JP2017154575A - 駆動力伝達装置の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】組付性を向上させることができる駆動力伝達装置の製造方法を提供する。【解決手段】駆動力伝達装置1の製造方法は、ピニオンギヤシャフト3をケーシング6に収容した第1組立体11を組み付ける第1工程と、複数のメインインナクラッチプレート412に形成された挿入孔412bに組付部材95が挿入され、フロントハウジング21と組付部材95とが駆動力断続可能に連結された第2組立体12を組み付ける第2工程と、第1組立体11と第2組立体12とを組み付ける際に、組付部材95をケーシング6から遠ざかるように相対移動させると共に、ピニオンギヤシャフト3を複数のメインインナクラッチプレート412の挿入孔412bに挿入して、ピニオンギヤシャフト3と複数のメインインナクラッチプレート412とを相対回転不能に連結する第3工程とを有している。【選択図】図2

Description

本発明は、クラッチプレート間の摩擦によって駆動力を伝達する駆動力伝達装置の製造方法に関する。
従来、例えば四輪駆動車に搭載され、駆動源の駆動力が常時伝達される主駆動輪と、走行状態に応じて駆動源の駆動力が伝達される補助駆動輪のうち、補助駆動輪に駆動源の駆動力を断続可能に伝達する駆動力伝達装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の駆動力伝達装置は、同軸上で相対回転可能な第1回転部材及び第2回転部材と、第1回転部材にスプライン嵌合した複数のアウタクラッチプレート及び第2回転部材にスプライン嵌合した複数のインナクラッチプレートからなるクラッチ部と、クラッチ部を軸方向に押圧して複数のアウタクラッチプレートと複数のインナクラッチプレートとを摩擦係合させる押圧部材と、クラッチ部が収容されたカップリングケースとを備えている。
複数のインナクラッチプレートには、回転軸線方向に貫通した貫通孔が形成され、この貫通孔に挿通されたピンにより駆動力伝達装置の組み付け時における複数のインナクラッチプレートの互いの相対回転が規制される。これにより、駆動力伝達装置の組み付け時において、クラッチ部に第2回転部材を挿入する際の複数のインナクラッチプレートの周方向における位置決めが容易となり、組付作業性の向上が図られている。
特開2009−14100号公報
特許文献1に記載の駆動力伝達装置の製造方法では、複数のインナクラッチプレートの貫通孔にピンを挿通させた状態で第2回転部材を挿入してスプライン嵌合させるので、第2回転部材を複数のインナクラッチプレートに挿入する過程で複数のインナクラッチプレートに径方向あるいは周方向の力が作用した場合にピンが傾いてしまい、インナクラッチプレートの位置がずれてしまうおそれがある。また、ピンを挿通させるための貫通孔は周方向の1箇所にしか形成されていないので、ピンを挿通させるために複数のインナクラッチプレートの径方向及び周方向の位置を合わせる作業が難しかった。このため、複数のインナクラッチプレートに第2回転部材を挿入する際の組付作業性においてなお改善の余地があった。
そこで、本発明は、組付性の向上を図ることができる駆動力伝達装置の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決することを目的として、同軸上に相対回転可能に配置された第1回転部材及び第2回転部材と、前記第2回転部材に形成されたギヤ部と噛み合って回転する第3回転部材と、前記第1回転部材に対して軸方向移動可能かつ相対回転不能に連結された複数のアウタクラッチプレート及び前記第2回転部材に対して軸方向移動かつ相対回転不能に連結された複数のインナクラッチプレートが軸方向に交互に配置されたクラッチ部と、前記第2回転部材と前記第3回転部材との噛み合い部を収容するケーシングと、を備えた駆動力伝達装置の製造方法であって、前記第2回転部材及び前記第3回転部材を回転可能に前記ケーシングに組み付けて第1組立体を組み立てる第1工程と、前記第1回転部材、前記クラッチ部、及び前記複数のインナクラッチプレートに形成された挿入孔に挿入された軸状の組付部材を含み、前記組付部材によって前記複数のインナクラッチプレートが互いに相対回転することが規制された第2組立体を組み立てる第2工程と、前記組付部材を前記第1組立体の前記ケーシングから遠ざかるように相対移動させると共に、前記第2回転部材を前記第1組立体における前記複数のインナクラッチプレートの前記挿入孔に挿入し、前記第2回転部材と前記複数のインナクラッチプレートとを相対回転不能に連結して前記第1組立体と前記第2組立体とを組み合せる第3工程とを有する、駆動力伝達装置の製造方法を提供する。
本発明に係る駆動力伝達装置の製造方法によれば組付性を向上させることができる。
本発明の第1の実施の形態に係る駆動力伝達装置が搭載された四輪駆動車の構成例を示す構成図である。 駆動力伝達装置の構成例を水平断面で示す断面図である。 (a)は、第1組立体を組み付ける第1工程を示し、(b)は第1組立体に対して電磁コイルを組み付けて中間組立体を組み立てる中間工程を示し、(c)は第2組立体を組み立てる第2工程を示す。 (a)は中間組立体と第2組立体とを組み付けて第3組立体を組み付ける第3工程を示し、(b)は第3組立体に軸受、カバーを組み付ける第4工程を示し、(c)は組付けが完了した状態を示している。 図4(b)に示す第3組立体における要部拡大図である。
[実施の形態]
図1は、本実施の形態に係る駆動力伝達装置が搭載された四輪駆動車の構成例を示す構成図である。
(四輪駆動車の全体構成)
四輪駆動車100は、走行用の駆動力を発生させる駆動源としてのエンジン102、トランスミッション103、左右一対の主駆動輪としての前輪104L,104R、及び左右一対の補助駆動輪としての後輪105L,105Rと、エンジン102の駆動力を前輪104L,104R及び後輪105L,105Rに伝達可能な駆動力伝達系101と、制御装置10とを備えている。なお、本実施の形態において、各符号における「L」及び「R」は、車両の前進方向に対する左側及び右側の意味で使用している。
この四輪駆動車100は、エンジン202の駆動力を前輪104L,104R及び後輪105L,105Rに伝達する四輪駆動状態と、エンジン102の駆動力を前輪104L,104Rのみに伝達する二輪駆動状態とを切り替え可能である。なお、本実施の形態では、駆動源として内燃機関であるエンジンを適用した場合について説明するが、これに限らず、エンジンとIPM(Interior Permanent Magnet Synchronous)モータ等の高出力電動モータとの組み合わせによって駆動源を構成してもよく、高出力電動モータのみによって駆動源を構成してもよい。
駆動力伝達系101は、駆動力伝達装置1、フロントディファレンシャル106、前輪側のドライブシャフト107L,107R、プロペラシャフト108、及び後輪側のドライブシャフト109L,109Rを有している。駆動力伝達装置1は、プロペラシャフト108と後輪側のドライブシャフト109L,109Rとの間に配置されている。
前輪104L,104Rには、フロントディファレンシャル106によって配分された駆動力が前輪側のドライブシャフト107L,107Rを介して伝達される。後輪105L,105Rには、四輪駆動時にプロペラシャフト108によって伝達された駆動力が駆動力伝達装置1及び後輪側のドライブシャフト109L,109Rを介して伝達される。また、二輪駆動時には、プロペラシャフト108から後輪側のドライブシャフト109L,109Rへの駆動力の伝達が駆動力伝達装置1によって遮断される。
(駆動力伝達装置の構成)
図2は、駆動力伝達装置1の構成例を水平断面で示す断面図である。図2では、図面左側が四輪駆動車100への搭載状態における車両の前後方向の前側(前輪104L,104R側)にあたり、図面右側が四輪駆動車100への搭載状態における車両前後方向の後側(後輪105L,105R側)にあたる。なお、以下の説明においては便宜上、車両前後方向における前側を単にフロント側といい、車両前後方向における後側をリヤ側ということにする。
駆動力伝達装置1は、図2に示すように、プロペラシャフト108(図1に示す)に連結されたカップリングケース2と、カップリングケース2の内周側で相対回転可能に配置された第2回転部材としてのピニオンギヤシャフト3と、カップリングケース2とピニオンギヤシャフト3との間における駆動力の伝達を断続可能な駆動力断続機構4と、ピニオンギヤシャフト3から伝達される駆動力を後輪側のドライブシャフト109L,109Rに差動を許容して配分するディファレンシャル装置5と、ディファレンシャル装置5を収容するケーシング6と、各部の回転を円滑にする軸受71〜78と、シール部材81〜85とを備えている。
カップリングケース2は、フロント側に配置された有底円筒状のフロントハウジング21、及びフロントハウジング21のリヤ側の開口端に螺着して一体回転するように結合された環状のリヤハウジング22からなる。
フロントハウジング21は、フロント側の底部210と、底部210から回転軸線O方向に延在した筒状の筒状部211とを有している。フロントハウジング21における筒状部211の内周面には、回転軸線Oに沿って設けられた複数のスプライン歯211aが形成されている。フロントハウジング21の底部210には、プロペラシャフト108の端部に設けられた十字継手の継手部材がボルト201によって連結される。また、フロントハウジング21の底部210には回転軸線O方向に貫通孔した貫通孔210aが形成され、この貫通孔210aの外部に通じる開口を閉塞するカバー9が取り付けられている。
リヤハウジング22は、フロントハウジング21に結合された軟磁性材料からなる第1部材221、第1部材221の内周側に結合されたオーステナイト系ステンレス等の非磁性材料からなる第2部材222、及び第2部材222の内周側に結合された軟磁性材料からなる第3部材223からなる。第1部材221のリヤ側の端部には断面L字型のスリンガ80が配置されており、スリンガ80とケーシング6の本体部61との間にシール部材84が配置されている。
ピニオンギヤシャフト3は、回転軸線O方向に延在した軸部31と、軸部31のフロント側の先端部から突出して軸部31よりも小径のボス部30と、軸部31のリヤ側の先端部に位置するギヤ部32と、を有している。軸部31のフロント側における外周面には、後述する複数のメインインナクラッチプレート412とスプライン係合する外周スプライン部311が形成されている。軸部31とリヤハウジング22との間にはXリングからなるシール部材85が配置されている。これにより、カップリングケース2内に充填された潤滑油のケーシング6内部への浸入が防止されている。
ピニオンギヤシャフト3は、軸部31とケーシング6における本体部61の内面との間に配置された一対の軸受73,74によってケーシング6に対して回転可能に支持されると共に、ボス部30の外周面30aとフロントハウジング21における底部210の貫通孔210aの内面との間に配置された軸受77によって、カップリングケース2に対して回転可能に支持されている。軸受77は、フロントハウジング21における底部210の貫通孔210aに内嵌される外輪771と、ボス部30の外周面30aに外嵌される内輪772と、外輪771に形成された断面円弧状の外側軌道面と内輪772に形成された断面円弧状の内側軌道面との間で転動可能な複数の転動体773とを有している。転動体773は球状であり、複数個が図略の保持器により等間隔に保持されている。
ボス部30と軸部31との間には、回転軸線O方向と直交する段差面30b(後述する図5参照)が形成され、この段差面30bが軸受77の内輪772の側面と対向している。ピニオンギヤシャフト3のボス部30の外周面30aには環状溝30cが形成されており、この環状溝30cに軸受77の内輪772のフロント側の側面に対向するスナップリング92が嵌着されている。また、フロントハウジング21には、底部210の内周から内側に突出した内鍔部212が設けられ、内鍔部212と軸受77の外輪771との間に環状の板状部材としてのシム93が配置されている。軸受77は、スナップリング92とシム93との間に把持されて、その軸方向移動が規制されている。
駆動力断続機構4は、フロントハウジング21とピニオンギヤシャフト3との間の駆動力を遮断するクラッチ部としてのメインクラッチ41と、メインクラッチ41の軸方向に並列配置されたパイロットクラッチ42と、パイロットクラッチ42に対して軸方向の押圧力を作用させる電磁コイル43及びアーマチャ44と、パイロットクラッチ42によって伝達されるカップリングケース2の駆動力をメインクラッチ41への押圧力に変換するカム機構45とを有している。
メインクラッチ41は、回転軸線Oに沿って交互に配置された複数のメインアウタクラッチプレート411及び複数のメインインナクラッチプレート412からなり、フロントハウジング21の筒状部211とピニオンギヤシャフト3の軸部31との間に配置されている。
メインアウタクラッチプレート411は、フロントハウジング21における筒状部211の複数のスプライン歯211aに係合する複数の係合突起411aを有し、フロントハウジング21に対して相対回転不能かつ軸方向移動可能である。メインインナクラッチプレート412は、ピニオンギヤシャフト3の外周スプライン部311に係合する内周スプライン部としての複数の係合突起412aを有し、ピニオンギヤシャフト3に対して相対回転不能かつ軸方向移動可能である。
メインインナクラッチプレート412の中心部には、回転軸線O方向に貫通してピニオンギヤシャフト3における軸部31のフロント側の端部が挿入される挿入孔412bが形成されている。複数の係合突起412aは、挿入孔412bの内周面において、周方向に等間隔に設けられている。なお、メインアウタクラッチプレート411が本発明における「アウタクラッチプレート」に相当し、メインインナクラッチプレート412が本発明における「インナクラッチプレート」に相当する。
パイロットクラッチ42は、回転軸線Oに沿って交互に配置されたパイロットアウタクラッチプレート421及びパイロットインナクラッチプレート422を有する。パイロットアウタクラッチプレート421は、フロントハウジング21における筒状部211の複数のスプライン歯211aに係合し、フロントハウジング21に対して相対回転不能かつ軸方向移動可能に配置されている。パイロットインナクラッチプレート422は、後述するカム機構45の第2カム部材452の外周にスプライン嵌合されることにより、第2カム部材452に対して相対回転不能かつ軸方向移動可能に配置されている。
電磁コイル43は、ケーブル430を介して制御装置10(図1に示す)から励磁電流の供給を受け、磁力を発生させる。電磁コイル43は、リヤハウジング22の第3部材223に玉軸受75を介して支持されたヨーク432に保持され、第1部材221と第3部材223との間に形成された環状のコイル収容空間22a内に配置されている。
アーマチャ44は、パイロットクラッチ42のパイロットアウタクラッチプレート421に対向して配置された環状の軟磁性体からなり、フロントハウジング21における筒状部211の複数のスプライン歯211aにスプライン嵌合されて、フロントハウジング21に対して相対回転不能かつ軸方向移動可能に配置されている。
パイロットアウタクラッチプレート421及びパイロットインナクラッチプレート422は、電磁コイル43への通電により発生する磁束を透過させる軟磁性材料からなり、アーマチャ44とリヤハウジング22との間に配置されている。制御装置10(図1に示す)から電磁コイル43に励磁電流が供給されると、ヨーク432、リヤハウジング22の第1部材221及び第3部材223、パイロットアウタクラッチプレート421及びパイロットインナクラッチプレート422、ならびにアーマチャ44を通過する磁路Gに磁束が発生し、この磁束の磁力によってアーマチャ44がリヤハウジング22側に吸引される。
そして、このアーマチャ44の軸方向移動によってパイロットクラッチ42が押圧され、パイロットアウタクラッチプレート421とパイロットインナクラッチプレート422とが摩擦接触して、フロントハウジング21から第2カム部材452へトルクが伝達される。第2カム部材452へ伝達されるトルクは、電磁コイル43に供給される励磁電流に応じて変化する。
カム機構45は、ピニオンギヤシャフト3に対して相対回転可能な第2カム部材452と、ピニオンギヤシャフト3と相対回転不能かつ軸方向に移動可能に配置された第1カム部材451と、第1カム部材451と第2カム部材452との間に配置されたカムボール453とを有して構成されている。第2カム部材452とリヤハウジング22の第3部材223との間には、スラスト針状ころ軸受76が配置されている。
第1及び第2カム部材451,452のそれぞれの対向面には、カムボール453を転動させるカム溝が互いに対向するように形成されており、カムボール453は当該カム溝に挟まれて配置されている。そして、カム機構45は、第1カム部材451と第2カム部材452とが相対回転することにより、第1及び第2カム部材451,452が回転軸線O方向に互いに離間して第1カム部材451にメインクラッチ41側に移動する推力が発生するように構成されている。これにより、メインクラッチ41に軸方向の押圧力が発生する。
ディファレンシャル装置5は、デフケース50と、デフケース50に支持されたピニオンシャフト51と、ピニオンシャフト51に軸支された一対のピニオンギヤ52と、一対のピニオンギヤ52にギヤ軸を直交させて噛合する一対のサイドギヤ53と、デフケース50と一体に回転する第3回転部材としてのリングギヤ54とを有している。デフケース50は、車幅方向の両端部が軸受71,72によって回転可能に支持されている。一対のサイドギヤ53には、後輪側のドライブシャフト109L,109Rがそれぞれ一体回転するように連結される。
ディファレンシャル装置5のリングギヤ54は、ピニオンギヤシャフト3のギヤ部32に噛み合っている。ディファレンシャル装置5は、ピニオンギヤシャフト3からリングギヤ54に伝達された駆動力を、一対のピニオンギヤ52及び一対のサイドギヤ53を介して後輪側のドライブシャフト109L,109Rに配分する。
ディファレンシャル装置5のリングギヤ54とピニオンギヤシャフト3のギヤ部32との噛み合い、及び一対のピニオンギヤ52と一対のサイドギヤ53との噛み合いは、図略のデフオイルによって潤滑される。このデフオイルは、ギヤの噛み合いを潤滑するのに適した粘度を有し、シール部材81〜83によって、ピニオンギヤシャフト3の一端部及びディファレンシャル装置5を収容するケーシング6の収容空間6a内に封入されている。シール部材81,82は、ケーシング6の本体部61及び蓋部62に形成された後輪側のドライブシャフト109L,109Rを挿通させる挿通孔の内面に固定されている。シール部材83は、軸受73の内輪の外周面に対向する本体部61の内面に固定されている。
ケーシング6は、ディファレンシャル装置5を収容する収容空間6aを有する本体部61と、組立時にディファレンシャル装置5が挿入される本体部61における後輪側のドライブシャフト109L側の開口61aを閉塞する蓋部62とを有している。また、本体部61は、ピニオンギヤシャフト3のギヤ部32とディファレンシャル装置5のリングギヤ54との噛み合い部を収容している。
(駆動力伝達装置の製造方法)
上記の構成を有する駆動力伝達装置1は、ケーシング6にディファレンシャル装置5及びピニオンギヤシャフト3の一端部を収容した第1組立体と、カップリングケース2に駆動力断続機構4を収容した第2組立体とを組み合せて製造される。本実施の形態における駆動力伝達装置1の製造方法は、第1乃至第4工程を有しており、この製造方法について以下で図3乃至図5を参照して詳細に説明する。
図3(a)は、ケーシング6にディファレンシャル装置5及びピニオンギヤシャフト3の一端部を収容した第1組立体11を組み立てる第1工程を示し、図3(b)は第1組立体11に対して電磁コイル43を組み付けて中間組立体11Aを組み立てる中間工程を示し、図3(c)は第2組立体12を組み立てる第2工程を示す。図4(a)は中間組立体11Aと第2組立体12とを組み合せて第3組立体13を組み立てる第3工程を示し、図4(b)は第3組立体13に軸受77及びカバー9を組み付ける第4工程を示し、図4(c)は全ての組み立てが完了した状態を示している。図5は、図4(b)に示す第3組立体13におけるフロントハウジング21の底部210とその周辺部の拡大図である。
第1工程では、図3(a)に示すように、ケーシング6の本体部61の開口61aから軸受73,74及びピニオンギヤシャフト3を挿入し、その後さらにディファレンシャル装置5を挿入して、ピニオンギヤシャフト3のギヤ部32とディファレンシャル装置5のリングギヤ54とを噛み合わせる。その後、本体部61に蓋部62を図略のボルトによって締結し、本体部61の開口61aを蓋部62によって塞ぐ。これにより、ピニオンギヤシャフト3及びディファレンシャル装置5のリングギヤ54がケーシング6に対して回転可能な第1組立体11が組み立てられる。
第1工程の後、中間工程において、図3(b)に示すように、電磁コイル43が組み付けられたヨーク432をケーシング6における本体部61のフロント側の開口61b側から軸受75と共に挿入し、電磁コイル43及びヨーク432並びに軸受77をケーシング6に組み付ける。これにより、第1組立体11に電磁コイル43及びヨーク432が配置された中間組立体11Aが組み立てられる。
第2工程では、フロントハウジング21にメインクラッチ41、カム機構45、リヤハウジング22、及び軸状に形成された組付部材95をフロントハウジング21内に配置して第2組立体12を組み立てる。組付部材95は、中心に回転軸線O方向に沿って貫通した貫通孔95aが形成された筒状であり、リヤ側に配置された小径部951とフロント側に配置された大径部952とからなる。大径部952の外径は小径部951の外径よりも大きく形成されている。小径部951の外周面には、メインインナクラッチプレート412の複数の係合突起412aにスプライン嵌合する外周スプライン係合部951aが形成されている。大径部952と小径部951との間には、回転軸線O方向と直交してリヤハウジング22側を指向する段差面95bが形成されている。
第2組立体12を組み立てる際には、組付部材95を小径部951側からフロントハウジング21における底部210の貫通孔210aに挿入し、組付部材95の段差面95bをフロントハウジング21における内鍔部212のフロント側を指向する受け面212a(図5参照)に接触させて組付部材95を位置決めする。
そして、フロントハウジング21及び組付部材95を、フロントハウジング21の底部210が鉛直方向下方となるように作業台等に載置し、フロントハウジング21にメインアウタクラッチプレート411とメインインナクラッチプレート412とを交互に挿入する。この際、メインアウタクラッチプレート411の複数の係合突起411aを筒状部211の複数のスプライン歯211aに係合させると共に、メインインナクラッチプレート412の複数の係合突起412aを組付部材95の外周スプライン係合部951aに係合させる。
続いて、第1カム部材451を組付部材95の小径部951にスプライン嵌合させ、カムボール453、第2カム部材452、アーマチャ44、及びパイロットクラッチ42をフロントハウジング21に順次組み付ける。そして、この状態でリヤハウジング22をフロントハウジング21の筒状部211の開口端に螺着させる。これにより、フロントハウジング21と組付部材95とが駆動力断続可能に連結された第2組立体12が組み立てられる。
なお、第1工程及び中間工程と、第2工程とは、いずれの工程を先に行ってもよく、第1工程及び中間工程と第2工程とを同時並行で行ってもよい。
第3工程では、中間組立体11Aと第2組立体12とを組み合わせる。具体的には、図4(a)に示すように、組付部材95を中間組立体11Aのケーシング6から遠ざかるように相対移動させると共に、ピニオンギヤシャフト3の軸部31を中間組立体11Aにおける複数のメインインナクラッチプレート412の挿入孔412bに挿入して、ピニオンギヤシャフト3と複数のメインインナクラッチプレート412とを相対回転不能に連結する。
より詳細には、中間組立体11Aをピニオンギヤシャフト3のボス部30が鉛直方向上方となるように作業台等に載置し、第2組立体12をフロントハウジング21の底部210が鉛直方向上方となるようにして、中間組立体11Aの上方から回転軸線O方向に沿って中間組立体11Aに近づけていく。そして、組付部材95における小径部951の中間組立体11A側を指向する軸方向端面95cをピニオンギヤシャフト3の段差面30bに接触させ、さらにカップリングケース2を中間組立体11A側に相対移動させる。そうすると、組付部材95がピニオンギヤシャフト3から押圧されて、メインインナクラッチプレート412の挿入孔412bから引き抜かれると共に、ピニオンギヤシャフト3の軸部31が挿入孔412bに挿入されて、ピニオンギヤシャフト3とメインインナクラッチプレート412及び第1カム部材451とがスプライン嵌合される。これにより、中間組立体11Aと第2組立体12とが組み立てられた第3組立体13が組み立てられる。
この第3工程において、中間組立体11Aに第2組立体12を組み付ける際には、組付部材95における小径部951の外周スプライン係合部951aとピニオンギヤシャフト3における軸部31の外周スプライン部311の周方向における位置(位相)を合わせて、ピニオンギヤシャフト3を複数のメインインナクラッチプレート412の挿入孔412bに挿入する。上記の位相合わせをする際には、例えば組付部材95における軸方向端面95cとは反対側を指向する軸方向端面95dと、ピニオンギヤシャフト3におけるボス部30の先端面30dとに予めマーキングをしておき、ピニオンギヤシャフト3をメインインナクラッチプレート412の挿入孔412bに挿入するときに、フロントハウジング21側から貫通孔95aを介して、両マーキングの位置を視認により合わせることにより位相合わせが可能である。すなわち、組付部材95の貫通孔95aは、組付部材95とピニオンギヤシャフト3との位相を合わせる際にフロントハウジング21側からピニオンギヤシャフト3の外周スプライン部311を視認するための覗き穴として形成されている。
第3工程の後、図4(b)に示すように、シム93、軸受77、スナップリング92、及びカバー9をフロントハウジング21における底部210の貫通孔210aに挿入して、カップリングケース2に組み付ける第4工程を行う。より詳細には、シム93をフロントハウジング21における内鍔部212の受け面212aに配置した状態で、軸受77の外輪771及び内輪772をシム93及びピニオンギヤシャフト3の段差面30bにそれぞれ接触させて配置する。続けて、スナップリング92をピニオンギヤシャフト3におけるボス部30の環状溝30cに嵌着し、カバー9で貫通孔210aの開口を閉塞するように底部210に固定する。これにより、駆動力伝達装置1の製造が終了する。
また、第4工程においては、フロントハウジング21における内鍔部212の受け面212aと、ピニオンギヤシャフト3の段差面30bとの軸方向における相対距離を例えばレーザ距離計によって測定し、この測定値に応じた厚みを有するシム93を選定して、フロントハウジング21に配置されている。つまり、厚みが例えば0.1mm刻みで異なる複数の品種のシム93を用意しておき、そのうち測定値に応じた適切な厚みを有するシム93を選定してフロントハウジング21に組み付ける。
これにより、ピニオンギヤシャフト3の軸方向における位置が補正され、ピニオンギヤシャフト3とリングギヤ54との間の噛み合い度が調整される。ここで、フロントハウジング21における内鍔部212の受け面212aが軸受77の外輪771を軸方向に位置決めする第1設置面として形成されると共に、ピニオンギヤシャフト3における段差面30bが軸受77の内輪772を軸方向に位置決めする第2設置面として形成されている。
なお、シム93を、ピニオンギヤシャフト3における段差面30bに配置してもよい。この場合、内輪772の側面とピニオンギヤシャフト3の段差面30bとの間にシム93が挟まれ、内輪772の軸方向の位置がシム93の厚みに応じて規定される。
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明した本実施の形態によれば、以下に述べる作用及び効果が得られる。
(1)第3工程において、第1組立体11を含む中間組立体11Aと、第2組立体12を組み合せる際に、組付部材95をカップリングケース2から引き抜きながら、ピニオンギヤシャフト3をメインインナクラッチプレート412にスプライン嵌合させることができるので、複数のメインインナクラッチプレート412が互いに相対回転不能な状態でピニオンギヤシャフト3をメインインナクラッチプレート412にスプライン嵌合させることができる。これにより、メインインナクラッチプレート412とピニオンギヤシャフト3との位相ズレによる組付作業性の低下が抑制されて組付性の向上を図ることができる。
(2)第4工程において、第1設置面としてのフロントハウジング21の受け面212aと、第2設置面としてのピニオンギヤシャフト3の段差面30bとの軸方向における相対位置を測定して、この測定値に応じてシム93の厚みを選定する。これにより、ピニオンギヤシャフト3の軸方向における位置補正が適正化されて、ピニオンギヤシャフト3とリングギヤ54との間の噛み合い度の調整を精度よく行うことができる。
(3)組付部材95には貫通孔95aが形成されているので、この貫通孔95aが第3工程におけるピニオンギヤシャフト3及びメインインナクラッチプレート412の位相を合わせる際の覗き穴となるので、仮に当該貫通孔95aがない場合に比較して、位相合わせが容易となり組付作業性が向上される。
(付記)
以上、本発明の駆動力伝達装置を上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
例えば、本実施の形態では、第3工程において、組付部材95とピニオンギヤシャフト3とを接触させた状態で、組付部材95がカップリングケース2から引き抜かれるように、ピニオンギヤシャフト3を複数のメインインナクラッチプレート412にスプライン嵌合させる場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、組付部材95とピニオンギヤシャフト3とが回転軸線O方向に所定の間隔を置いた状態で、組付部材95をメインインナクラッチプレート412の挿入孔412bから引き抜くと共に、ピニオンギヤシャフト3を当該挿入孔412bに挿入させてもよい。
また、本実施の形態では、第3工程において、第1組立体11を含む中間組立体11Aを固定系として、組付部材95を有する第2組立体12を相対的に移動させたが、これに限定されず、例えば第2組立体12を固定系として中間組立体11Aを相対移動させてもよい。
21…フロントハウジング(第1回転部材)
3…ピニオンギヤシャフト(第2回転部材)
54…リングギヤ(第3回転部材)
411…メインアウタクラッチプレート(アウタクラッチプレート)
412…メインインナクラッチプレート(インナクラッチプレート)
41…メインクラッチ(クラッチ部)
6…ケーシング
412b…挿入孔
212a…受け面(第1設置面)
30b…段差面(第2設置面)
77…軸受
93…シム(板状部材)
95…組付部材
95a…貫通孔
411a…外周スプライン部
412a…内周スプライン部
951a…外周スプライン係合部

Claims (6)

  1. 同軸上に相対回転可能に配置された第1回転部材及び第2回転部材と、前記第2回転部材に形成されたギヤ部と噛み合って回転する第3回転部材と、前記第1回転部材に対して軸方向移動可能かつ相対回転不能に連結された複数のアウタクラッチプレート及び前記第2回転部材に対して軸方向移動かつ相対回転不能に連結された複数のインナクラッチプレートが軸方向に交互に配置されたクラッチ部と、前記第2回転部材と前記第3回転部材との噛み合い部を収容するケーシングと、を備えた駆動力伝達装置の製造方法であって、
    前記第2回転部材及び前記第3回転部材を回転可能に前記ケーシングに組み付けて第1組立体を組み立てる第1工程と、
    前記第1回転部材、前記クラッチ部、及び前記複数のインナクラッチプレートに形成された挿入孔に挿入された軸状の組付部材を含み、前記組付部材によって前記複数のインナクラッチプレートが互いに相対回転することが規制された第2組立体を組み立てる第2工程と、
    前記組付部材を前記第1組立体の前記ケーシングから遠ざかるように相対移動させると共に、前記第2回転部材を前記第1組立体における前記複数のインナクラッチプレートの前記挿入孔に挿入し、前記第2回転部材と前記複数のインナクラッチプレートとを相対回転不能に連結して前記第1組立体と前記第2組立体とを組み合せる第3工程とを有する、
    駆動力伝達装置の製造方法。
  2. 前記第3工程の後に、前記複数のインナクラッチプレートの前記挿入孔を通過した前記第2回転部材の先端部と前記第1回転部材との間に軸受を配置する第4工程とをさらに有する、
    請求項1に記載の駆動力伝達装置の製造方法。
  3. 前記第4工程においては、前記軸受の外輪が軸方向に位置決めされる前記第1回転部材の第1設置面と、前記軸受の内輪が軸方向に位置決めされる前記第2回転部材の第2設置面との軸方向における相対距離を測定し、その測定値に応じた軸方向の厚みを有する板状部材を前記第1設置面又は前記第2設置面に配置した後に前記軸受を固定する、
    請求項2に記載の駆動力伝達装置の製造方法。
  4. 前記第2回転部材の外周には、前記インナクラッチプレートの内周に形成された内周スプライン部と係合する外周スプライン部が形成され、
    前記組付部材の外周には、前記第2工程において前記インナクラッチプレートの前記内周スプライン部と係合する外周スプライン係合部が形成されている、
    請求項1乃至3の何れか1項に記載の駆動力伝達装置の製造方法。
  5. 前記第3工程では、前記組付部材の前記外周スプライン係合部と前記第2回転部材の前記外周スプライン部の周方向における位相を合わせて、前記第2回転部材を前記複数のインナクラッチプレートの前記挿入孔に挿入する、
    請求項4に記載の駆動力伝達装置の製造方法。
  6. 前記組付部材には軸方向に沿って貫通した貫通孔が形成されており、
    前記貫通孔が、前記位相を合わせる際に前記第1回転部材側から前記第2回転部材を視認するための覗き穴として形成されている、
    請求項5に記載の駆動力伝達装置の製造方法。
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