JP2017168379A - 非水電解質電池用電極、それを備えた非水電解質電池および電池パック - Google Patents

非水電解質電池用電極、それを備えた非水電解質電池および電池パック Download PDF

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Abstract

【課題】活物質層を具備する非水電解質電池用電極、それを備えた非水電解質電池および電池パックを提供する。
【解決手段】実施形態の非水電解質電池用電極は、集電体と、前記集電体上に形成される活物質層と、を持つ。前記活物質層は、活物質を含む非水電解質電池用電極材料と、ポリイミド樹脂からなるバインダーと、溶媒と、を含む。前記活物質層における溶媒の含有量は、0.006μg/mg以上0.1μg/mg以下である。
【選択図】図1

Description

本発明の実施形態は、非水電解質電池用電極、それを備えた非水電解質電池および電池パックに関する。
リチウムイオン電池に代表される非水電解質電池は、高エネルギー密度である。そのため、パソコンやスマートフォン等の小型携帯機器から、電気自動車や電力平準化電源を始めとする大型電源まで、様々な分野で用いられている。そこで、各装置の消費電力の増大や、より広範囲な分野での使用に伴い、非水電解質電池の大電流特性や低温特性が検討されている。
大電流特性や低温特性の改善には、電気伝導度やリチウムイオン伝導度の向上が効果的であることが知られている。電気伝導度の向上には、正極活物質層および負極活物質層の少なくともいずれか一方に含まれる導電剤を増量すること、これらの活物質層を薄膜化することが効果的である。リチウムイオン伝導度の向上には電解液の低粘度化、電解液中リチウムイオンの高濃度化が効果的である。しかし、活物質層の導電材に含まれる導電剤を増量したり、活物質層を薄膜化したりすることは、電池のエネルギー密度の低下の原因となる。電解液の低粘度化は高温特性低下の原因となる。また、リチウムイオンの高濃度化は低温特性が低下する原因となる。そのため、従来の非水電解質電池の大電流特性や低温特性の改善方法は必ずしも十分ではない。
また、活物質として、充放電時の体積変化が大きいSiやSnを用いる場合、集電体からの活物質の剥離を防ぐために、高強度のポリイミド樹脂からなるバインダーを用いる必要がある。
一方、電極は、塗工・乾燥後にプレスして平面化・密度調整を行う。バインダーとしてポリイミド樹脂を用いた電極は、バインダーの強度が高いため、プレス時の厚さ(密度)制御が困難である。そのため、プレス強度を過剰に上げると、活物質層と集電体との間で剥離が生じる。
特開2013−65409号公報 特開2006−269321号公報 特開平9−237623号公報
本発明が解決しようとする課題は、活物質層を具備する非水電解質電池用電極、それを備えた非水電解質電池および電池パックを提供することである。
実施形態の非水電解質電池用電極は、集電体と、前記集電体上に形成される活物質層と、を持つ。
前記活物質層は、活物質を含む非水電解質電池用電極材料と、ポリイミド樹脂からなるバインダーと、溶媒と、を含む。
前記活物質層における溶媒の含有量は、0.006μg/mg以上0.1μg/mg以下である。
第1の実施形態に係る非水電解質電池用電極の概略構成を示す断面図である。 第2の実施形態に係る非水電解質電池を示す模式図である。 第2の実施形態に係る非水電解質電池を示す模式図である。 第2の実施形態に係る非水電解質電池を示す模式図である。 第2の実施形態に係る非水電解質電池を示す模式図である。 第3の実施形態に係る電池パックを示す概略斜視図である。 第3の実施形態に係る電池パックを示す模式図である。
以下、実施形態の非水電解質電池用電極、それを備えた非水電解質電池および電池パックを、図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
第1の実施形態では、集電体と、この集電体上に形成される活物質を含有する活物質層と、を備える非水電解質電池用電極(以下、「電極」と略すこともある。)が提供される。
以下、図1を参照しながら、本実施形態に係る非水電解質電池用電極を、さらに詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る非水電解質電池用電極の概略構成を示す断面図である。
本実施形態に係る非水電解質電池用電極10は、図1に示すように、シート状の集電体11と、活物質層12とを含む。この非水電解質電池用電極10は、例えば、後述する非水電解質電池の負極として用いられる。
活物質層12は、集電体11の少なくとも一方の面11aに形成され、活物質を含む非水電解質電池用電極材料(以下、「電極材料」と略すこともある。)と、ポリイミド樹脂からなるバインダー(結着剤)と、溶媒と、導電剤とを含む層である。すなわち、活物質層12は、電極材料が、集電体11の少なくとも一方の面11aに担持されてなる層である。
バインダーは、活物質層12を構成する電極材料同士の隙間を埋めて、電極材料同士、または、電極材料と導電剤を結着させ、また、集電体11と活物質層12とを接合する。導電剤は、任意成分である。なお、活物質層12は、集電体11の他方の面11bにも形成されていてもよい。
活物質層12における溶媒の含有量は、0.006μg/mg以上0.1μg/mg以下である。
活物質層12における溶媒の含有量が0.006μg/mg未満では、十分な効果が得られない。一方、活物質層12における溶媒の含有量が0.1μg/mgを超えると、電極材料と導電剤の集電体11の一方の面11aおよび他方の面11bへの結着力が不足する。好ましい溶媒の含有量は0.01μg/mg以上0.05μg/mg以下であり、さらに好ましくは0.01μg/mg以上0.03μg/mg以下である。
活物質層12における溶媒の含有量は、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析装置(熱分解GC/MS)を用いて定量される。測定対象の活物質層が電池に含まれている場合は、先ず、感電を防止するため、作製済みの電池を安全な電圧まで放電する。次に、電池を分解し、電極群を取り出す。取り出した電極群を、例えばエチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの溶媒へ2〜3分間、浸漬させながら揺らすことで、電極表面の不要な不純物を洗い流す。洗浄した電極群を真空乾燥にて十分乾燥させる。次に、得られた電極群から対象となる活物質層について所望の大きさにカットし、集電体から活物質層を剥ぎ取ることで分析に供する測定試料を準備する。
活物質層12に含まれる溶媒は、活物質層12を形成する際に用いられたものである。
溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの溶媒が用いられる理由は、沸点が200℃前後であり、粘度が高いため、電極10の電極性能を低下させることがないからである。
活物質層12の厚さは、10μm以上150μm以下であることが好ましく、10μm以上100μm以下であることがより好ましい。したがって、活物質層12が、集電体11の一方の面11aおよび他方の面11bに形成されている場合、活物質層12の合計の厚さは、20μm以上300μm以下となる。
活物質層12に含まれる電極材料は、ケイ素粒子、ケイ素酸化物粒子、ケイ素含有合金粒子、スズ粒子、スズ酸化物粒子およびスズ含有合金粒子からなる群から選択される少なくとも1種の活物質と、炭素質物とを含む複合体である。
本実施形態におけるケイ素酸化物とは、SiO(0<x≦2)で表されるものである。本実施形態において、電極材料は、ケイ素粒子とケイ素酸化物粒子からなる複合粒子が、炭素質物中に分散してなる複合体が好適である。組成において、測定機器の制度によりxが2を超える場合も許容される場合がある。
活物質が、ケイ素粒子とケイ素酸化物粒子からなる複合粒子である場合、前記の複合体は、この複合粒子と、炭素質物とを含む。より詳細には、複合体は、複数の複合粒子が炭素質物で被覆された構造をなしている。なお、複合体は、1つの複合粒子が炭素質物で被覆された構造をなしていてもよい。また、複合粒子は、その一部が複合体の外部に露出していてもよい。
複合粒子は、リチウムとケイ素粒子からなる複合酸化物を含んでいてもよい。
複合粒子は、リチウムの吸蔵と放出を繰り返すたびに体積変化を生じるため、できるかぎり微細であることが好ましい。
複合粒子の平均一次粒子径は、5nm以上500nm以下であることが好ましい。
本実施形態において、複合粒子の平均一次粒子径は、以下のような測定方法によって測定されたものと定義する。
活物質層内の微細組織を観察するために、活物質層の一部を薄片加工し、イオンミリング装置等を用いて観察部をさらに薄く加工する。透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscopy)により、活物質層を構成する複合体の内部を倍率200,000倍以上で観察(ケイ素酸化物の場合は、20,000倍程度から)する。そして、視野の対角線上にある少なくとも10個以上の粒子を選んで、その長径と短径を測定し、長径と短径を平均化した平均値を平均一次粒子径とする。
炭素質物は、非晶質の炭素相であることが好ましい。炭素質物の材料については、後述する。
炭素質物は、導電剤を含んでいてもよい。導電剤としては、結晶性の高い黒鉛やカーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ等の炭素材料や、アセチレンブラック等の微粒子が好適に用いられる。
また、炭素質物は、10nm以上1μm以下程度の微細な気孔を内包していてもよい。
バインダーとして用いられるポリイミド樹脂は、集電体11と活物質層12とを、より高い強度で結着する。
ポリイミド樹脂は、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の汎用溶媒に溶解するため、活物質層中への分散性が高い。ポリイミド樹脂は、高温で焼成することにより硬化し、電極材料と集電体との結着力を向上する。
ポリイミド樹脂は、焼成後、溶媒の蒸気を流しながら冷却することが好ましい。その理由は、ポリイミドが溶媒を包括し、焼成後の厚さ制御が可能となり、密度調整を容易に行えるからである。
集電体11は、活物質層12と結着する導電性の部材である。集電体11としては、多孔質構造の導電性基板か、あるいは無孔の導電性基板が用いられる。これら導電性基板は、例えば、銅、ニッケル、それらの合金、またはステンレス等の導電性材料から形成することができる。導電性基板の中でも、導電性の点から、ステンレス箔が好ましい。
ステンレス箔の引っ張り強さは、300N/mm以上500N/mm以下であることが好ましい。
また、集電体11の厚さは、5μm以上20μm以下であることが好ましい。集電体11の厚さが、前記の範囲であると、電極強度と軽量化のバランスがとれる。
次に、電極10の製造方法について説明する。
(複合化処理)
活物質粒子を、有機材料と混合し、その混合物を炭化熱処理することにより、活物質粒子と、有機材料とを複合化し、活物質粒子と、有機材料とを含む複合化物を調製する。このとき、上述の導電剤を添加してもよい。
有機材料としては、グラファイト、コークス、低温焼成炭、ピッチ等の炭素材料および炭素前駆体からなる群から選択される少なくとも1種が用いられる。ピッチ等の加熱により溶融する材料は、力学的なミル処理中に溶融して複合化が良好に進み難いため、有機材料としては、グラファイトやコークス等の溶融しない材料を用いることが好ましい。
液相における混合攪拌処理により、活物質粒子と、有機材料とを複合化する方法を説明する。混合攪拌処理には、例えば、各種攪拌装置、ボールミル、ビーズミル装置等が用いられる。混合攪拌処理は、これらの装置の1種のみで行ってもよく、2種以上を組み合わせて用いて行ってもよい。
活物質粒子と、有機材料および導電剤との複合化は、これらの材料をより均一に分散するために、分散媒中における液相混合により行うことが好ましい。
分散媒としては、有機溶媒、水等が用いられるが、活物質粒子および有機材料との親和性に優れる液体を用いることが好ましい。このような分散媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドが挙げられる。
有機材料の1種である炭素前駆体としては、活物質粒子と均一に混合するために、混合段階で液体あるいは分散媒に可溶であるものが好ましく、液体であり、容易に重合可能なモノマーあるいはオリゴマーであることがより好ましい。炭素前駆体としては、例えば、フラン樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、アミノ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アニリン樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、レゾール樹脂、ポリビニルアルコール、スクロース等の有機材料が挙げられる。
上記の材料を液相で混合し、その混合物を固化あるいは乾燥して、活物質粒子と、有機材料とを含む複合化物を作製した後、その複合化物を炭化焼成して、活物質粒子と、炭素質物との複合体を形成する。
(炭化焼成処理)
上記の複合化物の炭化焼成は、例えば、アルゴン(Ar)等の不活性な雰囲気下にて行なわれる。複合化物の炭化焼成時の雰囲気は、不活性な雰囲気に限定されず、水素を含むアルゴン等の混合雰囲気であってもよい。
上記の複合化物を炭化焼成する温度は、複合化物に含まれる有機材料の熱分解温度に応じて適宜調整されるが、700℃以上1200℃以下であることが好ましい。
炭化焼成する温度が1200℃を超えると、必要以上に、ケイ素系粒子と有機材料による炭化ケイ素化反応が進んでしまい、充放電容量が大きく低下してしまうため好ましくない。
焼成時間は、10分以上12時間以下であることが好ましい。
以上のような合成方法により、本実施形態における電極材料が得られる。
炭化焼成後の生成物(電極材料)は、各種ミル、粉砕装置、グラインダー等を用いて、粒径、比表面積等を所定の範囲に調整してもよい。
このような電極材料を用いることにより、初期放電容量と初回充放電効率を高めることができ、エネルギー密度に優れた非水電解質電池を実現することができる。
(活物質層の形成)
上述のような方法で作製した電極材料を用いて、上述の電極10を作製する。
まず、電極材料およびバインダーを、前記の溶媒に懸濁してスラリーを調製する。ここで、必要に応じて、導電剤を添加して、スラリーを調製する。
スラリーにおける電極材料と、バインダーと、導電剤との配合比は、質量比で、40〜95:2〜25:0〜50であることが好ましい。
次いで、集電体11の少なくとも一方の面11aに、スラリーを塗布し、乾燥して、電極材料を含む塗膜を形成する。
その後高温で焼成し活物質層を箔に密着させる。焼成温度は300℃〜400℃であることが好ましい。焼成後、前記溶媒を含んだガスを晒しながら冷却する。溶媒を含んだガスを晒しながら冷却することで、溶媒を包括した活物質層が形成する。冷却の際、焼成炉が300℃以下になってから前記溶媒を含んだガスに晒すのが好ましい。ガスは不活性ガスであればよく、アルゴン、窒素等が好ましい。
前記溶媒を含んだガス流量は、容積0.03mの焼成炉を用いた場合で、0.1cc/min〜5L/minがよく、さらに0.5cc/min〜1L/minが好ましい。
その後、集電体11上に形成された塗膜を圧延することにより、活物質層12が形成される。
また、活物質、導電剤および結着剤を含む混合物をペレット状に成形して、このペレット状の混合物を、集電体11の少なくとも一方の面11aに配置して、活物質層12を形成してもよい。この際も前記と同様の方法で焼成、冷却を行う。
以上により、電極10が得られる。
本実施形態に係る非水電解質電池用電極10によれば、活物質層12における溶媒の含有量は、0.01μg/mg以上0.1μg/mg以下であるため、所定の厚さを有する活物質層を具備する非水電解質電池用電極が得られる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、上述の第1の実施形態に係る電極からなる負極と、正極と、非水電解質と、セパレータと、外装材と、を含む非水電解質電池が提供される。
より具体的には、本実施形態に係る非水電解質電池は、外装材と、外装材内に収納された正極と、外装材内において、正極と空間的に離間して、セパレータを介して収納された負極と、外装材内に充填された非水電解質と、を含む。
以下、本実施形態に係る非水電解質電池の構成部材である負極、正極、非水電解質、セパレータ、外装材について、詳細に説明する。
(1)負極
負極としては、上述の第1の実施形態に係る電極が用いられる。
(2)正極
正極は、正極集電体と、この正極集電体の片面もしくは両面に形成され、正極活物質、導電剤および結着剤を含む正極合剤層とを備える。導電剤およびバインダー(結着剤)は、任意成分である。
正極活物質としては、非水電解質電池に用いられる正極活物質であれば特に限定されない。例えば、リチウムとリチウム以外の金属を含む複合酸化物、あるいは、リチウム複合リン酸化合物等が挙げられる。
リチウムとリチウム以外の金属を含む複合酸化物に含まれるリチウム以外の金属としては、例えば、Fe、Ni、Co、Mn、V、AlおよびCrからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
リチウム以外にMnを含む複合酸化物としては、例えば、LiMn、Li(1+x)Mn(2−x−y)(但し、MはNi、CoおよびFeからなる群から選択される少なくとも1種、0≦x≦0.2、0≦y≦1.1、3.9≦z≦4.1)を用いることができる。
リチウム以外にNiを含む複合酸化物としては、例えば、Li(Ni)O(但し、MはCoおよびAlから選択される少なくとも1種、x+y=1、0<x≦1、0≦y<1)を挙げることができる。
リチウム以外にVまたはCrを含む複合酸化物としては、例えば、LiVO、LiCrO等が挙げられる。
リチウム複合リン酸化合物としては、例えば、LiCoPO、LiMnPO、LiFePOあるいはLi(Fe)PO (但し、MはCoおよびMnから選択される少なくとも1種、x+y=1、0<x<1)、Li(CoMn)PO (但し、MはFeおよびMnから選択される少なくとも1種、x+y=1、0<x<1)で表される複合リン酸化合物が挙げられる。
これらの中でも、充電終止電圧がLi/Liに対して4.0V以上である正極活物質は、本実施形態による効果が大きいために好ましい。
リチウム以外にMnを含む複合酸化物としては、具体的に、LiMn1.5Ni0.5、LiMn1.5Co0.5、LiMnFeO、LiMn1.5Fe0.5、LiMnCoO、Li(Ni1/3Co1/3Mn1/3)O、Li(Ni5/10Co2/10Mn3/10)O、Li(Ni6/10Co2/10Mn2/10)O、Li(Ni8/10Co1/10Mn1/10)O等が挙げられる。
リチウム以外にNiを含む複合酸化物としては、具体的に、LiNiO、LiCo0.5Ni0.5、LiNi0.9Al0.1、LiNi0.8Co0.1Al0.1等が挙げられる。
さらに、充電終止電圧がLi/Liに対して4.8V以上である正極活物質は、本実施形態による効果が大きいために好ましい。
このような正極活物質としては、具体的に、LiMn1.5Ni0.5、LiMn1.5Co0.5、LiMn1.5Fe0.5、LiMnCoO、LiMnFeO、Li(CoMn)PO (但し、MはFeおよびMnから選択される少なくとも1種、x+y=1、0<x<1)等が挙げられる。
正極活物質の形状は、粒子状であることが好ましい。また、粒子状の正極活物質の平均一次粒子径は、1nm〜100μmであることが好ましく、10nm〜30μmであることがより好ましい。
また、粒子状の正極活物質の比表面積は、0.1m/g〜10m/gであることが好ましい。
正極活物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、正極活物質には、導電性高分子材料、ジスルフィド系高分子材料等の有機材料系活物質を混入させてもよい。
導電剤としては、導電性材料でかつ充電時に溶解することがなければ、特に制限されない。導電剤としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等の炭素材料、アルミニウムおよびチタンから選択される金属粉材料、導電性セラミクス材料、導電性ガラス材料等が挙げられる。
バインダーとしては、フッ素樹脂を用いることが好ましい。中でも、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、クロロフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペンおよびトリフルオロクロロエチレンからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを主成分とするフッ素樹脂が好ましい。さらに、フッ素樹脂としては、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸リチウムおよびアクリル酸エステルからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含むフッ素樹脂がより好ましい。
正極合剤層における、正極活物質、導電剤およびバインダーの配合割合は、正極活物質が80質量%〜95質量%、導電剤が3質量%〜18質量%、結着剤が2質量%〜7質量%であることが好ましい。
正極集電体は、正極合剤層と結着する導電性の部材である。正極集電体としては、多孔質構造の導電性基板か、あるいは無孔の導電性基板が用いられる。正極集電体としては、アルミニウム箔、または、Mg、Ti、Zn、Fe、CuおよびSiからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金箔が好ましい。
次に、正極の製造方法について説明する。
まず、正極活物質、導電剤およびバインダーを汎用されている溶媒に懸濁してスラリーを調製する。
次いで、スラリーを正極集電体上に塗布し、乾燥して正極合剤層を形成した後、プレスを施すことにより正極が得られる。
また、正極は、正極活物質、バインダーおよび必要に応じて配合される導電剤をペレット状に形成して正極合剤層とし、これを正極集電体上に配置することにより作製されてもよい。
(3)非水電解質
非水電解質としては、非水電解液、電解質含浸型ポリマー電解質、高分子電解質または無機固体電解質が用いられる。
非水電解液は、非水溶媒(有機溶媒)に電解質を溶解することにより調製される液体状電解液で、電極群中の空隙に保持される。
非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、メチルアセテート、エチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルブチレート、ブチルアセテート、n−プロピルアセテート、イソブチルプロピオネート、ベンジルアセテート等が挙げられる。これらの中でも、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトンが好ましい。
これらの非水溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
γ−ブチロラクトンまたはプロピレンカーボネートを主体として用いた場合、粘度を下げる目的で、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネート等の鎖状炭酸エステルを加えてもよい。また、誘電率を上げる目的で、エチレンカーボネート等の環状炭酸エステルを加えてもよい。
非水溶媒に脂肪族カルボン酸エステルを含む場合、ガス発生の観点から、脂肪族カルボン酸エステルの含有率は、非水溶媒全体の30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
本実施形態で用いられる非水溶媒としては、例えば、以下の組成のものが好ましい。
<非水溶媒1>
エチレンカーボネート5体積%〜50体積%と、エチルメチルカーボネート50体積〜95体積%とからなる合計100体積%の非水溶媒。
<非水溶媒2>
エチレンカーボネート5体積%〜50体積%と、ジエチルカーボネート50体積%〜95体積%とからなる合計100体積%の非水溶媒。
<非水溶媒3>
プロピレンカーボネート20体積%〜60体積%と、エチルメチルカーボネート40体積%〜80体積%とからなる合計100体積%の非水溶媒。
<非水溶媒4>
プロピレンカーボネート20体積%〜60体積%と、ジエチルカーボネート40体積%〜80体積%とからなる合計100体積%の非水溶媒。
<非水溶媒5>
エチレンカーボネート5体積%〜50体積%と、プロピレンカーボネート50体積%〜100体積%と、γ−ブチロラクトン0体積%〜50体積%とからなる合計100体積%の非水溶媒。
非水電解質には、ガスの発生を抑える効果をさらに向上させる観点から、炭酸エステル系添加剤および硫黄化合物系添加剤からなる群から選択される少なくとも1種が添加されていることが好ましい。
炭酸エステル系添加剤は、皮膜形成等により、負極表面で発生するH、CH等のガスを低減させる効果を有する。
硫黄化合物系添加剤は、皮膜形成等により、正極表面で発生するCO等のガスを低減させる効果を有する。
炭酸エステル系添加剤としては、例えば、ビニレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、ジフェニルビニレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、メトキシプロピレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、カテコールカーボネート、テトラヒドロフランカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジエチルジカーボネート(二炭酸ジエチル)等が挙げられる。これら中でも、負極表面で発生するガスを低減させる効果が大きいという点から、ビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネートが好ましく、ビニレンカーボネートが特に好ましい。これらの炭酸エステル系添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
硫黄化合物系添加剤としては、例えば、エチレンサルファイト、エチレントリチオカーボネート、ビニレントリチオカーボネート、カテコールサルファイト、テトラヒドロフランサルファイト、スルホラン、3−メチルスルホラン、スルホレン、プロパンサルトン、1,4−ブタンスルトン等が挙げられる。これらの中でも、正極表面で発生するガスを低減させる効果が大きいという点から、プロパンサルトン、スルホラン、エチレンサルファイト、カテコールサルファイトが好ましく、プロパンサルトンが特に好ましい。これらの硫黄化合物系添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
炭酸エステル系添加剤および硫黄化合物系添加剤からなる群から選択される少なくとも1種の非水電解質100質量部に対する添加率は、総量で0.1質量部〜10質量部であることが好ましく、0.5質量部〜5質量部であることがより好ましい。
添加率が0.1質量部未満では、ガスの発生を抑える効果があまり向上しない。一方、添加率が10質量部を超えると、電極上に形成される皮膜が厚くなりすぎて、放電特性が低下する。
炭酸エステル系添加剤と硫黄化合物系添加剤を併用する場合、これらの配合比(炭酸エステル系添加剤:硫黄化合物系添加剤)は、質量比で1:9〜9:1であることが好ましい。このようにすれば、炭酸エステル系添加剤と硫黄化合物系添加剤の効果をバランス良く得ることができる。
炭酸エステル系添加剤は、非水電解質100質量部に対する添加率が、0.1質量部〜10質量部であることが好ましく、0.5質量部〜5質量部であることがより好ましい。
添加率が0.1質量部未満では、負極におけるガス発生量を低減させる効果が小さくなる。一方、添加率が10質量部を超えると、負極上に形成される皮膜が厚くなりすぎて、放電特性が低下する。
硫黄化合物系添加剤は、非水電解質100質量部に対する添加率が、0.1質量部〜10質量部であることが好ましく、0.5質量部〜5質量部であることがより好ましい。
添加率が0.1質量部未満では、正極におけるガス発生量を低減させる効果が小さくなる。一方、添加率が10質量部を超えると、正極上に形成される皮膜が厚くなりすぎて、放電特性が低下する。
非水電解質に含まれる電解質としては、アルカリ塩が用いられ、アルカリ塩の中でも、リチウム塩が好適に用いられる。
リチウム塩としては、例えば、LiPF(CF、LiPF(C、LiPF(CF、LiPF(C、LiPF(CFSO、LiPF(CSO、LiPF(CFSO、LiPF(CSO、LiBF(CF、LiBF(C、LiBF(CFSO、LiBF(CSO、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF等が挙げられる。
上記のリチウム塩は熱的安定性に非常に優れるため、高温使用時または高温保存後の電池特性の低下が少なく、熱分解によるガス発生も少ない。しかしながら、これらのリチウム塩は正極上で分解反応を受けやすいという課題がある。そこで、LiPF、LiBF、LiSbFおよびLiAsFからなる群から選択される少なくとも1種のリチウム塩を、非水電解質に含有させることが好ましい。そうすると、これらのリチウム塩が正極上で優先的に反応し、正極上に良質な皮膜が形成される。その結果、上記の化合物の正極上での分解反応が抑制される。
(4)セパレータ
セパレータは、正極と負極が接触することを防止し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるために、正極と負極の間に配置されるものである。セパレータは、絶縁性材料で構成される。
セパレータとしては、正極と負極の間を電解質が移動可能な形状のものが用いられる。セパレータとしては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、セルロース、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含む多孔質フィルム、合成樹脂製不織布、リチウムイオン伝導性セラミクスの薄膜が挙げられる。これらのセパレータは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(5)外装材
正極、負極および非水電解質が収容される外装材としては、金属製容器や、ラミネートフィルム製外装容器が用いられる。
金属製容器としては、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、ステンレス等からなる金属缶で角形、円筒形の形状のものが用いられる。
アルミニウム合金としては、マグネシウム、亜鉛、ケイ素等の元素を含む合金が好ましい。アルミニウム合金中に、鉄、銅、ニッケル、クロム等の遷移金属を含む場合、その含有量は100ppm以下であることが好ましい。アルミニウム合金からなる金属製容器は、アルミニウムからなる金属製容器よりも強度が飛躍的に増大するため、金属製容器の厚さを薄くすることができる。その結果、薄型で軽量かつ高出力で放熱性に優れた非水電解質電池を実現することができる。
ラミネートフィルムとしては、例えば、アルミニウム箔を樹脂フィルムで被覆した多層フィルム等が挙げられる。樹脂フィルムを構成する樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の高分子化合物が用いられる。
なお、本実施形態は、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、ボタン型等の種々の形態の非水電解質電池に適用することができる。
また、本実施形態に係る非水電解質電池は、上記の正極および負極からなる電極群に電気的に接続されるリードをさらに具備することができる。本実施形態に係る非水電解質電池は、例えば、2つのリードを具備することもできる。その場合、一方のリードは、正極集電タブに電気的に接続され、他方のリードは、負極集電タブに電気的に接続される。
リードの材料としては、特に限定されないが、例えば、正極集電体および負極集電体と同じ材料が用いられる。
本実施形態に係る非水電解質電池は、上記のリードに電気的に接続され、上記の外装材から引き出された端子をさらに具備することもできる。本実施形態に係る非水電解質電池は、例えば、2つの端子を具備することもできる。その場合、一方の端子は、正極集電タブに電気的に接続されたリードに接続され、他方の端子は、負極集電タブに電気的に接続されたリードに接続される。
端子の材料としては、特に限定されないが、例えば、正極集電体および負極集電体と同じ材料が用いられる。
(6)非水電解質電池
次に、本実施形態に係る非水電解質電池の一例として、図2および図3に示す扁平型非水電解質電池(非水電解質電池)30について説明する。図2は、扁平型非水電解質電池30の断面図模式図である。また、図3は、図2中に示すA部の拡大断面図である。なお、これら各図は本実施形態に係る非水電解質電池を説明するための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらについては、以下の説明と公知技術を参酌して適宜、設計変更することができる。
図2に示す非水電解質電池30は、扁平状の捲回電極群31が、外装材32内に収納されて構成されている。外装材32は、ラミネートフィルムを袋状に形成したものでもよく、金属製の容器であってもよい。また、扁平状の捲回電極群31は、外側、すなわち外装材32側から、負極33、セパレータ34、正極35、セパレータ34の順で積層した積層物を渦巻状に捲回し、プレス成型することにより形成される。図3に示すように、最外周に位置する負極33は、負極集電体33aの内面側の片面に負極層33bが形成された構成を有する。最外周以外の部分の負極33は、負極集電体33aの両面に負極層33bが形成された構成を有する。また、正極35は、正極集電体35aの両面に正極層35bが形成された構成を有する。なお、セパレータ34に代えて、上述したゲル状の非水電解質を用いてもよい。
図2に示す捲回電極群31は、その外周端近傍において、負極端子36が最外周の負極33の負極集電体33aに電気的に接続されている。正極端子37は内側の正極35の正極集電体35aに電気的に接続されている。これらの負極端子36および正極端子37は、外装材32の外部に延出されるか、外装材32に備えられた取り出し電極に接続される。
ラミネートフィルムからなる外装材を備えた非水電解質電池30を製造する際は、負極端子36および正極端子37が接続された捲回電極群31を、開口部を有する袋状の外装材32に装入する。次いで、液状非水電解質を外装材32の開口部から注入する。さらに、袋状の外装材32の開口部を、負極端子36および正極端子37を挟んだ状態でヒートシールすることにより、捲回電極群31および液状非水電解質を完全密封させる。
また、金属容器からなる外装材を備えた非水電解質電池30を製造する際は、負極端子36および正極端子37が接続された捲回電極群31を、開口部を有する金属容器に装入する。次いで。液状非水電解質を外装材32の開口部から注入する。さらに、金属容器に蓋体を装着して開口部を封口させる。
負極端子36としては、例えば、リチウムに対する電位が0V以上3V以下の範囲において電気的安定性と導電性とを備える材料を用いることができる。具体的には、アルミニウム、または、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、Si等の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。また、負極端子36は、負極集電体33aとの接触抵抗を低減するために、負極集電体33aと同様の材料であることがより好ましい。
正極端子37としては、リチウムに対する電位が2V以上4.25V以下の範囲において電気的安定性と導電性とを備える材料を用いることができる。具体的には、アルミニウムまたはMg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、Si等の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。正極端子37は、正極集電体35aとの接触抵抗を低減するために、正極集電体35aと同様の材料であることが好ましい。
以下、非水電解質電池30の構成部材である外装材32、負極33、正極35、セパレータ30および非水電解質について詳細に説明する。
(1)外装材
外装材32としては、上記の外装材が用いられる。
(2)負極
負極33としては、上述の第1の実施形態に係る電極が用いられる。
(3)正極
正極35としては、上記の正極が用いられる。
(4)セパレータ
セパレータ34としては、上記のセパレータが用いられる。
(5)非水電解質
非水電解質としては、上記の非水電解質が用いられる。
第2の実施形態に係る非水電解質電池は、前述した図2および図3に示す構成のものに限らず、例えば、図4および図5に示す構成の電池であってもよい。図4は、第2の実施形態に係る別の扁平型非水電解質電池を模式的に示す部分切欠斜視図であり、図5は図4のB部の拡大断面図である。
図4および図5に示す非水電解質電池40は、積層型電極群41が外装材42内に収納されて構成されている。積層型電極群41は、図5に示すように正極43と負極44とを、その間にセパレータ45を介在させながら交互に積層した構造を有する。
正極43は複数枚存在し、それぞれが正極集電体43aと、正極集電体43aの両面に担持された正極層43bとを備える。正極層43bには正極活物質が含有される。
負極44は複数枚存在し、それぞれが負極集電体44aと、負極集電体44aの両面に担持された負極層44bとを備える。負極層44bには負極材料が含有される。各負極44の負極集電体44aは、一辺が負極44から突出している。突出した負極集電体44aは、帯状の負極端子46に電気的に接続されている。帯状の負極端子46の先端は、外装材42から外部に引き出されている。また、図示しないが、正極43の正極集電体43aは、負極集電体44aの突出辺と反対側に位置する辺が正極43から突出している。正極43から突出した正極集電体43aは、帯状の正極端子47に電気的に接続されている。帯状の正極端子47の先端は、負極端子46とは反対側に位置し、外装材42の辺から外部に引き出されている。
図4および図5に示す非水電解質電池40を構成する各部材の材質、配合比、寸法等は、図2および図3において説明した非水電解質電池30の各構成部材と同様の構成である。
以上説明した本実施形態によれば、非水電解質電池を提供することができる。
本実施形態に係る非水電解質電池は、負極と、正極と、非水電解質と、セパレータと、外装材と、を具備する。負極は、上述の第1の実施形態に係る非水電解質電池用電極からなる。これにより、本実施形態に係る非水電解質電池は、エネルギー密度に優れ長寿命である。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る電池パックについて詳細に説明する。
本実施形態に係る電池パックは、上記の第2の実施形態に係る非水電解質電池(即ち、単電池)を電池として少なくとも1つ有する。電池パックに複数の単電池が含まれる場合、各単電池は、電気的に直列、並列、あるいは、直列と並列に接続して配置される。
第3の実施形態に係る電池パックは、保護回路を更に具備することができる。保護回路は、非水電解質電池の充放電を制御するものである。或いは、電池パックを電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を、電池パックの保護回路として使用することもできる。
また、第3の実施形態に係る電池パックは、通電用の外部端子を更に具備することもできる。通電用の外部端子は、非水電解質電池からの電流を外部に出力するため、および非水電解質電池に電流を入力するためのものである。言い換えれば、電池パックを電源として使用する際、電流が通電用の外部端子を通して外部に供給される。また、電池パックを充電する際、充電電流(自動車の動力の回生エネルギーを含む)は通電用の外部端子を通して電池パックに供給される。
図6および図7を参照して、本実施形態に係る電池パック50を具体的に説明する。図7に示す電池パック50においては、単電池51として、図2に示す扁平型非水電解質電池30を使用している。
複数の単電池51は、外部に延出した負極端子36および正極端子37が同じ向きに揃えられるように積層され、粘着テープ52で締結することによって組電池53を構成している。これらの単電池51は、図6および図7に示すように、互いに電気的に直列に接続されている。
プリント配線基板54は、負極端子36および正極端子37が延出する単電池51の側面と対向して配置されている。図6に示すように、プリント配線基板54には、サーミスタ55(図7を参照)、保護回路56および外部機器への通電用端子57が搭載されている。なお、組電池53と対向するプリント配線基板54の面には、組電池53の配線と不要な接続を回避するために絶縁板(図示せず)が取り付けられている。
正極側リード58は、組電池53の最下層に位置する正極端子37に接続され、その先端はプリント配線基板54の正極側コネクタ59に挿入されて電気的に接続されている。負極側リード60は、組電池53の最上層に位置する負極端子36に接続され、その先端は、プリント配線基板54の負極側コネクタ61に挿入されて電気的に接続されている。これらの正極側コネクタ59、負極側コネクタ61は、プリント配線基板54に形成された配線62、63(図7を参照)を通じて保護回路56に接続されている。
サーミスタ55は、単電池51の温度を検出するために用いられ、図6においては図示を省略しているが、単電池51の近傍に設けられるとともに、その検出信号は保護回路56に送信される。保護回路56は、電池パックを保護するために単電池51の充放電を制御するものである。所定の条件で保護回路56と外部機器への通電用端子57との間のプラス側配線64aおよびマイナス側配線64bを遮断できる。ここで、上記の所定の条件とは、例えば、サーミスタ55の検出温度が所定温度以上になったときである。さらに、所定の条件とは、単電池51の過充電、過放電、過電流等を検出したときである。このような過充電等の検出は、個々の単電池51もしくは単電池51全体について行われる。なお、個々の単電池51における過充電等を検出する場合には、電池電圧を検出してもよいし、正極電位もしくは負極電位を検出してもよい。後者の場合、個々の単電池51中に参照極として用いるリチウム電極が挿入される。図6および図7の場合、単電池51それぞれに電圧検出のための配線65を接続し、これら配線65を通して検出信号が保護回路56に送信される。
図6に示すように、正極端子37および負極端子36が突出する側面を除く組電池53の三側面には、ゴムもしくは樹脂からなる保護シート66がそれぞれ配置されている。
組電池53は、各保護シート66およびプリント配線基板54とともに、収納容器67内に収納される。すなわち、収納容器67の長辺方向の両方の内側面と短辺方向の内側面それぞれに保護シート66が配置され、短辺方向の保護シート66とは反対側の内側面にプリント配線基板54が配置される。組電池53は、保護シート66およびプリント配線基板54で囲まれた空間内に位置する。蓋68は、収納容器67の上面に取り付けられている。
なお、組電池53の固定には、粘着テープ52に代えて熱収縮テープを用いてもよい。この場合、組電池の両側面に保護シートを配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて組電池を結束させる。
ここで、図6、図7においては、単電池51を直列接続した形態を示したが、電池容量を増大させるためには、単電池51を並列に接続しても、または、直列接続と並列接続とを組み合わせた構成としてもよい。また、組み上がった電池パックを、さらに直列、並列に接続することも可能である。
以上説明した本実施形態によれば、電池パックを提供することができる。本実施形態に係る電池パックは、上記の第2の実施形態に係る非水電解質電池を少なくとも1つ具備する。
このような電池パックは、エネルギー密度に優れ長寿命である。
なお、電池パックの態様は用途により適宜変更される。本実施形態に係る電池パックの用途としては、大電流を取り出したときに優れたサイクル特性を示すことが要求されるものが好ましい。具体的には、デジタルカメラの電源用や、二輪もしくは四輪のハイブリッド電気自動車、二輪もしくは四輪の電気自動車、アシスト自転車等の車両に用いられる車載用が挙げられる。特に、高温特性の優れた非水電解質電池を用いた電池パックは、車載用に好適に用いられる。電池パックを搭載した車両において、電池パックは、例えば、自動車の動力の回生エネルギーを回収するものである。
以下、実施例に基づいて上記の実施形態をさらに詳細に説明する。
<実施例1>
負極活物質として、平均一次粒子径30μmのケイ素(Si)粒子(42質量%)、バインダーとしてポリイミド樹脂(16質量%)、導電剤として平均一次粒子径5μmの黒鉛(42質量%)を用い、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)とともにプラネタリーミキサーへ投入、攪拌・混合して、懸濁液を調製した。
この懸濁液をステンレス箔上に塗布し圧延した後、400℃にて2時間熱処理し、負極活物質層を形成し、実施例1の負極を作製した。
熱処理後、飽和N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を含有するアルゴンガスを1L/minで流し、冷却した。
熱処理後、プレスを行い、プレス前後での厚さ変化量を確認した。
また、ステンレス箔から負極活物質層を0.1mg剥ぎ取り、負極活物質層に含まれるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を熱分解GC/MSで定量した。熱分解温度を200℃とした。結果を表1に示す。
<実施例2>
負極活物質として、平均一次粒子径30μmのケイ素(Si)粒子(46質量%)、バインダーとしてポリイミド樹脂(8質量%)、導電剤として平均一次粒子径5μmの黒鉛(46質量%)を用い、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)とともにプラネタリーミキサーへ投入、攪拌・混合して、懸濁液を調製した。
この懸濁液をステンレス箔上に塗布し圧延した後、400℃にて2時間熱処理し、負極活物質層を形成し、実施例2の負極を作製した。
熱処理後、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)蒸気中で、冷却した。
熱処理後、プレスを行い、プレス前後での厚さ変化量を確認した。
また、ステンレス箔から負極活物質層を0.1mg剥ぎ取り、負極活物質層に含まれるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を熱分解GC/MSで定量した。熱分解温度を200℃とした。結果を表1に示す。
<実施例3>
負極活物質として、平均一次粒子径30μmのケイ素(Si)粒子(39質量%)、バインダーとしてポリイミド樹脂(22質量%)、導電剤として平均一次粒子径5μmの黒鉛(39質量%)を用い、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)とともにプラネタリーミキサーへ投入、攪拌・混合して、懸濁液を調製した。
この懸濁液をステンレス箔上に塗布し圧延した後、400℃にて2時間熱処理し、負極活物質層を形成し、実施例3の負極を作製した。
熱処理後、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)蒸気中で、冷却した。
熱処理後、プレスを行い、プレス前後での厚さ変化量を確認した。
また、ステンレス箔から負極活物質層を0.1mg剥ぎ取り、負極活物質層に含まれるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を熱分解GC/MSで定量した。熱分解温度を200℃とした。結果を表1に示す。
<実施例4>
負極活物質として、平均一次粒子径30μmのスズ(Sn)粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして実施例4の負極を作製した。
また、実施例1と同様にして、実施例4の負極について、プレス前後での厚さ変化量の確認と負極活物質層に含まれるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)の定量を行った。結果を表1に示す。
<実施例5>
負極活物質として、平均一次粒子径30μmのスズ(Sn)粒子を用いたこと以外は実施例2と同様にして実施例5の負極を作製した。
また、実施例1と同様にして、実施例5の負極について、プレス前後での厚さ変化量の確認と負極活物質層に含まれるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)の定量を行った。結果を表1に示す。
<実施例6>
負極活物質として、平均一次粒子径30μmのスズ(Sn)粒子を用いたこと以外は実施例3と同様にして実施例6の負極を作製した。
また、実施例1と同様にして、実施例6の負極について、プレス前後での厚さ変化量の確認と負極活物質層に含まれるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)の定量を行った。結果を表1に示す。
<実施例7>
負極活物質として、平均一次粒子径30μmの二酸化ケイ素(SiO)粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして実施例7の負極を作製した。
また、実施例1と同様にして、実施例7の負極について、プレス前後での厚さ変化量の確認と負極活物質層に含まれるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)の定量を行った。結果を表1に示す。
<実施例8>
負極活物質として、平均一次粒子径30μmの二酸化ケイ素(SiO)粒子を用いたこと以外は実施例2と同様にして実施例8の負極を作製した。
また、実施例1と同様にして、実施例8の負極について、プレス前後での厚さ変化量の確認と負極活物質層に含まれるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)の定量を行った。結果を表1に示す。
<実施例9>
負極活物質として、平均一次粒子径30μmの二酸化スズ(SnO)粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして実施例9の負極を作製した。
また、実施例1と同様にして、実施例9の負極について、プレス前後での厚さ変化量の確認と負極活物質層に含まれるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)の定量を行った。結果を表1に示す。
<実施例10>
負極活物質として、平均一次粒子径30μmの二酸化スズ(SnO)粒子を用いたこと以外は実施例2と同様にして実施例10の負極を作製した。
また、実施例1と同様にして、実施例10の負極について、プレス前後での厚さ変化量の確認と負極活物質層に含まれるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)の定量を行った。結果を表1に示す。
<実施例11>
負極活物質として、平均一次粒子径30μmの酸化ケイ素(SiO)粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして実施例11の負極を作製した。
また、実施例1と同様にして、実施例11の負極について、プレス前後での厚さ変化量の確認と負極活物質層に含まれるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)の定量を行った。結果を表1に示す。
<実施例12>
負極活物質として、平均一次粒子径30μmの酸化ケイ素(SiO)粒子を用いたこと以外は実施例2と同様にして実施例11の負極を作製した。
また、実施例1と同様にして、実施例12の負極について、プレス前後での厚さ変化量の確認と負極活物質層に含まれるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)の定量を行った。結果を表1に示す。
<実施例13>
熱処理後、ジメチルアセトアミド(DMAC)蒸気中で、冷却したこと以外は実施例1と同様にして実施例13の負極を作製した。
また、実施例1と同様にして、実施例13の負極について、プレス前後での厚さ変化量の確認と負極活物質層に含まれるジメチルアセトアミドの定量を行った。結果を表1に示す。
<実施例14>
熱処理後、ジメチルホルムアミド(DMF)蒸気中で、冷却したこと以外は実施例1と同様にして実施例14の負極を作製した。
また、実施例1と同様にして、実施例14の負極について、プレス前後での厚さ変化量の確認と負極活物質層に含まれるジメチルホルムアミドの定量を行った。結果を表1に示す。
<実施例15>
熱処理後、ジメチルスルホキシド(DMSO)蒸気中で、冷却したこと以外は実施例1と同様にして実施例15の負極を作製した。
また、実施例1と同様にして、実施例15の負極について、プレス前後での厚さ変化量の確認と負極活物質層に含まれるジメチルホルムアミドの定量を行った。結果を表1に示す。
<実施例16>
ステンレス箔の代わりに、銅箔を用いたこと以外は実施例1と同様にして実施例16の負極を作製した。
また、実施例1と同様にして、実施例16の負極について、プレス前後での厚さ変化量の確認と負極活物質層に含まれるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)の定量を行った。結果を表1に示す。
<比較例1>
負極活物質として、平均一次粒子径30μmのケイ素(Si)粒子(42質量%)、バインダーとしてポリイミド樹脂(16質量%)、導電剤として平均一次粒子径5μmの黒鉛(42質量%)を用い、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)とともにプラネタリーミキサーへ投入、攪拌・混合して、懸濁液を調製した。
この懸濁液をステンレス箔上に塗布し圧延した後、400℃にて2時間熱処理し、負極活物質層を形成し、比較例1の負極を作製した。
熱処理後、プレスを行い、プレス前後での厚さ変化量を確認した。
また、ステンレス箔から負極活物質層を0.1mg剥ぎ取り、負極活物質層に含まれるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を熱分解GC/MSで定量し用としたが測定できなかった。熱分解温度を200℃とした。結果を表1に示す。
<比較例2>
ポリイミド樹脂を30質量%用いたこと以外は比較例1と同様にして比較例2の負極を作製した。
また、実施例1と同様にして、比較例2の負極について、プレス前後での厚さ変化量の確認と負極活物質層に含まれるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)の定量を行った。結果を表1に示す。
<比較例3>
ポリイミド樹脂を5質量%用いたこと以外は比較例1と同様にして比較例3の負極を作製した。
また、実施例1と同様にして、比較例3の負極について、プレス前後での厚さ変化量の確認と負極活物質層に含まれるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)の定量を行った。結果を表1に示す。
Figure 2017168379
表1の結果から、実施例1〜実施例16は、負極活物質層における溶媒の含有量が0.01μg/mg以上0.1μg/mg以下であるため、負極活物質層の厚さの変化量が5nm以下であった。
一方、比較例1〜比較例3は、負極活物質層における溶媒の含有量が0.01μg/mg未満、または、0.1μg/mgを超えるため、負極活物質層の厚さの変化量が大きかった。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
10・・・非水電解質電池用電極、11・・・集電体、12・・・活物質層、30・・・非水電解質電池、31・・・捲回電極群、32・・・外装材、33・・・負極、34・・・セパレータ、35・・・正極、36・・・負極端子、37・・・正極端子、40・・・非水電解質電池、41・・・積層型電極群、42・・・外装材、43・・・正極、43a・・・正極集電体、44・・・負極、44a・・・負極集電体、45・・・セパレータ、46・・・負極端子、47・・・正極端子、50・・・電池パック、51・・・単電池、52・・・粘着テープ、53・・・組電池、54・・・プリント配線基板、55・・・サーミスタ、56・・・保護回路、57・・・通電用端子、58・・・正極側リード、59・・・正極側コネクタ、60・・・負極側リード、61・・・負極側コネクタ、62・・・配線、63・・・配線、64a・・・プラス側配線、64b・・・マイナス側配線、65・・・配線、66・・・保護シート、67・・・収納容器、68・・・蓋。

Claims (7)

  1. 集電体と、前記集電体上に形成される活物質層と、を備え、
    前記活物質層は、活物質を含む非水電解質電池用電極材料と、ポリイミド樹脂からなるバインダーと、溶媒と、を含み、
    前記活物質層における溶媒の含有量は、0.006μg/mg以上0.1μg/mg以下である非水電解質電池用電極。
  2. 前記溶媒は、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドである請求項1に記載の非水電解質電池用電極。
  3. 前記非水電解質電池用電極材料は、ケイ素粒子、ケイ素酸化物粒子、ケイ素含有合金粒子、スズ粒子、スズ酸化物粒子およびスズ含有合金粒子からなる群から選択される少なくとも1種の活物質と、炭素質物と、を含む請求項1または2に記載の非水電解質電池用電極。
  4. 前記非水電解質電池用電極材料は、ケイ素粒子とケイ素酸化物粒子からなる複合粒子が、前記炭素質物中に分散してなる請求項3に記載の非水電解質電池用電極。
  5. 正極活物質を含む正極と、負極と、非水電解質と、を具備し、
    前記負極は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水電解質電池用電極からなる非水電解質電池。
  6. 請求項5に記載の非水電解質電池を具備する電池パック。
  7. 通電用の外部端子と、保護回路とをさらに含む請求項6に記載の電池パック。
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