JP2017172021A - 皮膜付き基材、プラズマエッチング装置用部品およびそれらの製造方法 - Google Patents

皮膜付き基材、プラズマエッチング装置用部品およびそれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐プラズマ性が高く、剥がれ難く、耐酸性に優れ、表面抵抗値が高い溶射皮膜を基材の表面に有する皮膜付き基材の提供。【解決手段】基材の表面上に皮膜を備える皮膜付き基材であって、前記皮膜は、厚さが10〜1000μmであり、希土類元素(Ln)のフッ化物および酸化物を主成分として含み、前記皮膜の表面において、希土類元素(Ln)の酸化物を主成分とし、単斜晶構造を備え、特定直径の粒子状部分[α]と、希土類元素(Ln)のフッ化物を主成分とし、斜方晶構造を備え、特定直径の粒子状部分[β]とが、希土類元素(Ln)のフッ化物を主成分とするアモルファスのマトリックス中に分散して存在しており、さらに、前記皮膜の表面について光学顕微鏡を用いて観察すると、白色のシミ状部分が確認され、このシミ状部分が観察視野内に占める面積率が低い、皮膜付き基材。【選択図】図1

Description

本発明は皮膜付き基材、プラズマエッチング装置用部品およびそれらの製造方法に関する。
溶射法は、溶融状態に加熱した原料粉体を基材表面に吹き付けて皮膜を形成する方法であり、耐熱性、防食性、耐摩耗性等を必要とする様々な分野に利用されている。中でも半導体や液晶の製造分野で用いられているプラズマ処理装置等に含まれる部材(プラズマエッチング装置用部品)には、プラズマによる損耗を防ぐため、耐プラズマ性に優れた溶射皮膜が求められている。
そして、耐プラズマ性に優れた溶射皮膜として、溶射時に少なくとも一部の原料粉体を溶融せずに形成した皮膜が従来、提案されている。
例えば特許文献1では、部品本体と、酸化物粒子の溶射により前記部品本体の表面に形成された溶射被膜とを具備する半導体製造装置用部品であって、前記溶射被膜中の酸化物粒子の少なくとも一部は未溶融のままであることを特徴とする半導体製造装置用部品が記載されている。
また、特許文献2では、部品本体と、原料粉末としての窒化物粒子の溶射により前記部品本体の表面に形成された溶射被膜とを具備する半導体製造装置用部品であって、前記溶射被膜は窒化物の粉末粒子が未溶融で90%以上堆積して形成されていることを特徴とする半導体製造装置用部品が記載されている。
そして、特許文献1および2には、上記のような酸化物溶射被膜や窒化物溶射被膜を半導体製造装置用部品に施すことによって、その部品の耐プラズマ性を向上させることができると記載されている。
特開2006−108178号公報 国際公開第2010/027073号パンフレット
しかしながら、上記のような従来法では、十分に優れた耐プラズマ性を有する溶射皮膜を得ることができるとはいえない。
また、耐プラズマ性に優れることに加え、皮膜が剥がれ難いことが好ましい。また、用途によっては酸に対する耐性が高く、さらに表面抵抗値が高いことが好ましい。例えば皮膜を内部に形成してなる半導体製造装置の場合、酸を用いて皮膜表面を洗浄する場合があり、また、表面抵抗値が高いことが望まれる。
本発明は、耐プラズマ性が高く、剥がれ難く、耐酸性に優れ、表面抵抗値が高い溶射皮膜を基材の表面に有する皮膜付き基材、プラズマエッチング装置用部品およびそれらの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者が上記の課題を解決するために鋭意検討し、特定の結晶構造を備える特定の粒子状部分がアモルファスのマトリックス中に分散されていて、さらに、光学顕微鏡を用いて観察した場合に白色に見えるシミのような部分の面積の比率が特定範囲内である皮膜が、耐プラズマ性等に優れ、剥がれ難いことを見出した。また、そのような皮膜を形成するためには、水分量が極めて少ない原料を、水分を極力含まない有機溶媒に分散させたスラリーをガスフレーム溶射またはプラズマ溶射して形成することができることを見出した。
本発明は以下の(1)〜(6)である。
(1)基材の表面上に皮膜を備える皮膜付き基材であって、
前記皮膜は、厚さが10〜1000μmであり、希土類元素(Ln)のフッ化物および酸化物を主成分として含み、
前記皮膜の表面において、希土類元素(Ln)の酸化物を主成分とし、単斜晶構造を備え、直径が10nm〜1μmの粒子状部分[α1]と、希土類元素(Ln)のフッ化物を主成分とし、斜方晶構造を備え、直径が10nm〜1μmの粒子状部分[β1]とが、希土類元素(Ln)のフッ化物を主成分とするアモルファスのマトリックス中に分散して存在しており、
さらに、前記皮膜の表面について光学顕微鏡を用いて200倍で観察すると、最大直径が50〜1000μmである白色のシミ状部分が確認され、このシミ状部分が観察視野内に占める面積率が0.01〜2%である、皮膜付き基材。
(2)希土類元素(Ln)がイットリウム(Y)である、上記(1)に記載の皮膜付き基材。
(3)基材の表面上に皮膜を備える皮膜付き基材であって、
前記皮膜は、厚さが10〜1000μmであり、アルカリ土類金属のフッ化物および酸化物を主成分として含み、
前記皮膜の表面において、アルカリ土類金属の酸化物を主成分とし、単斜晶構造を備え、直径が10nm〜1μmの粒子状部分[α2]と、アルカリ土類金属のフッ化物を主成分とし、斜方晶構造を備え、直径が10nm〜1μmの粒子状部分[β2]とが、アルカリ土類金属のフッ化物を主成分とするアモルファスのマトリックス中に分散して存在しており、
さらに、前記皮膜の表面について光学顕微鏡を用いて200倍で観察すると、最大直径が50〜1000μmである白色のシミ状部分が確認され、このシミ状部分が観察視野内に占める面積率が0.01〜2%である、皮膜付き基材。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の皮膜付き基材を含むプラズマエッチング装置用部品。
(5)希土類元素(Ln)のフッ化物またはアルカリ土類金属のフッ化物を含む原料粉末を乾燥し、水分含有率が0.3質量%以下である乾燥原料を得る乾燥工程と、
前記乾燥原料を有機溶媒に分散させてスラリーを得るスラリー調整工程と、
前記スラリーを用いてガスフレーム溶射またはプラズマ溶射し、基材の表面に皮膜を形成する皮膜形成工程と、
を備え、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の皮膜付き基材が得られる、皮膜付き基材の製造方法。
(6)希土類元素(Ln)のフッ化物またはアルカリ土類金属のフッ化物を含む原料粉末を乾燥し、水分含有率が0.3質量%以下である乾燥原料を得る乾燥工程と、
前記乾燥原料を有機溶媒に分散させてスラリーを得るスラリー調整工程と、
前記スラリーを用いてガスフレーム溶射またはプラズマ溶射し、基材の表面に皮膜を形成する皮膜形成工程と、
を備え、上記(4)に記載のプラズマエッチング装置用部品が得られる、プラズマエッチング装置用部品の製造方法。
本発明によれば、耐プラズマ性が高く、剥がれ難く、耐酸性に優れ、表面抵抗値が高い溶射皮膜を基材の表面に有する皮膜付き基材、プラズマエッチング装置用部品およびそれらの製造方法を提供することができる。
本発明の基材の表面の概略図である。 プラズマ溶射装置を例示する概略断面図である。 ガスフレーム溶射装置を例示する概略断面図である。 実施例において得られた皮膜の表面の元素分布図である。 実施例において得られた皮膜の表面の光学顕微鏡写真である。 実施例において得られた皮膜の断面SEM画像である。 実施例において得られた皮膜の別の断面SEM画像である。 実施例において行った皮膜に引張試験を説明するための概略図である。 実施例において行った耐薬品性試験の結果を表すグラフである。 実施例において得られた皮膜の別の断面SEM画像である。 実施例において得られた皮膜の別の断面SEM画像である。
本発明について説明する。
本発明は、基材の表面上に皮膜を備える皮膜付き基材であって、前記皮膜は、厚さが10〜1000μmであり、希土類元素(Ln)のフッ化物および酸化物を主成分として含み、前記皮膜の表面において、希土類元素(Ln)の酸化物を主成分とし、単斜晶構造を備え、直径が10nm〜1μmの粒子状部分[α1]と、希土類元素(Ln)のフッ化物を主成分とし、斜方晶構造を備え、直径が10nm〜1μmの粒子状部分[β1]とが、希土類元素(Ln)のフッ化物を主成分とするアモルファスのマトリックス中に分散して存在しており、さらに、前記皮膜の表面について光学顕微鏡を用いて200倍で観察すると、最大直径が50〜1000μmである白色のシミ状部分が確認され、このシミ状部分が観察視野内に占める面積率が0.01〜2%である、皮膜付き基材である。
このような皮膜付き基材を、以下では「本発明の基材A」ともいう。
また、本発明の基材Aが備える皮膜を「皮膜A」ともいう。
また、本発明は、基材の表面上に皮膜を備える皮膜付き基材であって、前記皮膜は、厚さが10〜1000μmであり、アルカリ土類金属のフッ化物および酸化物を主成分として含み、前記皮膜の表面において、アルカリ土類金属の酸化物を主成分とし、単斜晶構造を備え、直径が10nm〜1μmの粒子状部分[α2]と、アルカリ土類金属のフッ化物を主成分とし、斜方晶構造を備え、直径が10nm〜1μmの粒子状部分[β2]とが、アルカリ土類金属のフッ化物を主成分とするアモルファスのマトリックス中に分散して存在しており、さらに、前記皮膜の表面について光学顕微鏡を用いて200倍で観察すると、最大直径が50〜1000μmである白色のシミ状部分が確認され、このシミ状部分が観察視野内に占める面積率が0.01〜2%である、皮膜付き基材である。
このような皮膜付き基材を、以下では「本発明の基材B」ともいう。
また、本発明の基材Bが備える皮膜を「皮膜B」ともいう。
以下において、単に「本発明の基材」と記す場合、「本発明の基材A」および「本発明の基材B」のいずれをも意味するものとする。
また、以下において、単に粒子状部分[α]と記した場合、粒子状部分[α1]と粒子状部分[α2]のいずれをも意味するものとする。同様に、単に粒子状部分[β]と記した場合、粒子状部分[β1]と粒子状部分[β2]のいずれをも意味するものとする。
また、本発明は、希土類元素(Ln)のフッ化物またはアルカリ土類金属のフッ化物を含む原料粉末を乾燥し、水分含有率が0.3質量%以下である乾燥原料を得る乾燥工程と、前記乾燥原料を有機溶媒に分散させてスラリーを得るスラリー調整工程と、前記スラリーを用いてガスフレーム溶射またはプラズマ溶射し、基材の表面に皮膜を形成する皮膜形成工程と、を備え、本発明の基材Aまたは本発明の基材Bが得られる、皮膜付き基材の製造方法である。
このような皮膜付き基材の製造方法を、以下では「本発明の製造方法」ともいう。
本発明の基材は、本発明の製造方法によって製造することが好ましい。
<本発明の基材>
本発明の基材Aについて説明する。
本発明の基材Aは、基材の表面上に皮膜を備える皮膜付き基材であって、皮膜Aは、厚さが10〜1000μmであり、希土類元素(Ln)のフッ化物および酸化物を主成分として含む。
本発明の基材Aが備える皮膜Aは、希土類元素(Ln)のフッ化物またはオキシフッ化物の原料粉末を用いて、基材へ向かってガスフレーム溶射またはプラズマ溶射することで形成される。具体的には、後に詳細に説明する本発明の製造方法の場合と同様としてよい。
皮膜Aの厚さは10〜1000μmであり、10〜200μmであることが好ましい。上記のように、皮膜Aはガスフレーム溶射またはプラズマ溶射によって形成するので10〜1000μmとなるが、他の方法、例えばCVD等では、通常、このような厚さにならない。
皮膜Aの厚さは渦電流振幅感応式や電磁誘導式膜厚計、もしくはマイクロメータによって測定した値を意味するものとする。
また、皮膜Aは、希土類元素(Ln)のフッ化物および酸化物を主成分として含む。
ここで「主成分」とは、50質量%以上であることを意味する。すなわち、皮膜Aにおいて、希土類元素(Ln)のフッ化物と酸化物との合計含有率は50質量%以上であることが好ましい。この合計含有率は60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
以下において特に断りがない限り「主成分」の文言は、このような意味で用いるものとする。
また、希土類元素(Ln)はスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタノイド、アクチノイドのいずれかを意味する。
希土類元素(Ln)はサマリウム(Sm)、ガドリニウム(Gd)、ジスプロシウム(Dy)、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)およびイットリウム(Y)からなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましく、イットリウム(Y)であることがより好ましい。
皮膜Aは、希土類元素(Ln)のオキシフッ化物を含んでよい。
オキシフッ化物はLnOF、Ln325、Ln2OF4、LnO1-X1+2X、LnO0.42.2およびLnO1-X1+2X(0<X<1)からなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
希土類元素(Ln)のオキシフッ化物の具体例としてYOF、Y325、Y2OF4、YO1-X1+2X、YO0.42.2、YO1-X1+2X(0<X<1)が挙げられる。
皮膜Aにおける希土類元素(Ln)のフッ化物および酸化物の含有量は、微小部蛍光X線分析装置(例えば、島津製作所株式会社製、機種:XRF−1700)を用いて、皮膜を構成する元素の濃度を測定し、またX線回折装置(例えば、島津製作所株式会社製、XRD−6000)を用いたθ−2θ法によりX線回折パターンを測定し結晶構造を確認し、それらを総合的に検討し決定する。
微小部蛍光X線分析装置による測定結果からは、FP法を用いて皮膜に含まれる元素の含有量を求める。FP法とは、質量吸収係数・蛍光収率・X線源のスペクトル分布などの物理定数(ファンダメンタル・パラメーター)を用いて、蛍光X線強度の理論式から理論X線強度を求め、測定X線強度との対比を行って、各成分の濃度を算出する方法である。 X線回折装置(例えば、島津製作所株式会社製、XRD−6000)に測定は、例えば以下の条件によって、θ−2θ法によりX線回折パターンを測定する。後述する皮膜表面に存在する粒子状部分[α1]および粒子状部分[β1]の結晶構造ならびにマトリックスが非晶質であることは、X線回折パターンを解析する事により確認する。
X線源:CuターゲットX線源
管電圧:40kV
管電流:30mA
発散スリット:1°
散乱スリット:1°
受光スリット:0.3mm
皮膜Aは、図1の模式図に示すように、この皮膜Aの表面において、希土類元素(Ln)の酸化物を主成分とする粒子状部分[α1](図1において粒子状部分[α]と示す)と、希土類元素(Ln)のフッ化物を主成分とする粒子状部分[β1](図1において粒子状部分[β]と示す)とが、希土類元素(Ln)のフッ化物を主成分とするアモルファスのマトリックス中に分散して存在している。
ここで、粒子状部分[α1]は、希土類元素(Ln)の酸化物を主成分とし、この酸化物は単斜晶構造を備える。また、粒子状部分[β1]は、希土類元素(Ln)のフッ化物を主成分とし、このフッ化物は斜方晶構造を備える。また、それら以外の部分(マトリックス)は、非晶質(アモルファス)である。
なお、皮膜Aの表面において粒子状部分[α1]および粒子状部分[β1]がマトリックス中に分散して存在していることは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、後述する図4に示すような元素分布図を得ることで確認する。
さらに、粒子状部分[α1]および粒子状部分[β1]の直径は、いずれも10nm〜1μmであり、50nm〜200nmであることが好ましい。
なお、実際は、粒子状部分[α1]および粒子状部分[β1]は、いずれも厳密には円形ではなく、楕円形や多角形であることが多い。そこで、粒子状部分[α1]および粒子状部分[β1]の直径は、最長径および最短径を求めた後に算出した平均値を意味するものとする。
粒子状部分[α1]が観察視野内に占める面積率は1〜30%であることが好ましい。
粒子状部分[β1]が観察視野内に占める面積率は98〜69%であることが好ましい。
粒子状部分[α1]が観察視野内に占める面積率と粒子状部分[β1]が観察視野内に占める面積率との合計は、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、98%以上であることがより好ましく、99%以上であることがより好ましく、99.5%以上であることがさらに好ましい。
この面積率は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、元素分布図及び結晶格子像を得て、その画像を後述するImage Pro PLUS3.0の如き画像処理ソフトで処理し、測定するものとする。
本発明の基材Aが備える皮膜Aは、光学顕微鏡を用いて200倍で観察すると、最大直径が50〜1000μmである白色のシミ状部分が確認される。このシミ状部分の元素分析や結晶構造を調査してみると、その他の部分と大きな差異はなかった。しかしながら、本発明者が鋭意調査したところ、シミ状部分が皮膜に形成される亀裂の起点となっており、また、シミ状部分が一定以上存在すると、皮膜が剥がれ易くなることを見出した。そして、シミ状部分の中の、最大径が50〜1000μmであるものが光学顕微鏡を用いて200倍で観察したときの観察視野内に占める面積率が0.01〜2%であると、皮膜に亀裂が形成され難くなり、また、皮膜は基材から剥がれ難くなることを見出した。
このシミ状部分が観察視野内に占める面積率は0.01〜2%であり、0.01〜1%であることが好ましく、0.01〜0.5%であることがより好ましい。
この面積率が小さいと、より亀裂が発生難くなり、また、より皮膜は基材から剥がれ難くなる。
本発明の基材Bについて説明する。
本発明の基材Bは、基材の表面上に皮膜を備える皮膜付き基材であって、皮膜Bは、厚さが10〜1000μmであり、アルカリ土類金属のフッ化物および酸化物を主成分として含む。
本発明の基材Bは、前述の本発明の基材Aと類似しており、異なるところは皮膜の構成元素成分であり、その他は同様である。
以下における本発明の基材Bの説明は、本発明の基材Aと異なるところについて行う。
皮膜Bは、本発明の基材Aの場合と同様に、アルカリ土類金属のフッ化物またはオキシフッ化物の原料粉末を用いて、基材へ向かってガスフレーム溶射またはプラズマ溶射することで形成される。具体的には、後に詳細に説明する本発明の製造方法の場合と同様としてよい。
皮膜Bの厚さは、本発明の基材Aの場合と同様に、10〜1000μmであり、10〜200μmであることが好ましい。
皮膜Bの厚さは、皮膜Aの場合と同様の方法で測定した値を意味するものとする。
また、皮膜Bは、アルカリ土類金属のフッ化物および酸化物を主成分として含む。
皮膜Bにおけるアルカリ土類金属のフッ化物および酸化物の含有量は、皮膜Aの場合と同様に行う。皮膜表面に存在する粒子状部分[α2]および粒子状部分[β2]の結晶構造ならびにマトリックスが非晶質であることも、同様に、θ−2θ法によって確認する。
本発明の基材Bが備える皮膜Bは、図1の模式図に示すように、この皮膜の表面において、アルカリ土類金属の酸化物を主成分とする粒子状部分[α2](図1において粒子状部分[α]と示す)と、アルカリ土類金属のフッ化物を主成分とする粒子状部分[β2](図1において粒子状部分[β]と示す)とが、アルカリ土類金属のフッ化物を主成分とするアモルファスのマトリックス中に分散して存在している。
ここで、粒子状部分[α2]は、アルカリ土類金属の酸化物を主成分とし、この酸化物は単斜晶構造を備える。また、粒子状部分[β2]は、アルカリ土類金属のフッ化物を主成分とし、このフッ化物は斜方晶構造を備える。また、それら以外の部分(マトリックス)は、非晶質(アモルファス)である。
なお、皮膜の表面において粒子状部分[α2]および粒子状部分[β2]がマトリックス中に分散して存在していることは、皮膜Aの場合と同様に、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて確認する。
さらに、粒子状部分[α2]および粒子状部分[β2]の直径は、いずれも10nm〜1μmであり、50nm〜200nmであることが好ましい。
なお、実際は、粒子状部分[α2]および粒子状部分[β2]は、いずれも厳密には円形ではなく、楕円形や多角形であることが多い。そこで、粒子状部分[α2]および粒子状部分[β2]の直径は、最長径および最短径を求めた後に算出した平均値を意味するものとする。
粒子状部分[α2]が観察視野内に占める面積率は1〜30%であることが好ましい。
粒子状部分[β2]が観察視野内に占める面積率は98〜69%であることが好ましい。
粒子状部分[α2]が観察視野内に占める面積率と粒子状部分[β2]が観察視野内に占める面積率との合計は、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、98%以上であることがより好ましく、99%以上であることがより好ましく、99.5%以上であることがさらに好ましい。
この面積率は、前述の皮膜Aの場合と同様の方法で測定するものとする。
本発明の基材Bが備える皮膜は、光学顕微鏡を用いて200倍で観察すると、最大直径が50〜1000μmである白色のシミ状部分が確認される。このシミ状部分の元素分析や結晶構造を調査してみると、その他の部分と大きな差異はなかった。しかしながら、本発明者が鋭意調査したところ、シミ状部分が皮膜に形成される亀裂の起点となっており、また、シミ状部分が一定以上存在すると、皮膜が剥がれ易くなることを見出した。そして、シミ状部分の中の、最大径が50〜1000μmであるものが光学顕微鏡を用いて200倍で観察したときの観察視野内に占める面積率が0.01〜2%であると、皮膜に亀裂が形成され難くなり、また、皮膜は基材から剥がれ難くなることを見出した。
このシミ状部分が観察視野内に占める面積率は0.01〜2%であり、0.01〜1%であることが好ましく、0.01〜0.5%であることがより好ましい。
この面積率が小さいと、より亀裂が発生難くなり、また、より皮膜は基材から剥がれ難くなる。
次に、本発明の製造方法が備える各工程について説明する。
<乾燥工程>
初めに、乾燥工程について説明する。
本発明の製造方法において乾燥工程では、希土類元素(Ln)のフッ化物またはアルカリ土類金属のフッ化物を含む原料粉末を乾燥し、水分含有率が0.3質量%以下である乾燥原料を得る。
原料粉末について説明する。
本発明の製造方法において、希土類元素(Ln)のフッ化物を含む原料粉末を用いると、本発明の基材Aを得ることができる。また、本発明の製造方法において、アルカリ土類金属のフッ化物を含む原料粉末を用いると、本発明の基材Bを得ることができる。
ここで希土類元素(Ln)のフッ化物は、希土類元素(Ln)とフッ素(F)とからなる化合物であれば特に限定されない。希土類元素(Ln)のフッ化物の具体例としてYF3が挙げられる。
原料粉末は、希土類元素(Ln)のフッ化物を20質量%以上含むことが好ましい。この含有率は40質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
原料粉末は希土類元素(Ln)のフッ化物の他に、希土類のオキシフッ化物(Ln、O、Fを含む化合物、例えばYOF)や希土類の酸化物(例えばY23)を含んでもよい。
また、アルカリ土類金属のフッ化物は、アルカリ土類金属とフッ素(F)とからなる化合物であれば特に限定されない。
原料粉末は、アルカリ土類金属のフッ化物を20質量%以上含むことが好ましい。この含有率は40質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
原料粉末はアルカリ土類金属のフッ化物の他に、アルカリ土類金属のオキシフッ化物やアルカリ土類金属の酸化物を含んでもよい。
原料粉末は、粒子径が0.01〜30μmであることが好ましく、0.1〜15μmであることがより好ましく、3〜8μmであることがさらに好ましい。
また、原料粉末は、平均粒子径(メジアン径)が0.01〜30μmであることが好ましく、0.5〜3μmであることがより好ましい。
ここで原料粉末の粒子径は、従来公知のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定して求める値とする。
また、原料粉末の平均粒子径は、従来公知のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて積算粒度分布(体積基準)を測定して求める値とする。
原料粉末は希土類元素(Ln)のフッ化物からなる粒子、希土類元素(Ln)のオキシフッ化物からなる粒子、さらに希土類元素(Ln)のフッ化物および希土類元素(Ln)のオキシフッ化物からなる粒子を含み得る。また、それらに不純物を含んでいる粒子も含み得る。
また、原料粉末はアルカリ土類金属のフッ化物からなる粒子、アルカリ土類金属のオキシフッ化物からなる粒子、さらにアルカリ土類金属のフッ化物およびアルカリ土類金属のオキシフッ化物からなる粒子を含み得る。また、それらに不純物を含んでいる粒子も含み得る。
乾燥工程では、上記のような原料粉末を乾燥し、水分含有率が0.3質量%以下である乾燥原料を得る。
本発明者は鋭意検討し、特定の結晶構造を備える特定の粒子状部分がアモルファスのマトリックスに分散されていて、さらに、光学顕微鏡を用いて観察した場合に白色に見えるシミのような部分の面積の比率が特定範囲内である皮膜が、耐プラズマ性等に優れ、剥がれ難いことを見出し、そのような皮膜を形成するためには、水分量が極めて少ない原料を、水分を極力含まない有機溶媒に分散させたスラリーをガスフレーム溶射またはプラズマ溶射して形成することができることを見出した。
原料粉末の水分含有率は0.2質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましい。
原料粉末を上記範囲の水分含有率とする方法は特に限定されない。例えば、従来公知の乾燥機内に原料粉末を置き、一定時間、保持する方法が挙げられる。
<スラリー調整工程>
スラリーについて説明する。
スラリー調整工程では、上記のような原料粉末を有機溶媒に分散させてスラリーを得る。
有機溶媒は従来公知のものを用いることができ、例えばアルコール類を用いることができる。アルコール類としてはエチルアルコール、メチルアルコール、灯油が挙げられる。有機溶媒としてエチルアルコールを用いることが好ましい。
有機溶媒としてアルコール類を用いると(好ましくは冷却されたアルコール類を用いると)、スラリーがフレーム内へ供給されて有機溶媒が気化する際に気化熱によってフレームの温度を低下させ得る。そして、原料粉末の少なくとも一部が未溶融状態のまま皮膜を構成し易くなり、より耐プラズマ性が高い基材の表面に形成することができるからである。
有機溶媒は、水分含有率が低いものであることが好ましい。前述のように、本発明者は鋭意検討し、原料粉末の水分含有率を一定値以下とすることが必要であり、それに加えて有機溶媒の純度が高く、すなわち、水分含有率が低いものであると、本発明の製造方法によって得られる本発明の基材の皮膜におけるシミ状部分の面積率が低くなることを見出した。
具体的には、有機溶媒に含まれる水分含有率は0.5質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以下であることがより好ましい。
このような有機溶媒へ前記原料粉末を添加し、必要に応じて超音波発信機等を用いて撹拌等することで分散させて、スラリーを得ることができる。
スラリー中に含まれる原料粉末の含有率は1〜90質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがより好ましい。
<皮膜形成工程>
皮膜形成工程について説明する。
本発明の製造方法において皮膜形成工程では、前記スラリーを用いて溶射し、基材の表面に皮膜を形成する。
皮膜形成工程は、前記スラリーを用いてガスフレーム溶射またはプラズマ溶射し、基材の表面に皮膜を形成する。
プラズマ溶射について説明する。
プラズマ溶射は、例えば図2に示す装置を用いて行うことが好ましい。
図2においてプラズマ溶射装置9は、ノズル状のアノード1とその中心に配置されたカソード2の1対の電極を有する。プラズマは、ガス導入部3からアノード・カソード間のドーナツ状の間隙に不活性ガス(アルゴン、窒素、水素等)を流し、アーク放電によりガスを電離して発生することができる。プラズマガスは、ノズル状のアノード1からプラズマ溶射装置の外側へプラズマジェット5となって噴出する。
原料粉末は、ノズル状のアノード1の出口近傍に接続されたスラリー投入パイプ6を通して、搬送ガスに載せられてプラズマジェット5に供給される。プラズマジェットに供給された原料粉末を含むスラリーは、プラズマ中で加熱され、溶融状態となり、プラズマジェット5に乗ってアノード1から外部へ噴出し、基材7の表面に皮膜8を形成する。
スラリー供給量は5〜100ml/minであることが好ましく、10〜50ml/minであることがより好ましい。
スラリー中の固形分濃度は10〜60質量%であることが好ましく、15〜50質量%であることがより好ましく、15〜40質量%であることがより好ましく、20〜38質量%であることがより好ましく、25〜35質量%であることがさらに好ましい。
プラズマ溶射は、従来公知の方法で行うことができる。また、原料粉末を完全溶融する処理条件においてプラズマ溶射して、基材の表面に原料粉末からなる皮膜を形成することが好ましい。
プラズマ溶射はプラズマ温度を10,000度以上として行うことが好ましく、15,000度以上として行うことがより好ましい。耐プラズマ性により優れる皮膜を形成することができるからである。
プラズマ溶射は、原料粉末を基材へ吹き付ける速度が200m/s以下となる処理条件で行うことが好ましい。耐プラズマ性により優れる皮膜を形成することができるからである。
ガスフレーム溶射について説明する。
ガスフレーム溶射を行う溶射装置は、例えば図3に示すガスフレーム溶射装置を用いることができる。
図3において溶射装置10は、内部に燃焼室12を有し、この燃焼室12へ酸素含有気体を供給するための酸素流路14および主燃料を供給するための主燃料流路16と、これら酸素含有気体と主燃料との混合体に点火するためのバーナ18とを有する。また、燃焼室12にはバーナ18に対向する側に、フレームを噴出させるための孔(ガンノズル20)が形成されており、さらにガンノズル20の外側には中心に孔を有する円筒状の先端筒22が設置されていて、ガンノズル20および先端筒22の孔から外側へ向かってフレームを噴出させることができる。先端筒22の孔の大きさを調整することで、フレームの速度を調整することができる。
先端筒22にはスラリー供給流路24が形成されていて、ここからフレーム内へ前記スラリーを供給する。また、先端筒22には、さらに補助燃料供給流路26が形成されていて、ここからフレームへ補助燃料を供給することができる。
ガンノズル20には圧縮空気供給流路28が形成されていて、ここから供給された圧縮空気が先端筒22に形成された孔の内側側面に沿って流れるように供給される。これによってスラリー供給流路24から供給されたスラリーが、先端筒22が有する孔の内側側面に付着しないように構成されている。
図3に示した溶射装置を用いる場合、次のようにガスフレーム溶射して、皮膜形成工程を行うことができる。
図3に示した溶射装置10における酸素流路14および主燃料流路16から酸素含有気体および主燃料を供給する。
ここで酸素含有気体は酸素を含む気体、例えば空気であってよく、酸素と空気とを混合した気体であってもよい。酸素含有気体は酸素であることが好ましい。
酸素含有気体は、圧力を10〜300psiとして供給することが好ましい。
酸素含有気体は、流量100〜1500L/minで供給することが好ましく、200〜1000L/minで供給することがより好ましく、350〜600L/minで供給することがさらに好ましい。
主燃料は、圧力を10〜300psiとして供給することが好ましい。
主燃料は、流量50〜600ml/minで供給することが好ましく、100〜300ml/minで供給することがより好ましく、140〜220ml/minで供給することがさらに好ましい。
ここで主燃料としては、灯油、アセチレン、プロピレン、プロパン、エチレン、天然ガス等を用いることができる。主燃料は、これらの中でも、灯油であることが好ましい。
また、酸素含有気体および主燃料の混合比は特に限定されないが、主燃料が不完全燃焼する混合比であることが好ましい。不完全燃焼させると、燃焼しなかった一部の主燃料や、スラリー中の有機溶媒(アルコール類等)が気化する際の気化熱によって、フレームの温度を低下させ、その結果、原料粉末の少なくとも一部が未変質のまま皮膜を構成し易くなり、より耐プラズマ性高い皮膜を基材の表面に有する皮膜付き基材を製造しやすくなるからである。
なお、ここでは、後述する補助燃料ならびにスラリーおよび圧縮空気に含まれ得る酸素については考慮せずに、酸素含有気体および主燃料の混合比のみを、主燃料が不完全燃焼するように調整することが好ましい。
このようにして酸素含有気体および主燃料を燃焼室へ供給して混合し、得られた混合体に点火してフレームを発生させる。そして、フレームの内部へ前記スラリーを供給する。
ここで、スラリーを気体と混合した後、フレームへ投入することが好ましい。気体は空気であることが好ましい。
スラリー供給量は20〜100ml/minであることが好ましく、30〜70ml/minであることがより好ましい。
スラリー中の固形分濃度は10〜60質量%であることが好ましく、15〜50質量%であることがより好ましく、15〜40質量%であることがより好ましく、20〜38質量%であることがより好ましく、25〜35質量%であることがさらに好ましい。
圧縮空気は用いなくてよいが、用いる場合、圧縮空気の圧力を0.05〜1.5MPaとして供給することが好ましく、0.3〜0.8MPaとして供給することがより好ましい。また、圧縮空気は、流量を250〜2000L/minとして供給することが好ましく、400〜800L/minとして供給することがより好ましい。
なお、圧縮空気の代わりに、圧縮されていない気体(例えば大気)を利用することができる場合もある。
皮膜形成工程では補助燃料を用いることが好ましい。補助燃料を用いて、フレームの温度を調整することができる。
補助燃料をフレームに供給すると、補助燃料がフレーム内へ供給されて気化する際に気化熱によってフレームの温度を低下させることもできる。この場合、原料粉末の少なくとも一部が未溶融状態のまま皮膜を構成し易くなるので好ましい。
補助燃料として、アセチレン、メタン、エタン、ブタン、プロパン、プロピレンを用いることができる。
補助燃料は、圧力を0.05〜1.0MPaとして供給することが好ましい。
また、補助燃料は、流量を5〜100L/minとして供給することが好ましく、10〜30L/minとして供給することがより好ましい。
図3に示した溶射装置10を用いる場合、先端筒22の先端から基材の主面までの距離を10〜250mmとすることが好ましく、70〜150mmとすることがより好ましい。
基材について説明する。
基材は特に限定されず、アルミニウム、ステンレス、ガラス(石英ガラスや無アルカリガラスなど)、セラミック(Y23、AlN、Al23などからなる焼結体など)、カーボン等が挙げられる。
基材の大きさや形状は特に限定されないが、板状のものであることが好ましい。本発明の製造方法では、このような板状の基材(基板ともいう)の主面上に皮膜を形成することが好ましい。
皮膜形成工程では、有機溶媒や補助燃料の種類や供給量等を調整して、前記原料粉末の少なくとも一部が未溶融状態のまま皮膜を構成する処理条件でガスフレーム溶射することが好ましい。
このような皮膜形成工程によって、前記基材の表面に皮膜を形成することができる。
このような本発明の製造方法によって、本発明の基材を得ることができる。
本発明の皮膜付き基材における皮膜は耐プラズマ性が高く、剥がれ難く、耐酸性に優れ、表面抵抗値が高い。
ここで耐プラズマ性におけるプラズマは、種類において特に制限はされないが、例えば大気圧プラズマ、誘導結合プラズマ、容量結合プラズマ、有磁場プラズマ、高周波プラズマ、熱プラズマなどが挙げられる。また、皮膜の気孔率が低いと、耐プラズマ性が高い。具体的には皮膜の気孔率が10%以下であることが好ましい。
このように皮膜付き基材はプラズマ耐性が高いので、プラズマ雰囲気に曝される部材に用いることができる。すなわち、プラズマエッチング装置用部品として用いることができる。例えば半導体製造装置、フラットパネルディスプレイ製造装置、または太陽電池パネル製造装置などの部材が挙げられる。本発明の皮膜付き基材は半導体製造装置部材に用いることが好ましい。半導体製造装置部材として、例えばイオン注入装置、エピタキシャル成長装置、CVD装置、真空蒸着装置、エッチング装置、スパッタリング装置、アッシング装置などにおいてプラズマ雰囲気に曝される部材が挙げられる。この部材として、例えばチャンバー、ベルジャー、サセプター、クランプリング、フォーカスリング、シャドーリング、絶縁リング、ダミーウエハー、プラズマを発生させるためのチューブ、プラズマを発生させるためのドーム、透過窓、赤外線透過窓、監視窓、半導体ウエハーを支持するためのリフトピン、シャワー板、バッフル板、ベローズカバー、上部電極、下部電極、静電チャックなどが挙げられる。
<実験1>
厚さ3mmのアルミニウム基板を用意し、この基板の主面上へYF3粒子を原料粉末として用いてガスフレーム溶射し、60μmの厚さの皮膜を形成した。
ここでYF3粒子は平均粒子径(D50)が5.3μmであり、組成分析(ICP分析)を行った結果、99質量%以上がYF3からなると考えられた。また、残部(1質量%未満)はYOFやY23等と考えられた。
また、YF3粒子は、乾燥機を用いて80℃で3時間、乾燥させた後に、アルコール(日本アルコール販売株式会社製、水分含有率=0.2質量%以下)に分散させてスラリーとした。
なお、予備実験を行った結果、80℃で3時間乾燥させれば、ほぼ絶乾状態になることがわかっていた。
ガスフレーム溶射における処理条件は第1表に示す4通り(条件1〜4)である。なお、ガスフレーム溶射装置は、図3に示したものを用いた。
このようにして得られた各々の皮膜付き基板について物性等を測定した。なお、以下では条件1によって得られた皮膜付き基板を「皮膜付き基板1」ともいう。条件2,3,4によって得られた皮膜付き基板についても同様に「皮膜付き基板2」、「皮膜付き基板3」、「皮膜付き基板4」ともいう。
<皮膜の組成分析>
皮膜付き基板1〜4の各々について、微小部蛍光X線分析装置(島津製作所株式会社製、機種:XRF−1700)を用いて、皮膜を構成する元素の濃度を測定した。そして、微小部蛍光X線分析装置による測定結果から、FP法を用いて皮膜に含まれる元素の含有量を求めた。FP法とは、質量吸収係数・蛍光収率・X線源のスペクトル分布などの物理定数(ファンダメンタル・パラメーター)を用いて、蛍光X線強度の理論式から理論X線強度を求め、測定X線強度との対比を行って、各成分の濃度を算出する方法である。
結果を第2表に示す。
第2表の結果より、皮膜付き基板1〜4の皮膜のいずれについても、イットリウムのフッ化物(YF3)、オキシフッ化物(YOF)、酸化物(Y23)の混合体であると推定される。
<皮膜を構成する粒子の結晶構造分析>
皮膜付き基板1〜4の各々の皮膜について、X線回折装置(島津製作所株式会社製、XRD−6000)を用いて結晶構造を分析した。測定手法はθ−2θ法を用いて、以下の条件により行った。θ−2θ法はX線源を固定し試料台をθだけ動かした時、検知器部を2θ動かしながらスキャンする方法である。
X線源:CuターゲットX線源
管電圧:40kV
管電流:30mA
発散スリット:1°
散乱スリット:1°
受光スリット:0.3mm
その結果、Y23(立方晶および単斜晶)、YF3、YOFの各々の存在を示すピークが確認された。ただし、ピークが明確でない場合もあり、皮膜はアモルファスの部分を多く含むと考えられた。
<TEM観察>
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて皮膜付き基板1〜4の表面を分析した。具体的には、まず、皮膜付き基板1〜4の表面を機械研磨して、皮膜厚さを約40μmとした後、イオンミリング法(2.0〜5.5keV)により最終薄膜化を行った。そして、TEM(FEI Tecnai Osiris)を用いて、加速電圧を200kV、走査型透過電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope; STEM)モード及びEDSにより皮膜表面の分析を行った。また、結晶構造の確認には電子線回折法を用い、粒子状部分の大きさの確認には、明視野像や格子像(図示せず)も併せて用いた。
得られた皮膜表面の元素分布図を図4に示す。
この図4に示すように、皮膜表面では、YF3のアモルファスのマトリックス中に、Y23からなる粒子状の部分(粒子状部分[α])と、YF3からなる粒子状の部分(粒子状部分[β])とが分散して存在していることが確認できた。また、粒子状部分[α]は単斜晶構造を備え、直径が約100nmであることが確認できた。また、粒子状部分[β]は斜方晶構造を備え、直径が約100nmであることが確認できた。
<光学顕微鏡による表面観察>
光学顕微鏡(株式会社キーエンス製、機種:VHX−5000)を用いて皮膜付き基板1の表面を50倍の倍率で観察した。写真を図5に示す。
図5に示すように、白色のシミ状部分が確認された。また、そのシミ状部分は概ね円形であった。
このシミ状部分が観察視野内に占める面積率が1.8%であった。
<皮膜表面の形態1>
皮膜付き基板1〜4の各々について、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、機種:JSM−5600LV)を用いて皮膜表面のSEM画像を撮影した。倍率は100倍とし、撮影時のコントラストおよびブライトネスの調整は、装置の自動調整機構を用いた。
その結果、表面には凹凸はなく極めてなめらかな性状であった。なお、条件によっては数十から数百μm程度の微小の凝集物(皮膜と同質の突起物)がわずかに観察される場合もあった。
<皮膜表面の形態2>
皮膜付き基板1〜4の各々について、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、機種:JSM−5600LV)を用いて皮膜表面のSEM画像を撮影した。倍率は5000倍とし、撮影時のコントラストおよびブライトネスの調整は、装置の自動調整機構を用いた。
代表例として皮膜付き基板2の皮膜表面のSEM画像を図6に示す。図6に示す皮膜表面にはクラックは存在していない。なお、他の条件の場合は3μm程度の微小のクラックが観察される場合もあったが、それ以上の長さのクラックは全く存在していなかった。
<皮膜断面の気孔>
皮膜付き基板1〜4の各々について、2液硬化型エポキシ樹脂に包埋し、自動研磨機(ビューラー社製、機種:ECOMET3およびAUTOMET2)による研磨で観察面を得た後、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、機種:JSM−5600LV)を用いて皮膜断面のSEM画像を撮影した。倍率は5000倍とし、撮影時のコントラストおよびブライトネスの調整は、装置の自動調整機構を用いた。
代表例として皮膜付き基板2の皮膜断面のSEM画像を図7に示す。図7示す皮膜断面には気孔はほぼ存在していない。なお、他の条件も、皮膜の気孔は極めて少なかった。
次に、皮膜付き基板2および皮膜付き基板4のSEM画像について、MEDIA CYBERNETICS社、Image Pro PLUS3.0を用いて2値化処理を行った。この画像処理後の画像から、視野面積当たりの空孔面積、つまり空孔面積/視野面積×100を算出し、これを気孔率(%)として求めた。
その結果、皮膜付き基板2および皮膜付き基板4の気孔率は、各々、3.9%、8.7%と極めて低かった。
<皮膜強度の測定>
皮膜付き基板2について、皮膜表面を研磨し、Raを1.5未満とした。
次に皮膜表面に接着剤を用いて筒状治具を接着し、150℃に設定した乾燥炉内に60分間保持した。そして、図8に示すように箱型治具にセットし、筒状治具を下へ引っ張ることで、筒状治具を剥がすために必要な力を測定した。
また、比較のためにY23原料粉末を用いて、条件3と同じ条件にて皮膜付き基板を作成し、同様の試験を行って皮膜の強度を測定した。
その結果、皮膜付き基板2における皮膜を剥がすために必要な力は71MPaであった。これに対して、Y23原料粉末を用いた皮膜付き基板の場合は、43MPaであった。このように本発明に該当する皮膜付き基板は皮膜の強度(引張強度)が極めて高いことがわかった。
<耐薬液性の評価>
皮膜付き基板2について皮膜のみが露出するように養生し、それを約10体積%の塩酸水溶液へ浸漬して、皮膜の溶解の程度を測定した。
また、比較のためにY23原料粉末を用いて、条件3と同じ条件にて皮膜付き基板を作成し、同様の試験を行った。結果を図9に示す。
さらに、約10体積%の硝酸水溶液を用いて、同様の試験も行ったが、図9と同様の結果となった。
これより、本発明によって得られた皮膜は、塩酸や硝酸に対して、極めて高い耐性を備えることがわかった。
<プラズマ耐性の評価>
皮膜付き基板2についてICPプラズマ暴露を行い、プラズマ耐性の評価を行った。以下に具体的に説明する。
ICPエッチング装置((株)エリオニクス製 ICPエッチング装置EIS−700SIを用いて、プラズマ暴露を行った。
プラズマ条件は、下記の通り。
・プラズマガスO2、CF4、SF6
・ガス比O2 3standard cc/min(sccm)、CF4 30sccm、SF6 5sccm
・ガス圧0.6〜0.7Pa(成り行きで若干の変動有り)
・プラズマパワー800W(反射は0W)
・バイアス電圧55〜63V(装置最大値の80%設定、値は成り行き)
・プラズマ暴露サイクル 20min暴露−10min休止を16サイクル、合計8時間実施
ここで、今回、暴露されていない部位を残すためのマスクは、アルミニウム材を用いて作製し、表面を黒アルマイト処理した。
上記のようなICPプラズマ暴露を施した後の皮膜について、その表面形状をレーザー変位計を用いて測定した。
また、比較のためにY23原料粉末を用いて、条件3と同じ条件にて皮膜付き基板を作成し、同様の試験を行った。
さらに、比較のために、YOFからなる焼結体についても、同様の試験を行った。
その結果、皮膜付き基板2における皮膜の減少膜厚はほぼゼロであった。これに対して、Y23原料粉末を用いた皮膜付き基板の場合の皮膜の減少膜厚は0.7μm程度であった。また、YOFからなる焼結体の場合の皮膜の減少膜厚は0.3μm程度であった。
このように本発明に該当する皮膜付き基板は耐プラズマ性が極めて高いことがわかった。
<抵抗値>
皮膜付き基板1〜4の各々について、表面抵抗値(2端子法)を測定した。また、比較のために、一般的なプラズマ溶射法によって得られ、本発明の技術的範囲に含まれないY23からなる皮膜が付いた基板を得て、同様に表面抵抗値を測定した。
その結果、皮膜付き基板1〜4の場合、Y23からなる皮膜と比較して、表面抵抗値が極めて高いことがわかった。
<実験2>
厚さ3mmのアルミニウム基板を用意し、この基板の主面上へYF粒子を原料粉末として用いてプラズマ溶射し、60μmの厚さの皮膜を形成した。
ここでYF粒子は実験1と同様のものを用いた。
また、実験1の場合と同様に、YF粒子は乾燥機を用いて乾燥させた後に、アルコールに分散させてスラリーとした。
プラズマ溶射は、プラズマ溶射装置(スルザーメテコ社製、プラズマ溶射ガン#9MB)を用いて行った。処理条件は第3表に示す2通りである。
このようにして得られた各々の皮膜付き基板について物性等を測定した。以下では、得られた皮膜付き基板を「皮膜付き基板21」および「皮膜付き基板22」ともいう。
<皮膜の組成分析>
皮膜付き基板21および皮膜付き基板22について、実験1と同様に、微小部蛍光X線分析装置(島津製作所株式会社製、機種:XRF−1700)を用いて、皮膜を構成する元素の濃度を測定し、微小部蛍光X線分析装置による測定結果から、FP法を用いて皮膜に含まれる元素の含有量を求めた。
その結果、皮膜付き基板21および皮膜付き基板22については、イットリウムのフッ化物(YF3)、オキシフッ化物(YOF)、酸化物(Y23)の混合体であると推定される。
<皮膜を構成する粒子の結晶構造分析>
皮膜付き基板21および皮膜付き基板22の皮膜について、実験1と同様に、X線回折装置(島津製作所株式会社製、XRD−6000)を用いて結晶構造を分析した。測定手法も実験1と同様とした。
その結果、Y23(立方晶および単斜晶)、YF3、YOFの各々の存在を示すピークが確認された。ただし、ピークが明確でない場合もあり、皮膜はアモルファスの部分を多く含むと推定された。
<TEM観察>
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて皮膜付き基板21および皮膜付き基板22の表面を分析した。具体的には、まず、皮膜付き基板21および皮膜付き基板22の各々の表面を機械研磨し、皮膜厚さを約40μmとした後、イオンミリング法(2.0〜5.5keV)により最終薄膜化を行った。そして、実験1の場合と同様の条件で、TEMを用いて皮膜表面の分析を行った。
その結果、皮膜表面では、YF3のアモルファスのマトリックス中に、Y23からなる粒子状の部分(粒子状部分[α1])と、YF3からなる粒子状の部分(粒子状部分[β1])とが分散して存在していることが確認できた。また、粒子状部分[α1]は単斜晶構造を備え、直径が約100nmであることが確認できた。また、粒子状部分[β1]は斜方晶構造を備え、直径が約100nmであることが確認できた。
<光学顕微鏡による表面観察>
実験1と同様の光学顕微鏡を用いて皮膜付き基板21の表面を200倍の倍率で観察した。
その結果、白色のシミ状部分が確認された。また、そのシミ状部分は概ね円形であった。
このシミ状部分が観察視野内に占める面積率が1.5%であった。
<皮膜表面の形態1>
皮膜付き基板21について、実験1の場合と同様にして、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、機種:JSM−5600LV)を用いて皮膜表面のSEM画像を撮影した。倍率は100倍とし、撮影時のコントラストおよびブライトネスの調整は、装置の自動調整機構を用いた。
その結果、表面には凹凸はなく極めてなめらかな性状であった。
<皮膜表面の形態2>
皮膜付き基板21および皮膜付き基材22について、実験1の場合と同様に、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、機種:JSM−5600LV)を用いて皮膜表面のSEM画像を撮影した。倍率は2000倍とし、撮影時のコントラストおよびブライトネスの調整は、装置の自動調整機構を用いた。
皮膜付き基板21の皮膜表面のSEM画像を図10、皮膜付き基材22の皮膜表面のSEM画像を図11に示す。いずれについても、皮膜表面にはクラックは存在していなかった。
<皮膜断面の気孔>
皮膜付き基板21について、実験1の場合と同様にして、2液硬化型エポキシ樹脂に包埋し、自動研磨機(ビューラー社製、機種:ECOMET3およびAUTOMET2)による研磨で観察面を得た後、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、機種:JSM−5600LV)を用いて皮膜断面のSEM画像を撮影した。倍率は5000倍とし、撮影時のコントラストおよびブライトネスの調整は、装置の自動調整機構を用いた。
その結果、皮膜断面には気孔はほぼ存在していなかった。
次に、皮膜付き基板21のSEM画像について、MEDIA CYBERNETICS社、Image Pro PLUS3.0を用いて2値化処理を行った。この画像処理後の画像から、視野面積当たりの空孔面積、つまり空孔面積/視野面積×100を算出し、これを気孔率(%)として求めた。
その結果、皮膜付き基板21の気孔率は、約1から5%と極めて低かった。
<皮膜強度の測定>
実験1の場合と同様にして皮膜強度を測定した。
すなわち、皮膜付き基板21について、皮膜表面を研磨し、Raを1.5未満とし、皮膜表面に接着剤を用いて筒状治具を接着し、乾燥した後、図8に示すように箱型治具にセットして、筒状治具を剥がすために必要な力を測定した。
また、比較のためにY23原料粉末を用いて、皮膜付き基材21を形成したときと同じ条件にて皮膜付き基板を作成し、同様の試験を行って皮膜の強度を測定した。
その結果、皮膜付き基板21における皮膜を剥がすために必要な力は71MPaであった。これに対して、Y23原料粉末を用いた皮膜付き基板の場合は、43MPaであった。このように本発明に該当する皮膜付き基板は皮膜の強度(引張強度)が極めて高いことがわかった。
<耐薬液性の評価>
実験1の場合と同様にして耐薬液性の評価を行った。すなわち、皮膜付き基板21について皮膜のみが露出するように養生し、それを約10体積%の塩酸水溶液へ浸漬して、皮膜の溶解の程度を測定した。また、比較のためにY23原料粉末を用いて、皮膜付き基材30を形成したときと同じ条件にて皮膜付き基板を作成し、同様の試験を行って、同様の試験を行った。
さらに、約10体積%の硝酸水溶液を用いて、同様の試験も行った。
その結果、実験1の場合と同様に、皮膜付き基材21の皮膜は塩酸や硝酸に対して、極めて高い耐性を備えることがわかった。
<プラズマ耐性の評価>
皮膜付き基板21について、実験1の場合と同様に、ICPプラズマ暴露を行い、プラズマ耐性の評価を行った。また、比較のためにY23原料粉末を用いて、皮膜付き基材3を形成したときと同じ条件にて皮膜付き基板を作成し、同様の試験を行った。
その結果、皮膜付き基板21における皮膜の減少膜厚はほぼゼロであった。これに対して、Y23原料粉末を用いた一般的な皮膜付き基板の場合の皮膜の減少膜厚は0.7μm程度であった。
このように本発明に該当する皮膜付き基板は耐プラズマ性が極めて高いことがわかった。
<抵抗値>
皮膜付き基板21について、実験1の場合と同様にして、表面抵抗値(2端子法)を測定した。また、比較のために、一般的なプラズマ溶射法によって得られ、本発明の技術的範囲に含まれないY23からなる皮膜が付いた基板を得て、同様に表面抵抗値を測定した。
その結果、皮膜付き基板30の場合、Y23からなる皮膜と比較して、表面抵抗値が極めて高いことがわかった。
1 アノード
2 カソード
3 ガス導入部
5 プラズマジェット
6 粉末投入パイプ
7 脆性基材
8 第一皮膜
9 プラズマ溶射装置
10 ガスフレーム溶射装置
12 燃焼室
14 酸素流路
16 燃料流路
18 バーナ
20 ガンノズル
22 先端筒
24 スラリー供給流路
26 補助燃料供給流路
28 圧縮空気供給流路

Claims (6)

  1. 基材の表面上に皮膜を備える皮膜付き基材であって、
    前記皮膜は、厚さが10〜1000μmであり、希土類元素(Ln)のフッ化物および酸化物を主成分として含み、
    前記皮膜の表面において、希土類元素(Ln)の酸化物を主成分とし、単斜晶構造を備え、直径が10nm〜1μmの粒子状部分[α1]と、希土類元素(Ln)のフッ化物を主成分とし、斜方晶構造を備え、直径が10nm〜1μmの粒子状部分[β1]とが、希土類元素(Ln)のフッ化物を主成分とするアモルファスのマトリックス中に分散して存在しており、
    さらに、前記皮膜の表面について光学顕微鏡を用いて200倍で観察すると、最大直径が50〜1000μmである白色のシミ状部分が確認され、このシミ状部分が観察視野内に占める面積率が0.01〜2%である、皮膜付き基材。
  2. 希土類元素(Ln)がイットリウム(Y)である、請求項1に記載の皮膜付き基材。
  3. 基材の表面上に皮膜を備える皮膜付き基材であって、
    前記皮膜は、厚さが10〜1000μmであり、アルカリ土類金属のフッ化物および酸化物を主成分として含み、
    前記皮膜の表面において、アルカリ土類金属の酸化物を主成分とし、単斜晶構造を備え、直径が10nm〜1μmの粒子状部分[α2]と、アルカリ土類金属のフッ化物を主成分とし、斜方晶構造を備え、直径が10nm〜1μmの粒子状部分[β2]とが、アルカリ土類金属のフッ化物を主成分とするアモルファスのマトリックス中に分散して存在しており、
    さらに、前記皮膜の表面について光学顕微鏡を用いて200倍で観察すると、最大直径が50〜1000μmである白色のシミ状部分が確認され、このシミ状部分が観察視野内に占める面積率が0.01〜2%である、皮膜付き基材。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の皮膜付き基材を含むプラズマエッチング装置用部品。
  5. 希土類元素(Ln)のフッ化物またはアルカリ土類金属のフッ化物を含む原料粉末を乾燥し、水分含有率が0.3質量%以下である乾燥原料を得る乾燥工程と、
    前記乾燥原料を有機溶媒に分散させてスラリーを得るスラリー調整工程と、
    前記スラリーを用いてガスフレーム溶射またはプラズマ溶射し、基材の表面に皮膜を形成する皮膜形成工程と、
    を備え、請求項1〜3のいずれかに記載の皮膜付き基材が得られる、皮膜付き基材の製造方法。
  6. 希土類元素(Ln)のフッ化物またはアルカリ土類金属のフッ化物を含む原料粉末を乾燥し、水分含有率が0.3質量%以下である乾燥原料を得る乾燥工程と、
    前記乾燥原料を有機溶媒に分散させてスラリーを得るスラリー調整工程と、
    前記スラリーを用いてガスフレーム溶射またはプラズマ溶射し、基材の表面に皮膜を形成する皮膜形成工程と、
    を備え、請求項4に記載のプラズマエッチング装置用部品が得られる、プラズマエッチング装置用部品の製造方法。
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