JP2017179034A - ポリプロピレン系樹脂発泡シート及び容器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリプロピレン系樹脂を含有し、155℃以上に融点を1つ以上有する熱可塑性樹脂発泡シートであって、ASTM D-3763-92に準拠した衝撃試験において、23℃での衝撃吸収エネルギー(E1)が0.20〜0.60Jであり、−20℃での衝撃吸収エネルギー(E2)が0.10〜0.30Jであり、前記E1と前記E2の比(E1/E2)が1.1〜3.0である、ポリプロピレン系樹脂発泡シート。
【選択図】なし
Description
そこで、特許文献1では、特定のメルトテンション(MT)及びメルトフローレート(MFR)を有するポリプロピレン系樹脂と、これよりも一定範囲で低い融点を有するポリオレフィン系樹脂とが特定割合で混合された基材樹脂を使用した、押出発泡体の製造方法が開示されている。この製造方法によれば、押出発泡性に優れ、低温下での脆性が改善された成型品を提供できる、とされている。
[2] 厚みが0.5〜3.0mmであり、坪量が200〜600g/m2である、[1]に記載のポリプロピレン系樹脂発泡シート。
[3] 連続気泡率が30%以下である、[1]又は[2]に記載のポリプロピレン系樹脂発泡シート。
[4] 総質量に対して、20〜70質量%のブロックPP、及び1〜30質量%のエチレン−α‐オレフィン共重合体を含む、[1]〜[3]の何れか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡シート。
[5] [1]〜[4]の何れか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡シートによって形成された、容器。
本発明の第一態様のポリプロピレン系樹脂発泡シート(以下、単に「発泡シート」ともいう。)は、ポリプロピレン系樹脂を含有し、155℃以上に融点を1つ以上有する熱可塑性樹脂発泡シートである。
前記発泡シートは、ASTM D-3763-92に準拠した衝撃試験において、
23℃での衝撃吸収エネルギー(E1)が0.20〜0.60Jであり、
−20℃での衝撃吸収エネルギー(E2)が0.10〜0.30Jであり、
前記E1と前記E2の比(E1/E2)が1.1〜3.0である。
上記の条件を満たすことにより、耐冷凍性及び断熱性に優れた容器を製造することができる。また、上記容器は、ポリプロピレン系樹脂製であるため、熱い内容物を入れた場合の容器の変形を抑制する意味での「耐熱性」に優れる。
試験温度23℃の試験片は、JIS K 7100:1999の記号「23/50」(温度23℃、相対湿度50%)、2級の標準雰囲気下で24時間以上かけて状態調整した後、同じ標準雰囲気下で測定を行う。
試験温度−20℃の試験片は、−20℃に設定した低温恒温乾燥器を用いて24時間以上かけて状態調整した後、同じ温度下で測定を行う。
23℃での衝撃吸収エネルギー(E1)は、0.3〜0.55Jが好ましい。
−20℃での衝撃吸収エネルギー(E2)は、0.12〜0.25Jが好ましい。
前記E1/E2の比は、1.5〜2.8が好ましく、1.7〜2.6がより好ましく、1.9〜2.4がさらに好ましい。
後述する厚み、坪量、連続気泡率及び樹脂材料を適宜設定することによって、前記E1及びE2を好適な範囲に調整することができる。
上記範囲の下限値以上であると、断熱性をより向上させることができる。
上記範囲の上限値以下であると、発泡倍率を制御し易く、均質な容器を容易に製造することができる。
ここで、前記発泡シートの厚みは、その幅方向(TD方向)に50mm間隔でシックネスゲージによって測定した厚みの算術平均値である。
上記範囲の下限値以上であると、断熱性をより向上させることができる。
上記範囲の上限値以下であると、発泡倍率を制御し易く、均質な容器を容易に製造することができる。
上記の組み合わせであると、容器の強度と軽量性を両立することができる。
連続気泡率が低いほど、成型性が良好となり、容器の構造的な強度が高まるため、耐冷凍性が向上する。
ここで、前記発泡シートの連続気泡率は、以下の方法により測定する。即ち、発泡シートから、縦25mm×横25mmのシート状サンプルを複数枚切り出した。切り出したサンプルを空間があかないよう重ね合わせて厚み25mmとして、試験片を得た。得られた試験片の外寸を、ミツトヨ社製「デジマチックキャリパ」を用いて、1/100mmまで測定し、見掛けの体積(cm3)を求めた。
次に、空気比較式比重計1000型(東京サイエンス社製)を用いて、ASTM D2856−87の1−1/2−1気圧法により試験片の体積(cm3)を求めた。
下記式により連続気泡率(%)を計算した。5つの試験片の連続気泡率の平均値を求めた。
連続気泡率(%)=100×(見かけ体積−空気比較式比重計測定体積)/見かけ体積
上記の測定において、試験片をJIS K7100:1999の記号23/50、2級の環境下で16時間保管した後、JIS K7100:1999の記号23/50、2級の環境下で測定を行った。なお、空気比較式比重計は、標準球(大28.96cc 小8.58cc)にて補正を行った。
前記発泡シートの連続気泡率は、シート製造時において、気泡調整剤の種類や量、発泡剤の量、押出発泡される際の樹脂温度などによって調整することができる。
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンに基づく構成単位が、前記ポリプロピレン系樹脂の全構成単位に対して50質量%以上含まれるものが好ましく、70質量%以上含まれるものがより好ましく、80質量%以上含まれるものがさらに好ましい。
前記共重合体としては、例えば、プロピレンとその他の単量体とのブロック共重合体、プロピレンとその他の単量体とのランダム共重合体が挙げられる。
前記その他の単量体は、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
工業生産されているブロックPPは、ホモPPの中にポリエチレンが分散され、さらにそのポリエチレンの周囲にはEPR相(エチレン‐プロピレン−ラバー相)を有することが一般的である。このようなブロックPPは、前段でプロピレンガスの重合によってホモPPを得て、続く後段でエチレンガスを共存させてEPRを重合することにより生産される。前記ランダムPPは、ICP(Impact Copolymer)と呼ばれることもある。
工業生産されているランダムPPは、少量のエチレン(例えば5質量%以下)がポリプロピレン鎖中にランダムに取り込まれてなるものが一般的である。このようなランダムPPは、ホモPPの重合時にエチレンを混入することにより生産される。
前記エチレン−α‐オレフィン共重合体を構成するα‐オレフィンは、プロピレンであってもよいし、プロピレン以外のα‐オレフィンであってもよい。
上記範囲の下限値以上であると、本発明の発泡シートに構造的な柔軟性を与え、当該発泡シートからなる容器の耐冷凍性をより高めることができる。
上記範囲の上限値以下であると、本発明の発泡シート及び当該発泡シートからなる容器の耐熱性が劣化することを抑制することができる。
なお、エチレンと炭素数が4〜10のα‐オレフィンとの共重合体としては、例えば、住友化学社から商品名「エスプレンNO416」(エチレン−1−ブテン共重合体)、日本ポリケム社から商品名「カーネルKS240T」(エチレン−1−ヘキセン共重合体)、ダウ・ケミカル社から商品名「アフィニティEG8100」(エチレン−1−オクテン共重合体)等が販売されている。
前記ブロックPPの含有量は、前記熱可塑性樹脂の総質量に対して、20〜70質量%が好ましく、25〜65質量%がより好ましく、30〜60質量%がさらに好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、本発明の発泡シートに構造的な柔軟性を与え、当該発泡シートからなる容器の耐冷凍性をより高めることができる。
上記範囲の上限値以下であると、本発明の発泡シート及び当該発泡シートからなる容器の耐熱性が劣化することを抑制することができる。
ポリプロピレン系樹脂以外の樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー等、が挙げられる。
前記融点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて下記の方法で測定される。例えば、ホモPPは160℃付近に1つのピークを示す。
前記熱可塑性樹脂が2つ以上の融点を有し、且つ第1の融点が155℃以上である場合、第2の融点は155℃未満であってもよいし、155℃以上であってもよい。
前記熱可塑性樹脂が155℃以上に融点を1つ以上有することにより、本発明の発泡シート及び容器の耐冷凍性と断熱性を両立して高めることができる。
本発明における融点(Tm)は、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に記載の方法により測定される。但し、測定試料の調整は以下のように行う。
DSC装置として、DSC6220型(エスアイアイナノテクノロジー株式会社製)を用いる。アルミニウム製の測定容器の底に隙間のないように測定対象物を約6.5mg充填して、窒素ガス流量20mL/分のもと10℃/分の速度で−40℃から220℃まで昇温し、10分間保持する。その後、−10℃/分の速度で220度から−40℃まで冷却し、10分間保持したものを測定試料とする。前記DSC装置により前記測定試料を10℃/分の速度で−40℃から220℃まで昇温してDSC曲線を得る。得られたDSC曲線から、装置付属の解析ソフトを用いて、上記JIS K7121:1987の(9.3「ガラス転移温度の求め方」)に記載された方法により融解ピーク温度を求め、その値を融点(Tm)とする。
また、前記発泡剤として、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、炭酸水素ナトリウム、クエン酸等の有機酸又はその塩と炭酸水素ナトリウム(重曹)との混合物等の分解性の発泡剤が用いられてもよい。
これらの発泡剤は、いずれか1種が単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
前記発泡剤としては、炭化水素が好ましい。炭化水素のなかでも、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタンまたはこれらの混合物が好ましい。
前記発泡剤の含有量は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましい。
気泡調整剤は、いずれか1種が単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
気泡調整剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.01〜5質量部が好ましい。
本発明の発泡シートの製造方法は特に限定されず、例えば公知の押出法が適用される。
押出法としては、例えば、発泡シートを構成する上述の熱可塑性樹脂、添加剤及び発泡剤を溶融混練して溶融樹脂を得る工程と、前記溶融樹脂を金型に供給しダイから押出して、発泡シートの形成を行う工程を有する方法が挙げられる。
押出法における前記溶融樹脂には、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して、発泡剤が0.1〜10質量部、気泡調整剤が0.01〜5質量部含まれることが好ましい。
本発明の第二態様は、本発明の第一態様の発泡シートによって形成された容器である。
本発明の容器は、耐冷凍性及び断熱性に優れているため、冷凍食品用の容器として好適である。また、本発明の容器の耐熱性も良好であるため、電子レンジによって食品を加熱する際の食品用容器としても好適である。食品用容器としては、例えば、トレー型容器、丼型容器、カップ型容器等が挙げられる。
本発明にかかる容器を製造する方法は特に限定されず、例えば、公知の熱成型法が適用される。
各例の発泡シートにおける原料の配合を表1に示す。
各例の発泡シートの製造に使用した原料は下記の通りである。
・VB360A:ブロックPP(サンアロマー社製、融点=160℃、MFR=1.5g/10分)
・PM761A:ブロックPP(サンアロマー社製、融点=163℃、MFR=9.5g/10分)
・KS240T:エチレン−α‐オレフィン共重合体(日本ポリエチ社製、融点=60℃、MFR=2.2g/10分)
・EG8100:エチレン−α‐オレフィン共重合体(Dow Chemical社製、融点=58℃、MFR=1g/10分)
・PM600A:ホモPP(サンアロマー社製、融点=163℃、MFR=7.5g/10分)
・PC540R:ランダムPP(サンアロマー社製、融点=152℃、MFR=5g/10分)
・PO410K:重曹−クエン酸系の化学発泡剤(大日精化社工業社製)
各例の発泡シートを、以下のように製造した。
製造装置としては、発泡シートの樹脂材料を溶融混練する第一の単軸押出機(口径90mm)と、これに接続された第二の単軸押出機(口径115mm)とからなるタンデム型押出機を使用し、下流側にサーキュラーダイを接続して押出を実施した。
製造した各例の発泡シートの厚み、坪量、連続気泡率、融点、衝撃吸収エネルギー等を表1に示す。
公知の試験用プレス成形装置を使用して、各例の発泡シートからトレー型容器を成型した。トレー型容器は、楕円形(長径200mm、短径130mm)の開口部と、楕円形(長径150mm、短径90mm)の底面を備え、その高さは40mmの形状を有する。
上記のトレー型容器に水を400cc投入した後、開口部をシールして、−20℃の冷凍庫内で24時間養生し、水を完全に凍結させた。その後、冷凍庫内で、トレー型容器の底面を下に向けた状態で、鉄板面に対して50cmの高さからトレー型容器を2回落下させた。
落下後のトレー型容器の状態を観察し、下記判断基準に基づいて評価した。この結果を表1に併記する。
[判断基準]
○:割れ、変形は生じなかった。
△:軽度の凹みが生じた。
×:割れ又は大きな凹みが生じた。
上記のトレー型容器に水を200cc投入し、1500Wの電子レンジで2分間加熱した。加熱後のトレー型容器を素手で持ち、熱さの官能評価を、下記判断基準に基づいて行った。この結果を表1に併記する。
[判断基準]
○:温かさを感じて、問題なく持つことができた。
△:熱さを感じるが、辛うじて持つことができた。
×:熱すぎて持つことができなかった。
上記のトレー型容器に130℃に加熱したサラダ油を200cc投入し、30秒保持した後、サラダ油を排出した。排出後のトレー型容器の状態を観察し、下記判断基準に基づいて評価した。この結果を表1に併記する。
[判断基準]
○:変形は生じなかった。
△:小さな変形が生じた。
×:大きな変形が生じた。
比較例1〜3の発泡シートの衝撃吸収エネルギーは、何れも本発明が規定する衝撃試験の基準よりも低く、耐冷凍性が劣っていた。
比較例4の発泡シートの衝撃吸収エネルギーは、本発明が規定する個々の衝撃試験の基準よりも高く、E1/E2の比が本発明の規定を満たしておらず、断熱性が劣っていた。
Claims (5)
- ポリプロピレン系樹脂を含有し、155℃以上に融点を1つ以上有する熱可塑性樹脂発泡シートであって、
ASTM D-3763-92に準拠した衝撃試験において、
23℃での衝撃吸収エネルギー(E1)が0.20〜0.60Jであり、
−20℃での衝撃吸収エネルギー(E2)が0.10〜0.30Jであり、
前記E1と前記E2の比(E1/E2)が1.1〜3.0である、
ポリプロピレン系樹脂発泡シート。 - 厚みが0.5〜3.0mmであり、坪量が200〜600g/m2である、請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂発泡シート。
- 連続気泡率が30%以下である、請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂発泡シート。
- 総質量に対して、20〜70質量%のブロックPP、及び1〜30質量%のエチレン−α‐オレフィン共重合体を含む、請求項1〜3の何れか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡シート。
- 請求項1〜4の何れか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡シートによって形成された、容器。
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