JP2017208541A - 周波数シフトテラヘルツ波発生装置及び発生方法、周波数シフトテラヘルツ波計測装置及び計測方法、断層状態検出装置及び検出方法、サンプル特性計測装置、計測方法 - Google Patents

周波数シフトテラヘルツ波発生装置及び発生方法、周波数シフトテラヘルツ波計測装置及び計測方法、断層状態検出装置及び検出方法、サンプル特性計測装置、計測方法 Download PDF

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Abstract

【課題】周波数シフトテラヘルツ波を発生する技術を新たに創出すると共に、テラヘルツ帯の計測技術、特に構造物の断層状態を検出する技術を提供すること。
【解決手段】 本発明の周波数シフトテラヘルツ波計測方法は、周波数がシフトする周波数シフトレーザー光と、周波数シフトレーザー光の中心周波数との差がテラヘルツ波の周波数である中心周波数の単色レーザー光とを用い、周波数シフトレーザー光と、該単色レーザー光とを合波してテラヘルツ周期のビートを有する光ビート信号を出力する光ビート信号出力工程、光電変換により光ビート信号からテラヘルツ波の周波数で振動する電流を生じさせ、これを空間に放射する周波数シフトテラヘルツ波発生工程、光ビート信号をプローブ光とし、テラヘルツ波発生工程で放射されたテラヘルツ波の反射・透過波を検出してRF周波数成分をもつ電流を生じさせる光検出工程、RF周波数成分を解析する解析工程を有する。
【選択図】図3

Description

本発明は、周波数シフトするテラヘルツ波の発生装置及び発生方法と、該テラヘルツ波を用いた計測装置及び計測方法に関する。また、該計測装置によって構造体の断層状態を検出する断層状態検出装置及び検出方法に関する。
橋梁などのコンクリート内部の欠陥や鉄骨状態の検査、建築物壁面やトンネル壁面の剥離状況の検査、古墳壁面の剥離状況の検査など、安心安全の観点や文化財保護の観点から、非破壊・非接触での内部状態計測法が必要とされている。従来、これらの目的においては、打音による計測、超音波計測、電波計測、赤外線計測など種々の方法が実地されている。特に電波計測では周波数の透過反射特性に応じて様々な測定方法が知られている。例えばマイクロ波ではコンクリート内部の金属、ミリ波では木造壁の裏面などいずれも内部状態を計測する方法が提案されている。
本発明が対象とするテラヘルツ波の有する物質透過性を利用した応用事例として、震災後の建造物外壁の剥離状況の調査、高松塚古墳の壁面剥離状況の調査、スペースシャトル外壁材内の欠陥の検出などが行われている。
一般的には、テラヘルツ時間領域分光装置(Terahertz-Time Domain Spectrometer:THz-TDS)を用いて、ピコ秒程度のテラヘルツ波パルスを測定対象に照射し、エコーパルスを計測するTOF(Time of Flight)計測が知られている。この際、THz-TDSによる計測では、テラヘルツ波パルスをピコ秒の時間領域においてサンプリング計測を行う必要がある。これは、テラヘルツ波パルスとプローブ光パルスを、フェムト秒オーダーでの時間遅延制御を行った上で検出器に入射し、テラヘルツ波パルスの電場時間波形を計測する方法となる。
この際、プローブ光パルスに対して、自動ステージなどで空間的な光路遅延を施すことになる。フェムト秒オーダーの時間遅延はステージ移動に換算するとマイクロメートルオーダーでの制御になる。
例えば、測定器から測定対象までの距離が1mであった場合、テラヘルツ波パルスの往復光路長2mを考慮して、予めプローブ光パルスに当該遅延を設けておく。その上で、プローブ光パルスの光路をマイクロメートルオーダーでスキャンし、テラヘルツ波パルスの光サンプリング計測を行うことになる。
測定対象までの距離が1mの範囲から大きくずれない場合には問題無いが、例えば、1m±0.1mの範囲内の構造を持ち、エコーパルスによって当該構造を抽出する場合には、光サンプリングに要求されるマイクロメートルオーダーでの光路スキャンを、±0.1m の範囲すべてにわたって実施しなければならない。
光路スキャンの距離分解能を5μmとして計測を実地すれば、20,000点のデータ取得を行う必要がある。この計測をイメージングに展開した場合、各点でのデータ数20,000点×ラスタースキャン実行時の画素数をデータとして取得する必要があり、計測には膨大な時間を要する。
ここまではコンピュータの性能に任せて実施可能であるが、測定対象の構造が±1mを越えるような場合や、そもそも測定対象までの距離が一定では無い場合、光サンプリングに要求されるマイクロメートルオーダーでの光路スキャンを実行しつつ、1m超の光路スキャンを行うことは困難である。
また、最近の傾向として、遠隔サンプルの計測の場合にはオール光ファイバー化されたTHz-TDS システムを用いる傾向がある。光ファイバーによる系では、サンプル位置が必ずしも決まっていない場合に、テラヘルツ波の取り回しが大きく簡易化される。この点に付随して、別の技術的課題が生じる。テラヘルツ波励起およびプローブのための光パルスは、一般的に50-100fsec程度のパルス幅のものが使われる。
かかる超短パルスは、光ファイバー伝搬時に分散によるパルス広がりが生じる。このため、ファイバー入射前段において逆分散処理を施す必要がある。このため、テラヘルツ波パルスの光路長に合わせた光ファイバー長の設定、および、逆分散処理が必要となり、想定からはずれた距離にある対象の検出は難しい。
測定器から測定対象までの距離に大きな差がある場合や、測定対象自体が±1m程度を越える構造を有する場合、現行のTHz-TDSを使用したTOF計測は、技術的な困難さが生じる。このことから、特にリアルフィールドでの壁面剥離検査など、測定器から測定対象の距離が不定な場合や、どの位置に欠陥があるかわからない場合、実用上の問題が生じており、この点を解決する新たな方策が求められている。
テラヘルツ波を利用した建造物の検査方法および検査システムが特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の発明は、建造物に発生電磁波を照射しその透過あるいは反射画像を得ることによって、建造物の表面および内部の欠陥分布のイメージングを可能にしている。そして、高い発振周波数では建造物表面付近を高分解能で観察する際に有効であること、低い発振周波数では、建造物の内部まで電磁波が到達できることから、建造物内部観察に有効であることが記載されている。
本文献の実施例で用いられているタンネットダイオードの電磁波は50、70、220GHzである。コンクリート建造物の測定が可能な厚みは、200mm程度から50mm程度であるとしており、それより厚みのある測定については記載されていない。
特許文献2には、テラヘルツ波の周波数帯の固有振動スペクトルの有無に関わらず物質の状態の変化を、THz-TDSを用いたテラヘルツパルスにより検出することができる検出方法が開示されている。本発明は、照射したテラヘルツ波に対する物質の性質の周波数依存性を求め、物質の性質の周波数依存性の、直線近似したときの直線の傾き又は直線の傾きを算出する算出手段を備えた点に特徴を有する。分析する対象として高分子などが例示されている。
特許文献3には、モード同期周波数差を一定値に保ちながらモード同期周波数のチューニングが可能な安定化制御された2台のフェムト秒レーザーを、テラヘルツ・パルス発生用ポンプ光とテラヘルツ検出用プローブ光の各々に用いる技術が開示されている。本技術では、複数のテラヘルツ・パルスから構成されるテラヘルツ・パルス列の電場時間波形を、非同期光サンプリング法の原理に基づいて時間的に拡大し、時間遅延走査用機械式ステージ無しで高速取得する。その電場時間波形をフーリエ変換することにより、テラヘルツ・コム・スペクトルを得る。さらに、レーザー制御によって、テラヘルツ・コムの間隙を補間するようにコム・モードを線幅刻みで周波数シフトさせ、その結果得られた複数のテラヘルツ・コム・スペクトルを合成して、コム間隙部が補完された超微細テラヘルツ・スペクトル波形を得ることが記載されている。
特許文献4に記載された技術によれば、ターゲットを分析し、同定し、又は画像化するための装置が、ターゲット上に集光され、該ターゲットを透過した、又は該ターゲットから反射された、100GHzより大きい周波数範囲の1つ又はそれ以上の帯域におけるCW信号を生成するように、一対の光伝導スイッチに結合された第1及び第2のレーザ・ビームと、ターゲットから受け取った信号からスペクトル情報を取得し、マルチスペクトル・ヘテロダイン・プロセスを用いてターゲットの幾つかの特性を表す電気信号を生成するための検出器とを含む。レーザは、異なる周波数に調整され、1つのレーザ・ビームの経路にある周波数シフタにより、1つ又はそれ以上の選択された周波数帯域においてテラヘルツ・ビームを精密に調整することが可能になる、としている。
ところで、テラヘルツ領域とは異なる光領域においてレーザーの周波数をシフトする光源が提案されている。非特許文献1、非特許文献2には、光共振器内の音響光学素子の1次回折光で帰還ループを構成する周波数シフト帰還型レーザーが開示されている。そして、この周波数シフト帰還型レーザーを用いた光計測への応用、特に光距離計測について述べられている。しかし、言うまでもなく光領域で測定可能な対象、例えば屋外における距離の計測に用いられる技術である。測定距離についても、ごく近距離の0〜1mも可能であるし、18.5kmを計測した事例も開示している。
特開2007−132915号公報 特開2008−164594号公報 特開2011−242180号公報 特開2012−098264号公報
吉田真人、中村孝一郎、伊藤弘昌「周波数シフト帰還型ファイバレーザー」 レーザー研究1999年7月、490頁 中村孝一郎、伊藤弘昌「周波数シフト帰還型レーザー」 応用物理第68巻第9号(1999年)、1014頁
本発明は上記従来技術の有する問題点に鑑みて創出されたものであり、周波数シフトテラヘルツ波を発生する技術を新たに創出すると共に、テラヘルツ帯の計測技術、特に構造物の断層状態を検出する技術を提供することを目的とする。
本発明は上記課題を解決するため、次のような周波数シフトテラヘルツ波発生装置を提供する。
すなわち、周波数が0.1THzないし10THzのテラヘルツ波を用いた周波数シフトテラヘルツ波発生装置であって、周波数がシフトする周波数シフトレーザー光を出力する周波数シフトレーザー光源と、単色レーザー光を出力する単色レーザー光源とを用いる。この単色レーザー光の中心周波数は、周波数シフトレーザー光の中心周波数との差がテラヘルツ波の周波数である。
そして、周波数シフトレーザー光と、単色レーザー光とを合波してテラヘルツ周期のビートを有する光ビート信号を出力する合波手段と、光電変換により光ビート信号からテラヘルツ波の周波数で振動する電流を生じさせ、これを空間に放射する周波数シフトテラヘルツ波発生手段とを備える周波数シフトテラヘルツ波発生装置を提供する。
本発明において、上記の周波数シフトレーザー光の半値全幅と、上記の単色レーザー光の半値全幅との比が、1000000:1以内であることが望ましい。
また、本発明において、上記の周波数シフトレーザー光の半値全幅と、上記の単色レーザー光の半値全幅との比がX:1であれば、中心周波数におけるスペクトル強度と、上記の単色レーザー光の中心周波数におけるスペクトル強度との比が、1:Xであることが好ましい。
本発明は周波数シフトテラヘルツ波計測装置を提供することもできる。
周波数シフトテラヘルツ波計測装置には、上記周波数シフトテラヘルツ波発生装置に加えて、さらに上記の光ビート信号をプローブ光とし、テラヘルツ波発生手段から放射されたテラヘルツ波の反射・透過波を検出してRF周波数成分をもつ電流を生じさせる光検出手段と、RF周波数成分を解析する解析手段とを備える。
本発明において、上記のテラヘルツ波発生手段として、単一走行キャリアフォトダイオードと好適である。また、上記の光検出手段が、光伝導アンテナ、もしくはショットキーバリアダイオードを用いると好適である。
上記周波数シフトテラヘルツ波計測装置において、光検出手段が、プローブ光と反射・透過波とを用いた自己遅延ヘテロダイン検波を行い、光路差に比例したビート周波数を縦モード周波数ごとに0次以上の所定の次数について検出し、次数に係るビート周波数から距離を算出する距離算出手段を備えた構成でもよい。
本発明は次のような周波数シフトテラヘルツ波発生方法を提供することもできる。
すなわち、周波数が0.1THzないし10THzのテラヘルツ波を用いた周波数シフトテラヘルツ波発生方法であって、周波数がシフトする周波数シフトレーザー光と、周波数シフトレーザー光の中心周波数との差がテラヘルツ波の周波数である中心周波数の単色レーザー光とを用い、周波数シフトレーザー光と、単色レーザー光とを合波してテラヘルツ周期のビートを有する光ビート信号を出力する光ビート信号出力工程、光電変換により光ビート信号からテラヘルツ波の周波数で振動する電流を生じさせ、これを空間に放射する周波数シフトテラヘルツ波発生工程とを有する周波数シフトテラヘルツ波発生方法を提供する。
上記の周波数シフトレーザー光の半値全幅と、上記の単色レーザー光の半値全幅との比が、1000000:1以内であることが望ましい。
また、上記の周波数シフトレーザー光の半値全幅と、上記の単色レーザー光の半値全幅との比がX:1であれば、中心周波数におけるスペクトル強度と、上記の単色レーザー光の中心周波数におけるスペクトル強度との比が、1:Xであることが好ましい。
上記の周波数シフトテラヘルツ波発生方法の各工程の後に、光ビート信号をプローブ光とし、テラヘルツ波発生工程で放射されたテラヘルツ波の反射・透過波を検出してRF周波数成分をもつ電流を生じさせる光検出工程、RF周波数成分を解析する解析工程を有する周波数シフトテラヘルツ波計測方法を提供することもできる。
この周波数シフトテラヘルツ波計測方法において、光検出工程において、プローブ光と反射・透過波とを用いた自己遅延ヘテロダイン検波を行い、光路差に比例したビート周波数を縦モード周波数ごとに0次以上の所定の次数について検出し、さらに、次数に係るビート周波数から距離を算出する距離算出工程を有する周波数シフトテラヘルツ波計測方法を提供することもできる。
この周波数シフトテラヘルツ波計測方法において、周波数シフトテラヘルツ波の光路に物体を挿入した際に生じる光路長の変化から、光学定数を計測する計測方法を提供することもできる。このとき、前記プローブ光は前記光ビート信号又は、該光ビート信号に代えて前記周波数シフトテラヘルツ波を分岐した信号を用いることもできる。
なお、上記の光検出器に光伝導アンテナを使用する場合にはプローブ光として光ビート信号を用い、光検出器にショットキーバリアダイオードを使用する場合にはプローブ光として分岐した周波数シフトテラヘルツ波を利用することが可能である。
本発明では、上記周波数シフトテラヘルツ波計測装置を、構造体の断層状態を検出するために用いた断層状態検出装置として提供することもできる。また、周波数シフトテラヘルツ波計測方法によって構造体の断層状態を計測することを特徴とする断層状態検出方法として提供してもよい。
前記、光学定数を計測する計測装置又は方法を用いて、テラヘルツ電磁波に対する光学定数(屈折率と吸収係数もしくは、複素誘電率)を計測するために用いた光学定数の計測装置として提供することもできる。また、周波数シフトテラヘルツ波計測方法によって光学定数(屈折率と吸収係数もしくは、複素誘電率)を計測することや光路長の変化を伴う物質の密度の変化などを計測することを特徴とする計測装置又は方法として提供してもよい。
本発明により、従来実現されていなかった周波数シフトテラヘルツ波の発生装置及び発生方法を提供することができる。
また、このような発生装置及び発生方法に係る技術を利用することで、周波数シフトテラヘルツ波の反射・透過波を計測する計測装置及び計測方法を提供し、従来では難しかった大きな光路差の反射・透過波についても解析を可能にした。
さらに、構造体の断層状態を検出する断層状態検出装置や検出方法を提供することもできる。
また、光路長差の変化を高精度にかつ瞬時に検出することができるため、計測対象物の密度の変化や応力の変化等の光路長の変化を伴う物質状態の変化を瞬時にかつ高精度に検出する効果もある。
本発明にかかる周波数シフトテラヘルツ波発生装置の構成図である。 周波数シフトレーザーと単色レーザーのスペクトルの概要を示す図である。 周波数チャープコムを模式的に示した図である。 周波数シフトテラヘルツ波発生装置で発生した周波数シフトテラヘルツ波のパワースペクトルを示す図である。 本発明の実施例2にかかる周波数シフトテラヘルツ波計測装置の構成図である。 本発明の実施例3にかかる周波数シフトテラヘルツ波計測装置の構成図である。 本発明の実施例4にかかる周波数シフトテラヘルツ波計測装置の構成図である。 周波数シフトテラヘルツ波の光路長変化に伴う干渉波形を示す図である。 周波数シフトテラヘルツ波の光路長変化に伴うビート信号の周波数の変化を示す図である。 光路長差の変化にともなうビート周波数の変化を示す図である。 本発明の実施例5にかかる屈折率計測のための光学系を示す図である。 各種の樹脂を挿入した際のビート周波数の変化を示す図である。
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。本発明は以下の実施例に限定されず請求項記載の範囲で適宜実施することができる。
従来技術においても説明したように、光領域での計測では、周波数シフトレーザー(Frequency Shefted laser:FSレーザー)を用いた周波数領域リフレクトメトリ(Frequency Domain Reflectometry:FDR計測)を実施することで、測定器からの距離に大きな幅のある対象の精密距離計測が実現されている。
(実施例1)
本発明では、周波数シフトレーザーを励起光源として新たな周波数シフトテラヘルツ波発生装置を提供する。このような周波数シフトテラヘルツ波発生装置は、周波数シフトレーザーの有する周波数シフト特性をそのままテラヘルツ波領域に転写することが可能であり、新しいテラヘルツ波光源となりうる技術である。
例えば、テラヘルツ波の有する物質透過特性を利用して物質の内部構造を計測することが可能である。
なお、本発明においてテラヘルツ波は周波数が0.1THzないし10THzの電磁波であり、特に周波数が0.1THzないし3THzの範囲が物質透過特性の観点から好ましい。
まず、本発明で用いる周波数シフトレーザーについて説明する。
周波数シフトレーザーとは、レーザー共振器内部に光周波数シフターを挿入することで、光が共振器内を周回するごとに一定の周波数シフトを与えられる光源である。
例えば、非特許文献2に記載される周波数シフト帰還型レーザー(FSFレーザー)では、2枚の反射鏡からなる光共振器内に利得媒質及び音響光学素子(AOM)を配置し、音響光学素子の1次回折光を利得媒質に帰還することにより構成されている。音響光学結晶には、トランスデューサーで発生した一定周波数かつ一定電力の音響波が伝搬しており、音響波の強度分布に対応した屈折率の格子が形成される。ここに光波が入射するとブラッグ条件を満たす方向に強い一次回折光が生じる。このとき音響光学結晶中の屈折率格子は、音波の伝搬に伴って一定速度で移動しているので、一次回折光の周波数は入射光に対してドップラーシフトを受ける。
このドップラーシフト量は音響波の周波数に等しく例えば100MHz程度である。光波の周波数が300THzとすると、周波数シフトは光波の周波数に比べてきわめて小さい。
また、非特許文献2に記載されるような全固体型FSFレーザーも知られている。半導体レーザーを励起光源とする固体レーザーは、全固体型レーザーと呼ばれ、半導体レーザーの発振波長を利得媒質の吸収波長に一致させることによって、共鳴的な励起を起こすことで効率が向上する。例えば利得媒質としてND:YVO4結晶を用い、半導体レーザーによって励起する。そして、コリメートレンズ、音響光学素子からなるFSF共振器を介して出力カプラーから出力する。ここで音響光学結晶の両端面には、一次回折光が入射光に対して平行に出射されるような角度が付けられており、共振器1周回について周波数シフトが生じる。非特許文献2では、駆動周波数80MHzのときに共振器縦モード周波数が1.265GHz、周波数シフト量が160MHzの全固体型FSFレーザーが例示されている。
本発明において周波数シフトレーザーの種類は限定されず、任意の光源を用いることができる。
本光源からのレーザー光は、コム状のスペクトルが周波数シフトを繰返す、周波数チャープコムと呼ばれる性質を持つ。
この際のチャープ率は、共振器長および周波数シフターの駆動周波数によって決定され、一般的には100THz/sec超の高速周波数掃引が得られる。周波数シフトレーザーを用いた従来のFDR計測では、周波数シフトレーザー光を2光路に分け両者に光路差を付けたのち、両者を合波する。
周波数チャープコムは光路差に応じた周波数差が生じることから、この周波数差が光強度の変化、すなわちビート信号として得られる。よって、ビート成分の周波数情報から、光路差の距離の情報を算出することが可能となる。
また、光路差によるビート成分が共振器周波数モードを越えた場合も、高次のビート信号を観測することで同様の距離計測が可能となり、この際の計測精度は、原理的には基準周波数源となるFSレーザーの周波数チャープコムの精度で引き出すことが可能である。この原理を利用することで大型、複雑な形状をした対象の観測も可能になる。
本発明では、周波数シフトレーザーによるFDR計測の原理をテラヘルツ波に適用するために、図1に示すような周波数シフトテラヘルツ波発生装置(1)(以下、発生装置と呼ぶ。)を提供する。
発生装置(1)には、上記で説明した周波数がシフトする周波数シフトレーザー光を出力する周波数シフトレーザー光源(10)と、単色レーザー光を出力する単色レーザー光源(11)を備える。
ここで、単色レーザー光源(11)は波長可変レーザーであり、単色レーザー光の中心周波数は周波数シフトレーザー光の中心周波数との差がテラヘルツ波の周波数となるように設定する。周波数可変性を持つ半導体レーザーを用いることで、1GHz〜2THzの周波数可変性を付与している。
図2には、この時の周波数シフトレーザーと単色レーザーのスペクトルの概要を示す。図において単色レーザー光のスペクトル(20)の中心周波数(21)と、周波数シフトレーザー光のスペクトル(22)の中心周波数(23)の差Δν(24)を本発明で用いるテラヘルツ波の周波数とする。
なお、ビート成分検出のためには、差周波に使用する単色レーザ光源として周波数シフトレーザーのビート間隔よりも細い線幅が要求される。具体的には線幅100kHz程度の波長可変光源が望ましい。
本発明では、周波数シフトレーザー光の半値全幅(図2中の点線部における帯域幅)と、単色レーザー光の半値全幅との比が、1000000:1以内とすることが好ましいことを見出した。
また、周波数シフトレーザー光の半値全幅と、単色レーザー光の半値全幅との比がX:1であった場合、周波数シフトレーザー光の中心周波数におけるスペクトル強度と、単色レーザー光の中心周波数におけるスペクトル強度との比が、1:Xとすることが好ましいことを見出した。
(光ビート信号出力工程)
この2つのレーザー光を合波器(12)で合波すると、この光は、両レーザーの中心周波数の差に応じたテラヘルツ周期のビートを有しており、かつ、当該ビートは周波数シフトレーザーの有する周波数チャープコムの性質を持つ。図3は周波数チャープコムを模式的に表した図であり、瞬時周波数νi(t)の時間的変化は次の数1で表される。
Figure 2017208541
ここで、τRTは周波数シフトレーザー光源における共振器の周回時間であり、νFS
は周回あたりの周波数のシフト量、qは整数である。図のグラフの太さは光の強度変化を示している。また、図中において、後述する縦モード周波数1/τRTを矢印で示す。
合波器(12)は市販のレーザー光合分波ビームスプリッターや、レーザー合波ユニットなどを用いることができる。本実施例では、ファイバーカプラーを使用している。また、DWDM等を用いることもできる。
本実施例では発生装置(1)には、さらに光増幅器(13)を備えている。光増幅器(13)は誘導放出により入射光を光の状態で増幅する。増幅すべき光信号は励起光とファイバーに入り、添加されたイオンとの相互作用によって増幅される。本実施例で用いているエルビウムドープトファイバー増幅器(EDFA)は、石英ファイバーに3価のエルビウムイオン(Er+3)が添加されており、波長が980nmまたは1480nmの光で励起することで、1550nm帯の信号光に対して増幅作用を示す。
(周波数シフトテラヘルツ波発生工程)
この励起光をテラヘルツ発生器(14)に入射すると光電変換によりビートに応じた電流が生じ、周波数チャープコムの性質を持つ周波数シフトテラヘルツ波が放射される。テラヘルツ発生器(14)として、例えば光伝導アンテナ(Photo Conductive Antenna:PCA)や単一走行キャリアフォトダイオード(Uni-Traveling-Carrier Photo Diode:UTC-PD)などを用いることができる。本実施例では数μWの出力が可能なUTC-PDを用いている。
図4には、UTC-PDにより発生した周波数シフトテラヘルツ波に対し、熱検出器によって測定したパワースペクトルを示す。単色光の波長を変化させることで、100〜500GHzでの周波数シフトテラヘルツ波発生が確認できた。
本発明では、テラヘルツ波が1mを越える距離を伝搬するため、水蒸気の吸収を避けた周波数帯での計測を行うことが好ましい。テラヘルツ波帯における、いわゆる大気窓と呼ばれる周波数は、0.50THz、0.65THz、0.85THzなどに存在し、本発明の周波数選択にあたっては大気窓の周波数帯から選択することができる。
本発明に係る周波数シフトテラヘルツ波発生装置(1)及び周波数シフトテラヘルツ波発生方法は、以上の通りである。
次に、上記発生装置(1)の構成を利用した周波数シフトテラヘルツ波計測装置及び計測方法の構成について説明する。
(実施例2)
本発明の第2の実施形態では、周波数シフトテラヘルツ波計測装置を提供する。図5には周波数シフトテラヘルツ波計測装置(3)(以下、計測装置と呼ぶ。)の構成を示す。実施例1と同一の構成要素については同じ符号により図示する。
計測装置(3)には、発生装置(1)に加えて光検出手段であるテラヘルツ波検出器(32)と、テラヘルツ波検出器(32)から出力される電流を増幅する電流増幅器(33)、アナログ信号をデジタル変換するAD変換器(34)、得られた周波数成分を解析する解析手段となるコンピュータ(35)を備える。
(光検出工程)
テラヘルツ検出器(32)は、テラヘルツ発生器(14)から放射されたテラヘルツ波が計測対象物(30)に反射した反射波を検出する。図示されるように、本実施例ではテラヘルツ波ビームスプリッタ(31)を途中に配置してテラヘルツ波発生器(14)から放射されるテラヘルツ波の計測対象物(30)への入射路と、反射波の出射路とが平行になる。
上記の光増幅器(13)から出力された光ビート信号を分波してプローブ光とし、テラヘルツ検出器(32)に入力する。そして、テラヘルツ検出器(32)は反射波を検出してRF周波数成分をもつ電流を生じさせる。
本実施例において、テラヘルツ波検出器(32)として、InGaAsを基板とした光伝導アンテナ(photoconductive antenna:PCA)を用いている。テラヘルツ波検出には、暗電流の少ない高SN測定が期待できるPCAの使用が特に好適である。
詳しく述べると、周波数シフトテラヘルツ波とプローブ光の有するチャープコムは、両者の光路差に応じた周波数差を有している。この周波数差は電気的な処理の可能なMHz程度のRF周波数である。プローブ光の有する周波数チャープコムの性質を持ったテラヘルツ周期ビートがテラヘルツ波検出器(32)で光励起キャリアを発生し、このキャリアを光路差に応じたわずかに周波数の異なる周波数シフトテラヘルツ波の電場が駆動することにより、当該周波数差に応じたRF周波数成分をもつ電流が発生する。このRF周波数を測定することで、テラヘルツ波の経た光路長を計測することができる。
本発明の計測装置(3)の応用例として、構造体の断層状態を検出するための断層状態検出装置として利用することができる。すなわち、計測対象物(30)の内部における断層(30a)(30b)(30c)の境界においてそれぞれテラヘルツ波の反射波が生じ、テラヘルツ波検出器(32)では各断層の深度に係る光路差に応じて異なるRF周波数成分の電流が得られる。
これをコンピュータ(35)で解析することにより、構造体の断層状態を検出することができる。
距離測定のレンジおよび精度は、励起光源となる周波数シフトレーザー(10)に依存する。本実施例では、3Dイノベーション社製のファイバー系の周波数シフトレーザーを用いた。周波数シフトレーザーの共振器周波数40MHz、周波数シフト55MHzの場合、周波数チャープコムのチャープ率は14.7kHz/mmとなる。
(解析工程)
このチャープ率で0次ビート成分が共振器周波数内に収まる距離は5.4mである。測定距離が5.4mを越える場合においても、高次のビート成分を検出すれば良い。即ち、計測装置(3)から計測対象物(30)までの距離に特別な制約は無い。このとき、計測対象物(30)までの距離に対し±5.4mに収まる物体であれば、特別な信号処理を施すことなく、ビート成分の周波数から直接距離を算出可能である。
仮に±5.4mを越える幅を持つ計測対象物(30)であっても、ビート成分の挙動の解析から距離算出を行う事が可能である。
テラヘルツ波検出器(32)からの信号に対し、24bitの電圧分解能を有するAD変換器(34)によって電流増幅器(33)の出力を取り込む。信号はコンピュータ(35)上でソフトウエア的に高速フーリエ変換処理を行い、周波数解析を行う。この処理により複数の反射面からの反射波の解析を行う。
発明者らによる実験では、周波数測定値に対する標準誤差0.74KHzを得ることができた。この値から距離の測定精度を算出すると0.05mmとなる。
本発明に係る計測装置(3)では、従来では実現できなかった5.4mを超える幅、例えば10mの幅を持つ計測対象物(30)の計測も可能となる。また、測定精度も例えば0.1mm程度の極めて高い精度を実現することができる。
(実施例3)
上記第2の実施形態の光検出工程の別実施例として、テラヘルツ波検出器(32)にショットキーバリアダイオードを用いる構成説明する。図6には周波数シフトテラヘルツ波計測装置(3’)(以下、計測装置と呼ぶ。)の構成を示す。本実施例では、実施例2の構成要素に加えてテラヘルツ参照ミラー(36)を備え、その他の同一の構成要素については同じ符号により図示する。
実施例2では光増幅器(13)から出力された光ビート信号を分波してプローブ光とし、テラヘルツ検出器(32)に入力していたが、本構成では、テラヘルツ波発生器(14)から出力されたテラヘルツ波をテラヘルツ波ビームスプリッタ(31)でテラヘルツ参照ミラー(36)に向けて分岐する。
テラヘルツ波参照ミラー(36)で反射されるテラヘルツ波を参照波とし、計測対象物(30)の内部における断層(30a)(30b)(30c)の境界においてそれぞれ生じたテラヘルツ波の反射波と合波して、テラヘルツ波検出器(32)に入力する。本構成はテラヘルツ波同士でビートを発生させ、距離に応じたビート周波数を観測することで、上記と同様の計測を可能にしている。
また、テラヘルツ波ビームスプリッタ(31)を配置せず、測定対象物の表面と内部で反射したテラヘルツ波とを合波させたり、計測対象物に照射する光路中にテラヘルツ波ビームスプリッタ(31)を配置し、同ビームスプリッタから反射したテラヘルツ波と計測対象物からの反射を合波する実施形態もある。
上記各実施例では、計測対象物(30)に反射した反射波をテラヘルツ波検出器(32)で検出しているが、テラヘルツ波を計測対象物(30)に透過させ、その透過波をテラヘルツ波検出器(32)で検出する構成でもよい。
(実施例4)
上記第3の実施形態の別実施例として、図7に周波数シフトテラヘルツ波の評価光学系を示す。本実施例では、図6に示す計測対象物の代わりに、テラヘルツ信号ミラー(37)を配置する。また、図6中の電流増幅器の代わりに、電圧増幅器(38)を用いている。その他の同一の構成要素については同じ符号により図示する。
本構成によって周波数シフトテラヘルツ波を評価することができる。周波数シフトテラヘルツの発生部は、単色光源と周波数シフトレーザーおよび合波器としてUT-CPD(単一走行キャリアフォトダイオード)で構成される。単色レーザーの波長は1556.28nmである。周波数シフトレーザーは中心波長が1558.26nmであり、スペクトル幅は±0.5nmである。
本実施例では、3Dイノベーション社製のファイバー系の周波数シフトレーザーを用いた。周波数シフトレーザーの共振器周波数40MHz、周波数シフト55MHzの場合、周波数チャープコムのチャープ率は14.7kHz/mmとなる。
単色レーザーと周波数シフトレーザーは光ファイバーを経由し光合波器によって合波されUT-CPDに入力される。このときの単色レーザーと周波数シフトレーザーの強度はそれぞれ、27mWおよび3mWとした。
単色レーザーと周波数シフトレーザーの差の周波数特性で決まる244.8GHzの周波数シフトテラヘルツ波が放射する。テラヘルツは±60GHzの範囲で周波数シフトしていることになる。
(検出工程)
検出器にはショットキーバリアダイオードを用いた。本実施例で用いたショットキーバリアダイオードが検出可能な電磁周波数は70GHz〜2THz程度である。時間応答速度はアンプの帯域で決まり、直流成分(DC)〜10MHzである。すなわち10MHz以下のビート周波数を検出可能である。また、広帯域な電磁波に感度特性を持たせるため、シリコンレンズを用いたショットキーバリア―ダイオードを採用している。
(周波シフトテラヘルツ波の波長評価方法)
周波数テラヘルツ波の周波数を評価するために、干渉波形を計測し中心波長を計測した。図7の構成において、ビームスプリッタで分岐された周波数シフトテラヘルツ波の一方は、参照ミラーで反射し再びビームスプリッタに戻る。ビームスプリッタで分波された他方の周波数シフトテラヘルツ波は別のミラーで反射されビームスプリッタに戻る。
もう一方のミラーで反射した周波数シフトテラヘルツ波と合波されショットキーバリアダイオードに入射する。このとき、ビームスプリッタで分波された一方のミラーを,メモリ付のステージ上に固定し、光軸方向に移動しながらショットキーバリアダイオードで検出された強度をプロットすると干渉波形の計測が可能である。
干渉波形の波の周期により発生する周波数シフトテラヘルツ波の中心波長を計測することができる。
図8は横軸に光路長差をとり縦軸にTHz波の出力強度をプロットしたものである。周期的な干渉パターンのピークの間隔が中心波長に相当する。ピーク間隔の距離は1.4mmとなった。ここから、発生している周波数シフトテラヘルツ波の中心波長は1.4mmとなり、0.24THzを中心周波数とする周波数シフトテラヘルツ波発生していることが分かった。単一レーザーと周波数シフトレーザーの中心周波数の差周波数と一致していることが分かった。
(周波数シフトテラヘルツ波のビート周波数評価)
次に、周波数シフトテラヘルツ波のビート信号特性について評価する。図7の構成において合波した2光波のテラヘルツに光路長差を与えると光路長差に応じたビート周波数が観測される。
ショットキーバリアダイオードの信号を電圧アンプにより増幅しAD変換器を介してPCに入力する。検出される電気信号を周波数解析よって、ビート周波数を知ることができる。電圧アンプの信号をネットワークアナライザーにて解析してもよい。
図9はマイケルソン干渉計において、光路長を変化させた際に検出されるビート信号の周波数の変化を示している。光路長差を大きくするに従い検出されるビート信号の周波数が増加していることが分かる。なお、100GHz付近の信号は、光波レーザーの持つ強度変調に発生した信号であり、周波数シフトによって生じたビート信号ではなく、計測においてはノイズ成分となる。電気フィルターの適応や周波数シフトレーザーの改善にて、これらのレーザー起因のスペクトルをカットすることで距離測定や物性測定の高精度化が期待できる。
図10は光路長差の変化に伴うビート周波数の変化を示す。図中に理論値(実線)と実験から得られた値をプロットしたものを示す。理論値は周波数シフトレーザーの特性で決まる値である本実験では,14.7kHz/mmの傾きを持つ直線である。実験値と理論値が一致していることから、周波数シフトテラヘルツ波の光路長変化に伴うビート信号を検出していることが分かる。また、ビート周波数と距離の関係が直線で示されていることが分かり、ビート周波数から距離の換算が容易であることが分かる。
(実施例5)
次に、上記実施例4を用いた屈折率計測の実施例について説明する。本実施例に係る光学系を図11に示す。本構成は、図7の光学系において、ビームスプリッタにて2つの光路に分波した周波数シフトテラヘルツ波の光路のうち一方に厚みが既知の平行平板のサンプル(38)を挿入する。その他の同一の構成要素については同じ符号により図示する。
サンプルが挿入された光路では、屈折率の分だけ光路長が長くなる。その結果、ビート信号の周波数が変化する。本実施例では、サンプルとして高密度ポリエチレンとPTFEを用いた。サンプルの挿入前後でビート周波数の差を計測する。図12はサンプルがない場合と厚さ30mmのPE(ポリエチレン)板、および厚さが20mmと30mmのPTFEの3種類を測定した場合の結果である。
厚さ30mmのPE(ポリエチレン)板および厚さが20mmと30mmのPTFEの3種類で観測された、ビート周波数はそれぞれ、127.5kHz、191.3kHz、236.7kHzであった。光路長の変化は,それぞれ8.73mm,13.1mm,16.1mmとなった。光路長と屈折率の関係はL*(np-1)となる。ここで、L:光路長差,np:サンプルの屈折率である。
計測結果は、30mmのポリエチレンの屈折率は1.540となり、厚み20mmと30mmのPTFEでは、1.437と同じ値となった。
このように、本発明に係る周波数シフトテラヘルツ波を用い、サンプルを光路に挿入したときの光路長差を計測することにより、サンプルの屈折率を計測することができる。また,サンプルを挿入した際のビート信号の強度振幅もしくは,周波数シフトテラヘルツ波の全体の強度(検出信号の直流成分)の減衰量は,サンプルによる境界面での反射およびサンプル内での吸収による強度の減衰の情報が含まれる。周知のようにサンプルを挿入した際の強度の減衰は,サンプルの境界面で生じる反射(フレネル反射)による減衰とサンプル内での吸収によるものである。すなわち,ビート周波数のシフト量から屈折率が計測できるので,境界面での反射率を推定できる。ビート信号の強度の減衰分から,境界面での反射成分を差し引いた残りの減衰量は,光がサンプルを透過する過程で生じる吸収による減衰によるものと考えられるため,厚みを考慮すれば吸収係数(吸光度)を計測することもできる。
サンプルの誘電特性は上記の屈折率と吸収係数から算出される透過率から算出することができるので、同様の方法でサンプルの複素誘電率を計測することもできる。
さらに、光路長差を計測することにより、光路長の変化を伴う物質の密度の変化などを計測することもできる。
以上に説述した通り、本発明は従来存在していなかったレーザーを励起光源としたテラヘルツ波光源を創出し、しかも周波数シフトするテラヘルツ波発生装置及び発生方法を提供する。
また、従来行われているTHz-TDSにおけるTOF計測の原理上の問題から、測定器から測定対象までの距離に±1m超の大きな差がある場合や、測定対象自体が±1m程度を越える構造を有する場合の測定対象の計測は為されていない。本発明は、THz-TDSによるTOF計測が抱える根本的な問題を解決するものである。
本発明では計測装置から対象物の距離に対する原理的な制約は無く、この点が、従来使用されてきたTOF計測に対する大きな優位性である。
1 周波数シフトテラヘルツ波発生装置
10 周波数シフトレーザー
11 単色レーザー
12 合波器
13 光増幅器
14 テラヘルツ波発生器
30 計測対象物
31 テラヘルツ波ビームスプリッタ
32 テラヘルツ波検出器
33 電流増幅器
34 AD変換器
35 コンピュータ
36 テラヘルツ波参照ミラー
37 テラヘルツ波信号ミラー
38 電圧増幅器
39 サンプル

Claims (16)

  1. 周波数が0.1THzないし10THzのテラヘルツ波を用いた周波数シフトテラヘルツ波発生装置であって、
    周波数がシフトする周波数シフトレーザー光を出力する周波数シフトレーザー光源と、
    単色レーザー光を出力する単色レーザー光源であって、該単色レーザー光の中心周波数は該周波数シフトレーザー光の中心周波数との差がテラヘルツ波の周波数である単色レーザー光源と、
    該周波数シフトレーザー光と、該単色レーザー光とを合波してテラヘルツ周期のビートを有する光ビート信号を出力する合波手段と、
    光電変換により該光ビート信号からテラヘルツ波の周波数で振動する電流を生じさせ、これを空間に放射する周波数シフトテラヘルツ波発生手段と
    を備える周波数シフトテラヘルツ波発生装置。
  2. 前記周波数シフトレーザー光の半値全幅と、前記単色レーザー光の半値全幅との比が、1000000:1以内である
    請求項1に記載の周波数シフトテラヘルツ波発生装置。
  3. 前記周波数シフトレーザー光の半値全幅と、前記単色レーザー光の半値全幅の比が、X:1である場合、前記周波数シフトレーザー光の中心周波数におけるスペクトル強度と、前記単色レーザー光の中心周波数におけるスペクトル強度との比が、1:Xである
    請求項1又は2に記載の周波数シフトテラヘルツ波発生装置。
  4. 前記請求項1ないし3のいずれかに記載の周波数シフトテラヘルツ波発生装置にさらに、
    前記光ビート信号をプローブ光とし、前記テラヘルツ波発生手段から放射されたテラヘルツ波の反射・透過波を検出してRF周波数成分をもつ電流を生じさせる光検出手段と、
    該RF周波数成分を解析する解析手段と
    を備えたことを特徴とする周波数シフトテラヘルツ波計測装置。
  5. 前記テラヘルツ波発生手段が、単一走行キャリアフォトダイオードである
    請求項4に記載の周波数シフトテラヘルツ波計測装置。
  6. 前記光検出手段が、光伝導アンテナ、もしくはショットキーバリアダイオードである
    請求項4又は5に記載の周波数シフトテラヘルツ波計測装置。
  7. 前記周波数シフトテラヘルツ波計測装置において、
    前記光検出手段が、前記プローブ光と前記反射・透過波とを用いた自己遅延ヘテロダイン検波を行い、光路差に比例したビート周波数を縦モード周波数ごとに0次以上の所定の次数について検出し、
    該次数に係るビート周波数から距離を算出する距離算出手段を備えた
    請求項4ないし6のいずれかに記載の周波数シフトテラヘルツ波計測装置。
  8. 周波数が0.1THzないし10THzのテラヘルツ波を用いた周波数シフトテラヘルツ波発生方法であって、
    周波数がシフトする周波数シフトレーザー光と、
    該周波数シフトレーザー光の中心周波数との差がテラヘルツ波の周波数である中心周波数の単色レーザー光とを用い、
    該周波数シフトレーザー光と、該単色レーザー光とを合波してテラヘルツ周期のビートを有する光ビート信号を出力する光ビート信号出力工程、
    光電変換により該光ビート信号からテラヘルツ波の周波数で振動する電流を生じさせ、これを空間に放射する周波数シフトテラヘルツ波発生工程
    とを有する周波数シフトテラヘルツ波発生方法。
  9. 前記周波数シフトレーザー光の半値全幅と、前記単色レーザー光の半値全幅との比が、1000000:1以内である
    請求項8に記載の周波数シフトテラヘルツ波発生方法。
  10. 前記周波数シフトレーザー光の半値全幅と、前記単色レーザー光の半値全幅の比が、X:1である場合、前記周波数シフトレーザー光の中心周波数におけるスペクトル強度と、前記単色レーザー光の中心周波数におけるスペクトル強度との比が、1:Xである
    請求項8又は9に記載の周波数シフトテラヘルツ波発生方法。
  11. 前記請求項8ないし10のいずれかに記載の周波数シフトテラヘルツ波発生方法の各工程の後に、
    前記光ビート信号をプローブ光とし、前記テラヘルツ波発生工程で放射されたテラヘルツ波の反射・透過波を検出してRF周波数成分をもつ電流を生じさせる光検出工程、
    該RF周波数成分を解析する解析工程
    を有することを特徴とする周波数シフトテラヘルツ波計測方法。
  12. 前記周波数シフトテラヘルツ波計測方法において、
    前記光検出工程において、前記プローブ光と前記反射・透過波とを用いて自己遅延ヘテロダイン検波を行い、光路差に比例したビート周波数を縦モード周波数ごとに0次以上の所定の次数について検出し、
    さらに、該次数に係るビート周波数から距離を算出する距離算出工程を有する
    請求項11に記載の周波数シフトテラヘルツ波計測方法。
  13. 前記請求項4ないし6のいずれかに記載の周波数シフトテラヘルツ波計測装置を、
    構造体の断層状態を検出するために用いることを特徴とする断層状態検出装置。
  14. 前記請求項11又は12に記載の周波数シフトテラヘルツ波計測方法によって
    構造体の断層状態を計測することを特徴とする断層状態検出方法。
  15. 前記請求項4ないし6のいずれかに記載の周波数シフトテラヘルツ波計測装置の構成を備え、前記プローブ光は前記光ビート信号又は、該光ビート信号に代えて前記周波数シフトテラヘルツ波を分岐した信号を用い、前記周波数シフトテラヘルツ波をサンプルに透過させ、その結果生じた周波数シフトの差から該サンプルの光学定数又は密度に係る特性を計測するサンプル特性計測装置。
  16. 前記請求項11又は12に記載の周波数シフトテラヘルツ波計測方法を使用したサンプル特性計測方法であって、
    前記プローブ光は前記光ビート信号又は、該光ビート信号に代えて前記周波数シフトテラヘルツ波を分岐した信号を用い、
    前記周波数シフトテラヘルツ波をサンプルに透過させ、その結果生じた周波数シフトの差から該サンプルの光学定数又は密度に係る特性を計測するサンプル特性計測方法。
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