして供給されることで、調理室14内の被調理物Sが熱風コンベクション加熱される。
また、レンジ加熱の調理メニューを選択した場合、制御手段71は庫内温度分布検出手段72からの検出信号を受けて、被調理物Sが設定した温度に加熱されるように、アンテナ位置検出手段76からの検出信号で、アンテナ69の原点位置を確認しながら、マイクロ波加熱手段85とアンテナ駆動手段87とセンサモータ駆動手段89に適切な制御信号をそれぞれ送出する。これにより、マイクロ波発生装置19のマグネトロンやアンテナモータ66が通電動作して、回転するアンテナ69の表面から発生したマイクロ波が調理室14内に供給され、底壁14bに置かれた被加熱物Sが高周波加熱される。
こうした一連の動作では、電源回路111が制御手段71すなわち制御用IC109に動作電圧を安定して供給できるように、制御用IC109からドライバ115に与えられるPWM(パルス幅変調)制御信号が、スイッチング素子Q1のゲートに駆動信号として送出される。これを受けて、スイッチング素子Q1はドレイン・ソース間でオン/オフを繰り返し、スイッチングトランスT1の一次巻線113Aに直流電圧を断続的に印加することで、二次巻線113Bに誘起した電圧を出力側整流平滑回路114で整流平滑し、制御用IC109や各回路素子に所望の動作電圧を供給する。このときの動作電圧の電圧値は、PWM制御信号のパルス導通幅に応じたものとなる。
また、本実施形態の電源回路111は、フライバック方式のスイッチング電源であるため、スイッチング素子Q1のオン期間中に、スイッチングトランスT1の一次巻線105に直流電圧が印加されると、出力側整流平滑回路114のダイオードD6,D7がオフ状態となって、スイッチングトランスT1にエネルギーが蓄えられ、スイッチング素子Q1のオフ期間中に、スイッチングトランスT1の一次巻線105への直流電圧が遮断されると、出力側整流平滑回路114のダイオードD6,D7がオン状態となって、それまでスイッチングトランスT1に蓄えられていたエネルギーが、スイッチングトランスT1の二次巻線113BからダイオードD6,D7を通して出力される。そのため、ドライバ115からの駆動信号によって、スイッチング素子Q1がオンになる毎に、入力側整流平滑回路112からの直流電圧に、スイッチングトランスT1の一次側と二次側との巻数比を掛け合わせた負電圧が、二次巻線113Bの非ドット側端子に発生する。この負電圧は、商用電源からの入力電圧に比例したマイナス電源電圧となる。
こうして、オーブンレンジの内部で動作電圧が生成されると、制御用IC109は被調理物Sを加熱調理するのに、電流情報検出手段78からCT入力端子に送出される電流検出信号に基づいて、商用電源からの入力電流を監視すると共に、電圧情報検出手段79から電圧検出入力端子に送出される電圧検出信号に基づいて、商用電源からの入力電圧を監視する。特に電圧情報検出手段79を構成する極性変換手段118は、制御用IC109からのPWM制御信号を利用して、スイッチング素子Q1がオンになる毎に、二次巻線113Bの中間端子に発生する負電圧を取り込み、この負電圧を正電圧に変換した電圧検出信号を、制御用IC109の電圧検出信号に送出する。これにより制御用IC109は、加熱調理中に商用電源からの入力電流のみならず、商用電源からの入力電圧を正しく監視することが可能になる。
なお、本実施形態の電圧情報検出手段79は、スイッチングトランスT1の二次巻線113Bに発生する負電圧すなわちマイナス電源電圧を利用したものであるため、制御用IC109への電圧検出信号の伝送に、フォトカプラなどの電気的な絶縁素子を必要としない。また商用電源の周波数に拘らず、商用電源からの入力電圧の変動を的確に検出できる利点もある。
図10は、別な変形例となるオーブンレンジ内部の主な回路図を示している。同図において、基本的な回路構成は、電圧情報検出手段79を除いて図9に示す回路図と共通している。この変形例では、電圧情報検出手段79として、フォトカプラ121と電流制限用の抵抗R5,R6とを用いている。フォトカプラ121は、商用電源の入力電圧の波形に応じた矩形波信号を出力する検知素子として、発光ダイオードによる発光素子121Aと、発光素子121Aが発光するとオンする受光素子121Bとを組み合わせてなり、ここでは発光素子121Aと抵抗R5との直列回路が、入力ライン103A,103Bの間に接続される。また、フォトトランジスタによる受光素子121Bは、コンデンサC3の両端間に発生する動作電圧ラインにエミッタを接続し、制御用IC109の電圧検出信号端子と抵抗R6の一端にコレクタを接続しており、受光素子121Bのオン/オフに伴い、その電圧レベルが切り替わる電圧検出信号を、電圧情報検出手段79から制御用IC109の電圧検出信号端子に送出する構成となっている。
図11は、本変形例における商用電源の入力電圧と電圧検出信号をグラフで示したものである。本変形例のフォトカプラ121は、入力電圧が閾値Thを超えたときに、発光素子121Aが点灯するのに伴い受光素子121Bがオンして、電圧検出信号の電圧レベルがH(高)になり、逆に入力電圧が閾値Th以下になると、発光素子121Aが消灯するのに伴い受光素子121Bがオフして、電圧検出信号の電圧レベルがL(低)になる。
したがって、商用電源の周波数が一定であるならば、入力電圧が高くなる程、電圧検出信号のHレベルの時間幅Tが増加し、入力電圧が低くなる程、電圧検出信号のHレベルの時間幅Tが減少する。制御用IC109は、この時間幅Tの増減を監視することで、スイッチング素子Q1とスイッチングトランスT1とを組み合わせた回路方式であっても、商用電源の入力電圧値を時間軸で判定して正しく監視でき、入力電圧の変動があっても加熱手段からの出力を的確に保つ制御が制御手段71により実現可能となる。
本変形例の利点として、検知素子に相当するフォトカプラ121は、電気的な絶縁素子を兼用するものであるため、スイッチングトランスT1の一次側から二次側の制御用IC109に電圧検出信号をそのまま伝送できる。また、上記時間幅Tは入力電圧だけでなく周波数に応じて変動するため、制御用IC109は商用電源の入力電圧に加えて周波数を監視して、加熱調理時の制御を行なうことが可能になる。
本変形例では、温度変化に弱いフォトカプラ121の閾値Thが、加熱調理に伴う調理室14内の温度上昇で変動することを考慮して、温度情報検出手段80としてのサーミスタ15により検出される温度情報を制御用IC109が取り込んで、フォトカプラ121からの温度による電圧検出信号の時間幅Tの変動を補償するのが好ましい。その結果、フォトカプラ121の閾値Thが熱により変動しても、加熱手段からの出力をより的確に保つ制御が制御手段71により実現可能となる。
温度情報検出手段80は、フォトカプラ121の温度変化を直接的または間接的に感知できるあらゆる場所に設置可能であり、好ましくは、本来は調理室14内部の温度を検出するサーミスタ15を利用して、このサーミスタ15を扉3の近傍に設置する。その理由は、フォトカプラ121は調理室14からの熱の影響を最も受けるので、調理室14の開口部を塞ぐ比較的温度変化の大きな扉3の近傍に温度情報検出手段80のサーミスタ15を配置すれば、調理室14内の温度分布の変化を精度よく検知して、制御用IC109に判断させることが可能になるからである。
以上のように、本実施形態のオーブンレンジは、調理室14に入れられた被調理物Sを、加熱手段であるマイクロ波加熱手段85や、グリル加熱用の上ヒータ18や、オーブン加熱用の熱風ヒータ27や、スチーム加熱用の蒸発用ヒータにより加熱調理する加熱調理器であって、図9の回路図に示すように、交流電源である商用電源からの入力電圧を整流平滑する整流平滑手段としての入力側整流平滑回路112と、この入力側整流平滑回路112からの直流電圧が一次巻線113Aに印加されるスイッチングトランスT1と、スイッチングトランスT1の一次巻線113Aに印加する直流電圧を繰り返しオンまたはオフにするスイッチング素子Q1と、スイッチング素子Q1がオフしたときに、スイッチングトランスT1の二次巻線113Bに発生する電圧から、商用電源からの入力電圧を監視し、その監視結果に基づき加熱手段を制御する制御手段71に相当する制御用IC109と、を備えている。
この場合、スイッチング素子Q1がオフしたときに、スイッチングトランスT1の二次巻線113Bに発生する電圧は、商用電源からの入力電圧に比例した値となるため、この電圧を利用すれば、スイッチング素子Q1とスイッチングトランスT1とを組み合わせた回路方式であっても、商用電源の入力電圧値を正しく監視できる。したがって、オーブンレンジとして印加される入力電圧の変動があっても、加熱手段からの出力を的確に保つ制御が制御手段71により実現可能となる。
また別な変形例として、図10の回路図に示すように、商用電源の入力電圧の波形に応じた矩形波信号を出力する検知素子として、電気的に絶縁した信号伝送を可能にするフォトカプラ121を備え、スイッチングトランスT1の二次巻線113Bに発生する電圧に代わり、フォトカプラ121から出力される矩形波信号の時間幅Tから商用電源の入力電圧を監視し、その監視結果に基づき上述の加熱手段を制御するように、制御用IC109を構成してもよい。
この場合、商用電源の入力電圧の波形に応じた矩形波信号を出力するフォトカプラ121などの検知素子を利用すれば、この矩形波信号の時間幅Tから、交流電源の入力電圧値を正しく監視できる。したがって、加熱調理器として入力電圧の変動があっても、加熱手段からの出力を的確に保つ制御が実現可能となる。
また本変形では、調理室14内の温度情報を検出するために、サーミスタ15を含む温度情報検出手段80を備え、制御用IC109は、商用電源の入力電圧の監視結果に加えて、温度情報検出手段80からの温度情報に基づき、加熱手段を制御する構成とするのが好ましい。
この場合、温度情報を取得するための温度情報検出手段80を備えることにより、温度変化に弱いフォトカプラ121であっても、フォトカプラ121からの温度による出力変動を補償して、加熱手段からの出力をより的確に保つ制御が実現可能となる。
また本変形例では、調理室14の内部において、温度情報検出手段80を構成するサーミスタ15が、調理室14の開口部を塞ぐ扉3の近傍に配置される。
フォトカプラ121は調理室14からの熱の影響を最も受けるので、調理室14の開口部を塞ぐ比較的温度変化の大きな扉3の近傍に、温度情報検出手段80のサーミスタ15を配置すれば、調理室14内の温度分布の判断の精度を向上させて、加熱手段からの出力をさらに的確に保つ制御が実現可能となる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。例えばスイッチング素子Q1は、FET以外にバイポーラトランジスタなどの半導体スイッチング素子を用いることができる。また、図9に示す回路図で、二次巻線113Bの中間端子から取り出した負電圧を利用したが、二次巻線113Bの別な端子から取り出した負電圧を利用してもよい。その他に電源回路111は、フライバック方式に限らず、スイッチング素子Q1がオフしたときに、スイッチングトランスT1の二次巻線113Bに発生する電圧が、商用電源からの入力電圧に比例するあらゆる回路方式を適用できる。さらに、変形例の検知素子は、単独の発光素子121と受光素子121Bとによるフォトカプラ121であったが、例えば2つの発光素子を逆方向に並列接続した双方向フォトカプラなどを用いてもよい。