JP2017184713A - 細胞分化ポテンシャル判定法 - Google Patents
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Abstract
Description
しかし、間葉系幹細胞などの体性幹細胞はヘテロな細胞集団であり、その性質(細胞分化ポテンシャル、増殖能、遊走能)は由来する個人の年齢、組織、継代数などにより大きく異なることから、治療の有効性を評価するためには、移植に適した細胞集団を安定的に得るための品質の検証方法が重要となる。体性幹細胞を用いた細胞移植の有効性の評価及びリスク評価を行う上でも、移植前の細胞の品質検証方法の重要性は高い。
しかしながら、体性幹細胞では、造血幹細胞を除いて同定するための唯一無二のマーカーは存在しないため、移植時には複数の細胞表面マーカーの発現を確認することにより細胞の品質検証を行っているのが現状である。
このような事情から、間葉系幹細胞など体性幹細胞の品質特性、特に治療有効性に直結する細胞分化ポテンシャル(分化能)を定量的に評価可能な判定方法の開発が強く求められていた。
このことで、間葉系幹細胞など体性幹細胞試料の細胞分化ポテンシャルを定量的に評価することが可能となり、体性幹細胞を用いた再生治療、特に骨又は軟骨の再生治療に適した細胞集団を安定的に得るための品質の検証方法が提供できた。
しかしながら、当該検証方法は、体性幹細胞表面の糖鎖、又は糖タンパク質を検出するために、体性幹細胞を回収する煩雑な工程が必須であるばかりでなく、本来移植治療に用いるための貴重な幹細胞を検査で使用してしまうという問題点がある。
しかしながら、これらの品質判定法も幹細胞そのものを分析に用いる必要がある点では同様で培養液からの回収工程が必要である上に、さらに煩雑な複数遺伝子の発現量の測定及び解析工程を要している。
本発明の課題は、このような問題点を解決するために、被検細胞を減らすことなく、非侵襲的に体性幹細胞の細胞分化ポテンシャルを検出、定量化して判定する方法、及び培養上清を用いた簡便かつ確実な体性幹細胞の品質管理方法を提供することにある。
本発明は、体性幹細胞の細胞培養上清を用いたアッセイ系によって体性幹細胞の細胞分化ポテンシャルを簡便且つ効率的に判定、評価しようというものであり、具体的には、体性幹細胞の細胞培養上清を用いたサンドイッチアッセイ系による、体性幹細胞の骨芽細胞又は軟骨細胞への細胞分化ポテンシャル判定方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、体性幹細胞の継代培養中、培養上清中に分泌されるα2-6シアル酸含有複合糖質の中に、細胞分化ポテンシャルの減少に伴って糖鎖中のα2-6シアル酸量に変化がある複合糖質が存在する可能性に思い至り、さらにα2-6シアル酸特異的レクチンを用いて鋭意研究を重ねた。その結果、骨髄由来間葉系幹細胞の培養液中に分泌されるα2-6シアル酸含有糖タンパク質のうちで、当該幹細胞の継代数が増加するに従ってα2-6シアル酸量が減少する傾向を示す分泌性糖タンパク質を複数同定することができた。そして、これら分泌性糖タンパク質の中で、フィブロネクチンが、継代数が増加しても培養上清中への分泌量はほとんど変化しないことと共に、継代数の増加に伴いその含有糖鎖中のα2-6シアル酸量が大きく減少する傾向を示すことを見いだした。
このことは、体性幹細胞の培養上清中のフィブロネクチン含有糖鎖中のα2-6シアル酸量が、骨芽細胞又は軟骨細胞への細胞分化ポテンシャルの指標となることを示すものであり、培養上清中のフィブロネクチン含有糖鎖中のα2-6シアル酸量を測定することで体性幹細胞の細胞分化ポテンシャルを判定、評価できることを意味する。
〔1〕 培養上清を用いて体性幹細胞の細胞分化ポテンシャルを判定又は評価する方法であって、体性幹細胞の培養上清中の分泌性コアタンパク質含有糖鎖中のα2-6シアル酸量を測定する工程を包含することを特徴とする、方法。
本発明は、体性幹細胞の細胞分化ポテンシャルのうちでも特に骨芽細胞又は軟骨細胞への細胞分化ポテンシャルを判定又は評価する方法に適用することが好ましい。
〔2〕 分泌性コアタンパク質がフィブロネクチンである、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕 体性幹細胞が骨髄由来間葉系幹細胞又は軟骨幹細胞である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の方法。
〔4〕 分泌性コアタンパク質含有糖鎖中のα2-6シアル酸量を測定する工程が、α2-6シアル酸を特異的に認識するレクチンと、分泌性コアタンパク質を特異的に認識する抗体とのサンドイッチアッセイ法を用いて行うことを特徴とする、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の方法。
〔5〕 α2-6シアル酸を特異的に認識するレクチンが、SNAレクチン又はSSAレクチンである、前記〔4〕に記載の方法。
〔6〕 さらに、体性幹細胞の培養上清中に含まれる分泌性コアタンパク質の総量を測定する工程を包含する、前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の方法。
〔7〕 培養上清を用いて体性幹細胞の細胞分化ポテンシャルを判定又は評価する方法であって、下記の(1)及び(2)を含む方法;
(1)被検体性幹細胞培養上清試料を、
下記の(a)もしくは(b)のいずれか一方のプローブが固定化された基板上にオーバーレイし、次いで標識化された他方のプローブを作用させる工程、又は
下記の(a)及び(b)のプローブが固定化された基板上にオーバーレイし、次いで標識化された(b)のプローブを作用させる工程、
(a)α2-6シアル酸を特異的に認識するレクチン、
(b)分泌性コアタンパク質を特異的に認識する抗体、
(2)標識化されたプローブの標識量を測定する工程。
〔8〕 さらに、下記(3)及び(4)の工程を含む、前記〔7〕に記載の方法;
(3)工程(1)で用いた被検培養上清試料の残余の試料を用い、標識化された分泌性コアタンパク質を特異的に認識する抗体により、単位容量あたりの分泌性コアタンパク質の総量に対応する標識量を測定する工程、
(4)工程(2)及び(3)で測定した標識量に基づき、培養上清中の分泌性コアタンパク質の総量に占めるα2-6シアル酸含有分泌性コアタンパク質量の割合を算出する工程。
〔9〕 分泌性コアタンパク質がフィブロネクチンであり、かつ分泌性コアタンパク質を特異的に認識する抗体が抗フィブロネクチン抗体である、前記〔7〕又は〔8〕に記載の方法。
〔10〕 体性幹細胞の培養上清に使用するための体性幹細胞の細胞分化ポテンシャル判定用キットであって、下記の(a)及び(b)のプローブを含むサンドイッチアッセイ用キット;
(a)α2-6シアル酸を特異的に認識するレクチン、
(b)分泌性コアタンパク質を特異的に認識する抗体。
本発明は、体性幹細胞の細胞分化ポテンシャルのうちでも特に骨芽細胞又は軟骨細胞への細胞分化ポテンシャルを判定用キットに適用することが好ましい。
また、さらに(c)として標識したリコンビナント分泌性コアタンパク質からなる標準物質を組み合わせてもよい。
〔11〕 前記(a)又は(b)のいずれか一方のプローブが基板に固定化され、他方のプローブが標識化されている、前記〔10〕に記載のキット。
〔12〕 前記α2-6シアル酸を特異的に認識するレクチンが、SNAレクチン又はSSAレクチンである、前記〔11〕に記載のキット。
〔13〕 分泌性コアタンパク質を特異的に認識する抗体が抗フィブロネクチン抗体である、請求項10〜12のいずれかに記載のキット。
〔14〕 培養上清を用いた体性幹細胞の品質管理方法であって、
体性幹細胞の培養上清中の分泌性コアタンパク質含有糖鎖中のα2-6シアル酸量を測定する工程を包含することを特徴とする、方法。
〔15〕 分泌性コアタンパク質がフィブロネクチンである、前記〔14〕に記載の方法。
〔16〕 分泌性コアタンパク質含有糖鎖中のα2-6シアル酸量を測定する工程が、α2-6シアル酸を特異的に認識するレクチンと、分泌性コアタンパク質を特異的に認識する抗体とのサンドイッチアッセイ法を用いて行うことを特徴とする、前記〔14〕又は〔15〕に記載の方法。
〔17〕 体性幹細胞の培養上清に使用するための体性幹細胞の品質管理用キットであって、下記の(a)及び(b)のプローブを含む品質管理用キット;
(a)α2-6シアル酸を特異的に認識するレクチン、
(b)分泌性コアタンパク質を特異的に認識する抗体。
本キットには、さらに(c)として標識したリコンビナント分泌性コアタンパク質からなる標準物質を組み合わせてもよい。
〔18〕 前記(a)又は(b)のいずれか一方のプローブが基板に固定化され、他方のプローブが標識化されている、前記〔17〕に記載のキット。
〔19〕 前記α2-6シアル酸を特異的に認識するレクチンが、SNAレクチン又はSSAレクチンである、前記〔17〕又は〔18〕に記載のキット。
〔20〕 分泌性コアタンパク質を特異的に認識する抗体が抗フィブロネクチン抗体である、前記〔17〕〜〔19〕のいずれかに記載のキット。
本発明において、「α2-6シアル酸」というときは、一般に、N-アセチルノイラミン酸が、ガラクトースの6位の位置の水酸基とα2-6結合した糖鎖である「Neu5Acα2-6Gal」及びN-グリコリル型ノイラミン酸が同様にα2-6結合した糖鎖「Neu5Gcα2-6Gal」の両方を指す。しかし、ヒト由来のα2-6シアル酸を非還元末端に有する糖タンパク質では、α2-6シアル酸がノイラミン酸の5位のアミノ基がアセチル化された「Neu5Acα2-6Gal」の場合しか体内で生合成されないため、本発明では主として「Neu5Acα2-6Gal」のみを対象とする。以下の説明でもα2-6シアル酸が「Neu5Acα2-6Gal」であるとして説明する。
したがって、本発明においては、典型的にはヒト間葉系幹細胞などヒト体性幹細胞から分泌されるフィブロネクチンなど分泌性糖タンパク質含有糖鎖の非還元末端に存在するα2-6シアル酸(Neu5Acα2-6Gal)が、体性幹細胞の細胞分化ポテンシャルの評価、判定用のための検出対象糖鎖エピトープとなる。
なお、ブタ、マウスなどヒト以外の哺乳動物では、α2-6シアル酸として「Neu5Gcα2-6Gal」である場合も含むので、対象幹細胞がヒト以外の哺乳動物に由来する場合は、「Neu5Acα2-6Gal」及び「Neu5Gcα2-6Gal」が本発明の細胞分化ポテンシャルを判定、評価するための検出対象糖鎖エピトープとなる。
一方、培養上清を用いた場合には、α2-6シアル酸全体量の変化に着目しても、細胞分化ポテンシャル判定の指標とはならないのに対して、培養上清中の特定の分泌性糖タンパク質をターゲットとして、その含有糖鎖中のα2-6シアル酸量の変化に着目することで、骨芽細胞又は軟骨細胞への細胞分化ポテンシャルの優れた指標となることが解明された。
すなわち、本発明において初めて、体性幹細胞の培養上清中においては、フィブロネクチンなど特定の分泌性糖タンパク質が、「細胞分化ポテンシャル」糖鎖エピトープであるα2-6シアル酸の優れたコアタンパク質として機能していることが示された。つまり、体性幹細胞の培養上清中のフィブロネクチンなど特定の分泌性糖タンパク質が含有する糖鎖の非還元末端に存在するα2-6シアル酸量を測定することで、被検体性幹細胞の骨芽細胞及び軟骨細胞への「細胞分化ポテンシャル」を定量的に判定することが可能となった。
(2−1)本発明でターゲットとするα2-6シアル酸含有分泌性糖タンパク質
本発明では、体性幹細胞の培養上清中の特定の分泌性糖タンパク質が含有する糖鎖の非還元末端に存在するα2-6シアル酸量を測定することで、被検体性幹細胞の「細胞分化ポテンシャル」を定量的に判定する。
体性幹細胞の培養上清中には、多種類の糖質及び糖鎖含有物質が存在しており、例えば、体性幹細胞が分泌する糖質、糖タンパク質、糖脂質,他の複合糖質及び膜タンパク質、膜脂質から切断された各種糖鎖含有物質の他、培地成分中の糖質が含まれる。
これらそれぞれの糖鎖含有物質が有するα2-6シアル酸量の総和は、体性幹細胞の継代を重ねても大きな変化はないが、その量が常に一定量に安定しているわけではない。
一方、本発明の細胞分化ポテンシャル判定指標のターゲットとなるα2-6シアル酸含有分泌性糖タンパク質は、体性幹細胞からタンパク質としての分泌量は一定量であるのに対し、含有糖鎖中のα2-6シアル酸量のみが細胞分化ポテンシャルの減少に伴い減少する。
すなわち、本発明でターゲットとする糖鎖含有物質は、体性幹細胞のみならず、分化細胞においても常に安定的に分泌されており、α2-6シアル酸量を含め複合糖鎖含有量も十分に多い分泌性糖タンパク質である。そのような分泌性糖タンパク質としては、フィブロネクチンなどが例示できる。
このことは、体性幹細胞の培養上清中の検出、測定対象となる糖鎖エピトープα2-6シアル酸を含有するコアタンパク質がフィブロネクチンなど特定の分泌性糖タンパク質であることなので、以下、フィブロネクチンなど特定の分泌性糖タンパク質を本発明の「分泌性コアタンパク質」ということもある。
以下、典型的な「分泌性コアタンパク質」として、主としてフィブロネクチンについて述べるが、本発明はフィブロネクチンに限定されない。
本発明の細胞分化ポテンシャル判定法では、体性幹細胞の培養上清中の測定対象となる糖鎖エピトープの分泌性コアタンパク質となるフィブロネクチンなどが含有する糖鎖上の「α2-6シアル酸」糖鎖エピトープの存在量を検出又は測定する。
ここで、本法の典型的な検出対象となるフィブロネクチン(NCBIデータベースにおけるGene ID: 2335)は、間葉系幹細胞、軟骨幹細胞(未分化軟骨細胞)の他、線維芽細胞、上皮細胞、筋細胞、好中球、マクロファージ、シュワン細胞、ケラチノサイトなど多くの細胞で合成され、細胞外に分泌される。細胞膜上の受容体タンパク質であるインテグリンと結合することが知られており、細胞接着分子として、細胞外マトリックスへの接着、結合組織の形成・保持、創傷治癒、胚発生での組織や器官の形態・区画の形成・維持など、脊椎機能の正常な生命機能を支える多くの機能を有すると考えられている。
そして、このフィブロネクチンは、体性幹細胞の細胞分化ポテンシャルを判定する上でのα2-6シアル酸糖鎖エピトープの優れた分泌性コアタンパク質として機能することが本発明において実証されたことになる。
フィブロネクチン単量体は、分子量210〜250kDa(2,146〜2,325アミノ酸残基)の可溶性糖タンパク質であって、7つのN型糖鎖及び1つのO型糖鎖を有することが知られている。「α2-6シアル酸」は、この7つのN型糖鎖の1つ又は複数の糖鎖の非還元末端に結合していると考えられる(例えば、Gu J. et al.,Biol Pharm Bull. 2009 May;32(5):780-5.参照)。マウスミエローマ細胞等から産生されたリコンビナントフィブロネクチンも市販されており(R&D社など)、本発明の実施例においても標準物質として用いた。
(3−1)本発明の「細胞分化ポテンシャル判定法」について
本発明の細胞分化ポテンシャル判定法では、体性幹細胞から培養液中に分泌されたフィブロネクチンなどの分泌性コアタンパク質含有糖鎖の非還元末端に付加された「α2-6シアル酸」の存在量を検出又は測定し、体性幹細胞の骨芽細胞又は軟骨細胞への細胞分化ポテンシャル(以下、単に「細胞分化ポテンシャル」ということもある。)の程度を判定する。
典型的には、間葉系幹細胞など体性幹細胞の培養上清中のフィブロネクチン含有糖鎖上のα2-6シアル酸の量を、抗フィブロネクチン抗体及びα2-6シアル酸特異的結合性レクチンを利用したサンドイッチアッセイ法を用いて測定し、その量に応じて「細胞分化ポテンシャル」の程度を評価、判定する方法であり、簡便で好ましい。さらに、同時に残余の培養上清中のフィブロネクチン量を測定し、単位フィブロネクチンあたりのα2-6シアル酸の変化量を正確に算出することで、「細胞分化ポテンシャル」の判定精度を高めることもできる。
他の方法として、まず被検培養上清試料を、抗フィブロネクチン抗体を固定化したビーズ、プレートなどを用いて培養上清中のフィブロネクチンをあらかじめ全て免疫沈降させ、得られたフィブロネクチン上のα2-6シアル酸を、α2-6シアル酸特異的レクチンを用いて検出する方法がある。この方法は、複数の工程が増える点で煩雑にはなるが、培養上清中のフィブロネクチン総量が把握しやすく、全フィブロネクチンあたりのα2-6シアル酸量の変化量を正確に算出することができる利点がある。
本発明では、生体から採取された、もしくは市販の体性幹細胞の培養液、又は未分化状態で継代培養した培養液の培養上清を検査試料として用い、マイクロピペットなどで一定量採取し、本発明のフィブロネクチン上のα2-6シアル酸に特異的に結合するタンパク質との反応性を解析する。培養液は一般に一定期間毎に新鮮な培養液と交換する。このため、糖鎖マーカーの検出は、糖鎖マーカーが交換後の培養液中に検出可能な量分泌された後に行う。培養液交換後、培養液中に検出可能な量の糖鎖マーカーが溶出されるまでに要する時間は、細胞の種類や培養条件によって異なり得る。従って、培養液交換後、糖鎖マーカーの検出に用いる培養上清を採取するまでの時間は、細胞の種類や培養条件によって適宜設定され得るが、例えば18〜30時間程度とされる。通常は1〜3日程度毎に培地交換を行うので、培地交換の際に廃棄する培養上清を利用することが好ましい。
本発明では、培養液中に分泌されたフィブロネクチンなど分泌性コアタンパク質含有糖鎖中のα2-6シアル酸を簡便かつ確実に検出するために、α2-6シアル酸を特異的に認識するレクチンと、抗フィブロネクチン抗体などの分泌性コアタンパク質特異的抗体とのレクチン−抗体サンドイッチ法を用いる。レクチン−抗体サンドイッチELISAが好ましい。
サンドイッチ法では、抗フィブロネクチン抗体などの分泌性コアタンパク質特異的抗体及びSNAなどのα2-6シアル酸特異的レクチンのいずれかを固相に結合させる。以下、レクチンを固相化する場合について説明する。
本発明において、培養上清中の分泌性コアタンパク質含有糖鎖の非還元末端のα2-6シアル酸を検出するためには、α2-6シアル酸を特異的にエピトープとして認識するプローブを用いる。特定の糖鎖構造を認識して結合するタンパク質は「レクチン」と総称されており、典型的なα2-6シアル酸結合性プローブとしては、各種のα2-6シアル酸結合性レクチンが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、α2-6シアル酸を糖鎖抗原(エピトープ)として認識する抗α2-6シアル酸抗体又はその誘導体を用いてもよい。また、本発明のα2-6シアル酸結合性プローブは単独で用いても良いが、複数のプローブを組み合わせて用いても良い。例えば、複数種のα2-6シアル酸結合性レクチン、またはさらに抗α2-6シアル酸抗体も併用することができる。
本発明のα2-6シアル酸結合性プローブとして用いられるα2-6シアル酸結合性レクチンとしては、培養上清中のフィブロネクチンなど分泌性コアタンパク質含有糖鎖の非還元末端のα2-6シアル酸を認識できるレクチンであればいずれのレクチンを用いてもよい。例えば、特許文献1などに記載の各種のα2-6シアル酸を特異的に認識するレクチンであるSNAレクチン(Sambucus nigra lectin (SNA)、SSAレクチン(Sambucus sieboldiana lectin)、PSL1aレクチン(Polyporus squamosus lectin)、及びTJAIレクチン(Trichosanthes japonica lectin-I)を用いることができる。特に、SNA及びSSAレクチンが好ましい。SNAレクチンはニワトコから、SSAレクチンはニホンニワトコから、PSL1aレクチンはアミヒラタケから、またTJAIレクチンはキカラスウリから抽出することもできるが、SNAはVECTOR Laboratories社、SSA及びTJAIレクチンは生化学工業株式会社により市販されている。PSL1aレクチンは、α2-6シアル酸特異性を保持したリコンビナント体のrPSL1aレクチンが和光純薬工業により市販されている。
レクチンを固相化する基板(固相)としては、プレート(例、マイクロウェルプレート)、マイクロアレイ基板(例、マイクロアレイ用スライドガラス)、チューブ、ビーズ(例、プラスチックビーズ、磁気ビーズ)、クロマトグラフィー用担体(例、Sepharose(商標))、メンブレン(例、ニトロセルロースメンブレン、PVDF膜)、ゲル(例、ポリアクリルアミドゲル)などが例示される。その中でもプレート、ビーズおよびメンブレンが好ましく用いられ、取り扱いの簡便性からプレートが最も好ましく用いられる。
レクチンの固定化方法としては、ビオチン−アビジン結合による固相化が最も好ましい。その場合、あらかじめレクチンをビオチン化しておき、ビオチン化レクチンをストレプトアビジンコートした基板(ウェル)上に固相化した形態で調製することで、検出感度が向上し、バックグラウンドが大幅に減少する。
いずれのプレートも市販されており、「物理吸着法」プレートとしては、住友ベークライト社製の「ELISA用プレート(ブロッキングレスタイプ)」、NUNC社製の「マキシソーププレート」などを、「化学結合プレート」としては、住友ベークライト社製の「活性エステルプレートキット」、NUNC社製の「イモビライザアミノプレート」などを、そして「アビジンプレート」としては、住友ベークライト社製の「アビジンプレート(ブロッキングレスタイプ)」などを用いることができる。
また、SNAレクチン又はSSAレクチンが含まれている市販のレクチンアレイを用いても良い。例えば、特異性の異なる45種の植物レクチンが同一基板上に固定化されているレクチンアレイ(Kuno et al., Nature Methods 2, 851-856, 2005)やLecChipTM Ver.1.0(グライコテクニカ社製)を用いることができる。
被検培養上清試料は、緩衝液で希釈しまたは希釈せずに固相化レクチンウェル内に添加して相互作用させた後、非特異的結合をしている夾雑物をレクチンアレイ用緩衝液(市販されている)で洗浄する。
次いで、間接的又は直接的に標識された抗フィブロネクチン抗体など、本発明の「分泌性コアタンパク質」特異的な抗体を含有させた緩衝液を添加して反応させる。
本発明の「分泌性コアタンパク質」としては、上述のようにフィブロネクチンなどの体性幹細胞からのα2-6シアル酸含有分泌性糖タンパク質があるので、本発明の「分泌性コアタンパク質」特異的な抗体としては、抗フィブロネクチン抗体などを用いることができる。
例えば、フィブロネクチンを検出するための抗フィブロネクチン抗体の場合は、フィブロネクチンをエピトープとして認識して特異的に結合する能力を有するものであればよく、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、及びその抗原認識部位が保存されたFabフラグメントなどの抗体フラグメントの他、ヒト化抗体、単鎖抗体などを使用することもできる。このような抗体として、市販の抗フィブロネクチン抗体(α-Fib:R&D Systems社など)を用いることが簡便であるが、市販のリコンビナントフィブロネクチン(R&D社)又はフィブロネクチンの配列情報に基づいて作製したフィブロネクチンタンパク質を用いて、常法により特異的な抗体を適宜製造することもできる。
サンドイッチELISAの場合、検出のための二次抗体として、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)などで標識化した抗マウスIgG抗体などを用いて検出する一般的方法も用いることができる。
培養上清試料中のフィブロネクチンなど分泌性コアタンパク質の糖鎖中のα2-6シアル酸と基板上のレクチンとが複合体を形成し、分泌性コアタンパク質に結合した標識抗体により生じたシグナルを測定することにより、試料中の分泌性コアタンパク質上のα2-6シアル酸を検出・定量する。シグナルの測定は、使用した標識物質に応じて適切な測定装置を用いて行なえばよい。
一般に、糖鎖とレクチンとの結合は抗体との結合と比較して弱い(一般に、抗原抗体反応の結合定数は106〜109M-1とされているのに対し、レクチンと糖鎖間の結合常数は104〜107M-1とされている。)ため、レクチンと標的糖鎖との結合シグナルは、エバネッセント波励起型蛍光検出法を用いて検出を行なうことが好ましい。エバネッセント波励起型蛍光検出法は、Kuno et al.,Nature Methods,2,851-856(2005)などに記載されている。この検出には、GlycoStationTMReader 1200(モリテックス)等を使用することができる。
本法による細胞分化ポテンシャルの定量的な検出のために、標識した分泌性コアタンパク質、例えば標識したリコンビナントフィブロネクチンを標準物質として用いてα2-6シアル酸特異的レクチンを固定化した基板上にオーバーレイし、標準物質量に応じた標識シグナル量(主波長450nm、副波長 620nm)をブロットして検量線を作成することで、標識シグナル量を、フィブロネクチン上のα2-6シアル酸量として換算することができる。例えば、組換えヒト細胞由来の市販リコンビナントフィブロネクチン(R&D社製)を標準物質として用いることができる。
抗体側を一般的な方法で、プレート、ビーズなどの表面に固相化し、標識されたレクチンをオーバーレイすることもできる。その際、標識法としては、(3−7)で述べた抗体の標識化と同様の蛍光物質、酵素、ビオチンなどによる標識法が用いられるが、ビオチン標識されたレクチン及びHRP標識アビジンを使用したビオチン−アビジン反応を利用する検出系が簡便であり好ましい。
蛍光標識化したレクチンと標的糖鎖との結合シグナルの検出には、上述のエバネッセント波励起型蛍光検出法を用いることが好ましい。
体性幹細胞の培養液中に分泌されるフィブロネクチン量など本発明の分泌性コアタンパク質の総量は、継代を重ねてもほとんど変化しないため、培養上清中の分泌性コアタンパク質の量の測定は必須ではない。
しかし、「細胞分化ポテンシャル」の判定精度を高めるための方法の一つとして、分泌性コアタンパク質が含有する糖鎖の非還元末端のα2-6シアル酸量を上述のサンドイッチ法で測定する際に、残余の培養上清に対して分泌性コアタンパク質特異的抗体により単位容量あたりの分泌性コアタンパク質の総量も測定し、単位分泌性コアタンパク質あたりのα2-6シアル酸の変化量を正確に算出する方法が挙げられる。
その際の測定法としては、既知のウェスタンブロッティング法、ELISA、サンドイッチアッセイ法など一般的なタンパク質測定法が使用可能であるが、特に抗体−抗体サンドイッチELISA法が好ましい。
レクチン側を固定化したレクチン-抗体サンドイッチ法で分泌性コアタンパク質上のα2-6シアル酸量を測定する際に、検出側の標識化した分泌性コアタンパク質特異的抗体とは別のエピトープを認識する分泌性コアタンパク質特異的抗体もレクチンと同様に固定化しておけば、両者に対して同時に培養上清のオーバーレイも、続く標識化抗体結合による標識量の測定も行えるから、両者の標識量の比率から、単位分泌性コアタンパク質あたりのα2-6シアル酸量が算出できる。
本明細書において細胞分化ポテンシャルの判定、評価の対象となる被検体性幹細胞は、主として間葉系幹細胞又は軟骨幹細胞であり、クローン化された体性幹細胞のみならず、体性幹細胞を採取したヘテロな細胞集団からなる生体組織の培養物も含まれる。
したがって、本発明において被検体性幹細胞の「培養上清」というとき、体性幹細胞の継代培養液(培地)またはその洗浄液、又は体性幹細胞を採取した生体組織培養液からの培養上清である。
また、幹細胞はヒトに限らず哺乳動物ではかなりの部分で共通したしくみで制御されていることからみて、本発明の体性幹細胞としてはヒト以外の哺乳動物、例えばサル、ブタ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、マウス、ラット由来の体性幹細胞を用いる場合にも適用できる。
軟骨幹細胞は、軟骨組織から採取できる。例えば多指症患者の切除された指の軟骨組織から、軟骨組織由来軟骨細胞(多指症由来軟骨幹細胞)が取得できる。また、理研バイオリソースセンター、JSRB細胞バンクなどからも入手できる。軟骨幹細胞維持培地は、間葉系幹細胞維持培地として一般に用いられているMesenPRO RSTM地(Life Technologies社)などを用いても良いが、軟骨細胞基本培地、軟骨細胞増殖培地(タカラバイオ社)などの軟骨幹細胞用の維持培地を用いることもできる。
(5−1)体性幹細胞試料の細胞分化ポテンシャルの判定及び評価に基づく品質管理
本発明は、生体から取得した体性幹細胞含有組織などの体性幹細胞試料または体性幹細胞培養物において、体性幹細胞の培養液中に分泌されたフィブロネクチンなど本発明の分泌性コアタンパク質含有糖鎖の非還元末端で発現するα2-6シアル酸を特異的に検出することにより、体性幹細胞試料の細胞分化ポテンシャルを判定または評価する方法に関する。そして、その判定結果に従って体性幹細胞試料の品質管理を行う方法も包含する。
体性幹細胞培養液中のフィブロネクチンなど本発明の分泌性コアタンパク質上のα2-6シアル酸の検出及び発現量の測定には、培養上清に対してα2-6シアル酸結合性レクチン(SSA,SNA)及び抗フィブロネクチン抗体など分泌性コアタンパク質特異的抗体とのサンドイッチアッセイ法を適用する方法が最も適している。培養物のロット全体の細胞分化ポテンシャルを評価、判定する場合、及びその評価に基づく品質管理を行う場合にも、細胞を含まない培養上清を用いるため、継代の際に行われる培地交換時に必ず出る廃棄用培養液や洗浄液が使用できるので貴重な体性幹細胞自体を消費しない。
このような細胞分化ポテンシャル判定用サンドイッチアッセイにおいて、どちらを固相化してもよいが、α2-6シアル酸反応性レクチン(SSA,SNA)をアビジン法又は物理吸着法で固定化した基板(ウェル)に対して被検体性幹細胞の培養上清を供給し、標識化した分泌性コアタンパク質特異的抗体をオーバーレイする方法が好ましい。なお、本発明で「標識化した分泌性コアタンパク質特異的抗体」というとき、当該抗体自体を標識化せずに標識化抗グロブリン抗体などの標識化した二次抗体で検出する場合も含まれる。
上記(3−1)などで述べたたように、本発明において、間葉系幹細胞又は軟骨幹細胞から分泌された培養上清中のフィブロネクチンなど分泌性コアタンパク質が有しているα2-6シアル酸量が、骨芽細胞又は軟骨細胞などへの細胞分化ポテンシャルの程度と高い相関性を有していることが見出された。
その結果、被検間葉系幹細胞又は軟骨幹細胞など被検体性幹細胞における骨芽細胞又は軟骨細胞への細胞分化ポテンシャルを、培養上清より正確に判定、評価するためのアッセイ系として、分泌性コアタンパク質特異的抗体とα2-6シアル酸反応性レクチンとを組み合わせた細胞分化ポテンシャル判定用サンドイッチアッセイ系を構築することができた。
すなわち、本発明において、体性幹細胞の細胞分化ポテンシャル判定用キットというとき、体性幹細胞培養上清を用いた骨芽細胞又は軟骨細胞への細胞分化ポテンシャルを判定評価するためのキットであり、
(a)α2-6シアル酸を特異的に認識するレクチン、及び
(b)分泌性コアタンパク質特異的抗体、
のプローブを含むキットである。
なお、前記(a)又は(b)のいずれか一方のプローブが基板に固定化され、他方のプローブが標識化されていることが好ましく、特に(a)がアビジン法又は物理吸着法により固定化された基板(ウェル)及びオーバーレイ用の(b)を含むキットが好ましい。プレート上へのレクチン固定化法としては、アビジンに結合させるアビジン法が最も優れ、次いで物理的にレクチンを吸着させる物理吸着法が優れている。また、前記のとおり、α2-6シアル酸反応性レクチンとしては、SSA及びSNA、とりわけSNAが分泌性コアタンパク質上のα2-6シアル酸量の変化をより高い相関性をもって判定できるレクチンであり好ましい。また、分泌性コアタンパク質特異的抗体としては、例えば抗フィブロネクチン抗体が挙げられる。
また、培養上清中の分泌性コアタンパク質総量を測定する場合に、上記(a)及び(b)を組み合わせたキットで分泌性コアタンパク質上のα2-6シアル酸量を測定後に、残余の培養上清を用いて直接的又は間接的に標識化された(b)の抗体プローブにより測定することができるが、基板上の別々の領域に(a)及び(b)の両方を配置しておけば、被検試料をオーバーレイした後に、(b)とは同一もしくは異なる分泌性コアタンパク質特異的抗体の標識化抗体を用いた一度の標識検出工程により、分泌性コアタンパク質上のα2-6シアル酸量の測定と、分泌性コアタンパク質総量の測定とを同時に行うことができる。
さらに、リコンビナントフィブロネクチンなどの品質の安定した組換え分泌タンパク質を標準物質として、キットの試薬に含めることもできる。
なお、本発明において、キットというとき、主に各プローブからなる試薬を組み合わせる場合を指すが、試薬用の容器、パッケージ、取扱説明書などの他、測定装置などを含める場合もある。
その際、あらかじめ、対象となる体性幹細胞含有試料と同じ体性幹細胞の標準的な株を用いて、培養液中に分泌されるフィブロネクチンなどの分泌性コアタンパク質上のα2-6シアル酸発現量に応じた細胞分化ポテンシャル度についての検量線を用いることで被検幹細胞含有試料の定量的な評価をすることもできる。具体的には、標準株を継代培養し、継代培養中の複数の継代数の細胞を1部採取し、上記(a)及び(b)からなるサンドイッチアッセイ用キットを用いて、標識強度を測定する。同時に、当該継代細胞を目的とする分化細胞に分化誘導して分化細胞マーカー強度などの細胞分化ポテンシャルを示す数値を測定し、両者の数値から検量線を求める。得られた検量線を用いることで、被検体性幹細胞含有試料に対し当該アッセイ系により測定された標識強度を、目的とする分化細胞への定量的な細胞分化ポテンシャル量に変換できるから、被検体性幹細胞含有試料についての正確な細胞分化ポテンシャルの評価、判定が可能となる。
具体的には、被検体性幹細胞の培養上清中のフィブロネクチン上のα2-6シアル酸発現量を測定した残余の培養上清中のフィブロネクチンなど分泌性コアタンパク質の総量を同時に測定し、両者の測定値から「分泌性コアタンパク質上のα2-6シアル酸発現量/分泌性コアタンパク質の量」、例えば「フィブロネクチン上のα2-6シアル酸発現量/フィブロネクチン量」を計算する。
分泌性コアタンパク質上のα2-6シアル酸発現量は、上記(a)及び(b)からなるサンドイッチアッセイ用キットを用いて測定された標識強度を用いることができ、培養上清中の分泌性コアタンパク質の量は、定量化できる手法であればどのような測定法でも良く、通常のELISA法で簡単に測定可能である。例えば、(c)抗フィブロネクチン抗体など分泌性コアタンパク質特異的抗体と共に(d)抗グロブリン抗体とからなるサンドイッチELISA法で正確に測定できる。
本発明におけるその他の用語や概念は、当該分野において慣用的に使用される用語の意味に基づくものであり、本発明を実施するために使用する様々な技術は、特にその出典を明示した技術を除いては、公知の文献等に基づいて当業者であれば容易かつ確実に実施可能である。また、各種の分析などは、使用した分析機器又は試薬、キットの取り扱い説明書、カタログなどに記載の方法を準用して行った。
なお、本明細書中に引用した技術文献、特許公報及び特許出願明細書中の記載内容は、本発明の記載内容として参照されるものとする。
軟骨組織由来軟骨幹細胞(Yub625株)を一般的な間葉系幹細胞培地であるMesenPRO RSTM 培地(Life Technologies)で継代培養し継代培養し、継代数P3,P6,P9,P12,P15,P18ごとの培養上清及びそれぞれのコントロール培地を100μLずつとり、抗フィブロネクチン抗体(R&D社)固定化ビーズと混合し、4℃で一晩反応させた。ビーズを洗浄後、0.2% SDS 20μLで95℃5分間加熱し、結合画分を溶出させた。各結合画分15μLをストレプトアビジン固定化ビーズと混合して、ビオチン化抗フィブロネクチン抗体を除いた後、10μLのサンプルに対して2.5μLの5×SDSサンプルバッファーを添加して、95℃で5分熱変性後、アクリアミドゲルで電気泳動し、抗フィブロネクチンモノクローナル抗体(R&D社製)と、HRP-SNAによるブロットを行った。なお、各被検培養上清試料としては、1〜2日ごとに行う培地交換時に廃棄する培養上清を毎回採取して用いた(特に記載がない限り、他の実施例においても同様。)
その結果、250kDa以上を示すフィブロネクチン量は変化しないことと共に、フィブロネクチン含有糖鎖に対するSNAの反応性は低下するという結果が観察された(図1)。
すなわち、軟骨幹細胞の継代培養数の増加に伴う細胞分化ポテンシャルの低下によっても、培養上清中のフィブロネクチン量は変化せず、フィブロネクチン上のα2-6シアル酸量が減少することが確認できた。
以上の結果から、体性幹細胞の細胞分化ポテンシャルは、培養上清中のフィブロネクチン含有糖鎖中のα2-6シアル酸量を測定することで判定できることが示唆された。このことは、細胞分化ポテンシャルマーカーのα2-6シアル酸を保持する分泌性コアタンパク質がフィブロネクチンであることを示すことでもある。
本実施例では、標識したリコンビナントフィブロネクチンを標準物質として用い、標識シグナル量を、フィブロネクチン上のα2-6シアル酸量として換算するための標準曲線(検量線)を作成した。
具体的には、1μg/wellのSNAを固定化したプレートに対して、異なる量のリコンビナントフィブロネクチン(R&D社製)を室温1時間反応させた。洗浄後、HRP標識抗フィブロネクチンモノクローナル抗体(R&D社製)を反応させて、室温1時間後、TMB溶液を添加して、発色反応を行った。30分後に1N塩酸を添加して発色反応を停止後、吸光度450 nm-620 nmを測定した(図2)。
(3−1)各種固相化レクチンによる検出能の違いの検証
本実施例では、α2-6シアル酸と特異的に反応するレクチンと抗フィブロネクチン抗体との最適なサンドイッチELISA系を確立するために、下記(実験例1)〜(実験例9)として基板(マイクロアレイプレート)上に固定化するレクチンの種類及びレクチンの固定化法を変え、抗フィブロネクチン抗体(R&D社)を用い、レクチン−抗体サンドイッチELISA系によるシグナル値を得、その反応性の違いを検証した。
レクチンの固相化法としては、基板表面にレクチンをそのまま物理的に吸着させる「物理吸着法」プレートとして「ELISA用プレート(ブロッキングレスタイプ)(住友ベークライト社製)」、基板表面にレクチンを化学的に結合させる「化学結合プレート」として「活性エステルプレートキット(住友ベークライト社製)」、及び基板表面をアビジンコートし、ビオチン化したレクチンを結合させる「アビジンプレート」として「アビジンプレート(ブロッキングレスタイプ)(住友ベークライト社製)」の3種類を検討した。
そして、間葉系幹細胞として、多指症指骨髄由来間葉系幹細胞(Yub622株、理研バイオリソースセンター)を用いて(実施例1)と同様の方法により継代培養を行い、骨芽細胞分化能を有する状態の細胞培養上清(継代数3)と骨芽細胞分化能を有さない状態の細胞培養上清(継代数15)に対して上記ELISA系を適用し、吸光度を測定した。
また、交換培地であるMesenPRO RSTM 培地(Life Technologies)のみ(「培地」)、及びPBS(「細胞無」)の吸光度をコントロールとして用いた。
(1) 同仁化学社製ビオチン標識キットをもちいてビオチン標識したSNA(ベクター社製)をPBS(ニッスイ社製)で終濃度1μg/mLに希釈した溶液をアビジンプレート(住友ベークライト社製)に50μLずつ分注し、室温で1時間静置した。
(2)溶液を廃棄後、300μLの洗浄液を分注して廃棄し、タッピングする操作を3回繰り返し、洗浄した。
(3)PBSで10倍希釈した各種培養上清をプレートに50μLずつ添加し、室温で1時間静置した。
(4)溶液を廃棄後、300μLの洗浄液を分注して廃棄し、タッピングする操作を3回繰り返し、洗浄した。
(5)0.05 % Triton-X100/PBS溶液で終濃度1μg/mLに希釈したHRP標識抗フィブロネクチン抗体(R&D社製、同仁化学社製HRPキット使用)を50μLずつ添加し、室温で1時間静置した。
(6)溶液を廃棄後、300μLの洗浄液を分注して廃棄し、タッピングする操作を3回繰り返し、洗浄した。
(7)発色液と基質液を100:1で混合した発色試薬を全ウェルに100μLずつ添加し、室温で15分静置した。
(8)停止液を全ウェルに100μLずつ添加し、マイクロプレートリーダーで吸光度を測定した。
実験例1操作(1)のSNAの代わりにSSA(JOM社製)をプレート上に固定化し、それ以降のプロトコールは、実験例1操作(2)〜(8)と同様の操作を行った。
実験例1操作(1)のSNAの代わりにPSL(和光純薬工業社製)を固定化し、それ以降のプロトコールは実験例1操作(2)〜(8)と同様の操作を行った。
(1)PBS(ニッスイ社製)で終濃度1μg/mLに希釈したSNA(ベクター社製)をマキシソーププレート(NUNC社製)に50μLずつ分注し、室温で2時間静置した。
(2)以降のプロトコールは、実験例1操作(2)〜(8)と同様の操作を行った。
実験例4操作(1)のSNAの代わりにSSA(JOM社製)を固定化し、それ以降のプロトコールは、実験例1操作(2)〜(8)と同様の操作を行った。
実験例4操作(1)のSNAの代わりにPSL(和光純薬工業社製)を固定化し、それ以降のプロトコールは、実験例1操作(2)〜(8)と同様の操作を行った。
(1)PBS(ニッスイ社製)で終濃度1μg/mLに希釈したSNA(ベクター社製)をイモビライザーアミノプレート(NUNC社製)に50μLずつ分注し、室温で2時間静置した。
(2)以降のプロトコールは、実験例1操作(2)〜(8)と同様の操作を行った。
実験例7操作(1)のSNAの代わりにSSA(JOM社製)を固定化し、それ以降のプロトコールは、実験例1操作(2)〜(8)と同様の操作を行った。
実験例7操作(1)のSNAの代わりにPSL(和光純薬工業社製)を固定化し、それ以降のプロトコールは、実験例1操作(2)〜(8)と同様の操作を行った。
以上の結果をまとめると、下記(表1)及び(図3)の通りである。
すなわち、α2-6シアル酸特異的レクチンとしては、どのレクチンの場合も細胞分化ポテンシャルの減少に応じて反応性も低下する傾向が確認できたが、特にSNAレクチンが、次いでSSAの反応性が優れていることがわかった。また、レクチンの固定化法としては、アビジン結合プレートの感度が良いことも確認できた。
したがって、体性幹細胞培養上清を用いた細胞分化ポテンシャル判定用のレクチン−ELISA系のためのレクチンとしては、α2-6シアル酸と特異的に反応するレクチンであればどのレクチンでも用いることができるが、SNAレクチン又はSSAレクチンが好ましく、特にSNAレクチンが好ましいこと、及びレクチンを固相化する場合には、アビジン結合プレートを用いると最も感度が良いことが判明した。
本実施例と共に、後述の実施例5〜7、及び比較例1により、各種体性幹細胞の継代培養の培養液中に分泌されるフィブロネクチン上のα2-6シアル酸発現量の変化と、体性幹細胞の骨細胞又は軟骨細胞への細胞分化ポテンシャルとの関連性について検証する。
骨髄由来間葉系幹細胞のYub622株(理研バイオリソースセンター)、Yub10F株(理研バイオリソースセンター)、軟骨組織由来軟骨幹細胞のYub621c株(理研バイオリソースセンター)、Yub625株(理研バイオリソースセンター)、及びヒト皮膚線維芽細胞(hFibs, ATCC製)を90日〜190日という長期にわたり(実施例1)と同様の方法で継代培養を行った。いずれの細胞に対しても細胞が10 cm培養皿で80%コンフルエントに到達したときに培地交換を行い、培地交換のタイミングで毎回培養上清を採取し、アビジンコートウェル内に固定化されたSNAレクチンと反応させた。次いで、HRP標識抗フィブロネクチン抗体(α-Fib、R&D社製)をオーバーレイした。その継代数に応じた標識量を測定し、各培養上清中でのフィブロネクチン上のα2-6シアル酸発現量の変化を解析した。
その結果、骨髄由来間葉系幹細胞及び軟骨組織由来軟骨幹細胞は、継代数が増すと急速にフィブロネクチン上のα2-6シアル酸発現量が低下するのに対し、ヒト皮膚線維芽細胞では、何れの継代数においても全く反応性がなかった(図4)。
そして、本実施例及び続く実施例5〜7、比較例1の結果からみて、体性幹細胞の培養液中に分泌されたフィブロネクチン上のα2-6シアル酸が、体性幹細胞の骨芽細胞及び軟骨細胞への細胞分化ポテンシャル判定のための優れた指標となることがわかった。
(実施例4)で用いた多指症骨髄由来間葉系幹細胞のYub622株の継代培養初期細胞(P5)及び後期細胞(P15)及びYub10F株の継代初期細胞(P9)及び後期細胞(P14)のそれぞれを、骨芽細胞への分化培地(hMSC differentiation BulletKit-osteogenic (Cat#: PT-3002, Lonza))により分化誘導し、骨芽細胞をアリザリンレッドSで染色した。継代初期細胞ではいずれも骨芽細胞へ分化した細胞数が多く細胞分化ポテンシャルが高いのに対して、後期細胞ではほとんど骨芽細胞分化が起きておらず、細胞分化ポテンシャルが低いことが確認された(図5)。
本実施例では(実施例4)で用いた多指症由来軟骨幹細胞のYub621c株(理研バイオリソースセンター)及びYub625株(理研バイオリソースセンター)を用い、Yub621c株の継代培養初期細胞(P8)及び後期細胞(P28)及びYub625株の継代初期細胞(P8)及び後期細胞(P19)のそれぞれを、(実施例5)と同様に骨芽細胞へ分化誘導し、骨芽細胞をアリザリンレッドSで染色した。継代初期細胞ではいずれも骨芽細胞へ分化した細胞数が多く細胞分化ポテンシャルが高いのに対して、後期細胞ではほとんど骨芽細胞分化が起きておらず、細胞分化ポテンシャルが低いことが確認された。
この結果から、実施例4で用いた軟骨幹細胞の培養上清中のフィブロネクチン上のα2-6シアル酸発現量が、軟骨幹細胞における骨芽細胞への細胞分化ポテンシャルの指標となっていることが確認できた(図6)。
(実施例4)で用いた多指症由来軟骨幹細胞Yub625株の継代初期細胞(P5)及び後期細胞(P22)のそれぞれを、Lonza社製の軟骨細胞分化誘導キットを用いた軟骨細胞への誘導処理を行い、pH2.5でのアルシアンブルー(武藤化学社製)染色を行った。その結果、継代初期株由来の軟骨誘導株の方が明らかにアシアンブルーで強く染色され、軟骨分化が活発に起きていることが示された。
このことは、軟骨への誘導能についても培養上清中のフィブロネクチン上にα2-6シアル酸量が大量に存在する継代初期細胞では高く、α2-6シアル酸量が急速に失われる後期細胞ではほとんど失われる、ということが確認された。
すなわち、実施例4で用いた軟骨幹細胞の培養上清中のフィブロネクチン上のα2-6シアル酸発現量が、軟骨幹細胞における軟骨細胞への細胞分化ポテンシャルの指標ともなっていることが確認できた(図7)。
(実施例4)で、比較のために用いたヒト皮膚線維芽細胞のhFibs株(ATCCより入手)に対しても、実施例5〜6と同様の骨芽細胞への分化誘導処理を行い、骨芽細胞が染色されるアリザリンレッドSで染色した。念のため、hMSC differentiation BulletKit-adipogenic(Cat#: PT-3004, Lonza)を用いて脂肪細胞への分化誘導も行い、脂肪細胞が染色されるオイルレッドOで染色して分化状態を確認した。
その結果、いずれも染色は確認されなかった(図8)。
(8−1)軟骨組織由来軟骨幹細胞(Yub625株)における細胞分化ポテンシャル評価
本実施例では、軟骨組織由来軟骨幹細胞のYub625株(理研バイオリソースセンター)を用い(実施例1)と同様の方法で継代培養を行った。継代数P3〜P15までの培地交換毎の廃棄用培養上清及びそれぞれのコントロール培地を100μLずつとり、下記(8−2)の手順で調製したSNAレクチンプレートに供し、抗フィブロネクチン抗体とのサンドイッチELISA系で、継代数毎のフィブロネクチン上のα2-6シアル酸量を測定した。同時に、下記(8−3)の手順で調製した抗体プレートにより継代数毎の総フィブロネクチン量を測定し、継代数毎の総フィブロネクチン量あたりα2-6シアル酸含有フィブロネクチン量を算出した。そのうちの典型的な継代数3(p3)及び継代数15(p15)についての結果を下記(表2)に示す。
下記の手順でSNAレクチンプレートを調製し、POD標識抗ヒトフィブロネクチン抗体(タカラバイオ社製キット使用)をオーバレイした後、POD標識を検出した。
(1)ビオチン標識されたSNA(ベクター社製)をPBS(ニッスイ社製)で終濃度1μg/mLに希釈した溶液をアビジンプレート(住友ベークライト社製)に50μLずつ分注し、室温で2時間静置した。
(2)溶液を廃棄後、300μLの洗浄液を分注して廃棄し、タッピングする操作を3回繰り返し、洗浄した。
(3)PBSで希釈したヒトフィブロネクチン標準抗原(PromoCell社製)500ng/mLをトップ濃度とし、2倍の希釈系列でプレートのA〜G列に50μL/wellで分注した。H列にはPBSを50μL添加した。
(4)PBSで10倍希釈した各種培養上清をプレートに50μLずつ添加し、37℃で1時間静置した。
(5)溶液を廃棄後、300μLの洗浄液を分注して廃棄し、タッピングする操作を3回繰り返し、洗浄した。
(6)POD標識抗ヒトフィブロネクチン抗体(タカラバイオ社製キット使用)を50μLずつ添加し、37℃で1時間静置した。
(7)溶液を廃棄後、300μLの洗浄液を分注して廃棄し、タッピングする操作を3回繰り返し、洗浄した。
(8)発色液と基質液を100:1で混合した発色試薬を全ウェルに100μLずつ添加し、室温で15分静置した。
(9)停止液を全ウェルに100μLずつ添加し、マイクロプレートリーダーで吸光度を測定した。
その結果得られた継代数毎のフィブロネクチン上のα2-6シアル酸量を、図9Aに示す。
抗体プレート(タカラバイオ社製)を用い、上記(8−2)の操作のうち、(3)〜(9)と同様の操作を行った。
その結果得られた継代数毎の総フィブロネクチン量を、図9Bに示す。
以上の結果をまとめると、下記(表2)の通りである。
すなわち、培養液中に分泌されるフィブロネクチン(分泌性コアタンパク質)の総量は継代数に依らず一定量分泌されるが、フィブロネクチン上のα2-6シアル酸発現量は継代数の増加とともに減少することが分かった。さらに2つの結果から、総フィブロネクチンあたりのフィブロネクチン上のα2-6シアル酸の割合を算出することができた。
本実施例では、多指症骨髄由来間葉系幹細胞のYub622株に対し、(実施例1)と同様の方法で継代培養を行った。継代数P3〜P15までの培地交換毎の廃棄用培養上清及びそれぞれのコントロール培地を100μLずつとり、(実施例8)と同様の手順でSNAレクチン−POD標識抗ヒトフィブロネクチン抗体(タカラバイオ社)により継代数毎のフィブロネクチン上のα2-6シアル酸量を測定し、抗体プレート及びPOD標識抗ヒトフィブロネクチン抗体(タカラバイオ社製キット)により、継代数毎の総フィブロネクチン量を測定し、あわせて、継代数毎の総フィブロネクチンあたりのフィブロネクチン上のα2-6シアル酸の割合を算出した(図10)。
その結果、継代数が多くなるにつれ、培養上清中のフィブロネクチン上に含まれるα2-6シアル酸量の割合が減少していく傾向が見て取れる。
Claims (20)
- 培養上清を用いて体性幹細胞の細胞分化ポテンシャルを判定又は評価する方法であって、
体性幹細胞の培養上清中の分泌性コアタンパク質含有糖鎖中のα2-6シアル酸量を測定する工程を包含することを特徴とする、方法。 - 分泌性コアタンパク質がフィブロネクチンである、請求項1に記載の方法。
- 体性幹細胞が骨髄由来間葉系幹細胞又は軟骨幹細胞である、請求項1又は2に記載の方法。
- 分泌性コアタンパク質含有糖鎖中のα2-6シアル酸量を測定する工程が、α2-6シアル酸を特異的に認識するレクチンと、分泌性コアタンパク質を特異的に認識する抗体とのサンドイッチアッセイ法を用いて行うことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
- α2-6シアル酸を特異的に認識するレクチンが、SNAレクチン又はSSAレクチンである、請求項4に記載の方法。
- さらに、体性幹細胞の培養上清中に含まれる分泌性コアタンパク質の総量を測定する工程を包含する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
- 培養上清を用いて体性幹細胞の細胞分化ポテンシャルを判定又は評価する方法であって、下記の(1)及び(2)を含む方法;
(1)被検体性幹細胞培養上清試料を、
下記の(a)もしくは(b)のいずれか一方のプローブが固定化された基板上にオーバーレイし、次いで標識化された他方のプローブを作用させる工程、又は
下記の(a)及び(b)のプローブが固定化された基板上にオーバーレイし、次いで標識化された(b)のプローブを作用させる工程、
(a)α2-6シアル酸を特異的に認識するレクチン、
(b)分泌性コアタンパク質を特異的に認識する抗体、
(2)標識化されたプローブの標識量を測定する工程。 - さらに、下記(3)及び(4)の工程を含む、請求項7に記載の方法;
(3)工程(1)で用いた被検培養上清試料の残余の試料を用い、標識化された分泌性コアタンパク質を特異的に認識する抗体により、単位容量あたりの分泌性コアタンパク質の総量に対応する標識量を測定する工程、
(4)工程(2)及び(3)で測定した標識量に基づき、培養上清中の分泌性コアタンパク質の総量に占めるα2-6シアル酸含有分泌性コアタンパク質量の割合を算出する工程。 - 分泌性コアタンパク質がフィブロネクチンであり、かつ分泌性コアタンパク質を特異的に認識する抗体が抗フィブロネクチン抗体である、請求項7又は8に記載の方法。
- 体性幹細胞の培養上清に使用するための体性幹細胞の細胞分化ポテンシャル判定用キットであって、下記の(a)及び(b)のプローブを含むサンドイッチアッセイ用キット;
(a)α2-6シアル酸を特異的に認識するレクチン、
(b)分泌性コアタンパク質を特異的に認識する抗体。 - 前記(a)又は(b)のいずれか一方のプローブが基板に固定化され、他方のプローブが標識化されている、請求項10に記載のキット。
- 前記α2-6シアル酸を特異的に認識するレクチンが、SNAレクチン又はSSAレクチンである、請求項11に記載のキット。
- 分泌性コアタンパク質を特異的に認識する抗体が抗フィブロネクチン抗体である、請求項10〜12のいずれか一項に記載のキット。
- 培養上清を用いた体性幹細胞の品質管理方法であって、
体性幹細胞の培養上清中の分泌性コアタンパク質含有糖鎖中のα2-6シアル酸量を測定する工程を包含することを特徴とする、方法。 - 分泌性コアタンパク質がフィブロネクチンである、請求項14に記載の方法。
- 分泌性コアタンパク質含有糖鎖中のα2-6シアル酸量を測定する工程が、α2-6シアル酸を特異的に認識するレクチンと、分泌性コアタンパク質を特異的に認識する抗体とのサンドイッチアッセイ法を用いて行うことを特徴とする、請求項14又は15に記載の方法。
- 体性幹細胞の培養上清に使用するための体性幹細胞の品質管理用キットであって、下記の(a)及び(b)のプローブを含む品質管理用キット;
(a)α2-6シアル酸を特異的に認識するレクチン、
(b)分泌性コアタンパク質を特異的に認識する抗体。 - 前記(a)又は(b)のいずれか一方のプローブが基板に固定化され、他方のプローブが標識化されている、請求項17に記載のキット。
- 前記α2-6シアル酸を特異的に認識するレクチンが、SNAレクチン又はSSAレクチンである、請求項17又は18に記載のキット。
- 分泌性コアタンパク質を特異的に認識する抗体が抗フィブロネクチン抗体である、請求項17〜19のいずれか一項に記載のキット。
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