地震等の振動エネルギーに抵抗する部材間の接合構造として、例えば、図22に示すように、柱体941と梁942の接合構造900が知られている。この接合構造900において、略鉛直方向に立設されたいわゆるH鋼柱としての柱体941には、第2部材926aと、第2部材926aとこれに対して下方に離間して取り付けられる第2部材926bとが、面内方向が水平方向となるように延長されている。また、梁942は、ウェブ944の上端において、フランジを構成する第1部材943aが取り付けられ、ウェブ944の下端において、同じくフランジを構成する第1部材943bがそれぞれ取り付けられる。
第1部材943a、943bは、ウェブ944に対して面内方向が水平方向となるように延長されている。第1部材943a、943bには、それぞれ孔901が形成されている。また、ウェブ944は、孔932が形成されている。
第2部材926a、926bは、柱体941に対して溶接により固定される。第2部材926a、926bには、孔933が形成されている。この第2部材926aと、第2部材926bとの間に、リブ912が溶接により固定される。このリブ912は、孔934が形成されている。
梁942を柱体941に固定する際には、第1部材943a、943bと第2部材926a、926bとに、添接板990と添接板980とをそれぞれ沿わせる。そして、第1部材943a、943bの孔901と第2部材926a、926bの孔933とに、添接板990の孔991と添接板980の孔981とをそれぞれ位置合わせして、ボルト963を挿通させる。ボルト963の軸先端は、ナット964により螺着させる。
また、リブ912とウェブ944とに、2枚の添接板913を沿わせる。そして、リブ912の孔934と、ウェブ944の孔932とに、2枚の添接板913の孔933をそれぞれ位置合わせして、ボルト993を挿通させる。ボルト993の軸先端は、ナット994により螺着させる。
しかしながら、このような接合構造900は、第1部材943a、943bと第2部材926a、926bとを接合する際、添接板980、990をそれぞれ沿わせ、さらに第1部材943aの孔901と第2部材の孔933とに、それぞれ別のボルト963を挿通させるため、ボルト963の数が多くなり、その施工に時間が掛かるという問題点があった。
また、地震等の大きな振動エネルギーを効率良く吸収し、建築物の構造部材の損傷を防止することを目的として、特許文献1に開示される制震機構が提案されている。
特許文献1に開示される制震機構は、一対の枠部材の折れ曲り材が略X形状となるように、摩擦ダンパーを介して連結されることによって制震機構が構成され、これら枠部材の上下の連結プレートが土台や梁に固定され、直材が柱に固定されるものである。これにより、特許文献1に開示される制震機構は、大地震等が発生したときに、その振動エネルギーを摩擦ダンパーで吸収するとともに、柱の引き抜けやめり込みを防止するものとなる。
しかし、特許文献1に開示される制震機構は、一対の折れ曲り材の枠部材を用いるものであり、これら一対の枠部材に作用する押圧力によって、摩擦ダンパーの摩擦抵抗を利用するものであることから、これら一対の枠部材に作用する押圧力が不十分となる場合に、振動エネルギーを十分に吸収することができず、建築物が倒壊するおそれがあるという問題点があった。
また、特許文献1に開示される制震機構は、一対の折れ曲り材の枠部材に作用する押圧力を利用するものであることから、建築物にブレース材を設けないものとする場合に適用することができないものとなり、大地震等による振動エネルギーを十分に吸収することができず、建築物が倒壊するおそれがあるという問題点があった。
さらに、特許文献1に開示される制震機構は、建築物にブレース材を設けるものとした場合であっても、ブレース材を設けた位置に限定して適用されるものとなることから、振動エネルギーを十分に吸収することができず、建築物が倒壊するおそれがあるという問題点があった。
また、特許文献2に開示される部材間の接合構造は、面材及びこれに連結されている第2部材、更にはこの第2部材に嵌め込まれる介装構造体が設けられ、この介装構造体が、壁枠に連結されている第1部材に対して相対的に変位していくものである。特許文献2に開示される部材間の接合構造は、介装構造体が、第1部材の表面に押圧されている状態になっているが、このようなボルトの軸による水平長孔中の水平変位に応じて、介装構造体が第1部材の表面上を摺動することとなる。その結果、第1部材の表面とこれに対して押圧する介装構造体との間で互いに摩擦が作用することとなり、この摩擦に応じて地震による振動エネルギーが摩擦減衰によって吸収されることとなる。
しかしながら、この特許文献2の開示技術は、介装構造体を第1部材に対して相対変位させるものであるため、地震等による振動が作用したとき、第1部材と第2部材の間でガタつきが発生することとなる。また、この特許文献2の開示技術には、ボルトとナットによる締め付けを行うことで介装構造体は、第1部材に対して相対変位しないものとする構成については特段開示されていない。特に、介装構造体を、第1部材とボルトの軸との隙間に圧入させることによって、第1部材と介装構造体との間で支圧を作用させ、この支圧に応じて地震による振動に抵抗するものとなる構成は従来において特段提案されていなかった。
以下、本発明を適用した部材間の接合構造100を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明を適用した接合構造100は、図1に示すような柱体41と梁42の接合構造に適用される。この接合構造100において、略鉛直方向に立設されたいわゆる鋼管柱としての柱体41には、第2部材26が、面内方向が水平方向となるように延長されている。また、梁42は、ウェブ44の上端において、フランジを構成する第1部材43aが取り付けられ、ウェブ44の下端において、同じくフランジを構成する第1部材43bが取り付けられる。
図2は、かかる接合構造100の詳細な断面図を示し、ボルト63とナット64を締め付ける前の状態を示す。図3は、図2のA−A断面図を示している。
第1部材43a、43bは、ウェブ44に対して面内方向が水平方向となるように外側に延長されている。第1部材43a、43bには、それぞれ孔101が形成されている。各孔101には、ボルト63の軸が挿通され、ボルト63の軸よりも拡径されて形成される。第1部材43は、鋼板、アルミニウム板、ステンレス板、真鍮板等のようにあらゆる種類の金属製の板材で構成されている。
第2部材26は、柱体41に対して溶接により固定される。この第2部材26は、柱体41に対して梁42が接合される前において、先に柱体41に固定される。第2部材26は、詳細には、第2部材26aとこれに対して下方に離間して取り付けられる第2部材26bとからなる。この第2部材26aと、第2部材26bとの間に、梁42を構成する第1部材43が介装されることとなる。
第2部材26a、26bには、貫通孔33が形成されている。この貫通孔33には、それぞれ介装構造体62が嵌め込まれる。介装構造体62は、鋼板、アルミニウム板、ステンレス板、鉛板、スズ板、ベリリウム板、銅板、真鍮板、これら金属の合金板、レジン、ゴム、樹脂板等により構成されている。この介装構造体62にはほぼ中央に貫通孔62dが形成されていわゆる環を形成するように構成されている。この介装構造体62の外形及びサイズは、これが嵌め込まれる第2部材26の貫通孔33の形状、サイズに応じたものとなっている。即ち、貫通孔33が円形であれば、介装構造体62の外形は、貫通孔33よりも僅かに縮径された円形状とされている。同様に貫通孔33が角形状であれば、介装構造体62の外形も当該貫通孔33よりも僅かに縮径された同様の角形状となる。更に、この介装構造体62の板厚は、いかなるもので構成されていてもよいが、図2の例では、第2部材26a、26bの表面から突出しない程度の厚みとされている。
ボルト63は、その軸が介装構造体62における貫通孔62d、第1部材43における孔101にそれぞれ挿通されている。この貫通孔62dは、ボルト63の軸よりもわずかに拡径されている。また、ボルト63の軸先端は、ナット64により螺着されている。
ボルト63は、図3に示すように、その軸が介装構造体62における貫通孔62d、第1部材43における孔101の略中心となるように配置されている。介装構造体62の肉厚をMとして、ボルト63の軸から第1部材43における孔101までの間隔をSとしたとき、M>Sを満たすこととなる。これにより、第2部材26の貫通孔33に設置したときに、第1部材43の孔101に落下することなく、第1部材43の表面に接触された状態となる。
なお、ボルト63の頭部と介装構造体62の間及び、ナット64と介装構造体62の間には、図2に示すように、それぞれ加圧体69が設けられている。加圧体69は、鋼板、アルミニウム板、ステンレス板、真鍮板、レジン、ゴム、樹脂板等により構成されている。この加圧体69にはほぼ中央に貫通孔69dが形成されていわゆる環を形成するように構成されている。この加圧体69の外形及びサイズは、第1部材43aの貫通孔101の形状、サイズに応じたものとなっている。即ち、貫通孔101が円形であれば、加圧体69の外形は、貫通孔101と略同一の径に形成された円形状とされている。同様に貫通孔101が角形状であれば、加圧体69の外形も当該貫通孔101と略同一の径に形成された同様の角形状となる。更に、この加圧体69の板厚は、いかなるもので構成されていてもよいが、図2の例では、第2部材26a、26bの表面から突出する程度の厚みとされている。
図4は、かかる接合構造100の詳細な断面図を示し、ボルト63とナット64を締め付けた状態を示す。
このようなボルト63とナット64による締め付けを行うことで、ボルト63の頭部とナット64との間で発生する圧縮力は、第2部材26aにおける介装構造体62、第1部材43、第2部材26bにおける介装構造体62を介して伝達されることとなる。その結果、介装構造体62から第1部材43の両面に対して押圧力が負荷された状態で固定することが可能となる。なお、ボルト63とナット64との間でいわゆる高力ボルト接合を行うようにしてもよい。
また、介装構造体62は、貫通孔33よりもわずかに縮径されているため、ボルト63とナット64による締め付けを行うことにより、弾性変形、又は塑性変形し、貫通孔33に当接されることとなる。また、介装構造体62は、ボルト63の軸よりもわずかに拡径されているため、ボルト63とナット64による締め付けを行うことにより、弾性変形、又は塑性変形し、ボルト63の軸に当接されることとなる。このとき、第1部材43の孔101がボルト63の軸よりも拡径されているため、介装構造体62は、第1部材43の孔101とボルト63の軸との隙間に圧入される圧入部67が形成されることとなる。この介装構造体62は、弾性変形、又は塑性変形して形成された圧入部67が第1部材43の孔101と、ボルト63の軸とに当接されることとなる。
次に上述した構成からなる本発明における作用効果について説明をする。
地震による振動が構造物に加わった場合、梁42及び柱体41に対して水平方向に向けて、換言すれば第1部材43の面内方向に向けて振動、変位するものとなる。かかる場合に、第2部材26a、26bの貫通孔33に嵌め込まれる介装構造体62の圧入部67が、第1部材43の孔101とボルト63の軸との隙間に圧入されている。このとき介装構造体62は、圧入部67が第1部材43の孔101と、ボルト63の軸と、に当接されているため、水平変位しようとする力に抵抗しようとして、第1部材43の孔101と、介装構造体62の圧入部67との間で互いに支圧が作用することとなる。これにより、介装構造体62は、第1部材43に対して相対変位しないものとなる。同時に、介装構造体62は、貫通孔33に当接されているため、第2部材26a、26bの貫通孔33と、介装構造体62との間で互いに支圧が作用することとなる。これにより、介装構造体62は、第2部材26a、26bに対して相対変位しないものとなる。このように、これら支圧に応じて地震による振動に抵抗するものとなる。
従って本発明は、大地震等による振動エネルギーを支圧によって抵抗することが可能な接合構造100として具現化することが可能となる。
特に本発明によれば、第1部材43と介装構造体62とが互いに異種材料で構成されている。ここで、異種材料接触状態とは、鉄材又は鋼材とアルミニウムとが接触する異種金属接触状態や、鉄材又は鋼材と真鍮とが接触する異種金属接触状態、鉄材又は鋼材とステンレスとが接触する異種金属接触状態、鉄材又は鋼材と金属粉を含有する樹脂とが接触する異種材料接触状態、鉄材又は鋼材と金属粉を含有しない樹脂やゴムとが接触する異種材料接触状態等をいう。即ち、この異種材料接触状態は、第1部材43と介装構造体62を構成する材料が異なるものであれば、いかなるものであってもよい。これにより、上述したように、介装構造体62は、第1部材43の孔101とボルト63の軸との隙間に圧入される圧入部67が形成されることによって、支圧による抵抗力を効果的に作用させることが可能となる。なお上述した場合においては、介装構造体62の降伏点が第1部材43の降伏点よりも小さくなるように、第1部材43と介装構造体62とが互いに異種材料で構成されることとなる。なお、第1部材43自体と介装構造体62自体とが互いに異種材料で構成されている場合以外に、少なくとも第1部材43と介装構造体62とにおける接触面が異種材料で構成されていればよい。これにより、上述した効果を奏することは勿論である。
また、本発明によれば、最初に柱体41に対して第2部材26a、26bを溶接により接合し、その後に梁42における第1部材43a、43bをそれぞれ第2部材26a、26b間に介装させ、貫通孔33に介装構造体62を嵌め込んだ上でボルト63、ナット64を介して固定している。このとき、第2部材26を柱体41に対して寸分の誤差も無く所定位置に調整して溶接することは困難であり、図2に示すように第2部材26a、26bの間隔が、第1部材43の板厚よりも広く構成される場合がある。
このように、第2部材26を柱体41に溶接する際の位置ずれや施工誤差が発生する場合には、第2部材26と第1部材43との間には間隙が生じることとなる。この間隙の総和をαとする。即ち、このαは、第1部材43と第2部材26aとの間の幅と、第1部材43と第2部材26bとの間の幅との和で表される。
ここで介装構造体62の板厚をtとしたとき、t>αとされていることが前提となる。これにより、第2部材26を柱体41に溶接する際の位置ずれや施工誤差が発生した場合においても、介装構造体62の板厚tがαを下回ることがないことから、第2部材26からの振動を介装構造体62を介して第1部材43へ着実に伝えることが可能となる。
また、ボルト63の頭と介装構造体62の間及び、ナット64と介装構造体62の間には、それぞれ加圧体69が設けられている。その結果、加圧体69は、ボルト63とナット64による締め付けを行うことで、介装構造体62に集中荷重を作用させることが可能となる。特に、この加圧体69の外形及びサイズは、第1部材43aの貫通孔101の形状、サイズに応じたものとなっている。このため、加圧体69は、介装構造体62に第1部材43の孔101とボルト63の軸との隙間に圧入された圧入部67の形成を促すことが可能となる。上述した場合においては、介装構造体62の降伏点が加圧体69の降伏点よりも小さくなるように、加圧体69と介装構造体62とが互いに異種材料で構成されることが望ましい。なお、本発明では、この加圧体69の構成は、省略されていてもよい。なぜなら、加圧体69の構成が省略されていた場合であっても、ボルト63とナット64を締結させたときの押圧力が介装構造体62に伝達されて、圧入部67が形成されることとなるからである。
このように本発明は、第1部材43と第2部材26との接合するとき、これらの上面と下面に添接板を介することなく、ボルト63とナット64とで接合することが可能となり、第1部材43と第2部材26とを接合するボルトの数を減少させることが可能となる。その結果、第1部材43と第2部材26とを接合する施工時間を短縮することが可能となる。
図5は、本発明を適用した接合構造100の他の実施の形態を示している。第2部材の貫通孔33には、介装構造体162が嵌め込まれている。この介装構造体162は、第1部材から遠ざかるにつれて縮径された環状に形成された加圧部169を有する。この加圧部169の上端の外形及びサイズは、第1部材43の貫通孔101の形状、サイズに応じたものとなっている。このとき、ボルト63とナット64による締め付けを行うことで、加圧部169に集中荷重を作用させることが可能となる。その結果、介装構造体162は、第1部材43の孔101とボルト63の軸との隙間に圧入された圧入部67が形成されるのを促すことが可能となる。
図6は、本発明を適用した接合構造100の他の実施の形態を示し、ボルト63とナット64の締結前の状態を示している。また、図7は、図6のB−B断面において、特に介装構造体62が貫通孔33に嵌め込まれた部分を拡大して示した図である。ここで、第2部材26a、26bは、柱体41に溶接される際に熱による歪を受けた場合には、第1部材43の孔101に対して寸分の誤差も無く、第2部材26a、26bの貫通孔33を所定位置に調整することは困難である。このとき、図6及び図7に示すように第2部材26a、26bの貫通孔33が、第1部材43の孔101の位置からずれて、ボルト63の軸と、第1部材43の孔101とが当接されて設けられる場合がある。
かかる場合には、上述したように、図3に示すようなボルト63の軸が第1部材43の孔101の略中心に設けられたときのボルト63の軸から第1部材43における孔101までの間隔をSとしたときと比較して、図7に示すように、第1部材43がその間隔S分だけボルト63側に移動されたものとなる。かかる場合においても、介装構造体62は、図6に示すように、第2部材26の貫通孔33に嵌め込まれたとき、第1部材43の孔101に落下することなく、第1部材43の表面に接触された状態となり、ボルト63の軸から第1部材43における孔101までの最遠の間隔が2Sとなる。即ち、介装構造体62の肉厚(介装構造体62の内径から外径までの寸法)をMとして、M≧2Sを満たすことで、介装構造体62は、第1部材43に接触された状態とされることとなる。
図8は、図6に示すボルト63とナット64の締結させた状態を示している。このようなボルト63とナット64による締め付けを行うことにより、介装構造体62は、第1部材43の孔101とボルト63の軸との隙間に一部圧入されて圧入部67が形成されることとなる。このとき介装構造体62は、圧入部67が第1部材43の孔101と、ボルト63の軸と、に当接されているため、水平変位しようとする力に抵抗しようとして、第1部材43の孔101と、介装構造体62の圧入部67との間で互いに支圧が作用することとなる。また、ボルト63の軸が、第1部材43の孔101に当接されているため、水平変位しようとする力に抵抗しようとして、第1部材43の孔101と、ボルト63の軸との間で互いに支圧が作用することとなる。これにより、介装構造体62は、第1部材43に対して相対変位しないものとなる。加えて、介装構造体62は、ボルト63とナット64による締め付けを行うことにより、貫通孔33に当接されるため、第2部材26a、26bの貫通孔33と、介装構造体62との間で互いに支圧が作用することとなる。これにより、介装構造体62は、第2部材26a、26bに対して相対変位しないものとなる。このように、これら支圧に応じて地震による振動に抵抗するものとなる。
図9は、本発明を適用した接合構造100の他の実施の形態を示している。この例では、かかる構成において、第2部材26a、26bの貫通孔33の略中心位置が、第1部材43の孔101の略中心位置からずれて設けられている場合がある。かかる場合には、介装構造体62の孔62dが中央からずれて形成されていてもよい。このとき、第2部材26a、26bの貫通孔33に嵌め込まれた介装構造体62をボルト63の貫通方向を回転軸として、回転させる。これにより、介装構造体62の孔62dが、第1部材43の孔101の略中心位置に配置されることとなる。そして、図9に示すように、ボルト63とナット64を締結させることによって、介装構造体62の圧入部67が、第1部材43と、ボルト63の軸との間に圧入されるものとなる。その結果、介装構造体62は、圧入部67が第1部材43の孔101と、ボルト63の軸と、に当接されているため、水平変位しようとする力に抵抗しようとして、第1部材43の孔101と、介装構造体62の圧入部67との間で互いに支圧が作用することとなる。
図10は、本発明を適用した接合構造100の他の実施の形態を示している。この例では、介装構造体62の板厚をより増厚させた構成としている。具体的には、介装構造体62を、第2部材26a、26bよりも外側に突出するように増厚されている。かかる場合においても、介装構造体62の板厚tは、t>αの条件を満たすように設定することで、第2部材26a、26bからの振動を介装構造体62を介して第1部材43へ着実に伝えることが可能となる。かかる構成において、ボルト63の頭部と介装構造体62の間、及びナット64と介装構造体62との間には、加圧体69とワッシャー111が介装されている。
また、この図10に示す実施形態によれば、第2部材26の板厚に対して、介装構造体62の板厚を増厚させているため、以下に説明する効果を奏するものとなる。即ち、第2部材26を柱体41に対して寸分の誤差も無く所定位置に調整して溶接することは困難であり、図10に示すように第2部材26a、26bの間隔が、第1部材43の板厚よりも広く構成される場合がある。かかる場合には、第1部材43が第2部材26a、26bの間に遊嵌された状態となる。このような状態とされていた場合に、第1部材43と一方の第2部材26aとの間隙をα1、第1部材43と他方の第2部材26bとの間隙をα2とし、一方の第2部材26aに嵌め込まれた介装構造体62−1の板厚をt1とし、他方の第2部材26bに形成された貫通孔に嵌め込まれた介装構造体62−2の板厚をt2としたとき、α1<t1、かつα2<t2とされていることが必須となる。これにより、第2部材26における柱体41への取り付け位置に対する寸分の誤差を吸収することが可能となる。
また、この図10に示す実施形態によれば、第1部材43とボルト63とナット64による締め付けを行うことにより、第1部材43と一方の第2部材26aとの間隙、及び第1部材43と他方の第2部材26bとの間隙、に鋼板等で構成されるスペーサー501を介装させてもよい。これにより、第1部材43とボルト63とナット64による締め付けを行うとき、第1部材43と一方の第2部材26aとの間隙、及び第1部材43と他方の第2部材26bとの間隙を保持することが可能となり、第2部材26a、26bと柱体41との接合部に、ボルト63とナット64の締め付けによる内力モーメントが発生するのを防止することが可能となる。なお、このスペーサー501は、エポキシ樹脂やセメント系材料等で構成されるものであってもよい。
図11は、第2部材26bの構成を省略し、第2部材26aと、第1部材43間のみで接合を行う例を示している。第1部材43の下側からボルト63を挿通させて、介装構造体62、加圧体69、及びワッシャー111から突出されたボルト63の上端をナット64により螺着固定する。そして、ボルト63とナット64による締め付けを行うことにより、介装構造体62は、第1部材43の孔101とボルト63の軸との隙間に圧入されて圧入部67が形成されることとなる。
図12は、第2部材26aに設けられた貫通孔33に第2介装構造体62−2を嵌め込み、さらに、第1部材43に設けられた貫通孔133に第1介装構造体62−1を嵌め込んだ例を示している。かかる場合には、第2介装構造体62−2の降伏点が第1介装構造体62−1の降伏点よりも小さくなるように、第1介装構造体62−1と第2介装構造体62−2とが互いに異種材料で構成される。第1介装構造体62−1と第2介装構造体62−2は互いに当接された状態にある。第1介装構造体62−1の内径は、ボルト63の軸よりも拡径されている。また、第2介装構造体62−2の内径は、ボルト63の軸よりもわずかに拡径され、第1介装構造体62−1の内径よりも縮径されている。また、この第2介装構造体62−2の外径は、第1介装構造体62−1の外径よりも径大となるように構成されている。少なくとも第1介装構造体62−1及び第2介装構造体62−2の各孔にボルト63の軸を貫通させることによりこれらを互いに締結する。そして、第2介装構造体62−2とナット64の間には、加圧体69が設けられている。なお、第1介装構造体62−1と第2介装構造体62−2とを互いに同一の外径となるように構成するようにしてもよいし、第2介装構造体62−2の外径が第1介装構造体の外径よりも縮径されていてもよいことは勿論である。
このような状態とされていた場合であっても、ボルト63とナット64による締め付けを行うことにより、第1介装構造体62−1は、弾性変形、又は塑性変形されて、貫通孔133に当接される。また、第2介装構造体62−2は、弾性変形、又は塑性変形されて、貫通孔33に当接されることとなる。このとき、第2介装構造体62−2は、第1介装構造体62−1の孔とボルト63の軸との隙間に圧入されて第2圧入部67−2が形成されることとなる。その結果、第2介装構造体62−2は、第2圧入部67−2が第1介装構造体62−1の孔と、ボルト63の軸と、に当接されているため、水平変位しようとする力に抵抗しようとして、第1介装構造体62−1の孔と、第2圧入部67−2との間で互いに支圧が作用することとなる。これにより、第2介装構造体62−2は、第1介装構造体62−1に対して相対変位しないものとなる。なお、第2介装構造体62−2は、貫通孔33に当接されているため、第2部材26a、26bの貫通孔33と、第2介装構造体62−2との間で互いに支圧が作用することとなる。これにより、第2介装構造体62−2は、第2部材26a、26bに対して相対変位しないものとなる。このように、これら支圧に応じて地震による振動に抵抗するものとなる。
図13は、第2部材26aに設けられた貫通孔33に第2介装構造体62−2を嵌め込み、さらに、第1部材43に設けられた貫通孔133に第1介装構造体62−1を嵌め込んだ例を示している。かかる場合には、第2介装構造体62−2の降伏点が第1介装構造体62−1の降伏点よりも大きくなるように、第1介装構造体62−1と第2介装構造体62−2とが互いに異種材料で構成される。かかる構成において、ボルト63とナット64による締め付けを行うことにより、第1介装構造体62−1は、第2介装構造体62−2の孔とボルト63の軸との隙間に圧入されて第1圧入部67−1が形成されることとなる。その結果、第1介装構造体62−1は、第1圧入部67−1が第2介装構造体62−2の孔とボルト63の軸とに当接されているため、水平変位しようとする力に抵抗しようとして、第2介装構造体62−2の孔と、第1圧入部67−1との間で互いに支圧が作用することとなる。
ちなみに、図12〜図13の形態について、第2部材26bには特段介装構造体62を設けないこととしているが、これに限定されるものではなく、第2部材26bに対して介装構造体62を同様に設けるようにしてもよい。かかる場合には、第2部材26bに設けられた介装構造体を、上述した第1介装構造体62−1と接触させるようにして配設する。かかる場合においても、第2部材26bに対して介装構造体62の径を第1介装構造体62−1よりも縮径するようにしてもよいし、拡径するようにしてもよい。
図14は、図12の形態について第2部材26bの構成を省略し、第2部材26aと、第1部材43間のみで接合を行う例を示している。第1部材43の下側からボルト63を挿通させて、介装構造体62、及びワッシャー111から突出されたボルト63の上端をナット64により螺着固定する。かかる形態においても同様に、第2部材26aに設けられた貫通孔33に第2介装構造体62−2を嵌め込み、さらに、第1部材43に設けられた貫通孔133に第1介装構造体62−1を嵌め込み、第1介装構造体62−1と第2介装構造体62−2は互いに当接された状態にある。そして、ボルト63とナット64による締め付けを行うことにより、第2介装構造体62−2は、第1介装構造体62−1の孔とボルト63の軸との隙間に圧入されて第2圧入部67−2が形成されることとなる。この例においても、上述した効果を奏することは勿論である。
図15は、図13の形態について第2部材26bの構成を省略し、第2部材26aと、第1部材43間のみで接合を行う例を示している。第1部材43の下側からボルト63を挿通させて、介装構造体62、及びワッシャー111から突出されたボルト63の上端をナット64により螺着固定する。かかる形態においても同様に、第2部材26aに設けられた貫通孔33に第2介装構造体62−2を嵌め込み、さらに、第1部材43に設けられた貫通孔133に第1介装構造体62−1を嵌め込み、第1介装構造体62−1と第2介装構造体62−2は互いに当接された状態にある。そして、ボルト63とナット64による締め付けを行うことにより、第1介装構造体62−1は、第2介装構造体62−2の孔とボルト63の軸との隙間に圧入されて第1圧入部67−1が形成されることとなる。この例においても、上述した効果を奏することは勿論である。
図16は、柱体41として、鋼管柱を使用するのではなく、H形鋼を使用する例を示している。図17は、柱体41と梁42とを接合する前の状態を上方から見た状態を示す図である。また、図18は、柱体41と梁42とを接合する部分を拡大して示した斜視図である。
柱体41a、41bは、互いに間隔L0だけ離間させて立設されて、2つの柱体41a、41bの間に梁42が設けられる。梁42を構成するウェブ44は、梁42の延長方向に向けて寸法Wで形成されている。ウェブ44の上端と下端とに、ウェブ44の両方の側端部からそれぞれ外側に向けて延長される第1部材43a、43bが設けられ、ウェブ44の側端部から第1部材43aの外側の端部までの寸法をL1とする。ウェブ44の両側端部付近には、図17に示すように、ウェブ44を境にして正面側と背面側とにそれぞれ添接板231が配置される。この添接板231は、図18に示すように、孔232が形成され、この孔232がウェブ44の側端部付近に形成された孔441に位置を合わせ、ウェブ44の側端部付近に溶接される。
柱体41a、41bは、ウェブ312の両端にフランジ311を形成させてなり、このフランジ311に上述した第2部材26a、26bをそれぞれ溶接により先に固着させている。この第2部材26a、26bが溶接固定される高さと略同一の高さとなるように、リブ211をウェブ312に対して垂直に設けている。このリブ211が設けられることにより、梁42から伝達される水平方向の振動や応力を伝達させることが可能となる。また、第2部材26a、26bの柱体41a、41bに固定されている側の端部を一端部27aとし、一端部27aとは反対側の端部を他端部27bとしたとき、一端部27aから他端部27bまでの寸法をL2とする。
また、柱体41aのフランジ311の外側と、柱体41bのフランジ311の外側とにリブ212が設けられる。このリブ212は、その上端が第2部材26bに固定され、その下端が第2部材26aに固定されている。また、リブ212のウェブ44側の端部222a及び端部222bは、それぞれ他端部27bに位置合わせされて設けられている。このリブ212は、孔234が形成されている。なお、このリブ212は、その上端が第2部材26bに離間し、その下端が第2部材26aに離間するようにしてもよい。
このリブ212に対して金属製の1枚の添接板213が溶接により固着される。この添接板213には、孔233が形成されている。この孔233は、リブ212の孔234に整合されている。そして、柱体41aに固定された第2部材26aの他端部27bから添接板213のウェブ44側の端部までの寸法をpとする。
なお、この柱体41a側の添接板213と柱体41b側の添接板213は、柱体41a側のリブ212と柱体41b側のリブ212とを結ぶ線を境にして、正面側と背面側とに配置されるものとなるようにリブ212にそれぞれ溶接されるものとなる。
柱体41と梁42とを接合する際、図17に示すように、梁42を図中矢印q方向に向けて回転させる。そして、図18に示すように、第1部材43a、43bを2枚の第2部材26a、26bの間にそれぞれ介装させる。
図19は、柱体41と梁42とを接合した状態を上方から見た状態を示す図である。
ウェブ44は、リブ212に固着された添接板213に当接される。ウェブ44の孔441は、添接板213の孔233に位置を整合させる。
そして、それぞれ整合させたウェブ44の孔441、添接板231の孔232、添接板213の孔233に、ボルト163を挿通させ、ボルト163の軸先端に、ナット164を螺着させる。
また、ウェブ44の両端に固着されたそれぞれ添接板231は、リブ212にそれぞれ当接される。添接板231の孔232は、リブ212の孔234にそれぞれ整合させる。
そして、それぞれ整合させたウェブ44に固着された添接板231の孔232、リブ212の孔234、添接板213の孔233に、ボルト163を挿通させ、ボルト163の軸先端に、ナット164を螺着させる。
ここで、ウェブ44の寸法をWとして、ウェブ44の側端部から第1部材43aの外側の端部までの寸法をL1としたとき、第1部材43の延長寸法は、W+2×L1で表されるものとなる。そして、2つの柱体41a、41bの間に梁42が収められるためには、第1部材43の延長は、2つの柱体41a、41bの間隔L0よりも小さくなる必要がある。即ち、以下の数式(1)を満たす必要がある。
W+2×L1<L0・・・・・・(1)
また、第2部材26における一端部27aから他端部27bまでの寸法をL2としたとき、一方の柱体41aの第2部材26の他端部27bから他方の柱体41bの第2部材26の他端部27bまでの間隔は、L0−2×L2で表される。また、第1部材43の延長寸法は、当該間隔よりも広くなるとともに、上述したようにW+2×L1で表されることから、以下の数式(2)を満たす必要がある。
L0−2×L2<W+2×L1・・・・・・(2)
次に、ウェブ44は、一方のリブ212と、他方のリブ212との間に収められる必要がある。このとき、一方のリブ212から他方のリブ212まで間隔は、L0−2×L2で表されることから、ウェブ44の延長Wは、以下の数式(3)を満たす必要がある。
W<L0−2×L2・・・・・・(3)
また、図17に示すように、梁42を図中矢印q方向に向けて回転させたとき、ウェブ44は、リブ212に固着された添接板213に係止される必要がある。添接板213aから添接板213bまでの間隔は、L0−2×(L2+p)で表される。このことから、ウェブ44の延長Wは、当該間隔よりも広くなる必要がある。即ち、以下の数式(4)を満たす必要がある。
L0−2×(L2+p)<W・・・・・・(4)
このように、梁42を図中矢印q方向に向けて回転させたとき、ウェブ44は、リブ212に固着された添接板213に、係止されることによって、ウェブ44の位置を添接板213に沿わせた状態で安定されるため、ボルト163とナット164とをウェブ44の孔441に容易に挿通させることが可能となる。
また、ウェブ44に添接板231が事前に溶接されているため、ボルト163とナット164とをリブ212a、リブ212bの孔234に容易に挿通させることが可能となる。
このため、柱体41と梁42とを接合する施工時間を短縮させることが可能となる。
ちなみに、第1部材43と第2部材26との接合は、上述した何れの実施形態を適用するようにしてもよい。つまり、ボルト63、ナット64を介して、介装構造体62を押圧固定させて、圧入部67を形成させることとなる。
なお、ウェブ44の両端に1枚ずつ溶接された添接板231は、ウェブ44を境にして反対側に設けられていれば、その配置は、上述した形態に限らない。つまり、リブ212は、溶接された添接板213とウェブ44に溶接された添接板231との間に介装されていればよい。これにより、梁体42を回転させて、第1部材43a、43bを2枚の第2部材26a、26bの間にそれぞれ介装させることが可能となる。
なお、図16に示すような、梁体41と2つの柱体41a、41bとを接合する際には、図1〜15に示す何れの技術思想が反映されていてもよい。
また、本発明によれば、貫通孔33に上方から下方に向けて縮径するようにテーパーを設けるようにしてもよい。テーパーが形成された貫通孔33に介装構造体62を挿入することにより、貫通孔33の内周壁に介装構造体62を確実に当接させることが可能となる。これにより介装構造体62が貫通孔33から落下するのを防止できる。
また、本発明によれば、ボルト及びナットに、介装構造体に向けて突出させた凸状部が形成されてもよい。これにより、凸状部が介装構造体にめり込まれることとなり、介装構造体と、ボルト及びナットとを強固に固定できる。
また、本発明によれば、図20に示すように、貫通孔33の内周壁から内側に向けて突出させた係止片33aが設けられてもよい。係止片33aが形成された貫通孔33に介装構造体62を挿入することにより、貫通孔33の係止片33aに介装構造体62を係止させることが可能となる。これにより介装構造体62が貫通孔33から落下するのを防止できる。
図21は、第2部材26に介装構造体62を嵌め込むことなく、第1部材43に介装構造体62を嵌め込む形態を示している。この例では、一枚の第2部材26に2枚の第1部材43a、43bを挟持させている。第2部材26は、柱体41に対して先に溶接により固着されている。第1部材43は、貫通孔にそれぞれ介装構造体62が嵌合されており、この介装構造体62は、第2部材26に接触する構成とされている。また、介装構造体62、第2部材26に挿通されるボルト63とこれに螺着されるナット64とを備えている。ボルト63は、介装構造体62に対してはほぼ隙間無く嵌合されることとなるが、第2部材26に設けられた孔には、遊嵌されている状態となっている。かかる形態において、ボルト63とナット64による締め付けを行うことにより、介装構造体62は、第2部材26の孔がボルト63の軸よりも拡径されているため、第2部材26の孔とボルト63の軸との隙間に圧入される圧入部67が形成されることとなる。介装構造体62の外径は、第2部材26の孔の内径よりも大きくなることが前提となる。また、かかる形態において、αは、同様に第1部材43aと第2部材426との間の幅と、第1部材43aと第2部材26との間の幅との和で表され、介装構造体62の板厚をtとしたとき、t>αとされていることが前提となる。第1部材43には他の部材244が取り付けられる。なお、このような図21の構成を前提とする場合においても、図1〜20に示す何れの技術思想が反映されていてもよい。
請求項1記載の部材間の接合構造は、孔が形成される第1部材と、貫通孔が形成され、構造体に固定される第2部材と、前記第2部材に形成された前記貫通孔に嵌め込まれ、前記第1部材の表面に接触された状態とされる介装構造体と、少なくとも前記介装構造体及び前記第1部材の孔にボルトの軸を貫通させることによりこれらを締結する締結部材とを備え、前記介装構造体は、前記締結部材に締結されることにより、変形されて前記第1部材の孔とボルトの軸との間に圧入される圧入部が形成されることを特徴とする。
請求項5記載の部材間の接合構造は、貫通孔が形成される第1部材と、構造体に固定され、孔が形成される第2部材と、前記第1部材に形成された前記貫通孔に嵌め込まれ、前記第2部材の表面に接触された状態とされる介装構造体と、少なくとも前記介装構造体及び前記第2部材の孔にボルトの軸を貫通させることによりこれらを締結する締結部材とを備え、前記介装構造体は、前記締結部材に締結されることにより、変形されて前記第2部材の孔とボルトの軸との間に圧入される圧入部が形成されることを特徴とする。