本発明における保護フィルムを構成するポリエステルフィルムは単層構成であっても多層構成であってもよく、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を越えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。
本発明において使用するポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等が例示される。一方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、p−オキシ安息香酸など)等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。
種々の加工条件に耐えられるフィルムにするという観点から、機械的強度や耐熱性(加熱による寸法安定性)が高いことが好ましく、そのためには共重合ポリエステル成分が少ないことが好ましい。具体的には、ポリエステルフィルム中に占める共重合ポリエステルを形成するモノマーの割合が、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下の範囲であり、さらに好ましくはホモポリエステル重合時に副産物として生成してしまう程度である、3モル%以下のジエーテル成分を含む程度である。ポリエステルとしてより好ましい形態は、機械的強度や耐熱性を考慮すると、前記化合物の中でも、テレフタル酸とエチレングリコールから重合されてなる、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートから形成されたフィルムがより好ましく、製造のしやすさ、表面保護フィルム等の用途としての取扱い性を考慮すると、ポリエチレンテレフタレートから形成されたフィルムがより好ましい。
ポリエステルの重合触媒としては、特に制限はなく、従来公知の化合物を使用することができ、例えば、アンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物、マンガン化合物、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物等が挙げられる。この中でも、チタン化合物やゲルマニウム化合物は触媒活性が高く、少量で重合を行うことが可能であり、フィルム中に残留する金属量が少ないことから、フィルムの輝度が高くなり、フィルムを通して検査を行う場合の視認性の観点から好ましい。さらに、ゲルマニウム化合物は高価であることから、チタン化合物を用いることがより好ましい。
本発明のフィルムのポリエステル層中には、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合することが好ましい。粒子がない場合、あるいは粒子が少ない場合は、フィルムの透明性が高くなり、良好なフィルムとなるが、滑り性が不十分となる場合があるため、フィルムにキズが入りやすい傾向がある。
粒子を配合する場合、配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子、アクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等の有機粒子等が挙げられる。また、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
ポリエステルフィルムに粒子を含有させる場合、滑り性を落とさず、透明性を確保するという観点から、3層以上の構成であることが好ましく、さらに製造の容易性を考慮し、3層構成であることがより好ましく、粒子を最表面の層に含有する構成が最適である。
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
また、用いる粒子の平均粒径は、好ましくは5μm以下、より好ましくは0.1〜3μmの範囲である。平均粒径が5μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、転写する成型面の表面形状に影響を与える場合がある。
さらにポリエステル層中の粒子含有量は、好ましくは5重量%以下、より好ましくは0.0003〜3重量%の範囲である。粒子含有量が5重量%を超えて含有する場合にはフィルムの透明性が不十分な場合がある。
ポリエステル層中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのが良い。
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、潤滑剤、染料、顔料等を含有することができる。
本発明におけるポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、機械的強度、ハンドリング性および生産性などの点から、好ましくは1〜300μm、より好ましくは5〜100μmの範囲がよく、8〜50μmであることがより好ましい。
本発明のフィルムの製膜方法としては、通常知られている製膜法を採用でき、特に制限はない。例えば、二軸延伸ポリエステルフィルムを製造する場合、まず先に述べたポリエステル原料を、押出機を用いてダイから溶融押し出しし、溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法や液体塗布密着法が好ましく採用される。
次に得られた未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に、通常70〜170℃で、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍で延伸する。引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る方法が挙げられる。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
また、本発明においては保護フィルムを構成するポリエステルフィルム製造に関しては同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
次に本発明における保護フィルムを構成する離型層の形成について説明する。離型層に関しては、ポリエステルフィルムの製膜工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、オフラインコーティングを採用してもよい。より好ましくはインラインコーティングにより形成されるものである。
インラインコーティングは、ポリエステルフィルム製造の工程内でコーティングを行う方法であり、具体的には、ポリエステルを溶融押出ししてから延伸後熱固定して巻き上げるまでの任意の段階でコーティングを行う方法である。通常は、溶融、急冷して得られる未延伸シート、延伸された一軸延伸フィルム、熱固定前の二軸延伸フィルム、熱固定後で巻上前のフィルムの何れかにコーティングする。
以下に限定するものではないが、例えば逐次二軸延伸においては、特に長手方向(縦方向)に延伸された一軸延伸フィルムにコーティングした後に横方向に延伸する方法が優れている。かかる方法によれば、製膜と離型層形成を同時に行うことができるため製造コスト上のメリットがあり、また、コーティング後に延伸を行うために、離型層の厚みを延伸倍率により変化させることもでき、オフラインコーティングに比べ、薄膜コーティングをより容易に行うことができる。また、延伸前にフィルム上に離型層を設けることにより、離型層を基材フィルムと共に延伸することができ、それにより離型層を基材フィルムに強固に密着させることができる。さらに、二軸延伸ポリエステルフィルムの製造において、クリップ等によりフィルム端部を把持しつつ延伸することで、フィルムを縦および横方向に拘束することができ、熱固定工程において、しわ等が入らず平面性を維持したまま高温をかけることができる。それゆえ、塗布後に施される熱処理が他の方法では達成されない高温とすることができるために、離型層の造膜性が向上し、離型層と基材フィルムをより強固に密着させることができ、離型成分のフォトレジスト層への移行を防ぐことができる。さらには、強固な離型層とすることができ、離型層の性能や耐久性を向上させることができる。そのため、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に離型層を形成する方法としては、離型成分を含む塗布液をポリエステルフィルムに塗布後、少なくとも一方向に延伸する製造方法が好ましい。
本発明においては、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に離型層を有し、離型層が長鎖アルキル基含有化合物と数平均分子量が1000〜500000の帯電防止剤とを含有することを必須の要件とするものである。
本発明における離型層は、例えば、フォトレジスト用の保護フィルムとして使用する際、フォトレジスト層から保護フィルムを剥がすために好適に使用可能な離型性を付与し、剥離した際の静電気の帯電を抑えるために設けられるものである。
本発明者らは、種々、検討を行った結果、離型剤と数平均分子量が1000〜500000の帯電防止剤とを併用することにより、フォトレジスト層に対する離型性を保持し、ポリエステルフィルムを剥がした後にフォトレジスト層の絶縁基板に対する密着性を保持することが可能で、静電気の帯電も抑えられることを見いだした。
本発明の保護フィルムの離型層に含有する離型剤は、ポリエステルフィルムの離型性を向上させるために用いるもので、特に制限はなく、従来公知の離型剤を使用することが可能であり、例えば、長鎖アルキル化合物、ワックス、フッ素化合物、シリコーン化合物等が挙げられる。これらの中でも汚染性が少なく、離型性に優れるという点から長鎖アルキル化合物が好ましい。これらの離型剤は単独で用いてもよいし、複数種使用してもよい。
長鎖アルキル化合物とは、炭素数が通常6以上、好ましくは8以上、さらに好ましくは12以上の直鎖または分岐のアルキル基を有する化合物のことである。アルキル基としては、例えば、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ラウリル基、オクタデシル基、ベヘニル基等が挙げられる。アルキル基を有する化合物とは、例えば、各種の長鎖アルキル基含有高分子化合物、長鎖アルキル基含有アミン化合物、長鎖アルキル基含有エーテル化合物、長鎖アルキル基含有四級アンモニウム塩等が挙げられる。耐熱性、汚染性を考慮すると高分子化合物であることが好ましい。また、効果的に離型性を得られるという観点から、長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物であることがより好ましい。
長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物とは、反応性基を有する高分子と、当該反応性基と反応可能なアルキル基を有する化合物とを反応させて得ることができる。上記反応性基としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、酸無水物等が挙げられる。
これらの反応性基を有する化合物としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリエチレンアミン、反応性基含有ポリエステル樹脂、反応性基含有ポリ(メタ)アクリル樹脂等が挙げられる。これらの中でも離型性や取り扱い易さを考慮するとポリビニルアルコールであることが好ましい。
上記の反応性基と反応可能なアルキル基を有する化合物とは、例えば、ヘキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、デシルイソシアネート、ラウリルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、ベヘニルイソシアネート等の長鎖アルキル基含有イソシアネート、ヘキシルクロライド、オクチルクロライド、デシルクロライド、ラウリルクロライド、オクタデシルクロライド、ベヘニルクロライド等の長鎖アルキル基含有酸クロライド、長鎖アルキル基含有アミン、長鎖アルキル基含有アルコール等が挙げられる。これらの中でも離型性や取り扱い易さを考慮すると長鎖アルキル基含有イソシアネートが好ましく、オクタデシルイソシアネートが特に好ましい。
また、長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物は、長鎖アルキル(メタ)アクリレートの重合物や長鎖アルキル(メタ)アクリレートと他のビニル基含有モノマーとの共重合によって得ることもできる。長鎖アルキル(メタ)アクリレートとは、例えば、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ワックスとは、天然ワックス、合成ワックス、それらの配合したワックスの中から選ばれたワックスである。天然ワックスとは、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、石油ワックスである。植物系ワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油が挙げられる。動物系ワックスとしては、みつろう、ラノリン、鯨ロウが挙げられる。鉱物系ワックスとしてはモンタンワックス、オゾケライト、セレシンが挙げられる。石油ワックスとしてはパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムが挙げられる。合成ワックスとしては、合成炭化水素、変性ワックス、水素化ワックス、脂肪酸、酸アミド、アミン、イミド、エステル、ケトンが挙げられる。合成炭化水素としては、フィッシャー・トロプシュワックス(別名サゾワールワックス)、ポリエチレンワックスが有名であるが、このほかに低分子量の高分子(具体的には粘度数平均分子量500から20000の高分子)である以下のポリマーも含まれる。すなわち、ポリプロピレン、エチレン・アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックまたはグラフト結合体がある。変性ワックスとしてはモンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体が挙げられる。ここでの誘導体とは、精製、酸化、エステル化、ケン化のいずれかの処理、またはそれらの組み合わせによって得られる化合物である。水素化ワックスとしては硬化ひまし油、および硬化ひまし油誘導体が挙げられる。
フッ素化合物としては、化合物中にフッ素原子を含有している化合物である。インラインコーティングによる塗布外観の点で有機系フッ素化合物が好適に用いられ、例えば、パーフルオロアルキル基含有化合物、フッ素原子を含有するオレフィン化合物の重合体、フルオロベンゼン等の芳香族フッ素化合物等が挙げられる。離型性の観点からパーフルオロアルキル基を有する化合物であることが好ましい。さらにフッ素化合物には後述するような長鎖アルキル化合物を含有している化合物も使用することが出来る。
パーフルオロアルキル基を有する化合物とは、例えば、パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート、パーフルオロアルキルメチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロアルキルエチル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロアルキルプロピル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロアルキル−1−メチルプロピル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロアルキル−2−プロペニル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル基含有(メタ)アクリレートやその重合物、パーフルオロアルキルメチルビニルエーテル、2−パーフルオロアルキルエチルビニルエーテル、3−パーフルオロプロピルビニルエーテル、3−パーフルオロアルキル−1−メチルプロピルビニルエーテル、3−パーフルオロアルキル−2−プロペニルビニルエーテル等のパーフルオロアルキル基含有ビニルエーテルやその重合物などが挙げられる。耐熱性、汚染性を考慮すると重合物であることが好ましい。重合物は単一化合物のみでも複数化合物の重合物でも良い。また、離型性の観点からパーフルオロアルキル基は炭素原子数が3〜11であることが好ましい。さらに後述するような長鎖アルキル化合物を含有している化合物との重合物であっても良い。また、基材との密着性の観点から、塩化ビニルとの重合物であることがより好ましい。
シリコーン化合物とは、分子内にシリコーン構造を有する化合物のことであり、シリコーンエマルション、アクリルグラフトシリコーン、シリコーングラフトアクリル、アミノ変性シリコーン、パーフルオロアルキル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等が挙げられる。
フォトレジスト層へシリコーン成分が移行することで、絶縁基板に対する密着性を低下させる場合があるという観点から、本発明の離型層は非シリコーン化合物の離型剤で形成されることが望ましい。「非シリコーン化合物の離型剤で形成される」とは、離型層のシリコーン化合物含有量が好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下であり、最も好ましくは意図して含有しないことを意味する。シリコーン化合物を積極的に使用しなくても、外来異物由来のコンタミなどや、フィルム製造工程のラインや装置に付着した汚れが混入する可能性が考えられる。
本発明の離型層に使用する数平均分子量が1000〜500000の帯電防止剤とは、アンモニウム基含有化合物、ポリエーテル化合物、スルホン酸化合物、ベタイン化合物等のイオン導電性の高分子化合物や、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリイソチアナフテン、ポリチオフェンなどのπ電子共役系の高分子化合物が挙げられる。これらはフィルムに帯電防止性を付与するために用いられる。これらの中でもイオン導電性の高分子化合物が好ましく、アンモニウム基含有化合物が特に好ましい。π共役系導電性高分子、たとえばポリチオフェンやポリアニリン含有の塗布液から形成される離型層は一般に強く着色するため、透明性が求められる光学用途には好適でない場合がある。またπ共役系導電性高分子塗料はイオン導電性塗料に比べ一般に高価になるため、製造コストの観点からもイオン導電性の帯電防止剤が好適に用いられる。
アンモニウム基含有化合物とは、分子内にアンモニウム基を有する化合物を指し、アンモニウム基を有する高分子化合物であることが好ましい。例えば、アンモニウム基と不飽和性二重結合を有する単量体を成分として含む重合体を用いることができる。
かかる重合体の具体的な例としては、例えば下記式(1)または下記式(2)で示される構成要素を繰返し単位として有する重合体が挙げられる。これらの単独重合体や共重合体、さらに、その他の複数の成分を共重合していても構わない。他の材料との相溶性や、得られる塗膜の透明性を向上させるという観点からは、下記式(1)で示される構成要素を繰り返し単位として有する重合体が好ましい。また、得られる帯電防止性能の高さや耐熱性の観点からは下記式(2)で示される構成要素を繰り返し単位として有する重合体が好ましい。
上記式(1)中、R2は−O− または −NH−、R3はアルキレン基、または式(1)の構造を成立しうるその他の構造、R1、R4、R5、R6はそれぞれが、水素原子、アルキル基、フェニル基等であり、これらのアルキル基、フェニル基が以下に示す基で置換されていてもよい。置換可能な基は、例えば、ヒドロキシ基、アミド基、エステル基、アルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、チオアルコキシ基、チオフェノキシ基、シクロアルキル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、シアノ基、ハロゲン等である。
上記式(2)中、R1、R2はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、フェニル基等であり、これらのアルキル基、フェニル基が以下に示す基で置換されていてもよい。置換可能な基は、例えば、ヒドロキシル基、アミド基、エステル基、アルコキシ基、フェノキシ基、ナフトキシ基、チオアルコキシ基、チオフェノキシ基、シクロアルキル基、トリアルキルアンモニウムアルキル基、シアノ基、ハロゲン等である。また、R1およびR2は化学的に結合していてもよく、例えば、−(CH2)m−(m=2〜5の整数)、−CH(CH3)CH(CH3)−、−CH=CH−CH=CH−、−CH=CH−CH=N−、−CH=CH−N=C−、−CH2OCH2−、−(CH2)2O(CH2)2−などが挙げられる。
上記式(1)で示される構成要素を繰返し単位として有する重合体の場合、他の材料との相溶性を高め、得られる塗膜の透明性を向上させるという観点や、離型性がさらに向上するという観点から、他の繰り返し単位と共重合していることが好ましい。他の繰り返し単位は、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸アルキル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸アルキルが挙げられる。
上記式(2)で示される構成要素を繰返し単位として有する重合体の場合、離型性を向上させるという観点から、他の繰り返し単位と共重合していることが好ましい。他の繰り返し単位は、例えば、上記のアクリル酸アルキルやメタクリル酸アルキル、n−メチロールアクリルアミド等のアクリルアミドが挙げられる。
また、より帯電防止性能を高めるという観点からは、上記式(2)で示される構成要素を繰り返し単位とした単独重合体が好ましい。
上記式(1)および(2)中のX−は本発明の要旨を損なわない範囲で適宜選択することができる。例えば、ハロゲンイオン、スルホナート、ホスファート、ニトラート、アルキルスルホナート、カルボキシラート等が挙げられる。
式(1)で示される構成要素を持つ重合体は、得られる離型層の透明性に優れ好ましい。ただし塗布延伸法においては、耐熱性に劣る場合があり、塗布延伸法に用いる場合、X−はハロゲンではないことが好ましい。
式2で示される構成要素や、その他のアンモニウム塩基が高分子骨格内にある化合物は、耐熱性に優れており好ましい。
また、式(1)ないし式(2)で示される構成要素と、ポリエチレングリコール含有(メタ)アクリレートとが共重合されているポリマーは、構造が柔軟となり、塗布延伸の際には、均一性に優れた離型層が得られ好ましい。
あるいは、ポリエチレングリコール含有(メタ)アクリレートポリマーを、塗布液中に含有して塗布することでも、同様に均一性に優れた離型層を得ることができる。
かかるポリエチレングリコール含有(メタ)アクリレートとしては具体的には、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(ポリエチレグリコール単位の重合度は4〜14の範囲が好ましい。)、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジアクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジアクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコール−ポリブチレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノアクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノアクリレート、アリロキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、アリロキシポリエチレングリコールモノアクリレート等を出発原料とする重合体が例示される。
本発明の離型層に用いる帯電防止剤の数平均分子量は1000〜500000の範囲が必須であり、好ましくは2000〜350000、さらに好ましくは5000〜200000である。分子量が1000未満の場合は塗膜の強度が弱かったり、耐熱安定性に劣ったりする場合があり、十分な帯電防止性を有しない場合がある。また分子量が500000を超える場合は、塗布液の粘度が高くなり、取扱い性や塗布性が悪化する場合があり、保護フィルムとしての適性に劣ってしまう場合がある。
本発明のフィルムの離型層の形成には、塗布外観や透明性の向上、離型性のコントロールために、各種のポリマーや架橋剤を併用することが可能である。
ポリマーの具体例としては、アクリル樹脂、ポリビニル(ポリビニルアルコール、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体等)、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。これらの中でも離型性のコントロールがしやすいという点において、アクリル樹脂、ポリビニルが好ましい。
アクリル樹脂とは、アクリル系、メタアクリル系のモノマーを含む重合性モノマーからなる重合体である。これらは、単独重合体あるいは共重合体、さらにはアクリル系、メタアクリル系のモノマー以外の重合性モノマーとの共重合体、いずれでも差し支えない。また、それら重合体と他のポリマー(例えばポリエステル、ポリウレタン等)との共重合体も含まれる。例えば、ブロック共重合体、グラフト共重合体である。あるいは、ポリエステル溶液、またはポリエステル分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にポリウレタン溶液、ポリウレタン分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にして他のポリマー溶液、または分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマー混合物)も含まれる。また、基材との密着性をより向上させるために、ヒドロキシル基、アミノ基を含有することも可能である。
上記重合性モノマーとしては、特に限定はしないが、特に代表的な化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸のような各種カルボキシル基含有モノマー類、およびそれらの塩;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキルフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネートのような各種の水酸基含有モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートのような各種の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドまたは(メタ)アクリロニトリル等のような種々の窒素含有化合物;スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンのような各種スチレン誘導体、プロピオン酸ビニルのような各種のビニルエステル類;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のような種々の珪素含有重合性モノマー類;燐含有ビニル系モノマー類;塩化ビニル、塩化ビリデンのような各種のハロゲン化ビニル類;ブタジエンのような各種共役ジエン類が挙げられる。
ポリビニルアルコールとは、ポリビニルアルコール部位を有する化合物であり、例えば、ポリビニルアルコールに対し、部分的にアセタール化やブチラール化等された変成化合物も含め、従来公知のポリビニルアルコールを使用することができる。ポリビニルアルコールの重合度は特に限定されるものではないが、通常100以上、好ましくは300〜40000の範囲である。重合度が100未満の場合、離型層の耐水性が低下する場合がある。また、ポリビニルアルコールのケン化度は特に限定されるものではないが、通常70モル%以上、好ましくは70〜99.9モル%の範囲、より好ましくは80〜97モル%、特に好ましくは86〜95モル%であるポリ酢酸ビニルケン化物が実用上用いられる。
ポリエステル樹脂とは、主な構成成分として例えば、下記のような多価カルボン酸および多価ヒドロキシ化合物からなるものが挙げられる。すなわち、多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸および、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−カリウムスルホテレフタル酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、トリメリット酸モノカリウム塩およびそれらのエステル形成性誘導体などを用いることができ、多価ヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオ−ル、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオ−ル、2−メチル−1,5−ペンタンジオ−ル、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、p−キシリレングリコ−ル、ビスフェノ−ルA−エチレングリコ−ル付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、ポリテトラメチレングリコ−ル、ポリテトラメチレンオキシドグリコ−ル、ジメチロ−ルプロピオン酸、グリセリン、トリメチロ−ルプロパン、ジメチロ−ルエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロ−ルプロピオン酸カリウムなどを用いることができる。これらの化合物の中から、それぞれ適宜1つ以上を選択し、常法の重縮合反応によりポリエステル樹脂を合成すればよい。
ウレタン樹脂とは、ウレタン樹脂を分子内に有する高分子化合物のことである。通常ウレタン樹脂はポリオールとイソシアネートの反応により作成される。ポリオールとしては、ポリカーボネートポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、アクリルポリオール類が挙げられ、これらの化合物は単独で用いても、複数種用いてもよい。
架橋剤の具体例としては、メラミン化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、シランカップリング化合物等が挙げられる。これら架橋剤の中でも架橋密度の高さの観点において、特にメラミン化合物を使用することが好ましい。また、これらの架橋剤は2種以上を併用しても良い。
メラミン化合物とは、化合物中にメラミン骨格を有する化合物のことであり、例えば、アルキロール化メラミン誘導体、アルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、およびこれらの混合物を用いることができる。アルキロール化としては、メチロール化、エチロール化、イソプロピロール化、n−ブチロール化、イソブチロール化などが挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、メチロール化が好ましい。また、エーテル化に用いるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール等が好適に用いられる。塗膜強度を向上させ、離型層と基材の密着性を向上させるという観点から、部分的にエーテル化したアルキロール化メラミン誘導体であることが好ましく、メチルアルコールでエーテル化したアルキロールであることがより好ましい。そのため、より好ましい形態としては、メチロール基とメトキシメチル基を持つ部分エーテル化メラミンである。エーテル化したアルキロール基はエーテル化していないアルキロール基に対して、0.5〜5当量であることが好ましく、0.7〜3当量であることがより好ましい。また、メラミン化合物としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できるし、メラミン化合物の反応性を上げるために触媒を使用することも可能である。
オキサゾリン化合物とは、分子内にオキサゾリン基を有する化合物であり、特にオキサゾリン基を含有する重合体が好ましく、付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独もしくは他のモノマーとの重合によって作成できる。付加重合性オキサゾリン基含有モノマーは、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。
これらの中でも2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。
他のモノマーは、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば制限なく、例えば、アルキル(メタ)アクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基)等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の含ハロゲンα,β−不飽和モノマー類;スチレン、α−メチルスチレン、等のα,β−不飽和芳香族モノマー等を挙げることができ、これらの1種または2種以上のモノマーを使用することができる。
エポキシ化合物とは、分子内にエポキシ基を有する化合物であり、例えば、エピクロロヒドリンとエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ビスフェノールA等の水酸基やアミノ基との縮合物が挙げられ、ポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物、モノエポキシ化合物、グリシジルアミン化合物等がある。
ポリエポキシ化合物としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジエポキシ化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、モノエポキシ化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルアミン化合物としてはN,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン等が挙げられる。
なお、本発明に用いる架橋剤は、乾燥過程や、製膜過程において、反応させて離型層の性能を向上させる設計で用いている。できあがった離型層中には、これら架橋剤の未反応物、反応後の化合物、あるいはそれらの混合物が存在しているものと推測できる。
本発明における保護フィルムを構成する離型層の全不揮発成分に対する割合として、長鎖アルキル基含有化合物は、通常5〜95重量%の範囲、好ましくは15〜80重量%の範囲、さらに好ましくは25〜75重量%の範囲である。5重量%より少ない場合は十分な離型性能が得られない可能性があり、95重量%よりも多い場合は他の成分が少ないため帯電防止性が得られない可能性がある。
本発明における保護フィルムを構成する離型層の全不揮発成分に対する割合として、帯電防止剤は、通常5〜95重量%の範囲、好ましくは20〜85重量%の範囲、さらに好ましくは25〜75重量%の範囲である。5重量%より少ない場合は十分な帯電防止性能が得られない可能性があり、95重量%よりも多い場合は他の成分が少ないため離型性が得られない可能性がある。
本発明の離型層の剥離力は、対するフォトレジスト層の材料の種類によるが、例えばアクリル系粘着剤に対して、好ましくは1000mN/cm以下、より好ましくは500mN/cm以下、さらに好ましくは200mN/cm以下である。また剥離力の下限は通常10mN/cmである。
離型層の表面抵抗値は、好ましくは5×1012Ω以下、より好ましくは5×1011Ω以下、さらに好ましくは1×1011Ω以下、特に好ましくは5×1010Ωである。5×1012Ωを超える場合、帯電防止性能が不十分のため、ゴミなどの異物付着を防げない場合がある。
本発明における離型層はポリエステルフィルムの少なくとも片面に積層されたことを特徴とするが、ポリエステルフィルムのもう一方の面には、離型層とは別の機能層を設けてもよい。機能層は特に限定されないが、帯電防止層、汚れ防止層、ブロッキング防止層などが挙げられる。これらの中でも、ポリエステルフィルムを保護フィルムとして用いる場合、さらにフィルムを剥離する際に発生する静電気の帯電を防止する目的から、帯電防止剤を含有する層であることが好ましい。
本発明における保護フィルムに関して、ポリエステルフィルム上に設けられる離型層の膜厚は、好ましくは0.001〜1μm、より好ましくは0.005〜0.5μm、さらに好ましくは0.01〜0.2μmの範囲である。膜厚が1μmを超える場合は、塗膜外観の悪化や塗膜の硬化不足が生じる可能性があり、膜厚が0.001μm未満の場合は十分な離型性が得られない可能性がある。
本発明の主旨を損なわない範囲において、本発明のフィルムの離型層の形成に、ブロッキング性や滑り性改良等を目的として粒子を併用することも可能である。
さらに本発明の主旨を損なわない範囲において、離型層の形成には必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等を併用することも可能である。
離型層の成分の分析は、例えば、TOF−SIMS、ESCA、蛍光X線等の分析によって行うことができる。
インラインコーティングによって離型層を設ける場合は、上述の一連の化合物を水溶液または水分散体として、固形分濃度が0.1〜50重量%程度を目安に調整した塗布液をポリエステルフィルム上に塗布する要領にて保護フィルムを製造するのが好ましい。また、本発明の主旨を損なわない範囲において、水への分散性改良、造膜性改良等を目的として、塗布液中には少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は1種類のみでもよく、適宜、2種類以上を使用してもよい。
本発明の離型層を形成する方法としては、例えば、グラビアコート、リバースロールコート、ダイコート、エアドクターコート、ブレードコート、ロッドコート、バーコート、カーテンコート、ナイフコート、トランスファロールコート、スクイズコート、含浸コート、キスコート、スプレーコート、カレンダコート、押出コート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
本発明において、ポリエステルフィルム上に離型層を形成する際の乾燥および硬化条件に関しては、例えば、オフラインコーティングにより離型層を設ける場合、通常、80〜200℃で3〜40秒間、好ましくは100〜180℃で3〜40秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
一方、インラインコーティングにより離型層を設ける場合、通常70〜270℃で3〜200秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
また、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングに係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。本発明における保護フィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
本発明の保護フィルムは、フォトレジストフィルムのフォトレジスト面に貼り合わせて、フォトレジスト層の保護フィルムとして使用することが出来る。フォトレジストフィルムはキャリアフィルム上に感光性樹脂組成物を含有するフォトレジスト層が形成された構造を有する。保護フィルムはフォトレジスト層の上に加圧積層することにより用いられる。
キャリアフィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム等が挙げられるが、中でもポリエステルフィルムが特に好ましい。ポリエステルフィルムとしては、本発明の保護フィルムのポリエステルフィルムに記載の内容と同様のものが挙げられる。
フォトレジスト層は感光性樹脂組成物を含有する層である。感光性樹脂組成物としては重合性不飽和基を有する単量体、ポリマー、光重合開始剤などを含む組成物である。重合性不飽和基を有する単量体としては、特に限定されないが、重合性不飽和基を1個有する単量体、重合性不飽和基を2個有する単量体、重合性不飽和基を3個以上有する単量体が挙げられ、これらは単独または適宜併用して用いられる。
重合性不飽和基を1個有する単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、フタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
重合性不飽和基を2個有する単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジグリシジルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも特に、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレートやエチレンオキサイド・プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
重合性不飽和基を3個以上有する単量体としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリプロポキシ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、上記の他に、エポキシ(メタ)アクリレート系化合物、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物、リン元素含有の重合性化合物などを含んでも良い。
重合性不飽和基を有する単量体として、重合性不飽和基を2個有し、かつ重量平均分子量が1500以下、好ましくは300〜1200であるものが好ましく、中でも特に、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレートが好適に用いられる。重量平均分子量が1,500を越えると架橋間距離が長くなり充分な硬化が得られず、解像力の低下、細線密着性の低下を招くこととなり好ましくない。
感光性樹脂組成物に含まれるポリマーとしては、特に限定されないが、アクリル系、メタアクリル系の重合性モノマーからなる重合体が挙げられる。単独重合体あるいは共重合体、さらにはアクリル系、メタアクリル系のモノマー以外の重合性モノマーとの共重合体、いずれでも差し支えない。重合性モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのカルボキシル基含有モノマー、あるいはそれらの無水物やハーフエステル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、アルキルビニルエーテルなどが挙げられる。
上記のポリマーの重量平均分子量は好ましくは5千〜25万、より好ましくは1万〜20万の範囲である。重量平均分子量が5千未満では樹脂が柔らかくなり過ぎてフォトレジストフィルムとしてロール形態に加工したときに樹脂が染み出す現象が発生する場合があり、25万を越えると解像度が低下する場合がある。
上記ポリマーのガラス転移温度(Tg)は30〜150℃の範囲が好ましい。ガラス転移温度が30℃未満では、樹脂が柔らかくなり過ぎてフォトレジストフィルムとしてロール形態に加工したときに樹脂が染み出す現象が発生する場合があり、150℃を越えると、フォトレジストフィルムとして用いた時の基板表面の凹凸への追従性が低下する可能性がある。
感光性樹脂組成物に含まれる光重合開始剤としては従来公知のものが用いられる。例えば、ベンゾフェノン、P,P′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、P,P′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、P,P′−ビス(ジブチルアミノ)ベンゾフェノン、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン誘導体、アントラキノン、ナフトキノン等のキノン誘導体、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、ジクロロアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン等のアセトフェノン誘導体、フェニルグリオキシレート、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、ジベンゾスパロン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパノン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン等のプロパノン誘導体、トリブロモフェニルスルホン、トリブロモメチルフェニルスルホン等のスルホン誘導体、2,4,6−[トリス(トリクロロメチル)]−1,3,5−トリアジン、2,4−[ビス(トリクロロメチル)]−6−(4′−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−[ビス(トリクロロメチル)]−6−(4′−メトキシナフチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−[ビス(トリクロロメチル)]−6−(ピペロニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−[ビス(トリクロロメチル)]−6−(4′−メトキシスチリル)−1,3,5−トリアジン等のトリアジン誘導体、アクリジンおよび9−フェニルアクリジン等のアクリジン誘導体、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニル−1,2′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニル−1,1′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(o−フルオロフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニル−1,1′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(o−メトキシフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニル−1,1′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(p−メトキシフェニル)−4,5,4′,5′−テトラフェニル−1,1′−ビイミダゾール、2,4,2′,4′−ビス[ビ(p−メトキシフェニル)]−5,5′−ジフェニル−1,1′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5,4′,5′−ジフェニル−1,1′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(p−メチルチオフェニル)−4,5,4′,5′−ジフェニル−1,1′−ビイミダゾール、ビス(2,4,5−トリフェニル)−1,1′−ビイミダゾール等や特公昭45−37377号公報に開示される1,2′−、1,4′−、2,4′−で共有結合している互変異性体等のヘキサアリールビイミダゾール誘導体等、また、その他として、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、ベンジルジフェニルジスルフィド、ベンジルジメチルケタール、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モリフォルノプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[ 4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル] −2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H −ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム等があげられる。これらは単独でまたは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1が好ましい。
感光性樹脂組成物には、その他に、メラミンなどのアミノ樹脂やイソシアネート系化合物などの熱架橋剤、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン、マラカイトグリーンレイク、ブリリアントグリーン、パテントブルー、メチルバイオレット、ビクトリアブルー、ローズアニリン、パラフクシン、エチレンバイオレットなどの着色染料、密着性付与剤、可塑剤、酸化防止剤、熱重合禁止剤、溶剤、表面張力改質材、安定剤、連鎖移動剤、消泡剤、難燃剤、などの添加剤を添加することができる。
キャリアフィルムの上に感光性樹脂組成物を設けてフォトレジストフィルムを作成する場合、感光性樹脂組成物に有機溶剤を所定の濃度となるように混合して用いる方法が挙げられる。有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、トルエン、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を併せて用いても良い。感光性樹脂組成物の混合物を含有する塗布液をキャリアフィルムの片面に、ロールコーター法やバーコーター法などの方法で均一に塗工し、通常50〜130℃、もしくは順次温度の高くなるオーブンで乾燥して、フォトレジスト層を形成し、保護フィルムで被覆することによりフォトレジストフィルムが製造される。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法および評価方法は次のとおりである。
(1)ポリエステルの極限粘度の測定方法
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
(2)平均粒径(d50)の測定
島津製作所製遠心沈降式粒度分布測定装置(SA−CP3型)を用いて測定した等価球形分布における積算体積分率50%の粒径を平均粒径d50とした。
(3)帯電防止剤の数平均分子量の測定
GPC(ゲル透過クロマトグラフィー)装置を用い、溶離液として0.1M硝酸ナトリウム水溶液を用い、帯電防止剤を濃度0.1%相当に溶解したものを試料とし、標準にポリエチレンオキシドを用いた換算値として測定した。
(4)離型層の膜厚測定方法
離型層の表面をRuO4で染色し、エポキシ樹脂中に包埋した。その後、超薄切片法により作成した切片をRuO4で染色し、離型層の断面をTEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製 H−7650、加速電圧100kV)を用いて測定した。
(5)離型層の剥離力の評価
離型層を設けたポリエステルフィルムの離型層表面に粘着テープ(日東電工株式会社製「No.31B」基材厚み25μm)を2kgゴムローラーにて1往復圧着し、室温にて1時間放置後の剥離力を測定した。剥離力は、株式会社島津製作所製「Ezgraph」を使用し、引張速度300mm/分の条件下、180°剥離を行った。
(6)表面抵抗値の評価方法
日本ヒューレット・パッカード株式会社製高抵抗測定器:HP4339Bおよび測定電極:HP16008Bを使用し、23℃,50%RHの測定雰囲気でサンプルを30分間調湿後、離型層表面の表面抵抗値を測定した。
(7)フォトレジスト層との剥離性
キャリアフィルムとして、厚さ16μmである比較例1に記載のポリエステルフィルムを用い、その片面に下記組成の感光性樹脂組成物を塗布し、110℃で3分間、乾燥して40μmのフォトレジスト層を形成し、その上に本発明の保護フィルムを、離型層とフォトレジスト層が向かい合うように乗せた後、加圧して保護フィルムでカバーしたフォトレジストフィルムを作成した。その後、保護フィルムを剥がして、その剥離性を評価した。剥離がスムーズでレジストの保護フィルムへの転写が無く、レジスト表面に傷を与えなかったものを○、剥離がスムーズでなかったり、レジストからの剥離が不可であったり、レジスト表面に傷を与えたりしたものを×とした。
(感光性樹脂組成物の組成)
重合性不飽和基を有する単量体として、エチレンオキサイドの繰返し数が17(繰り返し単位数の合計)である、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジメタクリレートを30部、プロピレングリコールジグリシジルエーテルジアクリレートを10部、トリメチロールプロパントリアクリレートを10部、ポリマーとして、メチルメタクリレート/n−ブチルメタクリレート/スチレン/メタクリル酸=45/15/15/25(重量比)の割合で重合した重量平均分子量が17万のポリマーを25部、スチレン/アクリル酸=75/25(重量比)の割合で重合させた重量平均分子量が2万のポリマーを25部、光重合開始剤として、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンを2部、(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1を0.4部、溶剤として、メチルエチルケトンを75部、イソプロピルアルコールを25部の混合物。なお、ポリマーの重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)装置を用い、乾燥ポリマーのTHF(テトラヒドロフラン)溶解液をポリスチレン基準で測定した値である。
(8)剥離帯電の測定
上記(7)の剥離性測定と同様の手法で、保護フィルムでカバーしたフォトレジストフィルムを作成した。その後、保護フィルムを剥がし、保護フィルム表面の帯電量を測定した。帯電量の測定には、春日電気株式会社社製のデジタル静電電位測定器KSD−1000を用いた。ホコリなどのゴミの付着を防止する観点から、剥離帯電としては、絶対値が10kV以下であることが好ましい。
実施例および比較例において使用したポリエステルは、以下のようにして準備したものである。
<ポリエステル(A)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部、エチレングリコール60重量部、エチルアシッドフォスフェートを生成ポリエステルに対して30ppm、触媒として酢酸マグネシウム・四水和物を生成ポリエステルに対して100ppmを窒素雰囲気下、260℃でエステル化反応をさせた。引き続いて、テトラブチルチタネートを生成ポリエステルに対して50ppm添加し、2時間30分かけて280℃まで昇温すると共に、絶対圧力0.3kPaまで減圧し、さらに80分、溶融重縮合させ、極限粘度0.63、ジエチレングリコール量が2モル%のポリエステル(A)を得た。
<ポリエステル(B)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部、エチレングリコール60重量部、触媒として酢酸マグネシウム・四水和物を生成ポリエステルに対して900ppmを窒素雰囲気下、225℃でエステル化反応をさせた。引き続いて、正リン酸を生成ポリエステルに対して3500ppm、二酸化ゲルマニウムを生成ポリエステルに対して70ppm添加し、2時間30分かけて280℃まで昇温すると共に、絶対圧力0.4kPaまで減圧し、さらに85分、溶融重縮合させ、極限粘度0.64、ジエチレングリコール量が2モル%のポリエステル(B)を得た。
<ポリエステル(C)の製造方法>
ポリエステル(A)の製造方法において、溶融重合前に平均粒径2μmのシリカ粒子を0.3重量部添加する以外はポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(C)を得た。
離型層および機能層を構成する化合物例は以下のとおりである。
・長鎖アルキル基含有化合物:(I)
4つ口フラスコにキシレン200部、オクタデシルイソシアネート600部を加え、攪拌下に加熱した。キシレンが還流し始めた時点から、平均重合度500、ケン化度88モル%のポリビニルアルコール100部を少量ずつ10分間隔で約2時間にわたって加えた。ポリビニルアルコールを加え終わってから、さらに2時間還流を行い、反応を終了した。反応混合物を約80℃まで冷却してから、メタノール中に加えたところ、反応生成物が白色沈殿として析出したので、この沈殿を濾別し、キシレン140部を加え、加熱して完全に溶解させた後、再びメタノールを加えて沈殿させるという操作を数回繰り返した後、沈殿をメタノールで洗浄し、乾燥粉砕して得た。
・帯電防止剤:(IIA)
下記式3−1の構成単位と、下記式3−2の構成単位とを重量比率で95/5の重量比率で共重合した、数平均分子量30000の高分子化合物
・帯電防止剤:(IIB)
式3−1の構成単位を重合した、数平均分子量30000の高分子化合物
・帯電防止剤:(IIC)
対イオンがメチルスルホネートである、2−(トリメチルアミノ)エチルメタクリレート/エチルメタクリレート/ブチルメタクリレート/ポリエチレングリコール含有モノアクリレートが、重量比で75/12/15/30 である共重合ポリマー。数平均分子量が40000。
・帯電防止剤:(IID)
下記式4の構成単位からなる、数平均分子量50000の高分子化合物
・アクリル樹脂:(IIIA)下記組成で重合したアクリル樹脂の水分散体
エチルアクリレート/n−ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/N−メチロールアクリルアミド/アクリル酸=65/21/10/2/2(重量%)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤)。
・ポリビニルアルコール:(IIIB)
ケン化度88モル%、重合度500のポリビニルアルコール
・メラミン化合物:(IV)
メチロール基とメトキシ基が1:2.2の比率である部分エーテル化メラミン
実施例1:
ポリエステル(A)、(B)、(C)をそれぞれ77%、3%、20%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ97%、3%の割合で混合した混合原料を中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層=1:6:1の吐出量)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.4倍延伸した後、この縦延伸フィルムの片面に、下記表1に示す塗布液1を塗布し、テンターに導き、横方向に100℃で4.0倍延伸し、230℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、片面に塗布層の膜厚(乾燥後)が0.03μmの離型層を有する厚さ16μmの保護フィルムを得た。得られた保護フィルムを評価したところ、離型層の剥離力や表面抵抗値が良好であり、フォトレジスト層に対する剥離性も良好なフィルムであった。このフィルムの特性を下記表2に示す。
実施例2〜20:
実施例1において、離型層の組成を表1に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、保護フィルムを得た。でき上がった保護フィルムは表2に示すとおり、離型層の剥離力や表面抵抗値が良好であり、フォトレジスト層に対する剥離性も良好であった。
比較例1:
実施例1において、離型層を設けないこと以外は実施例1と同様にして製造し、保護フィルムを得た。でき上がった保護フィルムを評価したところ、表2に示すとおりであり、離型層の離型性や表面抵抗値が劣り、フォトレジスト層に対する剥離性も劣るフィルムであった。
比較例2〜7:
実施例1において、離型層の塗布剤組成を表1に示す塗布剤組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、保護フィルムを得た。でき上がった保護フィルムを評価したところ、表2に示すとおりであり、離型層の離型性が劣る場合や表面抵抗値が劣る場合、フォトレジスト層に対する剥離性が劣る場合のあるフィルムあった。