以下に本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品か対応する部品を示す。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る緩衝器Aは、自動二輪車である車両Vの車体Bと後輪Wとの間に介装される。そして、緩衝器Aは、図2に示すように、緩衝器本体1と、この緩衝器本体1の外周に設けた懸架ばね2と、この懸架ばね2の図2中下端を支持するばね受20と、懸架ばね2の図2中上端を支持するばね受21と、このばね受21の位置を調整するジャッキ3と、ばね受21とジャッキ3との間に介在させた補助ばね22と、ばね受21の外周に遊嵌される環状のアダプタ4と、このアダプタ4の回り止めをする回り止め部材5と、アダプタ4と回り止め部材5との間に設けたストロークセンサ6とを備える。
緩衝器本体1は、筒状のアウターシェル10と、このアウターシェル10内に移動可能に挿入されるロッド11とを備え、アウターシェル10とロッド11の軸方向の相対移動を抑制する減衰力を発揮する。アウターシェル10とロッド11には、それぞれブラケット12,13が固定されており、アウターシェル10側のブラケット12が車体Bに連結されるとともに、ロッド11側のブラケット13が後輪Wを支えるスイングアームb1(図1)に図示しないリンクを介して連結される。よって、路面凹凸による衝撃が後輪Wに入力されると、ロッド11がアウターシェル10に出入りして緩衝器本体1が伸縮し、減衰力を発揮する。そして、緩衝器本体1とともに懸架ばね2が伸縮する結果、緩衝器Aが伸縮する。
懸架ばね2は、線材をコイル状に巻き回して形成されたコイルばねであり、圧縮されると当該圧縮に抗する弾性力を発揮する。懸架ばね2の図2中下端を支持するばね受20は、環状に形成されてロッド11の外周に設けられ、ロッド11に対する図2中下方への移動を図2中下側のブラケット13で規制される。また、懸架ばね2の図2中上端を支持するばね受21は、懸架ばね2の図2中上端が当接する環状の支持部21aと、図2中下端が支持部21aに連結されて支持部21aから図2中上方へ延びる筒状の延長部21bとを有してアウターシェル10の外周に設けられ、補助ばね22及びジャッキ3で支えられる。
より詳細には、アウターシェル10の図2中上端部外周には、外側に突出するフランジ14が固定され、アウターシェル10のフランジ14よりも図2中下側の外周が筒状のガイド15で覆われている。そして、このガイド15の外周にばね受21の支持部21aが摺接し、アウターシェル10の軸方向に移動自在となっている。ガイド15の外周には、軸方向の両端部に周方向に沿う環状溝(符示せず)が形成されるとともに、各環状溝にスナップリング16,17が嵌る。そして、ガイド15の外周に、ばね受21の支持部21a、補助ばね22、及びジャッキ3の後述するジャッキ本体30が図2中下側から順に略縦に並ぶように設けられ、これらが全体として両スナップリング16,17で抜け止めされている。
ジャッキ3は、上記ジャッキ本体30と、このジャッキ本体30に作動油を供給するポンプ31と、このポンプ31を駆動するモータ32とを備える。ポンプ31及びモータ32は、如何なる構成であってもよく、周知の構成を採用できるので、ここでの詳細な説明を省略する。なお、ポンプ31がギヤポンプである場合には、ポンプ31が安価であるとともに、耐久性に優れ、ジャッキ本体30へ作動油を素早く供給できる。
ジャッキ本体30は、ガイド15の外周に設けられてガイド15を囲む環状のハウジング33と、このハウジング33とガイド15との間に摺動自在に挿入されて、ハウジング33の内側に液室Lを形成する環状のピストン34とを備える。ハウジング33は、環状の基部33aと、この基部33aから図2中下方へ延びる筒部33bとを有して有底筒状に形成されており、底側の基部33aを図2中上方へ向けて配置されている。また、ピストン34は、環状の隔壁部34aと、この隔壁部34aの外周部から図2中下方へ延びる筒状のスペーサ34bとを有して有底筒状に形成されており、底側の隔壁部34aを図2中上方へ向けて配置されている。
さらに、ハウジング33の基部33aとガイド15との間、ピストン34の隔壁部34aとガイド15との間、及び隔壁部34aと筒部33bとの間は、それぞれ環状のOリング(符示せず)で塞がれている。そして、ハウジング33の基部33a及び筒部33b、ピストン34の隔壁部34a、並びにガイド15で囲われる環状の空間が液室Lとなっており、作動油が充填されている。この液室Lはホース等を介してポンプ31に接続されており、ポンプ31で液室Lに作動油を供給すると、ピストン34が図2中下方へ前進して液室Lが拡大する。反対に、ポンプ31で液室Lから作動油を排出させると、ピストン34が図2中上方へ後退して液室Lが縮小する。
つづいて、ガイド15の外周にジャッキ本体30とばね受21との間に介在させた補助ばね22は、線材をコイル状に巻き回して形成されたコイルばねであり、圧縮されると当該圧縮に抗する弾性力を発揮する。この補助ばね22は、図2中下端をばね受21の支持部21aで支えられるとともに、図2中上端をピストン34の隔壁部34aで支えられている。そして、補助ばね22の内径が隔壁部34aの内径以上であり、補助ばね22の外径がスペーサ34bの内径以下である。よって、補助ばね22はスペーサ34bの内側に挿入される。また、図2中左側に示すようにピストン34を後退させると、補助ばね22は隔壁部34aで支えられたまま筒部33b内に進入する。
補助ばね22の図2中下端を支えるばね受21は、前述のように、懸架ばね2の図2中上端を支えるとともに、アウターシェル10の軸方向に移動自在となっており、当該ばね受21を介して補助ばね22が懸架ばね2と直列に接続される。このように直列に接続された懸架ばね2、ばね受21及び補助ばね22を合わせた構成をばね部材Sとすると、このばね部材Sの弾性力がピストン34の隔壁部34aに作用し、ジャッキ本体30が上記弾性力でフランジ14に押し付けられる。
また、ジャッキ本体30のハウジング33は、図2中上側のスナップリング17でガイド15に対して抜け止めされており、ジャッキ本体30を上記弾性力でフランジ14に押し付けると、ガイド15のアウターシェル10に対する軸方向の移動がスナップリング17とフランジ14により規制される。また、ばね部材Sの弾性力は図2中下側のばね受20にも作用し、このばね受20が上記弾性力でブラケット13に押し付けられる。よって、緩衝器本体1が伸縮するとばね部材Sが伸縮し、当該ばね部材Sで車体Bを弾性支持できる。
図2は、負荷がかかっていない無負荷状態の緩衝器Aを示しており、この無負荷状態において緩衝器Aは自然長となり、緩衝器本体1が伸び切る。そして、図2中中心線の右側にピストン34を最大限前進させた状態を示し、左側にピストン34を最大限後退させた状態を示している。
図2中右側に示すように、上記緩衝器Aでは、無負荷状態においてピストン34を最大限前進させた状態では、ピストン34のスペーサ34bがばね受21の支持部21aに接触し、ピストン34と補助ばね22で懸架ばね2を一定量撓ませて初期撓みを与え、懸架ばね2に所定のイニシャル荷重をかけるようになっている。しかし、懸架ばね2に初期撓みを与えた状態で、ピストン34とばね受21が離間するように設定し、補助ばね22のみでばね受21の図2中上側を支えるようにしてもよい。
また、ばね受21は、ピストン34を最大限前進させた状態でも、緩衝器Aの組立状態では図2中下側のスナップリング16に干渉しない。このようにスナップリング16を設けると、緩衝器Aの組立工程の途中で、補助ばね22の弾性力を受けてばね受21がガイド15から抜け出るのを防止できるので、緩衝器Aの組立作業を容易にできる。しかし、緩衝器Aの組立が完了した後では、スナップリング16がばね受21に干渉せず、当該ばね受21の移動の妨げにならない。
また、図2中左側に示すように、無負荷状態においてピストン34を最大限後退させた状態では、ピストン34がハウジング33の基部33aに当接し、懸架ばね2と補助ばね22が自然長(自由高さ)に近くなる。ピストン34の隔壁部34aの図2中上端部には、外周側に環状の凹み34cが設けられており、当該凹み34cが液室Lとホースとをつなぐ流路の開口に対向する。よって、最後退時にピストン34を基部33aに突き当てても作動油の圧力を受けるピストン34の受圧面積が大きくなる。なお、上記凹み34cを基部33a側に設けてもよい。
つづいて、上記補助ばね22の自然長は、ピストン34のストローク長(ピストン34が最大限前進した状態から最大限後退した状態になるまでに移動した距離)から、懸架ばね2の初期撓み(圧縮長)を引いた長さ以上である。
ここで、例えば、緩衝器Aにおいて、ピストン34を最大限前進させた状態で、懸架ばね2に初期撓みX(mm)を与えるイニシャル荷重を懸架ばね2にかけた状態を最適とし、ピストン34のストローク長をY(mm)とする。そして、補助ばね22がない場合を考えると、ピストン34のストローク長Yが懸架ばね2の初期撓みXを超えない範囲であれば、無負荷状態でピストン34を最大限後退させても懸架ばね2が遊んだ状態にならない。しかし、補助ばね22がない状態で、懸架ばね2、及び懸架ばね2にかけるイニシャル荷重等、懸架ばね2に係る条件を変更せずにピストン34のストローク長Yを増やして車高調整量を増やした場合、上記ストローク長Yが初期撓みXを超えると、懸架ばね2が遊んだ状態になることがある。なぜなら、無負荷状態でピストン34を最大限後退させると、懸架ばねがX(mm)伸びて自然長になった後、さらにピストン34がY−X(mm)後退できるので、この余剰後退(Y−X)分、懸架ばね2が軸方向に動けるためである。
これに対して、上記緩衝器Aは補助ばね22を備え、この補助ばね22の自然長がピストン34のストローク長Yから初期撓みXを引いた長さ、即ち(Y−X)よりも長い。よって、懸架ばね2を変えずに車高調整量を増やしたとしても、上記補助ばね22は、懸架ばね2が軸方向に動ける分(余剰後退分)の隙間を埋めて、懸架ばね2が遊んだ状態になるのを防止できる。
さらに、上記補助ばね22の密着高さ(最圧縮状態での軸方向長さ)は、スペーサ34bの軸方向長さよりも短く、上記補助ばね22のばね定数は、懸架ばね2のばね定数よりも格段に小さい。具体的には、水平な地面上で停車(静止)した車両Vの車重が取付状態の緩衝器Aにかかる状態、即ち、1G状態では、補助ばね22がスペーサ34bの軸方向長さまで縮んでばね受21がスペーサ34bの先端に突き当たり、隔壁部34aに対する接近が規制される。よって、補助ばね22の圧縮がスペーサ34bにより妨げられるとともに、ばね受21が補助ばね22とピストン34のスペーサ34bで支えられた状態になる。
つまり、1G状態では、ばね受21とピストン34の隔壁部34aとの接近がスペーサ34bで規制されて、補助ばね22の圧縮が妨げられるので、ばね部材Sのばね定数は、懸架ばね2のばね定数となり、実質的に車体Bを懸架ばね2のみで支えた状態となる。なお、スペーサ34bを廃し、1G状態で補助ばね22が密着高さになるようにしてもよく、乗車1G状態でばね受21がスペーサ34bに当接するようにしたり、補助ばね22が密着高さになるようにしたりしてもよい。また、上記補助ばね22に対して懸架ばね2は、緩衝器Aが最収縮した状態であっても密着高さにはならないように設定されている。
つづいて、ばね受21に遊嵌される環状のアダプタ4は、図3に示すように、規制部7によりばね受21に対する軸方向の移動が規制されるとともに、回り止め部材5により緩衝器本体1に対して回り止めされている。より詳細に説明すると、図4に示すように、アダプタ4は、周方向の一カ所に割4aを有して平面視で略C字状に形成される取付部4bと、この取付部4bの周方向の両端から相対向して外方へ起立する一対の割締め部4c,4cと、取付部4bにおける割締め部4cの反対側から外方へ起立する一対の挟持部4d,4dと、取付部4bの割4aを閉めるボルト40と、割4aが閉め切るのを防止するスペーサ41とを有する。
一対の割締め部4c,4cは、ともに、取付部4bの直径方向に延びており、これら割締め部4c,4cの対向面に直交し、割締め部4c,4cを貫通するように挿通孔4eが形成されている。スペーサ41は、一方の割締め部4cの挿通孔4eから他方の割締め部4cの挿通孔4eにかけて挿入され、このスペーサ41の両端からボルト40,40が螺合される。そして、ボルト40,40をスペーサ41内に限界までねじ込んだとしても、割締め部4c,4cの間に隙間ができて割4aが閉じ切らず、取付部4bの内径が所定よりも小さくなるのが防止されている。
取付部4bの内周には、周方向に沿って凹部4fが形成されている。また、図3に示すように、ばね受21において、アダプタ4が取り付けられる延長部21bの外周には、周方向に沿う環状溝21cが形成されており、当該環状溝21cにスナップリング23が嵌る。ばね受21の環状溝21cに装着された状態のスナップリング23の外径は、延長部21bの環状溝21c以外の部分の外径よりも大きく、延長部21bの外周から外方へ突出する。
このようにばね受21に取り付けられて、延長部21bから外方へ突出する部分を凸部21dとすると、当該凸部21dがアダプタ4の凹部4fに嵌るようになっている。凸部21d及び凹部4fは、ともに縦断面が半円状である。そして、凸部21dの頂部を通る円の直径を凸部21dの径とし、延長部21bの凸部21d以外の部分の外径を延長部21bの外径とし、アダプタ4単体でスペーサ41にボルト40,40を締結した状態での凹部4fの最深部を通る円の直径を凹部4fの径とし、取付部4bの凹部4f以外の部分の内径を取付部4bの内径とすると、凸部21dの径は凹部4fの径以下であり、延長部21bの外径は取付部4bの内径以下である。
上記構成によれば、アダプタ4のボルト40を締めても、凸部21dを含むばね受21がアダプタ4で締め付けられることがないので、アダプタ4はばね受21に対して周方向(ばね受21の軸回り)に回転できる。また、凸部21dの径は、取付部4bの内径よりも大きいので、凸部21dによりアダプタ4のばね受21に対する軸方向の移動が規制される。つまり、本実施の形態においては、凸部21dと凹部4fにより、アダプタ4のばね受21に対する軸方向の移動を規制する規制部7が構成される。また、凸部21dと凹部4fは、ともに環状であるので、規制部7によりアダプタ4のばね受21に対する周方向の回転が阻止されないようになっている。
つづいて、アダプタ4の一対の挟持部4d,4dは、図4に示すように、取付部4bの周方向に所定の間隔を開けて平行に配置されており、取付部4bの直径方向に延びて回り止め部材5を両側から挟む。そして、取付部4bにおける挟持部4d,4dの間に位置する部分の外周部には、溝4gが形成されており、当該溝4gに後述するストロークセンサ6の球状の入力子60が挿入されている。
図2に示すように、回り止め部材5は、図2中上端がハウジング33の基部33aに固定されて、当該基部33aから図2中下方へ延びる矩形板状の部材である。そして、この回り止め部材5の図2中前後両端には、それぞれアダプタ4の挟持部4d(図4)が接しており、回り止め部材5に対するアダプタ4の回転を規制する。また、回り止め部材5の幅は図2中上下に一定であるので、アダプタ4は回り止め部材5に対して図2中上下に移動できる。
回り止め部材5における緩衝器本体1側を向く面を内側面とすると、ストロークセンサ6は、当該回り止め部材5の内側面に貼り付けられるセンサ部61(図3,4)と、アダプタ4に取り付けられてばね62(図3)によりセンサ部61に押し当てられる上記入力子60(図3,4)とを有する。そして、ストロークセンサ6は、センサ部61に接触する入力子60の位置の変化を検知できる。
以下、本実施の形態の緩衝器Aの作動について説明する。
車両Vが走行を開始すると、ポンプ31で液室Lに作動油を供給してピストン34を前進させる。すると、当該ピストン34、補助ばね22、ばね受21、懸架ばね2、ばね受20及びブラケット13がアウターシェル10に対して下方へ移動するので、ロッド11がアウターシェル10から退出して緩衝器Aが伸長するとともに、車高が上がる。反対に、車両Vを停車させるため速度を落とすると、ポンプ31で液室Lから作動油を排出させてピストン34を後退させる。すると、当該ピストン34、補助ばね22、ばね受21、懸架ばね2、ばね受20及びブラケット13がアウターシェル10に対して上方へ移動するので、ロッド11がアウターシェル10に進入して緩衝器Aが収縮するとともに、車高が下がる。
また、車重、搭乗者の体重、積荷の重量等が緩衝器Aに作用する通常の車両走行時には、ばね受21の支持部21aがピストン34のスペーサ34bに当接し、当該スペーサ34bで補助ばね22の圧縮が妨げられる。よって、通常の車両走行時には、ばね部材Sが懸架ばね2のみからなるように振る舞う。しかし、段差を乗り越える場合など、緩衝器Aが伸び切るような場合には、ピストン34が最後退した状態であっても、補助ばね22が伸長して懸架ばね2が遊ぶのを防止する。
また、車両Vの停車時にも車重等が緩衝器Aにかかるので、ばね受21の支持部21aがスペーサ34bに当接した状態に保たれる。
さらに、前述のようにピストン34を駆動する車高調整時には、通常、車重等が緩衝器Aに作用するので、ばね受21の支持部21aがピストン34のスペーサ34bに当接し、当該ピストン34で支えられた状態で移動する。また、ばね受21に装着されたアダプタ4は、ばね受21に対する軸方向の移動が規制されており、一対の挟持部4d,4dで回り止め部材5を挟んでいる。このため、ピストン34を進退させると、ばね受21がピストン34のスペーサ34bに当接した状態で図2中下上に移動するとともに、アダプタ4が回り止め部材5に沿って図2中下上にスライドする。すると、センサ部61に接触する入力子60の位置が変わり、ストロークセンサ6がアウターシェル10に対するばね受21の軸方向の変位を検出する。このようにストロークセンサ6でばね受21の位置を検出すると、車両走行中等、懸架ばね2の伸縮量が変動して緩衝器本体1のストロークからはばね受21の位置を求められない場合であっても、ばね受21の位置を把握でき、車両走行中の車高調整が可能になる。
また、上記アダプタ4は、ばね受21に対して回転可能となっている。このため、懸架ばね2の圧縮によりばね受21に回転力が作用した場合、回り止め部材5によってアダプタ4が緩衝器本体1に対して回り止めされていても、上記回転力を受けてばね受21が回転できる。よって、アダプタ4と回り止め部材5との摺動部となる挟持部4d部分に上記回転力が加わらず、アダプタ4が抵抗なくスライドできる。このため、ばね受21が懸架ばね2の圧縮による回転力を受けた状態で上下に移動したとしてもばね受21が傾かず、ピストン34に均等に力を加えられるので、ピストン34が傾いてピストン34及びハウジング33の摩耗が激しくなるのを防止できる。
以下、本実施の形態に係る緩衝器Aの作用効果について説明する。
本実施の形態において、ばね受21は、懸架ばね2の図2中上端(一端)を支持する支持部21aと、この支持部21aから図2中上側(反懸架ばね側)へ延びる延長部21bを有し、アダプタ4は、延長部21bに装着されている。前述のように、延長部21bは、支持部21aから反懸架ばね側へ延びており、補助ばね22及びピストン34の外側(反緩衝器本体側)に重ねて設けられる。よって、アダプタ4の取付位置を、回り止め部材5が連結されるハウジング33の基部33aに近づけられる。
なお、ばね受21の構成は上記の限りではなく、例えば、延長部21bを廃し、支持部21aにアダプタ4を取り付けるようにしてもよい。しかし、このようにすると、回り止め部材5を図2中下方へシフトする必要があるものの、ハウジング33の基部33aには、液室Lへ液体を供給するためのホースを接続する接続口を設けなければならず、当該部分を下方へ移動するのが難しい。そうかといって、ハウジング33における回り止め部材5を連結するための部分を図2中下側に突出させたのではハウジング33の形状が複雑になり、ハウジング33の形状をそのままにすると、回り止め部材5を延長しなければならない。つまり、前述のようにばね受21に延長部21bを設け、当該延長部21bにアダプタ4を取り付けると、ハウジング33の形状を簡易にするとともに、回り止め部材5を短くできる。
また、上記ばね受21は、支持部21aに筒状の延長部21bの一端を螺合することで形成されているが、支持部21aと延長部21bが一つの部材として予め一体化されていてもよい。さらに、上記延長部21bは筒状であり、内径がハウジング33の筒部33bの外径よりも大きく、ハウジング33と干渉しないが、延長部21bをハウジング33の外周に摺接させるようにしてもよい。加えて、延長部21bの構成もアダプタ4を支えられる限り適宜変更できる。例えば、延長部21bが支持部21aの周方向に並ぶ複数のロッド又は一以上のプレートを有して構成されていてもよい。
また、本実施の形態において、ストロークセンサ6は、アダプタ4に設けられる入力子60と、回り止め部材5に取り付けられて、入力子60の位置を検出するセンサ部61とを有する。アダプタ4は回り止め部材5で回り止めされている関係から、当該回り止め部材5と近接して設けられる。よって、前述のように入力子60をアダプタ4に設けるとともに、回り止め部材5にセンサ部61を設けると、入力子60とセンサ部61の回転方向のずれを防止できるとともに、入力子60をセンサ部61に接触させ易い。
つまり、上記構成によれば、ストロークセンサ6が接触式である場合にセンサの構成を簡易にできるとともに、センサが嵩張らないので、緩衝器Aの大型化を防止して緩衝器Aの搭載性を良好にできる。なお、ストロークセンサ6の構成は、上記の限りではなく、適宜変更できる。例えば、ストロークセンサ6を非接触式にしたり、回り止め部材5に対するアダプタ4の移動に伴って引き出されたワイヤの長さから変位量を検出するワイヤ式にしたりしてもよい。そして、このような変更は、ばね受21の構成によらず可能である。
また、本実施の形態において、規制部7は、ばね受21に設けた凸部21dと、アダプタ4に設けた凹部4fを有して構成される。このように、凹凸により規制部7が構成されているので、規制部7の構成を極めて簡易にしてコストを低減できる。さらに、アダプタ4の外径を小さくできるので、緩衝器Aの小型化が可能になる。なお、規制部7の構成は上記の限りではなく、ばね受21に対するアダプタ4の回転を妨げることなく、ばね受21に対するアダプタ4の軸方向の移動を阻止できる限りにおいて、適宜変更できる。
例えば、本実施の形態においては、ばね受21の外周に装着したスナップリング23の外周部を凸部21dとしているが、ばね受21の一部を外方へ突出させて凸部21dを形成してもよい。また、図5に示すように、規制部7がアダプタ4の内周に設けた凸部4hと、ばね受21の外周に設けられ、上記凸部4hが嵌る凹部21eとを有して構成されるとしてもよい。また、規制部7が凹凸により構成される場合、凹部4f,21eを環状に形成すれば、凸部21d,4hは周方向に並ぶ複数の突起であってもよい。また。凸部21d,4hを環状に形成すれば、凹部4f,21eが図4に示すように、割4a等により途切れていても、ばね受21に対するアダプタ4の回転を妨げる心配がない。なぜなら、凸部21d,4hが周方向に複数並ぶ突起である場合、凹部4f,21eが周方向に途切れていると、ばね受21に対してアダプタ4が回転した際、一旦凹部4f,21eから外れた一部の凸部21d,4h(突起)が再度凹部4f,21eに挿入されない等の事態を生じないためである。そして、このような変更は、ばね受21、及びストロークセンサ6の構成によらず可能である。
また、本実施の形態において、アダプタ4には、周方向の一カ所に割4aが設けられている。このため、割4aを広げればアダプタ4をばね受21の外周に容易に装着できるとともに、割4aを閉じるとアダプタ4がばね受21の外周から外れるのを容易に阻止できる。しかし、割4aの数は適宜変更できる。例えば、割4aを取付部4bの二カ所に設けて、取付部4bを円弧状の二つの部材に分割してもよく、三以上に分割してもよい。このように、アダプタ4を複数の部材に分割できるようにすると、アダプタ4を弾性変形し難い材料で形成できる。さらに、取付部4bが伸縮性を有する場合、又は、アダプタ4をばね受21の外周に取り付けた後からアダプタ4のばね受21に対する軸方向の移動の規制が可能な場合には、アダプタ4の割4aを廃し、取付部4bを環状にしてもよい。そして、このような変更は、ばね受21、ストロークセンサ6、及び規制部7の構成によらず可能である。
また、本実施の形態では、アダプタ4に割4aを設けるとともに、当該割4aを閉じ切らないように設定し、アダプタ4のばね受21に対する動きを許容しつつアダプタ4をばね受21の外周に装着している(遊嵌している)が、当該遊嵌の方法は適宜変更できる。例えば、割4aを閉じ切らないようにするための構成は、図6(a)(b)に示すように変更してもよい。図6(a)では、ボルト42をスペーサ41の内周に螺合するとともに、ボルト42の螺子軸の先端をスペーサ41から突出させ、当該突出部にナット43を螺合している。また、図6(b)では、ヘッド付の長ナット44を一方の割締め部4cの挿通孔4eから他方の割締め部4cの挿通孔4eにかけて挿通し、当該長ナット44の先端からボルト45を螺合している。このように、割4aが閉じ切るのを防止するスペーサ41又は長ナット44を有する場合、取付部4bの内径をばね受21の外径よりも大きくして、アダプタ4とばね受21とが相対回転する際の抵抗を小さくできる。
しかし、アダプタ4をばね受21に遊嵌した状態とは、アダプタ4とばね受21との間にクリアランスを設けた状態に限られず、相対的に動くようになっていれば、摺動してもよい。例えば、図7に示すように、取付部4bの外周に周方向に沿う溝4iを設け、この溝4iに嵌るスナップリング46の締付力をアダプタ4のばね受21に対する動きを許容できるように設定してもよい。そして、このような変更は、ばね受21、ストロークセンサ6、及び規制部7の構成によらず可能である。
また、本実施の形態において、緩衝器Aは、緩衝器本体1と、この緩衝器本体1を伸長方向へ附勢する懸架ばね2と、この懸架ばね2の図2中上端(一端)を支持するばね受21と、このばね受21の軸方向位置を変更するジャッキ3と、上記ばね受21の外周に遊嵌される環状のアダプタ4と、上記ばね受21と上記アダプタ4との間に設けられて、上記ばね受21に対する上記アダプタ4の軸方向の移動を規制する規制部7と、上記緩衝器本体1に取り付けられて上記アダプタ4の回り止めをする回り止め部材5と、上記アダプタ4と上記回り止め部材5との間に設けたストロークセンサ6とを備える。
このようにストロークセンサ6を設けると、ジャッキ3を構成するポンプ31の種類によらずばね受21の軸方向の位置を容易に求められるので、車高調整量及び車高調整のタイミングに最適なポンプを採用できる。特に、液室Lに作動油を供給するポンプ31がギヤポンプ又はベーンポンプ等、内部漏れのあるポンプである場合には、ポンプ31から液室Lに送る液体の液量を正確に把握できず、ばね受21の位置を求めるのが難しいので、特に、このようなポンプ31を利用する緩衝器に前述のアダプタ4、規制部7、回り止め部材5及びストロークセンサ6を設けるのが有効である。そして、交通信号機による通行許可、停止指示等の信号を受けて車両を走行、停車させる際、車高調整をして良好な足つき性を得るには、ギヤポンプの利用が適している。なぜなら、ギヤポンプは、耐久性に優れ、単位時間当たりの吐出量を多くできるので、車高調整回数が多くても長期間の利用が可能であり、車高調整幅が大きくても短時間での調整が可能であるためである。
また、アダプタ4がばね受21の外周に遊嵌されるとは、アダプタ4がばね受21の外周に、当該ばね受21に対して動けるように、即ち、遊びをもった状態で嵌められることをいう。そして、このようにばね受21に遊嵌されたアダプタ4のばね受21に対する軸方向の移動を規制部7で規制すると、アダプタ4は、ばね受21の軸方向の所定の位置でばね受21の外周に沿って周方向に回転できるようになる。
上記構成によれば、懸架ばね2が圧縮されてばね受21に回転力が作用した場合、アダプタ4は回り止め部材5により緩衝器本体1に対する回転が規制されているものの、アダプタ4とばね受21が相対回転可能であるので、上記回転力を受けてばね受21が回転できる。よって、ストロークセンサ6を設けるためアダプタ4と回り止め部材5の相対回転を規制したとしても、アダプタ4と回り止め部材5との回転を規制する挟持部4d部分には上記回転力が略作用しないので、挟持部4dと回り止め部材5の摩擦力が大きくならず、アダプタ4が回り止め部材5に沿って抵抗なくスライドできる。つまり、アダプタ4の回転を規制したとしても、アダプタ4が軸方向に円滑に移動してばね受21の軸方向の移動を妨げず、ばね受21が傾いた状態で移動するのを防止できる。このため、ピストン34に均一に荷重をかけられるのでピストン34が傾かず、ピストン34及びハウジング33の摩耗を抑制できる。
なお、本実施の形態では、アダプタ4に一対の挟持部4d,4dを設けて、これら挟持部4dの間に回り止め部材5を挿通してアダプタ4の回り止めをしているが、アダプタ4の回転を規制する方法は適宜変更できる。例えば、アダプタ4にリングを設けるとともに、回り止め部材5を円柱状のロッドにして上記リングに挿通するようにしてもよい。さらに、上記回り止め部材5はハウジング33を介して緩衝器本体1に取り付けられているが、緩衝器本体1に直接取り付けられていても、ハウジング33以外の他の部材を介して取付けられていてもよく、緩衝器本体1に対して動かなければよい。
また、本実施の形態において、緩衝器Aは、ピストン34とばね受21との間に介装される補助ばね22と、この補助ばね22と並列に設けられて、軸方向長さが補助ばね22の密着高さよりも長いスペーサ34bとを備え、このスペーサ34bがピストン34に設けられている。
このように、補助ばね22を設けると、懸架ばね2を変えずに車高調整量を増やしても、懸架ばね2が遊んだ状態になるのを防止できる。また、ピストン34のスペーサ34bの軸方向長さを補助ばね22の密着高さよりも長くすると、補助ばね22が密着高さになってコイル部(補助ばね22の一巻分)同士が接触した状態で荷重がかかることがないので、線材に許容応力以上の応力が作用するのを防止できる。そして、このように補助ばね22を設ける場合、緩衝器Aの軸方向長さが長くなるのを防ぐ都合上、ピストン34の隔壁部34aの軸方向長さを長くできないので、ピストン34のアウターシェル10に対する嵌合長を長くしてピストン34の傾きを抑制するのが難しい。このため、補助ばね22を備える緩衝器では特に、前述のようにアダプタ4、規制部7、回り止め部材5及びストロークセンサ6を設けてピストン34の傾きを抑制するのが好ましい。
なお、ピストン34の構成は上記の限りではなく、適宜変更できる。例えば、上記ピストン34では、隔壁部34aとスペーサ34bが一つの部品として一体形成されているが、これらが別々に形成されてから溶接、接着、螺合等で一体化されていてもよい。また、ピストン34からスペーサ34bを廃してばね受21にスペーサ34bを設けてもよく、補助ばね22及びスペーサ34bを廃するとしてもよい。
また、本実施の形態において、アウターシェル10の外周にガイド15を設けて、当該ガイド15にばね受21及びピストン34を摺接させているが、アウターシェル10の外周を滑面にして、当該アウターシェル10の外周に直接ばね受21及びピストン34を摺接させるようにしてもよい。
また、上記緩衝器Aでは、アウターシェル10が車体Bに連結されるとともにロッド11が後輪Wに連結されており、倒立型となっているが、アウターシェル10が後輪Wに連結されるとともに、ロッド11が車体Bに連結されて、正立型とされてもよい。
また、上記緩衝器Aは、自動二輪車の車体Bと後輪Wとの間に介装されるが、当該緩衝器Aを自動二輪車以外の鞍乗型車両、又は自動車等に利用してもよい。
そして、これらの変更は、ばね受21、ストロークセンサ6、規制部7、及びアダプタ4の構成によらず可能である。
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、及び変更が可能である。