JP2017170772A - 積層フイルムの製造装置及び方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】フイルム中央部に生じる厚みむらを解消するとともに、フイルム両側部に十分な厚みを持たせることができる積層フイルムの製造装置及び方法を提供する。【解決手段】溶液製膜装置では、第1ドープと第2ドープをフィードブロックの合流部で合流させることにより積層ドープを形成し、積層ドープをベルト上に流延して流延膜を形成し、流延膜をベルトから剥がしてフイルムを製造する。合流部には、切り欠き部54を備えたディストリビューションピン50が配置され、第2ドープは切り欠き部54により流量が調節されて第1ドープに合流される。切り欠き部54には、幅方向中央部に中央流量増加溝120が設けられ、幅方向両側部にそれぞれ端部流量増加溝122が設けられている。【選択図】図7

Description

本発明は、複数の層が積層された積層フイルムの製造装置及び方法に関する。
複数の層が積層されたフイルム(積層フイルム)を製造する積層フイルムの製造装置では、複数種類のドープ(ポリマー溶液など)をフィードブロックの合流部において合流させて積層ドープを形成し、積層ドープを流延ダイから走行する支持体上に流延して流延膜を形成し、流延膜を支持体から剥ぎとって乾燥させることによりフイルムを製造している。
フィードブロックの合流部には、切り欠き部が形成されたディストリビューションピンが設けられ、ドープは切り欠き部を通って合流される。このため、切り欠き部の大きさにより、合流させるドープの流量を調整できる。また、切り欠き部の形状(積層ドープの幅方向の断面形状)により、積層ドープの幅方向の各位置におけるドープの流量を調整できる。すなわち、例えば、切り欠き部の形状を、幅方向中央部の深さが他の部分よりも深い形状とすることで、幅方向中央部のドープの流量を他の部分よりも多くすることができる。
このように、ディストリビューションピンの切り欠き部の形状により、幅方向の各位置におけるドープの流量を調整できるため、積層フイルムの製造装置では、厚みが均一な高品位の積層フイルムを製造するために、ディストリビューションピンの切り欠き部の形状に各種の工夫を施している。例えば、下記特許文献1では、切り欠き部の底部を幅方向全幅に渡って弓型の曲面とした例が記載されている。また、下記特許文献2、3には、切り欠き部の幅方向中央部に溝を設けた例が記載されている。
特開2013−180476号公報 特開2010−082985号公報 特開2009−184136号公報
しかしながら、上記特許文献1のように、切り欠き部の底部を幅方向全幅に渡って弓型に形成しても、依然として厚みむらが生じてしまうといった問題があった。この問題の原因について、本発明者が鋭意検討した結果、厚みむらは幅方向の中央部が局所的に薄くなるものであり、上記特許文献1のように切り欠き部の全幅に渡る形状変更では対応できないことが判った。
一方、上記特許文献2、3のように、切り欠き部の幅方向中央部に溝を設けた場合、上記特許文献1と比較して厚みむらは減少するものの、フイルム両側部の厚みが足りずにフイルムの両側部が変形(カール)してしまったり、クリップなどによりフイルムの両側部を把持する際の把持性が低下してしまうといった問題があった。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、フイルム中央部に生じる厚みむらを解消するとともに、フイルム両側部に十分な厚みを持たせることができる積層フイルムの製造装置及び方法を提供することを目的としている。
上記課題を解決するために、本発明の積層フイルムの製造装置は、第1ドープと第2ドープとを含む複数種類のドープを合流部において合流させることにより、第1ドープと第2ドープとが積層された積層ドープを形成するフィードブロックと、積層ドープを、走行する支持体上に流延して流延膜を形成する流延ダイと、合流部に配置され、切り欠き部により第2ドープの流量を制御するディストリビューションピンと、を備え、切り欠き部は、第2ドープの流れに直交する幅方向の中央部及び両側部に、第2ドープの流量を増加させる流量増加溝が形成されたものである。
切り欠き部は、中央部の流量増加溝と、両側部の流量増加溝との間に、幅方向の位置によらず深さが一定の平坦部が形成されたものでもよい。
切り欠き部の幅をW1、中央部の流量増加溝の幅をW2、両側部の流量増加溝の幅をW3、としたときに、
W2/W1の値が、0.03以上、0.35以下、
W3/W1の値が、0.02以上、0.15以下、
W2の値が、W3の値以上であることが好ましい。
切り欠き部の深さをD1、中央部の流量増加溝の深さをD2、両側部の流量増加溝の深さをD3、としたときに、
D2/D1の値が、0.1以上、1.5以下
D3/D1の値が、0.8以上、4.0以下
D2の値が、D3の値以下であることが好ましい。
ドープがポリマーを含むものであってもよい。
ポリマーがセルロースアシレートを含むものであってもよい。
流延ダイは、積層ドープが流下される流路を備え、流路は、フィードブロックと接続される入口部分よりも、支持体と対面する出口部分の方が幅広に形成され、積層ドープの流路には、幅方向の位置によらず厚みが一定の第1定厚部と、第1定厚部よりも下流側に設けられ、第1定厚部よりも厚みが薄い第2定厚部と、第1定厚部と第2定厚部とを接続する接続部であり、下流側へ向かうほど厚みが薄く形成された接続部と、を備え、接続部は、幅方向中央部が幅方向両端部よりも上流側に位置するコートハンガー状に形成され、積層ドープは、流路を流下する間に、接続部により厚みが薄くされるとともに幅が拡大されるものであってもよい。
また、上記課題を解決するために、本発明の積層フイルムの製造方法は、第1ドープと第2ドープとを含む複数種類のドープをフィードブロックの合流部において合流させることにより、第1ドープと第2ドープとが積層された積層ドープを形成する合流ステップと、積層ドープを、流延ダイから走行する支持体上に流延して流延膜を形成する流延ステップと、を備え、合流ステップでは、合流部に配置されたディストリビューションピンに設けられ、第2ドープの流れに直交する幅方向の中央部及び両側部に第2ドープの流量を増加させる流量増加溝が形成された切り欠き部により、第2ドープの流量を制御するものである。
本発明によれば、幅方向の中央部と両側部とに流量増加溝を設けたので、フイルム中央部に生じる厚みむらを解消するとともに、フイルム両側部に十分な厚みを持たせることができる。
溶液製膜装置の概略図である。 流延ユニットの概略図である。 フィードブロックの断面図である。 フィードブロック及び流延ダイの断面図である。 流延ダイの幅方向の断面図である。 テンタの概略図である。 ディストリビューションピンの平面図である。 切り欠き部の幅方向の断面図である。 実施例と比較例の切り欠き部の形状の違いを示す一覧表である。 実施例と比較例の評価の一覧表である。 中央流量増加溝を2段階式の溝とした例を示す説明図である。
図1に、本発明の積層フイルムの製造装置である溶液製膜装置10を示す。溶液製膜装置10は、第1、第2の2種類のドープ12a、12bからフイルム(積層フイルム)14を連続的に製造するためのものであり、流延ユニット20と、テンタ22と、耳切り装置24と、ローラ乾燥機26と、巻取り機28とを備え、これらが上流側から順に配置されている。
第1、第2ドープ12a、12bは、ポリマーが溶媒に溶けているポリマー溶液である。なお、本実施形態では、ポリマーとしてセルローストリアセテート(TAC,triacetylcellulose)、溶媒としてジクロロメタンとメタノールとの混合物を用いているが、ポリマー及び溶媒はこれらに限定されない。本発明で用いることができるポリマー及び溶媒の詳細については後述する。
また、第1、第2ドープ12a、12bには、可塑剤、紫外線吸収剤、レタデーション制御剤等の各種添加剤や、フイルム14同士の貼り付きを防止するためのマット剤(微粒子など)が含まれていてもよい。さらに、本発明は、第1、第2ドープ12a、12bの組成により限定されるものではないが、後述するように、第1ドープ12aはフイルム14の中間層を形成し、第2ドープ12bはフイルム14の表面層及び裏面層を形成する、すなわち、第2ドープ12bは、中間層をコーティングする機能を有する。このため、第2ドープ12bは、第1ドープ12aよりも粘度が低いことが好ましい。こうすることで均質なコーティングが可能となる。
図2に示すように、流延ユニット20は、フィードブロック30と、流延ダイ32と、ベルト34と、一対の回転ドラム36と、剥ぎ取りローラ38とを備えている。
図3に示すように、フィードブロック30は、第1ドープ12aが供給される第1供給口40と、第2ドープ12bが供給される2つの第2供給口42、44とを備え、これら第1、第2供給口40、42、44から供給された第1、第2ドープ12a、12bを合流部46で合流させることにより、第1ドープ12aを中間層、第2供給口42から供給された第2ドープ12bを表面層、第2供給口44から供給された第2ドープ12bを裏面層とした積層ドープ48を形成する。
合流部46には、ディストリビューションピン50、52が設けられている。ディストリビューションピン50は、積層ドープ48の幅方向に長い円柱状に形成され、軸周りに回転自在に設けられ、駆動部(図示せず)により回転される。ディストリビューションピン50の周面には、切り欠き部54が設けられており、第2供給口42から供給された第2ドープ12bは、切り欠き部54を介して合流部46へ流れるようになっている。
切り欠き部54は、ディストリビューションピン50の周面に沿ってその幅W1が変化するように形成されている(図7参照)。これにより、ディストリビューションピン50を回転させることで、第2供給口42から供給された第2ドープ12bの流路幅を変化させて流量を調整(制御)できる。流量の調整(すなわち、ディストリビューションピン50の回転位置の調整(制御))は、前述した駆動部により行われる。
ディストリビューションピン52は、ディストリビューションピン50と同一の形状に形成されている。そして、ディストリビューションピン52は、ディストリビューションピン50に対し軸の向きを180°反転させた状態で、ディストリビューションピン50と向かい合うように配置されている。すなわち、ディストリビューションピン52も切り欠き部54を備えており、回転させることで第2供給口44から供給された第2ドープ12bの流路幅を変化させ、流量を調整(制御)できる。ディストリビューションピン52もディストリビューションピン50と同様に駆動部(図示せず)と接続されており、流量の調整は駆動部により行われる。
このように、第2第供給口42、44から供給された第2ドープ12bは、ディストリビューションピン50、52によりそれぞれ流量が調整されて第1ドープ12aの表面側及び裏面側に合流される。そして、第1ドープ12aと第2ドープ12bとが合流されることによって形成された積層ドープ48は、フィードブロック30の出口56から流延ダイ32へと供給される。
図4に示すように、流延ダイ32には、積層ドープ48の流路60が設けられている。流路60は、フィードブロック30の出口56と接続された入口62と、ベルト34と対面する出口64とを備え、積層ドープ48は、入口62から流延ダイ32(流路60)内に供給され、出口64からベルト34上に流出される。
図5に示すように、流路60は、入口62よりも出口64の方が幅が広く形成されており、入口62と出口64との間には、上流側から順に、第1定厚部70、接続部72、第2定厚部74が設けられている。第1、第2定厚部72、74は、幅方向の位置によらず厚み(図5の奥行き方向の長さ)が一定に形成されるとともに、第1定厚部70よりも第2定厚部74の方が厚みが薄く形成されている。接続部72は、第1定厚部70と第2定厚部74とを接続するように設けられ、下流側へ向かうほど厚みが薄く形成されている。また、流路60は、接続部72の幅方向中央部が、接続部72の幅方向両側部よりも上流側に位置するコートハンガー状に形成されている。これにより、流路60を流下する積層ドープ48は、幅が拡大されるとともに、厚みが薄くされて出口64から流出される。
なお、流延ダイ32やフィードブロック30をジャケット(図示せず)で覆い、ジャケット内に供給する熱電媒体の温度を制御(調整)することによって、積層ドープ48を一定温度(例えば、30℃〜38℃、より好ましくは33℃〜35℃、さらに好ましくは34℃程度)に保つことが好ましい
図1、図2に戻り、流延ダイ32から流出された積層ドープ48は、ベルト(支持体)34上に流延されて流延膜80を形成する。ベルト34は、環状に形成され、一対の回転ドラム36に架け渡されており、流延膜80の支持体として機能する。一対の回転ドラム36は、少なくとも一方がモータなどの駆動力供給手段から駆動力の供給を受けて回転するようになっており、この回転ドラム36の回転に伴ってベルト34が長手方向に走行する。なお、駆動力の供給を受けていない回転ドラム36がある場合、この回転ドラム36は、ベルト34の走行に伴って従動回転する。
回転ドラム36は、周面温度を調節する温度コントローラ(図示せず)を備える。周面温度を調節した回転ドラム36により、ベルト34を介して流延膜80の温度が調整される。流延膜80を加熱して乾燥を促進することにより固める(ゲル化する)いわゆる乾燥ゲル化方式の場合には、回転ドラム36の周面温度は、例えば15℃以上35℃以下の範囲内にするとよい。こうしたゲル化により流延膜80は搬送可能な固さになる。
なお、流延ダイ32から流出され、ベルト34上の流延位置PCに到達して流延膜80となるまでの積層ドープ48(いわゆるビード)の裏面側に、減圧チャンバ(図示無し)を配し、このエリアを減圧してもよい。また、流延膜80の乾燥を促進するための送風機(図示無し)を、設けてもよい。
剥ぎ取りローラ38は、流延膜80をベルト34から剥ぎ取るためのものである。剥ぎ取りローラ38は、ベルト34から剥ぎ取ることで形成されたフイルム14を例えば下方から支持し、流延膜80がベルト34から剥がれる剥取位置PPを一定に保持する。剥ぎ取る手法は、フイルム14を下流側へ引っ張る手法や、剥ぎ取りローラ38を周方向に回転させる手法等のいずれでもよい。
ベルト34からの剥ぎ取りは、乾燥ゲル化方式の場合には、例えば、流延膜80の溶媒含有率が3質量%以上100質量%以下の範囲にある間に行う。なお、本明細書においては、溶媒含有率(単位;%)は乾量基準の値であり、具体的には、溶媒の質量をx、溶媒含有率を求めるフイルム14の質量をyとするときに、{x/(y−x)}×100で求める百分率である。
以上のように流延ユニット20は、第1、第2ドープ12a、12bからフイルム14を形成する。ベルト34は流延位置PCと剥取位置PPとを循環して走行することで、積層ドープ48の流延と流延膜80の剥ぎ取りとが繰り返し行われる。
なお、本実施形態では、フィードブロック30及び流延ダイ32を一対の回転ドラム36のうちの一方の上方に配しているが、流延ダイ32を一対の回転ドラム36の間のベルト34の上方に配してもよい。また、本実施形態では、回転ドラム36に架け渡されたベルト34上に積層ドープを流延しているが、回転ドラム36の周面に直接、積層ドープ48を流延してもよい。
図1において、テンタ22には、流延ユニット20によって形成されたフイルム14が搬送される。図6に示すように、テンタ22は、フイルム14の側部を把持する複数のクリップ90と、一対のレール92及びチェーン94とを備える。なお、クリップ90に代えて、複数のピン(図示無し)が台の上面に起立した姿勢で配され、フイルム14の側部に個々のピンを突き刺してフイルム14を保持するピンプレート(図示無し)を用いてもよい。
レール92はフイルム14の搬送路の各側部に設置される。チェーン94は、原動スプロケット96及び従動スプロケット98に掛け渡され、レール92に沿って移動自在に取り付けられている。クリップ90は、チェーン94に所定の間隔で取り付けられており、原動スプロケット96の回転により、レール92に沿って循環移動する。クリップ90は、テンタ22の入口近傍で、フイルム14の保持を開始し、出口に向かって移動して、出口近傍で保持を解除する。保持を解除したクリップ90は再び入口近傍に移動して、新たに案内されてきたフイルム14を保持する。このように、クリップ90は、フイルム14の両側部を把持して長手方向に搬送する。
テンタ22には、フイルム14を幅方向に延伸する延伸部100が設けられており、この延伸部100においては、一対のレール92の間隔(フイルム14の幅方向の距離)が下流側ヘ向かうほど拡大されている。これにより、延伸部100を通過するクリップ90の間隔が下流側へ向かうほど広がり、フイルム14が幅方向の外側ヘ向けて牽引されて延伸され、その幅が拡大される。
また、図1に戻り、テンタ22は、第1の乾燥機としての機能をもち、フイルム14の搬送路の上方に送風機102を備える。送風機102の下面には、乾燥気体を流出する流出口(図示無し)が形成されており、通過するフイルム14に向けて乾燥気体を吹き出す。なお、同様の構造を有する送風機を、フイルム14の搬送路の下方に設けてもよい。
耳切り装置24は、フイルム14の幅方向に所定の間隔を開けて配置された一対のカッタ110を備えており、カッタ110によりフイルム14の耳(側端部)をカットする。前述のように、フイルム14は、テンタ22において両側部をクリップ90により把持されて延伸されるため、フイルム14の両側部は皺や把持痕が残り製品としては使用できない。耳切り装置24では、このように製品として使用できない部分がカットされる。なお、カットされた部分は、クラッシャ(図示せず)により細断され、ドープの原料として再利用される。
ローラ乾燥機26は、第2の乾燥機であり、複数のローラ112と空調機(図示無し)とを備える。各ローラ112はフイルム14を周面で支持する。フイルム14はローラ112に巻き掛けられて搬送される。空調機は、ローラ乾燥機26の内部の温度や湿度などを調節する。巻取り機28は、フイルム14をロール状に巻き取るためのものである。
このように、溶液製膜装置10では、第1、第2ドープ12a、12bをフィードブロック30の合流部46において合流させることにより積層ドープ48を形成する合流ステップと、積層ドープ48を、流延ダイ32から走行するベルト34上に流延して流延膜80を形成する流延ステップとを経てフイルム14が製造される。このようにして製造されたフイルム14は、例えば、光学フイルムとして利用することができる。光学フイルムとしては、例えば、偏光板の保護フイルムや、位相差フイルムが挙げられる。
上述の溶液製膜装置10において製造されるフイルム14は、厚みむらを出来るだけ無くすことが要求される。そして、厚みむらについて、本発明者が鋭意検討した結果、厚みむらは、フイルム14の幅方向の中央部の厚みが局所的に薄くなるものであることが判明した。また、上述の溶液製膜装置10において製造されるフイルム14は、両側部の厚みが十分でないと両側部が変形(カール)してしまうといった問題や、テンタ22において把持性が低下してしまうといった問題がある。
このため、容積製膜装置10では、上述した問題を解消するために、ディストリビューションピン50、52の切り欠き部54の形状に工夫を施している。具体的には、図7、図8に示すように、切り欠き部54の幅方向中央部に中央流量増加溝120を設けるとともに、切り欠き部54の幅方向両側部にそれぞれ端部流量増加溝122を設けている。
なお、本実施形態では、
切り欠き部54の 幅を「W1」、深さを「D1」、
中央流量増加溝120の幅を「W2」、深さを「D2」、
端部流量増加溝122の幅を「W3」、深さを「D3」、
としたときに(図8参照)、
「W2/W1」の値が「0.20」、
「W3/W1」の値が「0.10」、
「D2/D1」の値が「1.00」、
「D3/D1」の値が「3.00」、
を満たすように、切り欠き部54の形状を決定している(中央流量増加溝120と端部流量増加溝122とを設けている)。
このように、切り欠き部54に、中央流量増加溝120と端部流量増加溝122とを設けることで、切り欠き部54の幅方向中央部と両側部との3箇所においてドープの流量が増加し、フイルム14の幅方向中央部については、窪みを無くすことができる(厚みむらを防止できる)。また、フイルム14の両側部については、厚みを十分なものとし、変形や把持性低下を防止できる。
また、本実施形態では、厚みむらや変形、把持性低下などの問題が発生し難い部分、すなわち、中央流量増加溝120と端部流量増加溝122との間の部分については、幅方向の位置によらず深さが一定の平坦部124としている。このように、流量が不足すると問題が発生する部分についてのみ局所的に流量を増加させ、他の部分については平坦部124とすることで、端部流量増加溝122の間の全幅に渡って厚みむらを防止できる。
一方、端部流量増加溝122の形成された部分(フイルム14の幅方向両側部)については、端部流量増加溝122の間の部分よりもフイルム14の厚みが厚くなるものの、変形や把持性低下を防止できる。また、この部分(端部流量増加溝122の形成された部分)については、耳切り装置24でカットされるため製品としてのフイルム14に影響が及ぶこともない(製品としてのフイルム14は、全幅に渡って厚みむらのないものとなる)。
なお、本発明は、ディストリビューションピン50、52の切り欠き部54に、中央流量増加溝120と端部流量増加溝122とを設ければよいので、各流量増加溝120、122の幅や深さなど切り欠き部54の具体的な形状については自由に設定できる。ただし、切り欠き部54の中央部の流量が少ないとフイルム中央部に生じる窪みを防止できず、多いとフイルム中央部の厚みが厚くなってしまう。また、切り欠き部54の両側部の流量が少ないとフイルム両側部が変形したり把持性が低下してしまい、多いと製品となるフイルムの幅が狭くなってしまう(厚みが厚くなり製品として使用できない部分の幅が大きくなってしまう)。
このため、切り欠き部54は、
「0.03≦W2/W1≦0.35」、より好ましくは、
「0.07≦W2/W1≦0.35」を満たすように形成することが好ましい。
また、切り欠き部54は、
「0.02≦W3/W1≦0.15」、より好ましくは、
「0.05≦W3/W1≦0.15」を満たすように形成することが好ましい。
さらに、切り欠き部54は、
「W2≦W3」を満たすように形成することが好ましい。
「W2/W1」の値が「0.03」未満となると、中央部の流量が不足し、中央部の厚さが薄くなってしまう恐れがあり、「W2/W1」の値が「0.35」よりも大きくなると、両側部の流量が不足し、両側部の変形や把持性低下の恐れがある。
また、「W3/W1」の値が「0.02」未満となると、両側部の流量が不足し、両側部の変形や把持性低下の恐れがあり、「W3/W1」の値が「0.15」よりも大きくなると、中央部のドープが両側部へと牽引され、中央部の流量が不足し、中央部の厚さが薄くなってしまう恐れがある。
さらに、「W2」が「W3」よりも小さくなると、中央部のドープが両側部へと牽引され、中央部の流量が不足し、中央部の厚さが薄くなってしまう恐れがある。
また、切り欠き部54は、
「0.10≦D2/D1≦1.50」、より好ましくは、
「0.50≦D2/D1≦1.50」を満たすように形成することが好ましい。
さらに、切り欠き部54は、
「0.80≦D3/D1≦4.00」、より好ましくは、
「1.50≦D3/D1≦4.00」を満たすように形成することが好ましい。
また、切り欠き部54は、
「D2≦D3」を満たすように形成することが好ましい。
「D2/D1」の値が「0.10」未満となると、中央部の流量が不足し、中央部の厚さが薄くなってしまう恐れがあり、「D2/D1」の値が「1.50」よりも大きくなると、両側部の流量が不足し、両側部の変形や把持性低下の恐れがある。
さらに、「D3/D1」の値が「0.80」未満となると、両側部の流量が不足し、両側部の変形や把持性低下の恐れがあり、「D3/D1」の値が「4.00」よりも大きくあると、中央部のドープが両側部へと牽引され、中央部の流量が不足し、中央部の厚さが薄くなってしまう恐れがある。
また、「D3」が「D2」よりも小さくなると、両側部の流量が不足し、両側部の変形や把持性低下の恐れがある。
なお、上記実施形態では、2本のディストリビューションピンを同一の形状とした例(2本のディストリビューションピンに設けられた切り欠き部の形状が同一である例)で説明をしたが、各々のディストリビューションピンの切り欠き部の形状を異ならせてもよい。
また、上記実施形態では、2本のディストリビューションピンにより3つのドープの流れを1つに合流させてフイルムを製造するフイルムの製造装置に本発明を適用する例で説明をしたが、本発明はこれに限定されるものではない。1本のディストリビューションピンにより2つのドープの流れを1つに合流させてフイルムを製造するフイルムの製造装置に本発明を適用してもよい。
なお、上記実施形態では、ポリマーとしてTACを用いた例で説明をしたが、TACに代えて、TACと異なる他のセルロースアシレートや、環状ポリオレフィン等としてもよい。セルロースアシレートについて、詳細を以下に説明する。
<セルロースアシレート>
セルロースアシレートは、セルロースの水酸基をカルボン酸でエステル化している割合、つまりアシル基の置換度(以下、アシル基置換度と称する)が下記式(1)〜(3)の全ての条件を満足するものが特に好ましい。なお、(1)〜(3)において、A及びBはともにアシル基置換度であり、Aにおけるアシル基はアセチル基であり、Bにおけるアシル基は炭素原子数が3〜22のものである。
2.4≦A+B≦3.0・・・(1)
0≦A≦3.0・・・(2)
0≦B≦2.9・・・(3)
セルロースを構成し、β−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、このようなセルロースの水酸基の一部または全部がエステル化されて、水酸基の水素が炭素数2以上のアシル基に置換されたポリマーである。なお、グルコース単位中のひとつの水酸基のエステル化が100%されていると置換度は1であるので、セルロースアシレートの場合には、2位、3位及び6位の水酸基がそれぞれ100%エステル化されていると置換度は3となる。
ここで、グルコース単位で2位のアシル基置換度をDS2、3位のアシル基置換度をDS3、6位のアシル基置換度をDS6として「DS2+DS3+DS6」で求められる全アシル基置換度は2.00〜3.00であることが好ましく、2.22〜2.90であることがより好ましく、2.40〜2.88であることがさらに好ましい。さらに、「DS6/(DS2+DS3+DS6)」は0.32以上であることが好ましく、0.322以上であることがより好ましく、0.324〜0.340であることがさらに好ましい。
アシル基は1種類だけでもよいし、2種類以上であってもよい。アシル基が2種類以上であるときには、そのひとつがアセチル基であることが好ましい。2位、3位、及び6位の水酸基の水素のアセチル基による置換度の総和をDSAとし、2位、3位、及び6位におけるアセチル基以外のアシル基による置換度の総和をDSBとするとき、「DSA+DSB」の値は、2.2〜2.86であることが好ましく、2.40〜2.80であることが特に好ましい。DSBは1.50以上であることが好ましく、1.7以上であることが特に好ましい。そして、DSBは、その28%以上が6位水酸基の置換であることが好ましいが、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは31%以上、特に好ましくは32%以上が6位水酸基の置換であることが好ましい。また、セルロースアシレートの6位の「DSA+DSB」の値が0.75以上であることが好ましく、0.80以上であることがより好ましく、0.85以上であることが特に好ましい。以上のようなセルロースアシレートを用いることにより、溶液製膜に用いられるポリマー溶液をつくるために好ましい溶解性が得られる。
炭素数が2以上であるアシル基としては、脂肪族基でもアリール基でもよく、特に限定されない。例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどがあり、これらは、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。プロピオニル基、ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、iso−ブタノイル基、t−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などを挙げることが出来る。これらの中でも、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、プロピオニル基、ブタノイル基が特に好ましい。
ポリマーとしてセルロースアシレートを用いる場合には、第1、第2ドープ12a、12b、の溶媒としては、セルロースアシレートフイルムを溶液製膜で製造する場合のドープの溶媒として公知のものを用いることができる。例えば、ジクロロメタン、各種アルコール、各種ケトン等である。これらから選ばれる複数を混合して、この混合物を溶媒として用いてもよい。
[実施例]
以下、本発明を実施した実施例1−5、及び、実施例との比較に用いた比較例について説明を行う。
実施例1−5は、切り欠き部54に中央流量増加溝120と端部流量増加溝122とを設けたディストリビューションピン50、52を用いた溶液製膜装置10によりフイルム14を製造したものである。他方、比較例は、幅方向の位置によらず深さが一定のディストリビューションピンを用いた以外は、実施例1−5と同等の条件でフイルムを製造したものである。
全ての実施例及び比較例では、下記の第1ドープ12aと第2ドープ12bとからフイルム14を生成した。
<第1・第2ドープ>
下記の固形分(溶質)を、下記の混合溶媒に適宜添加し、撹拌溶解して第1・第2ドープ12a、12bを調整した。
<固形分>
TAC(置換度2.8) 89.3重量%
可塑剤A(トリフェニルフォスフェート) 7.1重量%
可塑剤B(ビフェニルジフェニルフォスフェート) 3.6重量%
<混合溶媒>
ジクロロメタン 80.0重量%
メタノール 13.5重量%
n−ブタノール 6.5重量%
第1ドープ12aは、TAC濃度が約23重量%となるように調整した。調整後の第1ドープ12aの粘度は、34℃での粘度が50pa・sであった。
第2ドープ12bは、TAC濃度が約20重量%となるように調整した。調整後の第1ドープ12aの粘度は、34℃での粘度が36pa・sであった。
調整後の第1、第2ドープ12a、12bは、濾紙(東洋濾紙(株)製、#63LB)にて濾過後、さらに、焼結金属フィルタ(日本精線(株)製、06N(公称孔径10μm))で濾過した。
なお、ドープの組成は上記に限定されない。例えば、第2ドープに紫外線吸収剤や微粒子(アエロジル社製 NX90S等)を添加してもよい。
<TAC>
上記TACは、残存酢酸量が0.1重量%以下であり、Ca含有率が58ppm、Mg含有率42ppm、Fe含有率が0.5ppmであり、遊離酢酸40ppm、さらに、硫酸イオン15ppmを含むものであった。また、6位水酸基の水素に対するアセチル基の置換度は0.91であった。さらに、全アセチル基中の32.5%が6位の水酸基の水素が置換されたアセチル基であった。また、このTACをアセトンで抽出したアセトン抽出量は8重量%であり、その重量平均分子量と数平均分子量との比(重量平均分子量/数平均分子量)は、2.5であった。さらに、得られたTACのイエローインデックスは1.7であり、ヘイズは0.08、透明度は93.5%であった。このTACは、綿から摂取したセルロースを原料として合成されたものである。
上述のようにして調整された第1、第2ドープ12a、12bをフィードブロック30に送り、第1ドープ12aの表面側及び裏面側を第2ドープ12bで挟みこむように合流させることにより積層ドープ48を形成させ、流延ダイ32に送った。流延ダイ32には、ジャケットを設けて、積層ドープ48の温度が約34℃で一定となるように、ジャケット内に供給する熱電媒体の温度を調整した。
流延ダイ32から流出されたビードの裏面側に減圧チャンバを設けてビードの長さが20mm〜50mmとなるようにビードの表面側と裏面側との圧力差を調整し、積層ドープ48を走行するベルト34上に流延して流延膜80を形成した。なお、ベルト34の走行速度は、約30m/minとした。
ベルト34上の流延膜80に対して乾燥風を送風して乾燥させた後、剥ぎ取りローラ38を用いて流延膜を剥ぎとり、剥ぎとったフイルム14をテンタ22に搬送した。ベルト34上の乾燥雰囲気における酸素濃度は5vol%に保持した。なお、酸素濃度を5vol%に保持するために空気を窒素ガスで置換した。テンタ22ではクリップ90によりフイルム14の両側部を把持し、加熱風を送風してフイルム14を乾燥させながら、フイルム14を幅方向に延伸した。
テンタ22で延伸したフイルム14は、耳切り装置24により両側部を切断した。切断した両側部の幅は50mmであった。切断した両側部は、カッタブロワによりクラシャーに送風して平均80mm2 のチップに粉砕した。このチップは、TACフレークとともにドープの原料として再利用した。
耳切り装置24において両側部を切断したフイルム14をローラ乾燥機26に送り、乾燥空気を送風して乾燥させた後、巻取り機28によってロール形態に巻き取った。巻取り機28の配置された巻き取り室内には、イオン風除電器を設け、フイルムへの帯電を防止した。このようにして製造されたフイルムは厚みが15μm、幅が3000mmであった。
以下、図9を用いて、実施例1−5、及び、比較例1−3で用いたディストリビューションピン(切り欠き部)について説明する。
[実施例1]
実施例1では、下記の切り欠き部54を有するディストリビューションピン50、52を用いた。
「W2/W1」が「0.20」
「W3/W1」が「0.10」
「D2/D1」が「0.70」
「D3/D1」が「2.00」
「W2/W3」が「2.00」
「D2/D3」が「0.35」
[実施例2]
実施例2では、下記の切り欠き部54を有するディストリビューションピン50、52を用いた。
「W2/W1」が「0.33」
「W3/W1」が「0.15」
「D2/D1」が「1.40」
「D3/D1」が「3.80」
「W2/W3」が「2.20」
「D2/D3」が「0.37」
[実施例3]
実施例3では、下記の切り欠き部54を有するディストリビューションピン50、52を用いた。
「W2/W1」が「0.04」
「W3/W1」が「0.03」
「D2/D1」が「0.15」
「D3/D1」が「1.00」
「W2/W3」が「1.33」
「D2/D3」が「0.15」
[実施例4]
実施例4では、下記の切り欠き部54を有するディストリビューションピン50、52を用いた。
「W2/W1」が「0.02」
「W3/W1」が「0.01」
「D2/D1」が「0.08」
「D3/D1」が「0.50」
「W2/W3」が「2.00」
「D2/D3」が「0.16」
[実施例5]
実施例5では、下記の切り欠き部54を有するディストリビューションピン50、52を用いた。
「W2/W1」が「0.40」
「W3/W1」が「0.20」
「D2/D1」が「1.80」
「D3/D1」が「5.00」
「W2/W3」が「2.00」
「D2/D3」が「0.36」
[比較例1]
上述のように実施例1−5では、中央流量増加溝120と端部流量増加溝122とを有する切り欠き部54が設けられたディストリビューションピン50、52を用いたのに対し、比較例1では、幅方向の深さが一定、すなわち、中央流量増加溝や端部流量増加溝が設けられていないディストリビューションピンを用いた。
[比較例2]
また、比較例2では、中央部流量増加溝120のみを設けたディストリビューションピンを用いた。
なお、比較例2の切り欠き部は、以下を満たすものである。
「W2/W1」が「0.20」
「D2/D1」が「0.70」
[比較例3]
さらに、比較例3では、端部流量増加溝122のみを設けたディストリビューションピンを用いた。
なお、比較例3の切り欠き部は、以下を満たすものである。
「W3/W1」が「0.10」
「D3/D1」が「2.00」
[評価]
図10に示すように、実施例1−5、及び、比較例のそれぞれについて、「把持性」及び「厚みむら」を、「A」、「B」、「C」の3段階で評価した。なお、評価「A」〜「C」は、評価「A」が最も高い評価であり、評価「C」が最も低い評価である。また、評価「A」、評価「B」は、製品として問題がない、すなわち、合格基準に達していることを示す評価であり、評価「C」は、製品とするには不十分である、すなわち、合格基準に達していないことを示す評価である。
また、「把持性」の評価は、テンタ22において、クリップ90の噛み外しが生じなかった場合は評価を「A」とし、クリップ90の噛み外しが生じたが頻度が十分に低く製品部分のフイルム14には問題が生じないレベルであった場合は評価を「B」とし、製品部分のフイルム14に影響が出てしまう程度に噛み外しが生じた場合は評価を「C」とした。
さらに、「厚みむら」の評価は、製品として得られたフイルム14の膜厚「Y」を、フイルム14の幅方向に沿って測定し、平均値を「Yave 」、幅方向の中央部の膜厚の最小値を「Ymin 」としたときの「ΔY(|Yave −Ymin |/Yave )」の値の変化を調べた。そして、「ΔY」の値が3.0%未満の場合は評価を「A」とし、「ΔY」の値が3.0%以上3.5%未満の場合は評価を「B」とし、「ΔY」の値が3.5%以上の場合は評価を「C」とした。なお、「厚みむら」の評価に限っては、評価「A」よりも上の評価「S」を設定し、「ΔY」の値が1.5%未満の場合は評価を「S」とした。
この結果、中央流量増加溝120及び端部流量増加溝122を設けた実施例1−5は、流量増加溝を設けない比較例1と比較して、「把持性」及び「厚みむら」のいずれの評価も向上できることが判った。
さらに、中央流量増加溝120及び端部流量増加溝122を設けた実施例1−5は、片方の流量増加溝しか設けていない比較例2、3と比較して、「把持性」と「厚みむら」の評価を両立して向上できることが判った。
また、切り欠き部54が、
「0.03≦W2/W1≦0.35」、
「0.02≦W3/W1≦0.15」、
「0.10≦D2/D1≦1.50」、
「0.80≦D3/D1≦4.00」、
を満たしている実施例1−3の方が、これらを満たしていない実施例4、5よりも「把持性」及び「厚みむら」のいずれの評価も向上できることが判った。
さらに、切り欠き部54が、
「0.07≦W2/W1≦0.35」、
「0.05≦W3/W1≦0.15」、
「0.50≦D2/D1≦1.50」、
「1.50≦D3/D1≦4.00」、
を満たしている実施例1、2の方が、これらを満たしていない実施例3よりも「厚みむら」の評価を向上できることが判った。
なお、上記実施形態では、中央流量増加溝が、幅方向の位置によらず深さが一定の1段階式の溝である例で説明をしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図11に示す中央流量増加溝130のように、中央流量増加溝を2段階式の溝としてもよい。こうすることで、1段階式の中央流量増加溝を設けた場合と比較して、厚みむらをより減少させることが出来る。なお、図11では、上述した実施形態と同様の部材については同様の符号を付して説明を省略している。
なお、上述のように、中央流量増加溝130を2段階式の溝とする場合、
切り欠き部54の 幅を「W1」、 深さを「D1」、
中央流量増加溝130の1段目の溝の幅を「W2a」、深さを「D2a」、
中央流量増加溝130の2段目の溝の幅を「W2b」、深さを「D2b」、
中央流量増加溝130の1段目の溝の断面積、すなわち、「D2a×W2a」を「S1」、
中央流量増加溝130の2段目の溝の断面積、すなわち、「D2b×W2b」を「S2」、
としたときに、
「0.03≦W2a/W1≦0.35」を満たすことが好ましく、
「0.10≦W2a/W1≦0.35」を満たすことがより好ましい。
また、
「0.50≦(D2a+D2b)/D1≦2.50」を満たすことが好ましく、
「1.00≦(D2a+D2b)/D1≦2.50」を満たすことがより好ましい。
さらに、
「0.35≦W2b/W2a≦0.70」を満たすことが好ましく、
「0.50≦W2b/W2a≦0.70」を満たすことがより好ましい。
また、
「0.55≦S2/S1≦0.75」を満たすことが好ましく、
「0.60≦S2/S1≦0.75」を満たすことがより好ましい。
上記を満たすように中央流量増加溝130を形成することで、さらに厚みむらを減少させることができる。
なお、
「W2a/W1」が「0.03」未満となると、中央部の流量が不足してしまう恐れがあり、「0.35」よりも大きくなると、両側部の流量が不足してしまう恐れがある。
また、
「D2a+D2b)/D1」が「0.50」未満となると、中央部の流量が不足してしまう恐れがあり、「2.50」よりも大きくなると、両側部の流量が不足してしまう恐れがある。
さらに、
「W2b/W2a」が「0.35」未満となると、中央部内における幅方向の流量が不均一となり中央部内で厚みむらが生じてしまう恐れがあり、「0.70」よりも大きくなると両側部の流量が不足してしまう恐れがある。
また、
「S2/S1」が「0.55」未満となったり「0.75」よりも大きくなると、中央部内における幅方向の流量が不均一となり中央部内で厚みむらが生じてしまう恐れがある。
なお、上述した例では、2段階式の中央流量増加溝を設けて厚みむらを防止する例で説明をしたが、断面が∨字型や∪字型の中央流量増加溝により厚みむらを防止してもよい。すなわち、2段階式の流量増加溝に代えて、中央の深さが側部の深さよりも深く形成された流量増加溝により厚みを防止してもよい。
10 溶液製膜装置(積層フイルムの製造装置)
12a 第1ドープ
12b 第2ドープ
14 フイルム(積層フイルム)
20 流延ユニット
22 テンタ
24 耳切り装置
26 ローラ乾燥機
28 巻取り機
30 フィードブロック
32 流延ダイ
34 ベルト(支持体)
36 回転ドラム
38 剥ぎ取りローラ
40 第1供給口
42、44 第2供給口
46 合流部
48 積層ドープ
50、52 ディストリビューションピン
54 切り欠き部
56 出口
60 流路
62 入口
64 出口
70 第1定厚部
72 接続部
74 第2定厚部
80 流延膜
90クリップ
92 レール
94 チェーン
96 原動スプロケット
98 従動スプロケット
100 延伸部
102 送風機
100 延伸部
110 カッタ
112 ローラ
120、130 中央流量増加溝
122 端部流量増加溝
124 平坦部

Claims (8)

  1. 第1ドープと第2ドープとを含む複数種類のドープを合流部において合流させることにより、前記第1ドープと前記第2ドープとが積層された積層ドープを形成するフィードブロックと、
    前記積層ドープを、走行する支持体上に流延して流延膜を形成する流延ダイと、
    前記合流部に配置され、切り欠き部により前記第2ドープの流量を制御するディストリビューションピンと、を備え、
    前記切り欠き部は、
    前記第2ドープの流れに直交する幅方向の中央部及び両側部に、前記第2ドープの流量を増加させる流量増加溝が形成されている積層フイルムの製造装置。
  2. 前記切り欠き部は、
    前記中央部の流量増加溝と、前記両側部の流量増加溝との間に、前記幅方向の位置によらず深さが一定の平坦部が形成されている請求項1記載の積層フイルムの製造装置。
  3. 前記切り欠き部の幅をW1、前記中央部の流量増加溝の幅をW2、前記両側部の流量増加溝の幅をW3、としたときに、
    W2/W1の値が、0.03以上、0.35以下、
    W3/W1の値が、0.02以上、0.15以下、
    W2の値が、W3の値以上である請求項1または2記載の積層フイルムの製造装置。
  4. 前記切り欠き部の深さをD1、前記中央部の流量増加溝の深さをD2、前記両側部の流量増加溝の深さをD3、としたときに、
    D2/D1の値が、0.1以上、1.5以下
    D3/D1の値が、0.8以上、4.0以下
    D2の値が、D3の値以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層フイルムの製造装置。
  5. 前記ドープがポリマーを含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層フイルムの製造装置。
  6. 前記ポリマーがセルロースアシレートを含む請求項5記載の積層フイルムの製造装置。
  7. 前記流延ダイは、前記積層ドープが流下される流路を備え、
    前記流路は、前記フィードブロックと接続される入口部分よりも、前記支持体と対面する出口部分の方が幅広に形成され、
    前記積層ドープの流路には、前記幅方向の位置によらず厚みが一定の第1定厚部と、前記第1定厚部よりも下流側に設けられ、前記第1定厚部よりも厚みが薄い第2定厚部と、前記第1定厚部と前記第2定厚部とを接続する接続部であり、下流側へ向かうほど厚みが薄く形成された接続部と、を備え、
    前記接続部は、前記幅方向中央部が前記幅方向両端部よりも上流側に位置するコートハンガー状に形成され、
    前記積層ドープは、前記流路を流下する間に、前記接続部により厚みが薄くされるとともに幅が拡大される請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層フイルムの製造装置。
  8. 第1ドープと第2ドープとを含む複数種類のドープをフィードブロックの合流部において合流させることにより、前記第1ドープと前記第2ドープとが積層された積層ドープを形成する合流ステップと、
    前記積層ドープを、流延ダイから走行する支持体上に流延して流延膜を形成する流延ステップと、を備え、
    前記合流ステップでは、
    前記合流部に配置されたディストリビューションピンに設けられ、前記第2ドープの流れに直交する幅方向の中央部及び両側部に前記第2ドープの流量を増加させる流量増加溝が形成された切り欠き部により、前記第2ドープの流量を制御する積層フイルムの製造方法。
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