JP2017202666A - 複合成形体の製造方法 - Google Patents

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慎介 日高
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公彦 服部
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Abstract

【課題】成形体の所望の部位を連続強化繊維基材で高精度かつ高接合強度をもって容易に効率よく補強できるようにした複合成形体の製造方法を提供する。【解決手段】熱可塑性樹脂と充填材からなる樹脂組成物を成形してなる成形体(A)の上に、強化繊維束(B)及び前記成形体(A)の熱可塑性樹脂と同種の熱可塑性樹脂からなるシート状物(C)を積層した後、超音波溶着により前記強化繊維束(B)及び前記シート状物(C)を前記成形体(A)に接合することを特徴とする複合成形体の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、複合成形体の製造方法に関し、とくに、繊維強化樹脂を含む樹脂組成物の成形体の所望の部位を連続強化繊維基材で高精度をもって容易に効率よく補強できるようにした複合成形体の製造方法に関する。
熱可塑性樹脂と強化繊維を含む充填材とからなる樹脂組成物を成形してなる(例えば、射出成形してなる)成形体は、各種分野で広く用いられている。このような成形体においては、しばしば、その所望の部位を、連続強化繊維を用いてより補強することが求められることがある。
補強方法としては、例えば、成形体の成形時に、同一の金型内にて成形体本体部成形用樹脂組成物と、連続強化繊維を含む補強部分形成用樹脂または樹脂組成物とを実質的に同時に一体成形する方法と、成形体本体部を成形した後に、その補強すべき部位に連続強化繊維を含む補強部分形成用樹脂または樹脂組成物を接合する方法がある。
前者の方法では、成形体本体部と補強部分とが同時に一体成形されるため、両部分間が強固に一体化されて高い補強効果が得られるが、金型内の所定箇所に、高い精度をもって、成形体本体部形成用材料と補強部分形成用材料を配置あるいは注入しなければならないため、三次元形状等を有する複雑な形状の場合には、望ましい形態への成形が困難になることがある。
一方、後者の方法では、成形体本体部は先に成形されているので、例えば射出成形等により比較的容易に成形体本体部を高精度に所望形状に形成できるが、とくに、成形体本体部が三次元形状等を有する複雑な形状の場合、その所望部位に、補強部分を如何に高精度かつ高強度に接合できるかが重要になる。
上記のように成形体本体部に補強部分を接合するには、接着剤を介する方法と、成形体本体部と補強部分の樹脂成分を活用して両部分を溶着する方法等が考えられるが、接着剤を介する方法では、両部分の接合強度に限界がある。高い接合強度を得るためには、両部分を溶着する方法の方が望ましいと考えられ、先に成形された成形体本体部の所望部位に、部分的に効率よく高接合強度をもって補強部分を接合するためには、超音波溶着等の局所加熱を伴う溶着方法が好適であると考えられる。
しかしながら、成形体本体部に補強部分を超音波溶着により接合するための有効な方法は未だ提案されていない。支持体の支持面上で、超音波振動する押圧体により、テープ状の樹脂含浸一方向強化繊維束を製造する方法(特許文献1)や、複数の繊維部材の一部が溶着補助剤を介して超音波溶着されている超音波溶着繊維製品(特許文献2)等は知られているが、テープ状樹脂含浸一方向強化繊維束を製造するための技術にとどまるか、超音波溶着繊維製品を製造するための別の分野に属する技術であるため、いずれも、成形体本体部に補強部分を超音波溶着により接合するために適用できる方法ではない。
特許第5870392号公報 特開2006−346862号公報
そこで本発明の課題は、上記のような実情に鑑み、成形体の所望の部位を連続強化繊維基材で高精度かつ高接合強度をもって容易に効率よく補強できるようにした複合成形体の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明に係る複合成形体の製造方法は、熱可塑性樹脂と充填材からなる樹脂組成物を成形してなる成形体(A)の上に、強化繊維束(B)及び前記成形体(A)の熱可塑性樹脂と同種の熱可塑性樹脂からなるシート状物(C)を積層した後、超音波溶着により前記強化繊維束(B)及び前記シート状物(C)を前記成形体(A)に接合することを特徴とする方法からなる。
このような本発明に係る複合成形体の製造方法においては、先に成形された成形体(A)の上に、強化繊維束(B)と特定のシート状物(C)が積層され(強化繊維束(B)とシート状物(C)がこの順に積層される場合と、シート状物(C)と強化繊維束(B)がこの順に積層される場合の両方とも可能)、積層された強化繊維束(B)とシート状物(C)が超音波溶着により成形体(A)に接合されて、複合成形体に形成される。この超音波溶着では、とくにシート状物(C)が加熱され、該シート状物(C)を形成していた熱可塑性樹脂が強化繊維束(B)中に含浸された状態で、シート状物(C)が強化繊維束(B)とともに成形体(A)に接合される。このとき、超音波溶着時の超音波振動により、強化繊維束(B)が開繊されてもよく、開繊された強化繊維束(B)中にシート状物(C)を形成していた熱可塑性樹脂が含浸されてもよい。強化繊維束(B)とシート状物(C)は、シート状物(C)を形成していた熱可塑性樹脂が強化繊維束(B)中に含浸された状態で、成形体(A)の所定部位のみに接合されるので、つまり、繊維強化樹脂を形成可能な連続強化繊維基材の状態で成形体(A)の目標とする所定部位のみに接合されるので、該成形体(A)の所定部位が、高精度で容易に効率よく補強される。しかも、溶着されるシート状物(C)の熱可塑性樹脂が、成形体(A)の熱可塑性樹脂と同種の熱可塑性樹脂とされているので、両者間の高い親和性が確保され、高い接合強度が得られる。さらに、補強に用いられる強化繊維が強化繊維束(B)の形態で供給されるので、成形体(A)に対し局所的に任意の形状に沿わせることが可能になり、たとえ成形体(A)が複雑な三次元形状を有する場合にあっても、強化繊維束(B)を容易にその形状に沿わせて積層することが可能になる。したがって、成形体(A)が実質的にどのような形状を有する場合にあっても、超音波溶着手法を採用して、シート状物(C)の熱可塑性樹脂が含浸された強化繊維束(B)からなる連続強化繊維基材でもって高精度かつ高接合強度をもって容易に効率よく成形体(A)を補強できるようになる。
上記本発明に係る複合成形体の製造方法においては、上記成形体(A)の熱可塑性樹脂及び上記シート状物(C)の熱可塑性樹脂は同種の熱可塑性樹脂(同一の熱可塑性樹脂を含む)であればよく、同種の熱可塑性樹脂としては適宜選択できる。例えば、これら熱可塑性樹脂がともにポリアミド系樹脂からなる場合、ポリアリーレンサルファイド系樹脂からなる場合、ポリプロピレン系樹脂からなる場合等のいずれも可能であり、中でもとくに、ポリアミド系樹脂からなる場合、ポリアリーレンサルファイド系樹脂からなる場合が好ましい。
また、上記本発明に係る複合成形体の製造方法において、上記成形体(A)の充填材としてはとくに限定されず、各種添加剤や強化繊維の使用が可能であるが、高い強度の複合成形体を製造する観点からは、充填材が強化繊維であることが好ましい。すなわち、成形体(A)が元々繊維強化複合成形体であり、その成形体(A)の目標とする所定部位を、強化繊維束(B)とシート状物(C)を超音波溶着することにより、より補強するのである。成形体(A)の充填材として用いる強化繊維としては、連続繊維、不連続繊維のいずれも使用可能であるが、とくに本発明の適用が好適であると考えられる成形体(A)が複雑な三次元形状を有する場合に対しては、成形体(A)を射出成形するのが好ましいと考えられることから、その場合には、成形体(A)の充填材として用いる強化繊維は不連続繊維であることが好ましい。
成形体(A)の充填材として用いる強化繊維の種類としては、とくに限定されず、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維のいずれか、あるいはこれらのいずれかの組み合わせ等を使用できる。また、上記強化繊維束(B)を構成する強化繊維の種類としても、とくに限定されず、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維のいずれか、あるいはこれらのいずれかの組み合わせ等を使用できるが、強化繊維束(B)が成形体(A)の所定部位の効率の良い補強を目的に使用されるものであることを考慮すると、炭素繊維の使用が好ましい。
強化繊維束(B)の形態は、連続強化繊維の織物であっても強化繊維が一方向に配置されたものであっても、強化繊維を一方向に配置された層が方向を変えて多層積層したものであってもよい。一方向に配向されていると、連続強化繊維が配向されている特定の方向に対して特に、複合成形体が高い機械強度を発現できるため好ましい。
また、上記本発明に係る複合成形体の製造方法においては、上記シート状物(C)の厚みとしては、とくに限定されないが、シート状物(C)と強化繊維束(B)が成形体(A)の所定部位を部分的に効率よく補強する役目を担うことと、補強されるべき成形体(A)の全体形状を大きく変化させないことが望まれることが多いことを考慮すると、シート状物(C)の厚みが大きすぎることは望ましくない。小さな厚みでもって効率よく補強でき、かつ、強化繊維束(B)にも容易に含浸できることから、シート状物(C)の厚みとしては0.1〜1mm程度の範囲にあることが好ましい。また、このシート状物(C)は、成形体(A)の複雑な形状にも容易にかつ良好に沿わせて配置できるように、優れた柔軟性を有していることが好ましく、この面からは、未延伸のシート状物(例えば、未延伸フィルム)であることが好ましい。
また、上記本発明に係る複合成形体の製造方法においては、上記強化繊維束(B)及び上記シート状物(C)の合計に対する強化繊維束(B)の体積含有率が5〜70%の範囲にあることが好ましい。シート状物(C)と強化繊維束(B)が成形体(A)の所定部位を部分的に効率よく補強する役目を担うことを考慮すれば、上記体積含有率の範囲内でも、高い体積含有率であることがより好ましい。
前述したように、本発明では、成形体(A)が複雑な三次元形状を有する場合にあっても、高精度かつ高接合強度をもって容易に効率よく成形体(A)を補強できるため、上記成形体(A)の強化繊維束(B)及びシート状物(C)との接合面の少なくとも一部が曲面(三次元曲面を含む)に形成されている場合にも、本発明は問題なく適用可能である。
このように、本発明に係る複合成形体の製造方法によれば、成形体(A)が複雑な形状を有する場合にあっても、超音波溶着手法を採用して、シート状物(C)の熱可塑性樹脂が含浸された強化繊維束(B)からなる連続強化繊維基材でもって高精度かつ高接合強度をもって容易に効率よく成形体(A)を補強できるようになる。
以下に、本発明について、実施の形態とともに、さらに詳細に説明する。
本発明に係る複合成形体の製造方法は、熱可塑性樹脂と充填材からなる樹脂組成物を成形してなる成形体(A)の上に、強化繊維束(B)及び成形体(A)の熱可塑性樹脂と同種の熱可塑性樹脂からなるシート状物(C)を積層した後、超音波溶着により強化繊維束(B)及びシート状物(C)を成形体(A)に接合することを特徴とする方法からなる。
上記成形体(A)及び上記シート状物(C)における同種の熱可塑性樹脂としては、前述したように、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリアリーレンサルファイド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等が使用可能であり、とくに、ポリアミド系樹脂、ポリアリーレンサルファイド系樹脂の使用が好ましい。
上記ポリアミド系樹脂の好ましい例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリウンデカミド(ナイロン11)、ポリカプロアミド/ポリウンデカミドコポリマー(ナイロン6/11)、ポリドデカミド(ナイロン12)、ポリカプロアミド/ポリドデカミドコポリマー(ナイロン6/12)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカメチレンアジパミド(ナイロン116)およびこれらの混合物ないし共重合体等が挙げられる。中でもナイロン6が特に好ましい。また、ポリアミド系樹脂は単体で用いる他、2種以上を混合して用いてもよい。
上記ポリアリーレンサルファイド系樹脂の好ましい例としては、ポリフェニレンサルファイド(以下、PPSと略す場合もある)、ポリフェニレンサルファイドスルホン、ポリフェニレンサルファイドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体およびそれらの混合物などが挙げられる。中でもポリフェニレンサルファイドが特に好ましい。また、ポリアリーレンサルファイド系樹脂は単体で用いる他、2種以上を混合して用いてもよい。
上記成形体(A)の充填材として強化繊維が用いられる場合の該強化繊維と、上記強化繊維束(B)を構成する強化繊維とは、同種であってもよく、異種であってもよい。強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維等の無機繊維、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、アラミド繊維等の合成樹脂繊維、チタン繊維、ボロン繊維、ステンレス繊維等の金属繊維が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。強化繊維として好ましくは炭素繊維である。炭素繊維を用いることで、機械強度に優れる複合成形体を得ることができる。
成形体(A)の充填材として強化繊維が用いられる場合、その強化繊維の形態は、前述したように、不連続繊維であることが好ましい。不連続強化繊維含有材料であれば、とくに射出成形が可能になり、容易に成形体(A)が複雑な形状に形成されるので、本発明に係る方法の適用が好適な成形体(A)の形態となる。但し、充填材が強化繊維以外の成形体(A)や、充填材として連続強化繊維が用いられた成形体(A)に対しても、本発明に係る方法は適用できる。
成形体(A)が射出成形されている場合、成形体(A)自体が通常の成形法で容易に高精度で良好な生産性をもって、所望の形状に形成され得、先に成形された成形体(A)に対し、本発明に係る方法は適用して、所望の部位に対してのみ、シート状物(C)の熱可塑性樹脂が含浸された強化繊維束(B)からなる連続強化繊維基材でもって高精度かつ高接合強度をもって容易に効率よく成形体(A)を補強できる。
上記シート状物(C)の厚みとしては、成形体(A)の形状に沿わせて良好に積層できることから、比較的薄い方が好ましく、好ましいシート状物(C)の厚みとしては、前述したように、0.1〜1mm程度の範囲である。また、このシート状物(C)は、前述したように、優れた柔軟性を持たせるために、未延伸のシート状物(例えば、未延伸フィルム)であることが好ましい。
また、前述したように、上記強化繊維束(B)及び上記シート状物(C)の合計に対する強化繊維束(B)の体積含有率が5〜70%の範囲にあることが好ましく、より好ましくは、体積含有率が20〜65%の範囲、さらに好ましくは、体積含有率が30〜60%の範囲である。
上記のような範囲のシート状物(C)の厚みと強化繊維束(B)の体積含有率により、複雑な三次元曲面を有する成形体(A)にあっても、成形体(A)の所定部位を部分的に容易に効率よく補強することができるようになる。
本発明に係る方法は、とくに、射出成形された成形体の所望の部位を容易に効果的に補強することが望まれる場合に好適なものであり、あらゆる分野の成形体に適用できる。

Claims (9)

  1. 熱可塑性樹脂と充填材からなる樹脂組成物を成形してなる成形体(A)の上に、強化繊維束(B)及び前記成形体(A)の熱可塑性樹脂と同種の熱可塑性樹脂からなるシート状物(C)を積層した後、超音波溶着により前記強化繊維束(B)及び前記シート状物(C)を前記成形体(A)に接合することを特徴とする、複合成形体の製造方法。
  2. 前記成形体(A)の熱可塑性樹脂及び前記シート状物(C)の熱可塑性樹脂がともにポリアミド系樹脂からなる、請求項1に記載の複合成形体の製造方法。
  3. 前記成形体(A)の熱可塑性樹脂及び前記シート状物(C)の熱可塑性樹脂がともにポリアリーレンサルファイド系樹脂からなる、請求項1に記載の複合成形体の製造方法。
  4. 前記成形体(A)の充填材が強化繊維からなる、請求項1〜3のいずれかに記載の複合成形体の製造方法。
  5. 前記強化繊維が少なくとも炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維のいずれかを含む、請求項4に記載の複合成形体の製造方法。
  6. 前記強化繊維束(B)が強化繊維を一方向に配列してなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の複合成形体の製造方法。
  7. 前記シート状物(C)の厚みが0.1〜1mmの範囲にある、請求項1〜6のいずれかに記載の複合成形体の製造方法。
  8. 前記強化繊維束(B)及び前記シート状物(C)の合計に対する前記強化繊維束(B)の体積含有率が5〜70%の範囲にある、請求項1〜7のいずれかに記載の複合成形体の製造方法。
  9. 前記成形体(A)の前記強化繊維束(B)及び前記シート状物(C)との接合面の少なくとも一部が曲面に形成されている、請求項1〜8のいずれかに記載の複合成形体の製造方法。
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