JP2005200682A - スパッタリングターゲット及びこれを用いたマスクブランクの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 傾斜方式のスパッタに使用した際に重力方向のずれをも防止でき、ずれに起因する異常を低減できるようなスパッタリングターゲット等を提供する。
【解決手段】 バッキングプレート5と、ボンディング剤30により前記バッキングプレート5と接合されたターゲット材4と、を有するスパッタリングターゲット2において、前記ターゲット材4が図2に示す凸形状を有し、前記バッキングプレート5が前記ターゲット材4の凸形状と互いに嵌り合う図2に示す構造を有し、前記スパッタリングターゲットを傾斜させた際、前記ターゲット材が重力方向に移動しない構造を有する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、スパッタリングターゲット及びこれを用いたマスクブランクの製造方法に関する。
近年においては、デバイス等のさらなる微細加工化が要求されており、そのために使用する露光波長の短波長化が進んでいる。このような露光波長の短波長化にともない、マスクブランクに要求される諸特性はますます厳しくなってきている。
例えば、ハーフトーン型の位相シフトマスクブランクにおける光半透過膜(ハーフトーン位相シフト膜)は、使用する露光波長に対して、光透過率及び位相シフト量の双方について、要求される特性を満たしている必要がある。
更に、露光波長の短波長化にともない、マスクブランク間やマスクブランク面内の位相角及び透過率のばらつきを極力低減することが量産実用化のために必要であり、例えばArF、Fエキシマレーザなどの短波長用のマスクブランクにおいては、従来のi線、KrFエキシマレーザ用のマスクブランクにおけるブランクス間や面内の位相角及び透過率のばらつきでは、ばらつきが大きく、歩留まりも悪いため、そのまま適用できない。
このような状況の下、上記要求特性を満たすべく、マスクブランクの製造方法や製造装置について、従来採用されていた製造方法や製造装置の延長線上ではなく、大幅な変更に該当する製造方法や製造装置の採用が検討されている。
具体的には、上記要求特性を満たすマスクブランクは、DCマグネトロンスパッタ装置の真空槽の内部に、回転機構を有する基板載置台と、基板の中心軸からその中心がずれた位置に基板と所定の角度を有して対向するスパッタリングターゲット等を有する製造装置を用いて、基板を回転させながら、複数の基板間でスパッタリング条件を常に一定の状態に保ちながら成膜して製造されている(特許文献1)。この製造方法により、マスクブランク間やマスクブランク面内の位相角及び透過率のばらつきを極力低減することが可能となり、例えばArF、Fエキシマレーザなどの短波長用のマスクブランクの量産実用化が可能となっている。
さらに、露光波長の短波長化にともない、パーティクルやピンホールの特性はますます厳しくなっており、例えばArF、Fエキシマレーザなどの短波長用のマスクブランクにおいては、露光波長の半分程度より大きい径であるパーティクルやピンホールの数を極力低減することも、実用化のために必要とされている。
この要求を満たすべく、DCマグネトロンスパッタ装置の真空槽の内部に、ターゲット面が重力方向に対して下向きに配置されたスパッタリングターゲットと、ターゲットに対向して配置された基板ホルダと、真空槽内壁に設置されたシールド等を有する製造装置を採用し、この装置を用いたスパッタダウン方式の成膜によりマスクブランクが製造されている(特許文献2)。
特開2002−90978号公報 特開2002−90977号公報
露光波長の短波長化にともない、露光に用いられるマスクブランクに対して、上述の両方の特性を満たすことが要求されてきている。すなわち、マスクブランク間やマスクブランク面内の位相角及び透過率のばらつきを極力低減し、かつ、パーティクルやピンホールの数を極力低減することが、例えばArF、Fエキシマレーザなどの短波長用のマスクブランクの実用化に必要とされてきている。
これらの要求特性を満たすマスクブランクを製造するにあたり、上述の両方の構成を兼ね備えるような製造装置、すなわち、DCマグネトロンスパッタリング装置の真空槽の内部に、回転機構を有する基板載置台と、基板の中心軸からその中心がずれた位置に基板と所定の角度を有して対向しかつターゲット面が重力方向に対して下向きに配置されたスパッタリングターゲットと、真空槽内壁に設置されたシールド等を有する製造装置を採用し、基板を回転させ、かつ、複数の基板間でスパッタリング条件を常に一定の状態に保ちながら、基板上に光半透過膜を有するマスクブランクを100枚程度連続して成膜したところ、図8(1)に示すターゲット材4とバッキングプレート5がボンディング剤30により接合されてなるスパッタリングターゲットに関し、図8(2)に示すようにターゲット材4がバッキングプレート5に対して重力方向にずれる現象が生じることが判明した。そして、このターゲット材4のずれに起因して、膜厚分布均一性及び膜質分布均一性が低下することが判明した。ArF、Fエキシマレーザなどの短波長用のマスクブランクに膜厚分布や膜質分布が生じていると、このマスクブランクを用いてマスクを製造したときに、マスクパターン寸法の精度が得られず、マスクの転写特性に支障をきたすという問題が生じる。
さらに、このターゲット材4のずれに起因すると思われる異物が被成膜基板上に出現することが判明した。この異物を分析したところ、In(インジウム)系の異物が含まれていることが判明した。ここで、Inは、スパッタリングターゲットにおいて、ターゲット材とバッキングプレートとを接合するためのボンディング剤として使用されていることから、この異物の発生源として、スパッタリングターゲットが挙げられる。この種の異物は、数枚程度の成膜後ではほとんど検出されず、成膜枚数の増加にともない異物数が増加するものであり、マスクブランクの生産性を向上させるためには、この異物発生の問題を解消する必要がある。
本発明は、上述の背景に基づいてなされたものであり、ArF、Fエキシマレーザなどの短波長用のマスクブランクの製造に適したスパッタリングターゲット、および、量産性に優れた短波長用マスクブランクの製造方法の提供を目的とする。
本発明は、以下の構成を有する。
(構成1)ターゲット材とバッキングプレートがボンディング剤を介して接合されてなるスパッタリングターゲットであって、
前記ターゲット材が、円柱形状に対して底部外周の全周にわたり切り欠き部を設けることにより、前記切り欠き部が無いターゲット主部と、前記切り欠き部によって形成される前記ターゲット主部に対するターゲット突出部とからなる、断面凸状の構造を有し、
前記バッキングプレートが、前記ターゲット材の前記ターゲット突出部及び前記ターゲット主部の切り欠き部側の面の少なくとも一部と互いに隙間無く嵌り合う構造を有し、
前記スパッタリングターゲットは、傾斜させて設置した際、前記ターゲット材が重力方向に移動しない構造を有することを特徴とするスパッタリングターゲット。
(構成2)前記スパッタリングターゲットの側壁に、前記ボンディング剤の露出を防ぐように形成された金属膜を有することを特徴とする構成1記載のスパッタリングターゲット。
(構成3)前記バッキングプレートが、ベース部と、前記ベース部に対して突出した凸状の構造であって前記ターゲット材と接合する接合部とを有し、
前記接合部が、その中央部に、前記ターゲット材のターゲット突出部と嵌り合うように形成されたくり抜き部を有し、
前記ターゲット材と前記バッキングプレートが、前記ターゲット材のターゲット主部の切り欠き部側の面が、前記バッキングプレートの接合部の外径よりも全周にわたり張り出すようにして、ボンディング剤を介して接合されてなることを特徴とする構成1又は2に記載のスパッタリングターゲット。
(構成4)前記スパッタリングターゲットが、マスクブランクにおける薄膜を形成する際に用いられることを特徴とする構成1乃至3のいずれかに記載のスパッタリングターゲット。
(構成5)基板上にマスクパターンを形成するための薄膜を有するマスクブランクの製造方法において、
前記薄膜は、前記基板をの表面を上向きに配置し、かつ前記スパッタリングターゲットのターゲット面を重力方向に対して0度〜90度(すなわち、重力方向〜横方向)の間の角度で配置して、構成1乃至4のいずれかに記載のスパッタリングターゲットを用いてスパッタリング法で形成することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
上記構成を有する本発明のスパッタリングターゲットは、ターゲット傾斜配置方式のスパッタ法において、(1)ターゲット材がバッキングプレートに対して重力方向にずれる現象、(2)このターゲット材のずれに起因して、膜厚分布均一性及び膜質分布均一性が低下する現象、(3)このターゲット材のずれに起因して生ずると考えられる異常放電や異物が被成膜基板上に出現する現象、等を防止又は抑制することが可能である。特に、ターゲット傾斜配置方式のスパッタ法において、ターゲット材のずれがなくなるので、長期間膜厚分布と膜質分布の均一性を維持可能となる。
また、本発明のスパッタリングターゲットを用いてターゲット傾斜配置方式で透光性基板上にパターンを形成するための薄膜を成膜すると、長期間膜厚分布と膜質分布の均一性を維持可能となるので、高精度のフォトマスクブランクを連続して製造することが可能となる。
上述したように露光波長の短波長化にともない、マスクブランクスに要求される諸特性はますます厳しくなってきており、特に位相シフトマスクブランクにおける光半透過膜に要求される諸特性は特に厳しくなってきている。したがって、上記本発明のスパッタリングターゲットが、フォトマスクブランクのパターンを形成するための薄膜の成膜に用いられると有用であり、また、上記本発明のスパッタリングターゲットが、フォトマスクブランクの光透過性膜の成膜に用いられると特に有用である。同様に、上記本発明のスパッタリングターゲットを用いてターゲット傾斜配置方式で、透光性基板上にパターンを形成するための薄膜を成膜するフォトマスクブランクの製造方法は有用であり、また、上記本発明のスパッタリングターゲットを用いて、透光性基板上に光透過性膜を成膜するフォトマスクブランクの製造方法は特に有用である。
ターゲット傾斜配置方式のDCマグネトロンスパッタ装置を用いて連続成膜を行なった際に、ターゲット材が重力方向にずれる現象の発生原因について、詳しく究明したところ、以下に示す複合要因で起こることが判明した。
(1)マスクブランクの製造においては、例えばMoSi系(MoSi2などの化学両論的に安定な組成ではなく、Siが過剰に含まれている組成)などの非常にもろいターゲット材を使用する必要があるが、このような非常にもろいターゲット材は、インジウム等のボンディング剤を介してバッキングプレートと接合する必要があること、
(2)上記DCマグネトロンスパッタ装置が、全面エロージョンスパッタリングターゲットを採用しているため、放電によってターゲットの端部まで加熱され、ターゲット端部の熱がボンディング部分のインジウム(融点約157℃)に伝わりやすい構成であること、
(3)上記DCマグネトロンスパッタ装置が、スパッタリングターゲットの周辺部に近接する位置(ターゲットの側部と約1mm間隔の位置)に、シールド(約80〜120℃間の温度に設定して温度制御しているが、スパッタ条件によっては120℃以上になることがある)が設けられており、このシールドの熱が、ボンディング部分のインジウムに伝わりやすい構成であること、
(4)上記DCマグネトロンスパッタ装置が、フォトマスクブランクを200枚程度連続して継続的に製造する際に、複数の基板間でターゲット及びシールドの温度及び表面状態を継続的に常に一定の状態に保ち、複数の基板間でスパッタリング条件を継続的に常に一定の状態に保つ機構を有する装置であり、放電(プラズマ)によって加熱されたターゲット材が一旦冷却されることがなく、常時一定温度以上の高温に加熱された状態にあること、
(5)上記DCマグネトロンスパッタ装置が、上記斜め下向きに配置されたターゲットを採用しており、ターゲット材の重力方向のずれを促進する構成であること。
また、異物が被成膜基板上に出現する現象の発生原因を究明したところ、以下に示す要因で起こることが判明した。
(1)ターゲット材のずれによって、図8(2)に示すように、ボンディング部30のインジウムが露出すること、及び、ボンディング剤に加わる熱の影響及びボンディング剤に加わる重力の影響によって、前記ボンディング剤が溶出すること、によりインジウム系の異物が発生する。
(2)ターゲット材のずれによって、図8(2)に示すように、バッキングプレート5の一部が露出するので、これに起因した異物が発生する。
(3)ターゲット材のずれによって、全面エロージョンマグネトロンカソードを採用していることに起因して、異常放電や異物が発生する。
(4)非全面エロージョンマグネトロンカソードを使用した場合において、ターゲット材のずれによって、非エロージョン部だった部分がエロージョン部となるので、異常放電や異物発生の原因となる。
以下、本発明の実施の形態を添付図面を用いて説明する。
まず、本発明の第1実施形態を図1、図2に基づいて説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るスパッタリングターゲットを示す分解模式図であり、図2は、本発明の第1実施形態に係るスパッタリングターゲットを示す模式図である。なお、図1、2は、スパッタリングターゲットの中心軸(直径)を通りスパッタ表面に対して垂直な平面による断面図であり、このことは後述する図3〜9においても同様である。
図1、図2に示す通り、第1実施形態に係るスパッタリングターゲット2は、凸形状を有するターゲット材4と、前記凸形状に対応する凹部を有するバッキングプレート5が、嵌合部分において互いに隙間なく嵌り合う構造を有しており、これらのターゲット材4とバッキングプレート5との接合(接触)部分は、ボンディング剤30により接合されている。詳しくは、前記ターゲット材4は、円柱形状に対して底部外周の全周に渡り切り欠き部4cを設け、ターゲット主部4aと該ターゲット主部4aに対するターゲット突出部4bからなる断面凸状の構造を有している。また、前記バッキングプレート5は、前記ターゲット材4の前記ターゲット突出部4b(前記ターゲット突出部4bの頭部面4b’及び側部面4b’’)及び前記ターゲット主部4aの凸面側の面(前記ターゲット主部4aの裏面)4a’’の少なくとも一部と互いに隙間なく嵌り合う構造を有している。このバッキングプレート5は、円柱形状に対してその底部外周の全周に渡り切り欠き部5cを設け、ベース部5aと該ベース部5aに対するバッキングプレート突出部5bからなる断面凸状のバッキングプレート形状に対して、その突出部5bの中央部にくり抜き部5dを設けることにより前記突出部5bの外周部の全周に渡り外周凸部5eを設けた構造を有するものである。
本実施形態に係るスパッタリングターゲット2は、図2に示すように、バッキングプレート5の外周凸部5eによって、ターゲット材4のターゲット突出部4b(ターゲット突出部全体)が密着して包囲されている(挟持されている)構造を有しているので、以下の作用効果を有する。
(1)前記スパッタリングターゲット2を傾斜させて設置した際、前記ターゲット材4が重力方向に移動しない構造を有している。
(2)ターゲット材4が脆い材料からなる場合であっても、ターゲット材4とバッキングプレート5との熱膨張率の相違に起因したターゲット材4の破損を防止しうる構造を有している。
(3)極めて単純かつ合理的な嵌合形状を有しているので、インジウムシートを利用した接合(接合面にインジウムシートを介在させ嵌合状態で熱をかけてインジウムシートを溶解させて接合する手法)が可能である。引用文献のように凹凸形状が複雑であると、インジウムシートを利用した接合は困難であり、溶融したインジウムを塗布して接合するため、接合の際にインジウムが酸化し、この酸化インジウムは除去しにくいので、バッキングプレートのリサイクルに労力を要する。
外周凸部5eの直径方向の厚み5eWは、形成された外周凸部5e自体の強度面、加工時に加わる圧力に対する外周凸部5eの強度面、ターゲット材4のターゲット主部4aの表面4a’全面が均一に冷却されるようにするため等の理由から、3〜15mmの範囲とすることが好ましい。
ターゲット材4のターゲット突出部4bの高さh及びバッキングプレートの外周凸部の高さh’は、ターゲット材4のターゲット主部4aの表面4a’全面が均一に冷却されるように、かつ、後述するオーバーハング形状が形成され溶射スペースが確保されるように、5〜15mmの範囲とすることが好ましい。
またターゲット材4のターゲット主部4aの厚さと、ターゲット突出部4bの高さh(厚さ)の比率[ターゲット主部4aの厚さ/ターゲット突出部4bの高さh]は、ターゲット材4の強度の面などから、1〜2であることが好ましい。また、ターゲット材4のターゲット主部4aの直径W’’と、ターゲット突出部4bの直径Wの比率(W’’/W)は、ターゲット材4の強度の面などから、1.05〜1.3であることが好ましい。
上記構造のターゲット材4は、円柱形状のターゲット材を用意し、その底部外周の全周に渡り切り欠き部4cを設けることにより作製できるので、高精度加工が可能であり、しかも作製容易である。
また、上記構造のバッキングプレート5は、円柱形状のバッキングプレート又は断面凸状のバッキングプレートを用意し、円柱形状のバッキングプレートの頭部外周の全周に渡り切り欠き部5cを設け、断面凸状のバッキングプレートの突出部5bの中央部にくり抜き部5dを設けることにより作製できるので、高精度加工が可能であり、しかも作製容易である。なお、上記構造のバッキングプレート5は、バッキングプレートが撓みにくい構造であるので、ターゲット材が硬く割れやすい材料(例えば化学量論的に安定な組成よりもSiが過剰な(Siリッチな)MoSi系材料など)であっても、バッキングプレートの撓みに起因して、ターゲット材が破損する危険性を低減できる。
本発明の構成によれば、ターゲット材やバッキングプレートに複雑な加工を施すこと無く、ターゲット傾斜配置方式のスパッタリング装置に適用することが可能である。ターゲット材やバッキングプレートに複雑な加工を施す構成(たとえば、歯車形状やねじ形状のような、多数の凸凹形状により嵌め合わせる構成)は、マスクブランクの製造に用いられるもろいターゲット材を使用する場合、ターゲット材とバッキングプレートとの熱膨張率の相違に起因して、ターゲット材の破損が生じるため、実施が困難であるため好ましくない。また、複雑な加工を施す構成は、パーティクルを発生しやすい構造であり、本願発明で対象とするパーティクル低減レベルを実現することは困難であると考えられるため、好ましくない。
本発明の実施形態に係るスパッタリングターゲットは、図2等に示すように、ターゲット材のターゲット主部4aの面積は、バッキングプレート5との接合部分の面積よりも大きくする、即ち、ターゲット材のターゲット主部4aの直径W’’は、バッキングプレート5の外周凸部5eの外径W’よりも大きくする、ことが好ましい。
このように構成すると、図2等に示すように、オーバーハング形状の凹部5fが形成される。)このオーバーハング形状の凹部5fに、ボンディング剤の溶出を封止し得るように(ボンディング剤が露出しないように)、封止金属(又は封止材料)40を付着させることができる。
この場合、ターゲット材の張り出し部分の冷却効率が損なわれないようにオーバーハング形状の凹部5fを埋めるように金属を付着させることが好ましい。具体的には、オーバーハング形状の凹部5fを実質的に半分以上埋めるように金属を付着させることが好ましく、また、ターゲット材の張り出し部分の端部まで金属を付着させることが好ましく、更に、前記凹部5fを実質的に埋めるように金属を付着させることが更に好ましい。付着させる金属としては、導電性、冷却性が高く、ターゲット材及びバッキングプレートとの付着性が高い金属が好ましく、また、バッキングプレートと実質的に同材料の金属が好ましい。付着させる金属としては、Cu、Al等が挙げられ、特にCu系材料が好ましく、強度は多少劣るが通常バッキングプレートの材料に用いられる無酸素銅が好ましい。金属を付着させる方法としては、全周に渡る封止の確実性が確保できる方法が好ましく、例えば金属溶射が挙げられる。なお、ターゲット材4の側面及びバッキングプレート露出面(又はこれらのうち少なくとも金属を付着させる部分)がブラスト処理されたスパッタリングターゲットを用いると、金属の付着力が強くなり、また封止の確実性も向上できる。
前記オーバーハング形状の凹部により、封止スペースを確保できると共に、封止の作業性の向上、全周に渡る封止の確実性の確保、等の効果がある。この効果は、現状のところ手作業によらざるを得ない金属溶射によって封止を行う場合、顕著となる。
バッキングプレート5の外周凸部5eの外径W’に対し、ターゲット材4を張り出させる距離(ターゲット材4の張り出し部分の長さ)=(W’’−W’)/2は、0.5〜5mm、特に1mm前後(0.5〜1.5mm)とすることが、全面エロージョンスパッタリングターゲットの全面をより均一に冷却するため好ましい。ターゲット材の張り出し部分の長さを1.5mmより長くするに従い、バッキングプレートからターゲット材が剥離する危険性が高くなる。ターゲット材の張り出し部分の長さを0.5mmより短くするに従い、封止スペースの確保、封止の作業性の向上、全周に渡る封止の確実性の確保、が難しくなり、現状のところ手作業によらざるを得ない金属溶射によって封止を行う場合、このことが顕著になる。
なお、本発明の実施形態に係るスパッタリングターゲットは、図2において、前記バッキングプレート5は、前記ターゲット材4の前記ターゲット突出部4b(前記ターゲット突出部4bの頭部面4b’及び側部面4b’’)及び前記ターゲット主部4aの凸面側の面(前記ターゲット主部4aのスパッタ面4a’に対して裏面)4a’’の全面と互いに隙間なく嵌り合う構造を有する態様(即ちW’’=W’の態様)とすることも可能であるが、上記の理由からターゲット材4を張り出させる態様が好ましい。W’’=W’の態様の場合は、ターゲットの側面部に露出する接合部分に、ボンディング材が露出しないように金属膜などの被覆膜を形成することができる。このように、スパッタリングターゲットの側壁に、ボンディング剤の露出を防ぐように金属膜を形成する場合、前記金属膜の厚さは、ボンディング剤の溶出を封止する機能を有する封止金属部が形成される厚さとすることが好ましい。
前記オーバーハング形状の凹部5fに付着させる金属の表面粗さ(Ra)は、当該金属の表面に付着した膜の剥離防止し得る所定の範囲に設定することが好ましい。溶射された金属の表面粗さ(Ra)は、粗れており、前記所定の範囲に設定することが容易であるので好ましい。
図3は、本発明の第1実施形態の変形例に係るスパッタリングターゲットを示す模式図である。図3に示すように、ターゲット材4のターゲット突出部4bの高さh>バッキングプレートの外周凸部の高さh’とすることができる。このように構成すると、ターゲット材の重力方向のずれ防止の効果が大きく得られる。h/h’は1〜1.5の範囲とすることが好ましい。ただし、バッキングプレートの厚みが薄すぎると、バッキングプレートの冷却水の圧力により、バッキングプレートが変形し、ターゲット材の破損、剥離の可能性がある。
図4は、本発明の第1実施形態の他の変形例に係るスパッタリングターゲットを示す模式図である。図4に示すように、ターゲット材4のターゲット突出部4bの高さh<バッキングプレートの外周凸部の高さh’とすることができる。このように構成すると、全面エロージョンスパッタリングターゲットの全面をより均一に冷却することができる。h/h’は0.5〜1の範囲とすることが好ましい。
図5は、本発明の実施形態の他の変形例に係るスパッタリングターゲットを示す模式図である。図5に示すように、ターゲット材4のターゲット突出部4bの側面部4b’’及びバッキングプレート5のくり抜き部5dの側壁部(外周凸部5eの内周側の側壁部)に、テーパーをつけることができる。このように構成すると、接合の際に隙間できにくく、接合面に空泡が形成されにくく、かつ接合が容易となる。テーパーの角度(ターゲット主部4aの裏面4a’’に対する仰角)は30〜60°の範囲とすることが好ましい。また、図5に示すように、ターゲット材4のターゲット突出部4bの角部及びバッキングプレート5のくり抜き部5d底部の角部を、角を丸め曲面状とする(Rをつける)ことができる。このように構成すると、接合の際に隙間ができにくく、空泡が形成されにくく、かつ接合が容易となる。これに対し、くり抜き部5d底部の角部が直角であると、この直角の角部の部分にボンディング剤が入りにくく、この直角の角部の部分に空泡が形成され、空泡部は熱の伝導を阻害するためターゲット材の冷却均一性の阻害要因となる。
なお、上記実施形態では、ターゲット材4を凸状の構成として、このターゲット材の形状に合うようにバッキングプレート5を構成したが、例えば図9に示す通りターゲット材4を凹状にしてこのターゲット材4の形状に合うようにバッキングプレート5を構成した場合には、熱膨張によりターゲット材に悪影響を及ぼす可能性がある、例えばターゲット材が硬く割れやすい材料(例えばMoSi系材料など)からなる場合にターゲット材4とバッキングプレート5との熱膨張率の相違に起因してターゲット材が破損してしまう、ので図1〜5等に示すような構成にすることが好ましい。
第2に、本発明者は、上述したターゲット材のずれが、上述した複合要因で起こるものと考えられることに基づき、上述したターゲット材のずれを防止又は低減できる第2実施形態に係るスパッタリングターゲットを案出した。
このスパッタリングターゲットは、所望の膜をスパッタ成膜する際に用いられるスパッタリングターゲットであって、前記ボンディング剤に加わる熱の影響を低減することによって前記ターゲット材のずれを防止又は低減し得る厚さのターゲット材が、ボンディング剤によりバッキングプレートに接合されてなることを特徴とするターゲット傾斜配置方式用のスパッタリングターゲットである。
このスパッタリングターゲットによれば、図6に示すように、前記ボンディング剤30の溶融を低減し得るようにターゲット材4の厚みtを通常に比べ厚くしているので、全面エロージョンスパッタリングターゲット採用し、放電(プラズマ)によってターゲット全面が加熱されターゲット端部が加熱された場合であっても、この熱がボンディング部に伝わりにくい構成であり、同様にスパッタリングターゲットの側部に近接する位置に設置されたシールドの熱が、ボンディング部に伝わりにくい構成であること、からボンディング剤30の溶融を低減でき、ボンディング剤の溶融に起因するターゲット材のずれの問題及びボンディング剤30の溶出に起因して発生するボンディング剤由来の欠陥を防止又は低減可能である。
また、ターゲット材4の厚みtが通常に比べ厚く、ターゲット材4の側面が長いので、ボンディング剤30とターゲット材4の表面端部(エロージョン部)との距離を長くすることができ、インジウム等のボンディング剤30がターゲット表面端部(エロージョン部)までの移動距離が長くなるので到達しにくくなり、ボンディング剤30の溶出による欠陥を低減可能である。この場合、ターゲット材側面4Bは、ブラスト処理等の方法を用いて粗らしておくと、ターゲット材側面でインジウム等のボンディング剤30が更に移動しにくくなり、かつ、ターゲット材側面に付着し膜の剥離を防止する上で好ましい。
ターゲット材4の厚みtは、3〜20mmの範囲が好ましい。
なお、本発明においては、ターゲット材4の厚みtが上述した効果を奏するものであれば、ターゲット材4及びバッキングプレート5の形状は、図6の形状に限定されない。
第3に、本発明者は、上述したターゲット材のずれが、上述した複合要因で起こるものと考えられることに基づき、上述したターゲット材のずれを防止できる第3実施形態に係るスパッタリングターゲットを案出した。
所望の膜をスパッタ成膜する際に用いられるスパッタリングターゲットであって、
このスパッタリングターゲットは、スパッタリングターゲット全体が、前記所望の膜を得るためのターゲット材から形成されてなることを特徴とするターゲット傾斜配置方式用のスパッタリングターゲットである。
このスパッタリングターゲットによれば、図7に示すように、スパッタリングターゲット2全体が、ターゲット材4で一体成形した構成を有している(ボンディング剤を用いない構成を採用している)ので、ボンディング剤の溶融に起因するターゲット材のずれの問題及びターゲット材のずれに起因して生ずる問題は起こらない。
なお、スパッタリングターゲット2の露出している面4C,4Dは、ブラスト処理(機械的・物理的に表面を粗らす処理)等の方法を用いて粗らすことが、かかる部分に付着し膜の剥離を防止する上で好ましい。
上記本発明において、ターゲット材は、目的に応じて適宜選択される。
バッキングプレートは、スパッタの際にターゲット材を固定するための金属であり、良好な導電性及び冷却性を有する金属、たとえばCu系、Al系等の金属から構成できる。
以下に、本発明のフォトマスクブランクの製造方法に特に適したDCマグネトロンスパッタ装置(特許文献1、特許文献2)について詳しく説明する。
図10に示すDCマグネトロンスパッタ装置は、真空槽1を有しており、この真空槽1の内部にスパッタリングターゲット2及び基板ホルダ3が配置されている。スパッタリングターゲット2は、ターゲット面が斜め下向きに配置された斜めスパッタリング方式を採用している。スパッタリングターゲット2は、ターゲット材4とバッキングプレート5がインジウム系のボンディング剤により接合されてなる。スパッタリングターゲット2の背後には、全面エロージョンマグネトロンカソード(図示せず)が装着されている。バッキングプレート5は水冷機構により直接または間接的に冷却されている。マグネトロンカソード(図示せず)とバッキングプレート5及びターゲット材4は電気的に結合されている。露出しているバッキングプレート面5A,5B、5Cは、ブラスト処理(機械的・物理的に表面を粗らす処理)等の方法を用いて粗らしている。ターゲット材側面4Bは、ブラスト処理等の方法を用いて粗らしている。回転可能な基板ホルダ3には透明基板6が装着されている。
真空槽1内壁には、取り外し可能な膜付着防止部品であるシールド20(温度制御可能な構成を有する)が設置されている。シールド20におけるアースシールド21の部分は、ターゲット2と電気的に接地されている。アースシールド21は、ターゲット面4Aより上部(バッキングプレート5側)に配置してある。
真空槽1は排気口7を介して真空ポンプにより排気されている。真空槽内の雰囲気が形成する膜の特性に影響しない真空度まで達した後、ガス導入口8から窒素を含む混合ガスを導入し、DC電源9を用いて全面エロージョンマグネトロンカソード(図示せず)に負電圧を加え、スパッタリングを行う。DC電源9はアーク検出機能を持ち、スパッタリング中の放電状態を監視できる。真空槽1内部の圧力は圧力計10によって測定されている。
透明基板上に形成する光半透過膜の透過率は、ガス導入口8から導入するガスの種類及び混合比により調整する。
なお、位相角及び透過率のブランクス内分布(面内ばらつき)をそれぞれ±2°以内、±4°以内に抑えるためには、透明基板を回転させながら成膜を行うとともに、成膜の開始から成膜の終了までの間で透明基板を整数回回転させて成膜を行うことが必要である。このためには、例えば、基板の回転角位置を検出するセンサによって、放電をONにした時点(成膜開始)の基板回転角位置検出し、さらにこのセンサによって、基板が整数回回転して放電をONにした時点と同じ回転角位置に基板がきた時点で放電をOFF(成膜終了)にする機構を備えることが必要である。
また、光半透過膜等の薄膜を形成するスパッタリング時のガス圧、スパッタリング用DC電源の出力、スパッタリングを行う時間は直接的に透過率、位相角に影響を与えるため、ガス流量コントローラ、DC電源その他機器の精度向上やコントローラから発信する設定信号の精度向上が必要である。スパッタリング時のガス圧は、装置の排気コンダクタンスにも影響を受けるため、排気ロバルブの開度やシ−ルドの位置を正確に決定できる機構も必要である。
また、窒化シリコンを含む膜では、真空槽内壁から発生する水分等のガスが、膜の光学特性に大きな影響を与えるため、真空槽内を十分に排気できるポンプを装着し、真空槽内壁をベーキングできる機構を設けることが必要である。真空槽内の真空度は、成膜速度が10nm/minである場合はおおむね2×10−5pa以下、成膜速度が5nm/minである場合には1×10−5pa以下が必要である。
位相角及び透過率の面内の分布は、基板とターゲットの位置関係によっても変化する。ターゲットと基板の位置関係について、図11を用いて説明する。
オフセット距離(基板の中心軸と、ターゲットの中心を通りかつ前記基板の中心軸と平行な直線との間の距離)は、位相角及び透過率の分布を確保すべき面積によって調整される。一般には分布を確保すべき面積が大きい場合に、必要なオフセット距離は大きくなる。例えば、152mm角の基板内で位相角分布±2°以内及び透過率分布±4°以内を実現するために、オフセット距離は200mmから350mm程度が必要であり、好ましいオフセット距離は240mmから280mmである。
ターゲット−基板間垂直距離(T/S)は、オフセット距離により最適範囲が変化するが、152mm角の基板内で位相角分布±2°以内及び透過率分布±4°以内を実現するために、ターゲット−基板間垂直距離(T/S)は、200mmから380mm程度が必要であり、好ましいT/Sは210mmから300mmである。
ターゲット傾斜角は成膜速度に影響し、大きな成膜速度を得るために、ターゲット傾斜角は、0°から45°が適当であり、好ましいターゲット傾斜角は10°から30°である。
スパッタリング現象はターゲットやシールドの温度や表面状態を変化させ、同時に真空槽内の真空度も変化させる。このため複数の基板間でターゲット及びシールドの温度及び表面状態を継続的に常に一定の状態に保ち、複数の基板間でスパッタリング条件を継続的に常に一定の状態に保つことが、位相角と透過率の、ブランクス間変動(ブランクス間ばらつき)、ブランクス内分布(面内ばらつき)を従来に比べ低減するために必要である。このためには、複数の基板間で、スパッタリング終了から次のスパッタリング開始までの間隔を継続的に常に一定にすることが可能な装置を用いことが必要となる。従来のようにスパッタリング終了から次のスパッタリング開始までの間隔が一定でない間欠的なスパッタリングを行うと、ターゲットやシールドの状態が刻々と変化し、それに応じて位相角、透過率の変動が大きくなる。
複数の基板間でターゲット及びシールドの温度及び表面状態を継続的に常に一定の状態に保ち、複数の基板間でスパッタリング条件を継続的に常に一定の状態に保つこと、を実現するためには、図12に示すような、スパッタリングを行う真空槽(スパッタ室)を常に高真空状態に保持できるロードロック機構を設け、ロードロック室からスパッタ室への基板導入を、複数の基板間で常に一定の間隔で、継続的に行えるような装置構成が必要である。このためには、あえて一枚づつ基板を導入するロードロック機構を設け、しかもロードロック室の容積を、ロードロック室からスパッタ室への基板導入を、複数の基板間で常に一定の間隔で、継続的に行えるような容積に設計する必要がある。
図12において、ロードロック室11には、大気とロードロック室11を隔離するバルブ12と、ロードロック室11とスパッタ室13を隔離するバルブ14が取り付けられている。ロードロック室11としては、上記で説明したスパッタ室への基板導入を一定の間隔で継続的に行いうる枚葉式でしかも所定の容積に設計されたものを設けている。スパッタ室13は前述した図10に示すようなスパッタリングを行う真空槽と同等の機能を有する。スパッタ室13への基板導入をロボットアームにて行う場合には、スパッタ室13とロードロック室11の間に撒送室15を設けてもよい。ロボットアーム19は、腕19aが図示A方向に開閉することによりハンド19bを図示B方向に移動でき、またロボットアーム19は図示C方向に回転でき、さらにロボットアーム19は紙面に対し上下方向に移動できる構成になっている。さらに、成膜のスループットを向上させるためには、上記ロードロック室11と同様の構成を有するアンロードロック室16を追加してもよい。図12を用いて、透明基板上に光半透過膜を形成する工程の一例を説明する。
1)バルブ14を閉じた後、ベントを行いロードロック室11内を大気圧にする。
2)バルブ12を開いてロードロック室11内に透明基板を一枚導入する。
3)バルブ12を閉じてロードロック室11を排気する。
4)ロードロック室11が所定の真空度に達した後、バルブ14を開いて透明基板をスパッタ室13に移動させる。
5)スパッタ室13にて、前述した図10に示す構成を用いて光半透過膜を形成する。
6)光半透過膜の成膜終了後、バルブ17を開いて基板をアンロードロック室16に移動させる。このときアンロードロック室16は所定の真空度まで排気されていることが必要である。
7)バルブ17を閉じた後、ベントを行いアンロードロック室を大気圧にする。
8)バルブ18を開いて基板を取り出す。
スパッタ室13内における光半透過膜の成膜が終了し、スパッタ室13からアンロードロック室16に基板が移動されるまでの間に、上記工程1)から4)までを終了させ、ロードロック室11に次の基板を待機させる。前回の成膜が終了して、スパッタ室13からアンロードロック室16に基板が移動されたら、待機させた透明基板をスパッタ室13に移動させ、引き続き光半透過膜の成膜を行う。このような工程により、装置のメンテナンス時等を除いて複数の基板間で、スパッタリング終了から次のスパッタリング開始までの間隔を継続的に常に一定にすることが可能となり、複数の基板間でターゲット及びシールドの温度及び表面状態を継続的に常に一定の状態に保ち、複数の基板間でスパッタリング条件を継続的に常に一定の状態に保つことが可能となる。これにより、例えば、位相角、透過率の変動が少ないハーフトーン位相シフトマスクブランクスを安定して製造することが可能である。具体的には、位相角及び透過率のブランクス間ばらつきがそれぞれ±2°以内、±4°以内であるハーフトーン位相シフトマスクブランクスを安定して製造することが可能である。
次に、光半透過膜の材質が位相角、透過率に与える影響について説明する。光半透過膜の位相角、透過率は成膜速度と窒化の度合いによって変化する。成膜速度と窒化の度合いはスパッタリング中の窒素分圧に影響を受けるが、光半透過膜が完全に窒化した状態では、スパッタリング中の窒素分圧の影響が小さくなる。窒化した金属シリサイド膜では、ESCAで測定した窒素の含有量がシリコンより大きくなるように、スパッタリング中に導入する窒素流量を調整することにより、窒素分圧の変動が光学特性に与える影響を小さくすることが可能である。この方法を用いれば、位相角と透過率の面内分布を小さくすることも同時に可能である。なお、スパッタリング中に窒素と同時に酸素を添加する場合には、位相角、透過率が酸素の流量変動の影響を大きく受けることになるが、少なくとも窒素の流量変動の影響については、上記の方法にて少なくすることができる。
なお、本発明におけるフォトマスクブランクとは、フォトマスクにおける例えば、遮光膜(クロム又はクロムに酸素、窒素、炭素等を含むクロム化合物、その他のクロム化合物等)及び位相シフトマスクブランクにおける位相シフト膜等を含む。
また、本発明における位相シフトマスクブランクにおいては、ハーフトーン型位相シフトマスクブランクのみならず、位相角のばらつきを±2°以内とする目的で、例えば、レベンソン型、補助パターン型、自己整合型(エッジ強調型)など、他の位相シフトマスクを製造するためのブランクにも適用可能である。
以下、本発明の実施例についてさらに詳細に説明する。
上記図10〜12で説明したDCマグネトロンスパッタリング装置を用い、ArFエキシマレーザー(193nm)用ハーフトーン型位相シフトマスクブランクス100枚を一枚ずつ一定間隔で連続成膜して作製した。
具体的には、モリブデン(Mo)とシリコン(Si)との混合ターゲット(Mo:Si=8:92mol%)を用い、アルゴン(Ar)と窒素(N)との混合ガス雰囲気(Ar:N=10%:90%、圧力:0.1Pa)で、反応性スパッタリング(DCスパッタリング)により、透明基板(サイズ6インチ角、厚さ0.25インチの石英基板)上に窒化されたモリブデン及びシリコン(MoSiN)の薄膜(膜厚約670オングストローム)を形成して、ArFエキシマレーザー(波長193nm)用位相シフトマスクブランク(膜組成:Mo:Si:N=7:45:48)を得た。
本実施例では、図10に示すように、スパッタリングターゲット2と基板6とが、基板とターゲットの対向する面が所定の角度を有するように、ターゲットと基板が配置されている構成の装置を用いた。この場合、図11に示す、スパッタリングターゲットと基板のオフセット距離は340mm、ターゲット−基板間垂直距離(T/S)は380mm、ターゲット傾斜角は15°とした。
光半透過膜の位相角はスパッタリング時間により調整し、露光波長における位相角が約180°に調整した。
実施例では、図10〜12に示すDCマグネトロンスパッタ装置において、図2に示すスパッタリングターゲットA(銅の溶射あり)、図2に示すスパッタリングターゲットにおいて銅の溶射がないスパッタリングターゲットB、図8(1)に示すスパッタリングターゲットC、図8(3)に示すスパッタリングターゲットD、をそれぞれ使用した。各スパッタリングターゲットは、バッキングプレート4に無酸素鋼を用い、スパッタリングターゲット5とバッキングプレート4の接着にはインジウムを用いている。
上記各ターゲットを使用して、100枚成膜した後、(1)ターゲット材の重量方向へのずれ、(2)膜厚分布均一性及び膜質分布均一性が低下する現象、(3)このターゲット材のずれに起因して生ずると考えられる異常放電や異物が被成膜基板上に出現する現象、について調べた。
その結果、スパッタリングターゲットAを使用した場合、(1)ターゲット材の重量方向へのずれはなく、(2)膜厚分布均一性及び膜質分布均一性の低下はみられず、(3)ターゲット材のずれに起因して生ずると考えられる異常放電や異物が被成膜基板上に出現する現象も観察されなかった。また、インジウム系の異物は検出されず、それに応じてピンホールの発生率及びパーティクル数が際立って少なくなることが確認された。
スパッタリングターゲットBを使用した場合、(1)ターゲット材の重量方向へのずれはなく、(2)膜厚分布均一性及び膜質分布均一性の低下もみられず、(3)ターゲット材のずれに起因して生ずると考えられる異常放電や異物が被成膜基板上に出現する現象も観察されなかった。しかし、インジウム系の異物が検出され、それに応じてピンホールの発生率及びパーティクル数が増加することが確認された。
スパッタリングターゲットC又はDを使用した場合、いずれの場合も、(1)ターゲット材の重量方向へのずれが観察され(スパッタリングターゲットDを使用した場合オーバーハング部分がほとんど無くなっていた。)、(2)膜厚分布均一性及び膜質分布均一性が低下する現象が生じ、(3)ターゲット材のずれに起因して生ずると考えられる異常放電や異物が被成膜基板上に出現する現象が観察された。また、インジウム系の異物が多数検出され、それに応じてピンホールの発生率及びパーティクル数が際立って多くなることが確認された。なお、これらの現象の発生量はスパッタリングターゲットDの方がCに比べ小さかった。
以上好ましい実施例をあげて本発明を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。
例えば、光半透過膜を構成する金属としてモリブデンを用いたが、これに限定されず、ジルコニウム、チタン、バナジウム、ニオブ、タンタル、タングステン、ニッケル、パラジウムなどを用いることができる。
また、金属とシリコンとを含むターゲットとして、モリブデンとシリコンからなるターゲットを用いたが、これに限定されない。金属とシリコンとを含むターゲットにおいて、モリブデンは上記金属の中で特に、透過率の制御性と金属とケイ素を含有するスパッタリングターゲットを用いた場合夕一ゲット密度が大きく、膜中のパーティクルを少なくすることができるという点において優れている。チタン、バナジウム、ニオブはアルカリ溶液に対する耐久性に優れているが、ターゲット密度においてモリブデンに若干劣っている。タンタルはアルカリ溶液に対する耐久性及びタ一ゲット密度において優れているが、透過率の制御性においてモリブデンに若干劣っている。タングステンはモリブデンとよく似た性質を持っているが、スパッタリング時の放電特性においてモリブデンより若干劣っている。ニッケルとパラジウムは、光学特性、及びアルカリ溶液に対する耐久性の面では優れているが、ドライエッチングがやや困難である。ジルコニウムは、アルカリ溶液に対する耐久性に優れているが、ターゲット密度においてモリブデンに劣っており、かつドライエッチングがやや困難である。これらのことを考慮すると現在のところモリブデンが最も好ましい。窒化されたモリブデン及びシリコン(MoSiN)の薄膜(光半透過膜)は、耐酸性や耐アルカリ性などの耐薬品性に優れる点でも、モリブデンが好ましい。
また、成膜時の放電安定性を確保しつつ位相シフトマスとしての諸特性を満足する組成の薄膜を得るためには、70〜95mol%のシリコンと、金属とを含んだターゲットを、窒素を含む雰囲気中でDCマグネトロンスパッタリングすることにより、窒素、金属及びシリコンとを含む光半透過膜を形成することが好ましい。
これは、ターゲット中のシリコン含有量が95mol%より多いと、DCスパッタリングにおいては、ターゲット表面上(エロージョン部)に電圧をかけにくくなる(電気が通りにくくなる)ため、放電が不安定となり、また70mol%より少ないと、高光透過率の光半透過部を構成する膜が得られないからである。また、窒素ガスとDCスパッタリングとの組合せによって、放電安定性はさらに向上するからである。
なお、成膜時の放電安定性は膜質にも影響し、放電安定性に優れると良好な膜質の光半透過膜が得られる。
なお、上記実施例において、本発明のスパッタリングターゲットを用いて、透光性基板上に光透過性膜を成膜してフォトマスクブランクを製造する方法を例示したが、本発明のスパッタリングターゲットは、このような特定の実施の形態に限定されるものではなく、種々の薄膜の製造に幅広く利用できるものである。
本発明の第1実施形態に係るスパッタリングターゲットを示す分解模式図である。 本発明の第1実施形態に係るスパッタリングターゲットを示す模式図である。 本発明の第1実施形態に係るスパッタリングターゲットの変形例を示す模式図である。 本発明の第1実施形態に係るスパッタリングターゲットの他の変形例を示す模式図である。 本発明の第1実施形態に係るスパッタリングターゲットの更に他の変形例を示す模式図である。 本発明の第2実施形態に係るスパッタリングターゲットを示す模式図である。 本発明の第3実施形態に係るスパッタリングターゲットを示す模式図である。 ターゲット材がバッキングプレートに対して重力方向にずれる現象を説明するための模式図である。 スパッタリングターゲットの一実施形態を示す模式図である。 実施例で使用したDCマグネトロンスパッタリング装置におけるスパッタ室の模式図である。 ターゲットと基板の位置関係を説明するための模式図である。 実施例で使用したDCマグネトロンスパッタリング装置における搬送系を説明するための模式図である。
符号の説明
1 真空槽
2 スパッタリングターゲット
3 基板ホルダ
4 ターゲット材
4a ターゲット主部
4b ターゲット突出部
4c 切り欠き部
5b バッキングプレート突出部
5d くり抜き部
5c 切り欠き部
5e 外周凸部
5 バッキングプレート
6 透明基板
30 ボンディング剤
40 封止金属

Claims (5)

  1. ターゲット材とバッキングプレートがボンディング剤を介して接合されてなるスパッタリングターゲットであって、
    前記ターゲット材が、円柱形状に対して底部外周の全周にわたり切り欠き部を設けることにより、前記切り欠き部が無いターゲット主部と、前記切り欠き部によって形成される前記ターゲット主部に対するターゲット突出部とからなる、断面凸状の構造を有し、
    前記バッキングプレートが、前記ターゲット材の前記ターゲット突出部及び前記ターゲット主部の切り欠き部側の面の少なくとも一部と互いに隙間無く嵌り合う構造を有し、
    前記スパッタリングターゲットは、傾斜させて設置した際、前記ターゲット材が重力方向に移動しない構造を有することを特徴とするスパッタリングターゲット。
  2. 前記スパッタリングターゲットの側壁に、前記ボンディング剤の露出を防ぐように形成された金属膜を有することを特徴とする請求項1記載のスパッタリングターゲット。
  3. 前記バッキングプレートが、ベース部と、前記ベース部に対して突出した凸状の構造であって前記ターゲット材と接合する接合部とを有し、
    前記接合部が、その中央部に、前記ターゲット材のターゲット突出部と嵌り合うように形成されたくり抜き部を有し、
    前記ターゲット材と前記バッキングプレートが、前記ターゲット材のターゲット主部の切り欠き部側の面が、前記バッキングプレートの接合部の外径よりも全周にわたり張り出すようにして、ボンディング剤を介して接合されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載のスパッタリングターゲット。
  4. 前記スパッタリングターゲットが、マスクブランクにおける薄膜を形成する際に用いられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のスパッタリングターゲット。
  5. 基板上にマスクパターンを形成するための薄膜を有するマスクブランクの製造方法において、
    前記薄膜は、前記基板をの表面を上向きに配置し、かつ前記スパッタリングターゲットのターゲット面を重力方向に対して0度〜90度の間の角度で配置して、請求項1乃至4のいずれかに記載のスパッタリングターゲットを用いてスパッタリング法で形成することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
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