JP2017155179A - 油性インクジェットインクセット - Google Patents

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Abstract

【課題】インクジェットヘッドを長期間放置した後でも良好な吐出安定性を可能とし、かつ、サテライト汚れを低減して良好な画質を提供することが可能な油性インクジェットインクセットを提供する。【解決手段】吐出口列を2列以上有するインクジェットヘッド用の、2種以上の液体組成物からなる油性インクジェットインクセットであって、前記2種以上の液体組成物の少なくとも1種が油性インクジェットインクであり、前記2種以上の液体組成物の初留点が各々独立に280℃以上であり、前記2種以上の液体組成物において各液体組成物間の比重差がいずれも0.005以上0.012以下である、油性インクジェットインクセットである。【選択図】なし

Description

本発明は、油性インクジェットインクセット及び記録物の製造方法に関する。
インクジェット記録方式は、流動性の高いインクジェットインクを微細なノズルから液滴として噴射し、ノズルに対向して置かれた記録媒体に画像を記録するものであり、低騒音で高速印字が可能であることから、近年急速に普及している。このようなインクジェット記録方式に用いられるインクとして、水を主溶媒として含有する水性インク、重合性モノマーを主成分として高い含有量で含有する紫外線硬化型インク(UVインク)、ワックスを主成分として高い含有量で含有するホットメルトインク(固体インク)とともに、非水系溶剤を主溶媒として含有する、いわゆる非水系インクが知られている。非水系インクは、主溶媒が揮発性有機溶剤であるソルベントインク(溶剤系インク)と、主溶媒が低揮発性あるいは不揮発性の有機溶剤である油性インク(オイル系インク)に分類できる。ソルベントインクは主に有機溶剤の蒸発によって記録媒体上で乾燥するのに対して、油性インクは記録媒体への浸透が主となって乾燥する。
油性インクは、記録媒体として紙を用いた場合、紙の構成成分であるパルプの繊維間結合に対する影響が小さいために、印刷後の紙のカールやコックリングが発生し難く、また、紙への浸透が速いために見かけ上の乾燥性に優れる。さらに、溶媒が揮発し難いため、ノズルにおける目詰まりが生じにくく、ヘッドクリーニングの頻度を少なくできるため、高速印刷への対応が可能であるという利点を有する。
一方、油性インクは、インク中の色材が紙中へ浸透するために高い印刷濃度を得ることが困難であり、また、通常は色材を固着させる成分を含有していないために、記録媒体の表面に色材が留まると、容易に脱落や転移が発生するという課題を有する。
また、油性インクジェットインクを用いて、インクジェットプリンターにより長時間にわたりプリントを行った場合に、インク原料に含まれる金属塩などにより、インクジェットヘッドのノズル近傍に固形物が蓄積して正常な吐出が妨げられ、画像不良を起こす場合がある。このような問題に対しては、インク中の特定の金属の含有量を一定の数値以下にする方法や、問題となる金属化合物を除去することなく、特定の顔料分散剤及び/または有機溶媒と、定着樹脂とを特定の構造を有する化合物を含有する有機溶媒に分散するインクの製造方法が提案されている(特許文献1及び2)。
特開2010−270220号公報 特開2011−089043号公報
油性インクについては、例えば、ブラックインクとシアンインクのように、異なる2種類のインクジェットインクを混合すると、顔料と分散剤の相互作用のバランスが崩れるなどの理由により、顔料凝集を引き起こすことがある。
そのため、従来は、インク同士が混ざり合わないように、1つのインクジェットヘッドには、1色のインクを吐出する印刷システムが、一般的に採用されていた。
しかし、印刷機の省スペース化などの観点から、油性インクジェットインクを用いたシステムにおいて、1つのインクジェットヘッドで2種以上の液体(例えば、2種以上のインク)を吐出するシステムが望まれている。
本発明者らは、1つのインクジェットヘッドで2種以上の液体を吐出するシステムの検討を進めたところ、経路中の気泡やノズルプレート上のゴミを除去し、正常な吐出を回復する目的で行う目的で一連のクリーニング動作を行った場合、ノズル近傍に凝集物が蓄積し、吐出不良を引き起こすことが分かった。具体的には、例えば、顔料を含む2種のインクを1つのインクジェットヘッドから吐出した後、クリーニング動作として、インク供給経路に圧力をかけ、インクジェットヘッドのノズル内部にきれいなインクを満たすとともに、ノズルからインクとともにインクに混入していた気泡やゴミをインクジェットヘッド表面(ノズルプレート上)に押し出し、インクジェットヘッド表面の堆積物をワイパー等でふき取るという一連の動作を行うと、2種のインクがノズルプレート上で混合して顔料が凝集し、ノズル近傍に凝集物が蓄積して吐出不良を引き起こす場合があることが分かった。特に、印刷機を長期間、たとえば室温で3か月放置した場合は、その後にクリーニング動作を実施しても、正常に吐出できないという問題が発生する場合があることも判明した。
また、このような問題は、2種以上のインクを用いた場合に限らず、インクとインク以外の液体(例えば処理液)を用いた場合にも起こりうる。また、インクとして、顔料を含むインクに限らず、染料を含むインクを用いた場合にも起こりうる。
また、インクジェット方式により画像を形成する際には、一般に、インクジェットヘッドの吐出口から吐出した液滴の、記録媒体上における着弾位置の精度が、画像の印刷品質を左右する。具体的には、吐出口から吐出された液滴は、一般に、主滴とその後ろに伸びる液柱との一群で飛翔するが、このうち、主滴は記録媒体上に画像を形成する主たる液滴であり、液柱は飛翔中に主滴から分離して複数の微小液滴(サテライト)に分裂する。このサテライトが主滴とは異なる位置に着弾することで、サテライト汚れ(サテライト(微小液滴)に起因して生じた画像の汚れ)となって画像の品質を低下させ得る。
そこで、本発明の実施形態は、油性インクジェットインクを含む2種以上の液体からなる油性インクジェットインクセットであって、吐出口列を2列以上有するインクジェットヘッドから2種以上の液体を吐出した場合でも、インクジェットヘッドのヘッド表面における凝集物の蓄積を低減し、これによりインクジェットヘッドを長期間放置した後でも良好な吐出安定性を可能とし、かつ、サテライト汚れを低減して良好な画質を提供することが可能な油性インクジェットインクセット、及び、この油性インクジェットインクセットを用いた印刷物の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の実施形態は、2種以上の液体組成物からなる油性インクジェットインクセットであって、前記2種以上の液体の少なくとも1種が油性インクジェットインクであり、前記2種以上の液体組成物の初留点が各々独立に280℃以上であり、前記2種以上の液体組成物において各液体組成物間の比重差がいずれも0.005以上0.012以下である、油性インクジェットインクセットに関する。また、本発明の実施形態は、このような油性インクジェットインクセットを用いた印刷物の製造方法に関する。
本発明の実施形態は、下記の油性インクジェットインクセット及び印刷物の製造方法を含む。
<1>吐出口列を2列以上有するインクジェットヘッド用の、2種以上の液体組成物からなる油性インクジェットインクセットであって、
前記2種以上の液体組成物の少なくとも1種が油性インクジェットインクであり、
前記2種以上の液体組成物の初留点が各々独立に280℃以上であり、
前記2種以上の液体組成物において各液体組成物間の比重差がいずれも0.005以上0.012以下である、
油性インクジェットインクセット。
<2>前記2種以上の液体の比重が各々独立に0.890以下である、<1>に記載の油性インクジェットインクセット。
<3>前記2種以上の液体組成物の80%留出温度が各々独立に300〜350℃である、<1>又は<2>に記載の油性インクジェットインクセット。
<4>吐出口列を2列以上有するインクジェットヘッドから2種以上の液体組成物を記録媒体に吐出することを含む印刷物の製造方法であって、
前記2種以上の液体組成物の少なくとも1つが油性インクジェットインクであり、
前記2種以上の液体組成物の初留点が各々独立に280℃以上であり、
前記2種以上の液体組成物において各液体組成物間の比重差がいずれも0.005以上0.012以下である、
印刷物の製造方法。
本発明の実施形態によれば、油性インクジェットインクを含む2種以上の液体組成物からなる油性インクジェットインクセットであって、吐出口列を2列以上有するインクジェットヘッドから2種以上の液体を吐出した場合でも、インクジェットヘッドのヘッド表面における凝集物の蓄積を低減し、これによりインクジェットヘッドを長期間放置した後でも良好な吐出安定性を可能とし、かつ、サテライトによる着弾不良(サテライト汚れ)を低減して良好な画質を提供することが可能なインクジェットインクセット、及び、この油性インクジェットインクセットを用いた印刷物の製造方法を提供することができる。
吐出口列を2列以上有するインクジェットヘッドの一例を備えたインクジェットヘッドユニットの一例の平面概略図である。 インクジェット印刷装置の一例の概略図である。 メンテナンスユニットの一例の分解斜視図である。
1.油性インクジェットインクセット
本発明の実施形態の油性インクジェットインクセットは、2種以上の液体組成物からなる油性インクジェットインクセットであって、前記2種以上の液体組成物の少なくとも1種が油性インクジェットインク(以下、「油性インク」と称する場合もある)であり、前記2種以上の液体組成物の初留点が各々独立に280℃以上であり、前記2種以上の液体組成物において各液体組成物間の比重差がいずれも0.005以上0.012以下である、油性インクジェットインクセットである。
実施形態のインクジェットインクセットを用いた場合、吐出口列を2列以上有する1つのインクジェットヘッドから2種以上の液体組成物を吐出した場合でも、上述のようなクリーニング動作による吐出口付近での凝集物の蓄積を低減させることが可能となる。したがって、インクジェットヘッドを長期間放置した後でも良好な吐出安定性を得ることができる。また、サテライト汚れを低減し、良好な画像を得ることができる。
なお、油性インクジェットインクセットを構成する2種以上の液体組成物は、そのうちの少なくとも1種が油性インクジェットインクであればとくに限定されない。例えば、実施形態の油性インクジェットインクセットは、2種以上の油性インクジェットインクからなるインクセットであってもよく、油性インクジェットインクと油性液体組成物との組み合わせを含むセットであってもよく、油性インクジェットインクと処理液との組み合わせを含むセットであってもよい。油性インクジェットインクに含まれる処理液は油性処理液であることが好ましい。
なお、2種以上の液体組成物とは、相互に異なる2種以上の液体組成物を意味する。ここで、「相互に異なる」とは、含まれる成分が相互に異なる場合に限らず、例えば、成分の種類は同じであるが、少なくとも一部の成分の含有量が異なる場合も包含される。
実施形態の油性インクジェットインクセットは、吐出口列を2列以上有するインクジェットヘッド用のインクジェットインクセットである。
吐出口列を2列以上有するインクジェットヘッドの一例を図1に示す。図1において、インクジェットヘッドは、2列の吐出口列を1つのノズルプレートの面上に備えている。
以下、図1をより詳細に説明する。図1において、インクジェットヘッドユニット3は、記録媒体Pの搬送方向(すなわち主走査方向と直行する方向)に2列の吐出口列が配置されたライン型の複数のインクジェットヘッド110a〜110f、112a〜112f及び114a〜114fを有する。インクジェットヘッド110a〜110fはそれぞれ、1つのノズルプレートに2つの吐出口列121及び123を有する。同様にインクジェットヘッド112a〜112fはそれぞれ、1つのノズルプレートに2つの吐出口列を有し、インクジェットヘッド114a〜114fはそれぞれ、1つのノズルプレートに2つの吐出口列を有する。
図1において、吐出口列121及び123はそれぞれ、千鳥状に配置された複数列からなっている。インクジェットヘッド112a〜112f及び114a〜114fの2つの吐出口列も、吐出口列121及び123と同様の構造を有している。このように、インクジェットヘッドにおいて、1つの吐出口列が、例えば千鳥状に配置された複数列からなるものであってもよいが、これに限定されない。
図1は、実施形態におけるインクジェットヘッドの一例を説明するものである。実施形態において、インクジェットヘッドは、図1に示されるようなインクジェットヘッドユニットに備えられていてもよいが、これに限定されない。
吐出口列を2列以上有するインクジェットヘッドを用いると、1つのインクジェットヘッドを用いて、吐出口列ごとに異なる2種以上の液体を吐出することが可能である。
一方、吐出口列を2列以上有するインクジェットヘッドから2種以上の液体を吐出した場合、クリーニング動作において、ノズルプレート上の2列以上の吐出口列を1つのワイパーで拭くと、2種以上の液体がノズルプレート上で混合して凝集物を生成し、ノズル近傍に凝集物が蓄積して吐出不良を引き起こす場合がある。実施形態のインクジェットインクセットを用いた場合、吐出口列を2列以上有する1つのインクジェットヘッドから2種以上の液体組成物を吐出した場合でも、このようなクリーニング動作による、吐出口付近での凝集物の蓄積を低減させることが可能となる。このため、インクジェットヘッドを長期間放置した後でも良好な吐出安定性を得ることができる。
実施形態の油性インクジェットインクセットに含まれる2種以上の液体組成物の初留点は、各々独立に280℃以上であることが好ましい。油性インクジェットインクセットに含まれる液体組成物のそれぞれの初留点が280℃以上である場合、これらの液体組成物は揮発しにくいため、これらの液体組成物がインクジェットヘッド表面で混合して凝集が生じても、インクジェットヘッド表面の付着物は流動性を有することが可能である。このため、クリーニング動作において、インクジェットヘッド表面の凝集物のふき取りが容易になり、インクジェットヘッドを長期間放置した後の良好な吐出安定性に寄与すると考えられる。
液体組成物の初留点は、290℃以上であることがより好ましく。例えば、油性インクジェットインクセットに含まれる液体組成物の1種以上またはすべての液体組成物の初留点が290℃以上であることが好ましい。
また、液体組成物の初留点は、裏抜けの抑制の観点から、350℃以下であることが好ましく、340℃以下であることがより好ましく、320℃以下であることがさらに好ましい。
液体組成物の初留点は、熱分析(TG)装置において、液体組成物の温度を23℃から500℃まで15℃/分で昇温させたときに、重量減少が始まった時点の温度である。
具体的には、熱分析装置としてTHERMO PLUS EVO2 差動型示差熱天秤 TG8121(株式会社リガク)を用い、セルとして、アルミニウム製液体試料パンおよび試料蓋(株式会社リガク製Item No.8580)を用いて行うことができる。測定サンプルは、試料蓋に細い針を使用してピンホール(実測値でφ150〜160μm)を開け、試料パンにサンプルを約10mg入れて、サンプルシーラー(株式会社リガク製Item No.8395D1)を用いて圧接してシールすることで作製することができる。
実施形態の油性インクジェットインクセットに含まれる2種以上の液体組成物間の比重差は、いずれも0.005以上0.012以下であることが好ましい。
油性インクジェットインクセットに含まれる2種以上の液体組成物間の比重差がいずれも0.005以上0.012以下であるとは、油性インクジェットインクセットに含まれるすべての液体組成物中において、もっとも比重が高い液体組成物ともっとも比重が低い液体組成物との比重の差が0.005以上0.012以下であることを意味する。例えば、油性インクジェットインクセットが、液体組成物A及びBの2種の液体組成物からなる場合には、液体組成物A及びBの比重差が0.005以上0.012以下であることを意味し、また、油性インクジェットインクセットが、液体組成物A、B及びCの3種の液体組成物からなる場合には、液体組成物A及びBの比重差、液体組成物A及びCの比重差、及び液体組成物B及びCの比重差が、いずれも0.005以上0.012以下であることを意味する。
各液体組成物間の比重差がいずれも0.005以上である場合、液体組成物同士は混合し難くなる。このため、クリーニング動作を行っても、インクジェットヘッド表面での凝集物の生成及び蓄積が抑制されて、凝集物のふき取りを容易にし、インクジェットヘッドを長期間放置した後の良好な吐出安定性に寄与すると考えられる。
一方、各液体組成物間の比重差がいずれも0.012以下である場合、インクジェットヘッドから2種以上の液体組成物を吐出する際、液体組成物間の吐出速度の差が小さいことから、サテライトによる着弾不良が低減され、サテライト汚れが低減して、良好な画質を得やすい。
なお、液体組成物間の吐出速度の差が著しく大きい場合には、吐出速度が速い方の液体において、サテライトによる着弾不良が起きやすく、サテライト汚れによる画像不良が発生しやすい。一方、吐出速度が遅い方の液体においても、吐出速度が遅すぎることにより着弾位置精度が低下しやすく、画像不良を起こしやすい。
各液体組成物間の比重差は、サテライト汚れの低減の点から、0.005以上0.009以下であることがより好ましい。
実施形態の油性インクジェットインクセットにおいて、液体組成物の比重は、それぞれ独立に0.890以下であることが好ましい。液体組成物の比重が、それぞれ独立に0.890以下である場合、サテライトによる着弾不良がより低減されやすい。
液体組成物の比重は、23℃で測定した値であり、例えば、ポータブル密度比重計DA−130(京都電子工業株式会社製)にて測定することができる。
液体組成物の比重は、0.860〜0.885であることがより好ましく。例えば、油性インクジェットインクセットに含まれる液体組成物の1種以上またはすべての液体組成物の比重が0.860〜0.885であることが好ましい。
実施形態の油性インクジェットインクセットに含まれる2種以上の液体組成物の80%留出温度は、各々独立に300℃〜350℃であることが好ましい。油性インクジェットインクセットに含まれる液体組成物の80%留出温度がいずれも300℃〜350℃である場合、短期放置後の吐出安定性を向上させやすく、裏抜けを改善しやすい。
液体組成物の80%留出温度は、例えば、310℃〜340℃であってもよい。例えば、油性インクジェットインクセットに含まれる液体組成物の1種以上またはすべての液体組成物の80%留出温度が310℃〜340℃であってもよい。
液体組成物の80%留出温度は、熱分析(TG)装置において、液体組成物の温度を23℃から500℃まで15℃/分で昇温させたときの重量減少率を100%とした場合の、80%減少した時点の温度である。熱分析装置、セル、サンプル作製方法は、上記の初留点測定の方法において説明された通りである。
液体組成物の初留点及び80%留出温度は、例えば、液体組成物に含まれる非水系溶剤の種類、組合せ、及び量などを選択することで調整することができる。
液体組成物の初留点を容易に280℃以上にする観点からは、例えば、液体組成物に含まれるすべての非水系溶剤において、沸点又は初留点は、280℃以上であることが好ましく、290℃以上であることがより好ましい。
なお、沸点が280℃以上の非水系溶剤には、沸点を示さず280〜500℃で分解する非水系溶剤も含まれる。また、沸点が290℃以上の非水系溶剤には、沸点を示さず290〜500℃で分解する非水系溶剤も含まれる。
液体組成物の80%留出温度を300〜350℃にする観点からは、例えば、液体組成物は、沸点又は初留点が300〜350℃の非水系溶剤を少なくとも1種含むことが好ましい。なお、沸点が300〜350℃の非水系溶剤には、沸点を示さず300〜350℃で分解する非水系溶剤も含まれる。また、液体組成物は、蒸留終点が350℃以下の非水系溶剤が80%以上で構成されていることが好ましい。
液体組成物の比重は、例えば、液体組成物に含まれる顔料の種類及び量、非水系溶剤の種類、組合せ、及び量などを調整することができる。より具体的には、例えば、脂肪酸エステル系溶剤などの極性有機溶剤と石油系炭化水素溶剤などの非極性有機溶剤の含有比率などによって調整することができる。
[油性インクジェットインク]
実施形態において、油性インクジェットインクセットを構成する2種以上の液体組成物の少なくとも1種は油性インクジェットインクである。
油性インクジェットインクは、一般に、顔料または染料などの色材及び非水系溶剤を含む。以下、実施形態の油性インクジェットインクに含まれ得る成分について説明するが、下記は本発明を限定するものではない。また、例えば、下記に説明される以外の成分が油性インクジェットインクに含まれていてもよい。
<色材>
実施形態において、油性インクジェットインクは、色材として顔料または染料を含んでいてもよい。
染料としては、アゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノンイミン染料、キサンテン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、フタロシアニン染料、金属フタロシアニン染料等の油溶性染料を挙げることができる。
これらの染料は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
使用し得る顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、多環式顔料及び染付レーキ顔料等の有機顔料並びに無機顔料を挙げることができる。
アゾ顔料としては、溶性アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料及び縮合アゾ顔料等が挙げられる。フタロシアニン顔料としては、金属フタロシアニン顔料及び無金属フタロシアニン顔料等が挙げられる。多環式顔料としては、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキシサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料及びジケトピロロピロール(DPP)等が挙げられる。
無機顔料としては、代表的にはカーボンブラック及び酸化チタン等が挙げられる。
これらの顔料は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
<顔料分散剤>
実施形態において、油性インクジェットインクが顔料を含む場合、油性インク中における顔料の分散を良好にするために、顔料分散剤を含有することが好ましい。
顔料分散剤としては、顔料を非水系溶剤に安定して分散できるものであれば特に限定されないが、例えば、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、ビニルピロリドンと長鎖アルケンとの共重合体、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリエステルポリアミン等が好ましく用いられる。
顔料分散剤の市販品としては、アイ・エス・ピー・ジャパン株式会社製「アンタロンV216(ビニルピロリドン・ヘキサデセン共重合体)」(商品名)、日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース13940(ポリエステルアミン系)、17000、18000(脂肪酸アミン系)、11200、24000、28000」(いずれも商品名)、BASFジャパン株式会社製「エフカ400、401、402、403、450、451、453(変性ポリアクリレート)、46、47、48、49、4010、4055(変性ポリウレタン)」(いずれも商品名)、楠本化成株式会社製「ディスパロンKS−860、KS−873N4(ポリエステルのアミン塩)」(いずれも商品名)、第一工業製薬株式会社製「ディスコール202、206、OA−202、OA−600(多鎖型高分子非イオン系)」(いずれも商品名)等が挙げられる。
顔料分散剤は、油性インクジェットインク中、顔料に対し0.2〜1.0の質量比で含まれていることが好ましい。顔料分散剤のインク総量における含有量としては、0.5〜15質量%であることが好ましく、1〜5質量%であることがより好ましい。
<顔料誘導体>
実施形態において、油性インクジェットインクが顔料を含む場合、油性インクジェットインク中における顔料の分散を良好にするために、顔料誘導体(「シナジスト」と称される場合もある)を含有してもよい。
顔料誘導体としては、顔料骨格に極性官能基が導入されたものであればよい。
顔料誘導体の好ましい例としては、フタロシアニン系、アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系等の顔料の骨格に、カルボキシル基、スルホン酸基、アミノ基、ニトロ基、酸アミド基、カルボニル基、カルバモイル基、フタルイミド基、スルホニル基等の官能基を付加したもの、及びその塩等が挙げられる。具体的には、銅フタロシアニンブルーにアルキルアミノメチル基等を導入した塩基性フタロシアニン顔料誘導体、スルホン酸基、その金属塩またはアルキルアミン塩等を導入した酸性フタロシアニン顔料誘導体、フタルイミド基等を導入した中性銅フタロシアニン顔料誘導体、両末端ベンゼン環の片側だけに官能基が導入された非対称型ジスアゾイエロー顔料誘導体、脂肪族アミンと反応させたSchiff塩基型ジスアゾイエロー顔料誘導体等が挙げられる。また、キナクリドン顔料誘導体、アントラキノン顔料誘導体等の縮合多環顔料誘導体は、フタロシアニン顔料誘導体に導入されるものと同様の官能基を導入したものを好ましく挙げることができる。これらは単独で、または組み合わせて用いることができる。
顔料誘導体の市販品としては、日本ルーブリゾール株式会社製「ソルスパース5000(フタロシアニン顔料誘導体)」、「ソルスパース12000(フタロシアニン顔料誘導体)」、「ソルスパース22000」、ビックケミー・ジャパン株式会社製「BYK−SYNERGIST2100(フタロシアニン顔料誘導体)」、「BYK−SYNERGIST2105(イエロー顔料誘導体)」、BASFジャパン株式会社製「エフカ6745」(フタロシアニン顔料誘導体)、「エフカ6750(アゾ顔料誘導体)」等を好ましく挙げることができる。
顔料誘導体は、用いる顔料と同一または類似した骨格を有するものを好ましく用いることができる。例えば、顔料としてカーボンブラックや銅フタロシアニンブルーを用いる場合は、顔料誘導体としてフタロシアニン顔料誘導体を好ましく用いることができる。
<非水系溶剤>
実施形態の油性インクジェットインクは、非水系溶剤として、非極性有機溶剤及び極性有機溶剤の何れも使用してもよい。これらは、単独で使用してもよく、組み合わせて使用することもできる。
なお、本発明において、非水系溶剤としては、1気圧20℃において同容量の水と均一に混合しない非水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。
非極性有機溶剤としては、脂肪族炭化水素溶剤、脂環式炭化水素溶剤、芳香族炭化水素溶剤等の石油系炭化水素溶剤を好ましく挙げることができる。
脂肪族炭化水素溶剤及び脂環式炭化水素溶剤としては、パラフィン系、イソパラフィン系、ナフテン系等の非水系溶剤を挙げることができ、市販品としては、70−S、80−S、90−S、100−S、120−S、150−S、260−S、350−S、No.350(いずれも三光化学工業株式会社製の商品名)、AFソルベント5号、AFソルベント6号(いずれもJX日鉱日石エネルギー株式会社製の商品名)等を好ましく挙げることができる。
芳香族炭化水素溶剤としては、グレードアルケンL、グレードアルケン200P(いずれもJX日鉱日石エネルギー株式会社製の商品名)等を好ましく挙げることができる。
石油系炭化水素溶剤の蒸留初留点は、280℃以上であることが好ましく、290℃以上であることがより好ましい。蒸留初留点はJIS K0066「化学製品の蒸留試験方法」に従って測定することができる。
極性有機溶剤としては、脂肪酸エステル系溶剤、二塩基酸エステル系溶剤、高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤等を好ましく挙げることができる。例えば、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸ヘキシル、パルミチン酸イソオクチル、パルミチン酸イソステアリル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸ブチル、オレイン酸ヘキシル、リノール酸メチル、リノール酸エチル、リノール酸イソブチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソオクチル、イソステアリン酸イソプロピル、ピバリン酸2−オクチルデシル、大豆油メチル、大豆油イソブチル、トール油メチル、トール油イソブチル等の1分子中の炭素数が13以上、好ましくは16〜30の脂肪酸エステル系溶剤;ジブチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルフタレート等の1分子中の炭素数が10以上、好ましくは14〜30の二塩基酸エステル系溶剤;イソミリスチルアルコール、イソパルミチルアルコール(イソヘキサデカノール)、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、イソエイコシルアルコール(イソエイコサノール)、デシルテトラデカノール等の1分子中の炭素数が6以上、好ましくは12〜20の高級アルコール系溶剤;ラウリン酸、イソミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、α−リノレン酸、リノール酸、オレイン酸、イソステアリン酸等の1分子中の炭素数が12以上、好ましくは14〜20の高級脂肪酸系溶剤等が挙げられる。
脂肪酸エステル系溶剤、二塩基酸エステル系溶剤、高級アルコール系溶剤、高級脂肪酸系溶剤等の極性有機溶剤の沸点は、280℃以上であることが好ましく、290℃以上であることがより好ましい。
なお、沸点が280℃以上の非水系溶剤には、沸点を示さず280℃以上で分解する非水系溶剤も含まれる。また、沸点が290℃以上の非水系溶剤には、沸点を示さず290℃以上で分解する非水系溶剤も含まれる。
これらの非水系溶剤は、単独で使用してもよく、単一の相を形成する限り2種以上を組み合わせて使用することもできる。
また、油性インクジェットインクには、例えば、非水溶性有機溶剤とともに、使用する非水溶性有機溶剤と単一相を形成できる範囲で非水溶性有機溶剤以外の有機溶剤、例えばテトラエチレングリコールモノブチルエーテル等の1分子中の炭素数が12以上のグリコールエーテル系溶剤等を含ませてもよい。非水溶性有機溶剤以外の有機溶剤の沸点は、280℃以上であることが好ましく、290℃以上であることがより好ましい。なお、非水溶性有機溶剤以外の有機溶剤であって沸点が280℃以上のものには、沸点を示さず280℃以上で分解するものも含まれる。また、非水溶性有機溶剤以外の有機溶剤であって沸点が290℃以上のものには、沸点を示さず290℃以上で分解するものも含まれる。
これらの非水溶性有機溶剤以外の有機溶剤を含ませる場合は、インク中の含有量としては50質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましく、10質量%未満であることがよりいっそう好ましい。
実施形態において、油性インクジェットインクの粘度は、インクジェットヘッドの吐出口径や吐出環境等によってその適性範囲は異なるが、一般に、23℃において1〜30mPa・sであることが好ましく、5〜15mPa・sであることがより好ましい。
[処理液]
実施形態において、油性インクジェットインクセットを構成する2種以上液体組成物の少なくとも1種が処理液であってもよい。
実施形態において、処理液は、印刷濃度の向上、裏抜けの抑制、耐擦過性、耐候性、光沢性の付与または低減等の各種性能改善を目的に用いられる油性の液体である。処理液は、処理剤および非水系溶剤を含む油性処理液であってもよく、処理液全体として作用する油性処理液であってもよい。
処理液は、いわゆる前処理液であってもよく、後処理液であってもよい。換言すれば、油性インクよりも前に吐出する側、すなわち印刷媒体を搬送する方向の上流側に位置する吐出口列から吐出されてもよく、後に吐出する側に位置する吐出口列から吐出されてもよい。
処理液は、同一インクジェットヘッドの他の吐出口列から吐出されるインクによって形成される画像を改善する目的で用いられてもよい。あるいは、処理液は、吐出されるインクジェットヘッドとは異なるインクジェットヘッドから吐出されるインクの画像に対する処理液であってもよい。また、その両方を目的としていてもよい。
複数の処理液を備え、その複数の処理液を組合せることで作用する場合では、複数の処理液が同一のインクジェットヘッド内の別の吐出口から吐出されていてもよいし、別のインクジェットヘッドから吐出されていてもよい。
例えば、図1に示すインクジェットヘッド110a〜110fそれぞれからインクと処理液とを吐出する場合、処理液が前処理液の場合には、上流側の吐出口列121から処理液が吐出される構成としてもよく、処理液が後処理液の場合には、下流側の吐出口123から処理液が吐出される構成としてもよい。
処理液は、処理剤を含むことが好ましい。処理剤としては、物理的または化学的な作用により各種性能を改善する機能を有するものであればよい。例えば、α,β−不飽和カルボニル化合物、一級アミン化合物、二級アミン化合物、反応性官能基を含む化合物、多価金属イオンを含む化合物、アニオン性官能基を有する高分子化合物、カチオン性官能基を有する高分子化合物、固体樹脂粒子、体質顔料、架橋剤などを挙げることができる。
α,β−不飽和カルボニル化合物の例としては、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート等の、炭素数4〜12の脂肪族又は脂環族2価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル;エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート等の、アルキレンオキサイド基をもつ(メタ)アクリル酸ジエステル;エトキシ化グリセリントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等の(メタ)アクリル酸トリエステル;ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等の(メタ)アクリル酸テトラエステル、などを挙げることができる。α,β−不飽和カルボニル化合物は、後処理液に用いてもよく前処理液に用いてもよい。
α,β−不飽和カルボニル化合物は、インクの種類(インクに含まれる成分)にもよるが、印刷媒体上でインクを増粘させて色材を印刷媒体の表面に留める作用が働くことがあるので、印刷濃度を高めるために用いることができる。
一級アミン化合物、二級アミン化合物の例としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、フルオレンジアミン、牛脂プロピレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン等のジアミン類;ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリアルキレンイミン、ポリビニルピリジン、ポリジアリルアミン、ポリアミドポリアミン、ポリアミジン、ポリアクリル酸ヒドラジン等の1分子中に一級アミン又は二級アミンを多数もつ高分子アミン類、などを挙げることができる。一級アミン化合物及び二級アミン化合物は、前処理液に用いることもできるし、後処理液に用いることもできる。
一級アミン化合物及び二級アミン化合物は、インクの種類(インクに含まれる成分)にもよるが、印刷媒体上でインクと混合して反応すると架橋構造が形成されゲル化が生じ、色材の凝集が促進されて印刷媒体の表面に留める作用が働くことがあるので、印刷濃度を向上させるために用いることができる。
反応性官能基を含む化合物の例としては、活性水素当量が50〜300のポリアミドや、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ポリアミドポリアミン、メンタンジアミン等のアミノ基含有化合物;トリレンジイソシアネート、1,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート基含有化合物;ドデシルアルデヒド、ノニルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド等のアルデヒド基含有化合物;ジビニルベンゼン、N−ビニルホルムアミド等のビニル基含有化合物;1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基含有化合物、などを挙げることができる。反応性官能基を含む化合物は、前処理液に用いることが好ましい。
これら反応性官能基を含む化合物は、インクの種類(インクに含まれる成分)にもよるが、印刷媒体上でインク滴を凝集させて印刷媒体への浸透を抑制する作用が働くことがあるので、裏抜けを抑制して印刷濃度を高めるために用いることができる。
多価金属イオンを含む化合物の例としては、Al、Zn、Zrなどの金属石鹸やキレート化合物、などを挙げることができる。多価金属イオンを含む化合物は、前処理液に用いることが好ましい。
多価金属イオンを含む化合物は、インクの種類(インクに含まれる成分)にもよるが、印刷媒体上でインク成分とキレート結合すなわちキレート環を形成してゲル化し、印刷媒体への浸透を抑制する作用や印刷媒体に定着させる作用が働くことがあるので、裏抜けを抑制して印刷濃度を高めたり、優れた耐擦過性を得るために用いることができる。
アニオン性官能基を含む高分子化合物としては、その構成モノマーの1つとして下記のアニオン性官能基を有する構成モノマーを用いたものが挙げられる。すなわち、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基を有するモノマー;スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、2-アクリルアミド−2-メチルプロパンスルホン酸等のスルホ基を有するモノマー;モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート等のリン酸基を有するモノマー;硝酸基を有するモノマー;炭酸基を有するモノマー、などを構成モノマーの1つとする高分子化合物を挙げることができる。また、アニオン性官能基を含む高分子化合物は、後処理液に用いてもよく前処理液に用いてもよい。
これらのアニオン性官能基を含む高分子化合物は、インクの種類(インクに含まれる成分)にもよるが、印刷媒体上でインク成分と反応しゲル化することで色材の印刷媒体への浸透が抑制される作用が働くことがあるので、印刷濃度の低下や裏抜けを防止するために用いることができる。
カチオン性官能基を含む高分子化合物としては、その構成モノマーの1つとして下記のカチオン性官能基を有する構成モノマーを用いたものが挙げられる。すなわち、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シラン(アミノシラン)、などを構成モノマーの1つとする高分子化合物を挙げることができる。また、カチオン性官能基を含む高分子化合物は、後処理液に用いてもよく前処理液に用いてもよい。
これらのカチオン性官能基を含む高分子化合物は、インクの種類(インクに含まれる成分)にもよるが、印刷媒体上でインク成分と反応しゲル化することで色材の印刷媒体への浸透が抑制される作用が働くことがあるので、印刷濃度の低下や裏抜けを防止するために用いることができる。
固体樹脂粒子の例としては、アルキルフェノール樹脂;ポリアミド樹脂;ポリビニルアルコール;ニトロセルロース等のセルロース系樹脂;ブチラール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂;(メタ)アクリル系樹脂;スチレン(メタ)アクリル系樹脂;スチレンマレイン酸樹脂とそのエステル化物;リン酸エステル化ポリビニルアルコール、リン酸エステル化ポリビニルアセタール等のリン酸エステル化樹脂;ニトロセルロース、アセチルニトロセルロース、カルボキシメチルセルロース硝酸エステル等の硝酸エステル化樹脂、などを挙げることができる。
これらの固体樹脂粒子は、インクの種類(インクに含まれる成分)にもよるが、印刷物に皮膜を形成する作用が働くことがあるので、印刷物の耐擦過性を高めるために用いることができる。また、固体樹脂粒子は、後処理液に用いることが好ましい。
体質顔料の例としては、タルク、珪藻土、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、アルミナホワイト、シリカ、カオリン、マイカ、酸性白土、活性白土、ベントナイト、などを挙げることができる。
これら体質顔料は、インクの種類(インクに含まれる成分)にもよるが、印刷媒体の表面を目止めして色材の浸透が抑制される作用が働くことがあるので、印刷濃度を向上させ、裏抜けを低減するとともに滲みを抑制するために用いることができる。また、体質顔料は、前処理液に用いることもできるし、後処理液に用いることもできる。
架橋剤の例としては、カルボジイミド系化合物、アジリジン系化合物、金属キレート系化合物、イソシアネート系化合物、メラミン系化合物、エポキシ系化合物、オキサゾリン系化合物、尿素系化合物、ポリアミン系化合物、ポリエチレンイミン系化合物、アクリルアミド系化合物、などを挙げることができる。
これらの架橋剤は、インクの種類(インクに含まれる成分)にもよるが、印刷物に皮膜を形成する作用が働くことがあるので、印刷物の耐擦過性や耐候性を高めるために用いることができる。架橋剤は、前処理液に用いることもできるし、後処理液に用いることもできる。
処理液に含まれるその他の成分としては、例えば、油性インクに用いられ得る成分として記載したもののうち、非水系溶剤などの、色材以外の成分として記載されたものを用いることができ、それらの成分の好ましい範囲や具体例も、油性インクに用いられ得る成分として記載されたものと同様である。また、処理液の粘度の好ましい範囲も、油性インクジェットインクの粘度として記載された範囲と同様である。
2.印刷物の製造方法
実施形態の印刷物の製造方法は、吐出口列を2列以上有するインクジェットヘッドから2種以上の液体組成物を記録媒体に吐出することを含む印刷物の製造方法であって、前記2種以上の液体組成物の少なくとも1つが油性インクジェットインクであり、前記2種以上の液体組成物の初留点が各々独立に280℃以上であり、前記2種以上の液体組成物において各液体組成物間の比重差がいずれも0.005以上0.012以下である、印刷物の製造方法である。
実施形態の印刷物の製造方法によれば、吐出口列を2列以上有する1つのインクジェットヘッドから2種以上の液体組成物を吐出した場合でも、上述のようなクリーニング動作による、吐出口付近での凝集物の蓄積を低減させることが可能となる。このため、インクジェットヘッドを長期間放置した後でも良好な吐出安定性を得ることができる。
<油性インクジェットインクセット>
実施形態の印刷物の製造方法においては、油性インクジェットインクセットとして、上述の油性インクジェットインクセットを用いることができる。
<記録媒体>
実施形態において、記録媒体は、特に限定されるものではなく、普通紙、コート紙、特殊紙等の印刷用紙、布、無機質シート、フィルム、OHPシート等、これらを基材として裏面に粘着層を設けた粘着シート等を用いることができる。これらの中でも、インクの浸透性の観点から、普通紙、コート紙等の印刷用紙を好ましく用いることができる。
ここで、普通紙とは、通常の紙の上にインクの受容層やフィルム層等が形成されていない紙である。普通紙の一例としては、上質紙、中質紙、PPC用紙、更紙、再生紙等を挙げることができる。普通紙は、数μm〜数十μmの太さの紙繊維が数十から数百μmの空隙を形成しているため、インクが浸透しやすい紙となっている。
また、コート紙としては、マット紙、光沢紙、半光沢紙等のインクジェット用コート紙や、いわゆる塗工印刷用紙を好ましく用いることができる。ここで、塗工印刷用紙とは、従来から凸版印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等で使用されている印刷用紙であって、上質紙や中質紙の表面にクレーや炭酸カルシウム等の無機顔料と、澱粉等のバインダーを含む塗料により塗工層を設けた印刷用紙である。塗工印刷用紙は、塗料の塗工量や塗工方法により、微塗工紙、上質軽量コート紙、中質軽量コート紙、上質コート紙、中質コート紙、アート紙、キャストコート紙等に分類される。塗工印刷用紙は、普通紙、インクジェット用コート紙と比較して紙表面の空隙が少ないため、インクの浸透が遅く、インク成分が紙表面に留まりやすい。そのため、実施形態による油性インクジェットインクは、塗工印刷用紙に対する定着性を向上させることに適している。
<インクジェットヘッド>
実施形態の印刷物の製造方法において用いられる、吐出口列を2列以上有するインクジェットヘッドについては、上記油性インクジェットインクセットの説明において記載したとおりである。例えば、図1中に示されるインクジェットヘッドを用いてもよいが、これに限定されない。
<インクジェット印刷装置>
実施形態の印刷物の製造方法において用いることができるインクジェット印刷装置の一例を、図を用いて説明する。しかし、本発明はこれに限定されない。
図2は、実施形態の印刷物の製造方法において用いられ得るインクジェット印刷装置の一例の概略構成図である。図3はメンテナンスユニットの一例の分解斜視図である。
図2のインクジェット印刷装置1は、搬送部2と、インクジェットヘッドユニット3と、メンテナンスユニット4とを備える。
搬送部2は、インクジェットヘッドユニット3に対向して設けられた搬送ベルト21と、搬送ベルト21を周回駆動させる駆動ローラ22と、駆動ローラ22に従動する従動ローラ23,24,25とを備える。
搬送ベルト21は、駆動ローラ22および従動ローラ23,24,25に掛け渡され、印刷時において、駆動ローラ22の駆動により無端移動し、左側に設けられた図示しない給紙台から供給される用紙を保持して搬送する。
搬送部2は、印刷時における位置である印刷位置と、その下方の退避位置との間で移動可能に構成されている。搬送部2の退避位置への移動は、インクジェットヘッドユニット3のクリーニング(メンテナンス)を行う際に、メンテナンスユニット4を搬送部2とインクジェットヘッドユニット3との間に移動させるために行われる。
インクジェットヘッドユニット3は、ライン型のインクジェットヘッド31を有し、搬送ベルト21により搬送される用紙にインクを吐出して画像を印刷するものである。インクジェットヘッド31は、吐出口列を2列以上有するインクジェットヘッドであり、搬送部2の上方において、左右方向に所定間隔で配列される。
メンテナンスユニット4は、インクジェットヘッド31において吐出口が形成されているノズルプレートの表面のクリーニングを行うものである。メンテナンスユニット4は、印刷時には、図2において実線で示す待機位置に配置される。待機位置は、搬送部2の右側の下方にある。メンテナンスユニット4は、メンテナンス動作を行う際には、図2において破線で示すメンテナンス位置に移動される。メンテナンス位置は、搬送部2とインクジェットヘッド31との間にある。
図3に示すように、メンテナンスユニット4は、インク受け部材41と、駆動部42と、ワイパ部43と、図示しない移動モータ及び上下モータとを備える。なお、図3は、メンテナンスユニット4がメンテナンス位置に配置された状態における図である。
インク受け部材41は、クリーニングよって除去されたインク等を受けるものである。インク受け部材41は、メンテナンスユニット4の各部材を保持する。インク受け部材41は、直方体形状に形成されている。インク受け部材41の中央部には、インク等を受けるための凹部41aが形成されている。凹部41aは、平面視にて、インクジェットヘッド31が配置されている領域よりも大きくなるように形成されている。インク受け部材41の上側は、開口されている。
駆動部42は、メンテナンス時にワイパ部43を前後方向に移動させるものである。駆動部42は、ワイパ駆動モータ421と、駆動ベルト422と、1対の駆動プーリ423a,423bと、1対のネジ歯車424a,424bとを備える。ワイパ駆動モータ421は、出力ギヤ421aを有する。
ワイパ部43は、メンテナンス時において、インクジェットヘッド31のインクジェットヘッド表面(ノズルプレート)をワイプして、インクジェットヘッド表面に付着したインク等を除去するものであり、取付台431と、8枚のワイパ432とを備える。
取付台431は、ワイパ432が取り付けられるものであり、前後方向に細長い角柱状の部材により構成されている。取付台431には、1対のネジ孔431a,431bが形成されている。ネジ孔431a,431bには、それぞれネジ歯車424a,424bが貫通され、かつ、螺合されている。これにより、ネジ歯車424a,424bが回転されると、取付台431は前後方向に移動する。
ワイパ432は、インクジェットヘッド31のノズルプレート(インクジェットヘッド表面)を摺動することによってインク等を除去する。ワイパ432は、弾性変形可能なゴム等の材料で構成されている。ワイパ432を構成する材料は、ノズル面を破損させない程度の弾力を有する材料であることが好ましい。ワイパ432は、長方形の薄板状に形成されている。
ワイパ432の上端部は、メンテナンス位置において、インクジェットヘッドド31のノズルプレートよりも高くなるように配置されている。これにより、ワイパ432は、前後方向に移動されてインクジェットヘッドド31と接すると、弾性変形されてノズルプレートを摺動する。
クリーニング動作では、例えば、インクジェットヘッド31へインクなどの液体組成物を供給する経路を加圧することによりインクジェットヘッドの吐出口から液体組成物を押し出す(所謂パージ)。その後、ワイパ駆動モータ421を駆動させることにより、ワイパ432を移動させて、インクジェットヘッド31のワイプを行う。
ワイパ駆動モータ421が駆動されると、ワイパ駆動モータ421の回転駆動力が、出力ギヤ421a、駆動ベルト422、駆動プーリ423a,423bを伝達して、ネジ歯車424a,424bを回転させる。この結果、ワイパ432が、ネジ歯車424a,424bに螺合されている取付台431とともに後方へと移動する。ワイパ432の上部がインクジェットヘッドと接触する位置まで移動すると、ワイパ432はインクジェットヘッド31に押圧されて弾性変形する。この状態でさらにワイパ432が後方へ移動すると、ワイパ432の後面が、インクジェットヘッドのノズルプレートを摺動する。
このように行われるワイプにより、ノズルプレートに付着したインクなどの液体組成物やゴミが除去される。
実施形態の油性インクジェットインクセットを用いた場合には、1つのインクジェットヘッドから2種以上の液体組成物を吐出し、クリーニング動作において、吐出口付近でインクジェットヘッドのノズルプレートで2種以上の液体が混合しても、インクジェットヘッドの吐出口付近での凝集物の蓄積を抑制させることが可能である。このためインクジェットヘッドを長期間放置した後でも良好な吐出安定性を得ることができる。
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[油性インクジェットインク及び油性処理液の調製及び物性値の測定]
表1〜6に記載される成分を混合し、ビーズミル(シンマルエンタープライズ製「ダイノーミル マルチラボ」、直径0.5mmのジルコニアビーズを使用)により60分間分散した。その後、得られた混合物を、孔径5μmのメンブレンフィルターに通して、油性インクジェットインクK1〜K17、C1〜C12、M1及びY1、油性処理液1を調製した。
油性インクジェットインクK1〜K17、C1〜C12、M1及びY1、油性処理液1は、それぞれ表1〜6中では、インクK1〜K17、C1〜C12、M1及びY1、処理液1として示される。
各油性インクジェットインクについて、下記に示す方法で物性値(比重、初留点及び80%留出温度)を測定した。結果を表1〜6に示す。
<比重>
各油性インクジェットインクの比重はポータブル密度比重計DA−130(京都電子工業株式会社製)にて23℃で測定した。
<初留点>
各油性インクジェットインクの初留点は、熱分析(TG)装置において、油性インクジェットインクの温度を23℃から500℃まで15℃/分で昇温させたときに、重量減少が始まった時点の温度とした。
熱分析装置としてTHERMO PLUS EVO2 差動型示差熱天秤 TG8121(株式会社リガク)を用い、セルとして、アルミニウム製液体試料パンおよび試料蓋(株式会社リガク製Item No.8580)を用いた。測定サンプルは、試料蓋に細い針を使用してピンホール(実測値でφ150〜160μm)を開け、試料パンにサンプルを約10mg入れて、サンプルシーラー(株式会社リガク製Item No.8395D1)を用いて圧接してシールすることで作製した。
<80%留出温度>
各油性インクジェットインクの80%留出温度は、熱分析(TG)装置において、液体組成物の温度を23℃から500℃まで15℃/分で昇温させたときの重量減少率を100%とした場合の、80%減少した時点の温度とした。熱分析装置、セル、サンプル作製方法は、上記の初留点測定と同じである。
[インクセットの調製及び評価]
調製した油性インクジェットインクK1〜K17、C1〜C12、M1及びY1、処理液1を用いて、表6〜10に示す2種の液体の組合せを、実施例1〜28及び比較例1〜9のインクセットとした。これらのインクセットについて、下記の評価を行った。結果を表7〜11に示す。表7〜11において、油性インクジェットインクK1〜K17、C1〜C12、M1及びY1、油性処理液1は、それぞれ、K1〜K17、C1〜C12、M1及びY1、処理液1として示される。
<長期放置後の吐出安定性>
インクジェットヘッドとして図1中のインクジェットヘッドと同じ構造を有するインクジェットヘッドにインクを供給する経路を接続し、インクジェットヘッドに各実施例及び比較例のインクセットを導入し、記録媒体として普通紙(理想用紙IJ、理想科学工業株式会社製)に、ベタ画像(1画素あたり30pl/300×300dpi)となるようにインクを吐出して、吐出が正常であることを確認した。その後、インクジェットヘッドを室温で3か月間放置した。3か月放置後に、インクジェットヘッドをインクジェットプリンター(オルフィスEX9050、理想科学工業株式会社製)に取り付け、クリーニング動作を実施した後、第一の液体により形成されるベタ画像と第二の液体により形成されるベタ画像が重なり合ったベタ画像(1画素あたり各30pl/300×300dpi)を500枚印刷し、画像に白線(吐出不良)があるかどうかを、確認した。
なお、クリーニング動作として、インクジェットヘッドへインクを供給する経路を加圧することによりインクジェットヘッドの吐出口からインクを押し出し(所謂パージ)、その後、ワイパーによってインクジェットヘッド表面を拭き取る動作を行った。
評価基準は下記の通りである。
A:500枚中、白線が発生したものは5枚以下
B:500枚中、白線が発生したものが5枚超10枚以下
C:500枚中、白線が発生したものが11枚以上
<サテライト汚れ>
インクジェットヘッドとして図1中に示されるインクジェットヘッドと同じ構造を有するインクジェットヘッドにインクを供給する経路を接続し、インクジェットヘッドに各実施例及び比較例のインクセットを導入し、インクジェットヘッドをインクジェットプリンター(オルフィスEX9050、理想科学工業株式会社製)に取り付け、記録媒体として普通紙(理想用紙IJ、理想科学工業株式会社製)に、第一の液体により形成されるベタ画像と第二の液体により形成されるベタ画像が重なり合ったベタ画像(1画素あたり各30pl/300×300dpi)を1枚印刷し、ベタ画像の端部を目視で観察し、サテライト汚れの評価を行った。飛翔中に主滴から分離した複数の微小液滴(サテライト)が、記録媒体上に、主滴の着弾位置からずれた位置に着弾することで生じたサテライト汚れの有無及びその程度を、下記の評価基準に従って、評価した。
A:サテライト汚れが目視で確認されない
B:サテライト汚れが目視で確認できるものの、程度が小さくざらつきが目立たない
C:サテライト汚れが目視で観察され、印字面のざらつきが顕著である
<短期放置後の吐出安定性>
インクジェットヘッドとして図1中に示されるインクジェットヘッドと同じ構造を有するインクジェットヘッドにインクを供給する経路を接続し、インクジェットヘッドに各実施例及び比較例のインクセットを導入し、記録媒体として普通紙(理想用紙IJ、理想科学工業株式会社製)に、ベタ画像(1画素あたり30pl/300×300dpi)となるようにインクを吐出して、吐出が正常であることを確認した。その後、インクジェットヘッドを室温で1日放置した。1日放置後、インクジェットヘッドをインクジェットプリンター(オルフィスEX9050、理想科学工業株式会社製)に取り付け、クリーニング動作を実施せずに、第一の液体により形成される細線と第二の液体により形成される細線が重なり合った細線チャート(1画素あたり各6pl/300×300dpiで1mm間隔で30列印字したもの)を1枚印刷し、形成された細線での吐出状態を評価した。
評価基準は下記の通りである。
A:1列目から、遅れまたは乱れがない
B:1列目には遅れまたは乱れがみられるが、2〜5列目で正常に印字されている
C:5列目でも、遅れまたは乱れがみられる
<裏抜け>
インクジェットヘッドとして図1中に示されるインクジェットヘッドと同じ構造を有するインクジェットヘッドにインクを供給する経路を接続し、各実施例及び比較例のインクセットを導入し、インクジェットヘッドをインクジェットプリンター(オルフィスEX9050、理想科学工業株式会社製)に取り付け、記録媒体として普通紙(理想用紙IJ、理想科学工業株式会社製)に、第一の液体により形成されるベタ画像と第二の液体により形成されるベタ画像が重なり合ったベタ画像(1画素あたり各30pl/300×300dpi)を印刷し裏抜けを目視評価した。評価基準は下記のとおりである。
A:裏抜けが目立たない
B:裏抜けがあるが、許容できる
C:許容できないほどの裏抜けがみられる
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表に示されるように、油性インクジェットインクセットを構成する液体組成物(表では第1の液体及び第2の液体)の初留点がすべて280℃以上あり、かつ、液体組成物間の比重差が0.005以上である実施例1〜28の油性インクジェットインクセットでは、サテライトによる着弾不良(サテライト汚れ)が抑制されて良好な画質が得られるとともに、長期放置後の吐出安定性が良好である。
一方、油性インクジェットインクセットに、初留点が280℃未満の液体組成物が含まれる、比較例4〜6の油性インクジェットインクセットでは、長期放置後の吐出安定性が悪化する。これは、液体組成物中の非水系溶剤が蒸発しやすいことから、固い凝集物が生じやすく、このため、クリーニング動作を行っても吐出が回復しにくいためと考えられる。
また、液体組成物間の比重差が0.005未満の比較例1及び6の油性インクジェットインクセットでも、長期放置後の吐出安定性が悪化する。これは、インクが混合して凝集物を生成しやすいためと考えられる。
液体組成物間の比重差が0.012より大きい比較例2、3及び7〜9の油性インクジェットインクセットでは、サテライトによる着弾不良(サテライト汚れ)の発生が増えて、画質が悪くなる。これは、液体組成物間の比重差が大きいことにより、吐出速度が著しく異なって、吐出速度が速い方のインクにおいてサテライトによる着弾不良(サテライト汚れ)が増加しているためと考えられる。
油性インクジェットインクセット中のすべての液体組成物の80%留出温度が300℃〜350℃の場合、実施例25及び26と、実施例23及び24との対比、及び、実施例1と実施例27との対比によって示されるように、長期放置後の吐出安定性及びサテライト汚れの評価結果が良好であることに加えて、短期放置後の吐出安定性と裏抜けの評価結果も向上する。
油性インクジェットインク中の液体組成物の比重がいずれも0.890より大きい実施例10及び14の油性インクジェットインクセットでは、サテライト汚れの結果はBであり、油性インクジェットインク中の液体組成物の比重がいずれも0.890以下である実施例において、サテライトが、より抑制されて、より良好な画像が得られる傾向が示されている。
1 インクジェット印刷装置
2 搬送部
3 インクジェットヘッドユニット
110a〜110f、112a〜112f、114a〜114f、31 インクジェットヘッド
121、123 吐出口列
4 メンテナンスユニット

Claims (4)

  1. 吐出口列を2列以上有するインクジェットヘッド用の、2種以上の液体組成物からなる油性インクジェットインクセットであって、
    前記2種以上の液体組成物の少なくとも1種が油性インクジェットインクであり、
    前記2種以上の液体組成物の初留点が各々独立に280℃以上であり、
    前記2種以上の液体組成物において各液体組成物間の比重差がいずれも0.005以上0.012以下である、
    油性インクジェットインクセット。
  2. 前記2種以上の液体組成物の80%留出温度が各々独立に300〜350℃である、請求項1に記載の油性インクジェットインクセット。
  3. 前記2種以上の液体の比重が各々独立に0.890以下である、請求項1又は2に記載の油性インクジェットインクセット。
  4. 吐出口列を2列以上有するインクジェットヘッドから2種以上の液体組成物を記録媒体に吐出することを含む印刷物の製造方法であって、
    前記2種以上の液体組成物の少なくとも1つが油性インクジェットインクであり、
    前記2種以上の液体組成物の初留点が各々独立に280℃以上であり、
    前記2種以上の液体組成物において各液体組成物間の比重差がいずれも0.005以上0.012以下である、
    印刷物の製造方法。
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