JP2017206056A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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昌昇 石川
Masanori Ishikawa
昌昇 石川
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Abstract

【課題】氷雪上性能を向上させることのできる空気入りタイヤを提供すること。
【解決手段】トレッド部2に複数のサイプ20を有する空気入りタイヤ1において、サイプ20は、タイヤ周方向において対向する一対のサイプ壁面25を有しており、サイプ20の深さ方向における底部22からサイプの開口部21の方向へ向けたサイプ深さdの25%の範囲における最大サイプ幅aが、開口部21のサイプ幅bよりも大きくなっており、サイプ壁面25は、一対のサイプ壁面25のうち一方のサイプ壁面25である第1サイプ壁面26とトレッド面3とでなす角度θ1が90°より大きく、他方のサイプ壁面25である第2サイプ壁面27とトレッド面3とでなす角度θ2が90°未満である。
【選択図】図2

Description

本発明は、空気入りタイヤに関する。
従来の空気入りタイヤの中には、雪道や凍った路面での走行性能である氷雪性能や、濡れた路面での走行性能であるウェット性能の向上等を目的として、トレッド面に形成する切り込みである、いわゆるサイプが形成されているものがある。例えば、特許文献1に記載された空気入りタイヤでは、サイプを設けた際における偏摩耗による駆動性能の低下を抑制しつつ、氷雪性能を確保するため、空気入りタイヤの回転時における踏み込み側の壁面に切欠き部を設けたサイプを、トレッド面に形成している。また、特許文献2に記載された空気入りタイヤでは、制動時における氷上性能や雪上性能を向上させるために、サイプ幅が深さ方向の中央付近の位置で最大になるようにし、サイプを構成するサイプ壁面のうち、タイヤ回転時における踏み込み側に位置するサイプ壁面よりも蹴り出し側に位置するサイプ壁面の方が、深さ方向における長さが長くなるようにしている。
特開平1−285409号公報 特開2011−157011号公報
ここで、サイプは、空気入りタイヤの回転に伴って路面との接地領域に順次移動し、サイプの開口部分がエッジとなって雪面等に引っ掛かったり、路面上の水膜をサイプ内に吸水したりすることにより、氷雪性能を確保することが可能になっている。しかしながら、空気入りタイヤが回転しながら接地する場合には、接地領域に位置するサイプは、空気入りタイヤに作用する回転方向の力によって、サイプの溝幅、即ちサイプ幅が小さくなる方向に変形してサイプが潰れ易くなる。つまり、トレッド面と路面との間の抵抗に伴う陸部の変形によって、サイプが潰れ易くなる。このようにサイプが潰れた場合、吸水性が低減するため、氷雪性能が低減し易くなる。サイプによる氷雪性能は、このように空気入りタイヤが回転しながら接地することに伴う陸部の変形によって低減することがあるため、サイプを用いた氷雪性能については、改良の余地があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、氷雪上性能を向上させることのできる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る空気入りタイヤは、トレッド部に複数のサイプを有する空気入りタイヤにおいて、前記サイプは、タイヤ周方向において対向する一対のサイプ壁面を有しており、前記サイプの深さ方向における底部から前記サイプの開口部の方向へ向けたサイプ深さの25%の範囲における最大サイプ幅が、前記開口部のサイプ幅よりも大きくなっており、前記サイプ壁面は、一対の前記サイプ壁面のうち一方の前記サイプ壁面である第1サイプ壁面とトレッド面とでなす角度θ1が90°より大きく、他方の前記サイプ壁面である第2サイプ壁面と前記トレッド面とでなす角度θ2が90°未満であることを特徴とする。
上記空気入りタイヤにおいて、前記トレッド部には、複数のブロック部が形成されており、1つの前記ブロック部には、前記第1サイプ壁面と前記第2サイプ壁面とのタイヤ周方向における相対的な配設位置が異なる前記サイプが複数形成されることが好ましい。
上記空気入りタイヤにおいて、前記サイプは、前記最大サイプ幅aと、前記開口部のサイプ幅bとが、1.8<(a/b)<3.0の範囲内となって形成されることが好ましい。
本発明に係る空気入りタイヤは、氷雪上性能を向上させることができる、という効果を奏する。
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。 図2は、図1のA−A断面図である。 図3は、図1のB−B断面図である。 図4は、非接地状態のサイプを示す要部断面図である。 図5は、接地状態のサイプを示す要部断面図である。 図6は、実施形態に係る空気入りタイヤの変形例であり、サイプ壁面に除外部を有する場合の説明図である。 図7は、実施形態に係る空気入りタイヤの変形例であり、最大サイプ幅が底部以外の位置にある場合の説明図である。 図8Aは、空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。 図8Bは、空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易に想到できるもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
以下の説明において、タイヤ幅方向とは、空気入りタイヤの回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内方とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面に向かう方向、タイヤ幅方向外方とは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面に向かう方向の反対方向をいう。また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸と直交する方向をいい、タイヤ径方向内方とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸に向かう方向、タイヤ径方向外方とは、タイヤ径方向においてタイヤ回転軸から離れる方向をいう。また、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心として回転する方向をいう。
図1は、実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド面を示す平面図である。図1に示す空気入りタイヤ1は、タイヤ径方向の最も外方側となる部分にトレッド部2が配設されており、トレッド部2の表面、即ち、当該空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)の走行時に路面と接触する部分は、トレッド面3として形成されている。トレッド面3には、タイヤ赤道面CLを中心とするタイヤ幅方向における両側のそれぞれに複数の溝部10が形成されており、複数の溝部10によって複数の陸部が画成されている。本実施形態では、溝部10としてタイヤ周方向に延びる複数の周方向溝11と、タイヤ幅方向に延びる複数のラグ溝12とが形成されており、これらの複数の周方向溝11やラグ溝12によって、トレッド面3には陸部として複数のブロック部15が画成されている。
また、トレッド面3には、複数のサイプ20が設けられている。ここでいうサイプ20は、トレッド面3に切り込み状に形成されるものであり、空気入りタイヤ1を規定リムに装着して、規定内圧、例えば、規定荷重に対応した空気圧の内圧条件、及び規定荷重、例えば最大負荷能力の75%荷重の条件で、平板上に垂直方向に負荷させたときの平板上に形成される接地面の部分に、当該切り込みが位置する際に、切り込みを構成する壁面同士の少なくとも一部が、トレッド部2の変形によって互いに接触するものをいう。
なお、規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、或いはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、或いはETRTOで規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、或いはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。
サイプ20は、所定の深さでタイヤ幅方向に延びて形成されており、サイプ20は、トレッド面3に形成される各ブロック部15に設けられている。各ブロック部15に設けられるサイプ20は、それぞれのブロック部15に、互いに略平行となる向きで複数ずつが設けられている。
図2は、図1のA−A断面図である。サイプ20は、一対のサイプ壁面25を有して形成されている。サイプ20は、タイヤ幅方向に延びて形成されているため、一対のサイプ壁面25は、タイヤ周方向において対向して形成されている。このように、タイヤ周方向に対向する一対のサイプ壁面25は、トレッド面3に対する角度が互いに異なっている。詳しくは、サイプ壁面25は、一対のサイプ壁面25のうち、一方のサイプ壁面25である第1サイプ壁面26とトレッド面3とでなす角度θ1が90°より大きく、他方のサイプ壁面25である第2サイプ壁面27とトレッド面3とでなす角度θ2が90°未満になっている。つまり、第1サイプ壁面26は、トレッド面3に対して鈍角となって形成されており、第2サイプ壁面27は、トレッド面3に対して鋭角となって形成されている。
また、第1サイプ壁面26と第2サイプ壁面27とは、開口部21側よりも底部22側の方が間隔が大きくなっており、即ち、サイプ20は、サイプ壁面25同士の間隔であるサイプ幅が、トレッド面3側からタイヤ径方向内方側に向かうに従って大きくなっている。詳しくは、サイプ20は、サイプ20の深さ方向における底部22からサイプ20の開口部21の方向へ向けたサイプ深さdの25%の範囲における最大サイプ幅aが、開口部21のサイプ幅bよりも大きくなっており、本実施形態では、底部22の位置でのサイプ幅が、最大サイプ幅aになっている。このため、サイプ20は、底部22の位置でのサイプ幅である最大サイプ幅aが、開口部21のサイプ幅bよりも大きくなっている。サイプ20は、この最大サイプ幅aと、開口部21のサイプ幅bとの比率が、1.8<(a/b)<3.0の範囲内となって形成されている。
つまり、サイプ20は、トレッド面3に対する第1サイプ壁面26の角度θ1がθ1>90°になっており、トレッド面3に対する第2サイプ壁面27の角度θ2がθ2<90°になっており、開口部21から底部22に向かうにつれてサイプ幅が大きくなっている。なお、第1サイプ壁面26の角度θ1は、90°<θ1<120°の範囲内であるのが好ましく、第2サイプ壁面27の角度θ2は、45°<θ2<90°の範囲内であるのが好ましい。また、サイプ20は、開口部21のサイプ幅bが0.4mm以上1.0mm以下となる範囲内で形成されている。
図3は、図1のB−B断面図である。サイプ20は、トレッド面3に設けられる各ブロック部15に形成されており、1つのブロック部15には、第1サイプ壁面26と第2サイプ壁面27とのタイヤ周方向における相対的な配設位置が異なるサイプ20が複数形成されている。つまり、1つのブロック部15には、トレッド面3に対する角度θ1が90°よりも大きくなる第1サイプ壁面26と、トレッド面3に対する角度θ2が90°未満になる第2サイプ壁面27とのタイヤ周方向における位置が互いに異なるサイプ20が、複数形成されている。換言すると、各ブロック部15には、空気入りタイヤ1の所定の回転方向側に第1サイプ壁面26が位置し、反回転方向側に第2サイプ壁面27が位置するサイプ20と、所定の回転方向側に第2サイプ壁面27が位置し、反回転方向側に第1サイプ壁面26が位置するサイプ20と、の複数形成されている。
これらのように構成される空気入りタイヤ1を車両に装着して走行すると、トレッド面3のうち下方に位置するトレッド面3が路面に接触しながら当該空気入りタイヤ1は回転する。空気入りタイヤ1を装着した車両で乾燥した路面を走行する場合には、主にトレッド面3と路面との間の摩擦力により、駆動力や制動力を路面に伝達したり、旋回力を発生させたりすることにより走行する。一方、雪道や凍った路面を走行する際には、周方向溝11やラグ溝12、サイプ20のエッジ効果も用いて走行する。つまり、雪道や凍った路面を走行する際には、溝部10を構成する溝壁とトレッド面3とが交差する部分のエッジや、サイプ20を構成するサイプ壁面25とトレッド面3とが交差する部分のエッジが、雪面や氷面に引っ掛かることによる抵抗も用いて走行する。
また、氷雪上を走行する際には、氷面や雪面上に位置する水をサイプ20で吸水し、これらの氷雪面とトレッド面3との間の水膜を除去することにより、氷雪面とトレッド面3は接触し易くなる。これにより、トレッド面3は、摩擦力やエッジ効果によって氷雪面との間の抵抗が大きくなり、空気入りタイヤ1を装着した車両の走行性能を確保することができる。
ここで、サイプ20は、サイプ20が接地領域に位置する場合には、車両の重量等による接地領域周辺に作用する荷重によってサイプ20の周囲のトレッド部2が変形することにより、サイプ壁面25同士が接触してサイプ20が潰れ易くなっている。また、空気入りタイヤ1が回転しながら接地した場合には、サイプ20は、より潰れ易くなっている。つまり、空気入りタイヤ1は、トレッド面3において路面に対向する部分、即ち、下側に位置する部分が接地するため、空気入りタイヤ1の回転時には、トレッド面3は、接地部分がタイヤ周方向に順次変化しながら接地する。その際に、接地したブロック部15には、トレッド面3と路面との間の抵抗によって回転方向の力が作用するため、当該ブロック部15は、接地領域周辺に作用する荷重のみでなく、回転方向の力によっても変形する。
図4は、非接地状態のサイプを示す要部断面図である。図5は、接地状態のサイプを示す要部断面図である。ブロック部15は、当該ブロック部15のトレッド面3が接地していない状態では、ブロック部15には大きな荷重が作用しないため、変形し難くなっている。このため、空気入りタイヤ1が回転している状態においても、接地してないブロック部15に形成されるサイプ20は変形することなく、開口部21がトレッド面3に開口し、開口部21から底部22に向かうに従ってサイプ幅が大きくなる形状が維持される。
これに対し、ブロック部15が接地した場合には、ブロック部15のトレッド面3と路面との間の抵抗により、ブロック部15はタイヤ周方向に潰される方向に変形する。例えば、空気入りタイヤ1の回転時に、ブロック部15における先に接地する側を踏み込み側とし、後から接地する側を蹴り出し側とする場合において、空気入りタイヤ1に駆動力が作用している場合、ブロック部15には、トレッド面3における踏み込み側が接地している状態でも、駆動力によって回転方向の力が作用する。ブロック部15は、トレッド面3が接地してからはタイヤ周方向には変形し難くなっているため、トレッド面3における踏み込み側の部分が接地し、蹴り出し側の部分が接地していない状態で空気入りタイヤ1が回転し続ける場合、ブロック部15は、回転方向の力によって、蹴り出し側の部分が踏み込み側に近付く方向に変形する。このため、接地したブロック部15に設けられるサイプ20は、サイプ壁面25が近付く方向に変形する。
つまり、例えば、第1サイプ壁面26が踏み込み側に位置し、第2サイプ壁面27が蹴り出し側に位置する向きでサイプ20がブロック部15に設けられている場合、ブロック部15は、まず、第1サイプ壁面26寄りのトレッド面3が接地する。これにより、ブロック部15における第1サイプ壁面26を形成する側の部分は、空気入りタイヤ1に対する路面の相対移動に伴って回転をする。
一方、ブロック部15における第2サイプ壁面27を形成する側の部分が接地していない状態では、この部分は、空気入りタイヤ1の回転に伴って回転をする。このため、空気入りタイヤ1に対して、駆動力によって回転方向の力が作用する場合には、第2サイプ壁面27を形成する側の部分は、路面の相対移動に伴って回転をする第1サイプ壁面26を形成する側の部分よりも、速い回転速度で回転をする。従って、ブロック部15は、第2サイプ壁面27を形成する側の部分が、第1サイプ壁面26を形成する側の部分に近付く方向に変形をし、サイプ20は、ブロック部15のこの変形により、第2サイプ壁面27が第1サイプ壁面26に近付く方向に変形する。
ここで、サイプ20は、底部22側に位置する最大サイプ幅aが、開口部21のサイプ幅bよりも大きくなっている。このため、サイプ20は、第1サイプ壁面26と第2サイプ壁面27とが近付く方向に変形しても、サイプ壁面25同士が完全密着することなく、第1サイプ壁面26と第2サイプ壁面27との間に空間が確保された状態が維持される。これにより、このサイプ20は、トレッド面3と路面との間、即ち、トレッド面3と氷雪面との間の水を吸水することができる。従って、空気入りタイヤ1の回転時にサイプ20が形成されるブロック部15が接地する場合でも、サイプ20は完全に潰れることなく、トレッド面3と氷雪面との間の水を吸水し、水膜を除去することができる。
また、空気入りタイヤ1に、車両を制動する方向の回転力が作用する場合も、ブロック部15は、サイプ壁面25同士が近付く方向に変形をする。つまり、空気入りタイヤ1に車両を制動する方向の回転力が作用する場合は、ブロック部15には、空気入りタイヤ1の回転速度よりも、速い回転速度で空気入りタイヤ1を回転させようとする方向の力が路面から入力される。詳しくは、第1サイプ壁面26が踏み込み側に位置し、第2サイプ壁面27が蹴り出し側に位置する向きでサイプ20がブロック部15に設けられている場合において、制動時にブロック部15のトレッド面3が接地した後、踏み込み側の部分が路面から離れた場合には、ブロック部15における第1サイプ壁面26側の部分は、空気入りタイヤ1の回転に沿って回転しようとする。
一方、ブロック部15における第2サイプ壁面27側の部分は、空気入りタイヤ1の回転速度よりも、速い回転速度で空気入りタイヤ1を回転させようとする方向の力が路面から入力されるため、この部分は、路面からの入力に伴って変形する。これにより、ブロック部15は、第2サイプ壁面27側の部分が、第1サイプ壁面26側の部分に近付く方向に変形をし、サイプ20は、ブロック部15のこの変形により、第2サイプ壁面27が第1サイプ壁面26に近付く方向に変形する。この場合においても、サイプ20は、サイプ壁面25同士が完全密着することなく、第1サイプ壁面26と第2サイプ壁面27との間に空間が確保された状態が維持される。従って、サイプ20は、空気入りタイヤ1に、車両を制動する方向の回転力が作用する場合でも完全に潰れることなく、トレッド面3と氷雪面との間の水を吸水し、水膜を除去することができる。
また、サイプ20は、第1サイプ壁面26とトレッド面3とでなす角度θ1が90°より大きく、第2サイプ壁面27とトレッド面3とでなす角度θ2が90°未満になっているため、サイプ壁面25が近付いた際に、開口部21における第1サイプ壁面26側の部分と第2サイプ壁面27側の部分とで、より確実にタイヤ径方向に差を持たせることができる。つまり、第1サイプ壁面26と第2サイプ壁面27との傾斜角度を異ならせることにより、トレッド面3の変形時におけるサイプ壁面25同士の変形の仕方を異ならせることができるため、開口部21における第1サイプ壁面26側の部分と第2サイプ壁面27側の部分とでタイヤ径方向に差を持たせることができ、より確実にエッジ効果を得ることができる。これらの結果、氷雪上性能を向上させることができる。
また、1つのブロック部15には、第1サイプ壁面26と第2サイプ壁面27とのタイヤ周方向における相対的な配設位置が異なるサイプ20が複数形成されるため、空気入りタイヤ1の回転方向や、車両の加速時及び制動時に関わらず、いずれかのサイプ20によって吸水性やエッジ効果を得ることができる。この結果、より確実に氷雪上性能を向上させることができる。
また、サイプ20は、最大サイプ幅aと、開口部21のサイプ幅bとが、1.8<(a/b)<3.0の範囲内となって形成されているため、ブロック部15が変形することによってサイプ壁面25同士が近付いた場合でも、トレッド面3と路面との間の水を吸収することができる空間を、より確実に確保することができる。この結果、より確実に水膜を除去することができる。
なお、上述した実施形態では、サイプ20を構成する第1サイプ壁面26や第2サイプ壁面27は、それぞれトレッド面3に接続される1つの平面として形成されているが、第1サイプ壁面26や第2サイプ壁面27は、1つの平面以外で形成されていてもよい。図6は、実施形態に係る空気入りタイヤの変形例であり、サイプ壁面に除外部を有する場合の説明図である。サイプ壁面25は、例えば、図6に示すように、サイプ壁面25の角度の規定から除外する除外部30を有していてもよい。つまり、第1サイプ壁面26の角度θ1や、第2サイプ壁面27の角度θ2は、角度の規定をする際に除外する領域である除外部30を設け、サイプ壁面25における除外部30以外の位置とトレッド面3との相対角度によって規定してもよい。この場合における除外部30は、開口部21からの深さeが、2.0mm以下の範囲内で設定するのが好ましい。このように、除外部30を設けることにより、例えばサイプ20の開口部21に面取りが施されている場合であっても、第1サイプ壁面26の角度θ1や第2サイプ壁面27の角度θ2を適切に規定することができ、氷雪上性能を向上させることが可能なサイプ20を得ることができる。
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、最大サイプ幅aは、サイプ20の底部22のサイプ幅になっているが、底部22のサイプ幅以外の部分のサイプ幅が最大サイプ幅aとなっていてもよい。図7は、実施形態に係る空気入りタイヤの変形例であり、最大サイプ幅が底部以外の位置にある場合の説明図である。例えば、図7に示すように、サイプ壁面25における底部22との接続部分に傾斜部35が設けられることにより、底部22以外の部分のサイプ幅の方が大きい場合には、当該底部22以外の部分のサイプ幅を最大サイプ幅aとしてもよい。最大サイプ幅aは、このように底部22以外の部分のサイプ幅が最大サイプ幅aであってもよい。最大サイプ幅aは、サイプ20の深さ方向における底部22から開口部21の方向へ向けたサイプ深さdの25%の範囲における最大のサイプ幅を、最大サイプ幅aとして規定し、この最大サイプ幅aが、開口部21のサイプ幅bよりも大きくなっていればよい。
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、各ブロック部15に、第1サイプ壁面26と第2サイプ壁面27とのタイヤ周方向における相対的な配設位置が異なるサイプ20が1つずつ設けられているが、ブロック部15に設けられるサイプ20は、これ以外の構成であってもよい。例えば、各ブロック部15に、第1サイプ壁面26と第2サイプ壁面27とのタイヤ周方向における相対的な配設位置が異なるサイプ20が複数ずつ設けられていてもよい。この場合、第1サイプ壁面26と第2サイプ壁面27とのタイヤ周方向における相対的な配設位置が異なるサイプ20が交互に配設されていてもよく、第1サイプ壁面26と第2サイプ壁面27とのタイヤ周方向における相対的な配設位置が同じサイプ20が連続して配設されていてもよい。または、ブロック部15ごとに、第1サイプ壁面26と第2サイプ壁面27とのタイヤ周方向における相対的な配設位置が異なるサイプ20が設けられていてもよい。例えば、タイヤ周方向において隣り合うブロック部15同士で、タイヤ周方向における第1サイプ壁面26と第2サイプ壁面27との相対的な配設位置が異なるサイプ20が設けられていてもよい。
また、上述した実施形態に係る空気入りタイヤ1では、サイプ20は端部がブロック部15内で終端したものが図示されているが、サイプ20は一方の端部、または両端部が溝部10に接続されていてもよい。サイプ20が溝部10に接続されることにより、サイプ20で吸水した水を溝部10に流すことができるため、トレッド面3と路面との間の水膜をより確実に除去することができ、より確実に氷雪上性能を向上させることができる。
〔実施例〕
図8A、図8Bは、空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来例の空気入りタイヤ1と、本発明に係る空気入りタイヤ1とについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、乾燥した路面での走行性能を示すドライ加速性能についての試験と、氷雪路面での走行性能を示す氷上制動性能についての試験とについて行った。
これらの評価試験は、JATMAで規定されるタイヤの呼びが275/80R22.5サイズでロードインデックスが151/148Jの空気入りタイヤ1を22.5×8.25サイズのJATMA標準リムのリムホイールにリム組みし、空気圧をJATMAで規定される空気圧である900kPaに調整し、試験車両に装着してテスト走行をすることにより行った。各試験項目の評価方法は、ドライ加速性能については、乾燥した路面での5〜40km/hの速度区間の加速度を測定し、平均加速度を指数化することによって評価した。数値が大きいほどドライ加速性能が優れていることを示している。氷上制動性能については、氷上の路面において40km/hから0km/hまでの制動距離を測定し、平均制動距離を指数化することによって評価した。数値が大きいほど氷上制動性能が優れていることを示している。
評価試験は、従来の空気入りタイヤ1の一例である従来例1、2の空気入りタイヤ1と、本発明に係る空気入りタイヤ1である実施例1〜7の9種類の空気入りタイヤ1について行った。これらの空気入りタイヤ1は、開口部21の位置でのサイプ幅、トレッド面3に対するサイプ壁面25の角度、サイプ20の配置の形態、開口部21の位置でのサイプ幅bと最大サイプ幅aとの比率がそれぞれ異なって形成されている。このうち、従来例1、2の空気入りタイヤ1は、トレッド面3に対するサイプ壁面25の角度θ1、θ2が、共に90°になっている。
これに対し、本発明に係る空気入りタイヤ1の一例である実施例1〜7は、トレッド面3に対する第1サイプ壁面26の角度θ1は全て90°より大きく、トレッド面3に対する第2サイプ壁面27の角度θ2は全て90°未満になっている。さらに、実施例1〜7に係る空気入りタイヤ1は、トレッド面3に対する第1サイプ壁面26の角度θ1と第2サイプ壁面27の角度θ2、タイヤ周方向における第1サイプ壁面26と第2サイプ壁面27との相対的な位置関係が異なるサイプ20の配置の形態、最大サイプ幅aと開口部bとの比率が、それぞれ異なっている。
これらの空気入りタイヤ1を用いて評価試験を行った結果、図8A、図8Bに示すように、実施例1〜7の空気入りタイヤ1は、従来例1、2に対して、ドライ加速性能と氷上制動性能とが共に向上することが分かった。つまり、実施例1〜7に係る空気入りタイヤ1は、氷雪上性能を向上させることができる。
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
3 トレッド面
10 溝部
11 周方向溝
12 ラグ溝
15 ブロック部
20 サイプ
21 開口部
22 底部
25 サイプ壁面
26 第1サイプ壁面
27 第2サイプ壁面

Claims (3)

  1. トレッド部に複数のサイプを有する空気入りタイヤにおいて、
    前記サイプは、タイヤ周方向において対向する一対のサイプ壁面を有しており、前記サイプの深さ方向における底部から前記サイプの開口部の方向へ向けたサイプ深さの25%の範囲における最大サイプ幅が、前記開口部のサイプ幅よりも大きくなっており、
    前記サイプ壁面は、一対の前記サイプ壁面のうち一方の前記サイプ壁面である第1サイプ壁面とトレッド面とでなす角度θ1が90°より大きく、他方の前記サイプ壁面である第2サイプ壁面と前記トレッド面とでなす角度θ2が90°未満であることを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記トレッド部には、複数のブロック部が形成されており、
    1つの前記ブロック部には、前記第1サイプ壁面と前記第2サイプ壁面とのタイヤ周方向における相対的な配設位置が異なる前記サイプが複数形成される請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記サイプは、前記最大サイプ幅aと、前記開口部のサイプ幅bとが、1.8<(a/b)<3.0の範囲内となって形成される請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
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