WO2023021706A1

WO2023021706A1 - 駆動力伝達装置

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Publication number: WO2023021706A1
Application number: PCT/JP2021/030681
Authority: WO
Inventors: 寛唐; 大岳伊藤
Original assignee: 株式会社ジェイテクト
Priority date: 2021-08-20
Filing date: 2021-08-20
Publication date: 2023-02-23

Abstract

【課題】組み立て時において複数のインナクラッチプレートとシャフトとをスプライン係合させる作業の作業性を向上させることが可能な駆動力伝達装置を提供する。【解決手段】駆動力伝達装置（１０）は、複数のアウタクラッチプレート（５１）及びインナクラッチプレート（５２）を有するメインクラッチ（５）と、複数のアウタクラッチプレート（５１）とスプライン係合するクラッチハウジング（２）と、複数のインナクラッチプレート（５２）とスプライン係合するピニオンギヤシャフト（４）と、メインクラッチ（５）を軸方向に押圧するメインカム（６１）と、を備える。クラッチハウジング（２）は、メインクラッチ（５）を収容する円筒部（２１）と底部（２２）とを有する有底円筒状である。クラッチハウジング（２）の底部（２２）には、複数のねじ穴（２２１）が軸方向に延在して形成されており、そのうち少なくとも一つのねじ穴（２２１）が、複数のインナクラッチプレート（５２）と軸方向に並ぶ位置で底部（２２）を軸方向に貫通している。

Description

駆動力伝達装置

　本発明は、駆動力を伝達する駆動力伝達装置に関する。

　従来、前輪及び後輪を駆動することが可能な４輪駆動車には、プロペラシャフトと後輪のディファレンシャル装置との間に、多板クラッチを備えた駆動力伝達装置が配置されたものがある。特許文献１乃至３に記載された駆動力伝達装置は、プロペラシャフトに連結されるクラッチハウジングと、ディファレンシャル装置の入力ギヤであるリングギヤに噛み合わされたピニオンギヤシャフトとを備えている。多板クラッチは、クラッチハウジングとピニオンギヤシャフトとの間に配置され、クラッチハウジングにスプライン係合する複数のアウタクラッチプレートと、ピニオンギヤシャフトにスプライン係合する複数のインナクラッチプレートとを有している。

　このような駆動力伝達装置は、組み立ての際に、複数のインナクラッチプレートのスプライン歯とピニオンギヤシャフトのスプライン歯との回転方向の位置を合わせる必要がある。本出願人は、この位置合わせの方法として、特許文献１，２に記載されたものを提案している。特許文献１に記載の方法では、クラッチハウジング内に潤滑油を注入するための注入孔にピンを挿入し、このピンをインナクラッチプレートに形成した貫通孔に挿通させながら、クラッチハウジングへの複数のインナクラッチプレートの組み付けを行う。注入孔は、潤滑油を注入した後にシール部材によって封止される。

　特許文献２に記載された方法では、外周にスプライン係合部が形成された筒状の組付部材をクラッチハウジング内に配置し、アウタクラッチプレートのスプライン突起をクラッチハウジングのスプライン突起に係合させると共に、インナクラッチプレートのスプライン突起を組付部材のスプライン係合部に係合させて多板クラッチを組み立てた後、組付部材とピニオンギヤシャフトとを入れ替えるようにして多板クラッチの内側にピニオンギヤシャフトを挿通させる。

特開２００９－１４１００号公報特開２０１７－１５４５７５号公報特開２０１７－１９０８４３号公報

　上記のように構成された駆動力伝達装置は、車両に搭載された後、当該車両のメンテナンス時などに分解及び再組み立てされる場合がある。この再組み立ての際に、複数のインナクラッチプレートのスプライン歯とピニオンギヤシャフトのスプライン歯との回転方向の位置が合わないと、多板クラッチの内側にピニオンギヤシャフトを挿通させる作業が困難になってしまうという問題があった。

　本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、組み立て時において複数のインナクラッチプレートとシャフトとをスプライン係合させる作業の作業性を向上させることが可能な駆動力伝達装置を提供することにある。

　本発明は、上記の目的を達成するため、外周端部に複数の係合突起が設けられた複数のアウタクラッチプレート、及び内周端部に複数の係合突起が設けられた複数のインナクラッチプレートを有する多板クラッチと、前記複数のアウタクラッチプレートのそれぞれの前記複数の係合突起が係合する複数のスプライン歯が内周に形成された円筒部、及び前記円筒部の軸方向一端部に設けられた底部を一体に有する有底円筒状のクラッチハウジングと、前記複数のインナクラッチプレートのそれぞれの前記複数の係合突起が係合する複数のスプライン歯が外周に形成されたシャフトと、前記多板クラッチを前記クラッチハウジングの前記底部に向かって軸方向に押圧する押圧部材と、を備え、前記底部に複数のねじ穴が軸方向に延在して形成されており、前記複数のねじ穴のうち少なくとも一つのねじ穴が、前記複数のインナクラッチプレートと軸方向に並ぶ位置で前記底部を軸方向に貫通している、駆動力伝達装置を提供する。

　本発明に係る駆動力伝達装置によれば、組み立て時において複数のインナクラッチプレートとシャフトとをスプライン係合させる作業の作業性を向上させることが可能となる。

本発明の第１の実施の形態に係る駆動力伝達装置が搭載された４輪駆動車の概略の構成例を示す概略構成図である。駆動力伝達装置、リヤディファレンシャル、及びデフキャリヤを示す断面図である。駆動力伝達装置の一部を示す断面図である。メインアウタクラッチプレートを示す構成図である。メインインナクラッチプレートを示す構成図である。メインカムの車両前方側の面を示す構成図である。クラッチハウジングの底部を車両前方側から見た構成図である。図５ＡのＡ－Ａ線におけるクラッチハウジングの断面図である。駆動力伝達装置を分解した状態を示す説明図である。位置決めピンによって複数のインナクラッチプレート及びメインカムの回転が規制された状態を模式的に示す説明図である。第１の実施の形態の変形例に係るアーマチャを示す構成図である。図８ＡのＢ－Ｂ線断面図である。第１の実施の形態の変形例に係る第１の組立体を示す断面図である。第２の実施の形態に係る第１の組立体を示す断面図である。図９Ａの部分拡大図である。

［第１の実施の形態］
　本発明の第１の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。

（４輪駆動車の全体構成）
　図１は、本発明の第１の実施の形態に係る駆動力伝達装置が搭載された４輪駆動車の概略の構成例を示す概略構成図である。この４輪駆動車１は、左右の前輪１０１，１０２を主駆動輪として備え、左右の後輪１０３，１０４を補助駆動輪として備えている。駆動源１１の駆動力は、トランスミッション１２で変速されて前輪１０１，１０２に常時伝達されると共に、車両状態に応じて後輪１０３，１０４にも伝達される。駆動源１１は、例えばエンジンであるが、電動モータであってもよく、エンジンと電動モータとを組み合わせたものであってもよい。

　４輪駆動車１は、トランスミッション１２で変速された駆動源１１の駆動力を左右の前輪１０１，１０２及び左右の後輪１０３，１０４に伝達する駆動力伝達系として、フロントディファレンシャル１３及びリヤディファレンシャル１４と、フロントディファレンシャル１３と左右の前輪１０１，１０２との間に配置された前輪側の左右のドライブシャフト１５１，１５２と、リヤディファレンシャル１４と左右の後輪１０３，１０４との間に配置された後輪側の左右のドライブシャフト１６１，１６２と、車両前後方向に駆動力を伝達するプロペラシャフト１７と、フロントディファレンシャル１３とプロペラシャフト１７との間に配置されたギヤ機構１８と、プロペラシャフト１７とリヤディファレンシャル１４との間に配置された駆動力伝達装置１０とを有している。駆動力伝達装置１０及びリヤディファレンシャル１４は、車体１００に固定されたデフキャリヤ１９に収容されている。

　フロントディファレンシャル１３は、フロントデフケース１３１と、フロントデフケース１３１に固定されたピニオンピン１３２と、ピニオンピン１３２に支承された一対のピニオンギヤ１３３，１３３と、一対のピニオンギヤ１３３，１３３に噛み合う一対のサイドギヤ１３４，１３４とを有し、一対のサイドギヤ１３４，１３４にそれぞれ左右のドライブシャフト１５１，１５２が相対回転不能に連結されている。フロントデフケース１３１には、トランスミッション１２から駆動源１１の駆動力が伝達される。ギヤ機構１８は、フロントデフケース１３１に固定されたリングギヤ１８１、及びリングギヤ１８１に噛み合うピニオンギヤ１８２からなる。

　プロペラシャフト１７は、前側シャフト部１７１及び後側シャフト部１７２と、前側シャフト部１７１とギヤ機構１８のピニオンギヤ１８２とを連結する前側ユニバーサルジョイント１７３と、前側シャフト部１７１と後側シャフト部１７２とを連結する摺動式等速ジョイント１７４と、後側シャフト部１７２と駆動力伝達装置１０のクラッチハウジング２（後述）とを連結する後側ユニバーサルジョイント１７５とを有している。

　リヤディファレンシャル１４は、リヤデフケース１４１と、リヤデフケース１４１に固定されたピニオンピン１４２と、ピニオンピン１４２に支承された一対のピニオンギヤ１４３，１４３と、一対のピニオンギヤ１４３，１４３にそれぞれ噛み合う一対のサイドギヤ１４４，１４４と、リヤデフケース１４１の外周に固定されたリングギヤ１４５とを有している。一対のサイドギヤ１４４，１４４には、それぞれ左右のドライブシャフト１６１，１６２が相対回転不能に連結されている。

　駆動力伝達装置１０は、制御装置９０によって制御され、車両状態に応じてプロペラシャフト１７からリヤディファレンシャル１４に伝達する駆動力を調節可能である。制御装置９０は、左右の前輪１０１，１０２及び左右の後輪１０３，１０４の回転速度を検出する回転速センサ９０１～９０４の検出値、ならびにアクセルペダル１１１の踏み込み量を検出するアクセルペダルセンサ９０５の検出値を取得可能であり、これらのセンサ９０１～９０５の検出値等に基づいて駆動力伝達装置１０を制御する。

（駆動力伝達装置の構成）
　図２は、駆動力伝達装置１０、リヤディファレンシャル１４、及びデフキャリヤ１９を示す断面図である。図３は、駆動力伝達装置１０の一部を示す断面図である。

　駆動力伝達装置１０は、プロペラシャフト１７に連結されるクラッチハウジング２と、クラッチハウジング２の車両後方側の端部に固定された蓋体３と、クラッチハウジング２と同軸配置されたピニオンギヤシャフト４と、クラッチハウジング２とピニオンギヤシャフト４との間に配置されたメインクラッチ５と、メインクラッチ５を押圧する推力を発生するカム機構６と、カム機構６を作動させる電磁クラッチ機構７とを有している。

　ピニオンギヤシャフト４は、車両後方側の端部に設けられたギヤ部４１と、軸受支持された軸部４２と、軸部４２の車両前方側に設けられたスプライン係合部４３と、スプライン係合部４３のさらに車両前方側に設けられたボス部４４とを一体に有している。軸部４２の一部とスプライン係合部４３及びボス部４４は、クラッチハウジング２の内側に配置されている。スプライン係合部４３の外周には、軸方向に延びる複数のスプライン歯４３１が設けられている。

　ピニオンギヤシャフト４のギヤ部４１は、リヤディファレンシャル１４のリングギヤ１４５に噛み合っている。リヤデフケース１４１は、一対の円錐ころ軸受１４６，１４７によってデフキャリヤ１９に支持されている。デフキャリヤ１９は、車両前方側の本体１９１と車両後方側の蓋体１９２とが複数のボルト１９３によって締結されている。デフキャリヤ１９の内部には、デフオイル１９０が封入されている。デフキャリヤ１９からのデフオイル１９０の漏出は、ドライブシャフト１６１，１６２との間に配置されたシール部材１９４，１９５、及び本体１９１の車両前方側の端部に配置されたシール部材１９６によって抑止されている。

　ピニオンギヤシャフト４の軸部４２は、一対の転がり軸受８１１，８１２によってデフキャリヤ１９の本体１９１に対して回転可能に支持され、回転軸線Ｏを中心として回転する。本実施の形態では、一対の転がり軸受８１１，８１２のうちギヤ部４１側の一方の転がり軸受８１１が円錐ころ軸受であり、他方の転がり軸受８１２がアンギュラ玉軸受である。転がり軸受８１１，８１２の間にはスペーサ８１３が配置されている。一対の転がり軸受８１１，８１２には、軸部４２の雄ねじ部４２１に螺合したナット８１４によって予圧が付与されている。

　クラッチハウジング２は、例えばアルミニウム合金等の非磁性金属からなり、メインクラッチ５を収容する円筒部２１と、円筒部２１の軸方向一端部に設けられた底部２２とを一体に有する有底円筒状である。クラッチハウジング２内には、潤滑油２Ｌ（図３参照）が収容されている。円筒部２１の内周には、軸方向に延びる複数のスプライン歯２１１が設けられている。底部２２には、後側ユニバーサルジョイント１７５のヨーク部材１７６が複数のボルト１７７によって取り付けられる。図２では、このうち二つのボルト１７７を図示している。

　クラッチハウジング２の中心部には、底部２２を軸方向に貫通する貫通孔２００が形成されている。図３に示すように、貫通孔２００の内面２００ａとピニオンギヤシャフト４のボス部４４の外周面４４ａとの間には、玉軸受８２が配置されている。玉軸受８２は、内輪８２１、外輪８２２、複数の転動体８２３、及び保持器８２４を有し、内輪８２１が止め輪８３によってボス部４４から抜け止めされている。

　また、貫通孔２００の内側には、一対の皿ばね８４１，８４２及びワッシャ８４３が外輪８２２と軸方向に並んで配置されている。ワッシャ８４３は、底部２２に設けられた鍔部２２３に係止されている。外輪８２２は、皿ばね８４１，８４２の復元力によって軸方向に付勢されている。貫通孔２００の開口は、円盤状のキャップ８５によって閉塞されている。

　蓋体３は、クラッチハウジング２の円筒部２１における底部２２側とは反対側の端部に螺合によって取り付けられた外側磁性部材３１と、外側磁性部材３１の内側に溶接によって固定された非磁性リング３２と、非磁性リング３２の内側に溶接によって固定された内側磁性部材３３とを有している。外側磁性部材３１及び内側磁性部材３３は、鉄系金属等の軟磁性金属からなる。非磁性リング３２は、オーステナイト系ステンレス等の非磁性金属からなる。蓋体３は、クラッチハウジング２の開口側の端部とピニオンギヤシャフト４との間を閉塞している。

　内側磁性部材３３は、外側磁性部材３１よりも車両後方側に長く延在しており、その先端部に軸受嵌合部３３１（図２参照）が設けられている。軸受嵌合部３３１の外周には、デフキャリヤ１９との間に玉軸受８６が配置されている。内側磁性部材３３は、その中心部に貫通孔３３０が設けられており、この貫通孔３３０にピニオンギヤシャフト４の軸部４２が挿通されている。貫通孔３３０の内径は、貫通孔３３０内における軸部４２の外径よりも僅かに大きく形成されている。内側磁性部材３３と軸部４２との間には、クラッチハウジング２からの潤滑油２Ｌの漏出を防ぐためのシール部材８７が配置されている。

　クラッチハウジング２及び蓋体３は、車両後方側の一部がデフキャリヤ１９の本体１９１に収容されている。クラッチハウジング２及び蓋体３とデフキャリヤ１９との隙間からの異物の侵入は、クラッチハウジング２の外周に取り付けられたデフレクタ８８１及びシール部材８８２、及びデフキャリヤ１９に取り付けられたスリンガ８８３によって抑えられている。

　図３に示すように、メインクラッチ５は、複数のメインアウタクラッチプレート５１と複数のメインインナクラッチプレート５２とを軸方向に交互に配置してなる湿式の多板クラッチである。メインクラッチ５は、複数のメインアウタクラッチプレート５１と複数のメインインナクラッチプレート５２との摩擦力により、クラッチハウジング２からピニオンギヤシャフト４に駆動力を伝達する。複数のメインアウタクラッチプレート５１と複数のメインインナクラッチプレート５２との摩擦摺動は、潤滑油２Ｌによって潤滑される。

　複数のメインアウタクラッチプレート５１は、クラッチハウジング２の円筒部２１に対して軸方向移動可能かつ相対回転不能にスプライン係合している。複数のメインインナクラッチプレート５２は、ピニオンギヤシャフト４のスプライン係合部４３に対して軸方向移動可能かつ相対回転不能にスプライン係合している。クラッチハウジング２は、複数のメインアウタクラッチプレート５１と共に回転し、ピニオンギヤシャフト４は、複数のメインインナクラッチプレート５２と共に回転する。

　カム機構６は、軸方向に並ぶメインカム６１及びパイロットカム６２と、メインカム６１とパイロットカム６２との間に配置された複数のカムボール６３とを有している。メインカム６１は、ピニオンギヤシャフト４のスプライン係合部４３に対して軸方向移動可能かつ相対回転不能にスプライン係合している。パイロットカム６２は、内側磁性部材３３との間に配置されたスラストころ軸受８９により、車両後方側への軸方向移動が規制されている。メインクラッチ５は、メインカム６１とクラッチハウジング２の底部２２との間における円筒部２１の内側に配置されている。

　メインカム６１には、周方向に沿って円弧状に延在し、軸方向の深さが周方向の中央部から端部に向かって徐々に浅くなるカム溝６１１が形成されている。また、パイロットカム６２にも同様に、周方向に沿って円弧状に延在し、軸方向の深さが周方向の中央部から端部に向かって徐々に浅くなるカム溝６２１が形成されている。カムボール６３は、カム溝６１１，６２１を転動可能であり、カムボール６３がカム溝６１１，６２１を中央部から端部に向かって転動することによりカム推力が発生する。メインカム６１は、このカム推力によってメインクラッチ５を軸方向に押圧する押圧部材である。

　パイロットカム６２の外周には、軸方向に延びる複数のスプライン突起６２２が設けられている。カム機構６は、電磁クラッチ機構７によってクラッチハウジング２からパイロットカム６２のスプライン突起６２２に伝達されるトルクにより作動し、カム推力を発生させる。

　電磁クラッチ機構７は、軸方向に交互に配置された複数のパイロットアウタクラッチプレート７１及びパイロットインナクラッチプレート７２と、電磁コイル７３と、電磁コイル７３の磁力によって軸方向に移動するアーマチャ７４と、電磁コイル７３を支持するヨーク７５とを有して構成されている。パイロットアウタクラッチプレート７１は、クラッチハウジング２の複数のスプライン歯２１１に係合する複数の係合突起７１１を外周端部に有している。パイロットインナクラッチプレート７２は、パイロットカム６２の複数のスプライン突起６２２に係合する複数の係合突起７２１を内周端部に有している。

　複数のパイロットアウタクラッチプレート７１及びパイロットインナクラッチプレート７２は、鉄等の軟磁性金属からなり、蓋体３とアーマチャ７４との間に配置されている。パイロットアウタクラッチプレート７１及びパイロットインナクラッチプレート７２には、磁束の短絡を防ぐための複数の円弧状のスリット７１２，７２２が、非磁性リング３２と軸方向に並ぶ位置にそれぞれ形成されている。

　アーマチャ７４は、クラッチハウジング２の複数のスプライン歯２１１に係合する複数の係合突起７４１を外周端部に有しており、クラッチハウジング２に対して軸方向移動可能であると共に、クラッチハウジング２との相対回転が規制されている。アーマチャ７４は、パイロットカム６２の径方向外側で、メインカム６１の車両後方側（クラッチハウジング２の底部２２とは反対側）に配置されている。

　電磁コイル７３に通電されると、発生する磁力によってアーマチャ７４が軸方向に移動し、蓋体３とアーマチャ７４との間にパイロットアウタクラッチプレート７１及びパイロットインナクラッチプレート７２が挟まれて摩擦接触する。これにより、クラッチハウジング２の回転力の一部が、パイロットカム６２をメインカム６１に対して相対回転させるトルクとしてパイロットカム６２に伝達される。

　電磁コイル７３は、樹脂製のホルダ７３１に保持されると共に、軟磁性金属からなるヨーク７５に支持されている。ヨーク７５は、ボルト７５１によってデフキャリヤ１９の本体１９１に固定されている。ホルダ７３１には、コネクタピン７３２が保持されており、制御装置９０からコネクタピン７３２を介して電磁コイル７３に励磁電流が供給される。

　図４Ａは、メインアウタクラッチプレート５１を示す構成図である。図４Ｂは、メインインナクラッチプレート５２を示す構成図である。図４Ｃは、メインカム６１の車両前方側の面を示す構成図である。以下、メインアウタクラッチプレート５１を単にアウタクラッチプレート５１といい、メインインナクラッチプレート５２を単にインナクラッチプレート５２という。

　アウタクラッチプレート５１は、金属製であり、円環板状に形成されている。アウタクラッチプレート５１は、クラッチハウジング２の複数のスプライン歯２１１に係合する複数の係合突起５１１を外周端部に有している。複数のアウタクラッチプレート５１のうち最もクラッチハウジング２の底部２２側に配置されたアウタクラッチプレート５１は、底部２２の内面２２ａに対向している。

　インナクラッチプレート５２は、円板状に形成された金属製の芯材５２０と、芯材５２０の両面に貼り付けられた摩擦材５３とを有している。芯材５２０の内周端部には、ピニオンギヤシャフト４の複数のスプライン歯４３１に係合する複数の係合突起５２１が設けられている。摩擦材５３は、アウタクラッチプレート５１と対向する部分に環状に設けられている。

　メインカム６１は、例えば焼結によって形成された金属製であり、ピニオンギヤシャフト４の複数のスプライン歯４３１に係合する複数の係合突起６１２を内周端部に有している。メインカム６１は、メインクラッチ５を押圧する押圧面６１ａをパイロットカム６２とは反対側の面に有している。

　図５Ａは、クラッチハウジング２の底部２２側の端部を車両前方側から見た構成図である。図５Ｂは、図５ＡのＡ－Ａ線におけるクラッチハウジング２の断面図である。底部２２には、後側ユニバーサルジョイント１７５のヨーク部材１７６を締結するための複数のボルト１７７がそれぞれ螺合する複数のねじ穴２２１が設けられている。本実施の形態では、底部２２に四つのねじ穴２２１が設けられており、各ねじ穴２２１の内周に、ねじ山が螺旋状に形成されている。それぞれのねじ穴２２１は、ヨーク部材１７６と対向する底部２２の外面２２ｂに開口し、軸方向に延在している。

　四つのねじ穴２２１のうち、少なくとも一つのねじ穴２２１は、複数のインナクラッチプレート５２と軸方向に並ぶ位置で、底部２２を軸方向に貫通している。本実施の形態では、四つのねじ穴２２１のうち、一つのねじ穴２２１が底部２２を軸方向に貫通し、底部２２の内面２２ａに開口している。他の三つのねじ穴２２１は、底部２２を貫通しない止まり穴である。以下、この一つのねじ穴２２１を、貫通ねじ穴２０という。

　図５Ｂに示すように、貫通ねじ穴２０は、内周にねじ山２２２が形成されたねじ穴部２０１と、ねじ穴部２０１よりも小径の貫通穴部２０２とが軸方向に連通している。ねじ穴部２０１の一端は、底部２２の外面２２ｂに開口している。貫通穴部２０２の一端は、底部２２の内面２２ａに開口している。

　貫通ねじ穴２０からの潤滑油２Ｌの漏出は、貫通ねじ穴２０のねじ穴部２０１の内面とボルト１７７との間のシール剤２Ｓ（図３参照）によって抑止されている。ボルト１７７は、頭部１７７ａと雄ねじ部１７７ｂとを有し、シール剤２Ｓが塗布された雄ねじ部１７７ｂがねじ穴部２０１に螺合する。シール剤２Ｓは、潤滑油２Ｌの漏出を防ぐと共に、ボルト１７７を緩み止めする機能も有している。

　図４Ｂに示すように、インナクラッチプレート５２には、インナクラッチプレート５２を軸方向に貫通する複数の貫通穴５２２が形成されている。本実施の形態では、八つの貫通穴５２２が周方向等間隔に形成されている。それぞれの貫通穴５２２は、摩擦材５３の内側で芯材５２０を軸方向に貫通している。ピニオンギヤシャフト４の回転軸線Ｏから貫通穴５２２の中心までの距離は、回転軸線Ｏから貫通ねじ穴２０の中心までの距離と同等である。複数のインナクラッチプレート５２は、それぞれの貫通穴５２２が軸方向に沿って直線状に並ぶように、ピニオンギヤシャフト４の複数のスプライン歯４３１に係合する。

　なお、インナクラッチプレート５２の複数の貫通穴５２２は、後述する位置決めピン９１による位置合わせに用いられる他、クラッチハウジング２内で潤滑油２Ｌを流動させる油穴としての機能も有している。また、複数の貫通穴５２２が形成されていることによって芯材５２０が軸方向に撓みやすくなる。このため、メインクラッチ５がメインカム６１に押圧されてインナクラッチプレート５２が底部２２側に移動するとき、例えばインナクラッチプレート５２の係合突起５２１がピニオンギヤシャフト４のスプライン歯４３１に引っかかって十分に軸方向に変位しなかったとしても、摩擦材５３が貼り付けられた部分は芯材５２０の撓みによってアウタクラッチプレート５１の間に挟まれ、適切に摩擦力を発生させることができる。

　図４Ｃに示すように、メインカム６１には、複数のインナクラッチプレート５２のそれぞれの貫通穴５２２と軸方向に並ぶ位置に、押圧面６１ａよりも軸方向に窪む穴部６１０が形成されている。本実施の形態では、穴部６１０がメインカム６１を軸方向に貫通している。ただし、穴部６１０はメインカム６１を貫通していなくてもよい。メインカム６１における穴部６１０の数は、インナクラッチプレート５２における貫通穴５２２の数と同じ（本実施の形態では八つ）である。

　複数のインナクラッチプレート５２のそれぞれの貫通穴５２２及びメインカム６１の穴部６１０と、クラッチハウジング２の貫通ねじ穴２０とは、複数のインナクラッチプレート５２及びメインカム６１がクラッチハウジング２に対して所定の角度位置であるときに軸方向に沿って並ぶ。本実施の形態では、インナクラッチプレート５２に八つの貫通穴５２２が等間隔に形成されているので、インナクラッチプレート５２がクラッチハウジング２に対して相対回転したとき、４５°ごとにインナクラッチプレート５２の貫通穴５２２及びメインカム６１の穴部６１０と貫通ねじ穴２０とが軸方向に並ぶ。

　本実施の形態に係る駆動力伝達装置１０は、クラッチハウジング２、複数のインナクラッチプレート５２、及びメインカム６１の上記構成により、これらをピニオンギヤシャフト４から分解して取り外した後の再組み立ての作業が容易化される。次に、図６及び図７を参照し、駆動力伝達装置１０を分解及び再組み立てする際の手順について説明する。

（駆動力伝達装置１０の分解方法及び組み立て方法）
　図６は、駆動力伝達装置１０を分解した状態を示す説明図である。駆動力伝達装置１０は、例えば潤滑油２Ｌやシール部材等の交換時などに、第１の組立体１０Ａと第２の組立体１０Ｂとに分解される。第１の組立体１０Ａには、クラッチハウジング２、蓋体３、メインクラッチ５、カム機構６、複数のパイロットアウタクラッチプレート７１及びパイロットインナクラッチプレート７２、アーマチャ７４、シール部材８７、デフレクタ８８１、シール部材８８２、ならびにスラストころ軸受８９が含まれる。

　第２の組立体１０Ｂには、ピニオンギヤシャフト４、転がり軸受８１１，８１２、スペーサ８１３、ナット８１４、電磁コイル７３、ホルダ７３１、ヨーク７５、スリンガ８８３、デフキャリヤ１９、シール部材１９４，１９５，１９６、及びリヤディファレンシャル１４が含まれる。なお、後側ユニバーサルジョイント１７５のヨーク部材１７６、玉軸受８２、止め輪８３、皿ばね８４１，８４２、ワッシャ８４３、及びキャップ８５は、予めクラッチハウジング２から取り外されている。

　駆動力伝達装置１０を分解し、第１の組立体１０Ａと第２の組立体１０Ｂとを分離する作業は、次の第１乃至第３分解工程によって行う。第１分解工程では、複数のインナクラッチプレート５２の複数の係合突起５２１及びメインカム６１の複数の係合突起６１２がピニオンギヤシャフト４の複数のスプライン歯４３１に係合した係合状態を保ちつつ、クラッチハウジング２をピニオンギヤシャフト４に対して相対回転させ、クラッチハウジング２の貫通ねじ穴２０と複数のインナクラッチプレート５２の貫通穴５２２及びメインカム６１の穴部６１０とを軸方向に沿って直線状に並べる。この際、各インナクラッチプレート５２の複数の貫通穴５２２の何れか一つ、及びメインカム６１の複数の穴部６１０の何れか一つが、貫通ねじ穴２０と軸方向に並べばよい。

　第２分解工程では、クラッチハウジング２の貫通ねじ穴２０に位置決めピン９１を挿入し、位置決めピン９１を複数のインナクラッチプレート５２のそれぞれの貫通穴５２２及びメインカム６１の穴部６１０に挿通させる。これにより、クラッチハウジング２に対する複数のインナクラッチプレート５２及びメインカム６１の相対回転が規制される。位置決めピン９１は、インナクラッチプレート５２の貫通穴５２２及びメインカム６１の穴部６１０の内径よりも小さい外径を有する円柱状の部材である。

　本実施の形態では、穴部６１０がメインカム６１を軸方向に貫通しているので、位置決めピン９１がクラッチハウジング２内に挿入されたとき、位置決めピン９１の一端部がアーマチャ７４に突き当たる。この際、位置決めピン９１の他端部は、クラッチハウジング２の外部に位置している。なお、位置決めピン９１を抜け止めするために、位置決めピン９１の長手方向の一部に、貫通ねじ穴２０のねじ穴部２０１に螺合する雄ねじ部を設けてもよい。

　第３分解工程では、クラッチハウジング２に対する複数のインナクラッチプレート５２及びメインカム６１の相対回転を位置決めピン９１によって規制した状態で、複数のインナクラッチプレート５２及びメインカム６１からピニオンギヤシャフト４を抜くように、クラッチハウジング２とデフキャリヤ１９とを軸方向に相対移動させる。これにより、図６に示すように、第１の組立体１０Ａと第２の組立体１０Ｂとが分離される。

　図７は、位置決めピン９１によって複数のインナクラッチプレート５２及びメインカム６１の回転が規制された状態を模式的に示す説明図である。図７では、各インナクラッチプレート５２のそれぞれの貫通穴５２２、及びメインカム６１の穴部６１０に挿通された位置決めピン９１を、二点鎖線で仮想的に示している。複数のインナクラッチプレート５２及びメインカム６１は、貫通穴５２２及び穴部６１０に位置決めピン９１が挿通されることにより、複数の係合突起５２１，６１２の周方向の位置が互いに一致する。

　第１の組立体１０Ａと第２の組立体１０Ｂとを結合し、駆動力伝達装置１０を再組み立てする作業は、次の第１乃至第３組立工程によって行う。第１組立工程では、各インナクラッチプレート５２及びメインカム６１の複数の係合突起５２１，６１２の位置と、ピニオンギヤシャフト４のスプライン係合部４３における複数のスプライン歯４３１の位置とを合わせ、複数のインナクラッチプレート５２及びメインカム６１の中心部にピニオンギヤシャフト４を挿通させる。

　第２組立工程では、ワッシャ８４３、皿ばね８４１，８４２、玉軸受８２、及び止め輪８３を順次組み付ける。これにより、クラッチハウジング２とピニオンギヤシャフト４の軸方向の相対移動が規制される。第３組立工程では、位置決めピン９１を貫通ねじ穴２０から抜き取り、玉軸受８２の内輪８２１と外輪８２２との間からクラッチハウジング２内に潤滑油２Ｌを注入し、キャップ８５によってクラッチハウジング２の貫通孔２００を閉塞する。なお、潤滑油２Ｌを貫通ねじ穴２０から注入してもよい。

　その後、クラッチハウジング２の底部２２には、複数のボルト１７７によって後側ユニバーサルジョイント１７５のヨーク部材１７６が取り付けられる。前述のように、ボルト１７７にはシール剤２Ｓが塗布され、貫通ねじ穴２０にボルト１７７が螺合することによって貫通ねじ穴２０が液密にシールされる。

　なお、第１の組立体１０Ａは、例えばメインクラッチ５の摩耗による性能劣化等が発生した場合に車両修理工場等で交換するための交換品として用いることができる。つまり、４輪駆動車１から駆動力伝達装置１０の一部の部品（第１の組立体１０Ａに含まれるクラッチハウジング２、蓋体３、メインクラッチ５、カム機構６など）を取り外した後、交換品として新たに製造された第１の組立体１０Ａを取り付けることで、作業効率よく部品の交換を行うことができる。

（第１の実施の形態の効果）
　以上説明した第１の実施の形態によれば、第１組立工程を行う際、クラッチハウジング２に対する複数のインナクラッチプレート５２及びメインカム６１の相対回転が位置決めピン９１によって規制されているので、ピニオンギヤシャフト４を複数のインナクラッチプレート５２及びメインカム６１の中心部に挿通させる作業を容易に行うことができる。より具体的には、メインカム６１の複数の係合突起６１２の位置とピニオンギヤシャフト４の複数のスプライン歯４３１の位置とを合わせれば、そのままピニオンギヤシャフト４を軸方向に差し込むことで、複数のインナクラッチプレート５２のそれぞれの複数の係合突起５２１をピニオンギヤシャフト４の複数のスプライン歯４３１に係合させることができる。これにより、再組み立ての作業性を向上させることが可能となる。また、再組み立ての前後で複数のインナクラッチプレート５２とメインカム６１の位相がずれないので、品質保持にも寄与する。

［第１の実施の形態の変形例］
　次に、図８Ａ、図８Ｂ、及び図８Ｃを参照して第１の実施の形態の変形例について説明する。図８Ａは、第１の実施の形態の変形例に係るアーマチャ７４を示す構成図である。図８Ｂは、図８ＡのＢ－Ｂ線断面図である。図８Ｃは、第１の実施の形態の変形例に係る第１の組立体１０Ｃを示す断面図である。図８Ａでは、アーマチャ７４におけるメインカム６１との対向面７４ａ側を示している。

　本変形例では、アーマチャ７４に、メインカム６１との対向面７４ａから軸方向に窪んで形成された凹部７４２が形成されている。凹部７４２は、貫通ねじ穴２０と軸方向に並ぶ位置に形成されており、アーマチャ７４を貫通していない。図８Ｃに示すように、クラッチハウジング２内に位置決めピン９１が挿入されたとき、位置決めピン９１の一端部は、メインカム６１の穴部６１０を通過して、凹部７４２の底面７４２ａに突き当てられる。

　本変形例において、アーマチャ７４は、押圧部材としてのメインカム６１の押圧面６１ａとは反対側に配置され、かつクラッチハウジング２との相対回転が規制された背面側部材である。アーマチャ７４に凹部７４２が形成されていることにより、位置決めピン９１が貫通ねじ穴２０の貫通穴部２０２とアーマチャ７４の凹部７４２との２箇所で支持されて姿勢が安定し、クラッチハウジング２内での位置決めピン９１の傾きが抑制される。これにより、メインカム６１の複数の係合突起６１２の位置と複数のインナクラッチプレート５２のそれぞれの複数の係合突起５２１とがより確実に軸方向に沿って並び、作業性がさらに向上する。

［第２の実施の形態］
　次に、本発明の第２の実施の形態について、図９Ａ及び図９Ｂを参照して説明する。図９Ａは、第２の実施の形態に係る第１の組立体１０Ｄを示す断面図である。図９Ｂは、図９Ａの部分拡大図である。

　第１の実施の形態では、位置決めピン９１によって複数のインナクラッチプレート５２及びメインカム６１のクラッチハウジング２に対する回転を規制する場合について説明した。本実施の形態では、クラッチハウジング２の貫通ねじ穴２０に挿入された押付プラグ９２によって複数のインナクラッチプレート５２及びメインカム６１を軸方向に押し付け、摩擦力によって複数のインナクラッチプレート５２及びメインカム６１のクラッチハウジング２に対する回転を規制する。

　このための構成として、本実施の形態では、複数のアウタクラッチプレート５１のうちクラッチハウジング２の底部２２と軸方向に対向する一つのアウタクラッチプレート５１が、貫通ねじ穴２０のメインクラッチ５側の開口部の少なくとも一部と重なるように形成されている。以下、この一つのアウタクラッチプレート５１を底部側アウタクラッチプレート５１Ａという。底部側アウタクラッチプレート５１Ａは、他のアウタクラッチプレート５１よりも内径が小さく形成されている。

　押付プラグ９２は、貫通ねじ穴２０のねじ穴部２０１に螺合するボルト９２１と、ボルト９２１と底部側アウタクラッチプレート５１Ａとの間に配置される弾性体９２２とを有している。本実施の形態では、弾性体９２２がコイルばねである。ただし、これに限らず、弾性体９２２が例えばゴム状の樹脂材であってもよい。弾性体９２２は、ボルト９２１がねじ穴部２０１に螺合することにより底部側アウタクラッチプレート５１Ａとの間で軸方向に圧縮され、復元力によって底部側アウタクラッチプレート５１Ａを軸方向に押し付ける。底部側アウタクラッチプレート５１Ａは、押付プラグ９２の押し付け力を受ける受け部材として機能する。

　押付プラグ９２は、複数のインナクラッチプレート５２及びメインカム６１のそれぞれの複数の係合突起５２１，６１２がピニオンギヤシャフト４のスプライン係合部４３に係合した状態で、貫通ねじ穴２０に取り付けられる。これにより、複数のインナクラッチプレート５２及びメインカム６１のそれぞれの複数の係合突起５２１，６１２が回転軸線Ｏに沿って直線状に並んだ状態で、クラッチハウジング２に対する回転が規制される。

　以上説明した第２の実施の形態によっても、第１の実施の形態と同様、クラッチハウジング２に対する複数のインナクラッチプレート５２及びメインカム６１の相対回転が押付プラグ９２によって規制されるので、ピニオンギヤシャフト４を複数のインナクラッチプレート５２及びメインカム６１の中心部に挿通させる再組み立て作業を容易に行うことができる。

（付記）
　以上、本発明を第１及び第２実施の形態に基づいて説明したが、これらの実施の形態は請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、一部の構成を省略し、あるいは構成を追加もしくは置換して、適宜変形して実施することが可能である。またさらに、例えば下記のように変形することも可能である。

　第１及び第２の実施の形態では、クラッチハウジング２の底部２２に形成された複数のねじ穴２２１のうち、一つのねじ穴２２１を貫通ねじ穴２０とした場合について説明したが、これに限らず、複数のねじ穴２２１を貫通ねじ穴２０としてもよい。例えば二つのねじ穴２２１を貫通ねじ穴２０とする場合、クラッチハウジング２の回転バランスを考慮して、回転軸線Ｏを挟む対角線上に位置するように、それぞれの貫通ねじ穴２０を設けることが望ましい。

　また、第２の実施の形態では、複数のアウタクラッチプレート５１のうち一つのアウタクラッチプレート５１の内径を小さくして底部２２に対向させ、貫通ねじ穴２０のメインクラッチ５側の開口部を塞ぐようにした場合について説明したが、これに限らず、全てのアウタクラッチプレート５１の内径を、貫通ねじ穴２０のメインクラッチ５側の開口部の少なくとも一部を塞ぐ寸法としてもよい。また、押付プラグ９２の押し付け力を受ける受け部材としては、アウタクラッチプレート５１に限らず、他の部材であってもよい。すなわち、押付プラグ９２の押し付け力を受ける受け部材が、アウタクラッチプレート５１の車両前方側に位置し、押付プラグ９２の押し付け力を受けてクラッチハウジング２に対する複数のインナクラッチプレート５２の相対回転を規制することができ、かつメインクラッチ５の動作・機能を阻害しない部材であってもよい。

１０…駆動力伝達装置
２…クラッチハウジング
２０…貫通ねじ穴（ねじ穴）
２１…円筒部
２２…底部
２２２…ねじ山
４…ピニオンギヤシャフト（シャフト）
５…メインクラッチ（多板クラッチ）
５１…メインアウタクラッチプレート（アウタクラッチプレート）
５１１…係合突起
５２…メインインナクラッチプレート（インナクラッチプレート）
５２１…係合突起
５２２…貫通穴
６１…メインカム（押圧部材）
６１０…穴部
６１２…係合突起
６１ａ…押圧面
７４…アーマチャ（背面側部材）
７４２…凹部
９１…位置決めピン
９２…押付プラグ
９２２…弾性体
２Ｌ…潤滑油
２Ｓ…シール剤

Claims

　外周端部に複数の係合突起が設けられた複数のアウタクラッチプレート、及び内周端部に複数の係合突起が設けられた複数のインナクラッチプレートを有する多板クラッチと、
　前記複数のアウタクラッチプレートのそれぞれの前記複数の係合突起が係合する複数のスプライン歯が内周に形成された円筒部、及び前記円筒部の軸方向一端部に設けられた底部を有する有底円筒状のクラッチハウジングと、
　前記複数のインナクラッチプレートのそれぞれの前記複数の係合突起が係合する複数のスプライン歯が外周に形成されたシャフトと、
　前記多板クラッチを前記クラッチハウジングの前記底部に向かって軸方向に押圧する押圧部材と、を備え、
　前記底部に複数のねじ穴が軸方向に延在して形成されており、前記複数のねじ穴のうち少なくとも一つのねじ穴が、前記複数のインナクラッチプレートと軸方向に並ぶ位置で前記底部を軸方向に貫通している、
　駆動力伝達装置。
　前記複数のインナクラッチプレートのそれぞれに、同インナクラッチプレートを軸方向に貫通する貫通穴が形成されており、
　前記複数のインナクラッチプレートのそれぞれの前記貫通穴と前記クラッチハウジングの前記ねじ穴とが、前記複数のインナクラッチプレートが前記クラッチハウジングに対して所定の角度位置であるときに軸方向に沿って並ぶ、
　請求項１に記載の駆動力伝達装置。
　前記押圧部材における前記複数のインナクラッチプレートのそれぞれの前記貫通穴と軸方向に並ぶ位置に、前記多板クラッチを押圧する押圧面よりも軸方向に窪む穴部が形成されている、
　請求項２に記載の駆動力伝達装置。
　前記穴部が前記押圧部材を軸方向に貫通して形成され、
　前記押圧部材における前記底部とは反対側に、前記クラッチハウジングとの相対回転が規制された背面側部材が配置されており、
　前記背面側部材には、前記ねじ穴と軸方向に並ぶ位置に凹部が形成されている、
　請求項３に記載の駆動力伝達装置。
　前記複数のアウタクラッチプレートのうち前記クラッチハウジングの前記底部と軸方向に対向するアウタクラッチプレートが、前記ねじ穴の前記多板クラッチ側の開口部の少なくとも一部と重なるように形成されている、
　請求項１に記載の駆動力伝達装置。
　前記クラッチハウジング内に、前記複数のインナクラッチプレートと前記複数のアウタクラッチプレートとの摩擦摺動を潤滑する潤滑油が収容されており、
　前記ねじ穴からの前記潤滑油の漏出が、前記ねじ穴に螺合したボルトに塗布されたシール剤によって抑止されている、
　請求項１乃至５の何れか１項に記載の駆動力伝達装置。