本発明の第1の実施例として、本発明を建設機械としての油圧ショベルに適用した例を説明する。
図1は、本実施例に係る油圧ショベルの外観図である。
図1において、油圧ショベル1は、下部走行体101と、下部走行体101に旋回可能に搭載された上部旋回体102と、フロント作業装置103とで構成されている。上部旋回体102の前方左側部分には、作業者が搭乗する運転室104が設けられている。
フロント作業装置103は、第1フロント部材としてのブーム103a、第2フロント部材としてのアーム103b及びアタッチメントとしてのバケット103cを含む複数のフロント部材を有している。ブーム103aの基端部は上部旋回体102の前部に上下方向に回動可能に支持され、アーム103bの基端部はブーム103aの先端部に上下方向に回動可能に連結され、バケット103cはアーム103bの先端部に上下方向に回動可能に連結されている。
ブーム103a、アーム103b、バケット103c、上部旋回体102及び下部走行体101はそれぞれブームシリンダ3a、アームシリンダ3b、バケットシリンダ3c、旋回モータ(図示せず)及び左右の走行モータ3f,3gにより駆動される。
図2は、アタッチメントとしてバケット103cに代えて長さが大きいブレーカ103dを装着した場合の従来の油圧ショベルの外観図である。
図1に示した本実施例に係る油圧ショベル1では、アーム103bを掻き込み操作したときにバケット103cがブーム103aに干渉することがないようにアーム103bの掻き込み側の停止角度位置R1が設定されている。この点は、図2に示した従来の油圧ショベル1Xでも同様である。しかしながら、従来の油圧ショベル1Xでは、バケット103cに代えてブレーカ103dを装着した場合、アタッチメントの回動支点から先端までの寸法がバケット103cの場合よりも大きくなるため、アーム103bを掻き込み操作したときに、図2に示すようにブレーカ103dがブーム103aに干渉するおそれがある。
図3は、アタッチメントとしてバケット103cに代えて長さが大きいブレーカ103dを装着した場合の本実施例に係る油圧ショベル1の外観図である。
本実施例に係る油圧ショベル1では、フロント作業装置103のアタッチメントをバケット103cからブレーカ103dに交換する際に、図3に示すように、ブーム103aの先端部に設けられた先端ブラケット40に、アーム103bの掻き込み側の停止角度位置を図1の矢印R1で示す位置から矢印R2で示す位置に機械的に制限するストッパ50を取り付けることにより、ブレーカ103dがブーム103aに干渉することを防止する。
ストッパ50は、以下に説明するストッパ本体51と後述する緩衝材52(図10に示す)とを有する。図4にストッパ本体51の斜視図、図5にストッパ本体51の正面図、図6に図5のA−A断面図、図7に図5のB−B断面図を示す。
ストッパ本体51は、図4に示すように、上面が底面に対して所定の角度(以下「上面傾斜角」という。)θを有する角柱形状の部材によって構成されている。ストッパ本体51の上部には、図4及び図5に示すように、ストッパ本体51の上面から底面に向かって2つの円柱穴53が形成されており、これら2つの円柱穴53の底部には、図6及び図7に示すように、ストッパ本体51の底面に貫通するボルト穴54がそれぞれ形成されている。
ストッパ本体51の高さ寸法H及び上面傾斜角θは、アーム103bの掻き込み側の停止角度位置R2(図3に示す)に応じて設定される。また、ストッパ本体51の幅寸法W及び厚さ寸法Tは、アーム103bの衝突時の負荷や先端ブラケット40内の取り付けスペース等を考慮して設定される。
図8に、ブーム103aの先端部の分解斜視図を示し、図9に、ストッパ50が取り付けられていない状態でのアーム103bとブーム103aとの連結部分の拡大図を示し、図10に、ストッパ50が取り付けられた状態でのブーム103aとアーム103bとの連結部分の拡大図を示す。
ブーム103aの本体部分は、左右の側板103a1,103a2、左右の側板103a1,103a2の上縁部に溶接された上板103a3及び左右の側板の下縁部に溶接された下板103a4によって断面ボックス状に構成されている。アーム103bの本体部分も同様に、左右の側板103b1(左側のみ図示)、左右の側板103b1の上縁部に溶接された上板(図示せず)及び左右の側板の下縁部に溶接された下板103b2によって断面ボックス状に構成されている。
先端ブラケット40は、アーム103bの基端部を回動可能に支持する左右のブラケット側板41,42と、これら左右のブラケット側板41,42を内側より補強する中間閉鎖板43とで構成されている。
左右のブラケット側板41,42は、鍛造又は厚板で製造された鋼製の板部材であり、その先端付近には、アーム103bの基端部をピン結合する軸ピン44を挿通するためのピン孔41a,42aがそれぞれ形成されている。左右のブラケット側板41,42の外側面には、補強板45,46がそれぞれ接合されている。左右のブラケット側板41,42の基端側の端面は、ブーム103aの左右の側板103a1,103a2の先端側の端面にそれぞれ溶接で接合されている。
中間閉鎖板43は、曲げ板構造をしており、略く字状の曲げ板部分43aと、曲げ板部分43aの上側端部及び下側端部からそれぞれ後方に延びる上板部分43b及び下板部分43cとにより概略U字型に構成されている。中間閉鎖板43の左右の端面は、左右のブラケット側板41,42の内側面にそれぞれ溶接で接合されている。中間閉鎖板43の上側端面(上板部分43bの端面)は、ブーム103aの上板103a3の先端面に溶接で接合されており、中間閉鎖板43の下側端面(下板部分43cの端面)は、ブーム103aの下板103a4の先端面に溶接で接合されている。
中間閉鎖板43の曲げ板部分43aの下側傾斜部43a1には、厚板部材で構成されたストッパ取付座60が溶接で接合されている。ストッパ取付座60は、ストッパ50を取り付けるための台座であり、ストッパ本体51の2つのボルト穴54(図6及び図7に示す)に対応して形成された2つのボルト穴61を有する。ストッパ本体51の2つのボルト穴54とストッパ取付座60の2つのボルト穴61とに2本の取付ボルト70をそれぞれ通すことにより、ストッパ50が先端ブラケット40に固定される。
ストッパ取付座60の厚さ寸法は、先端ブラケット40の側方から見たときに左右のブラケット側板41,42によって隠れるように、かつできるだけ大きく設定することが望ましい。これにより、取付ボルト70によるストッパ50の取り付け強度を確保すると共に、ストッパ50を取り付けていない状態での油圧ショベル1の外観を維持することができる。
ストッパ本体51の上面(アーム103bの下板103b2に突き当たる側の面)には、硬質ゴム等からなる板状の緩衝材52が接着等により接合されている。これにより、アーム103bが衝突した際の衝撃を和らげると共に、ストッパ50との衝突からアーム103bの下板103b2を保護することができる。
本実施例によれば、油圧ショベル1のフロント作業装置103のアタッチメントをバケット103cから長さが大きいブレーカ103dに交換する際に、ブーム103aの先端部に設けられた先端ブラケット40(ストッパ取付座60)にストッパ50を取り付けることにより、アーム103bの掻き込み側の停止角度位置が図1の矢印R1で示す位置から図3の矢印R2に示す位置に機械的に制限される。すなわち、アーム103bが掻き込み操作されて停止角度位置R2に到達すると、ストッパ50がアーム103bの下面(下板103b2)に突き当たり、アーム103bのそれ以上の掻き込み動作が停止する。これにより、バケット103cに代えて長さが大きいブレーカ103dを装着した場合でも、アーム103bの掻き込み操作時にブレーカ103dがブーム103aに干渉することを確実に防止することが可能となる。
なお、ブレーカ103d以外のアタッチメントを装着する場合は、当該アタッチメントの種類に応じてアーム103bの掻き込み側の停止角度位置を変更できるように高さ寸法Hが設定されたストッパ50をストッパ取付座60に取り付けることにより、ブレーカ103dを装着した場合と同様に、他のフロント部材との干渉を確実に防止することが可能となる。
本発明の第2の実施例として、本発明を建設機械としてのオフセット式油圧ショベルに適用した例を説明する。
図11は、本実施例に係るオフセット式油圧ショベルの外観図である。
図11において、オフセット式油圧ショベル1Aは、自走可能な下部走行体101と、下部走行体101に旋回可能に搭載された上部旋回体102と、オフセットタイプのフロント作業装置203とで構成されている。上部旋回体102の前方左側部分には、作業者が搭乗する運転室104が設けられている。
フロント作業装置203は、ブーム(ロアブーム)203a、オフセット(アッパブーム)203d、シリンダステー203e、アーム103b及びバケット103cを含む複数のフロント部材を有している。ブーム203aの基端部は上部旋回体102の前部に上下方向に回動可能に支持され、オフセット203dの基端部はブーム203aの先端部に左右方向に回動可能に連結され、シリンダステー203eの基端部はオフセット203dの先端部に左右方向に回動可能に連結され、アーム103bの基端部はシリンダステー203eの先端部に上下方向に回動可能に連結され、バケット103cはアーム103bの先端部に上下方向に回動可能に連結されている。
ブーム203aとシリンダステー203eとの間には、一端が連結部材203fを介してシリンダステー203eの基端部に左右方向に回動可能に連結され、他端が連結部材203gを介してブーム203aの先端部に左右方向に回動可能に連結されたロッド203hが設けられている。これにより、ロッド203hは、ブーム203a、オフセット203d及びシリンダステー203eと共に、平行リンク機構を構成している。なお、本実施例における第1フロント部材は、ブーム101a、オフセット203d及びシリンダステー203eによって構成されている。
ブーム203a、オフセット203d、アーム103b、バケット103c、上部旋回体102及び下部走行体101はそれぞれブームシリンダ3a、オフセットシリンダ3d、アームシリンダ3b、バケットシリンダ3c、旋回モータ(図示せず)及び左右の走行モータ3f,3gにより駆動される。オフセットシリンダ3dを伸縮させたときには、ブーム203aの先端側でオフセット203dが左右方向に揺動する。このとき、シリンダステー203eは、上述した平行リンク機構によってオフセット203dと逆向きに揺動され、ブーム203aに対して平行な状態に保持される。下部走行体101の前方部にはブレード105が上下方向に回動可能に連結されており、ブレード105は図示しないブレードシリンダにより駆動される。
ブーム203a、アーム103b及びオフセット203dのそれぞれの回動支点には、ブーム203a、アーム103b及びオフセット203dの回動角を検出する角度センサ31a,31b,31cがそれぞれ設けられている。
図12は、オフセット式油圧ショベル1Aの油圧システム及び干渉防止制御システムを示す図である。図12において、オフセット式油圧ショベル1Aの油圧システムは、エンジン(図示せず)によって駆動される油圧ポンプ2と、この油圧ポンプ2からの圧油により駆動されるブームシリンダ3a、アームシリンダ3b、バケットシリンダ3c、オフセットシリンダ3d、旋回モータ3e及び左右の走行モータ3f,3gを含む複数のアクチュエータと、これら油圧アクチュエータ3a〜3gのそれぞれに対応して設けられた操作レバー装置4a〜4gと、油圧ポンプ2と複数の油圧アクチュエータ3a〜3g間に接続され、操作レバー装置4a〜4gの操作パイロット圧によって中立位置から切り換えられ、油圧アクチュエータ3a〜3gに供給される圧油の流量を制御する複数の流量制御弁5a〜5gと、安全弁としてのメインリリーフ弁6とを有している。なお、図12においては図示を省略しているが、ブレードシリンダの駆動に係わる部分も油圧システムに含まれる。
操作レバー装置4a〜4gはリモコン弁(減圧弁)を内蔵した油圧パイロット式であり、エンジンによって駆動されるパイロットポンプ7の吐出油路7aにパイロット圧供給油路7bを介して接続され、パイロットポンプ7で生成される油圧(一次圧)に基づいて、それぞれ作業者により操作される操作レバーの操作量と操作方向に応じた指令パイロット圧(二次圧)を生成する。これらの指令パイロット圧はパイロットライン10a,10b〜16a,16bを介して対応する流量制御弁5a〜5gの油圧駆動部20a,20b〜26a,26bに導かれる。パイロットポンプ7の吐出油路7aはパイロットポンプ7の吐出圧を一定に保持するパイロットリリーフ弁8を備えている。
図12において、オフセット式油圧ショベル1Aの干渉防止制御システムは、ブーム203a、アーム103b及びオフセット203dの回動角をそれぞれ検出する角度センサ31a,31b,31cと、角度センサ31a,31b,31cからの信号を入力し、干渉防止制御の演算処理を行う干渉防止コントローラ(以下単に「コントローラ」という。)32と、パイロットライン10a,11a,13bに設けられ、コントローラ32から出力される駆動電流により駆動される電磁比例減圧弁33a,33b,33cと、パイロットポンプ7の吐出油路7aとパイロット圧供給油路7bとの間に配置された電磁切換式の油圧ロック弁34とを備えている。
電磁比例減圧弁33a,33b,33cは操作レバー装置4a,4b,4dにより生成された指令パイロット圧を駆動電流に応じて減圧し、その減圧した指令パイロット圧がパイロットライン10a,11a,13bを介して流量制御弁5a,5b,5dの油圧駆動部20a,21a,23bに導かれる。
油圧ロック弁34は、通常時は、コントローラ32から出力されるON信号により図示左側の位置に切り換えられており、この場合は、パイロットポンプ7の吐出圧が一次圧としてパイロット圧供給油路7bに導かれ、操作レバー装置4a〜4gはそれぞれの操作レバーの操作により指令パイロット圧を生成可能である。コントローラ32から出力されていたON信号がOFF信号に切り換わると油圧ロック弁34は図示右側の位置に切り換えられ、パイロットポンプ7の吐出油路7aとパイロット圧供給油路7bとの接続を遮断し、パイロット圧供給油路7bをタンクに接続する。これにより操作レバー装置4a〜4gはそれぞれの操作レバーが操作されても指令パイロット圧が生成不能となり、油圧システムが動作不能となる。その結果、油圧ショベル1の全動作が停止する。
図13及び図14は、干渉防止制御の概念をそれぞれオフセット式油圧ショベル1Aの側面及び上面で示す図である。図13及び図14において、運転室104の周囲に外側から内側に向かって順に、非制御領域X、減速領域A、停止領域B及び禁止領域Cが設定されている。ここで、減速領域A、停止領域B及び禁止領域Cは、制御領域Yを構成している。非制御領域Xと減速領域Aとは境界面E1によって仕切られ、減速領域Aと停止領域Bとは境界面E2によって仕切られ、停止領域Bと禁止領域Cとは境界面E3によって仕切られ、禁止領域Cの内側には運転室104と接するように基準面Fが設定されている。減速領域Aは駆動されているフロント部材の動作速度を減速させることでフロント作業装置203の動作速度を減速する領域であり、停止領域Bは駆動されているフロント部材の動作を停止させることでフロント作業装置203の動作を停止させる領域である。禁止領域Cは、万一、フロント作業装置203が停止領域Bを超えて禁止領域Cに侵入したときに、油圧システムを動作不能とすることで油圧ショベル1の全動作を停止させる領域である。
次に、上述した干渉防止制御を実現するコントローラ32の機能を図15〜図17を用いて説明する。
図15は、コントローラ32の入出力を示す図である。
コントローラ32は、後述する変換テーブル32aを参照し、角度センサ31a,31b,31cで検出したブーム203a、アーム103b及びオフセット203dの回動角に応じて、ブーム上げ指令パイロット圧を減圧する電磁比例減圧弁33a、アーム掻き込み指令パイロット圧を減圧する電磁比例減圧弁33b、オフセット左指令パイロット圧を減圧する電磁比例減圧弁33c、及び油圧ロック弁34に駆動電流を出力する。
図16は、コントローラ32の処理を示すフローチャートである。以下、各ステップを順に説明する。
まず、コントローラ32は、角度センサ31a,31b,31cから入力されたブーム203a、アーム103b及びオフセット203dの回動角と、メモリ等に記憶してある各フロント部材の寸法とに基づいて、バケット103cの位置を計算する(ステップS1)。この場合、バケット103cの位置としては、バケット103cが運転室104の前面及び頂部に向かうよう操作されたときの第1位置と、バケット103cが運転室104の右側面に向かうようオフセット左操作されたときの第2位置の2つの位置を計算することが好ましい。例えば、図13及び図14に示すように、第1位置は、アーム103bの先端部を支点として回動するバケット103cの先端の軌跡上で運転室104に最も近い点の位置であり、第2位置は、運転室104内の運転席から見てバケット103cの左側面の中央の位置である。
ステップS1に次いで、基準面Fからバケット103cの第1又は第2位置までの距離Dを計算する(ステップS2)。
ステップS2に次いで、比例弁減圧制御を実行する(ステップS3)。この比例弁減圧制御は、図17に示す変換テーブルを用いて次のように行う。
図17において、横軸はバケット103cの第1又は第2位置と運転室104の前側の基準面Fとの距離Dであり、縦軸は電磁比例減圧弁33a,33b,33cの前後圧力比rである。距離Dと前後圧力比rの関係は、距離Dが第1設定値D1以上であるときは前後圧力比rが1であり、距離Dが第1設定値D1より小さくなると前後圧力比rは1から次第に小さくなり、距離Dが第2設定値D2に達すると前後圧力比rは0となるように設定されている。第1設定値D1は図13及び図14の境界面E1に対応し、第2設定値D2は図13及び図14の境界面E2に対応する。第2設定値D2より小さい側(原点に近い側)には、図13及び図14の境界面E3に対応する第3設定値D3が設定されている。すなわち、第1設定値D1以上(原点から遠い側)の領域は非制御領域Xに対応し、第1設定値D1と第2設定値D2との間の領域は減速領域Aに対応し、第2設定値D2と第3設定値D3との間の領域は停止領域Bに対応し、第3設定値D3以下の領域は禁止領域Cに対応する。
コントローラ32は、変換テーブル32aを参照し、バケット103cの第1位置と運転室104の前側の基準面Fとの距離Dに対応する前後圧力比rを求める。次いで、この前後圧力比rを電磁比例減圧弁33a,33bの駆動電流に変換し、電磁比例減圧弁33a,33bにそれぞれ出力する。なお、変換テーブル32aは電磁比例減圧弁33a,33bのそれぞれに個別に設けてもよい。
また、コントローラ32は、変換テーブル32aを参照し、バケット103cの第2位置と運転室104の側面側の基準面Fとの距離Dに対応する前後圧力比rを求める。次いで、この前後圧力比rを電磁比例減圧弁33cの駆動電流に変換し、電磁比例減圧弁33cに出力する。なお、変換テーブル32aは電磁比例減圧弁33a,33b用(ブーム203a及びアーム103bの干渉防止制御用)とは別に電磁比例減圧弁33c用(オフセット203dの干渉防止制御用)のものを設けてもよい。
図16に戻り、ステップS3に次いで、コントローラ32は、バケット103cの第1位置と運転室104の前側の基準面Fとの距離D又はバケット103cの第2位置と運転室104の前側の基準面Fとの距離Dが第3設定値D3を下回ったか否か、すなわち、バケット103cの第1位置又は第2位置が禁止領域Cに侵入したか否かを判定する(ステップS4)。ステップS4において、バケット103cが禁止領域Cに侵入していないと判定すると、上記ステップS1に戻り、ステップS1〜S4の処理を繰り返す。一方、ステップS4において、バケット103cが禁止領域Cに侵入したと判定すると、コントローラ32は、油圧ロック弁34に出力されているON信号をOFF信号に切り換え(ステップS5)、フローを終了する。
以上のように構成した干渉防止制御システムの動作は次の通りである。
(1)フロント作業装置203の少なくとも1つのフロント部材を動作させることでバケット103cの第1又は第2位置が減速領域Aに侵入すると、電磁比例減圧弁33a,33b,33cの対応するものを駆動して指令パイロット圧を減圧し、当該フロント部材の動作速度を徐々に低下させることでフロント作業装置203の動作を徐々に減速させる(ステップS3)。
例えば、ブーム用の操作レバー装置4aの操作レバーがブーム上げ側に倒されると、操作レバー装置4aはパイロットポンプ7で生成される油圧(一次圧)に基づいてその操作量に応じた指令パイロット圧(二次圧)を生成し、この指令パイロット圧がパイロットライン10a及び電磁比例減圧弁33aを経由してブーム上げ用の流量制御弁5aの油圧駆動部20aに導かれ、流量制御弁5aは図示の中立位置から左側の位置に切り換えられる。これにより油圧ポンプ2の吐出油は流量制御弁5aを経由してブームシリンダ3aのボトム側に供給され、ブームシリンダ3aが伸長してブーム203aが上昇する。このようなブーム203aの上昇(ブーム上げ動作)によりフロント作業装置203のバケット103cの第1又は第2位置が減速領域Aに侵入すると、コントローラ32は、図17に示した変換テーブル32aに基づいてそのときの距離Dに応じた前後圧力比rに相当する駆動電流を出力し、ブーム上げ用の電磁比例減圧弁33aはブーム上げパイロットライン10aの指令パイロット圧を減圧する。これによりブームシリンダ3aの減速動作が行われる。アーム用の操作レバー装置4bの操作レバーをアーム掻き込み側に倒してアーム掻き込み動作を行うとき、ブーム上げ動作とアーム掻き込み動作の両方を行うとき、オフセット用の操作レバー装置4dの操作レバーをオフセット左方向に操作しオフセット動作を行うときにバケット103cの第1又は第2位置が減速領域Aに侵入する場合も同様であり、電磁比例減圧弁33a〜33cの対応するものが動作して指令パイロット圧を減圧することにより、対応するフロント部材の減速動作が行われる。
(2)バケット103cの第1又は第2位置が減速領域Aを超えて停止領域Bに達すると、コントローラ32は、図17に示した変換テーブル32aに基づいて前後圧力比r=0に相当する駆動電流を出力し、電磁比例減圧弁33a,33b,33cの対応するものを全閉して指令パイロット圧をタンク圧まで減圧する。これにより当該フロント部材の動作を停止させ、フロント作業装置203の動作を自動停止させる(ステップS3)。
(3)バケット103cの第1又は第2位置が、万一、停止領域Bを超えて禁止領域Cに侵入すると、コントローラ32は油圧ロック弁34に出力されているON信号をOFF信号に切り換え、油圧ロック弁34を図示右側の位置に切り換えてパイロット圧供給油路7bの圧力(一次圧)をタンク圧とする。これにより油圧システムが動作不能となり、油圧ショベル1の全動作が停止する(ステップS5)。
図18は、アタッチメントとしてバケット103cに代えブレーカ103dを装着した場合の従来のオフセット式油圧ショベルの外観図である。
図11に示した本実施例に係るオフセット式油圧ショベル1Aでは、干渉防止制御システムの働きにより、バケット103cが運転室104に干渉することはない。この点は、図18に示した従来のオフセット式油圧ショベル1AXでも同様である。しかしながら、従来のオフセット式油圧ショベル1AXでは、バケット103cに代えてブレーカ103dを装着した場合、アタッチメントの回動支点から先端までの寸法がバケット103cの場合よりも大きくなるため、アーム103bを掻き込み操作したときに、ブレーカ103dの先端部が減速領域A(図13及び図14に示す)に侵入しても干渉防止制御システムによる制動が働かず、図18に示すようにブレーカ103dが運転室104に干渉するおそれがある。
図19は、アタッチメントとしてバケット103cに代えて長さが大きいブレーカ103dを装着した場合の本実施例に係るオフセット式油圧ショベル1Aの外観図である。
本実施例に係るオフセット式油圧ショベル1Aでは、フロント作業装置203のアタッチメントをバケット103cからブレーカ103dに交換する際に、図19に示すように、シリンダステー203eの先端部に設けられた先端ブラケット40に、アーム103bの掻き込み側の停止角度位置を図11の矢印RA1で示す位置から矢印RA2に示す位置に機械的に制限するストッパ50を取り付けることにより、ブレーカ103dが運転室104に干渉することを防止する。ストッパ50の構成は、第1の実施例(図4〜図7及び図10に示す)と同様である。
図20に、シリンダステー203eの先端部の分解斜視図を示し、図21に、ストッパ50が取り付けられていない状態でのアーム103bとシリンダステー203eとの連結部分の拡大図を示し、図22に、ストッパ50が取り付けられた状態でのアーム103bとシリンダステー203eとの連結部分の拡大図を示す。以下、第1の実施例(図8〜図10に示す)と相違する部分を中心に説明する。
シリンダステー203eの本体は、左右の側板203e1,203e2、左右の側板203e1,203e2の上縁部に溶接された上板203e3及び左右の側板の下縁部に溶接された下板203e4によって断面ボックス状に構成されている。
左右のブラケット側板41,42は、シリンダステー203eシリンダステー203eの左右の側板203e1,203e2をそれぞれ先端側に延出して形成されている。左右のブラケット側板41,42の外側面には、それぞれ2枚の補強板45a,45b(左側のみ図示)が重ね合わせて接合されている。
中間閉鎖板43の上側端部(上板部分43bの端部)は、シリンダステー203eの薄肉の上板203e3の先端部に継ぎ板47を介して溶接で接合されており、中間閉鎖板43の下側端部(下板部分43cの端部)は、シリンダステー203eの薄肉の下板203e4の先端部に継ぎ板48を介して溶接で接合されている。上板部分43bと下板部分43cとの間には、左右のブラケット側板41,42と中間閉鎖板43の上板部分43b及び下板部分43cとにそれぞれ接合された補強板49が設けられている。ストッパ取付座60の構成は、第1の実施例(図8〜図10に示す)と同様である。
本実施例によれば、オフセット式油圧ショベル1Aのフロント作業装置203のアタッチメントをバケット103cから長さが大きいブレーカ103dに交換する際に、シリンダステー203eの先端部に設けられた先端ブラケット40(ストッパ取付座60)にストッパ50を取り付けることにより、アーム103bの掻き込み側の停止角度位置が図11の矢印RA1で示す位置から図19の矢印RA2に示す位置に機械的に制限される。すなわち、アーム103bが掻き込み操作されて停止角度位置RA2に到達すると、ストッパ50がアーム103bの下面(下板103b2)に突き当たり、アーム103bのそれ以上の掻き込み動作が停止する。これにより、バケット103cに代えて長さが大きいブレーカ103dを装着した場合でも、バケット103cの寸法に依拠した干渉防止制御システムに変更を加えることなく、アーム103bの掻き込み操作時にブレーカ103dが運転室104に干渉することを確実に防止することが可能となる。
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は、上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成の一部を加えることも可能であり、ある実施例の構成の一部を削除し、あるいは、他の実施例の一部と置き換えることも可能である。