JP2017150944A - ガスセンサ群 - Google Patents

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Abstract

【課題】揮発性不純物を含む加湿空気中の可燃性ガスを充分に分離検知することが可能なガスセンサ群を提供する。【解決手段】ガスセンサ群は、可燃性ガスの検知に用いられ、複数種の粒界応答型の半導体式ガスセンサと、1種以上のバルク応答型の半導体式ガスセンサを有する。可燃性ガスの分析方法は、ガスセンサ群を用いて、可燃性ガスを検知する工程を含む。【選択図】なし

Description

本発明は、可燃性ガスの検知に用いられるガスセンサ群に関する。
生活環境には、様々なニオイ成分が存在する。これらのニオイ成分の殆どは、極微量の有機分子であり、揮発性有機化合物(VOC)と呼ばれる。VOCには、様々な性質のものが存在する。室内には、建材、内装、家具等からの放散、居住者による化粧品や芳香剤の使用等により、合計で数十から百数十ppbに相当する様々な低濃度のVOCが存在する。よって、特定のVOCを検知しようとする雰囲気下には、通常、一定濃度の水蒸気と低濃度の揮発性不純物が存在する。
例えば、医療分野において、呼気中に含まれるVOCは、口臭、代謝、疾患との関連性が指摘されており、呼気中VOCと健康状態に相関があるとされている。また、食品の分野において、鮮度や品質とその食品から発するニオイに相当するVOCと相関があるとされている。そのため、これらの特定のVOCのモニタリングは、前者では、健康状態の管理に、後者では、食品管理として有効である。ただし、この計測は、必ず室内空気中で実施されることになり、空気中には、揮発性不純物が存在するため、揮発性不純物に影響せずに、特定のVOCを検知する方法が必要である。
その一方、VOCに代表される可燃性ガスを検知するため、金属酸化物n型半導体による半導体式センサが従来から利用されている。半導体式センサは、価格やランニングコストが低いという特徴を有する。代表的な半導体式センサは、酸化スズであり、センサ素子感応部を構成する酸化スズ粒子の表面に大気中の酸素が吸着し、キャリア電子が吸着酸素に補足されることで粒子と粒子の界面、即ち粒界にポテンシャル障壁が形成され、粒界の電気抵抗が増大する。酸化スズ粒子の表面に可燃性ガスが到達し、表面の吸着酸素を消費して酸化することで、粒界のポテンシャル障壁が減少し、電気抵抗が減少する。酸化スズは、所謂、粒界応答型半導体式ガスセンサに分類される。
しかしながら、粒界応答型半導体式ガスセンサは、その性質上、個々のセンサ素子でのガス選択性を寄与させることが難しい。
このような状況ではあるが、揮発性不純物を含む空気中の特定の可燃性ガスを検知することが可能なガスセンサ群の開発が望まれている。
簡便でかつ安価なガスセンサ群で特定のVOCを検知するために、半導体式センサを代表とするガスセンサを複数有するガスセンサ群を用いて、同時に検知し、得られたシグナルで主成分分析等の統計解析を行う方法が検討されている。
個々のガスセンサで、特定の可燃性ガスのみを検知するのは、その性質上、難しいが、複数のガスセンサから得られる多様なシグナルを統計解析することで、一定の傾向が得られる。
特許文献1には、セラミック半導体型センサを複数個組み合わせて構成したセンサアレイと、水晶振動子型センサを複数個組み合わせて構成したセンサアレイとを組み合わせて判別を行う複合型匂いセンサが開示されている。
特許文献2には、プラズマ有機薄膜にイオン液体を保持させたガス分子選択材料を水晶振動子の表面に形成したガス分子検知素子及びガス分子選択材料のイオン液体の濃度が異なる複数のガス分子検知素子をアレイ化したガスセンサアレイが開示されている。
特許文献3には、複数種のガスを、複数の半導体式ガスセンサにより識別検知するガスの識別検知方法が開示されている。
特開平10−170422号公報 特開2006−53059号公報 特開2004−12193号公報
しかしながら、揮発性不純物を含む加湿空気中の可燃性ガスを充分に分離検知することができず、これを解決することが喫緊の課題であった。
本発明の一態様は、揮発性不純物を含む加湿空気中の可燃性ガスを充分に分離検知することが可能なガスセンサ群を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、可燃性ガスの検知に用いられるガスセンサ群であって、複数種の粒界応答型の半導体式ガスセンサと、1種以上のバルク応答型の半導体式ガスセンサを有する。
本発明の一態様により、揮発性不純物を含む加湿空気中の可燃性ガスを充分に分離検知することが可能なガスセンサ群を提供することができる。
実施例で使用した計測システムのガスフロー図である。 実施例1の第1主成分及び第2主成分、第1主成分及び第3主成分による主成分得点と固有ベクトルを示す図である。 実施例2の第1主成分及び第2主成分、第1主成分及び第3主成分による主成分得点と固有ベクトルを示す図である。 実施例3の第1主成分及び第2主成分、第1主成分及び第3主成分による主成分得点と固有ベクトルを示す図である。 実施例4の第1主成分及び第2主成分、第1主成分及び第3主成分による主成分得点と固有ベクトルを示す図である。 実施例5の第1主成分及び第2主成分、第1主成分及び第3主成分による主成分得点と固有ベクトルを示す図である。 実施例6の第1主成分及び第2主成分、第1主成分及び第3主成分による主成分得点と固有ベクトルを示す図である。 比較例1の湿度が20℃換算で0%RHに相当する場合の、第1主成分及び第2主成分、第1主成分及び第3主成分による主成分得点と固有ベクトルを示す図である。 比較例1の湿度が20℃換算で60%RHに相当する場合の、第1主成分及び第2主成分、第1主成分及び第3主成分による主成分得点と固有ベクトルを示す図である。 比較例2の第1主成分及び第2主成分、第1主成分及び第3主成分による主成分得点と固有ベクトルを示す図である。 比較例3の第1主成分及び第2主成分、第1主成分及び第3主成分による主成分得点と固有ベクトルを示す図である。
次に、本発明を実施するための形態を説明する。
[ガスセンサ群]
本実施形態のガスセンサ群は、可燃性ガスの検知に用いられ、複数種の粒界応答型の半導体式ガスセンサと、1種以上のバルク応答型の半導体式ガスセンサを有する。検知原理の異なるセンサを用いることで、後述する主成分分析の精度を向上させることができる。
本願明細書及び特許請求の範囲において、可燃性ガスを、気体として存在し得る物質であり、半導体式ガスセンサで検知することが可能なガスと定義する。即ち、可燃性ガスは、後述する半導体式ガスセンサを構成する金属酸化物(粒子)の表面で酸化することが可能な物質である。
可燃性ガスとしては、VOC等の有機化合物、硫化水素、水素、一酸化炭素等の無機化合物が挙げられる。
本願明細書及び特許請求の範囲において、VOCを、揮発性の有機化合物の全てと定義する。
VOCとしては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エステル、アルコール、アルデヒド、ケトン、テルペン、ハロゲン化炭化水素等が挙げられる。中でも、ノナナール、デカン、アセトン、メチルイソブチルケトン、アセトイン等の患者の呼気に含まれる成分が好ましい。
本実施形態の粒界応答型の半導体式ガスセンサは、n型半導体の金属酸化物粒子でセンサ素子感応部が構成されている。このため、金属酸化物粒子の表面に大気中の酸素が吸着し、キャリア電子が吸着酸素に補足されることで粒子と粒子の界面、即ち、粒界にポテンシャル障壁が形成され、粒界の電気抵抗が増大する。ここで、金属酸化物粒子の表面に可燃性ガスが到達すると、表面の吸着酸素を消費して酸化することで、粒界のポテンシャル障壁が減少し、電気抵抗も減少する。そのため、可燃性ガスの種類や濃度によって電気抵抗が変動する。このため、湿度が変化すると、金属酸化物粒子の表面に吸着する水の量が変化し、金属酸化物粒子の表面に吸着する酸素の量に影響を与える。その結果、粒界応答型の半導体式ガスセンサは、センサ応答が湿度に影響され易い。
本実施形態のバルク応答型の半導体式ガスセンサは、可燃性ガスの濃度に応じて、可燃性ガスの酸化反応に必要な酸素を結晶格子中の酸素原子から供給し易いn型半導体の金属酸化物でセンサ素子感応部が構成される。このため、金属酸化物の表面に可燃性ガスが到達すると、酸化反応により格子中の酸素原子が消費される。生成する酸素空孔の拡散速度は、非常に速く、酸素空孔が金属酸化物の表面で蓄積して律速することなく、バルク全体で担うため、酸素空孔の濃度は、可燃性ガスの濃度に依存する。酸素空孔の濃度が増大すると、キャリア電子の濃度も増大するため、金属酸化物の電気抵抗も減少する。そのため、可燃性ガスの種類や濃度によって、金属酸化物の電気抵抗が変動する。このため、バルク応答型の半導体式ガスセンサは、湿度の変化の影響を受け難い。
本実施形態のバルク応答型の半導体式ガスセンサのセンサ素子感応部としては、特に限定されないが、酸素貯蔵能を有する金属酸化物が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、酸化セリウム、セリウム−ジルコニウム系複合酸化物が好ましく、組成式
Ce1−xZr
(式中、xは、0から0.4の範囲である。)
で示される化合物がさらに好ましい。
また、本実施形態のバルク応答型半導体式ガスセンサのセンサ素子感応部は、その上部に絶縁層を設け、センサ素子感応部と電気的絶縁がなされた状態として、更にその上部に、貴金属触媒粒子が担持されている金属酸化物の触媒担体を設けることができる。
絶縁層は、電気的絶縁性を有するだけでなく、下部のセンサ素子感応部にVOCが到達できるようなガス透過性を有する必要があり、絶縁性の微粒子で構成される。
絶縁性の微粒子としては、特に限定されないが、絶縁性の金属酸化物、シリカ等が挙げられる。
絶縁性の金属酸化物としては、特に限定されないが、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、ハフニア、イットリア、カルシア等が挙げられる。中でも、アルミナが好ましい。
貴金属触媒粒子を構成する材料としては、特に限定されないが、白金、パラジウム、金、銀、ロジウム、ルテニウム等が挙げられる。中でも、白金が好ましい。
金属酸化物の触媒担体としては、特に限定されないが、酸素貯蔵能を有する金属酸化物、の他、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、ハフニア、イットリア、カルシア等が挙げられる。中でも、酸化セリウム、セリウム−ジルコニウム系複合酸化物が好ましく、組成式
Ce1−xZr
(式中、xは、0から0.4の範囲である。)
で示される化合物がさらに好ましい。
[可燃性ガスの分析方法]
本実施形態の可燃性ガスの分析方法は、本実施形態のガスセンサ群を用いて、可燃性ガスを検知する工程を含む。
例えば、可燃性ガスを検知することにより得られたガスセンサ応答値を主成分分析することにより、揮発性不純物を含む加湿空気中の可燃性ガスを充分に分離検知することができる。
本実施形態の可燃性ガスの分析方法は、例えば、医療分野では、呼気を検知することにより、健康状態を管理するシステム、食品分野では、食品を管理するシステムに適用することができる。
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
[実施例1]
本実施例では、6種の粒界応答型半導体式ガスセンサ(TGS2600、TGS2602、TGS2610、TGS2620(以上、フィガロ技研社製)、#31b、#33b)と、1種のバルク応答型半導体式ガスセンサ(No.71)を用いた。
TGS2600、TGS2602、TGS2610及びTGS2620は、市販のガスセンサであり、有機化合物のガスに有効であると謳われている。本実施例では、製造元推奨のヒータ電圧5Vとなるように通電して使用した。これらのガスセンサは、酸化スズに添加物を加えて応答特性を調整されている。よって、これらのガスセンサは、粒界応答型半導体式センサである。
#31b及び#33bは、産業技術総合研究所で作製した、SnOにPt、Pd及びAuを各1質量%添加したガスセンサ(Pt,Pd,Au/SnO)である(Sens. Actuators B 187(2013)135-141参照)。ここで、様々なVOCに一定の感度を示すようにするため、SnOにPt、Pd及びAuを添加して高度化している。よって、これらのガスセンサは、粒界応答型半導体式センサである。#31b及び#33bは、それぞれ膜厚が4.6μm及び2.8μmであるため、ガスセンサ応答特性が異なる。これらのガスセンサは、何れも動作温度250℃で用いた。#31b及び#33bは、Sens. Actuators B 187(2013)135-141に示された作製方法に従って作製した。
No.71は、産業技術総合研究所で作製したガスセンサである(Sensors 15(2015)9427-9437参照)。センサ素子感応部を構成する材料は、酸化セリウムにジルコニウムを10mol%添加し、Ce0.9Zr0.1としたもの(CeZr10)である。No.71は、CeZr10厚膜の上に、アルミナ(Al)の厚膜を載せ、更にその上に、Ptを3質量%添加したCeZr10(3質量%Pt−CeZr10)を載せたセンサ(CeZr10/Al/3質量%Pt−CeZr10)である。よって、本ガスセンサは、バルク応答型半導体式センサである。本ガスセンサは、動作温度400℃で用いた。
図1に、本実施例で使用した計測システムのガスフロー図を示す。
7種のガスセンサを、ガス雰囲気の制御が可能なセンサ室1に入れて密閉した。
次に、センサ室1へ流すガスについて具体的に説明する。
まず、計測中のセンサ室1へのガス総流量は常に500mL/minとなるようにした。次に、計測中のセンサ室1への窒素と酸素の濃度比は、常に4:1となるようにした。即ち、窒素の流量は400mL/minで、酸素の流量は100mL/minとなる。このうち、窒素は、200mL/minを、酸素は、全量の100mL/minを、蒸留水の入った水バブラー2に通じた。ここで、水バブラー2は、水温が常に20℃となるように制御した。即ち、窒素200mL/min及び酸素100mL/minは、水蒸気で飽和されており、乾燥状態の窒素200mL/minと混合されて、センサ室1に到達するため、センサ室1に到達した時のガスの湿度は、20℃換算で60%RHに相当する(以下、これを合成空気と表記する)。
本実施例で用いたターゲットVOCは、アセトイン、ノナナール、デカン、アセトン、メチルイソブチルケトンの5種であり、センサ室1に到達した時の濃度が1ppmとなるように調整した。なお、アセトイン(G. Songa, et al., Lung Cancer 67 (2010) 227-231)、ノナナール(P. Fuchs et al., Int. J. Cancer 126 (2010) 2663-2670.)、デカン(D. Poli et al., Respiratory Research 6 (2005) 71-80.)は、肺がん患者の呼気に、アセトンとメチルイソブチルケトン(C. Wang, et al., IEEE Sens. J. 10 (2010) 54-63.)は、糖尿病患者の呼気に相関があるとの報告がある。
また、本実施例では、室内空気に含まれる揮発性不純物を再現するために、TVOCとして、31種混合ガスを用いた。31種混合ガスは、国際標準化機構が発行する規格で揮発性有機化合物(VOC)と定義される成分のうち、厚生労働省、及び、欧州共同研究センターから発行された、人体への影響の観点からモニタすべきVOCのリストに記載されている、ガスボンベに充填することが可能な31種のVOCが充填された混合ガスである。TVOCの主成分は、芳香族炭化水素(30%)脂肪族炭化水素(37%)に分類される。センサ室1に到達した時のTVOCの濃度は、欧州、特にドイツ環境庁が示す室内の目標濃度300μg/mを基準に、その0倍(0μg/m)、1倍(300μg/m)、2倍(600μg/m)、3倍(900μg/m)となるように調整した。なお、TVOCの濃度をppm表記にすると、順に、0倍(0ppm)、1倍(0.060ppm)、2倍(0.12ppm)、3倍(0.18ppm)に相当する。
これらのターゲットVOC及びTVOCは、窒素ベースのガスボンベからのガス、又は、溶媒からガスを作製するガス発生器3としての、パーミエーター(ガステック社製)に窒素ガスを通じて作製したガスを用いた。具体的には、ターゲットVOCのうちのアセトン、メチルイソブチルケトン及びTVOCが前者に該当し、ターゲットVOCのうちのアセトイン、ノナナール、デカンが後者に該当する。これらのガスを流す際には、流したガスの流量に相当する分、乾燥状態の窒素の流量を減じることで、ガスの総流量500mL/min、窒素と酸素の濃度比4:1を常に維持した。
7種のガスセンサは、センサ室1に入れた後、TGS2600、TGS2602、TGS2610及びTGS2620は、製造元推奨のヒータ電圧5Vを印加し、#31b及び#33bは、所定の動作温度となるようヒータに電圧を印加し、ガスセンサを駆動温度に昇温させた。次に、合成空気500mL/minを2時間流し、ガスセンサの抵抗値が安定させてから抵抗値の記録を開始した。引き続き合成空気を30分間流した後、1ppmのターゲットVOCを含む合成空気を20分間流し、再度合成空気を30分間流しながら抵抗値を記録した。この操作を、アセトイン、ノナナール、デカン、アセトン、メチルイソブチルケトンの5種のターゲットガス全てにおいて実施した。
また、上記と同様にして、TVOC濃度1倍(300μg/m)を含む合成空気を30分間流した後、TVOC濃度1倍及び1ppmのターゲットTVOCを含む合成空気を20分間流し、再度TVOC濃度1倍を含む合成空気を30分間流しながら抵抗値を記録した。同じ要領で、TVOC濃度2倍及び3倍でも実施した。これらの操作も、アセトイン、ノナナール、デカン、アセトン、メチルイソブチルケトンの5種のターゲットガス全てにおいて実施した。
ガスセンサの応答値Sを用いて、主成分分析を行なった。なお、ガスセンサの応答値Sは、式
S=Ra/Rg
(式中、Raは、合成空気(又はTVOCを含む合成空気)を流したときのガスセンサの抵抗値であり、Rgは、1ppmのターゲットTVOCを含む合成空気(又はTVOCを含む合成空気)を流したときのガスセンサの抵抗値である。)
により定義される。
図2に、第1主成分及び第2主成分、第1主成分及び第3主成分による主成分得点と固有ベクトルを示す。各軸に各主成分の寄与率を示す。
図2から、第3主成分までの累積寄与率が93.9%であることがわかる。これは、ガスセンサ7種のうち、6.573種分の価値が集約されていることを示す。なお、図2では、固有ベクトルを分かり易く示すため、ベクトルの大きさを3倍にしている。主成分得点のプロットは、揮発性不純物であるTVOCの濃度によってばらつきが発生した。図2中の矢印は、TVOCの濃度が高くなる方向を示す。よって、矢印の始点側がTVOCの濃度0倍(0ppm)で、終点が3倍(0.18ppm)である(図3から図11まで全て同じ)。図2に示す通り、ケトン系で構造が非常に類似するアセトンとメチルイソブチルケトンは、主成分得点の重なりが見受けられるものの、アセトイン、ノナナール、デカン及びアセトン・メチルイソブチルケトンの間の主成分得点が分離されており、充分に分離検知できることがわかる。
なお、ターゲットVOCの主成分得点は、第2主成分の軸方向のバラツキが生じた。これは、TVOCの濃度を基準の0〜3倍に変化させたことで生じたものである。TVOCの主成分は、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素である。よって、第2主成分は、VOCの総炭素数に由来する傾向があるといえる。これに対し、第1主成分は、主成分得点の高い方から、水酸基を持つアセトイン、アルデヒド基を持つノナナール、ケトン系のアセトンとメチルイソブチルケトン、脂肪族炭化水素のデカンの順となっており、VOCの族別、特に酸化性の官能基の有無に由来する傾向にあるといえる。
第1主成分及び第2主成分の主成分得点においては、第1主成分の軸にほぼ平行の固有ベクトルを示すTGS2602、#31b、#33b、No.71が担っていることになる。一方、後述の比較例1では、ケトン系で構造が非常に類似するアセトンとメチルイソブチルケトンだけでなく、構造の類似しないデカンも主成分得点の重なりが見られる。このことから、バルク応答型のNo.71が特にケトン系と脂肪族炭化水素の分離に寄与していると考えられる。
また、第1主成分及び第3主成分の主成分得点においても、後述の比較例1では、アセトン・メチルイソブチルケトンと、デカンの主成分得点の重なりが見られたが、実施例1では、アセトン・メチルイソブチルケトンと、デカンの主成分得点が分離されている。No.71の固有ベクトルは、その分離の方向に平行となっており、特にケトン系と脂肪族炭化水素の分離に寄与していると考えられる。
[実施例2]
本実施例では、6種の粒界応答型半導体式ガスセンサ(TGS2600、TGS2602、TGS2610、TGS2620(以上、フィガロ技研社製)、#31b、#33b)と、2種のバルク応答型半導体式ガスセンサ(No.9、No.71)を用いた。なお、実施例2は、実施例1にバルク応答型半導体式ガスセンサを1種追加したものに相当する。
No.9は、産業技術総合研究所で作製した、酸化セリウムにジルコニウムを10mol%添加し、Ce0.9Zr0.1としたガスセンサ(CeZr10)である(Sens. Actuators B 108(2005)238-243参照)。よって、本ガスセンサは、バルク応答型半導体式センサである。本ガスセンサは、動作温度400℃で用いた。
本実施例では、実施例1と同様にして、8種のガスセンサの応答値Sを計測した後、8種のガスセンサの応答値Sで主成分分析を実施した。
図3に、第1主成分及び第2主成分、第1主成分及び第3主成分による主成分得点と固有ベクトルを示す。各軸に各主成分の寄与率を示す。
図3から、第3主成分までの累積寄与率が93.2%であることがわかる。これは、ガスセンサ8種のうち、7.456種分の価値が集約されていることを示す。なお、図3では、固有ベクトルを分かり易く示すため、ベクトルの大きさを3倍にしている。図3に示す通り、ケトン系で構造が非常に類似するアセトンとメチルイソブチルケトンは、主成分得点の重なりが見受けられるものの、アセトイン、ノナナール、デカン、アセトン・メチルイソブチルケトン間の主成分得点が分離されており、充分に分離検知できることがわかる。
なお、ターゲットVOCの主成分得点は、第2主成分の軸方向のバラツキが生じた。実施例1と同様、第2主成分は、VOCの総炭素数に由来する傾向があるといえる。これに対し、第1主成分は、実施例1と同様に、主成分得点の高い方から、アセトイン、ノナナール、アセトンとメチルイソブチルケトン、デカンの順となっており、VOCの族別、特に酸化性の官能基の有無に由来する傾向にあるといえる。
第1主成分及び第2主成分の主成分得点においては、第1主成分の軸にほぼ平行の固有ベクトルを示すTGS2602、#31b、#33b、No.9、No.71が担っていることになる。一方、後述の比較例1では、ケトン系で構造が非常に類似するアセトンとメチルイソブチルケトンだけでなく、構造の類似しないデカンも主成分得点の重なりが見られる。このことから、バルク応答型のNo.9、No.71が特にケトン系と脂肪族炭化水素の分離に寄与していると考えられる。
また、第1成分及び第3主成分の主成分得点においても、後述の比較例1では、アセトン・メチルイソブチルケトンと、デカンの主成分得点の重なりが見られたが、実施例2では、アセトン・メチルイソブチルケトンと、デカンの主成分得点が分離されているだけでなく、実施例1よりも主成分得点の差が増大している。No.71の固有ベクトルは、その分離の方向に平行となっており、特にケトン系と脂肪族炭化水素の分離に寄与していると考えられる。ここで、No.9の固有ベクトルもNo.71の固有ベクトルとほぼ平行であることから、バルク応答型ガスセンサを1種追加したことで、主成分得点の分離性が増大したものと考えられる。
[実施例3]
本実施例では、4種の粒界応答型半導体式ガスセンサ(TGS2602、TGS2610(以上、フィガロ技研社製)、#31b、#33b)と、1種のバルク応答型半導体式ガスセンサ(No.71)を用いた。なお、実施例3は、実施例1からTGS2600、TGS2620を除去したものに相当する。
本実施例では、実施例1と同様にして、5種のガスセンサの応答値Sを計測した後、5種のガスセンサの応答値Sで主成分分析を実施した。
図4に、第1主成分及び第2主成分、第1主成分及び第3主成分による主成分得点と固有ベクトルを示す。各軸に各主成分の寄与率を示す。
図4から、第3主成分までの累積寄与率が97.6%であることがわかる。これは、ガスセンサ5種のうち、4.88種分の価値が集約されていることを示す。なお、図4では、固有ベクトルを分かり易く示すため、ベクトルの大きさを3倍にしている。図4に示す通り、ケトン系で構造が非常に類似するアセトンとメチルイソブチルケトンは、主成分得点の重なりが見受けられるものの、アセトイン、ノナナール、デカン、アセトン・メチルイソブチルケトン間の主成分得点が分離されており、充分に分離検知できることがわかる。
なお、TVOCの濃度に依存する第2主成分の軸方向のバラツキは、実施例1よりも低減した。これは、第2主成分の軸と平行に近い固有ベクトルを示し、TVOCの濃度の影響を強く示すTGS2600、TGS2620を除去して、目的に応じた適切なセンサを選択したことによるものである。
第1主成分及び第2主成分の主成分得点においては、第1主成分の軸にほぼ平行の固有ベクトルを示すTGS2602、#31b、#33b、No.71が担っていることになる。一方、後述の比較例2では、ケトン系で構造が非常に類似するアセトンとメチルイソブチルケトンだけでなく、構造の類似しないデカンも主成分得点の重なりが見られる。このことから、バルク応答型のNo.71が特にケトン系と脂肪族炭化水素の分離に寄与していると考えられる。
また、第1主成分及び第3主成分の主成分得点においても、後述の比較例2では、アセトン・メチルイソブチルケトンと、デカンの主成分得点の重なりが見られたが、実施例3では、アセトン・メチルイソブチルケトンと、デカンの主成分得点が分離されている。ここで、No.71の固有ベクトルは、その分離の方向に平行となっており、特にケトン系と脂肪族炭化水素の分離に寄与していると考えられる。
[実施例4]
本実施例では、4種の粒界応答型半導体式ガスセンサ(TGS2602、TGS2610(以上、フィガロ技研社製)、#31b、#33b)と、2種のバルク応答型半導体式ガスセンサ(No.9、No.71)を用いた。なお、実施例4は、実施例2からTGS2600、TGS2620を除去したものに相当する。また、実施例4は、実施例3にNo.9を追加したものにも相当する。
本実施例では、実施例1と同様にして、6種のガスセンサの応答値Sを計測した後、6種のガスセンサの応答値Sで主成分分析を実施した。
図5に、第1主成分及び第2主成分、第1主成分及び第3主成分による主成分得点と固有ベクトルを示す。各軸に各主成分の寄与率を示す。
図5から、第3主成分までの累積寄与率が95.6%であることがわかる。これは、ガスセンサ6種のうち、5.736種分の価値が集約されていることを示す。なお、図5では、固有ベクトルを分かり易く示すため、ベクトルの大きさを3倍にしている。図5に示す通り、ケトン系で構造が非常に類似するアセトンとメチルイソブチルケトンは、主成分得点の重なりが見受けられるものの、アセトイン、ノナナール、デカン、アセトン・メチルイソブチルケトン間の主成分得点が分離されており、充分に分離検知できることがわかる。
なお、TVOCの濃度に依存する第2主成分の軸方向のバラツキは、実施例2よりも低減した。これは、第2主成分の軸と平行に近い固有ベクトルを示し、TVOCの濃度の影響を強く示すTGS2600、TGS2620の情報を除去して、目的に応じた適切なセンサを選択したことによるものである。
第1主成分及び第2主成分の主成分得点においては、第1主成分の軸にほぼ平行の固有ベクトルを示すTGS2602、#31b、#33b、No.9、No.71が担っていることになる。一方、後述の比較例2では、ケトン系で構造が非常に類似するアセトンとメチルイソブチルケトンだけでなく、構造の類似しないデカンも主成分得点の重なりが見られる。このことから、バルク応答型のNo.9、No.71が特にケトン系と脂肪族炭化水素の分離に寄与していると考えられる。
また、第1主成分及び第3主成分の主成分得点においても、後述の比較例2では、アセトン・メチルイソブチルケトンと、デカンの主成分得点の重なりが見られたが、実施例4では、アセトン・メチルイソブチルケトンと、デカンの主成分得点が分離されているだけでなく、実施例3よりも主成分得点の差が増大している。ここで、No.71の固有ベクトルは、その分離の方向に平行となっており、特にケトン系と脂肪族炭化水素の分離に寄与していると考えられる。また、No.9の固有ベクトルもNo.71の固有ベクトルとほぼ平行であることから、バルク応答型ガスセンサを1種追加したことで、主成分得点の分離性が増大したものと考えられる。
[実施例5]
本実施例では、3種の粒界応答型半導体式ガスセンサ(TGS2602(フィガロ技研社製)、#31b、#33b)と、1種のバルク応答型半導体式ガスセンサ(No.71)を用いた。実施例5は、実施例3からTGS2610を除去したものに相当する。
本実施例では、実施例1と同様にして、4種のガスセンサの応答値Sを計測した後、4種のガスセンサの応答値Sで主成分分析を実施した。
図6に、第1主成分及び第2主成分、第1主成分及び第3主成分による主成分得点と固有ベクトルを示す。各軸に各主成分の寄与率を示す。
図6から、第3主成分までの累積寄与率が99.9%であることがわかる。これは、ガスセンサ4種のうち、3.996種分の価値が集約されていることを示す。なお、図6では、固有ベクトルを分かり易く示すため、ベクトルの大きさを3倍にしている。図6に示す通り、ケトン系で構造が非常に類似するアセトンとメチルイソブチルケトンは、主成分得点の重なりが見受けられるものの、アセトイン、ノナナール、デカン、アセトン・メチルイソブチルケトン間の主成分得点が分離されており、充分に分離検知できることがわかる。
なお、TVOCの濃度に依存する第2主成分の軸方向のバラツキは、実施例3よりも低減した。これは、第2主成分の軸と平行に近い固有ベクトルを示し、TVOCの濃度の影響を強く示すTGS2610を除去して、目的に応じた適切なセンサを選択したことによるものである。
第1主成分及び第2主成分の主成分得点においては、第1主成分の軸にほぼ平行の固有ベクトルを示すTGS2602、#31b、#33b、No.71が担っていることになる。一方、後述の比較例3では、ケトン系で構造が非常に類似するアセトンとメチルイソブチルケトンだけでなく、構造の類似しないデカンも主成分得点の重なりが見られる。このことから、バルク応答型のNo.71が特にケトン系と脂肪族炭化水素の分離に寄与していると考えられる。
また、第1主成分及び第3主成分の主成分得点においても、後述の比較例3では、アセトン・メチルイソブチルケトンと、デカンの主成分得点の重なりが見られたが、実施例5では、アセトン・メチルイソブチルケトンと、デカンの主成分得点が分離されている。ここで、No.71の固有ベクトルは、その分離の方向に平行となっており、特にケトン系と脂肪族炭化水素の分離に寄与していると考えられる。
[実施例6]
本実施例では、3種の粒界応答型半導体式ガスセンサ(TGS2602(フィガロ技研社製)、#31b、#33b)と、2種のバルク応答型半導体式ガスセンサ(No.9、No.71)を用いた。実施例6は、実施例4からTGS2610を除去したものに相当する。また、実施例6は、実施例5にNo.9を追加したものにも相当する。
本実施例では、実施例1と同様にして、5種のガスセンサの応答値Sを計測した後、5種のガスセンサの応答値Sで主成分分析を実施した。
図7に、第1主成分及び第2主成分、第1主成分及び第3主成分による主成分得点と固有ベクトルを示す。各軸に各主成分の寄与率を示す。
図7から、第3主成分までの累積寄与率が96.1%であることがわかる。これは、ガスセンサ5種のうち、4.805種分の価値が集約されていることを示す。なお、図7では、固有ベクトルを分かり易く示すため、ベクトルの大きさを3倍にしている。図7に示す通り、ケトン系で構造が非常に類似するアセトンとメチルイソブチルケトンは、主成分得点の重なりが見受けられるものの、アセトイン、ノナナール、デカン、アセトン・メチルイソブチルケトン間の主成分得点が分離されており、充分に分離検知できることがわかる。
なお、TVOCの濃度に依存する第2主成分の軸方向のバラツキは、実施例4よりも低減した。これは、第2主成分の軸と平行に近い固有ベクトルを示し、TVOCの濃度の影響を強く示すTGS2610の情報を除去して、目的に応じた適切なセンサを選択したことによるものである。
第1主成分及び第2主成分の主成分得点においては、第1主成分の軸にほぼ平行の固有ベクトルを示すTGS2602、#31b、#33b、No.9、No.71が担っていることになる。一方、後述の比較例3では、ケトン系で構造が非常に類似するアセトンとメチルイソブチルケトンだけでなく、構造の類似しないデカンも主成分得点の重なりが見られる。このことから、バルク応答型のNo.9、No.71が特にケトン系と脂肪族炭化水素の分離に寄与していると考えられる。
また、第1主成分及び第3主成分の主成分得点においても、後述の比較例3では、アセトン・メチルイソブチルケトンと、デカンの主成分得点の重なりが見られたが、実施例6では、アセトン・メチルイソブチルケトンと、デカンの主成分得点が分離できているだけでなく、実施例5よりも主成分得点の差が増大した。ここで、No.71の固有ベクトルは、その分離の方向に平行となっており、特にケトン系と脂肪族炭化水素の分離に寄与していると考えられる。また、No.9の固有ベクトルもNo.71の固有ベクトルとほぼ平行であることから、バルク応答型ガスセンサを1種追加したことで、主成分得点の分離性が増大したものと考えられる。
[比較例1]
本比較例では、6種の粒界応答型半導体式ガスセンサ(TGS2600、TGS2602、TGS2610、TGS2620(以上、フィガロ技研社製)、#31b、#33b)を用いた。なお、比較例1は、実施例1又は実施例2からバルク応答型半導体式ガスセンサを除去したものに相当する。
本比較例では、まず、湿度が20℃換算で0%RHに相当するように変更した以外は、実施例1と同様にして、6種のガスセンサの応答値Sを計測した後、6種のガスセンサの応答値Sで主成分分析を実施した。このとき、窒素及び酸素は、全て水バブラー2に通じなかった。次に、実施例1と同様にして、6種のガスセンサの応答値Sを計測した後、6種のガスセンサの応答値Sで主成分分析を実施した。
図8及び図9に、湿度が20℃換算でそれぞれ0%RH及び60%RHに相当する場合の、第1主成分及び第2主成分、第1主成分及び第3主成分による主成分得点と固有ベクトルを示す。各軸に各主成分の寄与率を示す。
図8及び図9から、第3主成分までの累積寄与率がそれぞれ94.2%及び98.3%であることがわかる。これは、ガスセンサ6種のうち、5.652種分及び5.898種分の価値が集約されていることを示す。なお、図8及び図9では、固有ベクトルを分かり易く示すため、ベクトルの大きさを3倍にしている。
図8に示す通り、第1主成分及び第2主成分による主成分得点においては、メチルイソブチルケトンとアセトン、アセトンとデカンの主成分得点が近接してはいるものの、主成分得点の重なりは見られず、分離検知できることがわかる。また、第1主成分及び第3主成分による主成分得点においても、ノナナールとアセトンの主成分得点が近接しているものの、主成分得点の重なりは見られず、分離検知できることがわかる。
しかし、図9に示す通り、湿度が20℃換算で60%RHに相当する場合は、主成分得点の分離は充分でない。湿度が20℃換算で60%RHに相当すると、固有ベクトル及び主成分得点が大きく変動する。その結果、第1主成分及び第2主成分による主成分得点においては、ケトン系で構造が非常に類似するアセトンとメチルイソブチルケトンだけでなく、構造の類似しないデカンも主成分得点の重なりが見られた。また、第1主成分及び第3主成分による主成分得点においても、アセトン・メチルイソブチルケトン・デカン・アセトインの主成分得点の重なりが見られた。これは、粒界応答型半導体式ガスセンサは、表面に吸着した酸素がVOCの酸化で消費されることが応答のメカニズムであるが、湿度が20℃換算で60%RHに相当すると、酸素の吸着サイトの一部に水分子が吸着することで感度が低下するため、粒界応答型半導体式ガスセンサの間の特徴の差が減少し、情報量が減少したことに由来すると考えられる。即ち、本比較例で用いた6種の粒界応答型半導体式ガスセンサだけでは、自然界と同様の湿度が20℃換算で60%RHに相当する環境下では、充分に分離検知できないことがわかる。
[比較例2]
本比較例では、4種の粒界応答型半導体式ガスセンサ(TGS2602、TGS2610(以上、フィガロ技研社製)、#31b、#33b)を用いた。なお、比較例2は、実施例3又は実施例4からバルク応答型半導体式ガスセンサを除去したものに相当する。また、比較例2は、比較例1からTGS2600、TGS2620を除去したものにも相当する。
実施例1と同様にして、4種のガスセンサの応答値Sを計測した後、4種のガスセンサの応答値Sで主成分分析を実施した。
図10に、第1主成分及び第2主成分、第1主成分及び第3主成分による主成分得点と固有ベクトルを示す。各軸に各主成分の寄与率を示す。
図10から、第3主成分までの累積寄与率が100%であることがわかる。これは、4種のガスセンサの実質的に全ての価値が集約されていることを示す。なお、図10では、固有ベクトルを分かり易く示すため、ベクトルの大きさを3倍にしている。
図10に示す通り、第1主成分及び第2主成分による主成分得点においては、比較例1よりも、ノナナールとアセトインの主成分得点の差が大きくなり、第1主成分及び第3主成分による主成分得点においては、比較例1よりも、アセトインとアセトン・メチルイソブチルケトン・デカンの主成分得点の差が大きくなった。しかし、ケトン系で構造が非常に類似するアセトンとメチルイソブチルケトンだけでなく、構造の類似しないデカンも主成分得点の重なりが見られた。即ち、本比較例においても、充分に分離検知できないことがわかる。
[比較例3]
本比較例では、3種の粒界応答型半導体式ガスセンサ(TGS2602(フィガロ技研社製)、#31b、#33b)を用いた。なお、比較例3は、実施例5又は実施例6からバルク応答型半導体式ガスセンサを除去したものに相当する。また、比較例3は、比較例2からTGS2610を除いたものにも相当する。
実施例1と同様にして、3種のガスセンサの応答値Sを計測した後、3種のガスセンサの応答値Sで主成分分析を実施した。
図11に、第1主成分及び第2主成分、第1主成分及び第3主成分による主成分得点と固有ベクトルを示す。各軸に各主成分の寄与率を示す。
図11からも明らかなように、3種の粒界応答型半導体式ガスセンサによる主成分分析であり、第3主成分までとなるため、第3主成分までの累積寄与率は100%である。なお、図11では、固有ベクトルを分かり易く示すため、ベクトルの大きさを3倍にしている。
図11に示す通り、TVOCの濃度に依存する第2主成分の軸方向のバラツキは、比較例2よりも低減したが、アセトン・メチルイソブチルケトン・デカンの主成分得点の重なりが見られた。即ち、本比較例においても、充分に分離検知できないことがわかる。
1 センサ室
2 水バブラー
3 ガス発生器
4 弁
5 ニードル弁を有する流量計
6 三方弁
7 クロスオーバー四方弁

Claims (7)

  1. 可燃性ガスの検知に用いられるガスセンサ群であって、
    複数種の粒界応答型の半導体式ガスセンサと、1種以上のバルク応答型の半導体式ガスセンサを有することを特徴とするガスセンサ群。
  2. 前記粒界応答型の半導体式ガスセンサは、金属酸化物粒子を含み、
    該金属酸化物粒子は、表面に酸素が吸着して、粒界の電気抵抗が増大したところに、該酸素が前記可燃性ガスと反応し、消費されることで、粒界の電気抵抗が減少することを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ群。
  3. 前記バルク応答型の半導体式ガスセンサは、酸素貯蔵能を有する金属酸化物を含み、
    該金属酸化物は、バルク中の格子酸素が前記可燃性ガスと反応し、消費されることで、電気抵抗が減少することを特徴とする請求項1又は2に記載のガスセンサ群。
  4. 前記酸素貯蔵能を有する金属酸化物は、酸化セリウム及びセリウム−ジルコニウム系複合酸化物からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする請求項3に記載のガスセンサ群。
  5. 前記バルク応答型の半導体式ガスセンサは、前記酸素貯蔵能を有する金属酸化物の上部に、貴金属触媒粒子が担持されている金属酸化物の触媒担体が形成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載のガスセンサ群。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載のガスセンサ群を用いて、可燃性ガスを検知する工程を含むことを特徴とする可燃性ガスの分析方法。
  7. 前記可燃性ガスを検知することにより得られた応答値を主成分分析する工程をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の可燃性ガスの分析方法。
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