JP2017190438A - シーラントフィルム、多層フィルム及び包装体 - Google Patents

シーラントフィルム、多層フィルム及び包装体 Download PDF

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隆之 和田
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良平 西田
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Abstract

【課題】幅広い温度範囲での防曇性、透明性、ヒートシール性に優れたシーラントフィルム、多層フィルム及び包装体を提供する。【解決手段】示差走査熱量測定における昇温速度10℃/分で測定される融点が60〜130℃のエチレン系重合体を主成分とし、さらに、融点が40℃以下のモノグリセリン脂肪酸エステル(A)0.1〜5.0質量%、融点が40℃以下のジグリセリン脂肪酸エステル(B)0.1〜5.0質量%、および親油性親水性バランス(HLB)が10以上のエチレンオキサイド付加物(C)0.1〜5.0質量%含有し、かつ(A)と(B)の合計量が1〜10質量%であることを特徴とするシーラントフィルム。【選択図】なし

Description

本発明は、シーラントフィルムに関する。詳しくは、幅広い温度範囲において防曇性に優れ、透明性やヒートシール性に優れたシーラントフィルム、多層フィルム及び包装体に関する。
食品の包装、特に精肉、鮮魚、青果等の生鮮食品やボイル、レトルト食品の包装には、透明性に優れたフィルムが広く使用されている。市場の拡大や消費者のニーズの多様化に伴い、食品包装用フィルム、容器として保存時に内容物の視認が可能な透明性、酸素や水蒸気バリア性、耐衝撃性、耐熱性など様々な特性が要求される。中でも水分を含んだ内容物を包装し、電子レンジやボイル、レトルトなどにより加熱した場合の包装フィルム内面への水滴の付着や、冷蔵保存した場合の容器内面での結露に対する防曇性の要求レベルは非常に高いものとなっている。
フィルムにて食品を包装し、その包装フィルムをヒートシールなどにより密封した後、例えばボイル、レトルト処理し、内容物である商品を長期保存する。これらの包装フィルムには食品の品質管理の観点から、主にガスバリア性に優れたポリアミド樹脂、防湿性に優れたポリオレフィン樹脂、保香性に優れたポリエステル樹脂などが基材として使用され、包装フィルムの内層にはヒートシール可能なシーラントフィルム層が設けられる。シーラントフィルム層には、包装体を形成した際の高い密封性が求められる一方で、包装は最終的には需要者によって開封されることから、易開封性(イージーピール性)も共に備えていることが求められる。また、特に食品包装分野においては、内容物を容易に視認出来るよう、フィルムには高い透明性が求められる。また前述のとおり、昨今、食品パッケージには、常温や低温での内容物視認性に加えて、高温環境下での内容物視認性への要求も高まっている。
フィルムに防曇性を付与する技術の研究は、従来から盛んに行われてきた。例えば特許文献1には、(1)炭素数組成が16〜18のジグリセリン脂肪酸エステル、(2)炭素数組成が12〜18のソルビタン脂肪酸モノ(ジ)エステル、および/また(3)エチレン、もしくはプロピレンオキサイドを付加させたポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステルをポリオレフィンに対し所定量添加した、防曇性の持続性と帯電防止性に優れたポリオレフィン樹脂が開示されている。
また特許文献2には、特に低温防曇性に優れた組成物として、ポリオレフィン系樹脂に対し、グリセリン脂肪酸エステルとソルビタン脂肪酸エステルからなる群より選ばれる防曇剤と、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとを所定量含んだ食品包装用ポリオレフィン系樹脂組成物が開示されている。また特許文献3には、防曇性に優れた組成物として、炭化水素樹脂と炭素数が8〜22のジグリセリン脂肪酸エステルからなる界面活性剤、およびエチレンオキサイドから誘導される界面活性剤を所定量含有した樹脂組成物が開示されている。
このように、常温や低温下での防曇性や、その持続性などについては、従来から様々な検討がなされているが、さらに高温での環境下、特に、蒸気が発生するような温度領域での防曇性をも得られることが可能な技術は検討されていない。
特開平11−302462号公報 特開2002−020553号公報 特開2002−294083号公報
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、幅広い温度範囲において防曇性に優れ、透明性やヒートシール性に優れたシーラントフィルムを提供することにある。
本発明者らは鋭意検討した結果、エチレン系重合体に所定のモノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、エチレンオキサイド付加物を含有することで、広範囲の温度領域における防曇性を備え、かつ、ヒートシール性や透明性のバランスに優れたフィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の課題は、示差走査熱量測定における昇温速度10℃/分で測定される融点が60〜130℃のエチレン系重合体を主成分とし、(A)融点が40℃以下のモノグリセリン脂肪酸エステル0.1〜5質量%、(B)融点が40℃以下のジグリセリン脂肪酸エステル0.1〜5質量%、および、(C)親油性親水性バランス(HLB)が10以上のエチレンオキサイド付加物0.1〜5質量%を含有し、かつ(A)と(B)の合計量が1〜10質量%であることを特徴とするシーラントフィルムによって解決される。
本発明によれば、常温は無論、冷蔵庫などにおける低温保管時や、さらには、ボイルやレトルト処理をした際の高温環境下においても防曇性に優れ、透明性やヒートシール性、イージーピール性にも優れたシーラントフィルムを得ることができ、包装用フィルムのシーラント層として好適に用いることができる。
以下、本発明の実施形態の一例としての本発明のシーラントフィルム(以下「本フィルム」と称する)について説明する。ただし、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
<エチレン系重合体>
本フィルムに使用するエチレン系重合体は、具体的には、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−1−デセン共重合体などのエチレンと炭素原子数3〜18のα−オレフィンとの共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−共役ジエン(例えばブタジエンやイソプレン)共重合体、エチレン−非共役ジエン共重合体等を挙げることができる。中でも好ましくは、低密度ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体などが好適に用いられる。これらを主成分として用いることにより、防曇剤との相溶性に優れ、フィルムのヒートシール性や透明性が優れたものとなる。なお、エチレン系重合体は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
本フィルムに使用するエチレン系重合体は、示差走査熱量測定における昇温速度10℃/分で測定される融点が60〜130℃の範囲であることが重要である。融点の下限値は70℃以上であることが好ましく、80℃以上がより好ましい。上限値としては125℃以下であることが好ましく、120℃以下がより好ましい。融点が上記範囲内であれば、本フィルムは耐熱性を有し、かつヒートシール性にも優れる。
なお融点は、示差走査熱量計を用いて、JIS K7121に準じて、昇温速度10℃/分で測定したときの結晶融解ピーク温度である。
本発明に用いるエチレン系重合体の密度は、好ましくは0.900〜0.950g/cmである。この範囲であればドローダウン性、ドローレゾナンス、延伸性等の加工性を安定的に保持することができる。
本発明に用いるエチレン系重合体のMFRは、好ましくは0.5〜20g/10分、より好ましくは1.5〜10g/10分である。この範囲であれば成形加工性が良好であり、フィルム、シートなどの作製が容易である。
なお、本フィルムは、主成分であるエチレン系重合体以外に、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに別の樹脂を適宜配合してもよい。別の樹脂の具体例としては、プロピレン単独重合体やプロピレン・α−オレフィン共重合体などのプロピレン系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられる。
<(A)モノグリセリン脂肪酸エステル>
本フィルムに用いるモノグリセリン脂肪酸エステルは、融点が40℃以下のものであることが重要である。さらには、常温において液体状態であることが望ましい。
上記モノグリセリン脂肪酸エステルであれば、高温の蒸気がフィルムに触れた際に防曇剤がフィルム表面に素早く移行することができ、初期防曇性を発現することができる。またフィルムを室温環境下で長期間保管しておいたとしても防曇剤固体成分の析出がなく、長期的な防曇性維持が期待できる。またフィルムの透明性、ヒートシール性も優れたものとなる。
なお融点は、示差走査熱量計を用いて、JIS K7121に準じて、昇温速度10℃/分で測定したときの結晶融解ピーク温度である。
モノグリセリン脂肪酸エステルとは、モノグリセリンと脂肪酸のエステル化反応により得られるものである。
モノグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、トリコシル酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸などの飽和脂肪酸、α-リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リノール酸、γ-リノレン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸、ドコサペンタエン酸、パルミトレイン酸、バクセン酸、パウリン酸、オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、ネルボン酸、サピエン酸などの不飽和脂肪酸などが挙げられる。これらの中では、炭素原子数が12〜20の飽和もしくは不飽和脂肪酸が好ましく用いられる。なおこれら脂肪酸は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
上記モノグリセリン脂肪酸エステルの市販品の具体例としては、例えば理研ビタミン株式会社製のリケマールOL−100E(モノグリセリンオレート)やポエムOL−200V(モノグリセリンモノジオレート)、花王株式会社製のレオドールMO−60(モノグリセリンモノオレート)などが挙げられる。
<(B)ジグリセリン脂肪酸エステル>
本フィルムに用いるジグリセリン脂肪酸エステルは、融点が40℃以下のものであることが重要である。さらには、常温において液体状態であることが望ましい。
上記ジグリセリン脂肪酸エステルであれば、本フィルムにて水分を含んだ内容物を密封し、0〜10℃の冷蔵環境で保存した際に、防曇剤がフィルム表面に素早く移行するため、防曇性を発現することができる。またフィルムを室温環境下で長期間保管しておいたとしても防曇剤固体成分の析出がなく、長期的な防曇性維持が期待できる。さらに、後述するHLBが10以上のエチレンオキサイド付加物と併用することで、表面の濡れ性がさらに向上し、防曇性が良好となる。
なお融点は、示差走査熱量計を用いて、JIS K7121に準じて、昇温速度10℃/分で測定したときの結晶融解ピーク温度である。
ジグリセリン脂肪酸エステルとは、ジグリセリンと脂肪酸のエステル化反応により得られるものである。ジグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の具体例は、上記モノグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の例として列挙されたものと同様であり、中でも炭素原子数が12〜20の飽和もしくは不飽和脂肪酸が好ましく用いられる。なおこれら脂肪酸は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
上記ジグリセリン脂肪酸エステルの市販品の具体例としては、理研ビタミン株式会社製のリケマールO−71D(ジグリセリンオレート)やリケマールL−71D(ジグリセリンラウレート)、阪本薬品工業株式会社製のMCA−150(ジグリセリンカプリレート)などが挙げられる。
<(C)エチレンオキサイド付加物>
本フィルムに用いるエチレンオキサイド付加物は、親油性親水性バランス(HLB:Hydrophile−Lipophile Balance)が10以上のエチレンオキサイド付加物であることが重要である。HLBは好ましくは11以上、より好ましくは12以上である。HLBが上記範囲であれば、親水性は十分となり、フィルム表面における水との表面張力を下げることができる。表面張力が下がると、フィルム表面の水滴が膜状になり、防曇性を向上させることが可能となる。またさらに、上記範囲のHLBのエチレンオキサイド付加物と、(A)モノグリセリン脂肪酸エステルや(B)ジグリセリン脂肪酸エステルとして、HLBが10以下のものを使用すると、エチレンオキサイド付加物のオレフィン共重合体樹脂への親和性が高くなるため、フィルム表面への防曇剤の移行が容易となり、相乗効果で防曇性はより優れたものとなる。
エチレンオキサイド付加物とは、アルコールや脂肪酸やそれらのエステル類、油脂などにエチレンオキサイドを付加させた化合物であり、一般に、非イオン系界面活性剤として知られている。エチレンオキサイドの重合部分の鎖長を調整することにより、所望のHLBに調整される。エチレンオキサイド付加物の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルなどが挙げられる。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、およびポリオキシエチレン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の具体例は、上記モノグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の例として列挙されたものと同様であり、中でも炭素原子数が12〜20の飽和もしくは不飽和脂肪酸が好ましく用いられる。なおこれら脂肪酸は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
上記エチレンオキサイド付加物の市販品の具体例としては、理研ビタミン株式会社製のリケマールO−852(ポリオキシエチレンソルビタントリオレート)や、リケマールB−205(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)、花王株式会社製のレオドールTWシリーズ(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル)やエマノーンシリーズ(ポリオキシエチレン脂肪酸エステル)などが挙げられる。
<(A)、(B)、(C)の含有量>
本フィルムにおける各成分の含有量は、(A)モノグリセリン脂肪酸エステルを0.1〜5質量%、(B)ジグリセリン脂肪酸エステルを0.1〜5質量%、(C)エチレンオキサイド付加物を0.1〜5質量%含有し、かつ(A)と(B)の合計量は1〜10質量%であることが重要である。
(A)の含有量は、下限値としては0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上がより好ましい。上限値としては4質量%以下であることが好ましく、3質量%以下がより好ましい。
(B)の含有量は、下限値としては0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上がより好ましい。上限値としては4質量%以下であることが好ましく、3質量%以下がより好ましい。
(C)の含有量は、下限値としては0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上がより好ましい。上限値としては4質量%以下であることが好ましく、3質量%以下がより好ましい。
本フィルム中におけるこれらの含有量を上記範囲とすることにより、常温・低温・高温での防曇性を備えたフィルムを得ることができ、また、ヒートシール性や透明性にも優れたものとなる。
また、(A)と(B)の合計量は、下限値としては1.5質量%以上であることが好ましく、2質量%以上がより好ましい。上限値としては8質量%以下であることが好ましく、6質量%以下であることがより好ましい。(A)と(B)の合計量の下限が上記範囲内であれば、十分な防曇性を得ることができる。また上限が上記範囲内であれば、フィルムの製膜が困難になることもなく、また、過剰なブリードアウトによる透明性やフィルム外観の悪化、ヒートシール性の低下なども起こらず好ましい。
<その他の成分>
本フィルムには、その特性を阻害しない範囲であれば、その他の添加剤を含有することができる。添加剤としては例えば着色剤、無機充填剤、有機充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、滑剤、加水分解防止剤、帯電防止剤、可塑剤、難燃剤などを挙げることができる。これらの添加剤の添加量は特に限定されるものではなく、本発明の所望とする物性を阻害することのない範囲において適宜決定することができる。
<本フィルムの製造方法>
本フィルムは、単層フィルムとして製造し、単層で用いることもできるが、シーラントフィルムは、多層フィルムのシーラント層として用いられるのが一般的でもあるため、シーラント層を備えた多層フィルムとして製造してもよい。
単層フィルムを製造する方法は、特に限定されるものではないが、具体的には、Tダイ法、インフレーション法などが挙げられる。また多層フィルムを製造する方法としては、例えばTダイを使用した押出キャスト法や、インフレーション法などで、フィードブロック方式やマルチマニホールドダイ、それらの組み合わせによる共押出によって多層フィルムとしてもよいし、各層をそれぞれ単層フィルムとして製造した後に、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、サンドラミネート法、熱ラミネート法などにより貼り合せて多層フィルムとしてもよく、また本フィルムの材料を押出ラミネート法によりその他のフィルムにラミネートすることで多層フィルムとしてもよい。ラミネートの際には必要に応じてアンカーコート剤や、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤などの各種接着剤を用いることができる。また必要に応じてさらに、ロール方式による縦延伸や、テンター方式による逐次二軸延伸、もしくは同時二軸延伸などの延伸処理を行うこともできる。
多層フィルムとする場合、層構成は、本フィルムからなるシーラント層を少なくとも一方の最外層に有していれば特に限定されるものではないが、製造・搬送時のハンドリング性や、食品包装用途における酸素・水蒸気バリア性、耐衝撃性、耐ピンホール性など様々な要求特性を鑑みて、ポリオレフィン系樹脂層、ポリエステル系樹脂層、ポリアミド系樹脂層などの各種樹脂層や、接着層、蒸着層、印刷層、帯電防止層などを有する多層フィルムとすることができる。中でも特には、ポリエステル系樹脂層、ポリアミド系樹脂層との多層フィルムとすることが好ましい。
またさらに、本フィルムや、本フィルムからなるシーラント層を有する多層フィルムには、必要に応じて、公知の塗布法、蒸着法や印刷法によって、各種樹脂層の表面に、接着層や帯電防止層、蒸着層、印刷層などを設けてもよい。
<本フィルムの厚み>
本フィルムの厚みは、好ましくは10〜100μmであり、さらに好ましくは15〜50μmである。本フィルムの厚みが10μm以上であればシーラントとしての強度は十分である。また100μm以下であれば、ヒートシール強度の低下が起こらず好ましい。
<防曇性(低温)>
本フィルムは、底面の直径が50mm、深さ80mmのポリプロピレン製の円筒形容器に蒸留水(20〜25℃)を10mL入れ、本フィルムが該容器と接し、該容器の開口部を本フィルムで密閉して包装し、2〜10℃の冷蔵庫に24時間静置して保管した場合であっても、水分がフィルム表面に凝結せずに内容物を鮮明に確認できる。また仮に水分がフィルム表面に凝結しても、水膜がレンズ状にならず均一で内容物を鮮明に確認することができる。すなわち、本フィルムは低温防曇性に優れたフィルムである。
<防曇性(高温)>
本フィルムは、底面の直径が50mm、深さ80mmのポリプロピレン製の円筒形容器に熱湯(90〜95℃)を100mL入れた直後に、該容器の開口部を本フィルムで密閉して包装し、10秒間静置した場合であっても、水蒸気がフィルム表面に凝結せずに内容物を鮮明に確認できる。また仮に水分がフィルム表面に凝結しても、レンズ状にならず均一な水膜を形成するため、内容物を鮮明に確認することができる。すなわち本フィルムは高温蒸気に対する初期防曇性にも優れたフィルムである。
<透明性>
本フィルムの透明性は、意匠性、内容物の視認性等の観点から、JIS K7136に基づき測定される厚み20μmの本フィルムの全光線透過率の値が88%以上であることが好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。なお、全光線透過率の上限値は特に限定されず、可能な限り高い方が好ましい。また同様に測定される全ヘーズ値が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。なお、全ヘーズ値の下限は特に限定されず、可能な限り小さい方が好ましい。全光線透過率、および全ヘーズの値が係る範囲であれば、本フィルムは透明性に優れ、食品包装フィルムとして用いた際に内容物を視認することができる。
<濡れ性>
本フィルムの濡れ性は、23℃の蒸留水を本フィルム上に滴下し、20秒後の接触角の値が30°以下であることが好ましく、20°以下であることがさらに好ましい。なお、接触角の値の下限は特に限定されず、可能な限り小さい方が好ましい。本フィルム上に滴下した蒸留水との接触角の値が30°以下であれば本フィルムは表面の濡れ性に優れたフィルムであるといえる。
<ヒートシール性>
本フィルムは優れたヒートシール性を発現する。例えば、本フィルムからなる層を重ねて、室温(23℃)下において貼合温度150℃でヒートシールした場合に良好なシール性を有する。この場合、剥離速度200mm/分で測定した180度剥離試験における最大応力としてのヒートシール強度が、3N/15mm以上であることが好ましく、5N/15mm以上であることがさらに好ましい。
<本フィルムの用途>
本フィルムは、常温・低温・高温での幅広い温度範囲での防曇性に優れ、透明性やヒートシール性にも優れるため、各種包装用フィルム、特には、食品包装用フィルムのシーラントとして好適に用いることができる。
以下、実施例および比較例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例によって制限を受けるものではない。
<評価方法>
実施例・比較例で得られたサンプルについて、以下の方法で測定・評価を行い、結果を表1に示した。
(1)透明性
JIS K7136に準拠して、厚み20μmにおける本フィルムの全光線透過率と、全ヘーズの値を測定した。全光線透過率が88%以上、かつ全ヘーズの値が10%以下であるものを合格とした。
(2)濡れ性
23℃の雰囲気下において、本フィルムと蒸留水との接触角の値を測定した。フィルムと蒸留水との接触角の値が30°以下であるものを合格とした。
(3)防曇性(低温)
縦50mm、横50mm、深さ、80mmのPP製容器に水(23℃)を10mL入れ、その後、サンプルを用いて該容器の開口部を密閉するようにフィルム包装し、3℃に設定した恒温槽内にて24時間保管し、保管後のフィルム表面の曇り度合いを次の基準で評価した。
◎:内容物が鮮明に確認できる。
○:水分がフィルム表面に凝結せず、内容物が確認できる。
△:水分がフィルム表面に凝結して、内容物が確認しづらい。
×:水分がフィルム表面に微細な水滴となり、内容物が確認できない。
(4)防曇性(高温)
縦50mm、横50mm、深さ80mmのPP製容器に熱湯(90〜95℃)を深さ100mL入れ、その後、サンプルを用いて該容器の開口部を密閉するようにフィルム包装し、10秒後の曇り度合いを次の基準で評価した。
◎:内容物が鮮明に確認できる。
○:水分がフィルム表面に凝結せず、内容物が確認できる。
△:水分がフィルム表面に凝結して、内容物が確認しづらい。
×:水分がフィルム表面に微細な水滴となり、内容物が確認できない。
(5)ヒートシール性
本フィルム同士をそれぞれ長さ100mm、幅15mmの短冊状に切り出して重ね、その短辺の一端を室温(23℃)下においてヒートシール機を用いて設定温度150℃、2kg/cm2で2秒間ヒートシールし、試験片を得た。この試験片について、ヒートシール部を中央にして、両端を引張試験機の両掴み具に取り付け、剥離角度180度、剥離速度200mm/分にて破断するまで引張応力を加え、その最大応力をヒートシール強度とし、ヒートシール強度が3N/15mm以上であるものを合格とした。
<使用した材料>
(エチレン系重合体)
PO−1:低密度エチレン(LDPE)、宇部丸善ポリエチレン製、UBE ポリエチレンR500(融点:110.4℃)
PO−2:エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、三井・デュポンポリケミカル製、エバフレックスEV260(VA含量:28wt%、融点:72.0℃)
PO−3:エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体(EMMA)、ヤスハラケミカル製、ヒロダインEXP7509(MMA含量:7wt%、融点:95.4℃)
(A)モノグリセリン脂肪酸エステル
MG−1:モノグリセリンモノジオレート:理研ビタミン株式社製、ポエムOL−200V(融点:24℃、HLB:3.1)
MG−2:モノグリセリンモノステアレート:理研ビタミン株式社製、リケマールS−100(融点:67℃、HLB:4.3)
(B)ジグリセリン脂肪酸エステル
DG−1:ジグリセリンオレート:理研ビタミン株式会社製、リケマールO−71D(液体、HLB:5.7)
DG−2:ジグリセリンラウレート:理研ビタミン株式会社製、リケマールL−71D(融点:34℃、HLB:7.3)
DG−3:ジグリセリンステアレート:理研ビタミン株式会社製、リケマールS−71D(融点:61℃、HLB:5.7)
(C)エチレンオキサイド付加物
EO−1:ポリオキシエチレンソルビタントリオレート:理研ビタミン株式会社製、リケマールO−852(液体、HLB:11.0)
EO−2:ポリオキシエチレンアルキルエーテル:理研ビタミン株式会社製、リケマールB−205(液体、HLB:12.0)
(実施例1)
PO−1、MG−1、DG−1及びEO−1を混合質量比96:1:2:1の割合で秤量し、これらを東洋精機製作所製ラボプラストミルで試験温度200℃、回転数80rpm、の条件下で5分間混練後、ロール温度が200℃となるように設定したラミネータ装置を用いて、金属ロールとゴムロールにてプレスをしながら、PETフィルム間に厚み20μmのフィルムを得た。その後、PETフィルムを剥離し、各評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例2)
PO−1、MG−1、DG−1及びEO−1を混合質量比94:1:4:1の割合で秤量した以外は実施例1と同様の方法でフィルムの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
PO−1、MG−1、DG−1及びEO−1を混合質量比96:2:1:1の割合で秤量した以外は実施例1と同様の方法でフィルムの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例4)
PO−1、MG−1、DG−2及びEO−1を混合質量比96:1:2:1の割合で秤量した以外は実施例1と同様の方法でフィルムの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例5)
PO−1、MG−1、DG−1及びEO−2を混合質量比96:1:2:1の割合で秤量した以外は実施例1と同様の方法でフィルムの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例6)
PO−2、MG−1、DG−1及びEO−2を混合質量比96:1:2:1の割合で秤量した以外は実施例1と同様の方法でフィルムの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例7)
PO−3、MG−1、DG−1及びEO−2を混合質量比96:1:2:1の割合で秤量した以外は実施例1と同様の方法でフィルムの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
PO−1、MG−1、DG−1を混合質量比95:1:4の割合で秤量した以外は実施例1と同様の方法でフィルムの作製、及び評価を行った。結果を表2に示す。
(比較例2)
PO−1、DG−1、DG−3、EO−1を混合質量比94:4:1:1の割合で秤量した以外は実施例1と同様の方法でフィルムの作製、及び評価を行った。結果を表2に示す。
(比較例3)
PO−1、MG−1、DG−3、EO−1を混合質量比94:4:1:1の割合で秤量した以外は実施例1と同様の方法でフィルムの作製、及び評価を行った。結果を表2に示す。
(比較例4)
PO−1、MG−2、DG−3、EO−1を混合質量比94:4:1:1の割合で秤量した以外は実施例1と同様の方法でフィルムの作製、及び評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 2017190438
Figure 2017190438
表1より実施例に記載のフィルムは、フィルム表面の濡れ性、防曇性、透明性、ヒートシール性全てに優れるものであった。一方、比較例に記載のフィルムは、表面の濡れ性、防曇性、ヒートシール性の少なくとも1項目について満足できなかった。このことから、本フィルムは、幅広い温度範囲の防曇性を有し、かつ透明性やヒートシール性に優れたフィルムであることが分かる。
本フィルムは、常温・低温・高温での幅広い温度範囲での防曇性に優れ、透明性、ヒートシール性にも優れているため、例えば、食品包装用フィルムのシーラントとして好適に用いることができる。

Claims (6)

  1. 示差走査熱量測定における昇温速度10℃/分で測定される融点が60〜130℃のエチレン系重合体を主成分とし、さらに、(A)融点が40℃以下のモノグリセリン脂肪酸エステル0.1〜5質量%、(B)融点が40℃以下のジグリセリン脂肪酸エステル0.1〜5質量%、および、(C)親油性親水性バランス(HLB)が10以上のエチレンオキサイド付加物0.1〜5質量%を含有し、かつ(A)と(B)の合計量が1〜10質量%であることを特徴とするシーラントフィルム。
  2. 前記エチレン系重合体が、低密度ポリエチレン、エチレン・αオレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の中から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項1に記載のシーラントフィルム。
  3. 前記(A)が、モノグリセリンと炭素原子数が12〜20の飽和、もしくは不飽和脂肪酸のモノエステル、またはジエステルからなることを特徴とする請求項1または2に記載のシーラントフィルム。
  4. 前記(B)が、ジグリセリンと炭素原子数が12〜20の飽和、もしくは不飽和脂肪酸のモノエステル、またはジエステルからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシーラントフィルム。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のシーラント層を少なくとも一方の最外層に有することを特徴とする多層フィルム。
  6. 請求項5に記載の多層フィルムを用いた包装体。
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