JP2017170882A - 樹脂塗装亜鉛めっき鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】放熱性と導電性に優れ、かつ汎用的に使用可能な明度の高い亜鉛めっき鋼板の提供。
【解決手段】亜鉛めっき鋼板の両面に、水系樹脂、コロイダルシリカおよび黒鉛を含む樹脂塗膜を有する樹脂塗装亜鉛めっき鋼板であって、上記樹脂塗膜の膜厚が0.50〜1.2μmであり、水系樹脂とコロイダルシリカと黒鉛の合計100質量%中、水系樹脂が55〜90質量%、コロイダルシリカが5〜30質量%、黒鉛が5〜15質量%であり、上記黒鉛の平均長径が1〜10μmであり、樹脂塗膜表面のL値が50以上である樹脂塗装亜鉛めっき鋼板。
【選択図】なし

Description

本発明は、亜鉛めっき鋼板の上に、黒鉛を含む水系樹脂層を積層した、放熱性、導電性に優れ、かつ明度の高い樹脂塗装亜鉛めっき鋼板に関する。
本発明の樹脂塗装金属板は、家庭用電化製品の筐体や内装・外装部品、金属製家具等の外板材、建築材料等に用いることができる。
従来から、電化製品の内装部品や外装部品には、多くの亜鉛めっき鋼板が使用されており、耐食性や耐指紋性が付与された塗膜が形成された鋼板が用いられることが多い。また、電化製品は、小型化・高性能化が進むにつれ、放熱対策にファンやヒートシンク等を設置しなければならないため、コスト高となっている。そこで、ファンやヒートシンクを省略してコストダウンすることのできる放熱性を付与した鋼板が開発されてきている(特許文献1等)。
鋼板の放熱性を高めるためには、カーボンブラック等の放射率の高い物質を添加した塗膜を、厚膜で鋼板上に形成することが有効である。しかし、カーボンブラックを添加した塗膜は、外観が顕著に黒くなって、明度が低くなってしまい、特に汎用的な亜鉛めっき鋼板に適用すると、明度の低さが目立つため、適用可能な用途が限られてしまう。また塗膜を厚くすると、スポット溶接性や電磁波シールド性を確保するのに必要な導電性が低下し、電化製品用の鋼板に求められる導電性のレベルには到達できなくなるという問題があり、多用されている亜鉛めっき鋼板に放熱性を付与するには、課題が多くあった。
このため、カーボンブラックではなく黒鉛を用いて、導電性を確保しようとする検討が行われている(前記特許文献1)。
特開2008−94085号公報
しかし、前述した特許文献1では、ドライブケース用に用途を限っているため、樹脂ビーズなども配合しており、コストが高くなっている。また、明度については、何ら言及されていない。
本発明は、上記の現状を踏まえ、安価であり、放熱性および導電性に優れ、かつ明度も高い樹脂塗装亜鉛めっき鋼板の提供を課題として掲げた。
上記課題を解決した本発明は、亜鉛めっき鋼板の両面に、水系樹脂、コロイダルシリカおよび黒鉛を含む樹脂塗膜を有する樹脂塗装亜鉛めっき鋼板であって、上記樹脂塗膜の膜厚が0.50〜1.2μmであり、水系樹脂とコロイダルシリカと黒鉛の合計100質量%中、水系樹脂が55〜90質量%、コロイダルシリカが5〜30質量%、黒鉛が5〜15質量%であり、上記黒鉛の平均長径が1〜10μmであり、樹脂塗膜表面のL値が50以上である樹脂塗装亜鉛めっき鋼板である。
上記黒鉛の平均長径は、1〜5μmであることが好ましい。
上記黒鉛は鱗片状であることが好ましい。上記鱗片状黒鉛の粒径範囲は1〜5μmであることがより好ましい。上記鱗片状黒鉛は、平均長径1〜5μm、且つ、粒径範囲1〜5μmであることが更に好ましい。
上記亜鉛めっき鋼板と樹脂塗膜の間に、化成処理膜を有することが好ましい。
また、上記亜鉛めっき鋼板が電気亜鉛めっき鋼板であることも好ましい。
本発明により、安価であり、放熱性および導電性に優れ、かつ明度も高い樹脂塗装亜鉛めっき鋼板を提供することができた。
本発明者等は、亜鉛めっき鋼板に放熱性を付与するため、種々の検討を行った。熱の移動には、伝導、対流、放射の3つがあり、本発明は放射を利用して放熱性を高めたものである。放熱性の指標となる放射率は吸収率と等しく、吸収率と反射率の合計は1となるため、反射率の高い亜鉛めっき鋼板は、放射率が極めて低い。亜鉛めっき鋼板において放射率を高めるには、放射率の高い樹脂塗膜を表面に形成することが有効である。しかし、電化製品等に使用される亜鉛めっき鋼板は、導電性を確保するために、表面に形成できる樹脂塗膜の厚みは限られており、これまで流通している樹脂塗装亜鉛めっき鋼板の放射率は0.1程度であった。薄い塗膜であってもカーボンブラックのような非常に放射率の高い物質を添加すれば放射率を高めることはできるが、色が黒くなって明度が低下し、汎用品と明度に大きな違いが出てしまうため、適用可能な部品が限られてしまう。さらに、カーボンブラックは、導電性を有するが故に、樹脂塗膜中で電気化学反応によって亜鉛めっき鋼板の耐食性を著しく劣化させる。
そこで、本発明者らは、カーボンブラックではなく黒鉛に着目した。黒鉛は放射率がカーボンブラックと同様に高いが、着色力が弱い。その中でも、比較的長径の大きい黒鉛(平均長径1μm以上)であれば、樹脂塗膜中に添加しても鋼板表面の明度があまり落ちないことを見出した。また、黒鉛もカーボンブラックと同様に導電性を有するため、耐食性を低下させるが、長径の大きな黒鉛は長径の小さな黒鉛と比較して、耐食性の劣化度合いが軽微であることも見出した。これは、電気化学反応が黒鉛表面で起きており、長径が大きくなることで比表面積が小さくなったためではないかと考えられる。これらの知見により、本発明を完成し、放熱性と導電性に優れ、かつ汎用的に使用可能な明度の高い亜鉛めっき鋼板を提供することが可能となった。以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、亜鉛めっき鋼板の両面に、水系樹脂、コロイダルシリカおよび黒鉛を含む樹脂塗膜を有する樹脂塗装亜鉛めっき鋼板であって、上記樹脂塗膜の膜厚が0.50〜1.2μmであり、水系樹脂とコロイダルシリカと黒鉛の合計100質量%中、水系樹脂が55〜90質量%、コロイダルシリカが5〜30質量%、黒鉛が5〜15質量%であり、上記黒鉛の平均長径が1〜10μmであり、樹脂塗膜表面のL値が50以上である樹脂塗装亜鉛めっき鋼板である。
亜鉛めっき鋼板は、溶融亜鉛めっき鋼板でも構わないが、電気亜鉛めっき鋼板が好ましい。板厚は、用途に応じて適宜選択できるが、電化製品用途であれば、0.6〜1.5mm程度である。
亜鉛めっき鋼板は、樹脂塗膜を積層する前に、化成処理を行ったものであってもよい。化成処理としては、有機皮膜層、無機皮膜層、リン酸塩皮膜層、クロメート皮膜層等を形成する処理が挙げられ、これらの中でも有機皮膜層、無機皮膜層を形成する処理が好ましい。有機皮膜層としては、例えばポリオレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、およびこれらの混合物、共重合体、変性樹脂等を適宜選択して使用すればよい。該有機皮膜中にはさらに、耐食性向上を目的としてシリカゲル、コロイダルシリカ等を添加したり、あるいは塗膜密着性向上を目的としてシランカップリング剤を添加してもよい。無機皮膜層としては、例えば珪酸塩皮膜層等が挙げられ、該珪酸塩皮膜にはリン酸やフッ化物を添加してもよい。
化成処理皮膜の付着量は特に規定されるものではないが、例えば有機皮膜層や無機皮膜層であれば、耐食性の観点から、乾燥質量で10mg/m2以上とすることが好ましい。
しかしながら50mg/m2を超えると耐食性の改善効果が飽和すると共に、導電性を劣化させ、製造コストが上昇する。
本発明の樹脂塗装亜鉛めっき鋼板が有する樹脂塗膜は、水系樹脂、コロイダルシリカおよび黒鉛を含む。すなわち、樹脂塗膜形成用塗工液には、水系樹脂、コロイダルシリカおよび黒鉛が含まれる。水系樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂が好ましい。本発明で水系樹脂というのは、水分散体(エマルション)となっている樹脂、あるいは水溶性樹脂のことを指す。
中でもポリオレフィン樹脂が好ましく、ポリオレフィン系樹脂としては、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体が好ましい。エチレン−不飽和カルボン酸共重合体としては、特開2005−246953号公報や特開2006−43913号公報に記載のものを用いることができる。
不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられ、これらのうちの1種以上と、エチレンとを、公知の高温高圧重合法等で重合することにより、共重合体を得ることができる。
エチレンに対する不飽和カルボン酸の共重合比率は、モノマー全量を100質量%とした時に、不飽和カルボン酸が10〜40質量%であることが好ましい。不飽和カルボン酸が10質量%よりも少ないと、イオンクラスターによる分子間会合の基点となるカルボキシル基が少ないため、塗膜強度効果が発揮されず、エマルション組成物の乳化安定性に劣るため好ましくない。より好ましい不飽和カルボン酸の下限は15質量%である。一方、不飽和カルボン酸が40質量%を超えると、樹脂塗膜の耐食性や耐水性が劣ることがある。より好ましい上限は25質量%である。
上記エチレン−不飽和カルボン酸共重合体はカルボキシル基を有しているので、有機塩基や金属イオンで中和することにより、エマルション化(水分散体化)が可能となる。本発明では、有機塩基として、第1級、第2級、第3級アミン(好ましくはトリエチルアミン)のアミン類を挙げることができる。沸点の低いアミン(好ましくは大気圧下での沸点が100℃以下のアミン;例えばトリエチルアミン)は、塗膜の耐食性をあまり低下させない。また、アミン類に1価の金属イオンを併用することが好ましい。アミン類は、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体中のカルボキシル基1モルに対し0.2〜0.8モル(20〜80モル%)とすることが好ましい。1価の金属イオンの量は、水蒸気透過度に影響を及ぼし、1価の金属化合物の使用量が多くなれば樹脂と水との親和性が増して、水蒸気透過度が大きくなるので、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体中のカルボキシル基1モルに対し0.02〜0.2モル(2〜20モル%)とすることが好ましい。また、過剰なアルカリ分は耐食性劣化の原因となるため、アミン類と金属イオンの合計使用量は、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体中のカルボキシル基1モルに対し、0.3〜1.0モルの範囲とするとよい。なお、1価の金属イオンを付与するための金属化合物は、NaOH、KOH、LiOH等が好ましく、NaOHが最も性能が良く好ましい。
乳化に際しては、トール油脂肪酸などの界面活性剤機能を持つ化合物を適量、添加してもよい。エチレン−不飽和カルボン酸共重合体は、必要により後述のカルボン酸重合体存在下で、高温(150℃程度)、高圧(5気圧程度)の反応が可能な容器内で、高速攪拌を1〜6時間行えば、エマルション化する。また、親水性有機溶媒、例えば、炭素数1〜5程度の低級アルコールなどを一部水に加えても構わない。
エチレン−不飽和カルボン酸共重合体の質量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で、好ましくは1,000〜10万、より好ましくは3,000〜7万、さらに好ましくは5,000〜3万である。このMwは、ポリスチレンを標準として用いるGPCにより測定することができる。
樹脂塗膜形成用塗工液には、樹脂成分としてカルボン酸重合体を含めることもできる。カルボン酸重合体としては、上記エチレン−不飽和カルボン酸共重合体の合成に使用することのできるものとして例示した不飽和カルボン酸を構成単位とする重合体がいずれも使用可能である。これらの中でもアクリル酸およびマレイン酸が好ましく、マレイン酸がより好ましい。カルボン酸重合体は、不飽和カルボン酸以外の単量体に由来する構成単位を含有していても良いが、その他の単量体に由来する構成単位量は、重合体中に10質量%以下、好ましくは5質量%以下であり、不飽和カルボン酸のみから構成されるカルボン酸重合体がより好ましい。好ましいカルボン酸重合体として、例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリマレイン酸等を挙げることができ、これらの中でも樹脂塗膜密着性および耐食性の観点から、ポリマレイン酸がより好ましい。ポリマレイン酸を使用することにより耐食性等が向上する正確なメカニズムは不明であるが、カルボキシル基量が多いため、樹脂塗膜と亜鉛めっき鋼板との密着性が向上し、それに伴い耐食性も向上することが考えられる。但し本発明は、この推定には限定されない。本発明で用いるカルボン酸重合体のMwは、ポリスチレン換算で、好ましくは500〜3万、より好ましくは800〜1万、さらに好ましくは900〜3,000、最も好ましくは1,000〜2,000である。このMwは、ポリスチレンを標準として用いるGPCにより測定することができる。
エチレン−不飽和カルボン酸共重合体とカルボン酸重合体との含有比率は、質量比で、1,000:1〜10:1、好ましくは200:1〜20:1である。カルボン酸重合体の含有比率が低すぎると、オレフィン−酸共重合体とカルボン酸重合体とを組み合わせた効果が充分に発揮されず、逆にカルボン酸重合体の含有比率が過剰であると、樹脂塗膜形成用塗工液中でオレフィン−酸共重合体とカルボン酸重合体とが相分離し、均一な樹脂塗膜が形成されなくなるおそれがある。
[コロイダルシリカ]
コロイダルシリカを樹脂塗膜に存在させると、腐食環境下において塗膜欠陥部で溶解・溶出し、pHの緩衝作用や不動態塗膜形成作用によって金属板の溶解/溶出を抑制するため、耐食性が向上する。ただし、コロイダルシリカの表面積(粒子径)によって、塗膜中への分散状態が変化し、塗膜の硬さや脆さ等の機械的物性に大きな影響を及ぼす。緻密な塗膜を形成させ、塗膜の強靱さを向上させるには、粒子径の小さいコロイダルシリカを、塗膜中に均一に分散させることが望ましく、この点で、コロイダルシリカは、平均粒子径で4〜20nmであることが好ましい。20nmより大きくなると、分散性が低下する傾向にある。このため、緻密な塗膜ができず、塗膜の強靱さが不足したり、耐食性向上効果が低下するおそれがある。一方、4nm未満では、樹脂塗膜形成用塗工液の保存安定性が悪化して、ゲル化するおそれがある。コロイダルシリカの平均粒子径は、4〜6nmがより好ましい。シリカの平均粒子径は、平均粒子径が1〜10nm程度の場合にはシアーズ法により、10〜100nm程度の場合にはBET法により、測定することができる。
コロイダルシリカは市販されており、例えば、平均粒子径4〜6nmのものであれば、日産化学工業社製の「スノーテックス(登録商標)XS」を、平均粒子径10〜20nmであれば、同じく日産化学工業社製の「スノーテックス(登録商標)40」、「スノーテックス(登録商標)N」、「スノーテックス(登録商標)SS」、「スノーテックス(登録商標)O」等や、ADEKA社製の「アデライト(登録商標)AT−30」、「アデライト(登録商標)AT−30A」等を使用することができる。樹脂塗膜形成用塗工液は水系なので、コロイダルシリカを良好に分散させるために、塗工液のpHに合わせて、コロイダルシリカの種類を選択することが好ましい。
[黒鉛]
本発明で用いられる樹脂塗膜には黒鉛も含まれる。黒鉛は放射率を確保するための必須成分である。黒鉛としては、天然黒鉛や人造黒鉛が使用できる。黒鉛の平均長径は1〜10μmであり、1〜5μmがより好ましい。平均長径が1μmより小さいと、明度(L値)が不足し、耐食性も不足する。10μmを超えると、後述するように樹脂塗膜の膜厚の上限が1.2μmと薄膜なので樹脂塗膜から黒鉛が突出してしまうため好ましくない。ここで「平均長径」とは、黒鉛の長径(最大径)の平均を意味し、市販品の場合はカタログ値である。
黒鉛は市販されており、日立化成株式会社製の「ヒタゾル(登録商標)」シリーズがある。伊藤黒鉛工業株式会社も種々の黒鉛を販売している。
黒鉛の形状は特に限定されないが、樹脂塗膜から黒鉛が突出しないように、鱗片状の黒鉛を用いることが好ましい。更に鱗片状の黒鉛を用いれば、鱗片状でない黒鉛を用いた場合に比べて、L値、放射率、導電性が向上する傾向にあり、特に樹脂塗膜中に添加してもL値があまり低下しないことが分かった。
ここで鱗片状黒鉛とは、天然黒鉛のうち、外観が葉片状のものを意味する。上記鱗片状黒鉛には、鱗状黒鉛(形状が塊状であり、塊状黒鉛と呼ばれる場合がある)も含まれるが、外観が土状または土塊状を示す土状黒鉛は含まれない。また、上記鱗片状黒鉛を化学処理して膨張させた膨張黒鉛、上記膨張黒鉛を高温で加熱して更に膨張させた膨張化黒鉛も、上記鱗片状黒鉛の範囲には含まれない。勿論、熱分解黒鉛のように粉末コークスを約3000℃で熱処理して黒鉛化した人造黒鉛も、上記鱗片状黒鉛の範囲には含まれない。
上記鱗片状黒鉛は市販されており、例えばSECカーボン株式会社製のSNO−3、日本黒鉛工業株式会社製のJ−CPBなどが挙げられる。
上記鱗片状黒鉛の粒径範囲(粒径のばらつき)は1〜5μmであることがより好ましい。このような鱗片状黒鉛を用いることにより、樹脂塗膜の膜厚が薄く、高い放射率が得られることがわかった。ここで上記「粒径範囲」は鱗片状黒鉛の最短径と最長径の差を意味し、粒径のばらつきの指標となるものである。上記「粒径範囲」の詳細な測定方法は、後記する実施例の欄で詳述する。
樹脂塗膜中の、水系樹脂成分、コロイダルシリカおよび黒鉛の質量比率は、これらの合計を100質量%としたとき、水系樹脂成分は55〜90質量%、コロイダルシリカが5〜30質量%、黒鉛は5〜15質量%とする。コロイダルシリカが少なすぎると耐食性が不足する。しかし多すぎても、やはり耐食性が不足する。コロイダルシリカは、10〜25質量%がより好ましい。また、黒鉛が5質量%より少ないと、放射率が不足し、15質量%を超えて添加すると、明度(L値)が不足し、耐食性も低下する。黒鉛は7〜13質量%がより好ましい。
[シランカップリング剤]
樹脂塗膜には、必要に応じてシランカップリング剤を含めてもよい。シランカップリング剤を用いると、亜鉛めっき鋼板と樹脂塗膜との密着性が向上し、それに伴い耐食性も向上する。また、水系樹脂とコロイダルシリカとの結合力を向上させる効果があり、樹脂塗膜の強靱さが向上する。中でも、グリシドキシ系のシランカップリング剤が反応性が高く、耐食性向上効果が大きい。グリシジル基含有シランカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
樹脂塗膜中のシランカップリング剤量は、水系樹脂とコロイダルシリカとの合計100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましい。0.1質量部より少ないと、亜鉛めっき鋼板と樹脂塗膜との密着性や、水系樹脂とコロイダルシリカとの結合力が不足して、樹脂塗膜の強靱さや耐食性が不充分となるおそれがある。ただし、10質量部を超えても、亜鉛めっき鋼板と樹脂塗膜との密着性向上効果が飽和する上に、水系樹脂中の官能基が減少するため塗装性が低下するおそれがある。また、シランカップリング剤同士が加水分解縮合反応を起こして、樹脂塗膜形成用塗工液の安定性が低下し、ゲル化やコロイダルシリカの沈殿を引き起こすおそれがある。より好ましいシランカップリング剤量は3〜9質量部であり、さらに好ましくは5〜7質量部である。
[カルボジイミド基含有化合物]
樹脂塗膜は、必要に応じてさらにカルボジイミド基含有化合物を含んでいても良い。カルボジイミド基は、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体およびカルボン酸重合体中のカルボキシル基と反応する。よってカルボジイミド基含有化合物を使用することにより、樹脂塗膜中のカルボキシル基量を減少させて、耐水性を向上させることができる。本発明において、1種または2種以上のカルボジイミド基含有化合物を使用できる。
樹脂塗膜は水系であるので、水性のカルボジイミド基含有化合物が好ましい。また1分子中に複数のカルボジイミド基を含有する化合物が好ましい。1分子中に複数のカルボジイミド基を有すると、水系樹脂成分中のカルボキシル基との架橋反応により、耐食性等をさらに向上させることができる。
市販されているポリカルボジイミド化合物として、例えばN,N−ジシクロへキシルカルボジイミド、N,N−ジイソプロピルカルボジイミド等や、日清紡社製のポリカルボジイミド(1分子中に複数のカルボジイミド基を有する重合体)である「カルボライト(登録商標)」シリーズを挙げることができる。「カルボライト(登録商標)」のグレードとしては、水溶性の「SV−02」、「V−02」、「V−02−L2」、「V−04」やエマルションタイプの「E−01」、「E−02」等が好適である。
カルボジイミド基含有化合物の含有量は、水系樹脂成分中のカルボキシル基の量に応じて設定する。カルボジイミド基含有化合物と水系樹脂の合計を100質量部とした場合、前記100質量部に対し、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは8質量部以上である。一方、カルボジイミド基含有化合物の含有量が過剰になると、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体とカルボン酸重合体の組合せの効果が低下する。また水系の樹脂塗膜形成用塗工液中で水性カルボジイミド基含有化合物を過剰に使用すると、耐水性および耐食性に悪影響を及ぼし得る。このような観点から、カルボジイミド基含有化合物の含有量は、前記100質量部に対し、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは16質量部以下である。
樹脂塗膜形成用塗工液は、固形分を15〜25質量%程度とすることが好ましい。樹脂塗膜の膜厚は、0.50〜1.2μmとする。0.50μmよりも薄いと、放熱性および耐食性のいずれも不足する。また、1.2μmを超えて厚くすると、導電性が不足する。樹脂塗膜には、本発明の効果を阻害しない範囲で、ワックス、架橋剤、希釈剤、皮張り防止剤、界面活性剤、乳化剤、分散剤、レベリング剤、消泡剤、浸透剤、造膜助剤、染料、顔料、増粘剤、潤滑剤等を含有させることもできる。なお、樹脂塗膜には、カーボンブラックは含まれない。前記したように、明度が下がり、耐食性も劣化するからである。
次に、赤外線積分放射率について説明する。
赤外線積分放射率とは、換言すれば、赤外線(熱エネルギー)の放出し易さ(吸収し易さ)を意味する。従って、赤外線積分放射率が高い程、放出(吸収)される熱エネルギー量は大きくなることを示す。例えば物体(本発明では樹脂塗装金属板)に与えられた熱エネルギーを100%放射する場合には、赤外線積分放射率は1となる。
なお、本発明では、100℃に加熱したときの赤外線積分放射率を定めているが、これは、本発明における塗膜積層体金属板が電気機器用途(部材等によっても相違するが、通常の雰囲気温度は概ね50〜70℃で、最高で約100℃)に適用されることを考慮し、当該実用レベルの温度と一致させるべく、加熱温度を100℃に定めたものである。
本発明における赤外線積分放射率の測定方法は以下の通りである。
装置:日本電子社製「JIR−5500型フーリエ変換赤外分光光度計」及び放射測定ユニット「IRR−200」
測定波長範囲:4.5〜15.4μm
測定温度:試料の加熱温度を100℃に設定する
積算回数:200回
分解能:16cm-1
上記装置を用い、赤外線波長域(波長:4.5〜15.4μm)における試料の分光放射強度(実測値)を各々測定した。なお、上記試料の実測値は、バックグラウンドの放射強度及び装置関数が加算/付加された数値として測定される為、これらを補正する目的で、放射率測定プログラム[日本電子社製放射率測定プログラム]を用い、積分放射率を算出した。
算出方法の詳細は以下の通りである。
Figure 2017170882
式中、
ε(λ):波長λにおける試料の分光放射率(%)
E(T):温度T(℃)における試料の積分放射率(%)
M(λ,T):波長λ、温度T(℃)における試料の分光放射強度(実測値)
A(λ):装置関数
FB(ν):波長νにおける固定バックグラウンド(試料によって変化しないバックグラウンド)の分光放射強度
TB(λ,TTB):波長λ、温度TTB(℃)におけるトラップ黒体の分光放射強度
B(λ,T):波長λ、温度T(℃)における黒体の分光放射強度(ブランクの理論式からの計算値)
λ1,λ2:積分する波長の範囲
をそれぞれ意味する。
ここで、上記A(λ:装置関数)、及び上記KFB(ν:固定バックグラウンドの分光放射強度)は、2つの黒体炉(80℃、160℃)の分光放射強度の実測値、及び当該温度域における黒体の分光放射強度(ブランクの理論式からの計算値)に基づき、下記式によって算出したものである。
Figure 2017170882
式中、
160℃(λ,160℃):波長λにおける160℃の黒体炉の分光放射強度(実測値)
80℃(λ,80℃):波長λにおける80℃の黒体炉の分光放射強度(実測値)
160℃(λ,160℃):波長λにおける160℃の黒体炉の分光放射強度(ブランクの理論式からの計算値)
80℃(λ,80℃):波長λにおける80℃の黒体炉の分光放射強度(ブランクの理論式からの計算値)
をそれぞれ意味する。
なお、積分放射率E(T=100℃)の算出に当たり、KTB(λ,TTB)を考慮しているのは、測定に当たり、試料の周囲に、水冷したトラップ黒体を配置している為である。上記トラップ黒体の設置により、変動バックグランド放射(試料によって変化するバックグラウンド放射を意味する。試料の周囲からの放射が試料表面で反射される為、試料の分光放射強度の実測値は、このバックグランド放射が加算された数値として表れる)の分光放射強度を低くコントロールすることができる。上記のトラップ黒体は、放射率0.96の疑似黒体を使用しており、前記KTB[(λ,TTB):波長λ、温度TTB(℃)におけるトラップ黒体の分光放射強度]は、以下の様にして算出する。
TB(λ,TTB)=0.96×KB(λ,TTB
式中、KB(λ,TTB)は、波長λ、温度TTB(℃)における黒体の分光放射強度を意味する。
[製造方法]
本発明の樹脂塗装金属板は、上記成分を所定の比率で混合し、攪拌器で数分攪拌することにより作製した樹脂塗膜形成用塗工液を、公知の塗装方法で亜鉛めっき鋼板の表面に塗布し、乾燥させて製造することができる。塗装方法は特に限定されないが、例えば表面を清浄化して、亜鉛めっき鋼板に、バーコーター法、ロールコーター法、スプレー法、カーテンフローコーター法等を用いて塗工液を塗工し、熱風乾燥炉を通過させて乾燥させる方法等が挙げられる。塗膜の膜厚の均一性や処理コスト、塗装効率等を総合的に勘案して実用上好ましいのは、ロールコーター法である。
以下実施例によって本発明をさらに詳述するが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更実施は本発明に含まれる。なお、特に断らない限り、部は質量部を意味する。
実験例1〜21
[樹脂塗膜形成用塗工液の調製]
攪拌機、温度計、温度コントローラーを備えた乳化設備を有するオートクレイブに、エチレン−アクリル酸共重合体(ダウケミカル社製「プリマコール(登録商標)5990I」、アクリル酸由来の構成単位:20質量%、質量平均分子量(Mw):20,000、メルトインデックス:1300、酸価:150)200.0部、ポリマレイン酸水溶液(日油社製「ノンポール(登録商標)PMA−50W」、Mw:約1100(ポリスチレン換算)、50質量%品)8.0部、トリエチルアミン35.5部(エチレン−アクリル酸共重合体のカルボキシル基に対して0.63当量)、48%NaOH水溶液6.9部(エチレン−アクリル酸共重合体のカルボキシル基に対して0.15当量)、トール油脂肪酸(ハリマ化成社製「ハートールFA3」)3.5部、イオン交換水792.6部を加えて密封し、150℃および5気圧で3時間高速攪拌してから、30℃まで冷却した。
次いでグリシドキシ基含有シランカップリング剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製「TSL8350」、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)10.4部、カルボジイミド基含有化合物(日清紡社製「カルボジライト(登録商標)SV−02」、ポリカルボジイミド、Mw:2,700、固形分40質量%)31.2部、イオン交換水72.8部を添加し、10分間攪拌して、エチレン−アクリル酸共重合体が乳化し、各成分と混合されたエマルションが得られた(固形分20.3質量%、JIS K6833に準じて測定;以下、ポリオレフィン樹脂水性液という。)。
上記ポリオレフィン樹脂水性液に、コロイダルシリカ(日産化学工業社製「スノーテックス(登録商標)XS」、固形分20質量%、平均粒子径(カタログ値):4〜6nm)の量を表1に示したように種々変えると共に、黒鉛の種類と量も表1に示したように変えて、イオン交換水で希釈して攪拌し、樹脂塗膜形成用塗工液とした。なお、サンプル21は樹脂塗膜に黒鉛ではなく、カーボンブラック(御国色素社製「SAブラックDY−6」、固形分30.5質量%)を添加した例である。
用いた黒鉛は、以下のとおりである。黒鉛の平均長径はカタログ値である。
平均長径0.1μmの黒鉛:日立化成株式会社製「ヒタゾル(登録商標)AB−1」
平均長径1μmの黒鉛:日立化成株式会社製「ヒタゾル(登録商標)GP−60S」
平均長径2μmの黒鉛:日立化成株式会社製「ヒタゾル(登録商標)GA−242BK」
平均長径3μmの黒鉛:日立化成株式会社製「ヒタゾル(登録商標)GA−651G」
平均長径8μmの黒鉛:伊藤黒鉛工業株式会社製「PC−H」
[塗工]
電気亜鉛めっき鋼板(板厚0.8mm;めっき付着量片面20g/m2ずつ)の表面に、乾燥後の膜厚が0.48〜1.57μmとなるようにバーコーターにて樹脂塗膜形成用塗工液を塗布し、板温90〜100℃(炉温220℃×12秒)で加熱乾燥し、鋼板に樹脂塗膜を形成し、樹脂塗装亜鉛めっき鋼板を得た。なお、本発明の樹脂塗装亜鉛めっき鋼板は、両面に樹脂塗膜を有するが、本実施例では、片面の評価を行えば、特性の把握が可能であるため、片面のみに樹脂塗膜を形成した。
上記各樹脂塗装亜鉛めっき鋼板について、下記評価基準にて、明度(L値)、放射率、耐食性、導電性を評価して表1に併記した。
[明度(L値)]
日本電色工業社製の「Spectro Color Meter SQ2000」を用いて、塗装鋼板のL値を測定し、L値が50以上であれば○、L値が50未満であれば×とした。
[放射率]
前記したように、フーリエ変換赤外分光光度計(日本電子社製、JIR−5500)を用いて、樹脂塗装金属板を100℃に加熱したときの波長4.5〜15.4μmの試料および黒体の分光放射強度を測定し、試料の分光放射強度を黒体の分光放射強度で除した値を指標とした。放射率が0.2以上を○、0.2未満を×とした。
[耐食性]
JIS Z2371に準じて、35℃の雰囲気下で5%の塩水噴霧試験を24時間実施し、表面の白錆発生率で評価した。白錆発生率が10%を超えた場合を×、10%以下の場合を○とした。
[導電性]
テスターを用いて、端子を試料表面で滑らすことで電気抵抗値を測定し、下記基準で導電性を評価した。
100Ω以上、500Ω未満 :◎+
500Ω以上、1000Ω未満 :◎
1000Ω以上、1500Ω未満:○
1500Ω以上 :×
Figure 2017170882
表1より以下のように考察することができる。
まずNo.1〜11は本発明の要件を満足する例であり、放熱性と導電性に優れ、L値の高い亜鉛めっき鋼板が得られた。
これに対し、No.12〜21は、本発明のいずれかの要件を満足しない例であり、上記特性のいずれかが低下した。
No.12は黒鉛を添加しない例であり、放射率が低下した。
No.13は黒鉛の含有量が少ない例であり、放射率が低下した。一方、No.16は黒鉛の含有量が多い例であり、L値および耐食性が低下した。
No.14は樹脂塗膜の膜厚が小さい例であり、放射率および耐食性が低下した。一方、No.15は樹脂塗膜の膜厚が大きい例であり、導電性が低下した。
No.17はコロイダルシリカを含有しない例、No.18はコロイダルシリカの含有量が多い例、No.19は樹脂の含有量が少なく且つコロイダルシリカの含有量が多い例であり、いずれの場合も耐食性が低下した。
No.20は黒鉛の平均長径が小さい例であり、L値および耐食性が低下した。
No.21は黒鉛でなくカーボンブラックを含有する例であり、L値および耐食性が低下した。
実験例22、23
ここでは、鱗片状黒鉛の有用性を調べた。これらの実験例は、鱗片状黒鉛の含有量(いずれも5質量%)、樹脂塗膜の膜厚(いずれも0.60μm)が本発明の範囲を満足し、且つ、当該黒鉛の平均長径は3〜5μmと、本発明の好ましい範囲を満足する例である。
具体的には前述した実験例1において、下記の黒鉛を用いたこと(平均長径はカタログ値であり、粒径範囲は以下の方法で測定した値である)、および樹脂塗膜の膜厚を0.60μmとしたこと以外は上記実験例1と同様にして樹脂塗装亜鉛めっき鋼板を作製し、明度(L値)、放射率、耐食性、導電性を評価した。
平均長径3μm、粒径範囲1〜5μmの鱗片状黒鉛:SECカーボン株式会社製の品番「SNO−3」
平均長径5μm、粒径範囲2〜15μmの鱗片状黒鉛:日本黒鉛工業株式会社製の品番「J−CPB」
[鱗片状黒鉛の粒径範囲]
鱗片状黒鉛の粒径範囲は以下のようにして測定した。
まず、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)観察用の支持台に約1cm×1cmに切り取った電子顕微鏡用導電性粘着テープを貼り付けた後、その上にミクロスパテールを用いて黒鉛粉末を載せた。支持台を傾けて、粘着テープに付着していない余分な黒鉛粉末を取り除いた後、日本電子株式会社製JEE−420 真空蒸着装置を用い、約1nm相当のカーボン膜になる条件でカーボン蒸着を行なった。黒鉛粉末の形状を適切に観察するため、必要に応じて蒸着回数を調整した。
次に、約30μm×40μmの視野を合計2箇所観察し、2視野内において粒径が最も小さい最短径の黒鉛粒子と、粒径が最も大きい最長径の黒鉛粒子との差を「粒径範囲」とした。
これらの結果を表2に併記する。参考のため、表2に、前述した表1のNo.1、10(いずれも黒鉛の含有量がNo.22、23と同じ5質量%の例)の結果を併記する。No.10は鱗片状黒鉛でなく、人造黒鉛の一種で熱分解黒鉛である。
Figure 2017170882
表2より、鱗片状黒鉛を用いたNo.22、23は、No.1、10に比べて導電性が向上し、No.1に比べるとL値および放射率も向上することが分かる。特にこれらの膜厚はNo.1に比べて小さいにもかかわらず高い放射率が得られることは、皮膜コスト低減の観点から非常に有用である。
更に上記No.22の鱗片状黒鉛は粒径範囲が1〜5μmに制御されているので、粒径範囲が上記範囲を外れるNo.23に比べて、放射率が一層向上した。
本発明により、放熱性と導電性に優れ、かつ汎用的に使用可能な明度の高い亜鉛めっき鋼板を提供できた。本発明の樹脂塗装亜鉛めっき鋼板は、家庭用電化製品の筐体や内装・外装部品、金属製家具等の外板材、建築材料等に用いることができる。

Claims (6)

  1. 亜鉛めっき鋼板の両面に、水系樹脂、コロイダルシリカおよび黒鉛を含む樹脂塗膜を有する樹脂塗装亜鉛めっき鋼板であって、上記樹脂塗膜の膜厚が0.50〜1.2μmであり、水系樹脂とコロイダルシリカと黒鉛の合計100質量%中、水系樹脂が55〜90質量%、コロイダルシリカが5〜30質量%、黒鉛が5〜15質量%であり、上記黒鉛の平均長径が1〜10μmであり、樹脂塗膜表面のL値が50以上である樹脂塗装亜鉛めっき鋼板。
  2. 上記黒鉛の平均長径が1〜5μmである請求項1に記載の樹脂塗装亜鉛めっき鋼板。
  3. 上記黒鉛は鱗片状である請求項1または2に記載の樹脂塗装亜鉛めっき鋼板。
  4. 上記鱗片状黒鉛の粒径範囲は1〜5μmである請求項3に記載の樹脂塗装亜鉛めっき鋼板。
  5. 上記亜鉛めっき鋼板と樹脂塗膜の間に、化成処理膜を有する請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂塗装亜鉛めっき鋼板。
  6. 上記亜鉛めっき鋼板が電気亜鉛めっき鋼板である請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂塗装亜鉛めっき鋼板。
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