JP2017172000A - 成膜装置の立ち上げ方法、マスクブランクの製造方法、転写用マスクの製造方法および半導体デバイスの製造方法 - Google Patents

成膜装置の立ち上げ方法、マスクブランクの製造方法、転写用マスクの製造方法および半導体デバイスの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】成膜室内に、遷移金属およびケイ素を含有する材料からなるターゲットとシールドを備えた成膜装置の立ち上げ方法およびマスクブランクの製造方法を提供する。【解決手段】この成膜装置の立ち上げ方法は、成膜室内に貴ガスおよび反応性ガスを導入し、反応性スパッタリングによってシールドの表面上に遷移金属、ケイ素および反応性ガス由来の元素を含有する材料からなり、ナノインデンテーション法によって導き出される押込み硬さが5000MPa以上である下層膜を形成する工程と、成膜室内に貴ガスおよび反応性ガスを導入し、反応性スパッタリングによってシールドの下層膜上に遷移金属、ケイ素および反応性ガス由来の元素を含有する材料からなり、ナノインデンテーション法によって導き出される押込み硬さが5000MPa未満である上層膜を形成する工程とを有することを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、主にマスクブランクを製造するのに用いられる成膜装置の立ち上げ方法に関するものである。また、本発明は、上記の立ち上げ方法で立ち上げられた成膜装置を用いたマスクブランクの製造方法に関するものである。そして、そのマスクブランクを用いて製造された位相シフトマスクの製造方法、およびその位相シフトマスクを用いた半導体デバイスの製造方法に関するものである。
一般に、半導体デバイスの製造工程では、フォトリソグラフィ法を用いて微細パターンの形成が行われている。また、この微細パターンの形成には、通常何枚もの転写用マスクが使用される。半導体デバイスのパターンを微細化するに当たっては、転写用マスクに形成されるマスクパターンの微細化に加え、フォトリソグラフィで使用される露光光源の波長の短波長化が必要となる。半導体デバイスの製造の際に用いられる露光光源は、近年ではKrFエキシマレーザー(波長248nm)から、ArFエキシマレーザー(波長193nm)へと短波長化が進んでいる。
転写用マスクを製造するための原版となるマスクブランクは、基板上に転写パターンを形成するための薄膜を少なくとも備える。マスクブランクの薄膜は、スパッタリング法を用いた成膜装置で成膜されるのが一般的である。特許文献1には、マスクブランクの製造に用いられるDCマグネトロンスパッタ装置が開示されている。このスパッタ装置は、真空槽の内部にスパッタリングターゲット及び基板ホルダが配置されている。また、このスパッタ装置は、真空槽の内壁側に取り外し可能な膜付着防止部品であるシールドが設けられている。
スパッタ装置(成膜装置)のシールドは、特許文献2に開示されているように、複数の部材が組み合わさった構成を有しており、このシールドによって真空チャンバーの内壁にスパッタ粒子が付着することを防止している。また、複数のシールドの部材の接続部分は、ラビリンス形状の通気路が設けられている。この通気路があることで、外部から処理チャンバー内に流入する不活性ガス(アルゴン等)や反応性ガス(酸素、窒素等)がシールドに囲まれた内部空間に入り込んでいくことが可能となっている。
特開2005−200682号公報 国際公開2010/061603号公報
上記のようなスパッタリング法による成膜装置で基板上に薄膜を形成する工程(以下、薄膜形成工程という。)を繰り返していくと、シールドの内壁にターゲットからのスパッタ粒子が反応性ガスを取り込みつつ堆積していく。すなわち、シールドの内壁に透光性基板に形成される薄膜と同じ構成元素の付着膜が形成されていき、その付着膜の厚みは徐々に厚くなっていく。付着膜は、それ自身が比較的強い内部応力を有している。付着膜の厚みが厚くなっていくに従い、内部応力によって付着膜に掛かる力(引張力または圧縮力)が大きくなっていく。付着膜がその力に抗しきれなくなると、付着膜に割れが発生してシールドから脱離する。この脱離した付着膜の一部は、基板上に形成途上の薄膜に付着して欠陥の発生要因となる。このため、シールドは、所定の成膜サイクルに到達したときに交換するのが一般的である。
成膜装置のシールドは、帯電しにくい材料である金属材料で形成されるのが一般的であり、アルミニウムなどが適用されることが多い。また、交換した直後の新品のシールドや、新しい成膜装置を導入した直後の新品のシールドは、表面がその金属材料が露出した状態である。そのようなシールドの表面状態のまま、薄膜形成工程を行うと、一部のスパッタ粒子等がシールドの表面に衝突することによってシールドの金属原子が弾き出され、基板上に形成されるパターン形成用薄膜を構成する材料に取り込まれてしまう恐れがある。このため、薄膜形成工程を行う前に、スパッタリング法でターゲットから粒子を飛び出させて新品のシールドの内部空間側の表面(以下、シールド内壁面という。)に付着させることで堆積膜を形成する工程(エージング工程)が行われる。
このエージング工程は、シールド内壁面をコーティングする目的のほかに、ターゲットの表面状態を薄膜形成工程時の表面状態に近づける目的も兼ねて行われることが多い。この場合、最初のエージング工程では、成膜室内にスパッタ効率の高い貴ガス(アルゴン等)のみを導入し、その貴ガスのプラズマをターゲットの表面に衝突させてターゲットの表面を構成する各原子を弾き飛ばすことでターゲットの表面をクリーニングする。このとき、ターゲットの表面から飛び出した各原子の多くは、シールド内壁面に堆積して最下層の堆積膜を形成する。
そして、次のエージング工程で薄膜形成工程時と概ね同じ成膜条件(成膜室内に流入する貴ガスおよび反応性ガスの各流量、内部圧力、ターゲットに印加する電圧等)で反応性スパッタリングを行う。このエージング工程によって、ターゲットの表面状態を薄膜形成工程時と概ね同じ状態にしつつ、シールド内壁面の最下層の堆積膜上に薄膜形成工程で基板上に形成されるパターン形成用薄膜と概ね同じ組成の堆積膜が形成される。
以上のようなエージング工程による成膜装置の立ち上げを行った上で、1枚の基板を基板ステージ上に設置し、その基板上にパターン形成用薄膜を反応性スパッタリング法によって形成する薄膜形成工程を繰り返し行っても、最初に基板上に形成されたパターン形成用薄膜とそれ以降に基板上に形成されたパターン形成用薄膜との間で組成等の物性や光学特性のバラつきを小さくすることができる。
従来、エージング工程後の成膜装置で薄膜形成工程を開始した場合、パターン形成用薄膜を備える基板の製造枚数の増加にともなって、そのパターン形成用薄膜の欠陥発生比率が増加していく傾向がある。このため、製造枚数が所定数になる毎にシールドを交換し、エージング工程を行って、成膜装置を立ち上げることが行われてきた。しかし、この薄膜形成工程で成膜装置が形成するパターン形成用薄膜の成膜条件によっては、少数の製造枚数の段階で、パターン形成用薄膜の欠陥発生比率が高くなってしまうということが判明した。この問題は、単にシールドの交換時期を早めるだけでは解決することができない。特に、詳細は後述するが、ナノインデンテーション法によって導き出される押込み硬さが5000MPa未満であるパターン形成用薄膜を成膜装置で形成する際に、この問題が顕著となることが判明した。
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたものであり、成膜装置の立ち上げ方法において、その立ち上げ方法で立ち上げられた成膜装置を用いてスパッタリング法で基板上に、遷移金属、ケイ素及び反応性ガス由来の元素を含有する材料からなり、ナノインデンテーション法によって導き出される押込み硬さが5000MPa未満であるパターン形成用薄膜を形成したときであっても、そのパターン形成用薄膜における欠陥の検出数を大幅に低減することを可能とする成膜装置の立ち上げ方法を提供することを目的としている。
また、本発明は、成膜装置を用いてスパッタリング法で基板上に、遷移金属、ケイ素及び反応性ガス由来の元素を含有する材料からなり、ナノインデンテーション法によって導き出される押込み硬さが5000MPa未満であるパターン形成用薄膜を形成してマスクブランクを製造する場合であっても、そのパターン形成用薄膜における欠陥の検出数が大幅に低減されたマスクブランクの製造方法を提供することを目的としている。さらに、このようなマスクブランクを用いた転写用マスクを製造する方法を提供することを目的としている。そして、本発明は、このような転写用マスクを用いた半導体デバイスの製造方法を提供することを目的としている。
前記の課題を達成するため、本発明は以下の構成を有する。
(構成1)
成膜室内に、遷移金属およびケイ素を含有する材料からなるターゲットとシールドを備えた成膜装置の立ち上げ方法であって、
前記成膜室内に貴ガスおよび反応性ガスを導入し、反応性スパッタリングによって前記シールドの表面上に前記遷移金属、ケイ素および前記反応性ガス由来の元素を含有する材料からなり、ナノインデンテーション法によって導き出される押込み硬さが5000MPa以上である下層膜を形成する工程と、
前記成膜室内に貴ガスおよび反応性ガスを導入し、反応性スパッタリングによって前記シールドの前記下層膜上に前記遷移金属、ケイ素および前記反応性ガス由来の元素を含有する材料からなり、ナノインデンテーション法によって導き出される押込み硬さが5000MPa未満である上層膜を形成する工程とを有する
ことを特徴とする成膜装置の立ち上げ方法。
(構成2)
前記貴ガスは、アルゴン、クリプトンおよびキセノンから選ばれる1以上のガスとヘリウムとの混合ガスであることを特徴とする構成1記載の成膜装置の立ち上げ方法。
(構成3)
前記下層膜を形成する工程における前記成膜室内に導入する前記貴ガス中のヘリウムガスの単位時間当たりの流量を前記貴ガスの単位時間当たりの合計流量で除した比率は、前記上層膜を形成する工程における前記成膜室内に導入する前記貴ガス中のヘリウムガスの単位時間当たりの流量を前記貴ガスの単位時間当たりの合計流量で除した比率よりも大きいことを特徴とする構成2記載の成膜装置の立ち上げ方法。
(構成4)
前記下層膜を形成する工程および前記上層膜を形成する工程における前記反応性ガスは、窒素を含有するガスを少なくとも含むことを特徴とする構成1から3のいずれかに記載の成膜装置の立ち上げ方法。
(構成5)
前記ターゲットにおける前記遷移金属およびケイ素の合計含有量で前記遷移金属の含有量を除した比率は、34%未満であることを特徴とする構成1から4のいずれかに記載の成膜装置の立ち上げ方法。
(構成6)
構成1から5のいずれかに記載の成膜装置の立ち上げ方法で立ち上げられた後の成膜装置を用いるマスクブランクの製造方法であって、
前記マスクブランクは、基板上に少なくともパターン形成用薄膜を備え、
前記立ち上げられた後の成膜装置内に設けられている基板ステージに前記基板を設置し、前記成膜室内に貴ガスおよび反応性ガスを導入し、反応性スパッタリングによって前記基板の主表面上に前記遷移金属、ケイ素および前記反応性ガス由来の元素を含有する材料からなり、ナノインデンテーション法によって導き出された押込み硬さが5000MPa未満であるパターン形成用薄膜を形成する工程を有する
ことを特徴とするマスクブランクの製造方法。
(構成7)
成膜室内に、遷移金属およびケイ素を含有する材料からなるターゲットとシールドと基板ステージを備えた成膜装置を用いるマスクブランクの製造方法であって、
前記マスクブランクは、基板上に少なくともパターン形成用薄膜を備え、
前記成膜室内に貴ガスおよび反応性ガスを導入し、反応性スパッタリングによって前記シールドの表面上に前記遷移金属、ケイ素および前記反応性ガス由来の元素を含有する材料からなり、ナノインデンテーション法によって導き出される押込み硬さが5000MPa以上である下層膜を形成する工程と、
前記成膜室内の基板ステージ上に前記基板を設置し、前記成膜室内に貴ガスおよび反応性ガスを導入し、反応性スパッタリングによって前記基板の主表面上に、前記遷移金属、ケイ素および前記反応性ガス由来の元素を含有する材料からなり、ナノインデンテーション法によって導き出された押込み硬さが5000MPa未満であるパターン形成用薄膜を形成する工程とを有する
ことを特徴とするマスクブランクの製造方法。
(構成8)
前記パターン形成用薄膜を形成する工程時、前記パターン形成用薄膜を構成する材料と同じ材料からなる堆積膜が前記シールドの下層膜上にも形成されることを特徴とする構成7記載のマスクブランクの製造方法。
(構成9)
前記貴ガスは、アルゴン、クリプトンおよびキセノンから選ばれる1以上のガスとヘリウムとの混合ガスであることを特徴とする構成7または8に記載のマスクブランクの製造方法。
(構成10)
前記下層膜を形成する工程における前記成膜室内に導入する前記貴ガス中のヘリウムガスの単位時間当たりの流量を前記貴ガスの単位時間当たりの合計流量で除した比率は、前記パターン形成用薄膜を形成する工程における前記成膜室内に導入する前記貴ガス中のヘリウムガスの単位時間当たりの流量を前記貴ガスの単位時間当たりの合計流量で除した比率よりも大きいことを特徴とする構成9記載のマスクブランクの製造方法。
(構成11)
前記下層膜を形成する工程および前記パターン形成用薄膜を形成する工程における前記反応性ガスは、窒素を含有するガスを少なくとも含むことを特徴とする構成7から10のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法。
(構成12)
前記ターゲットにおける前記遷移金属およびケイ素の合計含有量で前記遷移金属の含有量を除した比率は、34%未満であることを特徴とする構成7から11のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法。
(構成13)
構成6から12のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法によって製造されたマスクブランクを用い、ドライエッチングにより前記パターン形成用薄膜に転写パターンを形成する工程を有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
(構成14)
構成13記載の転写用マスクの製造方法により製造された転写用マスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を有することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
本発明の成膜装置の立ち上げ方法によれば、その立ち上げ方法で立ち上げられた成膜装置を用いてスパッタリング法で基板上に、遷移金属、ケイ素及び反応性ガス由来の元素を含有する材料からなり、ナノインデンテーション法によって導き出される押込み硬さが5000MPa未満であるパターン形成用薄膜を形成したときであっても、そのパターン形成用薄膜における欠陥の検出数を大幅に低減することができる。また、本発明のマスクブランクの製造方法によれば、成膜装置を用いてスパッタリング法で基板上に、遷移金属、ケイ素及び反応性ガス由来の元素を含有する材料からなり、ナノインデンテーション法によって導き出される押込み硬さが5000MPa未満であるパターン形成用薄膜を形成してマスクブランクを製造する場合であっても、そのパターン形成用薄膜における欠陥の検出数を大幅に低減することができる。
本発明の実施形態における成膜装置の一例を示す模式図である。 実施例におけるスパッタリング時の窒素ガス流量と形成された薄膜の押込み硬さとの関係を示すグラフである。 実施例におけるスパッタリング時の窒素ガス流量と形成された薄膜のヤング率との関係を示すグラフである。 実施例におけるスパッタリング時のヘリウムガス流量と形成された薄膜の押込み硬さとの関係を示すグラフである。 実施例におけるスパッタリング時のヘリウムガス流量と形成された薄膜のヤング率との関係を示すグラフである。
以下、本発明の各実施形態について説明するが、まず本発明に至った経緯について説明する。マスクブランクの製造工程において、成膜装置を用いた反応性スパッタリングによって、基板上に遷移金属、ケイ素および窒素等の反応性ガス由来の元素を含有するパターン形成用薄膜を形成することが行われている。マスクブランクのパターン形成用薄膜は、そのマスクブランクから製造する転写用マスクに求められる特性の条件によって、要求される光学特性やエッチング特性等の諸特性の条件が変わる。そして、そのパターン形成用薄膜に対して求められる諸特性によって、成膜装置で基板上にパターン形成用薄膜を形成するときの反応性スパッタリングの条件(成膜条件)も変わる。
一方、そのマスクブランクから製造される転写用マスクに求められる精度等のグレードによって、そのマスクブランクのパターン形成用薄膜に許容される欠陥の大きさや数が異なる。パターン形成用薄膜に欠陥が発生する要因は多岐にわたる。成膜装置でその薄膜を反応性スパッタリングで成膜しているときに、シールド内壁面から付着膜が脱落してその薄膜に付着することで欠陥となってしまう場合も多い。スパッタリング法によって、遷移金属、ケイ素および窒素等の反応性ガス由来の元素を含有する材料(以下、単に遷移金属シリサイド化合物材料ともいう。)で薄膜を形成する場合、シールド内壁面からの付着膜の脱落に起因する欠陥が発生しやすい傾向がある。
そこで、遷移金属シリサイド化合物材料の薄膜を反応性スパッタリングで形成するときの成膜条件と、その形成された薄膜で検出される欠陥数との傾向の検証を試みた。しかし、反応性スパッタリングで遷移金属シリサイド化合物材料の薄膜を形成するときの成膜条件の変動パラメータは、多岐にわたる。成膜ガスに関する変動パラメータだけでも、成膜室内に導入する貴ガスの種類、数および各導入流量、反応性ガスの種類、数および各導入流量、成膜室内のガス圧などが少なくとも挙げることができる。これに加え、ターゲット(カソード)に印加する電圧や電流の変動パラメータも挙げられる。さらに、遷移金属シリサイド化合物材料の薄膜を反応性スパッタリングで形成する場合、遷移金属とケイ素の混合ターゲットが用いられるため、ターゲット材料の遷移金属とケイ素の混合比率の変動パラメータも挙げられる。このため、欠陥の発生数が多い傾向がある遷移金属シリサイド化合物材料の各薄膜を形成したときの個々の成膜条件を収集することはできても、その成膜条件のみをもって全体傾向を把握することは困難であった。
そこで、反応性スパッタリングで基板上に形成された遷移金属シリサイド化合物材料の薄膜の物性値を測定し、薄膜の物性値とその薄膜に検出された欠陥数との間に相関性があるか検証を行った。その結果、薄膜に対してナノインデンテーション法を行って導出した押込み硬さ(以下、単に押込み硬さともいう。)と、その薄膜に検出された欠陥数との間で明らかな相関があることを突き止めた。具体的には、その薄膜の押込み硬さが5000MPa未満である場合、その薄膜に検出される欠陥数が大きく増加する傾向があることが判明した。基板上に形成された薄膜の押込み硬さは、その薄膜を反応性スパッタリングで形成したときにシールド内壁面に付着した膜の押込み硬さとほぼ同じといえる。
成膜装置で反応性スパッタリングが行われたときのシールド内壁面に付着した膜の押込み硬さと、基板上に形成された薄膜の欠陥数との間で相関性があるのは、以下の欠陥発生のメカニズムに起因するものと推測される。一般に、シールドの材料はアルミニウムなどの金属材料が用いられる。成膜装置で反応性スパッタリングが行われるときは、シールドに囲まれた内部領域でプラズマが発生している。このとき、シールドの温度も上昇し、それに伴ってシールドが熱膨張を起こす。シールド内壁面に付着している遷移金属シリサイド化合物材料の付着膜の温度も上昇して熱膨張を起こす。一方、成膜室内でプラズマが発生していないときは、シールドの温度は低下する。遷移金属シリサイド化合物材料の熱膨張率は、アルミニウム等の金属材料の熱膨張率に比べて大幅に小さい。このため、シールドの温度が上昇および下降するときの、シールドと付着膜との伸縮差に比較的大きな差が生じる。他方、遷移金属シリサイド化合物材料の薄膜は、金属材料の薄膜に比べて展性に乏しい傾向がある。
これらのことが要因となり、シールドの温度が上昇および下降したとき、シールド内壁面に付着している遷移金属シリサイド化合物材料の付着膜に対してシールドとの間の伸縮差に起因する引張力および圧縮力が働き、それらの力に抗しきれず付着膜が脆性破壊を起こし、発塵する。また、それらの力にシールドと付着膜との間の付着力が抗しきれず、シールドから付着膜の一部が脱落する。この付着膜から発塵した物質や一部の付着膜の脱落物が、基板ステージにセットされた基板の表面や基板上に形成された薄膜の表面に付着し、それらが薄膜の欠陥となる。
成膜装置で基板上に形成する薄膜が5000MPa以上の押込み硬さである場合、従来のエージング工程を適用しても、シールド内壁面に付着する付着膜の押込み硬さが5000MPa以上となるため、付着膜からの発塵や付着膜の脱落の発生頻度を低く抑えることができる。しかし、成膜装置で基板上に形成する薄膜が5000MPa未満の押込み硬さである場合、従来のエージング工程を適用すると、シールド内壁面に付着する付着膜の押込み硬さも5000MPa未満となってしまい、付着膜からの発塵や付着膜の脱落が多く発生することが避け難い。
[第1実施形態]
これらのことを考慮した結果、成膜装置でスパッタリング法によって押込み硬さが5000MPa未満の薄膜を基板上に形成する場合、エージング工程を以下の2つの工程に分けて行う成膜装置の立ち上げ方法にすればよいという結論に至った。すなわち、本発明の第1実施形態は、成膜室内に、遷移金属およびケイ素を含有する材料からなるターゲットとシールドを備えた成膜装置の立ち上げ方法であって、成膜室内に貴ガスおよび反応性ガスを導入し、反応性スパッタリングによってシールド内壁面に遷移金属、ケイ素および反応性ガス由来の元素を含有する材料からなり、ナノインデンテーション法によって導き出される押込み硬さが5000MPa以上である下層膜を形成する工程と、成膜室内に貴ガスおよび反応性ガスを導入し、反応性スパッタリングによってシールド内壁面に形成された下層膜上に遷移金属、ケイ素および反応性ガス由来の元素を含有する材料からなり、ナノインデンテーション法によって導き出される押込み硬さが5000MPa未満である上層膜を形成する工程とを有することを特徴とするものである。
シールド内壁面上に、先に押込み硬さが5000MPa以上の下層膜を付着させることで、温度変化に伴うシールドとの間の伸縮差によって下層膜に掛かる引張力および圧縮力に対する耐性を高めることができ、下層膜が脆性破壊を起こすことや脱落することは抑制される。また、その下層膜の上に押込み硬さが5000MPa未満の上層膜が付着しても、シールドとの間の伸縮差によって生じる引張力および圧縮力を下層膜が直接受けていることによって、上層膜に掛かる引張力および圧縮力が軽減される。下層膜と上層膜は、同じ遷移金属およびケイ素を含有する材料で形成されている。このため、下層膜と上層膜との界面では化学的に結合した状態になっており、下層膜と上層膜との間の付着力は上層膜が直接シールド内壁面に付着した場合よりも大幅に高い。これらのことが複合的に作用し合うことで、上層膜が脆性破壊を起こすことや脱落することを大幅に抑制できる。
以下、上述した本発明の詳細な構成を説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る成膜装置の模式図である。この成膜装置1は、基板100の主表面上にパターン形成用薄膜を反応性スパッタリングによって形成するためのものである。成膜装置1は、成膜室2、基板ステージ3、カソード4、ガス流入部5、ガス排出部6、下側シールド71および上側シールド72(以下、下側シールド71と上側シールド72とを合わせてシールド7ともいう。)を備えている。基板100が設置される基板ステージ3は、その回転軸31が成膜室2の下方壁側を貫通した状態で設けられている。カソード4は、成膜室2の上方壁を貫通した状態で設けられている。カソード4には、バッキングプレート8を介してターゲット9が取り付けられている。また、成膜装置1によるスパッタリングが行われるときに成膜室2の内壁面にターゲット9から飛び出したスパッタ粒子が付着することを抑制するために、シールド7が設けられている。
ガス流入部5から成膜室2内に成膜ガスである貴ガスと反応性ガスの混合ガスが導入される。そして、成膜室2内の成膜ガスはガス排出部6から排出される。また、ガス排出部6は、成膜室2を所定の真空度に真空引きするときにも用いられる。なお、ガス流入部5は、複数の流入部を成膜室2に設けた構成としてもよい。たとえば、ガス流入部5を貴ガス流入用の流入部と反応性ガス流入用の流入部の2つを成膜室2に設けてもよいし、ガスの種類ごとに流入部をそれぞれ成膜室2に設けてもよい。
下側シールド71と上側シールド72の各先端部(連結部)は、その断面が凹形状部を有している。下側シールド71と上側シールド72は、互いの凹形状部の間で空間を残した状態で嵌め込まれて成膜室2内に設置される。このような空間を残した構造をラビリンス構造という。成膜室2の下側シールド71および上側シールド72の各内壁面に囲まれた内側領域(以下、シールド内部領域という。)と成膜室2の下側シールド71および上側シールド72の外側領域(以下、シールド外部領域という。)との間での成膜ガスは、ラビリンス構造を経由して流入および流出する。シールド7は、その材料を構成する元素の中で金属が最も多い材料で形成されていることが好ましく、金属材料で形成されているとより好ましい。シールド7は、アルミニウム、鉄、銅などで形成されているとさらに好ましい。
シールド7の内壁面は、サンドブラスト処理等を行うことで、所定の表面粗さ(微小な凹凸)を有することが好ましい。シールド7の内壁面が所定の表面粗さを有することにより、その内壁面に直接付着する下層膜(以降で述べるシールド7と下層膜の間に最下層膜が形成される構成の場合は、最下層膜。)のシールド7に対する付着力がアンカー効果で向上することが期待できる。この所定の表面粗さは、例えば、算術平均粗さRaで5μm以上であることが好ましく、6μm以上であるとより好ましい。
カソード4は、DC電源方式およびRF電源方式のいずれも適用可能である。すなわち、第1実施形態の成膜装置の立ち上げ方法は、DCスパッタリング方式の成膜装置、RFスパッタリング方式の成膜装置のいずれにも適用可能である。エージング(スパッタリング)時にシールド内部領域でプラズマが存在してシールドが比較的大きな熱伸縮を起こすようなスパッタリング方式の成膜装置であれば、第1実施形態の成膜装置の立ち上げ方法を適用することによる効果が得られる。
第1実施形態の成膜装置の立ち上げ方法は、立ち上げ後の成膜装置1を用いて基板100の主表面上に形成されるパターン形成用薄膜が遷移金属、ケイ素および反応性ガス由来の元素を含有する材料からなり、かつ押込み硬さが5000MPa未満である場合に適用すると、特に効果がある。成膜装置1の立ち上げにおけるエージング工程では、パターン形成用薄膜を形成するときのほぼ同じ成膜条件で反応性スパッタリングが行うことが求められるためである。この場合、エージング工程時にシールド内壁面に付着する膜がシールドの熱伸縮によって脆性破壊による発塵や膜剥がれ(シールドからの脱落)を起こしやすい。
第1実施形態の成膜装置の立ち上げ方法は、成膜室2内に貴ガスおよび反応性ガスを導入し、遷移金属およびケイ素を含有する材料からなるターゲットに電圧を印加し、反応性スパッタリングを起こさせるエージング工程をシールド7の内壁面上に下層膜を形成する工程と上層膜を形成する工程の少なくとも2段階行うことに特徴がある。シールド内壁面上に先に形成される下層膜は、遷移金属、ケイ素および反応性ガス由来の材料からなり、かつ押込み硬さが5000MPa以上である。この下層膜の押込み硬さは、5500MPa以上であるとより好ましく、6000MPa以上であるとさらに好ましい。押込み硬さが高い下層膜であるほど、シールドの熱伸縮に対する耐性が高まるためである。
なお、本明細書中における押込み硬さとは、ISO14577で制定されているナノインデンテーション法の原理を用いて測定される硬さである。より具体的には、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)でダイヤモンド圧子を備える特殊なプローブを薄膜の表面から押し込む。このダイヤモンド圧子を押し込む前後の深さ方向の変位を光学変位検出器で測定し、荷重の変化を測定する。さらに、ダイヤモンド圧子を外した後の薄膜の圧痕のAFM像を取得し、これらの情報を用いて、押込み硬さを算出する。
この下層膜を形成する反応性スパッタリングの成膜条件は、事前にその立ち上げを行う成膜装置で実験を行って見出されたものが用いられる。その実験は、例えば、その立ち上げを行う成膜装置で種々の成膜条件で各基板上に薄膜をそれぞれ形成し、各薄膜に対して押込み硬さを測定し、成膜条件と薄膜の押込み硬さの関係を取得し、下層膜を形成する工程の成膜条件を選定する。
一方、下層膜上に形成される上層膜は、遷移金属、ケイ素および反応性ガス由来の材料からなり、かつ押込み硬さが5000MPa未満である。この上層膜の押込み硬さは、4500MPa以下であるとより好ましく、4000MPa以下であるとさらに好ましい。押込み硬さが低い上層膜であるほど、本発明によって得られる効果が大きいためである。上層膜を形成する工程は、この成膜装置が立ち上げられた後に、基板上にパターン形成用薄膜を形成するときの成膜条件とほぼ同じ成膜条件で反応性スパッタリングが行われる。一般に、エージング工程は、ターゲットの表面状態をその成膜装置が立ち上げられた後に、反応性スパッタリングで基板上にパターン形成用薄膜を形成しているときのターゲットの表面状態に近づけることを主な目的として行われる。下層膜を形成する工程が終わった段階のターゲットの表面状態は、その基板上にパターン形成用薄膜を形成しているときのターゲットの表面状態には近づいていない。
上層膜を形成する工程を行うことで、ターゲットの表面状態をその基板上にパターン形成用薄膜を形成しているときのターゲットの表面状態に近づけつつ、下層膜との積層構造でシールドの熱伸縮に伴う引張力および圧縮力に対する耐性を高めることができる。下層膜と上層膜はともに同じ遷移金属とケイ素を含有する材料からなるターゲットから飛び出したスパッタ粒子で形成されるため、下層膜と上層膜はともに同じ遷移金属とケイ素を含有する材料で形成される。ターゲットの表面状態の観点から、下層膜を形成するときの反応性スパッタリングで用いられる貴ガスと反応性ガスは、パターン形成用薄膜を形成するときの反応性スパッタリングで用いられる貴ガスと反応性ガスと同じものが使用される。また、反応性スパッタリングで下層膜を形成するときの貴ガスと反応性ガスの単位時間当たりの流量の比は、反応性スパッタリングでパターン形成用薄膜を形成するときの貴ガスと反応性ガスの単位時間当たりの流量の比と同じであると好ましい。成膜室内のガス圧、ターゲットに印加される電圧などの成膜条件も、反応性スパッタリングで下層膜を形成するときとパターン形成用薄膜を形成するときで同じであると好ましい。
下層膜と上層膜を形成するときのターゲットの表面状態の差を小さくする観点と、下層膜と上層膜との間の結合力を高める観点から、下層膜を形成するときの反応性スパッタリングで用いられる少なくとも1種類の反応性ガスが、上層膜を形成するときの反応性スパッタリングで用いられる少なくとも1種類の反応性ガスと同じ種類であることが好ましい。さらに、下層膜を形成するときの反応性スパッタリングで用いられる全ての反応性ガスが、上層膜を形成するときの反応性スパッタリングで用いられる全ての反応性ガスと同じ種類であるとより好ましい。
上層膜および下層膜を形成するときに用いられる貴ガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトンおよびキセノンから選ばれる1以上のガスである。特に、反応性スパッタリング時におけるターゲットからのスパッタ効率の点を考慮すると、上層膜および下層膜を形成するときに用いられる貴ガスにアルゴン、クリプトンおよびキセノンから選ばれる1以上のガスが含まれていることが好ましい。遷移金属、ケイ素および反応性ガス由来の元素を含有するパターン形成用薄膜を反応性スパッタリングで形成した場合、その薄膜は比較的高い膜応力を有する傾向がある。この薄膜の膜応力を低減するために、反応性スパッタリング中に薄膜内にヘリウムガスを取り込ませるようにするとよい。そのような薄膜が形成された基板をアニールすることで薄膜中のヘリウムガスが大気中に離脱して薄膜中に微小な空間ができる。アニールを行っている間にその微小な空間に薄膜中の他の元素が移動してくることで薄膜の応力が低減される。
薄膜を形成するときのスパッタ効率の観点と薄膜の応力の低減の観点を考慮すると、基板上にパターン形成用薄膜を形成するときに用いられる貴ガスは、アルゴン、クリプトンおよびキセノンから選ばれる1以上のガスとヘリウムとの混合ガスであることが好ましい。また、製造コストの観点を考慮すると、上記の貴ガスは、アルゴンとヘリウムの混合ガスであるとより好ましい。このパターン形成用薄膜の膜応力に関する事項については、エージング工程でシールド内壁面に付着する下層膜および上層膜にも同様のことがいえる。よって、下層膜および上層膜を反応性スパッタリングで形成するときに用いられる貴ガスについても、アルゴン、クリプトンおよびキセノンから選ばれる1以上のガスとヘリウムとの混合ガスであることが好ましい。また、パターン形成用薄膜と同様、上記の貴ガスは、アルゴンとヘリウムの混合ガスであるとより好ましい。
一方、後述のように、成膜室2内に流入させる貴ガスをアルゴンガスとヘリウムガスの混合ガスとし、反応性ガスを窒素ガスとし、成膜条件を変えて基板上に薄膜を形成する反応性スパッタリングを行う実験を行った。具体的には、アルゴンガスと窒素ガスの単位時間当たりの流量を変えずに、ヘリウムガスの単位時間当たりの流量を変えることを行った。そして、形成された各薄膜の押込み硬さを測定した。その結果、ヘリウムの単位時間当たりの流量を多くするにしたがって、その成膜条件で形成された薄膜の押込み硬さも大きくなる傾向があることが判明した。
以上の結果を考慮すると、下層膜を形成する工程における成膜室2内に導入する貴ガス中のヘリウムガスの単位時間当たりの流量を貴ガスの単位時間当たりの合計流量で除した比率は、上層膜を形成する工程における成膜室2内に導入する貴ガス中のヘリウムガスの単位時間当たりの流量を貴ガスの単位時間当たりの合計流量の合計値で除した比率よりも大きくすると好ましい。このようにすることで、下層膜と上層膜を構成する元素を同じにしつつ、下層膜の押込み硬さを5000MPa以上にし、かつ上層膜の押込み硬さを5000MPa未満にすることが可能となる。
上層膜および下層膜を形成するときに用いられる反応性ガスには、窒素、酸素、炭素および水素の少なくともいずれかを含有するガスが適用可能である。一方、成膜装置1を用いて基板上に形成されるパターン形成用薄膜は、反応性ガス由来の元素として窒素を含有させることが多い。薄膜中の窒素含有量が増加するに従い、屈折率nが上がりつつ消衰係数kが下がる傾向がある。このような光学特性の薄膜は、ハーフトーン型位相シフト膜に適している。他方、遷移金属シリサイド系材料のパターン形成用薄膜を備えるマスクブランクから転写用マスクを製造する際、薄膜パターンの黒欠陥を修正するときに非励起状態のフッ素系ガス(XeF等)を供給しつつ、電子線を照射して修正する(EB欠陥修正)ことが行われる。遷移金属シリサイド系材料の薄膜は、酸素や窒素の含有量が少ないと、電子線が照射されていない状態でXeFに晒された場合でもエッチングされやすい。この点を考慮し、遷移金属シリサイド系材料の遮光膜の場合においても、一定以上の含有量で窒素をさせることが行われている。
以上の事情から、遷移金属シリサイド系材料のパターン形成用薄膜を形成するときの反応性スパッタリングでは、反応性ガスに窒素を含有するガスが用いられることが多い。このため、成膜装置1のエージング工程である下層膜を形成する工程および上層膜を形成する工程における前記反応性ガスは、窒素を含有するガスを少なくとも含むことが好ましいといえる。このような反応性ガスとしては、例えば、N、NO、NO、NH、HNO等が挙げられる。
ターゲット9は、遷移金属とケイ素を含有する材料で形成される。遷移金属とケイ素に反応性ガス由来の元素を含有させた材料は、金属系材料に比べて展性に乏しいため脆性破壊を起こしやすく、第1実施形態の成膜装置の立ち上げ方法によって得られる効果が大きいためである。また、遷移金属シリサイド系材料の薄膜は、遮光膜やハーフトーン型位相シフト膜の材料として好適であるためでもある。パターン形成用薄膜で用いられる遷移金属シリサイド系材料は、遷移金属元素としてモリブデン(Mo)がこれまで広く用いられてきているが、これに限られない。この遷移金属元素としては、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ハフニウム(Hf)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、ジルコニウム(Zr)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、亜鉛(Zn)、ニオブ(Nb)およびパラジウム(Pd)のうちいずれか1つ以上の金属元素が挙げられる。
ターゲット9を用いて形成されたパターン形成用薄膜の遷移金属(M)およびケイ素(Si)の合計含有量[原子%]で前記遷移金属(M)の含有量[原子%]を除した比率[%](以下、この比率を「M/[M+Si]比率」という。)は、そのターゲット9のM/[M+Si]比率に近い数値となる。遷移金属シリサイド系材料の薄膜は、M/[M+Si]比率が化学量論的に安定になる比率(モリブデンシリサイドの場合、MoSiであり、他の遷移金属シリサイドも同様の傾向を示すものが多い。)の近辺である約34%までの範囲では、M/[M+Si]比率が大きくなるにしたがってArF露光光に対する光学濃度が上昇していく傾向がある。他方、そのM/[M+Si]比率が約34%からさらに大きくなっていくに従い、その光学濃度が低下していく傾向がある。
また、遷移金属シリサイド系材料の薄膜は、M/[M+Si]比率が大きくなるにしたがって、ArF露光光に対する耐光性が低下していく。これらのことを考慮すると、ターゲット9におけるM/[M+Si]比率は、34%未満であることが好ましく、25%以下であるとより好ましく、20%以下であるとさらに好ましい。一方、ターゲット9の導電性やパターン形成用薄膜の導電性のこと等を考慮すると、ターゲット9のM/[M+Si]比率は、1%以上であることが好ましく、2%以上であるとより好ましい。
第1実施形態の成膜装置の立ち上げ方法には、シールド内壁面上に下層膜を形成する工程の前に、最下層膜を形成する工程を行う態様も含まれる。すなわち、本発明の下層膜は、シールド7の表面に直接形成される場合に加え、シールド7の表面上に最下層膜を介して形成される場合も含まれる。具体的には、最下層膜を形成する工程は、成膜室2内に貴ガスのみを導入し、スパッタリングによってシールド7の表面上(シールド内壁面上)に、実質的に遷移金属およびケイ素からなる材料の最下層膜を形成する。なお、この最下層膜を形成する実質的に遷移金属およびケイ素からなる材料とは、遷移金属およびケイ素のみからなる材料のほか、スパッタリング時に最下層膜に取り込まれるのが不可避である元素(貴ガスのほか、水等のコンタミの起因となる元素。)が微量に混入した材料が含まれるものをいう。
成膜装置1のシールド7を交換するときに、成膜室2内は大気中に開放された状態となる。ターゲット9も大気中に開放された状態となるため、ターゲット9の表面に酸化膜が形成されてしまうことは避け難い。シールド7の交換後に、成膜装置1の立ち上げのためのエージング工程が行われるが、最初に反応性ガスを含む成膜ガスによる反応性スパッタリングで下層膜を形成する工程を行うと、ターゲット9の表面の酸化状態によっては異常放電を起こすことがある。この異常放電が起きるとターゲット9からの発塵やターゲット9の表面状態の悪化が起こってしまう。
この点を考慮すると、エージング工程で下層膜を形成する工程を行う前に、成膜室2内に貴ガスのみを導入してターゲット9に電圧を印加してスパッタリングを起こさせることが好ましい。貴ガスの粒子だけがターゲット9の表面に衝突し、ターゲット9の表面の構成元素を弾き飛ばすことで、ターゲット9の酸化膜を含む表層を除去することができる。また、このターゲット9から飛び出した遷移金属およびケイ素の各粒子は、シールド7の内壁面に付着して最下層を形成する。ターゲット9からはじき出された酸素の多くはシールド7に付着せず、貴ガスとともにガス排出部6から系外に排出される。このため、シールド7の内壁面に付着する最下層膜は、実質的に遷移金属およびケイ素からなる材料で形成されることになる。
シールド内壁面に形成される最下層膜は、反応性ガス由来の元素を含有しない材料である。このような材料からなる最下層膜は、押込み硬さが上層膜と同程度であるが、上層膜に比べてヤング率が大幅に低く弾性変形しやすい。すなわち、最下層膜は、上層膜に比べてシールド7の熱伸縮に対して脆性破壊を起こしにくい。また、最下層膜と下層膜は、ともに同じ遷移金属とケイ素を含有する材料であるため、界面での化学結合力が比較的強い。これらの作用によって、シールド7の内壁面上に、最下層膜、下層膜および上層膜がこの順に堆積した付着膜が形成されても、シールド7の熱伸縮にともなう付着膜の発塵や脱落の発生を低減できる。
この最下層膜を形成する工程は、ターゲット9の表面をターゲットの構成元素のみの状態に近づけることを主目的に行われるため、成膜室2内に導入される貴ガスは、原子量の比較的大きいアルゴン、クリプトン、キセノンいずれか1つのガスあるいはこれらから選ばれる2以上のガスの混合ガスを用いることが好ましい。
この第1実施形態は、上記の成膜装置の立ち上げ方法で立ち上げられた後の成膜装置を用いたマスクブランクの製造方法も提供する。具体的には、基板上に少なくともパターン形成用薄膜を備えるマスクブランクの製造方法であり、上記の成膜装置の立ち上げ方法によって立ち上げられた後の成膜装置1内に設けられている基板ステージ3に基板100を設置し、貴ガスおよび反応性ガスを導入し、反応性スパッタリングによって基板100の主表面上に遷移金属、ケイ素および反応性ガス由来の元素を含有する材料からなり、ナノインデンテーション法によって導き出された押込み硬さが5000MPa未満であるパターン形成用薄膜を形成する工程を有することを特徴としている。
基板100上にパターン形成用薄膜を形成する工程時の成膜条件は、シールド7の内壁面上に上層膜を形成する工程時の成膜条件と概ね同じである。パターン形成用薄膜を形成する工程を行っているときは、上層膜上にもパターン形成用薄膜と概ね同じ構成元素および物性の付着膜が新たに形成されていく。しかし、この新たに形成される付着膜は、上層膜と構成元素および組成が概ね同じであるため、上層膜と付着膜との間の結合力は高い。このため、新たに形成された付着膜は上層膜から脱落しにくい。
このマスクブランクの製造方法を用いて製造されるマスクブランクは、基板100上に、遷移金属、ケイ素および反応性ガス由来の元素を含有する材料からなり、ナノインデンテーション法によって導き出された押込み硬さが5000MPa未満であるパターン形成用薄膜を少なくとも備える。パターン形成用薄膜は、マスクブランクから転写用マスクを製造するときに、エッチングによって転写パターンが形成される薄膜である。パターン形成用薄膜は、最終的に出来上がった転写用マスクにおいて転写パターンを有する薄膜として残存する用途であるもののほか、マスクブランクから転写用マスクを製造する途上で転写パターンを備えるハードマスク膜として一時的に存在する用途であるものも含まれる。パターン形成用薄膜は、例えば、遮光膜、位相シフト膜、ハードマスク膜、エッチングストッパー膜などの用途で使用される。
マスクブランクから製造される転写用マスクがバイナリ型マスクである場合、そのマスクブランクは、基板100上に遮光膜が設けられた構成、あるいはその遮光膜上にハードマスク膜が積層した構成となる。マスクブランクから製造される転写用マスクがハーフトーン型位相シフトマスクである場合、そのマスクブランクは、基板100上に位相シフト膜と遮光膜が設けられた構成、あるいはその遮光膜上にハードマスク膜が積層した構成となる。このほか、基板100と位相シフト膜との間にエッチングストッパー膜を備えた構成のマスクブランクや、位相シフト膜と遮光膜との間にエッチングストッパー膜を備えたマスクブランクも含まれる。
このマスクブランクから製造される転写用マスクが露光装置で使用されるときの露光光は、ArFエキシマレーザーを光源とするArF露光光(波長193nm)が好適であるがこれに限られない。KrF露光光(波長248nm)、i線露光光(波長365nm)が適用される露光装置で使用される転写用マスクを製造するためのマスクブランクにも適用可能である。
パターン形成用薄膜が、バイナリ型マスクにおける遮光パターンを形成するための遮光膜である場合、この遮光膜は、露光光に対する光学濃度(OD)が少なくとも2.0以上であることが求められ、2.5以上であるとより好ましく、2.8以上であるとさらに好ましい。パターン形成用薄膜が、ハーフトーン型位相シフトマスクにおける遮光帯を含むパターンを形成するための遮光膜である場合、この遮光膜は、位相シフト膜との積層構造で露光光に対する光学濃度(OD)が少なくとも2.0以上であることが求められ、2.5以上であるとより好ましく、2.8以上であるとさらに好ましい。
パターン形成用薄膜が、ハーフトーン型位相シフトマスクにおける位相シフトパターンを形成するための位相シフト膜である場合、この位相シフト膜は、露光光に対する透過率が1%以上30%以下の範囲であり、かつこの位相シフト膜を透過するArF露光光に対し、この位相シフト膜の厚さと同じ距離だけ空気中を通過した光との間で生じる位相差が150度以上190度以下の範囲になるように調整されていることが好ましい。
パターン形成用薄膜は、単層構造および2層以上の積層構造のいずれであってもよい。また、単層構造のパターン形成用薄膜および2層以上の積層構造のパターン形成用薄膜の各層は、膜または層の厚さ方向でほぼ同じ組成である構成であっても、層の厚さ方向で組成傾斜した構成であってもよい。ただし、いずれの構成のパターン形成用薄膜の場合であっても、第1実施形態の方法で立ち上げた後の成膜装置1で基板100上に反応性スパッタリングで最初に形成する薄膜は、押込み硬さが5000MPa未満であることが求められる。また、その最初に形成する薄膜が、シールド7の上層膜が形成されたときとほぼ同じ成膜条件で形成するとより好ましい(すなわち、その最初に形成する薄膜は、上層膜と概ね同じ組成となる。)。その最初に形成される薄膜がシールド7の上層膜の上に最初に付着する膜であるためである。
基板100は、露光光に対する透光性を有する透光性基板であることが好ましい。また、基板100は、ガラス材料で形成されることが好ましい。基板100は、合成石英ガラスの他、石英ガラス、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、低熱膨張ガラス(SiO−TiOガラス等)などで形成することができる。これらの中でも、合成石英ガラスは、ArF露光光に対する透過率が高く、変形を起こしにくい十分な剛性も有するため、マスクブランクの基板を形成する材料として特に好ましい。
パターン形成用薄膜の形成時における基板100とターゲット9との位置関係について、図1を用いて説明する。オフセット距離Doff(基板100の中心軸21と、ターゲット9の中心を通りかつ基板100の中心軸21と平行な直線22との間の距離)は、パターン形成用薄膜の膜厚の面内均一性を確保すべき面積によって調整することができる。一般には、良好な面内均一性を確保すべき面積が大きい場合に、必要なオフセット距離Doffは大きくなる。例えば、一辺が152mmの四角形状の基板100の場合、その薄膜に転写パターンが形成される領域は、通常、基板100の中心を基準とする一辺が132mmの四角形の内側領域である。その一辺が132mmの四角形の内側領域で、その薄膜の膜厚分布が±1nm以内の精度を実現するためには、オフセット距離Doffは240mmから400mm程度が必要であり、好ましいオフセット距離Doffは300mmから380mmである。
ターゲット9−基板100間垂直距離(H)は、オフセット距離Doffにより最適範囲が変化する。例えば、一辺が152mmの四角形の基板100内で良好な面内均一性を確保するためには、ターゲット9−基板100間垂直距離(H)は、200mmから380mm程度が必要であり、好ましいHは210mmから300mmである。ターゲット傾斜角θは、薄膜の膜厚の面内均一性のみならず成膜速度に影響する。具体的には、良好な薄膜の膜厚の面内均一性を得るため及び大きな成膜速度を得るために、ターゲット傾斜角θは10度から30度が好ましい。
[第2実施形態]
一方、本発明には、成膜装置1のエージング工程において、シールド7の内壁面に上記の下層膜を形成する工程を行った後、上層膜を形成する工程を行わずにその成膜装置1で基板100上にパターン形成用薄膜を形成してマスクブランクを製造する第2実施形態が含まれる。すなわち、この第2実施形態のマスクブランクの製造方法は、成膜室2内に、遷移金属およびケイ素を含有する材料からなるターゲット9とシールド7と基板ステージ3を備えた成膜装置1を用いるマスクブランクの製造方法であって、マスクブランクは、基板100上に少なくともパターン形成用薄膜を備え、成膜室2内に貴ガスおよび反応性ガスを導入し、反応性スパッタリングによってシールド7の表面上に遷移金属、ケイ素および反応性ガス由来の元素を含有する材料からなり、ナノインデンテーション法によって導き出される押込み硬さが5000MPa以上である下層膜を形成する工程と、成膜室2内の基板ステージ3上に基板100を設置し、貴ガスおよび反応性ガスを導入し、反応性スパッタリングによって基板100の主表面上に、遷移金属、ケイ素および反応性ガス由来の元素を含有する材料からなり、ナノインデンテーション法によって導き出された押込み硬さが5000MPa未満であるパターン形成用薄膜を形成する工程とを有することを特徴とする。
この第2実施形態は、下層膜を形成する工程を行った後のターゲット9の表面状態が、そのままの表面状態でパターン形成用薄膜を反応性スパッタリングで形成しても、ターゲット9の表面で異常放電等の発塵が起こりにくく、基板100上に形成されるパターン形成用薄膜の膜厚分布や光学特性の均一性が高くできる場合に特に有効である。この実施形態のマスクブランクの製造方法の場合、パターン形成用薄膜を形成する工程時、パターン形成用薄膜を構成する材料と同じ材料からなる堆積膜がシールド7の表面上に形成された下層膜上にも形成される。この堆積膜は、下層膜と同じ構成元素であるため、下層膜との間の化学的な結合力は高い。
この第2実施形態の場合においても、貴ガスに関する事項は、第1実施形態における下層膜と上層膜との間の関係の場合と同様である。第2実施形態の場合においても、下層膜とパターン形成用薄膜を形成するときに用いられる貴ガスは、アルゴン、クリプトンおよびキセノンから選ばれる1以上のガスとヘリウムとの混合ガスであることが好ましい。また、下層膜を形成する工程における成膜室内に導入する貴ガス中のヘリウムガスの単位時間当たりの流量を貴ガスの単位時間当たりの合計流量で除した比率は、パターン形成用薄膜を形成する工程における成膜室内に導入する貴ガス中のヘリウムガスの単位時間当たりの流量を貴ガスの単位時間当たりの合計流量で除した比率よりも大きいことが好ましい。
この第2実施形態の場合においても、反応性ガスに関する事項は、第1実施形態における下層膜と上層膜との間の関係の場合と同様である。第2実施形態の場合においても、下層膜を形成する工程および前記パターン形成用薄膜を形成する工程における前記反応性ガスは、窒素を含有するガスを少なくとも含むことが好ましい。この第2実施形態の場合においても、ターゲット9に関する事項は、第1実施形態の場合と同様である。ターゲットにおけるM/[M+Si]比率は、34%未満であることが好ましい。その他の事項についても、第2実施形態では、シールド7の内壁面に形成された下層膜上に上層膜を形成する工程を行わないこと以外は、第1実施形態と同様である。
本発明には、第1実施形態あるいは第2実施形態のいずれかのマスクブランクの製造方法によって製造されたマスクブランクを用い、ドライエッチングによりパターン形成用薄膜に転写パターンを形成する工程を有することを特徴とする転写用マスクの製造方法が含まれる。
転写用マスクがバイナリ型マスクの場合においては、例えば、以下の製造方法でバイナリ型マスクを製造する。まず、第1実施形態または第2実施形態のマスクブランクの製造方法を用いて、基板100上に遮光膜(パターン形成用薄膜)とハードマスク膜が積層したマスクブランクを製造する。ハードマスク膜は、クロムを含有する材料で形成することが好ましい。次に、ハードマスク膜上に電子線描画露光用レジスト膜をスピン塗布法によって形成する。続いて、そのレジスト膜に対して電子線描画装置で転写パターンを描画露光した後、現像処理等を施し、レジストパターンを形成する。
次に、そのレジストパターンをマスクとし、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスによるドライエッチングを行い、ハードマスク膜に転写パターンを形成する。次に、転写パターンを有するハードマスク膜をマスクとし、フッ素系ガスによるドライエッチングを行い、遮光膜に転写パターンを形成する。最後に、ハードマスク膜をドライエッチング等で除去し、洗浄処理等の所定の処理を施してバイナリ型マスクが出来上がる。なお、上記のバイナリ型マスクの製造において、マスクブランクにハードマスク膜を設けず、遮光膜の表面にHMDS(hexamethyldisilazane)処理を行ってから、レジスト膜を遮光膜上に直接形成してもよい。
転写用マスクがハーフトーン型位相シフトマスクの場合においては、例えば、以下の製造方法でハーフトーン型位相シフトマスクを製造する。まず、第1実施形態または第2実施形態のマスクブランクの製造方法を用いて、基板100上に位相シフト膜(パターン形成用薄膜)と遮光膜が積層したマスクブランクを製造する。遮光膜は、クロムを含有する材料で形成することが好ましい。次に、遮光膜上に電子線描画露光用レジスト膜をスピン塗布法によって形成する。続いて、そのレジスト膜に対して電子線描画装置で転写パターンを描画露光した後、現像処理等を施して第1レジストパターンを形成する。
次に、その第1レジストパターンをマスクとし、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスによるドライエッチングを行い、遮光膜に転写パターンを形成する。次に、転写パターンを有する遮光膜をマスクとし、フッ素系ガスによるドライエッチングを行い、位相シフト膜に転写パターンを形成する。次に、遮光膜上に新たにレジスト膜を形成し、そのレジスト膜に遮光帯を含むパターンを描画露光し、現像処理等を施して第2レジストパターンを形成する。次に、第2レジストパターンをマスクとし、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガスによるドライエッチングを行い、遮光膜に遮光帯を含むパターンを形成する。最後に、洗浄処理等の所定の処理を施してハーフトーン型位相シフトマスクが出来上がる。
なお、上記のハーフトーン型位相シフトマスクの製造において、マスクブランクの遮光膜上にケイ素を含有する材料からなるハードマスク膜を設け、ハードマスク膜の表面にHMDS処理を行ってから、レジスト膜をハードマスク膜上に形成してもよい。
本発明には、上記の転写用マスクの製造方法により製造された転写用マスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を有することを特徴とする半導体デバイスの製造方法が含まれる。
以下、実施例により、本発明の実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例および比較例)
[成膜装置の立ち上げ]
この実施例では、ArF露光光が適用されるハーフトーン位相シフトマスク用のマスクブランクを製造する。そのマスクブランクは、合成石英ガラス基板100(主表面の寸法が約152mm×約152mmで、厚さが約6.35mm)上に位相シフト膜、遮光膜およびハードマスク膜がこの順に積層した構造を備える。この中で、位相シフト膜は、遷移金属、ケイ素および窒素からなるパターン形成用薄膜である。この位相シフト膜は、ArF露光光に対する透過率が6%、位相差が177度の光学特性を有する。
この位相シフト膜は、DCマグネトロンスパッタ方式の成膜装置1を用いて基板100上に形成する。具体的には、モリブデン(Mo)とケイ素(Si)の混合ターゲット9(Mo:Si=4:96 原子%比)を用い、成膜室2内に窒素(N)、アルゴン(Ar)およびヘリウム(He)の混合ガス(流量比[sccm] N:Ar:He=18:9:30,圧力=0.3Pa)をガス流入部5から導入し、カソード4(ターゲット9)に2.4kWの電力で電圧を印加し、反応性スパッタリングによって、膜厚が61nmの位相シフト膜を形成した。形成された位相シフト膜を、原子間力顕微鏡(Bruker社製 Dimension Icon)の付加機能を用いてこの位相シフト膜のナノインデンション法による押込み硬さを測定したところ、3145[MPa]であった。この位相シフト膜は、押込み硬さが5000[MPa]未満であるため、従来の成膜装置の立ち上げ方法では、シールド7の内壁面に付着する堆積膜からの発塵や膜剥がれが多発してしまう。この位相シフト膜を形成するのに用いる成膜装置を、本発明の成膜装置の立ち上げ方法で立ち上げた場合、位相シフト膜における欠陥が低減される。
本発明の成膜装置の立ち上げ方法を用いるためには、シールド7の内壁面に下層膜を形成する工程で使用する成膜条件、すなわち、シールド7の内壁面上に5000MPa以上の下層膜が形成される成膜条件を選定する必要がある。そこで、その成膜装置1で位相シフト膜を形成するときの成膜条件を基準に条件を変えて実験を行い、下層膜を形成するときの成膜条件の選定を行った。ターゲット9は、下層膜の形成時と位相シフト膜の形成時で同じものを使用するため、モリブデンとケイ素の混合比率は変えることはできない。そこで、まず、成膜室2に流入させるアルゴンガスとヘリウムガスの各単位時間当たりの流量を一定(Ar=9[sccm],He=30[sccm])とし、窒素ガスの単位時間当たりの流量を変動させて各基板上に薄膜をそれぞれ形成し、上記と同様に各薄膜の押込み硬さとヤング率(上記の原子間力顕微鏡は、付加機能でヤング率も測定可能である。)を測定した。
図2は、薄膜を形成する反応性スパッタリング時の窒素ガスの単位時間当たりの流量[sccm]と形成された薄膜の押込み硬さ[MPa]との関係を示すグラフである。図3は、薄膜を形成する反応性スパッタリング時の窒素ガスの単位時間当たりの流量[sccm]と形成された薄膜のヤング率[MPa]との関係を示すグラフである。図2のグラフから、窒素ガスの単位時間当たりの流量を変えても薄膜の押込み硬さは大きく変動することはなく、5000[MPa]以上になる成膜条件はないことがわかる。図3のグラフから、窒素ガスの単位時間当たりの流量が増えるに従って、薄膜のヤング率が大きくなる傾向があることがわかる。窒素ガスの単位時間当たりの流量は、薄膜の窒素含有量と相関があるため、ケイ素とモリブデン(遷移金属)と窒素を含有する材料からなる薄膜は、窒素含有量が多くなるにつれてヤング率が高くなる傾向があることもわかる。
また、図2では、窒素ガスの単位時間当たりの流量がゼロのとき(すなわち、アルゴンガスとヘリウムガスのみでスパッタリングを行ったとき)、薄膜のヤング率が最も低くなる。この薄膜はヤング率が低いため、外力が掛かったときに脆性破壊を比較的起こしにくい。この成膜条件は、従来の成膜装置の立ち上げの最初の段階で行われる貴ガスのみを導入してターゲットの表面をクリーニングするスパッタリングの成膜条件と概ね同じである。この結果から、ターゲットの表面をクリーニングするスパッタリングによってシールド7の内壁面に最初にモリブデンシリサイド(遷移金属シリサイド)の最下層膜が付着しても、シールド7の熱伸縮によって最下層膜に掛かる引張力および圧縮力で脆性破壊や脱落を起こしにくいといえる。
次に、成膜室2に流入させる窒素ガスとアルゴンガスの各単位時間当たりの流量を一定(N=18[sccm],Ar=9[sccm])とし、ヘリウムガスの単位時間当たりの流量を変動させて各基板上に薄膜をそれぞれ形成し、上記と同様に各薄膜の押込み硬さとヤング率(上記の原子間力顕微鏡は、付加機能でヤング率も測定可能である。)を測定した。図4は、薄膜を形成する反応性スパッタリング時のヘリウムガスの単位時間当たりの流量[sccm]と形成された薄膜の押込み硬さ[MPa]との関係を示すグラフである。図5は、薄膜を形成する反応性スパッタリング時のヘリウムガスの単位時間当たりの流量[sccm]と形成された薄膜のヤング率[MPa]との関係を示すグラフである。
図4のグラフから、ヘリウムガスの単位時間当たりの流量が増えるに従って、薄膜の押込み硬さが大きくなる傾向があることがわかる。また、図5のグラフから、ヘリウムガスの単位時間当たりの流量が増えるに従って、薄膜のヤング率も大きくなる傾向があることがわかる。図4の結果から、この成膜装置1の場合、上記の位相シフト膜の成膜条件からヘリウムの単位時間当たりの流量を45[sccm]以上に変えれば、シールド7の内壁面に付着する堆積膜の押込み硬さは、5000[MPa]以上にすることができる。
一見すると、位相シフト膜の成膜条件をヘリウムの単位時間当たりの流量が45[sccm]以上になるように変えればよいだけのように思える。しかし、位相シフト膜の成膜条件中のヘリウムの単位時間たりの流量を増やすと、反応性スパッタリングで位相シフト膜が形成されるときに位相シフト膜内に取り込まれる窒素の量がわずかながら減り、位相シフト膜内に取り込まれるヘリウムの量は増える。位相シフト膜の組成の変化が大きなものではなくても、光学特性は比較的大きく変わる。このため、位相シフト膜の成膜条件自体を変更することはできない。
以上の結果をもとに、本発明の実施例の成膜装置1の立ち上げを行った。具体的には、最初にバッキングプレート8上にインジウムのボンディング材を介して接合されたモリブデン(Mo)とケイ素(Si)の混合ターゲット9(Mo:Si=4:96 原子%比)を準備した。DCマグネトロンスパッタの成膜装置1の成膜室2内に下側シールド71および上側シールド72を取り付け、カソード4に上記ターゲット9を取り付ける。成膜室2内を真空引きした後、基板ステージ3にダミー基板を設置した。次に、ガス流入部5から成膜室2内にアルゴンガスのみを15[sccm]の流量で導入し、カソード4(ターゲット9)に0.4[kW]の電力で電圧を掛け、アルゴンガスのみのプラズマを成膜室2内に発生させた。そして、アルゴン粒子をターゲット9に衝突させてターゲット9の表面を弱めにクリーニングした(最下層膜を形成する工程)。続いて、カソード4への電力を1.4[kW]に上げて、ターゲット9の表面の強めにクリーニングした(最下層膜を形成する工程)。
この弱めのクリーニングと強めのクリーニングを行うことで、ターゲット9の表面に付着する有機物等のコンタミや表層の酸化膜は除去されていた。また、この弱めのクリーニングと強めのクリーニングを行っている間、ターゲット9の表面からモリブデンとケイ素の粒子が飛び出しており、シールド7の内壁面に最下層膜として堆積していた。この最下層膜は、押込み硬さは、5000[MPa]未満ではあるが、ヤング率が10000[MPa]未満であるため、シールド7の熱伸縮に対する耐性は高い。
次に、カソード4への電力供給を止め、ガス流入部5から成膜室2内に窒素(N)、アルゴン(Ar)およびヘリウム(He)の混合ガスの流量(流量比[sccm] N:Ar:He=18:9:50,圧力=0.3Pa)を導入した。成膜室2内の混合ガスの流量比が安定したところで、カソード4(ターゲット9)に2.4[kW]の電力で電圧を掛け、反応性スパッタリングを起こさせ、シールド7の内壁面に形成された最下層膜の上にモリブデンとケイ素と窒素を含有する材料からなる下層膜(MoSiN膜)を形成した(下層膜を形成する工程)。この下層膜は、図4の結果から押込み硬さが概ね5500[MPa]になっているといえ、5000[MPa]以上となっている。
この下層膜を形成する工程では、1枚のダミー基板に60nmの厚さでMoSiN膜が形成される時間ごとにダミー基板の入れ替えを行っており、ここでは30枚のダミー基板を使用した。よって、シールド7の内壁面に形成された最下層膜の上に形成された下層膜(MoSiN膜)の平均の厚さは、1.8μm程度になっているといえる。
次に、カソード4への電力供給を止め、ガス流入部5から成膜室2内に導入される混合ガスの流量比を上記の位相シフト膜を形成するときの流量比(流量比[sccm] N:Ar:He=18:9:30)および圧力(圧力=0.3Pa)に変更した。成膜室2内の混合ガスの流量比が安定したところで、カソード4(ターゲット9)に2.4[kW]の電力で電圧を掛け、反応性スパッタリングを起こさせ、シールド7の内壁面に形成された下層膜の上にモリブデンとケイ素と窒素を含有する材料からなる上層膜(MoSiN膜)を形成した(上層膜を形成する工程)。この上層膜は、図4の結果から押込み硬さが概ね3145[MPa]になっているといえ、5000[MPa]未満となっている。この工程を行った結果、ターゲット9の表面状態は、位相シフト膜を形成する反応性スパッタリングを行っているときとほぼ同じ表面状態になっている。
この上層膜を形成する工程においても、1枚のダミー基板に60nmの厚さでMoSiN膜が形成される時間ごとにダミー基板の入れ替えを行っており、ここでも30枚のダミー基板を使用した。よって、シールド7の内壁面に形成された下層膜の上に形成された上層膜(MoSiN膜)の平均の厚さは、1.8μm程度になっているといえる。
以上の手順で立ち上げられた成膜装置1を用い、合成石英ガラスからなる基板100上に位相シフト膜を反応性スパッタリングで形成する工程を行った。具体的には、基板100を基板ステージに設置し、ガス流入部5から成膜室2内に窒素(N)、アルゴン(Ar)およびヘリウム(He)の混合ガスの流量(流量比[sccm] N:Ar:He=18:9:30,圧力=0.3Pa)を導入した。成膜室2内の混合ガスの流量比が安定したところで、カソード4(ターゲット9)に2.4[kW]の電力で電圧を掛け、反応性スパッタリングを起こさせ、基板100上にMoSiNからなる位相シフト膜を61nmの厚さで形成した。
この位相シフト膜を形成する工程を100枚の基板100に対して行った。次に、その位相シフト膜が形成された100枚の基板100に対し、マスクブランク欠陥検査装置(レーザーテック社製 M6640)で位相シフト膜の欠陥検査を行った。その欠陥検査で100nm相当の欠陥が検出されない位相シフト膜を合格基準とする選別工程を行った。その結果、100枚中51枚が合格基準を満たすものとして選定することができた。この合格品の比率(歩留まり)は、従来の立ち上げ方法で立ち上げた成膜装置で基板上に位相シフト膜を形成した場合に比べて大幅に向上していた。
一方、比較例として、従来の立ち上げ方法で立ち上げた成膜装置で基板上に位相シフト膜を形成することも行った。この比較例の立ち上げ方法は、シールド7の内壁面上に最下層膜を形成する工程については、上記の実施例と同様の工程を行った。実施例1の立ち上げ方法と異なる点は、シールド7の内壁面に堆積された最下層膜上に下層膜を形成する工程を行わず、上層膜を形成する工程と同じ工程を行った。ただし、比較例の上層膜を形成する工程は、ダミー基板60枚分行った。よって、この比較例の場合、シールド7の内壁面に形成された最下層膜の上に形成された上層膜(MoSiN膜)の平均の厚さは、3.6μm程度になっているといえる。
以上の比較例の立ち上げ方法で立ち上げられた成膜装置1を用い、実施例の場合と同様に、合成石英ガラスからなる基板100上に位相シフト膜を反応性スパッタリングで形成する工程を行った。さらに、その比較例の位相シフト膜が形成された100枚の基板100に対し、マスクブランク欠陥検査装置(レーザーテック社製 M6640)で位相シフト膜の欠陥検査を行った。その欠陥検査で100nm相当の欠陥が検出されない位相シフト膜を合格基準とする選別工程を行った。その結果、100枚中29枚が合格基準を満たすものとして選定された。この合格品の比率(歩留まり)は、かなり低いといえる。
[マスクブランクの製造]
次に、上記実施例の選別工程で合格品として選定された位相シフト膜を備える基板100を、別のDCマグネトロンスパッタ方式の成膜装置の成膜室内に設置した。クロム(Cr)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO)、窒素(N)およびヘリウム(He)の混合ガスをスパッタリングガスとして、反応性スパッタリングを行って、位相シフト膜上にCrOCNからなる遮光膜(Cr:O:C:N=55原子%:22原子%:12原子%:11原子%)を46nmの厚さで形成した。上記の遮光膜の組成は、X線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy,RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry補正有り)で分析を行っている。この位相シフト膜と遮光膜の積層構造における波長193nmの光学濃度(OD)を測定したところ、3.0以上であった。
次に、RFマグネトロンスパッタ方式の成膜装置内に、位相シフト膜および遮光膜が積層された基板100を設置し、二酸化ケイ素(SiO)ターゲットを用い、アルゴン(Ar)ガスをスパッタリングガスとして、RFスパッタリングを行って、遮光膜の上にケイ素および酸素からなるハードマスク膜を5nmの厚さで形成した。以上の方法により、基板100上に、位相シフト膜、遮光膜およびハードマスク膜が積層された構造を有する実施例のマスクブランクを製造した。
[位相シフトマスクの製造]
次に、この実施例の成膜装置の立ち上げ方法で立ち上げられた後の成膜装置によって製造されたマスクブランクを用い、以下の手順で実施例の位相シフトマスクを作製した。最初に、ハードマスク膜の表面にHMDS処理を施した。続いて、スピン塗布法によって、ハードマスク膜の表面に接して、電子線描画用化学増幅型レジストからなるレジスト膜を膜厚100nmで形成した。次に、このレジスト膜に対して、位相シフト膜に形成すべき位相シフトパターンである第1のパターンを電子線描画し、所定の現像処理を行い、第1のパターンを有する第1のレジストパターンを形成した。
次に、第1のレジストパターンをマスクとし、CFガスを用いたドライエッチングを行い、ハードマスク膜に第1のパターンを形成した。次に、第1のレジストパターンをアッシングや剥離液などにより除去した。続いて、第1のパターンを有するハードマスク膜をマスクとし、塩素と酸素の混合ガス(ガス流量比 Cl:O=4:1)を用いたドライエッチングを行い、遮光膜に第1のパターン(第1の遮光パターン)を形成した。次に、第1のパターンを有する遮光膜をマスクとし、フッ素系ガス(SF+He)を用いたドライエッチングを行い、位相シフト膜に第1のパターン(位相シフトパターン)を形成し、かつ同時にハードマスク膜を除去した。
次に、遮光膜上に、スピン塗布法によって、電子線描画用化学増幅型レジストからなるレジスト膜を膜厚150nmで形成した。次に、レジスト膜に対して、遮光膜に形成すべきパターン(遮光パターン)である第2のパターンを露光描画し、さらに現像処理等の所定の処理を行い、遮光パターンを有する第2のレジストパターンを形成した。続いて、第2のレジストパターンをマスクとして、塩素と酸素の混合ガス(ガス流量比 Cl:O=4:1)を用いたドライエッチングを行い、遮光膜に第2のパターン(遮光パターン)を形成した。さらに、第2のレジストパターンを除去し、洗浄等の所定の処理を経て、実施例の位相シフトマスクを得た。
作製した実施例のハーフトーン型の位相シフトマスクに対してマスク検査装置によってマスクパターンの検査を行ったところ、位相シフト膜に起因する欠陥は検出されなかった。高精度の位相シフトマスクが作製されていることが確認できた。
この実施例のハーフトーン型位相シフトマスクに対し、AIMS193(Carl Zeiss社製)を用いて、波長193nmの露光光で半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写した時における転写像のシミュレーションを行った。このシミュレーションの露光転写像を検証したところ、設計仕様を十分に満たしていた。この結果から、実施例の位相シフトマスクを露光装置のマスクステージにセットし、半導体デバイス上のレジスト膜に露光転写したとしても、最終的に半導体デバイス上に形成される回路パターンを高精度に形成できると言える。
1 成膜装置
2 成膜室
3 基板ステージ
31 回転軸
4 カソード
5 ガス流入部
6 ガス排出部
7 シールド
71 下側シールド
72 上側シールド
8 バッキングプレート
9 ターゲット
21 中心軸
22 直線

Claims (14)

  1. 成膜室内に、遷移金属およびケイ素を含有する材料からなるターゲットとシールドを備えた成膜装置の立ち上げ方法であって、
    前記成膜室内に貴ガスおよび反応性ガスを導入し、反応性スパッタリングによって前記シールドの表面上に前記遷移金属、ケイ素および前記反応性ガス由来の元素を含有する材料からなり、ナノインデンテーション法によって導き出される押込み硬さが5000MPa以上である下層膜を形成する工程と、
    前記成膜室内に貴ガスおよび反応性ガスを導入し、反応性スパッタリングによって前記シールドの前記下層膜上に前記遷移金属、ケイ素および前記反応性ガス由来の元素を含有する材料からなり、ナノインデンテーション法によって導き出される押込み硬さが5000MPa未満である上層膜を形成する工程とを有する
    ことを特徴とする成膜装置の立ち上げ方法。
  2. 前記貴ガスは、アルゴン、クリプトンおよびキセノンから選ばれる1以上のガスとヘリウムとの混合ガスであることを特徴とする請求項1記載の成膜装置の立ち上げ方法。
  3. 前記下層膜を形成する工程における前記成膜室内に導入する前記貴ガス中のヘリウムガスの単位時間当たりの流量を前記貴ガスの単位時間当たりの合計流量で除した比率は、前記上層膜を形成する工程における前記成膜室内に導入する前記貴ガス中のヘリウムガスの単位時間当たりの流量を前記貴ガスの単位時間当たりの合計流量で除した比率よりも大きいことを特徴とする請求項2記載の成膜装置の立ち上げ方法。
  4. 前記下層膜を形成する工程および前記上層膜を形成する工程における前記反応性ガスは、窒素を含有するガスを少なくとも含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の成膜装置の立ち上げ方法。
  5. 前記ターゲットにおける前記遷移金属およびケイ素の合計含有量で前記遷移金属の含有量を除した比率は、34%未満であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の成膜装置の立ち上げ方法。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載の成膜装置の立ち上げ方法で立ち上げられた後の成膜装置を用いるマスクブランクの製造方法であって、
    前記マスクブランクは、基板上に少なくともパターン形成用薄膜を備え、
    前記立ち上げられた後の成膜装置内に設けられている基板ステージに前記基板を設置し、前記成膜室内に貴ガスおよび反応性ガスを導入し、反応性スパッタリングによって前記基板の主表面上に前記遷移金属、ケイ素および前記反応性ガス由来の元素を含有する材料からなり、ナノインデンテーション法によって導き出された押込み硬さが5000MPa未満であるパターン形成用薄膜を形成する工程を有する
    ことを特徴とするマスクブランクの製造方法。
  7. 成膜室内に、遷移金属およびケイ素を含有する材料からなるターゲットとシールドと基板ステージを備えた成膜装置を用いるマスクブランクの製造方法であって、
    前記マスクブランクは、基板上に少なくともパターン形成用薄膜を備え、
    前記成膜室内に貴ガスおよび反応性ガスを導入し、反応性スパッタリングによって前記シールドの表面上に前記遷移金属、ケイ素および前記反応性ガス由来の元素を含有する材料からなり、ナノインデンテーション法によって導き出される押込み硬さが5000MPa以上である下層膜を形成する工程と、
    前記成膜室内の基板ステージ上に前記基板を設置し、前記成膜室内に貴ガスおよび反応性ガスを導入し、反応性スパッタリングによって前記基板の主表面上に、前記遷移金属、ケイ素および前記反応性ガス由来の元素を含有する材料からなり、ナノインデンテーション法によって導き出された押込み硬さが5000MPa未満であるパターン形成用薄膜を形成する工程とを有する
    ことを特徴とするマスクブランクの製造方法。
  8. 前記パターン形成用薄膜を形成する工程時、前記パターン形成用薄膜を構成する材料と同じ材料からなる堆積膜が前記シールドの下層膜上にも形成されることを特徴とする請求項7記載のマスクブランクの製造方法。
  9. 前記貴ガスは、アルゴン、クリプトンおよびキセノンから選ばれる1以上のガスとヘリウムとの混合ガスであることを特徴とする請求項7または8に記載のマスクブランクの製造方法。
  10. 前記下層膜を形成する工程における前記成膜室内に導入する前記貴ガス中のヘリウムガスの単位時間当たりの流量を前記貴ガスの単位時間当たりの合計流量で除した比率は、前記パターン形成用薄膜を形成する工程における前記成膜室内に導入する前記貴ガス中のヘリウムガスの単位時間当たりの流量を前記貴ガスの単位時間当たりの合計流量で除した比率よりも大きいことを特徴とする請求項9記載のマスクブランクの製造方法。
  11. 前記下層膜を形成する工程および前記パターン形成用薄膜を形成する工程における前記反応性ガスは、窒素を含有するガスを少なくとも含むことを特徴とする請求項7から10のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法。
  12. 前記ターゲットにおける前記遷移金属およびケイ素の合計含有量で前記遷移金属の含有量を除した比率は、34%未満であることを特徴とする請求項7から11のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法。
  13. 請求項6から12のいずれかに記載のマスクブランクの製造方法によって製造されたマスクブランクを用い、ドライエッチングにより前記パターン形成用薄膜に転写パターンを形成する工程を有することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
  14. 請求項13記載の転写用マスクの製造方法により製造された転写用マスクを用い、半導体基板上のレジスト膜に転写パターンを露光転写する工程を有することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
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