JP2017193639A - 電線被覆用熱可塑性樹脂組成物及び耐熱電線 - Google Patents

電線被覆用熱可塑性樹脂組成物及び耐熱電線 Download PDF

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Abstract

【課題】難燃性、柔軟性、耐加熱変形性、耐ガソリン性、及び耐熱老化性の良好な熱可塑性樹脂組成物、及びこれを被覆材料として用いた電線、特に車両用の耐熱電線を提供すること。【解決手段】(a1)エンジニアリングプラスチック系重合体5質量%以上、50質量%未満;(a2)エチレン系重合体10質量%以上、60質量%未満;(a3)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物等5質量%以上、50質量%未満;及び(a4)不飽和カルボン酸変性オレフィン系重合体等1質量%以上、30質量%未満;からなる(A)熱可塑性樹脂、(B)非芳香族系ゴム用軟化剤、(C)金属水和物、(D)有機過酸化物、及び(E)酸化防止剤を含む熱可塑性樹脂組成物。【選択図】図1

Description

本発明は、熱可塑性樹脂組成物及びこれを用いた電線に関する。更に詳しくは、難燃性、柔軟性、耐熱性、及び耐ガソリン性に優れ、電線被覆用の材料として好適な熱可塑性樹脂組成物、及びこれを被覆材料として用いた電線、特に車両用の耐熱電線に関する。
車両に使用される電線、例えば、自動車の高圧電線やエンジンルーム内の配線に使用される電線としては、その想定される使用環境が過酷であることから、通常、使用定格温度120℃あるいは150℃の耐熱性に優れた電線、所謂耐熱電線が使用される。そしてこのような車両用電線は、耐熱性、及び難燃性などの車両用電線に要求される諸特性に適合させる観点から、従来、未加硫ゴムやエチレン系共重合体を基材樹脂とする樹脂組成物などの熱可塑性材料を用いて電線を成形した後、更に硫黄加硫、水架橋、有機過酸化物架橋、及び電子線架橋などの後架橋処理を施すことにより製造されてきた。しかし、後架橋処理を行うことにより、マテリアルリサイクルができないという問題があった。
そこで電線被覆用材料として、「スチレン・イソプレンブロック共重合体などのブロック共重合体及びポリプロピレンをベース樹脂とし、軟化剤として非芳香族系ゴム用軟化剤を加えたビニル芳香族系熱可塑性エラストマー組成物を、シラン表面処理された金属水和物を介して有機パーオキサイドを用いて部分架橋ならしめることにより得られる、高い強度を有し、耐摩耗性に優れ、しかも難燃性を有する樹脂組成物」が提案されている(特許文献1)。しかし、この技術は、車両用耐熱電線の被覆材料としては耐加熱変形性、成形加工性、及び耐寒性が十分に満足できるものではない。
耐加熱変形性、成形加工性、及び耐寒性を向上させる技術としては、「ポリオレフィン系樹脂、エンジニアリングプラスチック、及び相容化剤からなる電線被覆用熱可塑性樹脂組成物。」が提案されている(特許文献2)。しかし、この技術は、車両用耐熱電線の被覆材料としては柔軟性、及び難燃性が十分に満足できるものではない。
特開2000−315424号公報 特開2011−222432号公報
本発明の課題は、難燃性、柔軟性、耐加熱変形性、耐ガソリン性、及び耐熱老化性の良好な熱可塑性樹脂組成物、及びこれを被覆材料として用いた電線、特に車両用の耐熱電線を提供することにある。
本発明者は、鋭意研究した結果、特定の熱可塑性樹脂組成物が上記課題を達成できることを見出した。
すなわち、本発明は、
(A)熱可塑性樹脂 70〜95質量%、及び(B)非芳香族系ゴム用軟化剤 30〜5質量%からなる組成物 100質量部;
(C)金属水和物 30〜150質量部;
(D)有機過酸化物 0.01〜1.0質量部;及び、
(E)酸化防止剤 1〜15質量部;
を含み、
ここで上記成分(A)と上記成分(B)の合計は100質量%であり;
上記成分(A)は、
(a1)エンジニアリングプラスチック系重合体 5質量%以上、50質量%未満;
(a2)エチレン系重合体 10質量%以上、60質量%未満;
(a3)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体、芳香族ビニル化合物とイソブチレンとのブロック共重合体、及び芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物からなる群から選択される1種以上 5質量%以上、50質量%未満;及び、
(a4)不飽和カルボン酸変性オレフィン系重合体、不飽和カルボン酸変性芳香族ビニル化合物系エラストマー、及びエポキシ基含有オレフィン系重合体からなる群から選択される1種以上 1質量%以上、30質量%未満;
からなり、
ここで上記成分(a1)、上記成分(a2)、上記成分(a3)、及び上記成分(a4)の合計は100質量%である;
熱可塑性樹脂組成物である。
第2の発明は、上記成分(a2)が(a2−1)密度860〜935Kg/m のエチレンと炭素数4〜10のα−オレフィンとの共重合体、及び(a2−2)極性エチレン系共重合体からなる群から選択される1種以上を含む、第1の発明に記載の熱可塑性樹脂組成物である。
第3の発明は、上記成分(a1)が、ポリブチレンテレフタレート系重合体である第1の発明又は第2の発明に記載の熱可塑性樹脂組成物である。
第4の発明は、上記成分(E)が(E−1)ヒンダードフェノール系酸化防止剤;及び(E−2)チオエーテル系酸化防止剤;
を含む第1〜3の発明の何れか1に記載の熱可塑性樹脂組成物である。
第5の発明は、更に、(F)カップリング剤を含む第1〜4の発明の何れか1に記載の熱可塑性樹脂組成物である。
第6の発明は、第1〜5の発明の何れか1に記載の熱可塑性樹脂組成物を含む電線である。
第7の発明は、車両用である第6の発明に記載の電線である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、難燃性、柔軟性、耐加熱変形性、耐ガソリン性、及び耐熱老化性が良好である。そのため電線、特に車両用耐熱電線の被覆材料として好適に用いることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(A)熱可塑性樹脂、(B)非芳香族系ゴム用軟化剤、(C)金属水和物、(D)有機過酸化物、及び(E)酸化防止剤を含む。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、好ましくは、(A)熱可塑性樹脂、(B)非芳香族系ゴム用軟化剤、(C)金属水和物、(D)有機過酸化物、(E)酸化防止剤、及び(F)カップリング剤を含む。以下、各成分について説明する。
(A)熱可塑性樹脂:
上記成分(A)は熱可塑性樹脂であり、上記成分(B)〜(E)、及び所望により用いる任意成分を受容し、機械的物性を良好にする働きをする。
上記成分(A)と上記成分(B)との配合割合は、柔軟性と機械的物性とのバランスの観点から、上記成分(A)と上記成分(B)の合計を100質量%として、上記成分(A)70〜95質量%(上記成分(B)30〜5質量%)、好ましくは上記成分(A)80〜95質量%(上記成分(B)20〜5質量%)である。
上記成分(A)は、
(a1)エンジニアリングプラスチック系重合体 5質量%以上、50質量%未満;
(a2)エチレン系重合体 10質量%以上、60質量%未満;
(a3)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体、芳香族ビニル化合物とイソブチレンとのブロック共重合体、及び芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物からなる群から選択される1種以上 5質量%以上、50質量%未満;及び、
(a4)不飽和カルボン酸変性オレフィン系重合体、不飽和カルボン酸変性芳香族ビニル化合物系エラストマー、及びエポキシ基含有オレフィン系重合体からなる群から選択される1種以上 1質量%以上、30質量%未満;
からなる。ここで上記成分(a1)、上記成分(a2)、上記成分(a3)、及び上記成分(a4)の合計は100質量%である;以下各成分について説明する。
(a1)エンジニアリングプラスチック系重合体:
上記成分(a1)は、エンジニアリングプラスチック系重合体である。上記成分(a1)は、耐加熱変形性を良好にする働きをする。
ここで「エンジニアリングプラスチック系重合体」とは、結晶性重合体にあっては、融点が170℃以上の重合体を意味する。非結晶性重合体にあっては、ガラス転移温度が150℃以上の重合体を意味する。
本明細書において、エンジニアリングプラスチック系重合体の融点は、JIS K 7121−1987に準拠し、株式会社パーキンエルマージャパンのDiamond DSC型示差走査熱量計を使用し、300℃で5分間保持し、10℃/分で−10℃まで冷却し、−10℃で5分間保持し、10℃/分で300℃まで昇温するプログラムで測定されるセカンド融解曲線(最後の昇温過程で測定される融解曲線)の最も高い温度側のピークトップ融点である。また上記測定において融点を明確なピークとして観察できるときは、「そのエンジニアリングプラスチック系重合体は結晶性重合体である」とした。上記測定において融点を明確なピークとして観察できないときは、「そのエンジニアリングプラスチック系重合体は非結晶性重合体である」とした。
本明細書において、エンジニアリングプラスチック系重合体のガラス転移温度は、JIS K 7121−1987に準拠し、株式会社パーキンエルマージャパンのDiamond DSC型示差走査熱量計を使用し、300℃で5分間保持し、10℃/分で−10℃まで冷却し、−10℃で5分間保持し、10℃/分で300℃まで昇温するプログラムで測定されるセカンド融解曲線(最後の昇温過程で測定される融解曲線)から、上記JIS 規格の図3.ガラス転移温度の決め方の例に従い求めた中間点ガラス転移温度である。
上記成分(a1)としては、上記定義の要件を満足する限り、特に限定されない。上記成分(a1)としては、例えば、芳香族ポリエステル、ポリアミド、及びポリメチルペンテンなどの熱可塑性樹脂であって、上記定義の要件を満足するものをあげることができる。
上記芳香族ポリエステルとしては、例えば、芳香族多価カルボン酸の1種以上と、多価オールの1種以上との重合体であって、上記定義の要件を満足するものをあげることができる。
上記芳香族多価カルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、及びナフタレンジカルボン酸、ジフェニル−4、4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニル−3、3’−ジカルボン酸、ジフェニル−4、4’−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、及びこれらのエステル形成性誘導体などをあげることができる。
上記多価オールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ポリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4'−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、グリセリン、及びトリメチロールプロパンなどの脂肪族多価アルコール;キシリレングリコール、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物などの芳香族多価オール;及びこれらのエステル形成性誘導体などをあげることができる。
上記芳香族ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及びポリブチレンナフタレートなどをあげることができる。
上記ポリアミドとしては、例えば、ラクタム、アミノカルボン酸、及びジアミンとジカルボン酸とからなるナイロン塩などの少なくとも何れか1種以上の重合体であって、上記定義の要件を満足するものをあげることができる。
上記ラクタムとしては、例えば、カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタム、α−ピロリドン、及びα−ピペリドンなどをあげることができる。
上記アミノカルボン酸としては、例えば、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、及び12−アミノドデカン酸などをあげることができる。
上記ナイロン塩を構成するジアミンとしては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、テトラデカメチレンジアミン、ペンタデカメチレンジアミン、ヘキサデカメチレンジアミン、ヘプタデカメチレンジアミン、オクタデカメチレンジアミン、ノナデカメチレンジアミン、エイコサメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、及び5−メチル−L9−ノナンジアミン等の脂肪族ジアミン;1,3−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジメチルアミン、1,4−シクロヘキサンジメチルアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン、5−アミノ−2,2,4−トリメチル−1−シクロペンタンメチルアミン、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン(イソホロンジアミン)、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチルアミン、及びトリシクロデカンジメチルアミン等の脂環式ジアミン;m−キシリレンジアミン、及びp−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン;などをあげることができる。
上記ポリアミドとしては、例えば、6−ナイロン、66−ナイロン、6/66共重合ナイロン、46−ナイロン、及び12−ナイロンなどをあげることができる。
上記ポリメチルペンテンとしては、例えば、4−メチル−1−ペンテンの単独重合体、及び4−メチル−1−ペンテンと他の少量のα−オレフィンの1種以上との共重合体であって、上記定義の要件を満足するものをあげることができる。
上記α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−テトラデセン、1−オクタデセン、1−ヘキサデセン、1−ドデセン、及び1−テトラデセンなどの炭素数2〜30のα−オレフィンをあげることができる。
上記成分(a1)としては、その他、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、及び変性ポリフェニレンエーテルなどの熱可塑性樹脂であって、上記定義の要件を満足するものを用いてもよい。
上記成分(a1)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。上記成分(a1)としては、耐加熱変形性の観点から、結晶性重合体が好ましく、融点が200℃以上の結晶性重合体がより好ましく、融点が220℃以上の結晶性重合体が更に好ましい。また上記成分(a1)が結晶性重合体である場合、上記成分(C)の分解を抑制する観点から、その融点は通常240℃以下、好ましくは230℃以下であってよい。
上記成分(a1)としては、コンパウンド製造性、及び電線成形性の観点から、ポリエチレンテレフタレート、及びポリブチレンテレフタレートが好ましく、ポリブチレンテレフタレートがより好ましい。
上記成分(A)中の上記成分(a1)の配合割合は、上記成分(a1)、上記成分(a2)、上記成分(a3)、及び上記成分(a4)の合計を100質量%として、耐加熱変形性の観点から、5質量%以上、好ましくは10質量%以上である。一方、柔軟性及び引張伸びの観点から、50質量%未満、好ましくは35質量%以下である。
(a2)エチレン系重合体:
上記成分(a2)はエチレン系重合体である。上記成分(a2)は柔軟性及び引張伸びを良好にする働きをする。
上記成分(a2)としては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレンとα−オレフィンとの共重合体系プラストマー、エチレンとα−オレフィンとの共重合体系エラストマー、及び極性エチレン系重合体などをあげることができる。上記成分(a2)としては、これらの1種、又は2種以上の混合物を用いることができる。
これらの中で、上記成分(a2)としては、(a2−1)密度860〜935Kg/m、好ましくは870〜920Kg/mの、エチレンと炭素数4〜10のα−オレフィンとの、好ましくはメタロセン系触媒を用いて重合された、共重合体(ランダム共重合体、及びブロック共重合体を含む。)が好ましい。引張強さ、引張伸び、及び耐寒性が良好になる。
上記炭素数4〜10のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、及び1−デカンをあげることができる。これらの中で、引張強さ、引張伸び、及び耐寒性の観点から、炭素数6〜8のα−オレフィンが好ましくは、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、及び1−オクテンがより好ましい。上記炭素数4〜10のα−オレフィンとしては、これらの1種以上を用いることができる。
これらの中で、上記成分(a2)としては、(a2−2)極性エチレン系共重合体が好ましい。難燃性、引張強さ、及び引張伸びが良好になる。上記成分(a2−2)極性エチレン系共重合体は、エチレンと極性基含有モノマーとの共重合体、及びその誘導体である。
上記極性基含有モノマーとしては、例えば、酢酸ビニル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、及びアクリル酸ブチルなどのアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、及びメタクリル酸ブチルなどのメタクリル酸アルキルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、及びフマル酸などの不飽和カルボン酸;及び無水マレイン酸、イタコン酸モノエステル、イタコン酸ジエステル、無水イタコン酸、フマル酸モノエステル、フマル酸ジエステル、及び無水フマル酸などの不飽和カルボン酸の誘導体;などをあげることができる。上記極性基含有モノマーとしては、これらの1種以上を用いることができる。
上記成分(a2−2)としては、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン・アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン・メタクリル酸共重合体(EMAA)、及びエチレン・メタクリル酸共重合体の分子間を金属イオンで架橋したエチレン系アイオノマー樹脂などをあげることができる。これらの中で上記成分(a2−2)としては、難燃性の観点から、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、及びエチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)が好ましい。上記成分(a2−2)としてはこれらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
上記成分(a2−1)と上記成分(a2−2)とは、それぞれ単独で用いてもよく、両者の混合物を用いてもよい。両者の混合物を用いる場合、上記成分(a2−1)と上記成分(a2−2)との質量比は、引張伸びと引張強さとのバランス、及び柔軟性の観点から、好ましくは1:1〜1:6、より好ましくは1:1.5〜1:4であってよい。
上記成分(a2)中のエチレンに由来する構成単位の含有量は、エチレンと共重合されるコモノマーの種類や分子構造(直鎖状であるか、長鎖分岐を有するかなど)にもよるが、引張強さの観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上であってよい。一方、引張伸びの観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下であってよい。
上記成分(a2)のJIS K 7210−1999に準拠し、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定したメルトマスフローレートは、特に制限されないが、成形性の観点から好ましくは0.05g/10分以上、より好ましくは0.1g/10分以上であってよい。一方、機械的特性の観点から、好ましくは150g/分以下、より好ましくは30g/10分以下であってよい。
上記成分(A)中の上記成分(a2)の配合割合は、上記成分(a1)、上記成分(a2)、上記成分(a3)、及び上記成分(a4)の合計を100質量%として、柔軟性、引張強さ、及び引張伸びの観点から、10質量%以上、好ましくは20質量%以上である。一方、耐加熱変形性の観点から、60質量%未満、好ましくは55質量%以下である。
(a3)芳香族ビニル化合物系ブロック共重合体等:
上記成分(a3)は、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体、芳香族ビニル化合物とイソブチレンとのブロック共重合体、及び芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物からなる群から選択される1種以上である。上記成分(a3)は、耐加熱変形性や柔軟性を良好にする働きをする。
上記芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体は、通常、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAの1個以上、好ましくは機械的特性の観点から2個以上と、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBの1個以上とからなるブロック共重合体である。例えば、A−B、A−B−A、B−A−B−A、及びA−B−A−B−Aなどの構造を有するブロック共重合体をあげることができる。
上記芳香族ビニル化合物とイソブチレンとのブロック共重合体は、通常、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックAの1個以上、好ましくは機械的特性の観点から2個以上と、イソブチレンを主体とする重合体ブロックBの1個以上とからなるブロック共重合体である。例えば、A−B、A−B−A、B−A−B−A、及びA−B−A−B−Aなどの構造を有するブロック共重合体をあげることができる。
上記芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物は、上記芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体中の炭素・炭素二重結合に水素を添加して炭素・炭素単結合にすることにより得られる物質である。上記水素添加は、公知の方法、例えば、不活性溶媒中で水素添加触媒を用いて水素処理することにより行うことができる。
上記芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物の水素添加率(水素添加前の芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体中の炭素・炭素二重結合の数に対する水素添加により炭素・炭素単結合となった結合の数の割合。)は、特に制限されないが、耐熱老化性の観点から、通常50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上であってよい。
上記芳香族ビニル化合物は、重合性の炭素・炭素二重結合と芳香環を有する重合性モノマーである。上記芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルトルエン、及びp−第3ブチルスチレンなどをあげることができる。これらの中で、スチレンが好ましい。上記芳香族ビニル化合物としては、これらの1種以上を用いることができる。
上記共役ジエン化合物は、2つの炭素・炭素二重結合が1つの炭素・炭素単結合により結合された構造を有する重合性モノマーである。上記共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、及びクロロプレン(2−クロロ−1,3−ブタジエン)などをあげることができる。これらの中で、1,3−ブタジエン及びイソプレンが好ましい。上記共役ジエン化合物としては、これらの1種以上を用いることができる。
上記成分(a3)中の上記芳香族ビニル化合物に由来する構成単位の含有量は、特に制限されないが、耐加熱変形性と柔軟性の観点から、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは20〜40質量%であってよい。
上記重合体ブロックAは、上記芳香族ビニル化合物のみからなる重合体ブロック、又は上記芳香族ビニル化合物と上記共役ジエン化合物若しくはイソブチレンとの共重合体ブロックである。上記重合体ブロックAが上記共重合体ブロックである場合における、上記重合体ブロックA中の上記芳香族ビニル化合物に由来する構成単位の含有量は、特に制限されないが、耐熱性の観点から、通常50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上であってよい。上記重合体ブロックA中の上記共役ジエン化合物又はイソブチレンに由来する構成単位の分布は、特に制限されない。上記重合体ブロックAが2個以上あるとき、これらは同一構造であってもよく、互いに異なる構造であってもよい。
上記重合体ブロックBは、上記共役ジエン化合物若しくはイソブチレンのみからなる重合体ブロック、又は上記芳香族ビニル化合物と上記共役ジエン化合物若しくはイソブチレンとの共重合体ブロックである。上記重合体ブロックBが上記共重合体ブロックである場合における、上記重合体ブロックB中の上記共役ジエン化合物又はイソブチレンに由来する構成単位の含有量は、特に制限されないが、柔軟性の観点から、通常50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上であってよい。上記重合体ブロックB中の上記芳香族ビニル化合物に由来する構成単位の分布は、特に制限されない。上記共役ジエン化合物又はイソブチレンと上記共役ジエン化合物との結合様式(以下、ミクロ構造と略すことがある。)は、特に制限されない。上記重合体ブロックBが2個以上あるとき、これらは同一構造であってもよく、互いに異なる構造であってもよい。
上記芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体としては、例えば、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)、及びスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)などをあげることができる。上記芳香族ビニル化合物とイソブチレンとのブロック共重合体としては、例えば、スチレン・イソブチレン・スチレン共重合体(SIBS)などをあげることができる。上記芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物としては、例えば、スチレン・エチレン・ブテン共重合体(SEB)、スチレン・エチレン・プロピレン共重合体(SEP)、スチレン・エチレン・ブテン・スチレン共重合体(SEBS)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体(SEPS)、及びスチレン・エチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体(SEEPS)などをあげることができる。これらの中で、スチレン・エチレン・ブテン・スチレン共重合体(SEBS)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体(SEPS)、及びスチレン・エチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体(SEEPS)が好ましい。上記成分(a3)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
上記成分(A)中の上記成分(a3)の配合割合は、上記成分(a1)、上記成分(a2)、上記成分(a3)、及び上記成分(a4)の合計を100質量%として、耐加熱変形性の観点から、5質量%以上、好ましくは15質量%以上である。一方、耐ガソリン性、及び成形品の外観の観点から、50質量%未満、好ましくは40質量%以下である。
(a4)不飽和カルボン酸変性オレフィン系重合体、不飽和カルボン酸変性芳香族ビニル化合物系エラストマー、エポキシ基含有オレフィン系重合体:
上記成分(a4)は、不飽和カルボン酸変性オレフィン系重合体、不飽和カルボン酸変性芳香族ビニル化合物系エラストマー、及びエポキシ基含有オレフィン系重合体からなる群から選択される1種以上である。上記成分(a4)は、上記成分(A)と上記成分(C)との相容化に重要な機能を果たす。
上記不飽和カルボン酸変性オレフィン系重合体は、不飽和カルボン酸、及び不飽和カルボン酸誘導体からなる群から選択される1種以上を用いて、オレフィン系重合体を変性(オレフィン系重合体に不飽和カルボン酸等をグラフト重合)した物質である。
上記オレフィン系重合体は、α−オレフィンの重合体若しくは共重合体、又はα−オレフィンとα−オレフィンと共重合可能なモノマーとの共重合体であってα−オレフィンに由来する構成単位を主体(通常50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上)とするものである。
上記α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デカン、3−メチル−1−ペンテン、及び4−メチル−1−ペンテンなどをあげることができる。上記α−オレフィンとしては、これらの1種以上を用いることができる。
上記α−オレフィンと共重合可能なモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、及びアクリル酸ブチルなどのアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、及びメタクリル酸ブチルなどのメタクリル酸アルキルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、及びフマル酸などの不飽和カルボン酸;及び無水マレイン酸、イタコン酸モノエステル、イタコン酸ジエステル、無水イタコン酸、フマル酸モノエステル、フマル酸ジエステル、及び無水フマル酸などの不飽和カルボン酸の誘導体;1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,5−ヘキサジエン、1,4−オクタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、及び5−イソプロペニル−2−ノルボルネンなどの非共役ジエン;などをあげることができる。上記α−オレフィンと共重合可能なモノマーとしては、これらの1種以上を用いることができる。
上記オレフィン系重合体としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン・α−オレフィン共重合体(ランダム共重合体、及びブロック共重合体を含む)、ポリプロピレン、プロピレン・α−オレフィン共重合体(ランダム共重合体、及びブロック共重合体を含む)、ポリブテン、ポリペンテン、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、及びエチレン・アクリル酸アルキルエステル共重合体などをあげることができる。上記オレフィン系重合体としては、これらの1種以上を用いることができる。
上記不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、アクリル酸、及びメタクリル酸などをあげることができる。上記不飽和カルボン酸の誘導体としては、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、無水マレイン酸、イタコン酸モノエステル、イタコン酸ジエステル、無水イタコン酸、フマル酸モノエステル、フマル酸ジエステル、無水フマル酸、アクリル酸メチル等のアクリル酸アルキルエステル、及びメタクリル酸メチル等のメタクリル酸アルキルエステルなどをあげることができる。これらの中で、相容性の観点から、無水マレイン酸、アクリル酸、及びメタクリル酸が好ましい。上記オレフィン系重合体の変性には、これらの1種以上を用いることができる。
本明細書において、上記成分(a2−2)極性エチレン系共重合体(エチレンと不飽和カルボン酸等の極性基含有モノマーとの共重合体、及びその誘導体。)を、不飽和カルボン酸、及び不飽和カルボン酸誘導体からなる群から選択される1種以上を用いて、変性した物質は、上記成分(a4)である。上記成分(a2−2)は、不飽和カルボン酸又はその誘導体に由来する構成単位が、通常、主鎖中にのみ存在する。一方、上記成分(a2−2)を、不飽和カルボン酸等を用いて変性した物質は、不飽和カルボン酸等に由来する構成単位が、有意な量、グラフトしている。ここで「主鎖中にのみ存在する」とは、「不飽和カルボン酸等に由来する構成単位であってグラフトしているものは有意な量ではない」と言い換えることもできる。樹脂組成物の分野において、グラフト量の有意な量は、通常0.1質量%以上であるから、「主鎖中にのみ存在する」とは、「不飽和カルボン酸等に由来する構成単位であってグラフトしているものが通常0.1質量%未満、典型的には0.01質量%以下」と更に言い換えることもできる。
上記不飽和カルボン酸変性オレフィン系重合体としては、相容性の観点から、これらの中で無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性エチレン・α−オレフィン共重合体、アクリル酸変性ポリエチレン、アクリル酸変性エチレン・α−オレフィン共重合体、メタクリル酸変性ポリエチレン、及びメタクリル酸変性エチレン・α−オレフィン共重合体が好ましい。
上記不飽和カルボン酸変性芳香族ビニル化合物系エラストマーは、不飽和カルボン酸、及び不飽和カルボン酸誘導体からなる群から選択される1種以上を用いて、芳香族ビニル化合物系エラストマーを変性(芳香族ビニル化合物系エラストマーに不飽和カルボン酸等をグラフト重合)した物質である。
上記芳香族ビニル化合物系エラストマーとしては、例えば、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)、及びスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)などの芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体;スチレン・エチレン・ブテン共重合体(SEB)、スチレン・エチレン・プロピレン共重合体(SEP)、スチレン・エチレン・ブテン・スチレン共重合体(SEBS)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体(SEPS)、スチレン・エチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体(SEEPS)などの芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物;スチレン・イソブチレン・スチレン共重合体(SIBS)などの芳香族ビニル化合物とイソブチレンとのブロック共重合体;スチレン・ブタジエンランダム共重合体(SBR)などの芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体;及び、水添スチレン・ブタジエンランダム共重合体(HSBR)などの芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体の水素添加物;などをあげることができる。上記芳香族ビニル化合物系エラストマーとしては、これらの1種以上を用いることができる。
不飽和カルボン酸、及び不飽和カルボン酸誘導体については上述した。これらの中で、相容性の観点から、無水マレイン酸、アクリル酸、及びメタクリル酸が好ましい。上記不飽和カルボン酸変性芳香族ビニル化合物系エラストマーを得るために用いる不飽和カルボン酸等としては、これらの1種以上を用いることができる。
上記不飽和カルボン酸変性芳香族ビニル化合物系エラストマーとしては、相容性の観点から、無水マレイン酸変性スチレン・エチレン・ブテン・スチレン共重合体、無水マレイン酸変性スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体、アクリル酸変性スチレン・エチレン・ブテン・スチレン共重合体、アクリル酸変性スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体、メタクリル酸変性スチレン・エチレン・ブテン・スチレン共重合体、及びメタクリル酸変性スチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体が好ましい。
上記エポキシ基含有オレフィン系重合体は、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、4−ヒドロキシブチルメタクリレートグリシジルエーテル、及び4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルなどのエポキシ基を含む重合性モノマーに由来する、例えば、グリシジルエステル、グリシジルエーテル、及びグリシジルアミンなどの構造単位を含有するオレフィン系重合体である。
上記エポキシ基含有オレフィン系重合体は、通常、エポキシ基を含む重合性モノマーの1種以上を用いて、オレフィン系重合体を変性(オレフィン系重合体にエポキシ基を含む重合性モノマーをグラフト重合)した物質であるが制限されない。上記エポキシ基含有オレフィン系重合体は、エポキシ基を含む重合性モノマーと共重合可能なα−オレフィンとの共重合体であってよい。
エポキシ基を含む重合性モノマーの1種以上による変性に用いるオレフィン系重合体としては、上記不飽和カルボン酸変性オレフィン系重合体を得るために用いるオレフィン系重合体として上述したものをあげることができる。エポキシ基を含む重合性モノマーの1種以上による変性に用いるオレフィン系重合体としては、これらの1種以上を用いることができる。
上記成分(a4)としては、不飽和カルボン酸変性オレフィン系重合体、不飽和カルボン酸変性芳香族化合物系エラストマー、又はエポキシ基含有オレフィン系重合体の何れか1種を用いてもよく、任意の2種以上を併用してもよい。
上記成分(a4)としては、これらの中で、上記成分(A)と上記成分(C)の相容性、及び耐加熱変形性の観点から、不飽和カルボン酸変性オレフィン系重合体が好ましい。
上記成分(A)中の上記成分(a4)の配合割合は、上記成分(a1)、上記成分(a2)、上記成分(a3)、及び上記成分(a4)の合計を100質量%として、相容性、引張強さ、及び耐加熱変形性の観点から、1質量%以上、好ましくは3質量%以上である。一方、引張伸び、及び成形性の観点から、30質量%未満、好ましくは20質量%以下である。
(B)非芳香族系ゴム用軟化剤
上記成分(B)は非芳香族系ゴム用軟化剤である。上記成分(B)は柔軟性に重要な働きをする。
上記成分(B)は、非芳香族系の鉱物油(石油等に由来する炭化水素化合物)または合成油(合成炭化水素化合物)であり、通常、常温では液状又はゲル状若しくはガム状である。ここで非芳香族系とは、鉱物油については、下記の区分において芳香族系に区分されない(芳香族炭素数が30%未満である)ことを意味する。合成油については、芳香族モノマーを使用していないことを意味する。
ゴム用軟化剤として用いられる鉱物油は、パラフィン鎖、ナフテン環、および芳香環の何れか1種以上の組み合わさった混合物であって、ナフテン環炭素数が30〜45%のものはナフテン系、芳香族炭素数が30%以上のものは芳香族系と呼ばれ、ナフテン系にも芳香族系にも属さず、かつパラフィン鎖炭素数が全炭素数の50%以上を占めるものはパラフィン系と呼ばれて区別されている。
上記成分(B)としては、例えば、直鎖状飽和炭化水素、分岐状飽和炭化水素、及びこれらの誘導体などのパラフィン系鉱物油;ナフテン系鉱物油;水素添加ポリイソブチレン、ポリイソブチレン、及びポリブテンなどの合成油;などをあげることができる。上記成分(B)の市販例としては、日本油脂株式会社のイソパラフィン系炭化水素油「NAソルベント(商品名)」、出光興産株式会社のn−パラフィン系プロセスオイル「ダイアナプロセスオイルPW−90(商品名)」及び「ダイアナプロセスオイルPW−380(商品名)」、出光石油化学株式会社の合成イソパラフィン系炭化水素「IP−ソルベント2835(商品名)」、及び三光化学工業株式会社n−パラフィン系プロセスオイル「ネオチオゾール(商品名)」などをあげることができる。これらの中で、相容性の観点から、パラフィン系鉱物油が好ましく、芳香族炭素数の少ないパラフィン系鉱物油がより好ましい。また取扱い性の観点から、室温で液状であるものが好ましい。上記成分(B)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
上記成分(B)は、耐熱性及び取扱い性の観点から、JIS K2283−2000に準拠し測定された37.8℃における動的粘度が好ましくは20〜1000cStである。また取扱い性の観点から、JIS K2269−1987に準拠し測定された流動点が好ましくは−10〜−25℃である。更に安全性の観点から、JIS K2265−2007に準拠し測定された引火点(COC)が好ましくは170〜300℃である。
上記成分(B)の配合量は、上記成分(A)と上記成分(B)の合計を100質量%として、柔軟性と機械物性とのバランスの観点から、好ましくは5〜30質量%、より好ましくは5〜20質量%である。
(C)金属水和物:
上記成分(C)は、金属水和物である。上記成分(C)は分子内に結晶水を有しており、燃焼する際に結晶水を放出し、難燃性を高める働きをする。
上記成分(C)としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水和珪酸アルミニウム、水和珪酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、及びハイドロタルサイトなどの水酸基あるいは結晶水を有する化合物をあげることができる。該化合物は、シラン化合物(シランカップリング剤)、脂肪酸、及びリン酸エステルなどの任意の表面処理剤を用いて表面処理を施されたものであってもよく、該表面処理を施されていないものであってもよい。上記成分(C)としては、これらの中で、難燃性の観点から、水酸化アルミニウム、及び水酸化マグネシウムが好ましい。上記成分(C)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
上記成分(C)の配合量は、上記成分(A)と上記成分(B)の合計100質量部に対して、難燃性の観点から、好ましくは30質量部以上、より好ましくは40質量部以上である。一方、柔軟性、機械物性、及び耐熱老化性の観点から好ましくは150質量部以下、より好ましくは130質量部以下である。
(D)有機過酸化物:
上記成分(D)は、有機過酸化物である。上記成分(D)は、溶融混練時にラジカルを発生せしめ、そのラジカルを連鎖的に反応させて、上記成分(A)を改質し、耐加熱変形性を向上させる働きをする。
上記有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、及びt−ブチルクミルパーオキサイドなどをあげることができる。上記成分(D)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
上記成分(D)としては、組成物の臭気性、着色性、及びスコーチ安全性の観点から、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、及びジクミルパーオキサイドが好ましい。
上記成分(D)の市販品としては、例えば、日本油脂株式会社の「パーヘキサ 25B(商品名)」、及び「パークミル D(商品名)」などをあげることができる。
上記成分(D)の配合量は、上記成分(A)と成分(B)の合計100質量部に対して、耐加熱変形性の観点から、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上である。一方、引張伸び、及び成形品の外観の観点から、好ましくは1.0質量部以下、好ましくは0.5質量部以下である。
(E)酸化防止剤:
上記成分(E)は酸化防止剤である。上記成分(E)は耐熱老化性を向上させる働きをする。
上記成分(E)としては、例えば、ヒンダードフェノール系(E−1)、チオエーテル系(E−2)、ホスファイト系、及びアミン系などの酸化防止剤をあげることができる。
上記(E−1)ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、トリエチレングリコール−ビス3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6−ヘキサンジオール−ビス3−(3,5−ジ−t−-ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル−テトラキス3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2−チオ−ジエチレンビス3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルフォスフェート−ジエチルエステル、及び1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどをあげることができる。
上記(E−2)チオエーテル系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)、ジドデシルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジテトラデシルチオジプロピオネート、ジオクタデシルチオジプロピオネート、及び2−メルカプトベンズイミダゾールなどをあげることができる。
上記アミン系酸化防止剤としては、例えば、4,4’−ジオクチル・ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、及び2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物などをあげることができる。
上記ホスファイト系酸化防止剤しては、例えば、ジフェニルデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス−(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、及びトリス−(2−エチルヘキシル)ホスファイトなどをあげることができる。
上記成分(E)としては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
上記成分(E)としては、上記(E−1)ヒンダードフェノール系酸化防止剤と上記(E−2)チオエーテル系酸化防止剤とを併用することが好ましい。耐熱老化性を著しく向上させることができる。
上記成分(E)の配合量は、上記成分(A)と上記成分(B)の合計100質量部に対して、耐熱老化性の観点から、1質量部超、好ましくは3質量部以上である。一方、上記成分(E)の配合量の上限は特にないが、通常、15質量部以下、好ましくは10質量部以下であってよい。
(F)カップリング剤:
上記成分(F)はカップリング剤である。上記成分(F)は上記成分(A)と上記成分(C)の相容化剤として働き、耐熱性に効果を奏する。
上記成分(F)としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、及びアクリル酸系カップリング剤などをあげることができる。
上記シランカップリング剤は、加水分解性基(例えば、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;アセトキシ基等のアシルオキシ基;クロロ基等のハロゲン基など)、及び有機官能基(例えば、アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、イソシアネート基など)の少なくとも2種類の異なる反応性基を有するシラン化合物である。
上記シランカップリング剤としては、例えば、ビニル系シランカップリング剤(ビニル基と加水分解性基を有するシラン化合物)、メタクリル系シランカップリング剤(メタクリロキシ基と加水分解性基を有するシラン化合物)、アクリル系シランカップリング剤(アクリロキシ基と加水分解性基を有するシラン化合物)、エポキシ系シランカップリング剤(エポキシ基と加水分解性基を有するシラン化合物)、アミノ系シランカップリング剤(アミノ基と加水分解性基を有するシラン化合物)、及びメルカプト系シランカップリング剤(メルカプト基と加水分解性基を有するシラン化合物)などをあげることができる。
上記ビニル系シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニル−トリス(n−ブトキシ)シラン、ビニル−トリス(n−ペントキシ)シラン、ビニル−トリス(n−ヘキソキシ)シラン、ビニル−トリス(n−ヘプトキシ)シラン、ビニル−トリス(n−オクトキシ)シラン、ビニル−トリス(n−ドデシルオキソ)シラン、ビニル−ビス(n−ブトキシ)メチルシラン、ビニル−ビス(n−ペントキシ)メチルシラン、ビニル−ビス(n−ヘキソキシ)メチルシラン、ビニル−(n−ブトキシ)ジメチルシラン、及びビニル−(n−ペントキシ)ジメチルシランなどをあげることができる。
上記メタクリル系シランカップリング剤としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、及び3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどをあげることができる。
上記アクリル系シランカップリング剤としては、例えば、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどをあげることができる。
上記エポキシ系シランカップリング剤としては、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及び3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどをあげることができる。
上記アミノ系シランカップリング剤としては、例えば、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びN−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどをあげることができる。
上記メルカプト系シランカップリング剤としては、例えば、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、及び3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどをあげることができる。
上記チタネート系カップリング剤としては、例えば、イソプロポキシ基を有するモノアルコキシ型、オキシ酢酸残基又はエチレングリコール残基を有するキレート型、及びテトラアルキルチタネートに亜燐酸酸エステルを付加させたコーディネート型などをあげることができる。
上記モノアルコキシ型のチタネート系カップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、及びイソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネートなどをあげることができる。
上記キレート型のチタネート系カップリング剤としては、例えば、ビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート、及びビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネートなどをあげることができる。
上記コーディネート型のチタネート系カップリング剤としては、例えば、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、及びテトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネートなどをあげることができる。
上記成分(F)としては、これらの1種以上を用いることができる。上記成分(F)としては、これらの中で、耐加熱変形性の観点から、シランカップリング剤が好ましく、耐加熱変形性の観点から、ビニル系シランカップリング剤、及びメタクリル系シランカップリング剤がより好ましい。
上記成分(F)の配合量は、上記成分(A)と上記成分(B)の合計100質量部に対して、上記成分(A)と上記成分(C)との相容化剤としての機能を十分に発揮させる観点、及び耐加熱変形性の観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。一方、成形性の観点から、好ましくは8質量部以下、好ましくは5質量部以下であってよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的に反しない限度において、所望により、熱安定剤、光安定剤、金属補足剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、ブロッキング防止剤、シール性改良剤、離型剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、及びシリコンオイルなど)、ポリエチレンワックスなどの滑剤、着色剤、顔料、無機充填剤(例えば、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ウァラステナイト、及びクレーなど)、発泡剤(有機系及び無機系を含む)、架橋助剤、及び金属水和物以外の難燃剤などを含ませることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物を、導体を直接被覆する材料として使用する場合には、金属捕捉剤を更に含ませることが好ましい。上記金属捕捉剤としては、例えば、ドデカン二酸ビス〔N2−(2−ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド〕、及びN,N’−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジンなどをあげることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、任意の溶融混練機を使用して、上記成分(A)〜(F)、及び所望に応じて用いる任意成分を、同時に又は任意の順に上記溶融混練機に投入し、溶融混練することにより得ることができる。
上記溶融混練は、上記成分(D)が確実に働くようにする観点から、上記成分(D)の1分半減期温度以上の温度で30秒以上行うことが好ましく、上記成分(D)の1分半減期温度以上の温度で1分間以上行うことがより好ましい。
上記溶融混練機としては、加圧ニーダーやミキサーなどのバッチ混練機;一軸押出機、同方向回転二軸押出機、及び異方向回転二軸押出機等の押出混練機;カレンダーロール混練機;などをあげることができる。これらを任意に組み合わせて使用してもよい。
得られた組成物は、任意の方法でペレット化した後、任意の方法で任意の物品に成形することができる。上記ペレット化はホットカット、ストランドカット、及びアンダーウォーターカットなどの方法により行うことができる。
2.電線:
本発明の電線は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を含む電線である。本発明の電線は、好ましくは、自動車の高圧電線やエンジンルーム内の配線などに使用される電線であって、本発明の熱可塑性樹脂組成物が導体を直接被覆する絶縁被覆材料やシース材料として用いられている電線である。
本発明の電線を生産する方法は特に制限されない。上記方法としては、例えば、(1)上記成分(D)の1分半減期温度以上の温度で、30秒以上溶融混練し、本発明の熱可塑性樹脂組成物を得る工程;(2)上記工程(1)で得られた熱可塑性樹脂組成物を使用し、電線を成形する工程;を含む方法をあげることができる。
上記工程(1)の本発明の熱可塑性樹脂組成物を得る方法については、上述した。
上記工程(2)において、本発明の熱可塑性樹脂組成物を使用し、電線を成形する方法は特に制限されない。上記方法としては、例えば、任意の押出機と任意のダイスを備えるケーブル成形装置を使用し、本発明の熱可塑性樹脂組成物を、任意の導体、あるいは数本の絶縁被覆導体を撚り合せたものの周囲に、溶融・押出して被覆する方法をあげることができる。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
測定方法
(1)硬さ:
JIS K 7215−1986に準拠し、試験片として6mm厚プレスシートを用い、デュロメータ硬さ(タイプA)の15秒値を測定した。硬さは、好ましくは95以下、より好ましくは60〜90であってよい。上記6mm厚プレスシートは、予熱温度220℃で2分間予熱した後、温度220℃で2分間加圧する条件では、熱プレスして作成した。
(2)引張試験:
JIS K 7127:1999に準拠し、引張速度200mm/分の条件で測定した。試験片にはφ20mmの押出機、及び1mm厚平型ダイスを備えた装置を使用し、ダイス出口温度210℃の条件で厚さ1mmの押出テープから打抜いた試験片タイプ5(上記規格の図2)を用いた。引張強さは、好ましくは10.3MPa以上、より好ましくは12MPa以上であってよい。引張伸びは、好ましくは150%以上、より好ましくは250%以上であってよい。
(3)耐熱老化性:
上記(2)引張試験と同様にして得た試験片を、190℃ギアオーブン中で一定時間処理した後、上記(2)引張試験と同様にして引張伸びを測定した。結果を横軸に処理時間を、縦軸に引張伸びをとってプロットし、引張伸びが100%となる処理時間を、内挿するようにして求めた。耐熱老化性は、好ましくは180時間以上、より好ましくは200時間以上であってよい。なお試験片は処理時間毎に準備する。
(4)耐銅害劣化性:
1mm厚プレスシートから長さ16cm、幅4cmの長方形のシート2枚を採取し、該シートにより厚さ0.1mm、長さ16cm、幅3cmの裸銅のテープをサンドイッチし、温度220℃、予熱時間2分間、加圧時間2分間の条件で熱プレスし、試験片を作成した。上記1mm厚プレスシートは、予熱温度220℃で2分間予熱した後、温度220℃で2分間加圧する条件では、熱プレスして作成した。上記で得た試験片を175℃のギアオーブン中で一定時間処理した後、三角柱の頂角20°の角に押し当てながら手で折り曲げ、試験片の折り曲げ箇所の外側に亀裂が入るか否かを目視観察する作業を繰り返し、試験片に亀裂が入るようになるまでの時間(日)を求めた。耐銅害劣化性は好ましくは8日以上、より好ましくは20日以上であってよい。なお試験片は処理時間毎に準備する。
(5)耐加熱変形性:
JIS C 3005−2014に準拠し、上記(2)引張試験と同様にして得た押出テープから打抜いた幅15mm、長さ30mmの試験片を用い、温度150℃、1kg荷重の条件で加熱変形率を測定した。加熱変形率は好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下であってよい。
(6)難燃性:
1mm厚プレスシートから、幅6.5mm、長さ150mmの大きさの短冊を打ち抜き、これを鋼線(真鍮製、2mm径)に、直径0.1mmの針金を使用して固定し、試験片とした(図2)。JIS C 3005:2014の4.26難燃、a)水平試験を参考とし、短冊の鋼線のある側とは反対側の面の中央部の位置に接炎するようにして、水平難燃試験を行った。以下基準で評価した。上記1mm厚プレスシートは、予熱温度220℃で2分間予熱した後、温度220℃で2分間加圧する条件で、熱プレスして作成した。
◎:サンプルに着炎しない。
〇:サンプルに着炎後、60秒以内に消炎する。
×:着炎後60秒以上燃焼を続ける。
(7)耐ガソリン性:
1mm厚プレスシートから打抜いた外径22mm、内径8mmのドーナッツ状の試験片を、温度23℃のガソリン中に20時間浸漬後の体積変化率を測定した。耐ガソリン性としての体積変化率は、好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下である。上記1mm厚プレスシートの作成条件は、上記(6)難燃性試験と同様である。
使用した原材料
(a1)エンジニアリングプラスチック系重合体:
(a1−1)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社のポリブチレンテレフタレート「ノバデュラン5010(商品名)」、融点224℃。
(a1−2)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社のイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート「ノバデュラン5605(商品名)」、融点208℃。
(a1−3)ユニチカ株式会社のポリエチレンテレフタレート「SA−1346P(商品名)」、融点230℃。
(a1−4)宇部興産株式会社の6−ナイロン「UBEナイロン1013B(商品名)」、融点225℃。
(a1−5)三井化学株式会社のポリメチルペンテン「TPX MX002(商品名)」、融点224℃。
(a1‘)参考重合体:
(a’−1)サンアロマー株式会社の結晶性プロピレン系ランダム共重合体「PB222A(商品名)」、融点146℃、メルトマスフローレート(230℃、21.18N)0.8g/10分。
(a2)エチレン系重合体:
(a2−1−1)ダウ・ケミカル社のメタロセン系触媒を用いて重合されたエチレン・1−オクテン共重合体「エンゲージ8440(商品名)」、密度897Kg/m、メルトマスフローレート(190℃、21.18N)1.6g/10分、エチレンに由来する構成単位の含有量 77質量%。
(a2−2−1)宇部丸善ポリエチレン株式会社のエチレン・酢酸ビニル共重合体「VF120T(商品名)」、密度940Kg/m、メルトマスフローレート(190℃、21.18N)1.0g/10分、エチレンに由来する構成単位の含有量 80質量%。
(a3)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物:
(a3−1)株式会社クラレのスチレン・エチレン・エチレン・プロピレン・スチレン共重合体(SEEPS)「セプトン4077(商品名)」、スチレンに由来する構成単位の含有量30質量%。
(a3−2)旭化成ケミカルズ株式会社のスチレン・エチレン・ブテン・スチレン共重合体(SEBS)「タフテック N504(商品名)」、スチレンに由来する構成単位の含有量30質量%。
(a4)不飽和カルボン酸変性オレフィン系重合体等:
(a4−1)三井化学株式会社の無水マレイン酸変性エチレン・α−オレフィン共重合体「アドマーXE070(商品名)」、密度893Kg/m、メルトマスフローレート 3.0g/10分(190℃、21.18N)。
(a4−2)旭化成ケミカルズ株式会社の無水マレイン酸変性スチレン・エチレン・ブテン・スチレン共重合体「タフテックM1913(商品名)」。
(d−3−1)住友化学株式会社のエチレン・メタクリル酸グリシジル共重合体「ボンドファーストBF−E(商品名)、メルトマスフローレート 3.0g/10分(190℃、21.18N)。
(B)非芳香族系ゴム用軟化剤:
(B−1)出光興産株式会社のパラフィンオイル「ダイアナプロセスオイルPW−90(商品名)」、パラフィン成分71質量%、ナフテン成分29質量%。
(C)金属水和物:
(C−1)アルベマール日本株式会社の表面無処理合成水酸化マグネシウム「マグニフィンH−7(商品名)」。
(D)有機過酸化物:
(D−1)日本油脂株式会社の2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン「パーヘキサ25B(商品名)」、1分半減期温度179℃。
(E)酸化防止剤:
(E−1−1)BASF社のヒンダードフェノール系酸化防止剤、ペンタエリスリチル−テトラキス3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート「IRGANOX1010(商品名)」。
(E−2−1)シプロ化成株式会社のチオエーテル系酸化防止剤、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)「SEENOX412S(商品名)」。
(F)カップリング剤:
(F−1)ダウコーニング社のシランカップリング剤、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン「OFS−6030(商品名)」。
(G)金属捕捉剤:
(G−1)株式会社ADEKAのドデカン二酸ビス〔N2−(2−ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド〕「アデカスタブ CDA−6(商品名)」。
(G−2)株式会社ADEKAのN,N’−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン「アデカスタブCDA−10(商品名)」。
例1〜43
表1〜6の何れか1に示す配合(質量部)の樹脂組成物を、二軸押出機を使用し、ダイ出口樹脂温度230℃の条件で溶融混練し、熱可塑性樹脂組成物を製造した。上記試験(1)〜(7)を行った。結果を表1〜6の何れか1に示す。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、難燃性及び柔軟性に優れ、引張強さ、引張伸び、耐熱老化性、耐加熱変形性、及び耐ガソリン性が良好である。また耐銅害劣化性にも優れている。そのため電線、特に車両用耐熱電線の被覆材料として好適に用いることができる。また本発明の熱可塑性樹脂組成物を被覆材料として用いて成形した電線は、後架橋処理(例えば、硫黄加硫、水架橋、有機過酸化物架橋、及び電子線架橋など)を行わなくても、耐熱電線として用いることができると期待できる。
本発明の車両用耐熱電線の一例を示す断面形状の概念図である。 難燃性試験の試験片である。
1:本発明の熱可塑性樹脂組成物からなる絶縁被覆
2:7本撚り導体

Claims (7)

  1. (A)熱可塑性樹脂 70〜95質量%、及び(B)非芳香族系ゴム用軟化剤 30〜5質量%からなる組成物 100質量部;
    (C)金属水和物 30〜150質量部;
    (D)有機過酸化物 0.01〜1.0質量部;及び、
    (E)酸化防止剤 1〜15質量部;
    を含み、
    ここで上記成分(A)と上記成分(B)の合計は100質量%であり;
    上記成分(A)は、
    (a1)エンジニアリングプラスチック系重合体 5質量%以上、50質量%未満;
    (a2)エチレン系重合体 10質量%以上、60質量%未満;
    (a3)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体、芳香族ビニル化合物とイソブチレンとのブロック共重合体、及び芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体の水素添加物からなる群から選択される1種以上 5質量%以上、50質量%未満;及び、
    (a4)不飽和カルボン酸変性オレフィン系重合体、不飽和カルボン酸変性芳香族ビニル化合物系エラストマー、及びエポキシ基含有オレフィン系重合体からなる群から選択される1種以上 1質量%以上、30質量%未満;
    からなり、
    ここで上記成分(a1)、上記成分(a2)、上記成分(a3)、及び上記成分(a4)の合計は100質量%である;
    熱可塑性樹脂組成物。
  2. 上記成分(a2)が
    (a2−1)密度860〜935Kg/m のエチレンと炭素数4〜10のα−オレフィンとの共重合体、及び
    (a2−2)極性エチレン系共重合体
    からなる群から選択される1種以上を含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 上記成分(a1)が、ポリブチレンテレフタレート系重合体である請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  4. 上記成分(E)が
    (E−1)ヒンダードフェノール系酸化防止剤;及び
    (E−2)チオエーテル系酸化防止剤;
    を含む請求項1〜3の何れか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 更に、(F)カップリング剤を含む請求項1〜4の何れか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5の何れか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含む電線。
  7. 車両用である請求項6に記載の電線。

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