以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。要点の説明または理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態を分けて示すが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能である。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
以降で示す各実施形態において、「磁界型アンテナ」とは、微小ループアンテナの一種であり、磁束を放射するアンテナである。
磁界型アンテナは、例えばNFC(Near field communication)等の通信に利用される、通信相手側のアンテナと磁界結合による近傍界通信のために用いられるアンテナである。磁界型アンテナは、使用する周波数帯は例えばHF帯で使用され、特に13.56MHzまたは13.56MHz近傍の周波数で用いられる。磁界型アンテナの大きさは使用する周波数における波長λに比べて非常に小さく、使用周波数帯での電磁波の放射特性は悪い。後述するアンテナ装置が備える給電コイルのコイル状導体を伸ばした状態での、コイル状導体の長さはλ/10以下である。なお、ここでいう波長とは、アンテナが形成される基材の誘電性や透磁性による波長短縮効果を考慮した実効的な波長のことを指す。給電コイルが有するコイル状導体の両端は、使用周波数帯(HF帯、特に13.56MHz近傍)を操作する給電回路に接続される。コイル状導体には、コイル状導体に沿った方向(電流の流れる方向)にほぼ一様な大きさの電流が流れる。そのため、コイル状導体には、コイル状導体の長さが波長と同程度以上のときのような電流分布は生じ難い。
以降で示す各実施形態において、「定在波型アンテナ」とは、放射素子上で電流や電圧(電位)の定在波が生じるアンテナである。すなわち、放射素子上に電流や電圧(電位)の強度の節や腹が生じるように共振する。例えば、放射素子上の電流や電圧(電位)の境界条件のため、放射素子の端部で電流が0となり、グランドに接続される場合はグランドとの接続部で電圧が0となる。代表的な定在波アンテナとしては、ダイポールアンテナ、モノポールアンテナ、逆L型アンテナ、逆F型アンテナ(IFA)、1波長ループアンテナ、折り返しダイポールアンテナ、折り返しモノポールアンテナ、マイクロストリップアンテナ、パッチアンテナ、板状逆F型アンテナ(PIFA)、スロットアンテナ、ノッチアンテナ、各アンテナの変形(放射素子が複数並列につながっていたり、スタブが複数あったり、放射素子の形が場所によって変わったりなど)である。
定在波型アンテナは通信相手側のアンテナと電磁波(電波)による通信(遠方界通信)のために用いられる。例えば携帯電話端末における通話やデータ通信、無線LANの通信、GPSにおける衛星信号の受信等に利用される。
本発明における「電子機器」は、筐体と上記磁界型アンテナとを備える装置、または筐体と上記磁界型アンテナおよび定在波型アンテナとを備える装置である。例えば、携帯電話端末、いわゆるスマートフォン、タブレット端末、ノートPC、ウェアラブル端末(いわゆるスマートウォッチやスマートグラス等)である。
《第1の実施形態》
図1(A)は第1の実施形態に係るアンテナ装置101の平面図であり、図1(B)は、図1(A)におけるA−A断面図であり、図1(C)は、図1(A)におけるB−B断面図である。なお、図1(B)および図1(C)において、各部の厚みは誇張して図示している。以降の各実施形態における断面図についても同様である。
図2はアンテナ装置101の、集中定数素子による等価回路図である。図2において、第1導電性部材1をインダクタL1で表し、第3導電性部材3をインダクタL3で表し、給電コイル5をインダクタL5で表している。以降の各実施形態における等価回路図についても同様である。
アンテナ装置101は、第1導電性部材1、第3導電性部材3、基板6A,6B、バッテリーパック8、第1接続部51A,51B、第1給電回路81、給電コイル5およびキャパシタC41,C42,C43,C44を備える。
第1導電性部材1は、平面形状が矩形の平板であり、第1主面PS1(図1(B)における第1導電性部材1の下側の面)を有する。第1導電性部材1は、長手方向が縦方向(図1(A)におけるY方向)に一致している。
第3導電性部材3は、平面形状が矩形の平板である。第3導電性部材3は、長手方向が横方向(図1(A)におけるX方向)に一致しており、第1端部E1および第2端部E2を有する。図1(A)に示すように、第3導電性部材3は、第1主面の垂直方向(図1(A)におけるZ方向。以下、「厚み方向」という)から視て、第1導電性部材1よりも面積が小さい。
本実施形態における第1導電性部材1および第3導電性部材3は、間隙部9を挟んで縦方向(Y方向)に並んで配置され、且つ、同一平面上に配置されている(図1(B)参照)。したがって、図1(A)に示すように、第1導電性部材1および第3導電性部材3は、厚み方向(Z方向)から視て、互いに重なっていない。第1導電性部材1および第3導電性部材3は、例えばスマートフォン等の電子機器の背面筐体の一部であり、金属やグラファイト等で構成される。
基板6A,6Bは、平面形状が矩形である絶縁体の平板である。基板6A,6Bは、バッテリーパック8を挟んで縦方向(図1(A)におけるY方向)に並んで配置され、且つ、同一平面上に配置される(図1(B)参照)。基板6Aおよび基板6Bは、図示しない同軸ケーブル等によって接続される。
基板6Aは、内部に平板状の第2導電性部材2を備える。第2導電性部材2は、基板6Aの主面のほぼ全体に形成されるグランド導体であり、第2主面PS2(図1(B)における第2導電性部材2の上側の面)を有する。図1(B)に示すように、第2主面PS2の少なくとも一部は、第1導電性部材1の第1主面PS1に対向して配置されている。また、第2主面PS2の少なくとも一部は、厚み方向(Z方向)から視て、第3導電性部材3に重なっている。
第1接続部51Aは、インダクタL11、接続導体71A,72Aおよび接続ピン7を有し、第1導電性部材1と第3導電性部材3との間に接続される。具体的には、インダクタL11の一端が、接続導体71Aおよび接続ピン7を介して第3導電性部材3の第1端部E1付近に接続され、インダクタL11の他端が、接続導体72Aおよび接続ピン7を介して第1導電性部材1に接続される。インダクタL11は、例えばチップインダクタ等のインダクタ部品であり、基板6Aの主面に実装される。接続導体71A,72Aは、基板6Aの主面に形成された直線状(I字状)の導体パターンである。接続ピン7は例えば可動型プローブピンである。
第1接続部51Bは、キャパシタC11、接続導体73A,74Aおよび接続ピン7を有し、第1導電性部材1と第3導電性部材3との間に接続される。具体的には、キャパシタC11の一端が、接続導体73Aおよび接続ピン7を介して第3導電性部材3の第2端部E2付近に接続され、キャパシタC11の他端が、接続導体74Aおよび接続ピン7を介して第1導電性部材1に接続される。キャパシタC11は、例えばチップキャパシタ等のキャパシタ部品であり、基板6Aの主面に実装される。接続導体73A,74Aは、基板6Aの主面に形成された直線状(I字状)の導体パターンである。
図1(A)に示すように、第1導電性部材1、第3導電性部材3および第1接続部51A,51Bはループを形成する。
第1給電回路81、給電コイル5およびキャパシタC41〜C44は、基板6Aの主面に実装される。
第1給電回路81は、平衡入出力型のHF帯(第1周波数帯)ICである。第1給電回路81の入出力部は、キャパシタC41〜C44を介して給電コイル5に接続されている。給電コイル5にはキャパシタC41,C42の直列回路が並列に接続されており、給電コイル5とキャパシタC41,C42とによってLC共振回路が構成されている。第1給電回路81はキャパシタC43,C44を介して上記LC共振回路にHF帯(第1周波数帯)の通信信号を給電する。第1給電回路81は例えば13.56MHzのRFID用のRFIC素子であり、給電コイル5は例えば磁性体フェライトコアにコイル状導体が形成された積層型のコイル(コイルアンテナ)である。
上記給電コイル5は、第1導電性部材1、第3導電性部材3および第1接続部51A,51Bで構成されるループと、磁界結合または電磁界結合(磁界結合および電界結合)する。
具体的には、本実施形態における給電コイル5は、厚み方向(Z方向)から視て、第3導電性部材3の長手方向の中央付近で、且つ、そのコイル開口が間隙部9に面した第3導電性部材3の縁端部に沿う位置に配置される。すなわち、給電コイル5は、給電コイル5を通る磁束がループと鎖交する向きに配置されている。そのため、給電コイル5は、ループ(特に第3導電性部材3)と主に磁界結合する。
また、給電コイル5は、図1(B)に示すように、第1導電性部材1の第1主面PS1を含む平面(XY平面)と、第2導電性部材2の第2主面PS2を含む平面(XY平面)との間に配置される。また、給電コイル5は、厚み方向(Z方向)から視て、全体が第3導電性部材に重なり、且つ、第2導電性部材2と第3導電性部材3との間に配置される。すなわち、給電コイル5は、厚み方向(Z方向)から視て、第1導電性部材1よりも第3導電性部材3に近接して配置される。そのため、給電コイル5は、第3導電性部材と磁界結合以外に電界結合を含めた電磁界結合する。
図2に示すように、HF帯(第1周波数帯)では、上記ループが、インダクタL1、インダクタL3、インダクタL11およびキャパシタC11からなるLC共振回路を構成する。上述の通り、給電コイル5はループと磁界結合または電磁界結合する。上記ループはHF帯でLC共振し、第1導電性部材1および第3導電性部材3の端辺に共振電流が流れる。言い換えると、HF帯で共振するように、第3導電性部材3の長さ、インダクタL1、インダクタL3、インダクタL11およびキャパシタC11のリアクタンス成分等の回路定数が定められている。したがって、HF帯(第1周波数帯)では、図2において破線の矢印で示す経路に電流が流れる。
このようにして、HF帯(第1周波数帯)では、第1導電性部材1、第3導電性部材3および第1接続部51A,51Bで形成されるループが、磁界放射に寄与する磁界型アンテナとして作用する。なお、HF帯(第1周波数帯)では、ループの長さは波長に対して十分に短いため、ループは磁界結合による通信のための微小ループアンテナとなっている。
次に、HF帯(第1周波数帯)での、給電コイル5の配置とループ(ブースターアンテナ)に対する給電コイル5の結合係数との間の関係について、図を参照して説明する。図3(A)は、ループ(ブースターアンテナ)に対する給電コイル5の結合係数を求めるためのアンテナ装置101Aの平面図であり、図3(B)はアンテナ装置101Aの正面図である。図3(B)において、各部の厚みは誇張して図示している。以降の各実施形態における正面図についても同様である。
アンテナ装置101Aの各構成はアンテナ装置101と実質的に同じである。すなわち、第1導電性部材1、第3導電性部材3および第1接続部(図示省略)がループを形成し、給電コイル5は第2導電性部材2の第2主面PS2側に実装されている。
アンテナ装置101Aでは、給電コイル5が、厚み方向(Z方向)から視て、第3導電性部材3の長手方向の中央で、且つ、そのコイル開口が間隙部9に面した第3導電性部材3の縁端部に沿う位置に配置される。また、給電コイル5の軸方向の中央は間隙部9の縦方向(Y方向)の中央付近の位置に配置されている。図3(B)に示すように、アンテナ装置101Aでは、給電コイル5が、縦方向(Y方向)から視て、第1導電性部材1よりも第2導電性部材2に近接して配置される。また、アンテナ装置101Aは、図3(A)および図3(B)に示すように、第2導電性部材2の第2主面PS2が、厚み方向(Z方向)から視て、第3導電性部材3に重なっている。
図3(A)および図3(B)において、各部の寸法は次の通りである。
X1(第1導電性部材1、第2導電性部材2および第3導電性部材3の横方向の長さ):60mm
Y1(第3導電性部材3の縦方向の長さ):10mm
Y2(間隙部9の縦方向の長さ):2mm
Y3(第1導電性部材1の縦方向の長さ):111.5mm
Y4(第2導電性部材2の縦方向の長さ):123.5mm
R1(給電コイル5の直径):φ2.8mm
L1(給電コイル5の軸方向の長さ):5.7mm
図4(A)は、アンテナ装置101Aでの、給電コイル5の配置に対するループと給電コイル5との結合係数を示す図であり、図4(B)は給電コイル5から発生する磁束の様子を示す概念図である。
図4(A)は、上記給電コイル5の縦方向(Y方向)の位置を基準(「Y Position」=0)として、給電コイル5をY方向に1mm単位で上下移動したときの、ループに対する給電コイル5の結合係数を示したものである。なお、図4(A)では、給電コイル5を縦方向(Y方向)に対して、図3(A)における上方向に移動させる場合が正(+)であり、図3(A)における下方向に移動させる場合が負(−)である。また、間隙部9の縦方向(Y方向)の中央は「Y Position」=1.85mmである。すなわち、「Y Position」=0は、間隙部9の縦方向(Y方向)の中央から下寄りの位置である。以降の各実施形態におけるループと給電コイルとの結合係数を示す図についても同様である。
図4(A)に示すように、ループと給電コイル5との結合係数は、給電コイル5の縦方向(Y方向)の位置が「Y Position」=1mmの場合に0となる。これは、ループ開口OZ1が給電コイル5のコイル軸と平行であり、且つ、ループ開口OZ1と給電コイル5がほぼ重なる場合に、ループに対して給電コイル5から発生した磁束の鎖交数が差し引きゼロとなるためである。
そして、給電コイル5のY方向の位置(「Y Position」)が正負に移動するにつれて、結合係数が高くなることがわかる。これは、給電コイル5から発生する磁束が、第1導電性部材1に沿ってループを描き、ループ開口OZ1に鎖交するためである(図4(B)における磁束φ1参照)。また、給電コイル5から発生する磁束が、第3導電性部材3に沿ってループを描き、ループ開口OZ1に鎖交するためである(図4(B)における磁束φ2参照)。
なお、図4(A)に示すように、給電コイル5のY方向の位置(「Y Position」)が正に移動するほうが、負に移動するほうに比べて結合係数が高くなる。つまり、給電コイル5は、第1導電性部材1よりも第3導電性部材3に近いほうが結合係数を高めることができるといえる。
言い換えると、給電コイル5が、厚み方向(Z方向)から視て、第1導電性部材1よりも第3導電性部材3に重なる面積が大きくなるにつれて、ループと給電コイル5との結合係数が高くなる。これは、厚み方向(Z方向)から視て、第1導電性部材1よりも面積が小さい第3導電性部材3の幅(Y方向の長さ)は、第1導電性部材1の幅(Y方向の長さ)よりも短く、第1導電性部材1に鎖交する磁束φ1よりも第3導電性部材3に鎖交する磁束φ2の方が形成されやすいためである。
そして、図4(A)に示すように、「Y Position」=6mmのときに、ループと給電コイル5との結合係数は最大となる。
なお、図4(A)において「Y Position」=5mm以上は、厚み方向(Z方向)から視て、給電コイル5全体が第3導電性部材3に重なる位置であり、ループと給電コイルとの結合係数が高い(最も高い)。そのため、ループが磁束を放射(集磁)する距離が大きくなり、通信相手側のアンテナコイルと結合し易くなる。したがって、結果的に通信特性の良いアンテナ装置を実現できる。また、図4(A)に示すように、給電コイル5が第2導電性部材2と第3導電性部材3とに挟まれた位置では、ループと給電コイル5との結合係数がY方向の位置の変化に対して安定する。したがって、この範囲において、給電コイル5の位置変化による、ループと給電コイル5との結合係数の変化は小さい。
また、アンテナ装置101Aでは、厚み方向(Z方向)において、給電コイル5に対して第1導電性部材1および第3導電性部材3が配置された側とは反対側(図3(B)における給電コイル5の下側)に、第2導電性部材2が配置されている。そのため、図4(B)において給電コイル5の下側に大きくループを描くような磁束φ3が発生した場合には、第2導電性部材2に渦電流が生じて相殺される。したがって、この構成により、ループ開口OZ1に鎖交しない磁束の形成が抑制され、ループと給電コイル5との結合に寄与しない磁束が減少する。そのため、結果的にループと給電コイル5との結合係数が向上する。
図5(A)は、ループ(ブースターアンテナ)に対する給電コイル5の結合係数を求めるためのアンテナ装置101Bの平面図であり、図5(B)はアンテナ装置101Bの正面図である。
アンテナ装置101Bの各構成も、アンテナ装置101Aと同様に、アンテナ装置101と実質的に同じである。但し、アンテナ装置101Bでは、図5(A)および図5(B)に示すように、第2導電性部材2の第2主面PS2が、厚み方向(Z方向)から視て、第3導電性部材3に重なっていない。
第1導電性部材1および第2導電性部材2は、図5(A)および図5(B)に示すように、厚み方向(Z方向)から視て、ほぼ同じ面積である。第1導電性部材1は、厚み方向(Z方向)から視て、ほぼ全体が第2導電性部材2に重なっている。
給電コイル5は、第2導電性部材2の第2主面PS2の延長となる平面上に実装されている。給電コイル5は、厚み方向(Z方向)から視て、第3導電性部材3の長手方向の中央で、且つ、そのコイル開口が間隙部9に面した第3導電性部材3の縁端部に沿う位置に配置される。また、給電コイル5の軸方向の中央は間隙部9の縦方向(Y方向)の中央付近の位置に配置されている。図5(B)に示すように、アンテナ装置101Bでは、給電コイル5が、縦方向(Y方向)から視て、第1導電性部材1よりも第2導電性部材2に近接して配置される。
図5(A)および図5(B)において、各部の寸法は次の通りである。
X1(第1導電性部材1、第2導電性部材2および第3導電性部材3の横方向の長さ):60mm
Y1(第3導電性部材3の縦方向の長さ):10mm
Y2(間隙部9の縦方向の長さ):2mm
Y3(第1導電性部材1の縦方向の長さ):111.5mm
Y4(第2導電性部材2の縦方向の長さ):111.5mm
R1(給電コイル5の直径):φ2.8mm
L1(給電コイル5の軸方向の長さ):5.7mm
図6(A)は、アンテナ装置101Bでの、給電コイル5の配置に対するループと給電コイル5との結合係数を示す図であり、図6(B)は給電コイル5から発生する磁束の様子を示す概念図である。
図6(A)に示すように、ループと給電コイル5との結合係数は、給電コイル5の縦方向(Y方向)の位置が「Y Position」=2mmの場合に最小となる。これは、ループ開口OZ1が給電コイル5のコイル軸と平行であり、且つ、ループ開口OZ1と給電コイル5がほぼ重なる場合に、ループに対して給電コイル5から発生した磁束の鎖交数が差し引きほぼゼロとなるためである。なお、発明者らは1mm単位で給電コイル5の縦方向(Y方向)の位置を移動させたため、実験結果には表れていないが、実際には「Y position」=1mmから「Y position」=2mmの間にループと給電コイル5との結合係数がゼロとなる箇所が存在すると推測される。
そして、給電コイル5のY方向の位置(「Y Position」)が正負に移動するにつれて、結合係数が高くなることがわかる。これは、給電コイル5から発生する磁束が、第1導電性部材1に沿ってループを描き、ループ開口OZ1に鎖交するためである(図6(B)における磁束φ1参照)。また、給電コイル5から発生する磁束が、第3導電性部材3に沿ってループを描き、ループ開口OZ1に鎖交するためである(図6(B)における磁束φ2参照)。
なお、図6(A)に示すように、給電コイル5のY方向の位置(「Y Position」)が正に移動するほうが、負に移動するほうに比べて結合係数が高くなる。つまり、給電コイル5は、第1導電性部材1よりも第3導電性部材3に近いほうが結合係数を高めることができるといえる。
言い換えると、給電コイル5が、厚み方向(Z方向)から視て、第1導電性部材1よりも第3導電性部材3に重なる面積が大きくなるにつれて、ループと給電コイル5との結合係数が高くなるといえる。これは、厚み方向(Z方向)から視て、第1導電性部材1よりも面積が小さい第3導電性部材3の幅(Y方向の長さ)は、第1導電性部材1の幅(Y方向の長さ)よりも短く、第1導電性部材1に鎖交する磁束φ1よりも第3導電性部材3に鎖交する磁束φ2の方が形成されやすいためである。
そして、図6(A)に示すように、「Y Position」=5mmのときに、ループと給電コイル5との結合係数は最大となる。
なお、ループと給電コイル5との結合係数が、アンテナ装置101Aに比べて全体的に低い。これは、アンテナ装置101Bにおける第2導電性部材2の面積が小さく、ループ開口OZ1に鎖交しない小さな磁束のループ(ループと給電コイル5との結合に寄与しない磁束φ3A)が形成されるためである。
但し、アンテナ装置101Bでも、厚み方向(Z方向)において、給電コイル5に対して第1導電性部材1および第3導電性部材3が配置された側とは反対側(図5(B)または図6(B)における給電コイル5の下側)に、第2導電性部材2が配置されている。そのため、大きなループを描き、ループ開口に鎖交しない磁束(図6(B)において給電コイル5の下側に大きくループを描くような磁束φ3)が発生した場合には、第2導電性部材2に渦電流が生じて相殺される。したがって、アンテナ101Bでも、ループ開口OZ1に鎖交しない磁束の形成が一部抑制され、ループと給電コイルとの結合に寄与しない磁束が減少するため、結果的にループと給電コイル5との結合係数が向上する。
図4(A)と図6(A)とを比較すると明らかなように、アンテナ装置101Bに比べて、アンテナ装置101Aの方が、ループと給電コイル5との結合係数が全体的に高い。言い換えると、厚み方向(Z方向)から視て、第2導電性部材2の第2主面PS2が第3導電性部材3に重ならない構成(アンテナ装置101B)より、第2導電性部材2の第2主面PS2が第3導電性部材3に重なる構成(アンテナ装置101A)の方が、ループと給電コイル5との結合係数が高い。これは、上述した通り、ループ開口に鎖交しない磁束(図6(B)において給電コイル5の下側に大きくループを描くような磁束φ3)が発生した場合に、第2導電性部材2に渦電流が生じて相殺されるためである。
このことから、厚み方向(Z方向)から視て、第2導電性部材2の第2主面PS2が第3導電性部材3に重なる面積が大きくなるほど、ループ開口OZ1に鎖交しない磁束の形成が大きく抑制され、結果的にループと給電コイル5との結合係数が向上することがわかる。
以上から、本実施形態によれば次のような効果を奏する。
(a)本実施形態に係るアンテナ装置101は、HF帯(第1周波数帯)において、給電コイル5がループと磁界結合または電磁界結合して、ループが給電コイル5に対するブースターアンテナとして機能する。そのため、給電コイル5のみを利用する場合に比べ、アンテナとして機能する実効的なコイル開口が大きくなり、ループが磁束を放射(集磁)する範囲および距離が大きくなることで、通信相手側のアンテナコイルと結合し易くなる。したがって、大型のアンテナコイルを用いることなく、簡素な構成により通信特性の良いアンテナ装置を実現できる。
(b)アンテナ装置101では、厚み方向(Z方向)において、給電コイル5に対して第1導電性部材1および第3導電性部材3が配置された側とは反対側(図3(B)における給電コイル5の下側)に、第2導電性部材2が配置されている。そのため、大きくループを描き、ループ開口OZ1に鎖交しない磁束(図4(B)および図5(B)における磁束φ3)が発生した場合には、第2導電性部材2に渦電流が生じて相殺される。したがって、ループ開口OZ1に鎖交しない磁束の形成が抑制され、ループと給電コイル5との結合に寄与しない磁束が減少するため、結果的にループと給電コイル5との結合係数が向上する。
(c)アンテナ装置101は、ループを構成する第1導電性部材1、第3導電性部材3および第1接続部51A,51BのいずれにもHF帯(第1周波数帯)の第1給電回路81を直接接続しないため、給電コイル5および第1給電回路81の実装位置の自由度が高く、基板6Aの主面に形成する導体パターンも簡素化できる。なお、本実施形態では、ループがグランド導体に接続されておらず、給電コイル5が第1給電回路81に平衡に接続される。したがって、本実施形態の上記ループおよびHF帯の給電回路(第1給電回路51と給電コイル5等で構成される回路)は、いずれも平衡回路とみなすことができる。但し、この構成に限定されるものではなく、上記ループおよびHF帯の給電回路のいずれか一方が不平衡回路であってもよいし、上記ループおよびHF帯の給電回路が両方とも不平衡回路であってもよい。このような構成であっても、ループと第1給電回路81は直流的に絶縁され、且つ、主に磁界を介して結合しているため、アンテナ装置101はHF帯(第1周波数帯)の磁界型アンテナとして機能する。
(d)アンテナ装置101では、第1導電性部材1に筐体の一部を利用するため、磁界型アンテナとして作用するループを容易に形成できる。したがって、ループの一部を形成する導体を別途形成する必要がないため、電子機器自体を小型にすることができ、製造が容易で低コスト化が図れる。
(e)アンテナ装置101では、第3導電性部材3に筐体の一部を利用するため、磁界型アンテナとして作用するループを容易に形成できる。したがって、ループの一部を形成する導体を別途形成する必要がないため、電子機器自体を小型にすることができ、製造が容易で低コスト化が図れる。
(f)アンテナ装置101では、ループの一部を形成する第1接続部51Aが、第3導電性部材3の第1端部E1付近に接続される。また、ループの一部を形成する第1接続部51Bが、第3導電性部材3の第2端部E2付近に接続される。そのため、第1導電性部材1、第3導電性部材3および第1接続部51A,51Bで形成される磁界型アンテナのループの実効的なコイル開口が大きくなり、磁束を放射(集磁)する範囲が大きくなることで、通信相手側のアンテナコイルと結合しやすくなる。したがって、大型のアンテナコイルを用いることなく、簡素な構成により通信特性の良いアンテナ装置を実現できる。
(g)アンテナ装置101では、第1接続部51A,51Bがリアクタンス素子で構成されるため、ループをHF帯におけるLC共振回路として構成しやすい。
(h)アンテナ装置101の給電コイル5は、厚み方向(Z方向)から視て、第1導電性部材1に重なる面積よりも第3導電性部材3に重なる面積のほうが大きい。第3導電性部材3は、厚み方向(Z方向)から視て、第1導電性部材1よりも面積が小さいため、第1導電性部材1に鎖交する磁束よりも第3導電性部材3に鎖交する磁束の方が形成されやすい。したがって、この構成により、ループの一部を形成する第3導電性部材3と給電コイル5との結合係数を高めることができ、結果的にアンテナ特性を高めることができる。
(i)アンテナ装置101の給電コイル5は、厚み方向(Z方向)から視て、全体が第3導電性部材に重なる。この構成では、ループと給電コイルとの結合係数が高い(最も高い)。そのため、ループが磁束を放射(集磁)する距離が大きくなり、通信相手側のアンテナコイルと結合し易くなる。したがって、結果的に通信特性の良いアンテナ装置を実現できる。
本実施形態では、第1導電性部材1と第3導電性部材3が同一面上(Z方向の高さが同じ)に配置されるアンテナ装置101の例を示したが、この構成に限定されるものではない。第1導電性部材1および第3導電性部材3の厚み方向(Z方向)の高さ関係は、磁界型アンテナとして作用するループを備えるという作用・効果を奏する範囲において適宜変更可能である。なお、第1導電性部材1と第3導電性部材3の厚み方向(Z方向)の高さ関係を変更することにより、アンテナの指向性が変化する。
また、本実施形態では、第1接続部51Aを第3導電性部材3の長手方向の第1端部E1付近で接続し、第1接続部51Bを第2端部E2付近で接続する例を示したが、この構成に限定されるものではない。ループが形成され、当該ループが磁界放射に寄与する磁界型アンテナとして作用し、通信相手側アンテナとの磁界結合を可能とする開口面積を確保できるのであれば、接続箇所(X方向、Y方向)の位置は適宜変更可能である。例えば、第1接続部51Aは第3導電性部材3の第1端部E1から横方向(X方向)に向かって、第3導電性部材の横方向の長さの1/3までの範囲に接続され、第1接続部51Bは第3導電性部材3の第2端部E2から横方向(X方向)に向かって、第3導電性部材の横方向の長さの1/3までの範囲に接続されることが望ましい。但し、上述の通り、接続箇所は端部付近で接続する方が、HF帯におけるループでの通信特性が良いアンテナを実現できる。
また、本実施形態では、第1導電性部材1および第3導電性部材3が、例えばスマートフォンの背面筐体の一部である例を示したが、この構成に限定されるものではない。第1導電性部材1および第3導電性部材3は、スマートフォン等の筐体内部に設けた導体を利用してもよい。
なお、本実施形態では、接続導体および接続ピンを介してリアクタンス素子を第1導電性部材1と第3導電性部材3との間に接続したが、直接リアクタンス素子により第1導電性部材1と第3導電性部材3とを接続する構成でもよい。
また、アンテナ装置101は、第1接続部51Aが一つのリアクタンス素子(インダクタL11)から構成され、第1接続部51Bが一つのリアクタンス素子(キャパシタC11)から構成される例を示したが、この構成に限定されるものではない。第1接続部は、複数のリアクタンス素子で構成されるLC回路であってもよい。その場合、複数のリアクタンス素子が直列接続されるLC直列回路であってもよく、複数のリアクタンス素子が並列接続されるLC並列回路であってもよい。また、第1接続部は、LC直列回路とLC並列回路との混成であってもよい。
さらに、本実施形態では、給電コイル5を、厚み方向(Z方向)から視て、第3導電性部材3の長手方向の中央付近に配置したが、この構成に限定されるものではない。第3導電性部材3の第1端部E1と第2端部E2のいずれかに近くなるように配置してもよい。
また、本実施形態では、厚み方向(Z方向)から視て、給電コイル5の全体が第3導電性部材3に重なるように配置したが、この構成に限定されるものではない。給電コイル5の一部のみが、厚み方向(Z方向)から視て、第3導電性部材3に重なるように配置しても良い。また、給電コイル5の全体が、厚み方向(Z方向)から視て、第3導電性部材3に重ならないように配置しても良い。但し、その場合であっても、給電コイル5が、厚み方向(Z方向)から視て、第1導電性部材1よりも第3導電性部材3に近接するように配置する必要がある。ここで、「給電コイル5が、第1導電性部材1よりも第3導電性部材3に近接するように配置する」とは、第1導電性部材1と第3導電性部材3とがともに縦横方向(X方向およびY方向)に形成される面状部を有し、厚み方向(Z方向)から視て、給電コイル5が第3導電性部材3に重ならない場合には、第3導電性部材3に近い給電コイル5の外縁と第3導電性部材3の外縁との最短距離が、第1導電性部材1に近い給電コイル5の外縁と第1導電性部材1の外縁との最短距離よりも短いことを言う。第1導電性部材1と第3導電性部材3とがともに縦横方向(X方向およびY方向)に形成される面状部を有し、厚み方向(Z方向)から視て、給電コイル5が第3導電性部材3に重なる場合には、給電コイル5が第1導電性部材1に重ならないことを言う。または、厚み方向(Z方向)から視て、給電コイル5が第1導電性部材1に重なる面積よりも第3導電性部材3に重なる面積のほうが大きいことを言う。第1導電性部材1および第3導電性部材3のどちらかが縦横方向(X方向およびY方向)に形成される面状部を有していない場合には、第3導電性部材3に近い給電コイル5の外縁と第3導電性部材3の面状部(または外縁)との最短距離が、第1導電性部材1に近い給電コイル5の外縁と第1導電性部材1の面状部(または外縁)との最短距離よりも短いことを言う。
《第2の実施形態》
図7(A)は第2の実施形態に係るアンテナ装置102の平面図であり、図7(B)は、図7(A)におけるC−C断面図であり、図7(C)は、図7(A)におけるD−D断面図である。図8はアンテナ装置102の、集中定数素子による等価回路図である。
第2の実施形態に係るアンテナ装置102は、第1導電性部材の代わりに基板6Aのグランド導体である第2導電性部材2をループの一部として利用している点でアンテナ装置101と異なる。その他の構成は、第1の実施形態に係るアンテナ装置101と同じである。
アンテナ装置102の基板6Aは、内部に層間接続導体63A,64Aをさらに備える。層間接続導体63A,64Aは基板6Aの厚み方向(Z方向)に延びる導体であり、例えばビア導体である。
本実施形態における第2接続部52Aは、インダクタL11、接続導体71A,72A、接続ピン7および層間接続導体63Aを有し、第1導電性部材1と第3導電性部材3との間に接続される。具体的には、インダクタL11の一端が、接続導体71Aおよび接続ピン7を介して第3導電性部材3の第1端部E1付近に接続され、インダクタL11の他端が、接続導体72Aおよび層間接続導体63Aを介して第2導電性部材2に接続される。
本実施形態における第2接続部52Bは、キャパシタC11、接続導体73A,74A接続ピン7および層間接続導体64Aを有し、第1導電性部材1と第3導電性部材3との間に接続される。具体的には、キャパシタC11の一端が、接続導体73Aおよび接続ピン7を介して第3導電性部材3の第2端部E2付近に接続され、キャパシタC11の他端が、接続導体74Aおよび層間接続導体64Aを介して第2導電性部材2に接続される。
アンテナ装置102では、図7に示すように、第2導電性部材2、第3導電性部材3および第2接続部52A,52Bがループを形成する。
給電コイル5は、第2導電性部材2、第3導電性部材3および第2接続部52A,52Bで構成されるループと、磁界結合または電磁界結合(磁界結合および電界結合)する。
具体的には、本実施形態における給電コイル5は、厚み方向(Z方向)から視て、第3導電性部材3の長手方向の中央付近で、且つ、そのコイル開口が間隙部9に面した第3導電性部材3の縁端部に沿う位置に配置される。すなわち、給電コイル5は、給電コイル5を通る磁束がループと鎖交する向きに配置されている。そのため、給電コイル5は、ループ(特に第3導電性部材3)と主に磁界結合する。
また、給電コイル5は、図7(B)に示すように、厚み方向(Z方向)から視て、全体が第3導電性部材に重なり、且つ、第2導電性部材2と第3導電性部材3との間に配置される。すなわち、給電コイル5は、厚み方向(Z方向)から視て、第1導電性部材1よりも第3導電性部材3に近接するように配置される。そのため、給電コイル5は、第3導電性部材と磁界結合以外に電界結合を含めた電磁界結合する。
図8に示すように、HF帯(第1周波数帯)では、上記ループが、インダクタL3、インダクタL11およびキャパシタC11からなるLC共振回路を構成する。上述の通り、給電コイル5はループと磁界結合または電磁界結合する。上記ループはHF帯でLC共振し、第1導電性部材1および第3導電性部材3の端辺に共振電流が流れる。したがって、HF帯(第1周波数帯)では、図8において破線の矢印で示す経路に電流が流れる。
このようにして、HF帯(第1周波数帯)では、第2導電性部材2、第3導電性部材3および第2接続部52A,52Bで形成されるループが、磁界放射に寄与する磁界型アンテナとして作用する。
次に、HF帯(第1周波数帯)での、給電コイル5の配置とループ(ブースターアンテナ)に対する給電コイル5の結合係数との間の関係について、図を参照して説明する。図9(A)は、ループ(ブースターアンテナ)に対する給電コイル5の結合係数を求めるためのアンテナ装置102Aの平面図であり、図9(B)はアンテナ装置102Aの正面図である。
アンテナ装置102Aの各構成はアンテナ装置102と実質的に同じである。すなわち、第2導電性部材2、第3導電性部材3および第1接続部(図示省略)がループを形成し、給電コイル5は第2導電性部材2の第2主面PS2側に実装されている。
アンテナ装置102Aでは、給電コイル5が、第1導電性部材1の第1主面PS1を含む平面(XY平面)と、第2導電性部材2の第2主面PS2を含む平面(XY平面)との間に配置される。また、給電コイル5は、厚み方向(Z方向)から視て、第3導電性部材3の長手方向の中央で、且つ、そのコイル開口が間隙部9に面した第3導電性部材3の縁端部に沿う位置に配置される。また、給電コイル5の軸方向の中央は間隙部9の縦方向(Y方向)の中央付近の位置に配置されている。図9(B)に示すように、アンテナ装置102Aでは、給電コイル5が、縦方向(Y方向)から視て、第1導電性部材1よりも第2導電性部材2に近接するように配置される。また、アンテナ装置102Aは、図9(A)および図9(B)に示すように、第2導電性部材2の第2主面PS2が、厚み方向(Z方向)から視て、第3導電性部材3に重なっている。
図9(A)および図9(B)において、各部の寸法は第1の実施形態に係るアンテナ装置101Aと同じである。図10(A)は、アンテナ装置102Aでの、給電コイル5の配置に対するループと給電コイル5との結合係数を示す図であり、図10(B)は給電コイル5から発生する磁束φ2の様子を示す概念図であり、図10(C)は給電コイル5から発生する磁束φ1の様子を示す概念図である。
図10(A)に示すように、給電コイル5のY方向の位置(「Y Position」)が正に移動するにつれて、結合係数が高くなることがわかる。つまり、給電コイル5は、第1導電性部材1よりも第3導電性部材3に近いほうが結合係数を高めることができることがわかる。言い換えると、給電コイル5が、厚み方向(Z方向)から視て、第1導電性部材1よりも第3導電性部材3に重なる面積が大きくなるにつれて、ループと給電コイル5との結合係数が高くなる。これは、厚み方向(Z方向)から視て、第1導電性部材1よりも面積が小さい第3導電性部材3の幅(Y方向の長さ)が、第1導電性部材1の幅(Y方向の長さ)よりも短く、第1導電性部材1に鎖交する磁束φ1よりも第3導電性部材3に鎖交する磁束φ2のほうが形成されやすいためである。
図4(A)と図10(A)とを比較すると明らかなように、アンテナ装置101Aに比べて、アンテナ装置102Aのほうが、ループと給電コイル5との結合係数が全体的に高い。これは、給電コイル5の巻回軸方向(Y方向)から視て、アンテナ装置101Aのループ開口OZ1に比べて、アンテナ装置102Aのループ開口OZ2のほうが、給電コイル5の開口と重なる部分を有し、近接しているためである。
なお、図10(A)に示すように、「Y Position」=5mmのときに、ループと給電コイル5との結合係数は最大となる。
なお、図10(A)において「Y Position」=5mm以上は、厚み方向(Z方向)から視て、給電コイル5全体が第3導電性部材3に重なる位置であり、ループと給電コイルとの結合係数が高い(最も高い)。そのため、ループが磁束を放射(集磁)する距離が大きくなり、通信相手側のアンテナコイルと結合し易くなる。したがって、結果的に通信特性の良いアンテナ装置を実現できる。また、図10(A)に示すように、給電コイル5が第2導電性部材2と第3導電性部材3とに挟まれた位置では、ループと給電コイル5との結合係数がY方向の位置の変化に対して安定する。したがって、この範囲において、給電コイル5の位置変化による、ループと給電コイル5との結合係数の変化は小さい。
また、アンテナ装置102Aでは、厚み方向(Z方向)において、給電コイル5に対して第1導電性部材1および第3導電性部材3が配置された側とは反対側(図10(B)における給電コイル5の下側)に、第2導電性部材2が配置されている。そのため、図10(B)において給電コイル5の下側に大きくループを描くような磁束(図4(B)における磁束φ3参照)が発生した場合には、第2導電性部材2に渦電流が生じて相殺される。したがって、この構成により、ループ開口OZ2に鎖交しない磁束の形成が抑制され、ループと給電コイル5との結合に寄与しない磁束が減少する。そのため、結果的にループと給電コイル5との結合係数が向上する。
一方、給電コイル5のY方向の位置(「Y Position」)が負に移動するにつれて、結合係数は低くなることがわかる。これは、給電コイル5から発生する磁束が、間隙部9を通り、第1導電性部材1に沿ってループを描くためである(図10(C)における磁束φ1)。この磁束φ1は、図10(C)に示すように、ループ開口OZ2に鎖交しないため、ループと給電コイル5との結合に寄与しない。そのため、ループと給電コイル5との結合係数は低くなる。
図11(A)は、ループ(ブースターアンテナ)に対する給電コイル5の結合係数を求めるためのアンテナ装置102Bの平面図であり、図11(B)はアンテナ装置102Bの正面図である。
アンテナ装置102Bの各構成も、アンテナ装置102Aと同様に、アンテナ装置102と実質的に同じである。但し、アンテナ装置102Bでは、図11(A)および図11(B)に示すように、第2導電性部材2の第2主面PS2が、厚み方向(Z方向)から視て、第3導電性部材3に重なっていない。
第1導電性部材1および第2導電性部材2は、図11(A)および図11(B)に示すように、厚み方向(Z方向)から視て、ほぼ同じ面積である。第1導電性部材1は、厚み方向(Z方向)から視て、ほぼ全体が第2導電性部材2に重なっている。
給電コイル5は、第2導電性部材2の第2主面PS2の延長となる平面上に実装されている。給電コイル5は、厚み方向(Z方向)から視て、第3導電性部材3の長手方向の中央で、且つ、そのコイル開口が間隙部9に面した第3導電性部材3の縁端部に沿う位置に配置される。また、給電コイル5の軸方向の中央は間隙部9の縦方向(Y方向)の中央付近の位置に配置されている。図11(B)に示すように、アンテナ装置102Bでは、給電コイル5が、縦方向(Y方向)から視て、第1導電性部材1よりも第2導電性部材2に近接するように配置される。
図11(A)および図11(B)において、各部の寸法は第1の実施形態に係るアンテナ装置101Bと同じである。
図12(A)は、アンテナ装置102Bでの、給電コイル5の配置に対するループと給電コイル5との結合係数を示す図であり、図12(B)は給電コイル5から発生する磁束φ2,φ3Aの様子を示す概念図であり、図12(C)は給電コイル5から発生する磁束φ1,φ4の様子を示す概念図である。
図12(A)に示すように、給電コイル5のY方向の位置(「Y Position」)が正に移動するにつれて、結合係数が高くなることがわかる。つまり、アンテナ装置102Bにおいても、給電コイル5は、第1導電性部材1よりも第3導電性部材3に近いほうが結合係数を高めることができる。言い換えると、給電コイル5が、厚み方向(Z方向)から視て、第1導電性部材1よりも第3導電性部材3に重なる面積が大きくなるにつれて、ループと給電コイル5との結合係数が高くなる。これは、厚み方向(Z方向)から視て、第1導電性部材1よりも面積が小さい第3導電性部材3の幅(Y方向の長さ)が、第1導電性部材1の幅(Y方向の長さ)よりも短く、第1導電性部材1に鎖交する磁束φ1よりも第3導電性部材3に鎖交する磁束φ2のほうが形成されやすいためである。
図6(A)と図12(A)とを比較すると明らかなように、アンテナ装置101Bに比べて、アンテナ装置102Bのほうが、ループと給電コイル5との結合係数が全体的に高い。これは、給電コイル5の巻回軸方向(Y方向)から視て、アンテナ装置101Bのループ開口OZ1に比べて、アンテナ装置102Bのループ開口OZ2のほうが、給電コイル5の開口と重なる部分を有し、近接しているためである。
そして、「Y Position」=3mmのときに、ループと給電コイル5との結合係数は最大となる。
一方、図12(A)に示すように、給電コイル5のY方向の位置(「Y Position」)が負に移動するにつれて、ループと給電コイル5との結合係数は低くなることがわかる。これは、給電コイル5から発生する磁束が、間隙部9を通り、第1導電性部材1に沿ってループを描くためである(図12(C)における磁束φ1)。この磁束φ1は、図12(C)に示すように、ループ開口OZ2に鎖交しないため、ループと給電コイル5との結合に寄与しない。そのため、ループと給電コイル5との結合係数は低い。但し、給電コイル5から発生する磁束が、第2導電性部材2に沿ってループを描き、ループ開口OZ2に鎖交するため、結合係数はゼロではない。
なお、ループと給電コイル5との結合係数が、アンテナ装置102Aに比べて全体的に低い。これは、アンテナ装置102Bにおける第2導電性部材2の第2主面PS2の面積が小さく、ループ開口OZ2に鎖交しない小さな磁束のループ(ループと給電コイル5との結合に寄与しない磁束φ3A)が形成されるためである。
但し、アンテナ装置102Bでも、厚み方向(Z方向)において、給電コイル5に対して第1導電性部材1および第3導電性部材3が配置された側とは反対側(図11(B)および図12における給電コイル5の下側)に、第2導電性部材2が配置されている。そのため、大きなループを描き、ループ開口に鎖交しない磁束(図12(B)において給電コイル5の下側に大きくループを描くような磁束φ3)が発生した場合には、第2導電性部材2に渦電流が生じて相殺される。したがって、ループ開口OZ2に鎖交しない磁束の形成が一部抑制され、ループと給電コイルとの結合に寄与しない磁束が減少するため、結果的にループと給電コイル5との結合係数が向上する。
図10(A)と図12(A)とを比較すると明らかなように、アンテナ装置102Bに比べて、アンテナ装置102Aの方が、ループと給電コイル5との結合係数が全体的に高い。言い換えると、厚み方向(Z方向)から視て、第2導電性部材2の第2主面PS2が第3導電性部材3に重ならない構成(アンテナ装置102B)より、第2導電性部材2の第2主面PS2が第3導電性部材3に重なる構成(アンテナ装置102A)の方が、ループと給電コイル5との結合係数が高い。これは、上述した通り、ループ開口に鎖交しない磁束(図12(B)において給電コイル5の下側に大きくループを描くような磁束φ3)が発生した場合に、第2導電性部材2に渦電流が生じて相殺されるためである。
このことから、厚み方向(Z方向)から視て、第2導電性部材2の第2主面PS2が第3導電性部材3に重なる面積が大きくなるほど、ループ開口OZ2に鎖交しない磁束の形成が大きく抑制され、結果的にループと給電コイル5との結合係数が向上することがわかる。
このような構成であっても、アンテナ装置102の基本的な構成は第1の実施形態に係るアンテナ装置101と同じであり、アンテナ装置101と同様の作用・効果を奏する。
また、本実施形態によれば、さらに次のような効果を奏する。
(j)アンテナ装置102では、第2導電性部材2に基板6A等のグランド導体を利用するため、磁界型アンテナとして作用するループを容易に形成できる。したがって、ループの一部を構成する導体を別途形成する必要がないため、電子機器自体を小型にすることができ、製造が容易で低コスト化が図れる。
(k)アンテナ装置102では、ループの一部を形成する第2接続部52Aが、第3導電性部材3の第1端部E1付近に接続される。また、ループの一部を形成する第2接続部52Bが、第3導電性部材3の第2端部E2付近に接続される。そのため、第2導電性部材2、第3導電性部材3および第2接続部52A,52Bで形成される磁界型アンテナのループの実効的なコイル開口が大きくなり、磁束を放射(集磁)する範囲が大きくなることで、通信相手側のアンテナコイルと結合しやすくなる。したがって、大型のアンテナコイルを用いることなく、簡素な構成により通信特性の良いアンテナ装置を実現できる。
(l)アンテナ装置102では、第2接続部52A,52Bがリアクタンス素子で構成されるため、ループをHF帯におけるLC共振回路として構成しやすい。
なお、本実施形態では、接続導体および接続ピンを介してリアクタンス素子を第2導電性部材2と第3導電性部材3との間に接続したが、直接リアクタンス素子を第2導電性部材2と第3導電性部材3との間に接続する構成でもよい。
また、アンテナ装置102は、第2接続部52Aが一つのリアクタンス素子(インダクタL11)から構成され、第2接続部51Bが一つのリアクタンス素子(キャパシタC11)から構成される例を示したが、この構成に限定されるものではない。第2接続部は、複数のリアクタンス素子で構成されるLC回路であってもよい。その場合、複数のリアクタンス素子が直列接続されるLC直列回路であってもよく、複数のリアクタンス素子が並列接続されるLC並列回路であってもよい。また、第2接続部は、LC直列回路とLC並列回路との混成であってもよい。
《第3の実施形態》
図13(A)は第3の実施形態に係るアンテナ装置103の平面図であり、図13(B)は、図13(A)におけるE−E断面図であり、図13(C)は、図13(A)におけるF−F断面図である。図14は、アンテナ装置103の、集中定数素子による等価回路である。
第3の実施形態に係るアンテナ装置103は、第2給電回路82およびリアクタンス素子61,62等をさらに備える点でアンテナ装置101と異なる。また、アンテナ装置103は、第1接続部51Bに代わって、LC直列共振回路を構成する第1接続部51Cを備える点でアンテナ装置101と異なる。その他の構成は、第1の実施形態に係るアンテナ装置101と実質的に同じである。
第2給電回路82およびリアクタンス素子61,62は、基板6Aの主面に実装される。
第2給電回路82は、UHF帯またはSHF帯(第2周波数帯)用ICである。第2給電回路82の入出力部は、基板6Aの主面に形成された接続導体、接続ピン7およびリアクタンス素子61を介して、第3導電性部材3の長手方向の第2端部E2付近に接続される。リアクタンス素子61は例えばチップキャパシタ等の電子部品であり、第2給電回路82は例えば2.4GHz帯の無線LANの通信システムの給電回路である。
リアクタンス素子62を含めた第3導電性部材3とグランドとの接続部は、他の通信システムに対して第3導電性部材3を含むアンテナと第1給電回路81とのマッチング用に設けるスタブであり、リアクタンス素子62が基板6Aの主面に形成された接続導体および接続ピン7を介して、第3導電性部材3の第2端部E2付近に接続される。リアクタンス素子62は例えばチップキャパシタ等の電子部品である。なお、リアクタンス素子62は必要に応じて複数備える構成であってもよい。但し、リアクタンス素子62は必須の構成ではなく、スタブを設けない構成でもよい。
図15はUHF帯またはSHF帯でのアンテナ装置103の等価回路図である。図15において、リアクタンス素子61,62をキャパシタC61,C62で表している。
UHF帯またはSHF帯(第2周波数帯)では、キャパシタC62は低インピーダンスであり、等価的にショート状態となる。そのため、図15において接地端SPで示すとおり、第3導電性部材3は所定の位置で接地される。インダクタL11は、UHF帯またはSHF帯(第1周波数帯)では高インピーダンスであり、等価的にオープン状態となる。そのため、図15において開放端OPで示すとおり、第3導電性部材3の一端は開放される。
第2給電回路82は第3導電性部材3の接続点を給電点として電圧給電する。UHF帯またはSHF帯(第2周波数帯)では、第3導電性部材3の開放端OPが電流強度ゼロ、接地端SPが電圧強度ゼロとなるよう共振する。言い換えると、UHF帯またはSHF帯で共振するように、第3導電性部材3の長さ等が定められている。ただし、この第3導電性部材3は700MHz〜2.4GHzの周波数帯域のうちローバンドでは基本モードで共振し、ハイバンドでは高次モードで共振する。したがって、UHF帯またはSHF帯(第2周波数帯)では、図14において実線の矢印で示す経路に電流が流れる。
このようにして、UHF帯またはSHF帯(第2周波数帯)では、第3導電性部材3が電磁波放射に寄与する定在波型の逆F型アンテナ(放射素子)として作用し、共振して電流強度および電圧強度の定在波が生じる。なお、ここでは逆F型アンテナを例示しているが、モノポールアンテナ、1波長ループアンテナ、逆L型アンテナ、板状逆Fアンテナ(PIFA)等のパッチアンテナ、スロットアンテナ、ノッチアンテナ等の、放射素子(第3導電性部材3)上で共振して電流強度および電圧強度の定在波が生じる他の定在波型アンテナでも同様に適用できる。
なお、リアクタンス素子61,62は、HF帯(第1周波数帯)では高インピーダンスとなって、第2給電回路82が等価的に接続されていない状態となるので、第2給電回路82はHF帯の通信に影響を与えない。また、インダクタL11は、UHF帯またはSHF帯(第2周波数帯)では、高インピーダンスとなって、インダクタL11が等価的に接続されていない状態となる。したがって、インダクタL11を含むループはオープン状態となるため、第1給電回路81にUHF帯またはSHF帯の通信信号が流れることがなく、第1給電回路81はUHF帯またはSHF帯の通信に影響を与えない。
第1接続部51Cは、インダクタL12、キャパシタC12、接続導体73A,74A75Aおよび接続ピン7を有し、第1導電性部材1と第3導電性部材3との間に接続される。具体的には、インダクタL12の一端が、接続導体73Aおよび接続ピン7を介して第3導電性部材3の第2端部E2付近に接続され、インダクタL12の他端が、接続導体74Aを介してキャパシタC12の一端に接続される。キャパシタC12の他端は、接続導体75Aおよび接続ピン7を介して第1導電性部材1に接続される。インダクタL12およびキャパシタC12は基板6Aの主面に実装される。接続導体75Aは、基板6Aの主面に形成された直線状(I字状)の導体パターンである。
このように、第1接続部51CはインダクタL12およびキャパシタC12が直列に接続されており、LC直列共振回路を構成する。上記LC直列共振回路の共振周波数は、HF帯(第1周波数帯)ではループの共振のための容量性、または、共振点または共振点付近の低インピーダダンスとなるように設定されている。UHF帯またはSHF帯(第2周波数帯)では誘導性の高インピーダンスとなるように設定されている。これにより、UHF帯またはSHF帯(第2周波数帯)では、LC直列共振回路で電流が遮断されるため、第1導電性部材1には電流が流れず、第3導電性部材3に電流が流れて第3導電性部材3上に定在波が生じる。そして、HF帯(第2周波数帯)では、LC直列共振回路に電流が流れ、第1導電性部材1及び第3導電性部材がループを構成する導電性部材として機能する。
この構成により、磁界型アンテナのループがHF帯(第1周波数帯)のアンテナとして作用し、定在波型アンテナの放射素子がUHF帯またはSHF帯(第2周波数帯)のアンテナとして作用する。したがって、磁界型アンテナのループと定在波型アンテナの放射素子とを備え、周波数帯の異なる複数のシステムで兼用できるアンテナ装置を実現できる。また、周波数帯の異なる複数のシステムで兼用できるアンテナ装置103を備えた電子機器を実現できる。
なお、上述の実施形態のように、第1接続部が一つのキャパシタ(リアクタンス素子)で構成される場合には、UHF帯またはSHF帯(第2周波数帯)において、第1接続部が低インピーダンスとなり、第1接続部を介して第1導電性部材1に電流が流れる。そのため、UHF帯またはSHF帯(第2周波数帯)において、第1導電性部材1が不要な放射素子として機能する虞がある。一方、本実施形態では、第1接続部51CがLC直列共振回路を構成するため、UHF帯またはSHF帯(第2周波数帯)において、第1接続部51Cが高インピーダンスとなり、第1導電性部材1に流れる電流を遮断する。このように、本実施形態によれば、第1接続部が一つのキャパシタ(リアクタンス素子)で構成される場合に比べて、UHF帯またはSHF帯(第2周波数帯)で、ループから第3導電性部材3を確実に切り離すことができる。したがって、第1接続部51CをLC直列共振回路で構成することにより、第3導電性部材3を定在波型アンテナの放射素子として作用させるための設計(放射素子の幅や長さ等)が容易になる。
なお、本実施形態では、第1接続部51Aが第3導電性部材3の長手方向の第1端部E1付近に接続され、第1接続部51Cが第3導電性部材3の長手方向の第2端部E2付近に接続される例を示したが、この構成に限定されるものではない。第1接続部51Aが第3導電性部材3の長手方向の第2端部E2付近に接続され、第1接続部51Cが第3導電性部材3の長手方向の第1端部E1付近に接続される構成であってもよい。つまり、ループを構成できるのであれば、第3導電性部材3の長手方向の第1端部E1付近に接続される第1接続部(導体、回路またはリアクタンス素子)と、第2端部E2付近に接続される第1接続部(導体、回路またはリアクタンス素子)との配置を入れ替えることも可能である。但し、第3導電性部材3の長手方向の第1端部E1付近に接続される第1接続部と、第2端部E2付近に接続される第1接続部との配置を変更した場合には、定在波型アンテナのアンテナ特性は変化する。
《第4の実施形態》
図16(A)は第4の実施形態に係るアンテナ装置104の平面図であり、図16(B)は、図16(A)におけるG−G断面図である。
第4の実施形態に係るアンテナ装置104は、第3の実施形態に係るアンテナ装置103に対して、第3導電性部材3B、第1接続部51D,51E、給電コイル5B、第1給電回路81B、第2給電回路82B、リアクタンス素子61B,62BおよびキャパシタC41B,C42B,C43B,C44Bをさらに備える点で異なる。その他の構成は、第3の実施形態に係るアンテナ装置103と実質的に同じである。言い換えると、基板6Aの短手方向(図16(A)におけるY方向)に上下対称にしたアンテナ装置103を、二つ備えた構成であるといえる。
第1接続部51D,51E、第1給電回路81B、第2給電回路82B、リアクタンス素子61B,62BおよびキャパシタC41B〜C44Bは、基板6Bの主面に実装される。
第3導電性部材3Bは、平面形状が矩形の平板である。第3導電性部材3Bは、長手方向が横方向(図16(A)におけるX方向)に一致しており、第1端部E1Bおよび第2端部E2Bを有する。図16(A)に示すように、第3導電性部材3Bは、厚み方向(Z方向)から視て、第1導電性部材1よりも面積が小さい。
本実施形態における第1導電性部材1および第3導電性部材3Bは、間隙部9Bを挟んで縦方向(Y方向)に並んで配置され、且つ、同一平面上に配置されている(図16(B)参照)。したがって、図16(A)に示すように、第1導電性部材1および第3導電性部材3Bは、厚み方向(Z方向)から視て、互いに重なっていない。
基板6Bは、内部に平板状の第2導電性部材2Bを備える。第2導電性部材2Bは、基板6Bの主面のほぼ全体に形成されるグランド導体であり、第2主面PS2B(図16(B)における第2導電性部材2Bの上側の面)を有する。図16(B)に示すように、第2主面PS2Bの少なくとも一部は、第1導電性部材1の第1主面PS1に対向して配置されている。また、第2主面PS2Bの少なくとも一部は、厚み方向(Z方向)から視て、第3導電性部材3Bに重なっている。
第1接続部51Dは、インダクタL11B、接続導体71B,72Bおよび接続ピン7を有し、第1導電性部材1と第3導電性部材3Bとの間に接続される。具体的には、インダクタL11Bの一端が、接続導体71Bおよび接続ピン7を介して第3導電性部材3Bの第1端部E1B付近に接続され、インダクタL11Bの他端が、接続導体72Bおよび接続ピン7を介して第1導電性部材1に接続される。インダクタL11Bは基板6Aの主面に実装される。接続導体71B,72Bは、基板6Bの主面に形成された直線状(I字状)の導体パターンである。
第1接続部51Eは、インダクタL12B、キャパシタC12B、接続導体73B,74B,75Bおよび接続ピン7を有し、第1導電性部材1と第3導電性部材3Bとの間に接続される。具体的には、インダクタL12Bの一端が、接続導体73Bおよび接続ピン7を介して第3導電性部材3Bの第2端部E2B付近に接続され、インダクタL12Bの他端が、接続導体74Bを介してキャパシタC12Bの一端に接続される。キャパシタC12Bの他端は、接続導体75Bおよび接続ピン7を介して第1導電性部材1に接続される。インダクタL12BおよびキャパシタC12Bは基板6Bの主面に実装される。接続導体73B,74B,75Bは、基板6Bの主面に形成された直線状(I字状)の導体パターンである。
このように、第1接続部51Eは、インダクタL12BおよびキャパシタC12Bが直列に接続されており、LC直列共振回路を構成する。上記LC直列共振回路の共振周波数は、HF帯(第1周波数帯)ではループの共振のための容量性、または、共振点または共振点付近の低インピーダダンスとなるように設定されている。UHF帯またはSHF帯(第2周波数帯)では誘導性の高インピーダンスとなるように設定されている。これにより、UHF帯またはSHF帯(第2周波数帯)では、LC直列共振回路で電流が遮断されるため、第1導電性部材1には電流が流れず、第3導電性部材3に電流が流れて第3導電性部材3上に定在波が生じる。そして、HF帯(第2周波数帯)では、LC直列共振回路に電流が流れ、第1導電性部材1及び第3導電性部材がループを構成する導電性部材として機能する。
図16(A)に示すように、第1導電性部材1、第3導電性部材3Bおよび第1接続部51D,51Eはもう一つのループを形成する。
第1給電回路81Bは、平衡入出力型のHF帯(第1周波数帯)ICである。第1給電回路81Bの入出力部には、キャパシタC41B〜C44Bを介して給電コイル5Bが接続されている。給電コイル5BにはキャパシタC41B,C42Bの直列回路が並列に接続されていて、LC共振回路が構成されている。第1給電回路81BはキャパシタC43B,C44Bを介してこのLC共振回路にHF帯の通信信号を給電する。第1給電回路81Bは、例えば13.56MHzのRFID用のRFIC素子であり、給電コイル5Bは例えば磁性体フェライトコアにコイル状導体が巻回された積層型のフェライトチップアンテナである。
上記給電コイル5Bは、第1導電性部材1、第3導電性部材3Bおよび第1接続部51D,51Eで構成されるループと、磁界結合または電磁界結合(磁界結合および電界結合)する。
具体的には、給電コイル5Bは、第1導電性部材1の第1主面PS1を含む平面(XY平面)と、第2導電性部材2の第2主面PS2を含む平面(XY平面)との間に配置される。また、給電コイル5は、厚み方向(Z方向)から視て、第3導電性部材3Bの長手方向の中央付近で、且つ、そのコイル開口が間隙部9Bに面した第3導電性部材3Bの縁端部に沿う位置に配置される。すなわち、給電コイル5Bは、給電コイル5Bを通る磁束がループと鎖交する向きに配置されている。そのため、給電コイル5Bは、ループ(特に第3導電性部材3B)と主に磁界結合する。
また、給電コイル5Bは、図16(B)に示すように、厚み方向(Z方向)から視て、全体が第3導電性部材3Bに重なり、且つ、第2導電性部材2Bと第3導電性部材3Bとの間に配置される。すなわち、給電コイル5Bは、厚み方向(Z方向)から視て、第1導電性部材1よりも第3導電性部材3Bに近接するように配置される。そのため、給電コイル5Bは、第3導電性部材と磁界結合以外に電界結合を含めた電磁界結合する。
第2給電回路82Bは、UHF帯またはSHF帯(第2周波数帯)用ICである。第2給電回路82Bの入出力部は、基板6Bの主面に形成された接続導体、接続ピン7およびリアクタンス素子61Bを介して、第3導電性部材3Bの長手方向の第2端部E2B付近に接続される。第2給電回路82Bは例えば1.5GHz帯のGPS用の通信システムの給電回路である。
リアクタンス素子62Bは、他の通信システムに対して第2給電回路82Bのマッチング用に設ける素子であり、基板6Bの主面に形成された接続導体および接続ピン7を介して、第3導電性部材3Bの長手方向の第2端部E2B付近に接続される。
このようにして、UHF帯またはSHF帯(第2周波数帯)では、第3導電性部材3Bが電磁波放射に寄与する定在波型の逆F型アンテナとして作用し、共振して電流強度および電圧強度の定在波が生じる。
この構成により、周波数帯の異なる複数のシステムで兼用することのできるアンテナ装置を縦方向(図16(A)におけるY方向)に二つ備えた通信端末装置を実現できる。
なお、本実施形態では、第1導電性部材1と第3導電性部材3,3Bとが同一面上(Z方向の高さが同じ)に配置される例を示したが、この構成に限定されるものではない。第1導電性部材1および第3導電性部材3,3BのZ方向の高さ関係は、定在波型アンテナとして作用する第3導電性部材3,3Bと、磁界型アンテナとして作用するループとを備えるという作用・効果を奏する範囲において適宜変更可能である。なお、第1導電性部材1と第3導電性部材3,3BのZ方向の高さ関係を変更することにより、アンテナの指向性を変化させることができる。
なお、本実施形態に係るアンテナ装置104では、図16(A)に示すように、厚み方向(Z方向)から視て、第3導電性部材3、第1導電性部材1および第3導電性部材3Bが縦方向(Y方向)に並んで配置される例を示したが、この構成に限定されるものではない。第3導電性部材3、第1導電性部材1および第3導電性部材3Bの配置については、適宜変更可能である。
また、本実施形態に係るアンテナ装置104では、2つの定在波型アンテナの放射素子(第3導電性部材3,3B)を備える例について示したが、この構成に限定されるものではない。放射素子(第3導電性部材)の数量等は適宜変更可能である。
なお、本実施形態では、第1導電性部材1および第3導電性部材3,3B等が複数のループを形成する例を示したが、この構成に限定されるものではない。第2導電性部材および第3導電性部材3,3B等が複数のループを形成する構成であってもよい。
《第5の実施形態》
図17(A)は第5の実施形態に係るアンテナ装置105の平面図であり、図17(B)は、図17(A)におけるH−H断面図である。
第5の実施形態に係るアンテナ装置105は、第4の実施形態に係るアンテナ装置104に対して、基板6A,6Bの代わりに基板6を備え、バッテリーパック8の代わりにバッテリーパック8Aを備え、第1接続部51A,51Dの代わりに第3接続部53Aを備える点で異なる。さらに、アンテナ装置105は、アンテナ装置104に対して、給電コイル5B、第1給電回路81BおよびキャパシタC41B,C42B,C43B,C44Bを備えていない点で異なる。その他の構成は、第4の実施形態に係るアンテナ装置104と実質的に同じである。
本実施形態では、給電コイル5、第1接続部51C,51E、第3接続部51A、第1給電回路81,81B、第2給電回路82,82B、リアクタンス素子61,62,61B,62BおよびキャパシタC41〜C44,C41B〜C44Bが、基板6の主面に実装される。
基板6は、平面形状がコの字形(C字形)である絶縁体の平板である。基板6の開口部には、バッテリーパック8Aが配置される。基板6およびバッテリーパック8Aは、同一平面上に配置される(図17(B)参照)。
基板6は、内部に平板状の第2導電性部材2を備える。第2導電性部材2は、基板6の主面のほぼ全体に形成されるグランド導体であり、第2主面PS2(図17(B)における第2導電性部材2の上側の面)を有する。
第3接続部53Aは、インダクタL11,L11B、接続導体71A,71B,76および接続ピン7を有し、第3導電性部材3と第3導電性部材3Bとの間に接続される。具体的には、インダクタL11の一端が、接続導体71Aおよび接続ピン7を介して第3導電性部材3の第1端部E1付近に接続され、インダクタL11の他端が、接続導体76を介してインダクタL11Bの一端に接続される。インダクタL11Bの他端は、接続導体71Bおよび接続ピン7を介して第3導電性部材3Bの第1端部E1B付近に接続される。インダクタL11,L11Bは、例えばチップインダクタ等のインダクタ部品であり、基板6の主面に実装される。接続導体71A,71B,76は、基板6の主面に形成された直線状(I字状)の導体パターンである。このように、第3接続部53Aは、インダクタL11およびインダクタL11Bが直列に接続されている。
本実施形態のアンテナ装置105では、図17(A)に示すように、第1導電性部材1、第3導電性部材3,3B、第1接続部51C,51Eおよび第3接続部53Aはループを形成する。
給電コイル5は、第1導電性部材1、第3導電性部材3,3B、第1接続部51C,51Eおよび第3接続部53Aで形成される大きなループと、磁界結合または電磁界結合する。
この構成でも、周波数帯の異なる複数のシステムで兼用することのできるアンテナ装置を備えた通信端末装置を実現できる。
また、この構成により、アンテナとして機能する実効的なコイル開口がさらに大きくなり、磁束を放射(集磁)する範囲および距離が大きくなることで、通信相手側のアンテナコイルと結合し易くなる。
なお、第1接続部は、第1導電性部材1と第3導電性部材3,3Bとの間に接続される構成に限定されるものではない。ループを形成するのであれば、本実施形態で示したように、第1接続部は、第3導電性部材3と第3導電性部材3Bとの間に接続されていてもよい。
なお、本実施形態では、基板6の主面に形成された接続導体76を介して、インダクタL11とインダクタL11Bとの間が接続される例を示したが、この構成に限定されるものではない。基板6の主面に形成された接続導体の代わりに、ワイヤー等によってインダクタL11とインダクタL11Bとの間を直接接続する構成であってもよい。また、第1接続部(または第2接続部)全体がワイヤー等であってもよい。すなわち、第1導電性部材1と第3導電性部材3との間(または第1導電性部材1と第2導電性部材2との間)をワイヤー等によって直接接続する構成であってもよい。
《第6の実施形態》
図18は第6の実施形態に係るアンテナ装置106の断面図である。
第6の実施形態に係るアンテナ装置106は、接続ピンを備えていない点で第1の実施形態に係るアンテナ装置101と異なる。その他の構成は、第1の実施形態に係るアンテナ装置101と実質的に同じである。
アンテナ装置106は、接続ピンの代替として、導電性接続部91,93およびネジ部材94を備える。導電性接続部91は第1導電性部材1の一部が屈曲した部分であり、導電性接続部93は第3導電性部材3の一部が屈曲した部分である。
導電性接続部91,93は、ネジ部材94を介して基板6Aに固定されている。第3導電性部材3は、導電性接続部93および接続導体71Aを介してインダクタL11の一端に接続される。また、第1導電性部材1は、導電性接続部91および接続導体72Aを介してインダクタL11の他端に接続される。
図18に示すように、インダクタL11、導電性接続部91,93および接続導体71A,72Aが、第1接続部51Aを構成する。
このように、第1の実施形態に係るアンテナ装置101において、接続ピンを介して接続される部分を導電性接続部91,93およびネジ部材94で接続することもできる。なお、本実施形態では、導電性接続部91は第1導電性部材1の一部が屈曲した部分であり、導電性接続部93は第3導電性部材3の一部が屈曲した部分である例を示したが、この構成に限定されるものではない。導電性接続部91,93の形状は、給電コイルがループと磁界結合または電磁界結合できる範囲において適宜変更可能である。したがって、導電性接続部91,93は、第1導電性部材1および第3導電性部材3とは異なる導電性を有する部材であってもよい。その場合、導電性接続部91,93は、ネジ部材を用いて第1導電性部材1および第3導電性部材3に接続してもよく、導電性接着材を介して第1導電性部材1および第3導電性部材3に接続してもよい。
また、本実施形態では、ネジ部材94を介して導電性接続部91,93を基板6Aに固定した例を示したが、この構成に限定されるものではない。ネジ部材94を用いず、導電性接着材を介して導電性接続部91,93を基板6Aに固定してもよい。
さらに、接続導体71A,72Aを用いず、フレキシブルプリント基板を基板6Aに固定することにより、フレキシブルプリント基板に形成された導体パターンと基板6Aに形成される接続導体とを接続する構成であってもよい。
《第7の実施形態》
図19(A)は第7の実施形態に係るアンテナ装置107Aの断面図であり、図19(B)はアンテナ装置107Bの断面図である。
第7の実施形態に係るアンテナ装置107A,107Bは、第1接続部51AのインダクタL11が基板6Aに実装されていない点で第6の実施形態に係るアンテナ装置106と異なる。その他の構成は、アンテナ装置106と実質的に同じである。
アンテナ装置107Aは、導電性接続部91,93、ネジ部材94および配線基板70をさらに備える。配線基板70の一方主面(図19(A)における上面)には、導体パターン(図示省略)が形成されている。配線基板70は例えばフレキシブルプリント基板(Flexible printed circuit board)である。
配線基板70は、導電性接続部91およびネジ部材94を介して第1導電性部材1に固定される。また、配線基板70は、導電性接続部93およびネジ部材94を介して第3導電性部材3に固定される。第3導電性部材3は、配線基板70の一方主面に形成された導体パターンおよび導電性接続部93を介してインダクタL11の一端に接続される。また、第1導電性部材1は、配線基板70の一方主面に形成された導体パターンおよび導電性接続部91を介してインダクタL11の他端に接続される。
図19(A)に示すように、アンテナ装置107Aでは、インダクタL11、導電性接続部91,93、導電性接着材95および配線基板70(導体パターン)が、第1接続部51Aを構成する。
アンテナ装置107Bは、導電性接着材95および配線基板70をさらに備える。配線基板70は、導電性接着材95を介して第1導電性部材1に固定される。また、配線基板70は、導電性接着材95を介して第3導電性部材3に固定される。第3導電性部材3は、配線基板70の一方主面に形成された導体パターンおよび導電性接着材95を介してインダクタL11の一端に接続される。また、第1導電性部材1は、配線基板70の一方主面に形成された導体パターンおよび導電性接着材95を介してインダクタL11の他端に接続される。
図19(B)に示すように、アンテナ装置107Bでは、インダクタL11、導電性接着材95および配線基板70(導体パターン)が、第1接続部51Aを構成する。
この構成により、第1導電性部材1と基板6Aとの間を接続する必要がなくなる。また、第3導電性部材3と基板6Aとの間を接続する必要がなくなる。
また、本実施形態に係るアンテナ装置107A,107Bでは、インダクタL11等の部品を配線基板70に実装することができるため、基板6Aにおける実装スペースが拡大され、実装部品の配置等の自由度を高めることができる。
さらに、本実施形態に係るアンテナ装置107Aでは、ネジ部材94を介して導電性接続部91,93に配線基板70を固定した例を示したが、この構成に限定されるものではない。アンテナ装置107Bに示したように、ネジ部材94を用いず、導電性接着材95を介して配線基板70を固定する構成であってもよい。
《第8の実施形態》
図20は第8の実施形態に係るアンテナ装置108の平面図である。図20において、第1給電回路、キャパシタおよびリアクタンス素子等の図示は省略されている。
第8の実施形態に係るアンテナ装置108は、開口部96,97をさらに備える点で第1の実施形態に係るアンテナ装置101と異なる。その他の構成は、第1の実施形態に係るアンテナ装置101と実質的に同じである。
アンテナ装置108における第1導電性部材1は開口部97を備え、第3導電性部材3は開口部96を備える。開口部96,97は例えばカメラモジュール用の開口部またはボタン用の開口部である。
このような構成であっても、アンテナ装置108の基本的な構成は第1の実施形態に係るアンテナ装置101と同じであり、アンテナ装置101と同様の作用・効果を奏する。
なお、本実施形態で示した開口部96,97の位置、大きさ、個数等は例示であって、この構成に限定されるものではない。開口部96,97の位置、大きさ、個数等は、第1導電性部材および第3導電性部材3がループを形成して、給電コイル5に対するブースターアンテナとして機能する範囲において、適宜変更可能である。
なお、本実施形態では、第1導電性部材1および第3導電性部材3がループの一部を形成する例を示したが、この構成に限定されるものではない。第2導電性部材が開口部を備えており、第2導電性部材および第3導電性部材3がループの一部を構成していてもよい。その場合において、第2導電性部材が備える開口部の位置、大きさ、個数等は、第2導電性部材および第3導電性部材3がループを形成して、給電コイル5に対するブースターアンテナとして機能する範囲において、適宜変更可能である。また、開口部96,97には、スピーカーやセンサ等のデバイスやエンブレムをかたどった樹脂等が配置されていてもよい。
《第9の実施形態》
図21は第9の実施形態に係るアンテナ装置109Aにおける、第1導電性部材1C、第2導電性部材2Cおよび第3導電性部材3Cを示す外観斜視図である。図22はアンテナ装置109Bにおける、第1導電性部材1D、第2導電性部材2Dおよび第3導電性部材3Dを示す外観斜視図である。図23はアンテナ装置109Cにおける、第1導電性部材1E、第2導電性部材2Eおよび第3導電性部材3Eを示す外観斜視図である。図24はアンテナ装置109Dにおける、第1導電性部材1F、第2導電性部材2Fおよび第3導電性部材3Fを示す外観斜視図である。図25はアンテナ装置109Eにおける、第1導電性部材1G、第2導電性部材2Gおよび第3導電性部材3Gを示す外観斜視図である。図21、図22、図23、図24および図25において、第1接続部、給電コイル、基板、バッテリーパック、第1給電回路、第2給電回路およびリアクタンス素子等の図示は省略されている。
アンテナ装置109A,109B,109C,109D,109Eは、第1の実施形態に係るアンテナ装置101に対して、第1導電性部材、第2導電性部材および第3導電性部材の形状が異なる。また、アンテナ装置101に対して、第2導電性部材が例えばスマートフォン等の電子機器の筐体の一部である点で異なる。その他の構成は、第1の実施形態に係るアンテナ装置101と実質的に同じである。
アンテナ装置109Aにおける第1導電性部材1Cは平板ではなく、横方向(X方向)の両端の側面にも形成され、接続されている。図21に示すように、第1導電性部材1Cは、縦方向(Y方向)から視て、コの字状(U字状)の導体である。また、第3導電性部材3Cも平板ではなく、横方向(X方向)の両端および縦方向(Y方向)の一端(図21における右側)の側面にも形成され、接続されている。第2導電性部材2Cは、平面形状が矩形の平板である。
アンテナ装置109Bにおける第1導電性部材1Dは、アンテナ装置109Aにおける第1導電性部材1Cと実質的に同じ形状である。第3導電性部材3Dは平板ではなく、横方向(X方向)の両端にも形成され、接続されている。図22に示すように、第3導電性部材3Dは、縦方向(Y方向)から視て、コの字状(U字状)の導体である。第2導電性部材2Dは、アンテナ装置109Aにおける第2導電性部材2Cと実質的に同じ形状である。
アンテナ装置109Cにおける第1導電性部材1Eは、アンテナ装置109Aにおける第1導電性部材1Cと実質的に同じ形状である。第3導電性部材3Eは平板ではなく、横方向(X方向)の両端および縦方向(Y方向)の一端(図23における右側)の側面にのみ形成され、接続されている。図23に示すように、第3導電性部材3Eは、Z方向から視て、コの字状(U字状)の導体である。第2導電性部材2Dは、アンテナ装置109Aにおける第2導電性部材2Cと実質的に同じ形状である。
アンテナ装置109Dにおける第1導電性部材1Fは平板ではなく、横方向(X方向)の両端および縦方向(Y方向)の他端(図24における左側)の側面にも形成され、接続されている。第3導電性部材3Fは平板ではなく、縦方向(Y方向)の一端(図24における右側)の側面にも形成され、接続されている。図24に示すように、第3導電性部材3Fは、横方向(Z方向)から視て、L字状の導体である。第2導電性部材2Dは、アンテナ装置109Aにおける第2導電性部材2Cと実質的に同じ形状である。
アンテナ装置109Eにおける第1導電性部材1Gは、アンテナ装置109Aにおける第1導電性部材1Cと実質的に同じ形状である。第3導電性部材3Gは、図25に示すように、横方向(X方向)から視て、弧を描く曲線状の平板の導体である。但し、第3導電性部材3Gは、厚み方向(Z方向)から視て、矩形である。第2導電性部材2Dは、アンテナ装置109Aにおける第2導電性部材2Cと実質的に同じ形状である。
このような構成であっても、アンテナ装置109A,109B,109C,109D,109Eの基本的な構成は第1の実施形態に係るアンテナ装置101と同じであり、アンテナ装置101と同様の作用・効果を奏する。
本実施形態に係るアンテナ装置109A,109B,109C,109D,109Eでは、第2導電性部材2に筐体の一部を利用するため、磁界型アンテナとして作用するループを容易に形成できる。したがって、ループの一部を構成する導体を別途形成する必要がないため、電子機器自体を小型にすることができ、製造が容易で低コスト化が図れる。
本実施形態では、第1導電性部材および第3導電性部材が矩形状の平板である例を示したが、この構成に限定されるものではない。第1導電性部材および第3導電性部材の平面形状は、多角形状、円形状または楕円形状等、アンテナ装置101と同様の作用・効果を奏する範囲において、適宜変更可能である。また、第1導電性部材および第3導電性部材の立体構造・厚み(Z方向の長さ)等についても、ループの一部を構成し、ブースターアンテナとして機能する範囲において、適宜変更可能である。さらに、本実施形態で示したように、第3導電性部材は平板に限定されるものではなく、曲面状あるいは線状等の形状であってもよい。
なお、本実施形態では、第2導電性部材が矩形状の平板である例を示したが、この構成に限定されるものではない。第2導電性部材の平面形状は、多角形状、円形状または楕円形状等、アンテナ装置101と同様の作用・効果を奏する範囲において、適宜変更可能である。また、第2導電性部材の立体構造・厚み(Z方向の長さ)等についても、アンテナ装置101と同様の作用・効果を奏する範囲において、適宜変更可能である。
また、本実施形態では、第1導電性部材、第3導電性部材および第1接続部でループを構成するアンテナ装置の例を示したが、第2導電性部材、第3導電性部材および第2接続部でループを構成するアンテナ装置であってもよい。この場合についても、第2導電性部材の平面形状・立体構造・厚み(Z方向の長さ)等は、第2の実施形態に係るアンテナ装置102と同様の作用・効果を奏する範囲において、適宜変更可能である。
《第10の実施形態》
図26は第10の実施形態に係るアンテナ装置110Aにおける、第1導電性部材1H、第2導電性部材2H、第3導電性部材3Hおよび第1接続部51Hを示す外観斜視図である。図27はアンテナ装置110Bにおける、第1導電性部材1I、第2導電性部材2I、第3導電性部材3Iおよび第2接続部52Iを示す外観斜視図である。図26および図27において、他方の第1接続部、他方の第2接続部、給電コイル、基板、バッテリーパック、第1給電回路、第2給電回路およびリアクタンス素子等の図示は省略されている。
第10の実施形態に係るアンテナ装置110Aは、第1の実施形態に係るアンテナ装置101に対して、第1導電性部材1H、第3導電性部材3Hおよび一つの第1接続部51Hが筐体の一部である点で異なる。また、アンテナ装置101に対して、第2導電性部材が例えばスマートフォン等の電子機器の筐体の一部である点で異なる。その他の構成は、アンテナ装置101と実質的に同じである。言い換えると、第1導電性部材1H、第3導電性部材3Hおよび第1接続部51Hは一つの部材で形成されているといえる。
第10の実施形態に係るアンテナ装置110Bは、第2の実施形態に係るアンテナ装置102に対して、第2導電性部材2I、第3導電性部材3Iおよび一つの第2接続部52Iが筐体の一部である点で異なる。また、アンテナ装置102に対して、第2導電性部材が例えばスマートフォン等の電子機器の筐体の一部である点で異なる。その他の構成は、アンテナ装置102と実質的に同じである。言い換えると、第2導電性部材2I、第3導電性部材3Iおよび第2接続部52Iは一つの部材で形成されているといえる。
アンテナ装置110Aにおける第1導電性部材1H、第2導電性部材2Hおよび第3導電性部材3Hは、平面形状が矩形の平板である。第3導電性部材3Hの第1端部E1は、第1接続部51Hを介して第1導電性部材1Hに接続される。本実施形態における第1接続部51Hは、第1導電性部材1Hおよび第3導電性部材3Hと同様に、筐体の一部であり、一つ(一体)の部材で形成されている。
第3導電性部材3Hの第2端部E2は、他方の第1接続部(図示省略)を介して第1導電性部材1Hに接続される。したがって、第1導電性部材1H、第3導電性部材3H、第1接続部51Hおよび他方の第1接続部がループを形成する。
アンテナ装置110Bにおける第1導電性部材1I、第2導電性部材2Iおよび第3導電性部材3Iは、平面形状が矩形の平板である。第3導電性部材3Iの第1端部E1は、第2接続部52Iを介して第2導電性部材2Iに接続される。本実施形態における第2接続部52Iは、第2導電性部材2Iおよび第3導電性部材3Iと同様に、筐体の一部であり、一つ(一体)の部材で形成されている。
第3導電性部材3Iの第2端部E2は、他方の第2接続部(図示省略)を介して第2導電性部材2Hに接続される。したがって、第1導電性部材1I、第3導電性部材3I、第2接続部52Iおよび他方の第2接続部がループを形成する。
このような構成であっても、アンテナ装置110Aの基本的な構成は第1の実施形態に係るアンテナ装置101と同じであり、アンテナ装置101と同様の作用・効果を奏する。また、アンテナ装置110Bの基本的な構成は第2の実施形態に係るアンテナ装置102と同じであり、アンテナ装置102と同様の作用・効果を奏する。
アンテナ装置110Aでは、第1接続部51Hに筐体の一部を利用するため、磁界型アンテナとして作用するループを容易に形成できる。したがって、ループの一部を構成する導体を別途形成する必要がないため、電子機器自体を小型にすることができ、製造が容易で低コスト化が図れる。なお、アンテナ装置110Aでは、一方の第1接続部51Hのみ筐体の一部を利用する構成であるが、これに限定されるものではない。他方の第1接続部も筐体の一部を利用する構成であってもよい。すなわち、筐体を利用してループ全体を構成してもよい。
アンテナ装置110Bでは、第2接続部52Iに筐体の一部を利用するため、磁界型アンテナとして作用するループを容易に形成できる。したがって、ループの一部を構成する導体を別途形成する必要がないため、電子機器自体を小型にすることができ、製造が容易で低コスト化が図れる。なお、アンテナ装置110Bでは、一方の第2接続部52Iのみ筐体の一部を利用する構成であるが、これに限定されるものではない。他方の第2接続部も筐体の一部を利用する構成であってもよい。すなわち、筐体を利用してループ全体を構成してもよい。
《その他の実施形態》
なお、上述の実施形態では、主に磁界結合を利用したNFC等の通信システムにおけるアンテナ装置および電子機器について説明したが、上述の実施形態におけるアンテナ装置および電子機器は、磁界結合を利用した非接触電力伝送システム(電磁誘導方式、磁界共鳴方式)でも同様に用いることができる。例えば、上述の実施形態におけるアンテナ装置は、例えばHF帯(特に6.78MHzまたは6.78MHz近傍)の周波数で使用される磁界共鳴方式の非接触電力伝送システムにおける受電装置の受電アンテナ装置や送電装置の送電アンテナ装置として適用できる。この場合でも、アンテナ装置は送電アンテナ装置または受電アンテナ装置として機能する。アンテナ装置の給電コイルが有するコイル状導体の両端は、使用周波数帯(HF帯、特に6.78MHz近傍)を操作する受電回路や送電回路に接続される。受電回路には、例えば受電アンテナからの電力を負荷(二次電池等)に供給するための整合回路、平滑回路およびDC/DCコンバータ等が含まれる。受電回路は、受電アンテナと負荷との間に縦続接続される。また、送電回路には、例えば商用電源から送電アンテナに電力を供給するための整流回路、平滑回路およびDC/ACインバータとして機能するスイッチ回路等が含まれる。送電回路は、商用電源と送電アンテナとの間に縦続接続される。