本発明の電池用包装材料は、少なくとも、耐薬品性コーティング層、基材層、接着層、バリア層、及びシーラント層をこの順に有する積層体からなり、当該耐薬品性コーティング層が、熱硬化性樹脂と、硬化促進剤とを含有する樹脂組成物の硬化物であることを特徴とする。以下、本発明の電池用包装材料について詳述する。
1.電池用包装材料の積層構造
電池用包装材料は、図1に示すように、少なくとも、耐薬品性コーティング層1、基材層2、接着層3、バリア層4、及びシーラント層5をこの順に有する積層体からなる積層構造を有する。即ち、本発明の電池用包装材料は、耐薬品性コーティング層1が最外層になり、シーラント層5が最内層になる。電池の組み立て時に、電池素子の周縁に位置するシーラント層5同士を接面させて熱溶着することにより電池素子が密封され、電池素子が封止される。
また、本発明の電池用包装材料には、バリア層4とびシーラント層5との間に、これらの接着性を高める目的で、必要に応じて接着層6が設けられていてもよい。
2.電池用包装材料を形成する各層の組成
[耐薬品性コーティング層1]
本発明の電池用包装材料において、耐薬品性コーティング層1は基材層2の表面コーティング層として最外層を形成する層である。耐薬品性コーティング層1は、熱硬化性樹脂と、硬化促進剤とを含有する樹脂組成物の硬化物で形成される。このように耐薬品性コーティング層1を、特定組成の樹脂組成物を硬化させて形成することにより、電解液、酸、アルカリ、有機溶剤等の薬品に対して優れた耐性を備え、しかも製造時に高温条件でのエージングを要することなく短時間で硬化させてリードタイムを短縮化することが可能になる。
(熱硬化性樹脂)
耐薬品性コーティング層1の形成に使用される樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を含有する。熱硬化性樹脂は、加熱すると重合を起こして高分子の網目構造を形成して硬化するものであればよい。耐薬品性コーティング層1の形成に使用される熱硬化性樹脂として、具体的には、エポキシ樹脂、アミノ樹脂(メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等)、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂等が挙げられる。
これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの熱硬化性樹脂の中でも、耐薬品性コーティング層1の硬化時間のより一層の短縮化、耐薬品性の更なる向上等の観点から、好ましくはウレタン樹脂、エポキシ樹脂、更に好ましく2液硬化性ウレタン樹脂、2液硬化性エポキシ樹脂、特に好ましくは2液硬化性ウレタン樹脂が挙げられる。
2液硬化性ウレタン樹脂として、具体的にはポリオール化合物(主剤)と、イソシアネート系化合物(硬化剤)の組み合わせが挙げられ、2液硬化性エポキシ樹脂として、具体的にはエポキシ樹脂(主剤)と、酸無水物、アミン化合物、又はアミノ樹脂(硬化剤)の組み合わせが挙げられる。
前記2液硬化性ウレタン樹脂において、主剤として使用されるポリオール化合物については、特に制限されないが、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール等が挙げられる。これらのポリオール化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、前記2液硬化性ウレタン樹脂において、硬化剤として使用されるイソシアネート系化合物については、特に制限されないが、例えば、例えば、ポリイソシアネート、そのアダクト体、そのイソシアヌレート変性体、そのカルボジイミド変性体、そのアロハネート変性体、そのビュレット変性体等が挙げられる。前記ポリイソシアネートとしては、具体的には、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリフェニルメタンジイソシアネート(ポリメリックMDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン(H12MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(1,5−NDI)、3,3'−ジメチル−4,4'−ジフェニレンジイソシアネート(TODI)、キシレンジイソシアネート(XDI)等の芳香族ジイソシアネート;トラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;1,5−ナフタレンジイソシアネート(1,5−NDI)等の多環芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。前記アダクト体としては、具体的には、前記ポリイソシアネートに、トリメチロールプロパン、グリコール等を付加したものが挙げられる。これらのイソシアネート系化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
耐薬品性コーティング層1において、熱硬化性樹脂は、後述する硬化促進剤と併用されることにより、強固な硬化膜を形成し、優れた耐薬品性を備えることができるので、熱硬化性樹脂の構造にいては特に制限されないが、多環芳香族骨格及び/又は複素環骨格を有している熱硬化性樹脂は、より一層優れた耐薬品性を備えることができるので、耐薬品性コーティング層1の形成において特に好適に使用される。多環芳香族骨格を有する熱硬化性樹脂として、具体的には、多環芳香族骨格を有するエポキシ樹脂、多環芳香族骨格を有するウレタン樹脂が挙げられる。また、複素環骨格を有する熱硬化性樹脂として、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のアミノ樹脂が挙げられる。これらの多環芳香族骨格及び/又は複素環骨格を有する熱硬化性樹脂は、1液硬化型又は2液型硬化型のいずれであってもよい。
多環芳香族骨格を有するエポキシ樹脂としては、より具体的には、ジヒドロキシナフタレンと、エピハロヒドリンとの反応物;ナフトールとアルデヒド類との縮合物(ナフトールノボラック樹脂)と、エピハロヒドリンとの反応物;ジヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合物と、エピハロヒドリンの反応物;モノ又はジヒドロキシナフタレンとキシリレングリコール類との縮合物と、エピハロヒドリンとの反応物;モノ又はジヒドロキシナフタレンとジエン化合物との付加物と、エピハロヒドリンとの反応物;ナフトール同士が直接カップリングしたポリナフトール類とエピハロヒドリンとの反応物等が挙げられる。
多環芳香族骨格を有するウレタン樹脂としては、より具体的には、ポリオール化合物と、多環芳香族骨格を有するイソシアネート系化合物との反応物が挙げられる。
(硬化促進剤)
耐薬品性コーティング層1の形成に使用される樹脂組成物は、硬化促進剤を含有する。このように、熱硬化性樹脂と共に、硬化促進剤を共存させることにより、優れた耐薬品性を備えさせるだけでなく、製造時に高温条件でのエージングを要することなく短時間で耐薬品性コーティング層1を硬化させて、リードタイムを短縮することも可能になる。
ここで、「硬化促進剤」とは、自らは架橋構造を形成しないが、熱硬化性樹脂の架橋反応を促進する物質であり、熱硬化性樹の架橋反応を促進する作用を有し、自らも架橋構造を形成する場合もある物質である。
硬化促進剤の種類については、使用する熱硬化性樹脂に応じて適宜選定されるが、例えば、アミジン化合物、カルボジイミド化合物、ケチミン化合物、ヒドラジン化合物、スルホニウム塩、ベンゾチアゾリウム塩、第3級アミン化合物等が挙げられる。
前記アミジン化合物としては、特に制限されないが、例えば、イミダゾール化合物、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネ−5−エン(DBN)、グアニジン化合物等が挙げられる。前記イミダゾール化合物としては、具体的には、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1,2−ジエチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2'−メチルイミダゾリル−(1)']−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−エチル−4'−メチルイミダゾリル−(1)']−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−ウンデシルイミダゾリル]−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2'−メチルイミダゾリル−(1)']−エチル−S−トリアジンイソシアヌール酸化付加物、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−アリール−4,5−ジフェニルイミダゾール等が挙げられる。これらのアミジン化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記カルボジイミド化合物としては、特に制限されないが、例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−N’−エチルカルボジイミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−N'−エチルカルボジイミドメチオジド、N−tert−ブチル−N’−エチルカルボジイミド、N−シクロヘキシル−N’−(2−モルホリノエチル)カルボジイミドメソ−p−トルエンスルホネート、N,N’−ジ−tert−ブチルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−トリルカルボジイミド等が挙げられる。これらのカルボジイミド化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記ケチミン化合物としては、ケチミン結合(N=C)を有することを限度として特に制限されないが、例えばケトンとアミンとを反応させて得られるケチミン化合物が挙げられる。前記ケトンとしては、具体的には、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル第3ブチルケトン、メチルシクロヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチルプロピルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジブチルケトン、ジイソブチルケトン等が挙げられる。また、前記アミンとしては、具体的には、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジアミノジエチルジフェニルメタン等の芳香族ポリアミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン等の脂肪族ポリアミン;N−アミノエチルピペラジン、3−ブトキシイソプロピルアミン等の主鎖にエーテル結合を有するモノアミンやポリエーテル骨格のジアミン;イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1−シクロヘキシルアミノ−3−アミノプロパン、3−アミノメチル−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルアミン等の脂環式ポリアミン:ノルボルナン骨格のジアミン;ポリアミドの分子末端にアミノ基を有するポリアミドアミン;2,5−ジメチル−2,5−ヘキサメチレンジアミン、メンセンジアミン、1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジン等が、具体例として挙げられる。これらのケチミン化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記ヒドラジン化合物としては、特に制限されないが、例えば、ジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等が挙げられる。これらのヒドラジン化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記スルホニウム塩としては、特に制限されないが、例えば、4−アセトフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、ジメチル−4−(ベンジルオキシカルボニルオキシ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジメチル−4−(ベンゾイルオキシ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジメチル−4−(ベンゾイルオキシ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート等のアルキルスルホニウム塩;ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−4−メトキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−3−クロロ−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4−メトキシベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等のベンジルスルホニウム塩;ジベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェー、ジベンジル−4−メトキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ベンジル−4−メトキシベンジル−4−ヒドロキシフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート等のジベンジルスルホニウム塩;p−クロロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、p−ニトロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、3,5−ジクロロベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、o−クロロベンジル−3−クロロ−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等の置換ベンジルスルホニウム塩等が挙げられる。これらのスルホニウム塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記ベンゾチアゾリウム塩としては、特に制限されないが、例えば、3−ベンジルベンゾチアゾリウムヘキサフルオロアンチモネート、3−ベンジルベンゾチアゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、3−ベンジルベンゾチアゾリウム テトラフルオロボレート、3−(p−メトキシベンジル)ベンゾチアゾリウム ヘキサフルオロアンチモネート、3−ベンジル−2−メチルチオベンゾチアゾリウム ヘキサフルオロアンチモネート、3−ベンジル−5−クロロベンゾチアゾリウム ヘキサフルオロアンチモネート等のベンジルベンゾチアゾリウム塩が挙げられる。これらのベンゾチアゾリウム塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記第3級アミン化合物としては、特に制限されないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、キヌクリジン、3−キヌクリジノール等の脂肪族第3級アミン;ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン;イソキノリン、ピリジン、コリジン、ベータピコリン等の複素環第3級アミン等が挙げられる。これらの第3級アミン化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記硬化促進剤の好適な一例としては、熱酸発生剤として機能するものが挙げられる。熱酸発生剤とは、加熱により酸を発生し、硬化促進剤として機能する物質である。前述する硬化促進剤の内、熱酸発生剤として機能し得るものとしては、具体的には、スルホニウム塩、ベンゾチアゾリウム塩等が挙げられる。
また、前記硬化促進剤の他の好適な一例としては、所定の加熱条件下(例えば80〜2000℃、好ましくは100〜160℃)で活性化して熱硬化性樹脂の架橋反応を促進する熱潜在性を備えるものが挙げられる。前述する硬化促進剤の内、熱潜在性である物質としては、具体的には、アミジン化合物、ヒドラジン化合物、第3級アミン化合物等にエポキシ化合物が付加したエポキシアダクトが挙げられる。
更に、前記硬化促進剤の他の好適な一例としては、密閉状態、すなわち湿気遮断状態では硬化剤として機能しないが、密閉状態を開封し、湿気の存在する条件下で加水分解して硬化剤として機能する加水分解型潜在性を備えるものが挙げられる。前述する硬化促進剤の内、加水分解型潜在性である物質としては、具体的には、アミジン化合物、ヒドラジン化合物、第3級アミン化合物等にエポキシ化合物が付加したエポキシアダクトが挙げられる。
これらの硬化促進剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの硬化促進剤の中でも、好ましくはアミジン化合物、スルホニウム塩、更に好ましくはアミジン化合物が挙げられる。
耐薬品性コーティング層1の形成に使用される樹脂組成物における硬化促進剤の含有量については、使用する熱硬化性樹脂の種類、硬化促進剤の種類等に応じて適宜設定されるが、例えば、熱硬化性樹脂100質量部に対して、硬化促進剤が総量で0.01〜6質量部、好ましくは0.05〜5質量部、更に好ましくは0.1〜2質量部が挙げられる。
(他の添加剤)
耐薬品性コーティング層1の形成に使用される樹脂組成物には、前述する成分の他に、必要に応じて、マット化剤、スリップ剤、溶剤、エラストマー等の他の添加剤が含まれてもよい。
また、マット化剤やスリップ剤を含有させると、耐薬品性コーティング層1にスリップ効果を付与し、プレス成成形やエンボス加工における成形・加工性を向上させたり、操作性を良好にすることができる。
マット化剤の材質については、特に制限されないが、例えば、金属、金属酸化物、無機物、有機物等が挙げられる。また、マット化剤の形状についても、特に制限されないが、例えば、球状、繊維状、板状、不定形、バルーン状等が挙げられる。マット化剤として、具体的には、はタルク,シリカ,グラファイト、カオリン、モンモリロイド、モンモリロナイト、合成マイカ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛,酸化マグネシウム,酸化アルミニウム,酸化ネオジウム,酸化アンチモン、酸化チタン、酸化セリウム、硫酸カルシウム,硫酸バリウム、炭酸カルシウム,ケイ酸カルシウム、炭酸リチウム、安息香酸カルシウム,シュウ酸カルシウム,ステアリン酸マグネシウム、アルミナ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ類、高融点ナイロン、架橋アクリル、架橋スチレン、架橋ポリエチレン、ベンゾグアナミン、金、アルミニウム、銅、ニッケル等が挙げられる。これらのマット化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのマット化剤の中でも、分散安定性やコスト等の観点から、好ましくはりシリカ、硫酸バリウム、酸化チタンが挙げられる。また、マット化剤には、表麺に絶縁処理、高分散性処理等の各種表面処理を施しておいてもよい。
また、スリップ剤としては、特に制限されないが、例えば、脂肪酸アマイド、金属石鹸、親水性シリコーン、シリコーンをグラフトしたアクリル、シリコーンをグラフトしたエポキシ、シリコーンをグラフトしたポリエーテル、シリコーンをグラフトしたポリエステル、ブロック型シリコーンアクリル共重合体、ポリグリセロール変性シリコーン、パラフィン等が挙げられる。これらのスリップ剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(耐薬品性コーティング層1の厚さ)
耐薬品性コーティング層1の厚さについては、例えば、1〜5μm、好ましくは2〜4μmが挙げられる。
[基材層2]
本発明の電池用包装材料において、基材層2は最外層を形成する層である。基材層2を形成する素材については、絶縁性を備えるものであることを限度として特に制限されるものではない。基材層2を形成する素材としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、エポキシ、アクリル、フッ素樹脂、ポリウレタン、珪素樹脂、フェノール、ポリエーテルイミド、ポリイミド、及びこれらの混合物や共重合物等が挙げられる。
前記ポリエステルとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル等が挙げられる。また、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてエチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/フェニル−ジカルボキシレート)、ポリエチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)等が挙げられる。また、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてブチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。これらのポリエステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。ポリエステルは、耐電解液性に優れ、電解液の付着に対して白化等が発生し難いという利点があり、基材層2の形成素材として好適に使用される。
また、前記ポリアミドとしては、具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体等の脂肪族系ポリアミド;テレフタル酸及び/又はイソフタル酸に由来する構成単位を含むナイロン6I、ナイロン6T、ナイロン6IT、ナイロン6I6T(Iはイソフタル酸、Tはテレフタル酸を表す)等のヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸−テレフタル酸共重合ポリアミド、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等の芳香族を含むポリアミド;ポリアミノメチルシクロヘキシルアジパミド(PACM6)等の脂環系ポリアミド;さらにラクタム成分や、4,4’−ジフェニルメタン−ジイソシアネート等のイソシアネート成分を共重合させたポリアミド、共重合ポリアミドとポリエステルやポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体であるポリエステルアミド共重合体やポリエーテルエステルアミド共重合体;これらの共重合体等が挙げられる。これらのポリアミドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。延伸ポリアミドフィルムは延伸性に優れており、成形時の基材層2の樹脂割れによる白化の発生を防ぐことができ、基材層2の形成素材として好適に使用される。
基材層2は、1軸又は2軸延伸された樹脂フィルムで形成されていてもよく、また未延伸の樹脂フィルムで形成してもよい。中でも、1軸又は2軸延伸された樹脂フィルム、とりわけ2軸延伸された樹脂フィルムは、配向結晶化することにより耐熱性が向上しているので、基材層2として好適に使用される。
これらの中でも、基材層2を形成する樹脂フィルムとして、好ましくはナイロン、ポリエステル、更に好ましくは2軸延伸ナイロン、2軸延伸ポリエステル、特に好ましくは2軸延伸ポリエステルが挙げられる。
基材層2は、耐ピンホール性及び電池の包装体とした時の絶縁性を向上させるために、異なる素材の樹脂フィルムを積層化することも可能である。具体的には、ポリエステルフィルムとナイロンフィルムとを積層させた多層構造や、2軸延伸ポリエステルと2軸延伸ナイロンとを積層させた多層構造等が挙げられる。基材層2を多層構造にする場合、各樹脂フィルムは接着剤を介して接着してもよく、また接着剤を介さず直接積層させてもよい。接着剤を介さず接着させる場合には、例えば、共押出し法、サンドラミ法、サーマルラミネート法等の熱溶融状態で接着させる方法が挙げられる。また、接着剤を介して接着させる場合、使用する接着剤の組成については、特に制限されないが、硬化時間を短くしてリードタイムの短縮化を図り、更には成形性を向上させる等の観点から、好ましくは、後述する[接着層3]の欄に記載の接着層用樹脂組成物が挙げられる。
基材層2の厚さは、例えば、10〜50μm、好ましくは15〜30μmが挙げられる。
[接着層3]
接着層3は、基材層2とバリア層4との間に、これらの層を接着させるために設けられる層である。
接着層3の形成に使用される接着剤成分は、基材層2とバリア層4を接着可能であることを限度として特に制限されず、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。更に、接着層3の形成に使用される接着剤成分の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれであってもよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、共重合ポリエステル等のポリエステル系樹脂;ポリエーテル系接着剤;ポリウレタン系接着剤;エポキシ系樹脂;フェノール樹脂系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミド等のポリアミド系樹脂;ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂;セルロース系接着剤;(メタ)アクリル系樹脂;ポリイミド系樹脂;尿素樹脂、メラミン樹脂等のアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム;シリコーン系樹脂等が挙げられる。
接着層3の形成において、製造時に高温条件でのエージングを要することなく短時間で硬化させてリードタイムの短縮化を図り、更には成形性を向上させる等の観点から、好ましくは、熱硬化性樹脂と、硬化促進剤と、エラストマー樹脂とを含有する接着層用樹脂組成物が好適に使用される。熱硬化性樹脂と、硬化促進剤とを併用することにより、高温条件でのエージングを要することなく短時間で硬化させて、リードタイムを短縮することが可能になる。また、更にエラストマー樹脂を含有させることにより、接着層3が硬化時に収縮するのを抑制しつつ、接着層3に適度な柔軟性を付与し、電池用包装材料に優れた成形性を備えさせることが可能になる。
前記接着層用樹脂組成物に使用される熱硬化性樹脂の種類や好ましいもの等については、前記[耐薬品性コーティング層1]の欄に記載の熱硬化性樹脂と同様である。
また、前記接着層用樹脂組成物に使用される硬化促進剤の種類や好ましいもの等については、前記[耐薬品性コーティング層1]の欄に記載の硬化促進剤と同様である。前記接着層用樹脂組成物における硬化促進剤の含有量については、使用する熱硬化性樹脂の種類、硬化促進剤の種類等に応じて適宜設定されるが、例えば、熱硬化性樹脂100質量部に対して、硬化促進剤が総量で0.01〜6質量部、好ましくは0.05〜5質量部、更に好ましくは0.1〜2質量部が挙げられる。
また、前記接着層用樹脂組成物に使用されるエラストマー樹脂の種類については、特に制限されないが、例えば、エチレンと1種又は2種以上の炭素数2〜20のα−オレフィン(エチレンを除く)とを構成モノマーとして含むエチレン系エラストマー等のポリオレフィン系エラストマー;スチレン系エラストマー;ポリエステル系エラストマー;ウレタン系エラストマー;アクリル系エラストマー;ビスフェノールA型エポキシ系エラストマー等のエポキシ系エラストマー;ポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール等のポリオール系エラストマー;ニトリルゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム等のゴム成分等が挙げられる。これらのエラストマー樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらのエラストマー樹脂の中でも、好ましくは、ウレタン系エラストマー、エポキシ系エラストマー、ポリオール系エラストマーが挙げられる。
前記接着層用樹脂組成物におけるエラストマー樹脂の含有量については、特に制限されないが、例えば、熱硬化性樹脂100質量部に対して、エラストマー樹脂が総量で3〜50質量部、好ましくは5〜30質量部、更に好ましくは10〜20質量部が挙げられる。
更に、前記接着層用樹脂組成物には、必要に応じて、吸光発熱物質を含有してもよい。このように吸光発熱物質を含有させることにより、前記接着層用樹脂組成物を加熱してクイックキュアさせる際に光照射を行うと、当該接着層用樹脂組成物の全体に安定で均一な熱量を供給でき、硬化状態にバラツキが生じるのを抑制し、均一な硬化状態の接着層3の形成が可能になる。
吸光発熱物質とは、300〜2000nm程度の波長の光の少なくとも一部を吸光して発熱する物質である。本発明に使用される吸光発熱物質としては、特に制限されないが、例えば、金属粉末、無機顔料、カーボン、有機色素等が挙げられる。
前記金属粉末としては、例えば、アルミニウム、ステンレス、鉄、チタン、タングステン、ニッケル、これらの合金等の金属粉末が挙げられる。これらの金属粉末は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記無機顔料としては、具体的には、酸化亜鉛、酸化チタン、硫酸バリウム、硼酸アルミニウム、チタン酸カリウム、酸化イリジウム、酸化錫、これらの複合物等が挙げられる。これらの無機顔料は、遠赤外光、中赤外光、及び近赤外光を吸収して発熱する特性を備えている。これらの無機顔料は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記カーボンとしては、具体的には、カーボンブラックが挙げられる。
前記有機色素としては、具体的には、メチン色素、シアニン色素、メロシアニン色素、マーキュロクロム色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン色素(銅フタロシアニン等)、アゾ系色素、クマリン系色素等が挙げられる。1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの吸光発熱物質の中でも、好ましくはカーボン、金属粉末、更に好ましくはカーボンブラック、チタン粉末、アルミニウム粉末、鉄粉末、タングステン粉末、ステンレス粉末、ニッケル粉末、更に好ましくはカーボンブラックが挙げられる。
吸光発熱物質の平均粒径については、特に制限されないが、例えば1000nm以下、好ましくは10〜1000nmが挙げられる。ここで、吸光発熱物質の平均粒径とは、透過型電子顕微鏡を用いて、1000個の吸光発熱物質の一次粒子の粒子径を測定したときの平均値を意味する。
前記接着層用樹脂組成物に吸光発熱物質を含有させる場合、吸光発熱物質の含有量としては、例えば、熱硬化性樹脂100質量部に対して、吸光発熱物質が総量で0.01〜1質量部、好ましくは0.05〜0.7質量部、更に好ましくは0.1〜0.5質量部が挙げられる。
接着層3の厚さについては、例えば、2〜50μm、好ましくは3〜25μmが挙げられる。
[バリア層4]
本発明の電池用包装材料において、バリア層4は、包装材料の強度向上の他、電池内部に水蒸気、酸素、光等が侵入するのを防止するためのバリア層として機能する層である。バリア層4の材質としては、具体的には、アルミニウム、ステンレス、チタン等の金属箔;酸化珪素、アルミナ等の無機化合物を蒸着したフィルム等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは金属箔、更に好ましくはアルミニウム箔が挙げられる。電池用包装材料の製造時にしわやピンホールを防止するために、本発明においてバリア層4として、軟質アルミニウム箔、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS A8021P−O)又は(JIS A8079P−O)箔等を用いることが好ましい。
バリア層4の厚さについては、特に制限されないが、例えば、金属箔を使用する場合であれば、通常10〜200μm、好ましくは20〜100μmが挙げられる。
また、バリア層4として金属箔を使用する場合、接着の安定化、溶解や腐食の防止等のために、少なくとも一方の面、好ましくは少なくともシーラント層側の面、更に好ましくは両面が化成処理されていることが好ましい。ここで、化成処理とは、バリア層4の表面に耐酸性皮膜を形成する処理である。化成処理は、例えば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、蓚酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチルアセテート、塩化クロム、硫酸カリウムクロム等のクロム酸化合物を用いたクロム酸クロメート処理;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸等のリン酸化合物を用いたリン酸クロメート処理;下記一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位からなるアミノ化フェノール重合体を用いたクロメート処理等が挙げられる。
一般式(1)〜(4)中、Xは水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリル基又はベンジル基を示す。また、R1及びR2は、同一又は異なって、ヒドロキシル基、アルキル基、又はヒドロキシアルキル基を示す。一般式(1)〜(4)において、X、R1、R2で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖又は分枝鎖状アルキル基が挙げられる。また、X、R1、R2で示されるヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等のヒドロキシ基が1個置換された炭素数1〜4の直鎖又は分枝鎖状アルキル基が挙げられる。ことができる。一般式(1)〜(4)において、Xは、水素原子、ヒドロキシル基、及び、ドロキシアルキル基のいずれかであることが好ましい。一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位からなるアミノ化フェノール重合体の数平均分子量は、例えば、約500〜約100万、好ましくは約1000〜約2万が挙げられる。
また、金属箔に耐食性を付与する化成処理方法として、リン酸中に、酸化アルミ、酸化チタン、酸化セリウム、酸化スズ等の金属酸化物や硫酸バリウムの微粒子を分散させたものをコーティングし、150℃以上で焼付け処理を行うことにより、金属箔の表面に耐食処理層を形成する方法が挙げられる。また、前記耐食処理層の上には、カチオン性ポリマーを架橋剤で架橋させた樹脂層を形成してもよい。ここで、カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフトさせた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンまたはその誘導体、アミノフェノール等が挙げられる。これらのカチオン性ポリマーは1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、架橋剤としては、例えば、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、及びオキサゾリン基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する化合物、シランカップリング剤等が挙げられる。これらの架橋剤は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの化成処理は、1種の化成処理を単独で行ってもよく、2種以上の化成処理を組み合わせて行ってもよい。更に、これらの化成処理は、1種の化合物を単独で使用して行ってもよく、また2種以上の化合物を組み合わせて使用して行ってもよい。これらの中でも、好ましくはクロム酸クロメート処理、更に好ましくはクロム酸化合物、リン酸化合物、及び前記アミノ化フェノール重合体を組み合わせたクロメート処理が挙げられる。
化成処理において金属箔の表面に形成させる耐酸性皮膜の量については、特に制限されないが、例えばクロム酸化合物、リン酸化合物、及び前記アミノ化フェノール重合体を組み合わせてクロメート処理を行う場合であれば、金属箔の表面1m2当たり、クロム酸化合物がクロム換算で約0.5〜約50mg、好ましくは約1.0〜約40mg、リン化合物がリン換算で約0.5〜約50mg、好ましくは約1.0〜約40mg、及び前記アミノ化フェノール重合体が約1〜約200mg、好ましくは約5.0〜150mgの割合で含有されていることが望ましい。
化成処理は、耐酸性皮膜の形成に使用する化合物を含む溶液を、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法等によって、金属箔の表面に塗布した後に、金属箔の温度が70〜200℃程度になるように加熱することにより行われる。また、バリア層4に化成処理を施す前に、予め金属箔を、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法等による脱脂処理に供してもよい。このように脱脂処理を行うことにより、金属箔の表面の化成処理を一層効率的に行うことが可能になる。
[接着層6]
本発明の電池用包装材料において、接着層6は、バリア層4とシーラント層5を強固に接着させために、これらの間に必要に応じて設けられる層である。
接着層6は、バリア層4とシーラント層5とを接着可能である接着剤によって形成される。接着層6の形成に使用される接着剤の組成については、特に制限されないが、硬化時間を短くしてリードタイムの短縮化を図り、更には成形性を向上させる等の観点から、好ましくは、前記[接着層3]の欄に記載の接着層用樹脂組成物が挙げられる。
接着層6の厚さについては、例えば、1〜40μm、好ましくは2〜30μmが挙げられる。
[シーラント層5]
本発明の電池用包装材料において、シーラント層5は、最内層に該当し、電池の組み立て時にシーラント層同士が熱溶着して電池素子を密封する層である。
シーラント層5に使用される樹脂成分については、熱溶着可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、カルボン酸変性環状ポリオレフィンが挙げられる。
前記ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等の結晶性又は非晶性のポリプロピレン;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマー;等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。
前記環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン、等が挙げられる。また、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくは環状アルケン、更に好ましくはノルボルネンが挙げられる。
前記カルボン酸変性ポリオレフィンとは、前記ポリオレフィンをカルボン酸で変性したポリマーである。変性に使用されるカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
前記カルボン酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、α,β―不飽和カルボン酸又はその無水物に代えて共重合することにより、或いは環状ポリオレフィンに対してα,β―不飽和カルボン酸又はその無水物をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。カルボン酸変性される環状ポリオレフィンについては、前記と同様である。また、変性に使用されるカルボン酸としては、前記酸変性シクロオレフィンコポリマーの変性に使用されるものと同様である。
これらの樹脂成分の中でも、好ましくは結晶性又は非晶性のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、及びこれらのブレンドポリマー;更に好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとノルボルネンの共重合体、及びこれらの中の2種以上のブレンドポリマーが挙げられる。
シーラント層5は、1種の樹脂成分単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂成分を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。更に、シーラント層は、1層のみで形成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂成分によって2層以上形成されていてもよい。
また、シーラント層5の厚みとしては、特に制限されないが、2〜2000μm、好ましくは5〜1000μm、さらに好ましくは10〜500μmが挙げられる。
3.電池用包装材料の製造方法
本発明の電池用包装材料の製造方法については、所定の組成の各層を積層させた積層体が得られる限り、特に制限されないが、例えば、以下の方法が例示される:
接着層3を介して基材層2とバリア層4を積層させて、基材層2、接着層3、バリア層4が順に積層された積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)を形成する第1工程、及び
前記第1工程で得られた積層体Aのバリア層4上に、シーラント層5を積層させる第2工程を含み、
前記第1工程の前、前記第1工程と第2工程の間、又は前記第2工程の後に、基材層2において接着層3を積層させる面とは反対側の面に耐薬品性コーティング層1の形成に使用される樹脂組成物を塗布し、加熱して硬化させる。
前記第1工程における積層体Aの形成は、具体的には、基材1上又は必要に応じて表面が化成処理されたバリア層4に接着層3の形成に使用される接着剤を、押出し法、グラビアコート法、ロールコート法等の塗布方法で塗布・乾燥した後に、当該バリア層4又は基材1を積層させて接着層3を硬化させるドライラミネーション法によって行うことができる。
例えば、接着層3として前記接着層用樹脂組成物を使用する場合であれば、その硬化条件としては、例えば、150〜200℃、好ましくは160〜190℃で、0.1〜60秒間、好ましくは1〜30秒間が挙げられる。前記接着層用樹脂組成物を使用することによって、接着層3の硬化に高温条件でのエージングを要せず、前記硬化条件のみで接着層3を十分に硬化させることができるので、リードタイムを短縮することができる。
更に、接着層3として、更に吸光発熱物質を含む前記接着層用樹脂組成物を使用する場合であれば、前記加熱による硬化の際に光照射を行うことにより、硬化時に当該接着層用樹脂組成物の全体に安定で均一な熱量を供給でき、硬化状態にバラツキが生じるのを抑制し、均一な硬化状態の接着層3の形成が可能になる。当該光照射は、前記接着層用樹脂組成物に含まれる吸光発熱物質が発熱可能な波長の光を照射すればよく、光照射条件については、使用する吸光発熱物質の種類や発熱性等を踏まえて適宜設定される。光照射条件の一例としては、吸光発熱物質が発熱可能な波長の光の出力密度として、通常1〜10W・m-2、好ましくは3〜9W・m-2更に好ましくは5〜8W・m-2が挙げられる。なお、光照射は、光源を基材層2側に設置し、光を基材層2側から照射することにより行われる。
前記第2工程では、積層体Aのバリア層4上に、シーラント層5を積層させる。バリア層4上にシーラント層5を直接積層させる場合には、積層体Aのバリア層4上に、シーラント層5を構成する樹脂成分をグラビアコート法、ロールコート法等の方法により塗布すればよい。また、バリア層4とシーラント層5の間に接着層6を設ける場合には、例えば、(1)積層体Aのバリア層4上に、接着層6及びシーラント層5を共押出しすることにより積層する方法(共押出しラミネーション法)、(2)別途、接着層6とシーラント層5が積層した積層体を形成し、これを積層体Aのバリア層4上に熱ラミネーション法により積層する方法、(3)積層体Aのバリア層4上に、接着層6を形成させるための接着剤を押出し法や溶液コーティングした高温で乾燥さらには焼き付ける方法等により積層させ、この接着層6上に予めシート状に製膜したシーラント層5をサーマルラミネーション法により積層する方法、(4)積層体Aのバリア層4と、予めシート状に製膜したシーラント層5との間に、溶融させた接着層6を流し込みながら、接着層6を介して積層体Aとシーラント層5を貼り合せる方法(サンドラミネーション法)等が挙げられる。
前記第1工程の前、前記第1工程後且つ第2工程前、又は前記第2工程の後に、基材層2において接着層3を積層させる面とは反対側の面に耐薬品性コーティング層1の形成に使用される樹脂組成物を、グラビアコート法、ロールコート法等の塗布方法で塗布し、加熱して硬化させる。耐薬品性コーティング層1を硬化させる際の加熱条件としては、例えば、150〜200℃、好ましくは160〜190℃で、0.1〜60秒間、好ましくは1〜30秒間が挙げられる。本発明では、耐薬品性コーティング層1の硬化に高温条件でのエージングを要せず、前記硬化条件のみで耐薬品性コーティング層1を十分に硬化させることができるので、従来技術に比して大幅にリードタイムを短縮することができる。
上記のようにして、耐薬品性コーティング層1/基材層2/接着層3/必要に応じて表面が化成処理されたバリア層4/必要に応じて設けられる接着層6/シーラント層5からなる積層体が形成される。
本発明の電池用包装材料において、積層体を構成する各層は、必要に応じて、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成形)適性等を向上又は安定化するために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理等の表面活性化処理を施していてもよい。
4.電池用包装材料の用途
本発明の電池用包装材料は、正極、負極、電解質等の電池素子を密封して収容するための包装材料として使用される。
具体的には、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子を、本発明の電池用包装材料で、前記正極及び負極の各々に接続された金属端子が外側に突出させた状態で、電池素子の周縁にフランジ部(シーラント層同士が接触する領域)が形成できるようにして被覆し、前記フランジ部のシーラント層同士をヒートシールして密封させることによって、電池用包装材料を使用した電池が提供される。なお、本発明の電池用包装材料を用いて電池素子を収容する場合、本発明の電池用包装材料のシーラント部分が内側(電池素子と接する面)になるようにして用いられる。
本発明の電池用包装材料は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池である。本発明の電池用包装材料が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、鉛畜電池、ニッケル・水素畜電池、ニッケル・カドミウム畜電池、ニッケル・鉄畜電池、ニッケル・亜鉛畜電池、酸化銀・亜鉛畜電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、本発明の電池用包装材料の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例1−32及び比較例1−18
[電池用包装材料の製造]
二軸延伸ナイロンフィルム(厚さ25μm)からなる基材層2の上に、両面に化成処理を施したアルミニウム箔(厚さ40μm)からなるバリア層4をドライラミネーション法により積層させた。具体的には、アルミニウム箔の一方面に、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)を塗布し、バリア層4上に接着層2(厚さ4μm)を形成した。次いで、バリア層4上の接着層3と基材層2を加圧加熱貼合した後、40℃で24時間のエージング処理を実施することにより、基材層2/接着層3/バリア層4の積層体を調製した。なお、バリア層4として使用したアルミニウム箔の化成処理は、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液をクロムの塗布量が10mg/m2(乾燥重量)となるように、ロールコート法によりアルミニウム箔の両面に塗布し、皮膜温度が180℃以上となる条件で20秒間焼付けすることにより行った。
次いで、基材層1の表面(接着層2とは反対側の面)に、表1〜5に示す樹脂組成物を塗布し、下記の硬化条件で、当該樹脂組成物を硬化させることにより、基材層2の表面の表面に耐薬品性コーティング層1を形成した。
硬化条件A:45℃で7日間
硬化条件B:170℃で60秒間
その後、積層体のバリア層4の上に、カルボン酸変性ポリプロピレン(バリア層側に配置、厚さ23μm)とホモポリプロピレン(最内層、厚さ23μm)を、共押し出しすることにより、バリア層3上に2層からなるシーラント層5を積層させた。斯して、耐薬品性コーティング層1/基材層2/接着層3/バリア層4/シーラント層5(カルボン酸変性ポリプロピレン層/ホモポリプロピレン層)が順に積層された積層体からなる電池用包装材料を得た。
[シワ発生の評価]
上記で得られた各電池用包装材料について、目視にてシワの発生の有無を確認し、電池用包装材料50枚当たり、シワが発生していた枚数の割合(熱ジワ不良率:%)を算出した。
[耐薬品性の評価]
上記で得られた各電池用包装材料の耐薬品性コーティング層上に、薬品(電解液、エタノール、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチル、又はトルエン)を0.5ml滴下し、時計皿で被覆した。室温で3時間放置した後、薬品性コーティング層上の各薬品をガーゼで拭き取り、電池用包装材料の耐薬品性コーティング層表面の状態を目視で確認し、以下の基準で評価した。
○:表面に痕跡が全く確認できなかった。
×:表面に白化、膨潤、剥離等の異常が確認された。
[評価結果]
得られた結果を表2に示す。この結果から、耐薬品性コーティング層の形成に、熱硬化性樹脂と、硬化促進剤とを含有する樹脂組成物を使用することにより、短時間で硬化可能で、熱によるシワの発生を抑制でき、しかも、優れた耐薬品性を備えていることが確認された(実施例1〜5)。これに対して、耐薬品性コーティング層の形成に硬化促進剤を使用しなかった場合には、硬化時間を長く設定すると、優れた耐薬品性を備えるが、また加熱温度を高くして短時間で硬化させると、熱によるシワの発生を抑制できたが、耐薬品性が不十分であった(比較例1)。
なお、上記実施例及び比較例において、使用した熱硬化性樹脂の主剤や硬化剤、硬化促進剤は、同じ作用を持つ他の化合物に置換しても、同様の結果が得られることが確認できている。