(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態におけるエネルギー管理システムの構成例を示した図である。図1に示されるように、エネルギー管理システムは、鉄道配電設備116と、鉄道き電設備115と、LRTき電設備145と、EV充電設備150と、を接続する。さらに、エネルギー管理システムは、蓄電システム101と、鉄道エネルギー管理システム130と、鉄道運行管理システム131と、鉄道電力管理システム132と、充電スタンド管理システム155と、EVバス運行管理システム154と、LRT運行管理システム140と、を備えている。
鉄道配電設備116は、鉄道配電線路117と、配電変圧器111と、駅設備112と、を備えている。鉄道配電設備116は、変電所(電力系統)114から受電した電力の一部を配電変圧器111によって降圧や必要に応じて単相変換された交流電力を、駅設備112に供給する。なお、駅設備112は、例えば、駅の照明、昇降機、空調、換気システム、駅務機器などの電力負荷であるが、太陽光発電システム(PV)などの発電機器が接続される場合もある。
配電変圧器111は、電力系統114から受電した交流電力の一部を降圧し、鉄道配電線路117を介して、各駅設備112に電力を供給する。
鉄道き電設備115は、電車線107と、整流器108と、変圧器109と、(図示しない)遮断器や断路器と、を備え、電車線107を介して列車102と接続されている。
変圧器109は、電力系統114から受電した交流電力の一部を降圧する。整流器108は、変圧器109が降圧した交流電力を直流電力へ変換し、電車線107を介して列車102に電力を供給する。
鉄道き電設備115においては、列車102は、電車線107を介して供給される電力で力行する。また、列車102の減速時に発生する回生電力を、電車線107を介して、他の列車の力行や、蓄電システム101の蓄電に用いられる。
LRTき電設備145は、トロリ線147を備え、トロリ線147を介してLRT車両142と接続されている。
LRTき電設備145においては、LRT車両142は、トロリ線147を介して蓄電システム101等から供給される電力で力行し、回生で生じた回生電力を、トロリ線147を介して、他のLRT列車や、蓄電システム101に供給する。
EV充電設備150は、電力量計151と、充電スタンド152と、を備え、充電スタンド152からEV車両153に接続可能となっている。
EV充電設備150においては、電力系統114又は蓄電システム101から鉄道配電線路117を介して供給されている電力を電力量計151で計測する。
充電スタンド152は、電力量計151で計測された電力を、EV車両153に対して供給する。例えば、本実施形態の充電スタンド152は、第2の電力変換装置106により交流に変換された電力を、鉄道配電設備116を介して受電し、EV車両153に搭載された蓄電池を充電可能とする。
蓄電システム101は、蓄電装置103と、制御装置104と、第1の電力変換装置105と、第2の電力変換装置106と、を備え、エネルギー管理システム内の各設備に対して電力を安定供給するために用いられる。
蓄電システム101は、制御装置104の制御に従って、鉄道き電設備115内の列車102から生じた余剰回生電力を蓄電装置103に蓄電する。また、蓄電システム101は、制御装置104の制御に従って、LRTき電設備145内のLRT車両142から生じた余剰回生電力を蓄電装置103に蓄電する。
さらに、蓄電システム101は、制御装置104の制御に従って、蓄電装置103に蓄電された電力を、列車102やLRT車両142の力行電力として利用したり、駅設備112や充電スタンド152などの負荷電力として利用する。これにより、余剰回生電力を有効利用できる。
第1の電力変換装置105は、蓄電装置103の電圧と、鉄道き電設備115の電圧と、を相互に変換し、蓄電装置103及び鉄道き電設備115の間で直流電力の授受を可能とする。これにより、第1の電力変換装置105は、電車線107から余剰回生電力を受電すると共に、電車線107に所定の電圧を補償するために電力を供給することができる。
第2の電力変換装置106は、直流電力と、交流電力とを変換可能な変換装置とする。例えば、第2の電力変換装置106は、蓄電装置103の直流電力と、鉄道配電設備116の交流電力と、を相互に変換し、蓄電装置103及び鉄道配電設備116の間で電力の授受を可能とする。これにより、第2の電力変換装置106は、駅設備112や充電スタンド152に対して所定の電力を供給することができる。
例えば、第2の電力変換装置106は、蓄電装置103から放電される電力を、交流に変換して、鉄道配電設備116に電力を供給する。
制御装置104は、蓄電装置103の充放電の制御、第1の電力変換装置105の電力授受の制御、及び第2の電力変換装置106の電力授受の制御を行う。
制御装置104の制御は、鉄道エネルギー管理システム130が生成する蓄電装置103の充放電計画、蓄電装置103の充電率(以下、SOC=State of Chargeと称す)、電車線107の電圧、第1の電力変換装置105の状態、及び第2の電力変換装置106の状態に基づいて行われる。蓄電装置103の充放電計画は、鉄道き電設備115、LRTき電設備145、鉄道配電設備116、及びEV充電設備150で時刻毎に利用される電力量等に基づいて生成される。
例えば、制御装置104は、鉄道エネルギー管理システム130が生成する蓄電装置103の充放電計画に基づいて、鉄道運行ダイヤ(データ)に基づいた列車(鉄道車両)102やLRT車両142がこれから消費する電力を示した負荷電力の予測値と、充電スタンド152がこれから消費する電力を示した負荷電力の予測値と、を算出する。そして、制御装置104は、列車(鉄道車両)102やLRT車両142がこれから消費する電力を示した負荷電力の予測値と、充電スタンド152がこれから消費する電力を示した負荷電力の予測値と、に基づいて設定された充電率になるように、蓄電装置103の充電及び放電を制御する。なお、本実施形態では設定された充電率になるように制御する例について説明するが、充電率に制限するものではなく、充電量であれば良い。また、鉄道運行ダイヤは、鉄道運行管理システム131が管理しているデータであって、鉄道エネルギー管理システム130を介して受け取るものとする。
蓄電装置103は、制御装置104の制御に従って、(直流のき電線)電車線107を介して列車102から生じた余剰回生電力を蓄積し、蓄電された電力を第1の電力変換装置105や第2の電力変換装置106を介して放電可能とする。
制御装置104は、鉄道運行ダイヤ(データ)に基づいて予測される列車102の回生電力から、蓄電装置103にこれから蓄電される蓄電電力の予測値を算出する。そして、制御装置104は、鉄道運行ダイヤ(データ)に基づいた列車(鉄道車両)102やLRT車両142がこれから消費する電力を示した負荷電力の予測値、及び充電スタンド152がこれから消費する電力を示した負荷電力の予測値に加えて、列車102の回生電力で蓄電装置103にこれから蓄電される蓄電電力の予測値を用いて、定められた充電率(蓄電量)になるように、蓄電装置103の充電及び放電を制御する。
従来、列車がブレーキをかけて停車する際に、近傍に力行中の他の列車が存在する場合、ブレーキにより発生する回生電力は、他の列車に融通される。一方、力行中の他の列車がいない場合、回生電力が失効して回生ブレーキが使えず、機械ブレーキで停車することになる。
これに対して、本実施形態においては、力行中の他の列車がいない場合でも、蓄電システム101が、第1の電力変換装置105を介して回生電力を蓄電装置103に蓄電できる。これにより、列車は、力行中の他の列車が存在しない場合でも、回生ブレーキを有効に利用できる。
これに対して、本実施形態の鉄道システムでは、蓄電システム101を設けたことで、力行中の他の列車がいない場合でも、機械ブレーキを利用することなく、且つ余剰回生電力を第1の電力変換装置105を介して蓄電装置103に蓄電できる。本実施形態では、回生ブレーキを利用可能にすると共に、回生ブレーキにより生じる回生電力を有効に利用できる。そして、貯められた余剰回生電力は、必要に応じて、鉄道き電設備115、LRTき電設備145、鉄道配電設備116、及びEV充電設備150のうちいずれか一つ以上に供給できる。
蓄電装置103は、どのようなものを用いても良いが、例えば、リチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタ(EDLC)など大電力・高容量の蓄電素子を利用することが考えられる。
鉄道運行管理システム131は、鉄道路線上を走行する複数の列車102の運行を管理する。このために、鉄道運行管理システム131は、列車102を運行するための鉄道運行ダイヤを保持しており、必要に応じて、鉄道エネルギー管理システム130に当該鉄道運行ダイヤを送信する。
鉄道電力管理システム132は、鉄道路線内で利用される電力を管理する。例えば、鉄道電力管理システム132は、鉄道き電設備115で使用される直流電力量や鉄道配電設備116で利用される交流電力量、電力系統114から受電した鉄道受電電力量を計測するとともに記録している。また、必要に応じて、鉄道エネルギー管理システム130に鉄道変電所における受電電力量を送信する。
充電スタンド管理システム155は、充電設備150内でEV車両153への充電を管理する。このために、充電スタンド管理システム155は、充電スタンド152を利用する予約時間を示した充電スタンド充電予約データを保持する。
本実施形態においては、運転者が、情報端末等を用いて、EV車両に充電を行うための充電スタンドの利用予約を可能とする。そして、充電スタンド管理システム155は、運転者により利用予約された場合に、当該利用予約による充電スタンドの予約時間を含む充電スタンド充電予約データを保持する。なお、本実施形態の充電スタンド管理システム155は、鉄道き電設備115等で電力の利用がピークとなる時間帯においては、利用予約が行われないよう制限しても良い。
そして、充電スタンド管理システム155は、必要に応じて、鉄道エネルギー管理システム130に充電スタンド充電予約データを送信する。
EVバス運行管理システム154は、EVバス交通網の(EV車両153に含まれる)EVバスの運行を管理する。このために、EVバス運行管理システム154は、EVバスを運行するためのEVバス運行ダイヤと、EVバスをEVバス運行ダイヤに従って運行させるためのEVバス充電計画と、を保持し、必要に応じて、鉄道エネルギー管理システム130に当該EVバス運行ダイヤ及びEVバス充電計画を送信する。
LRT運行管理システム140は、LRT路線内におけるLRT車両142の運行を管理する。このために、LRT運行管理システム140は、LRT車両142を運行するためのLRT運行ダイヤを保持し、必要に応じて、鉄道エネルギー管理システム130に当該LRT運行ダイヤを送信する。
鉄道エネルギー管理システム130は、鉄道運行管理システム131、鉄道電力管理システム132、LRT運行管理システム140、EVバス運行管理システム154、及び蓄電システム101の制御装置104の間で、情報の送受信が可能に接続されている。
鉄道エネルギー管理システム130は、上述した各種管理システムが必要とする電力量に基づいて、蓄電システム101の制御を行う。
図2は、本実施形態における、鉄道エネルギー管理システム130、及び蓄電システム101の構成を例示したブロック図である。
図2に示されるように、鉄道エネルギー管理システム130は、データ保存部126と、情報通信部125と、予測部121と、計画部122と、目標値設定部123と、き電シミュレーション部127と、を備えている。図2に示される例では、各構成の他に、当該各構成間のデータの流れも示している。
そして、鉄道エネルギー管理システム130は、鉄道運行管理システム131、鉄道電力管理システム132、充電スタンド管理システム155、LRT運行管理システム140、及びEVバス運行管理システム154から受信したデータに基づいて、蓄電装置103の充放電に関わる充放電計画データを作成する。そして、鉄道エネルギー管理システム130は、当該充放電計画データと蓄電装置103のSOCとに従って、充放電するための各種目標値を作成して制御装置104に受け渡す。これにより、蓄電装置103のSOC、電力系統114の受電電力の計測値、駅設備112や充電スタンド152による負荷電力の予測値、列車102やLRT車両142による負荷電力の予測値、蓄電装置103に回収可能な列車102やLRT車両142の余剰回生電力の予測値等に基づいた、蓄電装置103の充放電を実現する。次に鉄道エネルギー管理システム130の各構成について説明する。
データ保存部126は、電力系統114から鉄道き電設備115に供給される電力量、列車102やLRT車両142で生じた回生電力のうち蓄電装置103に回収可能な余剰回生電力量、EV車両153に対して供給した負荷電力量、及び蓄電装置103の蓄電量且つ放電量等が表された統計データを、時間帯毎に保存する。本実施形態では、季節、曜日、天候、気温、列車運転状況などの条件別に当該統計データを格納している。
情報通信部125は、鉄道運行管理システム131、鉄道電力管理システム132、EVバス運行管理システム154、充電スタンド管理システム155、LRT運行管理システム140と、の間で情報の送受信を行う。
例えば、情報通信部125は、鉄道運行管理システム131から、鉄道運行ダイヤおよび鉄道運行遅延情報を受信する。また、情報通信部125は、鉄道電力管理システム132から、電力系統114から鉄道変電所が受電する受電電力量などを受信する。
また、情報通信部125は、EVバス運行管理システム154から、EVバス運行ダイヤや、EVバス充電計画およびEVバス運行遅延情報を受信する。また、情報通信部125は、充電スタンド管理システム155から、充電スタンド充電予約情報を受信する。また、情報通信部125は、LRT運行管理システム140から、LRT運行ダイヤおよびLRT運行遅延情報を受信する。
また、情報通信部125は、制御装置104との間でも情報の送受信を行う。例えば、情報通信部125は、制御装置104から、蓄電装置103のSOCや端子電圧、電流などの情報を受信する。また、情報通信部125は、制御装置104に対して、後述する目標値設定部123により導出された、蓄電装置103を制御する際の各種目標値(例えば、充電率目標値SOCref、充電開始電圧目標値Vref_cg、及び放電開始電圧目標値Vref_dc)等を送信する。なお、充電率目標値SOCref、充電開始電圧目標値Vref_cg、及び放電開始電圧目標値Vref_dcについては後述する。
予測部121は、電力系統114から各種設備(鉄道き電設備115、LRTき電設備145、鉄道配電設備116、EV充電設備150)に供給される電力量(電力系統114から変圧器109が受電した受電電力量)、及びき電設備(鉄道き電設備115、LRTき電設備145)で生じる回生電力のうち、蓄電装置103に供給される余剰回生電力量の、時間帯毎の予測データを生成する。本実施形態では、時間帯毎として、30分単位で電力の予測データを生成するが、時間帯を30分単位に制限するものではない。
本実施の形態では、予測データは、データ保存部126に格納された統計データのうち、季節、曜日、天候、気温、及び列車運転状況などの当日の状況と相関の高い統計データ、及び各システムから受信した情報に基づいて生成する。例えば、データ保存部126に保存されている複数の統計データに優先情報を付与し、相関が認められる最も高い優先情報が付与された統計データを用いることが考えられる。なお、本実施形態では、当日の状況として、季節、曜日、天候、気温、及び列車運転状況を全て用いた例について説明するが、全て用いることに制限するものではなく、いずれか一つ以上用いればよい。
また、予測部121は、鉄道運行ダイヤ、及びLRT運行ダイヤのうちいずれか一つ以上に設定された1時間当たりの列車本数、列車及びLRT車両のうちいずれか一つ以上の消費エネルギー原単位(単位距離および単位重量または車両あたりの消費エネルギー)、及び回生エネルギー原単位並びに時間帯別の平均回生失効率などの情報を用いた上で、予測データを生成しても良い。
き電シミュレーション部127は、鉄道運行管理システム131から鉄道運行遅延情報、EVバス運行管理システム154からEVバス運行遅延情報、LRT運行管理システム140からLRT運行遅延情報を情報通信部125が受信した場合に、列車、LRT車両、又はEVバスの遅延に基づいた運行をシミュレーションし、遅延が生じている時間帯の受電電力量および余剰回生電力量を予測する。シミュレーションする際に、路線条件、車両条件、き電回路条件、き電回路条件などのデータが必要な場合には、き電シミュレーション部127の(図示しない)データ記録部にこれらのデータを予め記憶しておく。これにより、列車、LRT車両やEVバス等の運行変更時に必要となる負荷電力量や、蓄電装置103に回収可能な回生電力量を予測することができる。
このように、予測部121は、例えば列車やEVバス等のダイヤに乱れが無い場合にはデータ保存部126に保存されていた統計データに基づいて予測し、列車やEVバスにダイヤに乱れが生じた場合はき電シミュレーション部127によるシミュレーションで予測しても良い。
また、予測部121は、情報通信部125から取得したEVバス運行ダイヤ、EVバスの運行遅延情報、EVバスの充電計画に基づいて、EVバスの充電に要する充電スタンド152の将来の負荷電力を予測する。また、充電スタンド152が自家用電気自動車の充電も行う場合、予測部121は、EVバスによる充電スタンドの負荷電力だけでなく、充電スタンド管理システム155から取得した充電スタンド充電予約情報に基づいて、充電スタンド152の負荷電力を予測する。
図3は、本実施形態の予測部121が生成した予測データの一部を例示した図である。図3に、電力系統114から鉄道き電設備115、LRTき電設備145、鉄道配電設備116、及びEV充電設備150に供給される電力量と、鉄道き電設備115及びLRTき電設備145で生じた余剰回生電力量と、が30分単位で示されている。
例えば、4:30〜5:00において、供給される電力量“527[kWh]”、余剰回生電力量“12[kWh]”、5:00〜5:30において、供給される電力量“689[kWh]”、余剰回生電力量“31[kWh]”等が示されている。
図3に示されるように、7:00〜10:00までの時間帯に、鉄道き電設備115、LRTき電設備145、鉄道配電設備116、及びEV充電設備150の消費電力がピークとなる。そこで、本実施形態の制御装置104では、このようなピーク時間帯で、なるべく蓄電装置103から電力を供給するように制御する。これにより、ピーク時間帯において、電力系統114からの受電電力量を軽減できる。
図2に戻り、計画部122は、予測部121により生成された予測データに基づいて、蓄電装置103の充電率を制御するための充放電計画を生成する。
本実施形態の計画部122は、例えば、電力の消費量が他の時間帯より高くなるピーク時間帯において、ピーク電力量を削減するように蓄電装置103から放電し、ピーク以外の時間帯において蓄電装置103への充電を行うような充放電計画を生成する。充放電計画は、例えば蓄電装置103の30分毎の目標充電率とする。充放電計画は、放電させる時間帯では時限毎に目標充電率を減少するように、充電させる時間帯では目標充電率を増加するように作成する。蓄電装置103が、充放電計画に従って、充放電を行うことで、電力系統114から受電する受電電力量のピーク電力量を削減できる。なお、充放電計画として、30分毎の蓄電装置103の目標充電率でなく、充放電電力量(「kWh」)や平均充放電電力(「kW」)などを目標値として用いるようにしても同等の制御が可能である。
例えば、計画部122は、ピーク時間帯における受電電力量を所定の電力量だけ削減し、当該所定の電力量が蓄電装置103で利用可能な残容量より大きい場合、所定の電力量を小さくする。一方、計画部122は、所定の電力量が蓄電装置103の残容量未満の場合は所定の電力量を増加させる。これらの制御を繰返し行うことで、ピーク電力量の削減可能な電力の最大値を算出する。
つまり、充電率目標値SOCrefと比べて蓄電装置103の残容量が大きい場合、電力系統114の電力削減量が増加する。そして、充電率目標値SOCrefと比べて蓄電装置103の残容量が少ない場合、電力系統114の電力削減量が減少する。このため、充電率目標値SOCrefを調整すると、蓄電装置103との残容量との差も変化する。これにより、電力系統114の電力削減量を調整できる。
この際、計画部122は、蓄電装置103、第1の電力変換装置105及び第2の電力変換装置106の定格出力や容量を考慮して、実現可能な充放電計画を作成する。なお、蓄電装置103にニッケル水素二次電池やリチウムイオン二次電池を使用する場合、一般には、深い放電深度での充放電は寿命に悪影響があることが知られている。このため、計画部122は、使用する蓄電装置103の種類に応じて、なるべく寿命に悪影響が出ない範囲で充放電を行うように充放電計画を生成する。また、時間帯別に電力料金や電力低減に対する重みが異なる場合、計画部122は、これらの重み付けを考慮して、充放電計画を生成しても良い。この他、充放電計画の生成にあたっては種々の最適化手法を適用してもよい。
図4は、本実施形態の計画部122が生成した充放電計画を例示した図である。図4に示される例では、充放電計画として、30分単位で設定された充電率目標値が示されている。
図4に示される例では、例えば、6:30〜7:00までの間の充電率目標値が85%であり、7:00〜7:30、及び7:30〜8:00までの間の充電率目標値が75.8%に設定され、8:00〜8:30までの間の充電率目標値が66.9%に設定され、8:30〜9:00までの間の充電率目標値が58.3%に設定されている。
つまり、7:00〜8:30までの間で蓄電装置103の充電率目標値が下げられるため、実際の残容量を充電率目標値に追従させるために、蓄電装置103で放電制御が行われる傾向が高くなる。このため、蓄電装置103から、各種設備(例えば、鉄道き電設備115やEV充電設備150)に対して、電力が供給される。よって、ピーク時間帯の電力系統114から供給される電力量を削減できる。
また、計画部122は、例えば、鉄道の鉄道運行ダイヤにおいては列車102の運行が少なく、負荷電力量が小さい、いわゆる閑散時間帯(例えば昼間など)に、蓄電装置103に蓄電された電力を、充電スタンド152や駅設備112の負荷に割り当てるような充放電計画を生成できる。
このような充放電計画に従って、制御装置104が、蓄電装置103及び第2の電力変換装置106を制御することで、EVバスをEVバスの車庫で充電する代わりに、鉄道駅の充電スタンド152から、蓄電装置103の電力で充電できる。これにより、バスの運行に遅延が生じた場合など、鉄道駅の充電スタンド152を利用して補充電を行ったり、EVバスの車庫での充電計画の遅れを回復したりすることができる。
目標値設定部123は、計画部122が生成した蓄電装置103の充放電計画(第1の電力変換装置105、及び第2の電力変換装置106のうち、どちらから放電するかを示した情報を含む)と、現在時刻から、蓄電装置103における、蓄電装置103が蓄電すべき充電率の基準として示した目標値(以下、充電率目標値SOCrefとも称する)を設定する。当該充放電計画に従って、充電率目標値SOCrefを設定することで、予測部121により生成された予測データに基づいた、時間帯毎の充電率目標値SOCrefの設定が実現できる。なお、本実施形態では、目標値として蓄電池の充電率を用いたが、充放電電力量や平均充放電電力等でも良い。
例えば、現在時刻が7時33分45秒の場合、充放電計画のなかの7:30〜8:00における充電率目標値データを充電率目標値SOCrefとして設定する。
目標値設定部123は、充電率目標値SOCrefと、蓄電装置103から検出された充電率と、電力変換装置105の充電開始電圧目標値Vref_cg、及び放電開始電圧目標値Vref_dcを設定する。なお、以下には、鉄道き電設備115の電車線107から検出された電圧による制御について説明するが、LRTき電設備145のトロリ線147から検出された電圧による制御にも適用する。
ところで、列車102の減速に伴い回生電力が発生すると、列車102から他の列車に向けて電流が流れるため、電車線107の電圧は標準的な給電電圧より高くなる。また、列車102が加速する場合、電力系統114から列車102に電流が流れるため、電車線107の電圧が低くなる。そこで、本実施形態では、電車線107の電圧により、蓄電装置103の充放電を制御する。そこで、本実施形態では、電車線電圧が充電開始電圧目標値Vref_cgより高い場合は回生電力が発生したものとして、蓄電装置103への充電を行い、放電開始電圧目標値Vref_dcより低い場合は蓄電装置103から放電を行う。
本実施形態の目標値設定部123は、充放電特性テーブル記憶部に記憶された充放電特性に基づいて、第1の電力変換装置105の充電開始電圧目標値Vref_cg、及び放電開始電圧目標値Vref_dcを設定する。図5は、本実施形態の充放電特性テーブル記憶部に記憶された充放電特性テーブルを例示した図である。図5では、横軸に電車線電圧を、縦軸に蓄電装置103の出力電流を示している。また、充放電特性テーブルは、図5の(A)、(B)、(C)のように、蓄電装置103の充電率に応じて異なる電車線電圧対出力電流の特性(以下、V−I特性と記す)を設定する。さらに、充放電特性テーブル記憶部は、充放電特性テーブルとして、図5の(A)、(B)、(C)のような複数のV−I特性の組を充電率目標値SOCref毎に記憶している。すなわち、目標値設定部123は、充電率目標値SOCrefと充電率のふたつの情報をキーとして、充放電特性テーブル記憶部から、蓄電装置103のV−I特性を取得する。なお、充放電特性テーブルは、鉄道エネルギー管理システム130が備える(図示しない)充放電特性テーブル記憶部に記憶されているものとする。
図5に示される充放電特性テーブルは、充電率目標値SOCrefが“50%”の場合の例とする。図5の(A)は、蓄電装置103の充電率が充電率目標値SOCrefより低い場合に用いるテーブルとする。図5の(B)は、蓄電装置103の充電率が充電率目標値SOCrefと同じ又は近傍にある場合に用いるテーブルとする。図5の(C)は、蓄電装置103の充電率が充電率目標値SOCrefより大きい場合に用いるテーブルとする。図5においては、説明のため(A)、(B)、(C)の3種類のV−I特性のみ示しているが、実際には例えば充電率5%毎のV−I特性を持たせるとともに、充電率に応じて複数のV−I特性を補間して適切なV−I特性を得るようにする。例えば、充電率が32.5%の場合、充電率30%のV−I特性と充電率35%のV−I特性とから、図5のVd1、Vd2、Vc1、Vc2を作成する。
蓄電装置103の充電率が充電率目標値SOCrefと同じ又は近傍にある場合、図5の(B)に示される充放電開始電圧が、目標値設定部123により設定される。図5の(B)で示される例では、目標値設定部123が、電圧“Vd1”を放電開始電圧目標値Vref_dcとし、電圧“Vc1”を充電開始電圧目標値Vref_cgとする。電圧“Vc1”は、一般的に、図示しない標準き電電圧V0より高い電圧で、また回生電力の列車間の融通を妨げないように設定する。また、電圧“Vd1”は、標準き電電圧V0より低い電圧に設定する。
そして、電車線電圧が電圧“Vd1”以下になった場合、制御装置104は、電車線107の電圧が下がるに従って、出力電流(放電電流)が増加するように制御する。また、電車線電圧が電圧“Vd2”より小さい場合、制御装置104が、電流値“Id”で蓄電装置103から放電するよう制御する。具体的には、制御装置104は、充放電特性に基づく放電電流の指令値を生成し、充放電指令値として第1の電力変換装置105に出力する。
さらに、電車線電圧が電圧“Vc1”以上になった場合、制御装置104は、電車線電圧が上がるに従って、入力電流(充電電流)が増加するように制御する。電車線電圧が電圧“Vc2”より大きい場合、制御装置104が、電流値“Ic”で蓄電装置103に充電するよう制御する。具体的には、制御装置104は、充放電特性テーブルに基づく放電電流の指令値を生成し、充放電指令値として第1の電力変換装置105に出力する。
蓄電装置103のSOC(充電率)が充電率目標値SOCrefより小さい場合、図5の(A)に示される充電開始電圧目標値Vref_cg及び放電開始電圧目標値Vref_dcが、目標値設定部123により設定される。図5の(A)で示される例では、目標値設定部123が、電圧“Vd1’”を放電開始電圧目標値Vref_dcとし、及び電圧“Vc1’”を充電開始電圧目標値Vref_cgとする(なお、Vd1’<Vd1、Vc1’<Vc1とする)。制御装置104による制御は、目標値が異なるだけで図5の(B)と同様の制御が行われるものとして説明を省略する。
図5の(A)の場合、図5の(B)の場合と比べて、電車線107の電圧値がより低くないと蓄電装置103から放電されない。このため、蓄電装置103からの放電量が少なくなる。つまり、図5の(A)は、蓄電装置103は蓄電しやすく、放電しにくい設定となる。
蓄電装置103の充電率が充電率目標値SOCrefより大きい場合、図5の(C)に示される充電開始電圧目標値Vref_cg及び放電開始電圧目標値Vref_dcが、目標値設定部123により設定される。図5の(C)で示される例では、目標値設定部123が、電圧“Vd1””を放電開始電圧目標値Vref_dcとし、電圧“Vc1””を充電開始電圧目標値Vref_cgとする(なお、Vd1”>Vd1、Vc1”>Vc1とする)。制御装置104による制御は、目標値が異なるだけで図5の(B)と同様の制御が行われるものとして説明を省略する。
図5の(C)の場合、図5の(B)の場合と比べて、電車線107の電圧値がより高くないと蓄電装置103に充電されない。このため、蓄電装置103への充電量が少なくなる。これにより、図5の(C)は、蓄電装置103は放電しやすく、蓄電しにくい設定となる。
なお、本実施形態では、図5に示す充放電特性テーブルを、充電率目標値SOCref毎に設けられている例とする。つまり、目標値設定部123は、目標値設定部123により設定された充電率目標値SOCrefに対応する充放電特性テーブルと、現在の蓄電装置103のSOCと、に基づいて、充電開始電圧目標値Vref_cg及び放電開始電圧目標値Vref_dcを設定する。このように、充電率目標値SOCrefに対応する充放電特性テーブルを使用することで、蓄電装置103のSOCが、充電率目標値SOCrefに近づくよう制御がなされる。
このように、目標値設定部123は、時間帯毎に、設定された充電率目標値SOCrefに対応する複数の充放電特性テーブルを読み出し、複数の充放電特性テーブルから、蓄電装置103のSOCに対応する充放電特性テーブルを特定する。そして、目標値設定部123は、特定された充放電特性テーブルで定められた充電開始電圧目標値Vref_cg及び放電開始電圧目標値Vref_dcを、制御装置104に受け渡す。そして制御装置104は、充電開始電圧目標値Vref_cg及び放電開始電圧目標値Vref_dcと、電車線107の電圧と、の比較結果に従って、蓄電装置103の充電、放電の制御を行う。
また、目標値設定部123は、運行ダイヤや遅延情報等を制御装置104に受け渡す。これにより、制御装置104は、現在の各種設備の状況を考慮して、第1の電力変換装置105及び第2の電力変換装置106を制御する。
例えば、制御装置104は、鉄道車両の運行ダイヤに基づいて予測される負荷電力の予測値と、鉄道車両の運行ダイヤに基づいて予測される鉄道車両の回生電力で蓄電装置103に蓄電される蓄電量の予測値と、EVバスの運行ダイヤや充電スタンド充電予約情報に基づいて充電スタンド152がこれから消費する負荷電力の予測値と、に基づいて、第1の電力変換装置105及び第2の電力変換装置106を制御する。当該制御と共に、蓄電装置103の充電及び放電も制御される。これにより、EV配電設備150及び鉄道き電設備115のうちいずれかに優先的に電力を供給することができる。
他の例としては、制御装置104は、鉄道車両で遅延が生じたことで、鉄道車両の運行ダイヤが変更された場合に、変更された鉄道車両の運行ダイヤに基づいて予測される負荷電力の予測値を算出する。また、制御装置104は、変更された鉄道車両の運行ダイヤに基づいて予測される鉄道車両の回生電力で蓄電装置103に蓄電される蓄電量の予測値を算出する。そして、制御装置104は、算出した負荷電力の予測値と、算出した蓄電量の予測値と、充電スタンド152がこれから消費する負荷電力の予測値と、に基づいて、定められた充電率(蓄電量)になるように、蓄電装置103の充電及び放電を制御する。その際に、制御装置104は、第1の電力変換装置105及び第2の電力変換装置106も制御する。これにより、遅延が生じて負荷電力が大きい設備に対して優先的に電力を供給することができる。また、充電スタンドを利用する公共交通機関の車両の運行ダイヤが変更になった場合や、公共交通機関の車両で遅延等が生じた場合でも同様に、制御部104は、充電スタンドや蓄電装置103の負荷電力の予測を行った上で、定められた充電率(蓄電量)になるように、蓄電装置103の充電及び放電を制御してもよい。
制御装置104は、充電スタンド152の利用予約を行ったEV(自家用電気自動車)の予約状況に基づいた負荷電力の予測値に基づいて、第1の電力変換装置105及び第2の電力変換装置106を制御する。これにより、蓄電装置103の充電及び放電が制御される。
本実施形態では、充電率目標値SOCref毎に、充放電特性テーブルが保持されている例について説明した。本実施形態は、充電率目標値SOCref毎に、充放電特性テーブルを保持している場合に制限するものではない。変形例としては、基準となる充放電特性テーブル(例えば充電率目標値SOCrefが50%の場合の充放電特性テーブル)と、充電率目標値の違いに応じて当該充放電特性テーブルを調整するためのオフセット値と、を保持してもよい。
このような変形例においては、目標値設定部123が、受け取った充電率目標値SOCrefに対応するオフセット値で、充放電特性テーブルを調整することで、受け取った充電率目標値SOCrefに対応する充放電特性テーブルを生成できる。例えば、ある時間帯において、SOCrefが50%であって、充電率が50%となるような特性の充放電特性テーブルを用いる場合、目標値設定部123は、充放電特性テーブルをそのまま使用する。また、SOCrefが60%の場合、目標値設定部123は、充電率を実際の充電率から−10%のオフセットを持つものとみなして充放電特性テーブルを適用する。これにより、実際の充電率を60%に近づけることができる。また、SOCrefが40%の場合、目標値設定部123は、充電率を実際の充電率から+10%のオフセットを持つものとみなして充放電特性テーブルを適用する。これにより、実際の充電率を40%に近づけることができる。他の処理は、上述した実施形態と同様のため、説明を省略する。
さらに、異なる手法としては、充放電特性テーブルを保持するのではなく、目標値設定部123が、受け取った充電率目標値SOCrefに対応する充放電特性を生成しても良い。このように充放電特性の生成手法としては、様々な手法を用いて良い。
このように、本実施形態の制御装置104は、目標値設定部123により設定された、時間帯毎の充電率目標値SOCref、充電開始電圧目標値Vref_cg及び放電開始電圧目標値Vref_dcと、蓄電装置103から検出されたSOC(充電率)と、蓄電装置103による電力の供給先である電車線107の電圧と、に基づいて、第1の電力変換装置105を用いて、蓄電装置103の充電及び放電のうちいずれか一つ以上の制御を行う。
また、本実施形態の制御装置104は、充電開始電圧目標値Vref_cg及び放電開始電圧目標値Vref_dcに従うように、蓄電装置103の充放電を制御する際、第1の電力変換装置105及び第2の電力変換装置106のオン・オフの切り替えを、各種システムから受信した情報に基づいて行う。
例えば、制御装置104は、EVバス運行ダイヤ、EVバス充電計画、EVバス運行遅延情報、充電スタンド充電予約情報、鉄道運行ダイヤ、鉄道運行遅延情報、LRT運行ダイヤ、及びLRT運行遅延情報に基づいて、第1の電力変換装置105及び第2の電力変換装置106のオン・オフを制御する。これにより、電力が必要な設備に対して、優先的に電力を供給することができる。例えば、鉄道き電設備115のピーク時間帯には、蓄電システム101は蓄電装置103から第1の電力変換装置105を介して鉄道き電設備115側に電力が供給されるようにし、EV充電設備150側には電力が供給されないようにする。また、鉄道き電設備115で電力に余裕がある時間帯で、EVバス運行のピーク時間帯や、EVバスの運行に遅延が生じているため緊急に充電が必要な場合には、制御装置104は、第2の電力変換装置106から、EV充電設備150側に電力が優先的に供給されるように制御する。
なお、第1の電力変換装置105及び第2の電力変換装置106は、蓄電装置103からの充放電をオン・オフ制御しても良いし、比率で制御を行っても良い。
次に本実施形態においてエネルギー管理システムによる、ピーク時間帯の電力量の削減効果について説明する。
図6は、負荷電力量と、受電電力量と、余剰回生電力量と、の推移を例示した図である。本実施形態の負荷電力量は、鉄道き電設備115、LRTき電設備145、鉄道配電設備116、及びEV充電設備150による負荷電力が含まれている。
蓄電装置103等を設置していない従来の鉄道き電設備においては、負荷電力量に相当する電力を商用電力で供給する必要があり、電力系統114からの受電電力量は負荷電力量と等しくなっていた。
本実施形態では、蓄電装置103を備えて、列車102で生じた余剰回生電力を蓄電装置103に蓄電することで、列車102の回生失効を抑制するとともに、負荷電力量がピークとなる時間帯の前までは蓄電装置103への充電を行い、ピーク時間帯に蓄電装置103から鉄道き電設備115に放電を行うことで、電力系統114からの受電電力量を低減し、省エネを図る。
なお、従来、蓄電装置への充放電は、蓄電装置の充電率を一定に保つように行われることが多かった。このように、蓄電装置の充電率を中間状態にしておくことで、常時、充電も放電も可能な状態になるため、蓄電装置を確実に利用することが可能となり、設備利用効率が向上する。また、蓄電装置に二次電池を使用した場合、特に過放電による電池寿命への悪影響を抑止することが可能となる。しかしながら、ピーク時間帯であるか否かにかかわらず、このような制御を行うと、ピーク時間帯で、蓄電装置に蓄電されている電力量を必ずしも有効に活用できず、変電所の受電電力量を十分に低減できないという状況が生じる可能性があった。
これに対し、本実施形態では、蓄電装置103の充電率目標値を、寿命に影響のない又は少ない範囲で変化させて積極的に蓄電装置103の充放電を行うことで、受電電力量のピーク電力量を低減できる。
図6には、負荷電力量がピークとなる時間帯(図中の6:00から7:30)において、負荷電力量に比べて、受電電力量が、ピーク電力量削減量601分だけ低減されることを示している。このピーク電力量削減量601は、余剰回生電力量602として蓄電装置103に蓄積された電力量を用いることで補っている。
図7は、本実施形態における、蓄電装置103の充電率701と、充電率目標値702と、の遷移を示した図である。図7に示されるように、負荷電力量がピークとなる7:00近傍に向けて、充電率目標値702が低下していくように設定される。そして、設定された充電率目標値702に追従するように、蓄電装置103の充電率701が徐々に減少する。充電率701を減少させ、蓄電装置103から放電させることで、ピーク時間帯の受電電力量の削減を実現できる。
一方、制御装置104は、負荷電力量が少ない時間帯に、充電率目標値を上昇するよう設定することで、当該時間帯での蓄電装置103への蓄電を実現できる。
次に、本実施形態の鉄道エネルギー管理システム130による蓄電システム101の充放電制御について説明する。図8は、本実施形態の鉄道エネルギー管理システム130における処理手順を示すフローチャートである。
まず、予測部121は、予測処理を実行するか否かを判定する(ステップS901)。例えば、前回予測処理を実行してから、運行計画が変更した、又は天候等の状況が変化した等の理由が生じた場合に、予測処理を実行すると判定する。これはS901における、判定基準を制限するものではなく、例えば、前回の予測処理から所定時間経過した場合に、予測処理を実行すると判定してもよい。所定時間とは、例えば5分間隔などが考えられるが、実施態様に応じて、適切な時間が設定されれば良い。なお、予測を行うために必要な条件に変更がない場合(例えば列車ダイヤに変更がない場合)等は予測を実行しなくともよい。そして、予測処理を実行しないと判定した場合(ステップS901:No)、ステップS903に進む。
一方、予測部121が、予測処理を実行すると判定した場合(ステップS901:Yes)、データ保存部126に保存されている統計データに基づいて、各種設備(鉄道き電設備115、LRTき電設備145、鉄道配電設備116、EV充電設備150)の負荷電力量、及び余剰回生電力量の予測データを算出する(ステップS902)。
その後、計画部122が、計画処理を実行するか否かを判定する(ステップS903)。例えば、蓄電装置103で検出された充電率と充電率目標値との乖離が、充放電計画の再計画を必要とする場合に計画処理S903を実行する。その他、前回の充放電計画が生成されてから、新たに予測データが算出されたか否かや、単純に所定の時間間隔の経過によって、計画処理を実行するか否かを判定しても良い。計画処理を実行しないと判定した場合(ステップS903:No)、ステップS905に遷移する。
一方、計画部122が、計画処理を実行すると判定した場合(ステップS903:Yes)、予測データに基づいて、蓄電装置103の充放電計画を生成する(ステップS904)。
次に、目標値設定部123が、充電率目標値SOCrefを設定するか否かを判定する(ステップS905)。充電率目標値SOCrefの設定は、例えば、30分毎など前回設定してから所定時間を経過した場合や、充放電計画が再生成された場合に行われる。充電率目標値を設定しないと判定した場合(ステップS905:No)、ステップS907に遷移する。
一方、目標値設定部123が、充電率目標値SOCrefを設定すると判定した場合(ステップS905:Yes)、現在の時刻と充放電計画から、現在の充電率目標値SOCrefを設定する(ステップS906)。
次に、目標値設定部123が、設定された充電率目標値SOCrefと、現在の蓄電装置103の充電率と、に基づいて、充放電特性(充電開始電圧目標値Vref_cg、及び放電開始電圧目標値Vref_dc)を設定する(ステップS907)。
そして、制御装置104が、設定された充放電特性に従って、第1の電力変換装置105、第2の電力変換装置106、及び蓄電装置103による充放電制御を行う(ステップS908)。
その後、制御装置104が、充放電制御が終了したか否かを判定する(ステップS909)。充放電制御が終了していないと判定した場合(ステップS909:No)、ステップS901から再び処理を行う。また、当日の列車の運行が完了したり、鉄道エネルギー管理システム130の運転を停止する場合には、充放電制御終了の判定を行い、処理を終了する。
(第2の実施形態)
第1の実施形態は、電力変換装置を複数備える例について説明した。しかしながら、電力変換装置を複数備えることに制限するものではない。そこで、第2の実施形態では、蓄電システムに、電力変換装置を一つ備えた例について説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成は同一の符号を付与し、説明を省略する。
図9は、第2の実施形態におけるエネルギー管理システムの構成例を示した図である。図9に示される例では、第1の実施形態と比べて、蓄電システム900及びEV充電設備950が異なるものとする。
本実施形態の蓄電システム900は、一つの電力変換装置902が備えられている他、制御装置104と処理が異なる制御装置901が設けられている。これにより、EV充電設備950は、鉄道配電線路117を介さずに、蓄電システム900の電力変換装置902から電力の供給が可能となる。
制御装置901は、充放電計画に従って、蓄電装置103と、電力変換装置902と、を制御する。その際に、制御装置901は、蓄電装置103との接続先を、鉄道き電設備115、LRTき電設備145、及びEV充電設備950から選択可能に制御する。なお、接続はオン・オフの切り替えでも良いし、接続比率を調整可能にしても良い。
本実施形態の充電スタンド152は、電力系統114に接続された鉄道配電設備116を介さず、蓄電装置103からの放電に限り電力を供給される。このため、例えば、充電スタンド152の設置数が少ない規模の小さい駅設備等として適用可能とする。本実施形態では、電力変換設備の設置数を第1の実施形態と比べて減らすことができるため、設置コスト及び設置負担を低減させることができる。
本実施形態においては、充電スタンド152の電源として蓄電システム101を使用しているため、充電スタンド152による充電が行われていない時間帯に限り、電力系統114からの受電電力を削減できる。
このため、鉄道エネルギー管理システム130は、負荷電力量がピーク時間帯に充電スタンド152によるEV車両への充電を休止する充放電計画を作成してもよい。また、鉄道エネルギー管理システム130は、鉄道運行ダイヤに基づいて、蓄電システム101近傍に列車102が存在しない時間帯に、蓄電装置103から充電スタンド152に充電を行う充放電計画を作成してもよい。また、蓄電システム101近傍に列車102が存在する場合に、受電電力を削減するために、余剰回生電力を蓄電池に充電制御する充放電計画を作成してもよい。
本実施形態では、電力変換装置を減らした場合でも、第1の実施形態と同様の効果を得られる他、電力変換装置を低減させたことによる設置コストの低減を図ることができる。
(第3の実施形態)
上述した実施形態では、駅近傍に充電スタンドを設ける例について説明した。しかしながら、EVバス等の循環経路等に充電スタンドがあれば、さらなる利便性が向上する。
そこで、第3の実施形態では、電車線から供給される電力を充電スタンドに供給する例について説明する。
図10は、第3の実施形態におけるエネルギー管理システムの構成例を示した図である。図10に示される例では、図示しないが、第1の実施の形態で示した鉄道運行管理システム131、鉄道電力管理システム132、充電スタンド管理システム155は設けられており、第1の実施形態と同様に、様々な情報を鉄道エネルギー管理システム130に送信しているものとする。
鉄道エネルギー管理システム130は、鉄道運行管理システム131、鉄道電力管理システム132、LRT運行管理システム140、EVバス運行管理システム154、及び蓄電システム101の制御装置104から受信した情報に基づいて、第1の実施形態と同様に、蓄電システム101の制御装置104に対して目標値等を送信する他、充電スタンドと情報の送受信を行って、充電スタンドを制御する。これにより、鉄道エネルギー管理システム130は、蓄電システム101、及び充電スタンド1001、1002のピーク電力をカットしたり、また、時間帯などによって電気料金が異なる場合には電力コストが最小となるように、充放電電力量を制御する。
図10に示されるように、本実施形態では、第1の充電スタンド1001と、第2の充電スタンド1002と、が設けられている。
第1の充電スタンド1001、及び第2の充電スタンド1002は、制御装置1012と、電力量計151と、電車線107(直流き電線)に接続された電力変換器1011と、電力変換器1011に接続されてEVに搭載された蓄電池を充電する充電器1013と、を備える。第1の充電スタンド1001、及び第2の充電スタンド1002は、電力量計151を介して接続されている電車線107から電力の供給を受けることができる。なお、第1の実施形態と同様の構成は同一の符号を付与し、説明を省略する。
本実施形態では、2つの充電スタンドを設けた例について説明するが、充電スタンドの数を2つに制限するものではなく、電車線107から電力供給可能な位置であれば幾つ設けても良い。
制御装置1012は、電力量計151を介して検出される電車線107の電圧と、鉄道エネルギー管理システム130による充電スタンド充電指令と、に従って、電力変換器1011を制御する。これにより、第1の充電スタンド1001、及び第2の充電スタンド1002の充電器1013の充放電が行われる。
本実施形態では、鉄道エネルギー管理システム130が、各種システムからの情報に基づいて、充電スタンド内の充電器の充放電計画を作成し、当該充放電計画に従って指示を制御装置1012に対して行う。なお、充放電計画の生成手法は、第1の実施形態の蓄電装置103の充放電計画と同様として説明を省略する。
これにより、本実施形態の制御装置1012は、鉄道車両の運行ダイヤに基づいた当該鉄道車両でこれから発生する回生電力の予測値と、鉄道車両の運行ダイヤに基づいたこれから消費する負荷電力の予測値と、充電スタンド1001、1002を利用する公共交通機関の車両の運行ダイヤに基づいてこれから消費する負荷電力の予測値と、に基づいて、充電器1013及び電力変換器1011を制御する。
他の例としては、公共交通機関の車両で遅延が生じたことで、充電スタンドを利用するEVバスの運行ダイヤが変更された場合に、鉄道エネルギー管理システム130が、変更されたバス運行ダイヤを考慮して、充電スタンド内の充放電計画を再作成する。そして、制御装置1012は、再作成された充放電計画に基づいて、これから充電スタンド1001、1002でこれから消費する負荷電力の予測値を算出する。そして、制御装置1012は、算出した負荷予測値と、鉄道車両の運行ダイヤに基づいた当該鉄道車両でこれから発生する回生電力の予測値と、鉄道車両の運行ダイヤに基づいたこれから消費する負荷電力の予測値と、に基づいて、蓄電装置103が予め定められた充電率になるように充電及び放電制御を行う。さらに、制御装置1012は、変換器1011も制御する。
制御装置1012は、充電スタンド1001、1002の利用予約を行ったEV(自家用電気自動車)の予約状況に基づいた負荷電力の予測値を算出する。そして、制御装置1012は、算出された負荷電力の予測値に基づいて、充電器1013及び電力変換器1011を制御する。なお、充電スタンド1001、1002の制御装置1012が行う予測値に基づいた充電器1013及び電力変換器1011の制御手法は、第1の実施形態の蓄電システム101の制御装置104と同様の手法を用いても良い。
鉄道エネルギー管理システム130は、列車運行ダイヤの情報や鉄道運行管理システム131からの情報を参照し、例えば、充電スタンドの設置位置近傍で列車が減速を行う時間帯や、充電スタンドの設置位置近傍に列車が存在しない場合に、充電スタンド1001、1002の充電電力を増加するなど、鉄道変電所の電力ピークを避けるように充電スタンドの充電電力を制御することで、負荷の平準化や、充電スタンドによる充電に起因する電車線107の電圧降下の軽減を図ることもできる。
電力変換器1011は、電車線107の電圧をEV車両153の充電電圧に変換し、所定の電流を充電器1013から出力する。
充電器1013は、電車線107から供給された電力を利用して、EV車両153に搭載されたバッテリへの充電を行う。
本実施形態のエネルギー管理システムは、上述した構成を備えることで、蓄電システム101から遠方の地点や、線路沿線の複数の地点に充電スタンドの配置が可能となる。
本実施形態では、充電スタンド1001、1002の充電器1013の充電に要する負荷電力は、整流器108から電車線107を経由して供給されることとした。そして、鉄道エネルギー管理システム130は、充放電スタンドの負荷電力量の予測値と、列車の負荷電力量の予測値と、を加算したものを負荷電力量予測値として用いることで、上述した実施形態と同様の手法で、ピーク時間帯における受電電力量の削減を実現できる。
本実施形態では、複数の充電スタンド1001、1002を、鉄道線路近傍の道路沿いに設置している。そして、鉄道の電車線107を送電線として利用することで、複数の充電スタンド1001、1002に対して電力を供給できる。このような構成とすることで、充電スタンド1001、1002用の送電設備を敷設するためのコストを低減できる。
ところで、主要な鉄道駅は、バス路線など他の交通機関との結節点となる場合が多く、鉄道路線はインフラとして地域の重要な地点を結んでいることが多いため、鉄道路線と並走するように設置された自動車道路がバス路線となることも多い。
そこで、本実施形態では、バス路線として用いられる鉄道路線近傍に、EVバス向けの充電スタンドを設置することとした。これにより、充電スタンドへの送電設備の敷設コストを低減でき、地域の交通システムの利便性を向上させることができる。
なお、図10では示されていないが、鉄道路線の代わりに、第1の実施形態で示したLRT路線のトロリ線147に充電スタンドを接続してもよい。通常の鉄道と比べて、LRT車両用のトロリ線147は、一般的に道路交通により近接している場合が多く、LRT車両142への給電電圧も低いため、充電スタンドを柔軟に設置することが可能となる。
このように鉄道線路およびLRT線路近傍に設置された充電スタンド1001、1002には、電車線107やトロリ線147などを経由して、整流器108や蓄電システム101から電力が供給される。
鉄道エネルギー管理システム130は、各充電スタンド1001、1002が使用する負荷電力量、鉄道き電設備115及びLRTき電設備145の負荷電力量、蓄電システム101に回収可能な列車102の余剰回生電力量に基づいて、当日1日分又は少なくとも現在時刻以降の負荷電力量及び余剰回生電力量の予測値を算出する。そして、鉄道エネルギー管理システム130は、算出された負荷電力量及び余剰回生電力の時間推移に応じた予測値に基いて、時間ごと蓄電システム101、充電スタンド1001、1002の充放電量目標値の計画を生成する。そして、充電スタンド1001、1002内の制御装置1012は、時間帯毎の充放電量目標値に従って、電力変換器1011及び充電器1013を制御する。
蓄電システム101、充電スタンド1001、1002の充放電計画は、例えば図4に示されるようなSOCの目標値の1日分の時間推移等とする。
鉄道エネルギー管理システム130における、充電スタンド1001、1002の負荷電力量の予測値、並びに鉄道き電設備115及びLRTき電設備145の負荷電力量の予測値および回生電力量の予測値は、以下の手法で求めることが考えられる。
各充電スタンドにおける負荷電力量の予測値は、EVバス運行管理システム154から受信するEVバスの充電スケジュールに基づいて算出される。なお、充電スケジュールには、例えば、EV車両153の充電予定時刻、使用予定の充電スタンドの位置、予定された電力の使用量などの情報が含まれている。
また、鉄道エネルギー管理システム130は、鉄道やバスそれぞれの運行ダイヤを含む運用方法に基づいて、蓄電システム101や充電スタンド1001、1002の利用時間が考慮された、蓄電システム101などの充放電計画を作成してもよい。
例えば、朝の通勤ラッシュとなる時間帯では、当該時間帯の前にEVバスの蓄電装置を充電し、当該蓄電装置から供給される電力で運行させる。当該時間帯では、制御装置1012は、EVバスから充電要求がある場合でも、充電スタンド1001、1002の充電器1013を使用させないよう制御する。そして、当該時間帯では、蓄電システム101に蓄電された電力を、負荷電力量がピークとなる、鉄道き電設備115及びLRTき電設備145に供給する。
そして、朝の通勤ラッシュとなる時間帯を経過した後、列車の余剰回生電力を利用して蓄電システム101の充電を行うと共に、制御部1012は、充電スタンド1001、1002の充電器1013から適宜EVバスに充電を行うよう制御する。このように、朝の通勤ラッシュとなる時間帯において、充電スタンド1001、1002の使用を抑止するような充放電計画を生成し、制御部1012が当該充放電計画に従って充電器1013と電力変換器1011を制御することで、朝の通勤ラッシュとなるような、ピーク時間帯における受電電力量の削減をできる。
上述のように、鉄道エネルギー管理システム130により、鉄道システムで使用される負荷電力量および余剰回生電力量の予測値だけでなく、充電スタンド1001、1002の負荷電力量の予測値を考慮することで、充電スタンド1001、1002、及び蓄電システム101の最適な充放電計画を作成できる。これにより、受電電力量のピーク削減や電力コスト最小化などの効果を得ることができる。
上述した実施形態においては、システム間でエネルギーの相互利用が可能になったので、エネルギー利用の効率化を実現できる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。