JP2017171705A - 粉体塗料組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 1度の塗装工程で塗装作業性が良く塗膜を形成することができ、防食性と耐候性に優れる粉体塗料組成物を提供する。【解決手段】 本発明の粉体塗料組成物は、熱硬化性樹脂と亜鉛粉末を含み、亜鉛粉末の含有量が粉体塗料組成物全体に対して30〜80質量%である。このような組成とすることで、本発明の粉体塗料組成物を被塗物表面に塗布して得られる塗膜が、亜鉛の含有量が相対的に多い層と、熱硬化性樹脂が相対的に多い層とを有し、被塗物表面に近い側に亜鉛の多い層が形成され、表面側に樹脂の多い層が形成される。【選択図】 なし

Description

本発明は、金属部材の腐食を防止するために部材表面に塗装して防食性を付与する粉体塗料組成物に関する。
金属部材で構成される工業製品などは、使用環境により腐食を受け、特性変化および強度劣化などが生じる。このような腐食を防止するために、金属部材の表面にはめっきによる被膜や塗料による塗膜を設けている。
腐食は、金属部材表面の金属原子がイオン化して部材表面から脱離することによって生じる。金属部材の表面に部材を構成する金属よりもイオン化傾向の大きい金属が存在すると、腐食環境下で金属部材よりも先にイオン化傾向が大きい金属がイオン化して金属部材の腐食を防止できる。このような防食は犠牲防食と呼ばれ、鉄部材の場合には犠牲材として主に亜鉛を用いる。
亜鉛によって鉄部材の表面を覆うために亜鉛を含む塗料を部材表面に塗布して亜鉛リッチの塗膜を形成する。特許文献1,2には、ジンクリッチプライマまたはジンクリッチペイントの代わりに使用され、エポキシ樹脂、硬化剤、亜鉛粉末を含有する粉体塗料が記載されている。特許文献3には、ディスクブレーキ装置の部材表面に塗装され、亜鉛からなる金属フィラーと熱硬化性樹脂とを含む粉体塗料が記載されている。特許文献4には、エポキシ樹脂、硬化剤、粒度が異なる2種の亜鉛粉末、防錆顔料を含む粉体塗料が記載されている。
特開平11−158415号公報 特開2001−146567号公報 特開2008−303276号公報 特開2013−119582号公報
鉄部材の腐食を防止するには、亜鉛を鉄に接触させる必要があり、なるべく多くの亜鉛を含有した粉体塗料を1度の塗装工程で一層塗布(1コート)するか、亜鉛を多く含む粉体塗料を鉄部材表面に塗布した後、さらに粉体塗料を塗布(2コート)している。
1コートでは、樹脂に対する亜鉛の含有量が非常に多く、塗装作業性が悪くなる。また塗装作業性を考慮して亜鉛の含有量を減らすと防食性が低下してしまう。
2コートでは、2種類の粉体塗料を塗布するために2度の塗布工程が必須となり、2つの粉体塗料塗膜の間で剥離などが生じやすい。
本発明の目的は、1度の塗装工程で防食性と耐候性に優れる粉体塗料組成物を提供することである。
本発明は、熱硬化性樹脂(A)と、亜鉛粉末(B)とを含む粉体塗料組成物であって、
前記亜鉛粉末(B)の含有量が、粉体塗料組成物全体に対して30〜80質量%であることを特徴とする粉体塗料組成物である。
また本発明は、被塗物の表面に塗装したときに、前記熱硬化性樹脂(A)よりも前記亜鉛粉末(B)を多く含む亜鉛含有層、ならびに前記亜鉛粉末(B)よりも前記熱硬化性樹脂(A)を多く含む樹脂含有層を有する塗膜を形成することを特徴とする。
また、熱硬化性樹脂(A)の成分として、水酸基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有フッ素樹脂、カルボキシ基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有アクリル樹脂、グリシジル基含有アクリル樹脂、からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂成分を使用することができる。
さらに、熱硬化性樹脂(A)の成分として、エポキシ樹脂を使用しないことにより、耐候性をさらに向上させることができる。
本発明によれば、塗膜中で亜鉛が被塗物表面側に偏在するので、従来技術に比較して亜鉛粉末の含有量が少なくても、被塗物と亜鉛とが十分に接触し防食性を発揮する。
また、塗膜中で樹脂成分は塗膜の表層側に偏在し、2コートと同様の膜構造が1度の塗装工程で得られる。
さらに本発明によれば、亜鉛が多く含まれる層と樹脂成分が多く含まれる層との間で層間剥離することがない。
熱硬化性樹脂(A)の成分としては、水酸基含有ポリエステル樹脂、水酸化含有フッ素樹脂、カルボキシ基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有アクリル樹脂、グリシジル基含有アクリル樹脂、からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を使用できる。
さらに、熱硬化性樹脂(A)の成分として、エポキシ樹脂を使用しないことにより、耐候性が向上する。
本発明は、熱硬化性樹脂(A)と、亜鉛粉末(B)と、を含む粉体塗料組成物である。これらの組成であって、亜鉛粉末(B)の含有量が、粉体塗料組成物全体に対して30〜80質量%である。
熱硬化性樹脂(A)と亜鉛粉末(B)とを含み、各成分が上記のような含有量であることによって、本発明の粉体塗料組成物を被塗物表面に塗布して得られる塗膜が、亜鉛粉末を相対的に多く含む亜鉛含有層と樹脂成分を相対的に多く含む樹脂含有層とを有することになる。
また、熱硬化性樹脂(A)の成分としては、水酸基含有ポリエステル樹脂、水酸化含有フッ素樹脂、カルボキシ基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有アクリル樹脂、グリシジル基含有アクリル樹脂、からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を使用できる。さらに、熱硬化性樹脂(A)の成分としてエポキシ樹脂を使用しないことにより、樹脂含有層の成分に由来の性能の中で、特に耐候性がさらに向上する。
粉体塗料組成物の状態では、樹脂成分と亜鉛粉末とは偏ることなく分散しており、粉体塗料組成物としては従来の粉体塗料と同様に取り扱うことができる。また、塗装方法も従来と同様に静電塗装方法を用いることができ、従来と同様の取り扱いが可能である。すなわち、粉体塗料組成物としては、従来のものと何ら変わることなく、これまでと同様に取り扱うことができる。
その一方で、防食性を付与したい被塗物の表面に本発明の粉体塗料組成物を塗装し、被塗物の表面に塗膜が形成されると、その塗膜では、被塗物の表面側に亜鉛粉末が偏り、表層側に樹脂成分が偏り、特性の異なる2つの層が形成される。
鉄材料からなる被塗物の表面側に形成される、亜鉛粉末(B)を相対的に多く含む亜鉛含有層は、被塗物表面を亜鉛粉末で被覆し、鉄材料に対する亜鉛の犠牲防食効果が発揮される。亜鉛粉末(B)が亜鉛含有層に濃縮されるので、粉体塗料組成物全体に対する亜鉛粉末(B)の含有量が比較的少なくしても十分に防食性を発揮する。亜鉛粉末(B)の含有量を少なくできるので、従来の過剰な亜鉛量の粉体塗料組成物よりも取り扱いが簡単で、塗装作業性が良好である。塗膜表層側には熱硬化性樹脂(A)成分が偏在し、亜鉛粉末(B)が存在しないので、表面の平滑性が容易に得られる。また粉体塗料組成物に顔料などの着色剤を含む場合には、顔料も樹脂含有層側に多く含まれることになり、亜鉛粉末が存在しないので、塗膜表層での発色性が向上する。亜鉛含有層と樹脂含有層とは、1コートで一体的に形成され、亜鉛含有層と樹脂含有層との間には明確な界面が形成されないので、これらの層間で剥離することもない。
本発明は、熱硬化性樹脂(A)と、亜鉛粉末(B)との組合せであって、かつ、亜鉛粉末(B)の含有量が、粉体塗料組成物全体に対して30〜80質量%であるときに、塗膜に層分離が生じて亜鉛含有層と樹脂含有層とを有するのである。
各特許文献には、亜鉛粉末含有の粉体塗料組成物が記載されており、樹脂成分や亜鉛粉末の含有量なども記載されているが、塗膜が層分離し、被塗物表面側に亜鉛粉末が偏在することは記載されていない。特許文献の実施例には、水酸基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有フッ素樹脂、カルボキシ基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有アクリル樹脂、グリシジル基含有アクリル樹脂、からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂と、亜鉛粉末との組合せという本発明の粉体塗料組成物における成分の特定の組合せおよび各成分の含有量は記載されていない。
亜鉛粉末を用いた従来の塗料では、被塗物表面に形成された塗膜が亜鉛含有層と樹脂含有層とを有することは、知られていない。
(粉体塗料組成物)
以下では本発明の粉体塗料組成物を構成する各成分について説明する。
<水酸基含有ポリエステル樹脂>
本発明に用いる水酸基含有ポリエステル樹脂としては、主として常温で固形の水酸基含有ポリエステル樹脂を例示することができる。軟化点が80〜150℃好ましくは110〜140℃であることが好適である。軟化点が80℃未満であると、粉体塗料組成物のブロッキングが発生するために好ましくなく、150℃を超えると溶融混練を行う際に、粘度が高すぎて分散が十分に行われず、塗膜性能が発揮されない。また水酸基含有ポリエステル樹脂の水酸基価は20〜100mgKOH/g、好ましくは30〜50mgKOH/gであることが好適である。水酸基含有ポリエステル樹脂を具体的に例示すると日本ユピカ株式会社製GV110、GV126、GV500、GV710、DIC株式会社製M−8010、M−8020、M−8100、ダイセル・オルネクス株式会社製CC2868−0、CC2839−0等が挙げられる。
<水酸基含有フッ素樹脂>
本発明に用いる水酸基含有フッ素樹脂としては、主として常温で固形の水酸基含有フッ素樹脂を例示することができる。軟化点が80〜150℃好ましくは110〜140℃であることが好適である。軟化点が80℃未満であると、粉体塗料組成物のブロッキングが発生するために好ましくなく、150℃を超えると溶融混練を行う際に、粘度が高すぎて分散が十分に行われず、塗膜性能が発揮されない。また水酸基含有フッ素樹脂の水酸基価は20〜100mgKOH/g、好ましくは30〜50mgKOH/gであることが好適である。水酸基含有フッ素樹脂を具体的に例示すると旭硝子株式会社製LF−710F等が挙げられる。
本発明の粉体塗料組成物における、水酸基含有ポリエステル樹脂、および、または、水酸基含有フッ素樹脂、および、または、水酸基含有アクリル樹脂の硬化剤としては、ブロックイソシアネート樹脂が好適に使用できる。ブロックイソシアネート樹脂を具体的に例示するとエボニック社製B−1530、バイエル社製クレランU−1等が挙げられる。ブロックイソシアネート樹脂の含有量は、水酸基含有ポリエステル樹脂、および、または、水酸基含有フッ素樹脂の水酸基価とブロックイソシアネート樹脂のイソシアネート当量によるが、水酸基含有ポリエステル樹脂、および、または、水酸基含有フッ素樹脂の含有量とブロックイソシアネート樹脂の含有量との和を100質量部としたときに、5〜20質量部とすることが好ましい。
<カルボキシ基含有ポリエステル樹脂>
本発明に用いるカルボキシ基含有ポリエステル樹脂は、通常の粉体塗料組成物において使用されるものであれば、特に制限はない。カルボキシ基含有ポリエステル樹脂を具体的に例示するとダイセル・オルネクス株式会社製CRYLCOAT(CC)1573−0、2695−0、2441−2などが挙げられる。
本発明の粉体塗料組成物における、カルボキシ基含有ポリエステル樹脂の硬化剤としては、β−ヒドロキシアルキルアミド樹脂、および、または、トリグリシジルイソシアヌレートが好適に使用できる。β−ヒドロキシアルキルアミド樹脂を具体的に例示するとエムスケミー株式会社製XL−552、トリグリシジルイソシアヌレートを具体的に例示すると日産化学工業株式会社製TEPIC−G等が挙げられる。
本発明の粉体塗料組成物におけるβ−ヒドロキシアルキルアミド樹脂の含有量は、カルボキシ基含有ポリエステル樹脂とβ−ヒドロキシアルキルアミド樹脂の含有量との和を100質量部としたときに、3〜10質量部とすることが好ましい。
本発明の粉体塗料組成物におけるトリグリシジルイソシアヌレートの含有量は、カルボキシ基含有ポリエステル樹脂とトリグリシジルイソシアヌレートの含有量との和を100質量部としたときに、3〜10質量部とすることが好ましい。
<水酸基含有アクリル樹脂>
本発明に用いる水酸基含有アクリル樹脂は、常温で固形の水酸基含有アクリル樹脂を例示することができる。軟化点が80〜150℃好ましくは100〜140℃であることが好適である。軟化点が80℃未満であると、粉体塗料組成物のブロッキングが発生するために好ましくなく、150℃を超えると溶融混練を行う際に、粘度が高すぎて分散が十分に行われず、塗膜性能が発揮されない。また水酸基含有アクリル樹脂の水酸基価は20〜200mgKOH/g、好ましくは40〜110mgKOH/gであることが好適である。水酸基含有アクリル樹脂を具体的に例示するとDIC株式会社製A−251等が挙げられる。
<グリシジル基含有アクリル樹脂>
本発明に用いるグリシジル基含有アクリル樹脂は、常温で固形のグリシジル基含有アクリル樹脂を例示することができる。軟化点が80〜150℃好ましくは100〜140℃であることが好適である。軟化点が80℃未満であると、粉体塗料組成物のブロッキングが発生するために好ましくなく、150℃を超えると溶融混練を行う際に、粘度が高すぎて分散が十分に行われず、塗膜性能が発揮されない。またグリシジル基含有アクリル樹脂のエポキシ当量は100〜900g/eq、好ましくは400〜600g/eqであることが好適である。水酸基含有アクリル樹脂を具体的に例示するとDIC株式会社製A−261等が挙げられる。
本発明の粉体塗料組成物における、グリシジル基含有アクリル樹脂の硬化剤としては、ジカルボン酸が好適に使用できる。ジカルボン酸を具体的に例示すると岡村製油株式会社製SL−12等が挙げられる。
本発明の粉体塗料組成物におけるジカルボン酸の含有量は、グリシジル基含有アクリル樹脂とジカルボン酸の含有量との和を100質量部としたときに、10〜30質量部とすることが好ましい。
<亜鉛粉末>
本発明に用いる亜鉛粉末としては、通常の粉体塗料組成物において使用されるものであれば、特に制限はない。たとえば、中位粒度1〜30μm、好ましくは4〜15μmの亜鉛粉末を用いることができる。このような亜鉛粉末としては、本荘ケミカル株式会社製亜鉛末F−500(中位粒度7.5μm)、F−1000(中位粒度4.9μm)、F−3000(中位粒度3.7μm)、堺化学工業株式会社製亜鉛末#1(中位粒度5,0μm)、#3(中位粒度4.0μm)、#40(中位粒度約50.0μm)、エカルト社製Zink Flake GTT(中位粒度13μm)、AT(中位粒度20μm)などが挙げられる。亜鉛粉末は、中位粒度が異なる複数種類を混合して用いてもよい。なお、亜鉛粉末の中位粒度とは、日機装株式会社製マイクロトラック等のレーザー式粒度分布測定機などを用いて測定した粒度分布における、積算値50%での粒径を意味する。
本発明の粉体塗料組成物における亜鉛粉末の含有量は、粉体塗料組成物全体に対して30〜80質量%であり、好ましくは55〜80質量%であり、最も好ましくは60〜70質量%である。亜鉛粉末として上記のように粒径が異なる亜鉛粉末を混合して用いる場合は、その合計量が上記の範囲内であればよい。
亜鉛粉末の含有量は、粉体塗料組成物全体に対して30〜80質量%であると塗膜が、亜鉛含有層と樹脂含有層とを有するように層分離する。さらに含有量が、55〜80質量%であれば、防錆顔料を含まなくとも粉体塗料組成物が十分な防食性を発揮する。
<防錆顔料>
本発明の粉体塗料組成物は、上記各成分に加えて防錆顔料を含んでいてもよい。本発明に用いる防錆顔料としては、リン酸アルミニウム等のリン酸塩誘導体、モリブデン酸亜鉛、リンモリブデン酸アルミニウムなどのモリブデン酸誘導体、シアナミドカルシウム亜鉛、硼酸バリウムなどの硼酸塩誘導体、バナジン酸ストロンチウムなどのバナジン酸塩誘導体、水酸化ビスマス等が挙げられ、好ましくはリン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、リンモリブデン酸アルミニウム、シアナミドカルシウム亜鉛、硼酸バリウム、バナジン酸ストロンチウムが挙げられる。このような防錆顔料としては、PM−300(リンモリブデン酸アルミニウム、キクチカラー株式会社製)、LFボウセイCP−Z(リン酸亜鉛、キクチカラー株式会社製)、K−WHITE(トリポリリン酸アルミニウム、テイカ株式会社製)、ビューサン11M−1(硼酸バリウム、堺化学工業株式会社)などが挙げられる。
本発明の粉体塗料組成物における防錆顔料の含有量は、粉体塗料組成物全体に対して0〜70質量%であり、好ましくは10〜50質量%である。
<その他の添加剤>
本発明の粉体塗料組成物は、上記各成分に加えてさらに通常の粉体塗料組成物に用いられる着色顔料、体質顔料、流動性調整剤、ブロッキング防止剤、表面調整剤、ワキ防止剤、帯電制御剤、硬化促進剤等のその他の添加剤を含有してもよい。
(粉体塗料組成物の製造方法)
粉体塗料組成物の製造方法は、たとえば、粉砕法などの公知の製造方法を用いることができる。粉砕法では、水酸基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有フッ素樹脂、カルボキシ基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有アクリル樹脂、グリシジル基含有アクリル樹脂、ブロックイソシアネート樹脂、β−ヒドロキシアルキルアミド樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、ジカルボン酸、亜鉛粉末および必要により防錆顔料、その他添加剤などの混合物を、タンブラーミキサ、ヘンシェルミキサなどの混合機で乾式混合し、混練機によって溶融混練する。混練機としては、たとえば、1軸または2軸のエクストルーダ、三本ロール、ラボブラストミルなどの一般的な混練機を使用できる。
混練物を冷却固化し、固化物を粗粉砕および微粉砕して粉砕物を得る。粉砕機としては、たとえば、超音速ジェット気流を利用して粉砕するジェット式粉砕機、および高速で回転する回転子(ロータ)と固定子(ライナ)との間に形成される空間に固化物を導入して粉砕する衝撃式粉砕機が挙げられる。また必要により粉砕物に後添加剤(外添剤)を添加してもよい。
粉砕物を分級して粉体を所望の粒子径および所望の粒径分布に調整して粉体塗料組成物を得る。分級には、遠心力および風力による分級により過粉砕トナー母粒子を除去できる公知の分級機を使用でき、たとえば、旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)などを使用できる。
なお、粉体塗料組成物の製造方法は上記の粉砕法に限らず、各成分が均一に分散した粉体塗料組成物を得ることができる製造方法であればよい。
(塗装方法)
本発明の粉体塗料組成物を用いた塗装方法は、公知の静電粉体塗装方法を用いることができる。たとえば、コロナ帯電方式、摩擦帯電方式などである。コロナ帯電方式、摩擦帯電方式いずれの方式でも先端筒状のガンユニットを用いて塗装を行う。コロナ帯電方式の場合、ガンユニットの先端に配置したコロナ電極に高電圧を印加してコロナ放電を起こし、発生したイオンでコロナ電極近傍の塗料粉体を帯電させる。被塗物を接地電位としてコロナ電極と被塗物との間に電界を形成し、帯電した塗料粉体を電界によって被塗物に付着させる。
摩擦帯電方式の場合、ガンユニットの内部を移動する塗料粉体をガンユニットの内面で摩擦させて帯電させる。被塗物を接地電位とすることで、帯電した塗料粉体をガンユニットから射出して被塗物に付着させる。コロナ帯電方式での放電による荷電量および摩擦帯電方式の射出量は、それぞれ粉体塗料組成物を塗布しようとする被塗物に応じて適宜設定すればよい。
被塗物に塗布された粉体塗料組成物の硬化方法は、一般的な粉体塗料の焼付け硬化方法と同様で、それぞれの粉体塗料組成物に適した焼付け温度、焼付け時間に合わせて設定するが、たとえば、好ましい焼付け温度は160〜200℃、好ましい焼付け時間は20〜40分間である。焼付け後の膜厚は、20〜300μmの範囲が好適である。
被塗物の材質は、亜鉛によって防食効果が発揮される金属であれば特に限定されない。本発明の粉体塗料組成物によって形成された塗膜による防食効果は、いわゆる犠牲防食によるものであり、素地金属よりもイオン化傾向が大きい卑の金属を用いて素地金属の腐食を防止する。本発明の粉体塗料組成物は、亜鉛粉末を含むので、被塗物の材質としては、亜鉛よりもイオン化傾向が小さい貴の金属であればよく、たとえば鉄、ニッケル、銅などを用いることができ、鉄素材が好適である。
(塗膜)
本発明の粉体塗料組成物を用いた塗装を行い、焼き付けによって硬化させ、被塗物の表面に塗膜を形成する。形成される塗膜は、焼付け後の膜厚が20〜300μmであり、好ましくは30〜100μmであり、最も好ましくは40〜80μmである。
被塗物の表面に形成された塗膜は、亜鉛粉末を相対的に多く含む亜鉛含有層と樹脂成分を相対的に多く含む樹脂含有層とを有する。亜鉛含有層は、被塗物表面に近い側に形成され、樹脂含有層は、塗膜の表層側に形成される。
被塗物は、材質が上記のような金属であれば、形状や大きさなどは特に限定されないが、使用環境により腐食を受けやすい工業製品が特に好ましい。鉄系金属製の枠部材、壁面部材、ばね部材などの表面塗装に本発明の粉体塗料組成物が好適である。
次に、本発明の粉体塗料組成物について実施例および比較例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、表中の配合量は特別な記載がない限り、質量部を表す。
表1〜表6に示す配合の実施例1〜30および比較例1〜15の粉体塗料を、前記の製造方法で製造し、被塗物としてサンドブラスト処理の1.6mm厚SS−400を用い、塗装膜厚が50μmになるように静電塗装し、180℃、20分間の焼き付けによって試験片を作製した。次に、この試験片を用いて性能評価した。
<評価方法>
・樹脂含有層の形成
塗膜に層分離が生じているかどうかを評価した。塗膜を切断して切断面を光学顕微鏡および電子顕微鏡(SEM)にて確認、またEPMA(ZNマッピング)にて亜鉛の密度を目視で観察し、樹脂成分を相対的に多く含む樹脂含有層が形成されていれば評価を「あり」とし、樹脂含有層が形成されていなければ評価を「なし」とした。
・外観
塗膜の外観状態を評価した。塗膜表面にブツが多い、亜鉛粒子が一部露出しているなど試験片を目視および指触して明らかに不具合が生じている場合は×とし、それ以外は2段階で評価し◎(良好)または○(◎よりは劣るが良好)とした。
・耐おもり落下性
JIS K5600−5−3に準拠する試験方法(デュポン式:撃ち型φ1/2インチ、錘重さ500g、落下高さ30〜50cm)により評価した。落下高さを30cm、40cm、50cmとし、それぞれの高さで目視によるひび割れなどなければ良好とした。たとえば、落下高さが30cmおよび40cmでひび割れがなく、落下高さ50cmでひび割れが生じた場合は、表中に「40cm○」と記載した。落下高さ30cmでもひび割れが生じた場合は、表中に「30cm×」と記載した。
・初期錆色
上記の耐中性塩水噴霧性試験中において、塩水噴霧時間が24時間、48時間、72時間の状態で発生する錆色を目視で評価した。白色であれば、酸化亜鉛の色が表出しており、塗膜による犠牲防食効果が機能している。赤白色であれば、酸化亜鉛の白色に加えて一部に酸化鉄の赤色が表出しており、塗膜による犠牲防食効果が弱まっている。赤色であれば、全面が酸化鉄に覆われており塗膜による犠牲防食効果が見られない。
・耐中性塩水噴霧性
JIS K5600−7−1に準拠する試験方法(液温35℃の5%塩化ナトリウム水溶液を840時間噴霧、240時間で中間確認)により評価した。表には錆幅およびフクレ幅の数値を記載した。錆幅、フクレ幅ともに3mm以下を良好な評価としているが、数値が小さい方がより良好である。
・促進耐候性
サンシャインウェザーメーター300時間試験後の光沢保持率を評価した。300時間試験後の光沢値の初期光沢値に対する割合を記載した。数値が大きい方がより良好である。
<樹脂種の影響および亜鉛粉末量の影響>
熱硬化性樹脂(A)の種類を変化させたときの実施例1〜7、実施例22〜28を表1と表4に示す。塗膜に亜鉛が多く含まれる層と樹脂成分が多く含まれる層とが形成され、評価結果はすべて良好であった。
熱硬化性樹脂(A)の種類を実施例1〜7と同じとし、亜鉛末含有量を増やした実施例8〜14を表2に示す。塗膜に亜鉛が多く含まれる層と樹脂成分が多く含まれる層とが形成されたが、実施例1〜7よりは外観、耐おもり落下性が劣る結果であった。
熱硬化性樹脂(A)の種類を実施例1〜7と同じとし、亜鉛末含有量をさらに増やした比較例1〜7を表5に示す。亜鉛粉末含有量が多すぎたためか、塗膜に亜鉛が多く含まれる層と樹脂成分が多く含まれる層とが形成されなかった。外観も悪く、耐おもり落下性も30cmで割れが発生した。
熱硬化性樹脂(A)の種類を実施例1〜7と同じとし、亜鉛末含有量が少ないが防錆顔料を使用している実施例15〜21を表3に示す。塗膜に亜鉛が多く含まれる層と樹脂成分が多く含まれる層とが形成された。外観、耐おもり落下性は実施例1〜7と同等であるが、耐中性塩水噴霧性では240時間の錆幅、840時間の錆幅は実施例1〜7と比較すると大きく、耐食性がやや劣る結果であった。
熱硬化性樹脂(A)の種類を実施例1〜7と同じとし、亜鉛末含有量をさらに減らした比較例8〜14を表6に示す。亜鉛粉末含有量が少なすぎたために塩水噴霧試験48時間で赤錆が見られた。
実施例22からエポキシ樹脂を除いた実施例29を表4に示す。耐中性塩水噴霧性では240時間の錆幅、840時間の錆幅が大きく耐食性が劣る結果であったが、耐候性は向上した。
βヒドロキシアルキルアミドとトリグリシジルイソシアヌレートを併用した実施例30を表4に示す。塗膜に亜鉛含有層と樹脂含有層とが形成され、評価結果が全て良好であった。
熱硬化性樹脂(A)としてエポキシ樹脂系を使用した比較例15を表6に示す。樹脂含有層の形成は見られなかった。外観、耐おもり落下性、耐食性は良好であったが、耐候性が非常に悪い結果であった。
これらの結果から、亜鉛粉末の含有量が粉体塗料組成物全体に対して30〜80質量%であれば、塗膜に亜鉛が多く含まれる層と樹脂成分が多く含まれる層とが形成され良好な結果が得られることがわかる。
上記の実施例、比較例に使用した原料は下記のとおりである。
<水酸基含有ポリエステル樹脂>
GV126:日本ユピカ(株)社製
GV545:日本ユピカ(株)社製
<水酸基含有フッ素樹脂>
LF710F:旭硝子(株)社製
EXLP−36:旭硝子(株)社製
<カルボキシ基含有ポリエステル樹脂>
CC2630−2:ダイセル・オルネクス(株)社製
CC2441−2:ダイセル・オルネクス(株)社製
CC1623−0:ダイセル・オルネクス(株)社製
CC4420−0:ダイセル・オルネクス(株)社製
CC2425−0:ダイセル・オルネクス(株)社製
CC1631−0:ダイセル・オルネクス(株)社製
<水酸基含有アクリル樹脂>
A−251:DIC(株)社製
AH−600SF:DIC(株)社製
<グリシジル基含有アクリル樹脂>
A−261:DIC(株)社製
A−249:DIC(株)社製
A−266:DIC(株)社製
<硬化剤>
B−1530(ブロックイソシアネート):エボニック(株)社製
XL−552(βヒドロキシアルキルアミド):エムスケミー(株)社製
TEPIC−G(トリグリシジルイソシアヌレート):日産化学工業(株)社製
SL−12(ジカルボン酸):岡村製油(株)社製
DICY7(ジシアンジアミド):三菱化学(株)社製
<添加剤>
#1002(エポキシ樹脂):三菱化学(株)社製
DER662E(エポキシ樹脂):ダウケミカル(株)社製
U−870(ジブチルスズ化合物):日東化成(株)社製
C17Z(2−ヘプタデシルイミダゾール):四国化成(株)社製
ベンゾイン:美源スペシャリティケミカル(株)社製
PL540(アクリルポリマー):楠本化成(株)社製
3620(ポリエチレン):クラリアント(株)社製
<顔料>
MA100(カーボンブラック):三菱化学(株)社製
<亜鉛末>
F500:本荘ケミカル(株)社製
<防錆顔料>
PM300(モリブデン酸アルミ):キクチカラー(株)社製
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本発明の粉体塗料組成物は、一度の塗装で耐食性と耐候性に優れた塗膜を形成できる。屋外で使用される自動車部品、電気製品、建築資材等に好適である。

Claims (1)

  1. 熱硬化性樹脂(A)と、亜鉛粉末(B)を含み、前記亜鉛粉末(B)の含有量が、粉体塗料組成物全体に対して30〜80質量%であることを特徴とする粉体塗料組成物であって、被塗物の表面に塗装したときに、前記熱硬化性樹脂(A)よりも、前記亜鉛粉末(B)を多く含む亜鉛含有層、ならびに前記亜鉛粉末(B)よりも前記熱硬化性樹脂(A)を多く含む樹脂含有層を有する塗膜を形成することを特徴とし、前記の熱硬化性樹脂(A)の主剤成分と硬化剤成分の組み合わせが、水酸基含有ポリエステル樹脂とブロックイソシアネート樹脂、水酸化含有フッ素樹脂とブロックイソシアネート樹脂、カルボキシ基含有ポリエステル樹脂とβ−ヒドロキシアルキルアミド樹脂、カルボキシ基含有ポリエステル樹脂とトリグリシジルイソシアヌレート、水酸基含有アクリル樹脂とブロックイソシアネート樹脂、グリシジル基含有アクリル樹脂とジカルボン酸、からなる群から選択される少なくとも1種の組み合わせであることを特徴とする粉体塗料組成物。
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