JP2017148052A - 変異体細孔 - Google Patents

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Clarke James
ジョン ヘロン,アンドリュー
John Heron Andrew
ジョン ヘロン,アンドリュー
ジャヤシンゲ,ラクマル
Jayasinghe Lakmal
ウォレス,ジェーン
Wallace Jayne
ホワイト,ジェームス
White James
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Abstract

【課題】ナノ細孔検出を使用する核酸の配列決定の提供。
【解決手段】スメグマ菌(Mycobacterium smegmatis)由来のポーリンであるMspA変異体であって、MspAの特定の37箇所のアミノ酸を、各アミノ酸位置にそれぞれ特定なアミノ酸に置き換えた変異体Mspモノマー。Msp変異体は、ヌクレオチドの識別を改善する。さらに、変異体は、電流範囲を増加させ(これにより異なるヌクレオチドの識別が容易になる)、状態変動を減少させる(これはシグナル対ノイズ比を高める)。加えて、細孔を通って核酸が移動するにつれて電流に関与するヌクレオチドの数は減少する。これにより、核酸が細孔を通って移動する際に観察される電流と核酸配列との直接的な関係を同定することがさらに容易になる。
【選択図】なし

Description

本発明は、Mspの変異型に関する。本発明は、Mspを使用する核酸の特徴付けにも
関する。
ナノ細孔検出は、分析物分子と受容体との個々の結合事象の観察を利用する検出手法で
ある。ナノ細孔センサーは、絶縁膜中にナノメートル規模の単一細孔を配置し、分析物分
子の存在下で、細孔を通り抜ける電圧で駆動されるイオン輸送を測定することによって創
出できる。分析物の同一性は、特徴的な電流識別特性、特に電流を遮断する持続時間およ
び程度ならびに電流レベルの変動によって明らかになる。
現在、広範な用途にわたって迅速かつ安価に核酸(例えばDNAまたはRNA)を配列
決定する技術の必要性がある。既存の技術は、主に大量の核酸を作製するために増幅技術
を利用し、シグナル検出用として多量の専用の蛍光化学物質を必要とするので、時間と費
用がかかる。ナノ細孔検出は、必要とするヌクレオチドと試薬の量を減らすことによって
迅速で安価な核酸の配列決定を提供する可能性がある。
ナノ細孔検出を使用する核酸の配列決定の2つの重要な成分は、(1)細孔を通る核酸
の移動を制御することおよび(2)細孔を通して核酸ポリマーを移動させながらヌクレオ
チドを識別することである。これまで、ヌクレオチドを識別するには、核酸は溶血素変異
体を通されていた。これは、配列依存的であることが示されている電流識別特性を備えて
いる。多くのヌクレオチドが観察される電流に関与しており、観察される電流と核酸配列
の間に直接的な関係を作ることを難しくしていることも示されている。
ヌクレオチドを識別するための電流範囲は、溶血素細孔の変異によって改善されたが、
ヌクレオチド間の電流差をさらに改善できるならば、配列決定システムはより高性能にな
るはずである。加えて、核酸が細孔を通って移動するとき、いくつかの電流状態が大きい
変動を示すことが観察された。いくつかの変異体溶血素細孔が他より大きな変動を表すこ
とも示されている。これら状態の変動は、配列特異的な情報を内包する可能性があるが、
システムを単純化するには、変動の小さい細孔を作製することが望ましい。観察される電
流に関与するヌクレオチド数を減らすことも望ましい。
Mspの異なる形態は、スメグマ菌(Mycobacterium smegmatis)由来のポーリンであ
る。MspAは、スメグマ菌(Mycobacterium smegmatis)由来の157kDaの八量体
ポーリンである。MspAの構造は、研究者によってよく立証されている(Gundlach、Pr
oc Natl Acad Sci U S A. 2010 Sep 14; 107(37):16060〜5頁、Epub 2010 Aug 26)。
いくつかの重要な残基が同定され、変形されて細孔の特性が増強されてきた。これらの変
異は、DNAがMspA細孔を通って推移できるように施された。MspB、CおよびD
もMspの公知の形態である。
驚くべきことに、本発明者は、Mspの新規な変異体が核酸配列などの特徴を推定する特性を改善することを実証した。驚くべきことに変異体は、ヌクレオチドの識別を改善する。具体的には、驚くべきことに変異体は、電流範囲を増加させ(これにより異なるヌクレオチドの識別が容易になる)、状態変動を減少させる(これはシグナル対ノイズ比を高める)。加えて、細孔を通って核酸が移動するにつれて電流に関与するヌクレオチドの数は減少する。これにより、核酸が細孔を通って移動する際に観察される電流と核酸配列との直接的な関係を同定することがさらに容易になる。
驚くべきことに、本発明者は、細孔を通る核酸の移動がPhi29DNAポリメラーゼ
によって制御されているとき、Mspが配列決定特性を改善することも示した。具体的に
は、MspとPhi29DNAポリメラーゼとの結合により、予想外の利点が3つもたら
される。第1に、商業的に実現可能でありなおかつ有効な配列決定を可能にする速度で、
核酸が細孔を通って移動する。第2に、核酸が細孔を通って移動する際に電流範囲の増加
が観察され、それにより容易に配列を決定できるようになる。第3に、電流変動の減少が
観察され、それによってシグナル対ノイズ比が高まる。
したがって、本発明は、配列番号2に示される配列のバリアントを含む変異体Mspモ
ノマーであって、バリアントが以下の変異:
(a)88位にアスパラギン(N)、セリン(S)、グルタミン(Q)またはトレオニ
ン(T);
(b)90位にセリン(S)、グルタミン(Q)またはチロシン(Y);
(c)105位にロイシン(L)またはセリン(S);
(d)126位にアルギニン(R);
(e)75位にセリン(S);
(f)77位にセリン(S);
(g)59位にアルギニン(R);
(h)75位にグルタミン(Q)、アスパラギン(N)またはトレオニン(T);
(i)77位にグルタミン(Q)、アスパラギン(N)またはトレオニン(T);
(j)78位にロイシン(L);
(k)81位にアスパラギン(N);
(l)83位にアスパラギン(N);
(m)86位にセリン(S)またはトレオニン(T);
(n)87位にフェニルアラニン(F)、バリン(V)またはロイシン(L);
(o)88位にチロシン(Y)、フェニルアラニン(F)、バリン(V)、アルギニン
(R)、アラニン(A)、グリシン(G)またはシステイン(C);
(p)89位にフェニルアラニン(F)、バリン(V)またはロイシン(L);
(q)90位にロイシン(L)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ヒ
スチジン(H)、トレオニン(T)、グリシン(G)、アラニン(A)、バリン(V)、
アルギニン(R)、リシン(K)、アスパラギン(N)またはシステイン(C);
(r)91位にセリン(S)、グルタミン(Q)、ロイシン(L)、メチオニン(M)
、イソロイシン(I)、アラニン(A)、バリン(V)、グリシン(G)、フェニルアラ
ニン(F)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)、ヒスチジン(H)、トレオニン(
T)、アルギニン(R)、リシン(K)、アスパラギン(N)またはシステイン(C);
(s)92位にアラニン(A)またはセリン(S);
(t)93位にセリン(S)、アラニン(A)、トレオニン(T)、グリシン(G);
(u)94位にロイシン(L);
(v)95位にバリン(V);
(w)96位にアルギニン(R)、アスパラギン酸(D)、バリン(V)、アスパラギ
ン(N)、セリン(S)またはトレオニン(T);
(x)97位にセリン(S);
(y)98位にセリン(S);
(z)99位にセリン(S);
(aa)100位にセリン(S);
(bb)101位にフェニルアラニン(F);
(cc)102位にリシン(K)、セリン(S)またはトレオニン(T);
(dd)103位にアラニン(A)、グルタミン(Q)、アスパラギン(N)、グリシ
ン(G)またはトレオニン(T);
(ee)104位にイソロイシン;
(ff)105位にチロシン(Y)、アラニン(A)、グルタミン(Q)、アスパラギ
ン(N)、トレオニン(T)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ヒスチ
ジン(H)、グリシン(G)、バリン(V)、アルギニン(R)、リシン(K)、プロリ
ン(P)またはシステイン(C);
(gg)106位にフェニルアラニン(F)、イソロイシン(I)、バリン(V)また
はセリン(S);
(hh)108位にプロリン(P)またはセリン(S);
(ii)118位にアスパラギン(N);
(jj)103位にセリン(S)またはシステイン(C);、
(kk)10〜15、51〜60、136〜139および168〜172位のうちの1
つまたは複数におけるシステイン
の少なくとも1つを含む、変異体を提供する。
本発明は、
− Mspから得られる共有結合したモノマーを2個以上含む構築物;
− 本発明の変異体または本発明の構築物をコードするポリヌクレオチド;
− 本発明の同一の変異体モノマーを含む、Mspから得られるホモオリゴマー細孔;
− 本発明の変異体モノマーを少なくとも1つ含み、全8個のモノマーのうちの少なくと
も1つが他と異なっている、Mspから得られるヘテロオリゴマー細孔;
− 標的核酸配列を特徴付ける方法であって、
(a)核酸結合タンパク質が、本発明の細孔を通る標的配列の移動を制御し、標的配列
中のヌクレオチドの一部が細孔と相互作用できるように、標的配列を細孔およびタンパク
質と接触させるステップと;
(b)各相互作用の間に細孔を通る電流を測定し、それによって標的配列を特徴付ける
ステップと
を含む方法;
− (a)本発明の細孔および(b)核酸ハンドリング酵素を含む、標的核酸配列を配列
決定するためのキット;
− サンプル中の標的核酸配列を配列決定するための装置であって、(a)本発明の複数
の細孔および(b)複数の核酸ハンドリング酵素を含む装置;
− 標的核酸配列を特徴付ける方法であって、
(a)Phi29DNAポリメラーゼが、Mspから得られる細孔を通る標的配列の移
動を制御し、標的配列中のヌクレオチドの一部が細孔と相互作用するように、標的配列を
細孔およびポリメラーゼと接触させるステップと;
(b)各相互作用の間に細孔を通る電流を測定し、それによって標的配列を特徴付ける
ステップとを含み、ステップ(a)および(b)が細孔に印加される電圧により実施され
る、方法;
− 標的核酸配列を特徴付けるためのセンサーを形成する方法であって、
(a)標的核酸配列の存在下でMspから得られる細孔をPhi29DNAポリメラー
ゼと接触させるステップと;
(b)細孔に電圧を印加して、細孔とポリメラーゼとの複合体を形成させるステップと
を含み、それによって標的核酸配列を特徴付けるためのセンサーを形成する、方法;
− Phi29DNAポリメラーゼの活性速度を高める方法であって、
(a)核酸配列の存在下でPhi29DNAポリメラーゼをMspから得られる細孔と
接触させるステップと;
(b)細孔に電圧を印加して、細孔とポリメラーゼとの複合体を形成させるステップと
を含み、それによってPhi29DNAポリメラーゼの活性速度を高める、方法;
− (a)Mspから得られる細孔および(b)Phi29DNAポリメラーゼを含む、
標的核酸配列を特徴付けるためのキット;ならびに
− サンプル中の標的核酸配列を特徴付けるための装置であって、Mspから得られる複
数の細孔および複数のPhi29DNAポリメラーゼを含む装置、も提供する。
一本鎖DNAがナノ細孔を移行する際の、個々の電流レベルの平均滞留時間を示す図である。データは、いくつかの単一分子と照合され、電流レベルによって四分位値に分割される。 アンジッピングモード(Unzipping mode)でPhi29を使用してMS−(NNNRRK)ナノ細孔を通してDNA鎖(配列番号15)を移動させることから得られる電流レベルおよび変動を示す図である。 アンジッピングモードでPhi29を使用してHL−(変異体)ナノ細孔を通してDNA鎖(配列番号15)を移動させることから得られる電流レベルおよび変動を示す図である。 印加電位の範囲(−200mV〜200mV)で記録した単一MspAチャネルに対する電流レベルを示す図である。 ベースラインMspA変異体、MS−(B1)8に対する開孔レベルのI−V曲線を示す図である。各線は、単一細孔を表している。 MspA変異体、MS−(B1−I105Y)8に対する開孔レベルのI−V曲線を示す図である。各線は、単一細孔を表している。 MspA変異体、MS−(B1−I105N)8に対する開孔レベルのI−V曲線を示す図である。各線は、単一細孔を表している。 180mVにおけるMS−(B1−I105A)8細孔に対する高伝導性状態(275pA)と低伝導性状態(150pA)の間の電流の変化を示す図である。 DNAがベースラインMS−(B1)細孔を通ってほどかれるときに生じる電流レベルを示す図である。これらの事象に対する電流範囲は、30pA以下である。 DNAがベースラインMS−(B1ーI105A)細孔を通ってほどかれるときに生じる電流レベルを示す図である。これらの事象に対する電流範囲は、40pA以下である。 実施例9および12および15において使用されるDNA基質設計を示す図である。 実施例10および11において使用されるDNA基質設計を示す図である。 点突然変異が、MspAモノマー配列中に作られるとき、同じDNA配列に対して、配列決定プロファイルがどのように変化するかを示す図である。これらの図表は、複数のポリヌクレオチドから得られるレベルのプロファイルの平均を示している。A)MS−(B1)8細孔の配列決定プロファイルを示すグラフである。B)MS−(B1−D90Q−D93S−I105A)8細孔の配列決定プロファイルを示すグラフである。C)MS−(B1−D90Q−Q126R)8細孔の配列決定プロファイルを示すグラフである。D)MS−(B1−L88N−D90Q−D91M)8細孔の配列決定プロファイルを示すグラフである。E)MS−(B1−L88N−D90Q−D91S)8細孔の配列決定プロファイルを示すグラフである。F)MS−(B1−G75S−G77S−L88N−Q126R)8細孔の配列決定プロファイルを示すグラフである。 実施例13において使用されるDNA基質設計を示す図である。 Phi29DNAポリメラーゼによって媒介され、MspA変異体細孔MS−(B1)8を通るRNAの移行の制御に関する事象追跡例を示す図である。上の追跡において強調されている領域の拡大図を下に示している。 脂質二重層への細孔の挿入を示す図である。A)モノマーからオリゴマー化したMS−(B1)8の細孔の挿入を示す図である。B)ダイマーからオリゴマー化したMS−(B1−B1)4の細孔の挿入を示す図である。 ヘリカーゼによって媒介され、モノマーのオリゴマー化によって作製されたMS−(B1)8変異体細孔を通るDNAの移行の制御に関する事象追跡例を示す図である。上の追跡において強調されている領域の拡大図を下に示している。 ヘリカーゼによって媒介され、ダイマーのオリゴマー化によって作製されたMS−(B1−B1)4変異体細孔を通るDNAの移行の制御に関する事象追跡例を示す図である。上の追跡において強調されている領域の拡大図を下に示している。 実施例16において使用されるDNA基質設計を示す図である。 ヘリカーゼによって媒介され、MS−(B1−L88N)8変異体細孔を通るシトシンおよび5−メチルシトシンの両方を含有するDNAの移行の制御に関する事象追跡例を示す図である。上の追跡において強調されている領域の拡大図を下に示している。
配列表の説明
配列番号1は、NNN−RRK変異体MspAモノマーをコードしているポリヌクレオ
チド配列を示している。
配列番号2(「B1」とも呼ばれる)は、MspAモノマーのNNN−RRK変異体の
成熟形態のアミノ酸配列を示している。変異体は、シグナル配列およびアミノ末端メチオ
ニン(スタートコドンによってコードされる)を欠いており、以下の変異を含む:D90
N、D91N、D93N、D118R、D134RおよびE139K。これらの変異によ
り、DNAはMspA細孔を通って推移できる。
配列番号3は、Phi29DNAポリメラーゼをコードしているポリヌクレオチド配列
を示している。
配列番号4は、Phi29DNAポリメラーゼのアミノ酸配列を示している。
配列番号5は、大腸菌(E. coli)由来のsbcB遺伝子から得られるコドンを最適化
したポリヌクレオチド配列を示している。これは、大腸菌(E. coli)由来のエキソヌク
レアーゼI酵素(EcoExoI)をコードしている。
配列番号6は、大腸菌(E. coli)由来のエキソヌクレアーゼI酵素(EcoExoI
)のアミノ酸配列を示している。
配列番号7は、大腸菌(E. coli)由来のxthA遺伝子から得られるコドンを最適化
したポリヌクレオチド配列を示している。これは、大腸菌(E. coli)由来のエキソヌク
レアーゼIII酵素をコードしている。
配列番号8は、大腸菌(E. coli)由来のエキソヌクレアーゼIII酵素のアミノ酸配
列を示している。この酵素は、二本鎖DNA(dsDNA)の一方の鎖から3’−5’方
向に、5’モノリン酸ヌクレオシドの分配消化を行う。鎖上における酵素開始にはおよそ
4ヌクレオチドの5’突出が必要である。
配列番号9は、T.サーモフィラス(T. thermophilus)由来のrecJ遺伝子から得
られるコドンを最適化したポリヌクレオチド配列を示している。これは、T.サーモフィ
ラス(T. thermophilus)由来のRecJ酵素(TthRecJ−cd)をコードしてい
る。
配列番号10は、T.サーモフィラス(T. thermophilus)由来のRecJ酵素(Tt
hRecJ−cd)のアミノ酸配列を示している。この酵素は、ssDNAから5’−3
’方向に、5’モノリン酸ヌクレオシドの前進性消化を行う。鎖上における酵素開始には
少なくとも4ヌクレオチドが必要である。
配列番号11は、バクテリオファージλexo(redX)遺伝子から得られるコドン
を最適化したポリヌクレオチド配列を示している。これは、バクテリオファージλエキソ
ヌクレアーゼをコードしている。
配列番号12は、バクテリオファージλエキソヌクレアーゼのアミノ酸配列を示してい
る。この配列は、三量体へと組織化する3つの同一サブユニットの1つである。この酵素
は、dsDNAの一方の鎖から5’−3’方向に、ヌクレオチドの高前進性消化を行う(
http://www.neb.com/nebecomm/products/productM0262.asp)。鎖上における酵素開始に
は、選択的に5’リン酸を持つおよそ4ヌクレオチドの5’突出が必要である。
配列番号13〜15は、実施例2において使用した配列を示している。
配列番号16〜18は、それぞれMspB、CおよびD変異体の成熟形態のアミノ酸配
列を示している。成熟形態は、シグナル配列を欠いている。
配列番号19および20は、実施例9、12および15において使用した配列を示して
いる。
配列番号21〜23は、実施例10および11において使用した配列を示している。
配列番号24〜27は、実施例13において使用した配列を示している。
配列番号28は、実施例14において使用したMspAモノマーのNNN−RRK変異
体の成熟形態のダイマーのDNA配列を示している。
配列番号29は、実施例14において使用したMspAモノマーのNNN−RRK変異
体の成熟形態のダイマーのタンパク質配列を示している。
配列番号30、31および32は、実施例16において使用した配列を示している。
配列番号33は、配列番号29に示した構築物において使用した示されるリンカー配列
を示している。
開示された産物および方法の異なる適用が、当技術分野における特定の必要性に合わせ
られることは理解されよう。本明細書において使用される用語は、本発明の具体的な実施
形態を記載するためだけのものであり、制限することを意図しないことも理解されよう。
加えて、この明細書および添付の特許請求の範囲において使用されているように、文脈
に別段の明確な指図がない限り、単数形「a」、「an」および「the」は複数の指示
対象を含む。したがって、例えば、「変異体」への言及は「変異体(複数)」を含み、「
置換」への言及はそのような置換を2個以上含み、「細孔」への言及はそのような細孔を
2個以上含み、「核酸配列」への言及はそのような配列を2個以上含む、などである。
本明細書において引用される全ての刊行物、特許および特許出願は、前後を問わず、そ
の全体を参照により本明細書に組み込む。
変異体Mspモノマー
本発明は、変異体Mspモノマーを提供する。変異体Mspモノマーを使用して、本発
明の細孔を形成することができる。変異体Mspモノマーとは、その配列が野生型Msp
モノマーと異なるが、細孔形成能を保持しているモノマーである。変異体モノマーが細孔
を形成する能力を確認する方法は、当技術分野において周知であり、以下に詳述されてい
る。
変異体モノマーは、ヌクレオチド読み取り特性が改善されており、すなわちヌクレオチドの捕捉および識別が改善されている。具体的には、変異体モノマーから構築された細孔は、野生型より容易にヌクレオチドおよび核酸を捕捉する。加えて、変異体モノマーから構築された細孔は、電流範囲を増加させ(これにより異なるヌクレオチドの識別が容易になる)、状態変動を減少させる(これはシグナル対ノイズ比を高める)。加えて、変異体から構築した細孔を通って核酸が移動するにつれて電流に関与するヌクレオチドの数は減少する。これにより、核酸が細孔を通って移動する際に観察される電流と核酸配列との直接的な関係を同定することがさらに容易になる。変異体のヌクレオチド読み取り特性の改善は5つの主な機序、すなわち:
− 立体性(アミノ酸残基のサイズを増減する);
− 電荷(例えば+ve電荷を導入して核酸配列と相互作用させる);
− 水素結合(例えば塩基対と水素結合できるアミノ酸を導入する);
− πスタッキング(例えば非局在化π電子系によって相互作用するアミノ酸を導入する);および/または
− 細孔の構造の改変(例えば入口部および/または狭窄部のサイズを増大させるアミノ酸を導入する)、の変化によって得られる。
これらの5つの機序のいずれか1つまたは複数が、本発明の細孔の特性の改善に関与し
ている可能性がある。例えば、立体性の改変、水素結合の改変および構造の改変により、
本発明の細孔は、ヌクレオチド読み取り特性を改善することができる。
フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)またはヒスチジン(
H)など嵩高い残基の導入は、細孔の立体性を増加させる。フェニルアラニン(F)、ト
リプトファン(W)、チロシン(Y)またはヒスチジン(H)などの芳香族残基の導入は
、細孔内のπステーキング(staking)も高める。嵩高い残基または芳香族残基の導入は
、例えば細孔を広げ、入口部および/または狭窄部のサイズを増大させることによって、
細孔の構造も改変する。これについては、以下に詳しく記載されている。
本発明の変異体モノマーは、配列番号2に示される配列のバリアントを含む。配列番号
2は、MspAモノマーのNNN−RRK変異体である。これは、以下の変異を含む:D
90N、D91N、D93N、D118R、D134RおよびE139K。配列番号2の
バリアントは、配列番号2と異なるアミノ酸配列を有するが、細孔形成能を保持している
ポリペプチドである。
バリアントは以下の変異:
(a)88位にアスパラギン(N)、セリン(S)、グルタミン(Q)またはトレオニ
ン(T);
(b)90位にセリン(S)、グルタミン(Q)またはチロシン(Y);
(c)105位にロイシン(L)またはセリン(S);
(d)126位にアルギニン(R);
(e)75位にセリン(S);
(f)77位にセリン(S);
(g)59位にアルギニン(R);
(h)75位にグルタミン(Q)、アスパラギン(N)またはトレオニン(T);
(i)77位にグルタミン(Q)、アスパラギン(N)またはトレオニン(T);
(j)78位にロイシン(L);
(k)81位にアスパラギン(N);
(l)83位にアスパラギン(N);
(m)86位にセリン(S)またはトレオニン(T);
(n)87位にフェニルアラニン(F)、バリン(V)またはロイシン(L);
(o)88位にチロシン(Y)、フェニルアラニン(F)、バリン(V)、アルギニン
(R)、アラニン(A)、グリシン(G)またはシステイン(C);
(p)89位にフェニルアラニン(F)、バリン(V)またはロイシン(L);
(q)90位にロイシン(L)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ヒ
スチジン(H)、トレオニン(T)、グリシン(G)、アラニン(A)、バリン(V)、
アルギニン(R)、リシン(K)、アスパラギン(N)またはシステイン(C);
(r)91位にセリン(S)、グルタミン(Q)、ロイシン(L)、メチオニン(M)
、イソロイシン(I)、アラニン(A)、バリン(V)、グリシン(G)、フェニルアラ
ニン(F)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)、ヒスチジン(H)、トレオニン(
T)、アルギニン(R)、リシン(K)、アスパラギン(N)またはシステイン(C);
(s)92位にアラニン(A)またはセリン(S);
(t)93位にセリン(S)、アラニン(A)、トレオニン(T)、グリシン(G);
(u)94位にロイシン(L);
(v)95位にバリン(V);
(w)96位にアルギニン(R)、アスパラギン酸(D)、バリン(V)、アスパラギ
ン(N)、セリン(S)またはトレオニン(T);
(x)97位にセリン(S);
(y)98位にセリン(S);
(z)99位にセリン(S);
(aa)100位にセリン(S);
(bb)101位にフェニルアラニン(F);
(cc)102位にリシン(K)、セリン(S)またはトレオニン(T);
(dd)103位にアラニン(A)、グルタミン(Q)、アスパラギン(N)、グリシ
ン(G)またはトレオニン(T);
(ee)104位にイソロイシン;
(ff)105位にチロシン(Y)、アラニン(A)、グルタミン(Q)、アスパラギ
ン(N)、トレオニン(T)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ヒスチ
ジン(H)、グリシン(G)、バリン(V)、アルギニン(R)、リシン(K)、プロリ
ン(P)またはシステイン(C);
(gg)106位にフェニルアラニン(F)、イソロイシン(I)、バリン(V)また
はセリン(S);
(hh)108位にプロリン(P)またはセリン(S);
(ii)118位にアスパラギン(N);
(jj)103位にセリン(S)またはシステイン(C);、
(kk)10〜15、51〜60、136〜139および168〜172位のうちの1
つまたは複数にシステイン
の少なくとも1つを含む。
野生型MspAにおいて、各モノマーの残基88および105は、細孔の内部狭窄部に
疎水性の環を形成している。L88およびI105位の疎水性残基は、細孔の主な狭搾部
の真上に位置し、水性チャネルに面している。これら残基の変異は、ベースライン(配列
番号2)に対して著しく高い開孔電流を有する細孔をもたらす。これらの位置に変異が作
られるときに観察される電流差は、単一変異を作ることから予想される差より著しく高く
なる。この驚くべき結果は、これらの位置における変異が、これら残基の局所的な環境だ
けでなくチャネル構造に対する効果も有する可能性があることを意味している。配列番号
2ベースラインは広範な細孔伝導性を表すと報告されているが、その理由は十分に分かっ
ていない。L88およびI105位に対する変異は、支配的な細孔電流レベルをベースラ
イン細孔より著しく高める。加えて、この高い伝導性状態は、変異体の支配的な立体構造
であり、広い電流範囲およびシグナル対ノイズの増加にとって望ましい。
88位へのN、S、QまたはTの導入(すなわち上記の変異(a))は、核酸中のヌク
レオチドと水素結合できるアミノ酸を細孔の内部狭搾部に導入する。
各モノマー中の残基90および91も、細孔の内部狭搾部の部分を形成している。各モ
ノマー中の残基118は、細孔の入口部の中に存在している。各モノマー中の残基134
は、細孔への入口部分である。
90位へのS、QまたはYの導入(すなわち上記の変異(b))は、核酸中のヌクレオ
チドと水素結合できるアミノ酸を細孔の内部狭搾部に導入する。
バリアントは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上の変異など、任意の
数の変異(a)〜(kk)を含むことができる。変異の好ましい組合せについては後述す
る。バリアントに導入されるアミノ酸は、天然に存在するまたはそれの天然に存在しない
誘導体であってよい。バリアントに導入されるアミノ酸は、D−アミノ酸であってよい。
任意の数のシステインが、バリアントに導入されてよい。好ましくは、システインは、
90、91および103位のうちの2つまたは全てなど、1つまたは複数の位置に導入さ
れる。これらの位置は、以下で詳述するように、分子アダプターの化学的付着に有用とな
る場合がある。任意の数のシステイン(例えば2、3、4、5、6個以上のシステイン)
が、10〜15、51〜60、136〜139および168〜172位に導入されてよい
。これらの位置は細孔の非保存的ループ領域に存在しており、以下で詳述するように、核
酸結合タンパク質を細孔に化学的に付着させるのに有用である。
好ましい実施形態において、バリアントは以下の(A)〜(Z)に示される1つまたは
複数の置換を含む。バリアントは、A〜Zにある置換を任意の数(例えば1、2、3、4
または5個など)含むことができる。
(A)(i)75位へのセリン(S)、(ii)77位へのセリン(S)、(iii)
88位へのアスパラギン(N)、(iv)90位へのグルタミン(Q)および(v)12
6位へのアルギニン(R)の1つまたは複数の導入。バリアントは、これら置換を1、2
、3、4または5個含むことができる。各モノマー中に4つ全ての置換を含むホモ八量体
の細孔の利点を以下の表3に示す。
(B)(i)90位へのグルタミン(Q)および(ii)126位へのアルギニン(R
)の1つまたは複数の導入。バリアントは、これら置換を1または2個含むことができる
。各モノマー中に両方の置換を含むホモ八量体の細孔の利点を以下の表3に示す。
(C)(i)88位へのアスパラギン(N)、(ii)90位へのグルタミン(Q)お
よび(iii)126位へのアルギニン(R)の1つまたは複数の導入。バリアントは、
これら置換を1、2または3個含むことができる。各モノマー中に3つ全てのこれら置換
を含むホモ八量体の細孔の利点を以下の表3に示す。
(D)(i)88位へのセリン(S)および(ii)90位へのグルタミン(Q)の1
つまたは複数の導入。バリアントは、これら置換を1または2個含むことができる。各モ
ノマー中に両方の置換を含むホモ八量体の細孔の利点を以下の表3に示す。
(E)(i)88位へのアスパラギン(N)および(ii)90位へのグルタミン(Q
)の1つまたは複数の導入。バリアントは、これら置換を1または2個含むことができる
。各モノマー中に両方の置換を含むホモ八量体の細孔の利点を以下の表3に示す。
(F)(i)90位へのグルタミン(Q)および(ii)105位へのアラニン(A)
の1つまたは複数の導入。バリアントは、これら置換を1または2個含むことができる。
各モノマー中に両方の置換を含むホモ八量体の細孔の利点を以下の表2に示す。
(G)(i)90位へのセリン(S)および(ii)92位へのセリン(S)の1つま
たは複数の導入。バリアントは、これら置換を1または2個含むことができる。各モノマ
ー中に両方の置換を含むホモ八量体の細孔の利点を以下の表2に示す。
(H)(i)88位へのトレオニン(T)および(ii)90位へのセリン(S)の1
つまたは複数の導入。バリアントは、これら置換を1または2個含むことができる。各モ
ノマー中に両方の置換を含むホモ八量体の細孔の利点を以下の表2に示す。
(I)(i)87位へのグルタミン(Q)および(ii)90位へのセリン(S)の1
つまたは複数の導入。バリアントは、これら置換を1または2個含むことができる。各モ
ノマー中に両方の置換を含むホモ八量体の細孔の利点を以下の表2に示す。
(J)(i)89位へのチロシン(Y)および(ii)90位へのセリン(S)の1つ
または複数の導入。バリアントは、これら置換を1または2個含むことができる。各モノ
マー中に両方の置換を含むホモ八量体の細孔の利点を以下の表2に示す。
(K)(i)88位へのアスパラギン(N)および(ii)89位へのフェニルアラニ
ン(F)の1つまたは複数の導入。バリアントは、これら置換を1または2個含むことが
できる。各モノマー中に両方の置換を含むホモ八量体の細孔の利点を以下の表2に示す。
(L)(i)88位へのアスパラギン(N)および(ii)89位へのチロシン(Y)
の1つまたは複数の導入。バリアントは、これら置換を1または2個含むことができる。
各モノマー中に両方の置換を含むホモ八量体の細孔の利点を以下の表2に示す。
(M)(i)90位へのセリン(S)および(ii)92位へのアラニン(A)の1つ
または複数の導入。バリアントは、これら置換を1または2個含むことができる。各モノ
マー中に両方の置換を含むホモ八量体の細孔の利点を以下の表2に示す。
(N)(i)90位へのセリン(S)および(ii)94位へのアスパラギン(N)の
1つまたは複数の導入。バリアントは、これら置換を1または2個含むことができる。各
モノマー中に両方の置換を含むホモ八量体の細孔の利点を以下の表2に示す。
(O)(i)90位へのセリン(S)および(ii)104位へのイソロイシン(I)
の1つまたは複数の導入。バリアントは、これら置換を1または2個含むことができる。
各モノマー中に両方の置換を含むホモ八量体の細孔の利点を以下の表2に示す。
(P)(i)88位へのアスパラギン酸(D)および(ii)105位へのリシン(K
)の1つまたは複数の導入。バリアントは、これら置換を1または2個含むことができる
。各モノマー中に両方の置換を含むホモ八量体の細孔の利点を以下の表2に示す。
(Q)(i)88位へのアスパラギン(N)および(ii)126位へのアルギニン(
R)の1つまたは複数の導入。バリアントは、これら置換を1または2個含むことができ
る。各モノマー中に両方の置換を含むホモ八量体の細孔の利点を以下の表2に示す。
(R)(i)88位へのアスパラギン(N)、(ii)90位へのグルタミン(Q)お
よび(iii)91位へのアルギニン(R)の1つまたは複数。バリアントは、これら置
換を1、2または3個含むことができる。各モノマー中に3つ全てのこれら置換を含むホ
モ八量体の細孔の利点を以下の表2に示す。
(S)(i)88位へのアスパラギン(N)、(ii)90位へのグルタミン(Q)お
よび(iii)91位へのセリン(S)の1つまたは複数の導入。バリアントは、これら
置換を1、2または3個含むことができる。各モノマー中に3つ全てのこれら置換を含む
ホモ八量体の細孔の利点を以下の表2に示す。
(T)(i)88位へのアスパラギン(N)、(ii)90位へのグルタミン(Q)お
よび(iii)105位へのバリン(V)の1つまたは複数の導入。バリアントは、これ
ら置換を1、2または3個含むことができる。各モノマー中に3つ全てのこれら置換を含
むホモ八量体の細孔の利点を以下の表2に示す。
(U)(i)90位へのグルタミン(Q)、(ii)93位へのセリン(S)および(
iii)105位へのアライン(alaine)(A)の1つまたは複数の導入。バリアントは
、これら置換を1、2または3個含むことができる。各モノマー中に3つ全てのこれら置
換を含むホモ八量体の細孔の利点を以下の表2に示す。
(V)(i)90位へのフェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、チロシン(
Y)もしくはヒスチジン(H)、(ii)91位へのフェニルアラニン(F)、トリプト
ファン(W)、チロシン(Y)もしくはヒスチジン(H)および(iii)105位への
フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)もしくはヒスチジン(
H)の1つまたは複数の導入。バリアントは、これら置換を1、2または3個含むことが
できる。これらの嵩高い芳香族残基の導入は、細孔の入口部および/または狭搾部におけ
る立体性およびπスタッキングを増大させる。それらは、入口部および/または狭搾部の
サイズも増大させる(すなわち、細孔を広げる)。
(W)(i)90位へのセリン(S)、トレオニン(T)、グリシン(G)、アラニン
(A)もしくはバリン(V)、(ii)91位へのセリン(S)、トレオニン(T)、グ
リシン(G)、アラニン(A)もしくはバリン(V)および(iii)105位へのセリ
ン(S)、トレオニン(T)、グリシン(G)、アラニン(A)もしくはバリン(V)の
1つまたは複数の導入。バリアントは、これら置換を1、2または3個含むことができる
。小さい残基の導入は、細孔の入口部および/または狭搾部における立体性を減少させる
(X)90位へのセリン(S)、アルギニン(R)、リシン(K)もしくはヒスチジン
(H)および/または91位へのセリン(S)、アルギニン(R)、リシン(K)もしく
はヒスチジン(H)の導入。陽性電荷残基(R、KまたはH)の導入は、細孔の狭搾部と
核酸配列との相互作用を高める。
(Y)90位へのセリン(S)、トレオニン(T)、アスパラギン(N)、グルタミン
(Q)、チロシン(Y)もしくはヒスチジン(H)および/または91位へのセリン(S
)、トレオニン(T)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、チロシン(Y)もしく
はヒスチジン(H)の導入。これら残基の導入は、細孔の狭搾部と核酸配列との間で起こ
る水素結合を強める。それらは、入口部および/または狭搾部のサイズも増大させる(す
なわち、細孔を広げる)。
(Z)90、91および103位の1つまたは複数へのシステインの導入。これにより
、化学基はシステイン結合を介して細孔に付着できるようになる。これについては、上お
よび下に詳述されている。
好ましいバリアントには、それだけには限らないが、以下の置換(複数可)の少なくと
も1つを含むものがある。L88N;L88S;L88Q;L88T;D90S;D90
Q;D90Y;I105L;I105S;Q126R;G75S;G77S;G75S、
G77S、L88NおよびQ126R;G75S、G77S、L88N、D90Qおよび
Q126R;D90QおよびQ126R;L88N、D90QおよびQ126R;L88
SおよびD90Q;L88NおよびD90Q;E59R;G75Q;G75N;G75S
;G75T;G77Q;G77N;G77S;G77T;I78L;S81N;T83N
;N86S;N86T;I87F;I87V;I87L;L88N;L88S;L88Y
;L88F;L88V;L88Q;L88T;I89F;I89V;I89L;N90S
;N90Q;N90L;N90Y;N91S;N91Q;N91L;N91M;N91I
;N91A;N91V;N91G;G92A;G92S;N93S;N93A;N93T
;I94L;T95V;A96R;A96D;A96V;A96N;A96S;A96T
;P97S;P98S;F99S;G100S;L101F;N102K;N102S;
N102T;S103A;S103Q;S103N;S103G;S103T;V104
I;I105Y;I105L;I105A;I105Q;I105N;I105S;I1
05T;T106F;T106I;T106V;T106S;N108P;N108S;
D90QおよびI105A;D90SおよびG92S;L88TおよびD90S;I87
QおよびD90S;I89YおよびD90S;L88NおよびI89F;L88Nおよび
I89Y;D90SおよびG92A;D90SおよびI94N;D90SおよびV104
I;L88DおよびI105K;L88NおよびQ126R;L88N、D90Qおよび
D91R;L88N、D90QおよびD91S;L88N、D90QおよびI105V;
D90Q、D93SおよびI105A;N91Y;N90YおよびN91G;N90Gお
よびN91Y;N90GおよびN91G;I05G;N90R;N91R;N90Rおよ
びN91R;N90K;N91K;N90KおよびN91K;N90QおよびN91G;
N90GおよびN91Q;N90QおよびN91Q;R118N;N91C;N90C;
N90W;N91W;N90K;N91K;N90R;N91R;N90SおよびN91
S;N90YおよびI105A;N90GおよびI105A;N90QおよびI105A
;N90SおよびI105A;L88AおよびI105A;L88SおよびI105S;
L88NおよびI105N;N90GおよびN93G;N90G;N93G;N90Gお
よびN91A;I105K;I105R;I105V;I105P;I105W;L88
R;L88A;L88G;L88N;N90RおよびI105A;N90SおよびI10
5A;L88AおよびI105A;L88SおよびI105S;L88NおよびI105
N;L88C;S103C;およびI105C..
特に好ましいバリアントは、I105Nを含む。I105Nを含む変異体モノマーから
構築される細孔は、およそ80%に上昇する残留電流を有する。異なるヌクレオチドに関
連する電流の変化も増大する。これは、I105Nを含む変異体モノマーから構築される
細孔の構造変化を反映している。したがってそのような細孔は、ヌクレオチドを識別する
能力が改善されている。
ホモ八量体の細孔において使用される際に好ましい単一変異体およびそれらの利点を以
下の表1に示す。
表1の続き
ホモ八量体の細孔において使用される際に好ましい多重変異体およびそれらの利点を以
下の表2に示す。
ホモ八量体の細孔において使用される際に最も好ましい変異体およびそれらの利点を以
下の表3に示す。
上述した特定の変異に加えて、バリアントは他の変異を含むことができる。好ましくは
、配列番号2のアミノ酸配列の全長にわたって、バリアントは、アミノ酸同一性に基づい
て、その配列と少なくとも50%相同になる。より好ましくは、バリアントは、アミノ酸
同一性に基づいて、全配列にわたって配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも55%、少
なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも
80%、少なくとも85%、少なくとも90%およびより好ましくは、少なくとも95%
、97%または99%相同であり得る。100以上(例えば125、150、175また
は200以上)の連続するアミノ酸区間にわたって、少なくとも80%(例えば少なくと
も85%、90%または95%)のアミノ酸同一性が存在し得る(「厳密な相同性(hard
homology)」)。
当技術分野において標準的な方法を使用して相同性を決定することができる。例えば、
UWGCG Packageは、BESTFITプログラムを提供しており、これを使用
して(例えば初期設定で使用して)相同性を算出できる(Devereux et al (1984) Nuclei
c Acids Research 12, 387〜395頁)。例えばAltschul S. F. (1993) J Mol Evol 36:29
0〜300頁;Altschul, S.F et al (1990) J Mol Biol 215:403〜10頁に記載のとおり、P
ILEUPおよびBLASTアルゴリズムを使用して、相同性を算出するまたは配列を整
列させる(例えば等価な残基もしくは対応する配列を(通常は初期設定で)同定する)こ
とができる。
BLAST分析を実行するためのソフトウェアは、National Center
for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.
nih.gov/)によって一般公開されている。このアルゴリズムは、最初にデータベース配列
中の同じ長さのワードと整列したときに、いくつかの正の値の閾値スコアTと一致するま
たはそれを満たすクエリー配列中にある長さWの短いワードを同定することによって、高
スコアの配列対(HSP)の同定を行う。Tは、近傍ワードスコア閾値と呼ばれている(
上記のAltschulら)。これら最初の近傍ワードヒットは、それを含有するHSP
を見出す検索を開始するためのシードとして機能する。ワードヒットは、累積整列化スコ
アが増加し得る限り各配列に沿って両方向に広げられる。ワードヒットの各方向への拡張
は、次の場合に停止する:累積整列化スコアが、その最大到達値から量Xだけ低下する場
合;1つもしくは複数の負にスコアされる残基の整列化が蓄積することにより累積スコア
が0以下になる場合、または配列のいずれかの末端に達する場合。BLASTアルゴリズ
ムのパラメータW、TおよびXにより、整列化の感度および速度が決まる。BLASTプ
ログラムは、初期設定としてワード長(W)11、BLOSUM62スコア行列(Heniko
ff and Henikoff (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10915〜10919頁を参照のこ
と)、整列化(B)50、期待値(E)10、M=5、N=4、および両鎖の比較を使用
する。
BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計分析を実行する;例えば、Ka
rlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873〜5787頁を参照のこ
と。BLASTアルゴリズムによって得られる類似性の1つの基準は、最小合計確率(P
(N))であり、2つのアミノ酸配列の一致が偶然に起こり得る確率の指標が得られる。
例えば第1配列と第2配列との比較において、最小合計確率が約1未満、好ましくは約0
.1未満、より好ましくは約0.01未満および最も好ましくは約0.001未満である
場合、ある配列は別の配列に類似していると見なされる。
配列番号2は、MspAモノマーのNNN−RRK変異体である。バリアントは、Ms
pAと比較して、MspB、CまたはDモノマー中にどんな変異も含むことができる。M
spB、CおよびDの成熟形態を、配列番号16〜18に示す。具体的には、バリアント
は、MspBに存在する以下の置換を含むことができる:A138P。バリアントは、M
spCに存在する以下の置換の1つまたは複数を含むことができる:A96G、N102
EおよびA138P。バリアントは、MspDに存在する以下の変異の1つまたは複数を
含むことができる:G1、L2V、E5Q、L8V、D13G、W21A、D22E、K
47T、I49H、I68V、D91G、A96Q、N102D、S103T、V104
I、S136KおよびG141Aの欠失。バリアントは、MspB、CおよびDに由来す
る1つまたは複数の変異と置換の組合せを含むことができる。
上述のものに加えて、配列番号2のアミノ酸配列に対して、例えば1、2、3、4、5
、10、20または30個までアミノ酸置換を行うことができる。保存的置換は、アミノ
酸を類似の化学的構造、類似の化学的特性または類似の側鎖容積の他のアミノ酸と置きか
える。導入されるアミノ酸は、それと置きかわるアミノ酸と類似の極性、親水性、疎水性
、塩基性度、酸性度、中性度または電荷を有することができる。あるいは、保存的置換は
、予め芳香族または脂肪族アミノ酸が存在している場所に芳香族または脂肪族である別の
アミノ酸を導入することができる。保存的なアミノ酸変化は当技術分野において周知であ
り、以下の表4で定義される20種の主要なアミノ酸の特性に従って選択できる。アミノ
酸が類似の極性を有する場合、表5にあるアミノ酸側鎖についてのハイドロパシー尺度を
参照することによって、これを決定することもできる。
配列番号2のアミノ酸配列の1つまたは複数のアミノ酸残基を、上記のポリペプチドか
らさらに欠失させることができる。1、2、3、4、5、10、20または30個までの
残基を欠失させることができ、それ以上でもよい。
バリアントは、配列番号2の断片を含むことができる。そのような断片は、細孔形成活
性を保持している。断片は、少なくとも長さ50、100、150または200アミノ酸
であってよい。そのような断片を使用して、本発明の細孔を作製することができる。断片
は、好ましくは配列番号2の細孔形成ドメインを含む。断片は、配列番号2の残基88、
90、91、105、118および134のうちの1つを含まなければならない。通常、
断片は、配列番号2の残基88、90、91、105、118および134の全てを含む
あるいはまたはさらに、1つまたは複数のアミノ酸を、上記のポリペプチドに付加する
ことができる。伸長は、配列番号2のアミノ酸配列またはそのポリペプチドバリアントも
しくは断片のアミノ末端もしくはカルボキシ末端に形成され得る。伸長は、例えば長さ1
〜10アミノ酸と非常に短くてよい。あるいは、伸長は、例えば50または100アミノ
酸まで長くてもよい。本発明によるアミノ酸配列に担体タンパク質を融合させてもよい。
他の融合タンパク質については、以下で詳述している。バリアントは、配列番号2のアミ
ノ末端にメチオニンを有する場合がある。
上述のとおり、バリアントは、配列番号2とは異なるアミノ酸配列を有するが、細孔形
成能を保持しているポリペプチドである。バリアントは通常、細孔形成に関与する配列番
号2の領域を含有する。Msp(β−バレルを含有する)の細孔形成能は、各サブユニッ
ト中にあるβ−シートによってもたらされる。配列番号2のバリアントは通常、β−シー
トを形成する配列番号2の領域を含む。得られたバリアントが細孔形成能を保持する限り
、β−シートを形成する配列番号2の領域に1つまたは複数の修飾を作ることができる。
配列番号2のバリアントは、そのα−へリックスおよび/またはループ領域内に、好まし
くは1つまたは複数の修飾(置換、付加または欠失など)を含む。
変異体モノマーを修飾して、例えばヒスチジン残基(Hisタグ)、アスパラギン酸残
基(Aspタグ)、ストレプトアビジンタグもしくはフラグタグを付加することによって
、またはポリペプチドがシグナル配列を天然に内包しない場合には、細胞からの分泌を促
進するためにそのような配列を付加することによって、変異体モノマーの同定または精製
を補助することができる。遺伝学的タグを導入するための別の手段は、細孔上の天然のま
たは工作された位置にタグを化学的に反応させることである。この例は、細孔の外側に工
作されたシステインに対してゲルシフト試薬を反応させることである。これは、溶血素ヘ
テロオリゴマーを分離する方法として実証されている(Chem Biol. 1997 Jul;4(7):497
〜505頁)。
変異体モノマーを、明示用標識で標識することができる。明示用標識は、細孔を検出で
きるようにするどんな適切な標識であってもよい。適切な標識には、それだけには限らな
いが、蛍光分子、放射性同位元素(例えば125I、35S)、酵素、抗体、抗原、ポリ
ヌクレオチドおよびビオチンなどのリガンドがある。
変異体モノマーは、合成または組換え手段によって作成され得る。例えば、細孔は、i
n vitro翻訳および転写(IVTT)によって合成され得る。変異体モノマーのア
ミノ酸配列を修飾して、非天然アミノ酸を含めるまたはモノマーの安定性を高めることが
できる。変異体モノマーを合成手段によって作製する場合、作製する間にそのようなアミ
ノ酸を導入することができる。変異体モノマーは、合成または組換え作製の後に改変され
てもよい。
変異体モノマーは、D−アミノ酸を使用して作製されてもよい。例えば、変異体モノマ
ーは、L−アミノ酸とD−アミノ酸の混合物を含んでもよい。これは、そのようなタンパ
ク質またはペプチドを作製する際に当技術分野で常用されている。
変異体モノマーは、ヌクレオチドの識別を促進するために1つまたは複数の特定の修飾
を含有する。変異体モノマーは、細孔形成を妨げない限り、他の非特異的な修飾を含有し
てもよい。いくつかの非特異的な側鎖修飾が、当技術分野において公知であり、変異体モ
ノマーの側鎖に作ることができる。そのような修飾には、例えば、アルデヒドと反応させ
続いてNaBHを用いて還元することによるアミノ酸の還元的アルキル化、メチルアセ
トイミデートを用いるアミジン化または無水酢酸を用いるアシル化がある。
変異体モノマーは、当技術分野において公知の標準的な方法を使用して作製することが
できる。変異体モノマーをコードしているポリヌクレオチド配列は、当技術分野において
標準的な方法を使用して生成し、複製できる。そのような配列については、以下に詳述す
る。変異体モノマーをコードしているポリヌクレオチド配列は、当技術分野において標準
的な技術を使用して、細菌宿主細胞中で発現させることができる。変異体モノマーは、組
換え発現ベクターからポリペプチドをin situ発現させることによって細胞中で作
製できる。発現ベクターは場合によっては、ポリペプチドの発現を制御するための誘導性
プロモータを持っている。
細孔を生成する生物から任意のタンパク質液体クロマトグラフィーシステムによって精
製した後に、または後述するように組換え発現した後に、変異体モノマーを大規模に作製
することができる。典型的なタンパク質液体クロマトグラフィーシステムには、FPLC
、AKTAシステム、Bio−Cadシステム、Bio−Rad BioLogicシス
テムおよびGilson HPLCシステムがある。次いで変異体モノマーを、本発明に
従って使用する天然に存在するまたは人工的な膜へと挿入することができる。膜に細孔を
挿入する方法については後述する。
いくつかの実施形態において、変異体モノマーは化学修飾されている。変異体モノマー
は、任意の方法で任意の部位で化学修飾できる。好ましくは、変異体モノマーは、1つも
しくは複数のシステインへの分子の付着(システイン結合)、1つもしくは複数のリシン
への分子の付着、1つもしくは複数の非天然アミノ酸への分子の付着、エピトープの酵素
修飾または末端の修飾によって化学修飾されている。そのような修飾を実施する適切な方
法は、当技術分野において周知である。変異体モノマーは、任意の分子の付着によって化
学修飾され得る。例えば、変異体モノマーは、色素または発蛍光団の付着によって化学修
飾することができる。
いくつかの実施形態において、変異体モノマーは、モノマーを含む細孔と標的ヌクレオ
チドまたは標的核酸配列との相互作用を促進する分子アダプターで化学修飾されている。
アダプターが存在することにより、細孔とヌクレオチドまたは核酸配列とのホスト−ゲス
ト化学が改善され、それによって変異体モノマーから形成される細孔の配列決定能が改善
される。ホスト−ゲスト化学の原理は、当技術分野において周知である。アダプターは、
ヌクレオチドまたは核酸配列との相互作用を改善する、細孔の物理的もしくは化学的特性
に対して効果がある。アダプターは、細孔のバレルもしくはチャネルの電荷を改変するこ
とができ、またはヌクレオチドもしくは核酸配列と特異的に相互作用するもしくは結合す
ることができ、それによって細孔との相互作用が促進される。
好ましくは、分子アダプターは、環状分子、シクロデキストリン、ハイブリダイゼーシ
ョンできる種、DNA結合剤もしくは相互キレート剤(interchelator)、ペプチドもし
くはペプチド類似体、合成ポリマー、芳香族平面分子、正電荷小分子または水素結合が可
能な小分子である。
アダプターは環状であってよい。好ましくは、環状アダプターは細孔と同じ対称性を有
する。通常Mspは中心軸の周りに8個のサブユニットを有するので、アダプターは、好
ましくは8倍の対称性を有する。これについては、以下で詳述する。
アダプターは通常、ホスト−ゲスト化学によってヌクレオチドまたは核酸配列と相互作
用する。アダプターは通常、ヌクレオチドまたは核酸配列と相互作用できる。アダプター
は、ヌクレオチドまたは核酸配列と相互作用できる1つまたは複数の化学基を含む。好ま
しくは、1つまたは複数の化学基は、疎水性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力
、π−陽イオン相互作用および/または静電力など非共有結合性相互作用によってヌクレ
オチドもしくは核酸配列と相互作用する。好ましくは、ヌクレオチドまたは核酸配列と相
互作用できる1つまたは複数の化学基は正に荷電している。より好ましくは、ヌクレオチ
ドまたは核酸配列と相互作用できる1つまたは複数の化学基はアミノ基を含む。アミノ基
は、第一、第二または第三炭素原子に付着することができる。さらにより好ましくは、ア
ダプターは、6、7または8アミノ基の環などのアミノ基の環を含む。最も好ましくは、
アダプターは、8アミノ基の環を含む。プロトン化したアミノ基の環は、ヌクレオチドま
たは核酸配列中にある負に荷電したリン酸基と相互作用することができる。
細孔内部におけるアダプターの正しい位置決めは、アダプターと変異体モノマーを含む
細孔とのホスト−ゲスト化学によって促進され得る。好ましくは、アダプターは、細孔中
にある1つまたは複数のアミノ酸と相互作用可能な1つまたは複数の化学基を含む。より
好ましくは、アダプターは、疎水性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、π−陽
イオン相互作用および/または静電力など非共有結合性相互作用によって細孔中にある1
つまたは複数のアミノ酸と相互作用可能な1つまたは複数の化学基を含む。細孔中にある
1つまたは複数のアミノ酸と相互作用可能な化学基は、通常、ヒドロキシルまたはアミン
である。ヒドロキシル基は、第一、第二または第三炭素原子に付着することができる。ヒ
ドロキシル基は、細孔中の荷電していないアミノ酸と水素結合を形成することができる。
細孔とヌクレオチドまたは核酸配列との相互作用を促進するどんなアダプターも使用する
ことができる。
適切なアダプターには、それだけには限らないが、シクロデキストリン、環状ペプチド
およびククルビツリルがある。好ましくは、アダプターは、シクロデキストリンまたはそ
の誘導体である。シクロデキストリンまたはその誘導体は、Eliseev, A. V., and Schnei
der, H-J. (1994) J. Am. Chem. Soc. 116, 6081〜6088頁に開示されているもののいずれ
かである。より好ましくは、アダプターは、ヘプタキス−6−アミノ−β−シクロデキス
トリン(am−βCD)、6−モノデオキシ−6−モノアミノ−β−シクロデキストリ
ン(am−βCD)またはヘプタキス−(6−デオキシ−6−グアニジノ)−シクロデ
キストリン(gu−βCD)である。gu−βCD中のグアニジノ基は、am−β
CD中の1級アミンよりかなり高いpKaを有し、したがってより強く正に荷電している
。このgu−βCDアダプターを使用して、細孔中にあるヌクレオチドの滞留時間を高
め、測定される残留電流の精度を高め、高温または低いデータ収集速度における塩基検出
速度を高めることができる。
スクシンイミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸(SPDP)架橋剤を以下
に詳述するように使用する場合、好ましくは、アダプターはヘプタキス(6−デオキシ−
6−アミノ)−6−N−モノ(2−ピリジル)ジチオプロパノイル−β−シクロデキスト
リン(amamPDP−βCD)である。
より適切なアダプターは、8個の糖単位を含むγ−シクロデキストリンを含む(したが
って、8倍の対称性を有する)。γ−シクロデキストリンは、リンカー分子を含有するこ
とができ、または修飾されて、上記のβ−シクロデキストリンの例において使用した修飾
された糖単位を全てもしくはそれ以上に含むことができる。
好ましくは、分子アダプターは、変異体モノマーに共有結合している。アダプターは、
当技術分野において公知の任意の方法を使用して細孔に共有結合できる。アダプターは通
常、化学的結合によって付着している。分子アダプターがシステイン結合によって付着し
ている場合、好ましくは、1つまたは複数のシステインが置換によって変異体に導入され
ている。本発明の変異体モノマーは当然ながら、88、90、91、103および105
位の1つまたは複数にシステイン残基を含むことができる。変異体モノマーは、1つまた
は複数(2、3、4もしくは5個など)のこれらシステインに分子アダプターを付着させ
ることによって化学修飾できる。あるいは、変異体モノマーは、他の位置に導入した1つ
または複数のシステインに対する分子の付着によって化学修飾されてもよい。好ましくは
、分子アダプターは、配列番号2の90、91および103位の1つまたは複数に付着し
ている。
システイン残基の反応性は、付近の残基を修飾することによって増強できる。例えば、
隣接するアルギニン、ヒスチジンまたはリシン残基の塩基性基は、システインチオール基
のpKaをより反応性の高いS基に変化させることがある。システイン残基の反応性は
、dTNBなどのチオール保護基によって保護できる。これらを、変異体モノマーの1つ
または複数のシステイン残基と反応させて、その後にリンカーを付着させることができる
。分子は、変異体モノマーに直接付着することができる。好ましくは、分子は、化学的架
橋剤またはペプチドリンカーなどのリンカーを使用して変異体モノマーに付着する。
適切な化学的架橋剤は、当技術分野において周知である。好ましい架橋剤には、2,5
−ジオキソピロリジン−1−イル3−(ピリジン−2−イルジスルファニル)プロパン酸
、2,5−ジオキソピロリジン−1−イル4−(ピリジン−2−イルジスルファニル)ブ
タン酸および2,5−ジオキソピロリジン−1−イル8−(ピリジン−2−イルジスルフ
ァニル)オクタナノエート(octananoate)がある。最も好ましい架橋剤は、スクシンイ
ミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸(SPDP)である。通常は、分子を二
官能性架橋剤に共有結合させた後に分子/架橋剤複合体を変異体モノマーに共有結合させ
るが、モノマーに二官能性架橋剤を共有結合させた後に二官能性架橋剤/モノマー複合体
を分子に付着させることも可能である。
好ましくは、リンカーはジチオスレイトール(DTT)に耐性がある。適切なリンカー
には、それだけには限らないが、ヨードアセトアミド系およびマレイミド系リンカーがあ
る。
他の実施形態において、モノマーは、核酸結合タンパク質に付着することができる。こ
れは、本発明の配列決定法において使用できるモジュラ配列決定システムを形成する。核
酸結合タンパク質については、以下に記載する。
好ましくは、核酸結合タンパク質は、変異体モノマーに共有結合している。タンパク質
は、当技術分野において公知の任意の方法を使用して細孔に共有結合され得る。モノマー
とタンパク質は、化学的に融合されるかまたは遺伝学的に融合され得る。構築物全体が単
一のポリヌクレオチド配列から発現される場合、モノマーとタンパク質は遺伝学的に融合
されている。核酸結合タンパク質と細孔との遺伝子融合については、国際出願番号PCT
/GB09/001679(WO2010/004265として公開)に記述されている
核酸結合タンパク質が、システイン結合によって付着している場合、好ましくは1つま
たは複数のシステインが置換によって変異体に導入されている。本発明の変異体モノマー
は当然ながら、10〜15、51〜60、136〜139および168〜172位の1つ
または複数にシステイン残基を含むことができる。これらの位置は、相同物の間で保存性
が低いループ領域に存在しており、変異または挿入を許容できることを示している。した
がってそれらは、核酸結合タンパク質を付着するには適している。システイン残基の反応
性は、上述のような修飾によって増強できる。
核酸結合タンパク質は、変異体モノマーに直接、または1つまたは複数のリンカーを介
して付着することができる。分子は、国際出願番号PCT/GB10/000132(W
O2010/086602として公開)に記載されているハイブリダイゼーションリンカ
ーを使用して、変異体モノマーに付着させることができる。あるいは、ペプチドリンカー
が使用されてよい。ペプチドリンカーは、アミノ酸配列である。ペプチドリンカーの長さ
、柔軟性および親水性は通常、モノマーおよび分子の機能を妨げないように設計される。
好ましい柔軟性があるペプチドリンカーは、2〜20個(例えば4、6、8、10または
16個)の一続きのセリンおよび/またはグリシンアミノ酸である。より好ましい柔軟性
があるリンカーには(SG)、(SG)、(SG)、(SG)、(SG)およ
び(SG)があり、ここでSはセリン、Gはグリシンである。好ましい剛直なリンカー
は、2〜30個(例えば4、6、8、16または24個)の一続きのプロリンアミノ酸で
ある。より好ましい剛直なリンカーには、(P)12があり、ここでPはプロリンである
変異体モノマーは、分子アダプターおよび核酸結合タンパク質を用いて化学修飾されて
よい。
構築物
本発明は、Mspから得られる共有結合したモノマーを2個以上含む構築物も提供する
。本発明の構築物は、細孔形成能を保持している。本発明の1つまたは複数の構築物を使
用して、配列決定など、核酸配列を特徴付けるための細孔を形成することができる。構築
物は、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のモノマーを含むことができる。2
個以上のモノマーは、同じでも異なっていてもよい。
モノマーは、本発明の変異体モノマーである必要はない。例えば、少なくとも1つのモ
ノマーが、配列番号2に示される配列を含んでいてもよい。あるいは、少なくとも1つの
モノマーは、アミノ酸同一性に基づいて、配列番号2と全配列にわたって少なくとも50
%相同である配列番号2のバリアントを含むことができるが、本発明の変異体モノマーに
必要とされるいずれの特定の変異も含まない。より好ましくは、バリアントは、アミノ酸
同一性に基づいて、配列番号2のアミノ酸配列と全配列にわたって少なくとも55%、少
なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも
80%、少なくとも85%、少なくとも90%およびより好ましくは、少なくとも95%
、97%または99%相同であり得る。好ましい実施形態において、構築物中の少なくと
も1つのモノマーは、本発明の変異体モノマーである。構築物中のモノマーの全てが、本
発明の変異体モノマーであってもよい。変異体モノマーは、同じでも異なっていてもよい
。より好ましい実施形態において、構築物は2つのモノマーを含み、そのモノマーのうち
少なくとも1つは本発明の変異体モノマーである。
好ましくは、モノマーは遺伝学的に融合されている。構築物全体が単一のポリヌクレオ
チド配列から発現される場合、モノマーは遺伝学的に融合されている。モノマーのコード
配列を任意の方法で結合して、構築物をコードしている単一のポリヌクレオチド配列を形
成することができる。
モノマーは、任意の構成で遺伝学的に融合されてよい。モノマーは、その末端アミノ酸
によって融合されてよい。例えば、1個のモノマーのアミノ末端を、別のモノマーのカル
ボキシ末端に融合することができる。構築物が、配列番号2に示す配列またはそのバリア
ントを各々含む2個以上のモノマーの遺伝子融合から形成される場合、構築物中で2番目
のおよび(アミノからカルボキシの方向で)その後にあるモノマーは、そのアミノ末端に
メチオニンを含むことができる(各アミノ末端は前にあるモノマーのカルボキシ末端に融
合される)。例えば、Mが(アミノ末端メチオニンを持たない)配列番号2に示される配
列またはバリアントを含むモノマーであり、mMがアミノ末端メチオニンを持つ配列番号
2に示される配列またはバリアントを含むモノマーである場合、その構築物は配列M−m
M、M−mM−mMまたはM−mM−mM−mMを含むことができる。これらのメチオニ
ンの存在は通常、構築物全体をコードしているポリヌクレオチド中で2番目またはその後
のモノマーをコードしているポリヌクレオチドの5’末端におけるスタートコドン(すな
わちATG)の発現に由来している。構築物中の1番目のモノマー(アミノからカルボキ
シの方向で)が、メチオニンを含んでもよい(例えばmM−mM、mM−mM−mMまた
はmM−mM−mM−mM)。
2個以上のモノマーが、直接一緒に遺伝学的に融合されてよい。好ましくは、モノマー
は、リンカーを使用して遺伝学的に融合される。リンカーは、モノマーの可動性を限定す
るように設計することができる。好ましいリンカーは、アミノ酸配列(すなわちペプチド
リンカー)である。上述したペプチドリンカーのいずれかが使用される。好ましくは、構
築物は、配列番号29で示される配列またはそのバリアントを含む。配列番号29中の各
モノマーは、配列番号2に示す配列またはそのバリアントを含む。2番目のモノマーも、
上記のとおり、そのアミノ末端にメチオニンを含む。2個のモノマーは、ペプチドリンカ
ーによって連結されている。配列番号29のバリアントは、配列番号2のバリアントを参
照して、上述した方法のいずれかで、配列番号29と異なることができる。リンカーは、
修飾することもまたは上述のペプチドリンカーと置きかえることもできる。
別の好ましい実施形態において、モノマーは化学的に融合される。2つの部分が化学的
に、例えば化学的架橋剤によって付着している場合、サブユニットは酵素に化学的に融合
される。上述の化学的架橋剤のいずれかを使用することができる。リンカーは、本発明の
変異体モノマーに導入された1つまたは複数のシステイン残基に付着することができる。
あるいは、リンカーは、構築物中のモノマーのうちの一方の末端に付着することができる
構築物が異なるモノマーを含有する場合、リンカー濃度をモノマーより大過剰に保つこ
とによって、モノマーとそれ自身との架橋反応を防止することができる。あるいは、2つ
のリンカーが使用される「鍵−鍵穴」構成を使用することができる。各リンカーの一方の
端だけが一緒に反応して長いリンカーを形成することができ、リンカーの他方の端は各々
異なるモノマーと反応する。そのようなリンカーは、国際出願番号PCT/GB10/0
00132(WO2010/086602として公開)に記載されている。
ポリヌクレオチド
本発明は、本発明の変異体モノマーをコードするポリヌクレオチド配列も提供する。変
異体モノマーは、上述したもののいずれであってもよい。好ましくは、ポリヌクレオチド
配列は、ヌクレオチド同一性に基づいて、配列番号1の配列と全配列にわたって少なくと
も50%、60%、70%、80%、90%または95%相同である配列を含む。300
以上(例えば375、450、525または600以上)の連続するヌクレオチド区間に
わたって、少なくとも80%(例えば少なくとも85%、90%または95%)のヌクレ
オチド同一性が存在し得る(「厳密な相同性」)。相同性は、上記のとおり算出され得る
。ポリヌクレオチド配列は、遺伝暗号の縮重に基づいて配列番号1と異なる配列を含むこ
とができる。
本発明は、本発明の遺伝学的に融合された構築物のいずれかをコードするポリヌクレオ
チド配列も提供する。好ましくは、ポリヌクレオチドは、上記のとおり配列番号1で示さ
れる配列またはそのバリアントを2個以上含む。好ましくは、ポリヌクレオチド配列は、
配列番号28を含む、またはヌクレオチド同一性に基づいて、配列番号28の配列と全配
列にわたって少なくとも50%、60%、70%、80%、90%または95%相同であ
る配列を含む。600以上(例えば750、900、1050または1200以上)の連
続するヌクレオチド区間にわたって、少なくとも80%(例えば少なくとも85%、90
%または95%)のヌクレオチド同一性が存在し得る(「厳密な相同性」)。相同性は、
上記のとおりに算出され得る。ポリヌクレオチド配列は、遺伝暗号の縮重に基づいて配列
番号28と異なる配列を含むことができる。
ポリヌクレオチド配列は、当技術分野において標準的な方法を使用して生成され、複製
されることができる。野生型Mspをコードしている染色体DNAは、スメグマ菌(Myco
bacterium smegmatis)など、細孔を生成する生物から抽出できる。細孔サブユニットを
コードしている遺伝子は、特異的なプライマーを含むPCRを使用して増幅できる。次い
で、増幅した配列は部位特異的突然変異誘発を受けることができる。部位特異的突然変異
誘発の適切な方法は、当技術分野において公知であり、例えば、組合せ連鎖反応(combin
e chain reaction)を含む。本発明の構築物をコードしているポリヌクレオチドは、Samb
rook, J. and Russell, D. (2001). Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd Ed
ition. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NYに記載の技術な
ど、周知の技術を使用して作成できる。
次いで、得られたポリヌクレオチド配列を、クローニングベクターなど組換え複製可能
なベクターに組み込むことができる。そのベクターを使用して、適合宿主細胞の中でポリ
ヌクレオチドを複製することができる。したがって、ポリヌクレオチド配列は、複製可能
なベクターにポリヌクレオチドを導入し、適合宿主細胞にベクターを導入し、ベクターの
複製をもたらす条件下で宿主細胞を増殖させることによって、作ることができる。ベクタ
ーは、宿主細胞から回収できる。ポリヌクレオチドのクローニングに適切な宿主細胞は、
当技術分野において公知であり、以下で詳しく記載する。
ポリヌクレオチド配列は、適切な発現ベクターにクローニングされ得る。発現ベクター
において、ポリヌクレオチド配列は通常、宿主細胞によるコード配列の発現を得ることが
できる制御配列に作動的に連結されている。そのような発現ベクターを使用して、細孔サ
ブユニットを発現させることができる。
用語「作動的に連結された」は、並置を意味しており、記述した成分が意図する方式で
機能できるような関係である。コード配列に対して「作動的に連結された」制御配列は、
制御配列に適合する条件のもとでコード配列の発現が得られるような方法でライゲーショ
ンされる。同じまたは異なっているポリヌクレオチド配列の複数のコピーを、ベクターに
導入することができる。
発現ベクターは次いで、適切な宿主細胞に導入され得る。したがって、本発明の変異体
モノマーまたは構築物は、発現ベクターにポリヌクレオチド配列を挿入し、適合細菌宿主
細胞にベクターを導入し、ポリヌクレオチド配列の発現をもたらす条件下で宿主細胞を増
殖させることによって作製できる。組換え発現させたモノマーまたは構築物は、宿主細胞
膜の中で細孔へと自己組織化することができる。あるいは、この方式で作製した組換え細
孔を宿主細胞から取り出し、別の膜に挿入することもできる。少なくとも2つの異なるサ
ブユニットを含む細孔を作製する場合、上記のとおり異なるサブユニットを異なる宿主細
胞中で別々に発現させ、宿主細胞から取り出し、ウサギ細胞膜など別の膜の中で細孔へと
組織化することができる。
ベクターは例えば、複製起点、場合によっては前記ポリヌクレオチド配列を発現するた
めのプロモータおよび場合によってはプロモータの調節因子を備えているプラスミド、ウ
イルスまたはファージベクターであってよい。ベクターは、1つまたは複数の選択可能な
マーカー遺伝子(例えばテトラサイクリン耐性遺伝子)を含有することができる。プロモ
ータおよび他の発現調節シグナルは宿主細胞と適合するように選択され、それ用として発
現ベクターを設計することができる。通常、T7、trc、lac、araまたはλ
ロモータが使用される。
宿主細胞は通常、細孔サブユニットを高レベルで発現する。ポリヌクレオチド配列を用
いて形質転換した宿主細胞は、細胞を形質転換するために使用した発現ベクターに適合す
るように選ばれることになる。宿主細胞は、通常は細菌であり、好ましくは大腸菌(Esch
erichia coli)である。λDE3溶原菌を持つ任意の細胞、例えばC41(DE3)、B
L21(DE3)、JM109(DE3)、B834(DE3)、TUNER、Orig
amiおよびOrigamiBが、T7プロモータを含むベクターを発現することができ
る。上に列挙した条件に加えて、Proc Natl Acad Sci U S A. 2008 Dec 30;105(52):20
647〜52頁に引用されている方法のいずれかを使用して、Mspタンパク質を発現するこ
とができる。
細孔
本発明は、様々な細孔も提供する。本発明の細孔は、異なるヌクレオチドを高感度で識
別することができるので、配列決定など、核酸配列を特徴付けるには理想的である。驚く
べきことに、細孔は、DNAおよびRNA中の4種のヌクレオチドを区別することができ
る。本発明の細孔は、メチル化および非メチル化ヌクレオチドを区別することさえ可能で
ある。本発明の細孔の塩基分解能は驚くほど高い。細孔は、4種のDNAヌクレオチド全
てをほぼ完全に分離する。さらに、細孔は、細孔中での滞留時間および細孔を通る電流の
流れに基づいて、デオキシシチジンモノリン酸(dCMP)とメチルdCMPとを識別す
る。
本発明の細孔は、様々な条件下で異なるヌクレオチドを識別することもできる。具体的
には、細孔は、配列決定など、核酸の特徴付けに有利な条件下でヌクレオチドを識別する
ことができる。印加電位、塩濃度、緩衝液、温度および添加物(尿素、ベタインおよびD
TTなど)の存在を変更することによって、本発明の細孔が異なるヌクレオチドを識別で
きる程度を制御することができる。これによって、特に配列決定のときに、細孔の機能を
微調整できるようになる。これについては、以下で詳述する。本発明の細孔を使用して、
ヌクレオチド塩基毎ではなく、1つまたは複数のモノマーとの相互作用から核酸ポリマー
を同定することもできる。
本発明の細孔は、単離される、実質的に単離される、精製されるまたは実質的に精製さ
れることができる。本発明の細孔が、脂質または他の細孔など他のいかなる成分も全く含
まない場合、それは単離または精製されている。細孔が、意図する使用法に干渉すること
のない担体または希釈剤と混合されている場合、それは実質的に単離されている。例えば
、細孔が、脂質もしくは他の細孔など他の成分を10%未満、5%未満、2%未満または
1%未満含む形態で存在している場合、それは実質的に単離または実質的に精製されてい
る。あるいは、本発明の細孔は、脂質二重層中に存在することができる。
本発明の細孔は、個別のまたは単一の細孔として存在することができる。あるいは、本
発明の細孔は、2個以上の細孔の同種または異種集団で存在することができる。
ホモオリゴマー細孔
本発明は、本発明の同一の変異体モノマーを含むMspから得られるホモオリゴマー細
孔も提供する。好ましくは、ホモオリゴマー細孔は、表1、2および3に示した変異体の
1つを含む。本発明のホモオリゴマー細孔は、配列決定など、核酸を特徴付けるには理想
的である。本発明のホモオリゴマー細孔は、上述した利点のいずれかを有することができ
る。本発明の特異的なホモオリゴマー細孔の利点を、表1、2および3に示す。
ホモオリゴマー細孔は、任意の数の変異体モノマーを含有することができる。細孔は通
常、7、8、9または10個の同一の変異体モノマーを含む。好ましくは、細孔は、8個
の同一の変異体モノマーを含む。好ましくは、1つまたは複数(例えば2、3、4、5、
6、7、8、9または10個)の変異体モノマーが、上述のとおり化学修飾されている。
細孔を作る方法については、以下で詳述する。
ヘテロオリゴマー細孔
本発明は、本発明の変異体モノマーを少なくとも1つ含み、全8個のモノマーのうちの
少なくとも1つが他と異なっている、Mspから得られるヘテロオリゴマー細孔も提供す
る。本発明のヘテロオリゴマー細孔は、配列決定など、核酸を特徴付けるには理想的であ
る。ヘテロオリゴマー細孔は、当技術分野において公知の方法(例えばProtein Sci. 200
2 Jul;11(7):1813〜24頁)を使用して作成できる。
ヘテロオリゴマー細孔は、細孔を形成するのに十分なモノマーを含有する。モノマーは
、どんなタイプであってもよい。細孔は通常、7、8、9または10個のモノマーを含む
。好ましくは、細孔は、8個のモノマーを含む。
細孔は、(a)配列番号2に示される配列または(b)本発明の変異体モノマーに必要
とされる変異を持たないそのバリアント、を含めた少なくとも1つのモノマーを含むこと
ができる。適切なバリアントについては上述している。この実施形態において、好ましく
は、残りのモノマーは本発明の変異体モノマーである。したがって、細孔は、本発明の変
異体モノマーを9、8、7、6、5、4、3、2または1個含むことができる。
好ましい実施形態において、細孔は(a)1個の変異体モノマーおよび(b)7個の同
一のモノマーを含み、(a)の変異体モノマーは、(b)の同一のモノマーとは異なって
いる。好ましくは、(b)の同一のモノマーは、(i)配列番号2に示される配列または
(ii)本発明の変異体モノマーに存在する変異を持たないそのバリアントを含む。
好ましい細孔は、それだけには限らないが、以下のいずれかを含む:
(a)配列番号2に示される配列を含むモノマー7個および置換N90R、N90K、
N90Y、N90Q、N90WまたはN90Cを含む変異体モノマー1個。これらの細孔
は、内部の狭搾部に導入された単一の立体性アミノ酸(YもしくはW)、単一の荷電アミ
ノ酸(KもしくはR)または単一の反応性アミノ酸(C)を有する。
(b)配列番号2に示される配列を含むモノマー7個および置換N91R、N91K、
N91Y、N91Q、N91WまたはN91Cを含む変異体モノマー1個。これらの細孔
は、内部の狭搾部に導入された単一の立体性アミノ酸(YもしくはW)、単一の荷電アミ
ノ酸(KもしくはR)または単一の反応性アミノ酸(C)を有する。
(c)配列番号2に示される配列を含むモノマー7個および置換L88C、S103C
またはI105Cを含む変異体モノマー1個。これらの細孔は、細孔に導入された反応性
アミノ酸を有する。
別の好ましい実施形態において、モノマーの全て(すなわち10、9、8または7個の
モノマー)が、本発明の変異体モノマーであり、それらのうちの少なくとも1つが他と異
なっている。より好ましい実施形態において、細孔は、8個の本発明の変異体モノマーを
含み、それらのうちの少なくとも1つが他と異なっている。
上述の実施形態の全てにおいて、好ましくは、1つまたは複数(例えば2、3、4、5
、6、7、8、9または10個)の変異体モノマーが、上述のとおり化学修飾されている
。好ましくは、上記の好ましい細孔(a)〜(c)は、1つまたは複数の導入されたシス
テインに対して分子が付着することによって化学修飾されている。
細孔を作る方法については、以下で詳述する。
構築物を含む細孔
本発明は、本発明の構築物を少なくとも1つ含む細孔も提供する。本発明の構築物は、
Mspから得られる共有結合したモノマーを2個以上含む。換言すれば、構築物は、2個
以上のモノマーを含有しなければならない。細孔は、細孔を形成するのに十分な構築物お
よび、必要に応じて、モノマーを含有する。例えば、八量体の細孔は、(a)4個のモノ
マーを各々含む2個の構築物または(b)2個のモノマーおよび構築物の部分を形成しな
い6個のモノマーを含む1個の構築物を含むことができる。細孔中のモノマーの少なくと
も2つは、本発明の構築物の形態をしている。モノマーは、どんなタイプであってもよい
。細孔は通常、合計で7、8、9または10個のモノマーを含む(そのうちの少なくとも
2つは構築物中になければならない)。好ましくは、細孔は、8個のモノマーを含む(そ
のうちの少なくとも2つは構築物中になければならない)。
細孔は通常、(a)2個のモノマーを含む1個の構築物と(b)5、6、7または8個
のモノマーとを含む。構築物は、上述したもののいずれであってもよい。モノマーは、本
発明の変異体モノマーを含めて、上述したもののいずれであってもよい。
別の典型的な細孔は、本発明の構築物を2個以上(2、3または4個の本発明の構築物
)含む。そのような細孔は、細孔を形成するのに十分なモノマーをさらに含む。モノマー
は、上述したもののいずれであってもよい。本発明のさらなる細孔は、2個のモノマーを
含む構築物だけを含み、例えば細孔は、2個のモノマーを含む4、5、6、7または8個
の構築物から構成されてよい。本発明に記載の特定の細孔は、2個のモノマーを各々含む
4個の構築物を含む。構築物は、1個の構築物のうちの1個のモノマーしか細孔のバレル
または入口部に関与しないような構造を持つ細孔へとオリゴマー化することができる。通
常、その構築物の他のモノマーは、細孔のバレルまたは入口部の外側になる。例えば、本
発明の細孔は、2個のモノマーを含む5、6、7または8個の構築物を含むことができ、
これらの構築物ではバレルまたは入口部は8個のモノマーを含む。
上記のように、変異を構築物に導入することができる。変異は互い違いになっていても
よく、すなわち2個のモノマーを含む構築物の中でモノマー毎に変異が異なっており、そ
の構築物がホモオリゴマーとなって組織化され、その結果互い違いの修飾になる。換言す
れば、MutAとMutBを含むモノマーが融合され、組織化されてA−B:A−B:A
−B:A−B細孔が形成される。あるいは、変異は隣接していてもよく、すなわち同一の
変異が構築物中の2個のモノマーに導入され、次いでこれが異なる変異体モノマーとオリ
ゴマー化される。換言すれば、MutAを含むモノマーが融合され、続いてMutB含有
モノマーとオリゴマー化されることによって、A−A:B:B:B:B:B:Bが形成さ
れる。
構築物を含有する細孔中の1つまたは複数の本発明のモノマーは、上述のように化学修
飾されてよい。
個々のヌクレオチドを同定する方法
本発明は、個々のヌクレオチドを特徴付ける方法も提供する。本方法は、ヌクレオチド
が細孔と相互作用できるようにヌクレオチドを本発明の細孔と接触させるステップと、相
互作用の間に細孔を通る電流を測定し、それによってヌクレオチドを特徴付けるステップ
とを含む。したがって本発明は、個々のヌクレオチドのナノ細孔検出を含む。本発明は、
相互作用の間に細孔を通る電流を測定し、それによってヌクレオチドの同一性を決定する
ステップを含む、個々のヌクレオチドを同定する方法も提供する。本発明のいずれの細孔
も使用することができる。好ましくは本発明の細孔は、上述の分子アダプターで化学修飾
されている。
電流が、ヌクレオチドに特異的な形で細孔を通って流れる場合(すなわちヌクレオチド
と関連した特徴的な電流が、細孔を通って流れているのが検出される場合)、ヌクレオチ
ドは存在している。電流が、ヌクレオチドに特異的な形で細孔を通って流れない場合、ヌ
クレオチドは存在しない。
本発明を使用して、細孔を通る電流に影響する異なる効果に基づいて、類似構造のヌク
レオチドを区別することができる。ヌクレオチドが細孔と相互作用するときの電流振幅か
ら、個々のヌクレオチドを単一分子レベルで同定することができる。本発明を使用して、
特定のヌクレオチドがサンプル中に存在するか否かを決定することもできる。本発明を使
用して、サンプル中の特定のヌクレオチドの濃度を測定することもできる。
本方法は、本発明の細孔が膜に挿入されている任意の適切な膜/細孔系を使用して実施
することができる。本方法は通常、(i)本発明の細孔を含む人工膜、(ii)本発明の
細孔を含む単離された天然に存在する膜、または(iii)本発明に従って修飾された細
孔を発現している細胞を使用して実施される。好ましくは、本方法は人工膜を使用して実
施される。膜は、本発明の細孔に加えて、他の膜貫通および/または膜内タンパク質なら
びに他の分子を含むことができる。
膜は、イオン、ヌクレオチドおよび核酸のフローに対する障壁を形成する。本発明に従
って任意の膜を使用することができる。適切な膜は当技術分野において周知である。好ま
しくは、膜は両親媒性層である。両親媒性層とは、両親媒性分子(リン脂質など)から形
成される層であり、親水性と親油性の両方の特性を有する。両親媒性物質は、合成または
天然であってよい。両親媒性層は、単分子層または二重層であってよい。非天然の両親媒
性物質および単分子層を形成する両親媒性物質は、当技術分野において公知であり、例え
ばブロックコポリマーがある(Gonzalez-Perez et al., Langmuir, 2009, 25, 10447〜10
450頁)。
膜は、脂質二重層であってよい。本発明に従った使用に適している脂質二重層は、当技
術分野において公知の方法を使用して作ることができる。例えば、脂質二重層膜は、Mont
al and Mueller (1972)の方法を使用して形成することができる。脂質二重層は、国際出
願番号PCT/GB08/000563に記載の方法を使用して形成することもできる。
本発明の方法は、リン脂質、糖脂質、コレステロール、ミコール酸およびそれらの混合
物を含むがこれに限らない任意の膜脂質から形成される脂質二重層を使用して実施できる
。国際出願番号PCT/GB08/000563に記載のいずれの脂質も使用できる。
別の好ましい実施形態において、膜は固体層である。固体層は、生物起源ではないもの
である。換言すれば、固体層は、生物もしくは細胞などの生物学的環境、または生物学的
に利用可能な構造を合成的に製造した変形からは得られず、単離されない。固体層は、マ
イクロエレクトロニクス材料、絶縁材料(Si3N4、A1203およびSiOなど)、
有機および無機ポリマー(例えば、ポリアミド、テフロン(登録商標)などのプラスチッ
クまたは2成分付加硬化シリコーンゴムなどのエラストマ)、ならびにガラスを含むがこ
れに限らない有機および無機材料から形成することができる。固体層は、グラフェンなど
の単原子層またはほんの数原子の厚さしかない層から形成することができる。適切なグラ
フェン層は、国際出願番号PCT/US2008/010637(WO2009/035
647として公開)に開示されている。両親媒性層は、固体細孔を横切って形成できる。
これは、混成細孔形成として当技術分野に記載され得る(Hall et al., Nat Nanotechnol
., 2010, 5, 874〜877頁)。
脂質二重層などの膜に細孔を挿入する方法は、当技術分野において公知である。例えば
、細孔が脂質二重層に拡散し、脂質二重層に結合し機能状態へと組織化することによって
挿入されるように、細孔を、脂質二重層を含有する溶液中に精製された形態で懸濁するこ
とができる。あるいは、M.A. Holden, H. Bayley. J. Am Chem. Soc. 2005, 127, 6502〜
6503頁および国際出願番号PCT/GB2006/001057(WO2006/100
484として公開)に記載の「ピックアンドプレース」法を使用して、細孔を膜に直接挿
入することができる。
本発明の方法は通常、in vitroで実施される。
個々のヌクレオチド
個々のヌクレオチドは単一ヌクレオチドである。個々のヌクレオチドとは、ヌクレオチ
ド結合によって別のヌクレオチドまたは核酸に結合していないものである。ヌクレオチド
結合は、別のヌクレオチドの糖類に結合しているヌクレオチドのリン酸基のうちの1つを
含む。個々のヌクレオチドとは、通常、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20
、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも500、少なくと
も1000または少なくとも5000ヌクレオチドの別の核酸配列に、ヌクレオチド結合
によって結合していないものである。例えば、個々のヌクレオチドは、DNAまたはRN
A鎖など標的ポリヌクレオチド配列から消化されている。
本発明の方法を使用して、任意のヌクレオチドを同定することができる。ヌクレオチド
は、天然または人工であってよい。ヌクレオチドは通常、核酸塩基、糖および少なくとも
1つのリン酸基を含有する。核酸塩基は通常複素環である。適切な核酸塩基には、プリン
およびピリミジン、より具体的にはアデニン、グアニン、チミン、ウラシルおよびシトシ
ンがある。糖は通常、ペントース糖である。適切な糖には、それだけには限らないが、リ
ボースおよびデオキシリボースがある。ヌクレオチドは通常、リボヌクレオチドまたはデ
オキシリボヌクレオチドである。ヌクレオチドは通常、一リン酸塩、二リン酸塩または三
リン酸塩を含有する。
適切なヌクレオチドには、それだけには限らないが、アデノシン一リン酸(AMP)、
アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン三リン酸(ATP)、グアノシン一リン酸(
GMP)、グアノシン二リン酸(GDP)、グアノシン三リン酸(GTP)、チミジン一
リン酸(TMP)、チミジン二リン酸(TDP)、チミジン三リン酸(TTP)、ウリジ
ン一リン酸(UMP)、ウリジン二リン酸(UDP)、ウリジン三リン酸(UTP)、シ
チジン一リン酸(CMP)、シチジン二リン酸(CDP)、シチジン三リン酸(CTP)
、環状アデノシン一リン酸(cAMP)、環状グアノシン一リン酸(cGMP)、デオキ
シアデノシン一リン酸(dAMP)、デオキシアデノシン二リン酸(dADP)、デオキ
シアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシグアノシン一リン酸(dGMP)、デオキ
シグアノシン二リン酸(dGDP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)、デオキ
シチミジン一リン酸(dTMP)、デオキシチミジン二リン酸(dTDP)、デオキシチ
ミジン三リン酸(dTTP)、デオキシウリジン一リン酸(dUMP)、デオキシウリジ
ン二リン酸(dUDP)、デオキシウリジン三リン酸(dUTP)、デオキシシチジン一
リン酸(dCMP)、デオキシシチジン二リン酸(dCDP)およびデオキシシチジン三
リン酸(dCTP)がある。好ましくは、ヌクレオチドは、AMP、TMP、GMP、U
MP、dAMP、dTMP、dGMPまたはdCMPである。
ヌクレオチドは、リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸などの核酸配列の消化か
ら得ることができる。核酸配列は、当技術分野において公知の任意の方法を使用して消化
できる。適切な方法には、それだけには限らないが、酵素または触媒を使用する方法があ
る。核酸の触媒消化については、Deck et al., Inorg. Chem., 2002; 41: 669〜677頁
に開示されている。
単一の核酸配列に由来する個々のヌクレオチドを、連続して細孔と接触させて、その核
酸の全部または一部を配列決定することができる。核酸配列決定については、以下で詳述
する。
ヌクレオチドが核酸配列の消化から得られる場合、ヌクレオチドは通常修飾されていな
い。あるいは、ヌクレオチドが修飾または損傷を受けている場合がある。ヌクレオチドは
通常、メチル化または酸化されている。ヌクレオチドを、明示用標識で標識することがで
きる。明示用標識は、ヌクレオチドを検出できるようにするどんな適切な標識であっても
よい。適切な標識には、蛍光分子、放射性同位元素(例えば125I、35S)およびビ
オチンなどのリンカーがある。
ヌクレオチドは通常、任意の適切な生体サンプル中に存在している。適切な生体サンプ
ルについては、上述している。
細孔とヌクレオチドとの相互作用
膜のいずれかの面で、ヌクレオチドを細孔と接触させることができる。膜のいずれかの
面で、ヌクレオチドを細孔に導入することができる。ヌクレオチドが膜の反対の面へと細
孔を通れる膜の面と、ヌクレオチドを接触させることができる。例えば、ヌクレオチドを
細孔の端部と接触させると、それによりその自然環境において、イオンもしくは小分子(
ヌクレオチドなど)は、ヌクレオチドが細孔を通れるような細孔のバレルまたはチャネル
へと侵入できるようになる。そのような場合、ヌクレオチドは、細孔のバレルまたはチャ
ネルを通って膜を通るときに、細孔および/またはアダプターと相互作用する。あるいは
、ヌクレオチドを、アダプターを介してまたはアダプターと共に細孔と相互作用させ、細
孔から解離させ、膜の同じ面に留まらせる膜の面とヌクレオチドとを接触させることがで
きる。本発明は、アダプターの位置が固定されている細孔を提供する。結果として、好ま
しくは、ヌクレオチドは、アダプターがヌクレオチドと相互作用できるように細孔の端部
と接触することになる。
ヌクレオチドは、任意の様式でおよび任意の部位で細孔と相互作用することができる。
上述のとおり、好ましくは、ヌクレオチドは、アダプターを介してまたはアダプターと共
に細孔に可逆的に結合する。最も好ましくは、ヌクレオチドは、膜を横切って細孔を通る
ときに、アダプターを介してまたはアダプターと共に細孔に可逆的に結合する。ヌクレオ
チドは、膜を横切って細孔を通るときに、アダプターを介してまたはアダプターと共に細
孔のバレルまたはチャネルに可逆的に結合することもできる。
ヌクレオチドと細孔とが相互作用している間に、ヌクレオチドは、ヌクレオチドに特異
的な形で、細孔を通る電流の流れに影響を及ぼす。例えば、特定のヌクレオチドは、特定
の平均時間および特定の範囲で細孔を通る電流の流れを減少させることになる。換言すれ
ば、細孔を通る電流の流れは、特定のヌクレオチドに対して特徴的である。対照実験を実
施して、特定のヌクレオチドが細孔を通る電流の流れに及ぼす影響を決定することができ
る。試験サンプルにおいて本発明の方法を実施した結果を、次いでその対照実験から得ら
れた結果と比較して、サンプル中にある特定のヌクレオチドを同定するまたはサンプル中
に特定のヌクレオチドが存在するか否かを決定することができる。細孔を通って流れる電
流が特定のヌクレオチドを示す形で影響を受ける頻度を使用して、サンプル中にあるヌク
レオチドの濃度を決定することができる。サンプル中の異なるヌクレオチドの比率も算出
できる。例えば、メチルdCMPに対するdCMPの比率を算出できる。
装置
本方法は、本発明の細孔が膜に挿入されている膜/細孔系を調査するのに適切ないずれ
かの装置を使用して実施することができる。本方法は、ナノ細孔検出に適切ないずれかの
装置を使用して実施することができる。例えば、装置は、水溶液を含むチャンバおよびチ
ャンバを2つのセクションに分離する障壁を含む。障壁は、細孔を含有する膜が形成され
る開口部を有する。ヌクレオチドは、チャンバにヌクレオチドを導入することによって細
孔と接触できる。ヌクレオチドは、チャンバの2つのセクションのいずれかに導入するこ
とができる。
本方法は、国際出願番号PCT/GB08/000562に記載の装置を使用して実施
できる。
本発明の方法は、ヌクレオチドと相互作用している間に、細孔を通る電流を測定するこ
とを含む。したがって、装置は、電位を印加し、膜および細孔の電気シグナルを測定可能
な電気回路も含む。本方法は、パッチクランプまたは電圧クランプを使用して実施するこ
とができる。好ましくは、本方法は電圧クランプの使用を含む。
サンプル
ヌクレオチドは、任意の適切なサンプル中に存在する。本発明は通常、ヌクレオチドを
含有することが既知であるまたは含有することが疑われるサンプルに対して実施される。
本発明は、同一性が未知の1つまたは複数のヌクレオチドを含有するサンプルに対して実
施できる。あるいは、本発明をサンプルに対して実施して、サンプル中の存在が既知であ
るまたは予想される1つまたは複数のヌクレオチドの同一性を確認することができる。
サンプルは、生体サンプルであってよい。本発明は、任意の生物または微生物から得た
または抽出したサンプルに対してin vitroで実施できる。生物または微生物は通
常、原核生物または真核生物であり、通常は5界(植物界、動物界、真菌、モネラ界およ
び原生生物界)のうちの1つに属している。本発明は、任意のウイルスから得たまたは抽
出したサンプルに対してin vitroで実施できる。好ましくは、サンプルは液体サ
ンプルである。サンプルは通常、患者の体液を含む。サンプルは、尿、リンパ、唾液、粘
液または羊水であってよいが、好ましくは血液、血漿または血清である。通常、サンプル
はヒト起源であるが、あるいは例えばウマ、ウシ、ヒツジまたはブタなどの商業的に飼育
された動物由来など別の哺乳動物由来でもよく、あるいはネコまたはイヌなどのペットで
もよい。あるいは、植物起源のサンプルは通常、穀物、豆類、果物または野菜、例えば小
麦、大麦、オート麦、カノーラ、トウモロコシ、大豆、米、バナナ、リンゴ、トマト、ジ
ャガイモ、ブドウ、タバコ、インゲン豆、レンズ豆、サトウキビ、ココア、綿、茶、コー
ヒーなどの商品作物から得られる。
サンプルは、非生体サンプルであってもよい。好ましくは、非生体サンプルは、液体サ
ンプルである。非生体サンプルの例には、外科輸液、水(飲料水、海水または河川水など
)、および実験室試験用の試薬がある。
サンプルは通常、アッセイされる前に、例えば遠心分離によってまたは不要な分子もし
くは細胞(赤血球など)を除去する膜を通すことによって処理される。サンプルは、採取
されると同時に直ちに測定されてもよい。サンプルは通常、アッセイ前に、好ましくは−
70℃より低い温度に貯蔵されてもよい。
条件
本発明の方法は、ヌクレオチドと相互作用している間に、細孔を通る電流を測定するこ
とを含む。膜貫通タンパク質細孔を通るイオン電流を測定するための適切な条件は、当技
術分野において公知であり、実施例において開示されている。本方法は、膜および細孔に
印加される電圧により実施される。使用される電圧は通常、−400mV〜+400mV
である。好ましくは、使用される電圧は、−400mV、−300mV、−200mV、
−150mV、−100mV、−50mV、−20mVおよび0mVから選択される下限
値、ならびに+10mV、+20mV、+50mV、+100mV、+150mV、+2
00mV、+300mVおよび+400mVからそれぞれ独立に選択される上限値の範囲
にある。より好ましくは、使用される電圧は、100mV〜240mVの範囲、最も好ま
しくは160mV〜240mVの範囲にある。印加電位を高めて使用することにより、本
発明の細孔による異なるヌクレオチドの識別を高めることが可能である。
本方法は通常、任意のアルカリ金属塩化物塩の存在下で実施される。上述した例示的な
装置において、塩は、チャンバ内の水溶液中に存在する。塩化カリウム(KCl)、塩化
ナトリウム(NaCl)または塩化セシウム(CsCl)が、通常使用される。好ましく
はKClである。塩濃度は通常、0.1〜2.5M、0.3〜1.9M、0.5〜1.8
M、0.7〜1.7M、0.9〜1.6M、または1M〜1.4Mである。好ましくは、
塩濃度は、150mM〜1Mである。高塩濃度は高いシグナル対ノイズ比をもたらし、ヌ
クレオチドの存在を示す電流を、正常電流のバックグラウンド変動に対して同定すること
が可能になる。ヌクレオチドの検出が、核酸を配列決定するときなど酵素の存在下で実施
される場合、低塩濃度を使用できる。これについては、以下で詳述する。
本方法は通常、緩衝液の存在下で実施される。上述した例示的な装置において、緩衝液
は、チャンバ内の水溶液中に存在する。本発明の方法において、どんな緩衝液も使用する
ことができる。1つの適切な緩衝液は、トリス−HCl緩衝液である。本方法は通常、p
H4.0〜12.0、4.5〜10.0、5.0〜9.0、5.5〜8.8、6.0〜8
.7または7.0〜8.8もしくは7.5〜8.5で実施される。好ましくは、使用され
るpHは約7.5である。
本方法は通常、0℃〜100℃、15℃〜95℃、16℃〜90℃、17℃〜85℃、
18℃〜80℃、19℃〜70℃または20℃〜60℃で実施される。本方法は、室温で
実施されてよい。好ましくは、方法は、約37℃など酵素機能を補助する温度で実施され
る。
核酸を特徴付ける方法
本発明は、標的核酸配列を特徴付ける方法も提供する。標的核酸配列の1つまたは複数
の特徴を決定することができる。本方法は、標的核酸配列の2、3、4または5つ以上の
特徴の測定を含むことができる。好ましくは、1つまたは複数の特徴が、(i)標的核酸
配列の長さ、(ii)標的核酸配列の同一性、(iii)標的核酸配列の配列、(iv)
標的核酸配列の二次構造および(v)標的核酸配列が修飾されているか否か、から選択さ
れる。(i)〜(v)の任意の組合せを、本発明に従って決定することができる。
(i)に関して、核酸配列の長さは、標的核酸配列と細孔との相互作用の数を使用して
測定できる。
(ii)に関して、核酸配列の同一性はいくつかの方法で測定できる。核酸配列の同一
性は、標的核酸配列の配列測定と併せてまたは標的核酸配列の配列測定なしに測定できる
。前者は直接的であり;核酸が配列決定され、それによって同定される。後者は、いくつ
かの方法で行うことができる。例えば、核酸配列中の特定のモチーフの存在を、(ポリヌ
クレオチドの残りの配列を測定することなく)測定できる。あるいは、本方法における特
定の電気シグナルの測定により、特定の起源に由来する標的核酸配列を同定することがで
きる。
(iii)に関して、核酸配列の配列は、前記のとおり決定できる。適切な配列決定方
法、特に電気的な測定を使用する方法は、Stoddart D et al., Proc Natl Acad Sci, 12
;106(19):7702〜7頁、Lieberman KR et al, J Am Chem Soc. 2010;132(50):17961〜7
2頁および国際出願第WO 2000/28312に記載されている。
(iv)に関して、二次構造は多様な方法で測定できる。例えば、二次構造は、滞留時
間の変化または細孔を通る電流の流れの変化を使用して測定できる。
本発明は、標的核酸配列の配列を推定する方法も提供する。本発明はさらに、標的核酸
配列を配列決定する方法を提供する。
核酸は、ヌクレオチドを2個以上含む高分子である。ヌクレオチドは、上述したそれの
いずれであってもよい。
一実施形態において、本方法は、(a)核酸結合タンパク質が、本発明の細孔を通る標
的配列の移動を制御し、標的配列中のヌクレオチドの一部が細孔と相互作用できるように
、標的配列を細孔およびタンパク質と接触させるステップと;(b)各相互作用の間に細
孔を通る電流を測定し、それによって標的配列の配列を推定するまたは配列決定するなど
標的配列を特徴付けるステップとを含む。したがって、本方法は、ヌクレオチドがバレル
またはチャネルを通る際に標的核酸配列中のヌクレオチドの一部をナノ細孔検出して、配
列決定など、標的配列を特徴付けることを含む。
別の実施形態において、本方法は、(a)エキソヌクレアーゼが標的配列の一方の末端
から個々のヌクレオチドを消化するように、標的配列を本発明の細孔およびエキソヌクレ
アーゼと接触させるステップと;(b)ヌクレオチドがアダプターと相互作用できるよう
にヌクレオチドを細孔と接触させるステップと;(c)相互作用の間に細孔を通る電流を
測定し、それによってヌクレオチドを特徴付けるステップと;(d)標的配列の同じ末端
でステップ(a)〜(c)を繰り返し、それによって標的配列を特徴付けるステップとを
含む。したがって、本方法は、標的核酸配列中のヌクレオチドの一部を連続してナノ細孔
検出して、標的配列を特徴付けることを含む。好ましい実施形態において、本方法は、標
的核酸配列を配列決定することに関し、ステップ(a)はヌクレオチドの同一性を決定す
ることを含む。個々のヌクレオチドについては、上に記している。
本発明の細孔は、ヌクレオチドの識別が改善されているので、これらの方法に特に適し
ている。具体的には、それらは、電流範囲を増加させ(異なるヌクレオチドの識別が容易
になる)、状態変動を減少させる(シグナル対ノイズ比が高まる)。加えて、前の実施形
態に関連して、細孔を通って核酸が移動するにつれて電流に関与するヌクレオチドの数は
減少する。これにより、核酸が細孔を通って移動する際に観察される電流と核酸配列との
直接的な関係を同定することがさらに容易になる。好ましくは、本発明の細孔は、上記の
ように(1)分子アダプターおよび/または(2)核酸結合タンパク質もしくはエキソヌ
クレアーゼで化学修飾されている。
この方法を使用して、標的核酸配列の全部または部分だけを、配列決定など、特徴付け
ることができる。核酸配列は、任意の長さであってよい。例えば、核酸配列は、長さ少な
くとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200
、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも400または、少なくとも500ヌ
クレオチドであってよい。核酸配列は、長さ1000ヌクレオチド以上または5000ヌ
クレオチド以上であってよい。核酸配列は、天然または人工であってよい。例えば、本方
法を使用して、製造したオリゴヌクレオチドの配列を検証することができる。本方法は通
常、in vitroで実施される。
本方法は、細孔が膜に挿入されている任意の適切な膜/細孔系を使用して実施すること
ができる。本方法は通常、上で開示したシステム、装置または条件のいずれかを使用して
実施することができる。
上述のとおり、温度が上昇した場合、低塩濃度で、優れたヌクレオチド識別を得ること
ができる。溶液温度を上げることに加えて、酵素活性にとって適切な条件を維持しながら
、溶液の伝導性を高めるために採用できるいくつかの他の戦略がある。そのような戦略の
1つは、脂質二重層を使用して、塩溶液を異なる2つの濃度に分けることである(酵素側
に低塩濃度、反対側に高濃度の塩)。この手法の1つの例は、膜のシス側に200mMの
KClおよびトランスチャンバ中に500mMのKClを使用することである。これら条
件において、細孔を通る伝導性は、通常の条件下で400mMのKClとおおよそ同等で
あると予想され、酵素は、シス側に配置された場合、200mMの影響しか受けない。非
対称の塩条件を使用する別の考えられる利益は、細孔を横切って誘導される浸透圧勾配で
ある。この正味の水の流れを使用して、検出用の細孔へとヌクレオチドを引き込める可能
性がある。類似の効果は、スクロース、グリセリンまたはPEGなど中性浸透圧調節物質
を使用して得ることができる。別の可能性は、比較的低レベルのKClを含む溶液を使用
し、酵素活性に対して破壊的でない追加的な電荷を担持している種を利用することである
分析される標的配列は、公知の保護化学物質と合わせて、バルク溶液中にある間に結合
タンパク質またはエキソヌクレアーゼによって受ける作用から配列を保護することができ
る。次いで細孔を使用して、保護化学物質を取り除くことができる。これは、印加電位の
もとで細孔、結合タンパク質もしくは酵素にハイブリダイズされない保護基を使用するこ
とによって(WO2008/124107)、または細孔に対して近接近に保持されてい
るときに、結合タンパク質もしくは酵素によって取り除かれる保護化学物質を使用するこ
とによって得ることができる(J Am Chem Soc. 2010 Dec 22;132(50):17961〜72頁)。
鎖配列決定
鎖配列決定は、細孔を通る核酸ポリマーの段階的な移行の制御を含む。本発明の細孔は
、鎖配列決定に使用できる。本発明の1つの方法は、細孔を通る標的配列の移動を制御す
るために核酸結合タンパク質を使用する。そのようなタンパク質の例には、それだけには
限らないが、ヌクレアーゼ、ポリメラーゼ、トポイソメラーゼ、リガーゼおよびヘリカー
ゼなどの核酸ハンドリング酵素ならびにSCOP(タンパク質の立体構造分類)によって
核酸結合タンパク質スーパーファミリー(50249)に分類されているものなどの非触
媒的結合タンパク質がある。結合タンパク質は、一本鎖結合タンパク質(SSB)であっ
てよい。
核酸は、ヌクレオチドを2個以上含む高分子である。タンパク質に結合される核酸は、
任意のヌクレオチドの任意の組合せを含むことができる。ヌクレオチドは、上述したそれ
らいずれであってもよい。核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA
)であってよい。核酸は、ペプチド核酸(PNA)、グリセリン核酸(GNA)、トレオ
ース核酸(TNA)、ロックト核酸(LNA)またはヌクレオチド側鎖を持つ他の合成ポ
リマーなど当技術分野において公知の任意の合成核酸であってもよい。タンパク質に結合
される核酸は、cDNA、RNA、GNA、TNAもしくはLNAなどの一本鎖、または
DNAなどの二本鎖であってよい。二本鎖DNAが、タンパク質に結合される前に一本鎖
へと解離していれば、一本鎖核酸に結合するタンパク質を使用して、二本鎖DNAを配列
決定することができる。
好ましくは、核酸結合タンパク質は核酸ハンドリング酵素である。核酸ハンドリング酵
素は、核酸と相互作用でき、核酸の少なくとも1つの特性を修飾できるポリペプチドであ
る。酵素は、核酸を切断することによってこれを修飾し、個々のヌクレオチドまたは短い
ヌクレオチド鎖(ジ−もしくはトリヌクレオチドなど)を形成することができる。酵素は
、核酸を正しい向きに配向させるまたは特定の位置に移動させることによってこれを修飾
できる。核酸ハンドリング酵素は、標的配列に結合する能力および細孔を通る移動を制御
する能力がありさえすれば、酵素活性を示す必要はない。例えば、酵素は、修飾して酵素
活性を取り除かれてもよく、または酵素として作用できない条件で使用されてもよい。そ
のような条件については、以下で詳述する。
好ましくは、核酸ハンドリング酵素は、核酸分解酵素から得られる。より好ましくは、
酵素構築物において使用される核酸ハンドリング酵素は、酵素分類(EC)群3.1.1
1、3.1.13、3.1.14、3.1.15、3.1.16、3.1.21、3.1
.22、3.1.25、3.1.26、3.1.27、3.1.30および3.1.31
のいずれかのメンバーから得られる。酵素は、国際出願番号PCT/GB10/0001
33(WO 2010/086603として公開)に開示されているそれらのいずれかで
あってよい。
好ましい酵素は、ポリメラーゼ、エキソヌクレアーゼ、ヘリカーゼおよびトポイソメラ
ーゼ(ジャイレースなど)である。適切な酵素には、それだけには限らないが、大腸菌(
E. coli)由来のエキソヌクレアーゼI(配列番号6)、大腸菌(E. coli)由来のエキソ
ヌクレアーゼIII酵素(配列番号8)、T.サーモフィラス(T. thermophilus)由来
のRecJ(配列番号10)およびバクテリオファージラムダエキソヌクレアーゼ(配列
番号12)ならびにそれらのバリアントがある。配列番号10に示される配列またはその
バリアントを含む3つのサブユニットが相互作用して、三量体エキソヌクレアーゼを形成
する。好ましくは、酵素はPhi29DNAポリメラーゼ(配列番号4)に基づく。
配列番号4、6、8、10または12のバリアントは、配列番号4、6、8、10また
は12とは異なるアミノ酸配列を有するが、核酸結合能を保持している酵素である。バリ
アントは、核酸の結合を促進するならびに/または高塩濃度および/もしくは室温での活
性を促進する修飾を含むことができる。
好ましくは、バリアントは、配列番号4、6、8、10または12のアミノ酸配列の全
長にわたってアミノ酸同一性に基づいて、その配列と少なくとも50%相同になる。より
好ましくは、バリアントポリペプチドは、アミノ酸同一性に基づいて、配列番号4、6、
8、10もしくは12のアミノ酸配列と全配列にわたって少なくとも55%、少なくとも
60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、
少なくとも85%、少なくとも90%およびより好ましくは、少なくとも95%、97%
または99%相同であり得る。200以上(例えば230、250、270または280
以上)の連続するアミノ酸区間にわたって、少なくとも80%(例えば少なくとも85%
、90%または95%)のアミノ酸同一性が存在し得る(「厳密な相同性」)。相同性は
、上述のとおりに決定される。バリアントは、配列番号2を参照して、上述した方法のい
ずれかで、野生型配列と異なることができる。酵素は、上述のとおり細孔に共有結合され
てよい。
ヌクレオチドが細孔の検出部分に達する系列において障害の可能性が全くないので、酵
素は、個々のヌクレオチド配列決定の場合ほど細孔内腔に近接近する必要がない。
一本鎖DNA配列決定のための2つの戦略は、ナノ細孔を通してDNAをシスからトラ
ンスへ、およびトランスからシスへと印加電位に伴ってまたは反対に移行させることであ
る。鎖配列決定に最も有利な機序は、印加電位の下でナノ細孔を通る一本鎖DNAの移行
を制御することである。二本鎖DNA上で漸進的または進行的に作用するエキソヌクレア
ーゼを細孔のシス側で使用して、残った一本鎖を印加電位の下で送り込むことができ、ま
たはトランス側で使用して、逆電位の下で送り込むことができる。同様に、二本鎖DNA
を巻き戻すヘリカーゼも、類似の方式で使用できる。印加電位とは反対への鎖の移行を必
要とする配列決定応用の可能性もあるが、DNAは最初に逆電位または無電位の下で酵素
に「捕われ」なければならない。次いで結合した後に電位を切り替えて、鎖は細孔を通っ
てシスからトランスへと通過し、電流の流れによって伸びた立体構造で保持されることに
なる。一本鎖DNAエキソヌクレアーゼまたは一本鎖DNA依存的ポリメラーゼが分子モ
ーターとして作用して、移行したばかりの一本鎖を段階的に制御する方式で、印加電位と
は反対方向にトランスからシスへと細孔を通して引き戻すことができる。
エキソヌクレアーゼに基づく方法
一実施形態において、標的核酸配列を特徴付ける方法は、標的配列をエキソヌクレアー
ゼ酵素と接触させるステップを含む。上述したエキソヌクレアーゼ酵素のいずれも、本方
法で使用できる。エキソヌクレアーゼは、標的配列の一方の端から個々のヌクレオチドを
遊離させる。酵素は、上述のとおり細孔に共有結合されてよい。
エキソヌクレアーゼは、通常核酸配列の一方の末端を掴み、その末端から一度に1ヌク
レオチドずつ配列を消化する酵素である。エキソヌクレアーゼは、5’から3’方向にま
たは3’から5’方向に核酸を消化することができる。エキソヌクレアーゼが結合する核
酸の末端は通常、使用される酵素の選択によっておよび/または当技術分野において公知
の方法を使用して決定される。通常、核酸配列のいずれかの末端にあるヒドロキシル基ま
たはキャップ構造を使用して、核酸配列の特定の末端に対するエキソヌクレアーゼの結合
を防止するまたは促進する。
上述のとおり、本方法は、ヌクレオチドの一部を特徴付けまたは同定できる速度でヌク
レオチドが核酸の末端から消化されるように、核酸配列をエキソヌクレアーゼと接触させ
るステップを含む。これを行う方法は、当技術分野で周知である。例えば、高速液体クロ
マトグラフィー(HPLC)を使用して同定できるように、エドマン分解を使用してポリ
ペプチドの末端から単一のアミノ酸を連続的に消化する。本発明において相同な方法を使
用することができる。
エキソヌクレアーゼが機能する速度は通常、野生型エキソヌクレアーゼの最適な速度よ
り遅い。本発明の方法におけるエキソヌクレアーゼの活性の適切な速度は、1秒につき0
.5〜1000ヌクレオチド、1秒につき0.6〜500ヌクレオチド、1秒につき0.
7〜200ヌクレオチド、1秒につき0.8〜100ヌクレオチド、1秒につき0.9〜
50ヌクレオチド、または1秒につき1〜20もしくは10ヌクレオチドの消化を含む。
好ましくは、速度は1秒につき1、10、100、500または1000ヌクレオチドで
ある。エキソヌクレアーゼ活性の適切な速度は、様々な方法で得ることができる。例えば
、活性の最適速度が低下したバリアントエキソヌクレアーゼを、本発明に従って使用でき
る。
MspおよびPhi29DNAポリメラーゼ
好ましい実施形態において、鎖配列決定などの特徴付けは、Mspから得られる細孔お
よびPhi29DNAポリメラーゼを使用して実施される。本方法は、(a)Phi29
DNAポリメラーゼがMspから得られる細孔を通る標的配列の移動を制御し、標的配列
中のヌクレオチドの一部が細孔と相互作用するように、標的配列を細孔およびポリメラー
ゼと接触させるステップと、(b)各相互作用の間に細孔を通る電流を測定し、それによ
って配列を決定するなど、標的配列を特徴付けるステップとを含み、ステップ(a)およ
び(b)は細孔に印加される電圧により実施される。標的配列がPhi29DNAポリメ
ラーゼおよびMspから得られる細孔と接触されるとき、標的配列は最初にPhi29D
NAポリメラーゼと複合体を形成する。電圧が細孔に印加されるとき、標的配列/Phi
29DNAポリメラーゼ複合体は細孔と複合体を形成し、細孔を通る標的配列の移動を制
御する。
この実施形態には、予想外の利点が3つある。第1に、商業的に実現可能でありなおか
つ有効な配列決定を可能にする速度で、標的配列が細孔を通って移動する。標的配列は、
溶血素細孔を通って移動するより速くMsp細孔を通って移動する。第2に、核酸が細孔
を通って移動する際に、電流範囲の増加が観察され、より容易に配列を決定できるように
なる。第3に、特異的細孔とポリメラーゼを一緒に使用する場合、電流変動の減少が観察
され、それによってシグナル対ノイズ比が高まる。
上述した任意の核酸配列を、特徴付けまたは配列決定することができる。好ましくは、
核酸配列の少なくとも一部は二本鎖である。
細孔は、上述した細孔のいずれであってもよい。好ましくは、細孔は本発明の細孔であ
る。細孔は、配列番号2、16、17または18で示される配列またはそのバリアントを
含む8個のモノマーを含むことができる。細孔は、本発明の変異のどれも含む必要はない
野生型Phi29DNAポリメラーゼは、ポリメラーゼ活性およびエキソヌクレアーゼ
活性を有する。これは、適当な条件下で二本鎖核酸をほどくこともできる。したがって、
本酵素は3つのモードで作動できる。これについては、以下で詳述する。
Phi29DNAポリメラーゼは、配列番号4に示される配列またはそのバリアントを
含むことができる。配列番号4のバリアントは、配列番号4とは異なるアミノ酸配列を有
するが、核酸結合活性を保持している酵素である。バリアントは、後述する3つのモード
の少なくとも1つで作動しなければならない。好ましくは、バリアントは3つ全てのモー
ドで作動する。バリアントは、核酸の処理を促進するならびに/または高塩濃度および/
もしくは室温での活性を促進する修飾を含むことができる。
好ましくは、バリアントは、アミノ酸同一性に基づいて、配列番号4のアミノ酸配列と
その全長にわたって少なくとも40%相同になる。より好ましくは、バリアントポリペプ
チドは、アミノ酸同一性に基づいて、配列番号4のアミノ酸配列と全配列にわたって少な
くとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも7
0%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%およ
びより好ましくは、少なくとも95%、97%または99%相同であり得る。200以上
(例えば230、250、270または280以上)の連続するアミノ酸区間にわたって
、少なくとも80%(例えば少なくとも85%、90%または95%)のアミノ酸同一性
が存在し得る(「厳密な相同性」)。相同性は、上述のとおりに決定される。バリアント
は、配列番号2を参照して、上述した方法のいずれかで、野生型配列と異なることができ
る。酵素は、上述のように細孔に共有結合されてよい。
上述したシステム、装置または条件のいずれかを、この好ましい実施形態に従って使用
できる。塩濃度は通常0.15M〜0.6Mである。好ましくは、塩はKClである。
本方法は、Phi29DNAポリメラーゼの3つのモードに基づいて、3つの好ましい
方法の1つで実施され得る。各方法は、配列を校正する方法を含む。第1に、好ましくは
、本方法はポリメラーゼとしてPhi29DNAポリメラーゼを使用して実施される。こ
の実施形態において、ポリメラーゼが、印加電圧により生じる電場とは反対方向に細孔を
通して標的配列を移動させるように、ステップ(a)および(b)が遊離ヌクレオチドと
酵素補因子の存在下で実施される。標的配列は、5’から3’の方向で移動する。遊離ヌ
クレオチドは、上述した個々のヌクレオチドのいずれか1つまたは複数であってよい。酵
素補因子は、Phi29DNAポリメラーゼがポリメラーゼまたはエキソヌクレアーゼと
して機能できるようにする因子である。好ましくは、酵素補因子は二価金属陽イオンであ
る。好ましくは、二価金属陽イオンは、Mg2+、Mn2+、Ca2+またはCo2+
ある。最も好ましくは、酵素補因子はMg2+である。好ましくは、本方法は(c)ポリ
メラーゼが、印加電圧により生じる電場に伴って(すなわち3’から5’方向に)細孔を
通して標的配列を移動させ、標的配列中のヌクレオチドの一部が細孔と相互作用するよう
に、遊離ヌクレオチドを取り除くステップと、(d)各相互作用の間に細孔を通る電流を
測定し、それによってステップ(b)において得られた標的配列の配列を校正するステッ
プとをさらに含み、ステップ(c)および(d)もまた細孔に印加される電圧により実施
される。
第2に、好ましくは、本方法はエキソヌクレアーゼとしてPhi29DNAポリメラー
ゼを使用して実施される。この実施形態において、ポリメラーゼが、印加電圧により生じ
る電場に伴って細孔を通して標的配列を移動させるように、ステップ(a)および(b)
が、遊離ヌクレオチドの非存在下および酵素補因子の存在下で実施される。標的配列は、
3’から5’の方向に移動する。好ましくは、本方法は、(c)ポリメラーゼが、印加電
圧により生じる電場と反対方向に(すなわち5’から3’方向に)細孔を通して標的配列
を移動させ、標的配列中のヌクレオチドの一部が細孔と相互作用するように、遊離ヌクレ
オチドを添加するステップと、(d)各相互作用の間に細孔を通る電流を測定し、それに
よってステップ(b)において得られた標的配列の配列を校正するステップとをさらに含
み、ステップ(c)および(d)もまた細孔に印加される電圧により実施される。
第3に、好ましくは、本方法は、アンジッピングモードでPhi29DNAポリメラー
ゼを使用して実施される。この実施形態において、ポリメラーゼが、印加電圧により生じ
る電場と共に細孔を通る標的配列の移動を制御するように(ほどかれるように)、ステッ
プ(a)および(b)が、遊離ヌクレオチドの非存在下および酵素補因子の非存在下で実
施される。この実施形態において、ポリメラーゼは、印加電圧の影響下で標的配列があま
りに速く細孔を通って移動することを防止する制動装置のように作用する。好ましくは、
本方法は、(c)標的配列がステップ(a)および(b)における方向とは反対方向に細
孔を通って移動し(すなわち、再アニールし)、標的配列中のヌクレオチドの一部が細孔
と相互作用するように、細孔に印加される電圧を下げるステップと、(d)各相互作用の
間に細孔を通る電流を測定し、それによってステップ(b)において得られた標的配列の
配列を校正するステップとをさらに含み、ステップ(c)および(d)もまた細孔に印加
される電圧により実施される。
本発明は、標的核酸配列を配列決定するためのセンサーを形成する方法であって、(a
)標的核酸配列の存在下でMspから得られる細孔をPhi29DNAポリメラーゼと接
触させるステップと、(b)細孔に電圧を印加して、細孔とポリメラーゼとの複合体を形
成させるステップとを含み、それによって標的核酸配列を配列決定するためのセンサーを
形成する方法も提供する。本発明は、Phi29DNAポリメラーゼの活性速度を高める
方法であって、核酸配列の存在下でPhi29DNAポリメラーゼをMspから得られる
細孔と接触させるステップと、細孔に電圧を印加して細孔とポリメラーゼとの複合体を形
成させるステップとを含み、それによって、Phi29DNAポリメラーゼの活性速度を
高める方法をさらに提供する
キット
本発明は、配列決定など、標的核酸配列を特徴付けるためのキットも提供する。1つの
キットは、(a)本発明の細孔および(b)核酸ハンドリング酵素を含む。別のキットは
、(a)Mspから得られる細孔および(b)Phi29DNAポリメラーゼを含む。本
発明の方法を参照して上述したどの実施形態も本発明のキットに同程度に適用できる。
本発明のキットは、前述の実施形態のいずれかを実施可能にする1つまたは複数の他の
試薬または機器を追加的に含むことができる。そのような試薬または機器には、以下の1
つまたは複数が含まれる:適切な緩衝液(複数可)(水溶液)、対象からサンプルを採取
する手段(注射針を備える容器または機器など)、ポリヌクレオチド配列を増幅および/
または発現させる手段、上で定義した膜または電圧もしくはパッチクランプ装置。試薬は
、液体サンプルで試薬を再懸濁するような乾燥状態でキット中に存在することができる。
場合によっては、キットは、本発明の方法でキットを使用することが可能になる説明書、
または本方法を使用できる患者に関する詳細を含むこともできる。キットは、場合によっ
てはヌクレオチドを含むことができる。
装置
本発明は、配列決定など、サンプル中の標的核酸配列を特徴付けるための装置も提供す
る。装置は、(a)本発明の複数の細孔および(b)複数の核酸ハンドリング酵素を含む
ことができる。あるいは、本発明は、Mspから得られる複数の細孔および複数のPhi
29DNAポリメラーゼを含むことができる。装置は、アレイまたはチップなど分析物分
析用のどんな通常装置であってもよい。
好ましくは、装置は、
複数の細孔を支持することができ、細孔および酵素を使用して核酸の特徴付けまたは配
列決定を行うように操作できるセンサーデバイスと;
− 特徴付けまたは配列決定を行うための材料保持用の少なくとも1つの貯蔵部と;
− 少なくとも1つの貯蔵部からセンサーデバイスへと制御可能に材料を供給するよう
構成された流体系と;
− それぞれのサンプルを受けるための複数の容器とを含み、流体系は、容器からセン
サーデバイスへと選択的にサンプルを供給するよう構成されている。
装置は、国際出願番号PCT/GB10/000789(WO 2010/122293
として公開)、国際出願番号PCT/GB10/002206(未公開)または国際出願
番号PCT/US99/25679(WO 00/28312として公開)に記載される
装置のいずれかであってよい。
以下の実施例は、本発明を例示している:
ホモオリゴマーは細孔であって、全てのモノマー単位が同一である。モノマー単位が自
己組織化しようとするとき、これらは最も単純な構築物を作製することになる。塩基読み
取り特性を改善するための戦略は、種類分けできる:
・立体性(アミノ酸残基のサイズを増減する)
・電荷(+ve電荷を導入してDNAと相互作用させる)
・水素結合(塩基対と水素結合できる残基)
・πスタッキング(非局在化π電子系によって相互作用するアミノ酸)
立体性/πスタッキングの増大(全NNN−RRKバックグラウンド):
立体性−残基をバルク(例えばフェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、ヒスチジ
ン)と置換
πスタッキング−芳香族残基(例えばフェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、ヒ
スチジン)を置換
以下の全ての表(6〜11)に、配列番号2に作られた変異が示されている。B1=配列
番号2。
立体性の減少−残基をより小さいサイズ(例えばセリン、トレオニン、グリシン、アラニ
ン、バリン)と置換
電荷−残基を陽電荷(例えばアルギニン、リシン、ヒスチジン)と置換
水素結合−残基を結合能力(例えばアスパラギン、グルタミン、チロシン、ヒスチジン)
と置換
ホモオリゴマーを修飾して反応性基を含めることができ、次いで化学修飾することがで
きる。
異なるモノマー単位を結合させて、新規なオリゴマー細孔を創出することができる。オ
リゴマーが2個以上の異なるサブユニットを含有する場合(例えばMS−(MutA)
(MutB)(MutC))、細孔はヘテロオリゴマーである。ヘテロオリゴマーは
通常、1つの単位(例えばMS−(MutA)(MutB))しか修飾されていない
。他の割合のヘテロオリゴマーが形成される可能性もある(例えばMS−(MutA)
(MutB))。サブユニットは、配列番号2を含むこともできる。
ヘテロオリゴマーの利点は、細孔に(あらゆるモノマー単位に変化を導入するのではな
く)単一の化学変化を作れるということである。これは、ホモオリゴマーと比べると構造
についてはそれほど大幅な変化ではなく、これによりホモオリゴマーでは有効でなかった
位置で残基を細孔の中に導入できる可能性がある。DNAと相互作用する単一の残基が、
複数の単位と比較して有益な場合がある(例えば、八量体上の8個のArgと比較したヘ
テロ八量体上の単一のArg)。変異体を組み合わせて、同じ残基で異なる効果を作製す
ることもでき、この例は7個の単位のサイズを減少させ、一方で1つのサイズを増加させ
ることである(例えばMS−(D90G)(D90Y))。
変異体設計の法則は、ホモオリゴマーについて上で提示したそれと類似することになる
単一の立体性残基の導入
単一の荷電残基の導入
単一の反応性残基の導入
化学修飾用としての単一の反応性残基の導入。
以下の表は、本発明の変異体細孔の要約である。1つ目はホモオリゴマーに関し、2つ
目はヘテロオリゴマーに関する。
表16の続き
HLと比較したMspA
Phi29DNAポリメラーゼ(DNAP)を分子モーターとして、変異体MspAナ
ノ細孔と結合させて、細孔を通るDNA鎖の移動を制御することを可能にした。電圧は細
孔に印加され、ナノ細孔の両側にある塩溶液中のイオンの移動により、電流が生成された
。細孔を通ってDNAが移動するとき、細孔を通るイオン流はDNAに関連して変化する
。この情報は、配列依存的であることが示されている。
溶血素の変異型をMspA、具体的にはMS−(B1)と比較した。MspAの電流
範囲は溶血素(HL)と比較して高い。加えて、DNAの鎖を細孔に通すとき、MspA
の電流範囲もまた大きくなる。
MspAとPhi29DNAPを一緒にすることによって、MspAについて予想して
いなかったいくつかの驚くべき特徴があることが示された。主な違いは、以下のとおりで
ある:
1.HLと比較して速い鎖の移動(アンジッピングモード)。
2.細孔を通して鎖を移動させるときの電流範囲の増加。
3.HL変異体と比較した電流レベルの変動の減少。
より速い鎖移動
134マーのssDNA鋳型(配列番号13)を84マーのssDNA(配列番号14
)にハイブリダイズさせて、50マーのssDNA5’突出を持つ84マーのdsDNA
鋳型を形成した。この鎖は、アンジッピングモードでPhi29DNAPを使用して、M
S−(B1)MspA変異体および溶血素変異体を通って移動する。2回の実験を行っ
た;全て室温で、10mM Hepes pH8.0、1mM EDTA、1mM DT
Tを含む、一方は400mM KCl、他方は600mM KCl。印加電位は、変異体
構築物毎に最適化した;HLは220mVで、MspAは180mVで行った。
電流レベルが、酵素に結合している状態のDNAに由来する事象として抽出され、これ
らの事象が索引付けされ、電流レベル、継続時間および事象の変動が記録された。
全てのほどく実験について、ほどける速度は、鎖を通して一貫しているというわけでは
なかった。これは、事象継続時間の平均を算出することによって示され、事象索引を4分
の1に分割することができる(図1)。第1四分位値は、次の四分位値よりもかなり長い
継続時間を有する事象を提供し、これはHLおよびMspA両方に当てはまった。第1四
分位値の場合、平均事象長は、MspAでは400mM KClで最短であり、HLでは
600mMで最短であった。しかしQ2、Q3およびQ4において、MspAは、両方の
塩条件に関してより短い事象を生じた。シグナル対ノイズ比が十分な場合、細孔を通るD
NA鎖が速い移動を示す際には短い事象が望ましく、したがって実験の処理量が増加する
電流範囲の増加および変動の減少
ここで記載のナノ細孔実験において、電流レベルは、主に塩濃度、印加電圧および温度
に依存的である。HLとMS−(B1)MspA変異体とを、Phi29DNAポリメ
ラーゼを使用して、アンジッピングモードで600mM KCl、10mM Hepes
、1mM EDTA、1mM DTT、pH8.0、+220mVに設定した物理的条件
で比較した。この実験において使用したDNAは、34マーの一本鎖5’突出を持つ10
0マーのヘアピンであった(配列番号15)。実験は、室温で実行された。
電流レベルが、酵素結合している状態のDNAに由来する事象として抽出され、これら
の事象が索引付けされ、電流レベル、継続時間および事象の変動が記録された(図2およ
び3)。
電流範囲がおよそ20pAであるHL変異体と比較して、MspA変異体がおよそ50
pAという著しく大きな範囲を与えることは、これらの実験から明白である(図2および
3)。大きな電流範囲は、大きなシグナル対ノイズ比を提供し、異なる電流状態の区別を
容易にするので有利である。N塩基が電流シグナルに関与する可能性があるとき、これは
配列決定用途に特別な利点があり、4に可能な電流状態をもたらす。
MspA変異体の状態の変動はまた、HLと比較して減少する。これは、上記痕跡にお
ける事象の標準偏差によって示される(図2および3)。上記の鎖の場合、MspA鎖の
全ての事象にわたる標準偏差の平均は、HLの4.5と比較して3.6であった。状態の
小さい変動は、事象電流レベルの正確な評価を可能にするには望ましい。
MS−(B1)8ベースラインとMS−(B1−I105)8変異体との開孔電流比較
MspA細孔の電流レベルは、タンパク質中のI105位を変異させることによって制
御できる。MspAモノマーに単一の変異を作ることにより、開孔電流を80%超増加で
きることを実証する。
次の条件下で、単一のチャネルを脂質膜に挿入した:400mM KCl、10mM
Hepes pH8.0、室温。開孔電流レベルを、−200mV〜200mVの印加電
位の範囲にわたって記録して、I−V曲線を作製した。いくつかの細孔について実験を繰
り返して、サンプルの分布を算定した。I−V曲線実験に由来するデータの例が、見られ
る(図4)。
実験において、ベースラインMS−(B1)8変異体は、+160mVでおよそ150
pAの開孔電流を有する細孔を生成する(図5)。
高い残留電流を伴う多くの細孔を表すMS−(B1−I105Y)8変異体を用いて実
験を繰り返した。これらチャネルの場合、開孔電流は+160mVでおよそ200pAで
あった(図6)。
電流レベルの2つの主な分布を表すMS−(B1−I105N)8変異体を用いて実験
を繰り返した。16個の細孔のうち10個は、密な分布で高い残留電流を生じた。これら
チャネルの場合、開孔電流は、+160mVでおよそ280pAであった(図7)。
自発的に伝導性を変化させるMS−(B1−I105A)8細孔
MspA変異体細孔が、電気的記録実験の間に自発的に伝導性を変化させることが観察
された。
電気的な測定は、実施例6において説明したように、MS−(B1−I105A)8変
異体細孔を使用して得られた。
単一のMspA変異体細孔は、高低の伝導性状態の間で自発的に入れ替ることが可能で
ある(図8)。これは、MspAに対する変異により、ベースラインMS−(B1)8細
孔においてまれに観察される立体構造変化が起こり得ることを示唆している。I105位
における変異は、細孔の高い伝導性状態を安定させる可能性がある。
ベースラインMS−(B1)8細孔を通るDNAの移動を、MS−(B1−I105A)
8細孔と比較したときのDNA電流の比較
MS−(B1)細孔とMS−(B1−I105N)細孔とを、Phi29DNAポ
リメラーゼを使用して、アンジッピングモードで400mM KCl、10mM Hep
es、1mM EDTA、1mM DTT、pH8.0、+180mVに設定した物理的
条件で比較した。この実験において使用したDNAは、34マーの一本鎖5’突出を持つ
100マーのヘアピンであった(配列番号15)。実験は、室温で実行された。
電流レベルが、酵素結合している状態のDNAに由来する事象として抽出され、これら
の事象が索引付けされ、電流レベル、継続時間および事象の変動が記録された。
MS−(B1)変異体を通って移動するDNA鎖に由来する電流レベルの広がりは、
これらの条件下で30pA以下であった(図9)。MS−(B1−I105A)変異体
を使用して同じ実験が繰り返され、電流レベルは同じDNA鎖について40pA以下の範
囲を表した(図10)。ナノ細孔内のヌクレオチドの組合せを識別するためには、MS−
(I105A)変異体のより大きな電流範囲が望ましい。
MS−(B1−L88N)8変異体とMS−(B1)8ベースラインとのシグナルノイズ
比較
MspA細孔のノイズレベルは、MspAモノマー配列中のL88位を変異させること
によって制御できる。MspAモノマーに単一の変異を作ることにより、ノイズレベルを
19%減らせることが実証された。
この実施例は、ヘリカーゼを使用してナノ細孔を通る完全なDNA鎖の移動を制御する
ことにより、移行モードでMS−(B1)8細孔とMS−(B1−L88N)8細孔とを
比較する。
材料
プライマーは、PhiX174の400bp以下の断片を増幅するように設計された。
これらプライマーの5’−末端の各々は、50ヌクレオチドの非賞賛(complimentary)
の領域(ホモポリマー範囲または10ヌクレオチドホモポリマーセクションの繰り返し単
位)を含んだ。これらは、ナノ細孔を通る鎖の移行を制御するための識別子として役立ち
、ならびに移行の方向性を決定している。加えて、フォワードプライマーの5’−末端は
「キャップ化」されて、4つの2’−O−メチルウラシル(mU)ヌクレオチドを含み、
リバースプライマーの5’−末端は化学的にリン酸化された。次いで、これらのプライマ
ー修飾により、ラムダエキソヌクレアーゼを使用すると、主にアンチセンス鎖だけを消化
する制御が可能になる。mUキャッピングはヌクレアーゼ消化からセンス鎖を保護するが
、アンチセンス鎖の5’のPO4は消化を進める。したがって、ラムダエキソヌクレアー
ゼとインキュベーションした後には、二本鎖のセンス鎖だけが、一本鎖DNA(ssDN
A)として無傷で残る。次いで、生成したssDNAを、前述のとおりPAGE精製した
この実験に使用したDNA基質の設計を、図11に示す(配列番号19および20(以
下に配列およびタグを提示する))。DNA基質は、ナノ細孔による捕捉を補助するため
の50個のTの5’−リーダーを持つPhiXに由来するssDNAの400塩基のセク
ションを含む。二重層の表面にDNAを濃縮し、したがって捕捉効率を改善するために、
3’コレステロールタグ(3’コレステリル−TEG)を含有するプライマーを、この鎖
の50Tリーダー直後にアニールする。
配列番号19
mUmUmUmUTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTT
TTTTTTTTTTTTTTTTTTTGGTTGTTTCTGTTGGTGCTGA
TATTGCTTTTGATGCCGACCCTAAATTTTTTGCCTGTTTG
GTTCGCTTTGAGTCTTCTTCGGTTCCGACTACCCTCCCGA
CTGCCTATGATGTTTATCCTTTGAATGGTCGCCATGATGG
TGGTTATTATACCGTCAAGGACTGTGTGACTATTGACGTC
CTTCCCCGTACGCCGGGCAATAACGTTTATGTTGGTTTCA
TGGTTTGGTCTAACTTTACCGCTACTAAATGCCGCGGATT
GGTTTCGCTGAATCAGGTTATTAAAGAGATTATTTGTCTC
CAGCCACTTAAGTGAGGTGATTTATGTTTGGTGCTATTGC
TGGCGGTATTGCTTCTGCTCTTGCTGGTGGCGCCATGTCT
AAATTGTTTGGAGGCGGTC
配列番号20(プラス3’コレステリル−TEGタグ)GCAATATCAGCACC
AACAGAAACAACCTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTT
TTT/3CholTEG/
実験方法
緩衝溶液:400mM NaCl、10mM Hepes pH8.0、1mM ATP
、1mM MgCl、1mM DTT
ナノ細孔:MS(B1)8MspA;
MS(B1−L88N)8MspA
酵素:ヘリカーゼ
電気的な測定は、1,2−ジフィタノイル−グリセロ−3−ホスホコリン脂質(Ava
nti Polar Lipids)二重層に挿入された単一のMspAナノ細孔から得
られた。2つの1mL緩衝液に分離している(特注のデルリンチャンバ内の)厚さ20μ
mのPTFE薄膜にある直径100μm以下の開口部を横切って、Montal−Mue
ller技術により、二重層が形成された。全ての実験は、記載の緩衝液で実施された。
単一チャネルの電流を、1440Aデジタイザを備えているAxopatch200B増
幅器(Molecular Devices)で測定した。シス区画(ナノ細孔と酵素/
DNA両方が添加されている)をAxopatchヘッドステージのアースに接続し、ト
ランス区画をヘッドステージの活性電極に接続できるように、Ag/AgCl電極を緩衝
液に接続した。
二重層中にMS(B1)8またはMS(B1−L88N)8の単一細孔を得た後に、D
NAポリヌクレオチド(配列番号19および20)ならびにヘリカーゼを緩衝液100μ
Lに添加し、5分間プレインキュベートした(DNA=1.5nM、酵素=1μM)。電
気生理学チャンバのシス区画内の緩衝液900μLにこのプレインキュベーション混合物
を添加して、MspAナノ細孔中におけるヘリカーゼ−DNA複合体の捕捉を開始した(
最終濃度DNA=0.15nM、酵素=0.1μMを得る)。ヘリカーゼATPアーゼ活
性は、シス区画に二価金属(1mM MgCl)およびNTP(1mM ATP)を添
加することによって、必要に応じて開始された。実験は、+140mVの定電位で実施さ
れた。電流レベルが、酵素結合している状態のDNAに由来する事象として抽出され、こ
れらの事象が索引付けされ、電流レベル、継続時間および事象の変動が記録された。
MspA細孔MS−(B1)8を使用した場合、検出された事象の31.08%は、+
140mVの印加電位で標準偏差>2.0であった(追加的なデータを表18にまとめた
)。MS−(B1−L88N)8変異体を用いて実験を繰り返し、検出された事象のわず
か12.38%が、+140mVの印加電位で2.0より大きい標準偏差を表した(追加
的なデータを表18にまとめた)。したがって、MspAモノマー配列中のL88におけ
る点突然変異は、観察されるノイズ範囲を19%減少させた。
MS−(B1−L88N)8、MS−(B1−L88S)8およびMS−(B1−L88
Q)8変異体とMS−(B1)8ベースラインとのシグナルノイズ比較
MspA細孔のノイズレベルは、タンパク質中のL88位を変異させることによって改
変できる。MspAモノマーに単一の変異を作ることにより、ノイズレベルを減少させら
れることが実証された。
この実施例は、Phi29DNAポリメラーゼを使用してナノ細孔を通る完全なDNA
鎖の移動を制御することにより、アンジッピングモードでMS−(B1)8細孔とMS−
(B1−L88N)8、MS−(B1−L88S)8およびMS−(B1−L88Q)8
細孔とを比較する。この実施例に記載されている全ての実験に使用したDNA基質の設計
を、図12に示す(配列番号21、22および23)。以下に示すように、配列番号23
はIDT Int Spacer9(iSp9)および3’コレステリル−TEG(3C
holTEG)を用いてタグ付けされた。実験は、室温で、+180mVの印加電位で実
行された。
配列番号23:
CAGCGATGGAGATAC/iSp9//3CholTEG/
実験方法
緩衝液:400mM KCl、10mM Hepes pH8.0、1mM EDTA、
1mM DTT
細孔:MS(B1)8MspA;
MS(B1−L88N)8MspA;
MS(B1−L88S)8MspA;
MS(B1−L88Q)8MspA;
酵素:Phi29DNAポリメラーゼ配列番号4
電気的な測定は、実施例9に記載のとおり得られた。二重層中にMS(B1)8、MS
(B1−L88N)8、MS(B1−L88S)8またはMS(B1−L88Q)8の単
一細孔を得た後に、DNAポリヌクレオチド(配列番号21、22および23)ならびに
Phi29DNAポリメラーゼを緩衝液100μLに添加し、5分間プレインキュベート
した。電気生理学チャンバのシス区画内の緩衝液900μLにこのプレインキュベーショ
ン混合物を添加して、MspAナノ細孔中におけるポリメラーゼ−DNA複合体の捕捉を
開始した(最終濃度DNA=0.5nM、酵素=0.1μMを得る)。実験は、+180
mVの定電位で実施された。DNAが酵素に結合している状態にあるとき、観察された電
流レベルが索引付けされ、電流レベル、その継続時間および変動が記録された。
実験において、ベースラインMS−(B1)8変異体は、+180mVで高レベルのノ
イズ(76.15%が標準偏差>2.0、表19を参照のこと)を表した。試験した他の
3つの変異体、L88位に単一点突然変異を有する(MS−(B1−L88N)8、MS
−(B1−L88S)8およびMS−(B1−L88Q)8)の全てが、同じDNA鎖配
列に対してベースライン細孔より低いノイズレベル(表19を参照のこと)が観察された
。したがって、MspAモノマー配列中のL88位に点突然変異を適用することによって
シグナルノイズを減らすことが可能になった。
他のMspA変異体とMS−(B1)8ベースラインとの全シグナル範囲の比較
MspA細孔のシグナル範囲は、MspAタンパク質モノマー配列中の様々な位置を変
異させることによって増加させることができる。
この実施例は、Phi29DNAポリメラーゼを使用してナノ細孔を通る完全なDNA
鎖の移動を制御することにより、アンジッピングモードでMS−(B1)8細孔と次の細
孔−MS−(B1−D90Q)8、MS−(B1−I105L)8、MS−(B1−I1
05Y)8、MS−(B1−I89Y−D90S)8、MS−(B1−N86T)8およ
びMS−(B1−S103G)8−細孔とを比較する。この実施例に記載されている全て
の実験に使用したDNA基質の設計を、図12に示す(配列番号21、22および23)
。iSp9および3CholTEGでタグ付けされた配列番号23を上に示す。実験は、
室温で、+180mVの印加電位で実行された。DNAが酵素に結合している状態にある
とき、観察された電流レベルが索引付けされ、電流レベル、その継続時間および変動が記
録された。
実験方法
緩衝液:400mM KCl、10mM Hepes pH8.0、1mM EDTA、
1mM DTT
ナノ細孔:MS(B1)8MspA;
MS(B1−D90Q)8MspA;
MS−(B1−I105L)8MspA;
MS−(B1−I105Y)8MspA;
MS−(B1−I89Y−D90S)8MspA;
MS−(B1−N86T)8MspA;
MS−(B1−S103G)8MspA;
酵素:Phi29DNAポリメラーゼ配列番号4
電気的な測定は、実施例10に記載のとおり得られた。二重層中にMS(B1)8、M
S(B1−D90Q)8、MS(B1−I105L)8、MS(B1−I105Y)8、
MS−(B1−I189Y−D90S)8、MS−(B1−N86T)8またはMS−(
B1−S103G)8の単一細孔を得た後に、DNAポリヌクレオチド(配列番号21、
22および23)ならびにPhi29DNAポリメラーゼを緩衝液100μLに添加し、
5分間プレインキュベートした。電気生理学チャンバのシス区画内の緩衝液900μLに
このプレインキュベーション混合物を添加して、MspAナノ細孔中におけるポリメラー
ゼ−DNA複合体の捕捉を開始した(最終濃度DNA=0.5nM、酵素=0.1μMを
得る)。実験は、+180mVの定電位で実施された。DNAが酵素に結合している状態
にあるとき、観察された電流レベルが索引付けされ、電流レベル、その継続時間および変
動が記録された。
実験において、ベースラインMS−(B1)8変異体は、+180mVで35pAの最
大範囲を表した(表20)。試験した他の6つの変異体、MS(B1−D90Q)8、M
S−(B1−I105L)8、MS−(B1−I105Y)8、MS−(B1−I89Y
−D90S)8、MS−(B1−N86T)8およびMS−(B1−S103G)8の全
てで、同じDNA鎖配列に対してベースライン細孔より大きな最大範囲(表20を参照の
こと)が観察された。したがって、MspAモノマー配列中の様々な位置に点突然変異を
適用することによってシグナル範囲を増やすことが可能になった。
他のMspA変異体とMS−(B1)8ベースラインとの全配列決定プロファイルの比較
MspA細孔の配列決定プロファイルは、MspAタンパク質モノマー配列中の多様な
位置を変異させることによって制御することができる。
この実施例は、ヘリカーゼを使用してナノ細孔を通る完全なDNA鎖の移動を制御する
ことにより、移行モードでMS−(B1)8細孔をMS−(B1−D90Q−D93S−
I105A)8、MS−(B1−D90Q−Q126R)8、MS−(B1−L88N−
D90Q−D91M)8、MS−(B1−L88N−D90Q−D91S)8およびMS
−(B1−G75S−G77S−L88N−Q126R)8細孔と比較する。
実験方法
緩衝液:400mM NaCl、10mM Hepes pH8.0、1mM ATP、
1mM MgCl、1mM DTT
ナノ細孔:MS(B1)8MspA;
MS(B1−D90Q−D93S−I105A)8MspA;
MS(B1−D90Q−Q126R)8MspA;
MS(B1ーL88N−D90Q−D91M)8MspA;
MS(B1−L88N−D90Q−D91S)8MspA;
MS(B1−G75S−G77S−L88N−Q126R)8MspA;
酵素:ヘリカーゼ
実験の組み立ては、実施例9に記載のとおり実施された。二重層中にMS−(B1)8
、MS−(B1−D90Q−D93S−I105A)8、MS−(B1−D90Q−Q1
26R)、MS−(B1−L88N−D90Q−D91M)8、MS−(B1−L88N
−D90Q−D91S)8またはMS−(B1−G75S−G77S−L88N−Q12
6R)8の単一細孔を得た後に、DNAポリヌクレオチド(配列番号19および20(配
列およびタグを上に示した))ならびにヘリカーゼを緩衝液100μLに添加し、5分間
プレインキュベートした(DNA=1.5nM、酵素=1μM)。電気生理学チャンバの
シス区画内の緩衝液900μLにこのプレインキュベーション混合物を添加して、Msp
Aナノ細孔中におけるヘリカーゼ−DNA複合体の捕捉を開始した(最終濃度DNA=0
.15nM、酵素=0.1μMを得る)。ヘリカーゼATPアーゼ活性は、シス区画に二
価金属(1mM MgCl)およびNTP(1mMATP)を添加することによって、
必要に応じて開始された。実験は、+140mVの定電位で実施された。DNAが酵素に
結合している状態にあるとき、観察された電流レベルが索引付けされ、電流レベル、その
継続時間および変動が記録された。
実験において、ベースラインMS−(B1)8変異体は、図13aに示す配列決定プロ
ファイルを作製した。多様な異なる配列決定プロファイルを表す次の変異体MS−(B1
−D90Q−D93S−I105A)8、MS−(B1−D90Q−Q126R)、MS
−(B1−L88N−D90Q−D91M)8、MS−(B1−L88N−D90Q−D
91S)8およびMS−(B1−G75S−G77S−L88N−Q126R)8を用い
て実験を繰り返した、(図13b〜fを参照のこと)。したがって、MspAモノマー配
列中の多様な位置に点突然変異を作ることによって、検出される配列決定プロファイルを
改変することが可能になる。
MS−(B1)8ベースライン細孔を使用するRNA鎖配列の分析
この実施例は、Phi29DNAポリメラーゼと合わせたMspAベースライン細孔M
S−(B1)8を使用して、RNA鎖を配列決定できる方法について記載している。
この実施例は、Phi29DNAポリメラーゼを使用してナノ細孔を通る完全なRNA
鎖の移動を制御することにより、アンジッピングモードでMS−(B1)8細孔を使用す
る。この実験に使用したRNA/DNA混成基質の設計を、図14(配列番号24および
25)に示す。配列番号24および25を以下に提示している(RNAは太字)。実験は
、室温で、+180mVの印加電位で実行された。
配列番号24:
5’OH−CCCCCCCCCCCCCCCACCCCCCCCCCCCCCCCCCC
UAUUCUGUUUAUGUUUCUUGUUUGU−3’OH
配列番号25(プラスコレステロールタグ):
5’Phos−UAUUCUGUUUAUGUUUCUUGUUUGUUAGCCCCC
UUUGAUAAGACAAAUACAAAGAACAAA−3’Chol
材料
RNA/DNA混成鎖(長さ120マー)を合成するには、配列番号24と25を一緒
にライゲーションする必要があった。これは、相補的なDNAアダプター鎖配列番号26
を使用して、2本の鎖を近接近させることにより得られ、その後、それらを一緒にライゲ
ーションし、120マーのDNA/RNA混成物、配列番号27を形成する。
配列番号27(プラスコレステロールタグ;RNAは太字):
5’OH−CCCCCCCCCCCCCCCACCCCCCCCCCCCCCCCCCC
UAUUCUGUUUAUGUUUCUUGUUUGUUAUUCUGUUUAUGUU
UCUUGUUUGUUAGCCCCCUUUGAUAAGACAAAUACAAAGA
ACAAA−3’Chol
実験方法
緩衝液:400mM KCl、10mM Hepes pH8.0、1mM EDTA、
1mM DTT
ナノ細孔:MS(B1)8MspA;
酵素:Phi29DNAポリメラーゼ配列番号4
電気的な測定は、実施例10に記載のとおり得られた。二重層中にMS(B1)8の単
一細孔を得た後に、DNAポリヌクレオチド(配列番号24および25)ならびにPhi
29DNAポリメラーゼを緩衝液100μLに添加し、5分間プレインキュベートした。
電気生理学チャンバのシス区画内の緩衝液900μLにこのプレインキュベーション混合
物を添加して、MspAナノ細孔中におけるポリメラーゼ−DNA複合体の捕捉を開始し
た(最終濃度DNA=0.2nM、酵素=0.2μMを得る)。実験は、+180mVの
定電位で実施された。電流レベルが、酵素結合している状態のDNAに由来する事象とし
て抽出され、これらの事象が索引付けされ、電流レベル、継続時間および事象の変動が記
録された。
実験において、分子モーターとしてのPhi29DNAポリメラーゼと合わせたベース
ラインMS−(B1)8変異体を観察して、RNA鎖が細孔に通されるときの異なる電流
レベルを検出した。次いで、これらの電流シグナルを使用して、標的の配列を決定した。
Phi29DNAポリメラーゼアンジッピングモードにおける典型的なRNA移行事象を
、図15に示す。
細孔形成のためのMspAダイマーおよびオリゴマー化
この実施例は、MspAダイマーの調製およびオリゴマー化について記載している。
ダイマーの調製
MspA NNNRRK単量体タンパク質は、184アミノ酸残基からなる。MspA
−NNNRRKタンパク質のダイマー版を作るために、単一のポリペプチドが設計された
184残基MspA−NNNRRKポリペプチドをコードしているDNA配列が、短い
DNAリンカー配列を介して、同一のポリペプチド鎖をコードしている第2のDNA配列
と連結された。リンカーDNA配列は、SGSGSGDDDDDDDDSGSGSS(配
列番号33;−(SG)−D−(SG)(SS)−と示す)をコードしている。第
1塩基の直前に開始コドン(ATG)を付け加え、2つの停止コドン(TAATAG)を
コードしているDNAを最後の塩基の後に付け加えた。これにより、MspA−NNNR
RK−(SG)−D−(SG)(SS)−MspA−NNNRRKをコードしてい
る全長DNA配列を、配列番号28に示す。
DNAを、GenScript USA Incで合成し、発現目的用のpT7ベクタ
ーにクローニングした。
環状DNA用として大腸菌(E. coli)T7−S30抽出物システム(Promega
)を使用して、in vitroで転写と翻訳を連動させた(IVTT)によってタンパ
ク質を生成した。
システインなしの完全な1mMアミノ酸混合物とメチオニンなしの完全な1mMアミノ
酸混合物とを等容量で混合して、高濃度のタンパク質を生成するのに必要な作業用アミノ
酸溶液を得た。アミノ酸混合物(2.5.0μL)、予混合溶液(10μL)、[35S
]L−メチオニン(0.5μL)およびリファンピシン(2μL、50mg/mL)を、
プラスミドDNA(4μL、400ng/mL)およびT7S30抽出物(7.5μL)
と混合した。合成を、37℃で90分間実施して、MspA−NNNRRKモノマーおよ
びダイマーのIVTTタンパク質25μLを生成した。反応後に、サンプルを25,00
0gで10分間遠心分離し、上清を破棄した。ペレットをMBSA(1mg/mL BS
Aを含有する10mM MOPS、150mM NaCl、pH7.4)100μLで洗
浄し、薄膜サンプル緩衝液25μLに再懸濁した。サンプルを、10%ゲルのSDS−P
AGEに供した。ゲルを、80℃で45分間乾燥させ、X線フィルムに2時間感光させた
。ゲルは2本の異なるバンドを示し、1つがMspAダイマーにおよび1つがMspAモ
ノマーに相当した。
モノマーおよびダイマーのオリゴマー化
ダイマーおよび、それとは別にモノマーの発現を、合成脂質小胞の存在下で実施して、
オリゴマー化を促進させた。5成分の脂質混合物を使用した(PS:SM:PE:PC:
コレステロールを10:10:20:30:30の比率で、25mg/mL)。脂質混合
物50μLを、1.5mLエッペンドルフチューブ中で、25,000gで10分間遠心
分離し、上清を破棄した。システインなしの完全な1mMアミノ酸混合物とメチオニンな
しの完全な1mMアミノ酸混合物とを等容量で混合して、高濃度のタンパク質を生成する
のに必要な作業用アミノ酸溶液を得た。膜ペレットを、アミノ酸混合物(10.0μL)
、予混合溶液(40μL)、[35S]L−メチオニンおよびリファンピシン(2μL、
50mg/mL)で再懸濁した。プラスミドDNA(16μL,400ng/mL)およ
びT7 S30抽出物(30.0μL)を添加して、合成を開始した。合成を、37℃で
90分間実施して、IVTTタンパク質100μLを生成した。IVTT反応サンプルを
遠心分離(25,000g、10分間)し、得られた膜ペレットをMBSAで洗浄し、7
.5%ゲルのSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動に供した。ゲルを、ワットマン3M
紙上で、50℃で3時間乾燥させ、X線フィルムに2時間感光させた。ゲルは、オリゴマ
ー化したMspAダイマーに対する8本の異なるバンドを示し、その全てが、SDS P
AGEにおいてオリゴマー化したモノマーより遅く移動した。
二重層に対するタンパク質精製実験
ダイマーオリゴマー化実験に由来する3本のタンパク質バンドをゲルから切り出し、精
製した。オートラジオグラムを型として使用して、バンドを切り出し、緩衝液(25mM
トリスHCl、pH8.0 150〜200μL)に再水和した。紙を取り除き、乳棒
を使用してゲル片を破砕した。スラリーを、25,000xgで10分間遠心分離するこ
とにより、QIAshredderカラム(Qiagen)を通して濾過した。次いで、
モノマーレベルの第3のバンドから得られたタンパク質を、実施例15に記載の電気生理
学実験に使用した。
モノマーからオリゴマー化されたMS−(B1)8とダイマーからオリゴマー化されたM
S−(B1−B1)4との比較
この実施例は、ヘリカーゼを使用してナノ細孔を通る完全なDNA鎖(配列番号19お
よび20(配列およびタグを上に示す))の移動を制御することにより、移行モードでモ
ノマー(配列番号2)からオリゴマー化されたMS−(B1)8細孔とダイマー(配列番
号29)からオリゴマー化されたMS−(B1−B1)4細孔とを比較する。
実験方法
緩衝液:400mM NaCl、10mM Hepes pH8.0、1mM ATP、
1mM MgCl、1mM DTT
ナノ細孔:MS−(B1)8;
MS−(B1−B1)4
酵素:ヘリカーゼ
電気的な測定は、銀メッキされた128ウェルシリコンチップ(形式、直径75μm、
深さ20μm、間隔250μm)を使用して得られた(WO 2009/077734)
。最初に、チップを20mLエタノール、次いで20mL dHO、そして20mLエ
タノールで洗浄した後にCF4プラズマ処理した。次いで、使用されるチップを浸漬被覆
によって前処理し、真空密閉し、4℃で貯蔵した。使用前に、チップを最低20分間、室
温で暖めた。
1M KCl、10mMトリス、pH7.5に溶解した3.6mg/mL 1,2−ジ
フィタノイル−グリセロ−3−ホスホコリン脂質(DPhPC、Avanti Pola
r Lipids、AL、USA)を含む一連のスラグを、チップ全面に0.45μL/
秒で通すことによって二重層を形成した。最初に、脂質スラグ(250μL)をチップ全
面に流し、その後空気スラグ100μLを流した。次いで、スラグ155μLと脂質溶液
150μLをさらに2回、各々を空気スラグ100μLで区切って、チップ全体に通した
。二重層を形成した後に、チャンバを、流速3μL/秒で緩衝液3mLを用いて洗浄した
。二重層形成の電気的な記録を、集積キャパシタンス1.0pFで、10kHzで実施し
た。
モノマーからオリゴマー化されたMS−(B1)8細孔またはダイマーからオリゴマー
化されたMS−(B1−B1)4細孔を使用して、10mMトリス、1mM EDTA、
pH8.0中に生物学的ナノ細孔の溶液を調製した。+180mVの保持電位を印加し、
溶液をチップ表面に流し、細孔に二重層を侵入させた。次いで、サンプリング率と集積キ
ャパシタンスをそれぞれ10kHzおよび1.0pFに維持し、印加電位を0まで下げた
+180mVの保持電位を印加する制御プログラムを実行した。DNAポリヌクレオチ
ド(配列番号19および20)とヘリカーゼを、5分間プレインキュベーションした。次
いで、このプレインキュベーション混合物(MgClとATPを含む)をチップ表面に
流して、MspAナノ細孔中におけるヘリカーゼ−DNA複合体の捕捉を開始した(最終
濃度DNA=1.5nM、酵素=10nMを得る)。実験は、+180mVの定電位で実
施された。電流レベルが、酵素結合している状態のDNAに由来する事象として抽出され
た。これらの事象が索引付けされ、電流レベル、継続時間および事象の変動が記録された
実験において、ダイマーのオリゴマー化により形成されたベースラインMS−(B1−
B1)4変異体細孔は、モノマーのオリゴマー化により形成されたMS(B1)8細孔と
同程度に効果的に脂質二重層に挿入された(MS(B1)8およびMS−(B1−B1)
4の細孔挿入を示す図16を参照のこと)。モノマーおよびダイマーがオリゴマー化した
細孔が、分子モーターとしてのヘリカーゼと合わされる場合、DNA鎖が細孔に通される
ときに異なる電流レベルを検出することができた。ヘリカーゼ移行モードでの典型的なD
NA移行事象を、モノマーのオリゴマー化により形成されるMS−(B1)8細孔につい
ては図17に、ダイマーからのオリゴマー化により形成されるMS−(B1−B1)4細
孔については図18に示す。したがって、ダイマー単位からオリゴマー化されたMS−(
B1−B1)4細孔変異体が、モノマー単位からオリゴマー化されたMS−(B1)8細
孔変異体と同程度に優れた細孔になることが判明した。
5−メチルシトシンとシトシンとを区別するためのMS−(B1−L88N)8変異体M
spA細孔の使用
この実施例は、MspAのMS−(B1−L88N)8変異体細孔を使用して、シトシ
ンとその後成的に修飾された塩基である5−メチルシトシンとを区別できる方法について
記載している。この実験に使用したDNA基質設計を、図19に示し、次の配列を有する
:TTTTTTTTT/idSp/TTTTTTTTmCTTTTTTTTCTTTTT
TTTmCGTTTTTTTTCGTTTTTTTTGTATCTCCATCGCTGC
CCCCTTTTTCCCCCTTTTT(9個のTヌクレオチドおよび5’末端にID
T Int dスペーサ(idSp)を持つ配列番号30である)。mCは、5−メチル
シトシンGGCAGCGATGGAGATACTTGAGGCGAGCGGTCAA(配
列番号31)および5CholTEG/TTGACCGCTCGCCTC(5’コレステ
リルTEGタグを持つ配列番号32)を表している。
材料
図19に示したDNA鎖構築物を形成するには、配列番号30、31および32を同時
にハイブリダイズさせる必要があった。これは、3つ全ての鎖を同時にプレインキュベー
トすることによって実施された。
実験方法
緩衝液:1M KCl、10mM Hepes pH8.0、1mM ATP、1mM
MgCl、1mM DTT
ナノ細孔:MS(B1−L88N)8MspA
酵素:ヘリカーゼ
実験の組み立ては、実施例9に記載のとおり実施された。二重層中にMS−(B1−L
88N)8の単一細孔を得た後に、DNAポリヌクレオチド(配列番号30、31および
32)ならびにヘリカーゼを緩衝液50μLに添加し、5分間プレインキュベートした(
DNA=5nM、酵素=100nM)。電気生理学チャンバのシス区画内の緩衝液950
μLにこのプレインキュベーション混合物を添加して、MspAナノ細孔中におけるヘリ
カーゼ−DNA複合体の捕捉を開始した(最終濃度DNA=5nM、酵素=100nMを
得る)。ヘリカーゼATPアーゼ活性は、シス区画に二価金属(1mM MgCl)お
よびNTP(1mM ATP)を添加することによって、必要に応じて開始された。実験
は、+120mVの定電位で実施された。電流レベルが、酵素結合している状態のDNA
に由来する事象として抽出された。これらの事象が索引付けされ、電流レベル、継続時間
および事象の変動が記録された。
実験において、シトシンおよび5−メチルシトシンが、ヘリカーゼの制御下でMS−(
B1−L88N)8細孔を通って移行するときに、異なる電流レベルを発生することが観
察された(図20を参照のこと)。したがって、MspAのこのバリアントを使用すれば
、シトシンとその後成的に修飾された塩基である5−メチルシトシンとを区別することが
できる。
実験において、シトシンおよび5−メチルシトシンが、ヘリカーゼの制御下でMS−(B1−L88N)8細孔を通って移行するときに、異なる電流レベルを発生することが観察された(図20を参照のこと)。したがって、MspAのこのバリアントを使用すれば、シトシンとその後成的に修飾された塩基である5−メチルシトシンとを区別することができる。

本発明は、以下の態様を包含し得る。
[1]
配列番号2に示される配列のバリアントを含む変異体Mspモノマーであって、前記バリアントが以下の変異:
(a)88位にアスパラギン(N)、セリン(S)、グルタミン(Q)またはトレオニン(T);
(b)90位にセリン(S)、グルタミン(Q)またはチロシン(Y);
(c)105位にロイシン(L)またはセリン(S);
(d)126位にアルギニン(R);
(e)75位にセリン(S);
(f)77位にセリン(S);
(g)59位にアルギニン(R);
(h)75位にグルタミン(Q)、アスパラギン(N)またはトレオニン(T);
(i)77位にグルタミン(Q)、アスパラギン(N)またはトレオニン(T);
(j)78位にロイシン(L);
(k)81位にアスパラギン(N);
(l)83位にアスパラギン(N);
(m)86位にセリン(S)またはトレオニン(T);
(n)87位にフェニルアラニン(F)、バリン(V)またはロイシン(L);
(o)88位にチロシン(Y)、フェニルアラニン(F)、バリン(V)、アルギニン(R)、アラニン(A)、グリシン(G)またはシステイン(C);
(p)89位にフェニルアラニン(F)、バリン(V)またはロイシン(L);
(q)90位にロイシン(L)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ヒスチジン(H)、トレオニン(T)、グリシン(G)、アラニン(A)、バリン(V)、アルギニン(R)、リシン(K)、アスパラギン(N)またはシステイン(C);
(r)91位にセリン(S)、グルタミン(Q)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、イソロイシン(I)、アラニン(A)、バリン(V)、グリシン(G)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)、ヒスチジン(H)、トレオニン(T)、アルギニン(R)、リシン(K)、アスパラギン(N)またはシステイン(C);
(s)92位にアラニン(A)またはセリン(S);
(t)93位にセリン(S)、アラニン(A)、トレオニン(T)、グリシン(G);
(u)94位にロイシン(L);
(v)95位にバリン(V);
(w)96位にアルギニン(R)、アスパラギン酸(D)、バリン(V)、アスパラギン(N)、セリン(S)またはトレオニン(T);
(x)97位にセリン(S);
(y)98位にセリン(S);
(z)99位にセリン(S);
(aa)100位にセリン(S);
(bb)101位にフェニルアラニン(F);
(cc)102位にリシン(K)、セリン(S)またはトレオニン(T);
(dd)103位にアラニン(A)、グルタミン(Q)、アスパラギン(N)、グリシン(G)またはトレオニン(T);
(ee)104位にイソロイシン;
(ff)105位にチロシン(Y)、アラニン(A)、グルタミン(Q)、アスパラギン(N)、トレオニン(T)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ヒスチジン(H)、グリシン(G)、バリン(V)、アルギニン(R)、リシン(K)、プロリン(P)またはシステイン(C);
(gg)106位にフェニルアラニン(F)、イソロイシン(I)、バリン(V)またはセリン(S);
(hh)108位にプロリン(P)またはセリン(S);
(ii)118位にアスパラギン(N);
(jj)103位にセリン(S)またはシステイン(C);
(kk)10〜15、51〜60、136〜139および168〜172位のうちの1つまたは複数にシステイン
の少なくとも1つを含む、変異体。
[2]
前記バリアントが、次の置換:
(a)(i)75位にセリン(S)、(ii)77位にセリン(S)、(iii)88位にアスパラギン(N)、(iv)90位にグルタミン(Q)および(v)126位にアルギニン(R)の1つまたは複数;
(b)(i)90位にグルタミン(Q)および(ii)126位にアルギニン(R)の1つまたは複数;
(c)(i)88位にアスパラギン(N)、(ii)90位にグルタミン(Q)および(iii)126位にアルギニン(R)の1つまたは複数;
(d)(i)88位にセリン(S)および(ii)90位にグルタミン(Q)の1つまたは複数;
(e)(i)88位にアスパラギン(N)および(ii)90位にグルタミン(Q)の1つまたは複数;
(f)(i)90位にグルタミン(Q)および(ii)105位にアラニン(A)の1つまたは複数;
(g)(i)90位にセリン(S)および(ii)92位にセリン(S)の1つまたは複数;
(h)(i)88位にトレオニン(T)および(ii)90位にセリン(S)の1つまたは複数;
(i)(i)87位にグルタミン(Q)および(ii)90位にセリン(S)の1つまたは複数;
(j)(i)89位にチロシン(Y)および(ii)90位にセリン(S)の1つまたは複数;
(k)(i)88位にアスパラギン(N)および(ii)89位にフェニルアラニン(F)の1つまたは複数;
(l)(i)88位にアスパラギン(N)および(ii)89位にチロシン(Y)の1つまたは複数;
(m)(i)90位にセリン(S)および(ii)92位にアラニン(A)の1つまたは複数;
(n)(i)90位にセリン(S)および(ii)94位にアスパラギン(N)の1つまたは複数;
(o)(i)90位にセリン(S)および(ii)104位にイソロイシン(I)の1つまたは複数;
(p)(i)88位にアスパラギン酸(D)および(ii)105位にリシン(K)の1つまたは複数;
(q)(i)88位にアスパラギン(N)および(ii)126位にアルギニン(R)の1つまたは複数;
(r)(i)88位にアスパラギン(N)、(ii)90位にグルタミン(Q)および(iii)91位にアルギニン(R)の1つまたは複数;
(s)(i)88位にアスパラギン(N)、(ii)90位にグルタミン(Q)および(iii)91位にセリン(S)の1つまたは複数;
(t)(i)88位にアスパラギン(N)、(ii)90位にグルタミン(Q)および(iii)105位にバリン(V)の1つまたは複数;
(u)(i)90位にグルタミン(Q)、(ii)93位にセリン(S)および(iii)105位にアラニン(A)の1つまたは複数;
(v)(i)90位にフェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)またはヒスチジン(H)、(ii)91位にフェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)またはヒスチジン(H)および(iii)105位にフェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)またはヒスチジン(H)の1つまたは複数;
(w)(i)90位にセリン(S)、トレオニン(T)、グリシン(G)、アラニン(A)またはバリン(V)、(ii)91位にセリン(S)、トレオニン(T)、グリシン(G)、アラニン(A)またはバリン(V)および(iii)105位にセリン(S)、トレオニン(T)、グリシン(G)、アラニン(A)またはバリン(V)の1つまたは複数;
(x)90位にセリン(S)、アルギニン(R)、リシン(K)またはヒスチジン(H)および/または91位にセリン(S)、アルギニン(R)、リシン(K)またはヒスチジン(H);
(y)90位にセリン(S)、トレオニン(T)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、チロシン(Y)もしくはヒスチジン(H)および/または91位にセリン(S)、トレオニン(T)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、チロシン(Y)もしくはヒスチジン(H);ならびに
(z)90、91および103位の1つまたは複数にシステイン
の1つまたは複数を含む、上記[1]に記載の変異体。
[3]
前記バリアントが、次の置換(複数可):
の少なくとも1つを含む、上記[1]または[2]に記載の変異体。
[4]
化学修飾されている、上記[1]から[3]のいずれか一項に記載の変異体。
[5]
1つもしくは複数のシステインへの分子の付着、1つもしくは複数のリシンへの分子の付着、1つもしくは複数の非天然アミノ酸への分子の付着、エピトープの酵素修飾または末端の修飾によって化学修飾されている、上記[4]に記載の変異体。
[6]
前記1つまたは複数のシステインが、置換により前記変異体に導入されている、上記[5]に記載の変異体。
[7]
前記分子が、(a)前記モノマーを含む細孔と標的ヌクレオチドもしくは標的核酸配列との相互作用を促進する分子アダプターまたは(b)核酸結合タンパク質である、上記[5]または[6]に記載の変異体。
[8]
前記付着がリンカーを介している、上記[5]から[7]のいずれか一項に記載の変異体。
[9]
前記分子が、配列番号2の90、91および103位の1つまたは複数に付着している、上記[5]から[8]のいずれか一項に記載の変異体。
[10]
Mspから得られる共有結合したモノマーを2個以上含む構築物。
[11]
前記2個以上のモノマーが、同じまたは異なっている、上記[10]に記載の構築物。
[12]
少なくとも1つのモノマーが、配列番号2に示される配列を含む、上記[10]または[11]に記載の構築物。
[13]
前記モノマーの少なくとも1つが、上記[1]から[8]のいずれか一項に記載の変異体モノマーである、上記[10]から[12]のいずれか一項に記載の構築物。
[14]
2個のモノマーを含み、前記モノマーの少なくとも1つが、上記[1]から[8]のいずれか一項に記載の変異体である、上記[10]から[13]のいずれか一項に記載の構築物。
[15]
前記モノマーが遺伝学的に融合されている、上記[10]から[14]のいずれか一項に記載の構築物。
[16]
前記モノマーがリンカーを介して付着している、上記[10]から[15]のいずれか一項に記載の構築物。
[17]
上記[1]から[3]のいずれか一項に記載の変異体または上記[15]に記載の構築物をコードするポリヌクレオチド。
[18]
上記[1]から[3]のいずれか一項に記載の同一の変異体モノマーを含むMspから得られる、ホモオリゴマー細孔。
[19]
前記細孔が、上記[1]から[3]のいずれか一項に記載の同一の変異体モノマー8個を含む、上記[18]に記載のホモオリゴマー細孔。
[20]
上記[1]から[3]のいずれか一項に記載の変異体モノマーを少なくとも1つ含み、全8個のモノマーのうち少なくとも1つが他と異なっている、Mspから得られるヘテロオリゴマー細孔。
[21]
前記細孔が、上記[1]に記載の変異体モノマー8個を含み、そのうちの少なくとも1つが他と異なっている、上記[20]に記載のヘテロオリゴマー細孔。
[22]
前記細孔が、配列番号2に示される配列を含む少なくとも1つのモノマーを含む、上記[21]に記載のヘテロオリゴマー細孔。
[23]
前記細孔が、(a)1個の変異体モノマーおよび(b)7個の同一のモノマーを含み、(a)の前記変異体モノマーが(b)の前記同一のモノマーとは異なっている、上記[21]または[22]に記載のヘテロオリゴマー細孔。
[24]
前記細孔が、
(a)配列番号2に示される配列を含むモノマー7個および置換N90R、N90K、N90Y、N90Q、N90WもしくはN90Cを含む変異体モノマー1個;
(b)配列番号2に示される配列を含むモノマー7個および置換N91R、N91K、N91Y、N91Q、N91WもしくはN91Cを含む変異体モノマー1個;または、
(c)配列番号2に示される配列を含むモノマー7個および置換L88C、S103CもしくはI105Cを含む変異体モノマー1個
を含む、上記[21]から[23]のいずれか一項に記載のヘテロオリゴマー細孔。
[25]
前記変異体モノマーの少なくとも1つが、上記[4]から[9]に記載のとおり化学修飾されている、上記[18]から[24]のいずれか一項に記載の細孔。
[26]
上記[10]から[16]に記載の構築物を少なくとも1つ含む細孔。
[27]
(a)上記[13]に記載の構築物1個と、(b)(i)配列番号2に示される配列または(ii)上記[1]もしくは[2]に記載の配列番号2のバリアントを各々含むモノマー6個とを含む、上記[26]に記載の細孔。
[28]
上記[14]に記載の構築物4個を含む、上記[26]に記載の細孔。
[29]
前記構築物の少なくとも1つが、上記[4]から[9]に記載のとおり化学修飾されている、上記[26]から[28]のいずれか一項に記載の細孔。
[30]
標的核酸配列を特徴付ける方法であって、
(a)核酸結合タンパク質が、上記[18]から[29]のいずれか一項に記載の細孔を通る前記標的配列の移動を制御し、前記標的配列中のヌクレオチドの一部が前記細孔と相互作用できるように、前記標的配列を前記細孔および前記タンパク質と接触させるステップと;
(b)各相互作用の間に前記細孔を通る電流を測定し、それによって前記標的配列を特徴付けるステップと
を含む方法。
[31]
前記標的核酸配列を特徴付けるステップが、前記標的核酸配列の配列を推定するステップまたは配列決定するステップを含む、上記[30]に記載の方法。
[32]
(a)上記[18]から[29]のいずれか一項に記載の細孔および(b)核酸ハンドリング酵素を含む、標的核酸配列を特徴付けるためのキット。
[33]
サンプル中の標的核酸配列を特徴付けるための装置であって、(a)上記[18]から[29]に記載の複数の細孔および(b)複数の核酸ハンドリング酵素を含む装置。
[34]
前記複数の細孔を支持することができ、前記細孔および酵素を使用して核酸の特徴付けを行うように操作できるセンサーデバイスと;
前記特徴付けを行うための材料保持用の少なくとも1つの貯蔵部と;
前記少なくとも1つの貯蔵部から前記センサーデバイスへと制御可能に材料を供給するよう構成された流体系と;
それぞれのサンプルを受けるための複数の容器とを含み、前記流体系が、前記容器から前記センサーデバイスへと選択的に前記サンプルを供給するよう構成されている、上記[32]に記載の装置。
[35]
標的核酸配列を特徴付ける方法であって、
(a)Phi29DNAポリメラーゼがMspから得られる細孔を通る標的配列の移動を制御し、前記標的配列中のヌクレオチドの一部が前記細孔と相互作用するように、前記標的配列を前記細孔および前記ポリメラーゼと接触させるステップと;
(b)各相互作用の間に前記細孔を通る電流を測定し、それによって前記標的配列を特徴付けるステップとを含み、ステップ(a)および(b)が前記細孔に印加される電圧により実施される、方法。
[36]
前記標的核酸配列を特徴付けるステップが、前記標的核酸配列の配列を推定するステップまたは配列決定するステップを含む、上記[35]に記載の方法。
[37]
前記ポリメラーゼが印加電圧により生じる電場とは反対方向に前記細孔を通して前記標的配列を移動させるように、ステップ(a)および(b)が、遊離ヌクレオチドと酵素補因子の存在下で実施される、上記[35]または[36]に記載の方法。
[38]
(c)前記ポリメラーゼが、ステップ(a)および(b)における方向とは反対方向に前記細孔を通して前記標的配列を移動させ、前記標的配列中のヌクレオチドの一部が前記細孔と相互作用するように、前記遊離ヌクレオチドを取り除くステップと;
(d)各相互作用の間に前記細孔を通る電流を測定し、それによってステップ(b)において得られた前記標的配列の配列を校正するステップとをさらに含み、ステップ(c)および(d)もまた、前記細孔に印加される電圧により実施される、上記[37]に記載の方法。
[39]
前記ポリメラーゼが前記印加電圧により生じる電場に伴って前記細孔を通して前記標的配列を移動させるように、ステップ(a)および(b)が、遊離ヌクレオチドの非存在下および酵素補因子の存在下で実施される、上記[35]または[36]に記載の方法。
[40]
(c)前記ポリメラーゼが、ステップ(a)および(b)における方向とは反対方向に前記細孔を通して前記標的配列を移動させ、前記標的配列中のヌクレオチドの一部が前記細孔と相互作用するように、遊離ヌクレオチドを添加するステップと;
(d)各相互作用の間に前記細孔を通る電流を測定し、それによってステップ(b)において得られた前記標的配列の配列を校正するステップとをさらに含み、ステップ(c)および(d)もまた、前記細孔に印加される電圧により実施される、上記[39]に記載の方法。
[41]
前記ポリメラーゼが、前記印加電圧により生じる電場に伴って前記細孔を通る前記標的配列の移動を制御するように、ステップ(a)および(b)が、遊離ヌクレオチドの非存在下および酵素補因子の非存在下で実施される、上記[35]または[36]に記載の方法。
[42]
(c)前記標的配列が、ステップ(a)および(b)における方向とは反対方向に前記細孔を通って移動し、前記標的配列中のヌクレオチドの一部が前記細孔と相互作用するように、前記細孔に印加される前記電圧を下げるステップと;
(d)各相互作用の間に前記細孔を通る電流を測定し、それによってステップ(b)において得られた前記標的配列の配列を校正するステップとをさらに含み、ステップ(c)および(d)もまた、前記細孔に印加される電圧により実施される、上記[41]に記載の方法。
[43]
標的核酸配列を特徴付けるためのセンサーを形成する方法であって、
(a)前記標的核酸配列の存在下でMspから得られる細孔をPhi29DNAポリメラーゼと接触させるステップと;
(b)前記細孔に電圧を印加して、前記細孔と前記ポリメラーゼとの複合体を形成させるステップと
を含み、それによって前記標的核酸配列を特徴付けるためのセンサーを形成する、方法。
[44]
Phi29DNAポリメラーゼの活性速度を高める方法であって、
(a)核酸配列の存在下で前記Phi29DNAポリメラーゼをMspから得られる細孔と接触させるステップと;
(b)前記細孔に電圧を印加して、前記細孔と前記ポリメラーゼとの複合体を形成させるステップと
を含み、それによってPhi29DNAポリメラーゼの活性速度を高める、方法。
[45]
前記細孔への印加電圧を増加させて、前記Phi29DNAポリメラーゼの活性速度を高めるステップをさらに含む、上記[43]または[44]に記載の方法。
[46]
前記核酸配列の少なくとも一部が二本鎖である、上記[35]から[45]のいずれか一項に記載の方法。
[47]
前記細孔が、上記[18]から[29]のいずれか一項に記載のとおりである、上記[35]から[46]のいずれか一項に記載の方法。
[48]
前記細孔が、配列番号2に示される配列またはそのバリアントを含むモノマー8個を含む、上記[35]から[46]のいずれか一項に記載の方法。
[49]
前記Phi29DNAポリメラーゼが、配列番号4に示される配列、または全配列にわたるアミノ酸同一性に基づいて、配列番号4と少なくとも50%の相同性を有するそのバリアントを含み、酵素活性を保持している、上記[35]から[48]のいずれか一項に記載の方法。
[50]
(a)Mspから得られる細孔および(b)Phi29DNAポリメラーゼを含む、標的核酸配列を特徴付けるためのキット。
[51]
サンプル中の標的核酸配列を特徴付けるための装置であって、Mspから得られる複数の細孔および複数のPhi29DNAポリメラーゼを含む装置。
[52]
上記[34]に記載のとおりである、上記[51]に記載の装置。

Claims (52)

  1. 配列番号2に示される配列のバリアントを含む変異体Mspモノマーであって、前記バ
    リアントが以下の変異:
    (a)88位にアスパラギン(N)、セリン(S)、グルタミン(Q)またはトレオニ
    ン(T);
    (b)90位にセリン(S)、グルタミン(Q)またはチロシン(Y);
    (c)105位にロイシン(L)またはセリン(S);
    (d)126位にアルギニン(R);
    (e)75位にセリン(S);
    (f)77位にセリン(S);
    (g)59位にアルギニン(R);
    (h)75位にグルタミン(Q)、アスパラギン(N)またはトレオニン(T);
    (i)77位にグルタミン(Q)、アスパラギン(N)またはトレオニン(T);
    (j)78位にロイシン(L);
    (k)81位にアスパラギン(N);
    (l)83位にアスパラギン(N);
    (m)86位にセリン(S)またはトレオニン(T);
    (n)87位にフェニルアラニン(F)、バリン(V)またはロイシン(L);
    (o)88位にチロシン(Y)、フェニルアラニン(F)、バリン(V)、アルギニン
    (R)、アラニン(A)、グリシン(G)またはシステイン(C);
    (p)89位にフェニルアラニン(F)、バリン(V)またはロイシン(L);
    (q)90位にロイシン(L)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ヒ
    スチジン(H)、トレオニン(T)、グリシン(G)、アラニン(A)、バリン(V)、
    アルギニン(R)、リシン(K)、アスパラギン(N)またはシステイン(C);
    (r)91位にセリン(S)、グルタミン(Q)、ロイシン(L)、メチオニン(M)
    、イソロイシン(I)、アラニン(A)、バリン(V)、グリシン(G)、フェニルアラ
    ニン(F)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)、ヒスチジン(H)、トレオニン(
    T)、アルギニン(R)、リシン(K)、アスパラギン(N)またはシステイン(C);
    (s)92位にアラニン(A)またはセリン(S);
    (t)93位にセリン(S)、アラニン(A)、トレオニン(T)、グリシン(G);
    (u)94位にロイシン(L);
    (v)95位にバリン(V);
    (w)96位にアルギニン(R)、アスパラギン酸(D)、バリン(V)、アスパラギ
    ン(N)、セリン(S)またはトレオニン(T);
    (x)97位にセリン(S);
    (y)98位にセリン(S);
    (z)99位にセリン(S);
    (aa)100位にセリン(S);
    (bb)101位にフェニルアラニン(F);
    (cc)102位にリシン(K)、セリン(S)またはトレオニン(T);
    (dd)103位にアラニン(A)、グルタミン(Q)、アスパラギン(N)、グリシ
    ン(G)またはトレオニン(T);
    (ee)104位にイソロイシン;
    (ff)105位にチロシン(Y)、アラニン(A)、グルタミン(Q)、アスパラギ
    ン(N)、トレオニン(T)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、ヒスチ
    ジン(H)、グリシン(G)、バリン(V)、アルギニン(R)、リシン(K)、プロリ
    ン(P)またはシステイン(C);
    (gg)106位にフェニルアラニン(F)、イソロイシン(I)、バリン(V)また
    はセリン(S);
    (hh)108位にプロリン(P)またはセリン(S);
    (ii)118位にアスパラギン(N);
    (jj)103位にセリン(S)またはシステイン(C);
    (kk)10〜15、51〜60、136〜139および168〜172位のうちの1
    つまたは複数にシステイン
    の少なくとも1つを含む、変異体。
  2. 前記バリアントが、次の置換:
    (a)(i)75位にセリン(S)、(ii)77位にセリン(S)、(iii)88
    位にアスパラギン(N)、(iv)90位にグルタミン(Q)および(v)126位にア
    ルギニン(R)の1つまたは複数;
    (b)(i)90位にグルタミン(Q)および(ii)126位にアルギニン(R)の
    1つまたは複数;
    (c)(i)88位にアスパラギン(N)、(ii)90位にグルタミン(Q)および
    (iii)126位にアルギニン(R)の1つまたは複数;
    (d)(i)88位にセリン(S)および(ii)90位にグルタミン(Q)の1つま
    たは複数;
    (e)(i)88位にアスパラギン(N)および(ii)90位にグルタミン(Q)の
    1つまたは複数;
    (f)(i)90位にグルタミン(Q)および(ii)105位にアラニン(A)の1
    つまたは複数;
    (g)(i)90位にセリン(S)および(ii)92位にセリン(S)の1つまたは
    複数;
    (h)(i)88位にトレオニン(T)および(ii)90位にセリン(S)の1つま
    たは複数;
    (i)(i)87位にグルタミン(Q)および(ii)90位にセリン(S)の1つま
    たは複数;
    (j)(i)89位にチロシン(Y)および(ii)90位にセリン(S)の1つまた
    は複数;
    (k)(i)88位にアスパラギン(N)および(ii)89位にフェニルアラニン(
    F)の1つまたは複数;
    (l)(i)88位にアスパラギン(N)および(ii)89位にチロシン(Y)の1
    つまたは複数;
    (m)(i)90位にセリン(S)および(ii)92位にアラニン(A)の1つまた
    は複数;
    (n)(i)90位にセリン(S)および(ii)94位にアスパラギン(N)の1つ
    または複数;
    (o)(i)90位にセリン(S)および(ii)104位にイソロイシン(I)の1
    つまたは複数;
    (p)(i)88位にアスパラギン酸(D)および(ii)105位にリシン(K)の
    1つまたは複数;
    (q)(i)88位にアスパラギン(N)および(ii)126位にアルギニン(R)
    の1つまたは複数;
    (r)(i)88位にアスパラギン(N)、(ii)90位にグルタミン(Q)および
    (iii)91位にアルギニン(R)の1つまたは複数;
    (s)(i)88位にアスパラギン(N)、(ii)90位にグルタミン(Q)および
    (iii)91位にセリン(S)の1つまたは複数;
    (t)(i)88位にアスパラギン(N)、(ii)90位にグルタミン(Q)および
    (iii)105位にバリン(V)の1つまたは複数;
    (u)(i)90位にグルタミン(Q)、(ii)93位にセリン(S)および(ii
    i)105位にアラニン(A)の1つまたは複数;
    (v)(i)90位にフェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、チロシン(Y
    )またはヒスチジン(H)、(ii)91位にフェニルアラニン(F)、トリプトファン
    (W)、チロシン(Y)またはヒスチジン(H)および(iii)105位にフェニルア
    ラニン(F)、トリプトファン(W)、チロシン(Y)またはヒスチジン(H)の1つま
    たは複数;
    (w)(i)90位にセリン(S)、トレオニン(T)、グリシン(G)、アラニン(
    A)またはバリン(V)、(ii)91位にセリン(S)、トレオニン(T)、グリシン
    (G)、アラニン(A)またはバリン(V)および(iii)105位にセリン(S)、
    トレオニン(T)、グリシン(G)、アラニン(A)またはバリン(V)の1つまたは複
    数;
    (x)90位にセリン(S)、アルギニン(R)、リシン(K)またはヒスチジン(H
    )および/または91位にセリン(S)、アルギニン(R)、リシン(K)またはヒスチ
    ジン(H);
    (y)90位にセリン(S)、トレオニン(T)、アスパラギン(N)、グルタミン(
    Q)、チロシン(Y)もしくはヒスチジン(H)および/または91位にセリン(S)、
    トレオニン(T)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、チロシン(Y)もしくはヒ
    スチジン(H);ならびに
    (z)90、91および103位の1つまたは複数にシステイン
    の1つまたは複数を含む、請求項1に記載の変異体。
  3. 前記バリアントが、次の置換(複数可):
    の少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載の変異体。
  4. 化学修飾されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の変異体。
  5. 1つもしくは複数のシステインへの分子の付着、1つもしくは複数のリシンへの分子の
    付着、1つもしくは複数の非天然アミノ酸への分子の付着、エピトープの酵素修飾または
    末端の修飾によって化学修飾されている、請求項4に記載の変異体。
  6. 前記1つまたは複数のシステインが、置換により前記変異体に導入されている、請求項
    5に記載の変異体。
  7. 前記分子が、(a)前記モノマーを含む細孔と標的ヌクレオチドもしくは標的核酸配列
    との相互作用を促進する分子アダプターまたは(b)核酸結合タンパク質である、請求項
    5または6に記載の変異体。
  8. 前記付着がリンカーを介している、請求項5から7のいずれか一項に記載の変異体。
  9. 前記分子が、配列番号2の90、91および103位の1つまたは複数に付着している
    、請求項5から8のいずれか一項に記載の変異体。
  10. Mspから得られる共有結合したモノマーを2個以上含む構築物。
  11. 前記2個以上のモノマーが、同じまたは異なっている、請求項10に記載の構築物。
  12. 少なくとも1つのモノマーが、配列番号2に示される配列を含む、請求項10または1
    1に記載の構築物。
  13. 前記モノマーの少なくとも1つが、請求項1から8のいずれか一項に記載の変異体モノ
    マーである、請求項10から12のいずれか一項に記載の構築物。
  14. 2個のモノマーを含み、前記モノマーの少なくとも1つが、請求項1から8のいずれか
    一項に記載の変異体である、請求項10から13のいずれか一項に記載の構築物。
  15. 前記モノマーが遺伝学的に融合されている、請求項10から14のいずれか一項に記載
    の構築物。
  16. 前記モノマーがリンカーを介して付着している、請求項10から15のいずれか一項に
    記載の構築物。
  17. 請求項1から3のいずれか一項に記載の変異体または請求項15に記載の構築物をコー
    ドするポリヌクレオチド。
  18. 請求項1から3のいずれか一項に記載の同一の変異体モノマーを含むMspから得られ
    る、ホモオリゴマー細孔。
  19. 前記細孔が、請求項1から3のいずれか一項に記載の同一の変異体モノマー8個を含む
    、請求項18に記載のホモオリゴマー細孔。
  20. 請求項1から3のいずれか一項に記載の変異体モノマーを少なくとも1つ含み、全8個
    のモノマーのうち少なくとも1つが他と異なっている、Mspから得られるヘテロオリゴ
    マー細孔。
  21. 前記細孔が、請求項1に記載の変異体モノマー8個を含み、そのうちの少なくとも1つ
    が他と異なっている、請求項20に記載のヘテロオリゴマー細孔。
  22. 前記細孔が、配列番号2に示される配列を含む少なくとも1つのモノマーを含む、請求
    項21に記載のヘテロオリゴマー細孔。
  23. 前記細孔が、(a)1個の変異体モノマーおよび(b)7個の同一のモノマーを含み、
    (a)の前記変異体モノマーが(b)の前記同一のモノマーとは異なっている、請求項2
    1または22に記載のヘテロオリゴマー細孔。
  24. 前記細孔が、
    (a)配列番号2に示される配列を含むモノマー7個および置換N90R、N90K、
    N90Y、N90Q、N90WもしくはN90Cを含む変異体モノマー1個;
    (b)配列番号2に示される配列を含むモノマー7個および置換N91R、N91K、
    N91Y、N91Q、N91WもしくはN91Cを含む変異体モノマー1個;または、
    (c)配列番号2に示される配列を含むモノマー7個および置換L88C、S103C
    もしくはI105Cを含む変異体モノマー1個
    を含む、請求項21から23のいずれか一項に記載のヘテロオリゴマー細孔。
  25. 前記変異体モノマーの少なくとも1つが、請求項4から9に記載のとおり化学修飾され
    ている、請求項18から24のいずれか一項に記載の細孔。
  26. 請求項10から16に記載の構築物を少なくとも1つ含む細孔。
  27. (a)請求項13に記載の構築物1個と、(b)(i)配列番号2に示される配列また
    は(ii)請求項1もしくは2に記載の配列番号2のバリアントを各々含むモノマー6個
    とを含む、請求項26に記載の細孔。
  28. 請求項14に記載の構築物4個を含む、請求項26に記載の細孔。
  29. 前記構築物の少なくとも1つが、請求項4から9に記載のとおり化学修飾されている、
    請求項26から28のいずれか一項に記載の細孔。
  30. 標的核酸配列を特徴付ける方法であって、
    (a)核酸結合タンパク質が、請求項18から29のいずれか一項に記載の細孔を通る
    前記標的配列の移動を制御し、前記標的配列中のヌクレオチドの一部が前記細孔と相互作
    用できるように、前記標的配列を前記細孔および前記タンパク質と接触させるステップと

    (b)各相互作用の間に前記細孔を通る電流を測定し、それによって前記標的配列を特
    徴付けるステップと
    を含む方法。
  31. 前記標的核酸配列を特徴付けるステップが、前記標的核酸配列の配列を推定するステッ
    プまたは配列決定するステップを含む、請求項30に記載の方法。
  32. (a)請求項18から29のいずれか一項に記載の細孔および(b)核酸ハンドリング
    酵素を含む、標的核酸配列を特徴付けるためのキット。
  33. サンプル中の標的核酸配列を特徴付けるための装置であって、(a)請求項18から2
    9に記載の複数の細孔および(b)複数の核酸ハンドリング酵素を含む装置。
  34. 前記複数の細孔を支持することができ、前記細孔および酵素を使用して核酸の特徴付け
    を行うように操作できるセンサーデバイスと;
    前記特徴付けを行うための材料保持用の少なくとも1つの貯蔵部と;
    前記少なくとも1つの貯蔵部から前記センサーデバイスへと制御可能に材料を供給する
    よう構成された流体系と;
    それぞれのサンプルを受けるための複数の容器とを含み、前記流体系が、前記容器から
    前記センサーデバイスへと選択的に前記サンプルを供給するよう構成されている、請求項
    32に記載の装置。
  35. 標的核酸配列を特徴付ける方法であって、
    (a)Phi29DNAポリメラーゼがMspから得られる細孔を通る標的配列の移動
    を制御し、前記標的配列中のヌクレオチドの一部が前記細孔と相互作用するように、前記
    標的配列を前記細孔および前記ポリメラーゼと接触させるステップと;
    (b)各相互作用の間に前記細孔を通る電流を測定し、それによって前記標的配列を特
    徴付けるステップとを含み、ステップ(a)および(b)が前記細孔に印加される電圧に
    より実施される、方法。
  36. 前記標的核酸配列を特徴付けるステップが、前記標的核酸配列の配列を推定するステッ
    プまたは配列決定するステップを含む、請求項35に記載の方法。
  37. 前記ポリメラーゼが印加電圧により生じる電場とは反対方向に前記細孔を通して前記標
    的配列を移動させるように、ステップ(a)および(b)が、遊離ヌクレオチドと酵素補
    因子の存在下で実施される、請求項35または36に記載の方法。
  38. (c)前記ポリメラーゼが、ステップ(a)および(b)における方向とは反対方向に
    前記細孔を通して前記標的配列を移動させ、前記標的配列中のヌクレオチドの一部が前記
    細孔と相互作用するように、前記遊離ヌクレオチドを取り除くステップと;
    (d)各相互作用の間に前記細孔を通る電流を測定し、それによってステップ(b)に
    おいて得られた前記標的配列の配列を校正するステップとをさらに含み、ステップ(c)
    および(d)もまた、前記細孔に印加される電圧により実施される、請求項37に記載の
    方法。
  39. 前記ポリメラーゼが前記印加電圧により生じる電場に伴って前記細孔を通して前記標的
    配列を移動させるように、ステップ(a)および(b)が、遊離ヌクレオチドの非存在下
    および酵素補因子の存在下で実施される、請求項35または36に記載の方法。
  40. (c)前記ポリメラーゼが、ステップ(a)および(b)における方向とは反対方向に
    前記細孔を通して前記標的配列を移動させ、前記標的配列中のヌクレオチドの一部が前記
    細孔と相互作用するように、遊離ヌクレオチドを添加するステップと;
    (d)各相互作用の間に前記細孔を通る電流を測定し、それによってステップ(b)に
    おいて得られた前記標的配列の配列を校正するステップとをさらに含み、ステップ(c)
    および(d)もまた、前記細孔に印加される電圧により実施される、請求項39に記載の
    方法。
  41. 前記ポリメラーゼが、前記印加電圧により生じる電場に伴って前記細孔を通る前記標的
    配列の移動を制御するように、ステップ(a)および(b)が、遊離ヌクレオチドの非存
    在下および酵素補因子の非存在下で実施される、請求項35または36に記載の方法。
  42. (c)前記標的配列が、ステップ(a)および(b)における方向とは反対方向に前記
    細孔を通って移動し、前記標的配列中のヌクレオチドの一部が前記細孔と相互作用するよ
    うに、前記細孔に印加される前記電圧を下げるステップと;
    (d)各相互作用の間に前記細孔を通る電流を測定し、それによってステップ(b)に
    おいて得られた前記標的配列の配列を校正するステップとをさらに含み、ステップ(c)
    および(d)もまた、前記細孔に印加される電圧により実施される、請求項41に記載の
    方法。
  43. 標的核酸配列を特徴付けるためのセンサーを形成する方法であって、
    (a)前記標的核酸配列の存在下でMspから得られる細孔をPhi29DNAポリメ
    ラーゼと接触させるステップと;
    (b)前記細孔に電圧を印加して、前記細孔と前記ポリメラーゼとの複合体を形成させ
    るステップと
    を含み、それによって前記標的核酸配列を特徴付けるためのセンサーを形成する、方法。
  44. Phi29DNAポリメラーゼの活性速度を高める方法であって、
    (a)核酸配列の存在下で前記Phi29DNAポリメラーゼをMspから得られる細
    孔と接触させるステップと;
    (b)前記細孔に電圧を印加して、前記細孔と前記ポリメラーゼとの複合体を形成させ
    るステップと
    を含み、それによってPhi29DNAポリメラーゼの活性速度を高める、方法。
  45. 前記細孔への印加電圧を増加させて、前記Phi29DNAポリメラーゼの活性速度を
    高めるステップをさらに含む、請求項43または44に記載の方法。
  46. 前記核酸配列の少なくとも一部が二本鎖である、請求項35から45のいずれか一項に
    記載の方法。
  47. 前記細孔が、請求項18から29のいずれか一項に記載のとおりである、請求項35か
    ら46のいずれか一項に記載の方法。
  48. 前記細孔が、配列番号2に示される配列またはそのバリアントを含むモノマー8個を含
    む、請求項35から46のいずれか一項に記載の方法。
  49. 前記Phi29DNAポリメラーゼが、配列番号4に示される配列、または全配列にわ
    たるアミノ酸同一性に基づいて、配列番号4と少なくとも50%の相同性を有するそのバ
    リアントを含み、酵素活性を保持している、請求項35から48のいずれか一項に記載の
    方法。
  50. (a)Mspから得られる細孔および(b)Phi29DNAポリメラーゼを含む、標
    的核酸配列を特徴付けるためのキット。
  51. サンプル中の標的核酸配列を特徴付けるための装置であって、Mspから得られる複数
    の細孔および複数のPhi29DNAポリメラーゼを含む装置。
  52. 請求項34に記載のとおりである、請求項51に記載の装置。
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