JP4177151B2 - 位相シフトマスクブランクの製造方法および位相シフトマスクの製造方法 - Google Patents

位相シフトマスクブランクの製造方法および位相シフトマスクの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体デバイス製造プロセスにおいて使用される位相シフトマスクブランクおよび位相シフトマスクブランクの製造方法に関し、特に位相シフト膜の成膜方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体デバイスの微細化技術が進むにつれ、デバイス製造プロセスの安定化、及びより微小なパーティクルに対する対策が重要な事項として注目されてきている。2002年のITRS(International Technology Roadmap for Semiconductors)のロードマップでは、2004年には0.09μmのラインスペースの確立が求められており、フォトマスクにおける解像力もそれに従い無欠陥、超解像性が求められる。解像力を向上する方法の1つが位相シフトマスクであるが、現在もっとも良く使用されているのがハーフトーン型のものである。また、これに光近接効果補正方法(Optical Proximity Correction=OPC)を併せて用いることにより解像力の向上を図っている。
【0003】
上記位相シフトマスクとしては、構造が簡単で製造が容易な単層型の位相シフトマスクがある。この単層型の位相シフトマスクとしては、MoSiO、MoSiON等のMoSi系の材料からなる位相シフターを有するものなどが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような位相シフトマスクの製造に使用される位相シフトマスクブランクにおいて重要なことは、使用する露光波長における透過率、位相差、反射率、屈折率などの光学特性を満足しつつ、且つ薬品耐性などの耐久性および低欠陥を実現しなくてはならないことである。しかしながら、上記の単層型のハーフトーン型位相シフト膜は、光学特性を所望の値に設定すると膜組成が一義的に決まってしまうため、他の要求特性を満足した位相シフト膜を得ることが困難であった。
【0005】
この問題を回避するために、光学的な特性を満足する層と薬品耐性等のほかの特性を満足する層を複数設けた複数層の位相シフト膜を有する位相シフトマスクブランクが考案されている。このように膜構成を複層化することにより、機能性、耐久性の向上を図ることができる。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−140635号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述したような複数層の位相シフト膜を有する位相シフトマスクブランクを製造する際には、スパッタ法により透明基板上に各層の位相シフト膜を順次スパッタリング成膜する方法が一般的である。この場合、スパッタリング装置の成膜室内に、各層の位相シフト膜を成膜するための異なるターゲットを複数用意して、各層毎に種々のターゲットを放電させて成膜を行う。
【0008】
ところが、位相シフト膜の層数を増やしてゆくに従って、位相シフト膜に欠陥やパーティクルが発生しやすいという問題が生じてきた。そのため、複数層の位相シフト膜を有する位相シフトマスクブランクの製造において、低欠陥の位相シフトマスクブランクを製造することが困難であるという問題点があった。
【0009】
そこで本発明は、複数の位相シフト膜を有する位相シフトマスクブランクおよび位相シフトマスクであって、位相シフト膜が低欠陥のものを製造する方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明は、2層以上の位相シフト膜を有する位相シフトマスクブランクの製造方法であって、少なくとも、前記2層以上の位相シフト膜の各層の位相シフト膜の成膜に使用する組成の異なるターゲットをそれぞれ用意し、スパッタ法によりターゲットを用いて各々組成の異なる2層以上の位相シフト膜を基板上に順次成膜する工程を含み、前記各層の位相シフト膜を成膜する工程は、いずれかの層の位相シフト膜の成膜に用いるターゲットの全てを、他の層の位相シフト膜を成膜する際にも放電を停止することなく放電させ続けて、各層の位相シフト膜を成膜することを特徴とする位相シフトマスクブランクの製造方法である(請求項1)。
【0011】
このようにスパッタ法により2以上のターゲットを用いて組成の異なる複数の位相シフト膜を基板上に順次成膜する位相シフトマスクブランクの製造方法において、位相シフト膜の全ての層において、一度でも使用するターゲットは、他の層を成膜する場合でも放電しつづけることで、スパッタリング成膜の放電を安定させ、低欠陥の位相シフト膜を有する位相シフトマスクブランクを製造することができる。
【0012】
この場合、前記各層の位相シフト膜を成膜する工程は、いずれかの層の位相シフト膜の成膜に用いるターゲットをその層の位相シフト膜を成膜する際には成膜に必要な所定出力で放電させ、他の層の位相シフト膜を成膜する際には出力を下げて放電を継続させることが好ましい(請求項2)。
【0013】
このように、位相シフト膜の成膜時に、いずれかの層の位相シフト膜の成膜に用いるターゲットをその層の位相シフト膜を成膜する際には成膜に必要な所定出力で放電させ、他の層の位相シフト膜を成膜する際には出力を下げて放電を継続させることにより、各層の位相シフト膜の組成を所望のものとすることができる。
【0014】
この場合、前記位相シフト膜の成膜は、位相シフト膜の構成元素を、金属元素、Si、N、Oから成るものとして行うことができる(請求項3)。
このように本発明の方法により、各層の位相シフト膜の構成元素を金属元素、Si、N、Oから成るものして成膜を行うことにより、欠陥が少なく、所望の光学的特性および薬品耐性等を有する位相シフト膜を形成することができる。
【0015】
この場合、位相シフト膜の構成元素である金属元素を、Moとすることが好ましい(請求項4)。
このように位相シフト膜構成元素中の金属元素をMoとした場合は、例えばMoを含む位相シフト膜をスパッタ成膜するためのモリブデンシリサイドターゲットは、緻密で高純度のものを得易いので、高品質の位相シフト膜を形成できるので好ましい。
【0016】
そして本発明は、上記本発明の製造方法で製造された位相シフトマスクブランクである(請求項5)。
このように本発明の製造方法で製造された位相シフトマスクブランクは、位相シフト膜のスパッタ成膜時にターゲットの放電が安定していたため、低欠陥のものとなる。
【0017】
さらに本発明は、本発明の製造方法により製造された位相シフトマスクブランクの位相シフト膜上にリソグラフィー法にてパターンを形成することを特徴とする位相シフトマスクの製造方法である(請求項6)。
このように本発明の製造方法により製造された位相シフトマスクブランクの位相シフト膜上にパターンを形成して位相シフトマスクを製造すれば、位相シフト膜の欠陥が少ない高品質の位相シフトマスクを製造することができる。
【0018】
そして、本発明の製造方法により製造された位相シフトマスクブランクは、例えば、位相シフトマスクブランクであって、基板上に組成の異なる2層以上の位相シフト膜を具備し、前記2層以上の位相シフト膜はそれぞれ隣接する位相シフト膜の組成を1〜10%含むものであることを特徴とする位相シフトマスクブランクである(請求項7)。
【0019】
このように、基板上に組成の異なる複数の位相シフト膜を具備し、各位相シフト膜がそれぞれ隣接する位相シフト膜の組成を1〜10%含む位相シフトマスクブランクは、成膜に用いるターゲットの放電を停止することなく、各層の位相シフト膜の成膜におけるスパッタ放電が安定して成膜されたものであるため、各層の位相シフト膜の欠陥が少ない高品質のものとなる。
【0020】
この場合、前記位相シフト膜は、その構成元素が、金属元素、Si、N、Oから成るものとすることができ(請求項8)、金属元素がMoであるものとすることができる(請求項9)。
このように、各層の位相シフト膜の構成元素を金属元素、Si、N、Oから成るものであれば、所望の光学的特性および薬品耐性等を有する位相シフト膜となる。特に、構成元素中の金属元素をMoである場合は、Moを含む位相シフト膜をスパッタ成膜するためのモリブデンシリサイドターゲットは、緻密で高純度のものを得易いので、高品質の位相シフト膜となる。
【0021】
また、本発明の位相シフトマスクブランクの位相シフト膜にパターン形成がされた位相シフトマスクは(請求項10)、複数層の位相シフト膜が形成されているにもかかわらず各層の欠陥が少ないため、高品質の位相シフトマスクとできる。
【0022】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
上述したように複数層の位相シフト膜を透明基板上に成膜する場合、金属含有量の異なるターゲットを使用して各層をスパッタリング成膜する方法が一般的である。しかしながら、位相シフト膜の層数を増やしてゆくに従って、位相シフト膜の欠陥量が増加することが分かってきた。
【0023】
そこで本発明者らが、この原因を調査した結果、各層におけるスパッタリング成膜の開始・終了時にターゲットからの放電が不安定となり、パーティクルの飛散や膜へのダメージが生じていることが原因であることが判明した。
【0024】
すなわち従来の方法では、図2に示すように、スパッタリング装置10を用いて透明基板1上に複数層の位相シフト膜2、2’を形成する場合、1つの成膜室11内に各層の位相シフト膜2、2’を成膜するための各種金属含有量の金属シリサイドターゲット12、12’またはシリコンターゲット13、13’を複数取り付け、スパッタリングガス導入口14からスパッタリングガスを導入する(図2(a))。
【0025】
そして用意したターゲット12、12’、13、13’の内、その層の位相シフト膜2の成膜に用いるターゲット12、13だけについて放電を開始して、その層の成膜を行う(図2(b))。その層の成膜が終了すると、一旦、その層の成膜に用いていたターゲット12、13の放電を停止し、次の層の位相シフト膜2’の成膜に用いるターゲット12’、13’の放電を開始して、その層の位相シフト膜2’の成膜を行い、位相シフトマスクブランク4を製造する(図2(c))。
ところが、このようにターゲットの放電の開始・終了を繰り返すとターゲットの放電が不安定なものとなり、位相シフト膜に欠陥が生じることが判明した。
【0026】
また、多数のターゲットをセットしたスパッタリング装置では、未放電のターゲットに他のターゲットから生じた成膜成分が付着することがある。この付着物が絶縁性である場合、再度放電を開始した時にアークの発生原因となる。このようなアークの発生が致命的な欠陥の原因となることも、本発明者らは発見した。
【0027】
そこで本発明者らは、複数層の位相シフト膜のいずれかの層において、成膜に一度でも使用するターゲットは、他の層を成膜する場合でも放電し続ける方法を発想した。このようにすれば、スパッタリング成膜の開始・終了時の放電不安定を解決することができ、未放電のターゲットに他のターゲットから生じた成膜成分が付着することも防ぐことができる。
【0028】
本発明者らは、各ターゲットへの放電電力を下げていった場合の不安定放電による膜欠陥増加について調査した。その結果、少なくとも通常放電時の1/20(5%)の放電電力が印加されていれば、膜欠陥の増加が認められないことが確認できた。
【0029】
したがって、いずれかの層の位相シフト膜の成膜に用いるターゲットをその層の位相シフト膜を成膜する際には成膜に必要な所定出力で放電させ、他の層の位相シフト膜を成膜する際には出力を下げて放電を継続させるようにすれば良く、各層の組成も所望のものとすることができる。
【0030】
この場合、各ターゲットに少なくとも上記放電電力を印加し続けて位相シフト膜の成膜を行った場合、各層の位相シフト膜はそれぞれ隣接する位相シフト膜の組成を1〜10%含むものとなる。このような位相シフトマスクブランクは、各層の位相シフト膜を成膜する際に、各ターゲットの放電を停止させずに安定して放電させたものであるため、位相シフト膜の欠陥を少なくすることができる。さらに、各層に含まれる他の層の組成がこの程度の量であれば、各層の光学特性等に大きな影響を及ぼすこともない。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明において、スパッタリング方法は、直流電源を用いたものでも高周波電源を用いたものでもよく、また、マグネトロンスパッタリング方式であっても、コンベンショナル方式、あるいはその他の方式であってもよい。
【0032】
スパッタリングガスの組成は、アルゴン、キセノン等の不活性ガスと窒素ガスや酸素ガス、各種酸化窒素ガス、酸化炭素ガス等を、成膜される位相シフト膜が所望の組成を持つように、適宜に添加することで成膜される。
【0033】
この場合、成膜される位相シフト膜の透過率を上げたい時には、膜中に酸素及び窒素が多く取込まれるようにスパッタリングガスに添加する酸素や窒素を含むガスの量を増やす方法や、スパッタリングターゲットに予め酸素や窒素を多く添加したモリブデンシリサイドを用いる方法などにより調整することができる。
【0034】
具体的にMo、Si、O、Nを構成元素とする位相シフト膜を成膜する場合には、例えば、ターゲットとしてモリブデンシリサイドを用い、スパッタガスとしてアルゴンガスと窒素ガスと酸素ガスを含むスパッタガスで反応性スパッタリングすることが好ましい。
【0035】
このようにして成膜されるMoSiON膜の組成は、例えば、Mo:0.2〜25原子%、Si:10〜57原子%、O:2〜20原子%、N:5〜57原子%であることが好ましい。
【0036】
そして、本発明の方法により位相シフトマスクブランクを製造する場合には、まず、図1に示すように、スパッタリング装置10の成膜室11内に、石英等から成る透明基板1を配置し、成膜室11内に各層の位相シフト膜2、2’を成膜するための各種金属含有量の金属シリサイドターゲット12、12’またはシリコンターゲット13、13’を複数取り付け、スパッタリングガス導入口14から、前述したようなスパッタリングガスを導入する(図1(a))。
【0037】
そして用意したターゲット12、12’、13、13’の内、位相シフト膜2の成膜に主に用いるターゲット12、13に所定の電力を印加し、放電を開始して、位相シフト膜2の成膜を行う。このとき、この層の位相シフト膜2の成膜には主に用いないターゲット12’、13’についても、安定して放電できる最小の出力程度で放電させる(図1(b))。
【0038】
この層の位相シフト膜2の成膜が終了すると、次の層の位相シフト膜2’の成膜に主に用いるターゲット12’、13’に印加する電力を、成膜に必要な所定の電力まで上げて、位相シフト膜2’の成膜を行う。このとき、前の層の位相シフト膜2の成膜で主に用いていたターゲット12,13についても、放電を停止せず、安定して放電できる最小の出力程度に出力を下げて放電を継続させる。このようにして、透明基板1上に位相シフト膜2、2’を成膜して、位相シフトマスクブランク4を製造する(図1(c))。
【0039】
このように、各ターゲットは位相シフト膜の成膜中常に放電し続けるため、放電は安定したものとなり、位相シフト膜に欠陥やパーティクルが生じることを防ぐことができる。また、未放電のターゲットに他のターゲットから生じた成膜成分が付着することも防ぐことができ、アークが発生することも防止できる。
【0040】
なお、本発明の位相シフトマスクブランクは透明基板上に複数層の位相シフト膜のみを成膜したものに限定されず、例えば、本発明の方法で成膜した位相シフト膜上に、Cr系遮光膜を設けたり、さらにそのCr系遮光膜上に、Cr系遮光膜からの反射を低減させるCr系反射防止膜を形成することもできる。基板の種類も特に限定されない。
【0041】
また、本発明の位相シフトマスクは、上記のようにして得られる位相シフトマスクブランクの位相シフト膜上にリソグラフィー法により、パターン形成されてなるものである。
具体的に位相シフトマスクを製造する場合は、図5(a)に示したように、上記のようにして透明基板1上に位相シフト膜2、2’を形成して、位相シフトマスクブランク4を製造した後、位相シフト膜2’上にレジスト膜3を形成し、図5(b)に示したように、露光、現像することによってレジスト膜3をパターンニングし、更に、図5(c)に示したように、位相シフト膜2、2’をエッチングした後、図5(d)に示したように、レジスト膜3を剥離して、位相シフトマスク5を製造する方法が採用し得る。この場合、レジスト膜の塗布、パターンニング(露光、現像)、エッチング、レジスト膜の除去は、公知の方法によって行うことができる。
【0042】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例)
反応性スパッタリング装置を用いて、石英から成る基板に2層の位相シフト膜を成膜した。まず、反応性スパッタリング装置の同一の成膜室に石英基板に対向するターゲットを配置した。本実施例ではターゲットとして、組成の異なるMoSiターゲット1,MoSiターゲット2のMoSiターゲット2個と、Siターゲット1,Siターゲット2のSiターゲット2個を配置した。
【0043】
まず、MoSiターゲット1とSiターゲット1により膜組成1のMoSiONから成る位相シフト膜を成膜した。スパッタリングガスとしては、反応性ガスとしてNOを用い、不活性ガスとしてはArを用いた。このようにして、膜組成1の位相シフト膜を300Å積層した後に、MoSiターゲット2とSiターゲット2により膜組成2のMoSiONから成る位相シフト膜を成膜した。
【0044】
なお、本実施例においては、図3に示すように、各々のターゲットの放電を完全に停止することなく、膜組成1の位相シフト膜を成膜中に、膜組成2の位相シフト膜の成膜に関するターゲットの出力を放電が安定する最小の出力で放電させた。同様に膜組成2の位相シフト膜を成膜中に膜組成1の成膜に関するターゲットの出力を放電が安定する最小の出力で放電させた。このようにして、試料用の2つの位相シフトマスクブランクを製造した。
【0045】
このようにして製造した2つの位相シフトマスクブランクの位相シフト膜の0.2μm以上のパーティクル総量を検査した。欠陥検査機は(株)日立デコー製GM−1000を用いて測定を行った。なお、パーティクルの測定は成膜起因のパーティクルを正確に測定するため、まず成膜後、洗浄をせずにパーティクルの測定を行い、次に洗浄した後にパーティクルの測定を行った。そして、洗浄前後に存在する欠陥で同一のものを成膜起因のパーティクルとしてカウントした。結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
Figure 0004177151
【0047】
上記のように、本発明の方法で成膜した位相シフト膜には、いずれの試料用の位相シフトマスクブランクにおいても、0.2μm以上のパーティクルが2個しか存在していないことが判る。これは、各ターゲットの放電を停止させず放電させ続けたことにより、放電が安定したことが原因と考えられる。
なお、本実施例では、各層の位相シフト膜の成膜に主に用いないターゲットも放電し続けたため、各層の位相シフト膜には隣接する層の膜組成も1〜10%含有されていることが確認された。しかし、この程度の量であれば、各層の光学特性等に大きな影響を与えることはない。
【0048】
(比較例)
実施例と同じ反応性スパッタリング装置に同じターゲットを配置して、石英基板に2層の位相シフト膜を成膜した。実施例と同様に、MoSiターゲット1とSiターゲット1により膜組成1のMoSiONから成る位相シフトマスクを成膜し、膜組成1を300Å積層した後に、MoSiターゲット2とSiターゲット2により膜組成2のMoSiONから成る位相シフト膜を成膜した。
【0049】
ここで、本比較例では、図4に示すように、膜組成1の位相シフト膜を形成する際には、MoSiターゲット1およびSiターゲット1のみを放電させ、MoSiターゲット2およびSiターゲット2の放電は完全に停止し、次に膜組成2の位相シフト膜を形成する際には、MoSiターゲット2およびSiターゲット2のみを放電させ、MoSiターゲット1およびSiターゲット1の放電は完全に停止した。このようにして、試料用の2つの位相シフトマスクブランクを製造した。
【0050】
このようにして成膜した位相シフト膜の0.2μm以上のパーティクル総量を実施例と同様に検査した。結果を表2に示す。表2より、比較例の位相シフト膜はいずれの試料においても、0.2μm以上のパーティクルが多く存在することが判る。これは、ターゲットの放電開始・終了時に放電が不安定となり、パーティクルの飛散等が生じたことが原因と考えられる。
【0051】
【表2】
Figure 0004177151
【0052】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は単なる例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0053】
例えば、上記実施形態においては、石英基板上に2層の位相シフト膜を形成する場合を中心に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、3層以上の位相シフト膜を有する位相シフトマスクブランク、位相シフトマスクの製造に適用できるものである。
【0054】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明により、複数層の位相シフト膜を有する位相シフトマスクブランクおよび位相シフトマスクであって、各層の位相シフト膜の欠陥が著しく少ない位相シフトマスクブランクおよび位相シフトマスクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(c)は、本発明の位相シフトマスクブランクの製造方法を示すフロー図である。
【図2】(a)〜(c)は、従来の位相シフトマスクブランクの製造方法を示すフロー図である。
【図3】実施例のターゲットの成膜出力の変化を示したグラフ図である。
【図4】比較例のターゲットの成膜出力の変化を示したグラフ図である。
【図5】(a)〜(d)は、本発明の位相シフトマスクが製造される様子を示したフロー図である。
【符号の説明】
1…透明基板、 2,2’…位相シフト膜、 3…レジスト膜、 4…位相シフトマスクブランク、 5…位相シフトマスク、
10…スパッタリング装置、 11…成膜室、 12,12’…金属シリサイドターゲット、 13,13’…シリコンターゲット、 14…スパッタリングガス導入口。

Claims (5)

  1. 2層以上の位相シフト膜を有する位相シフトマスクブランクの製造方法であって、少なくとも、前記2層以上の位相シフト膜の各層の位相シフト膜の成膜に使用する組成の異なるターゲットをそれぞれ用意し、スパッタ法により該ターゲットを用いて各々組成の異なる2層以上の位相シフト膜を基板上に順次成膜する工程を含み、前記各層の位相シフト膜を成膜する工程は、いずれかの層の位相シフト膜の成膜に用いるターゲットの全てを、他の層の位相シフト膜を成膜する際にも放電を停止することなく放電させ続けて、各層の位相シフト膜を成膜することを特徴とする位相シフトマスクブランクの製造方法。
  2. 前記各層の位相シフト膜を成膜する工程は、いずれかの層の位相シフト膜の成膜に用いるターゲットをその層の位相シフト膜を成膜する際には成膜に必要な所定出力で放電させ、他の層の位相シフト膜を成膜する際には出力を下げて放電を継続させることを特徴とする請求項1に記載の位相シフトマスクブランクの製造方法。
  3. 前記位相シフト膜の成膜は、位相シフト膜の構成元素を、金属元素、Si、N、Oから成るものとして行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の位相シフトマスクブランクの製造方法。
  4. 前記金属元素を、Moとすることを特徴とする請求項3に記載の位相シフトマスクブランクの製造方法。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の製造方法により製造された位相シフトマスクブランクの位相シフト膜上にリソグラフィー法にてパターンを形成することを特徴とする位相シフトマスクの製造方法。
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