JP2017170837A - 樹脂積層体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐擦傷性、表面硬度、密着性及び耐クラック性に優れた樹脂積層体及び該樹脂積層体の製造方法を提供する。【課題を解決する手段】樹脂基材の少なくとも一方の面に鉛筆硬度が8H以上の硬化被膜を備えたシート状の樹脂積層体であって、硬化被膜が樹脂基材側に混合層を有し、硬化被膜の膜厚Atと混合層の膜厚Btが、下記式(1)及び下記式(2)を満たす樹脂積層体。17μm≦ At ≦40μm (1)0.002≦Bt/At≦0.3 (2)【選択図】 図3

Description

本発明は、樹脂積層体及びその製造方法並びにディスプレー前面板に関する。
パーソナルコンピューターや、液晶テレビ、携帯電話等のディスプレーの表面を保護するために、透明性を有するガラス板や樹脂板が、ディスプレー前面板に使用されている。
最近ではタッチパネル方式のディスプレーが多く採用されており、ディスプレー前面板に用いられる材料には、耐擦傷性及び表面硬度に優れること、低コスト化と軽量化のために薄板化が可能であること、複雑な形状のディスプレー前面板に適用するための高い加工性を有することが要求されている。
従来、ディスプレー前面板には、耐擦傷性及び表面硬度に優れたガラス板が使用されてきた。しかし、ガラス板は薄板化すると割れ易いことが問題であった。そこで、薄板化が可能で高い加工性を有する樹脂板を、ディスプレー前面板に使用することが検討されている。しかしながら、樹脂板はガラスと比較すると、引掻き等による傷が発生し易いこと、すなわち耐擦傷性や表面硬度が不十分であった。
樹脂板の耐擦傷性や表面硬度を向上する方法として、例えば、特許文献1には、合成樹脂成形品の表面に、特定の多官能性単量体を含有する被覆材組成物を塗布した後、空気中で活性エネルギー線により硬化させて、架橋硬化被膜を形成して、耐摩耗性、表面平滑性、可とう性、耐熱性、耐溶剤性、耐久性及び基材との密着性に優れた表面を有する合成樹脂成形品を得る技術が開示されている。
特許文献2には、硬化性組成物を鋳型の表面に塗布し、硬化させた後、前記鋳型中にアクリル樹脂の原料を注入し、注型重合して、アクリル樹脂積層体を製造する技術が開示されている。前記技術によれば、鋳型表面がアクリル樹脂積層体に転写されるため、樹脂積層体の表面形状は円滑になり、また硬化性組成物の硬化反応が酸素により阻害されないため、高い表面硬化を有するアクリル樹脂積層体が得られる。
特許文献3には、(メタ)アクリル系樹脂フィルムからなる基材層、ハードコート層形成用組成物を活性エネルギー線で硬化してなるハードコート層及び前記基材層と前記ハードコート層の間に混合層を有する光学積層体が開示されている。
WO2014/184983号公報 特開2007−291206号公報 特開2012−234163号公報
しかしながら、特許文献1記載の被覆材組成物は、表面硬度は十分であるもの複雑な形状のディスプレー前面板に適用したとき、硬化被膜の耐クラック性や密着性が不十分であった。
また、特許文献2に記載のアクリル樹脂積層体は、耐擦傷性に優れるが、表面硬度が不十分であった。
特許文献3の手法では、混合層を設けることにより樹脂基材と硬化被膜の密着性が向上し、取扱いの際にクラックが発生し難くなる。しかしながら、特許文献3の光学積層体は酸素存在下で硬化処理されるため、活性エネルギー線による硬化の際に光学積層体の外側表面は酸素による硬化阻害を受け易く、光学積層体の耐擦傷性と表面硬度が不十分であった。
本発明はこれらの問題点を解決することを目的とする。すなわち、本発明は、耐擦傷性、表面硬度、密着性及び耐クラック性に優れた樹脂積層体及び該樹脂積層体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の第1の要旨は、樹脂基材の少なくとも一方の面に硬化被膜を備えたシート状の樹脂積層体であって、前記樹脂積層体の硬化被膜の表面の鉛筆硬度が8H以上であり、前記硬化被膜と前記樹脂基材の間に混合層を有する樹脂積層体にある。
前記樹脂積層体においては、硬化被膜の膜厚Atと混合層の膜厚Btが、下記式(1)及び下記式(2)を満たすことができる。
17μm≦ At ≦40μm (1)
0.002≦Bt/At≦0.3 (2)
前記硬化被膜は、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一種の多官能単量体(A)と、(メタ)アクリロイル基を3個以上有する多官能単量体(B)(但し多官能単量体(A)を除く)と、(メタ)アクリロイル基を2個有する多官能単量体(C)と、重合開始剤(D)とを含有する硬化性組成物の硬化物を用いることができる。
さらに、前記硬化性組成物の硬化物は、該硬化物の総重量に対して、多官能単量体(A)由来の繰り返し単位20質量%以上50質量%以下、多官能単量体(B)由来の繰り返し単位20質量%60質量%以下、多官能単量体(C)由来の繰り返し単位15質量%以上35質量%以下を含むことができる。
本発明の第二の要旨は、樹脂積層体の製造方法であって、
硬化性組成物を型の表面に塗布した後に、酸素雰囲気に露出された該硬化性組成物に、活性エネルギー線を積算光量200mJ/cm以上1500mJ/cm以下の範囲で照射して、硬化処理することにより硬化被膜を形成し、前記型の表面に前記硬化被膜が設けられた積層鋳型を得ること、
次いで、メチルメタクリレートを主成分とするラジカル重合性単量体の混合物を含む樹脂基材形成用組成物を、前記積層鋳型の前記硬化被膜が形成された面に接触するように前記積層鋳型に注入すること、
次いで、前記積層鋳型に注入した前記樹脂基材形成用組成物を注型重合して樹脂基材の層を形成すること、
次いで、前記型を剥離して、前記樹脂基材の表面に鉛筆硬度が8H以上である前記硬化被膜が積層された樹脂積層体を得ること、を含む樹脂積層体の製造方法にある。
本発明により、耐擦傷性、表面硬度、密着性及び耐クラック性に優れた樹脂積層体を提供することができる。このよう樹脂積層体は、タッチパネル方式のディスプレー等の、複雑な形状を有するディスプレー前面板に好適に用いることができる。
本発明の一実施形態である、硬化被膜が樹脂基材の一方の面に積層した樹脂積層体の断面を示した模式図である。 本発明の一実施形態である、硬化被膜が樹脂基材の両方の表面に積層した樹脂積層体の断面を示した模式図である。 樹脂積層体の切断面から切り出した小片についての透過型電子顕微鏡の観察像であって、樹脂基材の層/混合層/硬化被膜の層の3層構造が観察された場合の観察像の一例である。 樹脂積層体の切断面から切り出した小片についての透過型電子顕微鏡の観察像であって、樹脂基材の層と硬化被膜の層の間に混合層が観察されない場合の観察像の一例である。
以下本発明を詳細に説明する。本発明において、「(メタ)アクリレート」及び「(メタ)アクリル酸」は、各々「アクリレート」及び「メタクリレート」から選ばれる少なくとも1種並びに「アクリル酸」及び「メタクリル酸」から選ばれる少なくとも1種を意味する。
また、「単量体」は未重合の化合物を意味し、「繰り返し単位」は単量体が重合することによって形成された該単量体に由来する単位を意味する。繰り返し単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、ポリマーを処理することによって該単位の一部が別の構造に変換されたものであってもよい。
また、「質量%」は全体量100質量%中に含まれる所定の成分の含有量を示す。
<樹脂積層体>
本発明の一実施形態である樹脂積層体は、樹脂基材の少なくとも一方の面に硬化被膜を備えたシート状の樹脂積層体である。
前記樹脂積層体の硬化被膜の表面の鉛筆硬度が8H以上とすることが好ましい。硬化被膜の鉛筆硬度が8H以上であれば、樹脂積層体の表面に指の爪等による引掻き傷の発生を抑制でき、耐擦傷性が良好となるので好ましい。
本発明の樹脂積層体は、前記硬化被膜の成分と後述する樹脂基材形成用組成物とが互いに混合して形成された混合層を有する。混合層の詳細に関しては後述する。
本発明の樹脂積層体においては、前記硬化被膜の膜厚Aは特に制限されるものではないが、後述する硬化被膜の膜厚の測定方法で測定される膜厚Atを17μm以上40μm以下とすることができる。
膜厚Atの下限は、得られた樹脂積層体の耐擦傷性及び表面硬度が良好となる観点から17μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、25μm以上がさらに好ましい。一方、膜厚Atの上限は、得られた樹脂積層体の取り扱い時に硬化被膜にクラックが発生するのを抑制でき、加工性が良好となる観点から40μm以下が好ましく、38μm以下がより好ましく、35μm以下がさらに好ましい。
また、膜厚Atの値は、後述する硬化被膜の形成方法や硬化性組成物の粘度を適宜選択することにより、制御することが好ましい。
さらに、本発明の樹脂積層体は、前記硬化被膜と前記樹脂基材の間に混合層を有し、後述する測定方法で測定された硬化被膜の膜厚Atと前記混合層の膜厚Btが、下記式(1)及び(2)を満たすことができる。
17μm≦ At ≦40μm (1)
0.002≦Bt/At≦0.3 (2)
At:硬化被膜の膜厚、Bt:混合層の膜厚
Bt/Atの下限は、得られた樹脂積層体の耐クラック性や、樹脂基材と硬化被膜の密着性が良好となる観点から0.002以上が好ましく、0.005以上がより好ましく、0.015以上がさらに好ましい。一方、Bt/Atの上限は、得られた樹脂積層体の表面硬度が良好となる観点から0.3以下が好ましく、0.2以下がより好ましく、0.15以下がさらに好ましい。なお、樹脂基材と硬化被膜の密着性は、後述する硬化被膜の残存率を測定することにより評価できる。
また、Bt/Atの値は、硬化性組成物の組成や活性エネルギー線の積算光量を適宜選択することにより、制御することができる。
本発明の一実施形態である樹脂積層体は、後述する耐クラック性の評価において、樹脂積層体を曲率半径60mmに曲げた際にクラックが発生しない耐クラック性を有する樹脂積層体であることが好ましく、樹脂積層体を曲率半径40mmに曲げた際にクラックが発生しない耐クラック性を有する樹脂積層体であることがより好ましい。曲率半径60mmに曲げた際にクラックが発生しない耐クラック性を有する樹脂積層体とすることにより、取扱加工性等の加工性に優れたディスプレー前面板を得ることができる傾向にある。
<混合層>
本発明の樹脂積層体は、前記硬化被膜と前記樹脂基材の間に、硬化被膜の成分と後述する樹脂基材形成用組成物とが互いに混合して形成された混合層を有する。
ここで、前記混合層とは、前記樹脂基材を形成する樹脂基材形成用組成物の濃度が、前記硬化被膜側から前記樹脂基材側へ連続的に高くなる層のことをいう。濃度が連続的に高くなることは、樹脂積層体の切断面上において、屈折率の変化を測定することにより確認できる。具多的には、瞬間マルチ測光装置(大塚電子(株)製、製品名「MCPD3700])を用いて、反射スペクトルを測定して、屈折率の変化を測定することができる。
本発明の樹脂積層体は、前記混合層を有することにより、硬化被膜と樹脂基材の密着性が向上して、樹脂積層体の表面硬度及び耐擦傷性が向上する。さらに、樹脂積層体を曲げたときのクラック発生が抑制されるので、樹脂積層体の成形性が向上する。
本発明の樹脂積層体においては、前記混合層の膜厚Btは、0.1μm以上3.0μm以下の範囲とすることができる。混合層の膜厚Btは、後述する測定方法で測定できる。
膜厚Btの下限は、得られた樹脂積層体の耐クラック性や、硬化被膜と樹脂基材の密着性が良好となる観点から0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.5μm以上がさらに好ましい。一方、膜厚Btの上限は、得られた樹脂積層体の硬度及び耐擦傷性が良好となる観点から3.0μm以下が好ましく、2.5μm以下がより好ましく、2μm以下がさらに好ましい。
また、膜厚Btの値は、硬化性組成物の組成や活性エネルギー線の積算光量を適宜選択することにより、制御することができる。
<硬化性組成物>
本発明で使用される硬化性組成物は、後述する多官能単量体(A)、後述する多官能単量体(B)、後述する多官能単単量体(C)及び後述する重合開始剤(D)を含有し、該硬化性組成物の総重量を100質量%として、多官能単量体(A)を20質量%以上50質量%以下、多官能単量体(B)を20質量%以上60質量以下、多官能単量体(C)を15質量%以上35質量以下を含む硬化性組成物である。
硬化性組成物中の多官能単量体(A)の含有量の下限が20質量%以上であれば、得られる樹脂積層体において、硬化被膜の耐擦傷性及び表面硬度が良好となるため好ましく、24質量%がより好ましい。また、多官能単量体(A)の含有量の上限が50質量%以下であれば、硬化性組成物を硬化させる際の硬化収縮率が低下し、得られる樹脂積層体において、後述する樹脂基材に対する硬化被膜の密着性が良好となり、硬化被膜の耐クラック性が良好となるため好ましく、45質量%以下がより好ましい。
即ち、前記硬化性組成物中の多官能単量体(A)の含有量は、該硬化性組成物の総重量に対して、20質量%以上50質量%以下が好ましく、より好ましくは、24質量%以上45質量%以下である。
硬化性組成物中の多官能単量体(B)の含有量の下限が20質量%以上であれば、得られる樹脂積層体において、硬化被膜の耐擦傷性及び表面硬度が良好となるため好ましい。また、多官能単量体(B)の含有量が60質量%以下であれば、硬化性組成物を硬化させる際の硬化収縮率が低下し、得られる樹脂積層体において、硬化被膜の耐クラック性が良好となり、樹脂基材に対する硬化被膜の密着性が良好となるため好ましく、56質量%以下がより好ましい。
即ち、前記硬化性組成物中の多官能単量体(B)の含有量は、該硬化性組成物の総重量に対して、20質量%以上60質量%以下であることが好ましく、より好ましくは、20質量%以上56質量%以下である。
硬化性組成物中の多官能単量体(C)の含有量の下限が15質量%以上であれば、硬化性組成物を硬化させる際の硬化収縮率が低下し、得られる樹脂積層体において、硬化被膜の耐クラック性が良好となるため好ましく、20質量%以上がより好ましい。また、樹脂基材の表面に硬化被膜を積層した樹脂積層体の反りを抑制できる傾向にある。多官能単量体(C)の含有量の上限が35質量%以下であれば、得られる樹脂積層体において、硬化被膜の耐擦傷性及び表面硬度が良好となるため好ましく、33質量%がより好ましい。
即ち、前記硬化性組成物中の多官能単量体(C)の含有量は、該硬化性組成物の総重量に対して、15質量%以上35質量%以下であることが好ましく、より好ましくは、20質量%以上33質量%以下である。
本発明の硬化性組成物は、必要に応じて、(メタ)アクリロイル基を1個有する単量体、離型剤、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤、重合禁止剤、充填剤、顔料、染料、シランカップリング剤、レベリング剤、消泡剤、蛍光剤、又は連鎖移動剤等の各種添加剤を含有することができる。
<多官能単量体(A)>
多官能単量体(A)は、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一種の単量体又は単量体混合物である。
<多官能単量体(B)>
多官能単量体(B)は、(メタ)アクリロイル基を3個以上、20個以下有する単量体である。 (但し多官能単量体(A)を除く)
多官能単量体(B)としては、例えば、各(メタ)アクリロイル基を結合する残基が炭化水素基又はその誘導体である多官能単量体が挙げられ、その分子内にはエーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミド結合及びウレタン結合等を含むことができる。
多官能単量体(B)の具体例としては、下記の単量体が挙げられる。
なお、ここでいう「多価アルコール」とは、分子中に水酸基を2個以上有するアルコールを意味する。「多価カルボン酸」とは、分子中にカルボキシル基を2個以上有するカルボン酸を意味する。「(メタ)アクリル酸の誘導体」とは、(メタ)アクリル酸化合物の官能基または水素原子が、他の官能基に置換された化合物を意味する。「多価カルボン酸の誘導体」とは多価カルボン酸の官能基または水素原子が、他の官能基に置換された化合物を意味する。「線状」とは、直鎖状及び分岐鎖状を意味する。
B−1)1モルの多価アルコールと、3モル以上の(メタ)アクリル酸又はその誘導体とから得られるエステル化物
例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加物トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加物トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ) アクリレート、エチレンオキシド付加物ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン付加物ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びカプロラクトン付加物ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
上記のなかでも、好ましくは、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが挙げられる。
B−2)多価アルコールと、多価カルボン酸又はその無水物と、(メタ)アクリル酸又はその誘導体とから得られる線状のエステル化物
例えば、多価アルコールと、多価カルボン酸又はその無水物と、(メタ)アクリル酸の好ましい組み合わせ例としては、マロン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、コハク酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
B−3)トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のトリ(メタ)アクリレート等のポリ[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアヌレート
B−4)エポキシポリアクリレート
B−5)ウレタンポリアクリレート
B−6)下式(I)で示されるポリイソシアネート1モルに対して、活性水素を有するアクリルモノマー3モル以上を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート
(式中、Rは置換基を含んでも良い、炭素数1〜12の2価の炭化水素基を表す。)
前記式(I)で示されるポリイソシアネートとしては、イソシアネート化合物の3量化により得られるポリイソシアネートが好ましい。具体的には、トリメチロールプロパントルイレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
前記活性水素を有するアクリルモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
多官能単量体(B)としては、上記の単量体のなかから、1種の単量体を単独で又は2種以上の単量体を組み合わせて使用することができる。
多官能単量体(B)としては、硬化被膜の耐擦傷性及び表面硬度の点で、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが好ましい。
<多官能単量体(C)>
多官能単量体(C)は、(メタ)アクリロイル基を2個有する単量体である。
多官能単量体(C)としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加物トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート及びヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記のなかでも、好ましくは、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
多官能単量体(C)としては、上記の中から1種類の単量体を単独で又は2種以上の単量体を組み合わせて使用することができる。
多官能単量体(A)、多官能単量体(B)、及び多官能単量体(C)の好ましい組み合わせとしては、多官能単量体(A)がジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一種の単量体又は単量体混合物であり、多官能単量体(B)が、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一種の単量体又は単量体混合物であり、多官能単量体(C)が、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートである組み合わせが挙げられる。
<重合開始剤(D)>
重合開始剤(D)は、硬化性組成物を硬化させるための成分である。重合開始剤(D)としては、例えば、熱重合開始剤及び光重合開始剤が挙げられる。
硬化性組成物中の重合開始剤(D)の含有量は、特に限定されるものではないが、該硬化性組成物の総重量を100質量%として、0.1〜10質量%とすることができる。重合開始剤(D)の含有量の下限が0.1質量%以上であれば、生産性が向上する傾向がある。また、重合開始剤(D)の含有量の上限が10質量%以下であれば、硬化被膜の着色を抑制することができる。
熱重合開始剤としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物;及び上記過酸化物にN,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン等のアミン類を組み合わせたレドックス重合開始剤が挙げられる。
光重合開始剤としては、例えば、以下を挙げることができる。
D−1)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチルオルソベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、t−ブチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン等のチオキサントン類;
D−2)ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン類;
D−3)ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類;
D−4)2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド類;
D−5)メチルベンゾイルホルメート;
D−6)1,7−ビスアクリジニルヘプタン;
D−7)9−フェニルアクリジンが挙げられる。
上記のなかでも、好ましくは、ベンゾインエチルエーテル、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンが挙げられる。
重合開始剤(D)としては、これら1種の化合物を単独で又は2種以上の化合物を組み合わせて使用することができる。
<硬化被膜>
本発明における硬化被膜は、前述の硬化性組成物の硬化物からなり、前記多官能単量体(A)由来の繰り返し単位と、前記多官能単量体(B)由来の繰り返し単位と、前記多官能単量体(C)由来の繰り返し単位とを含む樹脂組成物からなる。
前記硬化性組成物の硬化物は、該硬化物の総重量に対して、前記多官能単量体(A)由来の繰り返し単位を20質量%以上50質量%以下、前記多官能単量体(B)由来の繰り返し単位を20質量%以上60質量以下、前記多官能単量体(C)由来の繰り返し単位を15質量%以上35質量以下を含むことができる。
硬化被膜の多官能単量体(A)由来の繰り返し単位の含有量の下限が20質量%以上であれば、得られる樹脂積層体において硬化被膜の耐擦傷性及び表面硬度が良好となるため好ましく、24質量%がより好ましい。また、多官能単量体(A)由来の繰り返し単位の含有量の上限が50質量%以下であれば、得られる樹脂積層体において後述する樹脂基材に対する硬化被膜の密着性が良好となり、硬化被膜の耐クラック性が良好となるため好ましく、45質量%以下がより好ましい。
即ち、前記硬化性組成物の硬化物中の前記多官能単量体(A)由来の繰り返し単位の含有量は、該硬化物の総重量に対して、20質量%以上50質量%以下が好ましく、24質量%以上45質量%以下がより好ましい。
前記硬化性組成物の硬化物中の前記多官能単量体(B)由来の繰り返し単位の含有量の下限が20質量%以上であれば、得られる樹脂積層体において、硬化被膜の耐擦傷性及び表面硬度が良好となるため好ましい。また、前記多官能単量体(B)由来の繰り返し単位の含有量が60質量%以下であれば、得られる樹脂積層体において、硬化被膜の耐クラック性が良好となり、樹脂基材に対する硬化被膜の密着性が良好となるため好ましく、56質量%以下がより好ましい。
即ち、前記硬化性組成物の硬化物中の前記多官能単量体(B)由来の繰り返し単位の含有量は、該硬化物の総重量に対して、20質量%以上60質量%以下であることが好ましく、20質量%以上56質量%以下がより好ましい。
前記硬化性組成物の硬化物中の前記多官能単量体(C)由来の繰り返し単位の含有量の下限が15質量%以上であれば、硬化性組成物を硬化させる際の硬化収縮率が低下し、得られる樹脂積層体において、硬化被膜の耐クラック性が良好となるため好ましく、20質量%以上がより好ましい。また、樹脂基材の表面に硬化被膜を積層した樹脂積層体の反りを抑制できる傾向にある。前記多官能単量体(C)由来の繰り返し単位の含有量の上限が35質量%以下であれば、得られる樹脂積層体において、硬化被膜の耐擦傷性及び表面硬度が良好となるため好ましく、33質量%がより好ましい。
即ち、前記硬化性組成物の硬化物中の前記多官能単量体(C)由来の繰り返し単位の含有量は、該硬化物の総重量に対して、15質量%以上35質量%以下であることが好ましく、20質量%以上33質量%以下がより好ましい。
硬化被膜の膜厚は17μm以上40μm以下とすることができる。膜厚の下限が17μm以上であれば、樹脂積層体において、硬化被膜の耐擦傷性及び表面硬度が良好となるため好ましく、25μm以上がより好ましい。また、膜厚の上限が40μm以下であれば、樹脂積層体において、硬化被膜の耐クラック性が良好となり、樹脂積層体の反りを抑制することができる。更に、膜厚の上限が40μm以下であれば、樹脂積層体の切断時の割れを抑制でき、樹脂積層体の取り扱い時に硬化被膜にクラックが発生するのを抑制でき、加工性が良好となるため好ましく、35μm以下がより好ましい。
即ち、硬化被膜の膜厚は、17μm以上40μm以下が好ましく、25μm以上35μm以下がより好ましい。
ここでいう「硬化被膜の膜厚」とは、樹脂積層体における硬化被膜の膜厚を意味するものであり、後述の実施例において説明する測定方法により測定できる。
硬化被膜の表面の硬度は、JIS K 5600−5−4に準拠して測定した鉛筆硬度の下限が8H以上であることが更に好ましい。硬化被膜の表面の鉛筆硬度の下限が8H以上であれば、タッチパネル方式ディスプレーの前面板等のように人が直接触れて使用される用途に、本発明の樹脂積層体が用いられた場合であっても、硬化被膜の表面に傷がつきにくくなる。鉛筆硬度の上限値は、特に制限されるものではないが、9H以下であれば、樹脂積層体の取り扱い時に硬化被膜にクラックが発生するのを抑制でき、加工性が良好となる。
<硬化被膜の形成方法>
硬化被膜の形成方法としては、例えば、前述の硬化性組成物を後述する樹脂基材の表面に塗布し、硬化性組成物を加熱又は硬化性組成物に活性エネルギー線を照射して、硬化処理して、硬化被膜を形成する方法が挙げられる。
樹脂基材の表面への硬化性組成物の塗布方法としては、例えば、流延法、ローラーコート法、バーコート法、噴霧コート法及びエアーナイフコート法等が挙げられる。
活性エネルギー線としては、例えば、電子線、紫外線及び可視光線挙げられるが、装置コストや生産性の観点から紫外線が好ましい。活性エネルギー線の積算光量としては、200mJ/cm以上1500mJ/cm以下が好ましい。積算光量が200mJ/cm以上の場合、硬化被膜の耐擦傷性及び表面硬度が良好となる。また、積算光量が1500mJ/cm以下の場合、所望の混合層が形成され、樹脂基材と硬化被膜の密着性が向上する。
前記硬化処理は、酸素雰囲気に露出された前記硬化性組成物に活性エネルギー線を照射することが好ましい。
活性エネルギー線の光源としては、例えば、蛍光紫外線ランプ、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、Arレーザー、He−Cdレーザー、固体レーザー、キセノンランプ、高周波誘導水銀ランプ及び太陽光が挙げられる。これらの中で、硬化性組成物の硬化速度の点で、蛍光紫外線ランプ及び高圧水銀灯が好ましい。
加熱により硬化性組成物を硬化させる場合は、加熱装置としては、公知の熱風乾燥炉等を用いることができる。加熱温度としては通常40℃〜120℃であり、加熱時間としては通常1分間〜48時間である。
<樹脂基材>
本発明で使用される樹脂基材を構成する樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂及びポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
また、本発明で使用される樹脂基材は、必要に応じて、上記の樹脂を積層した積層体を樹脂基材として使用することができる。
樹脂基材を構成する樹脂としては、透明性に優れる観点から、メチルメタクリレート由来の繰り返し単位を主成分とする(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
「メチルメタクリレート由来の繰り返し単位を主成分とする(メタ)アクリル樹脂」とは、該(メタ)アクリル樹脂を構成する全構成単位の総重量に対して、メチルメタクリレート由来の繰り返し単位100質量%、又はメチルメタクリレート由来の繰り返し単位50質量%以上100質量%未満及びメチルメタクリレートと共重合可能な単量体由来の繰り返し単位0質量%を超えて50質量%以下を含有し、前記各成分の合計量が100質量%を超えない重合体を意味する。
また必要に応じ、前記「メチルメタクリレート由来の繰り返し単位を主成分とする(メタ)アクリル樹脂」は、炭素数2〜20の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単量体を含むことができる。
メタクリル酸メチル及び炭素数2〜20の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、該(メタ)アクリル樹脂を構成する全構成単位の総重量に対して、0質量%を超えて10質量%以下の範囲で共重合させることもできる。
メチルメタクリレート単位と共重合可能な単量体としては、例えば、以下の単量体が挙げられる。
1)メタクリル酸エステル
例えば、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等が挙げられる。
2)アクリル酸エステル
例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられる。
3)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸
4)無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸無水物
5)N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド
6)ヒドロキシ基含有ビニル単量体
例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等が挙げられる。;
7)酢酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル
8)塩化ビニル、塩化ビニリデン及びそれらの誘導体
9)メタクリルアミド、アクリロニトリル等の窒素含有ビニル単量体
10)グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有単量体
11)スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体
上記の中でも、n−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、イソボニル(メタ)アククリレートが(メタ)アクリル樹脂の耐熱性と透明性を両立する観点から好ましい。
また、上記の単量体以外に、以下の単量体が挙げられる。
12)アルカンジオールジ(メタ)アクリレート
例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
13)ポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート
例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
14)ジビニルベンゼン等の分子中に2個以上のエチレン性不飽和結合を有するビニル単量体
15)エチレン性不飽和ポリカルボン酸を含む少なくとも1種の多価カルボン酸と少なくとも1種のジオールから得られる不飽和ポリエステルプレポリマー
16)エポキシ基の末端をアクリル変性することにより得られるビニルエステルプレポリマー
上記のなかでも、エチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレートが(メタ)アクリル樹脂の耐熱性と透明性を両立する観点から好ましい。
メチルメタクリレート由来の繰り返し単位を主成分とする(メタ)アクリル樹脂は、例えば、メチルメタクリレートを主成分とするラジカル重合性単量体の組成物、即ち、該(メタ)アクリル樹脂の総質量に対して、メチルメタクリレート50質量%以上100質量%とメチルメタクリレートと共重合可能な単量体0〜50質量%とを含有し、前記メチルメタクリレートと前記メチルメタクリレートと共重合可能な単量体との合計量が100質量%を超えない、ラジカル重合性単量体の混合物を含む樹脂基材形成用組成物を重合することにより得られる。
<樹脂基材形成用組成物>
前記樹脂基材の原料を樹脂基材形成用組成物という。樹脂基材形成用組成物としては、(メタ)アクリル樹脂の総質量に対して、メチルメタクリレート100質量%、又はメチルメタクリレート50質量%以上100質量%未満及びメチルメタクリレートと共重合可能な単量体0質量%を超えて50質量%以下を含有し、前記メチルメタクリレートと前記メチルメタクリレートと共重合可能な単量体との合計量が100質量%を超えない、ラジカル重合性単量体を含む混合物のことをいう。
前記樹脂基材形成用組成物は、上述したラジカル重合性単量体を含む混合物の一部を重合させた部分重合体と、残りのラジカル重合性単量体の混合物であるシラップを使用することもできる。また、必要に応じて、樹脂基材形成用組成物として、上述したメチルメタクリレートを主成分とするラジカル重合性単量体の混合物に、樹脂基材の原料として(メタ)アクリル系重合体を溶解させたタイプのシラップを使用することもできる。
上記のシラップ中の前記部分重合体又は前記樹脂基材形成用組成物としての(メタ)アクリル系重合体の分子量は特に制限されるものではなく、質量平均分子量5万以上30万以下とすることができる。また、シラップ中の部分重合体又は(メタ)アクリル樹脂と、ラジカル重合性単量体との混合割合は、質量比で2:98〜50:50とすることができる。
樹脂基材形成用組成物には開始剤を添加することができる。開始剤としては、例えば、重合開始剤(D)における有機化酸化物及びアゾ系化合物と同様の化合物が挙げられる。開始剤の添加量は、特に制限されるものではないが、樹脂基材形成用組成物中のラジカル重合性単量体100質量%に対して、0.005〜5質量%が好ましい。
樹脂基材形成用組成物には、必要に応じて、着色剤、離型剤、酸化防止剤、安定剤、難燃剤、耐衝撃改質剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、連鎖移動剤等の各種添加剤を添加することができる。
樹脂基材形成用組成物を重合して、樹脂基材を得る方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法及び懸濁重合法が挙げられるが、樹脂積層体の透明性、溶剤使用等による環境負荷、樹脂積層体の生産性や製造コストの観点から、塊状重合法が好ましい。
<樹脂積層体の製造方法>
本発明の樹脂積層体の製造方法としては、例えば、下記の方法1及び方法2が挙げられる。
(方法1)樹脂基材の表面に硬化性組成物を塗布した後に、該硬化性組成物を硬化処理して、硬化被膜を形成し、樹脂積層体を得る方法。
(方法2)硬化性組成物を硬化処理して形成した硬化被膜の表面に、樹脂基材を形成するための樹脂基材形成用組成物からなる層を形成した後に、該樹脂基材形成用組成物を注型重合して、樹脂基材の層を形成し、樹脂積層体を得る方法。
上記方法においては、樹脂積層体の硬化被膜の表面硬度と、樹脂積層体の耐クラック性とのバランスに優れる観点から、方法2が好ましい。
前記方法2の方法は特に制限されるものではないが、例えば、後述する(B−1)の方法が挙げられる。
<方法(B−1)>
方法(B−1)は、本発明の樹脂積層体の製造方法の好ましい形態の一つであって、下記の(1)〜(4)の処理を含む。
(1)硬化性組成物を型の表面に塗布した後に、酸素雰囲気に露出された前記硬化性組成物に、活性エネルギー線を積算光量200mJ/cm以上1500mJ/cm以下の範囲で照射して硬化処理して、硬化被膜とし、前記型の表面に前記硬化被膜が積層された積層鋳型を形成する。
(2)次いで、メチルメタクリレートを主成分とするラジカル重合性単量体の混合物を含む樹脂基材形成用組成物を、前記積層鋳型の前記硬化被膜が形成された面に塗布する。
(3)前記積層鋳型に塗布した前記樹脂基材形成用組成物を重合して、前記樹脂基材の表面に前記硬化被膜が積層された樹脂積層体を形成する。
(4)次いで、工程(3)の樹脂積層体を型から剥離して樹脂積層体を得る。
即ち、前記方法(B−1)の樹脂積層体の製造方法は、
型の表面に硬化性組成物を塗布すること;
酸素雰囲気に露出された前記硬化性組成物に活性エネルギー線を照射して硬化して、前記型の表面に硬化被膜が設けられた積層鋳型を得ること;
前記積層鋳型に樹脂基材形成用組成物を注入し、注型重合により前記樹脂基材形成用組成物を硬化させること;
及び前記樹脂基材形成用組成物を硬化して、樹脂基材の層を形成した後に、前記型を剥離して、樹脂基材の表面に硬化被膜が積層された樹脂積層体を得ること;
を含む樹脂積層体の製造方法である。
活性エネルギー線としては、前述の活性エネルギー線と同様のエネルギー線を用いることができ、活性エネルギー線を用いた硬化方法としては、前述と同様の方法で硬化することができる。活性エネルギー線の積算光量の下限は特に制限されるものではないが、200mJ/cm以上であれば耐擦傷性及び表面硬度が良好となることから好ましく、400mJ/cm以上がより好ましい。活性エネルギー線の積算光量の上限は特に制限されるものではないが、1500mJ/cm以下であれば、前記硬化被膜と前記樹脂基材の間に、硬化被膜の成分と前記樹脂基材形成用組成物とが互いに混合して形成された混合層が得られることから好ましく、1200mJ/cm以下がより好ましい。
さらに、前記工程(1)の硬化処理は、前記硬化性組成物が酸素雰囲気に露出された状態で、活性エネルギー線を照射することがこのましい。前記硬化性組成物に酸素雰囲気下で活性エネルギー線を照射することにより、硬化の際に酸素による硬化阻害を受けやすくなるので、最終的に得られた樹脂積層体において、前記硬化被膜と前記樹脂基材の間に、硬化被膜の成分と前記樹脂基材形成用組成物とが互いに混合して形成された混合層が形成されるので、樹脂積層体の耐クラック性や密着性を向上することができる。ここで酸素雰囲気下とは、酸素を含む気体存在下であれば特に制限はなく、経済性及び安全性を考慮すると、空気が特に優れている。
また、硬化被膜の鉛筆硬度が8H以上であれば、樹脂積層体の表面に指の爪等による引掻き傷の発生を抑制でき、耐擦傷性が良好となるので好ましい。
本発明の樹脂積層体の製造方法においては、前記硬化被膜の膜厚Aは特に制限されるものではないが、後述する硬化被膜の膜厚の測定方法で測定された硬化被膜の膜厚Atが17μm以上40μm以下とすることができる。
膜厚Atの下限は、得られた樹脂積層体の耐擦傷性及び表面硬度が良好となる観点から17μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、25μm以上がさらに好ましい。一方、膜厚Atの上限は、得られた樹脂積層体の取り扱い時に硬化被膜にクラックが発生するのを抑制でき、加工性が良好となる観点から40μm以下が好ましく、38μm以下がより好ましく、35μm以下がさらに好ましい。
さらに、本発明の樹脂積層体の製造方法においては、前記硬化被膜と前記樹脂基材の間に混合層を有し、後述する硬化被膜及び混合層の膜厚の測定方法で測定された硬化被膜の膜厚Atと混合層の膜厚Btが、下記式(3)及び下記式(4)を満たすことができる。
17μm≦ At ≦40μm (3)
0.002≦Bt/At≦0.3 (4)
At:硬化被膜の膜厚、Bt:混合層の膜厚
Bt/Atの下限は、得られた樹脂積層体の耐クラック性や密着性が良好となる観点から0.002以上が好ましく、0.005以上がより好ましく、0.015以上がさらに好ましい。一方、Bt/Atの上限は、得られた樹脂積層体の表面硬度が良好となる観点から0.3以下が好ましく、0.2以下がより好ましく、0.15以下がさらに好ましい。
本発明の樹脂積層体の製造方法においては、前記混合層の膜厚Btは特に制限されるものではないが、後述する混合層の膜厚の測定方法で測定された混合層の膜厚Btが0.1μm以上3.0μm以下とすることができる。
膜厚Btの下限は、得られた樹脂積層体の耐クラック性や密着性が良好となる観点から0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.5μm以上がさらに好ましい。一方、膜厚Btの上限は、得られた樹脂積層体の硬度及び耐擦傷性が良好となる観点から3.0μm以下以下が好ましく、2.5μm以下がより好ましく、2.0μm以下がさらに好ましい。
また、前述の曲率半径60mmに曲げた際にクラックが発生しない耐クラック性を有し、且つ、硬化被膜の鉛筆硬度が8H以上である樹脂積層体は、例えば、上記(B−1)の方法で、下記の前記多官能単量体(A)、前記多官能単量体(B)及び前記多官能単量体(C)を含有する硬化性組成物を、樹脂基材の表面に、塗布した後、該硬化性組成物を硬化して、樹脂基材の表面に硬化被膜を形成することで得ることができる。
前記多官能単量体(A):20質量%以上50質量%以下
前記多官能単量体(B):20質量%以上60質量%以下
前記多官能単量体(C):15質量%以上35質量%以下
(但し、硬化性組成物の総重量が100質量%である。)
更に、前述の曲率半径40mmに曲げた際にクラックが発生しない耐クラック性を有し、硬化被膜の鉛筆硬度が8H以上である樹脂積層体としては、例えば、硬化性組成物として、下記の前記多官能単量体(A)、前記多官能単量体(B)及び前記多官能単量体(C)を含有する硬化性組成物を用いることにより得ることができる。
前記多官能単量体(A):24質量%以上45質量%以下
前記多官能単量体(B):20質量%以上56質量%以下
前記多官能単量体(C):20質量%以上33質量%以下
(但し、硬化性組成物の総重量が100質量%である。)
鋳型の種類としては、例えば、金型、シート等の型が挙げられる。鋳型は、通常2つの型を、硬化被膜が積層された面が内面となるように対向させて作成される。型の硬化被膜が積層される面は、平滑な表面を有することが好ましい。
鋳型の材質としては、例えば、ステンレス鋼、ガラス及び樹脂等が挙げられる。また、鋳型は、同材質の2つの型を対向させた鋳型でも、異なる材質の2つの型を対向させた鋳型でもよい。
鋳型を作製する方法は、特に限定されないが、例えば、まず、1つの型の表面に硬化被膜が形成された1つの積層型(1)を配置し、次いで該積層型と対向するように、もう1つの型(2)を配置し、前記積層型(1)と前記型(2)の間に形成された空間部の周縁部に、ガスケットを設けてシールすることにより、内側に一定の容積を有する積層鋳型を作製する方法が挙げられる。
なお、本発明においては、硬化被膜を1つの型の表面に形成してもよいし、対向して配置された2つの型の内側表面に形成してもよい。
ガスケットの材質としては、ポリ塩化ビニルが好ましく、中でも軟質ポリ塩化ビニルがより好ましい。
得られた積層鋳型内に、樹脂基材形成用組成物を注入して注型重合を行い、樹脂基材を形成する。
得られた樹脂基材を型から、硬化被膜と樹脂基材とが一体化された状態で取り出すことにより、樹脂積層体を得ることができる。
なお、本明細書及び請求の範囲において、「注型重合」とは、例えば、所定間隔で対向配置された2つの型を対向させた鋳型とその周縁部に配置された封止材料とによって形成された積層鋳型を用い、積層鋳型内に樹脂基材形成用組成物を注入して重合させる方法を意味する。
樹脂基材形成用組成物の注型重合法としては、例えば、樹脂基材形成用組成物を積層鋳型内に注入した後に加熱する、セルキャスト法が挙げられる。
樹脂基材形成用組成物の注型重合法としては、上記の方法以外に、連続注型重合法も好適な方法として挙げられる。
連続注型重合法とは、同一方向に同一速度で走行する、対向させたステンレス製エンドレスベルトの表面に硬化被膜が積層された積層ステンレス製エンドレスベルトと、他のステンレス製エンドレスベルトと、これらのステンレス製エンドレスベルトの両側端部を上記のガスケットと同様のガスケットでシールした空間部に、上流から連続的に樹脂基材形成用組成物を注入して加熱することによって連続的に重合させる重合法である。
積層鋳型の加熱方法としては、例えば、積層鋳型を30〜98℃の温水等の熱源で加熱する方法が挙げられる。重合時間は、重合の進行に応じて適宜決定される。
本発明においては、樹脂基材形成用組成物の重合率を高めるために、必要に応じて空気雰囲気下、遠赤外線ヒーター等の熱源により、90〜150℃の熱処理を行うこともできる。重合時間は、重合の進行に応じて適宜決定される。また、熱処理後に、必要に応じて送風等の冷却処理を行うことができる。
樹脂積層体の厚みは、特に制限されるものではないが、0.2mm〜2mmであればよく、0.3mm〜1mmが好ましい。
<ディスプレー前面版>
本発明の一実施形態であるディスプレー前面版は、前述した本発明の実施形態であるいずれかの樹脂積層体をそのままディスプレー前面版として使用することができる。
以下、実施例により本発明を詳しく説明する。尚、実施例における各種評価は下記の方法により実施した。また、以下において、「%」は「質量%」を表す。
(1)硬化被膜の膜厚(At)
硬化被膜の膜厚(At)とは、樹脂積層体を主表面に対して垂直方向に切断した断面を微分干渉顕微鏡にて撮影し、硬化被膜の混合層に接する面から樹脂積層体の硬化被膜の面までの寸法を任意の3箇所測定した平均値をいう。なお、混合層が観察されない場合は、硬化被膜の樹脂基材に接する面から樹脂積層体の硬化被膜の面までの寸法を採用した。
(2)混合層の膜厚(Bt)
樹脂積層体を主表面に対して垂直方向に切断した。次いで樹脂積層体の切断面から、ミクロトームを用いて透過型電子顕微鏡用の小片を切り出した。透過型電子顕微鏡(TEM:日本電子(株)製、型式:JEM―10111、加速電圧100V、倍率10000倍)を用いて、前記小片の断面を観察してTEM観察像を取得した。得られたTEM観察像の、樹脂基材の層/混合層/硬化被膜の層の3層構造が観察された部分について、硬化被膜の層と混合層の膜厚を測定して、混合層の膜厚をBtとした。3層構造が観察されたTEM観察像の一例を図3に示した。
(3)ヘーズ値
ヘイズ計(日本電色工業(株)製、商品名:HAZE METER NDH4000)を用いて、JIS K 7136に示される測定法に準拠して、樹脂積層体のヘーズ値(%)を測定した。
(4)耐擦傷性
樹脂積層体表面の硬化被膜の耐擦傷性を、擦傷試験前後のヘーズ値の差(△ヘーズ(%))により評価した。擦傷試験は、#000のスチールウール(日本スチールウール(株)製、商品名:ボンスターNo.000)を装着した直径24mmの円形パッドを樹脂積層体の硬化被膜側の表面上に置き、2,000gの荷重下で20mmの距離を、100回往復させて、下記式を用いて、擦傷前のヘーズ値と擦傷後のヘーズ値の差(△ヘーズ(%))を算出して、これを△ヘーズ(%)とした。
[耐擦傷性(△ヘーズ(%))]=[擦傷後のヘーズ値(%)]−[擦傷前のヘーズ値(%)]
(5)鉛筆硬度
JIS K5600−5−4に準拠して樹脂積層体の表面の硬化被膜の鉛筆硬度を測定した。
(6)耐クラック性
幅30mm、長さ120mm、厚み1mmの樹脂積層体を、半円筒形の型であって、断面の曲率半径RがXである型の上に硬化被膜層を有する面が外側になるように乗せて、型に沿って曲げて、30秒間保持した。前記曲率半径RはX=40mm、60mm、75mmの3条件で行った。樹脂積層体の硬化被膜層の表面を目視観察して、クラックの発生の有無を下記の基準で三段階で評価した。
○:クラックが全く観察されなかった
△:クラックが1本以上5本以下観察された
×:クラックが6本以上観察された
(7)硬化被膜の残存率
樹脂積層体を用いて、ISO 2409:1992に準拠してクロスカット剥離試験を行い、樹脂積層体の表面に残存している硬化被膜の残存率を測定することにより、硬化被膜と樹脂基材の密着性を評価した。
以下において、略称は下記の化合物を示す。
DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(日本化薬(株)製、商品名)
M305:ペンタエリスリトールトリアクリレート及びペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(東亞合成(株)製、商品名)
M309:トリメチルールプロパントリアクリレート(東亞合成(株)製、商品名)
DPCA−30:カプロラクトン付加物ジペンタエリスリトールペンタアクリレート及びカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(日本化薬(株)製、商品名)
C6DA:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(大阪有機化学工業(株)製、商品名)
Darocure1173:2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(BASFジャパン(株)製、商品名)
IRGACURE819:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(BASFジャパン(株)製、商品名)
〔実施例1〕
冷却管、温度計及び攪拌機を備えた反応器(重合釜)に、MMA68部、IBXMA20部、IBXA3部、TBMA8部、BA1部の混合物を供給し、撹拌しながら、窒素ガスでバブリングした後、加熱を開始した。内温が60℃になった時点で、ラジカル重合開始剤である2,2'−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.1部を添加し、更に内温100℃まで加熱した後、13分間保持した。その後、反応器を室温まで冷却して、樹脂基材形成用組成物(1)を得た。このシラップの固形分濃度は30質量%であった。
DPHA;30部、M305;40部、C6DA;30部及びDarocure1173;3部、IRGACURE819:0.15部を混合し、硬化性組成物(1)を得た。
次いで、板表面を鏡面仕上げしたSUS304板を鋳型として、バーコーターを用いて、表1に記載の硬化性組成物(1)を、最終的に得られる硬化被膜の膜厚が39μmとなるようにこの鋳型の表面上にコートして、硬化前被膜(1−1)の層を設けた。
次いで、前記鋳型を、硬化前被膜(1−1)の層が上側になるようにして、高圧水銀灯(出力30W/cm)の下方20cmの位置を速度2m/分で通過させながら、高圧水銀灯の紫外線を空気で硬化前被膜(1−1)に照射する条件(方法A)として、硬化前被膜(1−1)を硬化させて硬化被膜とした。前記鋳型の表面に膜厚39μmの硬化被膜が積層された積層型(1A)を得た。得られた積層型(1A)と、硬化被膜を形成していないSUS304板とを、積層型(1A)の硬化被膜が内側になるように対向させて、これら2枚のSUS304板の周縁部を軟質ポリ塩化ビニル製のガスケットで封じて、積層鋳型(1B)を作製した。
次いで、前記樹脂基材形成用組成物(1)を、減圧下において溶存空気を除去した後、前記の積層鋳型(1B)内に注入し、軟質ポリ塩化ビニル製のガスケットで完全に封止した。次に、前記積層鋳型(1B)を80℃の水浴中で1時間、次いで130℃の空気炉中で1時間加熱して、前記樹脂基材形成用組成物(1)を重合させ、樹脂基材の層を形成した。次に、前記積層鋳型(1B)を室温まで冷却した後、前記積層鋳型(1B)から両側2枚のSUS304板を剥離して、樹脂基材の層の片側一方の面に硬化被膜を有する厚さ1.0mmの樹脂積層体(1C)を得た。
得られた樹脂積層体(1C)について、前述の評価方法にて、硬化被膜の膜厚、ヘーズ、耐擦傷性、鉛筆硬度、及び耐クラック性を評価した。評価結果を表1に示す。
樹脂積層体(1C)の硬化被膜の、耐擦傷性は0.03%、鉛筆硬度は9Hであり、耐擦傷性や表面硬度に優れていた。
[実施例2〜7、比較例1〜3、5、7、8]
表1に示す硬化性組成物の組成、硬化被膜の膜厚及び積算光量とした以外は、実施例1と同様の方法で樹脂積層体を得た。得られた樹脂積層体の評価結果を表1に示す。
[比較例4]
表1に記載の硬化性組成物(7)を、厚さ1mmのメタクリル樹脂板「アクリライトL」(三菱レイヨン(株)製、商品名)の一方の面(メタクリル樹脂の層が露出している面)に塗布した。
次いで、PETフィルム「OX−50」(帝人デュポンフィルム(株)製、商品名)を、該フィルムの高平滑面が前記メタクリル樹脂板の硬化性組成物(7)の塗布面に接触するように貼り合わせた後、プレスロールにより7m/分間の速度でプレスし、最終的に得られる硬化被膜の膜厚が26μmになるように、前記硬化性組成物(7)の膜厚を調整した。
このメタクリル樹脂板、硬化性組成物(7)の層及びPETフィルムが順次積層された積層物を、1分間保持した後に、メタルハライドランプ(出力120W/cm)の下24cmの位置を2.5m/分間の速度で通過させながら、メタルハライドランプの光を、前記PETフィルムを介して硬化性組成物(7)に照射することにより、メタクリル樹脂板、硬化被膜及びPETフィルムが順次積層された硬化積層物を得た。すなわち、酸素雰囲気に曝されていない状態の硬化性組成物(7)に、メタルハライドランプの光を照射して、硬化した(方法B)。
この後、得られた硬化積層物からPETフィルムを剥離し、メタクリル樹脂板に硬化被膜が積層された樹脂積層体を得た。得られた樹脂積層体の評価結果を表1に示す。
[比較例6]
表1に示す硬化性組成物の組成、硬化被膜の膜厚、及び高圧水銀灯の紫外線を酸素濃度100ppmの条件下で硬化前被膜(1−1)に照射する条件(方法C)とした以外は、実施例1と同様の方法で樹脂積層体を得た。得られた樹脂積層体の評価結果を表1に示す。
比較例1の樹脂積層体は、硬化性組成物中に多官能単量体(A)を含有しないため、耐擦傷性や表面硬度が不十分であった。
比較例2の樹脂積層体は、硬化被膜の膜厚が薄すぎるため、耐擦傷性及び表面硬度が不十分であった。
比較例3の樹脂積層体は、硬化被膜の膜厚が厚すぎるため、耐クラック性が不良であった。
比較例4の樹脂積層体は、(メタ)アクリル樹脂上に硬化性組成物中を塗工したため、耐擦傷性及び表面硬度が不十分であった。
比較例5の樹脂積層体は、硬化性組成物中の多官能単量体(A)の含有量が少なく、多官能単量体(C)の含有量が多いため、耐擦傷性及び表面硬度が不十分であった。
比較例5の樹脂積層体は、Bt/Atの値が低いため、耐クラック性や密着性が不十分であった。
比較例6の樹脂積層体は、膜厚Atが薄いため、表面硬度が不十分であった。
比較例7の樹脂積層体は、膜厚Atが厚いため、耐クラック性や密着性が不十分であった。
本発明の樹脂積層体は、透明性、耐擦傷性、表面硬度及び耐クラック性、並びにデザイン加工性に優れている。このような樹脂積層体は、タッチパネル方式のディスプレーの前面板等に好適に用いることができるので、産業上極めて有用である。
1 硬化被膜
2 樹脂基材
3 樹脂積層体
4 樹脂基材の層
5 混合層
6 硬化被膜の層

Claims (16)

  1. 樹脂基材の少なくとも一方の面に硬化被膜を備えたシート状の樹脂積層体であって、
    前記樹脂積層体の硬化被膜の表面の鉛筆硬度が8H以上であり、
    前記硬化被膜と前記樹脂基材の間に混合層を有する樹脂積層体。
  2. 前記硬化被膜の膜厚Atと下記方法1で測定された前記混合層の膜厚Btが、下記式(1)及び下記式(2)を満たす請求項1に記載の樹脂積層体。
    17μm≦ At ≦40μm (1)
    0.002≦Bt/At≦0.3 (2)
    At:硬化被膜の膜厚、Bt:混合層の膜厚
    <方法1>
    樹脂積層体を主表面に対して垂直方向に切断し、次いで切断面からミクロトームを用いて透過型電子顕微鏡用の小片を切り出す。前記切り出した小片について、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、前記小片の断面を観察してTEM観察像を取得する。得られたTEM観察像の、樹脂基材の層/混合層/硬化被膜の層の3層構造が観察された部分について、混合層の膜厚を測定してBtとする。
  3. 前記混合層の前記方法1で測定された混合層の膜厚Btが0.1μm以上3.0μm以下である、請求項2に記載の樹脂積層体。
  4. 前記樹脂基材がメチルメタクリレート由来の繰り返し単位を主成分とする(メタ)アクリル樹脂である、請求項1〜3にいずれかに記載の樹脂積層体。
  5. 前記(メタ)アクリル樹脂が炭素数2〜20の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位を含む、請求項4に記載の樹脂積層体。

  6. 前記硬化被膜は、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一種の多官能単量体(A)と、
    (メタ)アクリロイル基を3個以上有する多官能単量体(B)(但し多官能単量体(A)を除く)と、
    (メタ)アクリロイル基を2個有する多官能単量体(C)と、
    重合開始剤(D)とを含有する硬化性組成物の硬化物からなる、請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂積層体。
  7. 前記硬化性組成物は、該硬化性組成物の総重量に対して、
    前記多官能単量体(A)20質量%以上50質量%以下、
    前記多官能単量体(B)20質量%60質量%以下、
    前記多官能単量体(C)15質量%以上35質量%以下
    を含む、請求項6に記載の樹脂積層体。
  8. 前記硬化性組成物の硬化物が、該硬化物の総重量に対して、
    前記多官能単量体(A)由来の繰り返し単位20質量%以上50質量%以下、
    前記多官能単量体(B)由来の繰り返し単位20質量%60質量%以下、
    前記多官能単量体(C)由来の繰り返し単位15質量%以上35質量%以下
    を含む、請求項6に記載の樹脂積層体。
  9. 前記硬化性組成物の硬化物が、該硬化物の総重量に対して、
    前記多官能単量体(A)由来の繰り返し単位24質量%以上45質量%以下、
    前記多官能単量体(B)由来の繰り返し単位20質量%以上56質量%以下、
    前記多官能単量体(C)由来の繰り返し単位20質量%以上33質量%以下
    を含み、
    前記硬化被膜の膜厚が25μm以上35μm以下である、請求項6に記載の樹脂積層体。
  10. 下記の耐クラック性の評価において、曲率半径Xが60mmの場合にクラックが発生しない、請求項1〜9のいずれかに記載の樹脂積層体。
    <耐クラック性の評価>
    幅30mm、長さ120mm及び厚み1mmの樹脂積層体を、半円筒形の型であって、断面の曲率半径RがXである型の上に、該樹脂積層体の硬化被膜を有する面が外側になるように乗せて、型に沿って曲げて、30秒間保持する。その後、樹脂積層体の硬化被膜層の表面を目視観察して、クラックの発生の有無を判断する。
  11. 前記耐クラック性の評価において、曲率半径Xが40mmの場合にクラックが発生しない、請求項10に記載の樹脂積層体。
  12. 樹脂積層体の製造方法であって、
    (1)硬化性組成物を型の表面に塗布した後に、該硬化性組成物に、活性エネルギー線を積算光量200mJ/cm以上1500mJ/cm以下の範囲で照射して、硬化処理して、硬化被膜を形成し、前記型の表面に前記硬化被膜が設けられた積層鋳型を得ること、
    (2)次いで、メチルメタクリレートを主成分とするラジカル重合性単量体の混合物を含む樹脂基材形成用組成物を、前記積層鋳型の前記硬化被膜が形成された面に接触するように前記積層鋳型に注入すること、
    (3)次いで、前記積層鋳型に注入した前記樹脂基材形成用組成物を注型重合して、樹脂基材の層を形成すること、
    (4)次いで、前記型を剥離して、前記樹脂基材の表面に前記硬化被膜が積層された樹脂積層体を得ること、
    を含む樹脂積層体の製造方法であり、
    前記工程(1)の硬化処理が、酸素雰囲気に露出された前記硬化性組成物に活性エネルギー線を照射することを含み、且つ、
    前記硬化被膜の鉛筆硬度が8H以上である、樹脂積層体の製造方法。
  13. 前記硬化被膜と前記樹脂基材の間に混合層を有し、
    前記硬化被膜の膜厚Atと下記方法2で測定された前記混合層の膜厚Btが、下記式(3)及び下記式(4)を満たす請求項12に記載の樹脂積層体の製造方法。
    17μm ≦ At ≦40μm (3)
    0.002≦Bt/At≦0.3 (4)
    <方法2>
    樹脂積層体を主表面に対して垂直方向に切断し、次いで切断面からミクロトームを用いて透過型電子顕微鏡用の小片を切り出す。前記切り出した小片について、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、前記小片の断面を観察してTEM観察像を取得する。得られたTEM観察像の、樹脂基材の層/混合層/硬化被膜の層の3層構造が観察された部分について、混合層の膜厚を測定してBtとする。
  14. 前記硬化性組成物は、
    ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも一種の多官能単量体(A)と、
    (メタ)アクリロイル基を3個以上有する多官能単量体(B)(但し多官能単量体(A)を除く)と、
    (メタ)アクリロイル基を2個有する多官能単量体(C)と、
    重合開始剤(D)とを含有する請求項12又は13に記載の樹脂積層体の製造方法。
  15. 前記硬化性組成物は、該硬化性組成物の総重量を100質量%としたとき、
    前記多官能単量体(A)20質量%以上50質量%以下、
    前記多官能単量体(B)20質量%60質量%以下、
    前記多官能単量体(C)15質量%以上35質量%以下
    を含む、請求項14に記載の樹脂積層体の製造方法。
  16. 前記混合層の前記方法2で測定された膜厚Btが0.1μm以上3.0μm以下である、請求項13に記載の樹脂積層体の製造方法。
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