JP2017186331A - 溶状に優れたヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル粉末及びその製造方法、並びに固体分散体用組成物、コーティング用組成物、薬物含有粒子及び固形製剤の各製造方法 - Google Patents
溶状に優れたヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル粉末及びその製造方法、並びに固体分散体用組成物、コーティング用組成物、薬物含有粒子及び固形製剤の各製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
Description
腸溶性ポリマーであるヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル(以下、「HPMCAS」ともいう。)は、水難溶性薬物の溶出改善を行う固体分散体用途、腸溶性コーティング用途に広く使用されている。
また、水系腸溶性コーティング組成物は熱に敏感であるため、コーティング途中で腸溶性ポリマーが凝集し、スプレーノズルが閉塞する場合があり、水分散液からフィルム形成を行うために高度の技術を必要とした。更に、アンモニア中和コーティング法の場合、HPMCASの溶解に長い時間が必要な上、溶解時間を長くしても完全に溶解し切れず未溶解物が残存した。そして、このような未溶解物が残存した状態のコーティング組成物を用いてコーティングすると、コーティング中にノズルが閉塞したり、コーティング被膜の均一性が不足して、目的の耐酸性が得られない。
このように、従来のHPMCASについて、更なる溶解性の向上が求められている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、溶媒に溶解させた際に優れた溶解性を有し、未溶解物の発生を抑えることができるHPMCAS粉末及びその製造方法を提供する。また、短時間で調製できるHPMCAS粉末を含む固体分散体用組成物、HPMCAS粉末含むコーティング用組成物、薬物含有粒子及び固形製剤の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一つの態様では、最大径(L)と最小径(D)の比(L/D)の平均値が、2.0〜3.0であるヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル粉末が提供される。別の態様では、このヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル粉末と、薬物と、溶媒を少なくとも含む溶液から前記溶媒を除去する工程とを少なくとも含む固体分散体用組成物の製造方法が提供される。また、本発明の更に別の態様では、このヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル粉末を、水とアルコールの混合溶液及びアンモニア水溶液から選ばれる溶媒に溶解する工程とを少なくとも含むコーティング用組成物の製造方法が提供される。他の態様では、この製造方法によりコーティング用組成物を得る工程と、薬物を含有する核粒子を前記コーティング用組成物で被覆して被覆部を形成する工程とを少なくとも含む薬物含有粒子の製造方法が提供され、この製造方法により薬物含有粒子を得る各工程と、前記薬物含有粒子を製剤化する工程とを少なくとも含む固形製剤の製造方法が提供される。また、更に他の態様では、ヒプロメロースを溶媒に溶解する溶解工程と、触媒存在下、前記溶解されたヒプロメロースに無水コハク酸及び無水酢酸を反応させて反応液を得るエステル化工程と、前記反応液と水を混合してヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルを析出させる析出工程であって、前記水と混合する前の前記反応液の粘度が100〜200Pa・sである析出工程とを少なくとも含むヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル粉末の製造方法が提供される。
HPMCAS粉末の最大径(L)と最小径(D)の比(L/D)の平均値は、2.0〜3.0、好ましくは2.2〜2.8、より好ましくは2.4〜2.6である。L/Dが2.0未満だと、固体分散体用組成物の溶媒として主に用いられるアセトンに対する未溶解残渣が、溶解させたHPMCAS量に対して多くなる。また、L/Dの平均値が2.0未満だと、コーティング組成物を調製する際のアンモニア水溶液に対する溶解が低く、調製時間が長くかかったり、未溶解物が多くなる。L/Dの平均値が3.0超えると、溶解性は向上するものの、反応液の粘度が上昇して粉体の流動性が低下し、反応液を次の工程へ移送するのが困難となり、取り扱いにくいものとなる。
HPMCAS粉末の溶解性を向上させるため、溶媒への分散性に着目した場合、HPMCASの最大径(L)と最小径(D)の比(L/D)が小さい方が分散性が良く、溶媒への溶解性に優れていると考えられていた。一方、L/Dが大きい方がママコの生成量が増え、溶解性が劣るものと考えていた。しかし、実際のHPMCAS粉末の溶解性については、この予想に反して、最大径(L)と最小径(D)の比L/Dが大きい方が、溶媒の粒子への浸透性が向上し、溶解性が向上した。
最大径(L)と最小径(D)の比の平均値の測定は、次のように行うことができる。KEYENCEのデジタルマイクロスコープVHX−2000を使用し、シャーレφ90×15にHPMCAS粉体1mgを分散させ、倍率50倍で粒子の最大径(L)、最小径(D)を測定し、各粒子の最大径(L)と最小径(D)の比によりL/Dを求める。1回の測定で測定する粒子数は30以上とし、これを10回以上繰り返し、合計300以上の粒子の平均値とする。
HPMCAS粉末の製造方法は、ヒプロメロースを溶媒に溶解する溶解工程と、触媒存在下、前記溶解されたヒプロメロースとエステル化剤を反応させて反応液を得るエステル化工程と、前記反応液と水を混合してヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルを析出させる析出工程とを少なくとも含み、前記水と混合する前の前記反応液の粘度は、好ましくは100〜200Pa・sである。
得られたHPMCのメトキシ基の置換度(DS)は、好ましくは0.73〜2.83(28.0〜30.0質量%)、より好ましくは1.25〜2.37(28.8〜29.2質量%)である。ヒドロキシプロポキシ基の置換モル数(MS)は、好ましくは0.10〜1.90(8.5〜10.0質量%)、より好ましくは0.12〜0.95(8.8〜9.2質量%)である。メトキシ基の置換度及びヒドロキシプロポキシ基の置換モル数は、例えば、第16改正日本薬局方のヒプロメロースに関する分析方法よって得られた値から換算することができる。
また、20℃におけるHPMC2質量%の水溶液の粘度は、第16改正日本薬局方の毛細管粘度計法に準じて測定され、好ましくは2.2〜7.2mPa・s、より好ましくは3.0〜3.5mPa・sである。
無水コハク酸の仕込量は、組成及び収率の観点から、原料HPMCのモルに対して、好ましくは0.1〜1.0倍、より好ましくは0.1〜0.8倍、更に好ましくは0.3〜0.5倍である。無水酢酸の仕込量は、組成及び収率の観点から、原料HPMCのモルに対して、好ましくは0.2〜1.5倍、より好ましくは0.4〜1.3倍、更に好ましくは1.1〜1.3倍である。
HPMCASにおけるスクシニル基の置換モル数(MS)は、好ましくは0.10〜2.50、より好ましくは0.10〜1.00、更に好ましくは0.10〜0.60である。また、アセチル基の置換度(DS)は、好ましくは0.10〜2.50、より好ましくは0.10〜1.00、更に好ましくは0.40〜0.96である。いずれも第16改正日本薬局方のヒプロメロースに関する分析方法よって得られた値から換算することができる。
エステル化工程の触媒は、経済性の観点から、酢酸ナトリウム等のカルボン酸アルカリ金属塩が好ましい。触媒の仕込量は、組成及び収率の観点から、原料HPMCのモルに対して、好ましくは0.8〜1.5倍、より好ましくは0.9〜1.1倍である。
エステル反応にあたっては、高粘性の流体で均一な混合物を形成して混練を行うのに適する双軸撹拌機を用いる。具体的には、ニーダー、インターナルミキサー等の名称で一般に市販されている。
エステル化工程の反応温度は、反応速度又は粘度が上昇の観点から、好ましくは60〜100℃、より好ましくは80℃〜90℃である。また、エステル化工程の反応時間は、好ましくは2〜8時間、より好ましくは3〜6時間である。
エステル化反応後、未反応の無水コハク酸及び無水酢酸を処理する目的及び反応液の粘度を制御する目的で、反応液に水を加えることができる。水の添加量は、HPMCの質量に対して好ましくは0.8〜1.5倍、より好ましくは1.0倍〜1.3倍である。水の添加量がHPMCの質量に対して0.8倍未満になると反応液の粘度が高くなる場合があり、また1.5倍を超えるとHPMCASが析出し、反応液の移送が困難になる場合がある。
また、析出工程における水と混合する直前の反応液の温度は、好ましくは10〜30℃、より好ましくは10〜20℃、更に好ましくは15〜20℃である。「水との接触直前の反応液温度」を上記範囲とするために、反応撹拌機のジャケットによる冷却を行ってもよい。
固体分散体用組成物は、最大径(L)と最小径(D)の比(L/D)の平均値が2.0〜3.0であるHPMCAS粉末、薬物及び溶媒を少なくとも含む。
固体分散体用組成物の溶媒は、例えばアセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、メチルアセテート、エチルアセテート、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン及びそれらの混合物が挙げられるが、特に溶解性の観点から、アセトンが好ましい。
固体分散体用組成物の薬物としては、水に対する溶解度が低い難溶性薬物が挙げられ(薬物1g溶解するのに水を1000mL以上)、例えば、イトラコナゾール、ケトコナゾール、フルコナゾール、ミトコナゾール等のアゾール系化合物、ニフェジピン、ニトレンジピン、アムロジピン、ニカルジピン、ニルバジピン、フェロジピン、エフォニジピン等のジヒドロピリジン系化合物、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン等のプロピオン酸系化合物、インドメタシン、アセメタシン等のインドール酢酸系化合物のほかに、グリセオフルビン、フェニトイン、カルバマゼピン、ジピリダモール等が挙げられる。
溶媒を除去する方法としては、蒸留乾固法、スプレードライ法等が挙げられる。スプレードライ法は、水難溶性薬物を含む溶液混合物を小さな液滴に分解(噴霧)し、液滴からの溶媒を蒸発により急速に除去する方法を広く指す。好ましい態様としては、液滴を高温乾燥ガスと混合する、又は溶媒除去装置内での圧力を不完全真空に維持する等の方法が挙げられる。
コーティング用組成物は、最大径(L)と最小径(D)の比(L/D)の平均値が2.0〜3.0であるHPMCAS粉末、水とアルコールとの混合溶液及びアンモニア水溶液から選ばれる溶媒を少なくとも含有する。コーティング用組成物中において、HPMCAS粉末の濃度は、溶液粘度や生産性の観点から、好ましくは5〜20質量%、より好ましくは7〜15質量%である。
コーティング用組成物の溶媒は、水とメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコールとの2〜4:6〜8(換言すると1:1.5から1:4)(質量比)の混合溶液及び0.01〜1.0質量%のアンモニア水溶液が挙げられる。
コーティング用組成物の製造方法は、好ましくは、HPMCAS粉末を、水とアルコールの混合溶液及びアンモニア水溶液から選ばれる溶媒に溶解する工程とを少なくとも含む。溶媒としてアンモニア水溶液を用いる場合には、例えば、常温の水にHPMCAS粉末を分散させた後、HPMCAS中のカルボキシル基を中和するのに必要な量のアンモニア水(例えばアンモニア濃度:5〜30質量%)を加えて撹拌溶解する。この時のアンモニアの添加量は、HPMCASの溶解性及びコーティング用組成物が被覆された固形製剤の耐酸性の観点から、好ましくはカルボキシル基と等モル量、より好ましくはその80%以上、更に好ましくは95〜105%の量を添加する。
滑沢剤としては、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、コロイダルシリカ、ステアリン酸等が挙げられる。これらを添加する場合の含有量は本発明の効果を妨げない限り特に限定されないが、HPMCAS粉末100質量部に対して好ましくは200質量部以下、更に好ましくは100質量部以下である。特にタルクがコーティング時の粒子同士の粘着を防止するのに好ましい。
薬物含有粒子は、薬物を含有する核粒子と、前記コーティング用組成物により被覆した被覆部とを少なくとも有する。
薬物含有粒子の製造方法は、好ましくは、前記コーティング用組成物を製造するための工程と、薬物を含有する核粒子を前記コーティング用組成物で被覆して被覆部を形成する工程とを少なくとも含む。例えば、前記コーティング用組成物を、薬物を含有する核粒子に、従来公知のコーティング装置を用いて被覆することにより薬物含有粒子を製造できる。コーティング装置としては、特に限定されず、例えば、パンコーティング装置、流動層造粒装置、転動流動層コーティング装置等を用いることができる。被覆する方法としては、例えば、前記コーティング用組成物を調製し、薬物を含有する核粒子に該組成物を塗布する方法が挙げられる。
薬物を含有する核粒子に適用させる薬物としては、一般に使用される薬物であり、経口投与可能な薬物であれば特に限定されるものではない。かかる薬物としては、例えば、中枢神経系薬物、循環器系薬物、呼吸器系薬物、消化器系薬物、抗生物質、鎮咳・去たん剤、抗ヒスタミン剤、解熱鎮痛消炎剤、利尿剤、自律神経作用薬、抗マラリア剤、止潟剤、向精神剤、ビタミン類及びその誘導体等が挙げられる。
循環器系薬物としては、例えば、モルシドミン、ビンポセチン、プロプラノロール、メチルドパ、ジピリダモール、フロセミド、トリアムテレン、ニフェジビン、アテノロール、スピロノラクトン、メトプロロール、ビンドロール、カプトプリル、硝酸イソソルビト、塩酸デラプリル、塩酸メクロフェノキサート、塩酸ジルチアゼム、塩酸エチレフリン、ジギトキシン及び塩酸アルプレノロール等が挙げられる。
消化器系薬物としては、例えば、2−[〔3−メチル−4−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−2−ピリジル〕メチルスルフィニル]ベンゾイミダゾール及び5−メトキシ−2−〔(4−メトキシ−3,5−ジメチル−2−ピリジル)メチルスルフィニル〕ベンゾイミダゾール等の抗潰瘍作用を有するベンゾイミダゾール系薬物、シメチジン、ラニチジン、塩酸ピレンゼピン、パンクレアチン、ビサコジル並びに5−アミノサリチル酸等が挙げられる。
及びエリスロマイシン等が挙げられる。
鎮咳・去たん剤としては、例えば、塩酸ノスカピン、クエン酸カルベタペンタン、クエン酸イソアミニル及びリン酸ジメモルファン等が挙げられる。
抗ヒスタミン剤としては、例えば、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ジフェンヒドラミン及び塩酸プロメタジン等が挙げられる。
解熱鎮痛消炎剤としては、例えば、イブプロフェン、ジクロフェナクナトリウム、フルフェナム酸、スルピリン、アスピリン及びケトプロフェン等が挙げられる。
自律神経作用薬としては、例えば、リン酸ジヒドロコデイン及びdl−塩酸メチルエフェドリン、硫酸アトロピン、塩化アセチルコリン、ネオスチグミン等が挙げられる。
抗マラリア剤としては、例えば、塩酸キニーネ等が挙げられる。
止潟剤としては、例えば、塩酸ロペラミド等が挙げられる。
向精神剤としては、例えば、クロルプロマジン等が挙げられる。
ビタミン類及びその誘導体としては、例えば、ビタミンA、ビタミンB1、フルスルチアミン、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、パントテン酸カルシウム及びトラネキサム酸等が挙げられる。
コーティング用組成物のみを被覆部(被覆層)としてもよく、コーティング用組成物からなる被覆部の下に、他のコーティング基剤を用いてアンダーコーティングを行っても良い。他のコーティング基剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の通常この分野で常用され得る種々のコーティング基剤を使用することができる。被覆部の形態は、特に限定されず、層状、フィルム状等であってもよい。
なお、平均粒子径は、体積換算粒子径であり、レーザー回折法を用いた粉体粒子径測定方法による。例えば、HELOS&RODOS(日本レーザー社製)を用いて測定できる。
また、薬物を含有する核粒子とコーティング用組成物からなるフィルム層の間に、ヒプロメロース等の通常この分野で常用され得る種々のコーティング基剤を用いてアンダーコーティングを行う工程を加えて、複数のフィルムを形成する方法も挙げられる。
固形製剤としては、錠剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤等が挙げられ、この中には口腔内崩壊錠も含まれる。固形製剤には、薬物含有粒子に加えて、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、凝集防止剤、医薬化合物の溶解補助剤等、通常この分野で常用され得る種々の添加剤を配合してもよい。
結合剤としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドン、グルコース、白糖、乳糖、麦芽糖、デキストリン、ソルビトール、マンニトール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、マクロゴール類、アラビアゴム、ゼラチン、寒天、でんぷん等が挙げられる。
滑沢剤、凝集防止剤としては、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、コロイダルシリカ、ステアリン酸、ワックス類、硬化油、ポリエチレングリコール類、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
医薬化合物の溶解補助剤としては、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、アジピン酸等の有機酸等が挙げられる。
双軸撹拌機を有する5Lニーダー型反応機にグルコース単位1個当たりのヒドロキシプロポキシ基置換モル数(MS)0.24、メトキシ基置換度(DS)1.89及び20℃における2質量%水溶液の粘度3.34mPa・sのヒドロキシプロピルメチルセルロース600gと、表1に示す量の氷酢酸、無水コハク酸、無水酢酸を酢酸ナトリウム存在下に、85℃で5時間、ヒドロキシプロピルメチルセルロースと無水コハク酸、無水酢酸とを反応させた。
次いで、反応液の粘度が150Pa・sとなるように反応液に水を加えた後、反応液の、4倍質量の25℃の水を反応液に徐々に加えて反応生成物(HPMCAS)を析出させた。25℃の水と混合する直前の反応液の温度は、19.3℃であった。
その後、析出物を十分に水洗後、乾燥した。乾燥品を2860μm(♯7.5)の目開きの篩にて篩過し、アセチル基のDSが0.57(9.6質量%)、スクシニル基のMSが0.31(12.2質量%)のHPMCAS粉末を得た。その最大径(L)と最小径(D)の比(L/D)の平均値は2.44であった。
HPMCAS粉末をアセトンへ溶解させたときの未溶解残渣の評価を下記方法にて実施した。アセトン20gを50mLビーカーに測り、20℃の恒温槽にて撹拌羽根を用いて約200rpmの速度で撹拌した。そこにHPMCAS粉末2gを添加し、添加1分後に撹拌羽根を停止し、測定用溶液を調製した。この溶液を42メッシュのフィルターへ通し、80℃で昼夜乾燥後、フィルター上の未溶解残渣の質量を測定した。
この結果、2gのHPMCASを20gのアセトンに溶解させた時の未溶解残渣は5.6mgであり、下記式による20℃における未溶解残渣率は0.28質量%であった。
未溶解残渣率(%)=(乾燥後の凝集塊質量/サンプル量)×100
HPMCAS粉末をアンモニア水溶液へ溶解させたときの未溶解残渣の評価を下記方法にて実施した。HPMCAS粉末26.6gを精製水238gに添加して300rpmの速度で、20℃の恒温槽にて撹拌して分散させた。ここに、HPMCAS中のカルボキシル基を中和するのに必要な10質量%アンモニア水溶液3.16gを加えて、添加30分後又は60分後に撹拌を停止して、42メッシュのフィルターにて濾過を行った。そして、この篩上物を80℃にて昼夜乾燥させ、未溶解残渣の質量を測定することにより、アンモニア水溶液へ溶解させたときの20℃における未溶解残渣率を求めた。
HPMCAS粉末を水とアルコールの混合液へ溶解させたときの未溶解残渣の評価を下記方法にて実施した。HPMCAS粉末24.5gを水とエタノールの2:8(質量比)の混合溶液220.5gに添加して300rpmの速度で撹拌して分散させて、HPMCAS粉末をアセトンへ溶解させたときの未溶解残渣率と同様に、20℃における未溶解残渣率を求めた。
合成例1の結果を表1〜2にまとめた。
反応液の粘度を179.2Pa・sとなるようにした以外は、合成例1と同様にしてアセチル基のDSが0.57(9.6質量%)、スクシニル基のMSが0.31(12.2質量%)のHPMCAS粉末を得た。なお、25℃の水と混合する直前の反応液の温度は、10.0℃であった。
得られたHPMCAS粉末の最大径(L)と最小径(D)の比(L/D)の平均値は2.54であり、合成例1と同様の方法にて、アセトン、アンモニア水溶液へ溶解させたときの20℃における未溶解残渣率を求めた。
合成例2の結果を表1〜2にまとめた。
精製水1428gに合成例1にて製造したHPMCAS粉末100gをプロペラ型撹拌機で撹拌しながら分散し、ここに10質量%アンモニア水溶液19gを加えて、30分間撹拌した。未溶解物は観察されず、速やかに透明な水溶液が得られた。
この水溶液にクエン酸トリエチル10g(HPMCAS100質量部に対して10質量部)及びタルク(クラウンタルク、松村産業社製)30g(HPMCAS100質量部に対して30質量部を加え、10分間撹拌してコーティング液中のHPMCASの濃度が7質量%であるコーティング用組成物を調製した。
リボフラビン(東京田辺製薬社製)2質量部、乳糖(フロイント産業社製、ダイラクトースS)90質量部、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(ヒドロキシプロピル基置換度11質量%)8質量部、ステアリン酸マグネシウム0.5質量部を混合し、ロータリー打錠機(菊水製作所製Virgo)にて、直径8mm、打錠圧1t、打錠予圧0.3t、回転数20rpm、一錠あたりの質量が200mgとなるように打錠し、素錠を作成した。
調整されたコーティング用組成物を用いて、下記条件にて素錠100質量部に対して固形分質量で7質量部までコーティングを行った。コーティング用組成物をフィルターに通した際のフィルターの目詰まりや、スプレーノズルの閉塞等は見られなかった。
装置:通気式パンコーター(内径33cm)
仕込み量:1kg
吸気温度:80℃
排気温度:42℃
吸気エアー量:1m3/分
パン回転数:24rpm
スプレー速度:6g/分
スプレーエアー圧:150kPa
得られたコーティング錠剤20錠について、第16改正日本薬局方記載の崩壊試験用第1液(pH1.2)900mLを用いて、同局方に基づき崩壊試験を行った。人工胃液に相当する第1液は、胃液に対する耐酸性を評価するものである。崩壊試験2時間後の錠剤欠損率及び試験前後の錠剤重量より第1液浸透率を測定し、耐酸性を調べた。錠剤欠損率が0%、且つ第1液浸透率が5%以下である場合を十分な耐酸性を有するものと定義し、評価した。その結果、皮膜の破れ、錠剤の膨らみ等の錠剤欠損はみられなかったため、十分な耐酸性を有していた。続いて、第16改正日本薬局方記載の崩壊試験用第2液(pH6.8)900mLを用いて同局方に基づき崩壊試験を行った。人工腸液に相当する第2液は、腸液に対する溶解性を評価するものである。崩壊試験を行った結果、速やかに溶出することを確認した。
エタノール/精製水=8:2(質量比)1328gに合成例1にて製造したHPMCAS粉末100gをプロペラ型撹拌機で撹拌しながら分散し、30分間撹拌してコーティング液中のHPMCASの濃度が7質量%であるコーティング液を調製した。未溶解物は観察されず、速やかに透明な水溶液が得られた。
リボフラビン(東京田辺製薬社製)2質量部、乳糖(フロイント産業社製、ダイラクトースS)90質量部、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(ヒドロキシプロピル基置換度11質量%、MS0.26)8質量部、ステアリン酸マグネシウム0.5質量部を混合し、ロータリー打錠機(菊水製作所製Virgo)にて、直径8mm、打錠圧1t、打錠予圧0.3t、回転数20rpm、一錠あたりの質量が200mgとなるように打錠し、素錠を作成した。
調整されたコーティング液を用いて下記条件にて、素錠100質量部に対して固形分質量で7質量部までコーティングを行った。コーティング液をフィルターに通した際のフィルターの目詰まりや、スプレーノズルの閉塞等は見られなかった。
装置:通気式パンコーター(内径33cm)
仕込み量:1kg
吸気温度:60℃
排気温度:35℃
吸気エアー量:1m3/分
パン回転数:24rpm
スプレー速度:15g/分
スプレーエアー圧:150kPa
得られたコーティング錠剤20錠について、実施例1と同様に評価した結果、皮膜の破れ、錠剤の膨らみ等の錠剤欠損はみられなかったため、十分な耐酸性を有していた。続いて、第16改正日本薬局方記載の崩壊試験用第2液(pH6.8)900mLを用いて同局方に基づき崩壊試験を行った結果、速やかに溶出することを確認した。
Claims (10)
- 最大径(L)と最小径(D)の比(L/D)の平均値が、2.0〜3.0であるヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル粉末。
- 比表面積が、2.0〜5.0m2/g以上である請求項1に記載のヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル粉末。
- ゆるめ嵩密度が、0.10〜0.25g/mLである請求項1又は請求項2に記載のヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル粉末。
- 前記ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル粉末に含まれる、20℃において質量比で10倍のアセトンに未溶解な成分の割合が、10質量%以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル粉末。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル粉末と、薬物と、溶媒を少なくとも含む溶液から前記溶媒を除去する工程とを少なくとも含む固体分散体用組成物の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル粉末を、水とアルコールの混合溶液及びアンモニア水溶液から選ばれる溶媒に溶解する工程とを少なくとも含むコーティング用組成物の製造方法。
- 請求項6に記載の製造方法によりコーティング用組成物を得る工程と、
薬物を含有する核粒子を前記コーティング用組成物で被覆して被覆部を形成する工程とを少なくとも含む薬物含有粒子の製造方法。 - 請求項7に記載の製造方法により薬物含有粒子を得る各工程と、
得られた薬物含有粒子を製剤化する工程と
を少なくとも含む固形製剤の製造方法。 - 前記固形製剤が、錠剤、顆粒剤又は細粒剤である請求項8に記載の固形製剤の製造方法。
- ヒプロメロース粉末を溶媒に溶解する溶解工程と、
触媒存在下、前記溶解されたヒプロメロースに無水コハク酸及び無水酢酸を反応させて反応液を得るエステル化工程と、
前記反応液と水を混合してヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルを析出させる析出工程であって、前記水と混合する直前の前記反応液の粘度が100〜200Pa・sである析出工程と
を少なくとも含むヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル粉末の製造方法。
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