JP2017171974A - ポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子、その製造方法、及びそれを用いた印刷用組成物及び磁性体膜 - Google Patents

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敏孝 石崎
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健一 矢次
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Kunio Aketo
邦夫 明渡
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Yoshio Yamauchi
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Abstract

【課題】 アルコール系溶媒等の親水性溶媒を用いた印刷用組成物として印刷により磁性体膜を得る際に、均一性が非常に高くかつ透磁率等の磁気特性が十分に優れた磁性体膜を得ることを可能とするポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子を提供すること。【解決手段】 ニッケル含有率が71〜95at%でありかつ平均粒子径が1〜400nmである鉄ニッケル合金微粒子と、前記鉄ニッケル合金微粒子の表面の少なくとも一部を被覆する主骨格にエーテル結合を有するポリマー及び/又はその熱分解生成物と、からなることを特徴とするポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子。【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子及びその製造方法、並びにそのポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子を用いた印刷用組成物及び磁性体膜に関する。
ハイブリッド自動車の高性能化に伴い、パワーコントロールユニット(PCU)の小型・高出力化が期待されている。そのためには、インダクタやトランスといった受動素子も小型・高出力化していく必要がある。そこで、受動素子を小型化する一つの手法として、磁性体粒子をペースト化して制御基板上の空芯コイルに印刷して磁性体膜を形成する、小型印刷受動素子形成技術が注目を集めている。このような技術の実用化のためには、磁性体粒子を溶剤と混合して塗布しやすいペースト(印刷用組成物)を作る必要がある。その際、用いる溶剤が疎水性溶媒だと、揮発が早く、またチクソ性が良好でないため、均一な塗布膜を形成することが難しい。そのため、揮発し難く、取扱いが簡易なアルコール系溶媒等の親水性溶媒を用いて印刷用組成物を得ることが望まれている。そして、磁性体粒子には、溶剤中に安定に分散し、凝集しないことが望まれている。また、受動素子を小型化するには、1MHz以上の高周波動作が可能な素子を開発すれば良いが、周波数を高くするとコアに用いる磁性体膜の損失(鉄損)が大きくなるという課題があり、透磁率が高く損失が低い磁性体が求められている。
このような印刷により磁性体膜を形成する技術に関し、例えば、I.Kowase et al.,IEEE.T.Magn.,2005,41,3991−3993(非特許文献1)には、平均粒子径が7μmのMn−Znフェライト粒子とポリアミック酸を質量比で3:1で混合してペーストを調製し、スクリーン印刷でペーストを塗布して、572Kで60分間焼成を行って厚さ150μmのMn−Znフェライト−ポリイミド複合体磁性体膜を作製する技術が報告されている。しかしながら、非特許文献1に記載された磁性体膜においては、ミクロンサイズである粒子間の接触点が少ないため、高い透磁率が得られず、さらに、ポリイミドに分散させた膜になるため、有機成分の存在によって透磁率が低下してしまうという問題点があった。
また、G.W.Qin et al.,J.Magn.Magn.Mater.,2009,321,4057−4062(非特許文献2)には、アルカリ性のプロピレングリコール中で塩化鉄と塩化ニッケルを180℃で2時間還元せしめてパーマロイ(Ni80Fe20)ナノ粒子を合成し、得られたパーマロイナノ粒子をアルコールと混合してペーストを調製し、ペーストをガラス板に塗布して磁場をかけながら100℃で焼成して磁性体膜を作製する技術が報告されている。しかしながら、非特許文献2に記載された磁性体膜においては、粒子の表面にプロピレングリコール又はプロピレングリコールから生成した3,4−ヘキサンジオンが結合しているものの、安定に配位しないのでアルコール系溶媒に対して分散性を良好に維持することができないため、磁性体膜において粒子が凝集してしまい、高い透磁率を得ることが難しいという問題があった。
さらに、D.Kodama et al.,J.Appl.Phys.,2010,107,09A320(非特許文献3)には、エチレングリコール中で合成した1μm以下のパーマロイ(Fe−Ni)ナノ粒子を、誘電性樹脂に分散させて磁性体膜を作製する技術が報告されている。しかしながら、非特許文献3に記載された磁性体膜においては、サブミクロンサイズである粒子間の接触点が少ないため、高い透磁率が得られず、さらに、誘電性樹脂に分散させた膜になるため、有機成分の存在によって透磁率が低下してしまうという問題点があった。
また、Y.Chen et al.,Mater.Chem.Phys.,2009,113,412−416(非特許文献4)には、オレイルアミン中でNi(II)アセチルアセトナート錯体とFe(III)アセチルアセトナート錯体とを還元せしめることによりオレイルアミン被覆パーマロイ(Fe−75at.%Ni)ナノ粒子を合成する技術が報告されている。しかしながら、非特許文献4に記載されたパーマロイ粒子においては、オレイルアミンが被覆材として安定でないため、オレイルアミンの被覆量が少ないと粒子の組成や粒径が不均一になってしまい、他方、オレイルアミンの被覆量が多いと透磁率等の磁気特性が低下してしまうという問題があった。また、オレイルアミン被覆粒子は、表面が疎水性となるため、アルコール系溶媒に対する分散性が不十分となり、印刷性が良好なペーストを作ることが難しいという問題もあった。
さらに、国際公開第2012/141205号(特許文献1)には、鉄含有化合物、ニッケル含有化合物及び保護ポリマーを含有する液体に還元剤を添加して鉄ニッケル含有前駆体粒子を合成し、得られた前駆体粒子を水素雰囲気下で300〜1000℃で還元せしめることによりL1型鉄ニッケル合金粒子を製造する方法が開示されている。しかしながら、特許文献1において実施例で実際に用いられている保護ポリマーはポリビニルピロリドンのみであり、また、特許文献1において開示されているL1型鉄ニッケル合金粒子の組成はFe:Niモル比が0.3:0.7〜0.7:0.3の範囲内のものであった。
国際公開第2012/141205号
I.Kowase et al.,IEEE.T.Magn.,2005,41,3991−3993 G.W.Qin et al.,J.Magn.Magn.Mater.,2009,321,4057−4062 D.Kodama et al.,J.Appl.Phys.,2010,107,09A320 Y.Chen et al.,Mater.Chem.Phys.,2009,113,412−416
本発明者らは、本発明に先立って特許文献1に記載のL1型鉄ニッケル合金粒子の製造方法を検討したところ、ポリビニルピロリドンで被覆された鉄ニッケル合金粒子は、アルコール系溶媒等の親水性溶媒に対する分散性が十分ではなく、親水性溶媒を用いた印刷用組成物として印刷により磁性体膜を得る際に粒子が凝集してしまい、得られる磁性体膜の均一性の向上に限界があるという問題があることを見出した。さらに、本発明者らは、特許文献1に記載の方法で得られるFe:Niモル比が0.3:0.7〜0.7:0.3の範囲内のL1型鉄ニッケル合金粒子では、得られる磁性体膜の透磁率等の磁気特性という点においても必ずしも十分なものではないことを見出した。
本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、アルコール系溶媒等の親水性溶媒を用いた印刷用組成物として印刷により磁性体膜を得る際に、均一性が非常に高くかつ透磁率等の磁気特性が十分に優れた磁性体膜を得ることを可能とするポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子及びその製造方法、並びにそのポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子を用いた印刷用組成物及び磁性体膜を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ニッケル含有率が71〜95at%でありかつ平均粒子径が1〜400nmである鉄ニッケル合金微粒子の表面を主骨格にエーテル結合を有するポリマー及び/又はその熱分解生成物で被覆することにより、アルコール系溶媒等の親水性溶媒を用いた印刷用組成物として印刷により磁性体膜を得る際に、均一性が非常に高くかつ透磁率等の磁気特性が十分に優れた磁性体膜を得ることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子は、ニッケル含有率が71〜95at%でありかつ平均粒子径が1〜400nmである鉄ニッケル合金微粒子と、前記鉄ニッケル合金微粒子の表面の少なくとも一部を被覆する主骨格にエーテル結合を有するポリマー及び/又はその熱分解生成物と、からなることを特徴とするものである。
本発明のポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子においては、前記鉄ニッケル合金微粒子が、ニッケル含有率が75〜90at%であるパーマロイ微粒子であることが好ましい。
また、本発明のポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子においては、前記主骨格にエーテル結合を有するポリマーが、ポリエチレングリコールであることが好ましい。
本発明の印刷用組成物は、前記本発明のポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子が親水性溶媒中に分散していることを特徴とするものである。
また、本発明の磁性体膜は、前記本発明のポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子を含有していることを特徴とするものである。
さらに、本発明のポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子の製造方法は、
鉄原子とニッケル原子との比率(原子比)が29:71〜5:95となるように鉄含有化合物及びニッケル含有化合物を含有しており、かつ、主骨格にエーテル結合を有するポリマーを含有している有機溶媒中で、還元剤を用いて前記ポリマー及び/又はその熱分解生成物により表面の少なくとも一部が被覆されている鉄ニッケル含有前駆体微粒子を得る工程と、
前記鉄ニッケル含有前駆体微粒子を還元雰囲気中で250〜500℃で還元せしめることにより、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子を得る工程と、
を含むことを特徴とする方法である。
なお、本発明において、ニッケル含有率が71〜95at%でありかつ平均粒子径が1〜400nmである鉄ニッケル合金微粒子の表面を主骨格にエーテル結合を有するポリマー及び/又はその熱分解生成物で被覆することによって、アルコール系溶媒等の親水性溶媒を用いた印刷用組成物として印刷により磁性体膜を得る際に、均一性が非常に高くかつ透磁率等の磁気特性が十分に優れた磁性体膜を得ることが可能となる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。
すなわち、本発明のポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子においては、主骨格にエーテル結合を有するポリマー及び/又はその熱分解生成物により表面が被覆されているため、アルコール系溶媒等の親水性溶媒に対して高い親和性を有しており、粒子が凝集することなく溶媒に良好に分散し、印刷特性が良好な印刷用組成物が得られるようになる。そのため、本発明のポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子を親水性溶媒に分散せしめた印刷用組成物を用いることにより、粒子の凝集が十分に抑制されて組成や膜厚の均一性が非常に高い磁性体膜が得られるようになり、このように磁性体膜の均一性が非常に高いことと有機成分が少ないことに起因して透磁率等の磁気特性が向上する。また、本発明のポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子は平均粒子径が1〜400nmと微細であるため、磁性体膜とした際に粒子間の接触点が多くなり、このように粒子が微細であることに起因しても透磁率等の磁気特性が向上する。さらに、本発明のポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子におけるニッケル含有率は71〜95at%であり、このような鉄ニッケル合金の組成に起因しても透磁率等の磁気特性が向上する。本発明においては、このように磁性体膜の均一性が非常に高くかつ有機成分が少ないことと、粒子が微細であることと、鉄ニッケル合金におけるニッケル含有率が71〜95at%であることとが相乗的に作用し、透磁率等の磁気特性が十分に優れた磁性体膜が得られるものと本発明者らは推察する。
本発明によれば、アルコール系溶媒等の親水性溶媒を用いた印刷用組成物として印刷により磁性体膜を得る際に、均一性が非常に高くかつ透磁率等の磁気特性が十分に優れた磁性体膜を得ることを可能とするポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子及びその製造方法、並びにそのポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子を用いた印刷用組成物及び磁性体膜を提供することが可能となる。
(A)は調製例1で得られたPEG被覆Fe−80Ni前駆体微粒子を還元熱処理した際のX線回折(XRD)スペクトルを示すグラフであり、(B)は比較調製例1で得られたPVP被覆Fe−80Ni前駆体微粒子を還元熱処理した際のX線回折(XRD)スペクトルを示すグラフである。 調製例1で得られたPEG被覆Fe−80Ni前駆体微粒子を還元熱処理した際の熱重量分析(TGA)の結果を示すグラフである。 実施例1で得られたPEG被覆Fe−80Ni合金微粒子の形態を示す透過型電子顕微鏡(TEM)写真であり、(A)は低倍率、(B)は高倍率の写真である。 比較例1で得られたPVP被覆Fe−80Ni合金微粒子の形態を示す透過型電子顕微鏡(TEM)写真であり、(A)は低倍率、(B)は高倍率の写真である。 実施例1で得られたPEG被覆Fe−80Ni合金微粒子及び比較例1で得られたPVP被覆Fe−80Ni合金微粒子についてのX線光電子(XPS)スペクトルを示すグラフである。 PEG原料、調製例1で得られたPEG被覆Fe−80Ni前駆体微粒子及び実施例1で得られたPEG被覆Fe−80Ni合金微粒子について飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)で分析した結果を示すグラフである。 (A)は実施例4で得られた磁性体膜の形態を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真であり、(B)は比較例2で得られた磁性体膜の形態を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
(ポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子)
先ず、本発明のポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子について説明する。本発明のポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子は、ニッケル含有率が71〜95at%でありかつ平均粒子径が1〜400nmである鉄ニッケル合金微粒子と、前記鉄ニッケル合金微粒子の表面の少なくとも一部を被覆する主骨格にエーテル結合を有するポリマー及び/又はその熱分解生成物と、からなることを特徴とするものである。
本発明にかかる鉄ニッケル合金は、鉄(Fe)とニッケル(Ni)との合金(Fe−Ni合金)であり、ニッケル含有率が71〜95at%であることが必要である。ニッケルの含有率が71at%未満の場合は、十分に優れた透磁率を有する磁性体膜を得ることができず、他方、95at%を超える場合も、十分に優れた透磁率を有する磁性体膜を得ることができない。本発明にかかる鉄ニッケル合金としては、より高い透磁率を有する磁性体膜を得ることができる傾向にあるという観点から、ニッケル含有率が75〜90at%であるパーマロイであることが特に好ましい。
また、本発明にかかる鉄ニッケル合金は、鉄とニッケルとの二元系合金であることが好ましく、したがって鉄の含有率が10〜25at%であることが好ましいが、透磁率向上や損失低減という観点から、Mo、Cu、Cr、Si、B等の元素が更に添加されていてもよい。なお、このような添加元素の含有量は、5at%以下であることが好ましい。
本発明にかかる鉄ニッケル合金微粒子は、前記鉄ニッケル合金の微粒子であり、平均粒子径が1〜400nmであることが必要である。平均粒子径が1nm未満の鉄ニッケル合金微粒子は実質的に製造することが困難であり、他方、平均粒子径が400nmを超える場合は、十分に優れた透磁率を有する磁性体膜を得ることができず、また、得られる磁性体膜の損失(鉄損)が大きくなってしまう。本発明にかかる鉄ニッケル合金微粒子としては、得られる磁性体膜の透磁率がより向上し、また、損失がより小さくなる傾向にあるという観点から、平均粒子径が2〜100nmであることが好ましく、超常磁性相によりヒステリシス損失も低減されるという観点から、平均粒子径が3〜30nmであることが特に好ましい。
また、本発明にかかる鉄ニッケル合金微粒子は、前記鉄ニッケル合金のみからなる微粒子であることが好ましいが、B、C、Si、O、Na、N、H等の不純物が含有されていてもよい。なお、このような不純物の含有量は、20質量%以下であることが好ましい。
本発明のポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子においては、前記鉄ニッケル合金微粒子の表面の少なくとも一部が、主骨格にエーテル結合を有するポリマー及び/又はその熱分解生成物により被覆されている。
本発明にかかる「主骨格にエーテル結合を有するポリマー」は、後述する本発明のポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子の製造方法において被覆材として用いられるものであり、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリブチレングリコール、ポリグリセリン等が挙げられ、中でも、得られる磁性体膜の均一性と透磁率がより向上する傾向にあるという観点から、ポリエチレングリコールが特に好ましい。
また、本発明にかかる「主骨格にエーテル結合を有するポリマーの熱分解生成物」は、後述する本発明のポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子の製造方法における熱処理によって前記ポリマーが分解して生成する化合物であり、用いるポリマーに応じて種々の化合物が包含されるが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のモノアルコール系化合物、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン等のポリオール系化合物が挙げられる。
本発明においては、前記鉄ニッケル合金微粒子の表面が前記主骨格にエーテル結合を有するポリマー及び/又はその熱分解生成物により被覆されているため、アルコール系溶媒等の親水性溶媒に対して高い親和性を有することとなり、粒子が凝集することなく溶媒に良好に分散して印刷特性が良好な印刷用組成物が得られるようになり、それによって均一性が非常に高くかつ透磁率等の磁気特性が十分に優れた磁性体膜が得られる。なお、このような鉄ニッケル合金の透磁率は、わずかな組成のバラツキで大きく変化するため、良好な磁気特性を得るためには均一性が高いことが重要である。一方、前述の特許文献1に記載されているポリビニルピロリドン(PVP)のような主骨格にエーテル結合を有していないポリマーを用いても、アルコール系溶媒等の親水性溶媒に対する親和性は十分に向上せず、溶媒への分散性は不十分となり、粒子の凝集により不均一な磁性体膜になると共に、透磁率等の磁気特性も十分には向上しない。
本発明において、前記鉄ニッケル合金微粒子の表面が前記ポリマー及び/又はその熱分解生成物により「被覆されている」とは、前者の表面の全体が後者により覆われている形態であっても、前者の表面の一部が後者により覆われている形態であってもよい。前記鉄ニッケル合金微粒子の表面を被覆している前記ポリマー及び/又はその熱分解生成物の量は特に制限されないが、前記鉄ニッケル合金微粒子100質量部に対して前記ポリマー及び/又はその熱分解生成物の量(被覆量)が0.1〜30質量部であることが好ましい。
(ポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子の製造方法)
次に、本発明のポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子の製造方法について説明する。本発明のポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子の製造方法は、
鉄原子とニッケル原子との比率(原子比)が29:71〜5:95となるように鉄含有化合物及びニッケル含有化合物を含有しており、かつ、主骨格にエーテル結合を有するポリマーを含有している有機溶媒中で、還元剤を用いて前記ポリマー及び/又はその熱分解生成物により表面の少なくとも一部が被覆されている鉄ニッケル含有前駆体微粒子を得る工程(第1の工程)と、
前記鉄ニッケル含有前駆体微粒子を還元雰囲気中で250〜500℃で還元せしめることにより、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子を得る工程(第2の工程)と、
を含むことを特徴とする方法である。
<第1の工程>
第1の工程においては、先ず、鉄原子とニッケル原子との比率(原子比)が29:71〜5:95となるように鉄含有化合物及びニッケル含有化合物を含有しており、かつ、主骨格にエーテル結合を有するポリマーを含有している有機溶媒を調製する。
鉄含有化合物は、鉄を含有する化合物であればよく、特に制限はされないが、用いる溶媒に対する溶解性に優れたものであることが適当である。そのような化合物としては、例えば、塩化鉄、硫酸鉄、塩化鉄、硝酸鉄、及びそれらの水和物等の無機鉄含有化合物、さらには、鉄を含む錯体を挙げることができる。鉄を含む錯体としては、例えば、酢酸鉄、鉄アセチルアセトナト、テトラクロロ鉄(II)酸テトラエチルアンモニウム、テトラクロロ鉄(III)酸テトラエチルアンモニウム、ビス(スルフィド)テトラニトロシルに鉄(2−)ナトリウム八水和物、トリス(スルフィド)ヘプタニトロシル四鉄酸(1−)アンモニウム一水和物、ヘキサアンミン鉄(II)臭化物、テトラキス(チオフェノラト)鉄(II)酸テトラフェニルホスホニウム、テトラキス(2,3,5,6−テトラメチルフェノラト)鉄(III)酸テトラエチルアンモニウム、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム、ペンタシアノアンミン鉄(II)酸ナトリウム三水和物、ペンタシアノアンミン鉄(III)酸ナトリウム三水和物、ペンタシアノニトロシル鉄(III)酸ナトリウム二水和物、ペンタシアノニトロ鉄(II)酸カリウム一水和物、テトラシアノ(エチレンジアミン)鉄(II)酸ナトリウム三水和物等を挙げることかできる。
ニッケル含有化合物は、ニッケルを含有する化合物であればよく、特に制限はされないが、用いる溶媒に対する溶解性に優れたものであることが適当である。そのような化合物としては、例えば、塩化ニッケル、硝酸ニッケル及びそれらの水和物等の無機ニッケル含有化合物、さらには、ニッケルを含む錯体を挙げることができる。ニッケルを含む錯体としては、例えば、酢酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトナト、テトラクロロニッケル(II)酸テトラエチルアンモニウム、テトラブロモニッケル(II)酸テトラエチルアンモニウム、ヘキサアンミンニッケル(II)塩化物、ジニトロテトラアンミンニッケル(II)、テトラシアノニッケル(II)酸カリウム一水和物、ヘキサニトロニッケル(II)酸カリウムバリウム、トリス(エチレンジアミン)ニッケル(II)硫酸塩、ビス(エチレンジアミン)ジアクアニッケル硝酸塩、エチレンジアミンテトラアクアニッケル(II)硫酸塩一水和物、ジニトロ(エチレンジアミン)ニッケル(II)、ビス(N,N−ジメチルエチレンジアミン)ニッケル(II)過塩素酸、ビス(2,3−ジメチル−2,3−ジアミノブタン)ニッケル(II)ヨウ化物、ビス(ペルクロラト)テトラピリジンニッケル(II)、アセチルアセトナト(ニトラト)(N,N,N’、N’−テトラメチルエチレンジアミン)ニッケル(II)等を挙げることかできる。
主骨格にエーテル結合を有するポリマーは、第1工程で得られる鉄ニッケル含有前駆体微粒子及び第2工程で得られる鉄ニッケル合金微粒子に対して被覆材として機能するものであり、前述の本発明にかかる「主骨格にエーテル結合を有するポリマー」が用いられる。本発明においては、主骨格にエーテル結合を有するポリマーにより、鉄ニッケル含有前駆体微粒子及び鉄ニッケル合金微粒子の凝集が十分に防止され、それら微粒子の粒子径が制御される。すなわち、このような微粒子の粒子径は、金属と被覆材の比率を調整することによって制御することができ、例えば、溶媒中における被覆材の量を相対的に増やすと、析出する鉄ニッケル含有前駆体微粒子及び鉄ニッケル合金微粒子の粒子径は小さくなる。なお、これらの粒子径は、鉄含有化合物及びニッケル含有化合物の濃度を調整することでも制御することができる。
第1工程で用いる有機溶媒は、鉄含有化合物、ニッケル含有化合物及び主骨格にエーテル結合を有するポリマーを溶解できる有機溶媒であればよく、特に制限されないが、水に親和性のある有機溶媒又は極性部位を有する有機溶媒が好ましい。このような有機溶媒としては、例えば、エタノール、プロパノール等のモノアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類;THF、アセトン、アセトニトリル、DMF、DMSO等の非プロトン性極性溶媒が挙げられ、中でも、分子量の大きな多価アルコールの方が合成後に生成した粒子を分離しやすいという観点から、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールが好ましい。
第1の工程においては、先ず、前述の鉄含有化合物、ニッケル含有化合物及び主骨格にエーテル結合を有するポリマーを含有している有機溶媒を調製するが、その際、鉄原子とニッケル原子との比率(原子比)が29:71〜5:95となるように鉄含有化合物とニッケル含有化合物との比率を調製する必要がある。このように鉄原子とニッケル原子との比率(原子比)を調製することにより、第1工程で得られる鉄ニッケル含有前駆体微粒子及び第2工程で得られる鉄ニッケル合金微粒子におけるニッケル含有率を前述の71〜95at%の範囲とすることができる。したがって、ニッケル含有率が75〜90at%であるパーマロイを得る場合は、鉄原子とニッケル原子との比率(原子比)が25:75〜10:90となるように鉄含有化合物とニッケル含有化合物との比率を調製することが好ましい。
前記の鉄含有化合物、ニッケル含有化合物及び主骨格にエーテル結合を有するポリマーの有機溶媒中での存在状態は、特に制限はなく、分散及び/又は溶解した状態であることができる。分散した状態は分散液であり、溶解した状態は溶解液である。溶解の際には混合物を加熱することもできる。分散と溶解が併存する場合も含まれる。前記鉄含有化合物、前記ニッケル含有化合物及び前記ポリマーが分散状態にあるか、溶解状態にあるか、両者の併存状態にあるかは、用いる鉄含有化合物、ニッケル含有化合物、ポリマー及び有機溶媒の種類、さらには、有機溶媒中の前記鉄含有化合物、前記ニッケル含有化合物及び前記ポリマーの濃度により変化する。有機溶媒中の前記鉄含有化合物、前記ニッケル含有化合物及び前記ポリマーの濃度は、それぞれ前駆体の組成や粒子径等を考慮して決められるが、例えば、前記ポリマーの濃度が1×10−7〜10mol/Lの範囲、鉄イオンの濃度が1×10−10〜10mol/Lの範囲、ニッケルイオンの濃度が1×10−10〜10mol/Lの範囲で調整されることが一般的である。
このような分散液又は溶液の調製は、上記有機溶媒に主骨格にエーテル結合を有するポリマー並びに鉄含有化合物及びニッケル含有化合物を加えて、溶解又は分散せしめることで行うことができる。これらの成分の添加順序には制限はなく、主骨格にエーテル結合を有するポリマーを分散又は溶解した溶液と鉄含有化合物を溶解した溶液及びニッケル含有化合物を溶解した溶液を、適宜混合することで調製することもできる。このような有機溶媒への分散又は溶解の操作は、常温又は加温又は冷却下で行うことができる。さらに、このような有機溶媒への分散又は溶解の操作は、静置した状態で行っても、攪拌した状態で行ってもよい。
第1の工程においては、次に、前述の鉄含有化合物、ニッケル含有化合物及び主骨格にエーテル結合を有するポリマーを含有している有機溶媒(原料液)中で、還元剤を用いて前記ポリマー及び/又はその熱分解生成物により表面の少なくとも一部が被覆されている鉄ニッケル含有前駆体微粒子を得る。
還元剤としては、標準還元電位が室温における水素(0eV)よりも負である化合物を用いることが、鉄イオン及びニッケルイオンを金属に還元する力が強いという観点から適当である。そのような還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、水素化ホウ素カリウム(KBH)、水素化トリエチルホウ素ナトリウム(NaEtBH、水素化トリエチルホウ素カリウム(KEtBH)、水素化シアノホウ素ナトリウム(NaBHCN)、水素化ホウ素リチウム(LiBH)、水素化トリエチルホウ素リチウム(LiEtBH)、ボラン錯体(BH・L(Lは配位子、例えば、THF(テトラヒドロフラン)、SMe(ジメチルスルフィド))、トリエチルシラン(EtSiH)、水素化ビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム(Sodium Bis(2−methoxyethoxy)Alminium Hydride;Red−Al)等を挙げることができる。
還元剤の使用量は、金属原料に含まれる鉄の物質量等を考慮して適宜決定され、例えば、還元すべき鉄イオン及びニッケルイオンの合計量の当量から200倍当量以下の範囲とすることができる。好ましくは鉄イオン及びニッケルイオンの合計量の当量から50倍当量以下の範囲とする。
還元剤の添加方法は、特に制限はされないが、例えば、粉末状又は顆粒状の還元剤を前記原料液に添加することができる。あるいは、前記で用いた有機溶媒に予め粉末状又は顆粒状の還元剤を溶解及び/又は分散し、得られた溶液及び/又は分散液を前記原料液に添加することもできる。
上記還元剤で鉄イオン及びニッケルイオンを還元することで、前記ポリマー及び/又はその熱分解生成物により表面の少なくとも一部が被覆されている鉄ニッケル含有前駆体微粒子が調製される。上記還元剤での還元の温度は、還元により調製されるべき合金の結晶構造を考慮して決定され、例えば、0〜200℃の範囲とすることが適当である。好ましくは25〜160℃の範囲とすることがきる。また、このような処理は、アルゴン等の不活性雰囲気中で行うことが好ましい。
得られる鉄ニッケル含有前駆体微粒子は、鉄酸化物及びニッケル酸化物を含有する微粒子であるか、又は、鉄ニッケル合金、鉄酸化物及びニッケル酸化物を含有する微粒子である。前駆体粒子の作製時の還元により、鉄イオン及びニッケルイオンは、還元剤の量が過剰であればその分、金属(鉄ニッケル合金)にまで還元される傾向にある。一方、金属を含む前駆体微粒子は、酸素を含む雰囲気に晒されることで、酸化される。従って、合成直後の前駆体微粒子は金属(鉄ニッケル合金)の含有量は比較的高く、時間の経過と共にその量は低下する傾向にある。
得られる鉄ニッケル含有前駆体微粒子における鉄原子とニッケル原子との比率(原子比)は、前述の原料液中の鉄原子とニッケル原子との比率(原子比)に対応することとなり、したがって、29:71〜5:95の範囲であることが好ましく、25:75〜10:90の範囲であることがより好ましい。
また、得られる鉄ニッケル含有前駆体微粒子は、前述の「主骨格にエーテル結合を有するポリマー」及び/又は「主骨格にエーテル結合を有するポリマーの熱分解生成物」によりその少なくとも一部の表面が被覆されている。前記鉄ニッケル含有前駆体微粒子の表面を被覆している前記ポリマー及び/又はその熱分解生成物の量は特に制限されないが、前記鉄ニッケル含有前駆体微粒子100質量部に対して前記ポリマー及び/又はその熱分解生成物の量(被覆量)が0.1〜30質量部であることが好ましい。
前述のように、本発明においては、主骨格にエーテル結合を有するポリマーにより、鉄ニッケル含有前駆体微粒子の凝集が十分に防止され、その粒子径が制御される。そして、鉄ニッケル含有前駆体微粒子の平均粒子径に応じて、後述する第2工程において前記平均粒子径を有する本発明にかかる鉄ニッケル合金微粒子が得られることになる。したがって、第1工程で得られる鉄ニッケル含有前駆体微粒子の平均粒子径は、1〜400nmであることが好ましく、2〜100nmであることがより好ましく、3〜30nmであることが特に好ましい。
<第2の工程>
次いで、第2の工程において、前記鉄ニッケル含有前駆体微粒子を還元雰囲気中で250〜500℃で還元せしめることにより、前述の本発明のポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子を得る。
このような還元雰囲気での還元熱処理は、第1工程で得られた前記鉄ニッケル含有前駆体微粒子を含有する混合液から前記鉄ニッケル含有前駆体微粒子を分離した後に、又は前記混合液のまま溶媒と共に、前記鉄ニッケル含有前駆体微粒子を還元雰囲気中で250〜500℃にて熱処理することにより行われる。熱処理温度が250℃未満では、鉄ニッケル合金への還元が不十分となり、他方、熱処理温度が500℃を超えると、前記ポリマー及び/又はその熱分解生成物による被膜が完全に除去されてしまうため、親水性溶媒への分散性が不十分となって印刷特性が良好な印刷用組成物が得られなくなり、粒子の凝集により不均一な磁性体膜になると共に、透磁率等の磁気特性も十分には向上しない。
還元雰囲気としては、水素含有雰囲気であることが好ましく、水素雰囲気であることが特に好ましい。その場合の水素圧は0.01Pa〜100MPaの範囲であることが好ましく、0.01MPa〜5MPaの範囲であることがより好ましい。また、処理時間は、温度及び圧力に応じて適宜設定することができ、例えば、0.05〜24時間の範囲とすることができる。
第2の工程においては、このような還元熱処理により前述の本発明のポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子を得ることができる。
以上説明したように、本発明の製造方法においては、先ず主骨格にエーテル結合を有するポリマー及び/又はその熱分解生成物により表面の少なくとも一部が被覆されている鉄ニッケル含有前駆体微粒子を得たあとに、250〜500℃という比較的低温の還元熱処理により、均一組成のニッケル含有率が71〜95at%であるポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子を製造することを特徴としている。このようなポリマー被覆であるため、オレイルアミン等の界面活性剤を被覆材として用いた場合に比べて、比較的安定に保護材として働き、微細な前駆体微粒子を得ることができる。また、前述の特許文献1に記載されているポリビニルピロリドンのような主骨格にエーテル結合を有していないポリマーを用いた場合に比べて、本発明で用いる主骨格にエーテル結合を有するポリマーは比較的低温で熱分解しやすいため、還元熱処理の際にポリマーが分解された部分からFe、Ni中へHが浸透しやすくなる。また、熱分解しなくても、ポリマーの結合が弱いため、温度を上げると遊離して、それによってもHが浸透しやすくなる。以上の効果により、本発明の製造方法においては比較的低温で還元が可能となるため、粒子の成長・凝集や酸化が抑制され、良好な磁気特性を有する鉄ニッケル合金微粒子が得られる。また、前記本発明の鉄ニッケル合金微粒子は平均粒子径が1〜400nmと微細であるため、Fe、NiやHの拡散が比較的おこりやすく、低温でも組成を均一化することが可能となる。さらに、主骨格にエーテル結合を有するポリマーの熱分解生成物はアルコール系化合物等となり、還元作用を持つため、FeやNi等の卑な金属でも低温で十分に還元されるため、それによっても酸化が抑制され、良好な磁気特性を有する鉄ニッケル合金微粒子が得られる。また、このようなアルコール系化合物等も、アルコール系溶媒等の親水性溶媒に対して親和性を持つため、良好な印刷用組成物が得られる。
(印刷用組成物)
次に、本発明の印刷用組成物について説明する。本発明の印刷用組成物は、前記本発明のポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子が親水性溶媒中に分散していることを特徴とするものである。前述の通り、前記本発明のポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子は前記主骨格にエーテル結合を有するポリマー及び/又はその熱分解生成物により被覆されているため、アルコール系溶媒等の親水性溶媒に対して高い親和性を有することとなり、粒子が凝集することなく溶媒に良好に分散して印刷特性が良好な印刷用組成物が得られるようになる。そのため、本発明の印刷用組成物を用いれば、均一性が非常に高くかつ透磁率等の磁気特性が十分に優れた磁性体膜が得られるようになる。
本発明の印刷用組成物に用いる親水性溶媒としては、特に制限はされず、磁性体膜等を得るための印刷用組成物に用いられる公知の親水性溶媒を適宜用いることができる。このような親水性溶媒としては、例えば、1−ブタノール、デカノール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜20のモノアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のグリコール類;グリセリン等のトリオール類;シクロヘキサノール等の環状アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ブチルカルビトール等のエーテル類;酢酸エチル、ブチルカルビトールアセテート等のエステル類が挙げられ、中でも、高沸点、低有害性という観点から、α−テルピネオール、デカノール、ブチルカルビトールが好ましい。
本発明の印刷用組成物における前記本発明のポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子の含有量は、目的とする印刷用組成物の用途等に応じて適宜選択され、特に制限はされないが、1〜90質量%程度であることが一般的である。また、本発明の印刷用組成物の性状も特に制限されず、目的とする印刷用組成物の用途等に応じてペースト状やインク状の印刷用組成物として用いられる。さらに、本発明の印刷用組成物には、必要に応じて、粘度調整剤等の公知の添加剤を添加してもよい。
前記本発明のポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子を親水性溶媒中に分散せしめる方法も特に制限はされず、例えば、自転・公転ミキサー、ボールミル、スターラー等の公知の撹拌装置を用いる方法が挙げられる。
(磁性体膜)
次に、本発明の磁性体膜について説明する。本発明の磁性体膜は、前記本発明のポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子を含有していることを特徴とするものである。前述の通り、本発明によれば、前述の本発明の印刷用組成物を用いることにより、均一性が非常に高くかつ透磁率等の磁気特性が十分に優れた磁性体膜が得られる。
本発明の磁性体膜は、前記本発明のポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子のみからなっていることが好ましいが、前記本発明のポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子と他の公知の磁性材料との混合物であってもよい。このような混合物の場合、他の公知の磁性材料の含有量は50質量%以下であることが好ましい。
本発明の磁性体膜を製造する方法は、特に制限されず、前述の本発明の印刷用組成物を用いて公知の方法を適宜採用することができる。具体的には、例えば、前述の本発明の印刷用組成物を塗布して所定形状に成形し、次いで、熱処理することによって本発明の磁性体膜が得られる。
このような印刷用組成物を塗布する方法としては、スクリーン印刷法、インクジェット法、ディップ法、フレキソ印刷法等が挙げられる。また、このような塗布は、大気中もしくは不活性ガス雰囲気中で行うことができる。
また、このような熱処理としては、得られる磁性体膜における鉄ニッケル合金微粒子の酸化を抑制するという観点から、還元雰囲気又は不活性雰囲気中で熱処理することが好ましく、還元雰囲気中で熱処理することがより好ましい。このような還元雰囲気としては、水素含有雰囲気であることが好ましく、その場合の水素含有率は1〜100容量%であることが好ましい。また、処理温度は、特に制限はされないが、250〜500℃が好ましい。さらに、処理時間は、温度及び圧力に応じて適宜設定することができ、例えば、0.05〜10時間の範囲とすることができる。
さらに、本発明の磁性体膜を製造する過程において、印刷用組成物中の有機成分を酸化除去するために、前記の還元雰囲気中での熱処理に先立って、酸素含有雰囲気中で熱処理するようにしてもよい。その場合の酸素含有率は1〜10容量%であることが好ましい。また、処理温度は、特に制限はされないが、250〜500℃が好ましい。さらに、処理時間は、温度及び圧力に応じて適宜設定することができ、例えば、0.05〜10時間の範囲とすることができる。
以下、調製例、比較調製例、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の調製例及び実施例に限定されるものではない。
(調製例1:PEG被覆Fe−80Ni前駆体微粒子の調製)
トリエチレングリコール(HO(CO)H)200ml中に、金属塩として酢酸鉄(Fe(OAc))2.15mmol及び酢酸ニッケル(Ni(OAc)・4HO)7.85mmolを添加し、さらに被覆材として平均分子量1540のポリエチレングリコール(PEG)200mmolを添加して原料液を得た。得られた原料液を、Arガス雰囲気中で140℃まで加熱を行い、1分間撹拌を行った。続いて、得られた原料液に10mol/lの水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)水溶液を10ml添加し、180℃で5分間撹拌を行った後に室温まで冷却し、PEGを被覆材に用いたニッケル含有率が80at%の鉄ニッケル含有前駆体微粒子(PEG被覆Fe−80Ni前駆体微粒子)を得た。
(比較調製例1:PVP被覆Fe−80Ni前駆体微粒子の調製)
被覆材として平均分子量40000のポリビニルピロリドン(PVP)100mmolを用いたこと以外は調製例1と同様にして、PVPを被覆材に用いたニッケル含有率が80at%の鉄ニッケル含有前駆体微粒子(PVP被覆Fe−80Ni前駆体微粒子)を得た。
(調製例2:PEG被覆Fe−90Ni前駆体微粒子の調製)
トリエチレングリコール(HO(CO)H)200ml中に、金属塩として酢酸鉄(Fe(OAc))1mmol及び酢酸ニッケル(Ni(OAc)・4HO)9mmolを添加し、さらに被覆材として平均分子量1540のポリエチレングリコール(PEG)200mmolを添加して原料液を得たこと以外は調製例1と同様にして、PEGを被覆材に用いたニッケル含有率が90at%の鉄ニッケル含有前駆体微粒子(PEG被覆Fe−90Ni前駆体微粒子)を得た。
(比較調製例2:PEG被覆Fe−50Ni前駆体微粒子の調製)
トリエチレングリコール(HO(CO)H)200ml中に、金属塩として酢酸鉄(Fe(OAc))5mmol及び酢酸ニッケル(Ni(OAc)・4HO)5mmolを添加し、さらに被覆材として平均分子量1540のポリエチレングリコール(PEG)200mmolを添加して原料液を得たこと以外は調製例1と同様にして、PEGを被覆材に用いたニッケル含有率が50at%の鉄ニッケル含有前駆体微粒子(PEG被覆Fe−50Ni前駆体微粒子)を得た。
<鉄ニッケル含有前駆体微粒子の組成の確認試験>
調製例1でPEG被覆Fe−80Ni前駆体微粒子を4バッチ、比較調製例1でPVP被覆Fe−80Ni前駆体微粒子を4バッチそれぞれ合成し、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−AES)(Thermo SCIENTIFIC社製、商品名:iCAP6000SERIES)によりFe及びNiの組成分析を行った。結果を表1に示す。
表1に示した結果から、調製例1で得られたPEG被覆Fe−80Ni前駆体微粒子と比較調製例1で得られたPVP被覆Fe−80Ni前駆体微粒子のいずれも、再現性良く4回の合成すべてニッケル含有率が80〜81at%の組成(Fe−80〜81at%Ni)であることが確認できた。よって、本発明の製造方法によれば、再現性良く組成が均一な鉄ニッケル含有前駆体微粒子を得ることができ、それを用いれば再現性良く組成が均一な鉄ニッケル合金微粒子(パーマロイ微粒子)を得ることが可能であることが確認された。
<鉄ニッケル含有前駆体微粒子の熱処理試験>
調製例1で得られたPEG被覆Fe−80Ni前駆体微粒子を、H雰囲気(水素ガス圧:100kPa)中で室温から500℃まで段階的に加熱し(30℃、250℃、300℃、350℃、400℃、450℃、500℃でそれぞれ30分間保持)、各保持温度でin−situにてX線回折(XRD)スペクトルを測定した(Bruker社製、商品名:D8Advanceを使用)。得られた結果を図1(A)に示す。また、比較調製例1で得られたPVP被覆Fe−80Ni前駆体微粒子についても同様にX線回折(XRD)スペクトルを測定し、得られた結果を図1(B)に示す。
図1(A)及び図1(B)に示した結果から、鉄ニッケル含有前駆体微粒子が完全に還元されてfcc(面心立方格子)構造のFeNi(fcc−FeNi)のみになる熱処理温度は、PEGを被覆材に用いた場合は250℃以上、PVPを被覆材に用いた場合は400℃以上であることが確認された。よって、従来のPVP被覆よりも本発明のPEG被覆の方が、より低温で還元できることが確認された。
また、調製例1で得られたPEG被覆Fe−80Ni前駆体微粒子を、H雰囲気中で上記と同様に室温から500℃まで段階的に加熱した際の熱重量分析(TGA)を行った(リガク社製、商品名:Thermoplus TG8120を使用)。得られた結果を図2に示す。
図2に示した結果から、熱処理温度が500℃になると被覆の分解による質量減少が飽和していることから、この温度を超えて熱処理を行うと被覆が完全に除去されてしまい、得られる鉄ニッケル合金微粒子の親水性溶媒への分散性が不十分となって印刷特性の良好な印刷用組成物を得ることが難しくなることが確認された。
(実施例1)
調製例1で得られたPEG被覆Fe−80Ni前駆体微粒子を、H雰囲気(水素ガス圧:100kPa)中で400℃まで加熱し、15分間保持した後に室温まで冷却し、PEGを被覆材に用いたニッケル含有率が80at%の鉄ニッケル合金微粒子(PEG被覆Fe−80Ni合金微粒子)を得た。
(比較例1)
比較調製例1で得られたPVP被覆Fe−80Ni前駆体微粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、PVPを被覆材に用いたニッケル含有率が80at%の鉄ニッケル合金微粒子(PVP被覆Fe−80Ni合金微粒子)を得た。
(実施例2)
熱処理温度を350℃、保持時間を60分間としたこと以外は実施例1と同様にして、PEGを被覆材に用いたニッケル含有率が80at%の鉄ニッケル合金微粒子(PEG被覆Fe−80Ni合金微粒子)を得た。
(実施例3)
熱処理温度を300℃、保持時間を60分間としたこと以外は実施例1と同様にして、PEGを被覆材に用いたニッケル含有率が80at%の鉄ニッケル合金微粒子(PEG被覆Fe−80Ni合金微粒子)を得た。
<鉄ニッケル合金微粒子の粒子径分析>
実施例1で得られたPEG被覆Fe−80Ni合金微粒子の形態を透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子社製、商品名:JEM−2100HCKM)により観察した。得られた結果を図3(A)(低倍率)及び図3(B)(高倍率)に示す。また、比較例1で得られたPVP被覆Fe−80Ni合金微粒子についても同様に形態を観察し、得られた結果を図4(A)(低倍率)及び図4(B)(高倍率)に示す。
図3(A)(B)及び図4(A)(B)に示した結果から、実施例1で得られたPEG被覆Fe−80Ni合金微粒子の粒子径は5〜150nm、比較例1で得られたPVP被覆Fe−80Ni合金微粒子の粒子径は5〜40nmであることが確認された。
次いで、両者の平均粒子径について、XRDスペクトルのfcc−FeNiの(111)ピークの半値幅からシェラーの式を用いて求めた。その結果、実施例1で得られたPEG被覆Fe−80Ni合金微粒子の平均粒子径は11.4nm、比較例1で得られたPVP被覆Fe−80Ni合金微粒子の平均粒子径は18.3nmであることが確認された。さらに、実施例2及び実施例3で得られたPEG被覆Fe−80Ni合金微粒子についても同様に平均粒子径を求めたところ、それぞれ8.8nm(実施例2)、5.1nm(実施例3)であることが確認された。得られた結果を表2に示す。
<鉄ニッケル合金微粒子及び鉄ニッケル含有前駆体微粒子の被覆分析>
実施例1で得られたPEG被覆Fe−80Ni合金微粒子についてX線光電子(XPS)スペクトルを測定した(VG社製、商品名:ESCALAB MKIIを使用)。得られた結果を図5に示す。
図5に示した結果から、実施例1で得られたPEG被覆Fe−80Ni合金微粒子においては、−C−O−C−のピーク位置で強度が高くなっていることから、粒子表面にはPEG由来成分が存在していることが確認された。
また、PEG原料、調製例1で得られたPEG被覆Fe−80Ni前駆体微粒子、及び実施例1で得られたPEG被覆Fe−80Ni合金微粒子について、それぞれ飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)で分析した(ION−TOF社製、商品名:TOF.SIMS5を使用)。得られた結果を図6に示す。
図6に示した結果から、C及びC 成分がすべてのサンプルで見られ、PEG原料よりも、前躯体微粒子、400℃還元熱処理後の合金微粒子の順にピークが弱くなっていることから、PEGは一部熱分解していることが確認された。よって、被覆成分は、PEG又はPEGの熱分解生成物であることが確認された。
(実施例4)
実施例1で得られたPEG被覆Fe−80Ni合金微粒子0.5gに、α−テルピネオール0.6mlを溶媒として添加し、混合して印刷用組成物(ペースト)を調製した。得られた印刷用組成物を用いて、石英リング基板上に熱処理後の膜厚が10μmとなるようにスクリーン印刷法により印刷し、O含有率が2容量%の窒素ガス雰囲気中で400℃で30分間熱処理を行い、引き続きH含有率が3容量%の窒素ガス雰囲気中で400℃で30分間熱処理を行って石英リング基板上に磁性体膜を形成した。また、石英リング基板をSi基板に代えたこと以外は同様にしてSi基板上に磁性体膜を形成した。
(比較例2)
比較例1で得られたPVP被覆Fe−80Ni合金微粒子を用いたこと以外は実施例4と同様にして、石英リング基板上及びSi基板上にそれぞれ磁性体膜を形成した。
(実施例5)
調製例2で得られたPEG被覆Fe−90Ni前駆体微粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にしてPEG被覆Fe−90Ni合金微粒子を調製し、得られたPEG被覆Fe−90Ni合金微粒子を用いたこと以外は実施例4と同様にして、石英リング基板上に磁性体膜を形成した。
(比較例3)
比較調製例2で得られたPEG被覆Fe−50Ni前駆体微粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にしてPEG被覆Fe−50Ni合金微粒子を調製し、得られたPEG被覆Fe−50Ni合金微粒子を用いたこと以外は実施例4と同様にして、石英リング基板上に磁性体膜を形成した。
<磁性体膜の透磁率評価試験>
実施例4、実施例5、比較例2及び比較例3で得られた石英リング基板上の磁性体膜についてそれぞれ、周波数1MHzで複素透磁率をB−Hアナライザ(岩通計測社製、商品名:SY−8232)により測定した。得られた複素透磁率の実部(μ’)を表3に示す。
表3に示した結果から、比較例2のPVP被覆鉄ニッケル合金微粒子を用いて得た磁性体膜に比べて、実施例4のPEG被覆Fe−80Ni合金微粒子及び実施例5のPEG被覆Fe−90Ni合金微粒子を用いて得た磁性体膜の方がμ’が大きく、高い透磁率を示すことが確認された。一方、ニッケル含有率が50at%である比較例3のPEG被覆Fe−50Ni合金微粒子を用いて得た磁性体膜においては、実施例4のPEG被覆Fe−80Ni合金微粒子及び実施例5のPEG被覆Fe−90Ni合金微粒子を用いて得た磁性体膜に比べてμ’が小さく、透磁率が良好な磁性体膜は得られないことが確認された。
また、実施例4及び比較例2で得られたSi基板の磁性体膜についてそれぞれ、走査型電子顕微鏡(SEM)(日立ハイテクノロジーズ社製、商品名:SU3500)により磁性体膜の形態観察を行った(倍率:1万倍)。得られた結果を図7に示す((A)が実施例4、(B)が比較例2)。
図7に示した結果から、実施例4のPEG被覆Fe−80Ni合金微粒子を用いて得た磁性体膜においては、粒子の凝集は確認されず、非常に均一性の高い磁性体膜であったのに対し、比較例2のPVP被覆Fe−80Ni合金微粒子を用いて得た磁性体膜においては、粒子が凝集して均一性が悪い磁性体膜となっていることが確認された。以上の結果から、PEG被覆鉄ニッケル合金微粒子の方が、α−テルピネオール等の親水性溶媒に対して良好に分散するため、印刷特性が良好な印刷用組成物(ペースト)が得られており、それを用いることによって、粒子の凝集が十分に抑制されて均一性が非常に高い磁性体膜が得られることが確認された。
以上の結果から、本発明においては、得られる磁性体膜の均一性が非常に高くかつ有機成分が少ないことと、粒子が微細であることと、鉄ニッケル合金におけるニッケル含有率が71〜95at%であることとが相乗的に作用し、透磁率等の磁気特性が十分に優れた磁性体膜が得られることが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、アルコール系溶媒等の親水性溶媒を用いた印刷用組成物として印刷により磁性体膜を得る際に、均一性が非常に高くかつ透磁率等の磁気特性が十分に優れた磁性体膜を得ることを可能とするポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子及びその製造方法、並びにそのポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子を用いた印刷用組成物及び磁性体膜を提供することが可能となる。
したがって、本発明によれば、均一性が非常に高くかつ透磁率等の磁気特性が十分に優れた磁性体膜が得られるようになり、このような本発明で得られる磁性体膜においては粒子が微細であるため低損失で良好な磁気特性が実現できるため、1MHz以上の高周波でも動作が可能な高性能制御回路用受動素子等へ応用することができ、小型・高出力のオンチップ受動素子の実現等のために本発明は非常に有用な技術である。

Claims (6)

  1. ニッケル含有率が71〜95at%でありかつ平均粒子径が1〜400nmである鉄ニッケル合金微粒子と、前記鉄ニッケル合金微粒子の表面の少なくとも一部を被覆する主骨格にエーテル結合を有するポリマー及び/又はその熱分解生成物と、からなることを特徴とするポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子。
  2. 前記鉄ニッケル合金微粒子が、ニッケル含有率が75〜90at%であるパーマロイ微粒子であることを特徴とする請求項1に記載のポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子。
  3. 前記主骨格にエーテル結合を有するポリマーが、ポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子。
  4. 請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子が親水性溶媒中に分散していることを特徴とする印刷用組成物。
  5. 請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子を含有していることを特徴とする磁性体膜。
  6. 鉄原子とニッケル原子との比率(原子比)が29:71〜5:95となるように鉄含有化合物及びニッケル含有化合物を含有しており、かつ、主骨格にエーテル結合を有するポリマーを含有している有機溶媒中で、還元剤を用いて前記ポリマー及び/又はその熱分解生成物により表面の少なくとも一部が被覆されている鉄ニッケル含有前駆体微粒子を得る工程と、
    前記鉄ニッケル含有前駆体微粒子を還元雰囲気中で250〜500℃で還元せしめることにより、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子を得る工程と、
    を含むことを特徴とするポリマー被覆鉄ニッケル合金微粒子の製造方法。
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