JP2017164297A - 新鮮凍結血漿製剤用血液バッグ - Google Patents

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Abstract

【課題】内層がヒートシール性を有し、低温耐衝撃性、内容物を入れずに高温滅菌した際の耐ブロッキング性、衛生性、耐熱性等に優れた新鮮凍結血漿製剤用血液バッグを提供する。【解決手段】シール層を備えた少なくとも2層以上の多層フィルムにより形成され、該シール層が内壁面を構成しており、該シール層はポリプロピレン系樹脂組成物からなり、かつ該ポリプロピレン系樹脂組成物が昇温溶離分別法(TREF法)において、80℃までの積算溶出量が10〜30重量%である新鮮凍結血漿製剤用血液バッグ。【選択図】なし

Description

本発明は、内層がヒートシール性を有し、低温耐衝撃性、内容物を入れずに高温滅菌した際の耐ブロッキング性、衛生性、耐熱性等に優れた新鮮凍結血漿製剤用血液バッグに関する。
医療分野で輸血に使用される血液は、通常供血者の献血により得られた血液を、各成分に分離して保存後、輸血に使用される。例えば、全血を採決バッグに入れて遠心分離器にかけ、低密度(低比重)成分と高密度(高比重)の赤血球成分とに分離し、採血バッグを加圧することにより上澄成分である血漿を、チューブを介して血漿製剤用血液バッグに移送し、チューブをシール切断する。これにより、全血は、血漿成分と赤血球成分に分画されるとともに、分画された各成分は、血漿製剤と赤血球製剤として利用される。ここで、血漿の採取に使用される血漿製剤用血液バッグは、予め高温滅菌処理されている。
血漿製剤用血液バッグに分画採取された血漿製剤は、凍結され、新鮮凍結血漿製剤(FFP)として保存される。新鮮凍結血漿製剤の使用時には、新鮮凍結血漿製剤を血液バッグごと恒温槽やFFP融解装置を用いて30〜37℃程度の温湯で融解させた後、輸血に使用される。
このようなことから、新鮮凍結血漿製剤用血液バッグには、凍結処理温度に耐える低温耐衝撃性と、内容物を入れずに高温滅菌した際の耐ブロッキング性、耐熱性、衛生性が要求される。また、血漿製剤用血液バッグは、通常、所定の形状に切断した枚葉形態のフィルム同士の周縁部を熱融着して袋状に成形することにより製包されるため、製包時に内側となる層には、製包のためのヒートシール性も必要となる。
従来、血液バッグを構成する材料としては、柔軟性、血液保存性等に優れるために一般的には軟質塩化ビニル樹脂組成物が用いられている(非特許文献1)。一方、血液バッグを構成する材料として、ポリオレフィン系樹脂組成物を使用するものも開示されており、例えば、密度0.860〜0.930g/cmのメタロセン触媒により重合されるポリエチレン又はエチレン・α−オレフィン共重合体を特定量含むものが開示されている(特許文献1)。
なお、医療分野で使用される液体保存バッグには、血液バッグの他輸液バッグと称されるものがある。輸液バッグは、アミノ酸輸液剤、電解質輸液剤、糖質輸液剤、輸液用脂肪乳剤などの液状の医薬品を収容するものであり、血液バッグとは用途、使用形態、要求特性が全く異なり、明確に区別される。
特開2002−136572号公報
Jounrnal of the Japan Society of Blood Transfusion 26(5):301−360,1980
前記非特許文献1に記載されているような軟質塩化ビニル樹脂組成物を用いた血液バッグの場合、低温耐衝撃性が悪いため、血液を充填したバッグを凍結保存した状態で輸送、保管した際に破損するおそれがある。
ところで、血液バッグは予め内容物を入れずに高温での滅菌処理が行われる。本発明者は、前記特許文献1に記載されているような内層材を使用した場合、血液バッグを内容物を入れずに高温滅菌した際に内層面同士がブロッキングしてしまうという問題を見出した。
本発明の課題は、内層がヒートシール性を有し、低温耐衝撃性、内容物を入れずに高温滅菌した際の耐ブロッキング性、衛生性、耐熱性等に優れた新鮮凍結血漿製剤用血液バッグを提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、内壁層を構成するシール層の構成材料として、昇温溶離分別法(TREF法)による測定において、所定の温度で所定の溶出特性を示すポリプロピレン系樹脂組成物を用いることにより、上記課題を解決しうることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて成し遂げられたものである。
即ち、本発明の要旨は以下[1]〜[6]の通りである。
[1] シール層を備えた少なくとも2層以上の多層フィルムにより形成され、該シール層が内壁面を構成しており、該シール層はポリプロピレン系樹脂組成物からなり、かつ該ポリプロピレン系樹脂組成物が昇温溶離分別法(TREF法)において、80℃までの積算溶出量が10〜30重量%である新鮮凍結血漿製剤用血液バッグ。
[2] 前記シール層のポリプロピレン系樹脂組成物において、昇温溶離分別法(TREF法)における40℃までの積算溶出量が5〜20重量%である、[1]に記載の新鮮凍結血漿製剤用血液バッグ。
[3] 前記シール層のポリプロピレン系樹脂組成物において、昇温溶離分別法(TREF法)における最大溶出温度が90℃以上である、[1]又は[2]に記載の新鮮凍結血漿製剤用血液バッグ。
[4] 前記シール層のポリプロピレン系樹脂組成物において、昇温溶離分別法(TREF法)における100℃までの積算溶出量が40重量%以上である、[1]乃至[3]のいずれかに記載の新鮮凍結血漿製剤用血液バッグ。
[5] 前記シール層の厚みが10〜50μmである、[1]乃至[4]のいずれかに記載の新鮮凍結血漿製剤用血液バッグ。
[6] 前記多層フィルムが、前記シール層と外層とが中間層を介して積層された3層構成であり、シール層の厚みが10〜50μmであり、中間層の厚みが100〜300μmであり、かつ外層の厚みが10〜50μmである、[1]乃至[4]のいずれかに記載の新鮮凍結血漿製剤用血液バッグ。
本発明によれば、内層がヒートシール性を有し、低温耐衝撃性、内容物を入れずに高温滅菌した際の耐ブロッキング性、衛生性、耐熱性等に優れた新鮮凍結血漿製剤用血液バッグが提供される。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
本発明の新鮮凍結血漿製剤用血液バッグ(以下、「本発明の血液バッグ」と称す場合がある。)は、シール層を備えた少なくとも2層以上の多層フィルムにより形成され、該シール層が内壁面を構成しており、該シール層はポリプロピレン系樹脂組成物からなり、かつ該ポリプロピレン系樹脂組成物が昇温溶離分別法(TREF法)において、80℃までの積算溶出量が10〜30重量%であることを特徴とするものである。以下において、本発明の血液バッグのシール層を構成するポリプロピレン系樹脂組成物を「本発明のポリプロピレン系樹脂組成物」と称す場合がある。本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、昇温溶離分別法(TREF法)における40℃までの積算溶出量が5〜20重量%、100℃までの積算溶出量が40重量%以上、最大溶出温度が90℃以上であることが好ましい。
また、本発明の血液バッグを構成する多層フィルムは、前記シール層と外層とが中間層を介して積層された3層構成の多層フィルム(以下、「本発明の多層フィルム」と称す場合がある。)であることが好ましい。
[昇温溶離分別法(TREF法)]
昇温溶離分別法(TREF法)は、試料(ポリプロピレン系樹脂組成物)を低温領域から高温領域へと徐々に昇温していき、各温度における溶離成分を分別する方法であり、ポリプロピレン系樹脂組成物の結晶性の評価等に用いられる測定方法として周知のものである。例えば、次の文献1)〜3)などにおいて詳細な測定法が示されており、当業者によく知られているものである。
1)G.Glockner,J.Appl.Polym.Sci.:Appl.Polym.Symp.;45.1−24(1990)
2)L.Wild.Adv.Polym.Sci.;98.1−47(1990)
3)J.B.P.Soares,A.E.Hamielec.Polymer;36,8,1639−1654(1995)
本発明におけるポリプロピレン系樹脂組成物による溶出量の測定は、具体的には以下の方法で行われる。
<昇温溶離分別法(TREF法)による溶出量の測定>
本発明における昇温溶離分別法(TREF法)による溶出量の測定では、試料50mgを、0.1g/L ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を添加したオルトジクロロベンゼン(ODCB)20mLに加熱溶解したものをクロス分別クロマトグラフ(Cross Fractionation Chromatograph(CFC))測定により、以下の条件で溶出量を測定する。
装置 : PolymerChAR CFC−2
検出器 : IR検出器(内蔵)
移動相 : 試薬特級ODCB
流速 : 1.0mL/分
注入 : 2.5mg/mL×400μL
カラム : TSKgel GMH6−HT
(7.5mm I.D×30cmL×4)
カラム槽温度 : 135℃
溶解条件 : 60分/135℃
降温条件 : 135分/135℃→0℃
TREFカラム : ステンレスビーズ
溶出区分 : 36区分
較正試料 : 単分散ポリスチレン
較正法 : ポリプロピレン換算(汎用較正曲線法)
較正曲線近式 : 3次式
[ポリプロピレン系樹脂組成物]
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、昇温溶離分別法(TREF法)において、80℃までの積算溶出量が10〜30重量%であるものである。
80℃までの積算溶出量が10重量%以上であることは、この温度までにポリプロピレン系樹脂組成物が溶出することを意味し、これによりシール層にヒートシール性を付与することができる。一方、80℃までの積算溶出量が30重量%以下であることは、この温度までのポリプロピレン系樹脂組成物の溶出量がある程度少量であることを意味し、高温での滅菌時におけるシール層の耐ブロッキング性を得ることができる。上記効果をより一層確実に得る上で、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、昇温溶離分別法(TREF法)において、80℃までの積算溶出量が12〜28重量%であることが好ましい。
また、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、昇温溶離分別法(TREF法)において、40℃までの積算溶出量が5〜20重量%であることが好ましい。40℃までの積算溶出量が5重量%以上であることは、この温度でポリプロピレン系樹脂組成物が溶出することを意味し、このためにシール層のヒートシール性を向上させることができる。一方、40℃までの積算溶出量が20重量%以下であることは、この温度までにポリプロピレン系樹脂組成物の溶出量がある程度少量であることを意味し、高温での滅菌時におけるシール層の耐ブロッキング性を向上させることができる。上記効果をより一層確実に得る上で、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、昇温溶離分別法(TREF法)において、40℃までの積算溶出量が7〜18重量%であることが好ましい。
また、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、昇温溶離分別法(TREF法)における最大溶出温度が90℃以上であることが好ましい。
最大溶出温度が90℃以上であることにより、高温での滅菌時におけるシール層の耐ブロッキング性が向上する。耐ブロッキング性の観点から最大溶出温度は高い程好ましく、より好ましくは100℃以上である。最大溶出温度の上限は制限されないが、ポリプロピレン系樹脂組成物の最大溶出温度は通常120℃以下である。
また、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、昇温溶離分別法(TREF法)における100℃までの積算溶出量が40重量%以上であることが好ましい。
100℃までの積算溶出量が40重量%以上であることは、この温度までにポリプロピレン系樹脂組成物がある程度溶出することを意味し、このためにシール層のヒートシール性を向上させることができる。ヒートシール性の観点から100℃までの積算溶出量は多い程好ましく、42重量%以上であることが好ましい。一方、耐熱性の観点から、100℃での溶出量の上限は好ましくは70重量%以下であり、より好ましくは68重量%以下である。
また、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の昇温溶離分別法(TREF法)における溶出特性として、20℃までの積算溶出量は10重量%以下、特に3〜8重量%であることが好ましく、60℃までの積算溶出量は10〜20重量%であることが好ましく、80℃までの積算溶出量は18〜28重量%であることが好ましい。
昇温溶離分別法(TREF法)における積算溶出量が、上記の好適な積算溶出量を満たすポリプロピレン系樹脂組成物を製造する方法には特に制限はなく、前述の積算溶出量を満たすものであれば、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物はいかなる方法で製造されたものであってもよいが、例えば、プロピレン単独重合体と、プロピレン・α−オレフィン共重合体とを溶融混練することにより調製することができる。
プロピレン単独重合体と溶融混練するプロピレン・α−オレフィン共重合体は、特に、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体が好ましく、そのα−オレフィンとしては炭素数が2又は4〜20のα−オレフィンが好ましく、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル1−ペンテンなどのプロピレン以外のα−オレフィン、スチレン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナンなどのビニル化合物等の1種又は2種以上が挙げられる。これらのうち、エチレン及び/又は1−ブテンが好ましく、エチレンが特に好ましい。
プロピレン・α−オレフィン共重合体のα−オレフィン含有量については特に制限はないが、一般に、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体においてα−オレフィン含有量が多いほど昇温溶離分別法(TREF法)における積算溶出量は増加し、α−オレフィン含有量が少ないほど減少する傾向がある。また、プロピレン単独重合体とプロピレン・α−オレフィン共重合体とを溶融混練してポリプロピレン系樹脂組成物を製造する場合、プロピレン・α−オレフィン共重合体の使用量が多い程昇温溶離分別法(TREF法)における積算溶出量は増加し、少ない程減少する傾向がある。
従って、用いるプロピレン・α−オレフィン共重合体のα−オレフィン含有量と、プロピレン単独重合体とプロピレン・α−オレフィン共重合体との混合割合とを適宜調整することにより、前述の溶出特性を満たす本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を製造することができる。
即ち、例えば、プロピレン単独重合体とプロピレン・α−オレフィン共重合体とを溶融混練して得られたポリプロピレン系樹脂組成物の80℃までの積算溶出量が30重量%を超える場合にはプロピレン・α−オレフィン共重合体の割合を減少させればよい。逆に10重量%より少ない場合にはプロピレン・α−オレフィン共重合体の割合を増加すればよい。
また、40℃までの積算溶出量については、プロピレン・α−オレフィン共重合体の割合を増減することにより調整することができる。 また、100℃までの積算溶出量については、プロピレン・α−オレフィン共重合体の割合を増減することにより調整することができる。さらに最大溶出温度については、プロピレン・α−オレフィン共重合体の割合を増減することにより調整することができる。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、上記のように、プロピレン単独重合体とプロピレン・α−オレフィン共重合体とを、プロピレン・α−オレフィン共重合体のα−オレフィン含有量とこれらの使用割合を適宜調整して溶融混練することで製造することができる。
以上に詳述した積算溶出量を満たすようにするため、プロピレン単独重合体とプロピレン・α−オレフィン共重合体は、これらの合計量に対してプロピレン単独重合体を1〜120重量%含有することが好ましく、3〜15重量%であることがより好ましく、5〜10重量%であることが更に好ましい。
[外層]
本発明の多層フィルムの外層は、通常、熱可塑性樹脂により構成されたものであり、その種類は特に制限されないが、プロピレン系重合体を主成分とする樹脂組成物で構成されることが好ましい。ここで、「主成分とする」とは、該樹脂組成物中の50重量%より多く占めることを言い、特にプロピレン系重合体は60重量%以上含有されていることが好ましく、一方、その含有量の上限は100重量%である。プロピレン系重合体の含有量が上記下限値以上であるとヒートシール時のフィルムの取り扱い性が良好となる傾向にある。なお、ここでいう「プロピレン系重合体」とは、原料の単量体成分全体に対してプロピレンを50モル%より多く含む重合体を意味する。
また、外層を構成する樹脂組成物はプロピレン系重合体以外の成分を含んでいてもよく、例えば、スチレン系エラストマー及び/又はその水添物等が含まれていてもよい。このスチレン系エラストマーとしてはスチレン重合体ブロックと共役ジェン重合体ブロックとを有するものであり、この共役ジエン重合体ブロックとしては、ブタジエン、イソプレン等に由来するものが挙げられる。スチレン系エラストマー及び/又はその水添物を用いる場合、その含有量は、プロピレン系重合体とスチレン系エラストマー及び/又はその水添物との合計に対し、10〜40重量%であることが好ましく、15〜30重量%であることがより好ましい。
ここで、外層を構成する樹脂組成物は以下の物性を有するものであることが好ましい。
密度:0.88〜0.91g/cm
MFR:1.0〜10g/10分
曲げ弾性率:300〜1500MPa
外層を構成する樹脂組成物の密度(ISO 1183)が前記下限値以上であるとヒートシール性が良好となる傾向にあり、前記上限値以下であると透明性が良好となる傾向にある。また、MFR(ISO 1133(測定温度230℃、荷重21.2N))が前記範囲であると、成形性の観点で好ましい。更に、曲げ弾性率(ISO 178)が前記下限値以上であるとヒートシール性が良好となる傾向にあり、前記上限値以下であると耐衝撃性や柔軟性が良好となる傾向にある。
[中間層]
中間層は、通常、熱可塑性樹脂で構成されたものであり、その種類は特に制限されないが、以下の物性を有するプロピレン系重合体よりなることが好ましい。
MFR:1.0〜7.0g/10分
曲げ弾性率:10〜300MPa 及び/又は デュロ硬度A:70〜95
中間層を構成するプロピレン系重合体のMFR(ISO 1133(測定温度230℃、荷重21.2N))が前記範囲であると成形性の観点で好ましい。特に、前記下限値以上であると、Tダイ成形において好ましく、一方、前記上限値以下であると、水冷インフレーション成形において好ましい。また、曲げ弾性率(ISO 178)及び/又はデュロ硬度A(ISO 7619)が前記下限値以上であるとヒートシール性が良好となる傾向にあり、前記上限値以下であると多層フィルム全体の柔軟性が良好となる傾向にある。
[その他の層]
本発明の多層フィルムは、シール層、中間層、外層の他、必要に応じて更に任意の層を有していてもよい。
即ち、シール層、中間層及び外層は、直接接触していても、あるいはこれらの層の間に接着層が存在してもよい。また、外層の上(血液バッグとした際に外壁側となる部分)に更に最外層としてヒートシール性、外観、光沢性、フィルム強靭性等を向上させるためのポリエステルからなる層、特に脂環式ポリエステルからなる層やガスバリア性を向上させるためのシリカ及び/又はアルミナを蒸着させたポリエステルからなる層等の他の層を有していてもよい。
接着層は、シール層と中間層との間、或いは中間層と外層との間等に位置してこれらを結合する接着剤又は接着性樹脂の層である。接着剤としては、ポリウレタン系接着剤などが挙げられ、接着性樹脂としてはポリオレフィン、それを無水マレイン酸等の酸で変性した酸変性ポリオレフィン、エチレンとカルボキシル基を有するモノマーとの共重合体などが挙げられる。
[多層フィルムの製造方法]
本発明の多層フィルムの製造方法としては、上記の各層を積層一体化できる方法であればどのような方法であってもよく、例えば、ドライラミネーション、押出ラミネーション、共押出ラミネーション(Tダイ法、水冷インフレーション法、空冷インフレーション法)、ヒートラミネーションなど、あるいはこれらの方法を組み合わせたラミネーション法を例示できる。これらの中でも多層フィルム全体の透明性を得る観点、シール層の密閉性を得る観点から、特に好ましいのは水冷インフレーション法であり、その成形温度は通常200〜230℃程度である。
[各層及び多層フィルムの厚み]
本発明の多層フィルムのシール層の厚みは10〜50μmが好ましく、特に15〜35μmであることが好ましい。シール層の厚みが上記下限値以上であるとシール強度の安定性の観点で好ましく、上記上限値以下であると多層フィルム全体の柔軟性の点で好ましい。
また、本発明の多層フィルムの外層の厚みは10〜50μmが好ましく、特に5〜40μmであることが好ましい。外層は、主として多層フィルムの機械的強度、ヒートシール性の向上等を担うものであるが、外層の厚みが上記下限値以上であると、フィルム成膜性が安定するために好ましく、上記上限値以下であると多層フィルム全体の柔軟性の点で好ましい。
本発明の多層フィルムの中間層の厚みは100〜300μmが好ましく、特に200〜250μmであることが好ましい。中間層は通常、フィルム全体の強度を確保するために設けられるものであり、上記下限値以上であると、この目的を達成するために好ましく、また、フィルム全体の柔軟性の点でも好ましく、一方、上記上限値以下であると、フィルムが適度なコシを有し、バッグとしてのハンドリング性(取り扱い性)が良好となるために好ましい。
特に、本発明の多層フィルムは、その厚み比は、(シール層):(外層)=1:0.1〜1:10であることが好ましい。
なお、前述の接着剤層を更に有する場合、その厚さは多層フィルムの全体の仕様や用いる接着剤の種類、接着層に必要とされる接着性等に応じて適宜決定される。
本発明の多層フィルムに必要に応じて設けられるその他の層の厚みについても、その形成目的に応じて適宜決定されるが、本発明の多層フィルムの厚み(多層フィルムを構成する各層の合計の厚み)は、200〜400μmが好ましく、特に250〜300μmであることがより好ましい。多層フィルムの厚みが上記下限値以上であると、シール層等、必要な層の厚みを十分に確保することができるために好ましく、シール性、機械的強度、その他の要求特性の観点から好ましい。多層フィルムの厚みが上記上限値以下であると、薄肉、軽量化の観点で好ましく、また、コスト、取り扱い性、加工性の点でも有利である。
[血液バッグの製造方法]
本発明の多層フィルムを用いて、本発明の血液バッグを製造する方法としては、真空成形、圧空成形などのシート成形法(熱成形法)、多層共押出ブロー成形などのブロー成形法、あるいは所定の形状に切断した枚葉形態の多層フィルム同士の周縁部を熱融着(強溶着)又は接着剤で接着して袋状物を作製する方法など、いずれの方法を用いてもよい。
所定の形状に切断した枚葉形態の多層フィルム同士の周縁部を熱融着して袋状に成形する場合の熱融着温度は、シール層形成用組成物の成分組成やシール層及び多層フィルム全体の厚み等によっても異なるが、通常40〜180℃程度である。
以下、実施例を用いて本発明の内容を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
〔原料〕
(外層)
・ポリプロピレン系樹脂(1):(三菱化学社製ゼラス(登録商標)7025(曲げ弾性率:600MPa、密度:0.89g/cm、MFR(230℃、21.2N):1.8g/10分))
(中間層)
・ポリプロピレン系樹脂(2):(三菱化学社製ゼラス(登録商標)MC717R4(デュロ硬度A:88、MFR(230℃、21.2N):2.5g/10分))
(内層(シール層))
・X−1(実施例用):プロピレン・エチレンランダム共重合体94重量%及びプロピレン単独重合体6重量%のポリプロピレン系樹脂組成物(二軸押出機によりシリンダー温度200℃、スクリュー回転数250rpm、吐出量10kg/hで溶融混練を行って得られたもの)
・x−1(比較例用):プロピレン・エチレン・ブチレン共重合体90重量%、プロピレン・エチレン共重合体6重量%及びプロピレン単独重合体4重量%のポリプロピレン系樹脂組成物(二軸押出機によりシリンダー温度200℃、スクリュー回転数250rpm、吐出量10kg/hで溶融混練を行って得られたもの)
〔昇温溶離分別法(TREF法)による溶出量の測定〕
ポリプロピレン系樹脂組成物X−1,x−1をそれぞれ50mg用い、0.1g/L ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を添加したオルトジクロロベンゼン(ODCB)20mLにより加熱溶解したものをクロス分別クロマトグラフ(Cross Fractionation Chromatograph(CFC))測定に供した。CFC測定条件は以下の通りである。
装置 : PolymerChAR CFC−2
検出器 : IR検出器(内蔵)
移動相 : 試薬特級ODCB
流速 : 1.0mL/分
注入 : 2.5mg/mL×400μL
カラム : TSKgel GMH6−HT
(7.5mm I.D×30cmL×4)
カラム槽温度 : 135℃
溶解条件 : 60分/135℃
降温条件 : 135分/135℃→0℃
TREFカラム : ステンレスビーズ
溶出区分 : 36区分
較正試料 : 単分散ポリスチレン
較正法 : ポリプロピレン換算(汎用較正曲線法)
較正曲線近式 : 3次式
結果を表1に示す。
Figure 2017164297
〔実施例1〕
[フィルムの成形]
外層に用いる材料としてポリプロピレン系樹脂(1)、中間層に用いる材料としてポリプロピレン系樹脂(2)、シール層に用いる材料としてX−1をそれぞれ用い、多層水冷インフレーション成形機を用い、成形温度190〜220℃の条件で、厚み300μmの多層フィルム([外層の厚み]/[中間層の厚み]/[シール層の厚み]=40/230/30)を作製した。
[フィルムの製袋]
作製したフィルムのシール層同士を合わせて、四辺を180℃でヒートシールし、内寸15cm×20cmの袋体を作製した。
[評価]
得られた多層フィルム又は袋体を用いて以下の評価を行った。
<低温耐衝撃性(脆化試験)>
得られた多層フィルムを幅15mmの短冊状に切り出し、ASTM−D1790に従い、脆化温度を測定した。脆化温度が低いほど低温耐衝撃性に優れることを示す。得られた結果を表−2に示す。
<耐ブロッキング性>
作製した袋体を用い、日本バイオコン製40−II型を用いて121℃×30分の滅菌処理後、袋の内面同士のブロッキング状態を調べ、下記基準で評価した。得られた結果を表−2に示す。
○:ブロッキングなし。
△:ブロッキングはしていないが、簡単に剥がれる程度の軽い密着が見られる。
×:ブロッキングにより内面同士が強く密着し、剥がすと白化痕が残る。
<衛生性>
作製した袋体を用い、日本薬局方プラスチック容器試験(第16改正)に従い、残留試験、溶出物試験、透明性試験、水蒸気透過試験、細胞毒性試験を行った。得られた判定結果を表−2に示す。また、各試験結果を表−3に示す。
〔比較例1〕
シール層に用いる材料をx−1に代えた他は、実施例1と同様にして、多層フィルムおよび袋体を作製し、同様に耐ブロッキング性と衛生性の評価を行った。得られた結果を表−2,表−3に示す。
〔比較例2〕
市販の厚み300μmの軟質ポリ塩化ビニル樹脂フィルムを用い、実施例1と同様にして袋体を作製し、この袋体について同様に低温耐衝撃性の評価を行った。結果を表−2に示す。
Figure 2017164297
Figure 2017164297
以上の結果から、シール層に特定のポリプロピレン系樹脂組成物を用いた本発明の血液バッグは、ヒートシール性、低温耐衝撃性、耐ブロッキング性、衛生性に優れ、新鮮凍結血漿製剤用血液バッグとしての要求特性を十分に満たすものであることが分かる。

Claims (6)

  1. シール層を備えた少なくとも2層以上の多層フィルムにより形成され、該シール層が内壁面を構成しており、該シール層はポリプロピレン系樹脂組成物からなり、かつ該ポリプロピレン系樹脂組成物が昇温溶離分別法(TREF法)において、80℃までの積算溶出量が10〜30重量%である新鮮凍結血漿製剤用血液バッグ。
  2. 前記シール層のポリプロピレン系樹脂組成物において、昇温溶離分別法(TREF法)における40℃までの積算溶出量が5〜20重量%である、請求項1に記載の新鮮凍結血漿製剤用血液バッグ。
  3. 前記シール層のポリプロピレン系樹脂組成物において、昇温溶離分別法(TREF法)における最大溶出温度が90℃以上である、請求項1又は2に記載の新鮮凍結血漿製剤用血液バッグ。
  4. 前記シール層のポリプロピレン系樹脂組成物において、昇温溶離分別法(TREF法)における100℃までの積算溶出量が40重量%以上である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の新鮮凍結血漿製剤用血液バッグ。
  5. 前記シール層の厚みが10〜50μmである、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の新鮮凍結血漿製剤用血液バッグ。
  6. 前記多層フィルムが、前記シール層と外層とが中間層を介して積層された3層構成であり、シール層の厚みが10〜50μmであり、中間層の厚みが100〜300μmであり、かつ外層の厚みが10〜50μmである、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の新鮮凍結血漿製剤用血液バッグ。
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