JP2017160429A - 直鎖状高分子、高分子組成物、化合物、複合担体、分離剤および連鎖移動剤 - Google Patents

直鎖状高分子、高分子組成物、化合物、複合担体、分離剤および連鎖移動剤 Download PDF

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Yuka Arata
裕加 荒田
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拓 集路
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Abstract

【課題】蛋白質やペプチドに対して、高い結合能を有し、更に安定性の高く、取扱い性に優れた実用性や簡便性に富む材料の提供。
【解決手段】負電荷部位を有するモノマー単位と、疎水性部位を有するモノマー単位を有する直鎖状高分子。負電荷部位がカルボキシ基又はスルホ基であり、疎水性部位がアルキル基であり、好ましくはC4以上、より好ましくはC4〜6、更に好ましくは4〜5、特に好ましいのはtert−ブチル基であることが望ましい鎖状高分子。一方の末端がアルキル、アリール等であり、他方の末端がチオール基、保護基で保護されたチオール基等であることが望ましい鎖状高分子。
【選択図】なし

Description

本発明はタンパク質を結合させる材料として有用な直鎖状高分子、高分子組成物、複合体および分離剤に関する。また、本発明は、可逆的付加開裂連鎖移動重合の連鎖移動剤として有用な化合物にも関する。
タンパク質等の特定の生体高分子(標的分子)に対して、特異的な相互作用により結合する生体高分子リガンドは、医薬品や臨床診断薬として利用され、さらに広い分野への応用が期待されている。
こうした生体高分子リガンドの代表例として抗体が知られている。抗体は抗原を認識して特異的に結合する働きをもち、生物学的製剤として用いられる他、感染症やガンの診断・治療、各種生体成分の検査に用いられている。しかしながら、抗体の製造に際しては、高価な培地を用いて細胞を培養し、培養液から高価なタンパク質リガンドを用いた精製プロセスを行う必要があるため、安定的な製造が難しく、製造コストが高くなるという問題がある。
そこで抗体に代わる生体高分子リガンドとしてアプタマーが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。アプタマーは特定のタンパク質等と特異的に結合する核酸分子やペプチドからなり、核酸(RNA、DNA)アプタマーとペプチドアプタマーに大別される。核酸アプタマーは、試験管内で化学的に、しかも短時間で合成可能であるという利点を有し、抗体に代わる生物学的薬剤への応用が検討されている。一方、ペプチドアプタマーは、細胞内における標的分子と他のタンパク質との相互作用を阻害するよう設計されたタンパク質であり、多点で結合するという構造的結合能を持つため、標的分子に対して強く結合させることが可能である。そのため、ペプチドアプタマーは、医薬品、診断薬、研究試薬、タンパク質分離用のアフィニティーリガンドなどとして期待されている。
特開2010−207181号公報 特開2014−217311号公報
上記のようにアプタマーは、化学的に短時間で合成可能であるという点で抗体よりも優れている。しかしながら、アプタマーは熱に弱く、酸、塩基、酵素との接触によっても変性し易い。そのため、生産、精製および保存の条件が制限されるとともに、それらの条件を厳しく管理する必要があり、やはりアプタマーも高コストになることは避けられない。また、アプタマーは、その使用者においても、変性が進行しないよう取り扱いや保存に細心の注意を払う必要があり、実用性や簡便性にも欠ける。
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、タンパク質やペプチドに対して高い結合能を有するとともに、安定性が高い材料を提供することを目的として検討を進めた。
上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明者らは、負電荷部位を有するモノマー単位と、疎水性部位を有するモノマー単位を有する直鎖状高分子が、タンパク質やペプチドに対して優れた結合能を有することを見出した。また、この直鎖状高分子は、負電荷部位を有するモノマー単位と疎水性部位を有するモノマー単位の数や配列等を制御することにより、タンパク質やペプチドに対する結合性能を多様に変化させうることを見出した。さらに、この直鎖状高分子は、合成高分子として構成することができるため、核酸やペプチドからなるアプタマーに比べて高い安定性を持たせることが可能であることも見出した。
本発明は、これらの知見に基づいて提案されたものであり、具体的に以下の構成を有する。
[1] 負電荷部位を有するモノマー単位と、疎水性部位を有するモノマー単位を有することを特徴とする直鎖状高分子。
[2] 前記負電荷部位がカルボキシ基(−COOH)またはスルホ基(−SO3H)である[1
1]に記載の直鎖状高分子。
[3] 前記疎水性部位がアルキル基であり、該アルキル基の炭素数が4以上、好ましくは4〜6、より好ましくは4〜5である[1]または[2]に記載の直鎖状高分子。
[4] 前記アルキル基が分枝構造を有する[3]に記載の直鎖状高分子。
[5] 前記アルキル基がtert−ブチル基である[4]に記載の直鎖状高分子。
[6] さらに、負電荷部位および疎水性部位を有しない第3のモノマー単位を有する[1]〜[5]のいずれか1項に記載の直鎖状高分子。
[7] 下記一般式(1)で表される高分子または該高分子の誘導体であることを特徴とする[1]に記載の直鎖状高分子。
Figure 2017160429
[一般式(1)において、Ma、MbおよびMcはそれぞれ独立に炭化水素基を表す。LbおよびLcは単結合または2価の連結基を表す。Xaは負電荷部位を表し、Xbは疎水性部位を表し、Xcは負電荷部位および疎水性部位以外の基を表す。n4が2以上であるとき、その2以上のモノマー単位は互いに同じであっても異なっていてもよい。
n1〜n3は、0または1を表し、一般式(1)中に存在するn1の少なくとも1つは1であり、一般式(1)中に存在するn2の少なくとも1つは1である。n4は1以上の整数である。
1はアルキル基、アリール基、アリール基で置換されたアルキル基、またはアルキル基で置換されたアリール基を表す。R2はチオール基、保護基で保護されたチオール基、または下記一般式(2)もしくは(3)で表される基を表す。
Figure 2017160429
(一般式(2)および(3)において、R21およびR22は、炭化水素基または負電荷部位で置換された炭化水素基を表す。*はMa、MbおよびMcのいずれかへの結合部位を表す。)]
[8] 前記一般式(1)のMa、MbおよびMcは、炭素数が2または3の飽和炭化水素基である[7]に記載の直鎖状高分子。
[9] 前記一般式(1)のXaがカルボキシ基である[7]または[8]に記載の直鎖状高分子。
[10] 前記一般式(1)のXbがアルキル基であり、該アルキル基の炭素数が4以上、好ましくは4〜6、より好ましくは4〜5である[7]〜[9]のいずれか1項に記載の直鎖状高分子。
[11] 前記一般式(1)のXcが、水素原子または炭素数が3以下のアルキル基である[7]〜[10]のいずれか1項に記載の直鎖状高分子。
[12] 前記一般式(1)のLbおよびLcがアミド基(−CONH−)である[7]〜[11]のいずれか1項に記載の直鎖状高分子。
[13] 前記一般式(1)のR1がアリール基で置換されたアルキル基である[7]〜[12]のいずれか1項に記載の直鎖状高分子。
[14] 前記一般式(1)のR1がフェニル基で置換された炭素数1〜3のアルキル基である[13]に記載の直鎖状高分子。
[15] 前記一般式(1)のR2がチオール基または保護基で保護されたチオール基である[7]〜[14]のいずれか1項に記載の直鎖状高分子。
[16] 前記一般式(1)のR2が前記一般式(3)で表される基である[7]〜[15]のいずれか1項に記載の直鎖状高分子。
[17] 前記一般式(3)のR22が有する負電荷部位はカルボキシ基である[16]に記載の直鎖状高分子。
[18] 前記一般式(3)のR22が有する炭化水素基はアルキレン基である[16]または[17]に記載の直鎖状高分子。
[19] 前記一般式(1)におけるn1、n2およびn3を加算した合計が16以上の整数、好ましくは20〜1500の整数、より好ましくは40〜500の整数、特に好ましくは45〜160の整数である[7]〜[18]のいずれか1項に記載の直鎖状高分子。
[20] 少なくとも下記式で表される2種類のモノマー単位を有することを特徴とする[1]〜[19]のいずれか1項に記載の直鎖状高分子。
Figure 2017160429
[式中、*は隣接するモノマー単位との結合部位を表す。]
[21] さらに、下記式で表される第3のモノマー単位を有することを特徴とする[20]に記載の直鎖状高分子。
Figure 2017160429
[式中、*は隣接するモノマー単位との結合部位を表す。]
[22] 一方の末端に下記構造群(i)のいずれかで表される基を有し、他方の末端に下記構造群(ii)のいずれかで表される基を有する[1]〜[21]のいずれか1項に記載の直鎖状高分子。
Figure 2017160429
[構造群(i)〜(ii)において、*はモノマー単位への結合部位を表す。]
[23] ランダム共重合体であることを特徴とする[1]〜[22]いずれか1項に記載の直鎖状高分子。
[24] ブロック共重合体であることを特徴とする[1]〜[22]のいずれか1項に記載の直鎖状高分子。
[25] [1]〜[24]のいずれか1項に記載の直鎖状高分子の集合体である高分子組成物。
[26] 前記直鎖状高分子のポリスチレンを標準としてサイズ排除クロマトグラフィーで計測した数平均分子量が290〜900000、好ましくは290〜270000、より好ましくは290〜90000である[25]に記載の高分子組成物。
[27] 前記直鎖状高分子のポリスチレンを標準としてサイズ排除クロマトグラフィーで計測した数平均分子量が5000〜900000、好ましくは5000〜270000、より好ましくは10000〜90000である[25]に記載の高分子組成物。
[28] 前記直鎖状高分子の多分散度(PDI)が1.5以下、より好ましくは1.4以下、さらに好ましくは1.3以下である[25]〜[27]のいずれか1項に記載の高分子組成物。
[29] 重合度が均一な直鎖状高分子の集合体である[25]に記載の高分子組成物。
[30] 前記直鎖状高分子の集合体は、負電荷部位または保護基で保護された負電荷部位を有するモノマーと、疎水性部位を有するモノマーを含有するモノマー組成物のリビングラジカル重合による重合体を含む[25]〜[29]のいずれか1項に記載の高分子組成物。
[31] 前記リビングラジカル重合が可逆的付加開裂連鎖移動重合である[30]に記載の高分子組成物。
[32] 前記モノマー組成物が前記保護基で保護された負電荷部位を有するモノマーを含有し、
前記保護基で保護された負電荷部位は、tert-ブチル基のようなアルキル基を保護基とするカルボキシ基のアルキルエステルであり、重合後の脱保護反応により変換したカルボキシル基が前記直鎖状高分子の負電荷部位を構成する[30]または[31]に記載の高分子組成物。
[33] 前記モノマー組成物は、さらに、負電荷部位および疎水性部位を有しない第3のモノマーを含有する[30]〜[32]のいずれか1項に記載の高分子組成物。
[34] 負電荷部位または保護基で保護された負電荷部位を有するモノマーおよび疎水性部位を有するモノマーが、アクリル系モノマーである[30]〜[33]のいずれか1項に記載の高分子組成物。
[35] 前記第3のモノマーがアクリル系モノマーである[33]または[34]に記載の高分子組成物。
[36] 前記負電荷部位を有するモノマーが(メタ)アクリル酸である[30]〜[35]のいずれか1項に記載の高分子組成物。
[37] 前記保護基で保護された負電荷部位を有するモノマーが(メタ)アクリル酸アルキルエステルである[30]〜[36]のいずれか1項に記載の高分子組成物。
[38] 前記疎水性部位を有するモノマーがN−アルキル(メタ)アクリルアミドであり、前記N−アルキル(メタ)アクリルアミドのN原子に結合するアルキル基の炭素数が4以上、好ましくは4〜6、より好ましくは4〜5である[30]〜[37]のいずれか1項に記載の高分子組成物。
[39] 前記第3のモノマーがN−アルキル(メタ)アクリルアミドであり、前記N−アルキル(メタ)アクリルアミドのN原子に結合するアルキル基が、炭素数3以下のアルキル基である[33]〜[38]のいずれか1項に記載の高分子組成物。
[40] 可逆的付加開裂連鎖移動重合の連鎖移動剤が、ジチオエステル系化合物またはトリチオカルボナート系化合物である[31]〜[39]のいずれか1項に記載の高分子組成物。
[41] 前記連鎖移動剤が、トリチオカルボナート系化合物である[40]に記載の高分子組成物。
[42] 前記連鎖移動剤が下記一般式(5)で表される[41]に記載の高分子組成物。
Figure 2017160429
[一般式(5)において、R11は3級または4級炭素原子で結合する置換基を表し、R12はヒドロキシル基を有するアルキル基を表す。]
[43] 前記可逆的付加開裂連鎖移動重合において開始剤を使用し、前記一般式(5)のR11と同じ基が前記開始剤にも存在する[42]に記載の高分子組成物。
[44] 前記可逆的付加開裂連鎖移動重合後に、量体数による分離精製を逆相クロマトグラフィーにより行う[40]〜[43]のいずれか1項に記載の高分子組成物。
[45] 前記モノマー組成物における前記負電荷部位または保護基で保護された負電荷部位を有するモノマーの含有率が、モノマー成分の全量に対して5〜40mol%、好ましくは10〜30mol%である[30]〜[44]のいずれか1項に記載の高分子組成物。
[46] 前記モノマー組成物における前記疎水性部位を有するモノマーの含有率が、モノマー成分の全量に対して5〜50mol%、好ましくは10〜40mol%、さらに好ましくは20〜40mol%である[30]〜[45]のいずれか1項に記載の高分子組成物。
[47] 粒状物である[25]〜[46]のいずれか1項に記載の高分子組成物。
[48] 前記粒状物の平均粒径が30nm未満、好ましくは25nm未満、より好ましくは20nm未満、さらに好ましくは15nm未満である[47]に記載の高分子組成物。
[49] イムノグロブリンGに対する見かけの結合定数が、1X105(M-1)以上、好ましくは5X105(M-1)以上、より好ましくは1X106(M-1)以上である[25]〜[48]のいずれか1項に記載の高分子組成物。
[50] 蛍光分子等の標識と共有結合で結合した[25]〜[49]のいずれか1項に記載の高分子組成物。
[51] ビオチンと共有結合で結合した[25]〜[50]のいずれか1項に記載の高分子組成物。
[52] [1]〜[24]のいずれか1項に記載の直鎖状高分子と担体を有し、前記直鎖状高分子が前記担体に固定化されていることを特徴とする複合担体。
[53] [52]に記載の複合担体を含むことを特徴とする分離剤。
[54] 前記一般式(5)で表される化合物。
[55] 前記一般式(5)で表される化合物からなる連鎖移動剤。
本発明の直鎖状高分子は、タンパク質やペプチドに対して高い結合能を有するとともに、安定性が高い。本発明の高分子組成物、複合体および分離剤は、こうした直鎖状高分子を用いることにより、タンパク質やペプチドを効率よく吸着させることができる。また、本発明の化合物は、可逆的付加開裂連鎖移動重合の連鎖移動剤として有用であり、これを用いることにより、高い連鎖移動効率を得ることができる。
合成例5で合成した中間重合体5および高分子5aの1N−NMRスペクトルである。 合成例13で合成した中間重合体13および高分子13aの1N−NMRスペクトルである。 合成例13で合成した高分子13aおよび高分子13bの吸収スペクトルである。 カルボキシ基を有するモノマー単位、tert-ブチル基を有するモノマー単位およびイソプロピル基を有するモノマー単位を含む高分子1b、6bと、カルボキシ基を有するモノマー単位とイソプロピル基を有するモノマー単位を含む比較高分子1について、IgGとの相互作用を調べた結果を示すグラフである。 カルボキシ基を有するモノマー単位、tert-ブチル基を有するモノマー単位およびイソプロピル基を有するモノマー単位を含む高分子4b〜6bについて、IgGとの相互作用を調べた結果を示すグラフである。 カルボキシ基を有するモノマー単位、tert-ブチル基を有するモノマー単位およびイソプロピル基を有するモノマー単位を含む高分子7b、10b、13bと、カルボキシ基を有するモノマー単位とイソプロピル基を有するモノマー単位を含む比較高分子2について、IgGとの相互作用を調べた結果を示すグラフである。 カルボキシ基を有するモノマー単位、tert-ブチル基を有するモノマー単位およびイソプロピル基を有するモノマー単位を含む高分子8b、11b、14bと、カルボキシ基を有するモノマー単位とイソプロピル基を有するモノマー単位を含む比較高分子3について、IgGとの相互作用を調べた結果を示すグラフである。 トリブロックポリマーANT、ATN、NAT、NTA、TAN、TNA、ジブロックポリマーAT、TA、ランダムポリマーR30、R6およびホモポリマーA、N、Tの溶血活性阻害率を示すグラフである。 トリブロックポリマーANT、ATN、NAT、NTA、TAN、TNA、ジブロックポリマーAT、TA、ランダムポリマーR30、R6およびホモポリマーA、N、Tの溶血活性阻害率を示すグラフである。 トリブロックポリマーANT、ATN、NAT、NTA、TAN、TNAおよびランダムポリマーR30について、ビオチン化メリチンとの相互作用を調べた結果を示すグラフである。 ホモポリマーNについて、ビオチン化メリチンとの相互作用を調べた結果を示すグラフである。 合成例Iで合成した化合物1の1N−NMRスペクトルである。 合成例IIで合成した化合物2の1N−NMRスペクトルである。 化合物1を連鎖移動剤に用いて合成した重合体のESI−MSスペクトルである。 化合物1を連鎖移動剤に用いて合成した重合体の逆相カラムクロマトグラフィーによる溶出パターンを示すグラフである。 化合物2を連鎖移動剤に用いて合成した重合体のESI−MSスペクトルである。 化合物2を連鎖移動剤に用いて合成した重合体の逆相カラムクロマトグラフィーによる溶出パターンを示すグラフである。
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書中において「(メタ)アクリル酸」というときは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を指して言う。(メタ)アクリル酸誘導体についても同様である。
<直鎖状高分子>
本発明の直鎖状高分子は、負電荷部位を有するモノマー単位と、疎水性部位を有するモノマー単位を有することを特徴とする。
以下において、本発明における「負電荷部位」、「疎水性部位」、「モノマー単位」、「直鎖状高分子」、「直鎖状高分子の集合体」の意義を説明する。
「負電荷部位」とは、負電荷を有する基、または塩基性水溶液中で解離して高分子側に残った部分に負電荷を生成する基のことをいう。「負電荷部位」の具体例として、カルボキシ基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスホノ基(−P(O)(OH)2)、ホスホノキシ基(−OP(O)(OH)2)、またはこれらの基から水素イオンが外れたアニオン基等を挙げることができ、カルボキシ基であることが好ましい。
「疎水性部位」とは、アルキル基やアルキレン基、フェニル基の様な炭化水素からなる低極性基のことをいう。疎水性部位の具体例として、炭素数が4以上のアルキル基を挙げることができ、炭素数が4〜6のアルキル基であることが好ましく、炭素数が4〜5のアルキル基であることがより好ましい。また、疎水性部位となるアルキル基は、分枝構造を有することが好ましい。分枝構造を有するアルキル基の具体例として、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、イソオクチル基等を挙げることができ、中でも、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が好ましく、tert-ブチル基が最も好ましい。
「モノマー単位」とは、モノマーの重合性基が重合反応した後にできる構造単位を意味し、反応後の分子中に特定のモノマー単位が1つだけ含まれている場合であっても、その特定の単位をモノマー単位と呼ぶ。
負電荷部位を有するモノマー単位において、各モノマー単位が有する負電荷部位の数はそれぞれ1つであっても2つ以上であってもよい。負電荷部位の数が2つ以上であるとき、複数の負電荷部位は互いに同一であっても異なっていてもよい。疎水性部位を有するモノマー単位において、各モノマー単位が有する疎水性部位の数はそれぞれ1つであっても2つ以上であってもよい。疎水性部位の数が2つ以上であるとき、複数の疎水性部位は互いに同一であっても異なっていてもよい。
「直鎖状高分子」とは、モノマー単位が直鎖状につながって構成された高分子、すなわち、分岐構造や架橋構造を有しない高分子のことをいう。直鎖状高分子を構成するモノマー単位の数は、合計で3以上の整数であることが好ましく、3〜1500の整数であることがより好ましく、5〜500の整数であることがさらに好ましく、7〜160の整数であることが特に好ましい。
直鎖状高分子は、負電荷部位を有するモノマー単位および疎水性部位を有するモノマー単位をそれぞれ1つ以上有する。直鎖状高分子が有する負電荷部位を有するモノマー単位の数が2つ以上であるとき、負電荷部位を有する複数のモノマー単位は、互いに同一であっても異なっていてもよい。また、直鎖状高分子が有する疎水性部位を有するモノマー単位の数が2つ以上であるとき、疎水性部位を有する複数のモノマー単位は、互いに同一であっても異なっていてもよい。直鎖状高分子が有する負電荷部位を有するモノマー単位の数および疎水性部位を有するモノマー単位の数は、結合させる対象物質(以下、「標的物質」という)との相互作用の態様や結合力の大きさに影響し、本発明の直鎖状高分子は、それぞれのモノマー単位の配列や数、負電荷部位を有するモノマー単位の数と疎水性部位を有するモノマー単位の数の比を最適化することによって、特定の標的物質に対して特異的に相互作用するものになる。したがって、直鎖状高分子が有する負電荷部位を有するモノマー単位数および疎水性部位を有するモノマー単位数は、標的物質に応じて適宜選択されるが、例えば、標的物質がタンパク質やペプチドである場合、負電荷部位を有するモノマー単位数:疎水性部位を有するモノマー単位数は、1:1〜100:200であることが好ましく、1:1〜50:100であることがより好ましく、1:2〜5:10であることがさらに好ましい。また、例えば、標的物質がメリチン(ハチ毒由来の溶血性ペプチド)である場合、負電荷部位を有するモノマー単位数:疎水性部位を有するモノマー単位数を3:6にすると、直鎖状高分子はメリチンに対して強く結合して、メリチンの溶血作用を顕著に阻害するものになる。
本発明の直鎖状高分子は、モノマー単位として、負電荷部位を有するモノマー単位および疎水性部位を有するモノマー単位のみを有していてもよいが、さらに、負電荷部位および疎水性部位のいずれも有しない第3のモノマー単位を有していてもよい。この場合、直鎖状高分子が有する第3のモノマー単位の数は1つであっても2つ以上であってもよい。直鎖状高分子が第3のモノマー単位を2つ以上有するとき、複数の第3のモノマー単位は互いに同一であっても異なっていてもよい。直鎖状高分子に第3のモノマー単位を導入することにより、直鎖状高分子と標的物質の相互作用をさらに多様に制御することができる。例えば、第3のモノマー単位の位置(例えば負電荷部位を有するモノマー単位と疎水性部位を有するモノマー単位の間や末端部位等等)や連なる数を変えることにより、負電荷部位を有するモノマー単位と疎水性部位を有するモノマー単位の間の鎖長や、直鎖状高分子の末端から負電荷部位を有するモノマー単位までの鎖長、直鎖状高分子の末端から疎水性部位を有するモノマー単位までの鎖長等が制御され、これらを最適化することにより、特定の標的物質に対する結合性能を高めることが可能になる。直鎖状高分子が第3のモノマー単位を有するとき、負電荷部位を有するモノマー単位数:疎水性部位を有するモノマー単位数:第3のモノマー単位数は、1:1:1〜100:200:200であることが好ましい。また、例えば、標的物質がメリチンである場合、負電荷部位を有するモノマー単位数:疎水性部位を有するモノマー単位数:第3のモノマー単位数を3:6:21にすると、直鎖状高分子はメリチンに対してより強く結合して、メリチンの溶血作用をより顕著に阻害するものになる。
本発明の直鎖状高分子は、下記一般式(1)で表される高分子、またはその誘導体であることが好ましい。
Figure 2017160429
一般式(1)において、Ma、MbおよびMcはそれぞれ独立に炭化水素基を表す。Ma、MbおよびMcは互いに同一であっても異なっていてもよい。Ma、MbおよびMcにおける炭化水素基は、炭化水素から3つの水素原子を除いた3価の基であり、さらに炭化水素の水素原子が置換基で置換されていてもよいが、置換されていないことが好ましい。また、炭化水素基は飽和炭化水素基であることが好ましく、直鎖状の飽和炭化水素基であることがより好ましい。炭化水素基の炭素数は、特に制限されないが、2〜6であることが好ましく、2〜4であることがより好ましく、2または3であることがさらにより好ましい。Ma、MbおよびMcは、いずれも炭素数が2または3の飽和炭化水素基であることが好ましい。
aは負電荷部位を表し、Xbは疎水性部位を表し、Xcは負電荷部位および疎水性部位以外の基を表す。Xaにおける負電荷部位、Xbにおける疎水性部位の説明と好ましい範囲、具体例については、上記の意義の説明における負電荷部位、疎水性部位についての説明と好ましい範囲、具体例を参照することができる。Xcにおける負電荷部位および疎水性部位以外の基は、特に限定されないが、水素原子または炭素数が3以下のアルキル基(すなわち、イソプロピル基、プロピル基、エチル基、メチル基)等を挙げることができ、炭素数が3以下のアルキル基であることが好ましい。
bおよびLcは単結合または2価の連結基を表す。LbおよびLcの両方が2価の連結基を表すとき、複数の2価の連結基は互いに同一であっても異なっていてもよい。LbおよびLcが表す2価の連結基として、アミド基(−CONR−や−NRCO−)、オキシカルボニル基(−COO−)、アルキレン基、ウレタン基(−NHCOO−)、カルバミド基(−NHCO−)、エーテル基(−O−)、またはこれらの基の2つ以上の組み合わせからなる2価の基を挙げることができ、アミド基(−CONR−)、オキシカルボニル基(−COO−)であることが好ましく、アミド基(−CONR−)であることがより好ましい。ここで、アミド基(−CONR−)のRは、水素原子、またはアルキル基等の置換基を表し、水素原子であることが好ましい。
n1〜n3は、0または1を表し、一般式(1)中に存在するn1の少なくとも1つは1であり、一般式(1)中に存在するn2の少なくとも1つは1である。n4は1以上の整数である。一般式(1)において、n1で括られたモノマー単位は負電荷部位を有するモノマー単位に対応し、n2で括られたモノマー単位は疎水性部位を有するモノマー単位に対応し、n3で括られたモノマー単位は第3のモノマー単位に対応する。一般式(1)中に存在するn1の2つ以上が1であるとき、複数のn1で括られたモノマー単位(負電荷部位を有するモノマー単位)同士は互いに同一であっても異なっていてもよい。一般式(1)中に存在するn2の2つ以上が1であるとき、複数のn2で括られたモノマー単位(疎水性部位を有するモノマー単位)同士は互いに同一であっても異なっていてもよい。一般式(1)中に存在するn3の2つ以上が1であるとき、複数のn3で括られたモノマー単位(第3のモノマー単位)同士は互いに同一であっても異なっていてもよい。
一般式(1)におけるn1、n2およびn3を加算した合計は16以上の整数であることが好ましく、20〜1500の整数であることがより好ましく、40〜500の整数であることがさらに好ましく、45〜160の整数であることが特に好ましい。また、n1:n2は、1:1〜100:200であることが好ましく、1:1〜50:100であることがより好ましく、1:2〜5:10であることがさらに好ましい。n1:n2:n3は、1:1:1〜100:200:200であることが好ましい。
1はアルキル基、アリール基、アリール基で置換されたアルキル基、またはアルキル基で置換されたアリール基を表し、3級または4級炭素原子でモノマー単位に結合する基であることが好ましい。
1におけるアルキル基は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。好ましい炭素数は1〜20であり、より好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜6である。例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基などを例示することができる。アルキル基は置換基で置換されていてもよい。アルキル基に置換しうる置換基として、シアノ基、カルボキシ基、ヒドロキシル基、アルコキシル基等を挙げることができる。これらの置換基は、さらに置換基で置換されていてもよい。
1におけるアリール基は、炭化水素からなる芳香環(以下、「芳香族炭化水素環」という)から1つの水素原子を除いた基であり、さらに芳香環の水素原子が置換基で置換されていてもよい。アリール基を構成する芳香環は、単環であっても、2以上の芳香環が縮合した縮合環であっても、2以上の芳香環が連結した連結環であってもよい。2以上の芳香環が連結している場合は、直鎖状に連結したものであってもよいし、分枝状に連結したものであってもよい。アリール基を構成する芳香環の炭素数は、6〜40であることが好ましく、6〜22であることがより好ましく、6〜18であることがさらに好ましく、6〜14であることがさらにより好ましく、6〜10であることが特に好ましい。アリール基の具体例として、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル−イル基を挙げることができ、フェニル基であることが好ましい。アリール基に置換しうる置換基として、例えばシアノ基、カルボキシ基、フッ素原子、塩素原子等を挙げることができる。
1におけるアリール基で置換されたアルキル基およびアルキル基で置換されたアリール基をそれぞれ構成するアルキル基、アリール基の説明と好ましい範囲、具体例、および置換基の具体例については、上記の一般式(1)のR1におけるアルキル基、アリール基についての説明と好ましい範囲、具体例、および置換基の具体例を参照することができる。
これらのうち、R1はアリール基で置換されたアルキル基であることが好ましく、フェニル基で置換されたアルキル基であることがより好ましく、フェニル基で置換された炭素数1〜3のアルキル基であることがさらに好ましい。また、R1はシアノ基およびカルボキシ基の少なくとも一方で置換されたアルキル基であることも好ましく、シアノ基で置換されたアルキル基であることがより好ましく、シアノ基で置換された炭素数3〜5のアルキル基であることがさらに好ましい。
2はチオール基、保護基で保護されたチオール基、または下記一般式(2)もしくは(3)で表される基を表す。「保護基で保護されたチオール基」とは、脱保護反応によりチオール基に変換する基である。また、一般式(2)もしくは(3)で表される基は、保護基で保護されたチオール基に相当するものであってもよい。保護基で保護されたチオール基における保護基は、特に限定されず、公知のものを用いることができるが、具体例としてベンジル基、メトキシベンジル基、メトキシメチル基、2−テトラヒドロピラニル基、ジフェニルメチル基、アセチル基等を挙げることができる。R2はチオール基、保護基で保護されたチオール基、一般式(3)で表される基であることが好ましく、一般式(3)で表される基であることがより好ましい。
Figure 2017160429
一般式(2)および(3)において、*はMa、MbおよびMcのいずれかへの結合部位を表す。
21およびR22は、炭化水素基または負電荷部位で置換された炭化水素基を表す。R21およびR22における炭化水素基は、炭化水素から1つの水素原子を除いた1価の基であり、さらに炭化水素の水素原子が置換基で置換されていてもよい。R21およびR22における負電荷部位で置換された炭化水素基の炭化水素基は、炭化水素から1つの水素原子を除いた1価の基であって、さらに炭化水素の水素原子が負電荷部位で置換された構造を有する。負電荷部位で置換された炭化水素基は、さらに、炭化水素基の水素原子が置換基で置換されていてもよい。負電荷部位の説明と好ましい範囲、具体例については、上記の意義の説明における負電荷部位についての説明と好ましい範囲、具体例を参照することができる。炭化水素基の具体例として、アルキル基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等を挙げることができ、アルキル基であることが好ましい。アルキル基の説明と好ましい範囲、具体例については、R1におけるアルキル基についての説明と好ましい範囲、具体例を参照することができる。炭化水素基に置換しうる基として、負電荷部位の他、ヒドロキシル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシル基等を挙げることができ、負電荷部位またはヒドロキシル基であることが好ましい。また、一般式(3)のR22は負電荷部位としてカルボキシ基を有することが好ましく、また、R22はアルキル基であることも好ましく、カルボキシ基で置換されたアルキル基、ヒドロキシル基で置換されたアルキル基であることがより好ましく、ヒドロキシル基で置換されたアルキル基であることがさらに好ましい。
以下において、本発明の直鎖状高分子が含む負電荷部位を有するモノマー単位および疎水性部位を有するモノマー単位の具体例、並びに、直鎖状高分子に必要に応じて導入しうる第3のモノマー単位の具体例を例示する。ただし、本発明において用いることができるモノマー単位はこれらの具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。下記式において、*は隣接するモノマー単位との結合部位を表す。
Figure 2017160429
また、以下において、本発明の直鎖状高分子の末端構造の具体例を例示する。ただし、本発明において用いることができる末端構造はこれらの具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。本発明の直鎖状高分子は、一方の末端に下記構造群(i)のいずれかで表される基を有し、他方の末端に下記構造群(ii)のいずれかで表される基を有することが好ましく、一般式(1)で表される高分子であって、R1が下記構造群(i)のいずれかで表される基であり、R2が下記構造群(ii)のいずれかで表される基であることがより好ましい。構造群(i)〜(ii)において、*はモノマー単位への結合部位を表す。
Figure 2017160429
本発明の直鎖状高分子は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよいが、ブロック共重合体であることが好ましい。ブロック共重合体としては、負電荷部位を有するモノマー単位が連続して配列しているブロック鎖Aと、疎水性部位を有するモノマー単位が連続して配列しているブロック鎖Tを有することが好ましく、負電荷部位を有するモノマー単位が連続して配列しているブロック鎖Aおよび疎水性部位を有するモノマー単位が連続して配列しているブロック鎖Tとともに、第3のモノマー単位が連続して配列しているブロック鎖Nを有することがより好ましい。こうしたブロック構造により、負電荷部位による静電的相互作用を示す領域(ブロック鎖A)と、疎水性部位による疎水性相互作用を示す領域(ブロック鎖T)を分けることができ、それらの領域が、標的物質の静電的相互作用を示す領域と疎水性相互作用を示す領域と三次元的に対応するように容易に設計することができる。これにより、標的物質との相互作用が大きく、標的物質に対する結合能が高い直鎖状高分子を得ることができる。また、ブロック鎖Aとブロック鎖Tの間に、第3のモノマー単位によるブロック鎖Nを配列することにより、ブロック鎖Aとブロック鎖Tの間の鎖長を制御することができ、直鎖状高分子の末端側にブロック鎖Nを配列することにより、末端からブロック鎖Aまでの鎖長、末端からブロック鎖Tまでの鎖長を制御することができる。これにより、静電的相互作用を示す領域(ブロック鎖A)と疎水性相互作用を示す領域(ブロック鎖T)の三次元的位置をより多様に制御することができ、標的物質に対する結合能や結合特異性により優れた高分子を得ることができる。
ブロック共重合体のブロック鎖Aのモノマー単位数、ブロック鎖Tのモノマー単位数、ブロック鎖Nのモノマー単位数は、標的物質に応じて適宜選択することが好ましいが、標的物質がタンパク質である場合、ブロック鎖Aのモノマー単位数は1〜100であることが好ましく、1〜50であることがよりこのましく、1〜5であることがさらに好ましい。ブロック鎖Tのモノマー単位数は1〜200であることが好ましく、1〜100であることがよりこのましく、2〜10であることがさらに好ましい。ブロック鎖Nのモノマー単位数は1〜200であることが好ましく、1〜100であることがよりこのましく、2〜10であることがさらに好ましい。ブロック鎖Aのモノマー単位数mAとブロック鎖Tのモノマー単位数mTの比mA:mTは1:1〜100:200であることが好ましく、1:1〜50:100であることがより好ましく、1:2〜5:10であることがさらに好ましい。例えば、標的物質がメリチンである場合には、mA:mTを3:6とすることにより、直鎖状高分子はメリチンに対して強く結合して、メリチンの溶血作用を顕著に阻害する。さらに、ブロック鎖Aおよびブロック鎖Tとともにブロック鎖Nを有する場合には、ブロック鎖Aのモノマー単位数mAとブロック鎖Tのモノマー単位数mTとブロック鎖Nのモノマー単位数mNの比mA:mT:mNは、1:1:1〜100:200:200であることが好ましい。例えば、標的物質がメリチンである場合には、mA:mT:mNを3:6:21とすることにより、直鎖状高分子はメリチンに対してより強く結合して、メリチンの溶血作用をより顕著に阻害する。
ブロック鎖A、ブロック鎖Tおよびブロック鎖Nの配列順位の具体例として、AT、TA、ANT、ATN、NAT、NTA、TAN、TNAを挙げることができる。配列順位の選択により、標的物質の結合能や結合特異性を制御することができる。また、直鎖状高分子が有するブロック鎖の数は、2つまたは3つに限られるものではなく、4つ以上であっても構わない。ブロック鎖の数が4つ以上であるとき、2列以上になるブロック鎖同士、すなわちAと他のA、Tと他のT、またはNと他のNは互いに同一であっても異なっていてもよい。
本発明の直鎖状高分子は、ラジカル重合により合成することが好ましく、リビングラジカル重合により合成することがより好ましく、可逆的付加開裂連鎖移動重合により合成することがさらに好ましい。直鎖状高分子の合成方法および具体的な条件については、実施例の欄を参照することができる。
<高分子組成物>
本発明の高分子組成物は、本発明の直鎖状高分子の集合体である。
直鎖状高分子の説明と好ましい範囲、具体例については、<直鎖状高分子>の欄の記載を参照することができる。
「直鎖状高分子の集合体」とは、一定の空間内に集められた複数の直鎖状高分子を意味し、空間の容量、空間内の媒質は特に制限されない。集合体を構成する複数の直鎖状高分子の分子構造や立体構造等の構造は、同じであっても異なっていてもよい。また、集合体を構成する直鎖状高分子は、無秩序に分散して存在していてもよいし、規則的に配列して存在していてもよいし、成形体を構成していてもよいし、粒状物になっていてもよい。直鎖状高分子の集合体からなる粒状物の平均粒径は30nm未満であることが好ましく、25nm未満であることがより好ましく、20nm未満であることがさらに好ましく、15nm未満であることがさらにより好ましい。高分子組成物は、直鎖状高分子の集合体のみから構成されていることが好ましいが、添加剤や直鎖状高分子を合成する際に使用する材料(例えば未反応モノマー、RAFT剤、架橋剤、脱保護剤等)、副生成物である合成対象高分子の誘導体等を含んでいてもよい。
直鎖状高分子の集合体は、負電荷部位または保護基で保護された負電荷部位を有するモノマーと、疎水性部位を有するモノマーを含有するモノマー組成物のリビングラジカル重合によるランダム共重合体を含むことが好ましく、負電荷部位または保護基で保護された負電荷部位を有するモノマーと、疎水性部位を有するモノマーを含有するモノマーのリビングラジカル重合によるブロック共重合体を含むことも好ましい。ブロック共重合体は、負電荷部位または保護基で保護された負電荷部位を有するモノマーのリビングラジカル重合によるホモポリマーの末端に、疎水性部位を有するモノマーが連続的に付加してブロック鎖を形成したリビングラジカル重合によるブロック共重合体であるか、疎水性部位を有するモノマーのリビングラジカル重合によるホモポリマーの末端に、負電荷部位または保護基で保護された負電荷部位を有するモノマーが連続的に付加してブロック鎖を形成したリビングラジカル重合によるブロック共重合体であるか、負電荷部位または保護基で保護された負電荷部位を有するモノマーのリビングラジカル重合によるホモポリマーと疎水性部位を有するモノマーのリビングラジカル重合によるホモポリマーが結合したブロック共重合体であることがより好ましい。
これらの重合体では、疎水性部位を有するモノマーの疎水性部位が直鎖状高分子の疎水性部位を構成する。また、負電荷部位または保護基で保護された負電荷部位を有するモノマーのうち、負電荷部位を有するモノマーを用いた場合には、その負電荷部位が直鎖状高分子の負電荷部位を構成する。一方、保護基で保護された負電荷部位を有するモノマーを用いた場合には、重合後の脱保護反応により変換した負電荷部位が、直鎖状高分子の負電荷部位を構成する。
以下において、直鎖状高分子の集合体に用いられる各モノマーについて説明する。
[負電荷部位または保護基で保護された負電荷部位を有するモノマーと、疎水性部位を有するモノマー]
本発明で用いる負電荷部位または保護基で保護された負電荷部位を有するモノマーの負電荷部位、疎水性部位を有するモノマーの疎水性部位の説明と好ましい範囲、具体例については、意義の説明における負電荷部位、疎水性部位についての説明と好ましい範囲、具体例を参照することができる。
負電荷部位または保護基で保護された負電荷部位を有するモノマーのうちでは、保護基で保護された負電荷部位を有するモノマーを用いることが好ましく、負電荷部位が疎水性を有する保護基で保護されたモノマーを用いることがより好ましい。疎水性を有する保護基で負電荷部位が保護されていることにより、脱保護する前の重合体を、逆相クロマトグラフィーにて量体数により分離する際、保護基も疎水性基とともに固定相に吸着するため、重合体が量体数をより反映する強さで固定相に吸着することになる。これにより、重合体を量体数毎に精度よく分離することが可能になる。負電荷部位がカルボキシ基である場合、その保護基はアルキル基であることが好ましい。保護基となるアルキル基の好ましい範囲と具体例については、上記の疎水性部位として例示したアルキル基の好ましい範囲と具体例を参照することができる。アルキル基で保護されたカルボキシ基は、カルボキシ基のアルキルエステルになっており、例えばトリフルオロ酢酸との反応により脱保護されて、カルボキシ基に変換される。
負電荷部位または保護基で保護された負電荷部位を有するモノマーおよび疎水性部位を有するモノマーは、アクリル系モノマーであることが好ましい。また、これらのうち、負電荷部位を有するモノマーは、(メタ)アクリル酸、または、N−スルホアルキルアクリルアミド、N−ホスホノアルキルアクリルアミド、N−ホスホノキシアルキルアクリルアミド等のアクリルアミド系モノマーであることが好ましく、(メタ)アクリル酸であることがより好ましい。ここで、N−スルホアルキルアクリルアミドの具体例として、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸を挙げることができる。また、保護基で保護された負電荷部位を有するモノマーは(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アルキル基(保護基)で保護されたカルボキシ基(負電荷部位)を有するモノマーに相当する。
疎水性部位を有するモノマーとしては、例えば、疎水性部位がアルキル基やフェニル基であるものを好ましく用いることができる。中でも、疎水性部位を有するモノマーは、下記一般式(4)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2017160429
下記一般式(4)において、R3は水素原子又は炭素数1〜3の分岐していてもよいアルキル基であり、好ましくは水素原子又はメチル基である。R4は、炭素数4以上の分岐していてもよいアルキル基であり、炭素数4〜8であることが好ましく、炭素数4〜6であることがより好ましく、炭素数4〜5であることがさらに好ましく、tert-ブチル基であることが特に好ましい。直鎖状高分子は、式(4)で表されるモノマーに由来するモノマー単位を1種のみ又は2種以上を含んでいてもよい。
一般式(4)のR3が水素原子またはメチル基であるものは、N−アルキル(メタ)アクリルアミドであり、一般式(4)のR4はN−アルキル(メタ)アクリルアミドのN原子に結合するアルキル基に相当する。N−アルキル(メタ)アクリルアミドのN原子に結合するアルキル基の好ましい範囲と具体例については、上記の疎水性部位として例示したアルキル基の好ましい範囲と具体例を参照することができる。
一般式(4)で表される化合物の具体例として、N-n-ブチルアクリルアミド、N-イソブチルアクリルアミド、N-sec-ブチルアクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド、N-n-ペンチルアクリルアミド、N-イソペンチルアクリルアミド、N-ネオペンチルアクリルアミド、N-tert-ペンチルアクリルアミド、N-シクロペンチルアクリルアミド、N-n-ヘキシルアクリルアミド、N-イソヘキシルアクリルアミド、N-シクロヘキシルアクリルアミド、N-n-オクチルアクリルアミド、N-イソオクチルアクリルアミド、N−オクタデシルアクリルアミド、N-n-ブチルメタクリルアミド、N-イソブチルメタクリルアミド、N-sec-ブチルメタクリルアミド、N-tert-ブチルメタクリルアミド、N-n-ペンチルメタクリルアミド、N-イソペンチルメタクリルアミド、N-ネオペンチルメタクリルアミド、N-tert-ペンチルメタクリルアミド、N-シクロペンチルメタクリルアミド、N-n-ヘキシルメタクリルアミド、N-イソヘキシルメタクリルアミド、N-シクロヘキシルメタクリルアミド、N-n-オクチルメタクリルアミド、N-イソオクチルメタクリルアミド、N-オクタデシルメタクリルアミド等を挙げることができ、N-tert-ブチルアクリルアミド、N-tert-ブチルメタクリルアミドであることが好ましく、N-tert-ブチルアクリルアミドであることがより好ましい。
疎水性部位を有するモノマーとしては、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、アルキル(メタ)アクリレート、アルキルスチレン等も用いることができる。
N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジオクチルアクリルアミド、N,N−ジオクチルメタクリルアミド等を挙げることができる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、ドデシルアクリレート、ドデシルメタクリレート、トリデシルアクリレート、トリデシルメタクリレート、オクタデシルアクリレート、オクタデシルメタクリレート等を挙げることができる。
また、疎水性部位を有するモノマーとして、無水マレイン酸のエチル半エステル、マレイン酸ジエチル、および、1〜16個の炭素原子を有するアルカノールと、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびアコニット酸のようなエチレン性不飽和カルボン酸との反応から誘導される他のアルキルエステル、エチレン性不飽和カルボン酸のアルキルアリールエステル等も挙げることができる。アルキルアリールエステルの具体例として、ノニル−α−フェニルアクリレート、ノニル−α−フェニルメタクリレート、ドデシル−α−フェニルアクリレート、ドデシル−α−フェニルメタクリレート等を挙げることができる。
さらに、N−ビニルピロリドン、ヒドロキシアルキルアクリレート等も疎水性部位を有するモノマーとして用いることができる。ヒドロキシアルキルアクリレートの具体例として、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレート、または2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート等を挙げることができる。
さらに、また、ラウリン酸ビニルおよびステアリン酸ビニル等のビニルアルキレート、ドデシルビニルエーテルおよびヘキサデシルビニルエーテル等のビニルアルキルエーテル、N−ビニルラウラミドおよびN−ビニルステアラミド等のN−ビニルアミドも疎水性部位を有するモノマーとして用いることができる。
さらに、また、疎水性部位を有するモノマーとして下記式で表される化合物も挙げることができる。
Figure 2017160429
モノマー組成物における負電荷部位または保護基で保護された負電荷部位を有するモノマーの含有率は、モノマー成分の合計量に対して5〜40mol%であることが好ましく、10〜30mol%であることがより好ましい。また、モノマー組成物における疎水性部位を有するモノマーの含有率は、モノマー成分の合計量に対して5〜50mol%であることが好ましく、10〜40mol%であることがより好ましく、20〜40mol%であることがさらに好ましい。
[第3のモノマー]
直鎖状高分子の集合体には、さらに、負電荷部位および疎水性部位を有しない第3のモノマーを導入することが好ましい。第3のモノマーは、直鎖状高分子の第3のモノマー単位を構成する。
第3のモノマーが導入された直鎖状高分子の集合体は、負電荷部位または保護基で保護された負電荷部位を有するモノマー、疎水性部位を有するモノマー、および第3のモノマーを含有するモノマー組成物のリビングラジカル重合によるランダム共重合体を含むことが好ましく、負電荷部位または保護基で保護された負電荷部位を有するモノマー、疎水性部位を有するモノマー、および第3のモノマーのリビングラジカル重合によるブロック共重合体を含むことも好ましい。また、ブロック共重合体は、負電荷部位または保護基で保護された負電荷部位を有するモノマーと疎水性部位を有するモノマーのリビングラジカル重合によるブロック共重合体の末端に、第3のモノマーが連続的に付加してブロック鎖を形成したリビングラジカル重合によるブロック共重合体であるか、第3のモノマーのリビングラジカル重合によるホモポリマーの末端に、負電荷部位または保護基で保護された負電荷部位を有するモノマーが連続的に付加してブロック鎖を形成し、さらに、そのブロック鎖の末端に、疎水性部位を有するモノマーが連続的に付加してブロック鎖を形成したリビングラジカル重合によるブロック共重合体であるか、第3のモノマーのリビングラジカル重合によるホモポリマーの末端に、疎水性部位を有するモノマーが連続的に付加してブロック鎖を形成し、さらに、そのブロック鎖の末端に、負電荷部位または保護基で保護された負電荷部位を有するモノマーが連続的に付加してブロック鎖を形成したリビングラジカル重合によるブロック共重合体であるか、負電荷部位または保護基で保護された負電荷部位を有するモノマーのリビングラジカル重合によるホモポリマーと疎水性部位を有するモノマーのリビングラジカル重合によるホモポリマーと第3のポリマーのリビングラジカル重合によるホモポリマーが互いに結合して直鎖ポリマーを形成したブロック共重合体であることがより好ましい。
第3のモノマーはアクリル系モノマーであることが好ましく、N−アルキル(メタ)アクリルアミドであることがより好ましい。また、そのN−アルキル(メタ)アクリルアミドのN原子に結合するアルキル基は炭素数3以下のアルキル基であることが好ましい。
第3のモノマーの具体例として、N-イソプロピルアクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド等を挙げることができる。
[可逆的付加開裂連鎖移動重合]
本発明で用いる直鎖状高分子の集合体を合成するためのリビングラジカル重合は、可逆的付加開裂連鎖移動重合であることが好ましい。これにより、分子量が均一な直鎖状高分子の集合体を得ることができる。可逆的付加開裂連鎖移動重合の連鎖移動剤(RAFT剤)には、ジチオエステル系化合物またはトリチオカルボナート系化合物を用いることができ、トリチオカルボナート系化合物であることが好ましい。
連鎖移動剤として用いるトリチオカルボナート系化合物は下記一般式(5)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2017160429
一般式(5)において、R11は3級または4級炭素原子で結合する置換基を表す。本発明における「3級炭素原子」とは、水素原子が1つと、水素原子以外の置換基が3つ結合している炭素原子のことを意味し、「4級炭素原子」とは、水素原子以外の置換基が4つ結合している炭素原子のことを意味する。R11が表す置換基は、下記一般式(6)または(7)で表される基であることが好ましい。
Figure 2017160429
一般式(6)および(7)において、*は一般式(5)における硫黄原子との結合部位を表し、R111、R112、R113〜R115は各々独立に水素原子以外の置換基を表す。R111およびR112は互いに同一であっても異なっていてもよく、R113〜R115は互いに同一であっても異なっていてもよい。R111〜R115が表す置換基は特に限定されないが、3級炭素原子または4級炭素原子に炭素原子で結合する置換基であることが好ましい。置換基の具体例として、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、シアノ基、カルボキシル基(−COOH)、オキシカルボニル基(−COOR)、カルバミド基(−CONHR)等を挙げることができる。アルキル基およびアリール基の説明と好ましい範囲、具体例、これらの基に置換しうる置換基の具体例については、上記の一般式(1)のR1におけるアルキル基、アリール基についての説明と好ましい範囲、具体例、および置換基の具体例を参照することができる。
一般式(5)において、R12はヒドロキシル基を有するアルキル基を表す。このアルキル基の説明と好ましい範囲、具体例、およびアルキル基に置換しうる置換基の具体例については、上記の一般式(1)のR1におけるアルキル基、アリール基についての説明と好ましい範囲、具体例、および置換基の具体例を参照することができる。
一般式(5)で表される化合物は、R11が3級または4級炭素原子で結合する置換基であることにより、硫黄原子とR11間の結合の開裂により発生するラジカル(炭素をラジカル中心とするラジカル)の安定性が高く、高い連鎖移動効率を得ることができる。
また、一般式(5)で表される化合物は、R12がヒドロキシル基を有するアルキル基であることにより、無置換のアルキル基の場合に比べて疎水性が低い状態になっている。このため、連鎖移動剤との作用により直鎖状高分子の末端にR12が導入されたとき、その直鎖状高分子の逆相クロマトグラフィーによる分離工程で、その末端部分(R12)が固定相に強く吸着することを抑えることができる。これにより、量体数が小さいものが固定相に強く吸着して、量体数が大きいものとの間で溶出時間に差がなくなることが回避され、直鎖状高分子を量体数毎に精度よく分離することが可能になる。
以下において、一般式(5)で表される化合物の具体例を例示する。ただし、本発明において用いることができる連鎖移動剤はこれらの具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。
Figure 2017160429
一般式(5)で表される化合物は新規化合物であり、その合成方法と具体的な条件については、実施例の欄の記載を参照することができる。
可逆的付加開裂連鎖移動重合により直鎖状高分子を合成する際には、開始剤を使用することが好ましい。また、一般式(5)で表される化合物を連鎖移動剤に用いる場合には、開始剤にも、一般式(5)のR11と同じ基が存在することが好ましい。開始剤としては例えばアゾ系のものを用いることができ、その場合、アゾ基で連結している2つの基が一般式(5)のR11と同じ基であることが好ましい。
[直鎖状高分子の分離精製(単離)]
上記のように、可逆的付加開裂連鎖移動重合によれば分子量が均一な重合体を得ることができるが、さらに、その重合体について、量体数による分離精製を行い、量体数毎に単離することが好ましい。これにより、重合度(量体数)が均一な直鎖状高分子の集合体を得ることができる。こうした分離精製によれば、分子量が最適範囲から外れる直鎖状高分子、すなわち標的物質に対する親和性が低い直鎖状高分子を排除することができるため、標的物質が効率よく吸着する直鎖状高分子の集合体を得ることができる。量体数による分離精製は、例えば逆相クロマトグラフィーにより行うことができる。逆相クロマトグラフィーでは、疎水性領域が大きいもの程、固定相に強く保持されるため、本発明の直鎖状高分子の場合では、疎水性部位を有するモノマー単位や、疎水性を有する保護基で負電荷部位が保護されたモノマー単位の数が大きいもの程、固定相に強く保持されて溶出時間が遅くなる。そのため、一定の時間毎に溶出液を分離して集めることにより、溶出液中の直鎖状高分子の集合体が量体数により分離され、量体数が均一な直鎖状高分子の集合体を得ることができる。このとき、特に、重合体の負電荷部位が疎水性を有する保護基で保護されており、また、一般式(5)で表される化合物のR2(ヒドロキシル基を有するアルキル基)が重合体の末端に導入されていると、重合体が、その量体数をより反映した強さで固定相に吸着する。これにより、重合体を量体数毎に精度よく分離することが可能になる。また、この他の単離方法として、標的タンパク質を利用する方法が挙げられる。この方法では、直鎖状高分子の集合体を標的タンパク質に接触させ、標的タンパク質と相互作用した直鎖状高分子のみを回収し、その他の直鎖状高分子を排除する。これにより、その標的タンパク質に対する結合能が高い直鎖高分子のみを単離することができる。
[数平均分子量、結合性能]
高分子組成物を構成する直鎖状高分子の集合体は、そのポリスチレンを標準としてサイズ排除クロマトグラフィーで計測した数平均分子量が290〜900000であることが好ましく、290〜270000であることがより好ましく、290〜90000であることがさらに好ましい。また、高分子組成物を構成する直鎖状高分子の集合体は、数平均分子量が5000〜900000であることも好ましく、5000〜270000であることもより好ましく、10000〜90000であることもさらに好ましい。また、直鎖状高分子の集合体の多分散度(PDI)は1.5以下であることが好ましく、1.4以下であることがより好ましく、1.3以下であることがさらに好ましい。
高分子組成物のイムノグロブリンGに対する見かけの結合定数が、1X105(M-1)以上であることが好ましく、5X105(M-1)以上であることがより好ましく、1X106(M-1)以上であることがさらに好ましい。
(測定方法)
本発明の高分子組成物は、その直鎖状高分子の「数平均分子量」および「多分散度(PDI)」、「重合度」(一般式(1)におけるn1、n2およびn3を加算した合計)、「粒状体としての平均粒径」、「イムノグロブリンに対する結合定数」を適正範囲とすることが好ましい。これにより、タンパク質に対する吸着性能をより高めることができる。
以下において、本明細書中におけるこれらの測定方法を説明する。
直鎖状高分子の「数平均分子量」および「重量平均分子量」は、ポリスチレン等の分子量既知の高分子を分子量標準としてGPC装置(東ソー社、HLC-8320GPC EcoSEC)を用いたゲル濾過クロマトグラフィーによって求めることができる。例えば、本願中の実施例では、高分子側鎖のカルボン酸をtert-ブチル基で保護した状態で、10 mMのリチウムブロミドを溶解したジメチルアセトアミドを移動相(流速0.5 mL/min)として、ゲル濾過カラム(TSKgel guargdol umn SuperAW-L、TSKgel Super2500、TSKgel SuperAW4000)を固相として用い、RI検出器により分析した。
直鎖状高分子の「多分散度(PDI)」は、ゲル濾過クロマトグラフィーにより得られた重量平均分子量を数平均分子量で除した値として求めた。
重合反応後の反応液を1H-NMRで分析することでモノマーの消費率および高分子への転化率を定量した。直鎖状高分子の「重合度」は、重合反応の為に溶解したモノマーの総モル量を連鎖移動剤のモル量で除した理論重合度にモノマーの高分子への転化率を掛けることで求めた。
粒状物である高分子組成物の「平均粒径」は原子間力顕微鏡や動的光散乱により計測可能である。例えば、メタノール様な良溶媒に高分子を少量溶解し、マイカ基板のような原子レベルで平坦な基板に塗布する。塗布後の基板を原子間力顕微鏡により観察することで高分子一分子の平均粒径を高さ情報として計測可能である。あるいは、メタノールやジメチルホルムアミド等の良溶媒に高分子を溶解し、動的光散乱計測装置Zサイザーナノ(マルバーン社)でZ−averageとして計測できる。
「イムノグロブリンに対する結合定数」は、水晶振動子マイクロバランス法により計測した。QCMセル内に1 wt% SDS溶液200 μLを加え10分以上静置した後、綿棒で金電極の部分 (基板) を軽くこすり付着物を除去した。10回水洗後QCM金基板上にpiranha溶液 (過酸化水素水 : 濃硫酸 (1:3)) 2.5 μLを滴下して10分間静置を三度繰り返すことで有機物の除去を行った。
以下の操作は金基板表面が乾燥しないように注意して行った 。QCMセル内に200 μLのMilliQを加え3,3'-dithiodipropionic acid (Mw 210.26) エタノール溶液 (0.1 M) 2.0 μLを加え30分以上静置した。カルボキシル化されたQCM基板を10回水洗後、EDC (1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodimidehydrochloride, Mw = 192.7)およびNHS (N -hydoroxysuccinimide, Mw = 115.09)100 mg/mLの当量混合溶液100 μLをセル内に加え、30分以上静置した。スイクシンイミドエステルにより活性化されたQCM基板を10回水洗後QCMセル内にMilliQ 100 μLを加え発振子を発振させ、振動数が安定化するまで待った。安定化後、DMSOに溶解させた精製済みチオール化Linear polymer溶液 (100 merは6 mg/mL, 300 mer は18 mg/mL) を5 μL injectした。振動数安定後、MilliQによる洗浄後MlliQ100 μLを加え振動数安定化を待った。その後、PBS(35 mMリン酸緩衝液、150 mM NaCl、pH7.4)あるいは酢酸緩衝液(pH5.5)による洗浄後PBSあるいは酢酸緩衝液を100 μLを加え、振動数安定後20 mg/mL BSAを1 μLをinjectした。PBSあるいは酢酸緩衝液による洗浄後PBSあるいは酢酸緩衝液を100 μLを加え振動数が安定するのを待った。安定化後10 mg/mLのIgGを1 μL、1 μL、2 μL、4 μLの順にinjectし、振動数変化を測定した (IgGの各スラップでの終濃度:67 nM、133 nM、267 nM、533 nM)。
それぞれの濃度のIgG添加後の振動数変化をIgGの濃度に対してプロットし、Kaleidagraphを用いた非線形カーブフィッティングにより結合定数を算出した。
<本発明の特徴と応用>
本発明の高分子組成物は、その直鎖状高分子が負電荷部位を有するモノマー単位と疎水性部位を有するモノマー単位を有することにより、この高分子組成物に例えばタンパク質を接触させると、これらの間の静電的相互作用および疎水性相互作用を組み合わせた多点認識により、タンパク質が比較的高い結合定数で高分子組成物に吸着する。また、高分子が直鎖状であることにより、架橋や高分子鎖の絡まり合いによる立体障害が少なく、その高分子が有する負電荷部位および疎水性部位の多くをタンパク質と効果的に相互作用させることができる。このため、本発明の高分子組成物は、単位質量当たりのタンパク質の結合容量も大きく、タンパク質に対して高い吸着性能を発揮する。
このように、本発明の高分子組成物は、タンパク質に対して高い吸着性能を有し、特に抗体(免疫グロブリン)に対して優れた吸着性能を発揮する。このため、本発明の高分子組成物は、一次抗体に吸着させる二次抗体(疑似二次抗体)として好適に用いることができる。例えば、蛍光色素等の標識と共有結合で結合した高分子組成物(蛍光標識高分子組成物)を一次抗体に結合させて一次抗体を検出する、細胞内の抗原と特異的に結合する一次抗体に、蛍光標識高分子組成物を結合させて細胞を染色する、一次抗体の毒性部位に高分子組成物を結合させて無毒化する、ビオチンと共有結合で結合した高分子組成物をアビジン・ビオチン免疫染色に用いる等のように、二次抗体を用いる様々な分野で疑似二次抗体として用いることができる。また、本発明の高分子組成物は、免疫反応により製造される二次抗体に比べてコストを抑えて簡易な工程で製造することができ、核酸アプタマーやペプチドアプタマーに比べて安定性が高い。そのため、本発明の高分子組成物は、二次抗体を用いる各種分野のコスト削減に貢献することができる。
さらに、本発明の直鎖状高分子は、上記のようにタンパク質に対する結合能が高いため、タンパク質を吸着させて分離する担体に応用することができる。以下において、本発明の直鎖状高分子を用いた複合担体および分離剤(本発明の複合担体、本発明の分離剤)について説明する。
[複合担体]
本発明の複合担体は、担体と、担体に固定化された本発明の直鎖状高分子を有する。
本発明の直鎖状高分子に関する説明と好ましい範囲、具体例については、上記の<直鎖状高分子>の欄の記載を参照することができる。
本発明で用いる担体は特に限定されず、プロテインAのような生体高分子リガンドを固定するのに用いられる通常の担体を採用することができる。具体的には、アガロース、アルギネート(アルギン酸塩)、カラゲナン、キチン、セルロース、デキストリン、デキストラン、デンプンといった多糖質を原料とした担体、ポリビニルアルコール、ポリメタクレート、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリウレタンといった合成樹脂を原料とした担体、シリカなどのセラミックスを原料とした担体を例示することができる。担体の形状も特に限定はなく、粒状物または非粒状物、多孔性または非多孔性のいずれであってもよい。
直鎖状高分子の担体への固定化は、直鎖状高分子のいずれかの部位にチオール基を生成するとともに、樹脂等からなる担体にマレイミドや活性エステル、エポキシドを固定化し、その官能基と直鎖状高分子のチオール基を反応させ共有結合を形成することで行うことができる。直鎖状高分子におけるチオール基の生成については、例えば直鎖状高分子の末端がトリチオエステル構造を有する場合には、モノマー単位側の硫黄原子とチオカルボニル基の間の結合を切断することにより、その高分子の末端をチオール化することができる。
本発明の直鎖状高分子は、上記のように、立体障害が比較的小さい直鎖状をなしており、静電的相互作用および疎水性相互作用を組み合わせた多点認識によりタンパク質と相互作用するため、タンパク質に対して優れた結合能を発揮する。そのため、本発明の複合担体をタンパク質に接触させると、こうした直鎖状高分子の結合能により、タンパク質が複合担体に効率よく吸着することができる。
一方、従来から多用されている複合担体は、担体にプロテイAが固定化されて構成されている。ここで、プロテインAは微細物由来であるために、病原性や不純物混入の問題があり、また、大量生産が難しく、どうしてもコスト高になってしまう。また、プロテインAは、安定性が低いため、精製操作を繰り返すと次第に分解し、吸着性能が経時劣化するという問題もある。
これに対して、本発明の直鎖状高分子は、合成高分子として構成することができるため、微生物由来で生じる問題を回避することができ、また、大量生産が可能であり、タンパク質に比べて高い安定性を持たせることもできる。そのため、本発明の複合担体は、こうした直鎖状高分子を用いることにより、タンパク質が効率よく吸着するとともに、従来の複合担体に比べて、安全性および安定性が高くて安価である。そのため、本発明の複合担体は、プロテインA固定化担体に代わるタンパク質吸着性の担体として極めて高い有用性を有する。
[分離剤]
本発明の分離剤は、本発明の複合担体を含むことを特徴とする。
本発明の複合担体に関する説明と具体例については、上記の[複合担体]の欄の記載を参照することができる。
本発明の複合担体は、上記のようにタンパク質に対する吸着性能に優れている。また、その直鎖状高分子は、負電荷部位を有するモノマー単位と疎水性部位を有するモノマー単位を有することにより、それらの数や配列、量体数等を制御することにより、特定のタンパク質に対する吸着性能を特異的に高めることができる。これにより、タンパク質の混合物から、特定のタンパク質を選択的に吸着することができ、特定のタンパク質を高い純度で単離することが可能になる。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
<カルボキシ基を有するモノマー単位とtert-ブチル基を有するモノマー単位とイソプロピル基をを有するモノマー単位を有するランダム共重合体の合成と評価>
合成例1〜15では、下記の反応プロセスで重合体1a〜15a、1b〜15bを合成した。なお、下記反応式および各合成例の欄に記載した反応式において、高分子を構成するモノマー単位の数については、一義的に定まらない値であるため、ここでは省略する。
Figure 2017160429
[100量体設計での合成]
以下のようにして、100量体設計で共重合体を合成した。
(合成例1) 高分子1a、1bの合成
Figure 2017160429
まず、N-tert-ブチルアクリルアミド(TBAm)、tert-ブチルアクリル酸(tBA)およびN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAm)を20:30:50のモル比で混合したモノマー組成物1.5M(総モノマー濃度)と、RAFT剤15mMおよび重合開始剤V501(和光純薬社製)3mMを重合管内に入れてメタノールに溶解し、全量10mLの溶液を得た。この溶液に、凍結、真空脱気、溶解のサイクルを3回繰り返し行うことで脱気した。重合管をガスバーナーで真空封管した後、70℃のオイルバスで3時間加熱することにより重合反応を行った。得られた重合体溶液を透析膜(ミリポア社製:MWCO1000)に入れ、MilliQ水中で透析を行った後、、ジメチルスルホキシド(DMSO)とともに透析膜に入れ、さらに透析を行った。この透析では、DMSO中で2日間透析を行った後、3日目に、MilliQ水:DMSO=1:1の混合液中で2回透析を行い、さらにMilliQ水中で1回透析を行った。透析後、透析膜中の溶液をバイアルに移して凍結乾燥し、中間重合体1を得た。
Figure 2017160429
200mgの中間重合体1(重量平均分子量Mwを12000と仮定したときの16.7μmol相当)をトリフルオロ酢酸(TFA)500μL(4.46mmol:直鎖状高分子1つに対して26.7eq.相当)に溶解し、室温で3時間振盪してtert-ブチルエステル基を脱保護してカルボキシ基に変換した。反応液を50℃で真空乾燥してTFAを除去した後、残留物をメタノール5mLに溶解し、MilliQ水5mLが入った透析膜の中に注入してMilliQ水中で透析を3回行った。透析後、透析膜中の溶液を凍結乾燥して高分子1aを得た。得られた凍結乾燥物について1H−NMRによる分析を行ったところ、tert-ブチルエステル基が脱保護されてカルボキシ基に変換したことを確認することができた。
Figure 2017160429
10mgの高分子1aをメタノール1.8mLに溶解して417μMの溶液を調製した。この溶液に、高分子1aに対する500当量分の水酸化ナトリウム水溶液200μLを加え、一昼夜反応を行った。その後、反応液に透析を行って副生成物および過剰量のNaOHを除去し、目的の高分子1bを得た。ここで、透析後の溶液について、310nmの吸光度を測定したところ、トリチオカルボネート末端が切断されたことが確認され、405nmの吸光度を測定したところ、チオール基が生成されていることも確認することができた。
(合成例2〜6) 高分子2a〜6a、2b〜6bの合成
重合反応の仕込み比を表1に示すように変えたこと以外は、合成例1と同様にして中間重合体2〜6を合成し、TFAによりtert-ブチルエステル基を脱保護して高分子2a〜6aに変換した後、NaOH水溶液によるトリチオカルボネート末端のチオール化を行って高分子2b〜6bを得た。
(比較合成例1) 比較高分子1bの合成
重合反応の仕込み比を表1に示すように変えたこと以外は、合成例1と同様にして比較中間重合体1を合成し、TFAによりtert-ブチルエステル基を脱保護して比較高分子1aに変換した後、NaOH水溶液によるトリチオカルボネート末端のチオール化を行って比較高分子1bを得た。
Figure 2017160429
合成例1〜6で得た中間重合体1〜6、比較合成例1で得た比較中間重合体1のゲル浸透クロマトグラフィによる物性値を表2に示す。また、代表として中間重合体5と高分子5aの1H−NMRスペクトルを図1に示す。
Figure 2017160429
Figure 2017160429
表2から、各中間重合体は、いずれも多分散度PDIが1に近い値になっており、分子量が均一であることを確認することができた。
また、図1を見ると、高分子5aの1H−NMRスペクトルでは、中間重合体5で観測されるtert-ブチル基に由来するピークが消失している。このことから、中間重合体5とTFAの反応により、中間重合体5のtert-ブチルエステル基が脱保護されてカルボキシ基に変換したことを確認することができた。また、中間重合体1〜4、6と高分子1a〜4a、6aの1H−NMRスペクトルの比較においても、同様のことを確認することができた。さらに、高分子1a〜6aと水酸化ナトリウムの反応液を透析した後の溶液について、トリチオ構造の吸収波長310nmおよびチオール構造の吸収波長405nmの吸光度を測定したところ、透析後の溶液では、反応前の溶液に比べて310nmの吸光度が低くなり、405nmの吸光度が高くなっていた。このことから、水酸化ナトリウムとの反応により、高分子1a〜6aのトリチオカルボネート末端が切断されてチオール基に変換し、高分子1b〜6bが生成されたことを確認することができた。
[カルボキシ基を有するモノマー単位とtert-ブチル基を有するモノマー単位とイソプロピル基をを有するモノマー単位を含む高分子の300量体設計での合成]
以下のようにして、300量体設計で共重合体を合成した。
(合成例7) 高分子7a、7bの合成
重合反応の仕込み比を表3に示すように変えたこと以外は、合成例1と同様にして中間重合体7を合成した。
合成した中間重合体7の1000mgをトリフルオロ酢酸(TFA)2.5mLに溶解し、室温で3時間撹拌してtert-ブチルエステル基を脱保護してカルボキシ基に変換した。その反応液をMilliQ水100mLとともに透析膜に注入し、MilliQ水中で透析を3日間行った。この際、透析液であるMilliQ水を1日3回交換した。透析後、透析膜中の溶液を凍結乾燥して高分子7aを得た。
この高分子7aの100mgをジメチルスルホキシド(DMSO)4mgに溶解して溶液(25mg/mL)を調製した。この溶液に、50mg/mLのブチルアミン溶液2mLを加え、室温で0.5時間撹拌した。この反応液を1N塩酸でpH6〜7に中和した後、透析膜(ミリポア社製:MWCO3500)中に注入し、37℃のDMSOで3回透析を行い、さらに、DMSO:MilliQ水=50:50の混合液で3回、MilliQ水で3回、10mM塩酸で2回、MilliQ水で3回と順に透析を行った後、透析膜中の溶液をバイアルに移して凍結乾燥し、目的の高分子7bを得た。
(合成例8〜10) 高分子8a〜10a、8b〜10bの合成
重合反応の仕込み比を表3に示すように変えたこと以外は、合成例7と同様にして中間重合体8〜10を合成し、TFAによりtert-ブチルエステル基を脱保護して高分子8a〜10aに変換した後、ブチルアミンによるトリチオカルボネート末端のチオール化を行って、高分子8b〜10bを得た。
(合成例11) 高分子11a、11bの合成
重合反応の仕込み比を表3に示すように変えたこと以外は、合成例7と同様にして中間重合体7を合成した。
合成した中間重合体11の1000mgをトリフルオロ酢酸(TFA)2.5mLに溶解し、室温で3時間撹拌してtert-ブチルエステル基を脱保護してカルボキシ基に変換した。その反応液にアセトニトリル5mLを加えて強酸を薄めた後、50mLのMilliQ水が入った透析膜中に注入し、MilliQ水中で透析を3日間行った。この際、透析液であるMilliQ水を1日3回交換した。透析後、透析膜中の溶液を凍結乾燥して高分子11aを得た。
この高分子11aの150mgをジメチルスルホキシド(DMSO)160mgに溶解して溶液(2.5mg/mL)を調製した。この溶液に、5mg/mLのブチルアミンを含む溶液30mLを加え、室温で2時間撹拌した。この反応液を1Nの塩酸でpH6〜7に中和した後、透析膜(ミリポア社製:MWCO3500)中に注入し、37℃のジメチルスルホキシド中で2回透析を行った後、さらに、MilliQ水中で透析を3日間行った。透析膜中の溶液をバイアルに移して凍結乾燥し、目的の高分子11bを得た。
(合成例12〜15) 高分子12a〜15a、12b〜15bの合成
重合反応のための仕込み比を表3に示すように変えたこと以外は、合成例11と同様にして中間重合体12〜15を合成し、TFAによりtert-ブチルエステル基を脱保護して高分子12a〜15aに変換した後、ブチルアミンによるトリチオカルボネート末端のチオール化を行って、高分子12a〜15aを得た。
(比較合成例2、3) 比較高分子2b、3bの合成
重合反応のための仕込み比を表3に示すように変えたこと以外は、合成例11と同様にして比較中間重合体2、3を合成し、TFAによりtert-ブチルエステル基を脱保護して比較高分子2a〜6aに変換した後、、ブチルアミンによるトリチオカルボネート末端のチオール化を行って比較高分子2b、3bを得た。
(比較合成例4) 比較高分子4bの合成
重合反応のための仕込み比を表3に示すように変えたこと以外は、合成例7と同様にして比較中間重合体4を合成し、TFAによりtert-ブチルエステル基を脱保護して比較高分子4aに変換した後、ブチルアミンによるトリチオカルボネート末端のチオール化を行って、比較高分子4bを得た。
Figure 2017160429
合成例7〜15で得た中間重合体7〜15、比較合成例2〜4で得た比較中間重合体2〜4のゲル浸透クロマトグラフィによる物性値を表4に示す。また、代表として中間重合体13および高分子13aの1H−NMRスペクトルを図2に示し、高分子13aおよび13bの吸収スペクトルを図3に示す。
Figure 2017160429
Figure 2017160429
表4から、各中間重合体は、いずれも多分散度PDIが1に近い値になっており、分子量が均一であることを確認することができた。
また、図2を見ると、高分子13aの1H−NMRスペクトルでは、中間重合体13で観測されるtert-ブチル基に由来するピークが消失している。このことから、中間重合体13とTFAの反応により、中間重合体13のtert-ブチルエステル基が脱保護されてカルボキシ基に変換したことを確認することができた。また、中間重合体7〜12、14、15と高分子7a〜12a、14a、15aの1H−NMRスペクトルの比較においても、同様のことを確認することができた。
さらに、図3を見ると、高分子13bの吸収スペクトルにおいて、高分子13aで観測される、トリチオ構造に由来する310nmピークが消失している。このことから、ブチルアミンとの反応により、高分子35aのトリチオカルボネート末端がチオール化され、高分子13bに変換したことも確認することができた。また、高分子7a〜12a、14a、15aと高分子7b〜12b、14b、15bの吸収スペクトルの比較においても同様のことを確認することができた。
[イムノグロブリンG(IgG)との相互作用の評価]
合成した各高分子について、分子間相互作用定量QCM装置(イニシアム社製:Affinix Q8)を用いてIgGとの相互作用を評価した。
まず、分子間相互作用定量QCM装置のQCMセル内に、MilliQ水と3,3’−ジチオジプロピオン酸のエタノール溶液を入れてセル内の金基板をカルボキシル化した後、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)とN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)の等量混合溶液をのせて室温で30分間静置し、金基板をスクシンイミド・エステルにより活性化した。QCMセル内にMilliQ水を100μL注入して装置にセットし、測定温度を25oCに設定した。
次に、各高分子のDMSO溶液を、セル内の高分子濃度が5Mになるように、QCMセル内に注入して金基板表面に高分子を吸着させた。その後、上澄みをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で置換し、QCMセル内に牛血清アルブミン(BSA)を注入することで、金基板表面の高分子が吸着していない部分にBSAを吸着させた。ここで、BSAは、金基板表面にIgGが直接吸着するのを防止するブロッキング剤として機能するものである。続いて、上澄みをリン酸緩衝生理食塩水で置換してQCMセル内にIgGを各種量で注入し、IgGを注入する前と後の基板の振動数変化(−ΔF)を測定した。振動数変化(−ΔF)のIgG濃度依存性を図4〜7に示す。ここで、IgGの吸着量が大きい程、基板の振動数Fが減少するため、振動数変化(−ΔF)が大きいことは、IgGの吸着量が大きいことを意味する。また、ラングミュアフィッティングによる高分子4b〜6bの結合定数Kaを表5に示す。
Figure 2017160429
図4〜7から、各高分子が吸着した金基板は、いずれもIgGの注入により大きな周波数変化が見られ、各高分子へIgGが吸着したことを確認することができた。一方、疎水性基を有するモノマー(TBAm)を導入していない比較重合体1b〜3bが吸着した金基板では、IgGの注入による周波数変化が小さいか、ほとんど認められなかった。このことから、IgGと高分子の吸着には、負電荷部位だけでは足りず、負電荷部位と疎水性部位の両方を有することが重要であることが示された。また、表5に示すように、負電荷部位と疎水性部位を有する高分子4b〜6bは、IgGに対して高い結合能を有していた。
<ブロック共重合体とランダム共重合体の合成と評価>
以下の合成例16では、tert-ブチルアクリル酸(tBA)のホモポリマーまたはブロック鎖については3量体設計で合成し、N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAm)のホモポリマーまたはブロック鎖については21量体設計で合成し、N-tert-ブチルアクリルアミド(TBAm)のホモポリマーまたはブロック鎖については6量体設計で合成して、ホモポリマー、ジブロックポリマー、トリブロックポリマーを合成した。また、合成例17では、tBAに由来するモノマー単位数:NIPAmに由来するモノマー単位数:TBAmに由来するモノマー単位数が3:21:6となるような設計でランダム共重合体(R30)を合成するとともに、tBAに由来するモノマー単位数:TBAmに由来するモノマー単位数が3:6となるような設計でランダム共重合体(R9)を合成した。なお、下記反応式および各合成例の欄に記載した反応式において、高分子のモノマー単位数については、一義的に定まらない値であるため、その値を省略している。
Figure 2017160429
(合成例7) ブロック共重合体の合成
ホモポリマーの合成
表6に示す組成比でモノマー、RAFT剤および重合開始剤を重合管内に入れ、メタノールに溶解した。この溶液を凍結した後、重合管内を窒素で置換し、融解する操作を3度繰り返し、さらに、溶液を凍結し、重合管内を窒素で置換した後に重合管を封管した。溶液が入った重合管を70℃のオイルバスで加熱することにより重合反応を行い、集合体溶液を得た。得られた重合体溶液に、メタノールとヘプタンの混合溶液による分液操作を5回行うことで未反応モノマーを除去し、tert-ブチルアクリル酸のホモポリマー(A’)、N-イソプロピルアクリルアミドのホモポリマー(N)、またはN-tert-ブチルアクリルアミドのホモポリマー(T)をそれぞれ得た。
ジブロックポリマーの合成
重合反応を行う溶液として、表6に示す組成比でモノマー、RAFT剤および重合開始剤を溶解したメタノール溶液を用いること以外は、上記のホモポリマーの合成工程と同様にして重合反応を行い、得られた重合体溶液に、表6に示す精製操作を行って未反応モノマーを除去した。以上の工程により、6種類のジブロックポリマーA’N、A’T、NA’、NT、TA’、TNを合成した。なお、ここでは、上記のホモポリマーの合成工程で得た各ホモポリマーがRAFT剤として機能する。
トリブロックポリマーの合成
重合反応のための溶液として、表6に示す組成比でモノマー、RAFT剤および重合開始剤を溶解したメタノール溶液を用いること以外は、上記のホモポリマーの合成工程と同様にして重合反応を行い、得られた重合体溶液に、表6に示す精製操作を行って未反応モノマーを除去した。以上の工程により、6種類のトリブロックポリマーA’TN、A’NT、NA’T、NTA’、TA’N、TNA’を得た。なお、ここでは、上記のジブロックポリマーの合成工程で得た各ジブロックポリマーがRAFT剤として機能する。
tert-ブチルエステル基の脱保護
合成した各ホモポリマー、各ジブロックポリマーおよび各トリブロックポリマーの50〜500mgを、それぞれトリフルオロ酢酸(TFA)1〜2.5mLに溶解し、室温で3時間撹拌してtert-ブチルエステル基を脱保護してカルボキシ基に変換した。その反応液を乾燥して揮発成分を除去し、メタノール2〜3mLに溶解させ、50℃の湯浴にて減圧濃縮した。
以上の工程により、表6に示すホモポリマーA、N、T、ジブロックポリマーAN、AT、NA、NT、TA、TNおよびトリブロックポリマーANT、ATN、NAT、NTA、TAN、TNAを得た。
(合成例17) ランダム共重合体の合成
重合反応の溶液として、表7に示す組成比でモノマー、RAFT剤および重合開始剤を溶解したメタノール溶液を用いること以外は、上記のホモポリマーの合成工程と同様にして重合反応を行い、得られた重合体溶液に、表7に示す精製操作を行ってランダム共重合体R30、R9を得た。
Figure 2017160429
Figure 2017160429
表6中、「A’」はtert-ブチルアクリル酸の重合によるホモポリマーまたはブロック鎖を表し、「A」はA’のtert-ブチルエステル基を脱保護した後のホモポリマーまたはブロック鎖を表し、「N」はN-イソプロピルアクリルアミドの重合によるホモポリマーまたはブロック鎖を表し、「T」はN-tert-ブチルアクリルアミドのホモポリマーまたはブロック鎖を表す。
合成例16、17で得た各ブロック共重合体および各ランダム共重合体のゲル浸透クロマトグラフィーによる物性値を表8に示す。
Figure 2017160429
表8から、各ブロック共重合体および各ランダム共重合体はいずれも多分散度PDIが1に近い値であり、分子量が均一であることを確認することができた。
[溶血活性阻害能の評価]
牛保存血液(日本バイオテスト研究所社製)から遠心分離により回収、洗浄した赤血球250μLをPBSで4倍に希釈し、赤血球溶液を得た。また、メリチン(SERVA社製)をMilliQ水に溶かして90Mのメリチン水溶液を調製した。1.5mLのマイクロチューブ(エッペンドルフ社製)を複数本用意し、それらのマイクロチューブに、メリチン水溶液20μL、各高分子のDMSO溶液2μL、PBS30.4μL、milliQ水101.6μLをそれぞれ加え、ピペッティングにより攪拌して測定サンプルを調製した。これらの測定サンプルを、37℃の恒温槽内で30分間インキュベーションした後、赤血球溶液48μLを加えてピペッティングにより攪拌した後、再び37℃の恒温槽内で30分間インキュベーションした。インキュベーション後の各測定サンプルを、800Gの遠心分離を25℃で10分間行い、上澄みを速やかに取り去ってPBS180μLで10倍希釈し、その吸光度(410nm)を測定した。
また、コントロール用のサンプルとして、高分子のDMSO溶液に替えてDMSOを用いたサンプル(溶血活性阻害率100%のサンプル)、メリチン水溶液および高分子のDMSO溶液に替えてDMSOを用いたサンプル(溶血活性阻害率0%のサンプル)についても、同様にして赤血球溶液を加えてインキュベーションし、インキュベーション後の吸光度を測定した。
各測定サンプルについて、下記式に基づいて求めた溶血活性阻害率を図8、9に示す。
溶血活性阻害率(%)=(AbsSample−Abs0%)/(Abs100%−Abs0%)×100
AbsSampleは測定サンプル(高分子のDMSO溶液を加えたサンプル)の410nmにおける吸光度、Abs0%は溶血活性阻害率0%のサンプルの410nmにおける吸光度、Abs100%は溶血活性阻害率100%のサンプルの410nmにおける吸光度を表す。
図8、9から示されるように、負電荷部位と疎水性部位のうち、いずれも有しないN、負電荷部位のみを有するA、AN、NA、疎水性部位のみを有するT、TN、NTは、溶血活性阻害能が認められなかった。一方、負電荷部位と疎水性部位の両方を有する高分子AT、TA、ANT、ATN、NAT、NTA、TAN、TNA、、R30、R6では、有意な溶血阻害能を認めることができた。中でも、トリブロックポリマーANT、ATN、NAT、NTA、TAN、TNAおよびジブロックポリマーAT、TAは、ランダムポリマーR30、R6よりも溶血阻害能が高く、さらに、トリブロックポリマーANT、ATN、NAT、NTA、TAN、TNAは、ジブロックポリマーAT、TAよりも高い溶血阻害能が認められた。これらのことから、ランダムポリマーよりもブロックポリマーの方がタンパク質の機能に対する作用が大きく、さらにジブロックポリマーよりもトリブロックポリマーの方がタンパク質の機能に対する作用が大きいことがわかった。
[メリチンとの相互作用の評価]
QCMセル内の金基板をカルボキシル化した後、スクシンイミド・エステル化し、活性化した。このQCMセル内のPBSに、1mg/mLのストレプトアビジン50μLを加え、30分間静置した後、PBS500μLによる洗浄を5回行った。続いて、QCMセル内のPBSに、1mg/mLのビオチン化メリチン50μLを加え、30分間静置した後、PBS500μLによる洗浄を5回行った。さらに、QCMセル内にPBS500μLを注入して、QCM装置にセットし、25℃で、振動数が一定になるまで発振させた。振動数が一定になったところで、各高分子のDMSO溶液を種々の量でセル内に注入し、37℃に調整した後に測定を開始した。セル内に高分子溶液を注入する前後での振動数変化(−ΔF)の高分子濃度依存性を図10、11に示し、5種類のトリブロックポリマーの飽和吸着量と解離定数を表9に示す。
Figure 2017160429
図10から、ビオチン化メリチンが吸着した基板で、各トリブロックポリマーの注入により大きな周波数変化が見られ、ビオチン化メリチンへ各高分子が吸着したことを確認することができた。また、表9に示すように、ビオチン化メリチンと各トリブロックポリマーの解離定数Kdは極めて小さい値であり、ビオチン化メリチンへ各トリブロックポリマーが強く結合することを確認することができた。一方、図11を見ると、ホモポリマーNでは、その注入による基板の周波数変化がほとんど認められず、メリチンへの結合能を有していなかった。
[連鎖移動剤の合成]
(合成例I) 化合物1の合成
Figure 2017160429
チオグリセロール(5.4g、0.05mol)、ピリジニウム p−トルエンスルホナート(1.25g、0.005mol)、硫酸マグネシウムMgSO4(5g)およびアセトン(50mL)をナスフラスコに入れ、、室温で2日間撹拌した。この反応液を減圧濃縮し、ヘキサン:酢酸エチル=9:1の混合溶媒を展開溶媒に用いてカラムクロマトグラフィーにより精製し、中間体1を得た。
Figure 2017160429
水素化ナトリウムNaH(0.891g、37.2mmol、1.67等量)を窒素置換した二口ナスフラスコフラスコ内に入れて再び窒素置換し、このフラスコ内に、ジエチルエーテル(100mL)と中間体1(3.3g、22.3mmol、1等量)を順に滴下し、水浴中で10分間撹拌した。攪拌後、反応液に硫化炭素CS2(2.24mL、37.2mmol、1.67等量)を滴下して2時間撹拌した後、エバポレーターで減圧濃縮することにより硫化炭素を除去し、フラスコ内を窒素置換した。この反応液に、ジエチルエーテル(100mL)およびヨウ素I2(2.83g、11.1mmol、0.5等量)を加え、室温で1時間撹拌した。攪拌後、反応液を濾過し、得られた濾液をチオ硫酸ナトリウム水溶液(30g/L)で3回、水で3回洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウムで脱水した後、エバポレーターで減圧濃縮した。この濃縮物を、ヘキサン:酢酸エチル=9:1の混合溶媒を展開溶媒に用いてカラムクロマトグラフィーにより精製し、中間体2を得た。
Figure 2017160429
中間体2(3g、6.75mmol、1等量)、2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)(2.96g、13.5mmol、2等量)および酢酸エチル50mLを二口フラスコ内に入れ、窒素で30分間バブリングした後、窒素雰囲気下で18時間還流し、中間体3を得た。
Figure 2017160429
中間体2を、1Mの塩酸(10mL)とジオキサン(90mL)の混合溶液に溶解し、60℃のオイルバスで1時間撹拌し、炭酸水素ナトリウム水溶液を加えてpH6に中和した。この反応液をエバポレーターで減圧濃縮した後、酢酸エチル:ヘキサン=8:2の混合溶媒を展開溶媒に用いてカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物1を得た。得られた精製物の1H−NMRスペクトルを図12に示す。図12の1H−NMRスペクトルにより、微量のAIBNの残存が確認されている。AIBNはさらなる精製により取り除くことも可能であるが、化合物1を用いた高分子の重合の際、開始剤としてAIBNを加えることになるのでさらなる精製は行わず、重合の際に不純物の混入を加味して化合物1およびAIBNの秤量を行うこととした。
(合成例II) 化合物2の合成
Figure 2017160429
クロロホルム30mLにα−チオグリセロール(6.33mL、73mmol、1等量)、トリエチルアミン(12.173mL、88mmol、1.2等量)を添加して1時間攪拌した後、硫化炭素CS2(13.21mL、219mmol、3等量)を加え、30分間撹拌した。さらに、反応液に(1−ブロモエチル)ベンゼン(10.8mL、79mmol、1.08等量)を加え、21時間攪拌した。この反応液に、1N塩酸90mLを用いて分液操作を1回行った後、水を用いて8回分液操作を行い、得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、エバポレーターにより減圧留去した。得られた残留物を、展開溶媒に酢酸エチル:ヘキサン=4:6の混合溶媒を用いてシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、エバポレーターで減圧留去した後、真空乾燥することにより、化合物2を得た。真空乾燥後の精製物の1H−NMRスペクトルを図13に示す。
(実施例1) 化合物1を連鎖移動剤に用いた重合体の合成
Figure 2017160429
合成例Iにて精製した化合物1(125.5mg(微量のAIBNが混入しているサンプルであるため、化合物1の最終濃度としては0.5Mと成るように秤量した))、tBA(218.4mg、1.5M、化合物2の3等量相当)および開始剤である2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)(13.14mg、(化合物1の中に不純物としてAIBNが含有されているためその重量を加味して最終的に化合物1の0.16等量相当となるように秤量))を重合管内に入れ、メタノールに溶解して全量を1mLとした。この混合物に、凍結、脱気、融解のサイクルを3回繰り返すことで重合管内を真空状態にし、重合管を封管した。重合管を、70℃のオイルバスに入れ6時間重合反応を行い、重合体を得た。得られた重合体のエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)の結果を図14に示す。 また、重合体について、フラッシュカラム自動精製装置(バイオタージ・ジャパン社製:Isolera One ISO-1SW)を用いて量体数による分離を行った。カラムの溶出条件を以下に示す。各フラクションに溶出された重合体の量体数を調べた結果を図15に示す。図15から、カラムクロマトグラフィーにより、重合体を量体数毎に分離しうることがわかった。
カラムの溶出条件
インジェクト量:500μL
溶媒:水とメタノールの混合溶媒
検出波長:310nm
(実施例2) 化合物2を連鎖移動剤に用いた重合体の合成
Figure 2017160429
化合物2(1440mg)、tBA(2184μL、1.5M、化合物2の3等量相当)および開始剤である2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)(164.2mg、化合物2の0.2等量相当)を重合管内に入れ、メタノールに溶解して全量を10mLとした。この混合物に、凍結、脱気、融解のサイクルを3回繰り返すことで重合管内を真空状態にし、重合管を封管した。重合管を、70℃のオイルバスに入れ6時間重合反応を行い、重合体を得た。得られた重合体のエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)の結果を図16に示す。図16から、目的の重合体が3〜7量体で得られていることを確認することができた。また、重合体について、実施例1と同じ条件で、フラッシュカラム自動精製装置による分離を行った。各フラクションに溶出された重合体の量体数を調べた結果を図17に示す。図17から、この逆相カラムクロマトグラフィーにより、重合体を量体数毎に分離しうることがわかった。

Claims (55)

  1. 負電荷部位を有するモノマー単位と、疎水性部位を有するモノマー単位を有することを特徴とする直鎖状分子。
  2. 前記負電荷部位がカルボキシ基(−COOH)またはスルホ基(−SO3H)である請求項1に記載の直鎖状高分子。
  3. 前記疎水性部位がアルキル基であり、該アルキル基の炭素数が4以上、好ましくは4〜6、より好ましくは4〜5である請求項1または2に記載の直鎖状高分子。
  4. 前記アルキル基が分枝構造を有する請求項3に記載の直鎖状高分子。
  5. 前記アルキル基がtert−ブチル基である請求項4に記載の直鎖状高分子。
  6. さらに、負電荷部位および疎水性部位を有しない第3のモノマー単位を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の直鎖状高分子。
  7. 下記一般式(1)で表される高分子または該高分子の誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の直鎖状高分子。
    Figure 2017160429
    [一般式(1)において、Ma、MbおよびMcはそれぞれ独立に炭化水素基を表す。LbおよびLcは単結合または2価の連結基を表す。Xaは負電荷部位を表し、Xbは疎水性部位を表し、Xcは負電荷部位および疎水性部位以外の基を表す。n4が2以上であるとき、その2以上のモノマー単位は互いに同じであっても異なっていてもよい。
    n1〜n3は、0または1を表し、一般式(1)中に存在するn1の少なくとも1つは1であり、一般式(1)中に存在するn2の少なくとも1つは1である。n4は1以上の整数である。
    1はアルキル基、アリール基、アリール基で置換されたアルキル基、またはアルキル基で置換されたアリール基を表す。R2はチオール基、保護基で保護されたチオール基、または下記一般式(2)もしくは(3)で表される基を表す。
    Figure 2017160429
    (一般式(2)および(3)において、R21およびR22は、炭化水素基または負電荷部位で置換された炭化水素基を表す。*はMa、MbおよびMcのいずれかへの結合部位を表す。)]
  8. 前記一般式(1)のMa、MbおよびMcは、炭素数が2または3の飽和炭化水素基である請求項7に記載の直鎖状高分子。
  9. 前記一般式(1)のXaがカルボキシ基である請求項7または8に記載の直鎖状高分子。
  10. 前記一般式(1)のXbがアルキル基であり、該アルキル基の炭素数が4以上、好ましくは4〜6、より好ましくは4〜5である請求項7〜9のいずれか1項に記載の直鎖状高分子。
  11. 前記一般式(1)のXcが、水素原子または炭素数が3以下のアルキル基である請求項7〜10のいずれか1項に記載の直鎖状高分子。
  12. 前記一般式(1)のLbおよびLcがアミド基(−CONH−)である請求項7〜11のいずれか1項に記載の直鎖状高分子。
  13. 前記一般式(1)のR1がアリール基で置換されたアルキル基である請求項7〜12のいずれか1項に記載の直鎖状高分子。
  14. 前記一般式(1)のR1がフェニル基で置換された炭素数1〜3のアルキル基である請求項13に記載の直鎖状高分子。
  15. 前記一般式(1)のR2がチオール基または保護基で保護されたチオール基である請求項7〜14のいずれか1項に記載の直鎖状高分子。
  16. 前記一般式(1)のR2が前記一般式(3)で表される基である請求項7〜15のいずれか1項に記載の直鎖状高分子。
  17. 前記一般式(3)のR22が有する負電荷部位はカルボキシ基である請求項16に記載の直鎖状高分子。
  18. 前記一般式(3)のR22が有する炭化水素基はアルキレン基である請求項16または17に記載の直鎖状高分子。
  19. 前記一般式(1)におけるn1、n2およびn3を加算した合計が16以上の整数、好ましくは20〜1500の整数、より好ましくは40〜500の整数、特に好ましくは45〜160の整数である請求項7〜18のいずれか1項に記載の直鎖状高分子。
  20. 少なくとも下記式で表される2種類のモノマー単位を有することを特徴とする請求項1〜19のいずれか1項に記載の直鎖状高分子。
    Figure 2017160429
    [式中、*は隣接するモノマー単位との結合部位を表す。]
  21. さらに、下記式で表される第3のモノマー単位を有することを特徴とする請求項20に記載の直鎖状高分子。
    Figure 2017160429
    [式中、*は隣接するモノマー単位との結合部位を表す。]
  22. 一方の末端に下記構造群(i)のいずれかで表される基を有し、他方の末端に下記構造群(ii)のいずれかで表される基を有する請求項1〜21のいずれか1項に記載の直鎖状高分子。
    Figure 2017160429
    [構造群(i)〜(ii)において、*はモノマー単位への結合部位を表す。]
  23. ランダム共重合体であることを特徴とする請求項1〜22のいずれか1項に記載の直鎖状高分子。
  24. ブロック共重合体であることを特徴とする請求項1〜22のいずれか1項に記載の直鎖状高分子。
  25. 請求項1〜24のいずれか1項に記載の直鎖状高分子の集合体である高分子組成物。
  26. 前記直鎖状高分子のポリスチレンを標準としてサイズ排除クロマトグラフィーで計測した数平均分子量が290〜900000、好ましくは290〜270000、より好ましくは290〜90000である請求項25に記載の高分子組成物。
  27. 前記直鎖状高分子のポリスチレンを標準としてサイズ排除クロマトグラフィーで計測した数平均分子量が5000〜900000、好ましくは5000〜270000、より好ましくは10000〜90000である請求項25に記載の高分子組成物。
  28. 前記直鎖状高分子の多分散度(PDI)が1.5以下、より好ましくは1.4以下、さらに好ましくは1.3以下である請求項25〜27のいずれか1項に記載の高分子組成物。
  29. 重合度が均一な直鎖状高分子の集合体である請求項25に記載の高分子組成物。
  30. 前記直鎖状高分子の集合体は、負電荷部位または保護基で保護された負電荷部位を有するモノマーと、疎水性部位を有するモノマーを含有するモノマー組成物のリビングラジカル重合による重合体を含む請求項25〜29のいずれか1項に記載の高分子組成物。
  31. 前記リビングラジカル重合が可逆的付加開裂連鎖移動重合である請求項30に記載の高分子組成物。
  32. 前記モノマー組成物が前記保護基で保護された負電荷部位を有するモノマーを含有し、
    前記保護基で保護された負電荷部位は、tert-ブチル基のようなアルキル基を保護基とするカルボキシ基のアルキルエステルであり、重合後の脱保護反応により変換したカルボキシ基が前記直鎖状高分子の負電荷部位を構成する請求項30または31に記載の高分子組成物。
  33. 前記モノマー組成物は、さらに、負電荷部位および疎水性部位を有しない第3のモノマーを含有する30〜32のいずれか1項に記載の高分子組成物。
  34. 負電荷部位または保護基で保護された負電荷部位を有するモノマーおよび疎水性部位を有するモノマーが、アクリル系モノマーである請求項30〜33のいずれか1項に記載の高分子組成物。
  35. 前記第3のモノマーがアクリル系モノマーである請求項33または34に記載の高分子組成物。
  36. 前記負電荷部位を有するモノマーが(メタ)アクリル酸である請求項30〜35のいずれか1項に記載の高分子組成物。
  37. 前記保護基で保護された負電荷部位を有するモノマーが(メタ)アクリル酸アルキルエステルである請求項30〜36のいずれか1項に記載の高分子組成物。
  38. 前記疎水性部位を有するモノマーがN−アルキル(メタ)アクリルアミドであり、前記N−アルキル(メタ)アクリルアミドのN原子に結合するアルキル基の炭素数が4以上、好ましくは4〜6、より好ましくは4〜5である請求項30〜37のいずれか1項に記載の高分子組成物。
  39. 前記第3のモノマーがN−アルキル(メタ)アクリルアミドであり、前記N−アルキル(メタ)アクリルアミドのN原子に結合するアルキル基が、炭素数3以下のアルキル基である請求項33〜38のいずれか1項に記載の高分子組成物。
  40. 可逆的付加開裂連鎖移動重合の連鎖移動剤が、ジチオエステル系化合物またはトリチオカルボナート系化合物である請求項31〜39のいずれか1項に記載の高分子組成物。
  41. 前記連鎖移動剤が、トリチオカルボナート系化合物である請求項40に記載の高分子組成物。
  42. 前記連鎖移動剤が下記一般式(5)で表される請求項41に記載の高分子組成物。
    Figure 2017160429
    [一般式(5)において、R11は3級または4級炭素原子で結合する置換基を表し、R12はヒドロキシル基を有するアルキル基を表す。]
  43. 前記可逆的付加開裂連鎖移動重合において開始剤を使用し、前記一般式(5)のR11と同じ基が前記開始剤にも存在する請求項42に記載の高分子組成物。
  44. 前記可逆的付加開裂連鎖移動重合後に、量体数による分離精製を逆相クロマトグラフィーにより行う請求項40〜43のいずれか1項に記載の高分子組成物。
  45. 前記モノマー組成物における前記負電荷部位または保護基で保護された負電荷部位を有するモノマーの含有率が、モノマー成分の全量に対して5〜40mol%、好ましくは10〜30mol%である請求項30〜44のいずれか1項に記載の高分子組成物。
  46. 前記モノマー組成物における前記疎水性部位を有するモノマーの含有率が、モノマー成分の全量に対して5〜50mol%、好ましくは10〜40mol%、さらに好ましくは20〜40mol%である請求項30〜45のいずれか1項に記載の高分子組成物。
  47. 粒状物である請求項25〜46のいずれか1項に記載の高分子組成物。
  48. 前記粒状物の平均粒径が30nm未満、好ましくは25nm未満、より好ましくは20nm未満、さらに好ましくは15nm未満である請求項47に記載の高分子組成物。
  49. イムノグロブリンGに対する見かけの結合定数が、1X105(M-1)以上、好ましくは5X105(M-1)以上、より好ましくは1X106(M-1)以上である請求項25〜48のいずれか1項に記載の高分子組成物。
  50. 蛍光分子等の標識と共有結合で結合した請求項25〜49のいずれか1項に記載の高分子組成物。
  51. ビオチンと共有結合で結合した請求項25〜50のいずれか1項に記載の高分子組成物。
  52. 請求項1〜24のいずれか1項に記載の直鎖状高分子と担体を有し、前記直鎖状高分子が前記担体に固定化されていることを特徴とする複合担体。
  53. 請求項52に記載の複合担体を含むことを特徴とする分離剤。
  54. 下記一般式(5)で表される化合物。
    Figure 2017160429
    [一般式(5)において、R11は3級または4級炭素原子で結合する置換基を表し、R12はヒドロキシル基を有するアルキル基を表す。]
  55. 下記一般式(5)で表される化合物からなる連鎖移動剤。
    Figure 2017160429
    [一般式(5)において、R11は3級または4級炭素原子で結合する置換基を表し、R12はヒドロキシル基を有するアルキル基を表す。]
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