燃料電池システムを家庭用の発電装置として使用する場合は、燃料電池システムには大きな設置スペースが必要となるため、屋外に設置されることが一般的である。そのため、燃料電池システムの運転時に大きな騒音が発生すると、使用者のみに止まらず、近隣住民にも不快感を与えることとなる。
したがって、昼間においてはもちろんのこと、特に夜間においては、使用者や近隣住民に与える不快感を一掃するために燃料電池システムの低騒音化が不可欠となっている。
燃料電池システムから発生する騒音の多くは、燃料電池システムの構成機器である空気供給装置に起因し、吸気音(空気吸い込み口から漏れる動作音)や、運転時に発生する振動が配管や外郭等へ伝播することにより、燃料電池システムから大きな騒音が発生する。そのため、燃料電池システムの騒音源である空気供給装置の騒音を抑えることが必要である。
そこで、空気吸い込み口と空気供給器との間の空気配管に設けられ、空気中の不要物を除去するフィルタ装置によって、空気吸い込み口から出る空気供給装置の動作音を低減することが提案された(例えば、特許文献1参照)。
以下、図面を参照しながら、特許文献1で提案された従来の消音器について説明する。図6は、特許文献1に開示された消音器の断面図である。
図6に示すように、フィルタ装置105のフィルタ収納部109は、ケース110と蓋111とで構成される。
フィルタ114をケース110内に収納した後に、ケース110と蓋111は、溶着やねじにより接合される。フィルタ収納部109は、箱型あるいは円筒型に構成され、例えば、樹脂により形成される。ケース110には蓋111との接合面の反対面の中央部に排気口112が構成される。蓋111にはケース110との接合面の中央部に空気吸い込み口113が構成される。
ケース110の排気口112の流路径の断面積は、フィルタ収納部109のフィルタ114が収納される部分の断面積より小さく設定される。これは、フィルタ収納部109の断面積が排気口112の流路径の断面積より大きいほど、音の圧力波を減衰でき、空気供給装置の動作音を低減させることができるためである。
また、空気吸い込み口113の流路径も小さく設定される。これは、空気吸い込み口113が小さいほど外部への音の漏れを少なくできるためである。ケース110の内壁にはフィルタ114の位置を規制するためのケースリブ115が構成される。ケースリブ115は流路を遮らないように内壁に沿って低く構成される。
蓋111のフィルタ収納面側には、フィルタ114の位置を規制するための蓋リブ11
6が構成される。蓋リブ116は流路を遮らないように構成される。また、蓋リブ116の高さは、蓋111とフィルタ114との隙間が大きくならないように、フィルタ114の厚みより小さく設定される。
フィルタ114は、第1フィルタ117(粗フィルタ)と第2フィルタ118(除塵フィルタ)で構成される。第2フィルタ118は、第1フィルタ117より目が細かく構成されている。
第1フィルタ117が空気吸い込み口113側に配置され、第2フィルタ118が排気口112側に配置される。フィルタ114のフィルタ収納部109への搭載は、まず、第2フィルタ118がケース110のケースリブ115に接する位置に配置される。
そして、第1フィルタ117が第2フィルタ118に隣接して配置される。その後、ケース110に蓋111が接合される。第1フィルタ117は、蓋111に形成された蓋リブ116に接して配置される。
燃料電池に供給される空気は、まず、フィルタ装置105の空気吸い込み口113から吸気され、吸入空気中の不要物の大部分が、まず第1フィルタ117により大まかに除去された後、残りの不要物が第2フィルタ118により除去される。
その後、不要物の除去された空気は、排気口112から空気供給装置を経由して、燃料電池に供給される。燃料電池では、供給された水素ガスと、空気中の酸素を化学反応させて直流電力を発電する。
排気口112に接続された空気供給装置の動作音は、排気口112からフィルタ収納部109に伝わり、フィルタ収納部109内部の空間とフィルタ114を伝わり、空気吸い込み口113を通って外部に出る。
フィルタ114が収納される部分の断面積は、排気口112の流路の断面積より大きく構成されているため、断面が拡大することにより、排気口112からフィルタ収納部109に伝わった音の圧力波は、分散して減衰される。
次に、排気口112からフィルタ114の搭載位置までの距離が大きくとられているため、距離減衰により、音の圧力波が減衰される。一般に音の圧力波は距離の二乗に比例して減衰する。
次に、フィルタ114とフィルタ収納部109の蓋111との距離は、フィルタ114の厚みより小さくなるよう配置されているため、動作音が空気吸い込み口113から出る直前でフィルタ114を通過することでフィルタ114が吸音材の役割を果たして音の圧力波が減衰される。
最後に、空気吸い込み口113の流路の断面積は、フィルタ収納部109のフィルタ114が収納される部分の断面積より小さく設定されており、断面の急縮小によって、空気吸い込み口113で反射が起こり(開口端反射)、空気吸い込み口113の開口大きさの分だけ音が通過し、残りは、反射して、フィルタ収納部109内で音の干渉が起こり音の圧力波が減衰される。
なお、空気供給装置の動作音の低減のために、断面積変化による減衰や距離減衰や開口端反射による減衰を利用しているため、フィルタ装置105の圧損には影響が出ない構成となっている。
また、排気口112と空気吸い込み口113は対向した面の中央部にそれぞれ形成されており、空気供給装置の動作音の圧力波が排気口112からフィルタ収納部109へ伝わり、さらに空気吸い込み口113に伝わる時に、断面積の変化による音の圧力波の分散がより均一に行われることができ、音の圧力波を均一に減衰することで、音の減衰効果を妨げる圧力波の乱れが起こりにくく、音をより減衰することができる。
また、空気吸い込み口113に近い位置にフィルタ114を配置することで、空気吸い込み口113から吸入された空気中の異物が、フィルタ114で除去されるため、フィルタ収納部109の排気口112からフィルタ114の搭載位置までの空間に異物が侵入することを防ぐことができる。よって、空間に異物が侵入して堆積することによって音の減衰効果が妨げられることを防ぐことができ、音の減衰を安定して行うことができる。
第1の発明は、空気吸い込み口と空気供給器との間の空気配管に設けられ、前記空気配管及び前記空気吸い込み口の通路断面積よりも大きい通路断面積を有する消音器本体と、前記消音器本体を囲む側壁を有し、前記消音器本体と前記側壁との間の空間に水を貯める
よう構成された水タンク容器と、を備えた、消音器である。
上記構成により、空気供給器の動作音及び空気供給器から伝達される振動により生じる消音器本体の振動を消音器本体の周囲にある水によって低減でき、消音器本体から漏出する空気吸気音を消音器本体の周囲にある水と水タンク容器とによって遮音・低減することができるので、従来よりも静音化が図れるようになる。
第2の発明は、特に第1の発明において、前記消音器本体と前記水タンク容器とを一体に構成したことを特徴とする。
上記構成により、前記消音器本体の壁面と水タンク容器の壁面の距離がゼロになるために、消音器本体の振動により生じる、消音器と水タンクの間で発生しうる衝突音を防止することができる。また、構成が簡単で、部品点数を削減でき、製造コストを削減できる。
第3の発明は、特に第1または第2の発明において、前記消音器本体が、空気中の不要物を除去するフィルタを収納することを特徴とする。
上記構成により、消音器内を通り空気吸い込み口から出る音はフィルタの吸音効果により減衰することができる。また、空気中の不要物を除去するフィルタの収納部を消音器に利用できる。
第4の発明は、特に第3の発明において、前記消音器本体が、前記空気吸い込み口が形成され前記フィルタを交換可能に前記消音器本体から分離する蓋部を備えることを特徴とする。
上記構成により、フィルタの圧力損失が規定以上となったり、空気中の不要物捕集性能を失ったりした際、水タンクと消音器すべてを修繕や交換するのではなく、フィルタ部のみ取り外し修繕や交換できるようにすることで修繕や交換にかかる材料費の削減を行うことができる。
第5の発明は、特に第1から第4のいずれかの発明において、前記空気吸い込み口が、前記水タンク容器の底面側に配置されることを特徴とする。
上記構成により、空気供給器の動作音によって空気吸い込み口周囲に生じる振動が水タンク内の水に対して垂直な力を加えるよう働くため、水の粘性により振動の減衰を行うことができ、空気吸い込み口から出る音をより低減することができる。また、水が少ない場合でも、消音器本体の全周を水で囲むことができる可能性が高いので、静音化を図ることができる。また、消音器本体と水タンク容器とを一体成型しやすい。
第6の発明は、特に第1から第4のいずれかの発明に加えて、前記水タンク容器に貯まった水を浄化するイオン交換器を備え、前記水タンク容器が、前記イオン交換器を収納する収納部と一体に構成されていることを特徴とする。
上記構成により、イオン交換器と収納部の重さで水タンク容器の振動を低減することができるので、従来よりも静音化が図れるようになる。
第7の発明は、特に第6の発明における前記収納部を、前記水タンク容器の角部に配置したことを特徴とする。
上記構成により、イオン交換器と収納部が、消音器本体の邪魔にならず、水タンク容器
の角部を収納部の一部に利用して収納部を構成するための材料を減らしコスト低減を図ることができる。
第8の発明は、水素を主成分とする燃料ガスと空気とを電気化学反応させて発電する燃料電池と、前記燃料電池に空気を供給する空気供給器と、空気吸い込み口と前記空気供給器との間の空気配管に設けられた第1から第5のいずれかの発明の消音器と、を備え、前記消音器の水タンク容器に、前記燃料電池を冷却する冷却水、または前記燃料電池から排出される排ガスを凝縮させて回収した凝縮水を貯めるよう構成された、燃料電池システムである。
上記構成により、燃料電池との熱交換により室温より温度が高くなった冷却水や、燃料電池から排出される高温の排ガスを凝縮させて回収した室温より温度が高い凝縮水が水タンク内に存在することで、空気吸い込み口から消音器に流入する空気は水タンクの水との熱交換により加熱された状態で燃料電池に供給されるため、燃料電池システムの熱回収効率を向上させることができる。
以下、本発明の消音器とそれを用いた消音器とそれを用いた燃料電池システムの実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における燃料電池システムに用いられる消音器の概略構成を示す断面図である。図2は本発明の実施の形態1の燃料電池システムの概略構成図である。
図1、図2に示すように、本実施の形態の消音器は、水タンクケース1が消音器ケース3を覆うように構成され、消音器ケース3の中には空気中の不要物を除去するフィルタ16を備える。なお、本消音器を通過する空気中の不要物を除去する必要がない場合はフィルタ16がなくても良いが、フィルタ16があると、空気吸い込み口5から出る空気吸気音をフィルタ16によって低減できる。
空気吸い込み口5が形成された消音器フタ4と、水タンクケース1は、固定ねじ14により締結されている。なお、これらの固定は溶着や接着により行っても良い。
消音器ケース3の排気口6はホース7により空気供給器20の空気吸い込み口に接続される構成とする。
水タンクフタ2には、水入口8、排気孔9、排水と排気の仕切り11が備えられ、水タンクケース1と溶着され固定されている。なお、水タンクフタ2の水タンクケース1への固定は、ねじや接着により行っても良い。また、水入口8、排気孔9、排水と排気の仕切り11は、2つ以上設けられていても良い。
水タンクケース1には、タンクに水を張った状態で消音器ケース3との間に水が存在できる位置に水タンク固定用ステー15を備え、燃料電池システムの筐体に少なくとも1箇所以上ねじにより締結され固定可能とする。なお、ステーを設けずスポンジやゴムなどの防振材により把持されていても良い。
水タンクケース1にはオーバーフロー用の仕切り10が設けられ、オーバーフロー用の仕切り10の上端以上に水が貯まらないよう構成され、オーバーフロー用の仕切り10の上端以上に水が貯まると排水部12から外部に水を排出できるよう構成されている。
排水と排気の仕切り11の下端は、オーバーフロー用の仕切り10の上端よりも低い位置で、水タンクケース1の最低水位よりも低い位置にあり、水タンクケース1に最低水位以上の水が貯まっているときに、水入口8から水タンクケース1内に流入したガス(空気)が、排水と排気の仕切り11の下とオーバーフロー用の仕切り10の上を通って排水部12から外部に流出しないようにしている。
排水と排気の仕切り11は、水タンクケース1内を、水入口8及び排気孔9がある側の空間と、オーバーフロー用の仕切り10及び排水部12がある側の空間とに仕切るものである。そして、水入口8から水タンクケース1内に流入したガス(空気)は、排気孔9から流出できる。
水タンクケース1の底面には排水孔が設けられ、その排水孔は、途中に開閉弁13を備えた排水路(排水ホース)に接続されており、開閉弁13を開けたときに水タンクケース1内の水を排水孔から排水路を通じて排水可能とする。なお、排水ホースを使用せず排水孔に開閉弁13または栓を取り付けても良い。
図2に示すように、燃料電池モジュール17は、水素含有ガスと空気中の酸素を電気化学反応させて発電、発熱する燃料電池スタック18と、燃料電池スタック18に供給する水素含有ガスを炭化水素を主成分とする原料と水とから水蒸気改質により生成する水素生成器19と、燃料電池スタック18に空気を供給する空気供給器20を備えている。
燃料電池スタック18から排出される高温の排ガスに含まれる水分は、熱交換器21において、熱交換器21と貯湯タンク22と循環ポンプ23とを環状に連接した貯湯水循環経路を流れる貯湯水と熱交換することにより、凝縮して、その凝縮水が水入口8を通って水タンクケース1内に貯まる。
以上のように構成された本実施の形態の消音器について、以下その動作、作用を説明する。
本消音器は、開閉弁13を閉じた状態で水入口8から水を通水し、水タンクのオーバーフロー用の仕切り10の上端の高さまで水を貯めてから使用する。
空気供給器20が運転されると、大気中の空気が空気吸い込み口5を通り消音器ケース3に入り、排気口6及びホース7を通って空気供給器20の空気吸い込み口に導かれる。空気供給器20を出た空気は、燃料電池システム(燃料電池モジュール17)内の、燃料電池スタック18や水素生成器19に供給される。水素生成器19に供給される空気は、水蒸気改質により生成した水素含有ガスに含まれる一酸化炭素の選択酸化除去などに使用される。
燃料電池スタック18で水素を主成分とする燃料ガス(水素含有ガス)と空気を電気化学反応させて発電すると、発電中は排燃料ガスや排空気、及び水素生成器19の燃焼部で生じた燃焼排ガスが排出される。これらの排出ガスには水分が含まれており、これらの水分は、熱交換器21や配管で凝縮され、その凝縮水は水入口8から水タンクに流入する。
この際に凝縮水と共に水タンクに入る排ガスは排気孔9から水タンク外に排出され、燃料電池システム筐体外に排出される。
本実施の形態では、消音器が上記構成になっているので、水タンク内の水は、空気供給器20の吸気口から発せられる圧力波(吸気音)及び空気供給器20運転時の振動が消音
器ケース3に伝わり、消音器ケース3を振動させて消音器ケース3の外に放射する音を、反射(遮音)及び減衰させる作用をもたらし消音性能を高めることが出来る。
消音器内に設けられたフィルタ16は、空気供給器20の吸気口から発せられる圧力波(吸気音)を減衰させる作用をもたらし消音性能を高めることが出来る。
図1に示すように、消音器フタ4を消音器ケース3にねじ止め固定することで、フィルタ16のみ取り外し交換可能とする作用をもたらす。
これにより、大気中の不要物を除去するにつれフィルタ16の圧力損失が規定以上となった際や、フィルタ16の空気中不要物捕集性能が失われた際、消音器全体を交換するのではなく、消音器フタ4を取り外して消音器内部のフィルタ16のみ交換することが出来るため、交換部品を小さくし作業性の向上、交換部品材料費の低減が可能となる。
図1に示すように空気吸い込み口5を消音器ケース3の底面側に配置することで、空気供給器20の吸気口から伝わる圧力波(吸気音)及び空気供給器20動作時の振動により生じる消音器フタ4の面外方向振動が水タンクに対して垂直な力を加えるよう作用する。この作用により水の粘性が振動を減衰させ消音器能を高めることが出来る。
燃料電池スタック18で発電が行われると、水タンク内に凝縮水が流入するため、水タンク内の水の温度は大気の温度よりも高くなる。水タンクで消音器本体部(消音器ケース3)を覆っており、水タンク内の水は消音器ケース3内の空気に熱を与えやすくする作用をもたらす。
これにより凝縮水の熱は、消音器ケース3を通過した空気により燃料電池スタック18や水素生成器19に送られ、燃料電池システムで再利用することができ、排熱回収効率を向上できる。
また、本実施の形態のように水タンクの外側で消音器の固定を行うことにより、消音器本体部(消音器ケース3)に生じた振動が水タンク内の水で減衰された後、燃料電池システム筐体に伝わる作用をもたらすことが出来る。そのため空気供給器20に起因する振動が燃料電池システム筐体を振動させる力を減衰させる効果も有する。
以上のように本実施の形態の消音器は、空気吸い込み口5と空気供給器20との間の空気配管(ホース7の吸入側)に設けられ、空気配管(ホース7)、排気口6及び空気吸い込み口5の通路断面積(内径)よりも大きい通路断面積(内径)を有する消音器本体(消音器ケース3)と、消音器本体(消音器ケース3)を囲む側壁を有し、消音器本体(消音器ケース3)と側壁との間の空間に水を貯めるよう構成された水タンク容器(水タンクケース1)とを備えた消音器である。
上記構成により、空気供給器20の動作音(吸気音)及び空気供給器20から伝達される振動により生じる消音器本体(消音器ケース3)の振動を消音器本体(消音器ケース3)の周囲にある水によって低減でき、消音器本体(消音器ケース3)から漏出する空気吸気音を消音器本体(消音器ケース3)の周囲にある水と水タンク容器(水タンクケース1)とによって遮音・低減することができるので、従来よりも静音化が図れるようになる。
また、本実施の形態の消音器は、消音器本体(消音器ケース3)が、空気中の不要物を除去するフィルタ16を収納しているので、消音器(消音器ケース3)内を通り空気吸い込み口5から出る音は、フィルタ16の吸音効果により減衰することができる。また、空気中の不要物を除去するフィルタ16の収納部を消音器に利用できる。
また、本実施の形態の消音器は、消音器本体(消音器ケース3)が、空気吸い込み口5が形成されフィルタ16を交換可能に消音器本体(消音器ケース3)から分離する蓋部(消音器フタ4)を備えるので、フィルタ16の圧力損失が規定以上となったり、空気中の不要物捕集性能を失ったりした際に、水タンクと消音器すべてを修繕や交換するのではなく、フィルタ16部のみ取り外し修繕や交換できるようにすることで修繕や交換にかかる材料費の削減を行うことができる。
また、本実施の形態の消音器は、空気吸い込み口5が、水タンク容器(水タンクケース1)の底面側に配置されるので、空気供給器20の動作音(吸気音)によって空気吸い込み口5の周囲に生じる振動が水タンク内の水に対して垂直な力を加えるよう働くため、水の粘性により振動の減衰を行うことができ、空気吸い込み口5から出る音をより低減することができる。また、水が少ない場合でも、消音器本体(消音器ケース3)の全周を水で囲むことができる可能性が高いので、静音化を図ることができる。
また、本実施の形態の燃料電池システムは、水素を主成分とする燃料ガスと空気とを電気化学反応させて発電する燃料電池モジュール17と、燃料電池モジュール17に空気を供給する空気供給器20と、空気吸い込み口5と空気供給器20との間の空気配管(ホース7の吸入側)に設けられた本実施の形態の消音器とを備え、消音器の水タンク容器に、燃料電池モジュール17から排出される排ガスを凝縮させて回収した凝縮水を貯めるよう構成された、燃料電池システムである。
上記構成により、燃料電池モジュール17から排出される高温の排ガスを凝縮させて回収した室温より温度が高い凝縮水が水タンク内に存在することで、空気吸い込み口5から消音器に流入する空気は水タンクの水との熱交換により加熱された状態で燃料電池モジュール17の燃料電池スタック18と水素生成器19のCO低減器(選択酸化器)に供給されるため、燃料電池システムの熱回収効率を向上させることができる。
本実施の形態では、消音器の水タンク容器に、燃料電池モジュール17から排出される排ガスを凝縮させて回収した凝縮水を貯めるようにしたが、燃料電池モジュール17の燃料電池スタック18を冷却し冷却水循環経路を循環する冷却水を貯めるようにしても構わない。
消音器の水タンク容器に、上記冷却水を貯めるようにした場合は、燃料電池スタック18との熱交換により室温より温度が高くなった冷却水が水タンク内に存在することで、空気吸い込み口5から消音器に流入する空気は水タンクの冷却水との熱交換により加熱された状態で燃料電池モジュール17の燃料電池スタック18と水素生成器19のCO低減器(選択酸化器)に供給されるため、燃料電池システムの熱回収効率を向上させることができる。
なお、冷却水循環経路を循環する冷却水は、イオン交換樹脂等で浄化した凝縮水を使用することができる。
(実施の形態2)
図3は本発明の実施の形態2における燃料電池システムに用いられる消音器の概略構成を示す断面図である。図4は本発明の実施の形態2の燃料電池システムの概略構成図である。本実施の形態において、実施の形態1と同一構成については、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図3、図4に示すように、本実施の形態の消音器は、水タンクケース1に、排気口6の
配管通路断面積より大きい通路断面積を有する消音器本体24が一体に形成され、消音器本体24の中には空気中の不要物を除去するフィルタ16を備える。なお、本消音器を通過する空気中の不要物を除去する必要がない場合はフィルタ16がなくても良いが、フィルタ16があると、空気吸い込み口5から出る空気吸気音をフィルタ16によって低減できる。
空気吸い込み口5が形成された消音器フタ4は、水タンクケース1に接着(溶着)されている。なお、消音器フタ4の水タンクケース1への固定は、固定ねじにより行っても良い。
消音器本体24の排気口6は空気供給器20の吸気口に空気配管を介して接続される構成とする。
水タンクフタ2には、水入口8、排気孔9、排水と排気の仕切り11が備えられ、水タンクケース1と溶着され固定されている。なお、水タンクフタ2の水タンクケース1への固定は、ねじや接着により行っても良い。また、水入口8、排気孔9、排水と排気の仕切り11は、2つ以上設けられていても良い。
水タンクケース1には、タンクに水を張った状態で消音器本体24との間に水が存在できる位置に水タンク固定用ステー15を備え、燃料電池システムの筐体に少なくとも1箇所以上ねじにより締結され固定可能とする。なお、ステーを設けずスポンジやゴムなどの防振材により把持されていても良い。
水タンクケース1にはオーバーフロー用の仕切り10が設けられ、オーバーフロー用の仕切り10の上端以上に水が貯まらないよう構成され、オーバーフロー用の仕切り10の上端以上に水が貯まると排水部12から外部に水を排出できるよう構成されている。
排水と排気の仕切り11の下端は、オーバーフロー用の仕切り10の上端よりも低い位置で、水タンクケース1の最低水位よりも低い位置にあり、水タンクケース1に最低水位以上の水が貯まっているときに、水入口8から水タンクケース1内に流入したガス(空気)が、排水と排気の仕切り11の下とオーバーフロー用の仕切り10の上を通って排水部12から外部に流出しないようにしている。
排水と排気の仕切り11は、水タンクケース1内を、水入口8及び排気孔9がある側の空間と、オーバーフロー用の仕切り10及び排水部12がある側の空間とに仕切るものである。そして、水入口8から水タンクケース1内に流入したガス(空気)は、排気孔9から流出できる。
水タンクケース1の底面には排水孔が設けられ、その排水孔は、途中に開閉弁13を備えた排水路(排水ホース)に接続されており、開閉弁13を開けたときに水タンクケース1内の水を排水孔から排水路を通じて排水可能とする。なお、排水ホースを使用せず排水孔に開閉弁13または栓を取り付けても良い。
図4に示すように、燃料電池モジュール17は、水素含有ガスと空気中の酸素を電気化学反応させて発電、発熱する燃料電池スタック18と、燃料電池スタック18に供給する水素含有ガスを炭化水素を主成分とする原料と水とから水蒸気改質により生成する水素生成器19と、燃料電池スタック18に空気を供給する空気供給器20を備えている。
燃料電池スタック18から排出される高温の排ガスに含まれる水分は、熱交換器21において、熱交換器21と貯湯タンク22と循環ポンプ23とを環状に連接した貯湯水循環
経路を流れる貯湯水と熱交換することにより、凝縮して、その凝縮水が水入口8を通って水タンクケース1内に貯まる。
以上のように構成された本実施の形態の消音器について、以下その動作、作用を説明する。
本消音器は、開閉弁13を閉じた状態で水入口8から水を通水し、水タンクのオーバーフロー用の仕切り10の上端の高さまで水を貯めてから使用する。
空気供給器20が運転されると、大気中の空気が空気吸い込み口5を通り消音器本体24に入り、排気口6と空気配管を通って空気供給器20の空気吸い込み口に導かれる。空気供給器20を出た空気は、燃料電池システム(燃料電池モジュール17)内の、燃料電池スタック18や水素生成器19に供給される。水素生成器19に供給される空気は、水蒸気改質により生成した水素含有ガスに含まれる一酸化炭素の選択酸化除去などに使用される。
燃料電池スタック18で水素を主成分とする燃料ガス(水素含有ガス)と空気を電気化学反応させて発電すると、発電中は排燃料ガスや排空気、及び水素生成器19の燃焼部で生じた燃焼排ガスが排出される。これらの排出ガスには水分が含まれており、これらの水分は、熱交換器21や配管で凝縮され、その凝縮水は水入口8から水タンクに流入する。
この際に凝縮水と共に水タンクに入る排ガスは排気孔9から水タンク外に排出され、燃料電池システム筐体外に排出される。
本実施の形態では、消音器が上記構成になっているので、水タンク内の水は、空気供給器20の吸気口から発せられる圧力波(吸気音)及び空気供給器20運転時の振動が消音器ケース3に伝わり、消音器ケース3を振動させて消音器ケース3の外に放射する音を、反射(遮音)及び減衰させる作用をもたらし消音性能を高めることが出来る。
消音器内に設けられたフィルタ16は、空気供給器20の吸気口から発せられる圧力波(吸気音)を減衰させる作用をもたらし消音性能を高めることが出来る。
本実施の形態では、消音器が上記構成になっているので、水タンク内の水は、空気供給器20の吸気口から発せられる圧力波(吸気音)及び空気供給器20運転時の振動が消音器本体24に伝わり、水タンクケース1の消音器本体24を形成する空間壁面を振動させて消音器本体24の外に放射する音を、反射(遮音)及び減衰させる作用をもたらし消音性能を高めることが出来る。
また、水タンクケース1と消音器本体24の壁面が一体に形成されているため消音器本体24と水タンクケース1の間に空間やガタが存在せず、消音器本体24部と水タンクケース1がぶつかり生じる衝突音が起こらない効果を有する。
また、水タンクケース1と消音器本体24を熱可塑性樹脂により一体成型してもよく、その場合は部品点数の削減や気密性確保がしやすくなる効果も有する。
消音器内に設けられたフィルタ16は、空気供給器20の吸気口から発せられる圧力波(吸気音)を減衰させる作用をもたらし消音性能を高めることが出来る。
図3に示すように空気吸い込み口5を水タンクケース1の底面側に配置することで、空気供給器20の吸気口から伝わる圧力波(吸気音)及び空気供給器20動作時の振動によ
り生じる、消音器フタ4の面外方向振動が水タンクに対して垂直な力を加えるよう作用する。この作用により水の粘性が振動を減衰させ消音器能を高めることが出来る。
燃料電池スタック18で発電が行われると、水タンク内に凝縮水が流入するため、水タンク内の水の温度は大気の温度よりも高くなる。消音器本体24と水タンク内の水は水タンクケース1のみを介して接しているため、水タンク内の水は消音器本体24内の空気に熱を与えやすくする作用をもたらす。これにより凝縮水の熱は、消音器本体24を通過した空気により燃料電池スタック18や水素生成器19に送られ、燃料電池システムで再利用することができ、排熱回収効率を向上できる。
また、本実施の形態では、消音器本体24に生じた振動が水タンク内の水で減衰された後、燃料電池システム筐体に伝わる作用をもたらすことが出来る。そのため空気供給器20に起因する振動が燃料電池システム筐体を振動させる力を減衰させる効果も有する。
以上のように本実施の形態の消音器は、空気吸い込み口5と空気供給器20との間の空気配管の吸入側に設けられ、排気口6及び空気吸い込み口5の通路断面積(内径)よりも大きい通路断面積(内径)を有する消音器本体24と、その消音器本体24を囲む側壁を有し、消音器本体24と側壁との間の空間に水を貯めるよう構成された水タンク容器(水タンクケース1)とを備えた消音器である。
上記構成により、空気供給器20の動作音(吸気音)及び空気供給器20から伝達される振動により生じる消音器本体24の振動を消音器本体24の周囲にある水によって低減でき、消音器本体24から漏出する空気吸気音を消音器本体24の周囲にある水と水タンク容器(水タンクケース1)とによって遮音・低減することができるので、従来よりも静音化が図れるようになる。
また、消音器本体24と水タンク容器(水タンクケース1)とを一体に構成したことにより、消音器本体24の壁面と水タンク容器(水タンクケース1)の壁面の距離がゼロになるために、消音器本体24の振動により生じる、消音器と水タンクの間で発生しうる衝突音を防止することができる。また、構成が簡単で、部品点数を削減でき、製造コストを削減できる。
また、本実施の形態の消音器は、消音器本体24が、空気中の不要物を除去するフィルタ16を収納しているので、消音器本体24内を通り空気吸い込み口5から出る音は、フィルタ16の吸音効果により減衰することができる。また、空気中の不要物を除去するフィルタ16の収納部を消音器に利用できる。
また、本実施の形態の消音器は、空気吸い込み口5が、水タンク容器(水タンクケース1)の底面側に配置されるので、空気供給器20の動作音(吸気音)によって空気吸い込み口5の周囲に生じる振動が水タンク内の水に対して垂直な力を加えるよう働くため、水の粘性により振動の減衰を行うことができ、空気吸い込み口5から出る音をより低減することができる。
また、水が少ない場合でも、消音器本体24の全周を水で囲むことができる可能性が高いので、静音化を図ることができる。また、消音器本体24と水タンク容器(水タンクケース1)とを一体成型しやすい。
また、本実施の形態の燃料電池システムは、水素を主成分とする燃料ガスと空気とを電気化学反応させて発電する燃料電池モジュール17と、燃料電池モジュール17に空気を供給する空気供給器20と、空気吸い込み口5と空気供給器20との間の空気配管の吸入
側に設けられた本実施の形態の消音器とを備え、消音器の水タンク容器に、燃料電池モジュール17から排出される排ガスを凝縮させて回収した凝縮水を貯めるよう構成された、燃料電池システムである。
上記構成により、燃料電池モジュール17から排出される高温の排ガスを凝縮させて回収した室温より温度が高い凝縮水が水タンク内に存在することで、空気吸い込み口5から消音器に流入する空気は水タンクの水との熱交換により加熱された状態で燃料電池モジュール17の燃料電池スタック18と水素生成器19のCO低減器(選択酸化器)に供給されるため、燃料電池システムの熱回収効率を向上させることができる。
本実施の形態では、消音器の水タンク容器に、燃料電池モジュール17から排出される排ガスを凝縮させて回収した凝縮水を貯めるようにしたが、燃料電池モジュール17の燃料電池スタック18を冷却し冷却水循環経路を循環する冷却水を貯めるようにしても構わない。
消音器の水タンク容器に、上記冷却水を貯めるようにした場合は、燃料電池スタック18との熱交換により室温より温度が高くなった冷却水が水タンク内に存在することで、空気吸い込み口5から消音器に流入する空気は水タンクの冷却水との熱交換により加熱された状態で燃料電池モジュール17の燃料電池スタック18と水素生成器19のCO低減器(選択酸化器)に供給されるため、燃料電池システムの熱回収効率を向上させることができる。
なお、冷却水循環経路を循環する冷却水は、イオン交換樹脂等で浄化した凝縮水を使用することができる。
(実施の形態3)
図5は本発明の実施の形態3における燃料電池システムに用いられる消音器の概略構成を示す断面図である。本実施の形態において、実施の形態1、実施の形態2と同一構成については、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図5に示すように、本実施の形態の消音器は、水タンク容器(水タンクケース1)に貯まった水を浄化するイオン交換樹脂で構成されるイオン交換器25を備える。また、水タンク容器(水タンクケース1)は、イオン交換器25を収納する収納部26と一体に構成されている。水タンクフタ2には、イオン交換器25で浄化された純水出口27が備えられる。
本実施の形態では、上記構成により、イオン交換器と収納部の重さで水タンク容器の振動を低減することができるので、従来よりも静音化が図れるようになる。
本実施の形態では、収納部26を、水タンク容器(水タンクケース1)の角部に配置したので、イオン交換器25と収納部26が、消音器本体24の邪魔にならず、水タンク容器(水タンクケース1)の角部を収納部26の一部に利用して収納部26を構成するための材料を減らしコスト低減を図ることができる。