[全体構成]
図1には、本発明の一実施形態によるダンパディスク組立体を有するクラッチディスク組立体1が、示されている。
図1は、クラッチディスク組立体1の断面図であり、図2はその正面図である。クラッチディスク組立体1は、車輌のクラッチ装置に用いられる。クラッチディスク組立体1は、クラッチ機能と、ダンパ機能とを、有している。
図1においてO−Oがクラッチディスク組立体1の回転軸すなわち回転中心線である。また、以下では、回転軸Oから離れる方向を径方向と記し、回転軸に沿う方向を軸方向と記す。さらに、以下では、回転軸Oをまわりの方向を周方向又は回転方向と記す。
図1の左側にエンジン及びフライホイール(図示せず)が配置され、図1の右側にトランスミッション(図示せず)が配置されている。図2のR1側がクラッチディスク組立体1の回転方向駆動側(正側)であり、R2側がその反対側(負側)である。
クラッチディスク組立体1は、エンジンから入力されるトルク変動を減衰してトランスミッション側に伝達する。クラッチディスク組立体1は、主に、高剛性ダンパユニット2と、低剛性ダンパユニット3と、ハブ4と、ヒステリシストルク発生機構5とを、備えている。
<高剛性ダンパユニット>
高剛性ダンパユニット2には、エンジンからのトルクが入力される。高剛性ダンパユニット2は、捩り特性の高捩り角度領域H(図6を参照)において実質的に作動する。
図1に示すように、高剛性ダンパユニット2は、第1入力側部材10と、第1フランジ11(第1出力側部材の一例)と、複数(例えば4個)の高剛性スプリングユニット12(第3弾性部材の一例)とを、有する。
−第1入力側部材−
第1入力側部材10には、エンジンからトルクが入力される。詳細には、第1入力側部材10は、フライホイール(図示せず)からのトルクが入力される部分である。図1及び図2に示すように、第1入力側部材10は、例えば,クラッチプレート13と、リティーニングプレート14と、クラッチディスク15とを、有している。
クラッチプレート13及びリティーニングプレート14は、実質的に環状の円板部材である。クラッチプレート13及びリティーニングプレート14は、軸方向に所定の間隔を空けて配置されている。クラッチプレート13はエンジン側に配置され、リティーニングプレート14はトランスミッション側に配置されている。クラッチプレート13及びリティーニングプレート14は、固定部材例えばピン部材16によって、互いに一体回転可能に連結される。
クラッチプレート13及びリティーニングプレート14の外周部には、それぞれ回転方向に等間隔で4つの窓孔13a,14aが形成されている。各窓孔13a,14aには、高剛性スプリングユニット12が配置される。各窓孔13a,14aにおいて周方向に対向する壁部には、高剛性スプリングユニット12の両端部が当接している。各窓孔13a,14aには、内周側と外周側にそれぞれ切り起こし部が形成されている。
リティーニングプレート14は、複数(例えば4個)の支持孔14bを、有している。複数の支持孔14bは、ヒステリシストルク発生機構5を支持するためのものである。各支持孔14bには、後述するヒステリシストルク発生機構5における第1ブッシュ40の突出部45が、挿通される。
クラッチディスク15は、図示しないフライホイールに押し付けられる部分である。クラッチディスク15は、クッショニングプレート15aと、クッショニングプレート15aの両面に固定された摩擦フェーシング15bとから、構成されている。クラッチディスク15は、周知の構成と同様であるので、クラッチディスク15についての詳細な説明は省略する。
−第1フランジ−
第1フランジ11は、第1入力側部材10と相対回転可能に構成される。第1フランジ11は、ハブ4の外周部に配置される。第1フランジ11は、ハブ4から径方向外側に外方に延び、且つ周方向に実質的に円環状に形成される。第1フランジ11は、ハブ4とは別体で形成されている。第1フランジ11は、所定の捩り角度範囲例えば低捩り角度領域L(図6を参照)において、ハブ4と相対回転可能である。また、第1フランジ11は、所定の捩り角度の範囲外例えば高捩り角度領域Hにおいて、ハブ4と一体回転可能である。
ここでは、捩り角度は、例えば、ハブ4に対する第1フランジ11の捩り角度(相対回転角度)によって定義されている。なお、後述するように、第2入力側部材(第1ホルダプレート及び第2ホルダプレート)は、第1フランジ11と一体回転可能に構成されているので、捩り角度は、例えば、ハブ4に対する第2入力側部材(第1ホルダプレート及び第2ホルダプレート)の捩り角度(相対回転角度)によって、定義されているとも言える。
具体的には、第1フランジ11は、クラッチプレート13及びリティーニングプレート14の軸方向間に配置される。第1フランジ11は、第1孔部17と、複数(例えば4個)の第1スプリング収容部18と、複数(例えば2個)の第1凹部19と、ストッパ用突起20とを、有する。
第1孔部17は、第1フランジ11の中心部に形成されている。第1孔部17には、ハブ4を挿入可能である。第1孔部17には、複数の内歯17aが形成されている。複数の内歯17aには、ハブ4の大径部51に形成された複数の外歯51aが、噛み合い可能である。詳細には、周方向に互いに隣接する2つの内歯17aの間には、ハブ4の各外歯51aが配置される。また、周方向に互いに隣接する2つの内歯17aと、ハブ4の各外歯51aとの周方向間には、隙間が形成されている。この隙間によって、第1フランジ11とハブ4とは、低捩り角度領域Lにおいて相対回転可能になっている。
複数の第1スプリング収容部18は、第1フランジ11の外周部に形成されている。詳細には、複数の第1スプリング収容部18は、周方向に等間隔で形成されている。各第1スプリング収容部18には、開口18aが形成されている。各開口18aは、クラッチプレート13及びリティーニングプレート14の各窓孔13a,14aに対して、軸方向に対向して配置されている。開口18aには、高剛性スプリングユニット12が配置される。開口18aにおいて周方向に対向する壁部には、各高剛性スプリングユニット12の両端部が当接している。
複数の第1凹部19それぞれには、第1ホルダプレートの爪部31(後述する)が係合する。各第1凹部19は、径方向に互いに対向する2つの開口18aそれぞれの内周縁に、形成されている。各第1凹部19は、開口18aの内周縁における周方向中央部において、回転軸Oに向けて凹状に形成されている。
ストッパ用突起20は、第1スプリング収容部18の外周面における周方向中央部において、第1スプリング収容部18の外周面から外方に突出している。ストッパ用突起20には、クラッチプレート13及びリティーニングプレート14を固定するピン部材16が、当接可能である。例えば、ストッパ用突起20及びピン部材16の当接によって、クラッチプレート13及びリティーニングプレート14に対する第1フランジ11の回転が、規制される。すなわち、ストッパ用突起20及びピン部材16は、第1フランジ11のストッパ機構として、機能する。
−高剛性スプリングユニット−
複数の高剛性スプリングユニット12は、第1入力側部材10及び第1フランジ11を回転方向に弾性的に連結する。詳細には、複数の高剛性スプリングユニット12は、クラッチプレート13及びリティーニングプレート14と、第1フランジ11とを回転方向に弾性的に連結する。各高剛性スプリングユニット12は、各低剛性スプリングユニット25(後述する)より剛性が高い。
図1及び図2に示すように、具体的には、各高剛性スプリングユニット12は、高剛性用第1スプリング21と、高剛性用第2スプリング22とを、有している。高剛性用第1スプリング21及び高剛性用第2スプリング22を合成した剛性は、各低剛性スプリングユニット25の剛性より高い。
高剛性用第2スプリング22は、高剛性用第1スプリング21の内周部に配置されている。ここでは、高剛性用第2スプリング22は、高剛性用第1スプリング21と実質的に同じ長さである。
高剛性用第1スプリング21及び高剛性用第2スプリング22は、第1フランジ11の各開口18aに収容されている。詳細には、高剛性用第1スプリング21及び高剛性用第2スプリング22は、クラッチプレート13及びリティーニングプレート14の各窓孔13a,14aによって、径方向及び軸方向の移動が規制されている。
また、高剛性用第1スプリング21の両端部及び高剛性用第2スプリング22の両端部は、第1フランジ11の各開口18aにおいて周方向に対向する壁部に、当接している。また、高剛性用第1スプリング21の両端部及び高剛性用第2スプリング22の両端部は、クラッチプレート13及びリティーニングプレート14の各窓孔13a,14aにおいて周方向に対向する壁部に、当接している。
この構成によって、高剛性用第1スプリング21及び高剛性用第2スプリング22は、クラッチプレート13及びリティーニングプレート14と、第1フランジ11とを、回転方向に弾性的に連結する。
上述した構成を有する複数の高剛性スプリングユニット12は、捩り特性の高捩り角度領域H(図6を参照)の範囲で、実質的に作動する。詳細には、複数の高剛性スプリングユニット12、すなわち高剛性用第1スプリング21及び高剛性用第2スプリング22は、高捩り角度領域Hにおける第2捩り角度A2以上且つ第3捩り角度A3未満において、実質的に作動する。高剛性スプリングユニット12の作動形態については、以下の[クラッチディスク組立体の動作]において、詳細に説明する。
<低剛性ダンパユニット>
低剛性ダンパユニット3は、高剛性ダンパユニット2より低剛性に構成される。例えば、低剛性ダンパユニット3は、プリダンパとして機能する。図1及び図2に示すように、低剛性ダンパユニット3は、高剛性スプリングユニット12の内周側において、第1入力側部材10及び第1フランジ11の間に配置される。低剛性ダンパユニット3は、高剛性ダンパユニット2に係合し、捩り特性の低捩り角度領域L(図6を参照)において作動する。
図3〜図5に示すように、低剛性ダンパユニット3は、第2入力側部材23と、第2フランジ24(第2出力側部材の一例)と、複数(例えば2個)の低剛性スプリングユニット25(第1弾性部材及び第2弾性部材の一例)と、1対のスプリングシート26(連結部材の一例)を、有する。
−第2入力側部材−
第2入力側部材23は、第1フランジ11と一体回転可能に構成される。第2入力側部材23は、第1ホルダプレート27と、第2ホルダプレート28とを、有する。第1ホルダプレート27は、実質的に環状の円板部材である。第1ホルダプレート27は、第1フランジ11及び第2ホルダプレート28に係合可能に構成されている。第1ホルダプレート27は、クラッチプレート13と第2フランジ24との軸方向間に配置される。第1ホルダプレート27は、後述する摺動ボス30の外周部に配置される。
第1ホルダプレート27及び第2ホルダプレート28には、それぞれ回転方向に等間隔で2つの窓孔27a,28aが形成されている。各窓孔27a,28aには、低剛性スプリングユニット25が配置される。各窓孔27a,28aにおいて周方向に対向する壁部には、低剛性スプリングユニット25の両端部(後述する1対の第2低剛性用スプリング38それぞれの端部)が、当接している。
第1ホルダプレート27は、複数の爪部31(係合部の一例)を、有する。複数(例えば2個)の爪部31それぞれは、第1フランジ11の第1凹部19と、第2ホルダプレート28の第2凹部32(後述する)と、第2フランジ24の幅広凹部35(後述する)とに、係合可能に構成されている。
各爪部31は、第1ホルダプレート27の外周部から軸方向に延びる部分である。各爪部31は、断面が矩形状である軸部31aと、周方向の幅が軸部31aより小さい先端部31bとを、有している。
各爪部31の先端部31bが各第1凹部19に係合することによって、第1ホルダプレート27は第1フランジ11と一体回転可能である。また、各爪部31の軸部31aが各第2凹部32に係合することによって、第1ホルダプレート27は、第2ホルダプレート28と一体回転可能である。さらに、各爪部31の軸部31aは、第2フランジ24の各幅広凹部35に配置され、各幅広凹部35において周方向に移動可能である(図4を参照)。これにより、第1ホルダプレート27は(及び第2ホルダプレート28)は、第2フランジ24に対して相対回転可能になる。
第2ホルダプレート28は、実質的に環状の円板部材である。第2ホルダプレート28は、第1ホルダプレート27に対して軸方向に対向して配置される。また、第2ホルダプレート28は、第1フランジ11と第2フランジ24との軸方向間に配置される。
第2ホルダプレート28は、第1ホルダプレート27と一体回転可能に構成される。第2ホルダプレート28は、複数(例えば2個)の第2凹部32を、有する。複数の第2凹部32は、第2ホルダプレート28の外周部に周方向に等間隔で形成されている。上述したように、各爪部31の軸部31a及び各第2凹部32との係合、例えば各爪部31の軸部31a及び各第2凹部32との嵌合によって、第2ホルダプレート28は、第1ホルダプレート27と一体回転可能である。
−第2フランジ−
第2フランジ24は、第2入力側部材23と相対回転可能に構成される。図3に示すように、第2フランジ24は、第1ホルダプレート27及び第2ホルダプレート28の間に配置される。第2フランジ24は、ハブ4と一体回転可能である。
第2フランジ24は、第2孔部33と、複数(例えば2個)の第2スプリング収容部34と、複数(例えば2個)の幅広凹部35とを、有する。
第2孔部33は、第2フランジ24の中心部に形成されている。第2孔部33には、ハブ4を挿入可能である。第2孔部33には、複数の内歯33aが形成されている。複数の内歯33aには、ハブ4の大径部51に形成された複数の外歯51aが、噛み合い可能である。このように、第2フランジ24は、ハブ4と一体回転可能に構成される。
複数の第2スプリング収容部34は、第2フランジ24の外周部に形成されている。詳細には、複数の第2スプリング収容部34は、周方向に等間隔で形成されている。各第2スプリング収容部34には、切欠き部36が、形成されている。切欠き部36は、回転軸Oに向けて凹状に形成され、径方向外側に開口している。各切欠き部36には、低剛性スプリングユニット25が配置される。切欠き部36において周方向に対向する壁部には、各低剛性スプリングユニット25の両端部(後述する1対の第2低剛性用スプリング38それぞれの端部)が、当接している。
図4に示すように、各幅広凹部35には、第1ホルダプレート27の各爪部31が周方向に移動可能に係合する。各幅広凹部35は、第2フランジ24の外周部に周方向に等間隔で形成されている。各幅広凹部35の底部は、実質的に円弧状に形成されている。各爪部31の軸部31aは、各幅広凹部35の底部に沿って、周方向に移動可能である。また、低捩り角度領域Lにおいて、各爪部31の軸部31aが、各幅広凹部35の壁部(幅広凹部35の壁部)に当接しないように、各幅広凹部35の周方向長さは設定されている。この構成によって、第1ホルダプレート27は、爪部31の先端部31bが係合する第2ホルダプレート28とともに、第2フランジ24に対して相対回転可能になっている。
−低剛性スプリングユニット−
複数の低剛性スプリングユニット25は、第2入力側部材23及び第2フランジ24を回転方向に弾性的に連結する。図3及び図4に示すように、各低剛性スプリングユニット25は、第2フランジ24の各第2スプリング収容部34と、第1及び第2ホルダプレート27,28の窓孔27a,28aに、配置される。各低剛性スプリングユニット25は、各高剛性スプリングユニット12より剛性が低い。
具体的には、図4に示すように、各低剛性スプリングユニット25は、第1低剛性用スプリング37(第1弾性部材の一例)と、1対の第2低剛性用スプリング38(第2弾性部材の一例)とを、有する。第1低剛性用スプリング37及び1対の第2低剛性用スプリング38は、第2入力側部材23及び第2フランジ24を回転方向に弾性的に連結する。
第1低剛性用スプリング37は、第2スプリング収容部34の切欠き部36に配置される。第1低剛性用スプリング37は、1対の第2低剛性用スプリング38の周方向間に配置され、各第2低剛性用スプリング38と直列に作動する。第1低剛性用スプリング37は、第2低剛性用スプリング38より剛性が低い。第1低剛性用スプリング37は、低捩り角度領域Lにおける第1捩り角度A1未満において、実質的に作動する(図6を参照)。
1対の第2低剛性用スプリング38は、第2スプリング収容部34の切欠き部36と、第1ホルダプレート27及び第2ホルダプレート28の窓孔27a,28aとに、配置される。1対の第2低剛性用スプリング38それぞれは、第1低剛性用スプリング37と直列に配置される。
詳細には、1対の第2低剛性用スプリング38それぞれは、周方向において、第1低剛性用スプリング37の両側に配置される。すなわち、各第2低剛性用スプリング38の一端部は、スプリングシート26を介して、第1低剛性用スプリング37の両端部それぞれを周方向に押圧可能に配置される。
また、各第2低剛性用スプリング38の他端部は、第2スプリング収容部34の切欠き部36の壁部と、第1ホルダプレート27及び第2ホルダプレート28の窓孔27a,28aの壁部とに、当接している。
このように構成される1対の第2低剛性用スプリング38それぞれは、第1低剛性用スプリング37より剛性が高い。1対の第2低剛性用スプリング38は、低捩り角度領域Lにおける第1捩り角度A1以上且つ第2捩り角度A2未満において、実質的に作動する(図6を参照)。
なお、第1低剛性用スプリング37及び第2低剛性用スプリング38の作動形態については、以下の[クラッチディスク組立体の動作]において、詳細に説明する。
−スプリングシート−
図4に示すように、1対のスプリングシート26それぞれは、第1低剛性用スプリング37及び第2低剛性用スプリング38の間に配置される。1対のスプリングシート26は、第1スプリングシート26aと、第2スプリングシート26bとを、有する。第1スプリングシート26aは、周方向において、1対の第1低剛性用スプリング37のいずれか一方、及び第2低剛性用スプリング38の間に、配置される。第2スプリングシート26bは、周方向において、1対の第1低剛性用スプリング37のいずれか他方、及び第2低剛性用スプリング38の間に、配置される。
第1スプリングシート26a及び第2スプリングシート26bは、低捩り角度領域Lにおいて周方向に互いに当接可能である。例えば、低捩り角度領域Lにおいて捩り角度が、所定の角度例えば第1捩り角度A1に到達すると、第1スプリングシート26a及び第2スプリングシート26bが当接する。これにより、第1低剛性用スプリング37の作動が停止する。すなわち、第1スプリングシート26a及び第2スプリングシート26bは、第2低剛性用スプリング38のストッパ機構として、機能する。
<ヒステリシストルク発生機構>
図1及び図3に示すように、ヒステリシストルク発生機構5は、第1ヒステリシストルク発生機構61と、第2ヒステリシストルク発生機構62とを、有する。
−第1ヒステリシストルク発生機構−
第1ヒステリシストルク発生機構61は、高剛性スプリングユニット12の内周側において、第1入力側部材10(リティーニングプレート14)及び第1フランジ11の軸方向間に配置される。
図3及び図5に示すように、第1ヒステリシストルク発生機構62は、第1ブッシュ40と、第1付勢部材41と、第2ブッシュ42と、第2付勢部材43とを、有している。
第1ブッシュ40は、リティーニングプレート14に対して軸方向に移動可能に構成される。第1ブッシュ40は、第1付勢部材41によって第1フランジ11に向けて付勢される。
具体的には、第1ブッシュ40は、実質的に円環状に形成される。図5に示すように、第1ブッシュ40は、第1円環部44と、複数(例えば4個)の突出部45と、当接部46と、第1摺動部47とを、有する。第1円環部44は、ハブ4の径方向外側に配置される。具体的には、第1円環部44の内周部には、ハブ4が配置される。第1円環部44の内周面とハブ4の外周部とは、径方向に所定の間隔を隔てて配置されている。第1円環部44の内周面、例えば突出部45の内周面には、第2ブッシュ42の鍔部(後述する)が配置される。これにより、第1ブッシュ40は、第2ブッシュ42を径方向に位置決めする。
複数の突出部45それぞれは、第1円環部44から軸方向に突出している。詳細には、複数の突出部45それぞれは、第1円環部44からリティーニングプレート14に向けて軸方向に突出している。複数の突出部45は、第1付勢部材41を支持する。例えば、複数の突出部45の外周部には、第1付勢部材41が配置され、第1付勢部材41を径方向に位置決めする。
また、各突出部45は、リティーニングプレート14の支持孔14bに、挿通される(図1を参照)。各突出部45は、支持孔14bに対して、軸方向に移動可能である。また、各突出部45は、支持孔14bに対して、周方向及び径方向に移動不能である。これにより、第1ブッシュ40は、リティーニングプレート14に対して、軸方向に移動可能に支持され、周方向及び径方向に移動不能に支持される。
当接部46は、第1付勢部材41が当接する部分である。当接部46は、第1円環部44の外周部に設けられている。詳細には、当接部46は、複数の突出部45の径方向外側において、第1円環部44の外周部に形成されている。
第1摺動部47は、第1フランジ11の側面に対して接触し摺動する部分である。第1摺動部47は、第1円環部44の外周部に設けられている。詳細には、第1摺動部47は、第1円環部44の外周部において、突出部45とは反対側の面に設けられている。第1摺動部47が第1フランジ11の側面に接触した状態で、クラッチプレート13及びリティーニングプレート14が第1フランジ11に対して相対回転すると、第1摺動部47が第1フランジ11の側面を摺動する。これにより、ヒステリシストルクが発生する。
第1付勢部材41は、例えばコーンスプリングである。第1付勢部材41は、リティーニングプレート14及び第1ブッシュ40の軸方向間に、配置される。詳細には、第1付勢部材41は、リティーニングプレート14及び第1ブッシュ40の当接部46の軸方向間に、配置される。
第1付勢部材41は、軸方向に圧縮された状態で、軸方向の一端部がリティーニングプレート14に当接し、軸方向の他端部が第1ブッシュ40の当接部46に当接する。これにより、第1付勢部材41は、第1ブッシュ40を第1フランジ11に向けて付勢する。また、第1付勢部材41の内周部には、第1ブッシュ40の外周部例えば複数の突出部45が、配置される。これにより、第1付勢部材41は、第1ブッシュ40によって径方向に位置決めされる。
第2ブッシュ42は、リティーニングプレート14に対して軸方向に移動可能に構成される。第2ブッシュ42は、第2付勢部材43によって、ハブ4例えば大径部51に押し付けられる。
具体的には、図3及び図5に示すように、第2ブッシュ42は、第1ブッシュ40の内周部に配置される。第2ブッシュ42は、実質的に円環状に形成される。第2ブッシュ42は、第2円環部48と、第2摺動部49と、環状凸部50とを、有する。第2円環部48は、径方向において、ハブ4及び第1円環部44の間に配置される。
第2摺動部49は、ハブ4の大径部51の側面に対して接触し摺動する部分である。第2摺動部49は、第2円環部48においてハブ4の大径部51に対向する面に、設けられている。第2摺動部49がハブ4の大径部51に接触した状態で、クラッチプレート13及びリティーニングプレート14が、ハブ4に対して相対回転すると、第2摺動部49がハブ4の大径部51の側面を摺動する。これにより、ヒステリシストルクが発生する。
環状凸部50は、第2円環部48の内周部から軸方向に突出し、周方向に環状に形成されている。詳細には、環状凸部50は、第2円環部48の内周部からリティーニングプレート14に向けて軸方向に突出している。環状凸部50の先端部31b及びリティーニングプレート14の軸方向間には、所定の隙間が、設けられている。環状凸部50の基端部には、環状の段差部50aが形成されている。段差部50aには、第2付勢部材43が当接する。
第2付勢部材43は、例えばコーンスプリングである。第2付勢部材43は、リティーニングプレート14及び第2ブッシュ42の軸方向間に、配置される。詳細には、第2付勢部材43は、リティーニングプレート14及び第2ブッシュ42の段差部の軸方向間に、配置される。
第2付勢部材43は、軸方向に圧縮された状態で、軸方向の一端部がリティーニングプレート14に当接し、軸方向の他端部が第2ブッシュ42の段差部50aに当接する。この第2付勢部材43によって、第2ブッシュ42がハブ4に向けて付勢される。第2付勢部材43の内周部は、第2ブッシュ42の内周部例えば環状凸部50に、配置される。これにより、第2付勢部材43は、第2ブッシュ42によって径方向に位置決めされる。
上記のような第1ヒステリシストルク発生機構61では、低捩り角度領域Lにおいて第2ブッシュ42の摺動によってヒステリシストルクが発生し、高捩り角度領域Hにおいて第1ブッシュ40の摺動によってヒステリシストルクが発生する。
−第2ヒステリシストルク発生機構−
第2ヒステリシストルク発生機構62は、高剛性スプリングユニット12の内周側において、第1入力側部材10(クラッチプレート13)及び第1フランジ11の軸方向間に配置される。
第2ヒステリシストルク発生機構62は、摺動ボス30と、摺動プレート29とを、有する。
摺動ボス30は、実質的に円筒状に形成されている。摺動ボス30は、第1ホルダプレート27及びハブ4(後述する第2小径部53)の径方向間に、配置されている。また、摺動ボス30は、摺動プレート29及びハブ4(第2小径部53)の径方向間に、配置されている。さらに、摺動ボス30は、クラッチプレート13の内周部及びハブ4の大径部51の軸方向間に配置されている。
摺動ボス30は、軸方向において、クラッチプレート13の内周部及びハブ4の大径部51に、接触している。これにより、クラッチプレート13及びハブ4が相対回転すると、摺動ボス30がクラッチプレート13及びハブ4の少なくともいずれか一方と摺動し、ヒステリシストルクが発生する。
摺動プレート29は、実質的に環状の円板部材である。摺動プレート29は、第1ホルダプレート27及びクラッチプレート13の軸方向間に、配置されている。また、摺動プレート29は、摺動ボス30の外周部に配置されている。
摺動プレート29は、軸方向において、クラッチプレート13及び第1ホルダプレート27に、接触している。これにより、クラッチプレート13及び第1ホルダプレート27が相対回転すると、摺動プレート29がクラッチプレート13及び第1ホルダプレート27の少なくともいずれか一方と摺動し、ヒステリシストルクが発生する。
言い換えると、第1ホルダプレート27は、爪部31を介して、第1フランジ11と一体回転可能であるので、クラッチプレート13及び第1フランジ11が相対回転すると、摺動プレート29がクラッチプレート13及び第1ホルダプレート27の少なくともいずれか一方と摺動し、ヒステリシストルクが発生する。
上記のような第2ヒステリシストルク発生機構62では、低捩り角度領域Lにおいて摺動ボス30の摺動によってヒステリシストルクが発生し、高捩り角度領域Hにおいて摺動プレート29の摺動によってヒステリシストルクが発生する。
<ハブ>
ハブ4は、トランスミッションに連結可能に構成される。ハブ4は、実質的に円筒形の部材である。図3及び図5に示すように、ハブ4の外周面には、軸方向中央部に形成された大径部51と、軸方向の両端部に形成された第1小径部52及び第2小径部53とを、有している。
大径部51の外周面には、複数の外歯51aが形成されている。大径部51の外歯51aは、大径部51の軸方向の全長にわたって形成されている。外歯51aには、第2フランジ24の内歯33aが係合している。また、外歯51aには、所定の捩り角度例えば第2捩り角度A2において、第1フランジ11の内歯17aが当接可能に係合している。
第1小径部52は、大径部51のリティーニングプレート14側に形成される。第2小径部53は、大径部51のクラッチプレート13側に形成される。第2小径部53の外周部には、摺動ボス30が配置される。摺動ボス30の外周部には、第1ホルダプレート27及び摺動プレート29が配置される。
ハブ4には、低捩り角度領域Lにおいて低剛性ダンパユニット3からトルクが実質的に伝達される。また、ハブ4には、高捩り角度領域Hにおいて高剛性ダンパユニット2からトルクが伝達される。
具体的には、ハブ4の複数の外歯51aと、第2フランジ24の複数の内歯33aとは、噛み合っているので、ハブ4及び第2フランジ24は、低捩り角度領域Lにおいて一体回転可能である。一方で、低捩り角度領域Lでは、ハブ4の複数の外歯51aと、第1フランジ11の複数17aの内歯とは、上述した隙間によって互いに未当接であるので、ハブ4及び第1フランジ11は、相対回転可能である。また、高捩り角度領域Hでは、ハブ4の複数の外歯51aと第1フランジ11の複数の内歯17aとは互いに当接しているので、ハブ4及び第1フランジ11は一体回転可能である。
この構成によって、ハブ4は、低捩り角度領域Lにおいて、低剛性ダンパユニット3の第2フランジ24からトルクが実質的に伝達される。また、ハブ4は、高捩り角度領域Hにおいて、高剛性ダンパユニット2の第1フランジ11からトルクが伝達される。
[クラッチディスク組立体の動作]
ここでは、上記の構成を有するクラッチディスク組立体1が、正側に作動する場合の動作について、図6に示す捩り特性を参照しながら、説明する。
出力側のハブ4に対して、入力側のクラッチプレート13及びリティーニングプレート14がR1側に捩れ始めると、高剛性ダンパユニット2の剛性が、低剛性ダンパユニット3の剛性より高いので、低剛性ダンパユニット3が先に作動する。
具体的には、低捩り角度領域Lにおいて、入力側のクラッチプレート13及びリティーニングプレート14がハブ4に対してR1側に捩れ始めると、クラッチプレート13、リティーニングプレート14、複数の高剛性スプリングユニット12、及び第1フランジ11が、実質的に一体的に回転する。ここで、低捩り角度領域Lでは、上述したように、第1フランジ11はハブ4に対して相対回転するので、第1フランジ11の回転はハブ4には伝達されていない。
上記のように、クラッチプレート13、リティーニングプレート14、複数の高剛性スプリングユニット12、及び第1フランジ11が、一体的に回転すると、この回転は、第1フランジ11から、第1フランジ11に係合する第1ホルダプレート27へと伝達される。詳細には、第1ホルダプレート27及び第2ホルダプレート28とは一体回転可能に構成されているので、この回転は、第1フランジ11から、第1ホルダプレート27及び第2ホルダプレート28へと伝達される。これにより、トルクが、高剛性ダンパユニット2から低剛性ダンパユニット3へと伝達される。
低捩り角度領域Lでは、まず、第2低剛性用スプリング38より剛性が低い第1低剛性用スプリング37が、実質的に作動する。詳細には、低捩り角度領域Lにおける第1捩り角度A1未満においては、第1低剛性用スプリング37が、第1ホルダプレート27及び第2ホルダプレート28と、第2フランジ24との周方向間で、実質的に作動する。すなわち、第1捩り角度A1未満においては、第1低剛性用スプリング37によって、トルク変動が主に減衰される。このように、第1低剛性用スプリング37の作動によって、1段目の捩り剛性K1が形成される。
この状態において、捩り角度が第1捩り角度A1に到達すると、第1スプリングシート26a及び第2スプリングシート26bが当接し、第1低剛性用スプリング37の作動が停止する。すると、第1低剛性用スプリング37より剛性が高い1対の第2低剛性用スプリング38が実質的に作動を開始する。詳細には、第1捩り角度A1以上且つ第2捩り角度A2未満においては、第2低剛性用スプリング38が、第1ホルダプレート27及び第2ホルダプレート28と、第2フランジ24との周方向間で、実質的に作動する。すなわち、第1捩り角度A1以上且つ第2捩り角度A2未満においては、第2低剛性用スプリング38によって、トルク変動が減衰される。このように、第2低剛性用スプリング38の作動によって、2段目の捩り剛性K2が形成される。
ここで、低捩り角度領域Lにおいては、第1低剛性用スプリング37又は第2低剛性用スプリング38が作動し、トルクが第2フランジ24からハブ4に伝達されている。これにより、第1入力側部材10(クラッチプレート13及びリティーニングプレート14)及びハブ4が相対回転すると、第1ヒステリシストルク発生機構61の第2ブッシュ42の摺動、及び第2ヒステリシストルク発生機構62の摺動ボス30の摺動によって、ヒステリシストルクが発生する。
この状態において、捩り角度が高捩り角度領域Hの第2捩り角度A2に到達すると、第1フランジ11の複数の内歯17aが、ハブ4の複数の外歯51aに当接する。すなわち、捩り角度が第2捩り角度A2以上になると、第1フランジ11及び第2フランジ24が、ハブ4と一体回転し、且つ第1ホルダプレート27及び第2ホルダプレート28が、第1フランジ11とともに一体回転する。これにより、第1及び第2ホルダプレート27,28と第2フランジ24との捩り角度は、第2捩り角度A2で維持される。すなわち、この状態では、1対の第2低剛性用スプリング38は、伸縮をしておらず、圧縮された状態で作動を停止している。
このように、捩り角度が第2捩り角度A2以上になり、1対の第2低剛性用スプリング38が作動を停止した状態では、高剛性ダンパユニット2の複数の高剛性スプリングユニット12が、作動する。詳細には、高捩り角度領域Hにおける第2捩り角度A2以上且つ第3捩り角度A3未満においては、複数の高剛性スプリングユニット12が、クラッチプレート13及びリティーニングプレート14と、第1フランジ11との間で、作動する。このように、複数の高剛性スプリングユニット12の作動によって、3段目の捩り剛性K3が形成される。
ここで、高捩り角度領域Hにおいて、高剛性スプリングユニット12が作動し、第1入力側部材10(クラッチプレート13及びリティーニングプレート14)と第1フランジ11とが、相対回転すると、第1ヒステリシストルク発生機構61の第1ブッシュ40の摺動、及び第2ヒステリシストルク発生機構62の摺動プレート29の摺動によって、ヒステリシストルクが発生する。
この状態において、捩り角度が第3捩り角度A3に到達すると、第1フランジ11のストッパ用突起20が、クラッチプレート13及びリティーニングプレート14を連結するピン部材16に、当接する。これにより、第1フランジ11は、クラッチプレート13及びリティーニングプレート14に対して、相対回転不能になり、複数の高剛性スプリングユニット12は作動を停止する。
[まとめ]
(1)本クラッチディスク組立体1は、エンジンから入力されるトルク変動を減衰してトランスミッション側に伝達する。本クラッチディスク組立体1は、高剛性ダンパユニット2と、低剛性ダンパユニット3と、ハブ4とを、備える。
高剛性ダンパユニット2は、エンジンからのトルクが入力され、捩り特性の高捩り角度領域Hにおいて実質的に作動する。低剛性ダンパユニット3は、高剛性ダンパユニット2より低剛性に構成され、高剛性ダンパユニット2に係合し捩り特性の低捩り角度領域Lにおいて作動する。低剛性ダンパユニット3は、第1低剛性用スプリング37と、第2低剛性用スプリング38とを、有する。第2低剛性用スプリング38は、第1低剛性用スプリング37と直列に配置され、且つ第1低剛性用スプリング37より剛性が高い。ハブ4は、トランスミッションに連結可能に構成され、低捩り角度領域Lにおいて低剛性ダンパユニット3からトルクが実質的に伝達され、高捩り角度領域Hにおいて高剛性ダンパユニット2からトルクが伝達される。
本クラッチディスク組立体1では、低剛性ダンパユニット3が、捩り特性の低捩り角度領域Lにおいて作動する。ここでは、まず、低捩り角度領域Lにおいて、低剛性の第1低剛性用スプリング37が実質的に作動する。次に、低捩り角度領域Lにおいて捩り角度が大きくなると、高剛性の第2低剛性用スプリング38が実質的に作動する。すなわち、低捩り角度領域Lにおいて、捩り特性は2段特性を有する。これにより、低剛性の第1低剛性用スプリング37によって低捩り角度領域Lを広角化することができ、且つ高剛性の第2低剛性用スプリング38によって低捩り角度領域Lにおける高捩り角度側のトルクを高く設定できる。
(2)本クラッチディスク組立体1では、低捩り角度領域Lにおける第1捩り角度A1未満において、第2低剛性用スプリング38より剛性が低い第1低剛性用スプリング37が、実質的に作動する。低捩り角度領域Lにおける第1捩り角度A1以上且つ第2捩り角度A2未満では、第1低剛性用スプリング37より剛性が高い第2低剛性用スプリング38が、実質的に作動する。
これにより、低捩り角度領域Lの第1捩り角度A1未満において、低捩り角度領域Lの広角化を実現し、低捩り角度領域Lの第1捩り角度A1以上且つ第2捩り角度A2未満において、低捩り角度領域Lにおける高捩り角度側のトルクを高く設定できる。
(3)本クラッチディスク組立体1では、高剛性ダンパユニット2が、第2低剛性用スプリング38より剛性が高い高剛性スプリングユニット12を、有する。高捩り角度領域Hにおける第2捩り角度A2以上且つ第3捩り角度A3未満では、高剛性スプリングユニット12が、実質的に作動する。
これにより、低捩り角度領域Lの第1捩り角度A1未満において、低捩り角度領域Lの広角化を実現し、低捩り角度領域Lの第1捩り角度A1以上且つ第2捩り角度A2未満において、低捩り角度領域Lにおける高捩り角度側のトルクを高く設定できる。また、高捩り角度領域H(第2捩り角度A2以上且つ第3捩り角度A3未満)において、所望のトルクを確保することができる。
(4)本クラッチディスク組立体1では、高剛性ダンパユニット2が、第1入力側部材10と、第1フランジ11と、高剛性スプリングユニット12とを、有する。第1入力側部材10には、エンジンからトルクが入力される。第1フランジ11は、第1入力側部材10と相対回転可能に構成される。高剛性スプリングユニット12は、第1入力側部材10及び第1フランジ11を回転方向に弾性的に連結する。
低剛性ダンパユニット3は、第2入力側部材23と、第2フランジ24と、第1及び第2低剛性用スプリング37,38とを、有する。第2入力側部材23は、第1フランジ11と一体回転可能に構成される。第2フランジ24は、第2入力側部材23と相対回転可能に構成される。第1及び第2低剛性用スプリング37,38は、高剛性スプリングユニット12より剛性が低く、且つ第2入力側部材23及び第2フランジ24を回転方向に弾性的に連結する。ハブ4は、低捩り角度領域Lにおいて第2フランジ24と一体回転可能に構成され、高捩り角度領域Hにおいて第1フランジ11と一体回転可能に構成される。
この場合、まず、低捩り角度領域Lにおいて、第2入力側部材23及び第2フランジ24の間で、低剛性の第1低剛性用スプリング37が実質的に作動する。次に、捩り角度領域において捩り角度が大きくなると、第2入力側部材23及び第2フランジ24の間で、第1低剛性用スプリング37より高剛性である第2低剛性用スプリング38が、実質的に作動する。最後に、高捩り角度領域Hにおいて、第1及び第2低剛性用スプリング37,38より高剛性である高剛性スプリングユニット12が、実質的に作動する。すなわち、捩り特性は、3段特性を有する。
この構成によって、第1低剛性用スプリング37によって低捩り角度領域Lを広角化することができ、且つ第2低剛性用スプリング38によって低捩り角度領域Lにおける高捩り角度側のトルクを高く設定できる。また、高剛性スプリングユニット12によって、高捩り角度領域Hにおいて所望のトルクを確保することができる。
(5)本クラッチディスク組立体1では、低剛性ダンパユニット3が、高剛性スプリングユニット12の内周側において第1入力側部材10及び第1フランジ11の間に配置される。これにより、クラッチディスク組立体1を軸方向に小型化することができる。
(6)本クラッチディスク組立体1では、低剛性ダンパユニット3が、第1低剛性用スプリング37及び第2低剛性用スプリング38の間に配置されるスプリングシート26を、さらに備える。第1低剛性用スプリング37は、1対の第2低剛性用スプリング38の間に配置される。スプリングシート26は、1対の第2低剛性用スプリング38のいずれか一方及び第1低剛性用スプリング37の間に配置される第1スプリングシート26aと、1対の第2低剛性用スプリング38のいずれか他方及び第1低剛性用スプリング37の間に配置される第2スプリングシート26bとを、有する。
この場合、上記のようにスプリングシート26を第1低剛性用スプリング37及び第2低剛性用スプリング38の間に配置することによって、第1低剛性用スプリング37及び第2低剛性用スプリング38の間でトルクを確実に伝達することができる。
(7)本クラッチディスク組立体1では、第1スプリングシート26a及び第2スプリングシート26bが、低捩り角度領域Lにおいて周方向に互いに当接可能である。第1スプリングシート26a及び前記第2スプリングシート26bの当接によって、第1低剛性用スプリング37の作動が停止する。
この場合、低捩り角度領域Lにおいて、第1スプリングシート26a及び前記第2スプリングシート26bが周方向に互いに当接すると、第1低剛性用スプリング37の作動が停止する。この状態で、捩り角度が大きくなると、第2低剛性用スプリング38が実質的に作動する。
このように、低捩り角度領域Lでは、第1スプリングシート26a及び第2スプリングシート26bの当接前は、第1低剛性用スプリング37が実質的に作動し、第1スプリングシート26a及び第2スプリングシート26bの当接後は、第2低剛性用スプリング38が実質的に作動する。すなわち、低捩り角度領域Lにおいて、捩り特性は2段特性を有する。これにより、第1低剛性用スプリング37によって低捩り角度領域Lを広角化することができ、且つ第2低剛性用スプリング38によって低捩り角度領域Lにおける高捩り角度側のトルクを好適に高く設定できる。
(8)本クラッチディスク組立体1では、第2入力側部材23が、第1フランジ11に係合する第1ホルダプレート27と、第1ホルダプレート27に対して軸方向に対向して配置され第1ホルダプレート27と一体回転可能に構成される第2ホルダプレート28とを、有する。第2フランジ24は、第1ホルダプレート27及び第2ホルダプレート28の間に配置され、ハブ4と一体回転可能である。
この構成によって、第1及び第2低剛性用スプリング37,38を、第1及び第2ホルダプレート28で保持した状態で、第1及び第2ホルダプレート28と第2フランジ24との間で、安定的に作動させることができる。
(9)本クラッチディスク組立体1では、第1ホルダプレート27が、爪部31を有する。第2ホルダプレート28は、爪部31が係合する第2凹部32を、有する。第1ホルダプレート27の爪部31及び第2ホルダプレート28の第2凹部32の係合によって、第1ホルダプレート27は、第2ホルダプレート28と一体回転可能である。この構成によって、固定部材を特別に用意することなく簡単な構成で、第1及び第2ホルダプレート28を一体回転させることができる。
(10)本クラッチディスク組立体1では、第1フランジ11が、第1凹部19を、有する。第1凹部19には、第1ホルダプレート27の爪部31が係合する。第1ホルダプレート27の爪部31、及び第1フランジ11の第1凹部19の係合によって、第1ホルダプレート27は、第1フランジ11と一体回転可能である。この構成によって、固定部材を特別に用意することなく簡単な構成で、第1ホルダプレート27及び第1フランジ11を一体回転させることができる。
(11)本クラッチディスク組立体1は、ヒステリシストルク発生機構5を、さらに備える。ヒステリシストルク発生機構5は、高剛性スプリングユニット12の内周側に配置され、低捩り角度領域L及び高捩り角度領域Lで、ヒステリシストルクを発生する。このようにヒステリシストルク発生機構5を配置することによって、クラッチディスク組立体1を軸方向に小型化することができる。
[他の実施形態]
本発明は以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
(a)前記実施形態では、低剛性ダンパユニット3が、第1低剛性用スプリング37と、1対の第2低剛性用スプリング38とを有する場合の例を、示した。これに代えて、低剛性ダンパユニット3が、1つの第1低剛性用スプリング37と、1つの第2低剛性用スプリング38とを有するように構成してもよい。この場合、第1低剛性用スプリング37及び第2低剛性用スプリング38の間に配置されるスプリングシート26を、第2フランジ24の切欠き部36の壁部に当接させることによって、上記の特徴を実現することができる。
(b)前記実施形態では、高剛性スプリングユニット12が、2つのスプリング(高剛性用第1スプリング21及び高剛性用第2スプリング22)を有する場合の例を示したが、高剛性スプリングユニット12は1つのスプリングから構成してもよい。