JP2017165912A - 脂肪酸エステル系潤滑油組成物 - Google Patents
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油圧機器などの設備機械は工程上、水が混入する可能性があるが、脂肪酸エステル系潤滑油は鉱物油系潤滑油よりも加水分解安定性(耐加水分解性)が劣る。そのため鉱物油系潤滑油と同等に長期や高温条件で使用するためには一層の加水分解安定性の向上が望まれている。
下記一般式(1)で表される化合物(1)及び下記一般式(2)で表される化合物(2)を7:3〜3:7の質量比で含み、前記化合物(1)及び前記化合物(2)の合計含有量が組成物全量に対して0.06〜0.15質量%である錆止め剤と、
を含有し、40℃における動粘度が10〜600mm2/sである脂肪酸エステル系潤滑油組成物。
本発明の脂肪酸エステル系潤滑油組成物は、基油として、脂肪酸エステルを用いる。
また、本発明で用いる基油は1種単独であってもよいし、2種以上を混合してもよい。
なお、基油として2種以上のエステルを混合して使用する場合には、個々のエステルの40℃における動粘度が上記範囲を外れていても、潤滑油組成物の40℃における動粘度が10〜600mm2/sであればよい。
本発明の脂肪酸エステル系潤滑油組成物に含まれる基油は、実質的に上記脂肪酸エステル基油からなることが好ましいが、本発明の効果を顕著に損ねない範囲であれば、少量の鉱油や合成系基油を配合することもできる。すなわち、2種以上の基油を併用する場合、少なくとも1種は脂肪酸エステルである必要があるが、本発明の効果が奏される限りにおいて、潤滑油組成物の40℃における動粘度が10〜600mm2/sであれば、脂肪酸エステルと脂肪酸エステル以外の基油を含んでもよい。
なお、本発明に係る脂肪酸エステル系潤滑油組成物は、生分解性等の観点から、基油に占める脂肪酸エステルの割合が90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
本発明の脂肪酸エステル系潤滑油組成物は、錆止め剤として一般式(1)で表される化合物(1)及び一般式(2)で表される化合物(2)を含有し、化合物(1)及び化合物(2)の質量比は7:3〜3:7であり、化合物(1)及び化合物(2)の合計含有量が組成物全量に対して0.06〜0.15質量%である。
また、一般式(1)におけるnは1以上である。錆止め性の観点から、nは好ましくは3〜14であり、より好ましくは5〜12である。
本発明の脂肪酸エステル系潤滑油組成物には、前記成分(基油及び錆止め剤)のほか、必要に応じて他の成分を適量配合することができる。
その他の添加剤としては、例えば、通常の潤滑油組成物に用いられる成分、例えば酸化防止剤、極圧剤、一般式(1)で表される化合物(1)及び一般式(2)で表される化合物(2)以外の錆止め剤(その他の錆止め剤)、腐食防止剤、消泡剤などの各種添加剤を、本発明の効果を著しく損なわない範囲で適宜添加することができる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ホスホン酸エステル等のリン系酸化防止剤等の酸化防止剤を含有することができる。
極圧剤としては、例えばトリクレジルホスフェート、硫化オレフィンなどが挙げられる。
その他の錆止め剤としては、例えばアルケニルコハク酸及びその誘導体(一般式(1)で表される化合物(1)及び一般式(2)で表される化合物(2)を除く)、ソルビタンモノオレートなどのエステル、ワックス酸化物、中性バリウムスルホネート、ソルビタントリオール、パラフィン又はその他アミン類などが挙げられる。
腐食防止剤としては、例えばジアルキルジチオりん酸塩、ベンゾトリアゾール及びその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアゾリル−2,5−ビスアルキルジチオカルバメートなどが挙げられる。
消泡剤としては例えばポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
実施例及び比較例において試料の調製に用いた脂肪酸エステル基油、錆止め剤、酸化防止剤は次のとおりである。なお、脂肪酸エステル基油及び潤滑油組成物の40℃動粘度はJIS K2283(2000年)動粘度試験方法により測定した値であり、初期酸価はJIS K2501(2003年)中和価試験方法により測定した値である。
(A−1) グリセロールとオレイン酸とからなる脂肪酸エステルを主成分とする菜種油。
初期酸価:0.04mgKOH/g
40℃における動粘度:35.44mm2/s
(A−2) ぺンタエリスリトールとジカルボン酸と飽和脂肪酸とからなる脂肪酸エステル。
初期酸価:0.06mgKOH/g
40℃における動粘度:951mm2/s
(A−3) ペンタエリスリトールと飽和脂肪酸とからなる脂肪酸エステル。
初期酸価:0.02mgKOH/g
40℃における動粘度:97.36mm2/s
(A−4) 炭素数6の3価のトリメチロールプロパンと直鎖不飽和脂酸との脂肪酸エステル。
初期酸価:0.2mgKOH/g
40℃における動粘度:48.0mm2/s
(B−1) 一般式(1)においてR1及びR2がそれぞれ2−テトラプロペニルであり、nが8を最大にして分布を持つ化合物。
ここで、「2−テトラプロペニル」とは、「−CH2CH=CH(CH2)8−CH3)」で表される構造を有するアルケニル基である。
(B−2) 一般式(2)で表される化合物であって、2−テトラプロペニルコハク酸と1,2−プロパンジオールとのモノエステル(R3:−CH2CH=CH(CH2)8−CH3)
(B−3) アルケニルコハク酸イミド
(B−4) アルケニルコハク酸ハーフエステル
(B−5) オレイルサルコシン
(C−1) フェニル−α−ナフチルアミン
(C―2) トリ(tert−ブチルフェニル)フォスフェート
(C―3) 2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール
<加水分解安定性試験>
ASTM−D−2619に基づき、加水分解安定性試験を以下のように実施した。
試料として調製した脂肪酸エステル系潤滑油組成物75gと水25gとの混合物を用い、試験時間300時間で試験を行い、試験前後の油相の40℃動粘度の測定値から粘度変化率を算出した。
JIS−K−2510に準拠した錆止め性能試験を以下のように実施した。
試料として調製した脂肪酸エステル系潤滑油組成物300mlと人工海水又は蒸留水30mlとの混合液中に鋼製丸棒の試験片を浸し、60℃の温度で24時間かき混ぜ、試験片に生じた錆の有無を確認した。
一方、比較例5の潤滑油は、人工海水及び蒸留水のいずれに対しても錆の発生が無かったが、粘度変化率が大きく、加水分解安定性(耐加水分解性)が不十分であった。また、他の比較例の潤滑油では、加水分解安定性(耐加水分解性)が高い場合でも、少なくとも人工海水に対して錆が発生し、錆止め性が不十分であった。なお、比較例5、6では、いずれも実施例1と同種の成分を用いているが、比較例5では錆止め剤として配合したB−1とB−2の合計量が多過ぎたため、加水分解安定性が不十分となったと考えられる。一方、比較例6では、B−1とB−2の合計量が少な過ぎたため、人工海水に対する錆止め性が不十分であったと考えられる。
Claims (3)
- 脂肪酸エステルと、
下記一般式(1)で表される化合物(1)及び下記一般式(2)で表される化合物(2)を7:3〜3:7の質量比で含み、前記化合物(1)及び前記化合物(2)の合計含有量が組成物全量に対して0.06〜0.15質量%である錆止め剤と、
を含有し、40℃における動粘度が10〜600mm2/sである脂肪酸エステル系潤滑油組成物。
(式(1)及び式(2)において、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立に炭素数3〜20のアルケニル基を表し、nは1以上の整数を表す。) - 前記脂肪酸エステルの酸価が0.1mgKOH/g以下である請求項1に記載の脂肪酸エステル系潤滑油組成物。
- 船尾管に用いられる請求項1又は請求項2に記載の脂肪酸エステル系潤滑油組成物。
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