JP2017152436A - スリップ転位の発生予測方法、該方法を用いたシリコンウェーハの製造方法、シリコンウェーハの熱処理方法およびシリコンウェーハ - Google Patents

スリップ転位の発生予測方法、該方法を用いたシリコンウェーハの製造方法、シリコンウェーハの熱処理方法およびシリコンウェーハ Download PDF

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Abstract

【課題】熱処理時にウェーハ表面上のクラックを伴う傷からスリップ転位が発生するか否かを高精度に予測できる方法を提供する。【解決手段】所定のシリコンウェーハ中の酸素濃度を求め、次いで求めたウェーハ表面上のクラックの面積および酸素濃度に基づいて、所定の熱処理時にクラックに伴う傷からスリップ転位が発生する臨界せん断応力τcriを求めた後、求めた臨界せん断応力τcriと上記熱処理時にシリコンウェーハに負荷される熱応力τとを比較して、熱応力τが臨界せん断応力τcri以上の場合には、シリコンウェーハにおいて、上記熱処理時にウェーハ外周部表面上の傷からスリップ転位が発生すると判定し、熱応力τが臨界せん断応力τcriを下回る場合には、シリコンウェーハにおいて、上記熱処理時にウェーハ外周部表面上の傷からスリップ転位が発生しないと判定する。【選択図】図1

Description

本発明は、スリップ転位の発生予測方法、該方法を用いたシリコンウェーハの製造方法、シリコンウェーハの熱処理方法およびシリコンウェーハに関する。
例えば、チョクラルスキー(Czochralski,CZ)法により作製したポリッシュドウェーハに不可避に含まれる酸素は、ウェーハ製造工程やデバイス作製工程における熱処理時にその一部が析出して、重金属を捕獲するゲッタリングサイトが形成される。
ここで、シリコンウェーハに熱処理が施されると、ウェーハに含まれる酸素がシリコンと反応して酸素析出物(Bulk Micro Defect,BMD)が発生する。この酸素析出が過剰に進行すると、シリコンウェーハの機械的強度が低下し、シリコンウェーハに対して低い熱応力が与えられただけでもスリップ転位が発生し、ウェーハに反りが発生することが知られている(例えば、非特許文献1および2参照)。
こうしたスリップ転位の発生により、シリコンデバイスの歩留まりが低下するため、ウェーハ製造工程やデバイス作製工程において、熱処理が施されてもスリップ転位が発生しないようにすることが肝要である。
そこで、特許文献1には、BMDサイズを小さくすることにより、BMDから発生するスリップ転位の臨界せん断応力が増加し、酸素析出によるシリコンウェーハの強度低下が抑制されることが記載されている。また、特許文献2には、ウェーハ中に小さなサイズを有するBMDを高密度に形成し、大きなサイズを有するBMDの密度を低く抑えることが、スリップ転位の発生の抑制に有効である旨が記載されている。
さらに、本発明者らは、デバイス作製工程においてスリップ転位が発生する臨界せん断応力τcriが、ウェーハ製造工程で施す熱処理を経たウェーハにおける酸素析出物のサイズLに対する残存酸素濃度Coの比Co/Lに密接に関係していることを見出し、特許文献3において、デバイス作製工程においてスリップ転位を発生させないようにするために、デバイス作製工程に応じて、シリコンウェーハにスリップが発生する臨界せん断応力と残存酸素濃度Coおよび酸素析出物のサイズLとの関係を予め求めておき、デバイス作製工程の温度条件およびシリコンウェーハが受ける熱応力から、ウェーハ製造工程においてシリコンウェーハに対して適切な熱処理を施しておくことを提案した。
国際公開第2006/003812号 特開2008−103673号公報 特開2011−238664号公報
B.Leroy and C.Plougonven,Journal of the Electrochemical Society,1980,Vol.127,p.961 Hirofumi Shimizu,Tetsuo Watanabe and Yoshiharu Kakui,Japanese Journal of Applied Physics,1985,Vol.24,p.815 Koji Sueoka,Masanori Akatsuka,Hisashi Katahama and Naoshi Adachi,Japanese Journal of Applied Physics,1997,Vol.36,p.7095
ところで、上記スリップ転位は、酸素析出物以外に、ウェーハ表面に形成された傷を起点としても発生することが知られている(例えば、国際公開第2010/109873号参照)。こうしたウェーハ表面上の傷は、ウェーハ製造工程やデバイス作製工程において、ウェーハ保持具等の異種材と接触することによりウェーハ外周部に形成されるものであるため、傷の形成自体を防止するのは困難な状況にある。
そこで、こうした傷が存在する前提の下で、ウェーハ製造工程やデバイス作製工程において、ウェーハ表面上の傷からスリップ転位を発生させないようにすることが肝要となる。そのためには、ウェーハ製造工程やデバイス作製工程において所定の熱処理を行った際に、ウェーハ表面上の傷からスリップ転位が発生するか否かを正しく判定できなければならない。
しかしながら、ウェーハ表面上の傷からのスリップ転位の発生と、ウェーハに与えられる応力との定量的な関係が明らかではなく、ウェーハ製造工程やデバイス作製工程において所定の熱処理を行った際に、ウェーハ表面上の傷からスリップ転位が発生するか否かを高精度に予測できる方法は確立されていない。
そこで、本発明の目的は、ウェーハ製造工程やデバイス作製工程における所定の熱処理時に、ウェーハ表面上の傷からスリップ転位が発生するか否かを高精度に予測できるスリップ転位の発生予測方法、該方法を用いたシリコンウェーハの製造方法、シリコンウェーハの熱処理方法およびシリコンウェーハを提案することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するための方途について鋭意究明した。そのために、まず、ウェーハ表面上の傷とスリップ転位の発生との関係について詳細に調査した。その結果、スリップ転位は、全ての傷から発生しているわけではなく、クラックを伴う傷のみから発生していることが判明した。
本発明者らはさらに、上記クラックを伴う傷からスリップ転位が発生する臨界せん断応力τcriが、ウェーハ製造工程やデバイス作製工程における所定の熱処理後のスリップ転位の面積Aおよびシリコンウェーハ中の酸素濃度Cに基づいて高精度に求めることができ、この臨界せん断応力τcriと、ウェーハ製造工程やデバイス作製工程における所定の熱処理時にシリコンウェーハに与えられる応力τとを比較することにより、上記所定の熱処理時にウェーハ表面上の傷からスリップ転位が発生するか否かを高精度に判定できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨構成は以下の通りである。
(1)所定の熱処理が施されたシリコンウェーハの外周部表面に存在するクラックを伴う傷における前記クラックの面積および前記シリコンウェーハ中の酸素濃度を求め、次いで求めた前記クラックの面積および前記酸素濃度に基づいて、前記所定の熱処理時に前記傷からスリップ転位が発生する臨界せん断応力τcriを求めた後、求めた前記臨界せん断応力τcriと前記所定の熱処理時にシリコンウェーハに負荷される熱応力τとを比較して、前記熱応力τが前記臨界せん断応力τcri以上の場合には、シリコンウェーハにおいて、前記所定の熱処理時にウェーハ外周部表面上の傷からスリップ転位が発生すると判定し、前記熱応力τが前記臨界せん断応力τcriを下回る場合には、シリコンウェーハにおいて、前記所定の熱処理時にウェーハ外周部表面上の傷からスリップ転位が発生しないと判定することを特徴とするスリップ転位の発生予測方法。
(2)前記臨界せん断応力τcriは、A:前記クラックの面積、C:前記酸素濃度、T:前記熱処理の温度、ε:ひずみ速度、k:ボルツマン定数、a、bおよびc:定数として以下の式(i)で与えられる、前記(1)に記載のスリップ転位の発生予測方法。
(3)aが4.5であり、bが5442であり、cが7.9×10−4である、前記(2)に記載のスリップ転位の発生予測方法。
(4)前記クラックの面積Aおよび前記酸素濃度Cを求める処理は、前記シリコンウェーハに対して前記所定の熱処理を施した後、該所定の熱処理後のシリコンウェーハにおける前記クラックの面積および前記酸素濃度を測定することにより行う、前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載のスリップ転位の発生予測方法。
(5)前記クラックの面積Aを求める処理は、前記シリコンウェーハに対して前記所定の熱処理を施した後、該所定の熱処理後のシリコンウェーハにおける前記クラックの面積を測定することにより行い、前記所定の熱処理後の前記酸素濃度Cを求める処理はシミュレーション計算により行う、前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載のスリップ転位の発生予測方法。
(6)前記熱応力τは、熱処理装置に前記シリコンウェーハを投入して加熱し、加熱された前記シリコンウェーハの半径方向の温度分布に基づいて求める、前記(1)〜(5)のいずれか一項に記載のスリップ転位の発生予測方法。
(7)前記熱応力τはシミュレーション計算により求める、前記(1)〜(5)のいずれか一項に記載のスリップ転位の発生予測方法。
(8)前記(1)〜(7)に記載のスリップ転位の発生予測方法により前記所定の熱処理時にクラックを伴う傷からスリップ転位が発生しないと判定されるシリコンウェーハが得られる育成条件で単結晶シリコンインゴットを育成し、育成した前記単結晶シリコンインゴットに対してウェーハ加工処理を施すことを特徴とするシリコンウェーハの製造方法。
(9)前記所定の熱処理後の酸素濃度は5×1017atoms/cm以上20×1017atoms/cm以下である、前記(8)に記載のシリコンウェーハの製造方法。
(10)前記(1)〜(7)に記載のスリップ転位の発生予測方法により前記所定の熱処理時にクラックを伴う傷からスリップ転位が発生しないと判定されるように、シリコンウェーハに対して前記所定の熱処理を施すことを特徴とするシリコンウェーハの熱処理方法。
(11)所定の熱処理時に与えられる熱応力τが、前記所定の熱処理時に表面上のクラックを伴う傷からスリップ転位が発生する臨界せん断応力τcriを下回るような酸素濃度を有するシリコンウェーハ。
(12)前記酸素濃度は、5×1017atoms/cm以上20×1017atoms/cm以下である、前記(11)に記載のシリコンウェーハ。
本発明によれば、ウェーハ製造工程やデバイス作製工程の所定の熱処理時にウェーハ表面上の傷からスリップ転位が発生する臨界せん断応力を高精度に求めることができるため、上記所定の熱処理時にウェーハ表面上の傷からスリップ転位が発生するか否かを高精度に予測することができる。
本発明に係るスリップ転位の発生予測方法の一実施形態のフローチャートである。 クラックの面積の定義を説明する図である。 (a)高温4点曲げ試験を説明する模式図、および(b)高温4点曲げ試験においてサンプル片中に与えられる応力分布を示す図である。 (a)クラックを伴わない傷からスリップが発生しない様子を示すSEM像、および(b)クラックを伴う傷からスリップが発生する様子を示すSEM像である。 高温3点曲げ試験を説明する図である。 圧痕荷重と臨界せん断応力との関係を示す図である。 クラックの面積の逆数と臨界せん断応力との関係を示す図である。 臨界せん断応力の実験値と計算値との関係を示す図である。 本発明に係るシリコンウェーハの製造方法の一実施形態のフローチャートである。 本発明に係るシリコンウェーハの熱処理方法の一実施形態のフローチャートである。 本発明により、所定の熱処理時にウェーハ表面上のクラックを伴う傷からスリップ転位が発生するか否かを高精度に予測できることを示す図である。
(スリップ転位の発生予測方法)
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明に係るスリップ転位の発生予測方法の一実施形態のフローチャートを示している。まず、ステップS1において、所定の熱処理が施されたシリコンウェーハを用意する。
本発明において、「所定の熱処理」とは、ウェーハ製造工程およびデバイス作製工程における任意の熱処理を意味している。また、「熱処理」には、デバイス作製工程における熱処理や、アニールウェーハを製造する際の熱処理等の意図的に行う熱処理のみならず、例えば、エピタキシャルウェーハを製造する際に、基板としてのシリコンウェーハを高温環境(例えば、900℃〜1150℃)に晒す、エピタキシャル層を形成する等の処理も含まれる。
また、シリコンウェーハ自体は、CZ法や浮遊帯域溶融法(Floating Zone,FZ)法により育成された単結晶シリコンインゴットに対して、公知の外周研削、スライス、ラッピング、エッチング、鏡面研磨の加工処理を施して得られた、所定の厚みを有するものを用いることができる。
上記単結晶シリコンインゴットの育成は、育成したシリコンインゴットから採取されたシリコンウェーハが所望の特性を有するように、酸素濃度や炭素濃度、窒素濃度等を適切に調整することができる。また、導電型についても、適切なドーパントを添加してn型またはp型とすることができる。
次いで、ステップS2において、上記所定の熱処理が施されたシリコンウェーハの外周部表面に存在するクラックを伴う傷におけるクラックの面積およびシリコンウェーハ中の酸素濃度を求める。ここで、「クラックの面積」とは、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope,SEM)を用いて、シリコンウェーハの外周部表面を観察した際に、クラックを伴う傷において、隣接するクラックの先端間を結んで構成される多角形の面積を意味している。
図2は、クラックの面積の定義を説明する図である。この図に示すように、隣接するクラックの先端間を結んで多角形(図では四角形)を構成し、この四角形の面積をクラックの面積とする。
また、シリコンウェーハ中の酸素濃度は、ASTM F121−1979に規定される赤外吸収法に準拠し、フーリエ変換型赤外分光計(Fourier Transform Infrared Spectroscopy,FT−IR)により測定することができる。
上記「所定の熱処理後」のクラックの面積は、シリコンウェーハに対して、ウェーハ製造工程やデバイス作製工程において施される所定の熱処理、あるいはこうした所定の熱処理を模した熱処理を実際に施し、熱処理後のクラックの面積を測定することにより求めることができる。このような熱処理は、高速昇降温(Rapid Thermal Annealing,RTA)装置等を用いて行うことができる。
一般に、デバイス作製工程において施される熱処理は、複数のステップで構成され、各ステップにおいて、開始温度から所定の熱処理温度までの昇温を行った後、一定時間保持し、その後、終了温度まで降温する処理を行う。本発明においては、デバイス作製工程において施される熱処理が複数ステップで構成される場合には、最も高い熱応力τを与える工程の温度を熱処理温度とする。
また、上記酸素濃度は、クラックの面積を求める場合と同様に、シリコンウェーハに対して、ウェーハ製造工程やデバイス作製工程において施される熱処理、あるいはこうした熱処理を模した熱処理を実際に施し、熱処理後の酸素濃度を実測して求めることができる。あるいは、ウェーハ製造工程やデバイス作製工程における所定の熱処理をシリコンウェーハに対して実際には施さずに、シミュレーション計算により求めることもできる。
具体的には、所定の条件の下で育成された単結晶シリコンインゴットにおける酸素濃度(初期酸素濃度)、育成中の熱履歴、ドーパント濃度のデータに基づいて、公知の数値解析技術(例えば、Sumio Kobayashi,Journal of Crystal Growth,1997,Vol.174,p.163参照)を利用して求めることができる。こうしたシミュレーション計算により、シリコンウェーハに対して実際に熱処理を行う場合に比べて、簡便かつ短時間で、所定の熱処理後の酸素濃度を求めることができる。
続いて、ステップS3において、ステップS2において求めたクラックの面積および酸素濃度に基づいて、上記所定の熱処理時にシリコンウェーハにクラックを起点としたスリップ転位が発生する臨界せん断応力を求める。上述のように、本発明者らは、ウェーハ表面上の傷のうち、クラックを伴う傷のみからスリップ転位が発生することを見出した。以下、この知見を得るに至った高温4点曲げ試験について説明する。
図3(a)に示すように「高温4点曲げ試験」は、サンプル片を支持する支点2点に対して、サンプル片に応力を負荷する作用点を2点とする試験法であり、図3(b)に示すように、サンプル片に一定の応力を負荷することができる。そのため、スリップ転位の発生、非発生を確認するのに有効な手法である。
高温4点曲げ試験は、具体的には以下のように行った。まず、シリコンウェーハに対して外周部を支持するタイプの熱処理炉を用いて熱処理を施して、外周部に種々の傷が導入されたシリコンウェーハを用意した。このシリコンウェーハから、ウェーハ外周部を含む14mm×40mmのサンプル片を切り出し、得られたサンプル片を、支点間距離が30mmの支持棒の上に配置した。こうしたサンプル片を熱処理炉内(図示せず)に導入し、850℃に昇温した後、サンプル片に対して28MPaの応力を負荷した。その後、炉内の温度を常温まで降温した後、サンプル片を熱処理炉から取り出し、SEMにより、サンプル片の表面を観察した。
得られたSEM観察の結果を図4に示す。ここで、図4(a)は、スリップ転位が発生しなかった傷のSEM像、図4(b)はスリップ転位が発生した傷のSEM像をそれぞれ示している。図4(b)に示すように、スリップ転位が発生している傷には、クラックが明確に存在しているのに対して、図4(a)に示すように、スリップ転位が発生していない傷にはクラックが存在していないことが分かった。つまり、スリップ転位は、クラックを伴う傷のみから発生すると言える。
次に、本発明者らは、クラックを伴う傷からスリップ転位が発生する臨界せん断応力を求めるべく、高温3点曲げ試験を行った。「高温3点曲げ試験」は、サンプル片に対して任意の温度で応力を負荷することが可能な方法であり、その温度においてサンプル片表面上の傷からスリップ転位が発生する臨界せん断応力を求めることができる。高温3点曲げ試験では、支点2点に対して、作用点は1点である点で高温4点曲げ試験と相違している。
高温3点曲げ試験は、具体的には以下のように行った。まず、所定の酸素濃度を有するシリコンウェーハのサンプルを用意し、このサンプルから14mm×40mmのサンプル片を切り出した後、図5に示すように、サンプル片の一方の表面に、ビッカース硬度計を用いて所定の圧痕荷重を負荷し、1mmピッチで圧痕を形成した。その際、全ての圧痕にはクラックが形成されていることを確認した。
こうして圧痕が形成されたサンプル片を、図5に示すように、支点間が30mmの支持棒の上に配置した。続いて、配置したサンプル片を熱処理炉(図示せず)に導入し、700℃では250MPa、850℃では100MPa、1000℃では50MPa、1150℃では30MPaの応力を負荷した。その際、ひずみ速度は、5.3×10−6/cmに設定した。その後、室温まで降温して熱処理炉からサンプル片を取り出し、SEMによりサンプル片の表面を観察し、スリップ転位が発生している圧痕を特定した。スリップ転位は、作用点を中心とした帯状に発生するため、この帯幅を測定した。スリップ転位が発生する限界の応力、すなわちクラックを伴う傷からスリップ転位が発生する臨界せん断応力τcriは、帯の先端に負荷された応力であるため、下記式(1)により求めることができる。
ここで、τmaxは試験においてサンプル片に負荷した最大せん断応力、Lは支点間距離、Xはスリップ転位の帯幅である。この試験では、負荷した荷重をロードセルを用いて読み取り、せん断応力に変換した。シリコンにおけるスリップ転位は、(111)面において<110>方向に発生するため、それを考慮し、下記式にて最大せん断応力τmaxを求めた。
ここで、Pはロードセルが読み取った最大荷重、bはサンプル片の幅、dはサンプル片の厚さである。この方法で最大せん断応力τmaxを算出し、支点間距離、スリップ転位の帯幅を測定して臨界せん断応力τcriを算出した。
こうした臨界せん断応力τcriの算出を、4水準のウェーハ酸素濃度Co(5、10、15および20×1017atoms/cm、ASTM 1979)、6水準の圧痕荷重(1、10、50、100、200、500gf)および4水準の熱処理温度T(700、850、1000および1150℃)に対して行った。
図6は、高温3点曲げ試験により得られた圧痕荷重と臨界せん断応力τcriとの関係を示している。この図から、圧痕荷重が増加するにつれて、臨界せん断応力τcriが低下することが分かる。また、酸素濃度Cが増加すると、臨界せん断応力τcriが増加することも分かる。
SEM観察により、サンプル片に圧痕を形成する際の圧痕荷重が増加すると、圧痕に形成されるクラックの大きさも大きくなったことから、本発明者らは、クラックの大きさに関連するパラメータと、クラックを伴う傷から発生する臨界せん断応力τcriとを関係づけることができると考え、クラックの大きさに関連する適切なパラメータを検討した。その結果、上述のように定義した「クラックの面積」が最適であると考えたのである。
図7は、クラックの面積Aの逆数とクラックを伴う傷からスリップ転位が発生する臨界せん断応力τcriとの関係を示している。この図に示すように、スリップ転位の臨界せん断応力τcriは、クラックの面積Aの逆数に比例していることが分かる。この図に示した1/Aとτcriとの関係から、本発明者らは、クラックの面積Aが及ぼすせん断応力τは、以下の式(1)で表すことができると考えた。
ここで、aおよびbは定数、Tは温度、Aはクラックの面積である。
これに対して、酸素濃度Cの変化が臨界せん断応力τcriに及ぼす影響は、クラックを伴う傷から発生したスリップ転位を酸素が固着する応力(ロッキング力)の挙動と捉えることができる。ロッキング力は、下記の式(4)で表すことができる。
ここで、cは定数、εはひずみ速度、kはボルツマン定数、Tは温度である。
これら2つの式を組み合わせることにより、クラックを伴う傷からスリップ転位が発生する臨界せん断応力τcriを表現できると考えられる。例えば、τcriをτとτSLとの積として表現することができる。しかし、この場合、酸素濃度Cが0の場合に臨界せん断応力τcriが0となり、応力の負荷なしにスリップ転位が発生することになるため、物理的に不自然である。そこで、本発明者らは、τcriをτとτSLとの和として定式化することに想到した。すなわち、臨界せん断応力τcriを以下の式(5)として定式化する。
上記式(5)においては、ウェーハ製造工程やデバイス作製工程における所定の熱処理時にスリップ転位が発生する臨界せん断応力τcriが、ウェーハ表面上の傷におけるクラックからスリップ転位を発生させるのに要する応力成分τと、発生したスリップ転位がクラック近傍の酸素による固着からの解放するための応力成分τSLとの和として表されており、物理的に極めて自然な表式である。そして、後述するように、上記式(5)により、上記所定の熱処理時にウェーハ表面上の傷におけるクラックからスリップ転位が発生する臨界せん断応力τcriを極めて高精度に予測することができる。
上記式(5)における定数a、bおよびcを回帰分析にて求めた結果、デバイス熱処理工程においてスリップ転位が発生する臨界せん断応力τcriは、以下の式(6)のようになる。
図8は、上記式(6)を用いて得られた臨界せん断応力τcriの計算値と、上記した高温3点曲げ試験から得られた実験値との関係を示している。この図から、上記式(6)を用いることにより、700℃〜1150℃までの温度範囲において、臨界せん断応力τcriを再現よく計算できることが分かる。そこで、本発明においては、上記式(6)を用いて、ウェーハ表面上のクラックを伴う傷からスリップ転位が発生する臨界せん断応力τcriを求める。
こうして、ステップS2において得られたクラックの面積Aおよび酸素濃度Cを式(6)に代入することにより、ウェーハ表面上のクラックを伴う傷からスリップ転位が発生する臨界せん断応力τcriを高精度に求めることができる。
続いて、ステップS4において、求めた臨界せん断応力τcriと上記所定の熱処理時にシリコンウェーハに与えられる熱応力τとを比較する。ここで、ウェーハ製造工程やデバイス作製工程において、シリコンウェーハに負荷される熱応力τは、以下のように求めることができる。まず、RTA装置等の熱処理装置にシリコンウェーハを投入し、シリコンウェーハを加熱して熱応力を与える。通常のRTAの加熱条件ではウェーハ面内に温度差を生じさせないように加熱分布を調整するが、ここでは意図して加熱バランスを変えて熱応力を発生させる。次いで、シリコンウェーハの半径方向の温度分布T(r’)を熱電対により測定する。半径方向および円周方向への応力は、それぞれ以下の式(7)および(8)で与えられる。
ただし、rはシリコンウェーハの半径方向の位置、Rはシリコンウェーハの半径、αは熱膨張率、Eはヤング率である。
シリコンウェーハのような単結晶体においては、スリップ転位が生じる面および方向が特定されるため、すべり面を考慮した解析が必要となる。シリコンにおけるスリップ転位は、{111}面において<110>方向に発生する。等価なものを除外すると、4つの{111}面について3つの<110>方向のすべりが存在することになり、12種のせん断応力を求める必要がある。
上記の円筒座標系で求めた応力を直交座標系に変換することにより、各すべり面における各すべり方向へのせん断応力が以下の式(9)のように求められる。ただし、すべり面を(ijk)、すべり方向を[lmn]とする。
本発明においては、上述のように得られる12種のせん断応力のうち、最大となるせん断応力を、上記所定の熱処理においてシリコンウェーハに与えられる熱応力τとした。
上記所定の熱処理においてシリコンウェーハに与えられる熱応力τは、上述のように、熱処理装置を用いて求める代わりに、シミュレーション計算により求めることもできる。これにより、簡便かつ短時間で熱応力τを求めることができる。具体的には、ヒーターからウェーハに入射される輻射熱および、その熱伝導を有限要素法で解析し、熱処理工程におけるウェーハ面内の温度分布を求める。求められた温度分布から、式(7)、(8)および(9)を用いて熱応力τを求めることができる。
その後、ステップS4において、所定の熱処理時に、シリコンウェーハにおいて、ウェーハ表面上のクラックを伴う傷からスリップ転位が発生するか否かを判定する。本発明においては、こうして求めた上記所定の熱処理時にシリコンウェーハに与えられる熱応力τが、式(6)により求められた臨界せん断応力τcri以上の場合に、シリコンウェーハにおいて、上記所定の熱処理時にクラックを伴う傷からスリップ転位が発生すると判定し、熱応力τが臨界せん断応力τcriを下回る場合、シリコンウェーハにおいて、上記所定の熱処理を施してもクラックに伴う傷からスリップ転位が発生しないと判定する。後の実施例に示すように、本発明により、ウェーハ表面上のクラックを伴う傷からスリップ転位が発生するか否かを高精度に予測することができる。
ウェーハ製造工程やデバイス作製工程において、ある熱処理炉において複数枚のシリコンウェーハに対して所定の熱処理を行う際、全てのウェーハにはほぼ同様の傷が形成される(つまり、Aは同じである)。また、複数枚のシリコンウェーハについて、初期酸素濃度(単結晶シリコンインゴットから切り出された段階での酸素濃度)が同じであれば、上記所定の熱処理後の酸素濃度も同じになる。従って、初期酸素濃度が同じ複数枚のシリコンウェーハについては、クラックを伴う傷からスリップ転位が発生する臨界せん断応力τcriが同じになり、ステップS4での判定結果も同じになる。そのため、同じ初期酸素濃度を有する複数枚のシリコンウェーハについては、1枚にのみに対してスリップ転位が発生するか否かを判定しておけばよい。
こうして、ウェーハ製造工程やデバイス作製工程における所定の熱処理時に、ウェーハ表面上のクラックを伴う傷からスリップ転位が発生するか否かを高精度に予測することができる。
(シリコンウェーハの製造方法)
次に、本発明に係るシリコンウェーハの製造方法について説明する。本発明に係るシリコンウェーハの製造方法は、上記したスリップ転位の発生予測方法によりウェーハ製造工程やデバイス作製工程における所定の熱処理時に、クラックを伴う傷からスリップ転位が発生しないと判定されるシリコンウェーハが得られる育成条件で単結晶シリコンインゴットを育成し、育成した単結晶シリコンインゴットに対してウェーハ加工処理を施すことを特徴とする。
図9は、本発明に係るシリコンウェーハの製造方法の一実施形態のフローチャートを示している。以下、このフローチャートに従って各工程を説明する。まず、ステップS11において、単結晶シリコンインゴットを育成する。この単結晶シリコンインゴットの育成は、CZ法や浮遊帯域溶融法(Floating Zone,FZ)法により行うことができる。単結晶シリコンインゴットの育成は、育成したシリコンインゴットから採取されたシリコンウェーハが所望の特性を有するように、酸素濃度や炭素濃度、窒素濃度等を適切に調整することができる。また、導電型についても、適切なドーパントを添加してn型またはp型とすることができる。
育成した単結晶シリコンインゴットは、公知の外周研削、スライス、ラッピング、エッチング、鏡面研磨の加工処理を施すことにより、所定の厚みを有するシリコンウェーハを得ることができる。
続くステップS12〜ステップS14は、図1におけるステップS2〜S4にそれぞれ対応しており、上記した本発明に係るスリップ転位の発生予測方法に関するステップであり、説明を省略する。
本発明においては、ステップS14において、ウェーハ製造工程やデバイス作製工程における所定の熱処理時に、ウェーハ表面上のクラックを伴う傷からスリップ転位が発生するか否かを高精度に判定でき、上記所定の熱処理時にシリコンウェーハに与えられる熱応力τが、式(6)により求められた臨界せん断応力τcri以上の場合に、上記所定の熱処理時にシリコンウェーハにスリップ転位が発生すると判定し、熱応力τが臨界せん断応力τcriを下回る場合、上記所定の熱処理時にスリップ転位が発生しないと判定する。
そして、ステップS14においてスリップ転位が発生しないと判定されるシリコンウェーハが得られる育成条件で単結晶シリコンインゴットを育成し、育成した単結晶シリコンインゴットに対してウェーハ加工処理を施すことにより、ウェーハ製造工程やデバイス作製工程における所定の熱処理時にスリップ転位が発生しないシリコンウェーハを得ることができる。
ステップS14において、熱応力τが臨界せん断応力τcri以上の場合には、ステップS15において、単結晶シリコンインゴットの育成条件を変更し、熱応力τが臨界せん断応力τcriを下回るまで、単結晶シリコンインゴットの育成するステップS11からデバイス作製工程においてスリップ転位が発生するか否かを判定するステップS14までの処理を繰り返し行う。
単結晶シリコンインゴットの育成条件を変更は、スリップ転位が発生する臨界せん断応力τcriが上昇するように行うが、具体的には、上記所定の熱処理後の酸素濃度を高めればよい。すなわち、式(6)から、酸素濃度Coが高いほど、臨界せん断応力τcriが高くなる。そこで、上記ステップS14において、スリップ転位が発生すると判定された場合には、酸素濃度が高くなるように条件を調整して単結晶シリコンインゴットを育成する。
上記所定の熱処理後の酸素濃度Cは、5×1017atoms/cm以上20×1017atoms/cm以下に調整することが好ましい。これにより、高温においてより高い応力が負荷されてもスリップ転位の発生を防止することができる。
こうして、ウェーハ製造工程やデバイス作製工程における所定の熱処理時にクラックを伴う傷からスリップ転位が発生しないシリコンウェーハを製造することができる。
(シリコンウェーハの熱処理方法)
続いて、本発明に係るシリコンウェーハの熱処理方法について説明する。本発明に係るシリコンウェーハの熱処理方法は、上記したスリップ転位の発生予測方法によりウェーハ製造工程やデバイス作製工程における所定の熱処理時に、クラックを伴う傷からスリップ転位が発生しないと判定されるシリコンウェーハが得られるように、シリコンウェーハに対して上記所定の熱処理を施すことを特徴とする。
図10は、本発明に係るシリコンウェーハの熱処理方法の一実施形態のフローチャートを示している。ステップS21〜ステップS23は、図1におけるステップS1〜S3にそれぞれ対応しており、上記した本発明に係るスリップ転位の発生予測方法に関するステップであるため説明を省略する。
上記ステップS23に続き、ステップS24において、シリコンウェーハに対して、ウェーハ製造工程やデバイス作製工程における所定の熱処理を、熱応力τが臨界せん断応力τcri以上とならない条件の下で行う。すなわち、ステップS23で求められたスリップ転位が発生する臨界せん断応力τcriと、上記所定の熱処理によりシリコンウェーハに負荷される熱応力τとを比較して、熱応力τが臨界せん断応力τcriを下回り、クラックを伴う傷からスリップ転位が発生しないと予測される場合には、上記熱応力τを求めたのと同じ条件での所定の熱処理を行う。これにより、ウェーハ表面上のクラックを伴う傷からスリップ転位を発生させることなく熱処理を行うことができる。
一方、熱応力τが臨界せん断応力τcri以上であり、クラックを伴う傷からスリップ転位が発生すると予測される場合には、上記熱応力τを求めたのとは異なる条件に変更し、上記熱応力を再度求める。この条件の変更は、具体的には、熱処理の昇温速度を低減するか、熱処理温度を低減する。
上述のように熱処理条件を変更して熱応力τを求め、先程求めた臨界せん断応力τcriと比較する。熱処理条件を変更した後の熱応力τが臨界せん断応力τcriを下回る場合には、上述のように、変更後の熱処理条件でウェーハ表面上のクラックを伴う傷からスリップ転位を発生させることなく熱処理を行うことができる。
一方、熱処理条件を変更した後の熱応力τが臨界せん断応力τcri以上の場合には、熱処理条件の変更、シリコンウェーハに負荷される熱応力τの算出、算出した熱応力τと臨界せん断応力τcriとの比較を、熱応力τが臨界せん断応力τcriを下回るまで繰り返す。
なお、ステップS24における所定の熱処理は、ステップS23においてスリップ転位が発生しないと判定されたシリコンウェーハ、および該シリコンウェーハと同じ初期酸素濃度を有するシリコンウェーハに対して行うことができる。
こうして、ウェーハ表面上のクラックを伴う傷からスリップ転位を発生させることなく熱処理を行うことができる。
(シリコンウェーハ)
次に、本発明に係るシリコンウェーハについて説明する。本発明に係るシリコンウェーハは、所定の熱処理時に与えられる熱応力τが、上記所定の熱処理時に表面上のクラックを伴う傷からスリップ転位が発生する臨界せん断応力τcriを下回るような酸素濃度を有するシリコンウェーハである。本発明に係るシリコンウェーハには、ウェーハ製造工程やデバイス作製工程における所定の熱処理時にスリップ転位が発生しない。
酸素濃度は、5×1017atoms/cm以上20×1017atoms/cm以下であることが好ましい。これにより、高温においてより高い応力が負荷されてもスリップ転位の発生を防止することができる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は実施例に限定されない。
標準的なデバイス作製工程における熱処理を模した模擬熱処理をサンプルウェーハに対して施し、ウェーハ表面上のクラックを伴う傷からスリップ転位が発生するか否かを予測した。ここで、上記模擬熱処理として、2つの工程AおよびBを設定し、工程Aは4つの熱処理ステップからなり、各ステップの熱処理温度および熱処理時間は異なっている。また、工程Bは6つの熱処理ステップからなり、工程Aと同様に、各ステップの熱処理温度および熱処理時間は異なっており、最後のステップはRTA処理である。
工程Aにおいては、ステップ1〜3におけるサンプルウェーハの投入温度および取り出し温度は、ともに600℃とし、昇温レートおよび降温レートは、ともに8℃/分とした。ステップ4におけるサンプルウェーハの投入温度および取り出し温度は、ともに800℃とし、昇温レートおよび降温レートは、ともに15℃/分とした。また、工程Bにおいては、ステップ1〜5までについては、サンプルウェーハの投入温度および取り出し温度は、ともに600℃、昇温レートおよび降温レートは、ともに8℃/分とし、ステップ6については、サンプルウェーハの投入温度および取り出し温度は、ともに650℃とし、昇温レートは150℃/秒、降温レートは75℃/秒とした。工程AおよびBにおける熱処理条件を表1および2にそれぞれ示す。
上記模擬熱処理においてウェーハに与えられる熱応力τは、式(7)〜(9)を用いて、熱処理炉内に投入したサンプルウェーハの面内温度を熱電対により測定した。その結果、工程Aにおいては、第4ステップにおいて、熱処理温度1100℃で5.5MPaの応力が負荷された。また、工程Bにおいては、第6ステップにおいて、熱処理温度1000℃で16.1MPaの熱応力が負荷されることが分かった。
また、工程AおよびBに供したサンプルウェーハの熱処理後の酸素濃度Co、クラックの面積A、臨界せん断応力τcri、臨界せん断応力τcriと熱処理においてシリコンウェーハに負荷される熱応力τとの大小関係、スリップ転位発生の有無を表3および4にそれぞれ示す。
上述のように、本発明においては、上記模擬熱処理においてサンプルウェーハに与えられる熱応力τが、臨界せん断応力τcriを下回る場合、すなわちτ<τcriであれば、上記模擬熱処理が施されたシリコンウェーハにクラックを伴う傷からスリップ転位は発生しないと判定している。表3および4から明らかなように、本発明における判定結果と、実際にスリップ転位が発生したか否かの結果が完全に一致している。このように、式(6)を用いることにより、ウェーハ表面上のクラックを伴う傷からスリップ転位が発生するか否かを高精度に予測できることが分かる。
図11は、上記工程AおよびBについて、シリコンウェーハ中の酸素濃度およびクラックの面積Aと、スリップ転位の発生の有無との関係を示している。この図において、破線は式(6)で与えられる臨界せん断応力τcriを示す線である。図から明らかなように、破線を境界として、スリップ転位の発生、非発生を区別できていることが分かる。このように、式(6)を用いることにより、ウェーハ表面上のクラックを伴う傷からスリップ転位が発生するか否かを高精度に予測できることが分かる。
また、表3および4において、スリップ転位が発生したサンプルウェーハ3、4、8、11、12、15、16、19、20および24について、これらのサンプルウェーハを採取したものよりも酸素濃度を上昇させて単結晶シリコンインゴットを育成し、育成したインゴットから採取した、酸素濃度を上昇させたシリコンウェーハにおける、上記模擬熱処理後のクラックの面積Aおよび酸素濃度Coに基づいて臨界せん断応力τcriを求めたところ、育成条件を変更する前よりも臨界せん断応力τcriが上昇してτ<τcriを満足させることができ、上記模擬熱処理を施した後にもクラックを伴う傷からスリップ転位が発生しないシリコンウェーハを得ることができた。
本発明によれば、ウェーハ製造工程やデバイス作製工程における所定の熱処理時にクラックを伴う傷からスリップ転位が発生する臨界せん断応力を高精度に求めることができ、上記所定の熱処理時にスリップ転位が発生するか否かを高精度に予測することができるため、半導体産業において有用である。

Claims (12)

  1. 所定の熱処理が施されたシリコンウェーハの外周部表面に存在するクラックを伴う傷における前記クラックの面積および前記シリコンウェーハ中の酸素濃度を求め、次いで求めた前記クラックの面積および前記酸素濃度に基づいて、前記所定の熱処理時に前記傷からスリップ転位が発生する臨界せん断応力τcriを求めた後、求めた前記臨界せん断応力τcriと前記所定の熱処理時にシリコンウェーハに負荷される熱応力τとを比較して、前記熱応力τが前記臨界せん断応力τcri以上の場合には、シリコンウェーハにおいて、前記所定の熱処理時にウェーハ外周部表面上の傷からスリップ転位が発生すると判定し、前記熱応力τが前記臨界せん断応力τcriを下回る場合には、シリコンウェーハにおいて、前記所定の熱処理時にウェーハ外周部表面上の傷からスリップ転位が発生しないと判定することを特徴とするスリップ転位の発生予測方法。
  2. 前記臨界せん断応力τcriは、A:前記クラックの面積、C:前記酸素濃度、T:前記熱処理の温度、ε:ひずみ速度、k:ボルツマン定数、a、bおよびc:定数として以下の式(i)で与えられる、請求項1に記載の方法。
  3. aが4.5であり、bが5442であり、cが7.9×10−4である、請求項2に記載の方法。
  4. 前記クラックの面積Aおよび前記酸素濃度Cを求める処理は、前記シリコンウェーハに対して前記所定の熱処理を施した後、該所定の熱処理後のシリコンウェーハにおける前記クラックの面積および前記酸素濃度を測定することにより行う、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記クラックの面積Aを求める処理は、前記シリコンウェーハに対して前記所定の熱処理を施した後、該所定の熱処理後のシリコンウェーハにおける前記クラックの面積を測定することにより行い、前記所定の熱処理後の前記酸素濃度Cを求める処理はシミュレーション計算により行う、請求項1〜3のいずれか一項に記載のスリップ転位の発生予測方法。
  6. 前記熱応力τは、熱処理装置に前記シリコンウェーハを投入して加熱し、加熱された前記シリコンウェーハの半径方向の温度分布に基づいて求める、請求項1〜5のいずれか一項に記載のスリップ転位の発生予測方法。
  7. 前記熱応力τはシミュレーション計算により求める、請求項1〜5のいずれか一項に記載のスリップ転位の発生予測方法。
  8. 請求項1〜7に記載のスリップ転位の発生予測方法により前記所定の熱処理時にクラックを伴う傷からスリップ転位が発生しないと判定されるシリコンウェーハが得られる育成条件で単結晶シリコンインゴットを育成し、育成した前記単結晶シリコンインゴットに対してウェーハ加工処理を施すことを特徴とするシリコンウェーハの製造方法。
  9. 前記所定の熱処理後の酸素濃度は5×1017atoms/cm以上20×1017atoms/cm以下である、請求項8に記載のシリコンウェーハの製造方法。
  10. 請求項1〜7に記載のスリップ転位の発生予測方法により前記所定の熱処理時にクラックを伴う傷からスリップ転位が発生しないと判定されるようにシリコンウェーハに対して前記所定の熱処理を施すことを特徴とするシリコンウェーハの熱処理方法。
  11. 所定の熱処理時に与えられる熱応力τが、前記所定の熱処理時に表面上のクラックを伴う傷からスリップ転位が発生する臨界せん断応力τcriを下回るような酸素濃度を有するシリコンウェーハ。
  12. 前記酸素濃度は、5×1017atoms/cm以上20×1017atoms/cm以下である、請求項11に記載のシリコンウェーハ。
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