JP2017186227A - ガラス基板の製造方法、及び、ガラス基板の製造装置 - Google Patents

ガラス基板の製造方法、及び、ガラス基板の製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】シートガラスに局所的に発生する板厚偏差を抑制できるガラス基板の製造方法等を提供する。
【解決手段】熔融ガラスをガラス供給管から供給溝を有する成形体に供給し、成形体を用いてオーバーフローダウンドロー法によりシートガラスを成形するガラス基板の製造方法であって、供給溝は、前記供給溝に供給される熔融ガラスが前記供給溝からオーバーフローする量が、前記供給溝の延在方向と、前記延在方向と直交する幅方向で均一になるような底面の形状を有し、ガラス供給管から供給溝に供給する熔融ガラスの最大温度差が30℃以下であり、かつ、熔融ガラスの粘度が22000dPa・s以上38000dPa・s以下である熔融ガラスを供給溝に供給し、成形体の下端で熔融ガラスを合流させてシートガラスを成形する成形工程と、成形工程で成形したシートガラスに局所的に発生する板厚偏差を抑制するようにシートガラスの幅方向の両端部を冷却する端部冷却工程と、を備える。
【選択図】図4

Description

本発明は、ガラス基板の製造方法、及び、ガラス基板の製造装置に関する。
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどのフラットパネルディスプレイに用いるガラス基板(以下、「ディスプレイ用ガラス基板」という)を製造するのに、オーバーフローダウンドロー法が使用される場合がある。オーバーフローダウンドロー法は、成形炉において熔融ガラスを成形体の上部から溢れ(オーバーフロー)させることにより成形体の下方において板状のシートガラスを成形する工程と、シートガラスを徐冷炉において徐冷する冷却工程とを含む。徐冷炉では、対になったローラ間にシートガラスを引き込み、ローラによりシートガラスを下方に搬送しながら所望の厚さに引き伸ばした後、シートガラスを徐冷する。この後、シートガラスを所定の寸法に切断することでガラス板が形成される。
成形体の側面に沿って流下する熔融ガラスは、成形体を離れると同時に、表面張力によりシートガラスの幅方向に収縮する。特許文献1には、成形体と成形体下方の引張りローラとの間において、シートガラスの幅方向の縁部の近傍において、シートガラスと離間して設けられた冷却ユニットを用いて、シートガラスの縁部の温度を調整し、シートガラスの収縮を抑制する方法が開示されている。その後、収縮が抑制されたシートガラスは、徐冷空間を通過して成形される。この徐冷空間では、雰囲気温度が所望の温度プロファイル(ガラス板に歪みが発生しないような温度分布)になるように制御され、ガラス板の板厚偏差、反り、歪みが抑制される。
特開平5−124827号公報
近年、液晶表示装置用ガラス基板においては、要求されるスペック(品質)が厳しくなっている。ガラス基板の表面には高い平坦性が求められ、要求スペックを満たすためには、特に急峻な凹又は凸による脈理又は局所的な板厚偏差の発生を抑制する必要がある。この脈理は、所定の幅においてシートガラスの厚み(高さ)が変動した凹凸であり、成形体を離れると同時に、表面張力によりシートガラスの幅方向に収縮することによりするものであり、シートガラスの搬送方向に筋状に連続的に発生する。
そこで、本発明は、シートガラスに発生する脈理を含む局所的な板厚偏差を抑制できるガラス基板の製造方法及びガラス基板の製造装置の提供を目的とする。
本発明の一態様は、熔融ガラスをガラス供給管から供給溝を有する成形体に供給し、前記成形体を用いてオーバーフローダウンドロー法によりシートガラスを成形するガラス基板の製造方法である。当該製造方法では、
前記供給溝は、前記供給溝に供給される熔融ガラスが前記供給溝からオーバーフローする量が、前記供給溝の延在方向と、前記延在方向と直交する幅方向で均一になるような底面の形状を有し、
前記ガラス供給管から前記供給溝に供給する熔融ガラスの最大温度差が30℃以下であり、かつ、熔融ガラスの粘度が22000dPa・s以上38000dPa・s以下である熔融ガラスを前記供給溝に供給し、前記成形体の下端で前記熔融ガラスを合流させてシートガラスを成形する成形工程と、
前記成形工程で成形した前記シートガラスに局所的に発生する板厚偏差を抑制するようにシートガラスの幅方向の両端部を冷却する端部冷却工程と、を備える。
前記端部冷却工程では、前記シートガラスの幅方向に前記成形体が変形していないときにかける、前記シートガラスの断面形状が目標形状になる張力を基準張力とし、前記成形体が変形していないときは、前記シートガラスの幅方向の両端部を冷却することにより前記基準張力になるよう制御し、前記成形体が変形しているときは、前記成形体の変形に応じて前記基準張力に加えた張力を前記シートガラスにかける、ことが好ましい。
このとき、前記成形体の変形は、前記成形体の使用に伴って経時変化するクリープ変形であって、前記クリープ変形による前記成形体の所定位置の変位量に応じた張力を前記基準張力に加える、ことが好ましい。
また、前記変形が大きいほど、前記両端部の冷却を強める、ことが好ましい。
前記板厚偏差は10μm以下である、ことが好ましい。
前記成形工程において、前記成形体を流下する熔融ガラスの温度が前記熔融ガラスの液相温度よりも10℃〜150℃高くなるように、前記熔融ガラスを加熱する、ことが好ましい。
本発明の他の一態様は、熔融ガラスをガラス供給管から供給溝を有する成形体に供給し、前記成形体を用いてオーバーフローダウンドロー法によりシートガラスを成形するガラス基板の製造装置である。
前記成形体は、最大温度差が30℃以下であり、かつ、粘度が22000dPa・s以上38000dPa・s以下である熔融ガラスの供給を受ける供給溝と、前記成形体の下端で前記熔融ガラスを合流させてシートガラスを成形するための壁面と、を有する。
前記供給溝は、前記供給溝に供給される熔融ガラスが前記供給溝からオーバーフローする量が、前記供給溝の延在方向と、前記延在方向と直交する幅方向で均一になるような底面の形状を有する。
前記製造装置は、さらに、前記成形体で成形した前記シートガラスに局所的に発生する板厚偏差を抑制するようにシートガラスの幅方向の両端部を冷却する端部冷却装置、を備える。
上述の態様のガラス基板の製造方法及びガラス基板の製造装置によれば、シートガラスに発生する局所的な板厚偏差を抑制できる。
本実施形態の製造方法のフローを示す図である。 ガラス基板の製造装置の概略図である。 本実施形態の製造方法に使用できる成形体の一例を示す斜視図である。 図3に示す装置を用いた本発明の製造方法の一例を説明する図である。 成形体の供給溝に接続されるガラス供給管の断面を示す図である。 本実施形態で用いるガラス供給管の長手方向における、ガラス供給管の中を流れる熔融ガラスの温度変化を表すグラフである。 取得部によって取得された成形体の形状変化の例を説明する図である。 クリープ変形した成形体により成形されたガラスリボンの断面の一例を示す図である。 成形体の変位量とガラスリボンにかける張力Tとの関係を示す図である。 (a)は、図4に示すA−A線に沿ったシードガラスの断面の一例を拡大した図であり、(b)は、図4に示すB−B線に沿ったシートガラスの断面の一例を拡大した図である。
以下、本実施形態のガラス基板の製造方法について説明する。
(ガラス基板の製造方法の全体概要)
図1は、本実施形態のガラス基板の製造方法の工程の一例を示す図である。ガラス基板の製造方法は、熔解工程(ST1)、清澄工程(ST2)、均質化工程(ST3)、供給工程(ST4)、成形工程(ST5)、徐冷工程(ST6)、および、切断工程(ST7)を主に有する。この他に、研削工程、研磨工程、洗浄工程、検査工程、梱包工程等を有してもよい。製造されたガラス基板は、必要に応じて梱包工程で積層され、納入先の業者に搬送される。
熔解工程(ST1)では、ガラス原料を加熱することにより熔融ガラスを作る。
清澄工程(ST2)では、熔融ガラスが昇温されることにより、熔融ガラス中に含まれる酸素、CO2あるいはSO2を含んだ泡が発生する。この泡が熔融ガラス中に含まれる清澄剤(酸化スズ等)の還元反応により生じた酸素を吸収して成長し、熔融ガラスの液面に浮上して放出される。その後、清澄工程では、熔融ガラスの温度を低下させることにより、清澄剤の還元反応により得られた還元物質が酸化反応をする。これにより、熔融ガラスに残存する泡中の酸素等のガス成分が熔融ガラス中に再吸収されて、泡が消滅する。清澄剤による酸化反応及び還元反応は、熔融ガラスの温度を制御することにより行われる。
なお、清澄工程は、熔融ガラスに存在する泡を減圧雰囲気で成長させて脱泡させる減圧脱泡方式を用いることもできる。減圧脱泡方式は、清澄剤を用いない点で有効である。しかし、減圧脱泡方式は装置が複雑化及び大型化する。このため、清澄剤を用い、熔融ガラス温度を上昇させる清澄方法を採用することが好ましい。
均質化工程(ST3)では、スターラを用いて熔融ガラスを撹拌することにより、ガラス成分の均質化を行う。これにより、脈理等の原因であるガラスの組成ムラを低減することができる。均質化工程は、後述する撹拌槽において行われる。
供給工程(ST4)では、撹拌された熔融ガラスが成形装置に供給される。
成形工程(ST5)及び徐冷工程(ST6)は、成形装置で行われる。
成形工程(ST5)では、熔融ガラスをシートガラスに成形し、シートガラスの流れを作る。成形には、オーバーフローダウンドロー法が用いられる。
徐冷工程(ST6)では、成形されて流れるシートガラスが所望の厚さになり、内部歪が生じないように、さらに、反りが生じないように冷却される。
切断工程(ST7)では、徐冷後のシートガラスを所定の長さに切断することで、板状のガラス基板を得る。切断されたガラス基板はさらに、所定のサイズに切断され、目標サイズのガラス基板が作られる。
図2は、本実施形態における熔解工程(ST1)〜切断工程(ST8)を行うガラス基板の製造装置の概略図である。ガラス基板の製造装置は、図2に示すように、主に熔解装置100と、成形装置200と、切断装置300と、を有する。熔解装置100は、熔解槽101と、清澄管102と、撹拌槽103と、移送管104、105と、ガラス供給管106と、を有する。
図2に示す熔解槽101には、図示されないバーナー等の加熱手段が設けられている。熔解槽には清澄剤が添加されたガラス原料が投入され、熔解工程(ST1)が行われる。熔解槽101で熔融した熔融ガラスは、移送管104を介して清澄管102に供給される。
清澄管102では、熔融ガラスMGの温度を調整して、清澄剤の酸化還元反応を利用して熔融ガラスの清澄工程(ST2)が行われる。具体的には、清澄管102内の熔融ガラスが昇温されることにより、熔融ガラス中に含まれる酸素、CO2あるいはSO2を含んだ泡が、清澄剤の還元反応により生じた酸素を吸収して成長し、熔融ガラスの液面に浮上して気相空間に放出される。その後、熔融ガラスの温度を低下させることにより、清澄剤の還元反応により得られた還元物質が酸化反応をする。これにより、熔融ガラスに残存する泡中の酸素等のガス成分が熔融ガラス中に再吸収されて、泡が消滅する。清澄後の熔融ガラスは、移送管105を介して撹拌槽103に供給される。
撹拌槽103では、撹拌子103aによって熔融ガラスが撹拌されて均質化工程(ST3)が行われる。撹拌槽103で均質化された熔融ガラスは、ガラス供給管106を介して成形装置200に供給される(供給工程ST4)。
成形装置200では、オーバーフローダウンドロー法により、熔融ガラスからシートガラスSGが成形され(成形工程ST5)、徐冷される(徐冷工程ST6)。
切断装置300では、シートガラスSGから切り出された板状のガラス基板が形成される(切断工程ST7)。
供給工程S4では、ガラス供給管106の中を流れる熔融ガラスの温度が制御される。具体的には、ガラス供給管106を通電加熱して、ガラス供給管106の中を流れる熔融ガラスを加熱し、かつ、ガラス供給管106を耐火物で囲むことで、ガラス供給管106の中を流れる熔融ガラスの放熱を抑制する。供給工程S4では、ガラス供給管106の中を流れる熔融ガラスの温度が、上流側から下流側に向かって徐々に低下するように、熔融ガラスの温度が制御される。ガラス供給管106は複数のセクションに区分され、熔融ガラスの温度はセクション別に制御される。ガラス供給管106を加熱する通電加熱装置は、測定装置の測定データに基づいて、熔融ガラスの温度が変化を示すように、ガラス供給管106の各セクションに流れる電流および電圧を制御する。ガラス供給管106において電流および電圧を制御することにより、成形装置200に供給する熔融ガラスの温度を適宜変更できる。ここで、ガラス供給管106の下流側の端部では、管温度および熔融ガラスの中心温度は、1235℃〜1265℃であることが好ましく、1240℃〜1260℃であることがより好ましい。
(成形体の構成)
次に、図3、図4を参照して、成形装置200が備える成形体1の構成について説明する。図3に、本実施形態の製造方法に使用できる成形体1の一例を、図4に、図3に示す成形体1を用いた本実施形態の製造方法における成形工程の一例を、それぞれ示す。成形体1は、熔融ガラスが供給される供給溝2が形成された上面3と、供給溝2の両側から溢れ出して上面3における供給溝2が延びる方向の両端部3a,3bの間から流れ落ちる熔融ガラスを誘導し、成形体1の下端4で融合させてシートガラスSGとする一対の壁面5(図3,4では一方の壁面のみが図示されている)と、壁面5の幅方向における双方の端部5a,5bの位置に形成された一対のガイド6a,6bとを備える。ガイド6a,6bは、それぞれ、端部5a,5bの位置で壁面5から突出するように互いに対向して形成されている。供給溝2から溢れ出た熔融ガラスは一対の壁面5のそれぞれを流下する。壁面5は、供給溝2から溢れ出た熔融ガラスが鉛直方向に流下する垂直壁面と、垂直壁面を流下した熔融ガラスを成形体1の下端4に導く、垂直壁面と接続した傾斜壁面と、を有する。壁面5を流下する熔融ガラスの一対の流れは成形体1の下端4で合流し、互いに合流する。このとき、ガイド6a,6bによって、壁面5に沿って流下する熔融ガラスの幅が規制され、例えば幅方向の厚さの均一性が高いシートガラスSGが連続して形成される。成形体1の下端4は、一対の壁面5同士(傾斜壁面同士)が接続した直線状の稜線を形成している。図3,4に示す符号2aは、供給溝2の底面2aであり、図3に示す符号7は、供給溝2に供給された熔融ガラスの液面7である。
ここで、成形体1の供給溝2は、供給溝2に供給される熔融ガラスが供給溝2からオーバーフローする量が、供給溝2の延在方向(熔融ガラスの流れ方向)と、この延在方向と直交する供給溝2の幅方向で均一になるような底面2aの形状を有する。供給溝2を流れる熔融ガラスの流量は、熔融ガラスの粘度、熔融ガラスの密度、供給溝2を流れる熔融ガラスの液面から底面2aまでの深さ、底面2aの幅に基づく式から算出される。この式に、熔融ガラスの流量の線密度が、ガラス供給管106が接続される溝始点側から溝終点側までの流れ方向において一定になる、つまり、オーバーフローする量が均一になる条件を加えることにより、供給溝2の底面2aの形状が求まる。また、成形体1の両端部3a,3bの位置における供給溝2は、熔融ガラスが供給溝2の両側に溢れ出して上面3の両端部3a,3bの位置から他の部分と同じように均一にオーバーフローするような底面2aから上面3までの高さを有する。上面3の両端部3a,3bから熔融ガラスがオーバーフローする際、熔融ガラスは、上面3から熔融ガラスの液面までの高さを有する。オーバーフローする際の底面2aから熔融ガラスの液面までの高さから上面3から熔融ガラスの液面までの高さを引いた底面2aの形状からなる溝カーブと、上面3と、の交点が、供給溝2の溝終点となる。これにより、ガラス供給管106が接続される供給溝2の溝始点から溝終点までの距離が求まり、成形体1の形状が決定される。
冷却ローラ8は、シートガラスSGの幅方向両端部を熱処理するユニットである。冷却ローラ8は、成形体1の下端4より下流側に配置されている。また、冷却ローラ8は、シートガラスSGの厚み方向両側、且つ、シートガラスSGの幅方向両側に配置される。すなわち、冷却ローラ8は、成形体1から離れたシートガラスSGを、成形体1の直下で熱処理する。シートガラスSGの厚み方向両側に配置された冷却ローラ8は対で動作する。したがって、シートガラスSGの幅方向両端部は、二対の冷却ローラ8によって挟み込まれる。冷却ローラ8は、内部に通された空冷管により空冷されている。冷却ローラ8は、シートガラスSGの端部SGaに接触し、熱伝導によりシートガラスSGの端部SGaを急冷する(端部冷却工程)。冷却ローラ8は、シートガラスSGの端部SGaの粘度が、109.0dPa・s以上になるようにシートガラスSGの端部SGaを急冷する。なお、冷却ローラ8は、好ましくは、シートガラスSGの端部SGaの粘度が、109.0〜1014.5dPa・sの範囲内になるようにシートガラスSGの端部SGaを急冷する。
ガイド6a,6bのそれぞれの近傍には、成形体1の上面3側から下端4側に延びるようにヒータが配置されており、一対の壁面5を流下する熔融ガラスにおけるガイド6a,6b近傍の部分、及び、壁面5を流下する熔融ガラスが、当該ヒータによって加熱される。この加熱は、壁面5を流下する熔融ガラスにおけるガイド6a,6b近傍の部分の粘度が、成形体1の上面3から下端4に至るまで(熔融ガラスの当該部分が成形体1の上面3から流下して下端4に至るまで)、当該熔融ガラスを構成するガラス組成物の液相粘度(以下、単に「液相粘度」ともいう)未満となるように、ガイド6a,6bに沿って行われる。
ガイドを備える成形体1を用いたオーバーフローダウンドロー法によるシートガラスSGの成形(および当該シートガラスSGを冷却して得るガラス基板の製造)では、ガイド近傍、すなわち成形するシートガラスSGの端部において失透が発生しやすい。これは、成形体1が収容される成形炉が、成形体1の下端で熔融ガラスを成形に適した粘度にすることを目的として、シートガラスSGの成形だけではなく熔融ガラスの冷却をも目的とする温度、すなわち熔融ガラスよりも低い温度、に通常設定されているために、熔融ガラスの熱がガイド6a,6bから奪われることで、ガイド6a,6b近傍の熔融ガラスの温度が熔融ガラスにおける他の部分の温度よりも低下しやすいこと、ならびにこのような温度の低下およびガイド6a,6bとの接触による物理的な抵抗によって、ガイド6a,6b近傍の熔融ガラスの流下速度が熔融ガラスにおける他の部分よりも低下しやすく、ガイド6a,6bに接してから成形体1を離れるまでに長時間要すること、などの理由によると考えられる。
特開2010-215428号公報の技術によれば、ガイドの下端で生じる失透が抑制できる可能性がある。しかし当該文献の技術では、ガイドの下端よりも上流の領域、特に、熔融ガラスがガイドと接触して冷え始めた初期に生じる失透を抑制することは難しく、一度生じた失透をガイドの下端の加熱で解消することもできない。また、フラットパネルディスプレイのガラス基板への使用に適した無アルカリガラス、アルカリ微量含有ガラスなどの、液相温度が高く、液相粘度が小さいガラス組成物、例えば、本実施形態の製造方法で使用される液相粘度が80000dPa・s以上100000dPa・s以下であり、液相温度が1200℃〜1220℃の範囲のガラス組成物から構成されるシートガラスを成形する場合に、このような失透が特に発生しやすくなる。
本実施形態の製造方法では、成形体1の壁面5を流下する熔融ガラスにおけるガイド6a,6b近傍の部分の粘度が、成形体1の上面3から下端4に至るまで液相粘度未満を保つように(当該部分の温度が、成形体1の上面3から下端4に至るまで液相温度以上となるように)、ガイド6a,6bに沿って熔融ガラスにおける当該部分を加熱する。これにより、熔融ガラスのガイド近傍の部分(熔融ガラスの端部)における失透を抑制する高い効果が得られ、熔融ガラスを構成するガラス組成物が80000dPa・s以上100000dPa・s以下の小さい液相粘度を有し、かつ、1200℃〜1220℃の範囲の液相温度を有する場合にも、当該端部における失透の発生が抑制される。
本明細書において、液相温度とは、熔融体と結晶の初相との間の平衡温度で、その温度超では結晶が存在しない温度のことであり、液相粘度とは、ガラスが上記液相温度となる粘度のことである。
図5は、成形体1の供給溝2に接続されるガラス供給管106の断面を示す図である。ガラス供給管106内において、ガラス供給管106の中心領域106aを流れる熔融ガラスの温度と周辺領域106bを流れる熔融ガラスの温度とを比較すると、中心領域106aを流れる熔融ガラスの温度が高くなる。中心領域106aと周辺領域106bとの温度差(粘度差)がある状態で、成形体1の供給溝2に熔融ガラスが供給されると、成形体1が設けられた空間内において熔融ガラスが加熱されても、ガラス供給管106から成形体1の上面3に達するまでには熔融ガラスの温度差は改善されず、熔融ガラスの温度差が残った状態で成形体1の上面3から下端4に向かってオーバーフローすることとなる。成形体1の上面3でオーバーフローする時点で熔融ガラスに温度差があると、熔融ガラスの流れが局所的に変化する(滞る)ため、熔融ガラスが均一にオーバーフローせず、成形体1の壁面5を流下する熔融ガラスの厚み(量)が変化し、下端4で成形されるシートガラスSGの厚みが局所的に異なることとなる。これにより、シートガラスSGには、脈理を含む局所的な板厚偏差が生じる。シートガラスの両端部SGaは冷却ローラ8により冷却され、シートガラスSGには両端部SGa方向に向かう張力がかかるため、シートガラスSGに発生した板厚偏差は低減する。このような原理により発生するシートガラスSGの板厚偏差を10μm以下に抑制するためには、成形体1の供給溝2に供給する際のガラス供給管106内における熔融ガラスの最大温度差、及び、熔融ガラスの粘度が重要となる。
本実施形態の製造方法では、ガラス供給管106から成形装置200(成形体1の供給溝2)に供給する際の熔融ガラスの最大温度差(ガラス供給管106の中心領域106aと周辺領域106bとの温度差)を、30℃以下にすることが好ましく、20℃以下にすることがより好ましく、10℃以下にすることがより好ましい。また、熔融ガラスの最大粘度差(ガラス供給管106の中心領域106aと周辺領域106bとの粘度差)を、19000dPa・s以下にすることが好ましく、12500dPa・s以下にすることがより好ましく、6200dPa・s以下にすることがより好ましい。供給溝2に供給する熔融ガラスは成形体1が設けられた空間内において加熱されるため、成形体1の供給溝2から上面3に達するまでに、熔融ガラスの温度差は、供給溝2の供給時の温度差よりさらに小さくなり、例えば10℃以下となる。このような温度差の状態で、上面3から熔融ガラスをオーバーフローさせると、熔融ガラスが均一にオーバーフローし、壁面5を流下する熔融ガラスの厚み(量)が均一となる。下端4で合流した熔融ガラスは、シートガラスSGに成形される。下端4におけるシートガラスSGの板厚偏差は10μmより大きいが、シートガラスの両端部SGaに向かって張力がかかるように冷却ローラ8によりシートガラスの両端部SGaを冷却することにより、シートガラスSGに発生する局所的な板厚偏差は10μm以下となる。シートガラスの両端部SGaを冷却することにより低減できる板厚偏差の量は、熔融ガラスの粘度に影響する。
本実施形態の製造方法では、ガラス供給管106を介して熔融ガラスを成形装置200(成形体1の供給溝2)に供給する際の熔融ガラスの粘度は、22000dPa・s以上38000dPa・s以下であることが好ましく、25000dPa・s以上38000dPa・s以下であることがより好ましく、25000dPa・s以上35000dPa・s以下であることがより好ましい。成形体1の供給溝2に供給する熔融ガラスの粘度を低くする、つまり、熔融ガラスの温度を高くすると、成形体1のクリープ現象が顕著となり、成形開始からの時間の経過に従ってシートガラスの中央部が垂れ下がるなどの問題も生じる。一方、成形体1の供給溝2に供給する熔融ガラスの粘度を高くする、つまり、熔融ガラスの温度を低くすると、シートガラスに板厚偏差が発生しやすく、また、失透が発生しやすい。このため、板厚偏差、及び、失透の発生を防ぎつつ、成形体1のクリープ現象を抑制できる熔融ガラスを、成形体1に供給する必要がある。成形装置200に供給する際の熔融ガラスの粘度を、22000dPa・s以上38000dPa・s以下であることが好ましい。上記粘度は、熔融ガラスの平均温度によって、ガラス組成によって定まる粘度である。以下、この粘度のことを平均温度に基づく粘度という。
熔融ガラスを構成するガラス組成物の液相粘度が80000dPa・s以上100000dPa・s以下である場合、成形体1で成形する熔融ガラスの粘度が最も高くなる成形体1の下端において失透を防止するために、熔融ガラスの粘度が、80000dPa・s未満になるように熔融ガラスの粘度を制御する。成形体1のクリープ現象を抑制するために、成形体1の供給溝2に供給する熔融ガラスの粘度を高くしつつ、成形体1の下端において熔融ガラスの粘度が80000dPa・s未満となるように、熔融ガラスを成形体1の供給溝2に供給する。本実施形態の製造方法では、成形体1の供給溝2に供給する熔融ガラスの粘度(平均温度に基づく粘度)は、下限は22000dPa・sから25000dPa・sであり、上限は35000dPa・sから38000dPa・sである。
供給溝2に供給する熔融ガラスの粘度が小さくなることにより、熔融ガラスが供給溝2に供給されてから、上面3からオーバーフローするまでの時間が短くなる。このため、この時間の間に熔融ガラスが受け取る熱量は減少する。熔融ガラスは供給溝2内において温度差が小さくなるように加熱されるが、供給からオーバーフローするまでの時間が短いと温度差を解消できず、温度差がある状態でオーバーフローする。すると、流下する速度が局所的に変化する個所が発生し、板厚偏差の原因となる。成形体1の供給溝2に供給する熔融ガラスの粘度(平均温度に基づく粘度)を22000dPa・sから38000dPa・sにすることにより、成形体1の下端4で合流して成形されるシートガラスSGは低粘度となり冷却ローラ8の冷却効果を受けやすく、幅方向の端部側に引き伸ばされて、シートガラスSGの板厚偏差の抑制効果が大きくなる。一方で、熔融ガラスが低粘度になるとオーバーフローするまでの時間が短くなるため、熔融ガラスの温度差(粘性差)があると、この温度差(粘性差)によって板厚偏差が生じる。このため、供給溝2に供給する熔融ガラスの最大温度差を、30℃以下にする。これら2つの条件を満たす熔融ガラスを供給溝2に供給することにより、シートガラスSGの板厚偏差を10μm以下にすることができる。
供給溝2に供給する熔融ガラスの最大温度差を、30℃以下にするには、ガラス供給管106を流れる熔融ガラスの温度管理が重要であり、ガラス供給管106の管の長手方向に図6に示すように複数のセクションSC1〜SC9および複の管区分PP1〜PP3に区切って温度の調整が行われる。図6は、ガラス供給管106の管の長手方向における、ガラス供給管106の中を流れる熔融ガラスの温度変化を表すグラフである。図6において、実線L1は、ガラス供給管106の内周面に接触する熔融ガラスの温度、すなわち、ガラス供給管106の温度である「管温度」の変化を表し、点線L2は、ガラス供給管106の断面中心の熔融ガラスの温度である「中心温度」の変化を表す。図6において、鎖線L3は、単位断面積当たりの熔融ガラスの質量流量で重み付け平均したガラス平均温度を表す。この平均温度を用いて、熔融ガラスの、平均温度に基づく粘度は求められる。
図6に示される熔融ガラスの温度変化について説明すると、ガラス供給管106に流入する熔融ガラスは、均質化工程ST3において均質化された熔融ガラスであるので、第1管区分PP1(セクションSC1〜SC5)に流入する熔融ガラスの管温度と中心温度との差はゼロである。第1管区分PP1は、ガラスの失透温度を下回らない程度まで熔融ガラスを冷却するための領域である。第1管区分PP1では、管温度および中心温度が徐々に低下し、かつ、ガラス供給管106からの放熱によって、管温度と中心温度との差が徐々に増加する傾向にある。第1管区分PP1と第2管区分PP2との境界において、管温度と中心温度との差は、100℃以下であることが好ましい。図6において、第1管区分PP1では、ガラス平均温度は、1470℃から1260℃まで低下する。
第2管区分PP2では、管温度の低下が抑制される。第2管区分PP2を流れる電流は、第1管区分PP1を流れる電流よりも高い。そのため、通電加熱によって第2管区分PP2に付与される熱量は、通電加熱によって第1管区分PP1に付与される熱量よりも大きい。そのため、第2管区分PP2では、ガラス供給管106からの放熱が抑制され、ガラス供給管106の温度がほぼ一定に維持される。このとき、第2管区分PP2内では、ガラス供給管106の断面中心の熔融ガラスから、ガラス供給管106の内周面に接触する熔融ガラスに向かって熱が移動するので、中心温度は徐々に低下する。その結果、第2管区分PP2では、管温度と中心温度との差が徐々に減少する傾向にある。第2管区分PP2と第3管区分PP3との境界において、管温度と中心温度との差は、50℃以下であることが好ましい。図6において、第2管区分PP2では、ガラス平均温度は、1260℃から1250℃まで低下する。
なお、第2管区分PP2の第7セクションSC7では、ガラス供給管106の内径が減少する。そのため、第2管区分PP2では、ガラス供給管106の外周面の面積が徐々に減少するので、ガラス供給管106を介する熔融ガラスの放熱が抑制される。すなわち、第2管区分PP2では、高電流の付与と内径の減少との2つの要因によって、管温度と中心温度との差が徐々に減少する。
第3管区分PP3では、熔融ガラスの管温度と中心温度との最大温度差が30℃以下になる。第3管区分PP3を囲む耐火物の断熱性能は、第1管区分PP1及び第2管区分PP2を囲む耐火物106より優れている。そのため、第3管区分PP3では、第1管区分PP1および第2管区分PP2と比べて、ガラス供給管106を介する熔融ガラスの放熱がより抑制される。また、第3管区分PP3を流れる電流は、第2管区分PP2を流れる電流よりも低く、通電加熱によって第3管区分PP3に付与される熱量は、通電加熱によって第2管区分PP2に付与される熱量よりも小さい。そのため、第3管区分PP3の中を流れる熔融ガラスの温度の上昇が抑制される。これにより、第3管区分PP3では、ガラス平均温度がほぼ一定となる状態で、熔融ガラス内での熱移動によって管温度と中心温度との差がさらに減少する。図6において、第3管区分PP3では、ガラス平均温度は、1250℃を維持している。
なお、ガラス供給管106を通過する熔融ガラスの温度の好ましい範囲は以下の通りである。ガラス供給管106の上流側の端部では、管温度および中心温度は、1420℃〜1470℃であることが好ましい。第1管区分PP1と第2管区分PP2との境界では、管温度は、1210℃〜1260℃であり、中心温度は、1300℃〜1350℃であることが好ましい。第2管区分PP2と第3管区分PP3との境界では、管温度は、1210℃〜1260℃であり、中心温度は、1250℃〜1300℃であることが好ましい。ガラス供給管106の下流側の端部では、管温度および中心温度は、1235℃〜12665℃であることが好ましい。
このようなガラス供給管106による熔融ガラスの温度調整により、供給溝2に供給する熔融ガラスの最大温度差を、30℃以下にする。
なお、熔融ガラスの中心温度の測定は、温度計で困難な場合があるので、この場合、ガラス供給管106からの単位時間、単位面積の放熱量の情報と、ガラス供給管106の単位時間、単位面積の加熱量の情報と、ガラス供給管106に流入する際の熔融ガラスの温度及び流量の情報を用いて、ガラス供給管106の管温度の測定結果からコンピュータシミュレーションによって求めることができる。
なお、上述する管温度は、ガラス供給管106の各位置に取り付けられた温度計(不図示)によって測定される。粘度は、ガラス供給管106が成形体1の供給溝2と接続する部分に取り付けられた粘度計(不図示)によって測定される。粘度計は、例えば、細管式粘度計あるいは回転式粘度計が用いられる。細管式粘度計は、測定対象の熔融ガラスを細管に通し、熔融ガラスが細管を通過する時間(流量)と、細管の両端の圧力差とから、熔融ガラスの粘度を測定する。回転式粘度計は、回転体から熔融ガラスが受ける抵抗である粘性抵抗を、回転体の回転トルク等から読み取ることによって、熔融ガラスの粘度を測定する。
本実施形態の製造方法では、成形体1の壁面5を流下する熔融ガラスにおけるガイド6a,6b近傍の部分の温度が、成形体1の上面3から下端4に至るまで液相温度よりも10℃以上高い温度となるように当該部分を加熱することが好ましく、液相温度よりも15℃以上高い温度となるように当該部分を加熱することがより好ましい。これらの場合、成形するシートガラスの端部における失透の発生がより確実に抑制される。具体的な液相温度は、ガラス組成物の組成によって異なる。
本実施形態の製造方法では、成形工程において、成形体1の壁面5を流下する熔融ガラスにおけるガイド6a,6b近傍の部分の温度が、成形体1の上面3から下端4に至るまで液相温度よりも10℃〜150℃高くなるように(液相温度よりも10℃以上高く、かつ液相温度に150℃を加えた温度以下となるように)、ガイドに沿って当該部分を加熱することが好ましい。これにより、成形体1の変形、および成形後のシートガラスSGにおける幅方向の収縮を抑制できる。成形体1の壁面5を流下する熔融ガラスにおけるガイド6a,6b近傍の部分の温度が、成形体1の上面3から下端4に至るまで液相温度よりも15℃〜100℃高くなるように、ガイドに沿って当該部分を加熱することがさらに好ましい。
熔融ガラスが成形体1から離れた後の端部の急冷(シートガラスSGの端部SGaの急冷)と組み合わせることにより、シートガラスSGの板厚偏差が10μm以下となる。また、当該端部SGaにおける失透の発生の抑制がさらに確実になる。
成形体1の壁面5を流下する熔融ガラスにおけるガイド6a,6b近傍の部分の温度が成形体1の上面3から下端4に至るまで液相温度よりも十分に高くなるように成形体1を流下する熔融ガラス全体の温度を液相温度よりも十分に高温とすることによっても理論上は失透が抑制される。しかし、液相温度が高いガラスを製造する場合、現実には、オーバーフローダウンドロー法にこのような方法を適用できない。オーバーフローダウンドロー法によるシートガラスの成形に適切な熔融ガラスの粘度が存在するためである(下記のようなシートガラスの弛みやシートガラスの幅の収縮の問題が生じないようにするためには、成形体1の下端4における熔融ガラスの粘度が40000dPa・s以上であることが好ましく、70000dPa・s以上であることがより好ましい)。熔融ガラスにおけるガイド近傍の部分の温度が液相温度よりも十分に高くなるように、成形体1を流下する熔融ガラス全体の温度を液相温度よりも十分に高温にすると、あるいは成形体1の下端4での加熱を過度に行うと、成形体1の下端4における熔融ガラスの粘度が上記適切な範囲よりも小さくなってしまう可能性がある。すると、成形体1を離れた後のシートガラスの粘度が十分に上昇せず、成形体1の下流側に配置された搬送ローラによる引張速度以上の速度でシートガラスが落下して当該ロール上でシートガラスが弛んだり、シートガラスの幅が収縮したりする問題が発生する。また、成形体の温度が高くなればなるほど、成形体の使用に伴って経時変化するクリープ現象が顕著となり、成形開始からの時間の経過に従ってシートガラスの中央部が垂れ下がるなどの問題も生じる。ガラス基板として所望される厚さおよび成形後の徐冷工程で実施されるシートガラスの温度制御を考慮すると、搬送ローラによる引張速度の増加には限界がある(徐冷工程で実施されるシートガラスの温度制御を考慮すると、シートガラスの搬送速度は50〜500m/時が好ましく、100〜400m/時が好ましく、120〜300m/時が好ましい)。
また、熔融ガラスにおけるガイド近傍の部分の温度が液相温度よりも十分に高くなるようにすると、成形するシートガラスの幅が収縮してガラス基板としての製品幅が確保できない。また、成形体1を流下する熔融ガラス全体の温度を液相温度よりも十分に高温にすると成形体1のクリープ現象が生じ、このクリープ現象が顕著になると、製造するガラス基板の板厚の均一性が低下する。
成形体1における熔融ガラスが流れる壁面から突出するガイドの高さは、成形装置の下方の位置ほど低くなることが好ましい。成形体1の下端4が、両側の傾斜壁面同士が接続した直線状の稜線であり、一対のガイドの傾斜した壁面における高さが、当該稜線の位置において0(ゼロ)であることが好ましい。これにより、シートガラスの端部(耳部)が二叉形状に開くことがさらに抑制され、ガラス基板をより安定して連続的に生産することができる。
冷却ローラ8の冷却量、回転量は、制御装置(図示せず)によって制御される。制御装置は、主として、CPU、RAM、ROMおよびハードディスク等から構成されるコンピュータである。制御装置は、冷却ローラ8を駆動させる駆動モータを制御して、シートガラスSGの幅方向の端部SGaを挟む一対の冷却ローラ8とシートガラスSGとの間の接触荷重を取得および調節することができる。制御装置は、各冷却ローラ8の冷却量を個別に制御する。さらに、制御装置は、下記に説明する、シートガラスSGの厚さ方向の断面の形状が目標形状になることを目的として、冷却ローラ8による冷却によってシートガラスSGにかける張力を制御するために、搬送部、取得部、判定部および制御部として機能する4つのプログラムを少なくとも記憶して実行する。
搬送部は、成形体1の下方に設置されている搬送ローラを用いて、成形体1によって成形されたシートガラスSGを、徐冷空間において所定の搬送速度で下方に搬送する。搬送部は、搬送ローラを駆動させる駆動モータを制御して、搬送ローラの回転速度を調節することで、シートガラスSGの搬送速度を調節する。
取得部は、コンピュータシミュレーションによって成形体1の形状の時間変化を求めることで、成形体1の現在の形状に関する形状データを取得する。具体的には、取得部は、クリープ特性パラメータに基づいて形状データを取得する。クリープ特性パラメータは、成形体1に加えられる応力、成形体1の温度、および、クリープ変形による成形体1の歪み速度の間の関係を再現するためのパラメータである。ここで、成形体1に加えられる応力は、成形体1の長手方向(供給溝2の延在方向)に沿って成形体1を圧縮する力である。また、成形体1の歪み速度は、時間に依らず一定であると仮定する。最初に、取得部は、成形体1に加えられる応力が一定である条件下における、成形体1の歪み速度の、成形体1の温度依存変化を測定する。次に、取得部は、成形体1の温度が一定である条件下における、成形体1の歪み速度の、成形体1に加えられる応力依存変化を測定する。次に、取得部は、成形体1の歪み速度の温度依存変化および応力依存変化の測定値が再現できるクリープ特性パラメータを決定する。そして、取得部は、コンピュータシミュレーションにより、決定されたクリープ特性パラメータを用いて所定の温度および応力下における成形体1の歪み速度を算出して成形体1の形状の時間変化を求めることで、成形体1の形状データを取得する。図7は、取得部によって取得された成形体1の形状データの一例である。図7は、成形体1によって成形されたシートガラスSGの表面に垂直な方向に沿って見た成形体1を示す。図7では、成形体1のクリープ変形が実際よりも強調して示されている。図7では、未使用の成形体1の形状、すなわち、クリープ変形する前の成形体1の形状が点線で示され、かつ、クリープ変形した後の成形体1の現在の形状が実線で示されている。
取得部は、成形体1のクリープ変形に基づく形状データから、成形体1の上面3の鉛直方向の変位量である上面変位量を少なくとも取得する。図7において、上面変位量は、クリープ変形前の上面3とクリープ変形後の上面3との間の鉛直方向の寸法である。なお、図7には、成形体1の長手方向における上面変位量の最大値である最大上面変位量Lが示されている。また、取得部は、ガラス基板形状測定装置(図示せず)によって測定されたガラス基板の厚みデータを取得する。厚みデータは、例えば、成形装置200によって製造されたガラス基板の厚みの幅方向のプロファイルである。
判定部は、取得部により取得された変位量Lが基準量になったか否か判定する。ここで、基準量とは、シートガラスSGに対して一定の張力(初期の張力)をかけて、シートガラスSG(ガラス基板)を成形予定の厚み(例えば0.1mm〜0.8mm)に成形した際に、板厚偏差が±10μmを満たすことができる量である。シートガラスSGにかける張力を初期値から変化させない場合、変位量Lが基準量を超えると、シートガラスSGの板厚偏差が±10μmを超える。このため、シートガラスSGにかける張力を初期の張力より増大させることにより、シートガラスSGの板厚偏差が±10μm以内になるようシートガラスSGの厚みを制御する。基準量は、初期の張力、シートガラスSGの成形予定の板厚、板厚偏差などによって任意に変更でき、例えば、3mm〜30mmである。
制御部は、成形されたシートガラスSGの幅方向(成形体1の長手方向)に沿って成形体1が変位していないときにかける、シートガラスSGの厚さ方向の断面形状が目標形状になる張力を基準張力(初期の張力)とし、冷却ローラ8の冷却量を制御することによりシートガラスSGの幅方向の両端部SGaを冷却することにより、シートガラスSGにかける張力が基準張力になるよう制御する。成形体1が変位していない状態において、シートガラスSGの幅方向に基準張力をかけることにより、シートガラスSGが成形予定の板厚になり、板厚偏差が±10μmを満たす。成形体1がクリープ変形している状態において、シートガラスSGにかける張力が基準張力のままであると、目標形状にならず、例えば成形予定の板厚が成形されず、また、板厚偏差が±10μmを満たさなくなる。このため、制御部は、基準張力に加え、成形体1の変位に応じた張力をシートガラスSGにかける。ここで、成形体1の変位は、例えば、成形体1の長手方向における上面変位である。制御部は、取得部によって取得された成形体1の形状データに基づいて、シートガラスSGの厚さが成形予定の厚みになるように、また、シートガラスSGの幅方向の板厚偏差が小さくなるように、冷却ローラ8の冷却量を制御することにより、シートガラスSGにかける張力を制御する。成形体1の形状データは、例えば、成形体1の長手方向における上面変位量のプロファイルである形状プロファイルである。制御部は、形状プロファイルから求められる上面3の変位量が大きいほど、シートガラスSGの幅方向への張力が大きくなるように冷却ローラ8の冷却量を制御する。形状プロファイルから求められる上面3の変位量としては、例えば、最大上面変位量Lが用いられる。
成形体1の下端4で成形されるシートガラスSGは下端4から離れると、自身の表面張力により中央領域SGbが幅方向の中央に向かって収縮し始める。このため、冷却ローラ8がシートガラスSGの両端部SGaを冷却して両端部SGaの粘度を上昇させて、中央領域SGbから両端部SGaに向かって張力がかかるようにしてシートガラスSGが幅方向に収縮するのを抑制し、シートガラスSGの中央領域SGbの厚さが均一になるようにしている。しかし、成形体1がクリープ変形すると、シートガラスSGの中央領域SGb付近の熔融ガラス量が増えて、中央領域SGbの厚みが変化する。すなわち、シートガラスSGの厚保さ方向の断面形状は目標形状でなくなる。図8は、成形体1のクリープ変形により、中央領域SGb付近の厚みが増したシートガラスSGを示す図である。成形体1がクリープ変形すると、上面3の端部3aと端部3bとの間から溢れ出る熔融ガラスの量が増えるため、シートガラスSGの中央領域SGb付近の厚みが増す。図8では、中央領域SGb付近の厚みが、成形予定の厚みより最大でD1厚くなり、中央領域SGbの厚さが不均一になっている。そこで、制御部は、成形体1の形状データに応じて、冷却ローラ8の冷却量を変化させて、シートガラスSGの中央領域SGbから両端部SGaに向かって張力がかるようにしてシートガラスSGが幅方向に収縮するのを抑制し、シートガラスSGの中央領域SGbの厚さが均一になるようにしている。
図9は、成形体1の最大上面変位量LとシートガラスSGにかける張力Tとの関係を示す図である。図9では、最大上面変位量Lを変位量Lと記載している。制御部は、判定部により成形体1の最大上面変位量LがL1を超えていないと判定された場合、成形体1のクリープ変形によるシートガラスSGの中央領域SGbの厚さの変化は無視できるものとして、シートガラスSGにかける張力Tを、初期値T1(変位量Lの範囲:0以上L1未満)から変化させない。成形体1の変位量LがL1未満であれば、制御部が、冷却ローラ8の冷却量を変化させずに、張力Tを初期値T1で維持することにより、成形されるシートガラスSGの板厚偏差が±10μmを満たす。制御部は、判定部により成形体1の変位量LがL1を超えていると判定された場合、図9に示すように、最大上面変位量Lに対応する張力TがシートガラスSGにかかるように制御する。最大上面変位量LがL1以上になると、図8に示すように、シートガラスSGの中央領域SGbの厚さが増し、厚さが均一でなくなってくる。このため、制御部は、変位量Lに対応するように、シートガラスSGの中央領域SGbから両端部SGaに向かって、初期値T1より大きい張力T=T1+A×最大上面変位量L(変位量Lの範囲:L1以上Lm未満、A:係数)がシートガラスSGにかかるように制御する。制御部は、成形体1の変形が大きいほど、両端部SGaの冷却を強める。具体的には、冷却ローラ8の冷却量を増加させて、両端部SGaの粘度を上昇させる。両端部SGaの粘度が高くなると、中央領域SGbから両端部SGaに向かう張力Tが大きくなり、シートガラスSGの中央領域SGbにある熔融ガラスが両端部SGaに引っ張られて、中央領域SGbの厚みが成形予定の厚みに近づいて、厚さが均一になる。制御部は、両端部SGaの粘度を、例えば、109.0dPa・sから1014.5dPa・sまで増加させることにより、張力Tが大きくなるように制御する。
なお、最大上面変位量Lの範囲が、L1以上Lm未満である場合、張力TをT1からTmに制御することにより、中央領域SGbの厚みが成形予定の厚みに近づいて、厚さが均一になるが、変位量LがLmを超えて変位した場合、張力Tを制御するだけでは、中央領域SGbの厚みを成形予定の厚みに近づけつつ、厚さを均一にすることが困難なため、判定部により成形体1の定期的な交換時期に到達したと判定される。
また、成形体1のクリープ変形により、シートガラスSGの局所的な板厚偏差(表面凹凸差)も変化する。シートガラスSGの体積収縮量は、シートガラスSGの端部SGaから中央領域SGbに向かうにつれて大きくなるので、シートガラスSGの中央領域SGbにおいて引張り応力が働く。中央領域SGb付近の厚みが厚くなり、両端部SGaから中央領域SGbに向かう張力が大きくなることによって、シートガラスSGの表面凹凸差が大きくなる。図10(a)は、図4のA−A線の断面を拡大した図であり、図10(b)は、図4のB−B線の断面を拡大した図である。冷却ローラ8によりシートガラスSGに張力Tをかける前では、シートガラスSGは、中央領域SGbに向かって収縮するため、シートガラスSGの表面凹凸差はD2となり、冷却ローラ8によりシートガラスSGに張力Tをかけた後では、シートガラスSGの表面凹凸差は、D2より小さいD3となる。成形体1がクリープ変形すると、シートガラスSGの表面凹凸差D2、D3も大きくなる。このため、最大上面変位量Lに対応するように、中央領域SGbから両端部SGaに向かう張力Tをかけることにより、シートガラスSGが両端部SGaに引っ張られるため、シートガラスSGの表面凹凸差D3は小さくなる。中央領域SGbの厚みを成形予定の厚みに近づけるために、最大上面変位量Lに対応するように張力Tをかけることによって、シートガラスSGの表面凹凸差D3が小さくなり、シートガラスSGの中央領域SGbの厚さが均一になる。
また、制御部は、シートガラスSGに張力Tをかけることにより、シートガラスSGの搬送方向に発生するおそれのある脈理を抑制することもできる。脈理は、所定の幅の範囲でシートガラスSGの厚み(高さ)が変動した歪みの一種であり、シートガラスSGの搬送方向に筋状に連続的に発生する。また、脈理の要因にはガラスの粘度差も含まれる。制御部が冷却ローラ8の冷却量を制御することによりシートガラスSGの幅方向に張力がかけられると、シートガラスSGの表面凹凸の一種である局所的に発生する脈理は、シートガラスSGの両端側SGaに引き伸ばされて、表面凹凸差が小さくなり、局所的な板厚偏差が±10μmを満たすシートガラスSGが成形される。
以上説明したように、成形体1の下端4において、シートガラスSGにかけるシートガラスSGの幅方向の張力Tを、成形体1のクリープ変形による変位量に対応させて変化させることにより、中央領域SGbの厚みを成形予定の厚みに近づけつつ、厚さを均一にすることができる。成形体1のクリープ変形により、成形体1の長手方向の中央部が下方に垂れ下がって撓んだ場合、冷却ローラ8の冷却量を増大して、シートガラスSGにかかるシートガラスSGの幅方向の張力Tを大きくすることで、シートガラスSGの幅方向の板厚偏差を低減することができる。その結果、最終製品であるガラス基板の板厚偏差を低減することができる。
また、液相温度の高いガラス、および、歪点の高いガラスを用いるガラス基板の製造工程において、成形体1のクリープ変形は、成形体1の温度が高くなりやすいために特に問題となりやすい。また、近年、ガラス基板の大型化が進み、成形体の長手方向の寸法が長くなってきているので、クリープ変形による成形体1の撓みがより顕著となる傾向にある。本実施形態では、冷却ローラ8の冷却量を調節して、シートガラスSGにかかる張力Tを変化させることで、成形体1のクリープ変形に起因するシートガラスSGの幅方向の板厚偏差を効果的に低減することができる。
本実施形態の製造方法によれば、熔融ガラスを構成するガラス組成物の液相温度が高く、液相粘度が小さい場合、例えば、ガラス組成物が無アルカリガラス、アルカリ微量含有ガラスなどの場合においても、成形するシートガラスの端部における失透を抑制する効果が得られる。すなわち、熔融ガラスを構成するガラス組成物の液相温度が高く、液相粘度が小さい場合に、本実施形態の製造方法によってもたらされる利点が大きい。
本実施形態の製造方法では、熔融ガラスを構成するガラス組成物の液相粘度は10000dPa・s以下である。このようなガラス組成物では、従来、オーバーフローダウンドロー法によるシートガラスの成形において端部における失透の問題が発生しやすい。しかし、本実施形態の製造方法では、失透抑制の効果が得られる。
本実施形態の製造方法に用いる熔融ガラスの液相粘度は100000dPa・s以下である。液相粘度が100000dPa・s以下であるガラス組成物では上記失透の問題がより顕著となるが、本実施形態の製造方法では失透抑制の効果が得られる。オーバーフローダウンドロー法によるシートガラスの成形を安定して実施できる観点からは、液相粘度は80000dPa・s以上が好ましい。
本実施形態の製造方法において用いる熔融ガラスを構成するガラス組成物の液相温度は1200℃以上1220℃以下であることが好ましい。このようなガラス組成物では、従来、オーバーフローダウンドロー法によるシートガラスの成形において端部における失透の問題が発生しやすい。しかし、本実施形態の製造方法では、失透抑制の効果が得られる。
本実施形態の製造方法では、熔融ガラスがジルコニアおよび/または酸化スズを含有していてもよい。ジルコニアを含有する熔融ガラスでは、ジルコニアを含有していない場合に比べてガラス組成物の液相温度が上昇する。このような熔融ガラスでは、従来、オーバーフローダウンドロー法によるシートガラスの成形において端部における失透の問題が発生しやすい。しかし、本実施形態の製造方法では、失透抑制の効果が得られる。ジルコニアは、ガラス組成物の成分として元々熔融ガラスに含まれる場合以外にも、高ジルコニア系耐火物を使用して構成される熔解槽および成形装置を用いることによっても熔融ガラスに溶出する。特に、このような熔解槽を用いてガラス原料を電気熔解する場合、熔融ガラス中のジルコニア濃度が高くなる傾向がある。すなわち本実施形態の製造方法は、高ジルコニア系耐火物を使用して構成される熔解槽を用いてガラス原料を電気熔解する場合に、より好適となる。
なお、高ジルコニア系耐火物を使用して構成される熔解槽は、従来広く使用されているアルミナ電鋳耐火物を使用して構成される熔解槽に比べて、ガラスに浸食されにくく、熔解槽としての寿命が長い。また、熔融ガラスの発泡を抑えることもできる。このため、熔融温度(ガラス組成物の粘度が102.5ポアズとなる温度)が高いガラス組成物、例えば無アルカリガラスおよびアルカリ微量含有ガラス、の熔融ガラスの形成に適している。
また、熔解槽で形成する熔融ガラスが無アルカリガラスまたはアルカリ微量含有ガラスにより構成される場合、ガラス組成物の比抵抗が高くなりやすく、ガラス原料ではなく高ジルコニア耐火物に電流が流れる傾向がある。当該耐火物に電流が流れると、熔解槽で形成される熔融ガラスにジルコニアが溶出する。すなわち本実施形態の製造方法は、高ジルコニア系耐火物を使用して構成される熔解槽を用いて、無アルカリガラスまたはアルカリ微量含有ガラスの熔融ガラスを電気熔解により形成する場合に、さらに好適となる。
液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどのFPD用ガラス基板には、無アルカリガラスまたはアルカリ微量含有ガラスから構成されるガラス基板が好ましい。パネル製造工程においてガラス基板からアルカリ成分が溶出すると、薄膜トランジスタ(TFT)などの電子素子の特性が劣化するおそれがあるためである。すなわち本実施形態の製造方法は、高ジルコニア系耐火物を使用して構成される熔解槽を用いてガラス原料を電気熔解し、得られた熔融ガラスを用いてオーバーフローダウンドロー法によりフラットパネルディスプレイ用ガラス基板を製造する場合に、特に好適となる。なお、無アルカリガラスとは、実質的にアルカリ金属酸化物を含有しない(含有率にして0.05質量%未満)ガラス組成物をいう。アルカリ微量含有ガラスとは、アルカリ金属酸化物を0.05〜2.0質量%含有するガラス組成物をいう。
酸化スズを含有する熔融ガラスでは、酸化スズの晶出により失透が生じやすくなる。また、ジルコニアと共存した場合、酸化スズはジルコニアを晶出させる作用を有する。このような熔融ガラスでは、従来、オーバーフローダウンドロー法によるシートガラスの成形において端部における失透の問題が特に生じやすい。しかし、本実施形態の製造方法では、失透抑制の効果が得られる。
本実施形態の製造方法では、熔融ガラスを構成するガラス組成物が無アルカリガラスまたはアルカリ微量含有ガラスであってもよい。アルカリ金属酸化物を2.0質量%超含有するアルカリガラスと比較して、このような無アルカリガラスまたはアルカリ微量含有ガラスの液相温度は高く、液相粘度は小さい傾向にあるが、本実施形態の製造方法では失透抑制の効果が得られる。この効果が、高ジルコニア系耐火物を使用して構成される熔解槽を用いて無アルカリガラスまたはアルカリ微量含有ガラスの熔融ガラスを電気熔解により形成する場合に特に顕著となるのは、上述したとおりである。
なお、TFT(Thin Film Transistor)などの電子素子の特性の劣化を防止するという観点からは、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板には無アルカリガラスが好適である。ただし、熔解性および清澄性という観点からは、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板にはアルカリ微量含有ガラスが好適である。アルカリ金属酸化物を敢えて微量含ませてアルカリ微量含有ガラスとすることによって、ガラス組成物の熔解性および清澄性が向上する。清澄性には、アルカリ金属酸化物の存在によってガラスの塩基性度が上昇し、価数変動する金属の酸化が容易となることが寄与する。また、高ジルコニア系耐火物を使用して構成される熔解槽においてガラス原料の電気熔解により熔融ガラスを形成する場合においても、無アルカリガラスに比べてガラスの比抵抗を小さくすることができ、熔融ガラスへのジルコニアの溶出を抑え、熔融ガラスの失透性上昇を抑えることができる。
本実施形態の製造方法では、熔融ガラスを構成するガラス組成物について、102.5ポアズの粘度を示す温度(熔融温度)が1500℃〜1750℃であってもよい。このようなガラス組成物は熔融時に高温が必要になるため、高ジルコニア系耐火物を使用して構成される熔解槽により熔融ガラスを形成する場合にジルコニアが溶出しやすい。このようなガラス組成物に対しても、本実施形態の製造方法では失透抑制の効果が得られる。
本実施形態の製造方法で製造するガラス基板に含まれるガラス成分として、例えば、SiO、Al、B、MgO、CaO、SrO、BaO、LiO、NaO、KO、ZrO、TiO、ZnO、及びPが挙げられる。
SiOは、ガラスの骨格成分であり、従って、必須成分である。含有量が少なくなると、歪点が低下し、熱膨張係数が増加する傾向がある。また、SiO含有量が少なすぎると、ガラス基板を低密度化するのが難しくなる。一方、SiO含有量が多すぎると、熔融ガラスMGの比抵抗が上昇し、熔融温度が著しく高くなり熔解が困難になる傾向がある。SiO含有量が多すぎると、失透温度が上昇し、耐失透性が低下する傾向もある。さらに、SiO含有量が多すぎると、エッチングレートが遅くなる。このような観点から、SiOの含有量は、例えば60〜80mol%の範囲であることが好ましい。SiOの含有量は、より好ましくは64〜73mol%あるいは65〜75mol%、より一層好ましくは66〜72mol%、さらにより一層好ましくは67〜71mol%の範囲である。
Alは、歪点を高くする必須成分である。Al含有量が少なすぎると、歪点が低下する。さらに、Al含有量が少なすぎると、ヤング率及び酸によるエッチングレートも低下する傾向がある。一方、Al含有量が多すぎると、ガラスの失透温度が上昇して、耐失透性が低下するので、成形性が悪化する傾向がある。このような観点から、Alの含有量は8〜20mol%の範囲である。Alの含有量は、好ましくは10〜17mol%、より好ましくは10.5〜17mol%、より好ましくは11〜15mol%、さらに好ましくは12〜15mol%の範囲である。
は、ガラスの高温粘性を低下させ、熔融性を改善する成分である。即ち、熔融温度近傍での粘性を低下させるので、熔解性を改善する。また、失透温度を低下させる成分でもある。B含有量が少ないと、熔解性及び耐失透性が低下する傾向がある。B含有量が多すぎると、歪点及びヤング率が低下する。また、ガラス成形時のBの揮発により、失透が生じやすくなる。特に、歪点が高いガラスは、成型温度が高くなる傾向にあるため、上記揮発が促進され、失透の生成が顕著な問題となる。また、ガラス熔解時のBの揮発により、ガラスの不均質が顕著となり、脈理が発生しやすくなる。このような観点から、B含有量は、0〜15mol%であり、好ましくは0〜8mol%であり、より好ましくは0〜7mol%であり、さらに好ましくは0.1〜6mol%、一層好ましくは1〜5mol%、より一層好ましくは1.5〜4.5mol%の範囲である。
MgOは、熔解性を向上させる成分である。また、アルカリ土類金属の中では密度を増加させにくい成分であるので、その含有量を相対的に増加させると、低密度化を図りやすくなる。含有させることで、熔融ガラスMGの比抵抗及び熔融温度を低下できる。但し、MgOの含有量が多すぎると、ガラスの失透温度が急激に上昇するため、特に成形工程で失透しやすくなる。このような観点から、MgO含有量は、0〜15mol%であり、好ましくは1〜15mol%、より好ましくは0〜6mol%、さらに好ましくは1〜6mol%の範囲である。あるいは、MgO含有量は、0〜15mol%であることが好ましく、より好ましくは0〜6mol%、さらに好ましくは1〜6mol%の範囲である。
CaOは、ガラスの失透温度を急激に上げることなくガラスの熔解性を向上させるのに有効な成分である。また、アルカリ土類金属酸化物の中では密度を増加させにくい成分であるので、その含有量を相対的に増加させると、低密度化を図りやすくなる。含有量が少な過ぎると、熔融ガラスMGの比抵抗の上昇及び耐失透性低下が生じる傾向がある。CaO含有量が多すぎると、熱膨張係数が増加し、密度が上昇する傾向がある。このような観点から、CaO含有量は、0〜20mol%であり、好ましくは1〜15mol%、より好ましくは2〜11mol%、さらに好ましくは4〜9mol%の範囲である。
SrOは、ガラスの失透温度を下げることができる成分である。SrOは、必須ではないが、含有させると、耐失透性および熔解性が向上する。しかし、SrO含有量が多すぎると、密度が上昇してしまう。このような観点から、SrO含有量は、0〜15mol%であり、好ましくは0〜8mol%であり、より好ましくは0〜3mol%、さらに好ましくは0〜1mol%、一層好ましくは0〜0.5mol%の範囲であり、より一層好ましくは実質的に含有させない。
BaOは、ガラスの失透温度および熔融ガラスMGの比抵抗を効果的に下げることができる必須成分である。BaOを含有させると、耐失透性および熔解性が向上する。しかし、BaOの含有量が多すぎると、密度が上昇してしまう。また、環境負荷の観点、および熱膨張係数が増大する傾向があることから、BaO含有量は、0〜15mol%あるいは0.1〜15mol%であり、好ましくは1〜15mol%であり、より好ましくは1〜10mol%、さらに好ましくは1.5〜6mol%の範囲である。
LiO及びNaOは、ガラスの熱膨張係数を大きくして熱処理時に基板を破損したりするおそれのある成分である。また、歪点を低下させる成分でもある。一方、熔融ガラスMGの比抵抗を低下させることができるので、含有させることで熔解槽が侵食されることを抑制できる。以上の観点からLiOの含有量は、0〜0.5mol%であることが好ましく、より好ましくは実質的に含有させない。NaOの含有量は、0〜0.5mol%であることが好ましく、より好ましくは0〜0.2mol%である。なお、NaOは、LiOと比較して歪点を低下させにくい成分であることから、NaO>LiOであることが好ましい。なお、ガラス基板から溶出してTFT特性を劣化させることを防止するという観点からは、LiO及びNaOは、実質的に含有させないことが好ましい。
Oは、ガラスの塩基性度を高め、清澄性を促進させる成分である。また、熔融ガラスMGの比抵抗を低下させる成分である。含有させると、熔融ガラスMGの比抵抗が低下するため、熔解槽を構成する耐火物に電流が流れてしまうことを防止でき、熔解槽が侵食されることを抑制できる。また、熔解槽を構成する耐火物がジルコニアを含有する場合、熔解槽が侵食されて、熔解槽から熔融ガラスMGへジルコニアが溶出してしまうことを抑制できるため、ジルコニアに起因する失透も抑制できる。また、熔解温度近傍におけるガラス粘性を低下させるので、熔解性と清澄性が向上する。一方、KO含有量が多すぎると、熱膨張係数増大及び歪点低下の傾向がある。このような観点から、KO含有量は、好ましくは0〜0.8mol%、より好ましくは0.01〜0.5mol%、さらに好ましくは0.1〜0.3mol%の範囲である。
ZrOおよびTiOは、ガラスの歪点を向上させる成分である。しかし、ZrO量およびTiO量が多くなりすぎると、失透温度が著しく上昇するため、耐失透性が低下する傾向がある。特に、ZrOは融点が高く難熔なため、原料の一部が熔解槽の底部に堆積するといった問題を引き起こす。これらの未熔解の成分がガラス素地に混入するとインクルージョンとしてガラスの品質悪化を引き起こす。また、TiOは、ガラスを着色させる成分なので、ディスプレイ用基板には好ましくない。このような観点から、本実施形態のガラス基板では、ZrOおよびTiOの含有量は、それぞれ、0〜5mol%が好ましく、より好ましくは0〜2mol%の範囲であり、実質的に含有しないことがさらに好ましい。
ZnOは、熔解性を向上させる成分である。但し、必須成分ではない。ZnO含有量が多くなりすぎると、失透温度が上昇し、歪点が低下し、密度が上昇する傾向がある。このような観点から、ZnO含有量は、好ましくは0〜5mol%、より好ましくは0〜2mol%の範囲であり、実質的に含有しないことがさらに好ましい。
は、高温粘性を低下させ、熔解性を向上させる成分である。但し、必須成分ではない。P含有量が多すぎると歪点が低下する。また、ガラス熔解時のPの揮発により、ガラスの不均質が顕著となり、脈理が発生しやすくなる。このような観点から、P含有量は、好ましくは0〜3mol%、より好ましくは0〜1mol%、さらに好ましくは0〜0.5mol%の範囲であり、実質的に含有しないことが一層好ましい。
本実施形態が適用されるガラス基板は、例えば以下の組成を含む無アルカリガラスからなる。
SiO:55−80質量%
Al:8−20質量%
:0−18質量%
RO 0〜17モル%(ROはMgO、CaO、SrO及びBaOの合量)、
R’2O 0〜2モル%(R’2OはLi2O、Na2O及びK2Oの合量)。
SiO2は60〜75質量%、さらには、63〜72質量%であることが、熱収縮率を小さくするという観点から好ましい。
ROのうち、MgOが0〜10質量%、CaOが0〜10質量%、SrOが0〜10質量%、BaOが0〜10質量%であることが好ましい。
また、SiO2、Al23、B23、及びROを少なくとも含み、モル比((2×SiO2)+Al23)/((2×B23)+RO)は4.5以上であるガラスであってもよい。また、MgO、CaO、SrO、及びBaOの少なくともいずれか含み、モル比(BaO+SrO)/ROは0.1以上であることが好ましい。
また、質量%表示のB23の含有率の2倍と質量%表示のROの含有率の合計は、30質量%以下、好ましくは10〜30質量%であることが好ましい。
さらに、熔融ガラス中で価数変動する金属の酸化物(酸化スズ、酸化鉄)を合計で0.05〜1.5質量%含んでいることが好ましい。
AS23、Sb23、PbOを実質的に含まないことが好ましいが、これらを任意に含んでいてもよい。
また、ガラス中で価数変動する金属の酸化物(酸化スズ、酸化鉄)を合計で0.05〜1.5質量%含み、As、Sb及びPbOを実質的に含まないということは必須ではなく任意である。
本実施形態で製造されるガラス基板は、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板を含むディスプレイ用ガラス基板に好適である。IGZO(インジウム、ガリウム、亜鉛、酸素)等の酸化物半導体を使用した酸化物半導体ディスプレイ用ガラス基板及びLTPS(低温度ポリシリコン)半導体を使用したLTPSディスプレイ用ガラス基板に好適である。また、本実施形態で製造されるガラス基板は、アルカリ金属酸化物の含有量が極めて少ないことが求められる液晶ディスプレイ用ガラス基板に好適である。また、有機ELディスプレイ用ガラス基板にも好適である。言い換えると、本実施形態のガラス基板の製造方法は、ディスプレイ用ガラス基板の製造に好適であり、特に、液晶ディスプレイ用ガラス基板の製造に好適である。その他、携帯端末機器などのディスプレイや筐体用のカバーガラス、タッチパネル板、太陽電池のガラス基板やカバーガラスとしても用いることができる。特に、ポリシリコンTFTを用いた液晶ディスプレイ用ガラス基板に好適である。
また、本実施形態で製造されるガラス基板は、カバーガラス、磁気ディスク用ガラス、太陽電池用ガラス基板などにも適用することが可能である。
以上、本実施形態のガラス基板の製造方法及びガラス基板の製造装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
(実施例)
高ジルコニア系耐火物を使用した熔解槽により、下記の組成を有するように調合したガラス原料を電気熔解し、熔融ガラスを形成した。次に、形成した熔融ガラスを白金合金製の清澄管にて清澄した後、攪拌槽にて攪拌した。続いて、熔融ガラスを、成形装置200(成形体1)に供給し、オーバーフローダウンドロー法によりシートガラスを成形した。シートガラスの端部を、当該端部の粘度が1012.5dPa・sになるよう冷却ローラ8で冷却して成形したシートガラスを徐冷した後、切断して、厚さ0.4mm、サイズ2200mm×2500mmのフラットパネルディスプレイ用ガラス基板を得た。なお、当該ガラス組成物の液相粘度は50000dPa・sであり、歪点は715℃であった。
SiO:61.5質量%、
Al:20質量%、
:8.4質量%、
CaO:10質量%、
SnO:0.1質量%。
ガラス供給管106から成形体1の供給溝2に供給する熔融ガラスの最大温度差、熔融ガラスの粘度(平均温度に基づく粘度)を変化させて、シートガラス(ガラス基板)の板厚偏差を測定した。その結果を表1に示す。
Figure 2017186227
表1に示すように、熔融ガラスの最大温度差が30℃以下、熔融ガラスの粘度(平均温度に基づく粘度)が22000dPa・s以上38000dPa・s以下である実施例1〜6では、板厚偏差は10μm以下となり、板厚偏差を抑制できることができた。一方、熔融ガラスの最大温度差が30℃を超える場合、熔融ガラスの粘度(平均温度に基づく粘度)が22000dPa・s未満の場合、熔融ガラスの粘度が38000dPa・sを超える場合である比較例1〜7では、板厚偏差は10μmより大きくなった。このことから、シートガラスの板厚偏差を10μm以下にするためには、成形体1の供給溝2に供給する熔融ガラスの最大温度差を30℃以下とし、かつ、熔融ガラスの粘度(平均温度に基づく粘度)を22000dPa・s以上38000dPa・s以下とすればよいことが確認できた。
100 熔解装置
101 熔解槽
102 清澄管
103 撹拌槽
103a 撹拌子
104,105 移送管
106 ガラス供給管
200 成形装置
300 切断装置
MG 熔融ガラス
SG シートガラス
SGa (シートガラスの)端部
1 成形体
2 供給溝
3 上面
3a,3b (上面の)端部
4 下端
5 壁面
6a,6b ガイド
7 液面
8 冷却ローラ

Claims (7)

  1. 熔融ガラスをガラス供給管から供給溝を有する成形体に供給し、前記成形体を用いてオーバーフローダウンドロー法によりシートガラスを成形するガラス基板の製造方法であって、
    前記供給溝は、前記供給溝に供給される熔融ガラスが前記供給溝からオーバーフローする量が、前記供給溝の延在方向と、前記延在方向と直交する幅方向で均一になるような底面の形状を有し、
    前記ガラス供給管から前記供給溝に供給する熔融ガラスの最大温度差が30℃以下であり、かつ、熔融ガラスの粘度が22000dPa・s以上38000dPa・s以下である熔融ガラスを前記供給溝に供給し、前記成形体の下端で前記熔融ガラスを合流させてシートガラスを成形する成形工程と、
    前記成形工程で成形した前記シートガラスに局所的に発生する板厚偏差を抑制するようにシートガラスの幅方向の両端部を冷却する端部冷却工程と、を備える、
    ことを特徴とするガラス基板の製造方法。
  2. 前記端部冷却工程では、前記シートガラスの幅方向に前記成形体が変形していないときにかける、前記シートガラスの断面形状が目標形状になる張力を基準張力とし、前記成形体が変形していないときは、前記シートガラスの幅方向の両端部を冷却することにより前記基準張力になるよう制御し、前記成形体が変形しているときは、前記成形体の変形に応じて前記基準張力に加えた張力を前記シートガラスにかける、
    ことを特徴とする請求項1に記載のガラス基板の製造方法。
  3. 前記成形体の変形は、前記成形体の使用に伴って経時変化するクリープ変形であって、前記クリープ変形による前記成形体の所定位置の変位量に応じた張力を前記基準張力に加える、請求項2に記載のガラス基板の製造方法。
  4. 前記変形が大きいほど、前記両端部の冷却を強める、請求項2又は3に記載のガラス基板の製造方法。
  5. 前記板厚偏差は10μm以下である、
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のガラス基板の製造方法。
  6. 前記成形工程において、前記成形体を流下する熔融ガラスの温度が前記熔融ガラスの液相温度よりも10℃〜150℃高くなるように、前記熔融ガラスを加熱する、
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のガラス基板の製造方法。
  7. 熔融ガラスをガラス供給管から供給溝を有する成形体に供給し、前記成形体を用いてオーバーフローダウンドロー法によりシートガラスを成形するガラス基板の製造装置であって、
    前記成形体は、最大温度差が30℃以下であり、かつ、粘度が22000dPa・s以上38000dPa・s以下である熔融ガラスの供給を受ける供給溝と、前記成形体の下端で前記熔融ガラスを合流させてシートガラスを成形するための壁面と、を有し、
    前記供給溝は、前記供給溝に供給される熔融ガラスが前記供給溝からオーバーフローする量が、前記供給溝の延在方向と、前記延在方向と直交する幅方向で均一になるような底面の形状を有し、
    さらに、前記成形体で成形した前記シートガラスに局所的に発生する板厚偏差を抑制するようにシートガラスの幅方向の両端部を冷却する端部冷却装置、を備える、
    ことを特徴とするガラス基板の製造装置。
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