以下、本発明の複層塗膜形成方法についてさらに詳細に説明する。
被塗物:
本発明方法を適用し得る被塗物としては、特に限定されるものではなく、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;自動車部品;携帯電話、オーディオ機器等の家庭電気製品の外板部等を挙げることができ、中でも、自動車車体の外板部及び自動車部品が好ましい。
これらの被塗物を構成する基材としては、特に制限されるものではなく、例えば、鉄板、アルミニウム板、真鍮板、銅板、ステンレス鋼板、ブリキ板、亜鉛メッキ鋼板、合金化亜鉛(Zn−Al、Zn−Ni、Zn−Fe等)メッキ鋼板等の金属板;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂や各種のFRP等のプラスチック材料;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;木材;繊維材料(紙、布等)等を挙げることができ、中でも、金属板又はプラスチック材料が好適である。
また、上記被塗物は、上記の如き基材上に、下塗り塗膜又は下塗り塗膜及び中塗り塗膜を形成したものであってもよい。基材が金属製である場合は、下塗り塗膜の形成を行う前に、予めりん酸塩処理、クロム酸塩処理、金属酸化物処理等による化成処理を行っておくことが好ましい。
下塗り塗膜は、防食性、防錆性、基材との密着性、基材表面の凹凸の隠蔽性(「下地隠蔽性」と呼称されることもある)等を付与することを目的として形成されるものであり、下塗り塗膜を形成するために用いられる下塗り塗料としては、それ自体既知のものを用いることができ、例えば、金属等の導電性基材に対しては、カチオン電着塗料やアニオン電着塗料を用いることが好ましく、また、ポリプロピレンのような低極性の基材に対しては、塩素化ポリオレフィン樹脂系塗料などを用いることが好ましい。
下塗り塗料は、塗装後、加熱、送風等の手段によって、硬化させてもよく、また、硬化しない程度に乾燥させてもよい。下塗り塗料としてカチオン電着塗料やアニオン電着塗料を用いる場合は、下塗り塗膜と、該下塗り塗膜上に続いて形成される塗膜間における混層を防ぎ、外観に優れた複層塗膜を形成するために、下塗り塗料塗装後に加熱して下塗り塗膜を硬化させることが好ましい。
また、上記中塗り塗膜は、下塗り塗膜との密着性、下塗り塗膜色の隠蔽性(「色隠蔽性」と呼称されることもある)、下塗り塗膜表面の凹凸の隠蔽性、耐チッピング性等を付与することを目的として上記下塗り塗膜上に形成されるものである。
中塗り塗膜は、中塗り塗料を塗布することによって形成せしめることができ、その膜厚は硬化膜厚で通常10〜50μm、特に15〜30μmの範囲内にあることが好ましい。
中塗り塗料としては、それ自体既知のものを用いることができ、例えば、ビヒクル成分として、水酸基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有アクリル樹脂等の基体樹脂と、メラミン樹脂、ブロック化ポリイソシアネート等の架橋剤を含んでなる中塗り塗料を挙げることができる。
中塗り塗料は、塗装後に加熱、送風等の手段によって、硬化ないしは指触乾燥させることが、中塗り塗膜上に続いて塗装される塗料との混層が抑制され、外観の優れた複層塗膜を形成することができるので好ましい。
本発明方法では、上記の如き被塗物上に、光輝性顔料含有水性ベースコート塗料を塗装する。
光輝性顔料含有水性ベースコート塗料:
光輝性顔料含有水性ベースコート塗料は、水分散性アクリル重合体粒子(A)、セルロース誘導体(B)、硬化剤(C)及び蒸着金属膜を粉砕して金属片とした光輝性顔料(D)を含有する。
水分散性アクリル重合体粒子(A):
水分散性アクリル重合体粒子(A)は、本塗料における基体樹脂の少なくとも一部を構成するものであり、通常、重合性不飽和単量体を界面活性剤のような分散安定剤の存在下で、ラジカル重合開始剤を用いて乳化重合せしめることによって得られるものであり、特に重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和単量体(M―1)を含む重合性不飽和単量体混合物を乳化重合することにより得られる水分散性アクリル重合体粒子であって、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和単量体(M―1)を、1種もしくはそれ以上のその他の重合性不飽和単量体(M−2)とともに乳化重合することにより得られる水分散性アクリル重合体粒子が好適に使用できる。
上記重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和単量体(M―1)としては、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有するアミド基含有重合性不飽和単量体(M−1−1)、これ以外の、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和単量体(M−1−2)を挙げることができ、特に、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有するアミド基含有重合性不飽和単量体(M−1−1)が好適に使用できる。
重合性不飽和基を1分子中に2個以上有するアミド基含有重合性不飽和単量体(M−1−1)としては、具体的には、例えば、N,N´−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N´−エチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N´−テトラメチレンビス(メタ)アクリルアミド等のC1〜6アルキレンビス(メタ)アクリルアミド;N,N´−1,3−フェニレンビスアクリルアミド;N,N´−(オキシメチレン)ビスアクリルアミド等を挙げることができる。単量体(M−1−1)以外の、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和単量体(M−1−2)としては、例えば、アリル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
上記その他の重合性不飽和単量体(M−2)としては、アミド基含有重合性不飽和単量体(M―1)と共重合するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体(M−2−1)、水酸基含有重合性不飽和単量体(M−2−2)、これら以外の、重合性不飽和単量体(M−2−3)等を挙げることができる。
カルボキシル基含有重合性不飽和単量体(M−2−1)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸及びこれらの不飽和ジカルボン酸のハーフモノアルキルエステル化物等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。塗料の粘度発現性と塗膜性能の観点から、中でも、(メタ)アクリル酸が好適である。
また、水酸基含有重合性不飽和単量体(M−2−2)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−もしくは3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のC2〜10ヒドロキシアルキルエステル等を挙げることができる。水酸基含有重合性不飽和単量体(M−2−2)中の水酸基は、硬化剤(C)と反応する官能基として作用することができる。これらの水酸基含有重合性不飽和単量体(M−2−2)はそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
さらに、上記の重合性不飽和単量体(M−2−1)、(M−2−2)以外の、その他の重合性不飽和単量体(M−2−3)を使用することもでき、そのような重合性不飽和単量体(M−2−4)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のC1〜20アルキルエステル;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族系ビニル化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどのグリシジル基含有ビニル化合物;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの含窒素アルキル(炭素数1〜20)(メタ)アクリレート;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニルなどのビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの重合性不飽和結合含有ニトリル系化合物;ブタジエン、イソプレンなどのジエン系化合物等を挙げることができる。
その他の重合性不飽和単量体(M−2)としては、上記の重合性不飽和単量体(M−2−1)〜(M−2−3)をそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
水分散性アクリル重合体粒子(A)としては、特に、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和単量体(M―1)、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体(M−2−1)及び水酸基含有重合性不飽和単量体(M−2−2)を含む重合性不飽和単量体混合物を乳化重合することにより得られるものが好適である。なかでも、塗膜の耐水性などの観点から、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体(M−2−1)としてメタクリル酸を用いたものが特に好ましい。その理由としては、メタクリル酸は、アクリル酸に比べ水中での解離度が低く、親水性官能基であるカルボキシル基がアクリル酸の場合に比べより粒子内部に均一に分布するため、親水性官能基の局在化が起こりにくいことが考えられる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味し、「(メタ)アクリルアミド」は、「アクリルアミド又はメタクリルアミド」を意味する。
上記重合性不飽和単量体混合物における重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和単量体(M―1)の配合割合は、塗膜の仕上り性及び水分散性アクリル重合体粒子(A)の貯蔵安定性の観点から、重合性不飽和単量体の総量を基準にして、一般に0.1〜5質量%、好ましくは0.5〜4質量%、さらに好ましくは1〜3.5質量%の範囲内とすることができる。
また、上記重合性不飽和単量体混合物におけるカルボキシル基含有重合性不飽和単量体(M−2−1)の配合割合は、塗膜の外観や耐水性などの観点から、一般に0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜15質量%、さらに好ましくは1〜10質量%の範囲内とすることができ、さらに、水酸基含有重合性不飽和単量体(M−2−2)の配合割合は、塗膜の硬化性や耐水性などの観点から、一般に0.1〜20質量%、好ましくは1〜15質量%、さらに好ましくは2〜10質量%の範囲内とすることができる。中でも、上記配合割合において、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体(M−2−1)としては、メタクリル酸を用いることが特に好ましい。
水分散性アクリル重合体粒子(A)は、乳化剤の存在下且つラジカル重合開始剤の共存下で、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和単量体(M―1)をその他の重合性不飽和単量体(M−2)とともに乳化重合することにより得ることができる。
上記乳化剤としては、例えば、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム及びアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアニオン性乳化剤;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性乳化剤;ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のノニオン性乳化剤が挙げられ、さらに、重合性不飽和基を有する反応性乳化剤を挙げることができる。
上記乳化剤としては、反応性乳化剤を用いることが好ましく、得られる塗膜の耐水性の観点から、中でも、アニオン性の反応性乳化剤を用いることが特に好ましい。
上記アニオン性の反応性乳化剤としては、例えば、(メタ)アリル基、(メタ)アクリル基、プロペニル基、ブテニル基などの重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のナトリウム塩やアンモニウム塩等を挙げることができる。得られる塗膜が耐水性に優れていることから、中でも、重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩が好ましい。該スルホン酸化合物のアンモニウム塩の市販品としては、例えば、ラテムルS−180A(花王社製、商品名)等を挙げることができる。
また、上記重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩の中でも、重合性不飽和基とポリオキシアルキレン基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩がさらに好ましい。上記重合性不飽和基とポリオキシアルキレン基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩の市販品としては、例えば、アクアロンKH−10(第一工業製薬社製、商品名)、SR−1025A(旭電化工業社製、商品名)等を挙げることができる。
上記乳化剤の濃度は、使用するするラジカル重合性不飽和単量体の総量を基準にして、通常0.1〜10質量%、特に1〜5質量%の範囲内であることが好ましい。
水分散性アクリル重合体粒子(A)は、多段階反応により合成される多層構造を有するものであることが好ましい。具体的には、例えば、2層構造であるコア/シェル構造、3層構造である第1コア/第2コア/シェル構造を有するものを挙げることができる。塗膜性能や水分散性アクリル重合体粒子(A)の生産性などの観点から、2層構造であるコア/シェル構造を有するものが好適である。中でも、塗膜性能や塗膜の仕上り性などの観点から、コア部分が粒子内架橋され且つシェル部分が実質的に未架橋であるものが特に好適である。
コア部分が粒子内架橋したコア/シェル構造を有する水分散性アクリル重合体粒子(A)は、例えば、最初に重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和単量体(M−1)を含有する重合性不飽和単量体混合物(I)を乳化重合してコア部分を形成せしめ、次いで、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体(M−2−1)を含有する重合性不飽和単量体混合物(II)を加え、さらに乳化重合してシェル部分を形成せしめることにより得ることができる。
上記のコア部分が粒子内架橋したコア/シェル構造を有する水分散性アクリル重合体粒子(A)におけるカルボキシル基含有重合性不飽和単量体(M−2−1)の使用割合は、最初のコア部の合成においては、コア部を形成する重合性不飽和単量体混合物(I)の質量を基準にして、通常0〜10質量%、特に0〜5質量%の範囲内、さらに特に0〜2質量%、そしてその後のシェル部の合成においては、シェル部を形成する重合性不飽和単量体混合物の質量を基準にして、通常5〜30質量%、特に7〜25質量%、さらに特に10〜20質量%の範囲内とするのが好適である。
また、上記重合性不飽和単量体混合物(I)が、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和単量体(M−1)を含有する場合、上記重合性不飽和単量体混合物(II)は、上記カルボキシル基含有重合性不飽和単量体(M−2−1)に加え、さらに、芳香族系ビニル化合物を、シェル部を形成する重合性不飽和単量体混合物(II)の質量を基準にして、通常2〜30質量%、特に5〜20質量%の範囲内で含有することが好ましい。
上記芳香族系ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等を挙げることができ、なかでも、スチレンを用いることが特に好ましい。
また、特に、前記コア部分が粒子内架橋したコア/シェル構造を有する水分散性アクリル重合体粒子(A)が、最初に、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和単量体(M−1)を、コア部を形成する重合性不飽和単量体混合物(I)の質量を基準にして、通常0.1〜5質量%、好ましくは0.5〜4質量%の範囲内、さらに好ましくは0.75〜3.5質量%の範囲内で含有する重合性不飽和単量体混合物(I)を乳化重合し、次いで、シェル部を形成する重合性不飽和単量体混合物(II)の質量を基準にして、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体(M−2−1)を通常3〜30質量%、好ましくは6〜25質量%の範囲内、さらに好ましくは11〜20質量%の範囲内、及びスチレンを通常2〜30質量%、好ましくは5〜20質量%の範囲内、さらに好ましくは11〜20質量%の範囲内で含有するシェル部を形成する重合性不飽和単量体混合物(II)を加えて、さらに乳化重合することによって得られる水分散性アクリル重合体粒子であることが好ましい。
水分散性アクリル重合体粒子(A)が2層構造を有する場合、コア部/シェル部の質量比は、厳密に制限されるものではないが、塗膜の外観や耐水性などの観点から、用いられる全ラジカル重合性不飽和単量体の質量を基準にして、一般に95/5〜50/50、特に85/15〜60/40、さらに特に80/20〜65/35の範囲内にあるのが好適である。
なお、水分散性アクリル重合体粒子を粒子内架橋する方法として、重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和単量体(M−1)に加え、例えば、カルボキシル基を有する重合性不飽和単量体(M−2−1)とグリシジル基を有する重合性不飽和単量体とをそれぞれ少量併用する方法;水酸基含有重合性不飽和単量体(M−2−2)とイソシアネート基を有する重合性不飽和単量体をそれぞれ少量併用する方法等を用いることもできる。
また、重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化アンモニウムなどに代表される過酸化物;これら過酸化物と、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸などの還元剤との組み合わせよりなるレドックス系開始剤;4,4’−アゾビス(4−シアノブタン酸)などのアゾ化合物等を挙げることができる。これらの重合開始剤は、使用する重合性不飽和単量体の総量を基準にして、通常0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%の範囲内で用いることができる。
乳化重合の際の反応温度は、使用する重合開始剤により異なるが、通常約60〜約90℃の範囲内とすることができ、また、反応時間は通常5〜10時間程度とすることができる。
水分散性アクリル重合体粒子(A)は、得られる塗膜の耐水性などの観点から、一般に1〜70mgKOH/g、特に2〜60mgKOH/g、さらに特に5〜50mgKOH/gの範囲内の水酸基価を有することが好ましい。
また、水分散性アクリル重合体粒子(A)は、貯蔵安定性や得られる塗膜の耐水性などの観点から、一般に5〜90mgKOH/g、とくに10〜70mgKOH/g、さらに特に15〜50mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが好ましい。
さらに、水分散性アクリル重合体粒子(A)は、通常10〜1000nm、好ましくは20〜500nmの範囲内、さらに好ましくは40〜350nmの範囲内の平均粒子径を有することができる。なお、本発明における水分散性アクリル樹脂(A)の平均粒子径は、測定温度20℃で、コールターカウンター法によって測定した値である。この測定は、例えば、「COULTER N4型」(ベックマン・コールター社製、商品名)を用いて行うことができる。
水分散性アクリル重合体粒子(A)は塩基性化合物で中和することが好ましい。該塩基性化合物は、水溶性であることが好ましく、例えば、アンモニア;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モルホリン、メチルエタノールアミン、2−(ジメチルアミノ)エタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノールなどのアミン類等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて用いることができ、中でも、2−(ジメチルアミノ)エタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミンを用いることが好ましい。
水分散性アクリル重合体粒子(A)は、水性ベースコート塗料中の樹脂固形分100質量部を基準として、固形分で、通常5〜70質量部、好ましくは5〜60質量部、さらに好ましくは10〜50質量部の範囲内で使用することができる。
セルロース誘導体(B):
セルロース誘導体(B)としては、水性塗料で使用する観点から、カルボキシル化セルロースエステルであることが好適であり、例えばカルボキシメチルセルロースアセテートブチレート、カルボキシメチルセルロースアセテート、カルボキシメチルセルロースブチレート、カルボキシメチルセルロースプロピオネート等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記セルロース誘導体(B)の使用量が、水性ベースコート塗料中の樹脂固形分100質量部を基準として、固形分で、5〜40質量部、好ましくは5〜30質量部、さらに好ましくは10〜25質量部の範囲内であることが、得られる複層塗膜の金属感向上、耐水性の点から望ましい。
硬化剤(C):
硬化剤(C)としては、例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、エポキシ基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物、ヒドラジド基含有化合物、セミカルバジド基含有化合物などが挙げられる。これらのうち、水酸基と反応し得るアミノ樹脂及びブロック化ポリイソシアネート化合物が好ましい。硬化剤は、単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
アミノ樹脂としては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等のアミノ成分とアルデヒドとの反応によって得られる部分もしくは完全メチロール化アミノ樹脂が挙げられる。アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等が挙げられる。また、このメチロール化アミノ樹脂を適当なアルコールによってメチロール基を部分的にもしくは完全にエーテル化したものも使用することができ、エーテル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール等が挙げられる。
アミノ樹脂としては、特にメラミン樹脂が好ましく、中でも、メチロール化メラミン樹脂のメチロール基を、メチルアルコールで部分的にもしくは完全にエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルアルコールで部分的にもしくは完全にエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂、及びメチルアルコールとブチルアルコールで部分的にもしくは完全にエーテル化したメチル−ブチル混合エーテル化メラミン樹脂等のアルキルエーテル化メラミン樹脂が好ましい。
ブロック化ポリイソシアネート化合物としては、例えば、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基を活性メチレン、オキシム、フェノール、アルコール、ラクタム、メルカプタン、ピラゾール等のブロック剤でブロックしたものを挙げることができる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、該ポリイソシアネートの誘導体等が挙げられる。
上記硬化剤(C)は、水性ベースコート塗料中の樹脂固形分100質量部を基準として、固形分で、通常5〜60質量部、好ましくは10〜50質量部、さらに好ましくは15〜45質量部の範囲内で使用することができる。
光輝性顔料(D):
光輝性顔料(D)は、蒸着金属膜を粉砕して金属片とした光輝性顔料であれば特に限定されるものではない。
このような光輝性顔料は、一般にベースフィルム上に金属膜を蒸着させ、ベースフィルムを剥離した後、蒸着金属膜を粉砕して金属片とすることにより得られる。このときの蒸着金属膜の厚み、即ち粉砕して得られる金属片の厚みとしては、代表的には0.01〜1μm程度であることが好ましい。なお、0.01μm未満では、下地の色が透過しやすく、1μmを超えると、金属片が乱反射を起こすことがある。
なお、光輝性顔料は、蒸着金属膜を粉砕して金属片とした光輝性顔料であるので、極めて厚みが薄い金属片である。上記金属片の粉砕の程度としては、代表的には、平均粒子径(D50)が1〜50μm、好ましくは5〜20μmであることが好ましい。平均粒子径は、レーザー回折散乱法によって測定される体積基準粒度分布のメジアン径(D50)であって、日機装社製のマイクロトラック粒度分布測定装置を用いて測定した値である。
更に、上記蒸着金属膜の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム、金、銀、銅、クロム、ニッケル等の金属膜が挙げられる。腐食の観点からは、特にアルミニウム片を光輝性顔料として用いることが好ましい。アルミニウム片は適宜、表面処理が施されていても良い。
上記光輝性顔料(D)の顔料質量濃度(PWC)は、形成塗膜に金属調光沢感を付与する観点から、10〜40%、特に10〜35%の範囲内が好適である。
なお、本明細書において、光輝性顔料(D)の顔料質量濃度(PWC)は、塗料の固形分に対する光輝性顔料(D)の質量割合である。
上記光輝性顔料含有水性ベースコート塗料には、さらに必要に応じて、その他の樹脂成分を含有させることができる。
その他の樹脂成分として、水性ベースコート塗料において通常使用されているもの、例えば、(A)成分以外のアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができ、中でも、以下に述べるアクリル樹脂及びポリエステル樹脂が好適である。これらの樹脂はそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
必要に応じて含有させることができるアクリル樹脂としては、特に制限はなく、例えば、重合性不飽和単量体を常法に従い溶液重合法により共重合することによって得られるアクリル樹脂を挙げることができる。溶液重合に使用し得る有機溶剤としては、例えば、プロピレングリコール系、ジプロピレングリコール系等の親水性有機溶剤が好ましい。また、水分散性の観点から、該アクリル樹脂はカルボキシル基等の酸基を有していることが好ましい。
上記の重合性不飽和単量体としては、特に制限はなく、例えば、水分散性アクリル重合体粒子(A)に関して前述した、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体(M−2−1)、水酸基含有重合性不飽和単量体(M−2−2)、その他の重合性不飽和単量体(M−2−3)等の重合性不飽和単量体を挙げることができる。
上記アクリル樹脂は、一般に1,000〜200,000、特に2,000〜100,000の範囲内の重量平均分子量を有することが好ましい。また、上記アクリル樹脂は、通常10〜250mgKOH/g、特に30〜150mgKOH/gの範囲内の水酸基価、及び通常10〜100mgKOH/g、特に20〜60mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが好ましい。
なお、本明細書において数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)によりポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」及び「TSKgel G−2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/minの条件下で測定することができる。
上記アクリル樹脂を配合する場合、その含有量は、水性ベースコート塗料中の全樹脂固形分を基準として、固形分で、通常0〜40質量%、好ましくは5〜35質量部%の範囲内とすることができる。
必要に応じて含有させることができるポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、例えば、常法に従って、多塩基酸と多価アルコ−ルとをエステル化反応させることによって合成することができるポリエステル樹脂を挙げることができる。
上記多塩基酸は1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物であり、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘット酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、トリメリット酸及びこれらの無水物等を挙げることができ、また、上記多価アルコ−ルは1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等を挙げることができる。
また、ポリエステル樹脂として、上記の如くして得られるポリエステル樹脂を、あまに油脂肪酸、やし油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、大豆油脂肪酸、ゴマ油脂肪酸、エノ油脂肪酸、麻油脂肪酸、トール油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸などの(半)乾性油脂肪酸等で変性した脂肪酸変性ポリエステル樹脂を使用することもできる。これらの脂肪酸による変性量は、一般に、油長で30質量%以下であることが好ましい。また、安息香酸などの一塩基酸を一部反応させたものであってもよい。さらに、ポリエステル樹脂に酸基を導入するために、前記多塩基酸と多価アルコールのエステル化反応後に、例えば、トリメリット酸、無水トリメリット酸などの多塩基酸又はそれらの無水物を反応させることもできる。
上記ポリエステル樹脂は、一般に1,000〜200,000、特に2,000〜50,000の範囲内の重量平均分子量を有することが好ましい。また、上記ポリエステル樹脂は、通常10〜250mgKOH/g、特に30〜150mgKOH/gの範囲内の水酸基価及び通常10〜100mgKOH/g、特には20〜60mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが好ましい。
上記ポリエステル樹脂を配合する場合、その含有量は、水性ベースコート塗料中の全樹脂固形分を基準として、固形分で、通常0〜40質量%、好ましくは5〜35質量%の範囲内とすることができる。
上記水性ベースコート塗料には、光輝性顔料(D)以外に、必要に応じて、他の光輝性顔料や、着色顔料、体質顔料等の顔料を含有せしめることもできる。
水性ベースコート塗料には、さらに必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、表面調整剤、ポリマー微粒子、塩基性中和剤、防腐剤、防錆剤、シランカップリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、増粘剤、消泡剤、硬化触媒、劣化防止剤、流れ防止剤、水、有機溶剤等の水性塗料調製に際して通常用いられる他の塗料用添加剤を含有させることができる。
水性ベースコート塗料は、形成される塗膜の光輝感などの観点から、一般に2〜20質量%、特に2〜15質量%の範囲内の塗料固形分を有することが好適である。また、水性ベースコート塗料は、通常7.5〜9.0、特に7.5〜8.5の範囲内のpHを有することが好適である。
なお、本明細書において、光輝性顔料含有水性ベースコート塗料の塗料固形分は、該光輝性顔料含有水性ベースコート塗料を110℃で1時間乾燥させた後の不揮発分の質量割合であり、該光輝性顔料含有水性ベースコート塗料を直径約5cmのアルミ箔カップに約2g測りとり、カップの底面に十分全体に展延した後、110℃で1時間乾燥させ、乾燥前の塗料質量と乾燥後の塗料質量から算出することができる。
光輝性顔料含有水性ベースコート塗料の塗装方法は、特に限定されるものではなく、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装等の方法が挙げられ、これらの塗装方法で被塗物上にウエット膜を形成せしめることができる。これらの塗装方法は、必要に応じて、静電印加されていてもよく、中でも、回転霧化方式の静電塗装及びエアスプレー方式の静電塗装が好ましく、回転霧化方式の静電塗装が特に好ましい。
また、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装又は回転霧化塗装する場合には、水性ベースコート塗料の粘度を、該塗装に適した粘度範囲、通常、フォードカップ#4粘度計において、20℃で15〜60秒程度の粘度範囲となるように、適宜、水及び/又は有機溶剤を用いて調整しておくことが好ましい。
形成されるウエット塗膜の硬化は、加熱することにより行うことができる。加熱は、それ自体既知の加熱手段により行うことができ、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を用いて行うことができる。加熱温度は、通常約80〜約180℃、好ましくは約100〜約160℃の範囲内が適している。加熱時間は、特に制限されるものではないが、通常10〜40分間程度とすることができる。
水性ベースコート塗料の膜厚は、硬化膜厚として、通常0.1〜10μm、好ましくは0.1〜7μmの範囲内が適している。
また、被塗物上に水性ベースコート塗料を塗装し、該塗膜を硬化させることなく、その上にクリヤーコート塗料を塗装し、水性ベースコート塗料の塗膜とクリヤーコート塗膜を同時に加熱硬化させる2コート1ベーク方式によって複層塗膜を形成せしめることができる。また被塗面が未硬化の中塗り塗膜面であれば3コート1ベーク方式となり得る。
上記2コート1ベーク方式によって複層塗膜を形成する場合、ハジキ等の塗膜欠陥の発生を防止する等の観点から、水性ベースコート塗料の塗装後、塗膜が実質的に硬化しない温度でプレヒートを行うことが好ましい。プレヒートの温度は通常50〜100℃程度とすることができ、また、プレヒートの時間は大体30秒間〜10分間、好ましくは1〜5分間程度とすることができる。
上記のとおり得られる硬化又は未硬化のベースコート塗膜上に、クリヤーコート塗料を回転霧化方式の静電塗装機、エアレススプレー塗装機、エアスプレー塗装機等の塗装機を用いて塗装した後、通常約100〜約180℃、好ましくは約120〜約160℃の温度で10〜40分間程度加熱して硬化させることにより、優れた外観を有する複層塗膜を形成せしめることができる。
自動車車体の塗装ラインにおいては、通常、同種の塗料を用いるゾーン毎に区分けして塗装することにより、飛散塗料の被塗物や塗膜への付着などによる塗装品質の低下が抑制されており、例えば、自動車塗装ラインにおいては、一般に、下塗り塗装ゾーン、中塗り塗装ゾーン、ベースコート塗装ゾーン、クリヤーコート塗装ゾーンの各ゾーンに区分けされている。
また、各塗装ゾーン内においては、通常、塗装を2回以上に分け、各塗装の間で30秒間〜3分間程度のセッティング(静置)を行うことによって、塗料のタレ等を防止し、高い塗装品質を得る措置がなされており、同一ゾーン内の各塗装は、先に行われる塗装から順に、第1ステージ、第2ステージ・・・と呼ばれる。
このような塗装方法は、一般に、多ステージ塗装と呼ばれ、例えば、同一ゾーン内における塗装を2回に分けて行なう場合は2ステージ塗装、3回に分けて行なう場合は3ステージ塗装と呼ばれる。このうち、ベースコート塗装ゾーンにおいて、水性ベースコート塗料の塗装を行なう場合は、塗膜外観や塗装効率などの観点から、2ステージ塗装で行なうことが好ましい。
上記2ステージ塗装によって水性ベースコート塗料の塗装を行う場合、第1ステージで塗装される水性ベースコート塗料と、第2ステージにおいて塗装される水性ベースコート塗料は同一であってもまた互いに異なっていてもよい。中でも、第1ステージと第2ステージで異なる水性ベースコート塗料を用い、第1ステージにおいて、塗料固形分が8〜40質量%の水性ベースコート塗料(X1)を塗装し、第2ステージにおいて、塗料固形分を2〜5質量%、特に2〜4質量%の範囲内に調整した上述の光輝性顔料含有水性ベースコート塗料を水性ベースコート塗料(X2)として塗装することにより、優れた光輝感と塗膜性能を有する塗膜を形成することができる(以下、この塗装方法を「ダブルベースコート塗装法」という)。
また、上記ダブルベースコート塗装法における第1ステージの塗装終了時から、第2ステージの塗装開始時までの間は、省エネルギーや生産性向上などの観点から、プレヒートは行わず、30秒間〜3分間程度のインターバルをおくことが好ましい。
水性ベースコート塗料(X1)としては、特に制限されず、それ自体既知の水性ベースコート塗料を使用することができ、例えば、塗料固形分を8〜20質量%の範囲内に調整した上述の光輝性顔料含有水性ベースコート塗料を水性ベースコート塗料(X1−1)や、前述の光輝性顔料(D)以外の光輝性顔料をPWC15%未満とし且つ塗料固形分を15〜40質量%の範囲内に調整した水性ベースコート塗料(X1−2)等を用いることができる。
また水性ベースコート塗料(X1−1)の乾燥膜厚(T1−1)は、2〜5μm、特に2〜4μmの範囲内、水性ベースコート塗料(X1−2)の乾燥膜厚(T1−2)は、5〜15μm、特に7〜14μmの範囲内、そして水性ベースコート塗料(X2)の乾燥膜厚(T2)は、一般に0.1〜1μm、特に0.1〜0.5μmの範囲内にあることが好ましい。
上記ダブルベースコート塗装法によって形成されるベースコート塗膜上にクリヤーコート塗料を塗装する場合、ハジキ等の塗膜欠陥の発生を防止する観点から、水性ベースコート塗料の第2ステージでの塗装後、塗膜が実質的に硬化しない温度でプレヒートを行うことが好ましい。プレヒートの温度は通常約50〜約100℃の範囲内とすることができ、また、プレヒートの時間は通常30秒間〜10分間、好ましくは1〜5分間程度とすることができる。
上記プレヒートを行なうことによって得られる未硬化の光輝性顔料含有ベースコート塗膜上に、クリヤーコート塗料を回転霧化方式の静電塗装機、エアレススプレー塗装機、エアスプレー塗装機等の塗装機を用いて塗装した後、約100〜約180℃、好ましくは約120〜約160℃の温度で10〜40分間程度加熱して両塗膜を同時に硬化させることにより、優れた外観(光輝感、平滑性など)を有する複層塗膜を得ることができる。
クリヤーコート塗料:
本発明方法で使用するクリヤーコート塗料は、N−置換(メタ)アクリルアミド(i)、水酸基含有重合性不飽和単量体(ii)、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体(iii)及び(i)〜(iii)以外のその他の重合性不飽和単量体(iv)の共重合体であるアクリル樹脂(E)、該樹脂(E)以外の水酸基含有アクリル樹脂(F)及び硬化剤(G)を含有する。
上記アクリル樹脂(E)は、複層塗膜の耐水付着性を向上させる成分であり、N−置換(メタ)アクリルアミド(i)、水酸基含有重合性不飽和単量体(ii)、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体(iii)、及び(i)〜(iii)以外のその他の重合性不飽和単量体(iv)の共重合体である。
N−置換(メタ)アクリルアミド(i)としては、例えば、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルメタクリルアミド、N−プロポキシメチルアクリルアミド、N−プロポキシメチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド、N−フェノキシメチルアクリルアミド、N−フェノキシメチルメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N−シクロプロピルメタクリルアミド等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
なかでも、形成される塗膜の耐水付着性確保の観点から、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルメタクリルアミド、N−プロポキシメチルアクリルアミド、N−プロポキシメチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミドが好適に使用できる。
水酸基含有重合性不飽和単量体(ii)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2〜8の2価アルコールとのモノエステル化物のε−カプロラクトン変性体;アリルアルコール等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
カルボキシル基含有重合性不飽和単量体(iii)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸及びこれらの不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル化物等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
その他の重合性不飽和単量体(iv)は、上記(i)〜(iii)以外の重合性不飽和単量体であり、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のC1〜20アルキルエステル;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族系ビニル化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどのグリシジル基含有ビニル化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニルなどのビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの重合性不飽和結合含有ニトリル系化合物;ブタジエン、イソプレンなどのジエン系化合物等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記アクリル樹脂(E)は、使用する単量体合計固形分量を基準として、N−置換(メタ)アクリルアミド(i)を3〜50質量%、特に10〜30質量%、水酸基含有重合性不飽和単量体(ii)を1〜30質量%、特に1〜25質量%、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体(iii)を1〜15質量%、特に1〜10質量%、及びその他の重合性不飽和単量体(iv)5〜95質量%、特に35〜88質量%の共重合体であることが、複層塗膜の耐水付着性確保の観点から望ましい。
上記アクリル樹脂(E)は、製造方法に特に制限はなく、例えば、重合性不飽和単量体(i)〜(iv)を常法に従い、重合開始剤の存在下、有機溶剤中での溶液重合法により共重合することによって得られる。
上記アクリル樹脂(E)は、5,000〜100,000、特に10,000〜70,000の範囲内の重量平均分子量を有することが好ましい。また、上記アクリル樹脂(E)は、通常5〜150mgKOH/g、特に10〜100mgKOH/gの範囲内の水酸基価、及び通常10〜100mgKOH/g、特に10〜60mgKOH/gの範囲内の酸価を有することが好ましい。
上記アクリル樹脂(E)は、クリヤーコート塗料中の樹脂固形分100質量部を基準として、固形分で、通常5〜50質量部、好ましくは10〜45質量部の範囲内で使用することができる。
水酸基含有アクリル樹脂(F)は、上記樹脂(E)以外のアクリル樹脂であり、通常、水酸基含有重合性不飽和単量体及び該水酸基含有重合性不飽和単量体と共重合可能な他の重合性不飽和単量体を、それ自体既知の方法、例えば、有機溶媒中での溶液重合法等の方法により共重合せしめることによって製造することができる。
水酸基含有重合性不飽和単量体及び該水酸基含有重合性不飽和単量体と共重合可能な他の重合性不飽和単量体は、特に制限なく、アクリル樹脂(E)に関して前述した、水酸基含有重合性不飽和単量体(ii)、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体(iii)及びその他の重合性不飽和単量体(iv)から適宜選択して使用することができる。
水酸基含有アクリル樹脂(F)は、平滑性及び鮮映性等の仕上がり外観及び耐候性等の塗膜性能の観点から、水酸基価が80〜200mgKOH/g、特に90〜170mgKOH/g、さらに特に100〜140mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、酸価が1〜40mgKOH/g、特に3〜30mgKOH/g、さらに特に5〜20mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。また水酸基含有アクリル樹脂(F)は、平滑性及び鮮映性等の仕上がり外観及び耐候性等の塗膜性能の観点から、重量平均分子量が4000〜20000、特に6000〜16000、さらに特に8000〜12000の範囲内であることが好ましい。
上記水酸基含有アクリル樹脂(F)は、クリヤーコート塗料中の樹脂固形分100質量部を基準として、固形分で、通常10〜70質量部、好ましくは15〜60質量部の範囲内で使用することができる。
また上記アクリル樹脂(E)及び水酸基含有アクリル樹脂(F)の使用比は、両者の合計固形分量を基準として、10/90〜70/30、特に15/85〜60/40であることが複層塗膜の耐水付着性確保の観点から望ましい。
硬化剤(G)としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、カルボキシル基含有化合物、カルボキシル基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、エポキシ基含有化合物等が挙げられ、これらのうち、ポリイソシアネート化合物及び/又はメラミン樹脂が好ましい。
ポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であって、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、該ポリイソシアネートの誘導体等を挙げることができ、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。また上記ポリイソシアネート化合物のうち、得られる塗膜の平滑性及び鮮映性ならびに耐候性等の観点から、脂肪族ジイソシアネート及び脂肪族ジイソシアネートの誘導体を好適に使用することができる。
上記硬化剤(G)としてポリイソシアネート化合物を用いる場合には、アクリル樹脂(E)及び水酸基含有アクリル樹脂(F)中の水酸基とポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、0.5〜2.0、好ましくは0.8〜1.5の範囲内とするのが好適である。
メラミン樹脂としては、例えば、メラミンとアルデヒドとの反応によって得られる公知の部分もしくは完全メチロール化メラミン樹脂をあげることができる。アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。また、このメチロール化メラミン樹脂をアルコールによってエーテル化したものも使用でき、エーテル化に用いられるアルコールの例としてはメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール等が挙げられる。
また、上記クリヤーコート塗料には、必要に応じて、透明性を阻害しない程度に着色顔料、光輝性顔料、染料等を含有させることができ、さらに非水分散樹脂、体質顔料、硬化触媒、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、表面調整剤等を適宜含有せしめることができる。
クリヤーコート塗膜の膜厚は、塗膜外観や塗装作業性などの観点から、乾燥膜厚で、一般に15〜60μm、特に20〜50μmの範囲内にあることが好ましい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」はいずれも質量基準によるものである。
水分散性アクリル重合体粒子(A)の製造例
製造例1
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に脱イオン水100部及びアクアロンKH−10(注1)0.5部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温した。次いで、下記のモノマー乳化物(1)のうちの全量の1%及び3%過硫酸アンモニウム水溶液10.3部を反応容器内に導入し、80℃で15分間保持した。その後、残りのモノマー乳化物(1)を3時間かけて反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。その後、下記のモノマー乳化物(2)を2時間かけて滴下し、1時間熟成した後、2−(ジメチルアミノ)エタノール5%水溶液42部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、平均粒子径100nm(サブミクロン粒度分布測定装置「COULTER N4型」(ベックマン・コールター社製、商品名)を用いて、脱イオン水で希釈し20℃で測定した)、酸価33mgKOH/g、水酸基価48mgKOH/g及び固形分30%の水分散性アクリル重合体粒子(A1)の水分散液を得た。
(注1)アクアロンKH−10: ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩エステルアンモニウム塩:第一工業製薬株式会社製、商品名、有効成分:97%。
モノマー乳化物(1): 脱イオン水60部、アクアロンKH−10 1部、メチレンビスアクリルアミド3部、スチレン4部、メチルメタクリレート13部、エチルアクリレート30部及びn−ブチルアクリレート20部を混合攪拌して、モノマー乳化物(1)を得た。
モノマー乳化物(2): 脱イオン水20部、アクアロンKH−10 1部、過流酸アンモニウム0.1部、スチレン3部、メチルメタクリレート6部、エチルアクリレート2部、n−ブチルアクリレート4部、2−ヒドロキシエチルアクリレート10部及びメタクリル酸5部を混合攪拌して、モノマー乳化物(2)を得た。
セルロース誘導体水性液の調整
製造例2
カルボキシメチルセルロースアセテートブチレート(「Solus3050」、商品名、酸価50mgKOH/g、イーストマン ケミカル カンパニー社製)、水、オクタノール、ジメチルエタノールアミンを用いて、固形分20%、pH7のセルロース誘導体水性液(B1)を得た。
ポリエステル樹脂の製造例
製造例3
攪拌機、還流冷却器、水分離器及び温度計を備えた反応器に、トリメチロールプロパン109部、1,6−ヘキサンジオール142部、ヘキサヒドロ無水フタル酸126部及びアジピン酸120部を仕込み、160℃〜230℃の間を3時間かけて昇温させた後、230℃で4時間縮合反応させた。次いで、得られた縮合反応生成物にカルボキシル基を付加するために、さらに無水トリメリット酸46部を加え、180℃で1時間反応させた後、オクタノールで希釈し、酸価49mgKOH/g、水酸基価140mgKOH/g、固形分70%及び重量平均分子量6,400のポリエステル樹脂(1)を得た。
水性ベースコート塗料の製造
製造例4
攪拌混合容器中に、蒸着アルミニウムフレークペースト(「Hydroshine WS−3004」、Eckart社製、固形分:10%、内部溶剤:イソプロパノール、平均粒子径D50:13μm、厚さ:0.05μm、表面がシリカ処理されている)を固形分で30部となるよう投入し、これを攪拌しながら、製造例2で得たセルロース誘導体水性液(B1)を固形分で20部、「サイメル251」(日本サイテックインダストリーズ社製、商品名、メラミン樹脂、固形分80%)を固形分で25部、製造例3で得たポリエステル樹脂(1)を固形分で20部、及び製造例1で得たアクリル樹脂エマルション(A1)を固形分で35部となるよう添加して混合した。得られた混合物に「プライマルASE−60」(ロームアンドハース社製、商品名、ポリアクリル酸系増粘剤)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を添加して、pH8.0及び塗料固形分10%の水性ベースコート塗料(1)を得た。
製造例5
攪拌混合容器中に、蒸着アルミニウムフレークペースト(「Hydroshine WS−3004」、Eckart社製、固形分:10%、内部溶剤:イソプロパノール、平均粒子径D50:13μm、厚さ:0.05μm、表面がシリカ処理されている)を固形分で50部となるよう投入し、これを攪拌しながら、製造例2で得たセルロース誘導体水性液(B1)を固形分で20部、「サイメル251」(日本サイテックインダストリーズ社製、商品名、メラミン樹脂、固形分80%)を固形分で25部、製造例3で得たポリエステル樹脂(1)を固形分で20部、及び製造例1で得たアクリル樹脂エマルション(A1)を固形分で35部となるよう添加して混合した。得られた混合物に「プライマルASE−60」(ロームアンドハース社製、商品名、ポリアクリル酸系増粘剤)、2−(ジメチルアミノ)エタノール及び脱イオン水を添加して、pH8.0及び塗料固形分2.5%の水性ベースコート塗料(2)を得た。
アクリル樹脂(E)の製造例
製造例6
温度計、攪拌機、冷却管及び水分離器を備えたガラス製4ツ口フラスコに「スワゾール1000」(コスモ石油(株)製、炭化水素系溶剤)60部、n−ブタノール30部を仕込み、撹拌しながら90℃まで昇温した後、n−ブチルアクリレート19.7部、メチルメタクリレート15部、スチレン30部、N−ブトキシメチルアクリルアミド20部、2−ヒドロキシルエチルメタクリレート12部、アクリル酸3.3部及びアゾビスイソブチロニトリル4部の混合物を90℃に保ったまま滴下ポンプを利用して4時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後90℃に1時間保ち、撹拌を続けた。その後、アゾビスイソブチロニトリル0.5部を「スワゾール1000」10部に溶解させたものを1時間かけて一定速度で滴下し、さらに1時間90℃に保ち、固形分50%のアクリル樹脂溶液(E1)を得た。得られたアクリル樹脂は酸価が25mgKOH/g、水酸基価が50mgKOH/g及び重量平均分子量が20,000であった。
製造例7〜15
下記表1に示す配合割合の各成分を用いる以外、製造例6と同様に操作し、アクリル(E2)〜(E10)を得た。製造例6で得られたアクリル樹脂(E1)と併せ、得られたアクリル樹脂(E1)〜(E10)の固形分濃度、重量平均分子量、酸価及び水酸基価を下記表1に示す。
水酸基含有アクリル樹脂(F)の製造例
製造例16
撹拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入口を備えた四ツ口フラスコにエトキシエチルプロピオネート31部を仕込み、窒素ガス通気下で155℃に昇温した。155℃に達した後、窒素ガスの通気を止め、スチレン30部、n−ブチルアクリレート37.5部、2−ヒドロキシプロピルアクリレート30部、アクリル酸2.5部及びジターシャリアミルパーオキサイド(重合開始剤)4部からなる組成配合のモノマー混合物を4時間かけて滴下した。30分後、2,2´−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(重合開始剤)0.5部をスワゾール1000(炭化水素系溶剤)3部に溶解させた重合開始剤溶液を1時間かけて滴下した。ついで、155℃で窒素ガスを通気しながら2時間熟成させた後、100℃まで冷却し、酢酸ブチル29部で希釈することにより、固形分60%の水酸基含有アクリル樹脂(F1)を得た。
得られた水酸基含有アクリル樹脂(F1)は、水酸基価129mgKOH/g、酸価19mgKOH/g、重量平均分子量約12000であった。
製造例17
製造例16で、スチレン30部、n−ブチルアクリレート37.5部、2−ヒドロキシプロピルアクリレート30部、アクリル酸2.5部及びジターシャリアミルパーオキサイド(重合開始剤)4部からなる組成配合のモノマー混合物を、スチレン30部、n−ブチルアクリレート40.5部、2−ヒドロキシエチルアクリレート27部、アクリル酸2.5部及びジターシャリアミルパーオキサイド(重合開始剤)4部からなる組成配合のモノマー混合物に変更する以外は、製造例16と同様にして製造することにより、固形分60%の水酸基含有アクリル樹脂(F2)を得た。
得られた水酸基含有アクリル樹脂(F2)は、水酸基価129mgKOH/g、酸価19mgKOH/g、重量平均分子量約12000であった。
クリヤ−コート塗料の製造
製造例18
製造例16で得た水酸基含有アクリル樹脂(F1)溶液を固形分で40部、製造例6で得た水酸基含有アクリル樹脂(E1)溶液を固形分で20部、「BYK−300」(商品名、ビックケミー社製、表面調整剤、有効成分52%)0.2部、「TINUVIN900」(商品名、B.A.S.F.社製、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、有効成分100%)2.0部及び「TINUVIN292」(商品名、B.A.S.F.社製、ヒンダードアミン系光安定剤、有効成分100%)1.0部を均一に混合し、これに「デュラネートTLA−100」(商品名、旭化成ケミカルズ(株)社製、ポリイソシアネート化合物、固形分100%、NCO含有率21.8%)40部を加えて混合し、さらに、スワゾール1000(商品名、コスモ石油社製、炭化水素系溶剤)を加えて、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度が25秒のクリヤーコート塗料(1)を得た。
製造例19〜34
製造例18と同様にして、下記表2に示した塗料配合にて、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度が25秒の各クリヤーコート塗料(2)〜(17)得た。なお、表2の各クリヤーコート塗料の配合は固形分配合である。
(注1)メラミン樹脂:「サイメル238」、商品名、日本サイテックインダストリーズ株式会社製、固形分100%
試験用被塗物Iの作製:
縦45cm×横30cm×厚さ0.8mmのりん酸亜鉛処理された冷延鋼板に「エレクロンGT−10」(商品名、関西ペイント社製、熱硬化エポキシ樹脂系カチオン電着塗料)を乾燥膜厚20μmになるように電着塗装し、170℃で30分加熱して硬化させて試験用被塗物Iとした。
試験板Iの作製
実施例1
上記試験用被塗物I上に、「WP−522H N−2.0」(商品名、関西ペイント社製、ポリエステル樹脂系水性中塗り塗料、得られる塗膜のL*値:20)を回転霧化型のベル型塗装機を用いて、乾燥膜厚20μmになるように静電塗装し、3分間放置後、80℃で3分間プレヒートし、さらにその上に、製造例4で得た水性ベースコート塗料(1)を、回転霧化型のベル型塗装機「ABBカートリッジベル塗装機」(ABB社製、商品名)を用いて、乾燥膜厚3μmとなるように静電塗装し、2分間放置後、80℃で5分間プレヒートを行なった。次いで、その未硬化のベースコート塗面上に製造例18で得たクリヤーコート塗料(1)を乾燥膜厚30μmとなるように塗装し、7分間放置した後、140℃で30分間加熱してこの両塗膜を同時に硬化させることにより試験板Iを作製した。
実施例2〜12、比較例1〜5
実施例1におけるクリヤーコート塗料(1)を下記表3に示すクリヤーコート塗料に変更する以外は、実施例1と同様に操作して、実施例2〜12及び比較例1〜5の試験板Iを作製した。各試験板Iについては、下記の試験方法により評価を行なった。その結果を表3に示す。
(試験方法1)
フリップフロップ性: 各試験板について、多角度分光測色計MA−68(商品名、X−Rite社製)を用いて、受光角15度及び受光角110度のL値(明度)を測定し、下記の式によってFF値を求めた。
FF値=受光角15度のL値/受光角110度のL値。
FF値が大きいほど、観察角度(受光角)によるL値(明度)の変化が大きく、フリップフロップ性に優れていることを示す。
光輝感: 角度を変えて各試験板を目視し、下記基準で光輝感を評価した。
○:目視の角度によるメタリック感の変化が大きく、フリップフロップ性に優れ、良好な光輝感を有する。
△:目視の角度によるメタリック感の変化がやや小さく、フリップフロップ性がやや 劣り、光輝感はやや劣る。
×:目視の角度によるメタリック感の変化が小さく、フリップフロップ性が劣り、光 輝感は劣る。
平滑性: 試験板の外観を目視にて評価した。
◎:極めて優れた平滑性を有する。
○:優れた平滑性を有する。
△:平滑性がやや劣る。
×:平滑性が劣る。
初期付着性: 各試験板上の複層塗膜に素地に達するようにカッターで切り込みを入れ、大きさ2mm×2mmのゴバン目を100個作り、その表面に粘着テープを貼着し、20℃においてそのテープを急激に剥離した後のゴバン目塗膜の残存数を調べた。
◎:100個残存し、カッターによる切り込みの縁も滑らかである。
○:100個残存するが、カッターの切り込みの交差点において塗膜の小さなハガレ が生じている。
△:99〜80個残存。
×:79〜50個以下残存。
××:50個以下残存。
耐水付着性: 各試験板を80℃の温水に1日間浸漬し、引き上げ、室温で12時間乾燥してから、上記初期付着性試験と同様にしてゴバン目試験を行った。評価基準は初期付着性試験の場合と同じである。
試験用被塗物IIの作製:
縦45cm×横30cm×厚さ0.8mmのりん酸亜鉛処理された冷延鋼板に「エレクロンGT−10」(商品名、関西ペイント社製、熱硬化エポキシ樹脂系カチオン電着塗料)を乾燥膜厚20μmになるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して硬化させてから、その上に中塗り塗料「アミラックTP−65−2」(商品名、関西ペイント社製、ポリエステル樹脂・アミノ樹脂系、有機溶剤型中塗り塗料)を乾燥膜厚40μmになるように塗装し、140℃で30分加熱して硬化させて試験用被塗物とした。
試験板IIの作製
実施例13
上記試験用被塗物II上に、製造例4で得た水性ベースコート塗料(1)を、回転霧化型のベル型塗装機「ABBカートリッジベル塗装機」(ABB社製、商品名)を用いて、乾燥膜厚2μmとなるように静電塗装し、第1ベース塗膜を形成した。1分間のインターバルをおいた後、該第1ベース塗膜上に、製造例5で得た水性ベースコート塗料(2)を、乾燥膜厚0.2μmとなるように塗装し、第2ベース塗膜を形成した。2分間のインターバルをおいた後、80℃で3分間プレヒートして、未硬化のベースコート塗膜を形成し、その上に製造例6で得たクリヤーコート塗料(1)を乾燥膜厚30μmとなるように塗装し、7分間放置した後、140℃で30分間加熱してこれらの塗膜を同時に硬化させることにより試験板IIを作製した。
実施例14〜24及び比較例6〜10
実施例13におけるクリヤーコート塗料(1)を下記表4に示すクリヤーコート塗料に変更するに変更する以外は、実施例13と同様に操作して、実施例14〜24及び比較例6〜10の試験板IIを作製した。各試験板IIについて、上述の試験方法により評価を行なった。その結果を表4に示す。