JP2017149360A - 車両用空気調和装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】室外膨張弁と室外熱交換器をバイパスする除湿用の回路を有しない場合にも、快適且つ効率的な車室内の除湿暖房を実現する。【解決手段】圧縮機2と、放熱器4と、吸熱器9と、室外熱交換器7と、圧縮機から吐出された冷媒を、放熱器に流すこと無く室外熱交換器に直接流入させるバイパス装置45と、補助ヒータ23と、コントローラを備える。コントローラは少なくとも、圧縮機2から吐出された冷媒をバイパス装置45により室外熱交換器7に流して放熱させ、放熱した冷媒を減圧した後、吸熱器9にて吸熱させると共に、補助ヒータ23を発熱させる除湿暖房モードを実行する。【選択図】図1
Description
本発明は、車両の車室内を空調するヒートポンプ方式の空気調和装置、特にハイブリッド自動車や電気自動車に適用可能な空気調和装置に関するものである。
近年の環境問題の顕在化から、ハイブリッド自動車や電気自動車が普及するに至っている。そして、このような車両に適用することができる空気調和装置として、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、車室内側に設けられて冷媒を放熱させる放熱器と、車室内側に設けられて冷媒を吸熱させる吸熱器と、車室外側に設けられて冷媒を放熱又は吸熱させる室外熱交換器と、室外熱交換器に流入する冷媒を減圧させる室外膨張弁を備え、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器において放熱させ、この放熱器において放熱した冷媒を室外熱交換器において吸熱させる暖房モードと、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器において放熱させ、放熱器において放熱した冷媒を吸熱器のみ、又は、この吸熱器と室外熱交換器において吸熱させる除湿暖房モードと、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器及び室外熱交換器において放熱させ、吸熱器において吸熱させる除湿冷房モードと、圧縮機から吐出された冷媒を室外熱交換器において放熱させ、吸熱器において吸熱させる冷房モードとを切り換えて実行するものが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1の場合、室外膨張弁と室外熱交換器の直列回路をバイパスする除湿用の回路(特許文献1の冷媒配管13F)が設けられており、除湿暖房モードでは放熱器を経た冷媒が室外膨張弁と除湿用の回路に分流され、吸熱器と室外熱交換器で吸熱させる。そして、この除湿暖房モードでは放熱器の圧力(高圧圧力)に基づいて圧縮機を制御することで放熱器による加熱を調整し、吸熱器の温度に基づいて室外膨張弁の弁開度を制御することで吸熱器で吸熱する冷媒量を調整していた。
一方、上記の如く室外膨張弁と室外熱交換器をバイパスする除湿用の回路では無く、上記放熱器に相当する内部凝縮機と上記室外膨張弁に相当する第1膨張バルブをバイパスする配管を設けたものも開発されている(例えば、特許文献2参照)。
その場合は、冷媒を圧縮して吐出する圧縮器と、車室内側に設けられて冷媒を放熱させる内部凝縮機と、車室内側に設けられて冷媒を吸熱させる蒸発器と、車室外側に設けられて冷媒を放熱又は吸熱させる外部凝縮機と、この外部凝縮機に流入する冷媒を膨張させる第1膨張バルブと、蒸発器に流入する冷媒を膨張させる第2膨張バルブと、内部凝縮機及び第1膨張バルブをバイパスする配管が設けられ、圧縮器から吐出された冷媒を内部凝縮機において放熱させ、この放熱した冷媒を外部凝縮機において吸熱させる暖房モードと、圧縮器から吐出された冷媒を内部凝縮機において放熱させ、放熱した冷媒を蒸発器において吸熱させる除湿モードと、圧縮器から吐出された冷媒を内部凝縮機では無く外部凝縮機に流して放熱させ、蒸発器において吸熱させる冷房モードを切り換えて実行していた。
上記特許文献2のような車両用空気調和装置では、除湿モードのとき第1膨張バルブと第2膨張バルブの開度量調節によって冷媒の膨張量を調節していた。しかしながら、何れの膨張バルブの開度量を変更しても、内部凝縮機と蒸発器に流入する冷媒量の双方は変化してしまうため、制御は極めて困難なものとなる。
また、特許文献2にはPCTヒータを作動させて暖房温度を設定する記載も見られるが、空気流において室内凝縮機の下流側にPTCヒータが配置されているため、PTCヒータに流入する空気温度が高くなり、温度に比例して抵抗値が大きくなるという特性上、能力を十分に発揮させることが困難となる。そこで、係るPTCヒータを室内凝縮機の上流側に配置した場合、今度はPTCヒータで加熱された空気から室内凝縮機が吸熱してしまうようになるため、車室内に吹き出される空気温度が低下し、COPも低下する。何れにしても、特許文献2に示される装置及び制御では快適且つ効率的な車室内の除湿を実現することは極めて困難であった。
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、室外膨張弁と室外熱交換器をバイパスする除湿用の回路を有しない場合にも、快適且つ効率的な車室内の除湿暖房を実現すると共に、的確に他のモードに切り換えることで、快適且つ効率的な運転を実現することができる車両用空気調和装置を提供することを目的とする。
本発明の車両用空気調和装置は、冷媒を圧縮する圧縮機と、車室内に供給する空気が流通する空気流通路と、冷媒を放熱させて空気流通路から車室内に供給する空気を加熱するための放熱器と、冷媒を吸熱させて空気流通路から車室内に供給する空気を冷却するための吸熱器と、車室外に設けられた室外熱交換器と、圧縮機から吐出された冷媒を、放熱器に流すこと無く室外熱交換器に直接流入させるためのバイパス装置と、空気流通路から車室内に供給する空気を加熱するための補助加熱装置と、制御装置とを備えており、この制御装置が少なくとも、圧縮機から吐出された冷媒をバイパス装置により室外熱交換器に流して放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、吸熱器にて吸熱させると共に、補助加熱装置を発熱させる除湿暖房モードを実行することを特徴とする。
請求項2の発明の車両用空気調和装置は、上記発明において補助加熱装置は、空気流通路における空気の流れに対して放熱器の上流側に配置されていることを特徴とする。
請求項3の発明の車両用空気調和装置は、上記各発明において制御装置は更に、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器に流して放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、室外熱交換器にて吸熱させる暖房モードを有し、この暖房モードと除湿暖房モードを切り換えて実行することを特徴とする。
請求項4の発明の車両用空気調和装置は、上記発明において制御装置は更に、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器から室外熱交換器に流して当該放熱器及び室外熱交換器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、吸熱器にて吸熱させる除湿冷房モードと、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器から室外熱交換器に流して当該室外熱交換器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、吸熱器にて吸熱させる冷房モードと、圧縮機から吐出された冷媒をバイパス装置により室外熱交換器に流して放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、吸熱器にて吸熱させる最大冷房モードを有し、暖房モード、除湿暖房モード、除湿冷房モード、冷房モード及び最大冷房モードを切り換えて実行することを特徴とする。
請求項5の発明の車両用空気調和装置は、上記発明において制御装置は、外気温度、車室内の湿度、車室内に吹き出される空気の温度の目標値である目標吹出温度TAO、放熱器の温度である放熱器温度TH、当該放熱器温度THの目標値である目標放熱器温度TCO、吸熱器の温度である吸熱器温度Te、当該吸熱器温度Teの目標値である目標吸熱器温度TEO、車室内の除湿要求の有無、のうちの何れか、又は、それらの組み合わせ、若しくは、それらの全てに基づき、各モードを切り換えることを特徴とする。
請求項6の発明の車両用空気調和装置は、上記発明において制御装置は、暖房モードにおいて、外気温度が上昇した場合、車室内の除湿要求があることを条件として、除湿暖房モードに移行することを特徴とする。
請求項7の発明の車両用空気調和装置は、請求項5又は請求項6の発明において制御装置は、除湿暖房モード又は除湿冷房モードにおいて、外気温度が低下した場合、又は、車室内の除湿要求が無くなった場合、暖房モードに移行することを特徴とする。
請求項8の発明の車両用空気調和装置は、請求項5乃至請求項7の発明において制御装置は、暖房モード又は除湿暖房モードにおいて、目標放熱器温度TCOが外気温度かそれに近い値以下の場合、又は、除湿冷房モードでの放熱器における放熱で目標放熱器温度TCOを実現できる場合、車室内の除湿要求があることを条件として、除湿冷房モードに移行することを特徴とする。
請求項9の発明の車両用空気調和装置は、請求項5乃至請求項8の発明において制御装置は、除湿冷房モードにおいて、放熱器における放熱が不足する場合、又は、当該除湿冷房モードでの放熱器における放熱で目標放熱器温度TCOを実現できない場合、除湿暖房モードに移行することを特徴とする。
請求項10の発明の車両用空気調和装置は、請求項8又は請求項9の発明において制御装置は、除湿冷房モードにおいて少なくとも放熱器の風量と外気温度毎に当該放熱器における放熱で実現できる最高の放熱器温度THに関する最高放熱器温度データを有し、この最高放熱器温度データに基づき、除湿冷房モードでの放熱器における放熱で目標放熱器温度TCOを実現できるか否かを判定することを特徴とする。
請求項11の発明の車両用空気調和装置は、請求項5乃至請求項10の発明において制御装置は、冷房モードにおいて、外気温度が高くなり、且つ、目標吹出温度TAOが目標吸熱器温度TEOより低い場合、最大冷房モードに移行することを特徴とする。
請求項12の発明の車両用空気調和装置は、請求項5乃至請求項11の発明において制御装置は、最大冷房モードにおいて、外気温度が低下し、且つ、目標吹出温度TAOが目標吸熱器温度TEOより高くなった場合、冷房モードに移行することを特徴とする。
請求項13の発明の車両用空気調和装置は、請求項5乃至請求項12の発明において制御装置は、車室内を除湿するか否かの切換操作、車室内の湿度が高いか否か、又は、吸熱器温度Teが目標吸熱器温度TEOより高いか否か、のうちの何れか、又は、それらの組み合わせ、若しくは、それらの全てに基づき、車室内の除湿要求の有無を判断することを特徴とする。
請求項14の発明の車両用空気調和装置は、上記各発明において室外熱交換器に流入する冷媒を減圧するための室外膨張弁を備え、バイパス装置は、放熱器と室外膨張弁をバイパスして圧縮機から吐出された冷媒を室外熱交換器に流すためのバイパス配管と、圧縮機から吐出された冷媒をバイパス配管に流すか、放熱器に流すかを切り換えるための流路切換装置を有することを特徴とする。
請求項15の発明の車両用空気調和装置は、上記発明において制御装置は、除湿暖房モードにおいて、又は、この除湿暖房モードと最大冷房モードにおいては、室外膨張弁を全閉とすることを特徴とする。
請求項16の発明の車両用空気調和装置は、上記各発明において制御装置は除湿暖房モードにおいて、吸熱器の温度である吸熱器温度Teとその目標値である目標吸熱器温度TEOに基づいて圧縮機の運転を制御すると共に、放熱器の温度の目標値である目標放熱器温度TCOに基づいて補助加熱装置の発熱を制御することを特徴とする。
請求項17の発明の車両用空気調和装置は、上記各発明において吸熱器を通過した空気流通路内の空気を補助加熱装置及び放熱器に通風する割合を調整するエアミックスダンパを備え、制御装置は、除湿暖房モードではエアミックスダンパを制御して、空気流通路内の全ての空気を補助加熱装置及び放熱器に通風することを特徴とする。
本発明の車両用空気調和装置によれば、冷媒を圧縮する圧縮機と、車室内に供給する空気が流通する空気流通路と、冷媒を放熱させて空気流通路から車室内に供給する空気を加熱するための放熱器と、冷媒を吸熱させて空気流通路から車室内に供給する空気を冷却するための吸熱器と、車室外に設けられた室外熱交換器と、圧縮機から吐出された冷媒を、放熱器に流すこと無く室外熱交換器に直接流入させるためのバイパス装置と、空気流通路から車室内に供給する空気を加熱するための補助加熱装置と、制御装置とを備え、この制御装置が少なくとも、圧縮機から吐出された冷媒をバイパス装置により室外熱交換器に流して放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、吸熱器にて吸熱させると共に、補助加熱装置を発熱させる除湿暖房モードを実行するようにしたので、この除湿暖房モードでは、吸熱器における冷媒の吸熱作用で空気流通路内を流れる空気を冷却、且つ、除湿し、更に補助加熱装置にて加熱することができるようになる。
これにより、前述した従来の除湿用の回路を有しない場合にも、車室内に吹き出される空気を除湿しながら、その温度を適切な暖房温度に制御することが可能となり、快適且つ効率的な車室内の除湿暖房を実現することが可能となる。
特に、除湿暖房モードでは放熱器に冷媒を流さないので、請求項2の発明の如く補助加熱装置を空気流通路における空気の流れに対して放熱器の上流側に配置した場合にも、補助加熱装置にて加熱された空気から放熱器が吸熱してしまう不都合も解消され、放熱器により車室内に吹き出される空気の温度が低下してしまうことを抑制し、COPも向上させることができるようになる。
尚、請求項2の発明の如く補助加熱装置を空気流通路における空気の流れに対して放熱器の上流側に配置すれば、補助加熱装置を例えばPTCヒータで構成した場合には、その能力を円滑に発揮させることができるようになる効果もある。
また、請求項3の発明の如く制御装置が更に、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器に流して放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、室外熱交換器にて吸熱させる暖房モードを有して、この暖房モードと除湿暖房モードとを切り換えて実行することで、放熱器による車室内の暖房と、吸熱器及び補助加熱装置による車室内の除湿暖房を円滑に実現することができるようになる。
更に、請求項4の発明の如く制御装置が、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器から室外熱交換器に流して当該放熱器及び室外熱交換器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、吸熱器にて吸熱させる除湿冷房モードと、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器から室外熱交換器に流して当該室外熱交換器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、吸熱器にて吸熱させる冷房モードと、圧縮機から吐出された冷媒をバイパス装置により室外熱交換器に流して放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、吸熱器にて吸熱させる最大冷房モードを有して、前述した暖房モード、除湿暖房モードと、これら除湿冷房モード、冷房モード及び最大冷房モードを切り換えて実行することで、上記発明に加えて放熱器の放熱と吸熱器の吸熱による車室内の除湿冷房と、吸熱器の吸熱による車室内の冷房を円滑に実現することができるようになる。
特に、放熱器に冷媒を流さずに室外熱交換器にて冷媒を放熱させ、吸熱器にて吸熱させる最大冷房モードを有しているので、この最大冷房モードでは放熱器からの熱伝導によって空気流通路内の空気が加熱される不都合も解消される。これにより、特に外気温度が高いような環境下では、迅速且つ強力に車室内を冷房して快適な車室内空調を実現することができるようになる。
この場合、請求項5の発明の如く制御装置が、外気温度、車室内の湿度、車室内に吹き出される空気の温度の目標値である目標吹出温度TAO、放熱器の温度である放熱器温度TH、当該放熱器温度THの目標値である目標放熱器温度TCO、吸熱器の温度である吸熱器温度Te、当該吸熱器温度Teの目標値である目標吸熱器温度TEO、車室内の除湿要求の有無、のうちの何れか、又は、それらの組み合わせ、若しくは、それらの全てに基づいて各モードを切り換えることで、環境条件や除湿の要否に応じて的確に暖房モード、除湿暖房モード、除湿冷房モード、冷房モード及び最大冷房モードを切り換え、快適且つ効率的な車室内空調を実現することが可能となる。
例えば制御装置が暖房モードにおいて、外気温度が上昇した場合に除湿暖房モードに移行するようにしたとき、請求項6の発明の如く車室内の除湿要求があることを条件として、除湿暖房モードに移行するようにすることにより、暖房モードから除湿暖房モードへの切り換えを適切に行い、補助加熱装置を過剰に使用して消費電力が増大する不都合を解消することが可能となる。これにより、快適性と省エネ性を両立させた車室内空調を実現することができるようになる。
この場合、請求項7の発明の如く除湿暖房モード又は除湿冷房モードにおいて、外気温度が低下した場合、又は、車室内の除湿要求が無くなった場合に、制御装置が暖房モードに移行することにより、迅速に除湿暖房モード又は除湿冷房モードから暖房モードへの移行を図って快適な車室内空調を継続することができるようになる。
また、請求項8の発明の如く暖房モード又は除湿暖房モードにおいて、目標放熱器温度TCOが外気温度かそれに近い値以下の場合、又は、除湿冷房モードでの放熱器における放熱で目標放熱器温度TCOを実現できる場合、車室内の除湿要求があることを条件として除湿冷房モードに移行するようにすることにより、暖房モード又は除湿暖房モードから除湿冷房モードへの切り換えを適切に行い、安定且つ快適な車室内空調を継続することができるようになる。
この場合、請求項9の発明の如く除湿冷房モードにおいて、放熱器における放熱が不足する場合、又は、当該除湿冷房モードでの放熱器における放熱で目標放熱器温度TCOを実現できない場合、制御装置が除湿暖房モードに移行することにより、迅速に除湿冷房モードから除湿暖房モードへの移行を図って快適な車室内空調を継続することができるようになる。
これらにおいて、請求項10の発明の如く制御装置が、除湿冷房モードにおいて少なくとも放熱器の風量と外気温度毎に当該放熱器における放熱で実現できる最高の放熱器温度THに関する最高放熱器温度データを有し、この最高放熱器温度データに基づき、除湿冷房モードでの放熱器における放熱で目標放熱器温度TCOを実現できるか否かを判定することにより、除湿冷房モードで放熱器の暖房能力を確保できるか否かを的確に判定し、暖房モード又は除湿暖房モードから除湿冷房モードへの切り換え、及び、除湿冷房モードから除湿暖房モードへの切り換えを円滑に実現することができるようになる。
また、請求項11の発明の如く制御装置が、冷房モードにおいて外気温度が高くなり、且つ、目標吹出温度TAOが目標吸熱器温度TEOより低い場合に、最大冷房モードに移行することにより、冷房モードから最大冷房モードへの切り換えを的確に行って迅速な車室内冷房を実現することができるようになる。
この場合、請求項12の発明の如く制御装置が、最大冷房モードにおいて外気温度が低下し、且つ、目標吹出温度TAOが目標吸熱器温度TEOより高くなった場合に、冷房モードに移行することにより、適切に最大冷房モードから冷房モードへの切り換えを行うことができるようになる。
ここで、前述した車室内の除湿要求の有無については、請求項13の発明の如く制御装置が、車室内を除湿するか否かの切換操作、車室内の湿度が高いか否か、又は、吸熱器温度Teが目標吸熱器温度TEOより高いか否か、のうちの何れか、又は、それらの組み合わせ、若しくは、それらの全てに基づいて判断することで、車室内の除湿の必要性を的確に判断して暖房モードと除湿暖房モードとの間のモード切り換え、及び、それらと除湿冷房モードとの間のモード切り換えを適切に行い、快適な車室内空調を継続することができるようになる。
請求項14の発明では更に室外熱交換器に流入する冷媒を減圧するための室外膨張弁を備えており、バイパス装置は、放熱器と室外膨張弁をバイパスして圧縮機から吐出された冷媒を室外熱交換器に流すためのバイパス配管と、圧縮機から吐出された冷媒をバイパス配管に流すか、放熱器に流すかを切り換えるための流路切換装置を有する構成としたので、圧縮機から吐出された冷媒を室外熱交換器に直接流入させる除湿暖房モードや最大冷房モードと、圧縮機から吐出された冷媒を放熱器に流入させる暖房モードや除湿冷房モード、冷房モードとの切り換えを円滑に行うことができるようになる。
この場合、請求項15の発明の如く除湿暖房モードや最大冷房モードにおいて、制御装置が室外膨張弁を全閉とすることで、圧縮機から吐出された冷媒が流路切換装置、バイパス配管を経て室外膨張弁から放熱器に逆流入する不都合を抑制若しくは防止することが可能となる。これにより、冷媒循環量の低下を抑制若しくは解消して空調能力を確保することができるようになる。
また、請求項16の発明の如く制御装置が除湿暖房モードにおいて、吸熱器の温度である吸熱器温度Teとその目標値である目標吸熱器温度TEOに基づいて圧縮機の運転を制御すると共に、放熱器の温度の目標値である目標放熱器温度TCOに基づいて補助加熱装置の発熱を制御することで、除湿暖房モードにおける吸熱器による冷却と除湿、並びに、補助加熱装置による加熱を的確に制御することができるようになる。これにより、車室内に吹き出される空気をより適切に除湿しながら、その温度をより正確な暖房温度に制御することが可能となり、より一層快適且つ効率的な車室内の除湿暖房を実現することが可能となる。
また、請求項17の発明の如く吸熱器を通過した空気流通路内の空気を補助加熱装置及び放熱器に通風する割合を調整するエアミックスダンパを備え、制御装置が除湿暖房モードではエアミックスダンパを制御して、空気流通路内の全ての空気を補助加熱装置及び放熱器に通風することで、吸熱器を経た空気を効率良く補助加熱装置で加熱して省エネ性を向上させ、且つ、除湿暖房空調の制御性も向上させることができるようになるものである。
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例の車両用空気調和装置1の構成図を示している。本発明を適用する実施例の車両は、エンジン(内燃機関)が搭載されていない電気自動車(EV)であって、バッテリに充電された電力で走行用の電動モータを駆動して走行するものであり(何れも図示せず)、本発明の車両用空気調和装置1も、バッテリの電力で駆動されるものとする。即ち、実施例の車両用空気調和装置1は、エンジン廃熱による暖房ができない電気自動車において、冷媒回路を用いたヒートポンプ運転により暖房モードを行い、更に、除湿暖房モード、除湿冷房モード、冷房モード、MAX冷房モード(最大冷房モード)の各運転モードを選択的に実行するものである。
尚、車両として電気自動車に限らず、エンジンと走行用の電動モータを供用する所謂ハイブリッド自動車にも本発明は有効であり、更には、エンジンで走行する通常の自動車にも適用可能であることは云うまでもない。
実施例の車両用空気調和装置1は、電気自動車の車室内の空調(暖房、冷房、除湿、及び、換気)を行うものであり、冷媒を圧縮する電動式の圧縮機2と、車室内空気が通気循環されるHVACユニット10の空気流通路3内に設けられ、圧縮機2から吐出された高温高圧の冷媒が冷媒配管13Gを介して流入し、この冷媒を車室内に放熱させる放熱器4と、暖房時に冷媒を減圧膨張させる電動弁から成る室外膨張弁6と、車室外に設けられて冷房時には放熱器として機能し、暖房時には蒸発器として機能すべく冷媒と外気との間で熱交換を行わせる室外熱交換器7と、冷媒を減圧膨張させる電動弁から成る室内膨張弁8と、空気流通路3内に設けられて冷房時及び除湿時に車室内外から冷媒に吸熱させる吸熱器9と、アキュムレータ12等が冷媒配管13により順次接続され、冷媒回路Rが構成されている。
そして、この冷媒回路Rには所定量の冷媒と潤滑用のオイルが充填されている。尚、室外熱交換器7には、室外送風機15が設けられている。この室外送風機15は、室外熱交換器7に外気を強制的に通風することにより、外気と冷媒とを熱交換させるものであり、これにより停車中(即ち、車速が0km/h)にも室外熱交換器7に外気が通風されるよう構成されている。
また、室外熱交換器7は冷媒下流側にレシーバドライヤ部14と過冷却部16を順次有し、室外熱交換器7から出た冷媒配管13Aは冷房時に開放される電磁弁17を介してレシーバドライヤ部14に接続され、過冷却部16の出口側の冷媒配管13Bは室内膨張弁8介して吸熱器9の入口側に接続されている。尚、レシーバドライヤ部14及び過冷却部16は構造的に室外熱交換器7の一部を構成している。
また、過冷却部16と室内膨張弁8間の冷媒配管13Bは、吸熱器9の出口側の冷媒配管13Cと熱交換関係に設けられ、両者で内部熱交換器19を構成している。これにより、冷媒配管13Bを経て室内膨張弁8に流入する冷媒は、吸熱器9を出た低温の冷媒により冷却(過冷却)される構成とされている。
また、室外熱交換器7から出た冷媒配管13Aは冷媒配管13Dに分岐しており、この分岐した冷媒配管13Dは、暖房時に開放される電磁弁21を介して内部熱交換器19の下流側における冷媒配管13Cに連通接続されている。この冷媒配管13Cがアキュムレータ12に接続され、アキュムレータ12は圧縮機2の冷媒吸込側に接続されている。更に、放熱器4の出口側の冷媒配管13Eは室外膨張弁6を介して室外熱交換器7の入口側に接続されている。
また、圧縮機2の吐出側と放熱器4の入口側の間の冷媒配管13Gには後述する除湿暖房とMAX冷房時に閉じられる電磁弁30(流路切換装置を構成する)が介設されている。この場合、冷媒配管13Gは電磁弁30の上流側でバイパス配管35に分岐しており、このバイパス配管35は除湿暖房とMAX冷房時に開放される電磁弁40(これも流路切換装置を構成する)を介して室外膨張弁6の下流側の冷媒配管13Eに連通接続されている。これらバイパス配管35、電磁弁30及び電磁弁40により本発明におけるバイパス装置45が構成される。
このようなバイパス配管35、電磁弁30及び電磁弁40によりバイパス装置45を構成したことで、後述する如く圧縮機2から吐出された冷媒を室外熱交換器7に直接流入させる除湿暖房モードやMAX冷房モードと、圧縮機2から吐出された冷媒を放熱器4に流入させる暖房モードや除湿冷房モード、冷房モードとの切り換えを円滑に行うことができるようになる。
また、吸熱器9の空気上流側における空気流通路3には、外気吸込口と内気吸込口の各吸込口が形成されており(図1では吸込口25で代表して示す)、この吸込口25には空気流通路3内に導入する空気を車室内の空気である内気(内気循環モード)と、車室外の空気である外気(外気導入モード)とに切り換える吸込切換ダンパ26が設けられている。更に、この吸込切換ダンパ26の空気下流側には、導入した内気や外気を空気流通路3に送給するための室内送風機(ブロワファン)27が設けられている。
また、図1において23は実施例の車両用空気調和装置1に設けられた補助加熱装置としての補助ヒータである。実施例の補助ヒータ23は電気ヒータであるPTCヒータにて構成されており、空気流通路3の空気の流れに対して、放熱器4の空気上流側となる空気流通路3内に設けられている。そして、補助ヒータ23に通電されて発熱すると、吸熱器9を経て放熱器4に流入する空気流通路3内の空気が加熱される。即ち、この補助ヒータ23が所謂ヒータコアとなり、車室内の暖房を行い、或いは、それを補完する。
また、補助ヒータ23の空気上流側における空気流通路3内には、当該空気流通路3内に流入し、吸熱器9を通過した後の空気流通路3内の空気(内気や外気)を補助ヒータ23及び放熱器4に通風する割合を調整するエアミックスダンパ28が設けられている。更に、放熱器4の空気下流側における空気流通路3には、FOOT(フット)、VENT(ベント)、DEF(デフ)の各吹出口(図1では代表して吹出口29で示す)が形成されており、この吹出口29には上記各吹出口から空気の吹き出しを切換制御する吹出口切換ダンパ31が設けられている。
次に、図2において32はプロセッサを備えたコンピュータの一例であるマイクロコンピュータから構成された制御装置としてのコントローラ(ECU)であり、このコントローラ32の入力には車両の外気温度(Tam)を検出する外気温度センサ33と、外気湿度を検出する外気湿度センサ34と、吸込口25から空気流通路3に吸い込まれる空気の温度を検出するHVAC吸込温度センサ36と、車室内の空気(内気)の温度を検出する内気温度センサ37と、車室内の空気の湿度を検出する内気湿度センサ38と、車室内の二酸化炭素濃度を検出する室内CO2濃度センサ39と、吹出口29から車室内に吹き出される空気の温度を検出する吹出温度センサ41と、圧縮機2の吐出冷媒圧力(吐出圧力Pd)を検出する吐出圧力センサ42と、圧縮機2の吐出冷媒温度を検出する吐出温度センサ43と、圧縮機2の吸込冷媒圧力を検出する吸込圧力センサ44と、圧縮機2の吸込冷媒温度を検出する吸込温度センサ55と、放熱器4の温度(放熱器4を経た空気の温度、又は、放熱器4自体の温度:放熱器温度TH)を検出する放熱器温度センサ46と、放熱器4の冷媒圧力(放熱器4内、又は、放熱器4を出た直後の冷媒の圧力:放熱器圧力PCI)を検出する放熱器圧力センサ47と、吸熱器9の温度(吸熱器9を経た空気の温度、又は、吸熱器9自体の温度:吸熱器温度Te)を検出する吸熱器温度センサ48と、吸熱器9の冷媒圧力(吸熱器9内、又は、吸熱器9を出た直後の冷媒の圧力)を検出する吸熱器圧力センサ49と、車室内への日射量を検出するための例えばフォトセンサ式の日射センサ51と、車両の移動速度(車速)を検出するための車速センサ52と、設定温度や運転モードの切り換えを設定するための空調(エアコン)操作部53と、室外熱交換器7の温度(室外熱交換器7から出た直後の冷媒の温度、又は、室外熱交換器7自体の温度:室外熱交換器温度TXO)を検出する室外熱交換器温度センサ54と、室外熱交換器7の冷媒圧力(室外熱交換器7内、又は、室外熱交換器7から出た直後の冷媒の圧力:室外熱交換器圧力PXO)を検出する室外熱交換器圧力センサ56の各出力が接続されている。また、コントローラ32の入力には更に、補助ヒータ23の温度(補助ヒータ23で加熱された直後の空気の温度、又は、補助ヒータ23自体の温度:補助ヒータ温度Tptc)を検出する補助ヒータ温度センサ50の出力も接続されている。
一方、コントローラ32の出力には、前記圧縮機2と、室外送風機15と、室内送風機(ブロワファン)27と、吸込切換ダンパ26と、エアミックスダンパ28と、吹出口切換ダンパ31と、室外膨張弁6、室内膨張弁8と、補助ヒータ23、電磁弁30(除湿用)、電磁弁17(冷房用)、電磁弁21(暖房用)、電磁弁40(これも除湿用)の各電磁弁が接続されている。そして、コントローラ32は各センサの出力と空調操作部53にて入力された設定に基づいてこれらを制御する。
以上の構成で、次に実施例の車両用空気調和装置1の動作を説明する。コントローラ32は実施例では暖房モード、除湿暖房モード、除湿冷房モード、冷房モード及びMAX冷房モード(最大冷房モード)の各運転モードを切り換えて実行する。先ず、各運転モードにおける冷媒の流れと制御の概略について説明する。
(1)暖房モード
コントローラ32により(オートモード)或いは空調操作部53へのマニュアル操作(マニュアルモード)により暖房モードが選択されると、コントローラ32は電磁弁21(暖房用)を開放し、電磁弁17(冷房用)を閉じる。また、電磁弁30(除湿用)を開放し、電磁弁40(除湿用)を閉じる。
コントローラ32により(オートモード)或いは空調操作部53へのマニュアル操作(マニュアルモード)により暖房モードが選択されると、コントローラ32は電磁弁21(暖房用)を開放し、電磁弁17(冷房用)を閉じる。また、電磁弁30(除湿用)を開放し、電磁弁40(除湿用)を閉じる。
そして、圧縮機2、及び、各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は図1に破線で示す如く、室内送風機27から吹き出されて吸熱器9を経た空気流通路3内の全ての空気が補助ヒータ23及び放熱器4に通風される状態とする。これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は電磁弁30を経て冷媒配管13Gから放熱器4に流入する。放熱器4には空気流通路3内の空気が通風されるので、空気流通路3内の空気は放熱器4内の高温冷媒(補助ヒータ23が動作するときは当該補助ヒータ23及び放熱器4)により加熱され、一方、放熱器4内の冷媒は空気に熱を奪われて冷却され、凝縮液化する。
放熱器4内で液化した冷媒は当該放熱器4を出た後、冷媒配管13Eを経て室外膨張弁6に至る。室外膨張弁6に流入した冷媒はそこで減圧された後、室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒は蒸発し、走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気中から熱を汲み上げる。即ち、冷媒回路Rがヒートポンプとなる。そして、室外熱交換器7を出た低温の冷媒は冷媒配管13A及び電磁弁21及び冷媒配管13Dを経て冷媒配管13Cからアキュムレータ12に入り、そこで気液分離された後、ガス冷媒が圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。放熱器4(補助ヒータ23が動作するときは当該補助ヒータ23及び放熱器4)にて加熱された空気は吹出口29から吹き出されるので、これにより車室内の暖房が行われることになる。
コントローラ32は、後述する目標吹出温度TAOから算出される目標放熱器温度TCO(放熱器温度THの目標値)から目標放熱器圧力PCO(放熱器圧力PCIの目標値)を算出し、この目標放熱器圧力PCOと、放熱器圧力センサ47が検出する放熱器4の冷媒圧力(放熱器圧力PCI。冷媒回路Rの高圧圧力)に基づいて圧縮機2の回転数を制御する。また、コントローラ32は、放熱器温度センサ46が検出する放熱器4の温度(放熱器温度TH)及び放熱器圧力センサ47が検出する放熱器圧力PCIに基づいて室外膨張弁6の弁開度を制御し、放熱器4の出口における冷媒の過冷却度SCを制御する。前記目標放熱器温度TCOは基本的にはTCO=TAOとされるが、制御上の所定の制限が設けられる。
また、コントローラ32はこの暖房モードにおいては、車室内空調に要求される暖房能力に対して放熱器4による暖房能力が不足する場合、その不足する分を補助ヒータ23の発熱で補完するように補助ヒータ23の通電を制御する。それにより、快適な車室内暖房を実現し、且つ、室外熱交換器7の着霜も抑制する。このとき、補助ヒータ23は放熱器4の空気上流側に配置されているので、空気流通路3を流通する空気は放熱器4の前に補助ヒータ23に通風されることになる。
ここで、補助ヒータ23が放熱器4の空気下流側に配置されていると、実施例の如くPCTヒータで補助ヒータ23を構成した場合には、補助ヒータ23に流入する空気の温度が放熱器4によって上昇するため、PTCヒータの抵抗値が大きくなり、電流値も低くなって発熱量が低下してしまうが、放熱器4の空気上流側に補助ヒータ23を配置することで、実施例の如くPTCヒータから構成される補助ヒータ23の能力を十分に発揮させることができるようになる。
(2)除湿暖房モード
次に、除湿暖房モードでは、コントローラ32は電磁弁17を開放し、電磁弁21を閉じる。また、電磁弁30を閉じ、電磁弁40を開放すると共に、室外膨張弁6の弁開度は全閉とする。そして、圧縮機2、及び、各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は図1に破線で示す如く、室内送風機27から吹き出されて吸熱器9を経た空気流通路3内の全ての空気が補助ヒータ23及び放熱器4に通風される状態とする。
次に、除湿暖房モードでは、コントローラ32は電磁弁17を開放し、電磁弁21を閉じる。また、電磁弁30を閉じ、電磁弁40を開放すると共に、室外膨張弁6の弁開度は全閉とする。そして、圧縮機2、及び、各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は図1に破線で示す如く、室内送風機27から吹き出されて吸熱器9を経た空気流通路3内の全ての空気が補助ヒータ23及び放熱器4に通風される状態とする。
これにより、圧縮機2から冷媒配管13Gに吐出された高温高圧のガス冷媒は、放熱器4に向かうこと無くバイパス配管35に流入し、電磁弁40を経て室外膨張弁6の下流側の冷媒配管13Eに至るようになる。このとき、室外膨張弁6は全閉とされているので、冷媒は室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒はそこで走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮する。室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13Aから電磁弁17を経てレシーバドライヤ部14、過冷却部16と順次流入する。ここで冷媒は過冷却される。
室外熱交換器7の過冷却部16を出た冷媒は冷媒配管13Bに入り、内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気は冷却され、且つ、当該空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着するので、空気流通路3内の空気は冷却され、且つ、除湿される。吸熱器9で蒸発した冷媒は内部熱交換器19を経て冷媒配管13Cを介し、アキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。
このとき、室外膨張弁6の弁開度は全閉とされているので、圧縮機2から吐出された冷媒が室外膨張弁6から放熱器4に逆流入する不都合を抑制若しくは防止することが可能となる。これにより、冷媒循環量の低下を抑制若しくは解消して空調能力を確保することができるようになる。更に、この除湿暖房モードにおいてコントローラ32は、補助ヒータ23に通電して発熱させる。これにより、吸熱器9にて冷却され、且つ、除湿された空気は補助ヒータ23を通過する過程で更に加熱され、温度が上昇するので車室内の除湿暖房が行われることになる。
コントローラ32は吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度(吸熱器温度Te)とその目標値である目標吸熱器温度TEOに基づいて圧縮機2の回転数を制御すると共に、補助ヒータ温度センサ50が検出する補助ヒータ温度Tptcと前述した目標放熱器温度TCOに基づいて補助ヒータ23の通電(発熱)を制御することで、吸熱器9での空気の冷却と除湿を適切に行いながら、補助ヒータ23による加熱で吹出口29から車室内に吹き出される空気温度の低下を的確に防止する。
これにより、車室内に吹き出される空気を除湿しながら、その温度を適切な暖房温度に制御することが可能となり、車室内の快適且つ効率的な除湿暖房を実現することができるようになる。また、前述した如く除湿暖房モードではエアミックスダンパ28は空気流通路3内の全ての空気を補助ヒータ23及び放熱器4に通風する状態とされるので、吸熱器9を経た空気を効率良く補助ヒータ23で加熱して省エネ性を向上させ、且つ、除湿暖房空調の制御性も向上させることができるようになる。
尚、補助ヒータ23は放熱器4の空気上流側に配置されているので、補助ヒータ23で加熱された空気は放熱器4を通過することになるが、この除湿暖房モードでは放熱器4に冷媒は流されないので、補助ヒータ23にて加熱された空気から放熱器4が吸熱してしまう不都合も解消される。即ち、放熱器4によって車室内に吹き出される空気の温度が低下してしまうことが抑制され、COPも向上することになる。
(3)除湿冷房モード
次に、除湿冷房モードでは、コントローラ32は電磁弁17を開放し、電磁弁21を閉じる。また、電磁弁30を開放し、電磁弁40を閉じる。そして、圧縮機2、及び、各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は図1に破線で示す如く、室内送風機27から吹き出されて吸熱器9を経た空気流通路3内の全ての空気が補助ヒータ23及び放熱器4に通風される状態とする。これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は電磁弁30を経て冷媒配管13Gから放熱器4に流入する。放熱器4には空気流通路3内の空気が通風されるので、空気流通路3内の空気は放熱器4内の高温冷媒により加熱され、一方、放熱器4内の冷媒は空気に熱を奪われて冷却され、凝縮液化していく。
次に、除湿冷房モードでは、コントローラ32は電磁弁17を開放し、電磁弁21を閉じる。また、電磁弁30を開放し、電磁弁40を閉じる。そして、圧縮機2、及び、各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は図1に破線で示す如く、室内送風機27から吹き出されて吸熱器9を経た空気流通路3内の全ての空気が補助ヒータ23及び放熱器4に通風される状態とする。これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は電磁弁30を経て冷媒配管13Gから放熱器4に流入する。放熱器4には空気流通路3内の空気が通風されるので、空気流通路3内の空気は放熱器4内の高温冷媒により加熱され、一方、放熱器4内の冷媒は空気に熱を奪われて冷却され、凝縮液化していく。
放熱器4を出た冷媒は冷媒配管13Eを経て室外膨張弁6に至り、開き気味で制御される室外膨張弁6を経て室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒はそこで走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮する。室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13Aから電磁弁17を経てレシーバドライヤ部14、過冷却部16と順次流入する。ここで冷媒は過冷却される。
室外熱交換器7の過冷却部16を出た冷媒は冷媒配管13Bに入り、内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気中の水分が吸熱器9に凝結して付着するので、空気は冷却され、且つ、除湿される。
吸熱器9で蒸発した冷媒は内部熱交換器19を経て冷媒配管13Cを介し、アキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。この除湿冷房モードではコントローラ32は補助ヒータ23に通電しないので、吸熱器9にて冷却され、除湿された空気は放熱器4を通過する過程で再加熱(暖房時よりも放熱能力は低い)される。これにより車室内の除湿冷房が行われることになる。
コントローラ32は吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度(吸熱器温度Te)に基づいて圧縮機2の回転数を制御すると共に、前述した冷媒回路Rの高圧圧力に基づいて室外膨張弁6の弁開度を制御し、放熱器4の冷媒圧力(放熱器圧力PCI)を制御する。
(4)冷房モード
次に、冷房モードでは、コントローラ32は上記除湿冷房モードの状態において室外膨張弁6の弁開度を全開とする。尚、コントローラ32はエアミックスダンパ28を制御し、図1に実線で示す如く、室内送風機27から吹き出されて吸熱器9を通過した後の空気流通路3内の空気が、補助ヒータ23及び放熱器4に通風される割合を調整する。また、コントローラ32は補助ヒータ23に通電しない。
次に、冷房モードでは、コントローラ32は上記除湿冷房モードの状態において室外膨張弁6の弁開度を全開とする。尚、コントローラ32はエアミックスダンパ28を制御し、図1に実線で示す如く、室内送風機27から吹き出されて吸熱器9を通過した後の空気流通路3内の空気が、補助ヒータ23及び放熱器4に通風される割合を調整する。また、コントローラ32は補助ヒータ23に通電しない。
これにより、圧縮機2から吐出された高温高圧のガス冷媒は電磁弁30を経て冷媒配管13Gから放熱器4に流入すると共に、放熱器4を出た冷媒は冷媒配管13Eを経て室外膨張弁6に至る。このとき室外膨張弁6は全開とされているので冷媒はそれを通過し、そのまま室外熱交換器7に流入し、そこで走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮液化する。室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13Aから電磁弁17を経てレシーバドライヤ部14、過冷却部16と順次流入する。ここで冷媒は過冷却される。
室外熱交換器7の過冷却部16を出た冷媒は冷媒配管13Bに入り、内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気は冷却される。また、空気中の水分は吸熱器9に凝結して付着する。
吸熱器9で蒸発した冷媒は内部熱交換器19を経て冷媒配管13Cを介し、アキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。吸熱器9にて冷却され、除湿された空気が吹出口29から車室内に吹き出されるので(一部は放熱器4を通過して熱交換する)、これにより車室内の冷房が行われることになる。また、この冷房モードにおいては、コントローラ32は吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度(吸熱器温度Te)とその目標値である目標吸熱器温度TEOに基づいて圧縮機2の回転数を制御する。
(5)MAX冷房モード(最大冷房モード)
次に、最大冷房モードとしてのMAX冷房モードでは、コントローラ32は電磁弁17を開放し、電磁弁21を閉じる。また、電磁弁30を閉じ、電磁弁40を開放すると共に、室外膨張弁6の弁開度は全閉とする。そして、圧縮機2、及び、各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は図3に示す如く補助ヒータ23及び放熱器4に空気流通路3内の空気が通風されない状態とする。但し、多少通風されても支障はない。また、コントローラ32は補助ヒータ23に通電しない。
次に、最大冷房モードとしてのMAX冷房モードでは、コントローラ32は電磁弁17を開放し、電磁弁21を閉じる。また、電磁弁30を閉じ、電磁弁40を開放すると共に、室外膨張弁6の弁開度は全閉とする。そして、圧縮機2、及び、各送風機15、27を運転し、エアミックスダンパ28は図3に示す如く補助ヒータ23及び放熱器4に空気流通路3内の空気が通風されない状態とする。但し、多少通風されても支障はない。また、コントローラ32は補助ヒータ23に通電しない。
これにより、圧縮機2から冷媒配管13Gに吐出された高温高圧のガス冷媒は、放熱器4に向かうこと無くバイパス配管35に流入し、電磁弁40を経て室外膨張弁6の下流側の冷媒配管13Eに至るようになる。このとき、室外膨張弁6は全閉とされているので、冷媒は室外熱交換器7に流入する。室外熱交換器7に流入した冷媒はそこで走行により、或いは、室外送風機15にて通風される外気により空冷され、凝縮する。室外熱交換器7を出た冷媒は冷媒配管13Aから電磁弁17を経てレシーバドライヤ部14、過冷却部16と順次流入する。ここで冷媒は過冷却される。
室外熱交換器7の過冷却部16を出た冷媒は冷媒配管13Bに入り、内部熱交換器19を経て室内膨張弁8に至る。室内膨張弁8にて冷媒は減圧された後、吸熱器9に流入して蒸発する。このときの吸熱作用で室内送風機27から吹き出された空気は冷却される。また、空気中の水分は吸熱器9に凝結して付着するので、空気流通路3内の空気は除湿される。吸熱器9で蒸発した冷媒は内部熱交換器19を経て冷媒配管13Cを介し、アキュムレータ12に至り、そこを経て圧縮機2に吸い込まれる循環を繰り返す。このとき、室外膨張弁6は全閉とされているので、同様に圧縮機2から吐出された冷媒が室外膨張弁6から放熱器4に逆流入する不都合を抑制若しくは防止することが可能となる。これにより、冷媒循環量の低下を抑制若しくは解消して空調能力を確保することができるようになる。
ここで、前述した冷房モードでは放熱器4に高温の冷媒が流れているため、放熱器4からHVACユニット10への直接の熱伝導が少なからず生じるが、このMAX冷房モードでは放熱器4に冷媒が流れないため、放熱器4からHVACユニット10に伝達される熱で吸熱器9からの空気流通路3内の空気が加熱されることも無くなる。そのため、車室内の強力な冷房が行われ、特に外気温度Tamが高いような環境下では、迅速に車室内を冷房して快適な車室内空調を実現することができるようになる。また、このMAX冷房モードにおいても、コントローラ32は吸熱器温度センサ48が検出する吸熱器9の温度(吸熱器温度Te)とその目標値である目標吸熱器温度TEOに基づいて圧縮機2の回転数を制御する。
(6)運転モードの切換
空気流通路3内を流通される空気は上記各運転モードにおいて吸熱器9からの冷却や放熱器4(及び補助ヒータ23)からの加熱作用(エアミックスダンパ28で調整)を受けて吹出口29から車室内に吹き出される。コントローラ32は外気温度センサ33が検出する外気温度Tam、内気温度センサ37が検出する車室内の温度、前記ブロワ電圧、日射センサ51が検出する日射量等と、空調操作部53にて設定された車室内の目標車室内温度(設定温度)とに基づいて目標吹出温度TAOを算出し、各運転モードを切り換えて吹出口29から吹き出される空気の温度をこの目標吹出温度TAOに制御する。
空気流通路3内を流通される空気は上記各運転モードにおいて吸熱器9からの冷却や放熱器4(及び補助ヒータ23)からの加熱作用(エアミックスダンパ28で調整)を受けて吹出口29から車室内に吹き出される。コントローラ32は外気温度センサ33が検出する外気温度Tam、内気温度センサ37が検出する車室内の温度、前記ブロワ電圧、日射センサ51が検出する日射量等と、空調操作部53にて設定された車室内の目標車室内温度(設定温度)とに基づいて目標吹出温度TAOを算出し、各運転モードを切り換えて吹出口29から吹き出される空気の温度をこの目標吹出温度TAOに制御する。
この場合、コントローラ32は、外気温度Tam、車室内の湿度、目標吹出温度TAO、放熱器温度TH、目標放熱器温度TCO、吸熱器温度Te、目標吸熱器温度TEO、車室内の除湿要求の有無、等のパラメータに基づいて各運転モードの切り換えを行うことで、環境条件や除湿の要否に応じて的確に暖房モード、除湿暖房モード、除湿冷房モード、冷房モード及びMAX冷房モードを切り換え、快適且つ効率的な車室内空調を実現する。
(7)コントローラ32による暖房モードでの圧縮機2の制御
次に、図4を用いて前述した暖房モードにおける圧縮機2の制御について詳述する。図4は暖房モード用の圧縮機2の目標回転数(圧縮機目標回転数)TGNChを決定するコントローラ32の制御ブロック図である。コントローラ32のF/F(フィードフォワード)操作量演算部58は外気温度センサ33から得られる外気温度Tamと、室内送風機27のブロワ電圧BLVと、SW=(TAO−Te)/(TH−Te)で得られるエアミックスダンパ28のエアミックスダンパ開度SWと、放熱器4の出口における過冷却度SCの目標値である目標過冷却度TGSCと、放熱器4の温度の目標値である前述した目標放熱器温度TCOと、放熱器4の圧力の目標値である目標放熱器圧力PCOに基づいて圧縮機目標回転数のF/F操作量TGNChffを演算する。
次に、図4を用いて前述した暖房モードにおける圧縮機2の制御について詳述する。図4は暖房モード用の圧縮機2の目標回転数(圧縮機目標回転数)TGNChを決定するコントローラ32の制御ブロック図である。コントローラ32のF/F(フィードフォワード)操作量演算部58は外気温度センサ33から得られる外気温度Tamと、室内送風機27のブロワ電圧BLVと、SW=(TAO−Te)/(TH−Te)で得られるエアミックスダンパ28のエアミックスダンパ開度SWと、放熱器4の出口における過冷却度SCの目標値である目標過冷却度TGSCと、放熱器4の温度の目標値である前述した目標放熱器温度TCOと、放熱器4の圧力の目標値である目標放熱器圧力PCOに基づいて圧縮機目標回転数のF/F操作量TGNChffを演算する。
尚、TAOは吹出口29からの空気温度の目標値である目標吹出温度、THは放熱器温度センサ46から得られる放熱器4の温度(放熱器温度)、Teは吸熱器温度センサ48から得られる吸熱器9の温度(吸熱器温度)であり、エアミックスダンパ開度SWは0≦SW≦1の範囲で変化し、0で補助ヒータ23及び放熱器4へ通風をしないエアミックス全閉状態、1で空気流通路3内の全ての空気を保持ヒータ23及び放熱器4に通風するエアミックス全開状態となる。
前記目標放熱器圧力PCOは上記目標過冷却度TGSCと目標放熱器温度TCOに基づいて目標値演算部59が演算する。更に、F/B(フィードバック)操作量演算部60はこの目標放熱器圧力PCOと放熱器4の冷媒圧力である放熱器圧力PCIに基づいて圧縮機目標回転数のF/B操作量TGNChfbを演算する。そして、F/F操作量演算部58が演算したF/F操作量TGNCnffとF/B操作量演算部60が演算したTGNChfbは加算器61で加算され、リミット設定部62で制御上限値と制御下限値のリミットが付けられた後、圧縮機目標回転数TGNChとして決定される。前記暖房モードにおいては、コントローラ32はこの圧縮機目標回転数TGNChに基づいて圧縮機2の回転数を制御する。
(8)コントローラ32による除湿暖房モードでの圧縮機2及び補助ヒータ23の制御
一方、図5は前記除湿暖房モード用の圧縮機2の目標回転数(圧縮機目標回転数)TGNCcを決定するコントローラ32の制御ブロック図である。コントローラ32のF/F操作量演算部63は外気温度Tamと、空気流通路3に流入した空気の体積風量Gaと、放熱器4の圧力(PCI)の目標値である目標放熱器圧力PCOと、吸熱器9の温度(Te)の目標値である目標吸熱器温度TEOに基づいて圧縮機目標回転数のF/F操作量TGNCcffを演算する。
一方、図5は前記除湿暖房モード用の圧縮機2の目標回転数(圧縮機目標回転数)TGNCcを決定するコントローラ32の制御ブロック図である。コントローラ32のF/F操作量演算部63は外気温度Tamと、空気流通路3に流入した空気の体積風量Gaと、放熱器4の圧力(PCI)の目標値である目標放熱器圧力PCOと、吸熱器9の温度(Te)の目標値である目標吸熱器温度TEOに基づいて圧縮機目標回転数のF/F操作量TGNCcffを演算する。
また、F/B操作量演算部64は目標吸熱器温度TEOと吸熱器温度Teに基づいて圧縮機目標回転数のF/B操作量TGNCcfbを演算する。そして、F/F操作量演算部63が演算したF/F操作量TGNCcffとF/B操作量演算部64が演算したF/B操作量TGNCcfbは加算器66で加算され、リミット設定部67で制御上限値と制御下限値のリミットが付けられた後、圧縮機目標回転数TGNCcとして決定される。除湿暖房モードにおいては、コントローラ32はこの圧縮機目標回転数TGNCcに基づいて圧縮機2の回転数を制御する。
また、図6は除湿暖房モードにおける補助ヒータ23の補助ヒータ要求能力TGQPTCを決定するコントローラ32の制御ブロック図である。コントローラ32の減算器73には目標放熱器温度TCOと補助ヒータ温度Tptcが入力され、目標放熱器温度TCOと補助ヒータ温度Tpctの偏差(TCO−Tptc)が算出される。この偏差(TCO−Tptc)はF/B制御部74に入力され、このF/B制御部74は偏差(TCO−Tptc)を無くして補助ヒータ温度Tpctが目標放熱器温度TCOとなるように補助ヒータ要求能力F/B操作量を演算する。
このF/B制御部74で算出された補助ヒータ要求能力F/B操作量はリミット設定部76で制御上限値と制御下限値のリミットが付けられた後、補助ヒータ要求能力TGQPTCとして決定される。除湿暖房モードにおいては、コントローラ32はこの補助ヒータ要求能力TGQPTCに基づいて補助ヒータ23の通電を制御することにより、補助ヒータ温度Tptcが目標放熱器温度TCO(=目標吹出温度TAO)となるように補助ヒータ23の発熱を制御する。
このようにしてコントローラ32は、除湿暖房モードでは吸熱器温度Teと目標吸熱器温度TEOに基づいて圧縮機の運転を制御すると共に、目標放熱器温度TCOに基づいて補助ヒータ23の発熱を制御することで、除湿暖房モードにおける吸熱器9による冷却と除湿、並びに、補助ヒータ23による加熱を的確に制御する。これにより、吹出口29から車室内に吹き出される空気をより適切に除湿しながら、その温度をより正確な暖房温度に制御することが可能となり、より一層快適且つ効率的な車室内の除湿暖房を実現することができるようになる。
(9)コントローラ32による運転モードの切換制御
また、前述した如くコントローラ32は、各パラメータ(外気温度Tam、車室内の湿度、目標吹出温度TAO、放熱器温度TH、目標放熱器温度TCO、吸熱器温度Te、目標吸熱器温度TEO、車室内の除湿要求の有無等)に基づいて各運転モードの切り換えを行うものであるが、次に、図7乃至図9を参照しながらコントローラ32による上記各運転モードの切換制御の一例について具体的に説明する。
また、前述した如くコントローラ32は、各パラメータ(外気温度Tam、車室内の湿度、目標吹出温度TAO、放熱器温度TH、目標放熱器温度TCO、吸熱器温度Te、目標吸熱器温度TEO、車室内の除湿要求の有無等)に基づいて各運転モードの切り換えを行うものであるが、次に、図7乃至図9を参照しながらコントローラ32による上記各運転モードの切換制御の一例について具体的に説明する。
(9−1)起動時の運転モードの選択制御
図7は車両用空気調和装置1のコントローラ32が起動時に選択する運転モードを示している。起動時においては、コントローラ32は実施例では外気温度センサ33が検出する外気温度Tamと目標放熱器温度TCO(=目標吹出温度TAO)とに基づいて運転モードを選択する。即ち、この図7において線L1は目標放熱器温度TCO=外気温度Tamの線である。
図7は車両用空気調和装置1のコントローラ32が起動時に選択する運転モードを示している。起動時においては、コントローラ32は実施例では外気温度センサ33が検出する外気温度Tamと目標放熱器温度TCO(=目標吹出温度TAO)とに基づいて運転モードを選択する。即ち、この図7において線L1は目標放熱器温度TCO=外気温度Tamの線である。
先ず実施例の場合、起動時に外気温度Tamが0℃以下の場合、コントローラ32は暖房モードを選択する。また、外気温度Tamが0℃より高く、目標放熱器温度TCOが外気温度Tam以下の場合、冷房モードを選択する。更に、外気温度Tamが0℃+α(ヒステリシス:例えば5℃)より高く、所定値(例えば20℃等)以下の場合であって、目標放熱器温度TCOが外気温度Tam+β(所定のヒステリシス:例えば3deg)より高い場合、除湿暖房モードとし、更に外気温度Tamが前記所定値より高い場合には除湿冷房モードとする。また、目標吹出温度TAOより目標吸熱器温度TEOが高く(TAO<TEO)、且つ、外気温度Tamが所定の高い値(例えば+30℃)より高い(Tam>30)という条件が成立する場合にはMAX冷房モードとする。
(9−1−1)除湿冷房運転可否判定エリアX1
但し、本発明では除湿暖房モードとの境界における除湿冷房モードの領域に除湿冷房運転可否判定エリアX1が設けられている。実施例の場合この除湿冷房運転可否判定エリアX1は、外気温度Tam=20℃且つ目標放熱器温度TCO=25℃の点と外気温度Tam=35℃且つ目標放熱器温度TCO=70℃の点を結ぶ線と、外気温度Tam=20℃の線で囲まれる領域であり、この領域ではコントローラ32は、起動時の目標放熱器温度TCOと図9に示す除湿冷房モード最高放熱器温度MAPに従って除湿冷房モードか除湿暖房モードの何れかを選択する。
但し、本発明では除湿暖房モードとの境界における除湿冷房モードの領域に除湿冷房運転可否判定エリアX1が設けられている。実施例の場合この除湿冷房運転可否判定エリアX1は、外気温度Tam=20℃且つ目標放熱器温度TCO=25℃の点と外気温度Tam=35℃且つ目標放熱器温度TCO=70℃の点を結ぶ線と、外気温度Tam=20℃の線で囲まれる領域であり、この領域ではコントローラ32は、起動時の目標放熱器温度TCOと図9に示す除湿冷房モード最高放熱器温度MAPに従って除湿冷房モードか除湿暖房モードの何れかを選択する。
図9の除湿冷房モード最高放熱器温度MAPは、冷媒回路Rが除湿冷房モードの冷媒の流れの場合に、放熱器4における放熱で実現できる最高の放熱器温度THmaxを予め実験により求めた最高放熱器温度データを示しており、コントローラ32に書き込まれて保有されている。図9の横軸Ga×SWのうちのGaは空気流通路3に流入した空気の体積風量であり、室内送風機27のブロワ電圧BLVの目標値、又は、現在のブロワ電圧BLVから算出される。SWは前述したエアミックスダンパ28の開度であり、SW=(TAO−Te)/(TH−Te)で得られる。従って、Ga×SWは放熱器4に通風される空気の風量を意味する。また、縦軸は外気温度Tamである。
そして、図中30℃で示す線は放熱器4における放熱で実現できる最高の放熱器温度THmaxが30℃の線であり、放熱器4の風量Ga×SWと外気温度Tam毎に計測された点を結んだものである。図中40℃、50℃、60℃、70℃で示す線も同様であり、それぞれ放熱器4における放熱で実現できる最高の放熱器温度THmaxが40℃、50℃、60℃、70℃の線である。
今、放熱器4の風量がGa×SWがGa1であり、外気温度TamがTam1であるとき、放熱器4の放熱で実現できる最高の放熱器温度THmaxはTH1として抽出される。図9中に示した例ではTH1が50℃の線上にあるのでTHmaxは50℃となる。TH1が40℃と50℃の線の間に来る場合(図9にTH2で示す)は、THmaxは40℃と50℃の間の例えば45℃程になる。
コントローラ32は、前記除湿冷房運転可否判定エリアX1では、起動時に算出される放熱器4の風量(Ga×SW)とそのときの外気温度Tamに基づき、図9の除湿冷房モード最高放熱器温度MAPを参照して起動時の最高の放熱器温度THmaxを抽出する。次に、この最高の放熱器温度THmaxが起動時の目標放熱器温度TCO以上(TCO≦THmax)か否か判断し、最高の放熱器温度THmaxが目標放熱器温度TCO以上であるときは、除湿冷房モードでの放熱器4における放熱で目標放熱器温度TCOを実現できると判定し、運転モードを除湿冷房モードとして起動する。逆に、最高の放熱器温度THmaxが目標放熱器温度TCOより下であるときは、除湿冷房モードでの放熱器4における放熱で目標放熱器温度TCOを実現できないと判定し、運転モードを除湿暖房モードとして起動する。
即ち、コントローラ32は起動時に選択される運転モードが除湿冷房モードであるときであっても、除湿冷房運転可否判定エリアX1では、当該除湿冷房モードでの放熱器4における放熱で目標放熱器温度TCOを実現できない場合、除湿暖房モードで起動する。これにより、前述した除湿暖房モードでの補助ヒータ23による十分な暖房能力で迅速且つ快適な車室内空調を開始することができるようになる。
これにより、コントローラ32は放熱器4における放熱で目標放熱器温度TCOを実現できる運転モードを選択することになるので、車室内の暖房能力を確保できる運転モードにて快適な車室内空調を行うことができるようになる。特に、コントローラ32は除湿冷房モードで放熱器4の風量Ga×SWと外気温度Tam毎に当該放熱器4における放熱で実現できる最高の放熱器温度THmaxに関する除湿冷房モード最高放熱器温度MAP(最高放熱器温度データ)を有しており、このMAP(最高放熱器温度データ)に基づき、除湿冷房モードでの放熱器4における放熱で目標放熱器温度TCOを実現できるか否かを判定するので、除湿冷房モードで放熱器4の暖房能力を確保できるか否かを的確に判定し、円滑な運転モードの切り換えを実現することができるようになる。
(9−2)起動後の運転モードの切換制御
次に、図8を参照して起動後のコントローラ32による運転モードの切り換え制御の一例について説明する。
(9−2−1)暖房モードから除湿暖房モードへの切換制御
コントローラ32は前記暖房モードを実行しているときに、外気温度センサ33に基づき、外気温度Tamが所定の低い温度(0℃より例えば2deg温度が高い2℃)以上に上昇した場合、車室内の除湿要求があることを条件として、除湿暖房モードに移行する。
次に、図8を参照して起動後のコントローラ32による運転モードの切り換え制御の一例について説明する。
(9−2−1)暖房モードから除湿暖房モードへの切換制御
コントローラ32は前記暖房モードを実行しているときに、外気温度センサ33に基づき、外気温度Tamが所定の低い温度(0℃より例えば2deg温度が高い2℃)以上に上昇した場合、車室内の除湿要求があることを条件として、除湿暖房モードに移行する。
この場合、車室内の除湿要求の有無について、コントローラ32は下記の条件に基づいて判断する。即ち、
(イ)空調操作部53に設けられているA/CボタンのON/OFF操作
実施例の場合、A/Cボタンが操作されてONしているとき、コントローラ32は吸熱器9に冷媒を流す運転モードを許容し、OFFしているときには吸熱器9に冷媒を流さない前記暖房モードのみを許容する。即ち、このA/CボタンのON/OFF操作が車室内を除湿するか否かの切換操作となり、コントローラ32はA/CボタンがONしているときに除湿要求あり、OFFしているときは除湿要求なしと判断する。
(ロ)車室内の湿度が所定値より高いか否か
コントローラ32はオートモードのとき、内気湿度センサ38が検出する車室内の空気の湿度が所定値より高い場合(車室内湿度>所定値)は除湿要求ありと判断し、所定値以下の場合は除湿要求なしと判断する。この場合の所定値(閾値)は外気温度等により変化する。例えば、夏季の場合は快適性の面から設定された所定値となる。一方、冬季や中間の季節には車両の窓ガラスの曇りを解消する面から設定された所定値となる。その場合、曇りが生じないように窓ガラス付近の温度(外気温度に近い)より低い露点温度となるような吹出温度とする。
(ハ)吸熱器温度Teが目標吸熱器温度TEOより高いか否か
コントローラ32はオートモードのとき、吸熱器湿度センサ48が検出する吸熱器温度Teが目標吸熱器温度TEO+αより高い場合(Te>(TEO+α))は除湿要求ありと判断し、(TEO+α)以下の場合は除湿要求なしと判断する。この場合のαはヒステリシス(例えば2deg)である。吸熱器温度Teが目標吸熱器温度TEOより高いということは、吸熱器9に冷媒を流して蒸発させ、温度を低下させて空気を冷却/除湿する必要があるということである。
(イ)空調操作部53に設けられているA/CボタンのON/OFF操作
実施例の場合、A/Cボタンが操作されてONしているとき、コントローラ32は吸熱器9に冷媒を流す運転モードを許容し、OFFしているときには吸熱器9に冷媒を流さない前記暖房モードのみを許容する。即ち、このA/CボタンのON/OFF操作が車室内を除湿するか否かの切換操作となり、コントローラ32はA/CボタンがONしているときに除湿要求あり、OFFしているときは除湿要求なしと判断する。
(ロ)車室内の湿度が所定値より高いか否か
コントローラ32はオートモードのとき、内気湿度センサ38が検出する車室内の空気の湿度が所定値より高い場合(車室内湿度>所定値)は除湿要求ありと判断し、所定値以下の場合は除湿要求なしと判断する。この場合の所定値(閾値)は外気温度等により変化する。例えば、夏季の場合は快適性の面から設定された所定値となる。一方、冬季や中間の季節には車両の窓ガラスの曇りを解消する面から設定された所定値となる。その場合、曇りが生じないように窓ガラス付近の温度(外気温度に近い)より低い露点温度となるような吹出温度とする。
(ハ)吸熱器温度Teが目標吸熱器温度TEOより高いか否か
コントローラ32はオートモードのとき、吸熱器湿度センサ48が検出する吸熱器温度Teが目標吸熱器温度TEO+αより高い場合(Te>(TEO+α))は除湿要求ありと判断し、(TEO+α)以下の場合は除湿要求なしと判断する。この場合のαはヒステリシス(例えば2deg)である。吸熱器温度Teが目標吸熱器温度TEOより高いということは、吸熱器9に冷媒を流して蒸発させ、温度を低下させて空気を冷却/除湿する必要があるということである。
実施例のコントローラ32は上記条件(イ)で除湿要求ありとなっており、且つ、上記条件(ロ)、及び/又は、条件(ハ)で除湿要求ありとなったときに除湿要求ありと判断し、条件(イ)で除湿要求なしの場合には条件(ロ)又は(ハ)で除湿要求ありとなっても除湿要求なしと判断する。しかしながら、装置により(例えば、オートモードの有無等)これらの条件の何れか、又は、これらの条件の組み合わせに基づいて判断するようにしてもよい。
このように、コントローラ32は暖房モードにおいて、外気温度Tamが上昇した場合上述した車室内の除湿要求があることを条件として除湿暖房モードに移行するので、暖房モードから除湿暖房モードへの切り換えを適切に行い、補助ヒータ23を過剰に使用して消費電力が増大する不都合を解消することが可能となる。これにより、快適性と省エネ性を両立させた車室内空調を実現することができるようになる。また、車室内の除湿要求の有無については前述した如く、車室内を除湿するか否かの切換操作、車室内の湿度が高いか否か、又は、吸熱器温度Teが目標吸熱器温度TEOより高いか否か、に基づいて判断するので、車室内の除湿の必要性を的確に判断して暖房モード(放熱器4による車室内の暖房)から除湿暖房モード(吸熱器9と補助ヒータ23による車室内の除湿暖房)への切り換え、また、後述する除湿暖房モードから暖房モードへの切り換え、及び、後述する暖房モードや除湿暖房モードと除湿冷房モードとの間のモード切り換えを適切、且つ、円滑に行い、快適な車室内空調を継続することができるようになる。
(9−2−2)除湿暖房モード又は除湿冷房モードから暖房モードへの切換制御
また、除湿暖房モード又は除湿冷房モード(後述するノーマルモード)を実行しているときに、外気温度Tamが上記0℃以下に低下した場合、又は、上述した車室内の除湿要求がなしとなった場合、暖房モードに移行する。これにより、外気温度Tamの低下や除湿要求が無くなったことで、迅速、且つ、円滑に除湿暖房モード又は除湿冷房モードから暖房モードへの移行を図って快適な車室内空調を継続することができるようになる。
また、除湿暖房モード又は除湿冷房モード(後述するノーマルモード)を実行しているときに、外気温度Tamが上記0℃以下に低下した場合、又は、上述した車室内の除湿要求がなしとなった場合、暖房モードに移行する。これにより、外気温度Tamの低下や除湿要求が無くなったことで、迅速、且つ、円滑に除湿暖房モード又は除湿冷房モードから暖房モードへの移行を図って快適な車室内空調を継続することができるようになる。
(9−2−3)暖房モード又は除湿暖房モードから除湿冷房モードへの切換制御
また、コントローラ32は暖房モード又は除湿暖房モードを実行しているときに、目標放熱器温度TCOが外気温度Tam+3deg(外気温度に近い値。外気温度Tamそのものでもよい)以下となった場合、又は、除湿冷房モードの流れの冷媒回路Rでの放熱器4における放熱で目標放熱器温度TCOを実現できる場合、前述した除湿要求があることを条件として除湿冷房モードに移行する。
また、コントローラ32は暖房モード又は除湿暖房モードを実行しているときに、目標放熱器温度TCOが外気温度Tam+3deg(外気温度に近い値。外気温度Tamそのものでもよい)以下となった場合、又は、除湿冷房モードの流れの冷媒回路Rでの放熱器4における放熱で目標放熱器温度TCOを実現できる場合、前述した除湿要求があることを条件として除湿冷房モードに移行する。
この場合における放熱器4の放熱で目標放熱器温度TCOを実現できるか否かの判定も、図9の除湿冷房モード最高放熱器温度MAPを参照して行われる。即ち、放熱器4の風量(Ga×SW)と外気温度Tamに基づき、図9の除湿冷房モード最高放熱器温度MAPを参照してその時点で実現可能な最高の放熱器温度THmaxを抽出する。次に、この最高の放熱器温度THmaxがその時点の目標放熱器温度TCO以上(TCO≦THmax)か否か判断し、最高の放熱器温度THmaxが目標放熱器温度TCO以上となったときは、除湿冷房モードでの放熱器4における放熱で目標放熱器温度TCOを実現できると判定し、除湿要求があることを条件として除湿冷房モードに移行する。特に、コントローラ32は除湿冷房モード最高放熱器温度MAP(最高放熱器温度データ)に基づき、除湿冷房モードでの放熱器4における放熱で目標放熱器温度TCOを実現できるか否かを判定するので、除湿冷房モードで放熱器4の暖房能力を確保できるか否かを的確に判定し、暖房モード又は除湿暖房モードから除湿冷房モード(放熱器4の放熱と吸熱器9の吸熱による車室内の除湿冷房)への切り換えを円滑且つ適切に行い、安定且つ快適な車室内空調を継続することができる。
(9−2−4)除湿冷房モードから除湿暖房モードへの切換制御
尚、コントローラ32は除湿冷房モードにおいてノーマルモードと放熱器温度優先モードを切り換えて実行するが、これらノーマルモードと放熱器温度優先モードについては後述する。そして、コントローラ32はこの除湿冷房モードを実行しているときに、目標放熱器温度TCO−放熱器温度THが例えば5deg以上となり(即ち、放熱器4における放熱が不足)、その状態が所定時間以上継続した場合、又は、除湿冷房モードの流れの冷媒回路Rでの放熱器4における放熱で目標放熱器温度TCOを実現できない場合、除湿暖房モードに移行する。この場合における放熱器4の放熱で目標放熱器温度TCOを実現できるか否かの判定も、図9の除湿冷房モード最高放熱器温度MAPを参照して行われる。
尚、コントローラ32は除湿冷房モードにおいてノーマルモードと放熱器温度優先モードを切り換えて実行するが、これらノーマルモードと放熱器温度優先モードについては後述する。そして、コントローラ32はこの除湿冷房モードを実行しているときに、目標放熱器温度TCO−放熱器温度THが例えば5deg以上となり(即ち、放熱器4における放熱が不足)、その状態が所定時間以上継続した場合、又は、除湿冷房モードの流れの冷媒回路Rでの放熱器4における放熱で目標放熱器温度TCOを実現できない場合、除湿暖房モードに移行する。この場合における放熱器4の放熱で目標放熱器温度TCOを実現できるか否かの判定も、図9の除湿冷房モード最高放熱器温度MAPを参照して行われる。
即ち、放熱器4の風量(Ga×SW)と外気温度Tamに基づき、図9の除湿冷房モード最高放熱器温度MAPを参照してその時点で実現可能な最高の放熱器温度THmaxを抽出する。次に、この最高の放熱器温度THmaxがその時点の目標放熱器温度TCOより下(TCO>THmax)か否か判断し、最高の放熱器温度THmaxが目標放熱器温度TCOより下となったときは、除湿冷房モードでの放熱器4における放熱で目標放熱器温度TCOを実現できないと判定し、除湿暖房モードに移行する。これにより、迅速に除湿冷房モードから除湿暖房モードへの移行を図って快適な車室内空調を継続することができるようになる。
(9−2−5)除湿冷房モード及び冷房モード間の切換制御
また、コントローラ32は除湿冷房モードを実行しているときに、室外膨張弁6の弁開度が制御上限値となっており(即ち、冷媒をそのまま通過させる状態)、且つ、エアミックスダンパ28の前記エアミックスダンパ開度SWが所定値より小さい場合、冷房モードに移行する。
また、コントローラ32は除湿冷房モードを実行しているときに、室外膨張弁6の弁開度が制御上限値となっており(即ち、冷媒をそのまま通過させる状態)、且つ、エアミックスダンパ28の前記エアミックスダンパ開度SWが所定値より小さい場合、冷房モードに移行する。
そして、コントローラ32はこの冷房モードを実行しているときに、エアミックスダンパ開度SWが所定値以上となり、且つ、目標放熱器温度TCO−THが所定値(例えば3deg)以上となった場合(即ち、放熱器4における放熱が不足)、除湿冷房モードに移行する。これにより、除湿冷房モードによる車室内の除湿冷房と冷房モードによる車室内の冷房(吸熱器9の吸熱による車室内の冷房)を円滑に実現することができる。
(9−2−6)冷房モード及びMAX冷房モード間の切換制御
また、コントローラ32は冷房モードを実行しているときに、外気温度Tamが所定の高い値(例えば+30℃)以上に高くなり(Tam≧30)、且つ、目標吹出温度TAOが目標吸熱器温度TEOより低い(TAO<TEO)状態が所定時間(例えば10秒等)以上経過している場合、MAX冷房モードに移行する。このように外気温度Tamが高くなって吸熱器9の冷房能力が不足するときに、冷房モードからMAX冷房モードへの切り換えを的確に行って、迅速な車室内冷房を実現する。
また、コントローラ32は冷房モードを実行しているときに、外気温度Tamが所定の高い値(例えば+30℃)以上に高くなり(Tam≧30)、且つ、目標吹出温度TAOが目標吸熱器温度TEOより低い(TAO<TEO)状態が所定時間(例えば10秒等)以上経過している場合、MAX冷房モードに移行する。このように外気温度Tamが高くなって吸熱器9の冷房能力が不足するときに、冷房モードからMAX冷房モードへの切り換えを的確に行って、迅速な車室内冷房を実現する。
そして、コントローラ32はこのMAX冷房モードを実行しているときに、外気温度Tamが所定値(上記+30℃より低い、例えば+28℃)以下に低くなり(Tam≦28)、且つ、目標吹出温度TAOが目標吸熱器温度TEO+2deg以上(TAO≧TEO+2deg)の状態が所定時間(例えば10秒等)以上経過している場合、冷房モードに移行する。この場合2degが所定のヒステリシスである。このように外気温度Tamが低下して吸熱器9の冷房能力が満足するときには、MAX冷房モードから冷房モードへ適切に切り換える。
このようにコントローラ32は、外気温度Tam、車室内の湿度、目標吹出温度TAO、放熱器温度TH、目標放熱器温度TCO、吸熱器温度Te、目標吸熱器温度TEO、車室内の除湿要求の有無、の各パラメータに基づいて各運転モードを切り換えることで、環境条件や除湿の要否に応じて的確に暖房モード、除湿暖房モード、除湿冷房モード、冷房モード及びMAX冷房モードを切り換え、快適且つ効率的な車室内空調を実現する。
(9−2−7)除湿冷房モードにおけるノーマルモードと放熱器温度優先モード
前述した如く除湿冷房モードは、ノーマルモード(吸熱器温度を優先)と放熱器温度優先モードを有する。このノーマルモードでは、吸熱器温度Teにより圧縮機2の回転数(目標回転数TGNCc)を制御する。そのため、吸熱器温度Teが目標吸熱器温度TEOに収束し、室外膨張弁6の弁開度が制御下限値となった状態(絞り切った状態)でも冷媒回路Rの高圧圧力が上がらず、放熱器圧力PCIが目標放熱器圧力PCOとならない場合、放熱器4の温度(放熱器温度TH)が不足する状態に陥る。
前述した如く除湿冷房モードは、ノーマルモード(吸熱器温度を優先)と放熱器温度優先モードを有する。このノーマルモードでは、吸熱器温度Teにより圧縮機2の回転数(目標回転数TGNCc)を制御する。そのため、吸熱器温度Teが目標吸熱器温度TEOに収束し、室外膨張弁6の弁開度が制御下限値となった状態(絞り切った状態)でも冷媒回路Rの高圧圧力が上がらず、放熱器圧力PCIが目標放熱器圧力PCOとならない場合、放熱器4の温度(放熱器温度TH)が不足する状態に陥る。
そこで、係る場合コントローラ32は目標吸熱器温度TEOを下げることで圧縮機2の回転数を上げ、圧縮機2の能力を増大させて高圧圧力を上昇させ、放熱器圧力PCIを目標放熱器圧力PCOに上げる放熱器温度優先モードを実行する。即ち、コントローラ32は除湿冷房モード(吸熱器温度を優先するノーマルモード)を実行しているときに、目標放熱器温度TCO−放熱器温度THが例えば1deg以上(即ち、放熱器4における放熱が不足)となった場合、放熱器温度優先モードに移行する。
この放熱器温度優先モードでは、コントローラ32はノーマルモードのときよりも、目標吸熱器温度TEOを低下させる。それにより、圧縮機2の圧縮機目標回転数TGNCcが引き上げられることになり、圧縮機2の回転数が上がり、圧縮機2の能力が増大して高圧圧力が上昇し、放熱器圧力PCIが上昇して必要な放熱器4の温度THを得ることができるようになる。
他方、この放熱器温度優先モードにおいて、放熱器温度TH−目標放熱器温度TCOが例えば1deg以上(即ち、放熱器4の放熱が過剰)となった場合、コントローラ32は放熱器温度優先モードからノーマルモードに復帰する。このように除湿冷房モードにおいて放熱器4の温度THが不足する場合、コントローラ32は圧縮機2の能力を増大させて高圧を上昇させ、放熱器4における冷媒の放熱量を増大させるので、除湿冷房モードにおける放熱器4による再加熱を確保し、空調性能を確保することが可能となり、除湿冷房モードの有効範囲を拡大して快適な車室内空調を実現することが可能となる。
尚、実施例で示した各運転モードの切換制御は、それに限られるものでは無く、車両用空気調和装置の能力や使用環境に応じて、外気温度Tam、車室内の湿度、目標吹出温度TAO、放熱器温度TH、目標放熱器温度TCO、吸熱器温度Te、目標吸熱器温度TEO、車室内の除湿要求の有無、等のパラメータの何れか、又は、それらの組み合わせ、それらの全てを採用して適切な条件を設定すると良い。
また、補助加熱装置は実施例で示した補助ヒータ23に限られるものでは無く、ヒータで加熱された熱媒体を循環させて空気流通路内の空気を加熱する熱媒体循環回路や、エンジンで加熱されたラジエター水を循環するヒータコア等を利用してもよい。また、実施例で示した電磁弁30及び電磁弁40は、バイパス配管35の分岐部に設けられた一つの三方弁(流路切換装置)で構成し、圧縮機2から吐出された冷媒を放熱器4に流す状態とバイパス配管35に流す状態とに切り換えるようにしてもよい。即ち、上記各実施例で説明した冷媒回路Rの構成はそれに限定されるものでは無く、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
1 車両用空気調和装置
2 圧縮機
3 空気流通路
4 放熱器
6 室外膨張弁
7 室外熱交換器
8 室内膨張弁
9 吸熱器
23 補助ヒータ(補助加熱装置)
27 室内送風機(ブロワファン)
28 エアミックスダンパ
30、40 電磁弁(流路切換装置)
31 吹出口切換ダンパ
32 コントローラ(制御装置)
35 バイパス配管
45 バイパス装置
R 冷媒回路
2 圧縮機
3 空気流通路
4 放熱器
6 室外膨張弁
7 室外熱交換器
8 室内膨張弁
9 吸熱器
23 補助ヒータ(補助加熱装置)
27 室内送風機(ブロワファン)
28 エアミックスダンパ
30、40 電磁弁(流路切換装置)
31 吹出口切換ダンパ
32 コントローラ(制御装置)
35 バイパス配管
45 バイパス装置
R 冷媒回路
Claims (17)
- 冷媒を圧縮する圧縮機と、
車室内に供給する空気が流通する空気流通路と、
冷媒を放熱させて前記空気流通路から前記車室内に供給する空気を加熱するための放熱器と、
冷媒を吸熱させて前記空気流通路から前記車室内に供給する空気を冷却するための吸熱器と、
前記車室外に設けられた室外熱交換器と、
前記圧縮機から吐出された冷媒を、前記放熱器に流すこと無く前記室外熱交換器に直接流入させるためのバイパス装置と、
前記空気流通路から前記車室内に供給する空気を加熱するための補助加熱装置と、
制御装置とを備え、
該制御装置は少なくとも、
前記圧縮機から吐出された冷媒を前記バイパス装置により前記室外熱交換器に流して放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、前記吸熱器にて吸熱させると共に、前記補助加熱装置を発熱させる除湿暖房モードを実行することを特徴とする車両用空気調和装置。 - 前記補助加熱装置は、前記空気流通路における空気の流れに対して前記放熱器の上流側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空気調和装置。
- 前記制御装置は更に、
前記圧縮機から吐出された冷媒を前記放熱器に流して放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、前記室外熱交換器にて吸熱させる暖房モードを有し、
該暖房モードと前記除湿暖房モードを切り換えて実行することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用空気調和装置。 - 前記制御装置は更に、
前記圧縮機から吐出された冷媒を前記放熱器から前記室外熱交換器に流して当該放熱器及び室外熱交換器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、前記吸熱器にて吸熱させる除湿冷房モードと、
前記圧縮機から吐出された冷媒を前記放熱器から前記室外熱交換器に流して当該室外熱交換器にて放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、前記吸熱器にて吸熱させる冷房モードと、
前記圧縮機から吐出された冷媒を前記バイパス装置により前記室外熱交換器に流して放熱させ、放熱した当該冷媒を減圧した後、前記吸熱器にて吸熱させる最大冷房モードを有し、
前記暖房モード、前記除湿暖房モード、前記除湿冷房モード、前記冷房モード及び前記最大冷房モードを切り換えて実行することを特徴とする請求項3に記載の車両用空気調和装置。 - 前記制御装置は、外気温度、前記車室内の湿度、前記車室内に吹き出される空気の温度の目標値である目標吹出温度TAO、前記放熱器の温度である放熱器温度TH、当該放熱器温度THの目標値である目標放熱器温度TCO、前記吸熱器の温度である吸熱器温度Te、当該吸熱器温度Teの目標値である目標吸熱器温度TEO、前記車室内の除湿要求の有無、のうちの何れか、又は、それらの組み合わせ、若しくは、それらの全てに基づき、前記各モードを切り換えることを特徴とする請求項4に記載の車両用空気調和装置。
- 前記制御装置は、前記暖房モードにおいて、外気温度が上昇した場合、前記車室内の除湿要求があることを条件として、前記除湿暖房モードに移行することを特徴とする請求項5に記載の車両用空気調和装置。
- 前記制御装置は、前記除湿暖房モード又は前記除湿冷房モードにおいて、外気温度が低下した場合、又は、前記車室内の除湿要求が無くなった場合、前記暖房モードに移行することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の車両用空気調和装置。
- 前記制御装置は、前記暖房モード又は前記除湿暖房モードにおいて、前記目標放熱器温度TCOが外気温度かそれに近い値以下の場合、又は、前記除湿冷房モードでの前記放熱器における放熱で前記目標放熱器温度TCOを実現できる場合、前記車室内の除湿要求があることを条件として、前記除湿冷房モードに移行することを特徴とする請求項5乃至請求項7のうちの何れかに記載の車両用空気調和装置。
- 前記制御装置は、前記除湿冷房モードにおいて、前記放熱器における放熱が不足する場合、又は、当該除湿冷房モードでの前記放熱器における放熱で前記目標放熱器温度TCOを実現できない場合、前記除湿暖房モードに移行することを特徴とする請求項5乃至請求項8のうちの何れかに記載の車両用空気調和装置。
- 前記制御装置は、除湿冷房モードにおいて少なくとも放熱器の風量と外気温度毎に当該放熱器における放熱で実現できる最高の放熱器温度THに関する最高放熱器温度データを有し、該最高放熱器温度データに基づき、前記除湿冷房モードでの放熱器における放熱で目標放熱器温度TCOを実現できるか否かを判定することを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の車両用空気調和装置。
- 前記制御装置は、前記冷房モードにおいて、外気温度が高くなり、且つ、前記目標吹出温度TAOが前記目標吸熱器温度TEOより低い場合、前記最大冷房モードに移行することを特徴とする請求項5乃至請求項10のうちの何れかに記載の車両用空気調和装置。
- 前記制御装置は、前記最大冷房モードにおいて、外気温度が低下し、且つ、前記目標吹出温度TAOが前記目標吸熱器温度TEOより高くなった場合、前記冷房モードに移行することを特徴とする請求項5乃至請求項11のうちの何れかに記載の車両用空気調和装置。
- 前記制御装置は、前記車室内を除湿するか否かの切換操作、前記車室内の湿度が高いか否か、又は、前記吸熱器温度Teが前記目標吸熱器温度TEOより高いか否か、のうちの何れか、又は、それらの組み合わせ、若しくは、それらの全てに基づき、前記車室内の除湿要求の有無を判断することを特徴とする請求項5乃至請求項12のうちの何れかに記載の車両用空気調和装置。
- 前記室外熱交換器に流入する冷媒を減圧するための室外膨張弁を備え、
前記バイパス装置は、前記放熱器と前記室外膨張弁をバイパスして前記圧縮機から吐出された冷媒を前記室外熱交換器に流すためのバイパス配管と、前記圧縮機から吐出された冷媒を前記バイパス配管に流すか、前記放熱器に流すかを切り換えるための流路切換装置を有することを特徴とする請求項1乃至請求項13のうちの何れかに記載の車両用空気調和装置。 - 前記制御装置は、前記除湿暖房モードにおいて、又は、該除湿暖房モードと前記最大冷房モードにおいては、前記室外膨張弁を全閉とすることを特徴とする請求項14に記載の車両用空気調和装置。
- 前記制御装置は前記除湿暖房モードにおいて、
前記吸熱器の温度である吸熱器温度Teとその目標値である目標吸熱器温度TEOに基づいて前記圧縮機の運転を制御すると共に、
前記放熱器の温度の目標値である目標放熱器温度TCOに基づいて前記補助加熱装置の発熱を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項15のうちの何れかに記載の車両用空気調和装置。 - 前記吸熱器を通過した前記空気流通路内の空気を前記補助加熱装置及び前記放熱器に通風する割合を調整するエアミックスダンパを備え、
前記制御装置は、前記除湿暖房モードでは前記エアミックスダンパを制御して、前記空気流通路内の全ての空気を前記補助加熱装置及び前記放熱器に通風することを特徴とする請求項1乃至請求項16のうちの何れかに記載の車両用空気調和装置。
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