以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1.システム構成
図1に本実施形態のシミュレーションシステム(シミュレーション装置)のシステム構成例を示す。本実施形態のシミュレーションシステムは例えばバーチャルリアリティ(VR)をシミュレートするシステムであり、ゲームコンテンツを提供するゲームシステム、映像等のコンテンツを提供するコンテンツ提供システム、フライトシミュレーターやドライブシミュレーターなどのリアルタイムシミュレーションシステム、遠隔作業を実現するオペレーティングシステムなどの種々のシステムに適用可能である。
図1に示すように本実施形態のシミュレーションシステムは、ユーザPL(プレーヤ)が装着するHMD200(頭部装着型表示装置)と、処理装置10と、ケーブル20と、巻き取り装置50を含む。なお、本実施形態のシミュレーションシステムは図1の構成に限定されず、その構成要素(各部)の一部(例えば巻き取り装置、処理装置)を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
HMD200は、ユーザPLが頭部に装着するものであり、画像が表示される表示部や、ユーザPLの位置や姿勢等を検出するためのセンサ部や、各種の処理を行う処理部などを含むことができる。HMD200の詳細については後述する。
ケーブル20は、HMD200と処理装置10との間での信号を伝送するためのものである。ケーブル20は例えば差動信号により信号を伝送する。具体的には小振幅(例えば数百mV)の差動信号によりデジタル信号を伝送する。例えばケーブル20は、映像信号や音声信号(オーディオ信号)などを伝送する第1の信号線を含む。またケーブル20は、コンピュータである処理装置10と、周辺機器であるHMD200を接続するための第2の信号線や、HMD200に電源供給するための電源線を含んでもよい。第1の信号線は例えばHDMI規格(HDMIは登録商標。以下、同様)の信号線である。第2の信号線は例えばUSB規格の信号線である。
なお、上述の第1、第2の信号線は実際には複数の信号線で構成される信号線群(第1、第2の信号線群)となっている。またケーブル20は、一体となった一本のケーブルである必要は必ずしもなく、複数のケーブル部分に分割されていてもよい。例えば図1ではケーブル20はケーブル部分21とケーブル部分22を有している。そしてケーブル部分21とケーブル部分22は、例えば材質、形状及び構造の少なくとも1つを異ならせることができる。
巻き取り装置50は、ケーブル20を巻き取ったり、或いはケーブル20を巻き出すための装置である。巻き取り装置50は、例えばケーブル20を巻き取る巻き取りトルクを発生する。巻き取り装置50の構成、構造としては種々のものを採用できる。また巻き取り装置50を設けない変形実施も可能である。
ケーブル20は、ケーブル通過口52を通って巻き取り装置50に巻き取られる。そしてケーブル通過口50側である一端側とは異なるケーブル20の他端側は、処理装置10に接続される。
処理装置10は、各種の処理を行う装置である。処理装置10としては、例えばパーソナルコンピュータ(PC)、業務用ゲーム装置、家庭用ゲーム装置、光学ディスクプレーヤ(ブルーレイ、DVD)やHDDプレーヤなどの映像機器、オーディオ機器又は携帯型端末装置などの種々の装置を採用できる。例えば処理装置10は、映像信号や音声信号などの信号を生成して、ケーブル20を介してHMD200に供給する。またHMD200と信号のやり取りを行うことで、ユーザPLの位置情報や姿勢情報を検出するための処理を行う。またゲームコンテンツをユーザPLに提供する場合には、処理装置10は、ゲーム画像を生成するための種々のゲーム処理を実行し、生成されたゲーム画像の信号をケーブル20を介してHMD200に供給する。
そして本実施形態では、図1に示すように、ケーブル20は、HMD200(頭部装着型表示装置)から中継点RPを介して巻き取り装置50に巻き取られる。具体的にはケーブル20は、ユーザPLの例えば頭部以外の身体の位置に設定された中継点RPを経由して、巻き取り装置50により巻き取られる。
ここで、中継点RPが設定される頭部以外の身体の位置は、ユーザPLの例えば頭部よりも下(首以下)の部位の位置である。別の言い方をすれば、HMD200が装着される部位とは異なる部位(例えば腰等)に中継点RPが設定される。例えば中継点RPは、ユーザPLが装着する衣服、ベルト又はリュックサックなどの装着物に設けることが望ましい。例えば当該装着物に設けられた中継点RPにおいて、固定具(抜け止め)を用いてケーブル20が固定される。例えばケーブル20が中継点RPから容易に取り外されることがないように、固定具を用いて中継点RPの位置でケーブル20が固定される。
例えば図2(A)〜図2(C)に、ケーブルの中継点の設置の種々の実現例を示す。図2(A)ではユーザPLが装着する腰ベルト30(広義には装着物)に中継点RPが設けられている。例えば腰ベルト30の背面側に設けられた固定具によって、ケーブル20が固定されている。例えばケーブル部分21とケーブル部分22の間のポイントが、中継点RPとして、腰ベルト30内の固定具により固定されている。図2(B)では、ユーザPLが着用するジャケット40(装着物)に中継点RPが設けられている。例えばケーブル部分21とケーブル部分22の間のポイントが、中継点RPとして、ジャケット40の背面側に設けられた固定具によって固定されている。図2(C)ではユーザPLが装着するベルト42(装着物)に中継点RPが設けられている。なお、中継点RPの設置手法としては種々の変形実施が可能であり、例えばユーザPLが背中に着用するリュックサックなどに中継点RPを設けてもよい。
以上のように本実施形態では、HMD200と処理装置10の間での信号(映像信号、音声信号又は制御信号等)を伝送するケーブル20が、HMD200から中継点RPを経由して、巻き取り装置50により巻き取られるようにしている。
例えば図1のように、HMD200はユーザPLの視界を覆うように装着されているため、VR空間(仮想空間)の映像を見ているユーザは、実世界のケーブル20を視覚的に認識することが難しい。特にユーザの視界を完全に覆う非透過型のHMDでは、ユーザは実世界のケーブル20を見ることができない。
例えば後述するライブステージのゲームでは、ユーザPLは、VR空間に設けられたステージ上で、前後左右に自由に移動できる。この際に、実空間においてユーザPLが図1のケーブル20を引きずって歩く事態が生じてしまう。そして、ケーブル20の画像は、VR空間には出てこないため、ケーブル20がユーザの足に絡まってしまい、転倒等してしまうおそれがある。またライブステージのゲームでは、ユーザは振りをつけるために手足を激しく動かすため、手や足などの部位にケーブル20が絡まってしまうおそれがある。特に、ケーブル20が首に絡まってしまうような事態の発生は望ましくない。
このため本実施形態では、ケーブル20の巻き取り装置50を設けている。そして巻き取り装置50によりケーブルを巻き取ることで、HMD200のケーブル20が床等につかないようにする。これにより図1に示すように、ケーブル20が床等につかない状態を維持できるようになる。従って、ユーザがケーブル20を引きずって歩くような状況が発生しないようになり、床に余ったケーブルがユーザの足に絡まってしまうなどの事態を防止できる。この場合に巻き取り装置50は、例えばケーブル20を巻き取り装置50側に引っ張る巻き取りトルクを発生する。例えばケーブル20にテンションをかけるためのトルクを発生する。HMD200のケーブル20が弛んで床につきそうになった場合に、当該巻き取りトルクによりケーブル20を巻き取ることで、ケーブル20が床についてしまうのを防止する。或いは図1においてユーザPLが前に移動して、例えば後述する図5(B)のような状態になった場合に、巻き取りトルクを発生して、ケーブル20を巻き取り装置50側に引っ張る。こうすることで、ケーブル20が常に床につかない状態を維持できるようになる。
なお、巻き取り装置50としては種々の構成を想定できる。例えば回転リールと、回転リールの回転トルクを発生する後述のワイヤ巻き取りユニットにより巻き取り装置50を実現してもよい。或いは、回転リールと、回転リールを回転させるステッピングモータ等のモータにより巻き取り装置50を実現してもよい。或いは施設のオペレータやユーザが手動でケーブル20を巻き取るような構成の巻き取り装置50であってもよい。
このような巻き取り装置50によりケーブル20を巻き取ると、その巻き取りトルク(巻き取り力)がHMD200に作用して、HMD200がずれてしまったり、頭部から外れてしまうなどの事態が発生するおそれがある。またHMD200に直接に巻き取りトルクが作用すると、ユーザの頭部が巻き取り装置50側に引っ張られてしまい、ユーザにとって不快であり、例えばゲームプレイ時や映像鑑賞時におけるユーザの没入感を損ねてしまうおそれがある。
そこで本実施形態では図1に示すような中継点RPを設け、HMD200から中継点を経由して巻き取り装置50によりケーブル20が巻き取られるようにしている。このようにすれば、巻き取り装置50によりケーブル20にテンションがかかった場合に、当該テンションが中継点RPに作用するようになり、当該テンションが、HMD200に直接に作用するのが防止される。従って、ケーブル20のテンションが原因となって、HMD200がずれたり、頭部から外れてしまったり、ユーザの頭部が後ろ側に引っ張られることでユーザの没入感が阻害されてしまうような事態を防止できる。
具体的には本実施形態では、図1に示すようにHMD200と中継点RPの間のケーブル部分21については、余剰を持たせ、弛ませておく。こうすることで、ユーザPLが首を振ったり、振り向いても、ケーブル20の重みを感じにくくなり、装着感を向上できる。一方、中継点RPと巻き取り装置50の間のケーブル部分22に対しては、巻き取り装置50による巻き取りトルク(引っ張りトルク)を作用させる。こうすることで、弛んだケーブル20が例えば床(地面)に余ってユーザの足に絡まってしまうような事態を防止できる。
図3(A)に示すように、中継点RPは、ユーザPLの肩部分PS1と膝部分PS2の間の位置に設定されることが望ましい。即ち肩部分PS1と膝部分PS2の間の範囲APS内の身体上の位置に中継点RPを設定する。例えば図3(A)の点P1、P2、P3等の位置に中継点RPを設定する。
例えば中継点RPを肩部分PS1よりも下の位置に設定すれば、ケーブル20がユーザの手や首などに絡まってしまうのを防止できる。例えば後述するライブステージのゲームでは、歌う際の振りに合わせて、ユーザが手を激しく動かす。例えば観客からの声援や注目を浴びようとして、手を前側に差し出すような動きをする。中継点RPが肩部分PS1よりも上の位置に設定されていると、このような動きをした際に、ユーザの手がケーブル20に絡まってしまう事態が生じる。中継点RPを肩部分PS1よりも下の位置に設定すれば、このような事態を防止できる。
また中継点RPを膝部分PSよりも上の位置に設定すれば、ケーブル20がユーザの足などに絡まってしまうのを防止できる。例えば中継点RPが膝部分PSよりも上の位置にあれば、ケーブル20が床についてしまうのを防止できるため、床に余ったケーブル20が足に絡まってしまうなどの事態を防止できる。
例えば中継点RPは、ユーザPLの腰部分の位置に設定されることが望ましい。この腰部分は、ユーザPLの背中と臀部の間の部分である。例えば中継点RPを腕や足の太ももなどに設けると、巻き取り装置50によりケーブル20が巻き取られている感覚が強くなってしまい、ゲームプレイや映像鑑賞への没入感を阻害する。また足がケーブル20により引っ張られると、姿勢を崩してしまうおそれがある。この点、中継点RPの位置が腰部分であれば、ケーブルにかかったテンションが中継点RPに作用しても、これを安定して受け止めることができ、テンションが中継点RPに作用することによる姿勢の乱れを最小限に抑えることができる。またユーザが感じる不自然感も最小限に抑えることができる。
例えば本実施形態の比較例の手法として、ケーブル20を上方から牽引するようなクレーン機構を設けて、このクレーン機構からのケーブル20をHMD200に取り付ける手法が考えられる。例えば頭部に固定可能なヘルメットをユーザに装着させ、当該ヘルメットにケーブルを取り付ける。しかしながら、この手法では、クレーン機構による引っ張り力により、ユーザの頭部が上側に引っ張られてしまい、ユーザの感じる不自然感が大きくなり、ゲームプレイや映像鑑賞への没入度も損ねてしまう。またケーブル20が上側にあることで、首に絡まるなどの事態も生じやすくなる。この点、本実施形態では、図3(A)のように中継点RPがユーザPLの肩部分PS1と膝部分PS2の間の位置に設定されているため、このような事態の発生を防止できる。
また中継点RPは、ユーザPLの背面側(背中側)の位置に設定されることが望ましい。例えば本実施形態のシミュレーションシステムでは、ユーザの視界の前方側にVRの世界が広がっており、ユーザの注目対象(例えば寒極)はユーザの前方側に位置する場合が多い。従って、ケーブル20のテンションが作用する部分は、当該注目対象とは逆側である背面側であることが望ましい。例えば注目対象に向かって前進しようとするユーザに対して、背面に設定された中継点RPにケーブル20のテンションがかかることで、後ろに引っ張られても、ユーザはそれほど不自然感を感じない。また、後述するライブステージのゲームにおいて、ユーザが観客席の観客の方に向かって移動することで、個室の前方の壁に衝突してしまう事態が発生するおそれもある。この場合に、巻き取り装置50の巻き取りトルクで後方側にユーザを引き戻すことで、このような事態の発生を防止できる。
また本実施形態では図1に示すようにケーブル20は、ケーブル通過口52を通って巻き取り装置50により巻き取られる。例えばケーブル通過口52は、巻き取り装置50により巻き取られたり、巻き出されるケーブル20が通過する部分である。そしてケーブル通過口52側とは異なるケーブル20の他端側が処理装置10に接続される。
この場合に本実施形態では図3(B)に示すように、ケーブル通過口52は、中継点RPよりも低い位置に設けられる。例えば床(地面)からのケーブル通過口52の高さをH1とし、中継点RPの高さをH2とした場合に、H2>H1の関係が成り立っている。ここで、中継点RPの高さH2は、ユーザPLが立ち姿勢であるときの高さである。またユーザPLの身長、体格が平均的な身長、体格である場合を想定している。この平均的な身長、体格は、例えばシミュレーションシステムを利用可能なユーザの平均的な身長、体格である。例えば子供の利用が許容されていない場合や想定されていない場合には、子供を除いた平均的な身長、体格である。そして、この想定される中継点RPの高さH2よりも低い高さH1の位置に、ケーブル通過口52が設けられる。例えば中継点RPがユーザPL(例えば平均身長158〜172cm程度)の腰部分の位置に設定されている場合に、ケーブル通過口52の高さH1としては、例えば70cm〜90cmの範囲内の高さとすることができる。
図3(B)のように、ケーブル通過口52の高さH1と中継点RPの高さH2について、H1<H2の関係が成り立てば、例えば後述の図5(B)のように巻き取りトルクによってケーブル20が引っ張られた場合に、その引っ張り力の方向が斜め下向きの方向になる。従って、ケーブル20のケーブル部分22の存在範囲を、下側の範囲(例えば腰より下の範囲)に限定できるようになり、ユーザPLが手を振った場合などに、手がケーブル20(22)に絡まってしまうような事態の発生を防止できる。またケーブル通過口52の高さH1をなるべく低くすることで、例えば後述する図6のようにユーザPLがしゃがんだ場合にも適切に対応できるようになる。
図4は本実施形態の変形例を示す図である。図4では図1の巻き取り装置50は設けられておらず、ユーザPLの後方の壁49にケーブル通過口52が設けられている。この壁49は、例えば後述するプレイエリアである個室において、ユーザPLの後方に設けられる壁である。そしてケーブル20は、壁49のケーブル通過口52を通って、処理装置10に接続される。
このように本実施形態は、HMD200と処理装置10とケーブル20とケーブル通過口52を有し、ケーブル20がHMD200からユーザPLの身体の位置に設定された中継点RPを経由して、ケーブル通過口52を通って、処理装置10に接続されるシミュレーションシステムに適用できる。このシミュレーションシステムでは、巻き取り装置50が設けられていてもよいし、図4に示すように巻き取り装置50が設けられていなくてもよい。そして、このようなシミュレーションシステムにおいて、本実施形態では、図4に示すように、ケーブル通過口52が、ユーザPLの肩部分PS1と膝部分PS2の間の範囲APS内の高さに設けられている。ここでは前述のようにユーザPLが、立ち姿勢であり、平均的な身長、体格である場合を想定している。
例えばケーブル通過口52が、肩部分PS1よりも高い位置にあると、ケーブル通過口52から取り出されたケーブル20が、ユーザPLの手や首に絡まるおそれがある。例えばライブステージのゲーム等において、ユーザPLが後ろや横を向きながら手を振ったり、回転した場合などに、手等がケーブル20に絡まってしまう。特にケーブル20が首に巻きついてしまうのは望ましくない。またライブステージのゲーム等では、後述の図6のようにユーザPLが膝を床についてしゃがむなどのポーズをとる場合がある。この場合に、ケーブル通過口52が高い位置にあると、ケーブル20が、中継点RPから斜め上方向に大きな角度で引っ張られてしまい、ユーザPLの動作を阻害してしまう。
一方、ケーブル通過口52が膝部分PS2よりも低い位置にあると、ケーブル通過口52から出たケーブル20が床についてしまい、床に余ったケーブル20がユーザPLの足に絡まってしまうおそれがある。ケーブル20が足に絡まってユーザPLが転倒してしまう事態は避ける必要がある。
この点、本実施形態では図4に示すように、ケーブル通過口52の高さが、ユーザPLの肩部分PS1と膝部分PS2の間の範囲APS内の高さになっている。従って、ケーブル通過口52の高さが肩部分PS1よりも下方であるため、ユーザPLが後ろや横を向きながら手を振るなどの動作を行った場合にも、ケーブル20が手や首等に絡まってしまうのを防止できる。またケーブル通過口52の高さが膝部分PS2よりも上方であるため、床に余ったケーブル20が足に絡まってユーザPLが転倒等する事態を防止できる。特に、図4では、ケーブル通過口52の高さH1と中継点RPの高さH2について、H1<H2の関係が成り立っている。従って、ケーブル20にテンションがかかった場合(図5(B))にも、ケーブル20の存在範囲を、下側の範囲に限定できるようになり、ケーブル20がユーザの手足等に絡まる事態を効果的に防止できる。
また図5(A)において、ユーザPLが基準位置STPに立っている場合における、ケーブル通過口52から中継点RPまでの直線距離をLSとする。またケーブル通過口52から中継点RPに至るまでのケーブル20の長さをLCとする。この場合に図5(A)に示すように本実施形態では、LC>LSの関係が成り立っている。即ちケーブル20(22)が弛んだ状態になっている。
基準位置STPは、ユーザPLの基準となる立ち位置として設定される位置である。例えば後述する図12、図13の個室(プレイエリア)では、個室の中央付近の位置が基準位置STPに設定されている。例えばライブステージ等のゲームの開始時の位置が、基準位置STPになる。この基準位置STPは、VR空間のステージの中央位置に相当する。この場合に本実施形態では、図5(A)に示すようにLC>LSの関係が成り立っており、ユーザPLが基準位置STPに立っている場合に、ケーブル20が下側に弛んだ状態になっている。このように基準位置STPに立っている場合に、ケーブル20が弛んだ状態になることで、中継点RPからケーブル通過口52に至るケーブル20の長さLCが、両者の直線距離であるLSよりも長くなる。こうすることで、ユーザPLが基準位置STPに立っている際には、ケーブル20が弛んだ状態になっているため、ケーブル20によるテンションが中継点RPに加わらないようになり、装着感等を向上できる。
例えばケーブル20には、巻き取り装置50へのケーブル20の巻き取りを抑止するストッパー26が設けられている。具体的には、LC>LSとなるように、巻き取り装置50へのケーブル20の巻き取りを抑止するストッパー26(係止部)が設けられている。例えばストッパー26の直径は、ケーブル通過口52の径よりも大きくなっているため、図5(A)のようにストッパー26がケーブル通過口52の位置にある場合には、これ以上はケーブル20は、巻き取り装置50によって巻き取られないようになる。このように、ユーザPLが基準位置STPに立っている際に、ストッパー26を用いてケーブル20が巻き取られないようにすることで、ケーブル20が下側に弛み、LC>LSの関係が成り立つようになる。
例えば巻き取り装置50は、ケーブル20を前記巻き取り装置50側に引っ張る巻き取りトルクTQを発生している。この巻き取りトルクTQは、後述のワイヤ巻き取りユニットなどの機械的なトルク発生ユニットを用いて発生してもよいし、モータによる回転リールの回転トルクにより発生してもよい。或いは、オペレータの手動による巻き取りで実現してもよい。
例えば図5(A)のようにユーザPLが基準位置STPに立っている時には、巻き取りトルクTQによりケーブル20が巻き取られた場合にも、ケーブル20が弛んだ状態で、その巻き取りがストッパー26により係止されるようになる。即ち、LC>LSの関係が成り立つようにストッパー26がケーブル20の巻き取りを係止する。
このようにすれば、ユーザPLが基準位置STPに立っている際には、ケーブル20にはテンションがかからず、巻き取りトルクTQによる力が中継点RPに作用しないようになる。従って、ユーザPLはケーブル20により後ろ側に引っ張られることがなく、装着感を向上できる。即ち、ケーブル20の存在感を無くすことができ、ケーブル20により引っ張れることで仮想現実感が損なわれてしまう事態を防止できる。
そして図5(B)のようにユーザPLが前方向DRF側に動くと(例えば50cm〜1mだけ前進)、巻き取りトルクTQが作用して、ケーブル20にテンションがかかる。このようにケーブル20にテンションがかかることで、ケーブル20が床についてしまうのが防止され、床に余ったケーブル20がユーザPLの足等に絡まってしまうのを回避できる。そしてケーブル20にテンションがかかることで、巻き取りトルクTQによる力が中継点RPに作用して、ユーザPLが後ろ側に引っ張られるようになる。例えば後述のライブステージのゲームでは、観客席の方向に移動しようとするユーザPLを後ろ側に引っ張って、基準位置STPの場所に引き戻すことができる。これにより、後述の図12、図13の個室(プレイエリア)において前方の壁301にユーザPLがぶつかってしまうのを防止できる。
そして図5(B)のようにケーブル20のケーブル部分22に対して、巻き取りトルクTQによるテンションである引っ張り力がかかっても、この引っ張り力を中継点RPが受け止めることで、ケーブル部分21にはこの引っ張り力は作用しないようになる。従って、この引っ張り力が原因となって、HMD200がずれてしまったり、外れてしまうのを防止できる。
また図6のように、ユーザPLが前に移動して、しゃがんだ場合にも、ケーブル20にはテンションがかかる。この場合に図4等で説明したように、ケーブル通過口52の高さH1が、範囲APS内に入るような低い高さになっているため、斜め上方向の大きな角度でケーブル20により後ろに引っ張られてしまう事態も防止できる。
このように本実施形態によれば、ユーザPLが、おおよそ想定されるエリア(基準位置STPを中心とした所定範囲のエリア)にいる場合には、ユーザPLはケーブル20により後ろに引っ張られることがなく、ケーブル20のテンションを感じなくて済むようになる。従って、不快な装着感を無くすことができる。そして、当該エリアから外れるような位置にユーザPLが移動すると、ケーブル20にテンションがかかり、当該エリアの位置にユーザPLを引き戻すことが可能になり、安全性等を向上できる。なお図5(A)に示すようなストッパー26によるケーブル20の係止を、モータの制御(巻き取り、巻き出しのストップ制御)などにより実現してもよい。
以上のように本実施形態では、ユーザが、HMD200により視界が遮られて実空間が見えない状態で移動している場合に、ケーブル20が絡まないように、安全且つ簡易な仕組みが提供される。例えばユーザ(プレーヤ)は、視界を覆うHMD200を装着して、所定の範囲を移動可能であると共に、後述するようにユーザPLの実空間での位置が検出可能になっている。そしてVR空間(ゲーム空間等)でのユーザの位置情報は、実空間でのユーザの位置情報に関連づけられており、関連づけられた位置情報に基づいて、HMD200の表示部に対して、VR空間での画像(ゲーム画像等)が表示される。そして演算処理部である処理装置10(PC等)とユーザが装着するHMD200を電気的に接続するケーブル20と、当該そのケーブル20の巻き取り量や巻き出し量を調整する巻き取り装置50(巻き取り器)が設けられる。そしてケーブル20を中継する中継点RPが、ユーザの身体上に設定して配置される。このようにすることで、ケーブル20の存在を原因とする不快な装着感を軽減しながら、ケーブル20がユーザの身体に絡んでしまう不具合についても防止できるようになる。
また本実施形態では処理装置10は、ユーザがゲームをプレイするためのゲーム処理を行ってもよい。例えば後述するようなライブステージのゲームを実現するためのゲーム処理を処理装置10が実行する。そして処理装置10は、ゲーム処理の結果に基づき生成されたゲーム画像の信号(映像信号)を、ケーブル20を介してHMD200に出力する。これにより、ユーザは、VR空間であるゲーム空間での画像を見ながら、ゲームを楽しむことができるようになる。
そして、このゲーム処理のゲーム状況に応じて、巻き取り装置50を制御する。例えば巻き取り装置50のケーブル20の巻き取り及び巻き出しの少なくとも一方を制御する。例えばゲーム状況に応じて、ケーブル20の巻き取りトルク(巻き出しトルク)、巻き取り量(巻き取り長)、巻き出し量(巻き出し長)、巻き取り速さ、及び巻き出し速さの少なくとも1つを変化させる。例えばゲームの展開上、ユーザが動き回りそうなゲーム状況になった場合には、例えば事前に、巻き取りトルクを小さくしておき、巻き出し量の許容量を多めに設定しておく。例えば後述するライブステージのゲームにおいて、コンサートの幕が開いて、ユーザが歌を唄って動き始めるような状況になった場合に、巻き取りトルクを小さくしたり、巻き出し許容量を大きくする。このようにすればユーザは、VR空間のステージにおいて、ケーブル20の重さをそれほど感じることなく、広い範囲に亘って動き回れるようになり、ユーザの仮想現実感等を向上できる。
またユーザが演奏に合わせて歌を唄うようなゲーム状況では、巻き取りトルクを大きくし、巻き出し許容量を小さくする。一方、歌の間奏などにおいて、ユーザが観客に対して振りのパフォーマンスなどを行うようなゲーム状況では、巻き取りトルクを小さくし、巻き出し許容量を大きくすることで、VR空間のステージ上を動き回れるようにする。
また、興奮したユーザが、目の前の観客席に入り込んでしまうようなゲーム状況においては、巻き取りトルクを大きくしたり、巻き取りの制御を早めたり、ケーブル20の巻き出しに対してブレーキをかけるなどの制御を行う。こうすることで、後述の図12、図13の個室の壁301等にユーザがぶつかってしまうような事態を防止できるようになる。
なお、巻き取り装置50の制御は、処理装置10が行ってもよいし、巻き取り装置50の制御装置(制御基板)を別途に設けて、当該制御装置が巻き取り装置50の巻き取り及び巻き出しの少なくとも一方を制御してもよい。また巻き取り装置50にモータ(例えばステッピングモータ、トルクモータ)を設け、ゲーム状況に応じてモータを制御してもよい。例えばゲーム状況に応じてモータを制御して、巻き取りトルクや巻き出し許容量の制御を実現する。例えばゲーム状況に応じて、モータの回転トルクの制御、回転量の制御、回転速度の制御、及び回転停止の制御の少なくとも1つを行う。
また処理装置10は、ユーザのユーザ状況情報を取得してもよい。ユーザ状況情報は、ユーザの場所的な情報(位置、向く方向等)、ユーザの身体についての情報(姿勢、行動等)、ユーザの生体情報(血圧、脈拍等)、又はユーザの周囲の環境の情報(温度、湿度、気圧等)である。処理装置10は、これらのユーザ状況情報を、センサ(位置センサ、生体センサ、環境センサ等)からのセンサ情報やインターネット等からのネットワーク情報に基づいて取得する。そして本実施形態では、取得したユーザ状況情報に応じて、巻き取り装置50のケーブルの巻き取り及び巻き出しの少なくとも一方を制御する。例えばユーザ状況情報に応じて、ケーブル20の巻き取りトルク(巻き出しトルク)、巻き取り量、巻き出し量、巻き取り速さ、及び巻き出し速さの少なくとも1つを変化させる。例えば巻き取り装置50にモータを設け、ユーザ状況情報に応じてモータを制御する。例えばユーザ状況情報に応じてモータを制御して、巻き取りトルクや巻き出し許容量(引き出し許容量)の制御を実現する。例えばユーザ状況情報に基づいて、モータの回転トルクの制御、回転量の制御、回転速度の制御、及び回転停止の制御の少なくとも1つを行う。
例えば処理装置10は、ユーザの位置情報及び姿勢情報の少なくとも1つをユーザ状況情報として取得する。ユーザの位置情報は、例えば実空間でのユーザの位置の情報(位置座標)であり、ユーザの向く方向の情報を含んでもよい。ユーザの姿勢情報は、例えば実空間においてユーザの身体の姿勢の情報である。ユーザの位置情報は、例えば後述する図10(A)〜図11(B)で説明するように、HMD200の位置情報、或いは入力装置160−1、160−2の位置情報などに基づいて検出できる。またユーザの姿勢情報は、例えばHMD200の第1の位置情報と、入力装置160−1の第2の位置情報と、入力装置の160−2の第3の位置情報に基づいて検出できる。即ち、これらの第1、第2、第3の位置情報に基づいて、ユーザの概略的な姿勢情報を検出する。なお、ユーザの姿勢を検出するモーションセンサを設けて、当該モーションセンサに基づいてユーザの姿勢情報を検出してもよい。例えばモーションセンサである撮像センサ(カラー画像センサ、デプスセンサ等)により取得されたカラー画像とデプス情報に基づいて、ユーザのスケルトンの形状を推定して、ユーザの姿勢情報を検出してもよい。
そして本実施形態では、ユーザの位置情報及び姿勢情報の少なくとも1つに応じて、巻き取り装置50を制御する。例えば巻き取り装置50のケーブルの巻き取り及び巻き出しの少なくとも一方を制御する。例えばユーザの位置情報及び姿勢情報の少なくとも1つに基づいて、巻き取り装置50に設けられるモータの回転トルクの制御、回転量の制御、回転速度の制御、及び回転停止の制御の少なくとも1つを行う。
例えばユーザの転倒が、姿勢情報に基づき検出された場合には、巻き取りトルクを小さくする。こうすることで、ケーブル20のテンションが弱まり、ユーザは転倒状態から立ち姿勢の状態に、早期に復帰できるようになる。なお、ユーザの転倒は、姿勢情報に加えて、位置情報も考慮して判断してもよい。例えばユーザが装着するHMD200(或いは入力装置160−1、160−2)の位置が下側の位置であり、且つ姿勢が転倒姿勢であると判断された場合に、ユーザが転倒したと判断してもよい。
またユーザがケーブル20に絡まり、左右に回転したことが、姿勢情報や位置情報に基づき検出された場合には、巻き取りトルクを小さくしたり、巻き出し許容量を大きくする。こうすることで、ユーザは、ケーブル20が絡んだ状態から通常状態に早期(安全)に復帰できるようになる。
またユーザの位置情報に基づいて、ユーザが、許容される移動範囲の限界位置付近に来ていることが検出された場合には、巻き取りトルクを大きくしたり、巻き出し許容量を小さくする。例えば後述する図12、図13において、ユーザが、許容される移動範囲であるエリアARの境界BDを越えた場合には、巻き取りトルクを大きくしたり、巻き出し許容量を小さくする。こうすることで、ユーザが個室の壁301、302、303等にぶつかってしまうのを防止できる。なお例えばユーザが困って大声を出しているような状況が検出された場合に、巻き取りトルクを小さくする制御を行ってもよい。
また本実施形態では、巻き取り装置50の巻き取り及び巻き出しの少なくとも一方を、ケーブル20の巻き取り残量に応じて制御してもよい。例えば巻き取り装置50の巻き取りトルク(巻き出しトルク)、巻き取り量、巻き出し量、巻き取り速さ、巻き出し速さ等を、巻き取り残量に応じて制御する。例えばケーブル20の巻き取り残量が少なくなった場合には、巻き取りトルクを大きくして、ユーザによって、それ以上、ケーブル20が引っ張られないようにする。一方、巻き取り残量が十分ある場合には、巻き取りトルクをなるべく小さくして、ユーザが自由に動き回れるようにする。この巻き取りトルク等の制御は、例えば巻き取り装置50に設けられたモータ等により実現できる。例えば巻き取り装置50の回転リールに対して設けられたロータリーエンコーダーなどの回転検出部を用いて、回転リールの回転数を検出することで、巻き取り残量を検出する。そして巻き取り残量の大小に基づいて、モータの回転トルクを制御することで、巻き取りトルクを制御する。即ち、巻き取り残量が少なくなって来た場合には、モータの回転トルクを大きくすることで、巻き取りトルクを大きくする。一方、巻き取り残量が十分である場合には、モータの回転トルクを小さくすることで、巻き取りトルクを小さくする。或いは、巻き取り残量に応じて、ケーブル20を巻き出すような制御を行ってよい。例えばモータの回転方向を巻き取り時とは逆回転の方向にして、ケーブル20を巻き出す制御を行う。
また本実施形態では巻き取り装置50のケーブル20の巻き取り状況に応じたユーザへの報知情報を生成してもよい。例えばケーブル20の巻き取り状況に応じて、音、振動又は画像等により、ユーザに対して警告等の報知情報を出力する。
例えばユーザが前進するなどして、ケーブル20が強く引っ張られて巻き出された場合には、警告音を出したり、警告の振動を行ったり、或いは警告表示を行う。警告音は、例えば後述するプレイエリア(個室)に設けられたスピーカにより出力できる。或いはユーザが装着するヘッドホンにより出力してもよい。警告振動は、HMD200や後述の入力装置160−1、160−2に内蔵される振動デバイスを用いて実現できる。警告表示は、HMD200に表示される画像で実現したり、プレイエリア等に設けられたLEDにより実現できる。これらの音、振動又は画像の報知情報は、処理装置10が生成してもよいし、処理装置10とは別に設けられた制御装置により生成してもよい。また報知情報の生成の元になる巻き取り状況は、ケーブル20の巻き出し量、巻き出し速度、巻き取り量、巻き取り速度、巻き取りトルクなどの情報により判断できる。これらの情報は、巻き取り装置50の回転リールに対して設けられた回転検出部により検出してもよい、モータの駆動状態等に基づいて検出してもよい。例えば、巻き出し速度が所定速度よりも速くなった場合や、巻き取りトルクが所定トルクよりも大きくなった場合や、巻き出し残量が所定量よりも少なくなった場合などに、警告等の報知情報をユーザに出力してもよい。
図7は巻き取り装置50の制御処理の一例を示すフローチャートである。まず、ユーザの位置情報、姿勢情報等のユーザ状況情報を取得する(ステップS1)。例えばHMD200や後述の入力装置160−1、160−2の位置情報を検出することで、ユーザの位置情報、姿勢情報等をユーザ状況情報として取得する。次にゲーム処理を実行する(ステップS2)。例えば後述するライブステージのゲームのゲーム処理を実行する。次にゲーム処理の結果に基づくゲーム画像を生成して、HMD200に表示する(ステップS3)。即ちVR空間でのゲーム画像を生成して表示する。そしてゲーム状況やユーザ状況情報に基づいて、巻き取り装置50を制御する(ステップS4)。即ち、ステップS2のゲーム処理により特定されるゲーム状況や、ステップS1で取得されたユーザ状況情報に基づいて、巻き取り装置50のケーブル20の巻き取りや巻き出しを制御する。例えば巻き取りトルク、巻き取り量、巻き出し量、巻き取り速さ、或いは巻き出し速さなどを制御する。
図8は、巻き取り残量に基づく制御処理やユーザへの報知情報の生成処理の一例を示すフローチャートである。例えばケーブル20の巻き取り残量等の巻き取り状況を取得する(ステップS11)。巻き取り状況は、巻き取り装置50に設けられた回転検出部からの検出結果やモータの駆動状態などにより取得できる。そしてケーブル20の巻き取り残量に基づいて、巻き取り装置50を制御する(ステップS12)。例えば巻き取り残量が少ない場合には巻き取りトルクを大きくするなどの制御を行う。或いは巻き取り量、巻き出し量等を制御してもよい。次に、ケーブルの巻き取り状況に応じたユーザへの報知情報(警告等)を生成する(ステップS13)。そして生成された報知情報を音、画像、振動等により出力する(ステップS14)。例えばケーブル20が強く引っ張られたり、巻き取り残量が少なくなった場合に、ユーザに対して警告の報知情報を出力する。
2.詳細な構成
次に本実施形態のシミュレーションシステムの詳細な構成例について説明する。図9は、シミュレーションシステムの構成例を示すブロック図である。図1の処理装置10は、例えば図9の処理部100、記憶部170などにより実現できる。なお、本実施形態のシミュレーションシステムは図9の構成に限定されず、その構成要素(各部)の一部を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
入力装置160は、ユーザが種々の入力情報を入力するための装置である。この入力装置160は、演奏情報入力装置161、振動デバイス164を含むことができる。また入力装置160は、ユーザがゲームの操作情報を入力するためのゲームコントローラの機能を有していてもよい。ゲームコントローラは、例えば操作ボタン、方向指示キー、ジョイスティック又はレバー等により実現される。この場合にゲームコントローラと演奏情報入力装置161は、一体の筐体で実現してもよいし、別体の筐体で実現してもよい。
演奏情報入力装置161は、ユーザの演奏情報を入力するための装置である。例えば本実施形態により実現される音楽ゲームが、歌の演奏ゲームである場合には、入力装置160の入力情報は、歌(ボーカル)の演奏情報となる。そして演奏情報入力装置161は図10(A)で説明するマイク162等により実現される。本実施形態により実現される音楽ゲームが、楽器の演奏ゲームである場合には、入力装置160の入力情報は、楽器の演奏情報となる。そして演奏情報入力装置161は、弦楽器(ギター)、打楽器(ドラム、太鼓)、鍵盤楽器(ピアノ、キーボード)などの楽器、或いは当該楽器を模した装置により実現できる。
振動デバイス164(振動発生部)は、警告等のための振動を発生するデバイスであり、例えば振動モータ(バイブレータ)などにより実現される。振動モータは、例えば、偏芯した錘を回転させることで振動を発生する。具体的には駆動軸の両端に偏心した錘を取り付けてモータ自体が揺れるようにする。なお振動デバイス164は、振動モータには限定されず、例えばピエゾ素子などにより実現されるものであってもよい。
記憶部170は各種の情報を記憶する。記憶部170は、処理部100や通信部196などのワーク領域として機能する。ゲームプログラムや、ゲームプログラムの実行に必要なゲームデータは、この記憶部170に保持される。記憶部170の機能は、半導体メモリ(DRAM、VRAM)、HDD(ハードディスクドライブ)、SDD、光ディスク装置などにより実現できる。記憶部170は、空間情報記憶部172、楽曲情報記憶部174、パラメータ記憶部176、描画バッファ178を含む。
情報記憶媒体180(コンピュータにより読み取り可能な媒体)は、プログラムやデータなどを格納するものであり、その機能は、光ディスク(DVD、BD、CD)、HDD、或いは半導体メモリ(ROM)などにより実現できる。処理部100は、情報記憶媒体180に格納されるプログラム(データ)に基づいて本実施形態の種々の処理を行う。即ち情報記憶媒体180には、本実施形態の各部としてコンピュータ(入力装置、処理部、記憶部、出力部を備える装置)を機能させるためのプログラム(各部の処理をコンピュータに実行させるためのプログラム)が記憶される。
頭部装着型表示装置200(HMD)は、ユーザの頭部に装着されて、ユーザの眼前に画像を表示する装置である。HMD200は非透過型であることが望ましいが、透過型であってもよい。またHMD200は、いわゆるメガネタイプのHMDであってもよい。
HMD200は、センサ部210、表示部220、処理部240を含む。なおHMD200に発光素子を設ける変形実施も可能である。センサ部210は、例えばヘッドトラッキングなどのトラッキング処理を実現するためものである。例えばセンサ部210を用いたトラッキング処理により、HMD200の位置、方向を特定する。HMD200の位置、方向が特定されることで、ユーザの視点位置、視線方向を特定できる。
トラッキング方式としては種々の方式を採用できる。トラッキング方式の一例である第1のトラッキング方式では、後述の図10(A)、図10(B)で詳細に説明するように、センサ部210として複数の受光素子(フォトダイオード等)を設ける。そして外部に設けられた発光素子(LED等)からの光(レーザー等)をこれらの複数の受光素子により受光することで、現実世界の3次元空間でのHMD200(ユーザの頭部)の位置、方向を特定する、第2のトラッキング方式では、後述の図11(A)、図11(B)で詳細に説明するように、複数の発光素子(LED)をHMD200に設ける。そして、これらの複数の発光素子からの光を、外部に設けられた撮像部で撮像することで、HMD200の位置、方向を特定する。第3のトラッキング方式では、センサ部210としてモーションセンサを設け、このモーションセンサを用いてHMD200の位置、方向を特定する。モーションセンサは例えば加速度センサやジャイロセンサなどにより実現できる。例えば3軸の加速度センサと3軸のジャイロセンサを用いた6軸のモーションセンサを用いることで、現実世界の3次元空間でのHMD200の位置、方向を特定できる。なお、第1のトラッキング方式と第2のトラッキング方式の組合わせ、或いは第1のトラッキング方式と第3のトラッキング方式の組合わせなどにより、HMD200の位置、方向を特定してもよい。
HMD200の表示部220は例えば液晶ディスプレイ(LCD)や有機ELディスプレイなどにより実現できる。例えばHMD200には、表示部220として、ユーザの左目の前に配置される第1のディスプレイと、右目の前に配置される第2のディスプレイが設けられており、例えば立体視表示が可能になっている。立体視表示を行う場合には、例えば視差が異なる左目用画像と右目用画像を生成し、第1のディスプレイに左目用画像を表示し、第2のディスプレイに右目用画像を表示すればよい。
HMD200の処理部240は、HMD200において必要な各種の処理を行う。例えば処理部240は、センサ部210の制御処理や表示部220の表示制御処理などを行う。また処理部240が、3次元音響(立体音響)処理を行って、3次元的な音の方向や距離や広がりの再現を実現してもよい。
音出力部192は、本実施形態により生成された音を出力するものであり、例えばスピーカ又はヘッドホン等により実現できる。
I/F(インターフェース)部194は、携帯型情報記憶媒体195とのインターフェース処理を行うものであり、その機能はI/F処理用のASICなどにより実現できる。携帯型情報記憶媒体195は、ユーザが各種の情報を保存するためのものであり、電源が非供給になった場合にもこれらの情報の記憶を保持する記憶装置である。携帯型情報記憶媒体195は、ICカード(メモリカード)、USBメモリ、或いは磁気カードなどにより実現できる。
通信部196は、有線や無線のネットワークを介して外部(他の装置)との間で通信を行うものであり、その機能は、通信用ASIC又は通信用プロセッサなどのハードウェアや、通信用ファームウェアにより実現できる。
なお本実施形態の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラム(データ)は、サーバ(ホスト装置)が有する情報記憶媒体からネットワーク及び通信部196を介して情報記憶媒体180(あるいは記憶部170、補助記憶装置194)に配信してもよい。このようなサーバ(ホスト装置)による情報記憶媒体の使用も本発明の範囲内に含めることができる。
処理部100(プロセッサ)は、入力装置160からの入力情報やHMD200でのトラッキング情報(HMDの位置、方向、或いは視点位置、視線方向)と、プログラムなどに基づいて、ゲーム処理、ゲーム成績演算処理、表示処理、或いは音処理などを行う。
処理部100の各部が行う本実施形態の各処理(各機能)はプロセッサ(ハードウェアを含むプロセッサ)により実現できる。例えば本実施形態の各処理は、プログラム等の情報に基づき動作するプロセッサと、プログラム等の情報を記憶するメモリにより実現できる。プロセッサは、例えば各部の機能が個別のハードウェアで実現されてもよいし、或いは各部の機能が一体のハードウェアで実現されてもよい。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)であってもよい。但し、プロセッサはCPUに限定されるものではなく、GPU(Graphics Processing Unit)、或いはDSP(Digital Processing Unit)等、各種のプロセッサを用いることが可能である。またプロセッサはASICによるハードウェア回路であってもよい。メモリ(記憶部170)は、SRAM、DRAM等の半導体メモリであってもよいし、レジスターであってもよい。或いはハードディスク装置(HDD)等の磁気記憶装置であってもよいし、光学ディスク装置等の光学式記憶装置であってもよい。例えば、メモリはコンピュータにより読み取り可能な命令を格納しており、当該命令がプロセッサにより実行されることで、処理部100の各部の処理(機能)が実現されることになる。ここでの命令は、プログラムを構成する命令セットでもよいし、プロセッサのハードウェア回路に対して動作を指示する命令であってもよい。
処理部100は、入力処理部102、演算処理部110、出力処理部140を含む。演算処理部110は、ゲーム処理部111、ゲーム成績演算部118、表示処理部120、音処理部130を含む。上述したように、これらの各部により実行される本実施形態の各処理は、プロセッサ(或いはプロセッサ及びメモリ)により実現できる。なお、これらの構成要素(各部)の一部を省略したり、他の構成要素を追加するなどの種々の変形実施が可能である。
入力処理部102は、入力情報やトラッキング情報を受け付ける処理や、記憶部170から情報を読み出す処理や、通信部196を介して情報を受信する処理を、入力処理として行う。例えば入力処理部102は、入力装置160を用いてユーザが入力した入力情報やHMD200のセンサ部210等により検出されたトラッキング情報(ユーザの位置情報、視線情報等)を取得する処理や、読み出し命令で指定された情報を、記憶部170から読み出す処理や、外部装置(サーバ等)からネットワークを介して情報を受信する処理を、入力処理として行う。ここで受信処理は、通信部196に情報の受信を指示したり、通信部196が受信した情報を取得して記憶部170に書き込む処理などである。
演算処理部110は、各種の演算処理を行う。例えばゲーム処理、ゲーム成績演算処理、表示処理、或いは音処理などの演算処理を行う。
ゲーム処理部111(ゲーム処理のプログラムモジュール)はユーザがゲームをプレイするための種々のゲーム処理を行う。ゲーム処理部111は、ゲーム進行処理部112、評価処理部113、キャラクタ処理部114、パラメータ処理部115、オブジェクト空間設定部116、仮想カメラ制御部117を含む。
ゲーム進行処理部112は、ゲーム開始条件が満たされた場合にゲームを開始する処理、ゲームを進行させる処理、或いはゲーム終了条件が満たされた場合にゲームを終了する処理などを行う。評価処理部113は、ユーザのゲームプレイの評価処理を行う。例えば音楽ゲームでのユーザの演奏や、ゲーム操作についての評価処理を行う。音楽ゲームに使用される楽曲情報は楽曲情報記憶部174に記憶される。
キャラクタ処理部114は、キャラクタに関する種々の処理を行う。例えばオブジェクト空間(仮想空間、ゲーム空間)においてキャラクタを移動させる処理や、キャラクタを動作させる処理を行う。例えばキャラクタを動作させる処理は、モーションデータを用いたモーション処理(モーション再生等)により実現できる。パラメータ処理部115は、ゲームに使用される種々のパラメータ(ゲームパラメータ)の演算処理を行う。例えばパラメータの値を増減させる処理を行う。パラメータの情報はパラメータ記憶部176に記憶される。
オブジェクト空間設定部116は、複数のオブジェクトが配置されるオブジェクト空間(広義には仮想空間)の設定処理を行う。例えば、キャラクタ(人、動物、ロボット等)、マップ(地形)、建物、観客席、コース(道路)、樹木、壁、水面などの表示物を表す各種オブジェクト(ポリゴン、自由曲面又はサブディビジョンサーフェイスなどのプリミティブ面で構成されるオブジェクト)をオブジェクト空間に配置設定する処理を行う。即ちワールド座標系でのオブジェクトの位置や回転角度(向き、方向と同義)を決定し、その位置(X、Y、Z)にその回転角度(X、Y、Z軸回りでの回転角度)でオブジェクトを配置する。具体的には、記憶部170の空間情報記憶部172には、オブジェクト空間での複数のオブジェクト(パーツオブジェクト)の位置、回転角度(方向)等の情報が空間情報として記憶される。オブジェクト空間設定部116は、例えば各フレーム毎にこの空間情報を更新する処理などを行う。
仮想カメラ制御部117は、オブジェクト空間内の所与(任意)の視点から見える画像を生成するための仮想カメラ(視点、基準仮想カメラ)の制御処理を行う。具体的には、仮想カメラの位置(X、Y、Z)又は回転角度(X、Y、Z軸回りでの回転角度)を制御する処理(視点位置、視線方向あるいは画角を制御する処理)を行う。この仮想カメラはユーザの視点に相当する。立体視表示の場合は、左目用の第1の視点(左目用の第1の仮想カメラ)と、右目用の第2の視点(右目用の第2の仮想カメラ)が設定される。
ゲーム成績演算部118はユーザのゲーム成績を演算する処理を行う。例えばユーザのゲームプレイにより獲得された得点、ポイントなどのゲーム成績の演算処理を行う。
表示処理部120は、ゲーム画像の表示処理を行う。例えば処理部100で行われる種々の処理(ゲーム処理、シミュレーション処理)の結果に基づいて描画処理を行い、これにより画像を生成し、HMD200の表示部220に表示する。具体的には、座標変換(ワールド座標変換、カメラ座標変換)、クリッピング処理、透視変換、或いは光源処理等のジオメトリ処理が行われ、その処理結果に基づいて、描画データ(プリミティブ面の頂点の位置座標、テクスチャ座標、色データ、法線ベクトル或いはα値等)が作成される。そして、この描画データ(プリミティブ面データ)に基づいて、透視変換後(ジオメトリ処理後)のオブジェクト(1又は複数プリミティブ面)を、描画バッファ178(フレームバッファ、ワークバッファ等のピクセル単位で画像情報を記憶できるバッファ)に描画する。これにより、オブジェクト空間内において仮想カメラ(所与の視点。左目用、右目用の第1、第2の視点)から見える画像が生成される。なお、表示処理部120で行われる描画処理は、頂点シェーダ処理やピクセルシェーダ処理等により実現することができる。
音処理部130は、処理部100で行われる種々の処理の結果に基づいて音処理を行う。具体的には、楽曲(音楽、BGM)、効果音、又は音声などのゲーム音を生成し、ゲーム音を音出力部192に出力させる。なお音処理部130の音処理の一部(例えば3次元音響処理)を、HMD200の処理部240により実現してもよい。
出力処理部140は各種の情報の出力処理を行う。例えば出力処理部140は、記憶部170に情報を書き込む処理や、通信部196を介して情報を送信する処理を、出力処理として行う。例えば出力処理部140は、書き込み命令で指定された情報を、記憶部170に書き込む処理や、外部の装置(サーバ等)に対してネットワークを介して情報を送信する処理を行う。送信処理は、通信部196に情報の送信を指示したり、送信する情報を通信部196に指示する処理などである。
そして本実施形態では、ゲーム処理部111は、複数のオブジェクトが配置される仮想空間(ゲーム空間)において、ユーザがプレイするゲームの処理を行う。例えばオブジェクト空間である仮想空間には、キャラクタ等の複数のオブジェクトが配置されており、ゲーム処理部111は、この仮想空間でのゲームを実現するための種々のゲーム処理(ゲーム進行処理、キャラクタ処理、オブジェクト空間設定処理、或いは仮想カメラ制御処理等)を実行する。そして表示処理部120は、仮想空間において所与の視点(左目用、右目用の第1、第2の視点)から見えるゲーム画像を、HMD200の表示部220(第1、第2のディスプレイ)に表示する処理を行う。即ち、仮想空間であるオブジェクト空間において、ユーザの視点(仮想カメラ)から見えるゲーム画像を表示する処理を行う。この場合のユーザの視点は、ユーザの視点位置情報、視線情報(視線方向情報)により設定される。
例えば仮想空間での視点は、仮想ユーザの視点位置、視線方向に設定される。そしてHMD200を装着した現実世界のユーザが、例えば後述の図12、図13の個室のプレイエリアにおいて移動したり、首を振ったり、しゃがんだりすると、これに連動して仮想ユーザの視点位置、視線方向も変化する。例えば現実世界のユーザが移動すれば、仮想空間での仮想ユーザの視点位置も、その移動に対応する方向に移動する。また現実世界のユーザが首を振ると、仮想空間での仮想ユーザの視線方向も、首を振った方向に対応する方向を向くように変化する。
なお、プレイエリア(プレイフィールド、プレイスペース)は、ユーザがゲームプレイを行うエリア(フィールド、スペース)として予め規定(設定)されているエリアである。このプレイエリアは、例えばユーザの位置情報等のトラッキングが可能な範囲を内包するエリアである。プレイエリアは、例えば周囲が壁で囲まれたエリアであってもよいが、オープンスペースのエリアであってもよい。
図10(A)に本実施形態のシミュレーションシステムに用いられるHMD200の一例を示す。図10(A)に示すようにHMD200には複数の受光素子201、202、203(フォトダイオード)が設けられている。受光素子201、202はHMD200の前面側に設けられ、受光素子203はHMD200の右側面に設けられている。またHMDの左側面、上面等にも不図示の受光素子が設けられている。
またユーザPLは、左手、右手で入力装置160−1、160−2を持っている。入力装置160−1、160−2には、HMD200と同様に複数の受光素子(不図示)が設けられている。また入力装置160−1にはマイク162(音入力デバイス)が設けられており、ユーザPLは歌の演奏ゲームにおいてマイク162に口を向けて歌うことになる。また入力装置160−1、160−2はゲームコントローラとしても機能し、不図示の操作ボタン、方向指示キー等が設けられている。なおユーザが持つ入力装置160の個数は1個であってもよい。
またHMD200には、ヘッドバンド260等が設けられており、ユーザPLは、より良い装着感で安定的に頭部にHMD200を装着できるようになっている。そしてユーザPLは、ゲームコントローラとして機能する入力装置160−1、160−2を操作したり、頭部の頷き動作や首振り動作を行うことで、操作情報を入力し、ゲームプレイを楽しむ。頷き動作や首振り動作は、HMD200のセンサ部210等により検出できる。
図10(B)に示すように、ユーザPLのプレイエリアにはベースステーション280、284が設置されている。ベースステーション280には発光素子281、282が設けられ、ベースステーション284には発光素子285、286が設けられている。発光素子281、282、285、286は、例えばレーザー(赤外線レーザー等)を出射するLEDにより実現される。ベースステーション280、284は、これら発光素子281、282、285、286を用いて、例えばレーザーを放射状に出射する。そして図10(A)のHMD200に設けられた受光素子201〜203等が、ベースステーション280、284からのレーザーを受光することで、HMD200のトラッキングが実現され、ユーザPLの頭の位置や向く方向(広義にはユーザの位置や方向)を検出できるようになる。また入力装置160−1、160−2に設けられた不図示の受光素子が、ベースステーション280、284からのレーザーを受光することで、入力装置160−1、160−2のトラッキングが実現され、入力装置160−1、160−2の位置や方向を検出できるようになる。これにより、例えばゲーム画像に、入力装置160−1に対応するマイクの画像等を表示することが可能になる。
図11(A)にHMD200の他の例を示す。図11(A)では、HMD200に対して複数の発光素子231〜236が設けられている。これらの発光素子231〜236は例えばLEDなどにより実現される。発光素子231〜234は、HMD200の前面側に設けられ、発光素子235や不図示の発光素子236は、背面側に設けられる。これらの発光素子231〜236は、例えば可視光の帯域の光を出射(発光)する。具体的には発光素子231〜236は、互いに異なる色の光を出射する。そして図11(B)に示す撮像部150をユーザPLの前方側に設置し、この撮像部150により、これらの発光素子231〜236の光を撮像する。即ち、撮像部150の撮像画像には、これらの発光素子231〜236のスポット光が映る。そして、この撮像画像の画像処理を行うことで、ユーザPLの頭部(HMD)のトラッキングを実現する。即ちユーザPLの頭部の3次元位置や向く方向(ユーザの位置、方向)を検出する。
例えば図11(B)に示すように撮像部150には第1、第2のカメラ151、152が設けられており、これらの第1、第2のカメラ151、152の第1、第2の撮像画像を用いることで、ユーザPLの頭部の奥行き方向での位置等が検出可能になる。またHMD200に設けられたモーションセンサのモーション検出情報に基づいて、ユーザPLの頭部の回転角度(視線)も検出可能になっている。従って、このようなHMD200を用いることで、ユーザPLが、周囲の360度の全方向うちのどの方向を向いた場合にも、それに対応する仮想空間(仮想3次元空間)での画像(ユーザの視点に対応する仮想カメラから見える画像)を、HMD200の表示部220に表示することが可能になる。なお、発光素子231〜236として、可視光ではなく赤外線のLEDを用いてもよい。また、例えばデプスカメラ等を用いるなどの他の手法で、ユーザの頭部の位置や動き等を検出するようにしてもよい。
なお、ユーザの視点位置、視線方向(ユーザの位置、方向)を検出するトラッキング処理の手法は、図10(A)〜図11(B)で説明した手法には限定されない。例えばHMD200に設けられたモーションセンサ等を用いて、HMD200の単体でトラッキング処理を実現してもよい。即ち、図10(B)のベースステーション280、284、図11(B)の撮像部150などの外部装置を設けることなく、トラッキング処理を実現する。或いは、公知のアイトラッキング、フェイストラッキング又はヘッドトラッキングなどの種々の視点トラッキング手法により、ユーザの視点位置、視線方向などの視点情報等を検出してもよい。
図12、図13に本実施形態のゲームが実現されるプレイエリアの一例を示す。このプレイエリアは、ボックス状の防音の個室により実現される。図12、図13に示すようにボックスの個室は、壁301、302、303、304、天井305、ドア306を有する。壁301、302、303、304、天井305の内側にはクッション材としても機能する防音材311、312、313、314、315が設けられている。また天井305には前述のベースステーション280、284や照明器具290、292が設置されている。
ユーザPLの前側にはフロントスピーカ330、331、センタースピーカ332が設置され、後ろ側にはリアスピーカ333、334、ウーハー335が設置される。これらのスピーカによりサラウンド音響が実現される。そしてウーハー335が収容されている収容ボックス内に、巻き取り装置50が収容されている。この巻き取り装置50は回転リール62を有しており、ケーブル20は、収容ボックス(棚)に設けられたケーブル通過口52を通って、回転リール62により巻き取られる。
ユーザPLは図13のドア306を開けて個室内に入り、ゲームをプレイする。この個室内の空間がユーザPLのプレイエリア(プレイ空間、実空間)になる。そして図13に示すように、ボックスの個室のプレイエリアには、ユーザPLの移動範囲(移動可能範囲)として想定されるエリアARが設定される。このエリアAR内では、ステーション280、284等を用いたユーザPLの位置、方向(視点位置、視線方向)のトラッキングが可能になっている。一方、エリアARの境界BDを越えた位置では、確実なトラッキングを実現できない。またユーザPLがエリアARの境界BDを越えると、壁301、302、303、304にぶつかるおそれがあり、安全面の上で望ましくない。エリアARの設定は、例えばゲーム装置のイニシャライズ設定などにより、その範囲を設定可能になっている。
そして図12、図13に示すように、ユーザPLは腰ベルト30を装着している。腰ベルト30には収容部32が取り付けられており、この収容部32内にケーブル20の中継点RPが設けられる。ケーブル20は、HMD200から中継点RPを経由して巻き取り装置50により巻き取られる。ケーブル部分21とケーブル部分22の間のポイントが中継点RPになる。なおケーブル20には、ユーザPLが基準位置に立っている際にケーブル20を弛ませるためのストッパー26が設けられている。
図14(A)に収容部32の内部断面図を示す。収容部32は、基部33を有し、基部33には中継器36が取り付けられている。中継器36はケーブル20により伝送される信号の増幅を行う増幅器などを含む。HMD側からのケーブル20(21)は、固定具34により基部33に固定される。巻き取り装置側へのケーブル20(22)は、固定具35により基部33に固定される。図14(A)では中継点RPが固定具34、35により実現されている。即ち、固定具34、35(抜け止め)によりケーブル20を基部33に固定し、この基部33が設けられた収容部32を有する腰ベルト30をユーザが装着することで、中継点RPをユーザの腰部分に設定できるようになる。
図14(B)はHMD側のケーブル20(21)の例であり、図14(C)は巻き取り装置側のケーブル20(22)の例である。
信号線17、18(導体、線心)は、各々、例えばHDMI、USB用の信号線(信号線群)である。HDMI用の信号線17により、映像信号や音声信号が伝送される。USB用の信号線18により、例えばユーザの位置、方向、視点或いは姿勢の検出用の情報が伝送される。図10(A)を例にとれば受光素子201、202、203による検出情報が伝送される。電源線19は、HMD200への電源供給線である。一端側がHMD200に接続される電源線19の他端側には、AC−DC変換の電源アダプターが設けられ、これによりHMD200にDC電源が供給される。
図14(B)のHMD側のケーブル20(21)では、信号線17、18、電源線19の各々が外装被覆27で覆われた形状、構造になっている。即ち、それぞれが外装被覆27で覆われた信号線17、18、電源線19の3本のケーブルを平面方向で接着した形状、構造のケーブルになっている。一方、図14(C)の巻き取り装置側のケーブル20(22)では、信号線17、18、電源線19が1つの外装被覆27(シース)で覆われた、形状、構造のケーブルになっている。このケーブル20(22)としては例えばロボットケーブルと呼ばれるケーブルを採用できる。信号線17、18、電源線19と外装被覆27の間には絶縁体28が設けられている。
図14(B)、図14(C)に示すように、HMD側のケーブル部分21と、巻き取り装置側のケーブル部分22は、形状や構造が異なっている。またケーブル部分21とケーブル部分22は、例えば外装被覆27や絶縁体28の材質も異なっている。例えばケーブル部分22は、巻き取り装置50に巻き取られたり、ユーザが動くことで、頻繁に、繰り返し屈曲する。このため、ケーブル部分22の材質としては、このような屈曲により、外装被覆27が破れたり、絶縁体28が破損しないような材質(材料)が用いられる。例えばケーブル部分22には、HMD側のケーブル部分21に比べて、柔らかくて、断線しにくい材質が用いられる。具体的にはケーブル部分22には、例えば耐屈曲性(可撓性)、耐捻回性、耐摺動性などを有する材質が用いられる。例えば被覆材料としてフッ素樹脂などの素材が用いられる。また信号線17、18、電源線19の導体として、細い銅線を複数本撚り合わせた撚り線が用いられる。なお図14(A)の中継器33には、例えばHDMI用のコネクタ、USB用のコネクタ、電源用のコネクタが、ケーブル部分21側とケーブル部分22側のそれぞれに設けられる。
3.ゲームの概要
次に、本実施形態の手法により実現されるゲームの概要について説明する。なお、以下では本実施形態の手法が適用されるゲームが、歌の演奏を行う音楽ゲームである場合を主に例にとり説明する。しかしながら、本実施形態の手法が適用されるゲームは、これに限定されず、例えば弦楽器、打楽器、或いは鍵盤楽器等の楽器を演奏する音楽ゲーム(リズムや演奏の上手さを競うゲーム)などであってもよい。また本実施形態の手法は、異性キャラクタ等とのコミュニケーションゲーム(人間関係シミュレーションゲーム)、戦闘ゲーム、RPGゲーム、ロボットゲーム、カードゲーム、スポーツゲーム、或いはアクションゲーム等の種々のゲームにも適用可能である。
本実施形態により実現されるゲームは、本物のライブステージのような臨場感の中、バンドのボーカルになりきって、ボーカル演奏を行う音楽ゲームである。ユーザは、大観衆を目前にして歌うという、かつてない高揚感を感じつつ、自分のファンからの歓声を全身に浴びる強烈な快感を得ることができる。HMDと大出力のサラウンドスピーカーにより、まるで本物のライブステージに出演し、自分のファンに囲まれて歌っているかのような、臨場感を得ることができる。
ステージの周りの観客は、ユーザのボーカル演奏やステージアクションに反応して、派手な声援や様々なアクションをインタラクティブに返してくる。HMDによる、まるでその場に立っているかのような臨場感のライブステージの上で、表情まで見える最前列のファンをはじめ、会場を埋める満員の観客の前で、バンドメンバーの演奏と共に、自分の歌とライブパフォーマンスを行って、観客の期待に応える。
ユーザは共有スペースに設けられた受け付けスペースで、入室時間の予約やプレイ設定を行い、図12、図13に示すようにクッション材(防音材)が貼られた安全な個室内で、ライブ出演体験を楽しむ。
ユーザは、ステージ出演前のプレイ設定において、コンサート出演モードを選択する。その後、歌う曲の選択を行い、出演ステージを選択する。そして図10(A)、図10(B)等で説明したHMD200、入力装置160−1、160−2などのデバイスや、腰ベルト30を装着する。店舗のオペレータが、注意事項等を説明し、ユーザのデバイス等の装着や調整を補助する。プレイエリアである個室空間のキャリブレーション(イニシャライズ)は、オペレータが事前に行う。
図10(A)の入力装置160−1は、マイク&ゲームコントローラになっている。VR空間内では、ユーザ(仮想ユーザ)の腕や手は描画されないが、ユーザが手で持っている入力装置160−1等の位置がセンシングされ、同じ位置にマイク画像が描画され、ユーザの動きに応じてマイク画像が動くようになる。
ユーザは、VR空間のスタンバイルームで、ボーカルのキー調整を行う。スタンバイルームは、ステージの下の待機スペースである。VR空間においてユーザが立っているスペースは大きなリフトになっていて、本番時にはステージ上にせり上がる。
リフトが上昇しステージが近づいて来るのに合わせて、遠くから聞こえていたホールの歓声や掛け声が徐々に大きくなり、迫力を増し、且つ、生々しく変化する。ステージ上にユーザが出現すると、ユーザに向けて前方から逆光のスポットライトが当てられ、ユーザの登場で最高潮に達した大歓声が起こる。
ライブの本番ではユーザは、思う存分、ステージでの熱唱を楽しむ。図15、図16は、ステージ上のユーザのHMD200に表示されるゲーム画像(VR空間での画像)の例である。図15、図16に示すようにユーザの目の前には満員の観客が映し出される。図15はユーザが正面を向いた場合のゲーム画像であり、図16は、ユーザが右方向を向いた場合のゲーム画像である。
図15、図16に示すように、HMD200を用いる本実施形態のゲーム装置では、ユーザの全周囲の方向に亘って、仮想空間であるVR空間の世界が広がる。例えばHMD200を装着したユーザが前方向を向けば、図15のゲーム画像がHMD200に表示され、右方向を向けば、図16のゲーム画像が表示される。後ろ方向を向けば、演奏バンドなどの画像が表示される。従って、多数の観客が歓声を上げる巨大なコンサートホールにおいて、ボーカル演奏しているかのような仮想現実感をユーザに与えることができ、ゲームへの没入度等を格段に向上できる。
また本実施形態では、曲の抑揚に合わせて観客の動き(アクション)や歓声が変化する。またユーザのアクションに応じるように、観客の動きや歓声が変化する。例えば図15において、ユーザが立つステージの近くの観客AD1〜AD7は、例えば多数のポリゴンで構成されるポリゴンモデルのオブジェクトにより表現されている。図16の観客AD8〜AD11も同様である。一方、ステージから遠い位置にいる観客は、ユーザの視線に正対するビルボードポリゴンに描かれた画像により表現されている。
ポリゴンモデルの観客(AD1〜AD11)は、例えばモーションデータによるモーション再生によりその動きが表現されている。これらの観客は、曲のリズムにのって基本アクション(基本モーション)を行う。観客は、ユーザの声や動きに応じも、インタラクティブにリアクションする。ユーザが、例えば「特定の方向を向いて歌う」、「手を振る」といったアクションを行うことで、その方向の観客のテンションが上がり、基本アクションが、1段階、派手になったり、或いは曲のリズムとは関係ない突発的な盛り上がりアクションを行うようになる。
図17は、VR空間においてユーザPL(仮想ユーザ)が立つステージSGを、上方から俯瞰した様子を示す図である。ステージSGは境界BDSにより区画されており、ステージSGの周りの観客席SE1、SE2、SE3には、図15、図16に示すようにアクションする観客が配置されている。このステージSGの境界BDSは、例えば図13の現実世界のプレイエリアのエリアARの境界BDに対応している。一例としては、図13の現実世界のエリアARの境界BDから例えば所定距離だけ内側に対応する位置に、VR空間でのステージSGの境界BDSが設定されている。
そして図17においてステージSGに立つユーザ(仮想ユーザ)は、図15、図16に示すように観客(AD1〜AD11)に囲まれてライブ演奏を行っている。従って、熱狂する観客を見て興奮したユーザが、これらの観客に近づこうとして、ステージSGの外側に移動してしまう事態が生じる。このような事態が生じると、ユーザが実世界の壁301などにぶつかってしまうおそれがある。
このような場合においても、本実施形態では、例えば巻き取り装置50の巻き取りトルクや巻き出し量などを制御することで、ステージSGの中央側にユーザを引き戻すことが可能になり、安全性等を確保できる。
また本実施形態ではユーザは、観客を盛り上げるためのパフォーマンスを行うことができる。ユーザに向けて何らかのアピールのアクションをしてくる観客が、当該パフォーマンスのターゲットになる。例えば図15では、観客AD4が、右手を高く上げてユーザに対してアピールのアクションを行っており、この観客AD4がターゲットになる。また図16ではアピールのアクションを行っている観客AD10がターゲットになる。
これらのアピールする観客に対して、ユーザがアクションを行うことで、これらの観客の熱狂度パラメータ(熱狂度ゲージ)の値が上昇する。そして熱狂度パラメータが最大値になると、これらの観客が、大喜びを表現する熱狂アクションを行うようになる。
例えば図18(A)では、ユーザPLは視線VLPを観客ADBに向けて、ボーカル演奏を行っているため、観客ADBの熱狂度パラメータが上昇している。そして観客ADBの熱狂度パラメータが最大値(広義には所与の値)に達すると、観客ADBについてはターゲットクリアの状態になる。図18(B)、図18(C)においても、同様に、ユーザPLが視線VLPを観客ADA、ADCに向けて、ボーカル演奏を行うことで、熱狂度パラメータが上昇し、熱狂度パラメータが最大値に達すると、ターゲットクリアになる。このようにして全ての観客ADA、ADB、ADCについて、ターゲットクリアになると、全ターゲットクリアになる。
このように本実施形態のゲームでは、観客へのユーザのアピール度も評価される。従って、観客の熱狂度パラメータを上げるために、ユーザは、図13のエリアARで前後左右に動き回ったり、手や足を激しく動かすような行動を行うようになる。このため、ユーザがゲームに熱中、没入すると、ケーブル20がユーザの身体に絡まったり、転んだりするなどの事態が生じてしまう。
この点、本実施形態では、ユーザの身体に設定された中継点RPを介してケーブル20が巻き取られるようになっている。そして中継点RPやケーブル通過口52の場所についても、ケーブル20が手足等に絡まらないような場所に設定されている。従って、上記のような事態の発生を効果的に防止できる。
4.巻き取り装置
巻き取り装置50によりケーブル20を巻き取った場合に、巻き取った後のケーブル20が絡まないようにする必要がある。ケーブル20が絡んでしまうと、シミュレーションシステムの運営等に問題が生じる。また巻き取った後のケーブル20が、巻き取り装置50の後段側にある固定点で固定されている場合に、巻き取り装置50によりケーブル20を巻き取るにつれて、巻き取った後のケーブル20に捻れが生じてしまう。このような捻れにより、例えばケーブル20に対して局所的に強い屈曲(屈曲半径が小さい屈曲)が生じると、ケーブル20での信号伝送に支障が生じる問題が発生する。また局所的な強い屈曲が頻繁に発生するとケーブル20が破損してしまう問題も発生する。
このような問題を解決するために、回転式の電気接点を用いる手法も考えられる。しかしながら、ケーブル20で伝送される信号がHDMIのような差動信号である場合には、回転式の電気接点を用いる手法では、ノイズの重畳により適正な信号伝送を実現できないという問題がある。
図19、図20に、このような問題を解決できる本実施形態の巻き取り装置50の構成例を示す。図19は巻き取り装置50の内部構造を示す斜視図であり、図20は巻き取り装置50の全体の外観を示す斜視図である。
巻き取り装置50は、ケーブル20の巻き取り部60と、ケーブル20を貯留するケーブル貯留部80を含む。ケーブル貯留部80には、巻き取り部60により巻き取った後のケーブル20(ケーブル部分23)が貯留される。本実施形態では、このようなケーブル貯留部80を設けることで、上述のような巻き取り後のケーブル20の絡みの問題や局所的な強い屈曲(強い捻れ)の発生の問題などを解決する。図20に示すように、これらの巻き取り部60、ケーブル貯留部80は、板部材53、54等で構成される筐体内に収容される。
巻き取り部60は、ケーブル20を巻き取る回転リール62を有する。回転リール62は、例えば差動信号により信号を伝送するケーブル20を巻き取る。例えばケーブル20は、デジタル映像信号線を含むケーブルである。具体的には、ケーブル20は、小振幅(例えば数百mV)の差動信号によりデジタル信号を伝送する。より具体的には、ケーブル20は、映像信号や音声信号(オーディオ信号)などを伝送する第1の信号線を含む。第1の信号線としては、例えばHDMI、DVI又はsuperMHLなどの高速なデータ転送規格の信号線を用いることができる。HDMI(High-Definition Multimedia Interface)ではTMDS(Transition Minimized Differential Signaling)と呼ばれる方式で映像信号や音声信号を伝送する。superMHLはHDMIと変換互換性があるTMDS方式でのデータ転送規格である。なお第1の信号線は、HDMIやsuperMHLを発展させたデータ転送規格の信号線であってもよい。またケーブル20は、コンピュータである処理装置10と、周辺機器であるHMD200を接続するための第2の信号線や、HMD200に電源供給するための電源線を含んでもよい。第2の信号線は例えばUSB規格の信号線である。この第2の信号線を用いることで、映像信号や音声信号以外のデジタル信号を伝送して、処理装置10の各種の処理を実現できる。例えばHMD200を装着するユーザPLの位置、方向の情報や姿勢情報を検出するための各種の処理を実現できる。
巻き取り部60の回転リール62は、回転軸AX1(第1の軸)の回りに回転自在になっている。そして回転リール62は、その両側に円盤形状のガイド板63、64を有しており、ガイド板63、64の間にケーブル20を巻き取る。或いは巻かれたケーブル20を巻き出す。具体的には図19のガイド板63を見た平面視において、回転リール62が、回転軸AX1において時計回りに回転すると、ケーブル20が巻き取られる。一方、回転リール62が、回転軸AX1において反時計回りに回転すると、巻き取られていたケーブル20が巻き出される。
回転リール62のガイド板63には、回転リール62の回転に伴い回転するプーリー65が取り付けられている。プーリー65には、ワイヤ巻き取りユニット90からのワイヤ92が巻かれている。ワイヤ巻き取りユニット90は、ケーブル20を巻き取り装置側に引っ張る巻き取りトルク(回転トルク)を発生するための装置である。
例えば巻き取り部60の回転リール62が回転して、ケーブル20が巻き出される際(送出される際)に、回転リール62の回転に伴いプーリー65が回転することで、ワイヤ92が、ワイヤ巻き取りユニット90から巻き出される。即ち、図19のガイド板63を見た平面視において、回転リール62が回転軸AX1において反時計回りに回転し、プーリー65も反時計回りに回転すると、ワイヤ巻き取りユニット90から図19の紙面において上方向にワイヤ92が巻き出される。この時、ワイヤ巻き取りユニット90は、紙面において下方向にワイヤ92を引っ張る張力を発生している。この張力が、回転リール62からケーブル20が巻き出される際の反力として作用する。例えばワイヤ巻き取りユニット90はゼンマイ方式でワイヤ92の引っ張り力を発生する。
図19の紙面において左方向に引っ張られていたケーブル20のテンションが緩むと、ワイヤ巻き取りユニット90がワイヤ92を下方向に引っ張ることで、プーリー65及び回転リール62が、回転軸AX1において時計回りに回転し、ケーブル20が巻き取られるようになる。
そして本実施形態では、巻き取り装置50は、巻き取り部60の後段側にケーブル貯留部80を有している。ケーブル貯留部80は、巻き取り部60のケーブル取り出し口66(図21〜図22(B)参照)から取り出されたケーブル20(ケーブル部分23)を、所与の貯留軸AX2(第2の軸)の回りに巻いて貯留(バッファリング)する。このように巻き取り後のケーブル20(23)を貯留するケーブル貯留部80を設けることで、巻き取り後のケーブル20の絡みの問題や、ケーブル20の局所的な強い屈曲の発生の問題などを解決できる。
具体的には図19に示すようにケーブル貯留部80はガイド軸82を有している。このガイド軸82に対して、貯留軸AX2回りにケーブル20が巻かれる。これにより、ケーブル20がケーブル貯留部80に貯留されるようになる。
図21は、巻き取り装置50の内部構造を概略的に示した断面図であり、図22(A)、図22(B)は巻き取り装置50の動作説明図である。
図21に示すように、巻き取り部60の回転リール62の軸部材68は、ガイド板63に対向する壁部55に、回転自在に取り付けられている。軸部材68は、回転軸AX1回りに回転リール62を回転させるための部材である。
一方、ケーブル貯留部80のガイド軸82の軸部材84は、ガイド板64に対向する壁部56に回転自在に取り付けられている。この軸部材84により、ガイド軸82は貯留軸AX2回りに回転する。なおガイド軸82が回転しないようにする変形実施も可能である。
より具体的には、ケーブル貯留部80のガイド軸82は、回転リール62のガイド板64に取り付けられている。そして回転リール62が回転すると、ガイド軸82も回転リール62と一体となって回転する。例えば回転リール62が時計回りに回転すれば、ガイド軸82も時計回りに回転し、回転リール62が反時計回りに回転すれば、ガイド軸82も反時計回りに回転する。具体的には図21に示すように回転リール62の回転軸AX1と、ケーブル貯留部80の貯留軸AX2は同軸になっている。なお、これらの軸を同軸としない変形実施も可能である。
巻き取り部60は、ケーブル通過口52を通るケーブル20を巻き取る。即ちケーブル20は、ケーブル通過口52を通って回転リール62に巻き取られる。或いはケーブル通過口52を通って回転リール62から巻き出される。このケーブル通過口52は、図20に示すように、巻き取り装置50の前面側の板部材53に設けられている。そして図21に示すように、ケーブル通過口52は、その下側、上側にローラ72、73を有し、その左側、右側にローラ74、75を有する。このようなローラ72、73、74、75を設けることで、ケーブル通過口52の角部にケーブル20が擦れることで外装被覆(シース)が剥がれてしまう事態が発生するのを防止できる。
図21に示すようにケーブル通過口52を通ったケーブル20は、巻き取り部60の回転リール62により巻き取られる。また回転リール62(ガイド板63)に取り付けられたプーリー65には、ワイヤ巻き取りユニット90からのワイヤ92が巻かれており、これにより巻き取りトルクを発生させている。
回転リール62に巻かれたケーブル20は、巻き取り部60のケーブル取り出し口66から取り出される。具体的には図22(A)、図22(B)に示すように、回転リール62のガイド板64にケーブル取り出し口66が設けられており、このケーブル取り出し口66から、ケーブル貯留部80にケーブル20が取り出される。ケーブル20は、ケーブル取り出し口66の近くに設けられた固定具67により、ガイド板64に固定される。
ケーブル取り出し口66から取り出されたケーブル20(ケーブル部分23)は、図21に示すように、ケーブル貯留部80において貯留軸AX2回りに巻かれる。即ち、ケーブル取り出し口66から取り出されたケーブル20は、ガイド軸82に巻かれて貯留される。
ここで、巻き取り部60の回転リール62でのケーブル20の巻き方向と、ケーブル貯留部80のガイド軸82(貯留軸AX2)でのケーブル20の巻き方向は反対方向になっている。例えば図22(A)、図22(B)のガイド板64を見た平面視において、回転リール62(回転軸AX1)には反時計回りにケーブル20が巻かれている。一方、ガイド軸82(貯留軸AX2)には時計回りにケーブル20が巻かれており、両者の巻き方向が互いに反対方向になっている。
また図22(A)、図22(B)に示すように、ケーブル取り出し口66から取り出されたケーブル20は、所与の固定点FPで固定される。例えばケーブル取り出し口66側である一端側とは異なる他端側の固定点FPで、ケーブル20が固定される。即ち、巻き取り装置50は、ケーブル20を固定点FPで固定する固定具(固定部)を有している。例えば図21では、壁部56に設けられた固定点FPでケーブル20が固定されている。例えば固定点FPの位置に設けられた固定具によりケーブル20が固定される。そして固定点FPで固定された後のケーブル20が、後段の処理装置10(図1)に接続される。なお固定点FPの位置は図21には限定されず、種々の変形実施が可能である。例えばガイド軸82の途中などに固定点FPを設けてもよい。
次に図22(A)、図22(B)を用いて本実施形態の巻き取り装置50の動作について詳細に説明する。
本実施形態では、図22(A)に示すように、巻き取り部60により、DA1方向にケーブル20が巻き出された場合には、ケーブル貯留部80では、貯留軸AX2回り(ガイド軸82回り)にケーブル20が巻きほぐされる。一方、図22(B)に示すように、巻き取り部60により、DA2方向にケーブル20が巻き取られた場合には、ケーブル貯留部80では、貯留軸AX2回りにケーブル20が巻き締められる。
例えば図22(A)、図22(B)に示すように、巻き取り部60のケーブル取り出し口66は、回転リール62の回転に伴い、ケーブル貯留部80の貯留軸AX2回りの周方向において位置が変化する。例えばケーブル取り出し口66は、回転リール62(ガイド板64)において貯留軸AX2から周方向に離れた位置に設けられている。そして回転リール62が回転すると、ケーブル取り出し口66の位置が、貯留軸AX2回りの周方向において回転移動する。
具体的には図22(A)のように、巻き取り部60からDA1方向にケーブル20(22)が巻き出されたとする。この場合にはガイド板64を見た平面視において、回転リール62は時計回りに回転する。すると、この回転リール62の回転に伴い、ケーブル取り出し口66の位置も、時計回りに移動する。即ち、ケーブル取り出し口66は、貯留軸AX2の周方向から離れた位置において、時計回りに回転移動する。
一方、図22(B)のように、巻き取り部60においてDA2方向にケーブル20が巻き取られた場合には、回転リール62は反時計回りに回転し、ケーブル取り出し口66の位置も反時計回りに移動する。
そして前述したように、ケーブル貯留部80では、ガイド軸82(貯留軸AX2)に対して、ガイド板64を見た平面視において時計回りにケーブル20が巻かれている。即ち、回転リール82でのケーブル20の巻き方向である反時計回りとは反対の巻き方向である時計回りに、ケーブル20が巻かれて貯留されている。
従って、図22(A)のようにケーブル20が巻き出されることで、ガイド板64を見た平面視において回転リール20が時計回りに回転し、これに伴いケーブル取り出し口66も時計回りに回転移動すると、ガイド軸82に時計回りに巻かれていたケーブル20が巻きほぐされるようになる。そしてガイド軸82においてケーブル20が巻きほぐされることで、貯留されていたケーブル20の直径が大きくなると共に、巻き数が少なくなって行く。
一方、図22(B)のようにケーブル20が巻き取られたとする。この場合には、回転リール20が、ガイド板64を見た平面視において反時計回りに回転し、これに伴いケーブル取り出し口66も反時計回りに回転移動する。これにより、ガイド軸82に時計回りに巻かれていたケーブル20が、巻き締められることになる。ガイド軸82においてケーブル20が巻き締められることで、貯留されていたケーブル20の直径が小さくなると共に、巻き数が多くなって行く。
例えば巻き取り部60でのケーブル20の巻き出し量が最大(巻き取り残量が最小)である場合に、ガイド軸(AX2)でのケーブル20の巻き数が最小になると共に巻き直径が最大になる。即ち図22(A)においてケーブル20が最大に巻き出された場合に、ケーブル貯留部80でのケーブル20の巻き数が最も少なくなり、巻き直径が最も大きくなる。例えばガイド板64に最も近い位置でのケーブル20の巻き部分の直径が最大になる。
一方、巻き取り部60でのケーブル20の巻き取り量が最大(巻き取り残量が最大)である場合に、ガイド軸(AX2)でのケーブル20の巻き数が最大になると共に巻き直径が最小になる。即ち図22(B)においてケーブル20が最大に巻き取られた場合に、ケーブル貯留部80でのケーブル20の巻き数が最も多くなり、巻き直径が最も小さくなる。例えばこの場合の巻き直径はガイド軸82の直径とほぼ同じになる。
以上のように本実施形態では、巻き取り部60からのケーブル20(23)が、ケーブル貯留部80においてガイド軸82(AX2)の回りに巻いて貯留される。そして巻き取り部60でケーブル20(22)が巻き出されると、ケーブル貯留部80ではケーブル20(23)が巻きほぐされ(図22(A))、巻き取り部60でケーブル20が巻き取られると、ケーブル貯留部80ではケーブル20が巻き締められる(図22(B))。従って、巻き取り部60でゲーブル20が巻き出されたり、巻き取られた場合にも、ケーブル貯留部80においては、ケーブル20がガイド軸82(AX2)に巻いたまま保留されるようになる。従って、ケーブル貯留部80に貯留されるケーブル20が複雑に絡んでしまうような事態の発生を防止できる。
またケーブル貯留部80では、ケーブ20が均一に屈曲して貯留されるようになるため、当該ケーブル20に局所的な強い屈曲(捻れ)が生じる事態も防止できる。従って、局所的な強い屈曲によりケーブル20が破損等してしまうのを防止でき、ケーブル20の耐久性等を向上できる。
例えば図23では、巻き取り部60の回転リール62によりケーブル20が巻き取られると共に、巻き取り後のケーブル20(23)の端点が固定点FPに固定されている。この場合に回転リール62が回転軸AX1回りに回転してケーブル20が巻き取られると、ケーブル取り出し口66と固定点FPの間のケーブル20(23)が捻れて行き、局所的な強い屈曲が生じてしまう。このような局所的な強い屈曲が生じると、外装被覆が破れるなどしてケーブル20が破損したり、差動信号の信号伝送に支障が生じるなどの問題が生じる。
この点、本実施形態では図22(A)、図22(B)に示すように、ケーブル取り出し口66と固定点FPとの間の余剰分のケーブル20が、貯留軸AX2回りに、ある程度大きな屈曲半径(回転軸82の半径以上)で、予め巻いて貯留されている。このため、回転リール62の回転により、ケーブル取り出し口66と固定点FPとの間のケーブル20に捻れが生じた場合にも、この捻れがケーブル部分23において均一に分散され、局所的に強い屈曲(屈曲半径が小さい屈曲)が生じるのを防止できる。これにより、ケーブル20の破損や信号伝送の支障が生じるのを防止できるようになる。
また本実施形態では、例えばケーブル通過口52から固定点FPに至るまで、回転式の電気接点は存在しておらず、例えば一本のケーブル20で実現されている。従って、ケーブル20により伝送される信号が、HDMIやsuperMHLなどのデータ転送規格で用いられる小振幅の差動信号であっても、当該差動信号を適切に伝送できるという利点がある。即ち、回転式の電気接点は、例えば数V〜数百Vというような大きな電圧振幅の信号や電源の伝送には適しているが、例えば数百mVというような小振幅の差動信号については、ノイズが原因で適正な信号伝送を実現できないという問題がある。本実施形態では、このような回転式の電気接点を用いていないため、HDMIやsuperMHLなどによる小振幅の差動信号であっても、適正な信号伝送が可能になる。
また本実施形態では、巻き取り部60のケーブル取り出し口66が、回転リール62の回転に伴い、貯留軸AX2回りの周方向において位置が変化するようになっている。具体的にはケーブル取り出し口66は、回転リール62において貯留軸AX2から周方向に離れた位置に設けられている。
このようにすれば、図22(A)のようにケーブル20が巻き出されて、ガイド板64の平面視において時計回りに回転リール62が回転すると、これに伴いケーブル取り出し口66も、貯留軸AX2回りの周方向において時計回りにその位置が変化するようになる。即ち、貯留軸AX2から周方向に離れた位置において、時計回りにケーブル取り出し口66が回転移動する。これにより図22(A)のように、ケーブル貯留部80でのケーブル20を巻きほぐすことが可能になる。
一方、図22(B)のようにケーブル20が巻き取られて、ガイド板64の平面視において反時計回りに回転リール62が回転すると、これに伴いケーブル取り出し口66も、貯留軸AX2回りの周方向において反時計回りにその位置が変化するようになる。即ち、貯留軸AX2から周方向に離れた位置において、反時計回りにケーブル取り出し口66が回転移動する。これにより図22(B)のように、ケーブル貯留部80でのケーブル20をガイド軸82に対して巻き締めることが可能になる。
また本実施形態ではケーブル貯留部80が、貯留軸AX2回りにケーブル20が巻かれるガイド軸82を有している。このようなガイド軸82を設ければ、当該ガイド軸82に予めケーブル20を巻いた状態で、図22(A)のようにケーブル20を巻きほぐしたり、図22(B)のようにケーブル20を巻き締めることが可能になる。こうすることで、ケーブル貯留部80においてケーブル20が絡んでしまうような事態を防止できる。また、予めガイド軸82にケーブル20が巻かれていることで、ケーブル20が全体的に均一に屈曲するようになり、局所的な強い屈曲がケーブル20に生じるのを防止できる。例えばケーブル20(23)の屈曲半径が、ガイド軸82の半径以上になることを保証できる。従って、局所的な強い屈曲が原因でケーブル20が破損したり、信号伝送が劣化してしまうなどの問題を防止できる。
またガイド軸82の半径は、回転リール62の半径よりも小さくなっている。こうすることで巻き取り部60での巻き数よりも多い巻き数で、ガイド軸82にケーブル20を巻いて安定的に貯留できるようになる。なお本実施形態では、回転リール62の回転に伴いガイド軸82も同じ方向に回転するようになっている。こうすることで、例えば図22(A)、図22(B)のようにケーブル20が巻きほぐされたり巻き締められる際に、ケーブル20の外装被覆が回転リール62の表面に擦れて破れてしまうなどの事態が発生するのを防止できる。なお回転リール62が回転した際にガイド軸82については回転しないようにする変形実施も可能である。
また本実施形態ではガイド軸82の半径が、ケーブル20の最小屈曲半径よりも大きくなっている。このようにすれば、ケーブル20がガイド軸82に巻かれて貯留される際に、ケーブル20の屈曲半径が、仕様で決められている最小屈曲半径以下にならないことを保証できるようになる。例えばケーブル20の屈曲半径が最小屈曲半径以下になった状態で、ケーブル20が、繰り返し巻きほぐされたり、巻き締められると、耐久性の面で問題が生じたり、信号伝送に不具合が発生する問題が生じる。この点、ガイド軸82の半径を、ケーブル20の仕様で決められる最小屈曲半径(例えば30mm〜45mm程度)よりも大きくすれば、このような問題が生じるのを防止できる。
また本実施形態では巻き取り部60の回転リール62でのケーブル20の巻き方向と、ケーブル貯留部80の貯留軸AX2回りでのケーブルの巻き方向は反対方向になっている。このようにすれば図22(A)にようにケーブル20が巻き出された場合には、ケーブル貯留部80ではケーブル20が巻きほぐされ、図22(B)のように巻き取られた場合には、ケーブル貯留部80ではケーブル20が巻き締められるようになる。従って、ケーブル取り出し口66と固定点FPとの間のケーブル20(23)を、ガイド軸82の回りに巻いて貯留することが可能になる。
また図22(A)、図22(B)に示すように、ケーブル取り出し口66から取り出されたケーブル20は、固定点FPで固定される。例えば図21に示すように壁部56において固定具等を用いて固定点FPに固定される。このようにすれば、回転リール62が回転して、ケーブル取り出し口66と固定点FPの間のケーブル20に捻れが生じた場合にも、固定点FPと処理装置10の間のケーブル20には捻れが生じないようになる。従って、固定点FPと処理装置10の間のケーブル20が捻れて破損するなどの問題が生じるのを防止できる。
なお本実施形態では、巻き取り部60のケーブル20の巻き取り及び巻き出しの少なくとも一方が制御される。例えば図19では、ワイヤ巻き取りユニット90を設けることで、ケーブル20を巻き取り装置側に引っ張る巻き取りトルクを発生させて、ケーブル20の巻き取りや巻き出しを制御している。或いは巻き取り部60にモータを設けて、当該モータにより回転リール62を回転させる制御を行ってよい。例えば回転リール62を回転させるためのギアーを設けて、当該ギアーをモータにより回転させることで、回転リール62の回転制御を実現する。こうすることで、ケーブル20の巻き取りトルク、巻き取り量、巻き出し量、巻き取り速さ、或いは巻き出し速さなども制御できるようになる。なお巻き取り部60のケーブル20の巻き取りや巻き出しを、施設のオペレータやユーザが手動で制御するようにしてもよい。
なお図22(A)、図22(B)において、巻き取り部60に巻き取られるケーブル部分22と、ケーブル貯留部80に貯留されるケーブル部分23とで、ケーブル20の材質、形状及び構造の少なくとも1つを異ならせるようにしてもよい。例えばケーブル部分22とケーブル部分23とで、ケーブル20の外装被覆や絶縁体等の材質を異ならせる。或いは、ケーブル部分22とケーブル部分23とで、ケーブル20の外観の形状を異ならせたり、導体(線心)や絶縁体についての構造を異ならせる。例えばケーブル部分22については、巻き出しや巻き取りの際に強いテンションがかかるため、例えば耐久性が高く、頑丈になるような材質、形状又は構造のケーブルにする。一方、ケーブル部分23については、適正に安定的に巻いて貯留されるように、例えば柔らかくしなやかな材質、形状又は構造のケーブルにする。
また本実施形態では、巻き取り装置50には、ケーブル20が通るケーブル通過口52が設けられ、巻き取り部60は、ケーブル通過口52を通ったケーブルを巻き取る。例えば図24(A)、図24(B)にケーブル通過口52のユニットの構成例を示す。図24(A)は斜視図であり、図24(B)は正面図、側面図である。図24(A)、図24(B)に示すように、ケーブル通過口52のユニットは、筺体76と、筺体76に設けられたローラ72、73、74、75を有する。ローラ72、73は、各々、ケーブル通過口52の下側、上側に設けられる。ローラ74、75は、各々、ケーブル通過口52の左側、右側に設けられる。このようなローラ72、73、74、75を設ければ、ケーブル20がケーブル通過口52の角部等に擦れてしまい、外装被覆が破れてしまうなどの事態が生じるのを防止できる。
また図24(A)、図24(B)では、ケーブル通過口52の下側のローラ72の半径が最も大きくなっている。例えばケーブル20が巻き出されたり、巻き取られる場合に、ケーブル20が下側のローラ72に接触する頻度が最も多い。例えば図19〜図21に示すように、巻き取り部60の回転リール62は、ケーブル通過口52よりも下側にある。このため、ケーブル20は、ローラ72に接触して屈曲した後、下側の回転リール62に向かって真っ直ぐに伸びることになる。この場合にローラ72の半径が小さいと、ローラ72の接触部分でのケーブル20の屈曲半径が、仕様で決められている最小屈曲半径よりも小さくなってしまい、耐久性や性能等を保証できなくなる問題が生じる。この点、図24(A)、図24(B)では、ローラ72の半径は、ケーブル20の最小屈曲半径よりも大きくなっているため、このような問題が生じるのを防止できる。
なお本実施形態の巻き取り装置50は、図19〜図24(B)で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。例えば図19のようなワイヤ巻き取りユニット90ではなく、モータ等を用いて回転リール62の回転を制御してもよい。また巻き取り部60やケーブル貯留部80の構成も図19等の構成には限定されない。例えば図25に巻き取り装置50の変形例の構成を示す。
図25では、ケーブル貯留部80のガイド軸82は、巻き取り部60に対向して設けられる壁部83に取り付けられている。そして巻き取り部60から壁部83の方に延在形成されるケーブル20のガイド部69が、更に設けられている。このガイド部69は、巻き取り部60のガイド板64に取り付けられている。そしてガイド部69の端点のケーブル取り出し口71から取り出されたケーブル20が、ガイド軸82に巻いて貯留される。そして、巻かれた後のケーブル20の端点は、例えばガイド軸82の先端部に設けられた固定点FPに固定される。この図25の変形例においても、図22(A)のように巻き取り部60でケーブル20が巻き出された場合には、ケーブル貯留部80ではケーブル20が巻きほぐされる。また図22(B)のように巻き取り部60でケーブル20が巻き取られた場合には、ケーブル貯留部80ではケーブル20が巻き締められる。従って、ケーブル取り出し口71と固定点FPの間のケーブル20を、ケーブル貯留部80で巻いて適正に貯留することが可能になる。
また本実施形態の巻き取り装置50は、例えばユーザが、家庭用ゲーム装置等のゲーム装置を用いてゲームをプレイする場合や、光学ディスクプレーヤ(ブルーレイ、DVD)やHDDプレーヤなどの映像機器により映像等のコンテンツを鑑賞する場合などにおけるHMD200のケーブル巻き取り装置として使用できる。この場合には巻き取り装置50を、家庭用としても使用できるように小型にすればよい。
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また中継点の設定手法、ケーブルの巻き取り制御手法、シミュレーションシステムや巻き取り装置の構成等も、本実施形態で説明したものに限定されず、これらと均等な手法・処理・構成も本発明の範囲に含まれる。また本発明は種々のゲームに適用できる。また本発明は、業務用ゲーム装置、家庭用ゲーム装置、又は多数のユーザが参加する大型アトラクションシステム等の種々のシミュレーションシステムに適用できる。